(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】全固体電池および電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/548 20210101AFI20240207BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240207BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240207BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20240207BHJP
H01M 50/202 20210101ALI20240207BHJP
H01M 50/258 20210101ALI20240207BHJP
H01M 50/50 20210101ALI20240207BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20240207BHJP
H01M 50/547 20210101ALI20240207BHJP
H01M 50/204 20210101ALN20240207BHJP
【FI】
H01M50/548
H01M10/052
H01M10/0562
H01M10/0585
H01M50/202 301
H01M50/258
H01M50/50 201Z
H01M50/531
H01M50/547 101
H01M50/547 201
H01M50/204 301
(21)【出願番号】P 2019166531
(22)【出願日】2019-09-12
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大悟
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宇人
(72)【発明者】
【氏名】富沢 祥江
(72)【発明者】
【氏名】川村 知栄
(72)【発明者】
【氏名】関口 正史
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-504763(JP,A)
【文献】特開2006-066083(JP,A)
【文献】特開2011-040407(JP,A)
【文献】特開2014-032937(JP,A)
【文献】特開2016-001602(JP,A)
【文献】特開2010-232102(JP,A)
【文献】国際公開第2019/093215(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/543 - 567
H01M 10/0562
H01M 10/052
H01M 50/531
H01M 50/50
H01M 10/0585
H01M 50/20 - 216
H01M 50/258
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1電極と複数の第2電極とが固体電解質層を介して交互に複数積層され、かつ互いに隣接した第1側面と第2側面とを有
し、前記第1側面に隣接すると共に前記第2側面に相対する第3側面を有し、前記第2側面に隣接すると共に前記第1側面に相対する第4側面を有する積層体と、
前記第1側面に表出した前記第1電極の第1引出部と、
前記第2側面に表出した前記第2電極の第2引出部と、
前記第1側面において前記第1引出部と接続された第1外部電極と、
前記第2側面において前記第2引出部と接続された第2外部電極と、
前記第3側面に表出した前記第1電極の第3引出部と、
前記第4側面に表出した前記第2電極の第4引出部とを有し、
前記第1外部電極が、前記第3側面において前記第3引出部と接続され、
前記第2外部電極が、前記第4側面において前記第4引出部と接続されたことを特徴とする全固体電池。
【請求項2】
複数の第1電極と複数の第2電極とが固体電解質層を介して交互に複数積層され、かつ互いに隣接した第1側面と第2側面とを有し、前記第1側面に隣接すると共に前記第2側面に相対する第3側面を有し、前記第2側面に隣接すると共に前記第1側面に相対する第4側面を有する積層体と、
前記第1側面に表出した前記第1電極の第1引出部と、
前記第2側面に表出した前記第2電極の第2引出部と、
前記第1側面において前記第1引出部と接続された第1外部電極と、
前記第2側面において前記第2引出部と接続された第2外部電極と、
前記第3側面に表出した前記第1電極の第3引出部と、
前記第4側面に表出した前記第2電極の第4引出部と、
前記第3側面において前記第3引出部と接続された第3外部電極と、
前記第4側面において前記第4引出部と接続された第4外部電極とを更に有することを
特徴とする全固体電池。
【請求項3】
複数の第1電極と複数の第2電極とが固体電解質層を介して交互に複数積層され、かつ互いに隣接した第1側面と第2側面とを有する積層体と、
前記第1側面に表出した前記第1電極の第1引出部と、
前記第2側面に表出した前記第2電極の第2引出部と、
前記第1側面において前記第1引出部と接続された第1外部電極と、
前記第2側面において前記第2引出部と接続された第2外部電極と、
を有する全固体電池を複数備え、
複数の前記全固体電池のうちの第1全固体電池の前記第1外部電極と、複数の前記全固体電池のうちの第2全固体電池の前記第2外部電極とを電気的に接続し
、
前記第1全固体電池と前記第2全固体電池とを平面内に配置し、
複数の前記全固体電池の各々は、
前記第1側面に隣接すると共に前記第2側面に相対する前記積層体の第3側面と、
前記第2側面に隣接すると共に前記第1側面に相対する前記積層体の第4側面と、
前記第3側面に表出した前記第1電極の第3引出部と、
前記第4側面に表出した前記第2電極の第4引出部と、
前記第3側面において前記第3引出部と接続された第3外部電極と、
前記第4側面において前記第4引出部と接続された第4外部電極とを更に有し、
前記第1全固体電池の前記第3外部電極と前記第2全固体電池の前記第2外部電極とを接続したことを特徴とする電池モジュール。
【請求項4】
複数の前記全固体電池のうちの第3全固体電池と第4全固体電池とを前記平面内に配置すると共に、
前記第3全固体電池の前記第3外部電極と、前記第1全固体電池の前記第1外部電極とを接続し、
前記第4全固体電池の前記第3外部電極と、前記第2全固体電池の前記第1外部電極とを接続し、
前記第3全固体電池の前記第1外部電極と、前記第4全固体電池の前記第4外部電極とを接続したことを特徴とする
請求項3に記載の電池モジュール。
【請求項5】
複数の第1電極と複数の第2電極とが固体電解質層を介して交互に複数積層され、かつ互いに隣接した第1側面及び第2側面と、前記第1側面に隣接すると共に前記第2側面に相対する第3側面と、前記第2側面に隣接すると共に前記第1側面に相対する第4側面とを有する積層体と、
前記第1側面に表出した前記第1電極の第1引出部と、
前記第2側面に表出した前記第2電極の第2引出部と、
前記第3側面に表出した
前記第1電極の第3引出部と、
前記第4側面に表出した
前記第2電極の第4引出部と、
前記第1側面において前記第1引出部と接続された第1外部電極と、
前記第2側面において前記第2引出部と接続された第2外部電極と、
前記第3側面において前記第3引出部と接続された第3外部電極と、
前記第4側面において前記第4引出部と接続された第4外部電極と、
を有する第1全固体電池、第2全固体電池、第3全固体電池、及び第4全固体電池を備え、
前記第1全固体電池の前記第3外部電極と、前記第4全固体電池の前記第4外部電極とを電気的に接続し、
前記第4全固体電池の前記第2外部電極と、前記第2全固体電池の前記第4外部電極とを電気的に接続し、
前記第2全固体電池の前記第2外部電極と、前記第3全固体電池の前記第1外部電極とを電気的に接続し、
前記第3全固体電池の前記第3外部電極と、前記第1全固体電池の前記第1外部電極とを電気的に接続したことを特徴とする電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池および電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池が様々な分野で利用されている。電解液を用いた二次電池には、電解液の漏液等の問題がある。そこで、電池の各材料を固体で構成した全固体電池の開発が行われている。
【0003】
全固体電池は、電極と固体電解質層とが交互に複数形成された積層体を有しており、その積層体の相対する二つの側面の各々に正と負の外部電極が設けられる(例えば、特許文献1)。そのような全固体電池を配線基板上に複数搭載する場合には、配線基板の配線層を介してこれらの全固体電池を電気的に接続する方法が提案されている(例えば、特許文献2、3)。
【0004】
しかしながら、このように配線基板の配線層を利用して各全固体電池を電気的に接続する方法では、配線基板の空きスペースに全固体電池を高密度に配置するのが難しく、全固体電池の配置の自由度に制限が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-80812号公報
【文献】特開2015-26555号公報
【文献】特開2015-220110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、複数の全固体電池の配置の自由度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る全固体電池は、複数の第1電極と複数の第2電極とが固体電解質層を介して交互に複数積層され、かつ互いに隣接した第1側面と第2側面とを有する積層体と、前記第1側面に表出した前記第1電極の第1引出部と、前記第2側面に表出した前記第2電極の第2引出部と、前記第1側面において前記第1引出部と接続された第1外部電極と、前記第2側面において前記第2引出部と接続された第2外部電極とを有することを特徴とする。
【0008】
上記全固体電池において、前記第1側面に隣接すると共に前記第2側面に相対する前記積層体の第3側面と、前記第2側面に隣接すると共に前記第1側面に相対する前記積層体の第4側面と、前記第3側面に表出した前記第1電極の第3引出部と、前記第4側面に表出した前記第2電極の第4引出部とを更に有し、前記第1外部電極が、前記第3側面において前記第3引出部と接続され、前記第2外部電極が、前記第4側面において前記第4引出部と接続されてもよい。
【0009】
上記固体電池において、前記第1側面に隣接すると共に前記第2側面に相対する前記積層体の第3側面と、前記第2側面に隣接すると共に前記第1側面に相対する前記積層体の第4側面と、前記第3側面に表出した前記第1電極の第3引出部と、前記第4側面に表出した前記第2電極の第4引出部と、前記第3側面において前記第3引出部と接続された第3外部電極と、前記第4側面において前記第4引出部と接続された第4外部電極とを更に有してもよい。
【0010】
本発明に係る電池モジュールは、複数の第1電極と複数の第2電極とが固体電解質層を介して交互に複数積層され、かつ互いに隣接した第1側面と第2側面とを有する積層体と、前記第1側面に表出した前記第1電極の第1引出部と、前記第2側面に表出した前記第2電極の第2引出部と、前記第1側面において前記第1引出部と接続された第1外部電極と、前記第2側面において前記第2引出部と接続された第2外部電極と、を有する全固体電池を複数備え、複数の前記全固体電池のうちの第1全固体電池の前記第1外部電極と、複数の前記全固体電池のうちの第2全固体電池の前記第2外部電極とを電気的に接続したことを特徴とする。
【0011】
上記電池モジュールにおいて、前記第1全固体電池と前記第2全固体電池とを平面内に配置してもよい。
【0012】
上記電池モジュールにおいて、複数の前記全固体電池の各々は、前記第1側面に隣接すると共に前記第2側面に相対する前記積層体の第3側面と、前記第2側面に隣接すると共に前記第1側面に相対する前記積層体の第4側面と、前記第3側面に表出した前記第1電極の第3引出部と、前記第4側面に表出した前記第2電極の第4引出部と、前記第3側面において前記第3引出部と接続された第3外部電極と、前記第4側面において前記第4引出部と接続された第4外部電極とを更に有し、前記第1全固体電池の前記第2外部電極と前記第2全固体電池の前記第3外部電極とを接続してもよい。
【0013】
上記電池モジュールにおいて、複数の前記全固体電池のうちの第3全固体電池と第4全固体電池とを前記平面内に配置すると共に、前記第3全固体電池の前記第4外部電極と、前記第1全固体電池の前記第4外部電極とを接続し、前記第4全固体電池の前記第4外部電極と、前記第2全固体電池の前記第4外部電極とを接続し、前記第3全固体電池の前記第3外部電極と、前記第4全固体電池の前記第2外部電極とを接続してもよい。
【0014】
上記電池モジュールにおいて、前記第1全固体電池と前記第2全固体電池とを積層してもよい。
【0015】
上記電池モジュールにおいて、前記第1全固体電池と前記第2全固体電池との間に第3全固体電池が設けられ、前記第3全固体電池の一方の電極と前記第1全固体電池の前記第1外部電極とを接続し、前記第3全固体電池の他方の電極と前記第2全固体電池の前記第2外部電極とを接続してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の全固体電池の配置の自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る全固体電池の基本構造を示す模式的断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る全固体電池の外観図である。
【
図3】第1実施形態に係る全固体電池の分解斜視図である。
【
図4】(a)は、第1実施形態において第1電極と第2電極とを積層して積層体としたときの斜視図であり、(b)は第1実施形態に係る全固体電池の上面図である。
【
図5】(a)は、第1実施形態に係る電池モジュールの上面図であり、(b)は、第1実施形態の別の例に係る電池モジュールの上面図である。
【
図6】比較例に係る全固体電池の分解斜視図である。
【
図7】比較例において第1電極と第2電極とを積層して積層体としたときの斜視図である。
【
図8】第2実施形態に係る全固体電池の分解斜視図である。
【
図9】(a)は、第2実施形態において第1電極と第2電極とを積層して積層体としたときの斜視図であり、(b)は、第2実施形態における積層体と各外部電極の上面図である。
【
図10】第2実施形態に係る電池モジュールの上面図である。
【
図11】(a)は第2実施形態の別の例に係る電池モジュールの上面図であり、(b)は第2実施形態の他の例に係る電池モジュールの上面図である。
【
図12】(a)は、第2実施形態の別の例に係る全固体電池の斜視図であり、(b)は、第2実施形態の別の例に係る全固体電池の上面図である。
【
図13】第3実施形態に係る第1全固体電池の分解斜視図である。
【
図14】
図13における第1電極と第2電極とを積層して積層体としたときの斜視図である。
【
図15】第3実施形態に係る第2全固体電池の分解斜視図である。
【
図16】
図15における第1電極と第2電極とを積層して積層体としたときの斜視図である。
【
図17】第3実施形態に係る第3全固体電池の分解斜視図である。
【
図18】
図17における第1電極と第2電極とを積層して積層体としたときの斜視図である。
【
図19】第3実施形態に係る電子モジュールの製造方法について示す斜視図(その1)である。
【
図20】第3実施形態に係る電子モジュールの製造方法について示す斜視図(その2)である。
【
図21】第3実施形態に係る電子モジュールの製造方法について示す斜視図(その3)である。
【
図22】第3実施形態に係る電池モジュールの使用方法の一例について示す斜視図である。
【
図23】各実施形態に係る全固体電池の製造方法のフローを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る全固体電池100の基本構造を示す模式的断面図である。
図1で例示するように、全固体電池100は、積層体60とその側面に設けられた第1外部電極40a及び第2外部電極40bとを有する。積層体60は、複数の第1電極10と複数の第2電極20とを固体電解質層30を介して交互に複数積層した構造を有する。なお、以下では、積層体60の外面のうち、各電極10、20と固体電解質層30の積層方向に平行な外面を側面と呼ぶ。
【0020】
また、第1電極10は、第1集電体層12とその両主面に設けられた導電性の第1電極層11とを有する。そして、第2電極20は、第2集電体層22とその両主面に設けられた導電性の第2電極層21とを有する。本実施形態においては、一例として、第1電極10を正極として用い、第2電極20を負極として用いるものとする。
【0021】
なお、第1集電体層12を省いて第1電極層11のみで第1電極10を構成してもよい。同様に、第2集電体層22を省いて第2電極層21のみで第2電極20を構成してもよい。
【0022】
第1電極10と第2電極20の厚さは特に限定されない。例えば、第1電極層11の厚さは1μm~100μm程度であり、第1集電体層12の厚さは1μm~20μm程度である。また、第2電極層21の厚さは1μm~100μm程度であり、第2集電体層22の厚さは1μm~20μm程度である。
【0023】
第1電極層11および第2電極層21のうち、少なくとも正極として用いられる第1電極層11は、オリビン型結晶構造をもつ物質を電極活物質として含有する。第2電極層21も当該電極活物質を含有していることが好ましい。このような電極活物質として、遷移金属とリチウムとを含むリン酸塩が挙げられる。オリビン型結晶構造は、天然のカンラン石(olivine)が有する結晶であり、X線回折において判別することができる。
【0024】
オリビン型結晶構造をもつ電極活物質の典型例として、Coを含むLiCoPO4などを用いることができる。この化学式において遷移金属のCoが置き換わったリン酸塩などを用いることもできる。ここで、価数に応じてLiやPO4の比率は変動し得る。なお、遷移金属として、Co,Mn,Fe,Niなどを用いることが好ましい。
【0025】
オリビン型結晶構造をもつ電極活物質は、正極として作用する第1電極層11においては正極活物質として作用する。例えば、第1電極層11にのみオリビン型結晶構造をもつ電極活物質が含まれる場合には、当該電極活物質が正極活物質として作用する。第2電極層21にもオリビン型結晶構造をもつ電極活物質が含まれる場合に、負極として作用する第2電極層21においては、その作用メカニズムは完全には判明してはいないものの、負極活物質との部分的な固溶状態の形成に基づくと推察される、放電容量の増大、ならびに、放電に伴う動作電位の上昇という効果が発揮される。
【0026】
なお、第2電極層21に、負極活物質をさらに含有させてもよい。そのような負極活物質としては、例えばチタン酸化物、リチウムチタン複合酸化物、リチウムチタン複合リン酸塩、カーボン、リン酸バナジウムリチウムなどがある。
【0027】
第1電極層11および第2電極層21の作製においては、これら活物質に加えて、酸化物系固体電解質材料や、導電性材料(導電助剤)などが添加されている。本実施形態においては、これらの部材については、バインダと可塑剤を水あるいは有機溶剤に均一分散させることで電極層用ペーストを得ることができる。本実施形態においては、導電助剤として、カーボン材料が含まれている。導電助剤として、さらに金属が含まれていてもよい。導電助剤の金属としては、Pd、Ni、Cu、Fe、これらを含む合金などが挙げられる。
【0028】
固体電解質層30は、酸化物系固体電解質であれば特に限定されるものではないが、例えば、NASICON構造を有するリン酸塩系固体電解質を用いることができる。NASICON構造を有するリン酸塩系固体電解質は、高い導電率を有するとともに、大気中で安定しているという性質を有している。リン酸塩系固体電解質は、例えば、リチウムを含んだリン酸塩である。当該リン酸塩は、特に限定されるものではないが、例えば、Tiとの複合リン酸リチウム塩(例えば、LiTi2(PO4)3)などが挙げられる。または、TiをGe,Sn,Hf,Zrなどといった4価の遷移金属に一部あるいは全部置換することもできる。また、Li含有量を増加させるために、Al,Ga,In,Y,Laなどの3価の遷移金属に一部置換してもよい。より具体的には、例えば、Li1+xAlxGe2-x(PO4)3や、Li1+xAlxZr2-x(PO4)3、Li1+xAlxTi2-x(PO4)3などが挙げられる。例えば、第1電極層11および第2電極層21の少なくともいずれか一方に含有されるオリビン型結晶構造をもつリン酸塩が含む遷移金属と同じ遷移金属を予め添加させたLi-Al-Ge-PO4系材料が好ましい。例えば、第1電極層11および第2電極層21にCoおよびLiの少なくともいずれか一方を含むリン酸塩が含有される場合には、Coを予め添加したLi-Al-Ge-PO4系材料が固体電解質層30に含まれることが好ましい。この場合、電極活物質が含む遷移金属の電解質への溶出を抑制する効果が得られる。第1電極層11および第2電極層21にCo以外の遷移元素およびLiを含むリン酸塩が含有される場合には、当該遷移金属を予め添加したLi-Al-Ge-PO4系材料が固体電解質層30に含まれることが好ましい。
【0029】
なお、固体電解質層30の厚さは特に限定されないが、ここではその厚さを1μm~100μm程度とする。
【0030】
図2は、全固体電池100の外観図である。なお、上述の
図1は、
図2のI-I線に沿う断面図に相当する。
図2に示すように、積層体60は、上面視で概略矩形であり、互いに隣接する第1側面60aと第2側面60bとを有する。そして、その第1側面60aに第1外部電極40aが設けられ、第2側面60bに第2外部電極40bが設けられる。
【0031】
図3は、全固体電池100の分解斜視図である。なお、
図3では固体電解質層30を省略している。これについては後述の
図4(a)、(b)でも同様である。
図3に示すように、複数の第1電極10の各々は、第1側面60aに向けて突出した第1引出部10aを有する。そして、複数の第2電極20の各々は、第2側面60bに向けて突出した第2引出部20aを有する。
【0032】
図4(a)は、各電極10、20を積層して積層体60としたときの斜視図である。
図4(a)に示すように、積層体60の第1側面60aには、第1電極10の第1引出部10aが表出しており、その第1側面60aにおいて第1外部電極40aが第1引出部10aに接続される。
【0033】
また、積層体60の第2側面60bには、第2電極20の第2引出部20aが表出しており、第2側面60bにおいて第2外部電極40bが第2引出部20aに接続される。
【0034】
図4(b)は、全固体電池100の上面図である。
図4(b)に示すように、積層体60の中心Cと第1外部電極40aとを通る仮想直線L1は、中心Cと第2外部電極40bとを通る仮想直線L2と約90度の角度で交差する。
【0035】
次に、このような全固体電池100を備えた電池モジュールについて説明する。
【0036】
図5(a)は、本実施形態に係る電池モジュールの上面図である。
図5(a)に示すように、この電池モジュール200は、配線基板70と、その上面に配置された第1全固体電池101と第2全固体電池102とを有する。第1全固体電池101と第2全固体電池102は、いずれも上述の全固体電池100と同じ構造を有しており、上面視で一列に並べられる。
【0037】
また、この例では、第1全固体電池101の第1外部電極40aと、第2全固体電池102の第2外部電極40bとを接続する。これにより、第1全固体電池101と第2全固体電池102とが直列接続された構造となるため、これらのうちの一つのみを使用する場合の2倍の起電力が得られる。
【0038】
図5(b)は、本実施形態の別の例に係る電池モジュールの上面図である。
図5(b)に示すように、この電池モジュール201においては、上述の全固体電池100と同じ構造の第1~第3全固体電池101~103を配線基板70の上面にL字型に並べる。また、この例では、第1全固体電池101の第1外部電極40aと第2全固体電池102の第2外部電極40bとを接続すると共に、第2全固体電池102の第1外部電極40aと第3全固体電池103の第2外部電極40bとを接続する。
【0039】
これにより、第1~第3全固体電池101~103が直列接続された構造となるため、
図5(a)の例よりも電池モジュール201の起電力を更に高めることができる。また、このように第1~第3全固体電池101~103をL字型に並べることにより、配線基板70のL字型の空きスペースを有効活用することもできる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る全固体電池100によれば、
図4(a)に示したように積層体60の隣接する2側面60a、60bに外部電極40a、40bを設ける。これにより、
図5(a)のような直線状のレイアウトだけでなく、
図5(b)のようなL字型のレイアウトで全固体電池100を配置することができ、全固体電池100の配置の自由度が向上する。
【0041】
更に、第1外部電極40aと第2外部電極40bとを接触させることにより隣接する全固体電池100を接続することができるため、各全固体電池100を高密度に配置することができる。
【0042】
・比較例
次に、比較例について説明する。
図6は、比較例に係る全固体電池300の分解斜視図である。この比較例では、第1電極10の第1引出部10aと第2電極20の第2引出部20aとが互いに反対の方向を向くようにし、これらの引出部10a、20aを上面視で仮想直線Q上に配置する。
【0043】
図7は、この比較例において各電極10、20を積層して積層体60としたときの斜視図である。
図7に示すように、第1引出部10aには第1外部電極40aが接続され、かつ第2引出部20aには第2外部電極40bが接続される。
【0044】
このような全固体電池300においては、各外部電極40a、40bが上面視で仮想直線Q上に配置される。そのため、複数の全固体電池300の各外部電極40a、40b同士を接続しようとすると、これらの全固体電池300を仮想直線Q上に並べなければならない。その結果、
図5(b)のようなL字型のレイアウトを実現できず、配線基板70の空きスペースを有効活用するのが困難となる。
【0045】
(第2実施形態)
図8は、本実施形態に係る全固体電池110の分解斜視図である。なお、
図8において、第1実施形態で説明したのと同じ要素には第1実施形態におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。また、
図8においては固体電解質層30を省略している。これについては後述の
図9(a)、(b)でも同様である。
【0046】
図8に示すように、本実施形態では、第1電極10に第1引出部10aと第3引出部10bとを設ける。そして、第2電極20には第2引出部20aと第4引出部20bとが設けられる。
【0047】
図9(a)は、各電極10、20を積層して積層体60としたときの斜視図である。
図9(a)に示すように、積層体60は第1~第4側面60a~60dを有する。このうち、第1側面60aと第2側面60bは隣接する二つの側面である。また、第3側面60cは、第1側面60aに隣接すると共に、第2側面60bに相対する側面である。そして、第4側面60dは、第2側面60bに隣接すると共に、第1側面60aに相対する側面である。
【0048】
本実施形態では、第1電極10の第3引出部10bが第3側面60cに表出しており、その第3側面60cにおいて第3引出部10bを第3外部電極40cに接続する。また、第2電極20の第4引出部20bは、第4側面60dに表出しており、その第4側面60dにおいて第4外部電極40dと接続される。
【0049】
図9(b)は、積層体60と各外部電極40a~40dの上面図である。
図9(b)に示すように、第1外部電極40aと第4外部電極40dとを通る仮想直線L1は、第2外部電極40bと第3外部電極40cとを通る仮想直線L2と約90度の角度で交差する。
【0050】
このような全固体電池110によれば、上面視で四方に各外部電極40a~40dを備えているため、各外部電極40a~40dを介して複数の全固体電池110を接続する形態のバリエーションを増やすことができる。その結果、以下のような様々なレイアウトの電池モジュールを実現でき、配線基板等の空きスペースを有効活用することができる。
【0051】
次に、本実施形態に係る全固体電池110を備えた電池モジュールについて説明する。
【0052】
図10は、本実施形態に係る電池モジュールの上面図である。
図10に示すように、この電池モジュール210は、配線基板70と、その上面に配置された第1~第3全固体電池111~113とを有する。第1~第3全固体電池111~113は、いずれも本実施形態に係る全固体電池110と同じ構造を有しており、上面視で一列に並べられる。
【0053】
また、この例では、第1全固体電池111の第2外部電極40bと、第2全固体電池112の第3外部電極40cとを接続する。そして、第2全固体電池112の第2外部電極40bと、第3全固体電池113の第3外部電極40cとが接続される。これにより、第1~第3全固体電池111~113が直列接続された構造となるため、これらのうちの一つのみを使用する場合と比較して電池モジュール210の起電力を高めることができる。
【0054】
なお、
図10の例では直列に接続する全固体電池の個数を3個としたが、その個数を2個や4個以上とすることにより、所望の起電力を生ずる電池モジュール210を構成してもよい。
【0055】
更に、次のように並列接続と直列接続とが混在した電池モジュールを構成してもよい。
図11(a)は、本実施形態の別の例に係る電池モジュールの上面図である。
図11(a)に示すように、この電池モジュール220は、配線基板70と、その上面に配置された第1~第4全固体電池111~114とを有する。第1~第4全固体電池111~114は、いずれも本実施形態に係る全固体電池110と同じ構造を有しており、上面視で配線基板70の上に2行2列に配置される。
【0056】
また、この例では、第1全固体電池111の第3外部電極40cと、第2全固体電池112の第2外部電極40bとを接続することにより、第1全固体電池111と第2全固体電池112とを直列に接続する。
【0057】
そして、第3全固体電池113の第1外部電極40aと、第4全固体電池114の第4外部電極40dとが接続されており、これにより第3全固体電池113と第4全固体電池114とが直列に接続される。
【0058】
更に、第1全固体電池111の第1外部電極40aと、第3全固体電池113の第3外部電極40cとが接続されており、これにより第1全固体電池111と第3全固体電池113とが並列に接続される。同様に、第2全固体電池112の第1外部電極40aと、第4全固体電池114の第3外部電極40cとが接続され、第2全固体電池112と第4全固体電池114とが並列に接続される。
【0059】
このような電池モジュール220によれば、第1全固体電池111と第2全固体電池112とを直列に接続し、かつ第3全固体電池113と第4全固体電池114とを直列に接続する。そのため、第1全固体電池111の第2外部電極40bと、第2全固体電池112の第3外部電極40cとの電位差が、一つの全固体電池における各外部電極40b、40cの電位差の2倍とすることができる。同様に、第3全固体電池113の第4外部電極40dと、第4全固体電池114の第1外部電極40aとの電位差を、一つの全固体電池における各電極40a、40dの電位差の2倍にすることができる。更に、第1全固体電池111と第3全固体電池113とを並列に接続し、かつ第2全固体電池112と第4全固体電池114とを並列に接続したことで、一つの全固体電池の2倍の容量が得られる。
【0060】
なお、各全固体電池111~114の接続の仕方は上記に限定されない。
図11(b)は、本実施形態の他の例に係る電池モジュールの上面図である。
図11(b)に示すように、この電池モジュール220は、
図11(a)における第2全固体電池112と第4全固体電池114の位置を入れ替えて得られた電池モジュールである。
【0061】
この場合は、第1全固体電池111の第3外部電極40cと第4全固体電池114の第4外部電極40dとを電気的に接続し、第4全固体電池114の第2外部電極40bと第2全固体電池112の第4外部電極40dとを電気的に接続する。また、第2全固体電池112の第2外部電極40bと第3全固体電池113の第1外部電極40aとを電気的に接続し、第3全固体電池113の第3外部電極40cと第1全固体電池111の第1外部電極40aとを電気的に接続する。
【0062】
この場合、正極側の取り出し電極として、第4全固体電池114の第1外部電極40a及び第3外部電極40c、第2全固体電池112の第1外部電極40a及び第3外部電極40cの合計4か所のいずれかを選ぶことができる。また、負極側の取り出し電極として、第1全固体電池111の第2外部電極40b及び第4外部電極40d、第3全固体電池113の第2外部電極40b及び第4外部電極40dの合計4か所のいずれかを選ぶことができる。
これにより、正極と負極を取り出す部位の選択肢を増やすことができ、電極に接続する配線の位置の自由度を向上させることができる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係る全固体電池110によれば、
図9(a)に示したように積層体60の4側面60a~60dに外部電極40a~40dを設ける。これにより、
図11のような行列状に全固体電池110を配置することができ、全固体電池110の配置の自由度が向上する。
【0064】
更に、第1~第4外部電極40a~40dを接触させることで隣接する全固体電池110同士を接続することができるため、各全固体電池100を高密度に配置することができる。
【0065】
しかも、電池モジュール220において並列接続と直列接続とを混在させることにより、用途に合わせて起電力や容量を調節することができる。
【0066】
なお、この例では第1~第4外部電極40a~40dの各々を独立させたが、各外部電極40a~40dの配置はこれに限定されない。
【0067】
図12(a)は、本実施形態の別の例に係る全固体電池115の斜視図であり、
図12(b)はその全固体電池115の上面図である。なお、
図12(a)、(b)では固体電解質層30を省略している。
【0068】
図12(a)、(b)に示すように、この例では、積層体60の第1側面60aにおいて第1外部電極40aを第1引出部10aに接続すると共に、第3側面60cにおいて第1外部電極40aを第3引出部10bに接続する。また、積層体60の第2側面60bにおいて第2外部電極40bを第2引出部20aに接続すると共に、第4側面60dにおいて第2外部電極40bを第4引出部20bに接続する。
【0069】
これにより、第1側面60aと第3側面60cの各々に跨って第1外部電極40aが延在するようになるため、
図9(a)、(b)の例と比較して第1外部電極40aの面積が広くなり、第1外部電極40aを低抵抗化できる。同様の理由により、第2外部電極40bも低抵抗化することができる。
【0070】
(第3実施形態)
第1実施形態と第2実施形態では平面内に複数の全固体電池を配置したが、本実施形態では以下のようにして第1~第3全固体電池121~123を積層する。
【0071】
図13は、本実施形態に係る第1全固体電池121の分解斜視図である。なお、
図13において、第1実施形態や第2実施形態で説明したのと同じ要素にはこれらの実施形態におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。また、
図13においては固体電解質層30を省略している。これについては後述の
図14~
図21でも同様である。
【0072】
図13に示すように、本実施形態においても第1電極10に第1引出部10aを設けると共に、第2電極20に第2引出部20aを設ける。
【0073】
図14は、
図13における各電極10、20を積層して積層体60としたときの斜視図である。
図14に示すように、積層体60の第1側面60aには第1電極10の第1引出部10aが表出しており、第2側面60bには第2電極20の第2引出部20aが表出する。
【0074】
図15は、本実施形態に係る第2全固体電池122の分解斜視図である。
図15に示すように、第2全固体電池122においては、第1電極10の第1引出部10aと第2電極20の第2引出部20aとが上面視で互いに反対の方向を向くようにする。
【0075】
図16は、
図15における各電極10、20を積層して積層体60としたときの斜視図である。
図16に示すように、積層体60の側面60xには第1引出部10aが表出し、その側面60xに相対する側面60yには第2引出部20aが表出する。
【0076】
図17は、本実施形態に係る第3全固体電池123の分解斜視図である。
【0077】
図17に示すように、第1全固体電池121(
図13参照)と同様に、第3全固体電池123においても第1電極10に第1引出部10aを設けると共に、第2電極20に第2引出部20aを設ける。なお、第1全固体電池121においては、
図13のように上面視で第1電極10を時計回りに90度回転させると第2引出部20aに第1引出部10aが重なる。これに対し、第3全固体電池123では、上面視で第1電極10を反時計回りに90度回転させることにより第2引出部20aに第1引出部10aが重なるようにする。
【0078】
図18は、
図17の各電極10、20を積層して積層体60としたときの斜視図である。
図18に示すように、積層体60の第1側面60aには第1電極10の第1引出部10aが表出しており、第2側面60bには第2電極20の第2引出部20aが表出する。
【0079】
次に、上述の第1~第3全固体電池121~123を用いた電池モジュールの製造方法について説明する。
図19~
図21は、本実施形態に係る電子モジュールの製造方法について示す斜視図である。
【0080】
まず、
図19に示すように、第1~第3全固体電池121~123の各々の位置合わせを行う。このとき、第1全固体電池121の第1引出部10aと第2全固体電池122の第2引出部20aが上面視で重なるように第1全固体電池121と第2全固体電池122との位置合わせを行う。
【0081】
また、第2全固体電池122の第1引出部10aと第3全固体電池123の第2引出部20aが上面視で重なるように第2全固体電池122と第3全固体電池123との位置合わせを行う。
【0082】
次いで、
図20に示すように、第1~第3全固体電池121~123をこの順に積層する。
【0083】
そして、
図21に示すように、第1~第3全固体電池121~123の四つの側面の各々に第1~第4外部電極40a~40dを形成する。このうち、第1外部電極40aは、第1全固体電池121の第1引出部10aと、第2全固体電池122の第2引出部20aとを接続する電極である。また、第2外部電極40bは、第1全固体電池121の第2引出部20a(
図19参照)と接続される。そして、第3外部電極40cは、第3全固体電池123の第1引出部10aと接続される。更に、第4外部電極40dは、第2全固体電池122の第1引出部10a(
図19参照)と第3全固体電池123の第2引出部20aとを接続する電極である。
【0084】
以上により、本実施形態に係る電池モジュール230が完成する。
その電池モジュール230によれば、第1外部電極40aを介して第1全固体電池121と第2全固体電池122とが直列に接続される。また、第4外部電極40dを介して第2全固体電池122と第3全固体電池123とが直列に接続されており、これにより第1~第3全固体電池121~123が全体として直列に接続された構造となる。そして、これらの全固体電池121~123で生じた起電力が、第2外部電極40bと第3外部電極40cを介して外部に取り出される。
【0085】
図22は、この電池モジュール230の使用方法の一例について示す斜視図である。
【0086】
図22の例では配線基板70の上面に一対の端子71、72を立設し、これらの端子71、72で電池モジュール230を挟む。このとき、電池モジュール230の第3外部電極40c(
図21参照)が端子71に接触し、第2外部電極40bが端子72に接触するようにする。これにより、電池モジュール230の起電力を各端子71、72を介して配線基板70に引き出すことができる。
【0087】
以上説明した電池モジュール230によれば、第1~第3全固体電池121~123を積層してこれらを直列に接続したため、一つの全固体電池の3倍の起電力が得られる。しかも、第1~第3全固体電池121~123を積層すると、これらの全固体電池を平面内に並べる場合と比較して配線基板70で電池モジュール230が占める面積が減り、配線基板70の狭い空きスペースを有効活用できる。
【0088】
次に、第1実施形態に係る全固体電池100と第2実施形態に係る全固体電池110の製造方法について説明する。なお、第3実施形態に係る第1~第3全固体電池121~123も同様に製造することができる。
【0089】
図23は、各実施形態に係る全固体電池の製造方法のフローを例示する図である。
【0090】
(セラミック原料粉末作製工程)
まず、上述の固体電解質層30を構成するリン酸塩系固体電解質の粉末を作製する。例えば、原料、添加物などを混合し、固相合成法などを用いることで、固体電解質層30を構成するリン酸塩系固体電解質の粉末を作製することができる。得られた粉末を乾式粉砕することで、所望の平均粒径に調整することができる。例えば、ZrO2ボールを用いた遊星ボールミルで、所望の平均粒径に調整する。
【0091】
添加物には、焼結助剤が含まれる。焼結助剤として、例えば、Li-B-O系化合物、Li-Si-O系化合物、Li-C-O系化合物、Li-S-O系化合物,Li-P-O系化合物などのガラス成分のどれか1つあるいは複数などのガラス成分が含まれている。
【0092】
(グリーンシート作製工程)
次に、得られた粉末を、結着材、分散剤、可塑剤などとともに、水性溶媒あるいは有機溶媒に均一に分散させて、湿式粉砕を行うことで、所望の平均粒径を有する固体電解質スラリを得る。このとき、ビーズミル、湿式ジェットミル、各種混錬機、高圧ホモジナイザーなどを用いることができ、粒度分布の調整と分散とを同時に行うことができる観点からビーズミルを用いることが好ましい。得られた固体電解質スラリにバインダを添加して固体電解質ペーストを得る。得られた固体電解質ペーストを塗工することで、グリーンシートを作製することができる。塗工方法は、特に限定されるものではなく、スロットダイ方式、リバースコート方式、グラビアコート方式、バーコート方式、ドクターブレード方式などを用いることができる。湿式粉砕後の粒度分布は、例えば、レーザ回折散乱法を用いたレーザ回折測定装置を用いて測定することができる。
【0093】
(電極層用ペースト作製工程)
次に、上述の第1電極層11および第2電極層21の作製用の電極層用ペーストを作製する。例えば、電極活物質および固体電解質材料をビーズミル等で高分散化し、セラミックス粒子のみからなるセラミックスペーストを作製する。また、高分散させすぎないように作製したカーボン粒子を含むカーボンペーストを作製し、セラミックスペーストとカーボンペーストとをよく混合してもよい。カーボン粒子として、例えば、カーボンブラックなどを用いることができる。
【0094】
(集電体用ペースト作製工程)
次に、上述の第1集電体層12および第2集電体層22の作製用の集電体用ペーストを作製する。例えば、Pdの粉末、バインダ、分散剤、可塑剤などを水あるいは有機溶剤に均一分散させることで、集電体用ペーストを得ることができる。
【0095】
(積層工程)
まず、電極層用ペーストおよび集電体用ペーストをグリーンシートの両面に印刷する。印刷の方法は、特に限定されるものではなく、スクリーン印刷法、凹版印刷法、凸版印刷法、カレンダロール法などを用いることができる。薄層かつ高積層の積層デバイスを作製するにはスクリーン印刷がもっとも一般的と考えられる一方、ごく微細な電極パターンや特殊形状が必要な場合はインクジェット印刷を適用する方が好ましい場合もある。
【0096】
(焼成工程)
次に、得られた積層体を焼成する。電極層用ペーストに含まれるカーボン材料の消失を抑制する観点から、焼成雰囲気の酸素分圧に上限を設けることが好ましい。具体的には、焼成雰囲気の酸素分圧を2×10-13atm以下とすることが好ましい。一方、リン酸塩系固体電解質の融解を抑制する観点から、焼成雰囲気の酸素分圧に下限を設けることが好ましい。具体的には、焼成雰囲気の酸素分圧を5×10-22atm以上とすることが好ましい。このように酸素分圧の範囲を定めることで、カーボン材料の消失およびリン酸塩系固体電解質の融解を抑制することができる。焼成雰囲気の酸素分圧の調整手法は、特に限定されるものではない。
【0097】
その後、積層体60の各側面に金属ペーストを塗布し、焼き付ける。それにより、第1外部電極40a~第4外部電極40dを形成することができる。あるいは、スパッタにより第1外部電極40a~第4外部電極40dを形成してもよい。形成した電極にめっき処理を施すことで、第1外部電極40a~第4外部電極40dを形成してもよい。
以上により、全固体電池の基本構造が完成する。
【符号の説明】
【0098】
10 第1電極
10a 第1引出部
10b 第3引出部
11 第1電極層
12 第1集電体層
20 第2電極
20a 第2引出部
20b 第4引出部
21 第2電極層
22 第2集電体層
30 固体電解質層
40a~40d 第1~第4外部電極
60 積層体
60a~60d 第1~第4側面
60x、60y 側面
70 配線基板
71、72 端子
100 全固体電池
101~103 第1~第3全固体電池
111~114 第1~第4全固体電池
115、300 全固体電池
121~123 第1~第3全固体電池
200、201、210、220、230 電池モジュール