(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】撮像装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
G02B 7/34 20210101AFI20240207BHJP
G03B 5/00 20210101ALI20240207BHJP
G03B 13/36 20210101ALI20240207BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20240207BHJP
H04N 23/67 20230101ALI20240207BHJP
【FI】
G02B7/34
G03B5/00 G
G03B13/36
G03B15/00 Q
H04N23/67
(21)【出願番号】P 2019199244
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高尾 麻衣子
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-203207(JP,A)
【文献】国際公開第2018/004001(WO,A1)
【文献】特開2017-223751(JP,A)
【文献】特開2012-203345(JP,A)
【文献】特開2019-020716(JP,A)
【文献】特開2019-176249(JP,A)
【文献】特開平11-337814(JP,A)
【文献】特開平10-161013(JP,A)
【文献】特開平02-207229(JP,A)
【文献】特開2009-128613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/34
G03B 5/00
G03B 13/36
G03B 15/00
H04N 23/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光学系を介して入射した光を光電変換して得られた信号に基づいて、デフォーカス量を検出する焦点検出手段と、
前記焦点検出手段により繰り返し検出される前記デフォーカス量を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された過去の焦点検出履歴と前記焦点検出手段により新たに検出されたデフォーカス量とに基づい
て同じ被写体を継続的に
捕捉できているかどうかを判定するための閾値を設定する設定手段と、
前記焦点検出手段により検出されたデフォーカス量に基づいて、画角内の被写体を検出する被写体検出手段と、を有し、
前記設定手段は、
前記閾値として、被写体の
捕捉し易さを示す難易度情報
が第1の難易度よりも高い第2の難易度を示す場合に、前記第1の難易度の場合よりも、同じ被写体を継続的に捕捉できていると判定しにくい閾値を設定
し、
前記難易度情報は、前記被写体の大きさを含み、前記被写体の大きさが小さいほど難易度が高いことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記設定手段は、更に、前記記憶手段に記憶された過去の焦点検出履歴
に対応する距離に基づいて閾値を設定し、
前記距離が、予め決められた距離よりも長い場合に、長くない場合よりも
同じ被写体を継続的に捕捉できていると判定しにくい閾値を
設定することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記難易度情報は、
更に、前記被写体より至近側の障害物の有無、カメラの振れ情報の内の少なくともいずれかを含み、
前記障害物がある場合により難易度が高く、カメラの振れが大きいほど難易度が高いことを特徴とする請求項
1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記難易度情報は、前記被写体の移動量、パン・チルト情報、被写界深度、被写体の動き特性、前記被写体の大きさ、前記被写体検出手段により検出された被写体の個数の内の少なくともいずれかを含み、
前
記被写体の移動量が大きいほど難易度が高く、パン・チルトの大きさが大きいほど難易度が高く、被写界深度が大きいほど難易度が高く、前
記被写体の動き特性が大きいほど難易度が高く、前
記被写体が大きいほど難易度が高く、前記検出され
た被写体の個数が少ないほど難易度が高いことを特徴とする請求項
1または2に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記設定手段は、前記難易度情報が、予め決められた条件に該当しない場合に、前記条件に該当する場合よりも
同じ被写体を継続的に捕捉できていると判定し易い閾値を設定することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記条件は、前記同じ被写体の大きさが予め決められた値よりも小さいこと、前記被写体より至近側に障害物があること、焦点検出装置の振れ量が予め決められた振れ量よりも大きいこと、の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項
5に記載の撮像装置。
【請求項7】
デフォーカス量に基づいて、前記撮影光学系に含まれるフォーカスレンズを駆動するように制御する制御手段を更に有し、
前記過去の焦点検出履歴と前記焦点検出手段により新たに検出されたデフォーカス量とに基づいて、前記同じ被写体を継続的に
捕捉できていると判定されなかった場合に、前記制御手段は、前記焦点検出手段により新たに検出されたデフォーカス量に基づく前記フォーカスレンズの駆動を行わないように制御することを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記撮影光学系を含むことを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記撮影光学系が着脱可能であることを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項10】
撮影光学系を介して入射した光を光電変換して得られた信号に基づいて、デフォーカス量を検出する焦点検出工程と、
前記焦点検出工程で繰り返し検出される前記デフォーカス量を記憶する記憶工程と、
前記記憶工程で記憶された過去の焦点検出履歴と前記焦点検出工程で新たに検出されたデフォーカス量とに基づい
て同じ被写体を継続的に
捕捉できているかどうかを判定するための閾値を設定する設定工程と、
前記焦点検出工程で検出されたデフォーカス量に基づいて、画角内の被写体を検出する被写体検出工程と、を有し、
前記設定工程では、
前記閾値として、被写体の
捕捉しにくさを示す難易度情報
が第1の難易度よりも高い第2の難易度を示す場合に、前記第1の難易度の場合よりも同じ被写体を継続的に捕捉できていると判定しにくい閾値を設定
し、
前記難易度情報は、前記被写体の大きさを含み、前記被写体の大きさが小さいほど難易度が高いことを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項11】
コンピュータに、請求項
10に記載の制御方法の各工程を実行させるためのプログラム。
【請求項12】
請求項
11に記載のプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交換レンズ式一眼レフカメラ等のカメラシステムにおいて、自動焦点調節(AF)の技術が知られており、中でも位相差AFと呼ばれる手法は広く利用されている。この手法では、撮影レンズの異なる射出瞳領域を通過した被写体からの光束を、一対のラインセンサ上に結像させる。そして、被写体像を光電変換して得られた一対の像信号の相対位置の変位量である像ずれ量を求めることで、撮影レンズのデフォーカス量の検出、すなわち、焦点検出を行う。この焦点検出結果に基づいて撮影レンズに含まれるフォーカスレンズの駆動を行うことで、自動焦点調節を行う。
【0003】
またその多くは、静止する被写体のみならず、移動する被写体に焦点が合うようにフォーカスレンズを駆動させるサーボ撮影モードを備えている。サーボ撮影モードは、過去の移動履歴から被写体がどのように動いているのか予測する機能を持つ。ところが、被写体の前を障害物が通過したり、誤って背景に対し焦点検出してしまったりすることで、検出されるデフォーカス量が必ずしも撮影したい被写体のものでないことがある。
【0004】
このように、誤って意図しない被写体や背景に合焦してしまうといった課題に対し、検出したデフォーカス量によってフォーカスレンズの駆動を禁止する手法が提案されている。例えば、特許文献1では、像面速度に応じて焦点調節レンズの駆動を禁止するデフォーカス量の閾値を切り替える方法が開示されている。特許文献1の手法を用いることで、高速で動く被写体に対し、被写体が高速であることを観測すれば、より大きなデフォーカス量が検出されても焦点検出レンズの駆動ができるようになる。そのため、検出したデフォーカス量に応じた焦点検出レンズの駆動の加速や減速に対しても適切に追従できる。
【0005】
また、特許文献2では、所望の被写体を追尾できているかどうかを判断するために用いるデフォーカス量の閾値を、カメラの振れ状態によって変更させる方法が開示されている。特許文献2によれば、カメラの振れが大きい状態であれば所望の被写体を追従しにくく、カメラの振れが小さい状態であれば所望の被写体を追従し易いと判断する。そして、カメラが所望の被写体を追従し易い状態であれば、検出したデフォーカス量が、所望の被写体を追従した結果だと考えられる。逆に、カメラが所望の被写体を追従しにくい状態であれば、所望の被写体を追従できておらず、検出したデフォーカス量が背景や別の被写体を追った結果ではないかと疑うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-210815号公報
【文献】特開平11-326743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、継続的に速い動きをする被写体に対してしか被写体の動きの変化に対応することができない。例えば、被写体が、これまでの動きの傾向では予測ができない大きな動きを急にした場合、デフォーカス量の閾値の切り替えができず、フォーカス駆動を禁止してしまう。さらに、撮影者(カメラ)と被写体の距離が近いほど、被写体の動きに対して検出されるデフォーカス量の変化が大きくなるため、近景で急に動き出す被写体においては特に急激に大きなデフォーカス量の変化が検出されてしまう。そのため、撮影対象としているその被写体の動きが撮影者(カメラ)に対して近づき続ける、あるいは撮影者に対して遠ざかり続けるような動きであった場合に以下のような不都合が生じる。
【0008】
前述したサーボ撮影モードでは周期的に焦点検出処理を行い、焦点検出処理により得られた検出デフォーカス量に基づき、随時焦点調節レンズを駆動させて被写体にピントを合わせ続ける制御となっている。しかしながら、特許文献1によれば、被写体が急に動き始めたタイミングで得られた焦点検出処理の結果に応じて焦点調節レンズの駆動を停止させてしまう。そのため、周期的に実施する次のタイミングでの焦点検出処理で得られる撮影対象の被写体のデフォーカス量は、さらに大きく検出されてしまう。この動作が繰り返されることになり、結果として、所望の被写体にピントを合わせることができなくなってしまう。
【0009】
また、特許文献2によれば、被写体の状況によらずカメラの振れ量のみで被写体の追従のし易さを評価しているが、被写体が画角内に占める領域が大きければ追従し易く、逆に被写体の領域が小さければ追従しにくい。従って、カメラの振れ量のみによって被写体の追従し易さを決定することは、追従のし易さを誤って判断してしまう可能性がある。
【0010】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、様々な条件下でより適切に被写体を追従できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の撮像装置は、撮影光学系を介して入射した光を光電変換して得られた信号に基づいて、デフォーカス量を検出する焦点検出手段と、前記焦点検出手段により繰り返し検出される前記デフォーカス量を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された過去の焦点検出履歴と前記焦点検出手段により新たに検出されたデフォーカス量とに基づいて同じ被写体を継続的に捕捉できているかどうかを判定するための閾値を設定する設定手段と、前記焦点検出手段により検出されたデフォーカス量に基づいて、画角内の被写体を検出する被写体検出手段と、を有し、前記設定手段は、前記閾値として、被写体の捕捉し易さを示す難易度情報が第1の難易度よりも高い第2の難易度を示す場合に、前記第1の難易度の場合よりも、同じ被写体を継続的に捕捉できていると判定しにくい閾値を設定し、前記難易度情報は、前記被写体の大きさを含み、前記被写体の大きさが小さいほど難易度が高いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、様々な条件下でより適切に被写体を追従することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態における撮像装置の概略構成を示すブロック図。
【
図2】第1の実施形態におけるサーボ撮影モードにおける撮影処理を示したフローチャート。
【
図3】第1の実施形態における焦点調節処理のフローチャート。
【
図4】第1の実施形態における焦点検出処理のフローチャート。
【
図5】第1の実施形態における連続性判定処理のフローチャート。
【
図6】第1の実施形態における動体予測処理のフローチャート。
【
図7】第1の実施形態における連続性判定閾値設定処理のフローチャート。
【
図9】過去の焦点検出履歴と予測曲線の一例を示す図。
【
図10】カメラから比較的近い場所に静止していた被写体が急加速したときの像面位置の変化の一例を示す図。
【
図11】被写体を捉え続けにくい状況の一例を示す図。
【
図12】第2の実施形態における連続性判定閾値設定処理のフローチャート。
【
図13】第3の実施形態における焦点検出処理のフローチャート。
【
図14】被写体の動き特性のユーザ設定画面の一例を示す図。
【
図15】変形例における撮像素子の画素配列を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0015】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態における撮像装置の一例として、デジタル一眼レフカメラの構成を示すブロック図である。
【0016】
撮影レンズ101(撮影光学系)は、簡易的に1枚のレンズにより表されているが、実際には焦点調節を行うためのフォーカスレンズを含む、複数のレンズから構成される。レンズ駆動回路102は、たとえばDCモータやステッピングモータを有し、撮影レンズ101を駆動制御する。当該駆動制御は、レンズ内マイクロコンピュータ141によって指示されるが、当該駆動制御のための駆動要求はマイクロコンピュータ124からレンズ通信回路103を用いて伝搬される。
【0017】
レンズ通信回路103は、マイクロコンピュータ124からの各種アクチュエータの駆動要求をレンズ内マイクロコンピュータ141へ伝搬すると共に、各種アクチュエータの状態情報をマイクロコンピュータ124へ伝搬する。
【0018】
絞り104は、絞り駆動回路105により駆動され、カメラに入射する光束を制御するために用いられる。絞り駆動回路105は、マイクロコンピュータ124によって算出された駆動量に基づき、レンズ内マイクロコンピュータ141により制御されることで、絞り104の光学的な絞り値を変化させる。
【0019】
距離測定回路142は、撮影レンズ101が有するフォーカスレンズの位置をもとに、カメラから被写体までの距離を算出する。なお、フォーカスレンズの位置を用いた距離測定方法は一例であり、たとえば赤外線照射などの手法を用いてもよい。また、本構成では距離測定回路142はレンズ側に構成され、レンズ内マイクロコンピュータ141によって制御されているが、カメラ本体側に構成し、マイクロコンピュータ124によって制御されてもよい。
【0020】
主ミラー106は、常時はファインダー部(不図示)へと光束を導くよう反射させるように光路内に配されているが、撮影が行われる場合には、撮像素子113へと光束を導くように上方に跳ね上がり、光路から待避する。すなわち、撮影レンズ101から入射した光束をファインダー側に導くか、撮像素子113側に導くかを切替える。また主ミラー106はその中央部が光の一部を透過できるようにハーフミラーとなっている。サブミラー107は、主ミラー106を透過した光束を反射させて、焦点検出を行うための焦点検出回路110内に配置された焦点検出センサに導く。
【0021】
ペンタプリズム108は主ミラー106が反射した光束をファインダー部(不図示)へと導く。ファインダー部は他にピント板、アイピースレンズ(不図示)などを有する。測光回路109は、ピント板(不図示)に結像された被写体像の色および明るさを、測光回路109内に配置された、カラーフィルタを備えた測光センサによって、電気信号に変換する。
【0022】
焦点検出回路110は、複数のエリアセンサからなる焦点検出センサを内蔵しており、主ミラー106を透過し、サブミラー107により反射された光束が焦点検出センサに入射することによって、焦点検出センサ内で分光された一対の像信号を得る。そして、得られた一対の像信号の相対位置の変位量である像ずれ量を求めることで、撮影レンズ101のデフォーカス量を検出する。焦点検出回路110にて得られたデフォーカス量は、マイクロコンピュータ124へ伝搬され、撮影レンズ101の制御量に変換された後、レンズ通信回路103を経由してレンズ内マイクロコンピュータ141へ伝搬される。
【0023】
フォーカルプレーンシャッター111は、カメラに設定されたシャッター速度に応じてシャッター駆動回路112により駆動される。
【0024】
撮像素子113には、CCDやCMOSセンサなどが用いられ、撮影レンズ101によって結像された被写体像を電気信号に変換する。
【0025】
クランプ回路114及びAGC回路115は、撮像素子113から出力された電気信号をA/D変換をする前に基本的なアナログ信号処理を行う回路であり、マイクロコンピュータ124により、クランプレベルやAGC基準レベルの変更が行われる。A/D変換器116は、クランプ回路114及びAGC回路115により処理された撮像素子113のアナログ出力信号をデジタル信号(画像データ)に変換する。
【0026】
映像信号処理回路117は、ゲートアレイなどのロジックデバイスにより実現され、デジタル化された画像データに、フィルタ処理、色変換処理、ガンマ処理を行うと共に、JPEGなどの圧縮処理を行い、メモリコントローラ120に出力する。また、映像信号処理回路117は、必要に応じて、撮像素子113の信号の露出情報やホワイトバランスなどの情報をマイクロコンピュータ124に出力することが可能である。これらの情報を基に、マイクロコンピュータ124は、ホワイトバランスやゲイン調整の指示を行う。
【0027】
なお、連続撮影動作の場合においては、撮影データを未処理のまま一旦バッファメモリ123に格納し、メモリコントローラ120を通して未処理の撮影データを読み出し、映像信号処理回路117にて画像処理や圧縮処理を行うことで、連続撮影を行う。連続撮影枚数は、バッファメモリ123の大きさに左右される。連続撮影時には、メモリコントローラ120は、映像信号処理回路117から入力された未処理のデジタル画像データをバッファメモリ123に格納し、処理済みのデジタル画像データをメモリ121に格納する。また、メモリコントローラ120は、バッファメモリ123やメモリ121から画像データを映像信号処理回路117に出力する。なお、メモリ121は取り外し可能であってもよい。更に、メモリコントローラ120は、コンピュータ等と接続可能な外部インターフェイス122を介して、メモリ121に記憶されている画像を出力することができる。
【0028】
操作部125は、マイクロコンピュータ124に操作部125に接続された各種操作部材の状態を伝え、マイクロコンピュータ124は操作部材の変化に応じて各部をコントロールする。操作部125に接続される操作部材は、スイッチ1(SW1)126と、スイッチ2(SW2)127を含む。SW1(126)、SW2(127)の操作状態を操作部125が解釈し、SW1(126)の操作のみ有効な状態(ON)であれば、オートフォーカス(AF)開始要求イベントとして取り扱う。また、SW2(127)の操作が有効な状態(ON)であれば撮影要求イベントとして取り扱う。また、SW2(127)が操作されている状態(ON)が維持されている場合には、連続撮影動作を行う。操作部125には、他に、ISO設定ボタン、画像サイズ設定ボタン、画質設定ボタン、情報表示ボタンなど、不図示の操作部材が接続されており、各操作部材の状態が検出される。
【0029】
液晶駆動回路128は、マイクロコンピュータ124の表示命令に従って、外部液晶表示部材129やファインダー内液晶表示部材130を駆動する。ファインダー内液晶表示部材130には、不図示のLEDなどのバックライトが配置されており、そのLEDも液晶駆動回路128で駆動される。マイクロコンピュータ124は、撮影前に設定されているISO感度、画像サイズ、画質に応じた、画像サイズの予測値データをもとに、メモリコントローラ120を通して、メモリの容量を確認した上で撮影可能残数を演算することができる。そして、必要に応じて、撮影可能残数を外部液晶表示部材129やファインダー内液晶表示部材130に表示する。
【0030】
不揮発性メモリ131(EEPROM)は、カメラに電源が入れられていない状態でも、データを保存することができる。電源部132は、各ICや駆動系に必要な電源を供給する。
【0031】
動き検出回路140は、デジタル一眼レフカメラの動きを検出する検出部を搭載している。検出部は例えば加速度センサであり、カメラ本体の水平軸を回転軸としたときの加速度、及び、カメラ本体の垂直軸を回転軸としたときの加速度を検出する。
【0032】
なお、本実施形態では、動き検出回路140はカメラ本体側に構成され、マイクロコンピュータ124によって制御されているが、レンズ側に構成し、レンズ内マイクロコンピュータ141によって制御されてもよい。また、レンズは、カメラ本体に着脱可能なものであっても、カメラ本体と一体的に構成されたものであってもよい。
【0033】
次に、本発明の第1の実施形態における撮影処理の動作について説明する。一般にカメラのAFモードとしては、合焦動作を一回行って終了するモード(ワンショット撮影モード)と、現在の時刻よりも後の時刻の被写体の像面を予測しながら合焦動作を繰り返し行ってレンズを駆動するモード(サーボ撮影モード)の2種類がある。第1の実施形態では、カメラがサーボ撮影モードに設定されている場合の処理について説明する。
【0034】
図2は、サーボ撮影モードによる撮影処理を示すフローチャートである。S201において、マイクロコンピュータ124は、撮影モードを確認する。現在の撮影モードがサーボ撮影モードではないと判断されると、処理を終了する。一方、撮影モードがサーボ撮影モードであると判断された場合にはS202へ遷移する。
【0035】
S202において、マイクロコンピュータ124は、操作部125により得られるSW1の状態を確認する。SW1がOFFの場合はS201へ遷移し、SW1がONであればS203へ遷移する。
【0036】
S203では、焦点検出回路110が焦点調節処理を行う。なお、S203における処理の詳細は、
図3を参照して後述する。
【0037】
次にS204において、マイクロコンピュータ124は、操作部125から得られるSW2の状態を確認する。SW2がOFFの場合はS201へ遷移し、SW2がONであればS205へ遷移する。
【0038】
S205では、マイクロコンピュータ124は、シャッター駆動回路112を介してフォーカルプレーンシャッター111を駆動させ、撮影を行う。撮影の終了後、S201に戻る。
【0039】
以上説明したように、サーボ撮影モードにてSW1がONである場合、モード変更されない限り、S203の焦点調節処理が繰り返し実施される。
【0040】
次に、
図3を参照して、S203における焦点調節処理の概要について説明する。
【0041】
S301において、マイクロコンピュータ124は、焦点検出とそれに伴う一連の処理を行う。なお、S301における処理の詳細は、
図4を参照して後述する。
【0042】
S302において、マイクロコンピュータ124は、S301の処理により得られた焦点検出結果から、サーボ撮影モードにてフォーカス追従動作させていた対象の被写体を引き続きフォーカス追従(以降、「被写体捕捉」と呼ぶ。)できているか否かを判定する、連続性判定処理を行う。詳細は
図5を参照して後述するが、引き続き被写体捕捉ができていれば、フラグFlagCatchFail=0となり、被写体捕捉の失敗時にはフラグFlagCatchFail>0となるように処理される。
【0043】
S303において、マイクロコンピュータ124は、焦点検出履歴から、捕捉中の被写体がどのような動きをしているかを予測する、動体予測処理を行う。なお、S303における処理の詳細は
図6を参照して後述する。S303の処理の中で、マイクロコンピュータ124は、撮影レンズ101を構成するフォーカスレンズを駆動するためのフォーカスレンズ駆動量を算出する。
【0044】
次にS304において、マイクロコンピュータ124は、S302内で設定されたフラグFlagCatchFailの値を確認する。FlagCatchFailが0より大きい場合、すなわち、被写体補足に失敗した場合にはS305へ遷移し、そうでない場合、すなわち、被写体補足ができた場合にはS306へ遷移する。
【0045】
S305では、今回の焦点検出結果が引き続き被写体捕捉できたと認められなかった場合の処理として、レンズ駆動を禁止し、焦点検出処理を終了する。なお、レンズ駆動の禁止処理としては2通り挙げられ、いずれを選択してもよい。1つ目は、マイクロコンピュータ124がレンズ通信回路103を経由してレンズ内マイクロコンピュータ141へ撮影レンズ101に含まれるフォーカスレンズを停止させるよう要求する方法である。2つ目は直前のS301における焦点検出処理にて得られたデフォーカス量に基づく駆動要求を実施しないようにする方法である。
【0046】
一方、S306では、今回の焦点検出結果が引き続き被写体捕捉できたと認められた場合の処理を行う。ここでは、マイクロコンピュータ124が、レンズ通信回路103を経由してレンズ内マイクロコンピュータ141に対して撮影レンズ101に含まれるフォーカスレンズの駆動を要求し、焦点調節処理を終了する。
【0047】
図4は、S301で行われる焦点検出処理の動作の一例を示す。S401で、マイクロコンピュータ124は、過去の焦点検出履歴に基づいて、今回の焦点検出結果が引き続き被写体捕捉できているかどうかを判定するための連続性判定閾値の設定を行う。なお、S401における処理の詳細は
図7を参照して後述する。
【0048】
次に、S402において、マイクロコンピュータ124は、焦点検出回路110を駆動して、焦点検出を行う。
【0049】
S403で、マイクロコンピュータ124は、S402における焦点検出結果であるデフォーカス量(以降、「検出デフォーカス量」と呼ぶ。)を、
図8に示すように、焦点検出した測距点に対応するように行列に記載した、デフォーカスマップを作成する。
【0050】
ここで
図8(a)から(d)を用いて、本実施形態で作成するデフォーカスマップについて説明する。
【0051】
801は、撮像素子113により得られる画像領域に相当し、802は、焦点検出回路110に含まれる焦点検出センサ部のセンサ領域を示している。本実施形態の焦点検出センサ部は、縦方向に7分割、横方向に7分割された合計49枠の測距点によって構成されているものとする。803~805は、分割された測距点の一部を差し示している。デフォーカスマップの作成時には、その各測距点ごとに測距結果が得られる構成となっている。
【0052】
図8(a)に示す構図では、撮影者(カメラ)に対して近景側に存在する被写体806と遠景側に存在する被写体807とが同一画面内に存在するケースを示しており、遠景側の人物807に焦点が合っている。このときのデフォーカスマップは、
図8(b)に示すように、遠景側の人物807の位置に設定された測距点809では検出デフォーカス量0、手前側の人物806の位置に設定された測距点808では検出デフォーカス量が負の値となっている。さらに、背景の位置に設定された測距点では検出デフォーカス量が正の値となっている。
【0053】
同様に、
図8(c)では手前側の人物810に焦点が合い、遠景側の被写体811にはピントが合っていない状態となっている。このときのデフォーカスマップは
図8(d)に示すように、手前側の人物810の位置に設定された測距点812では検出デフォーカス量0、遠景側の人物811の位置に設定された測距点813では検出デフォーカス量が正の値となっている。さらに、背景の位置に設定された測距点では検出デフォーカス量がさらに大きな正の値となっている。
【0054】
S404において、マイクロコンピュータ124は、S403で作成したデフォーカスマップから、主測距点を選択する。具体的には、前回までの焦点検出結果に基づいて、今回の焦点検出時には被写体が撮影者(カメラ)に対して近づいているか、または遠ざかっているか、すなわち奥行方向にどれだけ移動しているかを予測しておき、この結果に最も近い測距点を主測距点とする。なお、ユーザの設定したモードが測距点を複数設定する多点方式でなかった場合、ユーザ指定の測距点を主測距点と定める。
【0055】
S405において、マイクロコンピュータ124は、S403で作成したデフォーカスマップを用いて、被写体領域を抽出する。具体的には、S404で選択した主測距点の周囲で、主測距点とのデフォーカス量の差が一定値以内である領域を被写体領域とする(被写体検出)。
【0056】
次に、S406において、マイクロコンピュータ124は、S403で作成したデフォーカスマップを用いて、障害物を抽出する。具体的には、S405で抽出した被写体領域よりも至近側の合焦位置を示すデフォーカス量が検出された領域をデフォーカスマップから抽出し、障害物とみなす。
【0057】
以上の処理によってS301の焦点検出処理を完了し、過去の焦点検出履歴に基づく連続性判定のための閾値の決定と、焦点検出処理による焦点検出結果の取得および、検出デフォーカス量に基づくデフォーカスマップの作成を実施している。そしてデフォーカスマップからは、主被写体の領域の抽出と、障害物がある場合には障害物の占めるデフォーカスマップ上の領域を特定することができ、以上の情報がS302の連続性判定処理以降に参照される。
【0058】
図5は、S302で行われる連続性判定処理の動作の一例を示す。S501において、マイクロコンピュータ124は、S405で検出した主測距点の検出デフォーカス量とS401で設定した連続性判定閾値の大きさの比較を行う。検出デフォーカス量がS401で決定した連続性判定閾値よりも小さければS502へ遷移し、連続性判定閾値以上であればS503に遷移する。
【0059】
S502では、マイクロコンピュータ124は、今回の焦点検出結果から引き続き被写体捕捉ができていると判定し、フラグFlagCatchFailを0に設定し、連続性判定処理を終了する。
【0060】
S503では、マイクロコンピュータ124は、今回の焦点検出結果から被写体捕捉ができていないと判定し、フラグFlagCatchFailをインクリメントする。なお、フラグFlagCatchFailは、S502における処理の他に、カメラの起動時、サーボ撮影モードの設定時等の予め決められたタイミングで初期値0に設定される。
【0061】
S504では、マイクロコンピュータ124は、フラグFlagCatchFailが1であるかどうか、すなわち今回初めて被写体補足に失敗したと判断されたかどうかを判定する。フラグFlagCatchFailが1であればS506へ遷移し、そうでなければS505に遷移する。
【0062】
S506において、マイクロコンピュータ124は、経過観察タイマを設定したうえで、連続性判定処理を終了する。経過観察タイマは、被写体捕捉できたと判定されるまで待機する最大の時間を示す。経過観察タイマを設定することによって、経過観察タイマのカウント中であれば、被写体捕捉に失敗した被写体を再度検出できたときに、すぐに追従を再開することができる。
【0063】
一方、S505では、マイクロコンピュータ124は、経過観察タイマが満了しているかどうかを判定する。経過観察タイマが満了していればS507へ遷移し、そうでなければ連続性判定処理を終了する。
【0064】
S507において、マイクロコンピュータ124は、過去の焦点検出履歴や追尾などのデータを消去し、フラグFlagCatchFailをクリアして連続性判定処理を終了する。このように、ユーザが意図的に被写体を変更したときなどは、経過観察タイマが満了すると、すぐに新しい被写体への追従を始めることができる。
【0065】
図6は、S303で行われる動体予測処理の動作の一例を示す。S601では、S301における今回の焦点検出結果を過去の焦点検出履歴に加え、不揮発性メモリ131あるいはマイクロコンピュータ124内の記憶領域に格納する。焦点検出履歴に記録する情報は、今回の焦点検出時刻と像面位置である。なお、像面位置とは、検出デフォーカス量と現在のフォーカスレンズの位置から算出される、被写体にピントが合うフォーカスレンズの位置のことである。
【0066】
S602において、マイクロコンピュータ124は、動体予測を行う条件に当てはまるかどうかを判断する。条件としては、例えば複数回連続で同じ方向に像面位置が動いたかどうかの判定などが挙げられる。動体予測を行う条件に当てはまればS603へ遷移し、そうでなければS606に遷移する。
【0067】
S603で、マイクロコンピュータ124は、過去の焦点検出履歴から、
図9に示すような予測曲線を引くことで予測駆動量と焦点検出結果のばらつきを算出する。
図9の縦軸は像面位置を、横軸は時間を示し、縦軸の像面位置が大きいほど距離が遠いことを示しており、図の履歴は撮影者(カメラ)に近付く被写体を追従している様子を示している。前述した通り、S203における焦点調節処理はサーボ撮影モードでは周期的に実施されており、T
1~T
5は各々、S203で行われる焦点調節処理の実施時刻を表している。予測駆動量は、例えば過去の像面位置とそれぞれの焦点検出時刻を用いた一括最小二乗法によって予測曲線を導出し、この曲線をもとに予測先時刻での像面位置を算出することで得られる。予測先時刻はSW2がONであれば撮影時の時刻を、そうでなければ今回の焦点検出時刻を示す。
【0068】
S604では、マイクロコンピュータ124は、S603で算出した焦点検出結果のばらつきを踏まえて、最終的に予測フォーカス駆動を行うかどうかの判定を行う。具体的には、ばらつきが一定値以上であれば、予測を信用できないと判断し予測フォーカス駆動を行わず、ばらつきが一定値未満であれば、予測を信用していいと判断し予測フォーカス駆動を行う。予測フォーカス駆動を行うと判断した場合S605へ遷移し、そうでなければS606に遷移する。
【0069】
予測フォーカス駆動とは、
図9にて説明した予測曲線に基づき現在の像面位置L3から将来のピントを合わせたい時刻における像面位置までレンズを駆動させる制御である。
図9の黒丸は検出デフォーカス量から求めた像面位置を、白丸は予測する像面位置を示す。例えば
図9のT
4の時刻で検出したデフォーカス量がxであったとする。ここでレンズ駆動してT
5の時点でピントを合わせることを狙う場合には、デフォーカス量yに相当するレンズ駆動を要求することとなる。このデフォーカス量yを算出するには、過去の焦点検出結果から近似曲線を引き、これを予測曲線として、T
5での像面位置を予測する必要がある。このように、T
4で焦点検出を行って、T
5での合焦を狙うため、デフォーカス量yだけフォーカス駆動を行う場合のレンズ駆動を、予測フォーカス駆動という。一方、予測フォーカス駆動を行わない場合、すなわち過去の焦点検出履歴から予測を行わない、もしくは予測結果を利用しない場合、フォーカス駆動量はデフォーカス量x、すなわち検出デフォーカス量となる。
【0070】
S605では、マイクロコンピュータ124は、フォーカス駆動量を予測駆動量に設定し、動体予測処理を終了する。一方、S606では、マイクロコンピュータ124は、フォーカス駆動量を検出デフォーカス量に設定し、動体予測処理を終了する。
【0071】
次に
図7を参照して、S401で行われる連続性判定閾値設定処理の動作の一例を示す。連続性判定閾値とは、引き続き被写体捕捉ができているかを判定するための閾値のことであり、上述したS501における比較処理で用いられる。上述した様に、検出デフォーカス量が連続性判定閾値よりも大きい値であれば被写体捕捉に失敗しており、そうでなければ被写体捕捉に成功していると判定する。
【0072】
S701において、マイクロコンピュータ124は、前回の焦点検出時に距離測定回路142で計測した被写体距離情報を、レンズ内マイクロコンピュータ141、レンズ通信回路103を介して受信することで、現在捕捉中の被写体がカメラに対して一定以上の距離であるかどうかを判定する。被写体がカメラに対して一定以上の距離であればS702へ遷移し、そうでなければS703に遷移する。
【0073】
S702で、マイクロコンピュータ124は、連続性判定閾値を第一の閾値に設定し、連続性判定閾値設定処理を終了する。
【0074】
一方、S703において、マイクロコンピュータ124は、被写体をどれだけ捕捉しやすい条件であるかを示す、被写体捕捉難易度Dを算出する。本実施形態では、被写体捕捉難易度を表す情報(難易度情報)として、前回の焦点検出時にS405で得られた被写体領域の画角内におけるサイズ、S406で得られた障害物の有無、動き検出回路140で検出した角速度情報により得られるカメラの振れ情報の3つを用いる。これらの情報に基づいて、被写体捕捉難易度Dを以下の式(1)により導出する。
O
Dは、検出した被写体領域よりも至近側の合焦位置を示すデフォーカス量が検出された測距点の数を示す。O
Aは、O
Dの算出のために参照する点数を示し、この最大値は画角全体の測距点の数である。J
Dは、動き検出回路140で検出したカメラ振れ量の絶対値を示す。J
Pは、カメラ振れ量J
Dの許容最大値を示す。S
Cは、主測距点と近いデフォーカス量が検出された測距点の数を示す。S
Aは、S
Cの算出のために参照する点数を示し、この最大値は画角全体の測距点の数である。S
Pは、被写体サイズ許容最小量を示し、測距点数で表わされる。
【0075】
上記の被写体捕捉難易度Dは0以上1以下の値であり、値が大きいほど被写体を捕捉しやすく、小さいほど被写体を捕捉しにくいことを表す。
【0076】
S703で算出した被写体捕捉難易度に基づいて、マイクロコンピュータ124は、S704で被写体を捕捉しやすいかどうかを判断する。一例として、D≧0.5であった場合、被写体が捕捉し易く、そうでない場合は、被写体が捕捉しにくいと判断する。D≧0.5であった場合、すなわち被写体を捕捉しやすいと判断した場合、S705へ遷移し、そうでなければS706に遷移する。
【0077】
S705で、マイクロコンピュータ124は、連続性判定閾値を、第一の閾値よりも大きい第二の閾値に設定し、連続性判定閾値設定処理を終了する。この第二の閾値は、被写体距離によって可変であって、至近であるほど大きくなる。
【0078】
S706で、マイクロコンピュータ124は、連続性判定閾値を第二の閾値よりも小さい第三の閾値に設定する。S704で、現在の撮影状況では被写体を捕捉しにくいと判定されているので、連続性判定閾値を第二の閾値に設定してしまうと、引き続き被写体捕捉ができていなくても、それを現在捕捉中の被写体の動きの変化だと判断してしまう可能性がある。そこで、S706では第二の閾値よりも小さく、被写体補足難易度Dに応じて段階的に値を取れる、第三の閾値を採用する。一例として、同じ被写体距離での第二の閾値をD2、第一の閾値をD1とすると、第三の閾値D3は
D3=(D2-D1)・2D+D1 …(2)
と表現することができる。このようにすることで、第三の閾値D3は被写体補足難易度に応じて段階的に第一の閾値D1と第二の閾値D2の間の値を取ることができる。以上のように連続性判定閾値を第三の閾値と設定し、連続性判定閾値設定処理を終了する。
【0079】
次に、第1の実施形態で得られる効果について、
図10及び
図11を用いて説明する
図10は、カメラから比較的近い場所に静止していた被写体がカメラから遠ざかる方向に急加速したときの、像面位置の変化を示す。横軸は時刻、縦軸は像面位置を示す。縦軸が大きいほど被写体距離は大きくなる。点t
1、t
2、t
3のように、被写体が静止している間は、像面位置が変化しない。しかし、被写体が急加速すると、点t
5のようにこれまで静止していた過去の焦点検出履歴の傾向からでは予測できない大きなデフォーカス量変化が観測される。このように、静止した状態から急速に動き出す被写体の追従は、被写体の動きの特性がこれまでの焦点検出履歴と大きく異なっているために、次の瞬間に大きな動きをすると予想するのが難しい。さらに撮影者(カメラ)と被写体の距離が近いほど、被写体が動いた瞬間の像面移動量が非常に大きく観測される。そのため、近景で静止した状態から急速に動き出す被写体の追従は特に測距履歴の連続性を観測することが難しくなってしまう。
【0080】
そこで本実施形態では、被写体がカメラから比較的近い場所にあるときに連続性判定閾値を大きくすることで、このような急激な像面位置変化に対応できるようになる。
【0081】
一方、
図11のように、被写体の手前に障害物がある場合(
図11(a))、被写体が小さい場合(
図11(b))、カメラが振れている場合等の被写体を捉え続けにくい状況で、単純に被写体までの距離に応じた対策を行うと、追従対象ではない被写体を捉えてしまう可能性がある。そこで、本願発明では、被写体を捉え続けにくい状況である場合を判定し、連続性判定閾値を抑えることで、追従対象ではない被写体を捕捉対象として誤検知しないようにする。
【0082】
以上説明した通り、本実施形態では、今回の焦点検出結果が現在捕捉中の被写体を引き続き捕捉できているかどうか判定するための閾値を近景において大きな値に設定する。これは、撮影者(カメラ)と被写体の距離が近いほど、被写体の動きに対し検出されるデフォーカス量変化が大きくなるためである。更に被写体の捕捉しにくさを評価し、この評価結果に応じて今回の焦点検出結果が現在捕捉中の被写体を引き続き捕捉できているかどうか判定するための閾値を動的に変化させた。具体的には、前回焦点検出時点でのデフォーカス情報より得られる対象被写体の画角内のサイズ、障害物の有無、角速度情報により得られるカメラの振れ情報の3つで評価した。これによって、近景で急に動き出す被写体に対しても追従を可能とした。また、所望でない被写体を捕捉対象として誤検知しやすい環境では、近景での被写体追従性を保持しつつ誤検知を抑えることを実現可能とした。
【0083】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、第三の閾値が被写体の追従し易さによって変化する数値として設定される例を説明した。これに対し、第2の実施形態では、第三の閾値が第一の閾値と一致する、すなわち被写体を追従しにくい条件下では、被写体が前回と同一であると認めるデフォーカス量の差を大きくしない例について説明する。
【0084】
以下、
図12を参照して、本発明の第2の実施形態における連続性判定閾値設定処理について説明する。なお、第2の実施形態は、
図4のS401における処理が第1の実施形態と異なり、
図12に示す処理が
図7に示す処理の代わりに実行される。それ以外は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0085】
図12は、第2の実施形態においてS401で行われる連続性判定閾値設定処理の動作の一例を示す図である。
【0086】
S1201では、マイクロコンピュータ124は、距離測定回路142により計測した被写体距離情報を、レンズ内マイクロコンピュータ141、レンズ通信回路103を介して受信することで、現在捕捉中の被写体がカメラに対して一定以上の距離であるかどうかを判定する。被写体が一定以上の距離であればS1202へ遷移し、そうでなければS1204に遷移する。
【0087】
S1202では、マイクロコンピュータ124は、連続性判定閾値を第一の閾値に設定し、連続性判定閾値設定処理を終了する。
【0088】
一方S1204において、マイクロコンピュータ124は、被写体を捕捉しにくいかどうかを判断する。ここでは、以下の3条件のいずれかに該当するかどうかを判定する。
・デフォーカス情報より得られる対象被写体の画角内のサイズが一定値より小さい
・障害物がある(画角内に所望の被写体の手前に写っている被写体がある)
・角速度情報により得られるカメラの振れ量が一定値より大きい
上述したいずれかの条件に該当する場合は、被写体を捕捉しにくく、そうでない場合は被写体を捕捉し易いと判断する。被写体を捕捉し易いと判断した場合はS1206へ遷移し、そうでなければS1202に遷移する。
【0089】
S1206で、マイクロコンピュータ124は、連続性判定閾値を第一の閾値よりも大きい第二の閾値に設定し、連続性判定閾値設定処理を終了する。この第二の閾値は、被写体距離に応じて可変であって、至近であるほど大きくなる。
【0090】
以上説明した通り、第2の実施形態では、被写体を追い続けられないことが危惧される場合には、デフォーカス量の差異が大きく出たときに同一被写体と認めにくくなるようにした。これにより、第1の実施形態に比べ、より連続性判定閾値を拡張しにくく設定することができ、特に誤った被写体を捕捉することを避けたい場合に適当である。また、演算量を減らすことができるため、全体のパフォーマンスに大きな影響を与えることがない。
【0091】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第1の実施形態では、被写体の追従しにくさを評価する条件として、デフォーカス情報より得られる対象被写体の画角内のサイズ、障害物の有無、角速度情報により得られるカメラの振れ情報の3つを用いた。
【0092】
第3の実施形態では、カメラ姿勢とカメラ振れ情報から得られるパン・チルト情報あるいはxy平面動きベクトル、被写界深度、ユーザ設定の被写体の動き特性、画像処理により取得される被写体サイズ、顔や動物などの被写体の個数、の情報(難易度情報)を用いて、被写体の補足しにくさを表現する。
【0093】
以下、
図13と被写体捕捉難易度算出方法の説明によって、本発明の第3の実施形態における被写体捕捉難易度の算出方法の違いについて説明する。なお、第3の実施形態では、第1の実施形態で説明した
図4の処理の代わりに、
図13に示す処理を行うが、それ以外は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。また、
図13において、
図4における処理と同じ処理には同じ参照番号を付し、説明を省略する。
【0094】
図13に示す焦点検出処理において、S1304で、マイクロコンピュータ124は、映像信号処理回路117で取得した画像から、人の顔・身体や動物といった、画像内における被写体の位置と数を抽出する。
【0095】
S1305で、マイクロコンピュータ124は、S1304で抽出した被写体の中から、主被写体を選択し、画面内の被写体サイズを算出する。主被写体としては、ユーザが予め設定した優先すべき被写体や、より大きく写っている被写体を優先的に選択する。
【0096】
S1306で、マイクロコンピュータ124は、S1305で抽出した主被写体の領域と、S1303で作成したデフォーカスマップを用いて、主測距点を決定する。
【0097】
次に、
図7のS703で行われる被写体捕捉難易度の算出方法について、第1の実施形態との違いを説明する。なお、被写体捕捉難易度の算出方法は第1の実施形態と異なるが、その他の処理は
図7の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0098】
本実施形態では、上述したように、被写体捕捉難易度の算出に、xy平面動きベクトルあるいはパン・チルト情報、被写界深度、被写体の動き特性、被写体サイズ、被写体の個数を利用する。xy平面動きベクトルは、前回の焦点検出時にS1305で検出した主被写体の、その前の焦点検出時における画面上での位置の違いを表現したものである。パン・チルト情報は、動き検出回路140から得られたカメラ姿勢とカメラ振れ情報から算出される。被写界深度は、駆動回路105で駆動させた絞り量から算出され、被写体の動き特性は、
図14に示す選択画面にて予めユーザが設定する。被写体サイズは、S1305における画像処理により取得され、顔や動物などの被写体の個数は、S1304で検出されたものを用いる。なお、被写体の動き特性を「速い」に設定すると連続性判定閾値を大きく、「遅い」に設定すると連続性判定閾値を小さく設定できるようにする。このようにすることで、動きが速いと想定される被写体にはデフォーカス量の増減に対応しやすく、動きが遅いと想定される被写体には測距ノイズに左右されにくくすることができる。
【0099】
本実施形態における被写体捕捉難易度Dは、以下の式(3)により表すことができる。
式(3)において、V
Dは、観測したxy平面動きベクトル(画面上での被写体の動きベクトル)を示す。M
Vは、被写体を安定的に追えていると考えられる画面上での被写体の動き量を示す。E
mは、許容できる最小の被写界深度を示す。E
Dは、今回のカメラ設定での被写界深度を示す。E
Mは、E
Dが取りうる最大値を示す。I
mは、被写体を安定的に追える限界の最小被写体サイズを示す。I
Dは、画像処理によって算出した被写体のサイズを示す。I
Aは、画角のサイズを示す。F
Nは、被写体の動き特性設定値の全段数を示す。F
Uは、ユーザの設定した被写体の動き特性設定値を示す。Nは顔や動物などの被写体の個数を示す。なお、被写体を検出できなかったときであっても、Nの最小値は1とする。
【0100】
また、被写体が背景と同系色であるなど、被写体を捕捉しにくいことでxy平面動きベクトルが観測できないことがある。このとき、式(3)には、xy平面動きベクトルVDの代わりに、観測したカメラのパン・チルトベクトルPDを用いる。更に、被写体を安定的に追えていると考えられる画面上での被写体の動き量MVの代わりに、被写体を安定的に追えると考えられるカメラの最大移動量MPを用いる。
【0101】
以上説明した通り第3の実施形態によれば、第1の実施形態とは異なる観点で被写体の捉えにくさを表現し、評価結果に応じて今回の焦点検出結果が現在捕捉中の被写体を引き続き捕捉できているか判定するための閾値を動的に変化させることができる。具体的には、カメラが揺れていても被写体が追従できていると推測できる状況ならば、被写体連続性判定閾値を小さくしないでよい。また、画像にどれだけの影響が出るかを考慮しながら閾値を設定することができる。さらに、他に画面上に見える別の被写体へのフォーカスの移り易さや、ユーザ設定の被写体の動き特性も加味した被写体連続性判定閾値とすることができる。
【0102】
<変形例>
上述した第1乃至第3の実施形態では、カメラが焦点検出専用の焦点検出回路110を有する場合について説明した。
【0103】
一方、近年では、1つのマイクロレンズに対して複数の光電変換部が設けられた撮像素子により瞳分割信号を取得し、得られた複数の瞳分割信号の位相差に基づいて焦点検出を行う、いわゆる像面位相差AFが行われている。
【0104】
図15は、像面位相差AFを行うことができる撮像素子を構成する画素配列を示す図であり、撮像素子113として用いることができる。
【0105】
図15に示す様に、マイクロレンズアレイを形成する各マイクロレンズ201に対して、複数の光電変換部201A,201Bが対応するように配置されている。図中(0,0)、(1,0)、(0,1)等で示される各領域は、撮像素子における単位画素202を示し、各単位画素202は、1つのマイクロレンズ201と、複数の光電変換部201A,201Bとから構成される。なお、本実施形態では単位画素202には2つの光電変換部201A,201BがX軸方向に並べられた場合を示しているが、Y軸方向に並べても、また、3つ以上の光電変換部を各マイクロレンズ201に対応するように構成しても良い。
【0106】
このように構成された、X軸方向に並ぶ複数の単位画素202のうち、瞳分割された光電変換部201Aの焦点検出用信号群で構成した被写体像をA像、瞳分割された光電変換部201Bの焦点検出用信号群で構成した被写体像をB像とする。そして、A像とB像に対して相関演算を実施することで、像のずれ量(位相差)を検出する。さらに、像のずれ量に対して焦点位置と光学系の特性に応じて決まる変換係数を乗じることで、画面内の任意の被写体位置に対応した焦点位置を算出することができる。ここで算出された焦点位置情報を基に、撮影レンズ101に含まれるフォーカスレンズを制御することで、焦点状態を検出する撮像面位相差AFが可能となる。
【0107】
また、単位画素202毎に光電変換部201Aの信号と光電変換部201Bの信号を加算して出力することで、画像信号(A+B像)を得ることができる。
【0108】
上述した撮像素子を用いた場合にも、第1乃至第3の実施形態で説明した処理を実施することができると共に、焦点検出回路110を省略することができる。
【0109】
<他の実施形態>
また、本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0110】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0111】
101:撮影レンズ、102:レンズ駆動回路、104:絞りユニット、105:絞り駆動回路、109:測光回路、110:焦点検出回路、113:撮像素子、117:映像信号処理回路、124:マイクロコンピュータ、125:操作部材、140:動き検出回路、141:レンズ内マイクロコンピュータ、142:距離測定回路