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特許7431588作業者の管理システム、作業者の管理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】作業者の管理システム、作業者の管理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/0631 20230101AFI20240207BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
G06Q10/0631
G05B19/418 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020005159
(22)【出願日】2020-01-16
(65)【公開番号】P2021114023
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】西村 圭介
【審査官】庄司 琴美
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-148730(JP,A)
【文献】国際公開第2004/040388(WO,A1)
【文献】特開2000-214905(JP,A)
【文献】特開2002-373235(JP,A)
【文献】特開2018-011892(JP,A)
【文献】特開2014-027961(JP,A)
【文献】特開平07-056997(JP,A)
【文献】特開2009-048580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工程の疲労度及びストレス度を含む工程情報と、複数の作業者のスキル、疲労耐性度及びストレス耐性度を含む作業者情報と、が保存されたデータベースと、
複数の前記作業者の前記スキルに基づいてそれぞれの前記工程において作業可能な前記作業者を判断する判断部と、
前記判断部による判断結果を前提としてそれぞれの前記工程に対し、それぞれの前記工程の前記疲労度及び前記ストレス度に相応する前記疲労耐性度及び前記ストレス耐性度を有する前記作業者を優先的に割り当てる割り当て部と、
を備え、
前記割り当て部は、
それぞれの前記工程の前記疲労度とそれぞれの前記工程に割り当てられた前記作業者の前記疲労耐性度との比較結果、及び、それぞれの前記工程の前記ストレス度とそれぞれの前記工程に割り当てられた前記作業者の前記ストレス耐性度との比較結果に基づき、前記作業者に相応するサイクルタイムを推定する作業者の管理システム。
【請求項2】
前記割り当て部は、前記判断部による判断結果を前提としてそれぞれの前記工程に割り当てられた前記作業者に相応する前記サイクルタイムの総和が最小になるように、それぞれの前記工程に対し前記作業者を割り当てる請求項に記載の作業者の管理システム。
【請求項3】
前記工程情報は、それぞれの前記工程の標準サイクルタイムを含み、
前記割り当て部は、
それぞれの前記工程について、割り当てられた前記作業者の前記疲労耐性度が前記工程の前記疲労度より小さい場合、又は、割り当てられた前記作業者の前記ストレス耐性度が前記工程の前記ストレス度より小さい場合、下記式(1)に基づいて前記作業者に相応する前記サイクルタイムを推定する請求項1または2に記載の作業者の管理システム。
tX=ta×R 式(1)
(ここで、
tXは前記作業者に相応する前記サイクルタイムであり、
taは前記工程の前記標準サイクルタイムであり、
Rは、前記工程の前記疲労度/割り当てられた前記作業者の前記疲労耐性度で表される疲労率、又は、前記工程の前記ストレス度/割り当てられた前記作業者の前記ストレス耐性度で表されるストレス率のうちの大きい方の比率である。)
【請求項4】
それぞれの前記工程について、割り当てられた前記作業者が継続して勤務可能な時間を推定する推定部をさらに備え、
前記推定部は、
それぞれの前記工程について、割り当てられた前記作業者に相応する前記サイクルタイムが、前記工程に対して設定された予定サイクルタイムよりも長い場合、
(前記作業者に相応する前記サイクルタイム/前記工程の前記予定サイクルタイム)で表される負荷率を算出し、
標準的に継続して勤務可能な時間を前記負荷率によって補正した時間を、前記作業者が継続して勤務可能な時間として推定する請求項1~3のいずれか1つに記載の作業者の管理システム。
【請求項5】
それぞれの前記工程について、それぞれの前記工程の稼働予定時間がそれぞれの前記工程に割り当てられた前記作業者が継続して勤務可能な時間よりも長い場合、前記作業者を追加する作業者追加部をさらに備える請求項に記載の作業者の管理システム。
【請求項6】
前記作業者を評価する評価部をさらに備え、
前記評価部は、
それぞれの前記工程に割り当てられた前記作業者の達成率と、前記それぞれの前記工程の前記疲労度とそれぞれの前記工程に割り当てられた前記作業者の前記疲労耐性度との比較結果と、それぞれの前記工程の前記ストレス度とそれぞれの前記工程に割り当てられた前記作業者の前記ストレス耐性度との比較結果と、に基づきそれぞれの前記工程に割り当てられた前記作業者を評価する請求項1~のいずれか1つに記載の作業者の管理システム。
【請求項7】
判断部が、複数の工程の疲労度及びストレス度を含む工程情報と、複数の作業者のスキル、疲労耐性度及びストレス耐性度を含む作業者情報と、が保存されたデータベースを参照し、複数の前記作業者の前記スキルに基づいて、それぞれにおいて作業可能な前記作業者を判断する工程と、
割り当て部が、前記判断結果を前提としてそれぞれの前記工程に対して、それぞれの前記工程の前記疲労度及び前記ストレス度に相応する前記疲労耐性度及び前記ストレス耐性度を有する前記作業者を優先的に割り当てる工程と、
前記割り当て部、それぞれの前記工程の前記疲労度とそれぞれの前記工程に割り当てられた前記作業者の前記疲労耐性度との比較結果、及び、それぞれの前記工程の前記ストレス度とそれぞれの前記工程に割り当てられた前記作業者の前記ストレス耐性度との比較結果に基づき、前記作業者に相応するサイクルタイムを推定する工程と、
を備える作業者の管理方法。
【請求項8】
コンピュータに、
複数の工程の疲労度及びストレス度を含む工程情報と、複数の作業者のスキル、疲労耐性度及びストレス耐性度を含む作業者情報と、が保存されたデータベースを参照し、複数の前記作業者の前記スキルに基づいて、それぞれの前記工程において作業可能な前記作業者を判断する手順と、
前記判断結果を前提としてそれぞれの前記工程に対して、それぞれの前記工程の前記疲労度及び前記ストレス度に相応する前記疲労耐性度及び前記ストレス耐性度を有する前記作業者を優先的に割り当てる手順と、
それぞれの前記工程の前記疲労度とそれぞれの前記工程に割り当てられた前記作業者の前記疲労耐性度との比較結果、及び、それぞれの前記工程の前記ストレス度とそれぞれの前記工程に割り当てられた前記作業者の前記ストレス耐性度との比較結果に基づき、前記作業者に相応するサイクルタイムを推定する手順と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、作業者の管理システム、作業者の管理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、作業工程で作業する作業者の疲労度及びストレス度を取得し、生産管理に役立てることが提案されている。このような作業者の疲労度及びストレス度を活用して、作業者の働きやすさを向上させたいという要望がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-148730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態の目的は、作業者の疲労度及びストレス度を活用して、作業者の働きやすさを向上させることができる作業者の管理システム及び作業者の管理方法と、作業者の管理システム及び作業者の管理方法に用いられるプログラムと、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る作業者の管理システムは、複数の工程の疲労度及びストレス度を含む工程情報と、複数の作業者のスキル、疲労耐性度及びストレス耐性度を含む作業者情報と、が保存されたデータベースと、複数の前記作業者の前記スキルに基づいてそれぞれの前記工程において作業可能な前記作業者を判断する判断部と、前記判断部による判断結果を前提としてそれぞれの前記工程に対し、それぞれの前記工程の前記疲労度及び前記ストレス度に相応する前記疲労耐性度及び前記ストレス耐性度を有する前記作業者を優先的に割り当てる割り当て部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る作業者の管理システムの適用例を示す模式図である。
図2】実施形態に係る作業者の管理システムを示すブロック図である。
図3図3(a)は作業者情報を例示する図であり、図3(b)は横軸に疲労度をとり縦軸に人数を取って共通の作業における疲労度の分布を例示するグラフであり、図3(c)は横軸にストレス度をとり縦軸に人数を取って共通の作業におけるストレス度の分布を例示するグラフである。
図4図4(a)は工程情報を例示する図であり、図4(b)は横軸に疲労度をとり縦軸に人数を取って各工程における疲労度の分布を例示するグラフであり、図4(c)は横軸にストレス度をとり縦軸に人数を取って各工程におけるストレス度の分布を例示するグラフである。
図5図5(a)は勤務情報を例示する図であり、図5(b)は計画データを例示する図であり、図5(c)は、実績データを例示する図である。
図6】実施形態に係る作業者の管理方法のうち、各工程への作業者の割り当て方法を示すフローチャートである。
図7】各工程への作業者の割り当て方法を例示する図である。
図8】作業者に相応するサイクルタイム及び作業者が継続して勤務可能な時間を算出する方法を例示する図である。
図9】割り当て結果の出力を例示する図である。
図10】実施形態に係る作業者の管理方法のうち、各作業者の評価方法を示すフローチャートである。
図11】評価結果の出力を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(管理システム)
図1は、本実施形態に係る作業者の管理システムの適用例を示す模式図である。
図1に示すように、管理システム1は、複数の作業者Xの中から複数のラインAの各工程aに作業者Xを割り当るとともに、各作業者Xを評価するシステムである。ここで「ラインA」とは、一連の工程aを意味する。なお、以下では、複数のラインAのそれぞれを、Aに数字を組み合わせた文字列で区別し、複数の工程aのそれぞれをaに数字を組み合わせた文字列で区別する。例えば、ラインA1は、一連の工程a11、a12、a13からなる。ラインA2は、一連の工程a21、a22、a23からなる。なお、管理システム1は、1つのラインAのみに適用されてもよい。
【0008】
図2は、本実施形態に係る作業者の管理システムを示すブロック図である。
図2に示すように、管理システム1は、概説すると、データベースDと、入力部10と、判断部20と、割り当て部30と、作業条件設定部41と、推定部42と、判定部50と、作業者追加部61と、計画変更部62と、評価部70と、出力部80と、を備える。以下、各部について詳述する。
【0009】
(データベース)
データベースDには、管理システム1が各工程aへの作業者Xの割り当て行う前に、作業者情報D1、工程情報D2、勤務情報D3、計画データD4が保存されている。また、データベースDには、管理システム1が各作業者Xの評価を行う前に、実績データD5が保存されている。
【0010】
(作業者情報)
図3(a)は作業者情報を例示する図であり、図3(b)は横軸に疲労度をとり縦軸に人数を取って共通の作業における複数の作業者の疲労度の分布を例示するグラフであり、図3(c)は横軸にストレス度をとり縦軸に人数を取って共通の作業における複数の作業者のストレス度の分布を例示するグラフである。
図3(a)に示すように、作業者情報D1は、例えば、複数の作業者XのスキルK、疲労耐性度HXt、及びストレス耐性度SXtを含む。
【0011】
スキルKは、後述する判断部20が各工程aにおいて作業可能な作業者Xを判断できる情報である限り特に限定されない。スキルKは、例えば、各作業者Xが各工程aを研修済みであるか否かの情報等であってもよいし、各工程aにおいて必要とされる資格や技能を有しているか否かの情報であってもよい。
【0012】
「疲労耐性度HXt」は、複数の作業者Xの筋肉等の肉体的な負荷への耐性を相対評価したものである。疲労耐性度HXtは、数値で表され、値が大きくなるほど肉体的な負荷への耐性が高く、値が小さくなるほど肉体的な負荷への耐性が低い。例えば、筋力量が多い作業者や持久力がある作業者Xは、肉体的な負荷への耐性が高いため、疲労耐性度HXtが高い。
【0013】
各作業者Xの疲労耐性度HXtは、管理システム1を使用する前に取得されている。各作業者Xの疲労耐性度HXtは、例えば、以下のようにして取得できる。
【0014】
まず、全ての作業者Xは、疲労耐性度HXtを計測するための共通の作業を行う。この際、各作業者Xには計測器が取り付けられ、呼吸数等の肉体的な負荷を示す生体データが取得される。取得した生体データに基づき、共通の作業における各作業者Xの疲労度HXが相対評価される。これにより、図3(b)に示すように、横軸に疲労度HXをとり縦軸に人数pを取って、共通の作業における複数の作業者Xの疲労度HXの分布を示すデータが得られる。疲労度HXの分布データのピーク値が、共通の作業の標準疲労度Hoとして設定される。各作業者Xの疲労耐性度HXtは、下記の式(1)から算出される。
【0015】
HXt=Ho/HX 式(1)
HXt:作業者Xの疲労耐性度
Ho:標準疲労度
HX:共通の作業における作業者Xの疲労度
【0016】
「ストレス耐性度SXt」は、複数の作業者Xの精神的な負荷への耐性を相対評価したものである。ストレス耐性度SXtは、数値で表され、値が大きくなるほど精神的な負荷への耐性が高く、値が小さくなるほど精神的な負荷への耐性が低い。
【0017】
各作業者Xのストレス耐性度SXtは、管理システム1を使用する前に取得されている。各作業者Xのストレス耐性度SXtは、例えば、以下のようにして取得できる。
【0018】
まず、全ての作業者Xは、ストレス耐性度SXtを計測するための共通の作業を行う。この際、各作業者Xには計測器が取り付けられ、心電波形等の精神的な負荷を示す生体データが取得される。取得した生体データに基づき、共通の作業における各作業者Xのストレス度SXが相対評価される。これにより、図3(c)に示すように、横軸にストレス度SXをとり縦軸に人数pを取って、共通の作業における複数の作業者Xのストレス度SXの分布を示すデータが得られる。ストレス度SXの分布データのピーク値が、共通の作業の標準ストレス度Soとして設定される。各作業者Xのストレス耐性度SXtは、下記の式(2)から算出される。
【0019】
SXt=So/SX 式(2)
SXt:作業者Xのストレス耐性度
So:標準ストレス度
SX:共通の作業における作業者Xのストレス度
【0020】
なお、作業者Xが経験を積むにつれ、スキルK、疲労耐性度HXt及びストレス耐性度SXtは変化する可能性がある。そのため、作業者情報D1は、更新されてもよい。
【0021】
(工程情報)
図4(a)は工程情報を例示する図であり、図4(b)は横軸に疲労度をとり縦軸に人数を取って各工程における疲労度の分布を例示するグラフであり、図4(c)は横軸にストレス度をとり縦軸に人数を取って各工程におけるストレス度の分布を例示するグラフである。
図4(a)に示すように、工程情報D2は、例えば、複数の工程aの疲労度Ha、ストレス度Sa、標準サイクルタイムtaを含む。
【0022】
「工程aの疲労度Ha」は、複数の工程aにおける肉体的な負荷を相対評価したものである。疲労度Haは、数値で表され、値が大きくなるほど肉体的な負荷が大きく、値が小さくなるほど肉体的な負荷が小さい。例えば、身体を動かす作業が多い工程や重量物を運搬する作業を含む工程aでは、肉体的な負荷が大きいため、疲労度Haが高い。
【0023】
「工程aのストレス度Sa」は、複数の工程aにおける精神的な負荷を相対評価したものである。ストレス度Saは、値が大きくなるほど精神的な負荷が大きく、値が小さくなるほど精神的な負荷が小さい。例えば、緻密な作業が多い工程では精神的な負荷が大きいため、ストレス度Saが高い。
【0024】
各工程aの疲労度Ha及びストレス度Saは、管理システム1を使用する前に取得されている。各工程aの疲労度Ha及びストレス度Saは、例えば、以下の手順で取得できる。
【0025】
先ず、各工程aの1サイクルの標準作業が定められる。複数の作業者Xが、各工程aの1サイクルの標準作業を所定の時間内に行う。この際、各作業者Xには計測器が取り付けられ、肉体的な負荷を示す生体データ及び精神的な負荷を示す生体データが取得される。そして取得したこれらの生体データに基づき、各工程aにおける各作業者Xの疲労度HX及びストレス度SXが相対評価される。
【0026】
これにより、図4(b)に示すように、横軸に疲労度HXをとり縦軸に人数pを取って、各工程aにおける複数の作業者Xの疲労度HXの分布を示すデータが得られる。また、図4(c)に示すように、横軸にストレス度SXをとり縦軸に人数pを取って、各工程aにおける複数の作業者Xのストレス度SXの分布を示すデータが得られる。各工程aの疲労度Haは、下記の式(3)から算出される。また、各工程aのストレス度Saは、下記の式(4)から算出される。
【0027】
Ha=Hpa/Ho 式(3)
Ha:工程aの疲労度
Ho:標準疲労度
Hpa:工程aにおける疲労度HXの分布データのピーク値
【0028】
Sa=Spa/So 式(4)
Sa:工程aのストレス度
So:標準ストレス度
Spa:工程aにおけるストレス度SXの分布データのピーク値
【0029】
このように、疲労耐性度HXt及び疲労度Haは、標準疲労度Hoを共通の基準として定義できる。また、ストレス耐性度SXt及びストレス度Saは、標準ストレス度Soを共通の基準として定義できる。ただし、疲労耐性度HXt、ストレス耐性度SXt、疲労度Ha、及びストレス度Saを取得する具体的な手順は、上記に限定されない。
【0030】
「工程aの標準サイクルタイムta」は、工程aの1サイクルの標準作業を行うのに要する標準的な時間を意味する。標準サイクルタイムtaは、例えば、WF法(Work Factor Method)やMTM法(Method Time Measurement)等の方法に準拠して取得される。
【0031】
(勤務情報)
図5(a)は勤務情報を例示する図であり、図5(b)は計画データを例示する図であり、図5(c)は、実績データを例示する図である。
図5(a)に示すように、勤務情報D3は、例えば、一定期間内の各日付について、各作業者Xの出勤や休暇等の予定を示す勤務スケジュールである。
【0032】
(計画データ)
図5(b)に示すように、計画データD4は、例えば、一定期間内の各日付の作業計画を示すデータである。例えば、各ラインAが物を生産するラインである場合、計画データD4は、各ラインAにおいて生産する予定の品種y及び各品種yの生産する予定の数量n等を含む。
【0033】
(実績データ)
実績データD5は、例えば、各ラインAの一日の作業が終了する度に更新される。実績データD5は、作業者Xが割り当てられた工程aと、その工程aにおけるその日に要求された作業の達成率Jと、を含む。達成率Jは、例えば、下記式(5)で定義される。
達成率J=その日の実際の処理数/その日に要求された処理数 式(5)
【0034】
(入力部)
図2に示すように、入力部10は、管理システム1への入力を受け付ける。使用者は、管理システム1に対して、端末を用いて各工程aへの作業者Xの割り当て指示や作業者Xの評価指示等を行う。入力部10は、端末から作業者Xの割り当て指示や作業者Xの評価指示等を受ける。
【0035】
(判断部)
判断部20は、例えば、入力部10が端末から各工程aへの作業者Xの割り当て指示を受けた場合に、データベースDに保存されている計画データD4を参照して、割り当てが要求された日付ごとに、稼働が必要な工程aを判断する。そして、判断部20は、割り当てが要求された日付ごとに、勤務情報D3及び作業者XのスキルKに基づいて、稼働が必要な各工程aにおいて作業可能な作業者Xを判断する。
【0036】
(割り当て部)
割り当て部30は、データベースDの作業者情報D1及び工程情報D2を参照し、判断部20による判断結果を前提として各工程aに対し、各工程aの疲労度Ha及びストレス度Saに相応する疲労耐性度HXt及びストレス耐性度SXtを有する作業者Xを優先的に割り当てる。
【0037】
「疲労度Ha及びストレス度Saに相応する疲労耐性度HXt及びストレス耐性度SXt」とは、疲労耐性度HXtが疲労度Ha以上であるか又は疲労度Haに近い値であり、ストレス耐性度SXtがストレス度Sa以上であるか又はストレス度Saに近い値であることを意味する。これにより、複数の工程aのそれぞれに対して、各作業者XのスキルKだけでなく、肉体的な負荷及び精神的な負荷の観点から相性のよい作業者Xを割り当てることができる。
【0038】
例えば、全ての工程aに、疲労度Ha以上の疲労耐性度HXtを有し、ストレス度Sa以上のストレス耐性度SXtを有する作業者Xを割り当てることができない場合がある。このような場合、割り当て部30は、例えば、判断部20による判断結果を前提として、各工程aに割り当てられた作業者Xに相応するサイクルタイムtXの総和が最小となるように、各工程aに作業者Xを割り当てる。
【0039】
「相応するサイクルタイムtX」とは、作業者Xの疲労耐性度HXtと割り当てられた工程aの疲労度Haとの比較結果及び作業者Xのストレス耐性度SXtと割り当てられた工程aのストレス度Saとの比較結果から想定される各作業者Xに相応する1サイクルあたりの作業時間を意味する。
【0040】
作業者Xが、割り当てられた工程aの疲労度Haより大きい疲労耐性度HXtを有し、かつ、割り当てられた工程aのストレス度Saより大きいストレス耐性度SXtを有する場合、その作業者Xは、標準サイクルタイムta内に肉体的及び精神的な余裕を持って作業できる。一方、作業者Xが、割り当てられた工程aの疲労度Haより小さい疲労耐性度HXtを有するか、又は、割り当てられた工程aのストレス度Saより小さいストレス耐性度SXtを有する場合、標準サイクルタイムta内に作業を行うためには、その作業者Xには、肉体的及び精神的な負荷が加わる。
【0041】
そこで、割り当て部30は、以下の手順で各工程aに割り当てられた作業者Xに相応するサイクルタイムtXを推定する。まず、割り当て部30は、下記式(6)に基づいて、疲労率RHを算出する。
【0042】
RH=Ha/HXt 式(6)
RH:疲労率
Ha:工程aの疲労度
HXt:作業者Xの疲労耐性度
【0043】
疲労率RH=1で作業者Xに加わる肉体的な負荷を標準とすれば、疲労率RH<1の場合、(工程aの疲労度Ha<作業者Xの疲労耐性度HXt)であるから、作業者Xは工程aで作業する際の肉体的な負荷は、標準の負荷よりも小さいと推定できる。疲労率RH>1の場合、(工程aの疲労度Ha>作業者Xの疲労耐性度HXt)であるから、作業者Xが工程aで作業する際の肉体的な負荷は、標準の負荷よりも大きいと推定できる。
【0044】
また、割り当て部30は、下記式(7)に基づいて、ストレス率RSを算出する。
【0045】
RS=Sa/SXt 式(7)
RS:ストレス率
Sa:工程aのストレス度
SXt:作業者Xのストレス耐性度
【0046】
ストレス率RS=1で作業者Xに加わる精神的な負荷を標準とすれば、ストレス率RS<1の場合、(工程aのストレス度Sa<作業者Xのストレス耐性度SXt)であるから、作業者Xは工程aで作業する際の精神的な負荷は、標準の負荷よりも小さいと推定できる。ストレス率RS>1の場合、(工程aのストレス度Sa>作業者Xのストレス耐性度SXt)であるから、作業者Xが工程aで作業する際の精神的な負荷は、標準の負荷よりも大きいと推定できる。
【0047】
割り当て部30は、疲労率RH及びストレス率RSの両方が1以下である(RH≦1∧RS≦1)場合、(作業者Xに相応するサイクルタイムtX=割り当てられた工程aの標準サイクルタイムta)と推定する。割り当て部30は、疲労率RH及びストレス率RSの少なくとも一方が1よりも大きい(RH>1∨RS>1)場合、下記式(8)に基づき、作業者Xに相応するサイクルタイムtXを推定する。
【0048】
tX=ta×R 式(8)
tX:作業者Xに相応するサイクルタイム
ta:工程aの標準サイクルタイム
R:疲労率RH又はストレス率RSのうちの大きい方の比率
【0049】
(作業条件設定部)
作業条件設定部41は、各工程aに対して予定サイクルタイムtp及び各工程aの稼働予定時間Taを設定する。
【0050】
「予定サイクルタイムtp」とは、各工程aにおいて割り当てられた作業者Xに対して1サイクルの標準作業を完了するように指示する予定のサイクルタイムを意味する。作業条件設定部41は、例えば、同一のラインA内に属する工程aの標準サイクルタイムtaの最大値を、そのラインAに属する各工程aの予定サイクルタイムtpに設定する。すなわち、一連の工程aの予定サイクルタイムtpは、最も標準サイクルタイムtaが遅い工程aに、作業時間を合わせるように設定される。
【0051】
「稼働予定時間Ta」は、各工程aを稼働させる予定の時間を意味する。作業条件設定部41は、例えば、予定サイクルタイムtp及び計画データD4の生産予定の数量nに基づいて稼働予定時間Taを設定する。
【0052】
なお、予定サイクルタイムtp及び稼働予定時間Taは、作業条件設定部41によって設定されなくてもよい。例えば、予定サイクルタイムtp及び稼働予定時間Taは、使用者が端末において設定し、入力部10によって管理システム1に入力されてもよい。また、例えば、予定サイクルタイムtp及び稼働予定時間Taは、計画データD4に含まれていてよい。
【0053】
(推定部)
推定部42は、各工程aに割り当てられた作業者Xが継続して勤務可能な時間TXを推定する。
【0054】
割り当てられた工程aの予定サイクルタイムtpが作業者Xに相応するサイクルタイムtXが以上である(tp≧tX)場合、作業者Xは、肉体的及び精神的な余裕をもって各サイクルにおける作業を行うことができると推定される。そのため、作業者Xは、標準的に継続して勤務可能な時間Toの間、継続して勤務できると推定される。
【0055】
「標準的に継続して勤務可能な時間To」は、特に限定されないが、例えば、一日あたりの所定労働時間と規定により許容される最大の残業時間との和である。例えば、所定労働時間が8時間であり、規定により許容される最大の残業時間が2時間である場合、標準的な継続して勤務可能な時間Toは、10時間となる。
【0056】
割り当てられた工程aの予定サイクルタイムtpが作業者Xに相応するサイクルタイムtXよりも短い(tp<tX)場合、作業者Xには各サイクルにおける作業を行う度に肉体的又は精神的な負荷が加わると推定される。そのため、作業者Xは、標準的に継続して勤務可能な時間Toよりも短い時間しか継続して勤務できないと考えられる。
【0057】
推定部42は、例えば、以下の手順で各工程aに割り当てられた作業者Xが継続して勤務可能な時間TXを推定する。まず、推定部42は、下記式(9)に基づき、負荷率RTを算出する。
【0058】
RT=tX/tp 式(9)
RT:負荷率
tX:作業者Xに相応するサイクルタイム
tp:工程aの予定サイクルタイム
【0059】
推定部42は、負荷率RTが1以下である(RT≦1)場合、(作業者Xが継続して勤務可能な時間TX=標準的に継続して勤務可能な時間To)と推定する。推定部42は、負荷率RTが1より大きい(RT>1)場合、作業者Xが継続して勤務可能な時間TXを、下記式(10)に基づいて推定する。なお、指数kは、例えば、k=2である。
【0060】
TX=To/RT 式(10)
TX:作業者Xが継続して勤務可能な時間
To:標準的に継続して勤務可能な時間
RT:負荷率
k:指数
【0061】
(判定部)
判定部50は、各工程aについて作業条件設定部41が設定した稼働予定時間Taが規定の最大勤務時間Ts以下であり、かつ、稼働予定時間Taが割り当てられた作業者Xが継続して勤務可能な時間TX以下であるか(Ta≦Ts∧Ta≦TX)否かを判定する。
【0062】
「規定の最大勤務時間Ts」は、社内規定や法律等により許容される継続して勤務可能な時間の最大値を意味する。規定の最大勤務時間Tsは、例えば、一日あたりの所定労働時間と、規定により許容される最大の残業時間の和である。例えば、所定労働時間が8時間であり、規定により許容される最大の残業時間が2時間である場合、規定の最大勤務時間Tsは、10時間となる。
【0063】
(作業者追加部)
作業者追加部61は、作業条件設定部41が設定した稼働予定時間Taが規定の最大勤務時間Tsよりも長いか、又は、稼働予定時間Taが作業者Xが継続して勤務可能な時間TXよりも長い(Ta>TX)工程aについて、作業者Xを追加できるか否か判断する。そして、作業者追加部61は、作業者Xを追加できる場合は、作業者Xを追加する。
【0064】
作業者追加部61は、例えば、稼働予定時間Taが規定の最大勤務時間Tsよりも長いが、稼働予定時間Taが作業者Xが継続して勤務可能な時間TX以下である工程aについては、稼働予定時間Taから規定の最大勤務時間Tsを差し引いた時間に亘って継続して勤務可能な作業者Xを追加する。追加された作業者Xは、例えば、最大勤務時間Ts経過した後に、割り当て部30が割り当てた作業者Xと交代する。そして、追加された作業者Xは、割り当て部30が割り当てた作業者Xの代りに、稼働予定時間Taから最大勤務時間Tsを差し引いた時間、勤務する。
【0065】
作業者追加部61は、例えば、稼働予定時間Taが作業者Xが継続して勤務可能な時間TXよりも長い工程aについては、稼働予定時間Taから作業者Xが継続して勤務可能な時間TXを差し引いた時間に亘って継続して勤務可能な作業者Xを工程aに追加する。追加された作業者Xは、例えば、割り当て部30が割り当てた作業者Xが継続して勤務可能な時間TX経過した後に、割り当て部30が割り当てた作業者Xと交代する。そして、追加された作業者Xは、割り当て部30が割り当てた作業者Xの代りに、稼働予定時間Taから割り当て部30が割り当てた作業者Xが継続して勤務可能な時間TXを差し引いた時間、勤務する。
【0066】
(計画変更部)
計画変更部62は、作業者追加部61が作業者Xを追加できないと判断した場合、稼働予定時間Taを作業者Xが継続して勤務可能な時間TXに変更する。また、作業条件設定部41は、稼働予定時間Taを変更したことに伴い、生産予定の数量nを変更する。
【0067】
(評価部)
評価部70は、例えば、入力部10が端末から各作業者Xの評価指示を受けた場合に、各工程aに割り当てられた作業者Xの達成率J、疲労率RH、及びストレス率RSに基づき、各工程aに割り当てられた作業者Xを評価する。なお、評価部70は、1日の作業が完了する度等の定められた所定のタイミングで、各作業者Xの評価を行ってもよい。
【0068】
評価部70は、例えば、作業者Xの評価スコアGを算出する。評価スコアGは、数値で表され、値が大きいほど評価が高く、値が小さいほど評価が低い。評価部70は、各作業者Xの疲労率RH及びストレス率RSが1以下である(RH≦1∧RS≦1)場合、(評価スコアG=達成率J)とする。評価部70は、例えば、作業者Xの疲労率RH又はストレス率RSの少なくとも一方の比率が1より大きい(RH>1∨RS>1)場合、下記式(11)に基づき、作業者Xの評価スコアGを算出する。
【0069】
G=J×R
J:達成率
R:疲労率RH又はストレス率RSのうちの大きい方の比率 式(11)
【0070】
(出力部)
出力部80は、例えば、割り当て部30による割り当て結果、作業者追加部61による作業者Xの追加結果、及び計画変更部62による変更結果等を出力する。また、出力部80は、例えば、評価部70による評価結果を出力する。
【0071】
管理システム1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)及びメモリを有するコンピュータによって実現される。管理システム1は、以下に示す作業者の管理方法をコンピュータ実行させるプログラムが記憶された記憶媒体をコンピュータに読み込ませ、プログラムをコンピュータにインストールすることによって提供されてもよい。記録媒体は、例えば、DVD、CD、FD、MO、メモリーカード等である。
【0072】
(作業者の管理方法)
次に、本実施形態に係る作業者の管理方法について説明する。
図6は、本実施形態に係る作業者の管理方法のうち、各工程への作業者の割り当て方法を示すフローチャートである。
【0073】
(作業者の割り当て方法)
先ず、管理方法のうち、各工程への作業者の割り当て方法について説明する。
先ず、使用者は、端末を介して管理システム1に各工程aへの作業者Xの割り当てを指示するとともに、割り当てを行う期間を指定する。これにより、入力部10は、割り当て指示を受けるとともに、割り当てを行う期間等を取得する。割り当てを行う期間は、1日だけでもよいし、1日以上であってもよい。
【0074】
次に、判断部20は、データベースDの計画データD4を参照して、指定された期間内の日付ごとに、作業が必要な工程aを判断する。そして、判断部20は、指定された期間内の日付ごとに、各作業者Xの勤務情報D3及びスキルKに基づいて、作業が必要な各工程aにおいて作業可能な作業者Xを判断する(工程S1)。
【0075】
次に、割り当て部30は、データベースDの作業者情報D1及び工程情報D2を参照し、判断部20による判断結果を前提として作業が必要な各工程aに対し、各工程aの疲労度Ha及びストレス度Saに相応する疲労耐性度HXt及びストレス耐性度SXtを有する作業者Xを優先的に割り当てる(工程S2)。以下、割り当て方法の一例を説明する。
【0076】
図7は、各工程への作業者の割り当て方法を例示する図である。
例えば、工程a11は、疲労度Haが1.5であり、ストレス度Saが0.7である。したがって、工程a11は、疲労度Ha及びストレス度Saが1の場合を標準とした場合、肉体的な負荷が大きく、精神的な負荷が小さい。工程a12は、疲労度Haが0.9であり、ストレス度Saが1.2である。したがって、工程a12は、肉体的な負荷が小さく、精神的な負荷が大きい工程である。工程a13は、疲労度Haが2.0であり、ストレス度Saが1.5である。したがって、工程a13は、肉体的な負荷及び精神的な負荷が大きい工程である。
【0077】
例えば、作業者X1は、疲労耐性度HXtが0.8であり、ストレス耐性度SXtが1.2である。したがって、作業者X1は、疲労耐性度HXt及びストレス耐性度SXtが1の場合を標準とした場合、肉体的な負荷への耐性が低く、精神的な負荷への耐性が高い。作業者X2は、疲労耐性度HXtが1.9であり、ストレス耐性度SXtが1.3である。したがって、作業者X2は、肉体的な負荷への耐性及び精神的な負荷への耐性が高い。作業者X3は、疲労耐性度HXtが1.8であり、ストレス耐性度SXtが0.8である。したがって、作業者X3は、肉体的な負荷への耐性が高く、精神的な負荷への耐性が低い。
【0078】
図7に示す例では、全ての工程aに、疲労度Ha以上の疲労耐性度HXtを有し、ストレス度Sa以上のストレス耐性度SXtを有する作業者Xを割り当てることができない。そこで、割り当て部30は、例えば、判断部20による判断結果を前提として各工程aに割り当てられた作業者Xに相応するサイクルタイムtXの総和が最小となるように、各工程aに作業者Xを割り当てる。
【0079】
具体的には、割り当て部30は、例えば、複数の割り当てパターンのそれぞれについて、各工程aに割り当てられた作業者Xに相応するサイクルタイムtXを推定する。割り当て部30は、複数の割り当てパターンのそれぞれについて、各工程aに割り当てられた作業者Xに相応するサイクルタイムtXの総和を算出し、総和が最小となる割り当てパターンを選出する。
【0080】
これにより、各工程aの疲労度Ha及びストレス度Saに相応する疲労耐性度HXt及びストレス耐性度SXtを有する作業者Xが、各工程aに優先的に割り当てられる。例えば、肉体的な負荷が大きく、精神的な負荷が小さい工程a11には、肉体的な負荷への耐性が高く、精神的な負荷への耐性が低い作業者X3が割り当てられる。肉体的な負荷が小さく、精神的な負荷が大きい工程a12には、肉体的な負荷への耐性が低く、精神的な負荷への耐性が高い作業者X1が割り当てられる。肉体的な負荷及び精神的な負荷が大きい工程a13には、肉体的な負荷への耐性及び精神的な負荷への耐性が高い作業者X2が割り当てられる。
【0081】
次に、作業条件設定部41は、各工程aに対して予定サイクルタイムtp及び各工程aの稼働予定時間Taを設定する(工程S3)。作業条件設定部41は、例えば、工程情報D2の各工程aの標準サイクルタイムtaに基づき予定サイクルタイムtpを設定する。作業条件設定部41は、例えば、予定サイクルタイムtp及び計画データD4に基づき稼働予定時間Taを設定する。
【0082】
次に、推定部42は、各工程aに割り当てられた作業者Xが継続して勤務可能な時間TXを算出する(工程S4)。
【0083】
図8は、作業者に相応するサイクルタイム及び作業者が継続して勤務可能な時間を算出する方法を例示する図である。
例えば、図8に示すように、工程a11に割り当てられた作業者X3の疲労率RH及びストレス率RSは1以下である。したがって、推定部42は、(作業者X3に相応するサイクルタイムtX=工程a11の標準サイクルタイムta)と推定する。作業者X3に相応するサイクルタイムtXが10秒であるため、予定サイクルタイムtpが10秒である場合、上記式(9)で表される負荷率RTは1である。したがって、推定部42は、(作業者X3が継続して勤務可能な時間TX=標準的に継続して勤務可能な時間To=10時間)と推定する。
【0084】
工程a12に割り当てられた作業者X1の疲労率RHは1より大きく、ストレス率RSは1である。したがって、作業者X1に相応するサイクルタイムtXは、R=RSとして、上記式(8)に基づき推定される。したがって、推定された作業者X1に相応するサイクルタイムtXは、工程a12の標準サイクルタイムtaである10秒よりも長い。作業者X1に相応するサイクルタイムtXが10秒より長いため、予定サイクルタイムtpが10秒である場合、負荷率RTは1より大きい。したがって、作業者X1が継続して勤務可能な時間TXは、上記式(10)に基づき推定される。したがって、推定された作業者X1が継続して勤務可能な時間TXは、標準的に継続して勤務可能な時間Toである10時間より短くなる。
【0085】
工程a13に割り当てられた作業者X2の疲労率RH及びストレス率RSは1より大きく、ストレス率RSは疲労率RHより大きい。したがって、作業者X2に相応するサイクルタイムtXは、R=RSとして、上記式(8)に基づき推定される。したがって、推定された作業者X2に相応するサイクルタイムtXは、工程a13の標準サイクルタイムtaである10秒よりも長い。作業者X2に相応するサイクルタイムtXが10秒より大きいため、予定サイクルタイムtpが10秒の場合、負荷率RTは1より大きい。したがって、作業者X2が継続して勤務可能な時間TXは、上記式(10)に基づき推定される。推定された作業者X2が継続して勤務可能な時間TXは、標準的に継続して勤務可能な時間Toである10時間よりも短い。
【0086】
次に、判定部50は、各工程aについて作業条件設定部41が設定した稼働予定時間Taが規定の最大勤務時間Ts以下であり、かつ、稼働予定時間Taが作業者Xが継続して勤務可能な時間TX以下であるか(Ta≦Ts∧Ta≦TX)否かを判定する(工程S5)。
【0087】
判定部50が、稼働予定時間Taが規定の最大勤務時間Ts以下であり、かつ、稼働予定時間Taが作業者Xが継続して勤務可能な時間TX以下である(Ta≦Ts∧Ta≦TX)と判定した場合(S5:Yes)、作業者追加部61は作業者を追加せず、計画変更部62は、稼働予定時間Ta及び生産予定の数量nを変更しない。
【0088】
判定部50が、稼働予定時間Taが規定の最大勤務時間Tsよりも長い(Ta>Ts)と判定した場合、又は、稼働予定時間Taが作業者Xが継続して勤務可能な時間TXより長い(Ta>TX)と判定した場合(S5:No)、作業者追加部61は、作業者Xを追加できるか否かを判断する(工程S6)。
【0089】
作業者追加部61が作業者Xを追加できると判断した場合(工程S6:yes)、作業者追加部61は、作業者Xを追加する(工程S7)。
【0090】
作業者追加部61が作業者Xを追加できないと判断した場合(工程S6:no)、計画変更部62は、稼働予定時間Taを、作業者Xが継続して勤務可能な時間TXに変更する(工程S8)。また、稼働予定時間Taの変更に伴い、計画変更部62は、生産予定の数量nを変更する。
【0091】
図9は、割り当て結果の出力を例示する図である。
次に、出力部80が結果を出力する(工程S9)。出力部80は、例えば、各工程aに割り当てられる作業者X、割り当てられた作業者Xが継続して勤務可能な時間TX、追加する作業者X、稼働予定時間Taの変更の有無、変更前後の稼働予定時間Ta、生産予定の品種y、生産予定の数量nの変更の有無、及び変更前後の生産予定の数量n等を出力する。使用者は、出力を確認し、各工程aに割り当てられる作業者X、追加する作業者X、最終的な稼働予定時間Ta、生産予定の品種y、最終的な生産予定の数量n等を確定させる。
【0092】
(作業者の評価方法)
次に、本実施形態に係る作業者の管理方法のうち、各作業者の評価方法について説明する。
図10は、本実施形態に係る作業者の管理方法のうち、各作業者の評価方法を示すフローチャートである。
先ず、使用者は、端末を介して管理システム1に各工程aへの作業者Xの評価を指示するとともに、評価を行う期間を指定する。これにより、入力部10は、評価指示を受けるとともに、評価を行う期間等を取得する。評価を行う期間は、1日だけでもよいし、1日以上であってもよい。
【0093】
次に、評価部70は、実績データD5から、各作業者Xが割り当てられた工程aを特定する(工程S21)。
【0094】
次に、評価部70は、各作業者Xの疲労耐性度HXtと割り当てられた工程aの疲労度Haから、上記式(6)で表される疲労率RHを算出し、各作業者Xのストレス耐性度SXtと割り当てられた工程aのストレス度Saから、式(7)で表されるストレス率RSを算出する(工程S22)。
【0095】
次に、評価部70は、各作業者Xの達成率J、疲労率RH、及びストレス率RSに基づき、各作業者Xの評価スコアGを算出する(工程S23)。評価部70は、各作業者Xの疲労率RH及びストレス率RSが1以下である場合、(評価スコアG=達成率J)とする。評価部70は、各作業者Xの疲労率RH又はストレス率RSの少なくとも一方の比率が1より大きい場合、上記式(11)に基づき、作業者Xの評価スコアGを算出する。
【0096】
図11は、評価結果を例示する図である。
次に、出力部80は、評価結果を出力する(工程S24)。出力部80は、例えば、各作業者Xの割り当てられた工程a、達成率J、疲労率RH、ストレス率RS、及び評価スコアGを出力する。図11に示すように、作業者X1、X2、X3は、達成率Jが1であっても、疲労率RH又はストレス率RSの少なくとも一方の比率が1より大きければ、その分評価スコアGが大きくなる。
【0097】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態においては、割り当て部30は、判断部20による判断結果を前提として各工程aに対し、各工程aの疲労度Ha及びストレス度Saに相応する疲労耐性度HXt及びストレス耐性度SXtを有する作業者Xが優先的に割り当てる。これにより、複数の工程aのそれぞれに対して、各作業者XのスキルKだけでなく、肉体的な負荷及び精神的な負荷の観点から相性のよい作業者Xを割り当てることができる。その結果、作業者の疲労度及びストレス度を活用して、作業者Xの働きやすさを向上させることができる。
【0098】
また、本実施形態において、割り当て部30は、各工程aの疲労度Haと各工程aに割り当てられた作業者Xの疲労耐性度HXtとの比較結果、及び、各工程aのストレス度Saと各工程aに割り当てられた作業者Xのストレス耐性度SXtとの比較結果に基づき、各工程aに割り当てられた作業者Xに相応するサイクルタイムtXを推定する。このように推定された作業者Xに相応するサイクルタイムtXを活用して、作業者Xの働きやすさを向上させることができる。
【0099】
また、本実施形態において、割り当て部30は、判断部20による判断結果を前提として各工程aに割り当てられた作業者Xに相応するサイクルタイムtXの総和が最小になるように、各工程aに対し作業者Xを割り当てる。そのため、各工程aに割り当てられた作業者Xへの負荷を軽減し、各作業者Xの働きやすさを向上させることができる。
【0100】
また、本実施形態において、管理システム1は、各工程aについて、割り当てられた作業者Xが継続して勤務可能な時間TXを上記式(11)に基づいて推定する推定部42をさらに備える。そのため、各作業者Xの肉体的及び精神的な負荷の観点から、各工程aの稼働予定時間Taに亘って作業者Xが継続して勤務可能か否かを判断できる。
【0101】
また、本実施形態に係る管理システム1は、各工程aについて、稼働予定時間Taが割り当てられた作業者Xが継続して勤務可能な時間TXがより長い場合、作業者Xを追加する作業者追加部61をさらに備える。そのため、割り当て部30に割り当てられた作業者Xが稼働予定時間Taに亘って勤務できなくても、生産予定の数量nが低減することを抑制できる。
【0102】
また、本実施形態に係る管理システム1は、作業者Xを評価する評価部70をさらに備える。評価部70は、各工程aに割り当てられた作業者Xの達成率Jと、各工程aの疲労度Haと各工程aに割り当てられた作業者Xの疲労耐性度HXtとの比較結果と、各工程aのストレス度Saと各工程aに割り当てられた作業者Xのストレス耐性度SXtとの比較結果と、に基づき各工程aに割り当てられた作業者Xを評価する。このため、各作業者Xの疲労耐性度HXt及びストレス耐性度SXtに相応した評価結果を得ることができる。
【0103】
以上説明した実施形態によれば、作業者の疲労度及びストレス度を活用して、作業者の働きやすさを向上させることができる作業者の管理システム及び作業者の管理方法と、作業者の管理システム及び作業者の管理方法に用いられるプログラムと、を実現することができる。
【0104】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明及びその等価物の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
1:管理システム
10:入力部
20:判断部
30:割り当て部
41:作業条件設定部
42:推定部
50:判定部
61:作業者追加部
62:計画変更部
70:評価部
80:出力部
A:ライン
D:データベース
D1:作業者情報
D2:工程情報
D3:勤務情報
D4:計画データ
D5:実績データ
G:評価スコア
HX:作業者の疲労度
HXt:作業者の疲労耐性度
Ha:工程の疲労度
Ho:標準疲労度
J:達成率
K:スキル
RH:疲労率
RS:ストレス率
RT:負荷率
SX:作業者のストレス度
SXt:作業者のストレス耐性度
Sa:工程のストレス度
So:標準ストレス度
Ta:稼働予定時間
Ts:規定の最大勤務時間
TX:作業者が継続して勤務可能な時間
X:作業者
a:工程
k:指数
n:数量
p:人数
tX:作業者に相応するサイクルタイム
ta:工程の標準サイクルタイム
tp:工程に対して設定された予定サイクルタイム
y:品種
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11