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  • 特許-工作機械の高精度化が可能な調整方法 図1
  • 特許-工作機械の高精度化が可能な調整方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】工作機械の高精度化が可能な調整方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/404 20060101AFI20240207BHJP
   B23Q 17/22 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
G05B19/404 G
B23Q17/22 E
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019183140
(22)【出願日】2019-10-03
(65)【公開番号】P2021060673
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000174987
【氏名又は名称】三井精機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098279
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 聖
(72)【発明者】
【氏名】浅井 岳見
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-065625(JP,A)
【文献】特開2017-067448(JP,A)
【文献】特開2018-088250(JP,A)
【文献】特開2000-099119(JP,A)
【文献】特開2012-208937(JP,A)
【文献】特表2003-523567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18 - 19/46
B23Q 15/00
B23Q 17/00 - 17/24
G05D 3/00 - 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X-Y-Z3軸と、更に該X-Y-Z3軸の各々平行な直線軸を有する工作機械か、又は、X-Y-Z3軸と回転軸を有し、更に該回転軸の回転により当該直線軸の送り方向を前記X-Y-Z3軸のうちの何れか1軸平行にできる直線軸を有する工作機械の調整方法において、前記直線軸の設定位置(入力)と変位(出力)の関係を前記工作機械とは別の校正装置で校正し、送りの位置指令と変位の関係の線形性をソフトウェアにより改善させている前記工作機械の調整方法であって、前記線形性の校正のため変位(出力)を校正装置で読み取ることができるように構成し、前記X-Y-Z3軸のうち校正する1軸を選び該1軸を評価対象とし、直線軸各位置の設定(入力)と変位(出力)の関係の読み取りを行うことを1回の測定と捉えた場合の測定を2回行い、該2回の測定について1回目と2回目で評価対象と平行または回転により平行にした軸の位置をわずかに変更し、変更したわずかな差は1回目と2回目で共通する測定する範囲に亘って一定であるはずであるのにずれていないかを以て校正装置の側の非線形性まで校正し、且つ長周期の成分についてはどちらか一方の評価で2回のうち片方しか全体に亘って評価をしない場合には全体に亘って評価をした側を使用し、レーザ校正器やリニアスケールにあっては、該レーザ校正器やリニアスケールの内挿前の信号周期の数倍程度まで、また基準ねじを用いた校正装置においては基準ねじの1周あたりの送りの数倍程度までの長さを短周期とし、該短周期の成分については2回の評価から推定される校正装置周期的非線形性を考慮した補正値を作成することを特徴とする工作機械の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の高精度化が可能な調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、後述する図1に示すような工作機械(研削盤)が実用化されている。即ち、直線X軸、Y軸およびZ軸を有し、Z軸と平行に冗長なW軸を有する。直線U軸は直線Z軸によりX-Y面との距離を調整できるし、旋回C軸によりX-Y面と平行、Z軸と直角を維持した方向を設定することが出来る。
X、Y、Z、W、C、Uのどの軸についても図示しないが、モータ内蔵のパルスコーダもしくは別置きのリニアスケールやロータリエンコーダなどの位置検出の仕組みを有しているか、パルスモータのような位置制御の仕組みを有しており、制御器の指令に合わせて工具としての砥石の位置を変更できるようになっている。
この種の工作機械において、制御器には、プロービング装置が接続される(例えば、特許文献1参照)。このプロービング装置が接触を検知した瞬間に制御器に信号を挙げ、それを受けた制御器は送りを即座に停止させる機能を有している(以降、このような機能をスキップ機能と呼ぶ)。このスキップ機能で停止させた場合には停止位置を取得することが出来き、この停止位置から形状を評価することが出来る。複数のポイントで測定を行いその差から寸法を評価するということが行われる(例えば、特許文献2参照)。
一方、先に述べた位置検出の仕組みはリニアスケールやロータリエンコーダなど多くの種類があるが、位置制御の仕組みとしては、送りねじ(親ねじ)の回転角度までしか検出・制御に使用しないオープン・ループやセミクローズド・ループという制御と位置まで検出し制御にしようするフルクローズドループ制御がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-007822号公報
【文献】特開2003-311535号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】幾何学量センサのその場自律校正法の研究(清野他、 精密工学会誌 Vol.63、No.10、1997、1417-21頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
送りねじやリニアスケールの品質や組み付けの具合により入力となる位置指令と出力となる変位の関係が非線形になる場合が多い。特に送りねじについては周期的な偏差が残りやすい。また、リニアスケールについても細かく見るとスリット・刻線などを組み合わせて変位に応じて周期的な信号レベル変化を生じさせて、補間して分解能を確保している場合が多く周期的な偏差は完全に避けられるものではない。
これら非線形性は光の干渉を利用した校正機もしくは基準スケールを用いて校正を行って使うことも多いが、この校正基準自体も周期的非線形成分を有していることは注意を要する点である。
【0006】
本発明の目的は、工作機械の高精度化が可能な調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、工作機械の高精度化が可能な製造方法又は調整方法について、鋭意研究した結果、その方法として、X-Y-Z3軸と、更に該X-Y-Z3軸の各々平行な直線軸を有する工作機械か、又は、X-Y-Z3軸と回転軸を有し、更に該回転軸の回転により当該直線軸の送り方向を前記X-Y-Z3軸のうちの何れか1軸平行にできる直線軸を有する工作機械の調整方法において、前記直線軸の設定位置(入力)と変位(出力)の関係を前記工作機械とは別の校正装置で校正し、送りの位置指令と変位の関係の線形性をソフトウェアにより改善させている前記工作機械の調整方法であって、前記線形性の校正のため変位(出力)を校正装置で読み取ることができるように構成し、前記X-Y-Z3軸のうち校正する1軸を選び該1軸を評価対象とし、直線軸各位置の設定(入力)と変位(出力)の関係の読み取りを行うことを1回の測定と捉えた場合の測定を2回行い、該2回の測定について1回目と2回目で評価対象と平行または回転により平行にした軸の位置をわずかに変更し、変更したわずかな差は1回目と2回目で共通する測定する範囲に亘って一定であるはずであるのにずれていないかを以て校正装置の側の非線形性まで校正し、且つ長周期の成分についてはどちらか一方の評価で2回のうち片方しか全体に亘って評価をしない場合には全体に亘って評価をした側を使用し、レーザ校正器やリニアスケールにあっては、該レーザ校正器やリニアスケールの内挿前の信号周期の数倍程度まで、また基準ねじを用いた校正装置においては基準ねじの1周あたりの送りの数倍程度までの長さを短周期とし、該短周期の成分については2回の評価から推定される校正装置周期的非線形性を考慮した補正値を作成することを見出した。
【0008】
即ち、本発明の様相によれば、X-Y-Z3軸と、更に該X-Y-Z3軸の各々平行な直線軸を有する工作機械か、又は、X-Y-Z3軸と回転軸を有し、更に該回転軸の回転により当該直線軸の送り方向を前記X-Y-Z3軸のうちの何れか1軸平行にできる直線軸を有する工作機械の調整方法において、前記直線軸の設定位置(入力)と変位(出力)の関係を前記工作機械とは別の校正装置で校正し、送りの位置指令と変位の関係の線形性をソフトウェアにより改善させている前記工作機械の調整方法であって、前記線形性の校正のため変位(出力)を校正装置で読み取ることができるように構成し、前記X-Y-Z3軸のうち校正する1軸を選び該1軸を評価対象とし、直線軸各位置の設定(入力)と変位(出力)の関係の読み取りを行うことを1回の測定と捉えた場合の測定を2回行い、該2回の測定について1回目と2回目で評価対象と平行または回転により平行にした軸の位置をわずかに変更し、変更したわずかな差は1回目と2回目で共通する測定する範囲に亘って一定であるはずであるのにずれていないかを以て校正装置の側の非線形性まで校正し、且つ長周期の成分についてはどちらか一方の評価で2回のうち片方しか全体に亘って評価をしない場合には全体に亘って評価をした側を使用し、レーザ校正器やリニアスケールにあっては、該レーザ校正器やリニアスケールの内挿前の信号周期の数倍程度まで、また基準ねじを用いた校正装置においては基準ねじの1周あたりの送りの数倍程度までの長さを短周期とし、該短周期の成分については2回の評価から推定される校正装置周期的非線形性を考慮した補正値を作成することを特徴とする工作機械の調整方法が得られる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高精度化が可能な工作機械の調整方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明が適用される工作機械(研削盤)の基本構成を示す図である。
図2図1に示した工作機械(研削盤)におけるU軸送り装置と砥石軸周辺の拡大図である。
図3図1に示した工作機械(研削盤)の制御系の概略を示すブロック図である。
図4】本発明の調整方法が適用される工作機械(研削盤)の基本構成を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る工作機械の高精度化が可能な調整方法の工程を示すフローチャートである。
図6】本発明の実施形態に係る工作機械の調整方法において、長周期成分の出方の例と、短周期成分の出方の例を、それぞれ入力に対する出力の変化を表すグラフと共に示す図であり、(a)は、長周期成分の出方の例を、入力(変位)に対する出力(変位表示)の変化で表すグラフであり、(b) は、短周期成分の出方の例を、入力(変位)に対する出力(非線形)の変化で表すグラフである。
図7】本発明の実施形態の変形例に係る工作機械の調整方法を説明するための図であり、(a)は、スケールの長手方向の数箇所で評価箇所を設ける例を示す図であり、(b) は、位相オフセットλ(x)の出方を示す例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明が適用される研削盤の一例を示す斜視図、図2は、そのU軸送り装置と砥石軸周辺の拡大図である。本発明が適用される研削盤10は、図1に示すように、ベッド12上にテーブル送り装置36およびテーブル30がレール16を介してY軸方向(前後方向)へ移動可能に支持されている。コラム14はベッド12に固定されているが、前述の通り、送り装置36との間にはレール16に沿った方向に相対運動を与えることができる。ベッド12の後部には図示しない送り装置36移動用モータが配設され、このモータにより図示しないボールネジ等を介してテーブル送り装置36がレール16に沿って前後移動されるようになっている。コラム14にはヘッド18がW軸方向に移動可能(昇降可能)に支持され、そのヘッド18の先端には砥石軸20が設けられており、砥石軸20の先端には、砥石100(図2参照)が取付けられる。コラム14の上部には図示しないヘッド昇降用モータが配設され、このモータにより図示しないボールネジ等を介してヘッド18が昇降されるようになっている。ヘッド18の後部には砥石軸(回転用)モータ24(図2参照)が配設され、このモータにより砥石軸20が回転されるようになっている。ヘッド昇降用モータには、図示しない計測手段を構成するエンコーダが付設される。このほかの砥石軸を除く直線軸および回転軸には図示しない場合にもエンコーダおよびモータを備え送り量ないし回転量が算出・制御できるようになっている。このエンコーダから出力されるデータによりヘッド18の昇降量、及び図示しないワークに対する切り込み量が算出される。W軸方向に平行にZ軸が設けられており、W軸のヘッドの動き、C軸回転およびU軸直線運動を妨げることなくZ軸運動を与えることができる。
【0012】
先に述べた通り、ベッド12上にはレール16を介してX軸送り装置36が載っている。このX軸送り装置36はレール16の方向に沿ってY方向に前後直線運動できるように構成されている。このX軸送り装置36の上に更に図示しないレールを介してテーブル30が支持されている。このテーブル30はX軸送り装置36に対して左右方向に直線運動できるように構成されている。その上面には図示しないワークが着脱可能に設置固定されるようになっている。当然ながらベッド12にはX軸送り装置36を移動する用のモータが配設され、このモータにより図示しないボールネジ等を介してX軸送り装置36がレール16に沿って移動されるようになっている。テーブル30についても同様に図示しないモータおよびボールネジ等を介してX軸送り装置36上を動くようになっている。そして、上記砥石軸回転用モータ24により砥石軸20が回転された状態で、上記ヘッド昇降用モータによりヘッド18(砥石軸20)が下降されて、砥石軸20の先端に取り付けられた砥石100がテーブル30上のワークの面に接触させられる。テーブル30は上述の2つのモータでX-Y方向に自由に可動させられる。これにより、ワークの表面が砥石100にて研削されるようになっている。
【0013】
図1に示す工作機械(研削盤)10は、以上に述べたように、少なくともX-Y-Zの三軸の同時制御ができるCNC制御の工作機械(研削盤)であり、更に、砥石軸20という回転軸と軸方向が平行な駆動軸(回転軸又は直線駆動軸)を有している。即ち、工作機械(研削盤)10は、ヘッド18の下部にU軸送り装置40を有しており、このU軸送り装置40は、砥石軸20と、その上部の円盤体27を含む直線送り機構であり、砥石軸20とその上部の円盤体27を、その時のC軸の角度位置に応じて所定のストロークの範囲内で直線移動させる装置であり、この直線移動方向をU軸(方向)と定義している。即ち、図1に示す工作機械(研削盤)10では、ヘッド18は、Z軸方向に直線移動(上下移動)できる。Z軸との区別のため、W軸送り装置と呼称する。また、ヘッド18に対して、U軸送り装置40をZ軸直線移動とZ軸周り旋回(C軸と呼称する)に旋回させることができる。U軸送り装置40は、砥石軸20をU軸方向に直線移動させることができる。図2及び図3を参照して、工作機械(研削盤)10の駆動軸制御を更に具体的に述べれば、工作機械(研削盤)10では、U軸の直線送り機構はC軸の回転側に載っている。砥石軸(U軸)の送り指令によって、U軸送り装置40をU軸の方向に沿って直線移動させることができる。C軸の回転指令によって砥石軸の中心ごと回転する。更に、このC軸装置は、Z軸装置で鉛直方向に直線移動させることができる。
【0014】
図3は、図1に示したジグ研削盤の制御系の概略を示すブロック図である。本発明に係るジグ研削盤は、制御系として、制御装置300と、入出力装置310と、各軸モータ320及びそれぞれのモータドライバ330、砥石回転モータ102Aと砥石モータインバータ102invを有している。制御装置300は、コンピュータ数値制御部(CNC)302と、プログラマブルコントローラ304と、I/O(入出力)モジュール306を有している。本発明に係るジグ研削盤の制御系には、入出力装置310として、キーボード、各種スイッチ、温度センサ等と、スキップ信号に関わるツールセッタ、AEセンサ等も有している。
【0015】
前述したように、本発明者は、高精度化が可能な工作機械の製造又は調整方法について、鋭意研究した結果、その方法として、X-Y-Z3軸を有し、これと各々平行な直線軸または回転軸によってどれか1軸と平行に出来る直線軸を有し、これら直線軸の設定位置(入力)と変位(出力)の関係を別の校正装置で校正し、送りのピッチ精度をソフトウェアにより改善させていることを特徴とする工作機械であって、このピッチ精度の校正のための測定を2回行い1回目と2回目で評価対象と平行または平行にした軸の位置をわずかに変更し校正装置の側の非線形性まで校正し、かつ長周期の成分についてはどちらか一方の評価を使用し、短周期の成分については2回の評価から推定される校正器の非線形性の考慮した補正を作成することを見出した。
【0016】
図4は、本発明の調整方法が適用される工作機械(研削盤)の基本構成を示す図である。即ち、まず本発明の調整方法が適用される工作機械(研削盤)は、図1に示した工作機械(研削盤)と基本構成は略同様である(その基本構成は図1を参照)。即ち、図4にも示すように、X-Y-Zの3軸を有し、これと各々平行な直線軸または回転軸によってどれか1軸と平行に出来る直線軸を有し、これら直線軸の設定位置(入力)と変位(出力)の関係を別の校正装置(システム)92で校正し、送りのピッチ精度をソフトウェアにより改善させている工作機械である。尚、図4では、リニアスケール94でX軸を校正する例を示しており、リニアスケール検出ヘッド96を備えているが、レーザ干渉システムを用いても周期性が現れるのは同様である。そして、本発明の製造方法又は調整方法では、上記のような工作機械(研削盤)において、このピッチ精度の校正のための測定を2回行い、1回目と2回目で評価対象と平行または平行にした軸の位置をわずかに変更し校正装置の側の非線形性まで校正し、かつ長周期の成分についてはどちらか一方の評価を使用し、短周期の成分については2回の評価から推定される校正器の非線形性の考慮した補正を作成する。
【0017】
以下、本発明の調整方法の要部について、図5乃至図7を参照して説明する。図5は、本発明の実施形態に係る工作機械の高精度化が可能な調整方法の工程を示すフローチャートである。まず、基準尺を校正基準として位置決めの偏差を評価する(1回目)(ステップS101)。続いて、校正尺をδオフセットする(ステップS102)。X軸を評価する場合には、U軸の方向をX軸と平行になるようにしておく。Y軸を評価する場合には、U軸の方向をY軸と平行になるようにしておく。U軸を評価する場合には、X軸を平行にしておく。Z軸とW軸は元から平行である。オフセットは平行な軸のうち、評価しない側の軸で行う。更に、今度は、校正尺を基準として位置決めの偏差を評価する(2回目)(ステップS103)。繰り返し性の範囲内で1回目と2回目は同じ動きとなるはずである。しかし、オフセットを与えたため、出力として現れる範囲が異なる。基準尺側の線形性が高ければ、出力はオフセットするだけであるが、非線形性の分だけ出力にオフセット以外の差が生じる。上述した非特許文献1では、このようにオフセットさせた同じ入力をある測長器の入力として与えて出力を比較することで校正を行うことができることを示している。但し、2回も細かいピッチで評価をするには時間を要するので、その評価は短い範囲に留める。そして、長周期については、1回目と2回目どちらか全長の評価を行った方の評価を用いてピッチ補正を行う(ステップS104A)。一方、短周期については、1回目と2回目で非線形性を評価し、周期関数として近似して全域に亘ってピッチ補正を重畳する(ステップS104B)。ここで、短周期と長周期の境目は、光学式スケール・レーザ干渉式測長システム・校正器の親ねじ等、基本周期が現れやすいシステムを使う場合に、概ね、その周期より小さいものを短周期とし、その周期より大きいものを長周期とする(定義する)。仮に、1回目を全長に亘る評価を行う測定回とすると、この回では測定ピッチを長めに取る評価と2回目で評価する範囲については短ピッチで細かく測定を行う。例えば、内挿入前の号周期8マイクロメートルで全長1メートルのスケールを信号周期2マイクロメートルの基準尺で評価する場合、内挿入前の信号周期がどちらもマイクロメートルのオーダなので、16マイクロメートルや24マイクロメートル等の範囲内を1マイクロメートルや0.5マイクロメートルピッチで局所短ピッチ測定評価すると共に、全長に亘っては5ミリメートルや10ミリメートルピッチ等大きめの間隔で評価する。求める補正のオーダによっては、50ミリメートルピッチ等でも構わない。1回目の評価は大き目のピッチで行う全長に亘る評価と、2回目での局所的な評価範囲については局所的な評価の両方を行い、2回目の評価では局所的な評価のみでよい。
【0018】
図6に、本発明の実施形態に係る工作機械の調整方法において、長周期成分の出方の例と、短周期成分の出方の例を、それぞれ入力に対する出力の変化を表すグラフと共に示す。図6(a)は、長周期成分の出方の例を、入力(変位)に対する出力(変位表示)の変化で表すグラフであり、図6(b) は、短周期成分の出方の例を、入力(変位)に対する出力(非線形)の変化で表すグラフである。尚、図6(b)において、横軸の間隔lは、スケールの内挿前の信号周期(もしくは親ねじのリード)である。図6(a)(b)に示すように、長周期成分の出方に比べ、短周期成分の出方は、非線形であるが、略周期的な成分が主体である。そこで、このように略周期的な成分が主体であることを確認し、全長に亘って、これが続くと仮定し、周期関数近似の数式(1)を用いる。
【数1】
そして、スケールの内挿前の信号周期の整数倍だけの1回目、2回目の評価を上記非特許文献1の方法で処理し、内挿の偏差を推定する。この周期的な偏差の傾向が全長に亘って分布していると考え、周期的なピッチ補正を行うようにする(長周期のピッチ補正に重畳する)。
【0019】
ところで、スケールの内挿前の信号周期の整数倍だけの周期的な偏差の傾向が全長に亘って分布していると考えて周期的なピッチ補正だけを行うと、特に評価基準として高分解能のスケールをした場合は、端の部分では位相がずれる場合がある。図7は、本発明の実施形態の変形例に係る工作機械の調整方法を説明するための図であり、(a)は、スケールの長手方向の数箇所で評価箇所を設ける例を示す図であり、(b) は、位相オフセットλ(x)の出方を示す例である。図7(a)(b)に示すように、本実施形態の変形例として、例えば、スケールの長手方向のA、B、C、D、E、Fなど数箇所で位相オフセットλ(x)を、λをいくつにした時に、最も非線形性が小さくなるかを基準に評価し、λ(x)を決める。これを元に、補正の位相を調節するようにすれば良い。この補正の位相を調節するには、修正補正式として以下の数式(2)を用い、これを長周期のピッチ補正に重畳するようにすれば良い。
【数2】
以上のように、本発明の実施形態又はその変形例によれば、工作機械の高精度化が可能な調整方法を得ることができる。
【符号の説明】
【0020】
10 研削盤、 12 ベッド、 14 コラム、 16 レール、18 ヘッド、 20 砥石軸、 24 砥石軸(回転用)モータ、30 テーブル、36 テーブル送り装置、 40 U軸送り装置92 校正装置(システム)、94 リニアスケール、96 リニアスケール検出ヘッド、 100 砥石、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7