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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】車両乗員拘束システム用のエアバッグ
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/239 20060101AFI20240207BHJP
   B60R 21/203 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
B60R21/239
B60R21/203
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019197119
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2020097400
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】20 2018 106 208.5
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599061833
【氏名又は名称】ティーアールダブリュー・オートモーティブ・セーフティ・システムズ・ゲーエムベーハー
(73)【特許権者】
【識別番号】513137363
【氏名又は名称】ダルフィー・メタル・エスパーニャ・ソシエダッド・アノニマ
(73)【特許権者】
【識別番号】519388608
【氏名又は名称】セーフライフ・インダストリア・デ・コンポネンテス・デ・セグランサ・アゥトモーベル・ソシエダッド・アノニマ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100117640
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 達己
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・リント
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・サポウンツィス
(72)【発明者】
【氏名】ラモン・バナ・カストロ
(72)【発明者】
【氏名】バルトロメウ・フランコ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドラ・バルバス・カルボ
(72)【発明者】
【氏名】ディオゴ・ゴンサウヴェス・ローシャ
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0071462(US,A1)
【文献】特開2008-105582(JP,A)
【文献】特開2008-284930(JP,A)
【文献】特開2017-178224(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0023950(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0008479(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0283972(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/239
B60R 21/203
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両乗員拘束システム用のエアバッグであって、
膨張式エアバッグ容積を画定し、かつ前面パネル部(18)および後面パネル部(20)を含むエアバッグパネル(16)と、
前記膨張式エアバッグ容積にわたって前記エアバッグ(14)の内部に延在するテザー(22)と、
前記エアバッグパネル(16)の前記後面パネル部(20)に形成された排出オリフィス(24)と、
前記排出オリフィス(24)を閉じるための第1の閉鎖タブ(26)および第2の閉鎖タブ(28)と、を備え、
前記テザー(22)が、前記排出オリフィス(24)の方向において前記前面パネル部(18)にしっかり接続された第1のテザー端(32)から、反対の第2のテザー端(34)に延在し、
前記第1の閉鎖タブ(26)が、前記後面パネル部(20)にしっかり接続された第1のタブ端(36)から、前記第2のテザー端(34)にしっかり接続された第2のタブ端(38)に延在し、
前記第2の閉鎖タブ(28)が、前記後面パネル部(20)において前記排出オリフィス(24)に隣接して締結される、エアバッグにおいて、
車両乗員(30)が膨張したエアバッグ(10)に当たると解放可能な接続によって、前記2つの閉鎖タブ(26、28)が結合されていることを特徴とする、エアバッグ。
【請求項2】
請求項1に記載のエアバッグにおいて、前記2つの閉鎖タブ(26、28)間の前記解放式接続が、テアシーム(42)の形態であることを特徴とする、エアバッグ。
【請求項3】
請求項2に記載のエアバッグにおいて、前記テアシーム(42)が、接合シーム先端(50)から始まり、矢形状にある角度(α)で互いに離れ、それぞれの自由シーム部端に延在する2つの線形シーム部(46、48)を含むことを特徴とする、エアバッグ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のエアバッグにおいて、前記閉鎖タブ(26、28)が、前記エアバッグ(10)の内部から、前記排出オリフィス(24)を通って、前記エアバッグ(10)の外側に延在し、前記2つの閉鎖タブ(26、28)の前記第1のタブ端(36、40)が前記エアバッグパネル(16)の後面パネル部(20)に外側から締結されていることを特徴とする、エアバッグ。
【請求項5】
請求項3、または、請求項2もしくは3を引用する請求項4に記載のエアバッグにおいて、前記エアバッグ(10)が完全に膨張すると、前記排出オリフィス(24)の範囲に折れ目(52)が形成されるように、前記2つの閉鎖タブ(26、28)が、前記エアバッグ(14)の内部では、前記エアバッグパネル(16)に対して横方向に、前記エアバッグ(10)の外側では、前記エアバッグパネル(16)に平行に延び、前記テアシーム(42)が、前記エアバッグパネル(16)に対して横方向に延在する閉鎖タブ部に構成されていることを特徴とする、エアバッグ。
【請求項6】
請求項3を引用先に含む請求項5に記載のエアバッグにおいて、前記接合シーム先端(50)が前記折れ目(52)に当接し、前記線形シーム部(46、48)が、前記前面パネル部(18)の方向において、前記接合シーム先端(50)から始まって延在することを特徴とする、エアバッグ。
【請求項7】
請求項から3のいずれか一項に記載のエアバッグにおいて、前記2つの閉鎖タブ(26、28)が、前記排出オリフィス(24)の方向において前記エアバッグ(10)の内部から延在し、前記2つの閉鎖タブ(26、28)の前記第1のタブ端(36、40)が、前記エアバッグパネル(16)の前記後面パネル部(20)において、内側から前記排出オリフィス(24)の両側に締結され、それにより、前記エアバッグ(10)が完全に膨張すると、前記2つの閉鎖タブ(26、28)が、前記エアバッグパネル(16)にほぼ平行に、前記第1のタブ端(36、40)から始まり、互いに向かって延び、前記排出オリフィス(24)の範囲において互いに接触し、次に折れ目(52)を形成しながら前記エアバッグパネル(16)に対して横方向に延びるようにし、前記テアシーム(42)が、前記折れ目(52)に当接し、かつ前記エアバッグパネル(16)に対して横方向に延在する閉鎖タブ部に形成されていることを特徴とする、エアバッグ。
【請求項8】
請求項3を引用する請求項7に記載のエアバッグにおいて、前接合シーム先端(50)が、前記折れ目(52)に当接し、前記線形シーム部(46、48)が、前記接合シーム先端(50)から始まり、前記前面パネル部(18)に向かって延在することを特徴とする、エアバッグ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のエアバッグにおいて、前記テザー(22)と前記第1の閉鎖タブ(26)とが、一体形成されていることを特徴とする、エアバッグ。
【請求項10】
ステアリングアクスル(A)を中心に回転可能である車両ステアリングホイール(12)を備え、請求項1から9のいずれか一項によるエアバッグ(14)を含むエアバッグモジュールを備える、ステアリングホイール組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両乗員拘束システム用のエアバッグに関し、膨張式エアバッグ容積を画定し、かつ前面パネル部および後面パネル部を有するエアバッグパネルと、膨張式エアバッグ容積にわたってエアバッグの内部に延在するテザーと、エアバッグパネルの後面パネル部に形成されている排出オリフィスと、排出オリフィスを閉じるための第1の閉鎖タブおよび第2の閉鎖タブとを備え、テザーは、排出オリフィスの方向に前面パネル部にしっかり接続された第1のテザー端から、反対の第2のテザー端に延在し、第1の閉鎖タブは、後面パネル部にしっかり接続された第1のタブ端から、第2のテザー端にしっかり接続された第2のタブ端に延在し、第2の閉鎖タブは、後面パネル部において排出オリフィスに隣接して締結されている。
【背景技術】
【0002】
先行技術から、エアバッグは、常開排出オリフィス以外に、例えばエアバッグの展開形状および/または車両乗員の座位などの所定の限界条件に応じて、選択的に開かれるかまたは少なくとも部分的に閉じられる適応型排出オリフィスも有することが既に知られている。
【0003】
DE102015110365A1は、エアバッグの完全に膨張し展開した状態において閉じられ、乗員がエアバッグに沈み込むと開かれる、適応型排出オリフィスを備える、一般的なエアバッグを示す。この場合、適応型排出オリフィスは、特に、車両乗員によるエアバッグ変形の結果としてのみ、「受動的に」適応する。車両乗員拘束システムの製作費用および複雑さを低減する手助けとなる、排出オリフィスの解放および/または閉鎖のための、電動式、発火式、または他の「能動」制御デバイスは必要とされない。
【0004】
車両乗員が、エアバッグに沈み込んだ後にはね返る場合、DE102015110365A1による適応型排出オリフィスは、再び閉じられる。しかし、排出オリフィスの上記再閉鎖が求められず、引き続き開いている排出オリフィスが、乗員の拘束に有利であると考えられる状況がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】DE102015110365A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、その解放後に、開いた位置に不可逆的に保持される受動的に制御可能な適応型排出オリフィスを備える、最も単純な構造設計のエアバッグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この目的は、冒頭において、2つの閉鎖タブが、車両乗員が膨張したエアバッグに当たると解放可能である接続によって結合されていると述べられたタイプのエアバッグによって達成される。
【0008】
車両乗員が膨張したエアバッグの前面パネル部に当たる前に、閉鎖タブは、エアバッグの適応型排出オリフィスが実質的に閉じられるように、解放式接続によって互いに締結される。車両乗員が膨張したエアバッグに当たって、沈み込むと、解放式接続は切断され、排出オリフィスは解放される。解放式接続のこの(不可逆的な)切断はこうして、排出オリフィスが解放されたままであり、たとえ車両乗員がはね返っても再び閉じられることにはならないことを、ほとんど構造上の手間なしに確実にする。エアバッグ展開の最初で閉じられている排出オリフィスは、エアバッグに、長い保留時間を有すること、すなわち、比較的長い時間、乗員拘束に十分な内部圧力を保持することを提供する。それにより、排出オリフィスの不可逆的解放は、車両乗員に、制御下で、かつ全体として有利な乗員拘束において沈み込むことを可能にさせる。このような点で、説明されたエアバッグは、自動または自律運転モードの場合の車両における使用にも特に適する。
【0009】
2つの閉鎖タブ間の解放式接続が、テアシームの形態であることが好ましい。テアシームにおいて、所望の限界負荷、すなわち、シームが裂けるようになる負荷は、ほとんど手間をかけずに非常に正確に調整され得る。さらに、テアシームは迅速かつ簡単に生産することができる。
【0010】
テアシームは、ある角度で、特に急角度で、接合シーム先端から始まり、互いに矢のように離れて、それぞれの自由シーム部端まで延在する2つの線形シーム部を含むことが好ましい。テアシームの上記矢形状は、規定の簡単に再生可能な裂け挙動がもたらされるように、負荷下で、シーム先端における張力集中を必然的に伴う。
【0011】
エアバッグの1つの実施形態によれば、閉鎖タブは、エアバッグの内部から排出オリフィスを通ってエアバッグの外部に延在し、2つの閉鎖タブの第1のタブ端は、エアバッグパネルの後面パネル部において外側から締結され、特には(しっかりと)縫合されている。第1のタブ端は、閉鎖タブが第1のタブ端の範囲において排出オリフィスを完全に囲むように、互いに接触し得るかまたは互いに重なり合うことまでもあり得る。
【0012】
この実施形態では、エアバッグが完全に膨張すると、2つの閉鎖タブは、エアバッグの内部ではエアバッグパネルに対して横方向に、エアバッグの外側ではエアバッグパネルに平行に、特に、排出オリフィスの範囲では、閉鎖タブの偏向、それによる折れ目が形成されるように、反対方向に延び得、テアシームがエアバッグパネルに対して横方向に延在する閉鎖タブ部に構成されている。
【0013】
テアシームが矢形状である場合、この場合におけるシーム先端は、折れ目に当接するのが好ましく、線形シーム部は、シーム先端から始まり前面パネル部に向かって延在する。このようにして、テアシームは、車両乗員の膨張したエアバッグへの当たりの後すぐにほどかれ、こうして、極めて速やかに排出オリフィスの所望の不可逆的解放をもたらす。
【0014】
エアバッグの別の実施形態によれば、テザーと第1の閉鎖タブとが、一体形成され得る。
【0015】
本発明は、ステアリングアクスルを中心に回転可能である車両ステアリングホイールと、上記のエアバッグを含むエアバッグモジュールとを含む、ステアリングホイール組立体をさらに備える。この場合におけるエアバッグは、ステアリングホイールハブの範囲に運転者エアバッグとして搭載され、衝突事象において、車両の運転者を有利に防御することができる。
【0016】
本発明のさらなる特徴および利点は、従属請求項からとともに、図面に関連した好ましい実施形態の以下の説明から分かってくるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】車両乗員の当たりの前の膨張状態における、本発明によるエアバッグの概略断面図である。
図2】車両乗員が当たっているときの図1によるエアバッグの概略断面図である。
図3】車両乗員の当たり後の図1によるエアバッグの概略断面図である。
図4】車両乗員の当たり後の図1によるエアバッグの別の概略断面図である。
図5図1によるエアバッグの閉鎖タブの詳細図である。
図6】別の実施形態において明示される本発明によるエアバッグの概略細部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1~4は、ステアリングアクスルAを中心に回転可能である車両ステアリングホイール12と、ステアリングホイールハブの範囲に搭載され、かつ車両乗員拘束システム用のエアバッグ14を含むエアバッグモジュールとを備える、ステアリングホイール組立体10を示す。
【0019】
エアバッグ14は、膨張式エアバッグ容積を画定し、かつ前面パネル部18および後面パネル部20を含むエアバッグパネル16と、膨張式エアバッグ容積にわたってエアバッグ14の内部に延在するテザー22と、エアバッグパネル16の後面パネル部20に形成された排出オリフィス24と、排出オリフィス24を閉じるための第1の閉鎖タブ26および第2の閉鎖タブ28と、を備える。これに関連して、エアバッグ14の膨張状態における車両乗員30に面したエアバッグパネル16の一部は、前面パネル部18と呼ばれ、図1~4において、車両乗員30の頭部は、単に概略的に示される。したがって、後面パネル部20は、前面パネル部18に対向し、車両乗員30から離れている、エアバッグパネル16の一部である。
【0020】
エアバッグ14の膨張状態におけるテザー22は、前面パネル部18にしっかりと接続され、特には縫合された第1のテザー端32から、排出オリフィスに向かって反対のテザー端34まで延在する。
【0021】
第1の閉鎖タブ26は、後面パネル部20にしっかりと接続され、特には縫合された第1のタブ端36から、第2のテザー端34にしっかりと接続され、特には縫合された第2のタブ端38に延在する。
【0022】
第1の閉鎖タブ26と同様に、第2の閉鎖タブ28の第1のタブ端40は、排出オリフィス24に隣接する後面パネル部20に締結され、特には縫合されている。
【0023】
さらに、2つの閉鎖タブ26、28は、車両乗員30が膨張したエアバッグ14に当たると解放可能な接続によって結合され、上記解放式接続は、特にテアシーム42として設計されている。閉鎖タブ26、28は、織物から作られているのが好ましく、上記織物は、特に、エアバッグパネル16用に使用される織物と同一であり得る。
【0024】
図5は、第1の閉鎖タブ26の詳細図を示し、第2のタブ端38において、シーム44を通して、取り付け状態における第1の閉鎖タブ26がテザー22にしっかりと接続されていることが示される。
【0025】
さらに、車両乗員30が膨張したエアバッグ14に沈み込む前に、2つの閉鎖タブ26、28を互いに固定するテアシーム42が示される。図5によれば、テアシーム42は、ある角度α、特には急角度αで接合シーム先端50から始まり矢形状で互いに離れて、それぞれの自由シーム部端まで延在する、2つの線形シーム部46、48を含む。
【0026】
第2の閉鎖タブ28は、第1の閉鎖タブ26とほぼ同一であり得るが、ただし、第2の閉鎖タブ28は、その第2のタブ端41においてテザー22に接続されない。
【0027】
図1~4によれば、2つの閉鎖タブ26、28は、エアバッグ14の内部から、排出オリフィス24を通って、エアバッグ14の外部に延在し、2つの閉鎖タブ26、28の第1のタブ端36、40は、排出オリフィス24の両側で、エアバッグパネル16の後面パネル部20に外側から締結され、特には縫合されている。第1のタブ端36、40は、排出オリフィス24の周方向において見ると、閉鎖タブ26、28がそれらのタブ端36、40の範囲に排出オリフィス24を完全に囲むように、互いに接触するかまたは重なり合い得る。
【0028】
図1は、車両乗員30がエアバッグパネル16の前面パネル部18に当たる前の、展開され完全に膨張したエアバッグ14を示す。したがって、2つの閉鎖タブ26、28は、エアバッグ14の内部ではエアバッグパネル16に対して横方向に、エアバッグ14の外側では反対方向にエアバッグパネル16に平行に延在する。閉鎖タブ26、28はその結果として、テアシーム42がエアバッグパネル16に対して横方向に延在する閉鎖タブ部に構成された状態で、折れ目52が形成されるように、排出オリフィス24の範囲において反らされる。この閉鎖タブ部において、2つの閉鎖タブ26、28は、互いに隣接し、閉鎖タブの長手方向のみに、すなわちエアバッグパネル16に対して横方向のみに、内部エアバッグ圧力が掛けられる。結果として、テアシーム42は、大きく負荷が下げられ、2つの閉鎖タブ26、28を互いに固定する。
【0029】
図2は、車両乗員30がエアバッグ14に沈み込むときの状況を示す。エアバッグパネル16の前面パネル部18は、第1のテザー端32が排出オリフィス24の方向に動き、テザー22内の引張応力が低下するように、変形される。排出オリフィス24の範囲における内部圧力の印加(矢印54参照)が原因で、閉鎖タブ26、28は、排出オリフィス24を通って外方へ移動し、排出オリフィス24を通して少なくとも部分的に気体流を解放する。外方に移動する間、閉鎖タブ26、28は、テアシーム42がその限界負荷を超えて引っ張られて、裂けるように、テアシーム42の範囲において横方向に互いに離れて、閉鎖タブの長手方向(矢印56参照)に負荷が掛けられる。
【0030】
車両乗員30の沈み込みとテアシーム42が裂けた後、図3に示されるように、第2の閉鎖タブ28が、エアバッグ14の完全に外側になるまで、気体流によってエアバッグ14の外に追いやられる。第2の閉鎖タブ28は、第1のタブ端40の締結のみによってエアバッグパネル16に保持され、この位置では、気体が排出オリフィス24を通ってエアバッグ14の外に流れるのを妨げない。
【0031】
図4によると、車両乗員30がエアバッグ14に沈み込んだ後にはね返り、それにより、エアバッグ14の後面パネル部20から再び離れたとしても、排出オリフィス24は、開いたままである。
【0032】
結果として、エアバッグ14は、車両乗員30が沈み込んだときに不可逆的に開かれるのが有利である排出オリフィス24を含む。
【0033】
このタイプのエアバッグ14は、自動化または自律運転モードの場合の車両での使用に特に適している。手動運転モードに比べ、自動化または自律運転モードにおける車両乗員30は、例えば、車両乗員30がリラックスした後ろにもたれる着座位置を選び、かつ/または車両ステアリングホイール12が車両乗員30から遠ざかり、車両乗員にもっと自由なスペースを与えたために、車両ステアリングホイール12からさらに遠くに離間されることが多い。それに応じて、車両衝突の場合、車両乗員30は、エアバッグ14に比較的遅く当たり、それにより、特に常開気体流オリフィスがエアバッグ14に設けられている場合、内部エアバッグ圧力がそれまでには不必要に低くなっていることをもたらす。図1~4によるエアバッグ設計では、排出オリフィス24は、エアバッグ展開の始まりに閉鎖タブ26、28によって閉じられるが、ただし、それにより、エアバッグ14が、比較的長い時間、乗員拘束に十分な内部圧力を維持するようにする。車両乗客30の当たりまで、排出オリフィス24は解除されず、排出オリフィス24の不可逆的解除が車両乗員30の沈み込みの制御下の減衰を可能にし、全体として、常開気体流オリフィスに匹敵する有利な乗員拘束を確実にする。
【0034】
図5から、図示の実施形態例におけるV形状または矢形状のテアシーム42が、シーム先端50が折れ目52に当接し、かつ線形シーム部46、48がシーム先端50から前面パネル部18に向かって延在するように配置されているのが分かってくる。図5では、折れ目52が点線によって示され、そこでは、図1による第1の閉鎖タブ26が、エアバッグパネル16に対して横の方向から、エアバッグパネル16に平行な方向に反らされ、折れ目52において折り曲げられた第1の閉鎖タブ26の第1のタブ端36が破線によって示される。
【0035】
図6は、2つの閉鎖タブ26、28の第1のタブ端36、40が、排出オリフィス24の両側で、外側からではなく内側からエアバッグパネル16の後面パネル部20に締結される、特には縫合されるということのみによって、図1~5による実施形態とは異なる、エアバッグ14の別の実施形態を示す。エアバッグ14の一般的な設計および機能に関しては、したがって、上の説明が当てはまる。
【0036】
図1~5による実施形態と同様に、エアバッグ14が完全に膨張すると、2つの閉鎖タブ26、28は、エアバッグパネル16にほぼ平行に、第1のタブ端36、40から始まり、互いに向かって延び、排出オリフィス24の範囲内で互いに接触し、次に折れ目52を形成しながら、エアバッグパネル16に対して横方向に延び、テアシーム42が、折れ目52に当接して、エアバッグパネル16に対して横方向に延在する閉鎖タブ部に形成されている。
【0037】
この実施形態でも、テアシーム42が、接合シーム先端50から始まり、矢形状にある角度αで互いに離れ、それぞれの自由シーム部端に延在する2つの線形シーム部46、48を含むのが好ましい(図5参照)。シーム先端50は、折れ目52に当接し、線形シーム部46、48は、前面パネル部18の方向においてシーム先端50から延在する。
【0038】
図1~6では、車両ステアリングホイール12内の組立体向けの運転者エアバッグが示されているが、エアバッグ14は、それとは異なるエアバッグ、例えば、当然のことではあるが乗客エアバッグであってもよい。
<付記>
[形態1]
車両乗員拘束システム用のエアバッグであって、
膨張式エアバッグ容積を画定し、かつ前面パネル部(18)および後面パネル部(20)を含むエアバッグパネル(16)と、
前記膨張式エアバッグ容積にわたって前記エアバッグ(14)の内部に延在するテザー(22)と、
前記エアバッグパネル(16)の前記後面パネル部(20)に形成された排出オリフィス(24)と、
前記排出オリフィス(24)を閉じるための第1の閉鎖タブ(26)および第2の閉鎖タブ(28)と、を備え、
前記テザー(22)が、前記排出オリフィス(24)の方向において前記前面パネル部(18)にしっかり接続された第1のテザー端(32)から、反対の第2のテザー端(34)に延在し、
前記第1の閉鎖タブ(26)が、前記後面パネル部(20)にしっかり接続された第1のタブ端(36)から、前記第2のテザー端(34)にしっかり接続された第2のタブ端(38)に延在し、
前記第2の閉鎖タブ(28)が、前記後面パネル部(20)において前記排出オリフィス(24)に隣接して締結される、エアバッグにおいて、
車両乗員(30)が膨張したエアバッグ(10)に当たると解放可能な接続によって、前記2つの閉鎖タブ(26、28)が結合されていることを特徴とする、エアバッグ。
[形態2]
形態1に記載のエアバッグにおいて、前記2つの閉鎖タブ(26、28)間の前記解放式接続が、テアシーム(42)の形態であることを特徴とする、エアバッグ。
[形態3]
形態2に記載のエアバッグにおいて、前記テアシーム(42)が、接合シーム先端(50)から始まり、矢形状にある角度(α)で互いに離れ、それぞれの自由シーム部端に延在する2つの線形シーム部(46、48)を含むことを特徴とする、エアバッグ。
[形態4]
形態1から3のいずれか一項に記載のエアバッグにおいて、前記閉鎖タブ(26、28)が、前記エアバッグ(10)の内部から、前記排出オリフィス(24)を通って、前記エアバッグ(10)の外側に延在し、前記2つの閉鎖タブ(26、28)の前記第1のタブ端(36、40)が前記エアバッグパネル(16)の後面パネル部(20)に外側から締結されていることを特徴とする、エアバッグ。
[形態5]
形態3および4に記載のエアバッグにおいて、前記エアバッグ(10)が完全に膨張すると、前記排出オリフィス(24)の範囲に折れ目(52)が形成されるように、前記2つの閉鎖タブ(26、28)が、前記エアバッグ(14)の内部では、前記エアバッグパネル(16)に対して横方向に、前記エアバッグ(10)の外側では、前記エアバッグパネル(16)に平行に延び、前記テアシーム(42)が、前記エアバッグパネル(16)に対して横方向に延在する閉鎖タブ部に構成されていることを特徴とする、エアバッグ。
[形態6]
形態5に記載のエアバッグにおいて、前記シーム先端(50)が前記折れ目(52)に当接し、前記線形シーム部(46、48)が、前記前面パネル部(18)の方向において、前記シーム先端(50)から始まって延在することを特徴とする、エアバッグ。
[形態7]
形態1から3のいずれか一項に記載のエアバッグにおいて、前記2つの閉鎖タブ(26、28)が、前記排出オリフィス(24)の方向において前記エアバッグ(10)の内部から延在し、前記2つの閉鎖タブ(26、28)の前記第1のタブ端(36、40)が、前記エアバッグパネル(16)の前記後面パネル部(20)において、内側から前記排出オリフィス(24)の両側に締結され、それにより、前記エアバッグ(10)が完全に膨張すると、前記2つの閉鎖タブ(26、28)が、前記エアバッグパネル(16)にほぼ平行に、前記第1のタブ端(36、40)から始まり、互いに向かって延び、前記排出オリフィス(24)の範囲において互いに接触し、次に折れ目(52)を形成しながら前記エアバッグパネル(16)に対して横方向に延びるようにし、前記テアシーム(42)が、前記折れ目(52)に当接し、かつ前記エアバッグパネル(16)に対して横方向に延在する閉鎖タブ部に形成されていることを特徴とする、エアバッグ。
[形態8]
形態7に記載のエアバッグにおいて、前記テアシーム(42)が、接合シーム先端(50)から始まり、ある角度(α)で互いから離れて、それぞれの自由シーム部端に矢形状に延在する2つの線形シーム部(46、48)を含み、特に、前記シーム先端(50)が、前記折れ目(52)に当接し、前記線形シーム部(46、48)が、前記シーム先端(50)から始まり、前記前面パネル部(18)に向かって延在することを特徴とする、エアバッグ。
[形態9]
形態1から8のいずれか一項に記載のエアバッグにおいて、前記テザー(22)と前記第1の閉鎖タブ(26)とが、一体形成されていることを特徴とする、エアバッグ。
[形態10]
ステアリングアクスル(A)を中心に回転可能である車両ステアリングホイール(12)を備え、形態1から9のいずれか一項によるエアバッグ(14)を含むエアバッグモジュールを備える、ステアリングホイール組立体。
【符号の説明】
【0039】
10 ステアリングホイール組立体
12 車両ステアリングホイール
14 エアバッグ
16 エアバッグパネル
18 前面パネル部
20 後面パネル部
22 テザー
24 排出オリフィス
26 閉鎖タブ
28 閉鎖タブ
30 車両乗員
32 テザー端
34 テザー端
36 タブ端
38 タブ端
40 タブ端
41 タブ端
42 テアシーム
44 シーム
46 線形シーム部
48 線形シーム部
50 接合シーム先端
52 折れ目
54 矢印
56 矢印
図1
図2
図3
図4
図5
図6