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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】鉄道車両用座席
(51)【国際特許分類】
   B61D 33/00 20060101AFI20240207BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20240207BHJP
   B60N 2/16 20060101ALI20240207BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
B61D33/00 A
B60N2/06
B60N2/16
B60N2/22
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019186067
(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公開番号】P2021059283
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】521475989
【氏名又は名称】川崎車両株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 朋久
(72)【発明者】
【氏名】松本 武史
(72)【発明者】
【氏名】三木 剛
(72)【発明者】
【氏名】白木 直樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 倫子
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-206638(JP,A)
【文献】米国特許第06352309(US,B1)
【文献】独国特許出願公開第04040036(DE,A1)
【文献】米国特許第06991285(US,B1)
【文献】特開2007-216858(JP,A)
【文献】特開2016-137188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 33/00
B60N 2/00
B64D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の客室に設けられた脚台に設置される座席であって、
前記脚台に固定されるシェル座部と、前記シェル座部の後側から上方に延びたシェル背部とを有するシェルと、
前記シェル座部に支持される座フレームと、
前記座フレームを上方から覆うように前記座フレームに取り付けられるシートクッションと、
前記シェル背部を前側から覆う少なくとも1つのシートバックと、
前記シェル背部に対して前記シートバックを接続する少なくとも1つの取付機構と、を備え、
前記シートバックは、前記取付機構の被係合部に対して着脱自在に係合する第1係合部と、前記座フレームの被係合部に対して着脱自在に係合する第2係合部とを有し、
前記第1係合部は、前記取付機構の前記被係合部に係合した状態から前方に引っ張ることで、前記取付機構の前記被係合部から離脱するように構成されており、
前記第2係合部は、前記座フレームの前記被係合部に係合した状態から上方に引っ張ることで前記座フレームの前記被係合部から離脱するように構成されている、鉄道車両用座席。
【請求項2】
前記第1係合部および前記取付機構の前記被係合部のいずれか一方は、前後方向に開口した凹部を有し、
前記第1係合部および前記取付機構の前記被係合部のいずれか他方は、前記凹部に対して前後方向に圧入される圧入部を有し、
前記第2係合部および前記座フレームの前記被係合部のいずれか一方は、上下方向に開口した凹部を有し、
前記第2係合部および前記座フレームの前記被係合部のいずれか他方は、前記凹部に対して上下方向に圧入される圧入部を有する、請求項に記載の鉄道車両用座席。
【請求項3】
前記シートバックは、その輪郭に沿った形状を有する枠体と、前記枠体を覆うように前記枠体に取り付けられて背凭れ面を形成する表皮とを有し、
前記第1係合部および前記第2係合部は、前記枠体に設けられており、
前記表皮は、前記第1係合部および前記第2係合部を露出させる形状を有する、請求項1または2に記載の鉄道車両用座席。
【請求項4】
鉄道車両の客室に設けられた脚台に設置される座席であって、
前記脚台に固定されるシェル座部と、前記シェル座部の後側から上方に延びたシェル背部とを有するシェルと、
前記シェル座部に支持される座フレームと、
前記座フレームを上方から覆うように前記座フレームに取り付けられるシートクッションと、
前記シェル背部を前側から覆う少なくとも1つのシートバックと、
前記シェル背部に対して前記シートバックを接続する少なくとも1つの取付機構と、を備え、
前記シートバックは、前記取付機構の被係合部に対して着脱自在に係合する第1係合部と、前記座フレームの被係合部に対して着脱自在に係合する第2係合部とを有し、
前記第1係合部および前記取付機構の前記被係合部のいずれか一方は、前後方向に開口した凹部を有し、
前記第1係合部および前記取付機構の前記被係合部のいずれか他方は、前記凹部に対して前後方向に圧入される圧入部を有し、
前記第2係合部および前記座フレームの前記被係合部のいずれか一方は、上下方向に開口した凹部を有し、
前記第2係合部および前記座フレームの前記被係合部のいずれか他方は、前記凹部に対して上下方向に圧入される圧入部を有し、
前記シートバックは、その輪郭に沿った形状を有する枠体と、前記枠体を覆うように前記枠体に取り付けられて背凭れ面を形成する表皮とを有し、
前記第1係合部および前記第2係合部は、前記枠体に設けられており、
前記表皮は、前記第1係合部および前記第2係合部を露出させる形状を有し、
前記第1係合部又は前記第2係合部の少なくとも1つは、前記圧入部としての前記枠体の一部である、鉄道車両用座席。
【請求項5】
前記シートバックの前面および背面は、前方に凸なアーチ形状を有する、請求項1乃至のいずれか1項に記載の鉄道車両用座席。
【請求項6】
前記シェル座部に対して前記座フレームを前後変位自在に接続する少なくとも1つの前後スライド機構を更に備え、
前記シェル背部は、前記シェル座部に連続して前記シェル座部に一体に形成されており、
前記取付機構は、前記シェル背部に対して前記シートバックの上部を上下変位自在に接続する上下スライド機構である、請求項1乃至のいずれか1項に記載の鉄道車両用座席。
【請求項7】
前記少なくとも1つのシートバックは、左右に並んで配置された複数のシートバックを含み、
前記少なくとも1つの取付機構は、前記シェル背部に対して前記複数のシートバックをそれぞれ取り付ける複数の取付機構を含み、
前記複数のシートバックは、1つの前記シェル背部で支持されている、請求項1乃至のいずれか1項に記載の鉄道車両用座席。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用座席に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鉄道車両用の座席が開示されている。この座席は、リクライニング機構を備え、シートバックが下部を回動支点として傾動することでシートバックの傾斜角度を調節できるようになっている。シートバックは、その表皮で覆われた内部に荷重を負担する基材(基板)が設けられた構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-206638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シートバックはボルト等でフレームに固定されており、シートバックの背面にはボルト等を隠すカバーが取り付けられる等している。そのため、メンテナンス時にシートバックを取り外す場合には、複数の工具を用いて、各種部品を取り外す作業をした後に、シートバックのボルトを外す必要があり、シートバックの交換が容易でない。
【0005】
そこで本発明は、鉄道車両用座席において、工具を用いることなく誰でもシートバックを容易に交換できるようにして、メンテナンス性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る鉄道車両用座席は、鉄道車両の客室に設けられた脚台に設置される座席であって、前記脚台に固定されるシェル座部と、前記シェル座部の後側から上方に延びたシェル背部とを有するシェルと、前記シェル座部に支持される座フレームと、前記座フレームを上方から覆うように前記座フレームに取り付けられるシートクッションと、前記シェル背部を前側から覆う少なくとも1つのシートバックと、前記シェル背部に対して前記シートバックを接続する少なくとも1つの取付機構と、を備え、前記シートバックは、前記取付機構の被係合部に対して着脱自在に係合する第1係合部と、前記座フレームの被係合部に対して着脱自在に係合する第2係合部とを有する。
【0007】
前記構成によれば、従来のシートバックの基材の役目を果たすシェル背部がシートバックから分離して別に設けられ、第1および第2係合部の係合を解除するだけでシートバックを取り外すことができる構造であるため、工具を用いることなく誰でもシートバックを容易に交換可能となり、メンテナンス性を向上できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、鉄道車両用座席において、工具を用いることなく誰でもシートバックを容易に交換できるようにして、メンテナンス性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る鉄道車両用座席の斜視図である。
図2図1に示す鉄道車両用座席の分解斜視図である。
図3図1に示す鉄道車両用座席においてシートバックの一部とシートクッションとを除いた図である。
図4】シートバックの接続箇所を拡大して示す拡大側面図である。
図5】(A)は、図4のVA拡大図であり、(B)は、図4のVB拡大図である。
図6図1に示す鉄道車両用座席からシートバックの第1係合部を取り外した状態を示す図である。
図7図1に示す鉄道車両用座席からシートバックの第2係合部を取り外した状態を示す図である。
図8図1に示す前後スライド機構の後方斜視図である。
図9】前後スライド機構のスライド動作を示す側面図であり、(A)は座フレームが移動範囲における後端位置に位置する状態であり、(B)は座フレームが移動範囲における前端位置に位置する状態である。
図10図1に示す鉄道車両用座席のリクライニング動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る鉄道車両用座席1の斜視図である。鉄道車両用座席1は、鉄道車両の客室に設けられた脚台2に設置されるリクライニング可能な座席となっている。なお、以下の説明における方向の概念は、鉄道車両用座席1に着座した乗客の見る方向を基準とする。
【0012】
本実施形態では、鉄道車両用座席1は、二名の乗客が着座可能となっている。鉄道車両用座席1は、脚台2に固定されたシェル10と、左右方向に並ぶ2つのシートクッション3、左右方向に並ぶ2つのシートバック20、左右方向に並ぶ2つのヘッドレスト4を有する。シートクッション3、シートバック20およびヘッドレスト4は、シェル10に支持されており、それぞれ、鉄道車両用座席1に着座した乗客の尻部、背部および頭部を支える。
【0013】
図2は、鉄道車両用座席1の分解斜視図である。なお、図2で、シートクッション3、シートバック20およびヘッドレスト4は省略している。図2に示すように、シェル10は、シェル座部11、シェル背部12、および3つの肘掛部13a,13b,14を有する。シェル座部11は、水平に広がる略板状をなしており、脚台2に固定される。
【0014】
シェル背部12は、シェル座部11に連続して一体に形成される。また、シェル背部12は、シェル座部11に連続してシェル座部11の後側から上方に延びる。より詳しくは、シェル背部12は、シェル座部11の後側の端縁部から上方に延びる略板状をなしている。シェル背部12の上部に、当該シェル背部12の上部を前方から覆うように2つのヘッドレスト4(図1参照)が取り付けられる。また、シェル背部12の背面に、2つの鉄道車両用テーブル5が左右方向に並ぶように取り付けられる。
【0015】
シェル座部11およびシェル背部12を左右方向両側から挟むように、鉄道車両用座席1の左右方向両端部に肘掛部13a,13bが位置する。肘掛部13a,13bは、シェル座部11とシェル背部12と一体に形成される。肘掛部13a,13bは、シェル背部12の下部とシェル座部11の後部とに接続されている。シェル10は、繊維強化樹脂部材と、繊維強化樹脂部材に結合される補強部材とを用いて形成されている。
【0016】
また、シェル背部12の前面における左右方向中央に、肘掛部14が接続されている。具体的には、シェル背部12の前面における左右方向中央には、接続部15が前方に突き出るように設けられている(図3および4も参照)。肘掛部14の基端部が、接続部15を通過するように左右方向に延びる軸を中心に回動可能に接続部15に接続されている。そして、肘掛部14は、2つのシートバック20の間を通過するようにシェル背部12から前方に延びる展開位置と、当該展開位置から上方に回動して2つのシートバック20の間の後側に格納された格納位置との間で自由に回動可能となっている。
【0017】
シェル座部11には、左右方向に並ぶ2つの座フレーム30が支持されている。各座フレーム30は、平面視して略矩形状に形成されており、左右方向に延びる前フレーム部31と、前フレーム部31の後方で左右方向に延びる後フレーム部32と、前フレーム部31および後フレーム部32の左端部同士をつなぐ左フレーム部33と、前フレーム部31および後フレーム部32の右端部同士をつなぐ右フレーム部34とを有する。なお、後フレーム部32には、後述する被係合部35が設けられている。2つの座フレーム30の各々に、当該座フレーム30を上方から覆うようにシートクッション3が取り付けられる。
【0018】
また、シェル背部12の前面における肘掛部13a,13bより上方には、左右方向に並ぶ2つの取付機構40が設けられている。2つの取付機構40は、それぞれ、シェル背部12に対して2つのシートバック20を接続する。
【0019】
図3は、鉄道車両用座席1においてシートバック20の一部とシートクッション3とを除いた図である。また、図4は、シートバック20の接続箇所を拡大して示す拡大側面図である。シートバック20の前面および背面は、側面視で前方に凸なアーチ形状を有する(図1も参照)。シートバック20は、その輪郭に沿った形状を有する枠体21と、枠体21を覆うように枠体21に取り付けられて背凭れ面を形成する表皮22(図1参照)とを有する。なお、図3および4では、シートバック20の表皮22や肘掛部14などを省略している。
【0020】
枠体21の上部は、取付機構40によりシェル背部12に対して取り付けられ、枠体21の下部は、座フレーム30の後部に取り付けられる。具体的には、シートバック20は、第1係合部23および第2係合部24を有しており、これら第1係合部23および第2係合部24は、それぞれ、取付機構40の被係合部41および座フレーム30の被係合部35と係合する。
【0021】
図5(A)は、図4のVA拡大図である。第1係合部23は、枠体21の上部に位置しており、取付機構40の被係合部41に対して着脱自在に係合する。第1係合部23は、取付機構40の被係合部41に係合した状態から前方に引っ張ることで、取付機構40の被係合部41から離脱するように構成されている。本実施形態では、第1係合部23は、前後方向に開口した凹部23aを有しており、取付機構40の被係合部41は、第1係合部23の凹部23aに対して前後方向に圧入される圧入部41aを有する。圧入部41aが凹部23aに前方から圧入されることで、第1係合部23が被係合部41と係合する。
【0022】
また、第1係合部23は、取付機構40の被係合部41に係合した状態で、被係合部41に対して回動するように構成されている。具体的には、圧入部41aは、図5(A)に示すように断面視して略真円状のアルミ製の丸パイプにより形成されており、凹部23aにおける凹面は、圧入部41aの外周面に沿った形状を有している。
【0023】
図5(B)は、図4のVB拡大図である。第2係合部24は、枠体21の下部に位置している。第2係合部24は、座フレーム30の被係合部35に係合した状態から上方に引っ張ることで座フレーム30の被係合部35から離脱するように構成されている。本実施形態では、第2係合部24は、枠体21の一部である。また、座フレーム30の後フレーム部32には、左右方向に間隔をあけて2つの被係合部35が設けられており、これら被係合部35が、それぞれ、上下方向に開口した凹部35aを有している。2つの被係合部35の各々に対して、第2係合部24としての枠体21の一部(圧入部)が圧入されて、着脱自在に係合している。このような構成により、シートバック20はシェル背部12に対して容易に着脱できるとともに、乗客の背中を安定的に保持できる。
【0024】
また、第2係合部24は、座フレーム30の被係合部35に係合した状態で、被係合部35に対して回動するように構成されている。具体的には、第2係合部24としての枠体21の一部は、図5(B)に示すように断面視して略真円状のアルミ製の丸パイプにより形成されており、凹部35aにおける凹面は、当該枠体21の一部の外周面に沿った形状を有している。
【0025】
鉄道車両用座席1からシートバック20を取り外す手順を、図6および7を参照して説明する。まず、図6に矢印で示すように、作業者がシートバック20の上部を前方に引っ張ることにより、第1係合部23が取付機構40の被係合部41から離脱する。次に、図7に矢印で示すように、作業者がシートバック20の下部を上方に引っ張ることにより、第2係合部24が座フレーム40の被係合部35から離脱する。このように、作業者は、シートバック20を前方に引っ張ることによる取付機構40の被係合部41からの第1係合部23の離脱と、シートバック20を上方に引っ張ることによる座フレーム40の被係合部35からの第2係合部24の離脱を行うだけの作業で、シートバック20を取り外すことができる。また、鉄道車両用座席1にシートバック20を取り付ける場合には、作業者は、シートバック20を下方に押し込むことで、各被係合部35の凹部に第2係合部24が係合し、次に、シートバック20を後方に押し込むことで、被係合部41に第1係合部23が係合し、鉄道車両用座席1にシートバック20を取り付ける
【0026】
また、シートバック20において、表皮22は、第1係合部23および第2係合部24を露出させる形状を有している。このため、シートバック20が簡素な構成となるため、シートバック20を薄型軽量化できる。
【0027】
上述した取付機構40は、シェル背部12に対してシートバック20の上部を上下変位自在に接続している。具体的には、取付機構40は、シェル背部12に固定されたレール42を有する。レール42は、被係合部41を上下方向に摺動自在に支持している。取付機構40は、本発明の「上下スライド機構」として機能する。また、本実施形態の鉄道車両用座席1は、シェル座部11に対して座フレーム30を前後変位自在に接続する2つの前後スライド機構50を備えている。
【0028】
図8は、前後スライド機構50の後方斜視図である。図9(A)および9(B)は前後スライド機構50のスライド動作を示す側面図であり、図9(A)は、座フレーム30が移動範囲における後端位置P1に位置する状態であり、図9(B)は座フレーム30が移動範囲における前端位置P2に位置する状態である。2つの前後スライド機構50は、座フレーム30における左フレーム部33の真下と右フレーム部34の真下にそれぞれ設けられている。前後スライド機構50は、所定の後端位置P1と所定の前端位置P2との間で座フレーム30を前後変位させる。各前後スライド機構50は、第1スライド部51と、第1スライド部51の前側に配置された第2スライド部52とを有する。
【0029】
第1スライド部51は、シェル座部11に対して座フレーム30の後部を前後方向にスライドする。第1スライド部51は、第1レール61と第1ガイド62とを含む。第1レール61は、前下がりの傾斜となるように前後方向に延びており、シェル座部11の上面に固定されている。第1ガイド62は、第1レール61に前後方向に摺動自在に支持される。
【0030】
本実施形態では、第1スライド部51は、シェル座部11に対して座フレーム30を左右方向に延びる軸回りに回動可能に、座フレーム30の後部とシェル座部11とを連結している。本実施形態では、第1ガイド62が回動機構を備える。具体的には、第1ガイド62は、座フレーム30の後部に固定された固定ブラケット63と、第1レール61を摺動する摺動ブラケット64と、固定ブラケット63と摺動ブラケット64とを連結する連結ピン65とを有する。2つの前後スライド機構50の固定ブラケット63は、左フレーム部33の後端部および右フレーム部34の後端部にそれぞれ固定されている。また、固定ブラケット63は、座フレーム30から下方に突出している。また、摺動ブラケット64は、第1レール61に摺動自在に支持され、第1レール61から上方に突出している。第1レール61は、摺動ブラケット64のスライド範囲において摺動ブラケット64を離間不能に保持している。連結ピン65は、左右方向に延びており、摺動ブラケット64に対して固定ブラケット63を回動自在に連結する。
【0031】
第2スライド部52は、シェル座部11に対して座フレーム30の前部を前後方向にスライドする。第2スライド部52は、第2レール71と第2ガイド72とを含む。第2レール71は座フレーム30の下部に固定されている。より詳しくは、2つの前後スライド機構50のうちの一方の前後スライド機構50の第2レール71は、左フレーム部33の前端部から中央部にかけて延びるように、左フレーム部33の下部に固定されており、2つの前後スライド機構50のうちの他方の前後スライド機構50の第2レール71は、右フレーム部34の前端部から中央部にかけて延びるように、右フレーム部34の下部に固定されている。
【0032】
第2ガイド72は、シェル座部11の上面に固定されており、第2レール71を摺動自在に支持する。第2ガイド72は、第2レール71に対して離間可能となっている。具体的には、第2ガイド72は、正面視して上下方向に開口した凹溝を有し、この凹溝の底の面上で第2レール71が摺動する。このため、第2ガイド72が第2レール71に対して離間可能となっているため、第1スライド部51の連結ピン65を中心に座フレーム30が上方に回動可能となっている。なお、第2ガイド72の摺動面は、側面視して上に凸に緩やかに湾曲している。
【0033】
また、本実施形態では、前後スライド機構50は、図9(B)に示す前端位置P2にある座フレーム30の姿勢が、図9(A)に示す後端位置P1にある座フレーム30の姿勢よりも後方且つ下方に向けて傾斜するように構成されている。具体的には、図9(A)および9(B)に示す第1レール61は、前方且つ下方に向けて傾斜している。このため、座フレーム30が後端位置P1から前端位置P2へと移動するにつれて、第2レール71と第2ガイド72との接触位置の高さが維持されたまま、第1レール61と第1ガイド62との接触位置の高さが下方に移動する。このため、前端位置P2にあるときの座フレーム30の姿勢は、後端位置P1にあるときの座フレーム30の姿勢に比べて後ろ側に傾く。
【0034】
以上に説明したように、従来のシートバックの基材の役目を果たすシェル背部12がシートバック20から分離して別に設けられ、第1および第2係合部23,24の係合を解除するだけでシートバック20を取り外すことができる構造であるため、工具を用いることなく誰でもシートバック20を容易に交換可能となり、メンテナンス性を向上できる。
【0035】
また、本実施形態では、第1係合部23は、取付機構40の被係合部41に係合した状態から前方に引っ張ることで、取付機構40の被係合部41から離脱するように構成されており、第2係合部24は、座フレーム30の被係合部35に係合した状態から上方に引っ張ることで座フレーム30の被係合部35から離脱するように構成されている。このため、作業者は、シートバック20を前方および上方に引っ張るだけでシートバック20を取り外すことができる。
【0036】
また、本実施形態では、第1係合部23が、前後方向に開口した凹部を有し、取付機構40の被係合部41は、その凹部に対して前後方向に圧入される圧入部を有する。また、座フレーム30の被係合部35が、上下方向に開口した凹部を有し、第2係合部24は、凹部に対して上下方向に圧入される圧入部を有する。このため、作業者は、一定以上の力でシートバック20を引っ張るだけでシートバック20を簡単に取り外すことができる。
【0037】
また、本実施形態では、第2係合部24が圧入部としての枠体21の一部である。このため、シートバック20の枠体21自体が係合部として利用されるため、シートバック20の部品点数を削減できる。
【0038】
また、本実施形態では、シートバック20の前面が前方に凸なアーチ状であることでユーザがリラックスした姿勢をとることができると共に、シートバック20の背面も前方に凸なアーチ状であることでシートバック20の肉厚が低減され、シートバック20の軽量化を図ることができる。また、シートバック20が前方に凸なアーチ状であることで、ユーザの背中により負荷される後方荷重に対する強度が保たれ易く、シートバック20の補強の必要性を抑えることができる。
【0039】
また、本実施形態では、前後スライド機構50によりシェル座部11に対して座フレーム30が前後変位自在であり、また、取付機構40により、シェル背部12に対してシートバック20の上部を上下変位自在に接続している。このため、本実施形態に係る鉄道車両用座席1は、前後スライド機構50と取付機構40とが連動することにより、シートバック20が傾動するリクライニング動作を実現する。
【0040】
図10(A)および10(B)は、鉄道車両用座席1のリクライニング動作を示す側面図である。図10(A)は、座フレーム30が後端位置P1にあるときの鉄道車両用座席1の状態を示し、図10(B)は、座フレーム30が前端位置P2にあるときの鉄道車両用座席1の状態を示す。座フレーム30を前方にスライドさせれば、シートクッション3とシートバック20の下部とが前方に移動するとともにシートバック20の上部が下方に移動する。このため、シートバック20が傾動してリクライニングされる。また、シートバック20の後側にあるシェル背部12がシェル座部11と一体に形成されているため、簡易な構成でシートバック20の荷重を適切に負担できる。
【0041】
また、本実施形態では、2つの取付機構40が、シェル背部12に対して2つのシートバック20をそれぞれ取り付け、2つのシートバック20が、1つのシェル背部12で支持される。このため、左右に並んだ複数の背凭れ領域に対して1つのシェル背部12が設けられるので、部品点数および組立工数を削減できる。
【0042】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、その構成を変更、追加、又は削除することができる。
【0043】
例えば、取付機構40の被係合部41が前後方向に開口した凹部を有し、第1係合部23が、その凹部に対して前後方向に圧入される圧入部を有してもよい。また、第2係合部24が、上下方向に開口した凹部を有し、座フレーム30の被係合部35が、その凹部に対して上下方向に圧入される圧入部を有してもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、第2係合部24が圧入部としての枠体21の一部であったが、第1係合部23も圧入部としての枠体21の一部であってもよいし、第1係合部23および第2係合部24の双方が、枠体21の一部でなくてもよい。
【0045】
また、第1係合部23および取付機構40の被係合部41は、第1係合部23および取付機構40の被係合部41の一方がそれらの他方に対して圧入する代わりに、螺着したり嵌合したりして着脱自在に係合してもよい。また、第2係合部24および座フレーム30の被係合部35も、第2係合部24および座フレーム30の被係合部35の一方がそれらの他方に対して圧入する代わりに、螺着したり嵌合したりして着脱自在に係合してもよい。
【0046】
また、第1係合部23は、取付機構40の被係合部41に係合した状態から前方ではなく上方に引っ張ることで、取付機構40の被係合部41から離脱するように構成されていてもよい。また、第2係合部24は、座フレーム30の被係合部35に係合した状態から上方ではなく前方に引っ張ることで座フレーム30の被係合部35から離脱するように構成されていてもよい。
【0047】
また、シートバック20の構成や形状などは、上記実施形態で説明されたものに限定されない。例えば、シートバック20の前面は、前方に凸なアーチ状でなくてもよいし、表皮22が第1係合部23および第2係合部24を露出させる形状を有していなくてもよい。
【0048】
また、第1レール61が前方且つ下方に向けて傾斜する代わりに、座フレーム30に固定された第2レール71が後方且つ下方に向けて傾斜していてもよい。この場合にも、リクライニング時にシートクッション3が後傾する構造を実現できる。また、前後スライド機構50は、前端位置P2にある座フレーム30の姿勢が、後端位置P1にある座フレーム30の姿勢よりも後方且つ下方に向けて傾斜するように構成されていなくてもよく、例えば第1レール61および第2レール71の双方が水平に延びていてもよい。
【0049】
また、本発明における前後スライド機構の構成は、上記実施形態で説明されたものに限定されない。第1レール61、第1ガイド62、第2レール71、第2ガイド72の位置、構成、形状も上記実施形態で説明されたものに限定されない。例えば第1ガイド62は、固定ブラケット63および摺動ブラケット64の一方または双方を有さなくてもよいし、第2ガイド72の摺動面が側面視して湾曲していなくてもよい。また、前後スライド機構50は、第1スライド部51と第2スライド部52を有する構成であったが、1つのスライド部により構成されてもよい。すなわち、前後スライド機構50のスライド部は、シェル座部11および座フレーム30の一方に固定された1つのレールと、シェル座部11および座フレーム30の他方に固定され且つ前記レールを摺動自在に支持する1つのガイドとを含む構成であってもよい。この場合、ガイドは回動機構を備えなくてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、1つのシェル座部11で2つのシートクッション3および2つのシートバック20が支持されていたが、1つのシェル座部11で支持されるシートクッション3およびシートバック20の各々の数は、1つでもよいし3つ以上でもよい。また、肘掛部13a,13bがシェル座部11およびシェル背部12と一体に形成されていなくてもよく、肘掛部13a,13bはシェル座部11またはシェル背部12とは別部材として形成されてもよい。また、肘掛部13a,13bはシェル座部11およびシェル背部12の一方にのみ接続されてもよい。また、シェル10は、繊維強化樹脂部材と、繊維強化樹脂部材に結合される補強部材とを用いて形成されていたが、シェル10は、別の部材を用いて形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 :鉄道車両用座席
2 :脚台
3 :シートクッション
10 :シェル
11 :シェル座部
12 :シェル背部
13a :肘掛部
13b :肘掛部
20 :シートバック
21 :枠体
22 :表皮
23 :第1係合部
24 :第2係合部
30 :座フレーム
35 :被係合部
40 :取付機構(上下スライド機構)
41 :被係合部
42 :レール
50 :前後スライド機構
51 :第1スライド部
52 :第2スライド部
61 :第1レール
62 :第1ガイド
63 :固定ブラケット
64 :摺動ブラケット
65 :連結ピン
71 :第2レール
72 :第2ガイド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10