(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】電力変換装置及び電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240207BHJP
H02M 7/12 20060101ALI20240207BHJP
H02M 3/28 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M7/12 X
H02M3/155 W
H02M3/28 H
H02M3/28 U
(21)【出願番号】P 2020026558
(22)【出願日】2020-02-19
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【氏名又は名称】鈴木 順生
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【氏名又は名称】川崎 康
(72)【発明者】
【氏名】林 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】高尾 和人
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-029534(JP,A)
【文献】特開2004-350471(JP,A)
【文献】特開2017-077114(JP,A)
【文献】特開2018-107980(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0047693(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00~ 3/44
H02M 5/00~ 5/48
H02M 7/00~ 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子及び第2端子の間に直列に接続される第1スイッチング素子及び第1インダクタと、
前記第2端子及び第3端子の間に直列に接続される前記第1インダクタ及び第2スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を所定の時比率で交互にオン又はオフさせるスイッチング制御部と、
前記第1端子及び前記第2端子の間に接続される第1キャパシタと、
前記第2端子及び前記第3端子の間に接続される第2キャパシタと、を備え、
前記第1端子及び前記第2端子の間に第1全波整流電圧が入力されたときに、前記第2端子及び前記第3端子の間から、前記第1全波整流電圧と同じ電圧振幅及び同じ位相の第2全波整流電圧が出力されるように、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のスイッチング周波数と、前記第1インダクタのインダクタンスと、前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタのキャパシタンスとが設定される、電力変換装置。
【請求項2】
前記スイッチング周波数は、前記第1全波整流電圧の第1次高調波信号から第10次高調波信号までの高調波信号と同じ電圧振幅及び同じ位相の高調波信号を前記第2端子及び前記第3端子から出力可能な周波数である、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記所定の時比率は、50%である、請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1端子及び前記第2端子の間に直列に接続される第3スイッチング素子及び第2インダクタと、
前記第2端子及び前記第3端子の間に直列に接続される第4スイッチング素子及び前記第2インダクタと、を有し、
前記スイッチング制御部は、前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子がともにオンする期間内に前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子がともにオフし、前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子がともにオフする期間内に前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子がともにオンするように、前記第1乃至第4スイッチング素子のオン又はオフを制御する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1端子及び前記第2端子の間に前記第1全波整流電圧が入力されたときに、前記第2端子及び前記第3端子の間から、前記第1全波整流電圧と同一の電圧振幅で、かつ同一の位相を持つ前記第2全波整流電圧が出力されるように、前記第1乃至第4スイッチング素子のスイッチング周波数と、前記第1及び第2インダクタのインダクタンスと、前記第1キャパシタ及び第2キャパシタのキャパシタンスとが設定される、請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第1インダクタ及び前記第2インダクタには双方向かつ逆位相の電流が流れ、
前記スイッチング制御部は、前記第1インダクタから前記第2端子に流れる電流が最小のときに前記第1及び第4スイッチング素子のオン指令、又は前記第2インダクタから前記第2端子に流れる電流が最小のときに前記第2及び前記第3スイッチング素子のオン指令を出す、請求項4又は5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
第1端子及び第2端子の間にカスコード接続される第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子と、
前記第1端子及び前記第2端子の間にカスコード接続される第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の接続ノードと、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子の接続ノードとの間に接続される第1インダクタと、
前記第2端子及び第3端子の間にカスコード接続される第5スイッチング素子及び第6スイッチング素子と、
前記第5スイッチング素子及び前記第6スイッチング素子の接続ノードと、前記第3端子との間に直列に接続される第2インダクタ、第3インダクタ及び第1キャパシタと、
前記第1端子及び前記第2端子の間に接続される第2キャパシタと、
前記第2端子及び前記第3端子の間に接続される第3キャパシタと、
前記第1乃至第6スイッチング素子を所定の時比率でオン又はオフさせるスイッチング制御部と、を備え、
前記第1インダクタ及び前記第3インダクタは磁気結合しており、
前記第1端子及び前記第2端子の間に第1全波整流電圧が入力されたときに、前記第2端子及び前記第3端子の間から、前記第1全波整流電圧と同じ電圧振幅及び同じ位相の第2全波整流電圧が出力されるように、前記第1乃至第6スイッチング素子のスイッチング周波数と、前記第1乃至第3インダクタのインダクタンスと、前記第1乃至第3キャパシタのキャパシタンスとが設定される、電力変換装置。
【請求項8】
前記スイッチング制御部は、前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子をオンしている間に前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子をオフし、前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子をオフしている間に前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子をオンし、前記第1乃至第4スイッチング素子のオン又はオフに同期して、前記第5スイッチング素子及び前記第6スイッチング素子を交互にオンする、請求項7に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、電力変換装置及び電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
AC-DCコンバータやDC-DCコンバータ等のセル回路を複数個直列に接続したマルチセル回路に入力電圧を印加して電力変換を行う電力変換装置が提案されている。マルチセル回路を構成する各セル回路の出力端子を直列に接続して高電圧の直流電圧を生成することができる。
【0003】
この種の電力変換装置では、セル回路ごとに各セル回路の出力電圧や出力電流を制御するスレーブコントローラを設けるとともに、マルチセル回路内の全セル回路の動作を安定化させるマスタコントローラを設けるのが一般的である。マスタコントローラは、各スレーブコントローラと連携しながら、各セル回路を制御しなければならず、制御が複雑になる。また、マスタコントローラを設けると、部品点数が増える上に、マスタコントローラと全セル回路とを繋ぐ配線が必要となり、配線数も増え、消費電力の増大を招き、小型化も困難になる。
【0004】
上述した複数のセル回路の出力端子を並列接続すると、各出力端子の電圧が自動的にバランスする性質があるが、複数のセル回路の各出力端子を直列に接続しただけでは、各出力端子の電圧が自動的にバランスすることはなく、各セル回路の出力端子ごとに電圧振幅が異なる不安定な出力電圧が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-27779号公報
【文献】特開2017-77114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の一実施形態では、複雑な制御を要することなく、また電力損失をできるだけ少なくして、電圧振幅及び位相が揃った全波整流電圧を生成可能な電力変換装置及び電源装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一実施形態によれば、第1端子及び第2端子の間に直列に接続される第1スイッチング素子及び第1インダクタと、
前記第2端子及び第3端子の間に直列に接続される前記第1インダクタ及び第2スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を所定の時比率で交互にオン又はオフさせるスイッチング制御部と、
前記第1端子及び前記第2端子の間に接続される第1キャパシタと、
前記第2端子及び前記第3端子の間に接続される第2キャパシタと、を備え、
前記第1端子及び前記第2端子の間に第1全波整流電圧が入力されたときに、前記第2端子及び前記第3端子の間から、前記第1全波整流電圧と同じ電圧振幅及び同じ位相の第2全波整流電圧が出力されるように、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のスイッチング周波数と、前記第1インダクタのインダクタンスと、前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタのキャパシタンスとが設定される、電力変換装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態による電力変換装置の回路図。
【
図4】スイッチング周波数と出力電圧の波形歪みとの対応関係を示す図。
【
図5】第1スイッチング素子と第1インダクタの電流波形図。
【
図6】直列共振型コンバータの効率特性の測定結果を示すグラフ。
【
図7】第2の実施形態による電力変換装置の回路図。
【
図8】第1インダクタを流れる電流と第2インダクタを流れる電流の電流波形図および第1スイッチング素子の電流波形図。
【
図9】GaNトランジスタのスイッチング損失を示すグラフ。
【
図10】m個の昇降圧チョッパ回路を備えた電力変換装置の回路図。
【
図11】第3の実施形態による電力変換装置を備えた電源装置の回路図。
【
図12】電圧バランス回路の内部構成を
図6の電力変換装置と同様にした電源装置の回路図。
【
図13】
図11の電力変換装置を実際に動作させた場合の各部の波形図。
【
図14】電圧バランス回路を備えていない一比較例の電源装置の回路図。
【
図15】
図13の電力変換装置を実際に動作させた場合の各部の波形図。
【
図16】第4の実施形態による電力変換装置の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、電力変換装置の実施形態について説明する。以下では、電力変換装置の主要な構成部分を中心に説明するが、電力変換装置には、図示又は説明されていない構成部分や機能が存在しうる。以下の説明は、図示又は説明されていない構成部分や機能を除外するものではない。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態による電力変換装置1の回路図である。
図1の電力変換装置1は、第1スイッチング素子Q1と、第2スイッチング素子Q2と、第1インダクタL1と、第1キャパシタC1と、第2キャパシタC2と、スイッチング制御部9とを備えている。
図1の電力変換装置1は、昇降圧チョッパ回路を構成している。
【0011】
第1キャパシタC1は、第1端子TL1と第2端子TL2との間に接続されている。第1スイッチング素子Q1と第1インダクタL1は、第1端子TL1と第2端子TL2との間に直列に接続されている。第2キャパシタC2は、第2端子TL2と第3端子TL3との間に接続されている。第2スイッチング素子Q2と第1インダクタL1は、第2端子TL2と第3端子TL3との間に直列に接続されている。
【0012】
スイッチング制御部9は、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2を所定の時比率で交互にオン又はオフさせる。所定の時比率とは、例えば50%である。
【0013】
第1端子TL1と第2端子TL2との間には、全波整流電圧Viが入力される。第2端子TL2と第3端子TL3との間からは、全波整流電圧Voが出力される。
【0014】
このように、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2は、第1端子TL1と第3端子TL3との間にカスコード接続されている。第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の接続ノードと第2端子TL2との間には、第1インダクタL1が接続されている。
【0015】
第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2は、例えばパワートランジスタやMOSFETやIGBTなどである。第1スイッチング素子Q1はハイサイドトランジスタ、第2スイッチング素子Q2はローサイドトランジスタとも呼ばれる。以下では、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2として、NMOSトランジスタ(N型MOSFET)を使用する例を説明する。
【0016】
図1の第1スイッチング素子Q1がオンであり第2スイッチング素子Q2がオフのとき、第1端子TL1から、第1スイッチング素子Q1のドレイン-ソース間と、第1インダクタL1を通って、第2端子TL2に電流が流れる。また、第2スイッチング素子Q2がオンであり第1スイッチング素子Q1がオフのとき、第2端子TL2から、第1インダクタL1と、第2スイッチング素子Q2のドレイン-ソース間とを通って、第2端子TL2に電流が流れる。
【0017】
第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2のスイッチング周波数と、第1インダクタL1のインダクタンスと、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2の容量とを適切に設定することにより、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2の時比率が50%の場合に、第1端子TL1と第2端子TL2の間に入力される全波整流電圧Viと、第2端子TL2と第3端子TL3の間から出力される全波整流電圧Voとの、電圧振幅を等しくし、かつ位相も等しくすることができる。
【0018】
第1スイッチング素子Q1の時比率をDとするとき、第1端子TL1と第2端子TL2の間に入力される全波整流電圧Viと、第2端子TL2と第3端子TL3の間から出力される全波整流電圧Voとの関係は以下の式(1)で表される。
【数1】
【0019】
図1の電力変換装置1の伝達特性は、以下の式(2)~(4)で表される。式(2)~(4)において、第2スイッチング素子Q2の時比率D’=1-Dである。
【数2】
【数3】
【数4】
【0020】
式(2)~(4)のLとCは以下の式(5)(6)で表される。αIは第1インダクタL1(式中のL)を流れる電流のリプル振幅であり、βVoは第1コンデンサC1および第2コンデンサC2(式中のC)に印加される電圧のリプル振幅である。
図2はLとCの設計例の特性値を示す図である。
【数5】
【数6】
【0021】
全波整流電圧Viは、高調波成分を含んでおり、全波整流電圧Viの高調波成分まで含めて、損失なく電力変換するのが望ましい。実用的には、例えば第10次の高調波成分までを、損失なく電力変換できれば、入出力される全波整流電圧Vi、Voの電圧振幅を一致させ、かつ位相も一致させることができる。
【0022】
図3は回路パラメータを
図2とした場合の
図1の電力変換装置1の周波数特性を示す図である。
図3の上側グラフは、入力電圧Viの周波数と、入力電圧Viと出力電圧Voの振幅比であるゲイン|Vo/Vi|との対応関係を示しており、
図3の下側グラフは、入力電圧Viの周波数と、入力電圧Viと出力電圧Voの位相差である位相角との対応関係を示している。
【0023】
図3の上側には、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2のスイッチング周波数が50kHz、100kHz、1MHz、3MHzの場合の入力電圧Viの周波数とゲイン|Vo/Vi|との対応関係を示すグラフw1a、w2a、w3a、w4aが図示されている。また、
図3の下側には、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2のスイッチング周波数が50kHz、100kHz、1MHz、3MHzの場合の入力電圧Viの周波数と位相角との対応関係を示すグラフw1b、w2b、w3b、w4bが図示されている。
【0024】
入力電圧Viが周波数50Hzの正弦波を全波整流した波形である場合、第10次の高調波成分の周波数は500Hzである。
図3からわかるように、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2のスイッチング周波数が高いほど、入力電圧Viの周波数が高くても、ゲイン損失と位相変化は起きにくくなる。
【0025】
図4はスイッチング周波数と出力電圧Voの波形歪みとの対応関係を示す図である。
図4の波形w5は、全波整流電圧からなる入力電圧Viの波形図である。波形w6~w9はそれぞれ、スイッチング周波数fsw=50kHz、100kHz、1MHz、3MHzの場合の出力電圧Voの波形図である。
図4の波形w8,w9からわかるように、スイッチング周波数fswが1MHzを超えると、出力電圧Voに歪みが生じなくなる。すなわち、スイッチング周波数が1Mzを超えると、入力電圧Viの第10次の高調波もゲイン損失と位相変化を生じさせずに、電力変換を行うことができる。
【0026】
以上より、
図1の電力変換装置1は、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2のスイッチング周波数を1MHz以上に設定するのが望ましいことがわかる。
【0027】
図5は第1スイッチング素子Q1と第1インダクタL1の電流波形図である。波形w15は第1スイッチング素子Q1の電流波形、波形w16は第1インダクタL1の電流波形を示している。図示のように、第1スイッチング素子Q1には双方向に電流が流れる。第1スイッチング素子Q1を流れる電流の絶対値が最大になってからゼロになるまでの期間と、その期間の間に第1スイッチング素子Q1に流れた電流の絶対値との積(
図5のグレイ領域)が、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の出力容量と回路浮遊容量の合計値以上になるように、第1インダクタL1の第1インダクタンスが設定される。
【0028】
このように、第1の実施形態では、
図1に示す昇降圧チョッパ回路からなる電力変換装置1に、全波整流電圧からなる入力電圧Viを入力し、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2を、1MHz以上のスイッチング周波数で交互にオンさせ、かつ、第1インダクタL1のインダクタンスと、第1及び第2キャパシタC1,C2のキャパシタンスを調整することで、入力電圧Viと同じ電圧振幅及び同じ位相の全波整流電圧Voを出力できる。このように、本実施形態におけるスイッチング周波数は、第1全波整流電圧(入力電圧)Viの第1次高調波信号から第10次高調波信号までの高調波信号と同じ電圧振幅及び同じ位相の高調波信号を第2端子TL2及び第3端子TL3から出力可能な周波数に設定される。
【0029】
図1の電力変換装置1を複数台並べて、各電力変換装置1の出力端子を直列に接続した場合には、各出力端子から出力される電圧Voの電圧振幅と位相を揃えることができるため、複雑な制御を行うことなく、大きな電圧レベルの全波整流電圧を生成できる。
【0030】
(第2の実施形態)
上述したように、第1の実施形態による電力変換装置1では、第1及び第2スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング周波数を例えば1MHz以上に高速化する必要があるが、スイッチング周波数を高くすると、電力損失が大きくなり、消費電力が増えてしまう。電力損失を小さくする一手法として、共振回路を用いたコンバータが提案されている。
【0031】
図6は直列共振型コンバータの効率特性の測定結果を示すグラフである。
図6を得るための直列共振型コンバータの回路構成は、K. Sano and H. Fujita, “Voltage-Balancing Circuit Based on a Resonant Switched-Capacitor Converter for Multilevel Inverters”, IEEE TRANSACTIONS ON INDUSTRY APPLICATIONS, VOL. 44, NO. 6, NOVEMBER/DECEMBER 2008.などに記載されているものである。
【0032】
図6の折れ線グラフの横軸は出力電力で、縦軸は電力変換効率(右)である。縦軸の値が小さいほど、電力効率が悪いことを示している。また、棒グラフの縦軸は電力損失(左)を示している。
図6に破線で示した出力電力が小さい領域、すなわち軽負荷時には出力電力に占める電力損失の割合が大きくなり、電力効率が悪くなる。
【0033】
本実施形態では、複数の電源モジュールを並べて、高電圧の全波整流電圧を生成することを目標としており、提案する電力変換装置は複数電源モジュールの電圧を等しくするために複数電源モジュールの出力端子間に接続して用いることから、提案する電力変換装置を高負荷で動作させることは想定していない。そこで、本実施形態では、共振回路を備えた直列共振型コンバータは採用しないことにした。
【0034】
共振回路を設ける代わりに、本実施形態による電力変換装置1aは、スイッチング素子をソフトスイッチングさせることで、電力損失を減らす。より詳細には、電力変換装置1a内のインダクタに双方向の三角波電流を流して、スイッチング素子のターンオンタイミングを制御することで、スイッチング素子での電力損失を低減する。以下では、本明細書では、このような制御を、三角波電流モード(TCM:Triangular Current Mode)と呼ぶ。
【0035】
図7は第2の実施形態による電力変換装置1aの回路図である。
図7の電力変換装置1aは、
図1と同様に、第1端子TL1と第2端子TL2との間に直列に接続された第1スイッチング素子Q1と第1インダクタL1を有するとともに、第2端子TL2と第3端子TL3との間に直列に接続された第1インダクタL1と第2スイッチング素子Q2を有する。これに加えて、
図7の電力変換装置1aは、第1端子TL1と第2端子TL2との間に直列に接続された第3スイッチング素子Q3と第2インダクタL2とを有するとともに、第2端子TL2と第3端子TL3との間に直列に接続された第2インダクタL2と第4スイッチング素子とを有する。
【0036】
このように、
図7の電力変換装置1aは、第1端子TL1と第3端子TL3の間にカスコード接続された第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2と、同じく第1端子TL1と第3端子TL3の間にカスコード接続された第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4と、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2の接続ノードと第2端子TL2との間に接続された第1インダクタL1と、第3スイッチング素子Q3及び第4スイッチング素子Q4の接続ノードと第2端子TL2との間に接続された第2インダクタL2とを有する。
【0037】
スイッチング制御部9は、第1~第4スイッチング素子Q1~Q4のオン/オフを制御する。より具体的には、スイッチング制御部9は、第1スイッチング素子Q1及び第4スイッチング素子Q4がともにオンする期間内に第2スイッチング素子Q2及び第3スイッチング素子Q3がともにオフし、第1スイッチング素子Q1及び第4スイッチング素子Q4がともにオフする期間内に第2スイッチング素子Q2及び第3スイッチング素子Q3がともにオンするように、第1~第4スイッチング素子Q1~Q4のオン又はオフを制御する。
【0038】
第1端子TL1及び第2端子TL2の間に第1全波整流電圧が入力されたときに、第2端子TL2及び第3端子TL3の間から、第1全波整流電圧と同一の電圧振幅で、かつ同一の位相を持つ第2全波整流電圧が出力されるように、第1乃至第4スイッチング素子Q4のスイッチング周波数と、第1及び第2インダクタL2のインダクタンスと、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2のキャパシタンスとが設定される。
【0039】
図7の電力変換装置1aでは、第1スイッチング素子Q1と第4スイッチング素子Q4が同時にオン又はオフし、第2スイッチング素子Q2と第3スイッチング素子Q3が同時にオン又はオフする。第1スイッチング素子Q1と第4スイッチング素子Q4が同時にオンする期間内は、第1端子TL1→第1スイッチング素子Q1→第1インダクタL1→第2端子TL2の順に電流が流れる。また、第2端子TL2→第2インダクタL2→第4スイッチング素子Q4→第3端子TL3の順に電流が流れる。
【0040】
第2スイッチング素子Q2と第3スイッチング素子Q3が同時にオンする期間内は、第1端子TL1→第3スイッチング素子Q3→第2インダクタL2→第2端子TL2の順に電流が流れる。また、第2端子TL2→第1インダクタL1→第2スイッチング素子Q2→第3端子TL3の順に電流が流れる。
【0041】
スイッチング制御部9は、第1~第4スイッチング素子Q1~Q4のソフトスイッチングを行う。より具体的には、スイッチング制御部9は、第1インダクタL1と第2インダクタL2に双方向の電流が流れるようにし、第1インダクタL1又は第2インダクタL2から第2端子TL2に流れる電流が最小(負の最大値)のときに、第1及び第4スイッチング素子Q1,Q4のオン指令、又は第2及び第3スイッチング素子Q2,Q3のオン指令を出す。
【0042】
図8は第1インダクタL1を流れる電流IL1と第2インダクタL2を流れる電流IL2の電流波形w10,w11を示す図、及び第1スイッチング素子Q1の電流波形図である。
図8に示すように、電流IL1と電流IL2は、位相が反転しており、電流IL1と電流IL2は、正方向から負方向まで一定周期で線形に電流値が変化する三角波電流である。
図8では、電流IL1と電流IL2が第2端子TL2側に流れる方向を正方向、第1~第4スイッチング素子Q1~Q4側に流れる方向を負方向としている。
【0043】
図8の下側には、第1~第4スイッチング素子Q1~Q4がターンオン及びターンオフするタイミングを丸印で示している。図示のように、スイッチング制御部9は、電流IL1(L1からTL2に向かう方向を正)が負方向の最大値のときに第1スイッチング素子Q1と第4スイッチング素子Q4がターンオンする指令を出し、電流IL1が正方向の最大値のときに第2スイッチング素子Q2と第3スイッチング素子Q3がターンオンする指令を出す。
【0044】
このように、スイッチング制御部9は、第1インダクタL1又は第2インダクタL2から第2端子TL2側に電流が流れている最中に、第1スイッチング素子Q1及び第4スイッチング素子Q4、又は第2スイッチング素子Q2及び第3スイッチング素子Q3をターンオンする指令を出す。第2端子TL2から第1インダクタL1または第2インダクタL2に電流を流している間は電力を回生する期間であり、この期間内に第1スイッチング素子Q1または第3スイッチング素子Q3をターンオンすることで、電力損失を抑制できる。
【0045】
第1~第4スイッチング素子Q1~Q4として、GaNトランジスタを用いる場合、GaNトランジスタはターンオン時の電力損失が本来的に大きく、ターンオフ時の電力損失が本来的に小さいため、本実施形態によるスイッチング制御を行うことで、電力損失を大幅に抑制できる。
【0046】
図9はGaNトランジスタのスイッチング損失を示すグラフである。
図9はZ. Liu, F. C. Lee, Q. Li and Y. Yang, “Design of GaN-Based MHz Totem-Pole PFC Rectifier”, IEEE JOURNAL OF EMERGING AND SELECTED TOPICS IN POWER ELECTRONICS, VOL. 4, NO. 3, SEPTEMBER 2016から引用したものである。
【0047】
図9の横軸は電流(A)、縦軸は電力損失(μJ)である。
図9には、3種類のGaNトランジスタのスイッチング損失波形w12~w14が図示されている。波形w12~w14は、各GaNトランジスタがターンオンするときの電力損失を示している。
図9から、どのタイプのGaNトランジスタも、ターンオン時のスイッチング損失が大きく、ターンオフ時のスイッチング損失が小さいことがわかる。よって、本実施形態によるスイッチング制御を行うことで、本来的に電力損失が大きいGaNトランジスタの電力損失を抑制できる。
【0048】
図7の電力変換装置1aは、合計4個のスイッチング素子を備えているが、6個以上のスイッチング素子を設けてもよい。
【0049】
図10は
図7と同様の回路構成を有するn個(nは2以上の整数)の昇降圧チョッパ回路を備えた電力変換装置1bの回路図である。
図10の各チョッパ回路は、第1端子TL1及び第3端子TL3の間にカスコード接続される2つのスイッチング素子と、これら2つのスイッチング素子の接続ノードと前記第2端子TL2との間に接続されるインダクタとを有する。
【0050】
図10の例では、第1端子TL1と第3端子TL3の間にカスコード接続される2つのスイッチング素子を一組とするn組のスイッチング素子を備えている。チョッパ回路の数を増やすことで、よりきめ細やかにソフトスイッチングを行うことができる。
【0051】
このように、第2の実施形態では、各スイッチング素子のオン/オフ切替をソフトスイッチングにて行うため、電力損失を低減することができる。
【0052】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、第1又は第2の実施形態による電力変換装置1、1a又は1bを、全波整流電圧を出力する電源モジュールに組み込むものである。
【0053】
図11は第3の実施形態による電力変換装置1を備えた電源装置11の回路図である。なお、
図11の電源装置は、
図1と同様の構成の電力変換装置1を備えているが、
図7の電力変換装置1a又は
図10の電力変換装置1bを備えていてもよい。
図11の電源装置11は、交流入力電圧が入力される第1入力端子ITL1及び第2入力端子ITL2と、n個(nは2以上の整数)のAC-DCコンバータ2と、(n―1)個の電圧バランス回路3とを備えている。
図11の電源装置11は、ISOS(Input Series Output Series)マルチセルコンバータを構成している。
【0054】
第1入力端子ITL1及び第2入力端子ITL2には、例えば数百ボルト~数千ボルトの交流入力電圧が入力される。
【0055】
n個のAC-DCコンバータ2の各入力端子は、第1入力端子ITL1及び第2入力端子ITL2に直列に接続されている。よって、各AC-DCコンバータ2には、交流入力電圧の1/n倍の電圧振幅の分圧電圧が入力される。AC-DCコンバータ2は、入力された分圧電圧を全波整流電圧に変換して、出力端子から出力する。
【0056】
各AC-DCコンバータ2は、全波整流回路4と、DC-DCコンバータ5とを有する。全波整流回路4は、4つのスイッチング素子Q11~Q14を有する。スイッチング素子Q11及びスイッチング素子Q13と、スイッチング素子Q12及びスイッチング素子Q14とを交互にオンすることで、交流入力電圧を全波整流電圧に変換する。
【0057】
DC-DCコンバータ5は、電気的に互いに絶縁されている一次側回路6と二次側回路7を有する。一次側回路6は、第1端子TLx1及び第2端子TLy1の間にカスコード接続される2つのスイッチング素子Q15,Q16と、キャパシタC11と、スイッチング素子Q15,Q16間の接続ノードとスイッチング素子Q16のソースとの間に直列に接続される2つのインダクタL11,L12と、キャパシタC12とを有する。二次側回路7は、インダクタL12と磁気結合されるインダクタL13と、全波整流回路8と、キャパシタC13とを有する。
【0058】
n個のAC-DCコンバータ2の各出力端子うち、隣り合う2個のAC-DCコンバータ2の2組の出力端子に1個の割合で、電圧バランス回路3が接続されている。よって、n個のAC-DCコンバータ2に対して、(n―1)個の電圧バランス回路3が設けられている。電圧バランス回路3は、
図1又は
図7又は
図10の電力変換装置1又は1a又は1bと同様の回路構成を有する。
【0059】
n個のAC-DCコンバータ2だけでは、仮に各AC-DCコンバータ2の内部構成を同じに設計したとしても、キャパシタC13の容量値のばらつき等により、必ずしもAC-DCコンバータ2から出力される全波整流電圧の電圧振幅や位相が一致しない。そこで、n個のAC-DCコンバータ2から出力されたn個の全波整流電圧の電圧振幅を一致させ、位相も一致させるために、(n-1)個の電圧バランス回路3が設けられている。
【0060】
図11の電圧バランス回路3は、
図1の電力変換装置1と同じ回路構成を備えているが、後述するように、
図7の電力変換装置1a又は
図10の電力変換装置1bと同じ回路構成にしてもよい。以下では、隣り合う2個のAC-DCコンバータ2のうち、一方のAC-DCコンバータ2の出力端子をOUT1,OUT2とし、他方のAC-DCコンバータ2の出力端子をOUT2,OUT3とする。
【0061】
電圧バランス回路3内の第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2は、出力端子OUT1,OUT3の間にカスコード接続されている。第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2の接続ノードと出力端子OUT2との間には、第1インダクタL1が接続されている。
【0062】
図11のような電圧バランス回路3を設けて、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2を所定の時比率(例えば50%)でオン/オフさせることで、出力端子OUT1,OUT2間の電圧Vo1と、出力端子OUT2,OUT3間の電圧Vo2の電圧振幅を一致させ、かつ位相を一致させることができる。よって、n個のAC―DCコンバータ2を有する第3の実施形態の出力電圧Voutは、n個のAC―DCコンバータ2の出力電圧である電圧Vo1、Vo2、…Vonを足し合わせた全波整流電圧になる。
【0063】
図11の電圧バランス回路3では、上述したように、AC-DCコンバータ2から出力される全波整流電圧の第10次高調波電圧までの電力変換を行えるように、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2のスイッチング周波数を1MHz程度まで高速化する必要があり、電力損失が大きくなる。そこで、電力バランス回路の内部構成を
図7の電力変換装置1aと同様にして、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2をソフトスイッチングするのが望ましい。
【0064】
図12は電圧バランス回路3aの内部構成を
図7の電力変換装置1aと同様にした電源装置11aの回路図である。
図12の電圧バランス回路3a内の第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2は、AC-DCコンバータ2の出力端子OUT1,OUT3の間にカスコード接続されている。同様に、第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4も、出力端子OUT1,OUT3の間にカスコード接続されている。第1インダクタL1は、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2の接続ノードと出力端子OUT2の間に接続されている。第2インダクタL2は、第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4の接続ノードと出力端子OUT2の間に接続されている。
【0065】
図12の電圧バランス回路3aは、
図8で説明したように、第1インダクタL1及び第2インダクタL2に流れる電流が三角波となるように、三角波電流モードで駆動される。これにより、第1~第4スイッチング素子Q1~Q4をソフトスイッチングさせることができ、電力損失を抑制できる。
【0066】
本発明者は、
図12の電源装置11aに20オームの負荷10を接続した状態で、実際に動作させる実験を行った。
図13は
図12の電源装置11aを実際に動作させた場合の各部の波形図である。
図13には、
図12の電源装置11aの出力電圧Voutの波形w23と、電圧バランス回路3aの入力電圧Vo1の波形w21と、電圧バランス回路3aの出力電圧Vo2の波形w22と、第1インダクタL1及び第2インダクタL2の接続点から出力端子OUT2に流れる電流ILの波形w26と、第1インダクタL1を流れる電流IL1の波形w24と、第2インダクタL2を流れる電流IL2の波形w25が図示されている。また、電流IL1とIL2の拡大波形図も図示されている。
【0067】
図13からわかるように、AC-DCコンバータ2の出力電圧Vo1とVo2の電圧振幅はほぼ一致し、位相もほぼ一致している。
【0068】
本発明者は、
図12の電源装置11aから電圧バランス回路3aを省略した回路構成の電源装置11bについても、同様に20オームの負荷10を接続した状態で、実際に動作させる実験を行った。
図14は、比較実験に用いた、電圧バランス回路3aを備えていない一比較例の電源装置11bの回路図である。電圧バランス回路3aが省略されている他は
図12の電源装置11aと同様に構成されている。
【0069】
図15は
図14の電源装置11bを実際に動作させた場合の各部の波形図である。
図15には、AC-DCコンバータ2の入力電圧Vinの波形w33と、AC-DCコンバータ2の出力端子OUT1,OUT2間の出力電圧Vo1の波形w31と、出力端子OUT2,OUT3間の出力電圧Vo2の波形w32と、負荷電流の波形w34とが図示されている。
【0070】
図15からわかるように、電圧バランス回路3又は3aを備えていない場合、AC-DCコンバータ2の出力電圧Vo1、Vo2の電圧振幅が一致しないため、電源装置11bの動作が不安定になる。
【0071】
このように、第1及び第2の実施形態で説明した電力変換装置1、1a又は1bは、複数のAC-DCコンバータ2の後段側に設けられる電圧バランス回路3又は3aに適用することができる。これにより、複数のAC-DCコンバータ2の各入力端子を直列に接続し、各出力端子も直列に接続する場合に、各出力端子から出力される電圧の振幅を一致させ、かつ位相も一致させることができる。
【0072】
例えば複数のAC-DCコンバータ2を並べて、複数のAC-DCコンバータ2の入力端子を直列接続するとともに、出力端子も直列接続したときに、そのままだと、各出力端子から出力される全波整流電圧の電圧振幅や位相にばらつきが生じるが、各出力端子に上述した電圧バランス回路3又は3aを接続することで、各出力端子から出力される全波整流電圧の電圧振幅を一致させ、かつ位相も一致させることができる。これにより、複数のAC-DCコンバータ2を並べて、各出力端子を直列接続することで、高電圧の全波整流電圧を生成できる。
【0073】
(第4の実施形態)
第4の実施形態による電力変換装置1cは、絶縁型の構成を備えている。
【0074】
図16は第4の実施形態による電力変換装置1cの回路図である。
図16の電力変換装置1cの上側は、AC-DCコンバータ等の一次側回路12の構成を示している。一次側回路12は、
図16の下側の二次側回路13と電気的に絶縁された状態で磁気結合している。一次側回路12と二次側回路13は、第1乃至第6スイッチング素子Q21~Q26と、第1乃至第3インダクタL21~L23とキャパシタC14を有する。
【0075】
第1端子TL21及び第2端子TL22の間には、第1スイッチング素子Q21及び第2スイッチング素子Q22がカスコード接続されている。同様に、第1端子TL21及び第2端子TL22の間には、第3スイッチング素子Q23及び第4スイッチング素子Q24がカスコード接続されている。第1スイッチング素子Q21及び第2スイッチング素子Q22の接続ノードと、第3スイッチング素子Q23及び第4スイッチング素子Q24の接続ノードとの間には、第1インダクタL21が接続されている。
【0076】
第2端子TL22及び第3端子TL23の間には、第5スイッチング素子Q25及び第6スイッチング素子Q26がカスコード接続されている。第5スイッチング素子Q25及び第6スイッチング素子Q26の接続ノードと、第3端子TL23との間には、第2インダクタL22及び第3インダクタL23が直列に接続されている。第1インダクタL21及び第3インダクタL23は、磁気結合している。
【0077】
第1乃至第6スイッチング素子Q21~Q26のオン又はオフ制御は、スイッチング制御部9にて行われる。スイッチング制御部9は、第1スイッチング素子Q21及び第4スイッチング素子Q24を、同期してオン又はオフする。同様に、第2スイッチング素子Q22及び第3スイッチング素子Q23を、同期してオン又はオフする。スイッチング制御部9は、第1スイッチング素子Q21及び第4スイッチング素子Q24をオンしている間に、第2スイッチング素子Q22及び第3スイッチング素子Q23をオフし、第1スイッチング素子Q21及び第4スイッチング素子Q24をオフしている間に、第2スイッチング素子Q22及び第3スイッチング素子Q23をオンする制御を行う。また、スイッチング制御部9は、第5スイッチング素子Q25と第6スイッチング素子Q26の一方をオンして、他方をオフする制御を行う。スイッチング制御部9は、第5スイッチング素子Q25と第6スイッチング素子Q26のオン/オフ制御を、第1~第4スイッチング素子Q1~Q4のオン/オフ制御に同期して行う。
【0078】
第1端子TL21及び第2端子TL22の間には、全波整流電圧が入力される。第2端子TL22及び第3端子TL23の間からは、第1端子TL21及び第2端子TL22の間に入力された全波整流電圧と同じ電圧振幅で、かつ同じ位相の全波整流電圧が出力される。
【0079】
第1の実施形態と同様に、第1端子TL21と第2端子TL22の間に入力される全波整流電圧の第10次高調波まで電力変換を行えるように、第1~第6スイッチング素子Q21~Q26のスイッチング周波数が高速化される。このため、第2の実施形態と同様に、第1~第6スイッチング素子Q21~Q26をソフトスイッチングしてもよい。
【0080】
このように、絶縁型の電力変換装置1cであっても、入力された全波整流電圧と同じ電圧振幅で同じ位相の全波整流電圧を出力できる。
【0081】
本開示の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本開示の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 電力変換装置、2 AC-DCコンバータ、3 電圧バランス回路、4 全波整流回路、5 DC-DCコンバータ、6 一次側回路、7 二次側回路、9 スイッチング制御部、10 負荷、11,11a 電源装置、12 一次側回路、13 二次側回路