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  • 特許-複合型不織布 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】複合型不織布
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/498 20120101AFI20240207BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20240207BHJP
   D04H 1/26 20120101ALI20240207BHJP
   D04H 1/49 20120101ALI20240207BHJP
【FI】
D04H1/498
B32B5/26
D04H1/26
D04H1/49
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020027394
(22)【出願日】2020-02-20
(65)【公開番号】P2021130888
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 創
(72)【発明者】
【氏名】大篭 幸治
(72)【発明者】
【氏名】吉田 義雄
(72)【発明者】
【氏名】原田 明子
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-014747(JP,A)
【文献】特開2018-016908(JP,A)
【文献】特開2010-043371(JP,A)
【文献】特表2005-502509(JP,A)
【文献】特開2017-133129(JP,A)
【文献】特開2005-248394(JP,A)
【文献】特開2012-132117(JP,A)
【文献】特開2021-116513(JP,A)
【文献】特開2021-105235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/498
B32B 5/26
D04H 1/26
D04H 1/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアレイド方式で得られたパルプ繊維ウエブがスパンボンド不織布上に積層されて一体化されている複合型不織布であって、
前記パルプ繊維ウエブが紙力剤及び両性樹脂を含有し、前記パルプ繊維ウエブの固形重量に対して、前記紙力剤の固形分で換算した添加量が0.04~1.0%、且つ、前記両性樹脂の固形分で換算した添加量が0.06~1.5%である、ことをすることを特徴とする複合型不織布。
【請求項2】
前記紙力剤と前記両性樹脂との混合割合である紙力剤/両性樹脂が10/90~70/30である、ことを特徴とする請求項1に記載の複合型不織布。
【請求項3】
前記紙力剤がポリアミドエピクロロヒドリン系、ポリアミドエポキシ系、及びポリアミドポリアミン系からなる群から選択された少なくとも1つである、ことを特徴とする請求項1または2に記載の複合型不織布。
【請求項4】
前記両性樹脂がポリアクリルアミド系、澱粉系及びグァーガムからなる群から選択された少なくとも1つである、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の複合型不織布。
【請求項5】
坪量が40.0~165.0g/mである、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の複合型不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプ繊維ウエブとスパンボンド不織布とを水流交絡させることによって得られる複合型不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
パルプ繊維ウエブとスパンボンド不織布とによる複合型の不織布は、パルプ繊維に基づく吸液性とスパンボンド不織布に基づく強度との両方を具備してなるので、ウエスなどの工業用ワイパー、或いは手ぬぐい、タオルなどの対人用のワイパー等の様々な用途で広く使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1で開示するように、パルプ繊維ウエブとスパンボンド不織布とを重ねた後に、高圧のウォータジェット(水流)を吹き付ける水流交絡処理によって一体化されている。ここでスパンボンド不織布は強度に優れるので製造された複合型不織布の裏打ち層的な機能を果たす。一方、パルプ繊維ウエブは優れた吸液機能を備えている。よって、このような複合型不織布は、水性、油性のいずれの液体に対しても吸収性が良好なパルプ繊維ウエブと、強度に優れるスパンボンド不織布との利点を併有している優れた複合型不織布として消費者に提供することができる。
【0004】
上記複合型不織布は使用した際に、パルプ繊維が容易に脱落しないように商品設計されているのが好ましい。複合型不織布は乾いた状態、或いは濡れた状態のいずれでもワイパー等として使用される。使用された際に、パルプ繊維の脱落が目立つと商品価値が低下してしまう。
なお、従来にあって、湿式抄紙法によるシート製造技術を流用して、パルプ繊維を含む不織布を製造する際に、パルプ繊維に紙力剤を予め添加して製造することが知られている(例えば、特許文献2、3)。このように製造されたパルプ繊維ウエブでは、構成している繊維の状態が安定化されるので繊維の脱落を抑止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2533260号公報
【文献】特開2012-211412号公報
【文献】特表2018-535126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パルプ繊維ウエブとスパンボンド不織布とによる複合型不織布に用いるパルプ繊維ウエブについて、従来の湿式抄紙法で紙力剤が添加してあるパルプ繊維ウエブを用いることが容易に着想される。しかしながら、エアレイド方式を採用した場合と比較して、湿式抄紙法によってパルプ繊維ウエブを製造すると製造設備が大型化するので製造コストが増加し、しかも抄紙工程では白水中を循環する異物を完全に除去することができないので、製造される複合型不織布にも異物が混入し易いという問題がある。
また湿式抄紙法によって紙力剤を含んだパルプ繊維ウエブを製造する際、パルプに定着できず白水に流れ出てしまう紙力剤が多くなり、紙力剤の歩留まりが悪くなる(コストアップする)という点も問題となる。
よって、エアレイド方式で得られたパルプ繊維ウエブを用いて複合型不織布を製造することが強く望まれるが、加工時及び使用時にはパルプ繊維の脱落が生じ易いという問題があり、この問題に対処する有効な技術は未だ確立されていない。
【0007】
よって、本発明の目的は、エアレイド方式を採用しても、パルプ繊維の脱落が抑止されている複合型不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、エアレイド方式で得られたパルプ繊維ウエブがスパンボンド不織布上に積層されて一体化されている複合型不織布であって、前記パルプ繊維ウエブが紙力剤及び両性樹脂を含有し、前記パルプ繊維ウエブの固形重量に対して、前記紙力剤の固形分で換算した添加量が0.04~1.0%、且つ、前記両性樹脂の固形分で換算した添加量が0.06~1.5%である、ことをすることを特徴とする複合型不織布により達成できる。
【0009】
そして、前記紙力剤と前記両性樹脂との混合割合である紙力剤/両性樹脂が10/90~70/30であるのが好ましい。
【0010】
また、前記紙力剤がポリアミドエピクロロヒドリン系、ポリアミドエポキシ系、及びポリアミドポリアミン系からなる群から選択された少なくとも1つであるのが好ましい。
そして、前記両性樹脂がポリアクリルアミド系、澱粉系及びグァーガムからなる群から選択された少なくとも1つであるのが好ましい。
また、前記複合型不織布の坪量が40.0~165.0g/mであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、エアレイド方式を採用しても、パルプ繊維の脱落が抑止されている複合型不織布を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る複合型不織布を製造するのに好適な装置について示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る複合型不織布について説明する。
本発明者等は設備コストを抑制できるエアレイド方式でパルプ繊維ウエブを供給して製造される複合型不織布について、パルプ繊維ウエブから脱落する繊維を抑止することを鋭意検討した結果、パルプ繊維ウエブ側に紙力剤および両性樹脂を含有すると繊維脱落を劇的に抑制できることを確認して本発明に至ったものである。このような複合型不織布は、一実施形態として、スパンボンド不織布上にパルプ繊維ウエブを積層し水流交絡処理して一体化した後に、パルプ繊維ウエブに紙力剤および両性樹脂を添加して製造することができる。
上記紙力剤としては、製紙工程において湿潤紙力剤として知られているものが好ましく用いられ、具体的にはポリアミドエピクロロヒドリン系、ポリアミドエポキシ系、およびポリアミドポリアミン系よりなる群から選択した少なくとも1つを用いることが好ましい。
また、上記両性樹脂としては、ポリアクリルアミド系、澱粉系(例えば、タピオカ澱粉)、グァーガム等が例示可能であるが、ポリアクリルアミド系を用いることが好ましい。
【0014】
本発明に係る複合型不織布は、パルプ繊維ウエブ側に紙力剤および両性樹脂を含有しているので、アニオン性のパルプ繊維とカチオン性の紙力剤との間に形成される架橋を、陰陽両方の性質を有する両性樹脂が架橋補助することで、紙力剤が効果的に機能(作用)して、パルプ繊維の脱落を効果的に抑止できると推測される。
【0015】
以下、本発明に係る複合型不織布を製造するのに好適な製造装置を、図1を参照して説明する。
複合型不織布の製造装置1の概略構成を説明する。図1に示す製造装置1は、上流側にパルプ繊維ウエブを供給するためのエアレイド装置2、スパンボンド不織布を供給するスパンボンド不織布供給装置3、そしてサクション装置4が配設されている。サクション装置4はエアレイド装置2の下側に対向するように配置されている。
ウエブの搬送方向TDで、これらの装置2、3、4より下流には、上流側から順に、水流交絡処理を行うためのウォータジェットを噴射する水流交絡装置5、脱水処理を行うためのサクション装置6、乾燥装置7が配置されている。上記乾燥装置7の下流には連続して製造される複合型不織布WPを巻き取るための巻取装置8が設けてある。
【0016】
上記エアレイド装置2は、繊維同士が密集しシート状となっている原料パルプRPをパルプ繊維に解繊する解繊機21や、図示しない送風機を備えて解繊されたパルプ繊維PFをエアレイドホッパ23へと搬送するダクト22を有している。
【0017】
また、上記ダクト22よりも下流側にはエアレイドホッパ23が配置されている。このエアレイドホッパ23の内部では、解繊状態にあるパルプ繊維が分散しながら降下し、下面に設定した積層位置24に徐々に積み上りパルプ繊維ウエブPFWが形成されるように設計してある。
上記のように、エアレイド装置2は乾式でパルプ繊維ウエブを供給できる装置設備であり、湿式抄紙法を応用し湿式でパルプ繊維ウエブを製造する装置よりも設備コストを抑制できる。また、エアレイド装置2ではパルプの解繊から分散、降下まで閉鎖系空間となっており異物の混入が防止されているので、湿式抄紙法でパルプ繊維ウエブを供給する場合と比較して、異物の混入を圧倒的に低く抑えることができる。
【0018】
上記積層位置24の下側にはサクション装置4が対向配備してある。より詳細には、サクション装置4は装置本体41の上面にサクション部42を有しており、サクション部42が上記パルプ繊維ウエブPFWに吸引力(負圧)を作用させるべく積層位置24に対して設定してある。
なお、図1では、エアレイドホッパ23とサクション装置本体41とを1つずつ一段での配置として、パルプ繊維ウエブPFWを形成する場合を例示している。しかし、これに限らず、上記パルプ繊維ウエブPFWの目付(坪量)や製造速度に応じて、上記エアレイドホッパ23とサクション装置本体41を2つ以上の多段とする配置に変更してもよい。
【0019】
また、サクション装置4の周囲にはウエブ搬送用の搬送ワイヤ43が配設してある。搬送ワイヤ43は、積層位置24においてパルプ繊維PFが堆積したパルプ繊維ウエブPFWが載置可能で、これを下流側に搬送するように配置されている。ただし、パルプ繊維ウエブPFWは直接、搬送ワイヤ43上に載置されない。これについては、後述の説明で明らかとなる。
搬送ワイヤ43はサクション部42の吸引力が、反対側(上側)に及ぶような目開き形態(メッシュ)で形成されている。
【0020】
上記エアレイド装置2の下側で、サクション装置4よりも上流側に、スパンボンド不織布供給装置3が配置してある。このスパンボンド不織布供給装置3には、予め準備されたスパンボンド不織布SWがロール状とされてセットされている。すなわち、前述したように、設計されたスパンボンド不織布SWが製造に伴って巻き取られてロール状とされており、これがスパンボンド不織布供給装置3から引出され、上述した搬送ワイヤ43に乗って上記積層位置24へと搬送されるようになっている。
【0021】
積層位置24に位置した、スパンボンド不織布SWの上に、前述したパルプ繊維ウエブPFWが載置される。その際に、積層位置24ではサクション装置4のサクション部42による吸引力が搬送ワイヤ43を通過し、その上のスパンボンド不織布SWおよびパルプ繊維ウエブPFWに作用する。よって、スパンボンド不織布SWとパルプ繊維ウエブPFWとが積層された状態となっている予備的積層体PWeb(積層ウエブ)が下流側へと搬送される。
上記のように予備的積層体PWebが形成されるときに、スパンボンド不織布SW上へのパルプ繊維ウエブPFWの供給量を制御することで、本装置で製造される複合型不織布に含まれるパルプ繊維ウエブPFWの坪量は例えば30.0~125.0g/mであり、従来の一般的な複合型不織布よりもパルプ繊維ウエブの比率が高くなるように設計するのが望ましい。そして、スパンボンド不織布SWの坪量は例えば10.0~40.0g/mであり、製造される複合型不織布(スパンボンド不織布SW+パルプ繊維ウエブPFW)は例えば40.0~165.0g/mとするのが好ましい。パルプ繊維ウエブの搬送速度やパルプ繊維ウエブPFWの時間当たりの供給量などを適宜に調整し、製造された複合型不織布のパルプ繊維ウエブPFWの坪量を確認することで、坪量が所望の範囲となるように設定すればよい。パルプ繊維ウエブの搬送速度は例えば150~300m/minとするのが好ましい。
【0022】
上記した予備的積層体PWebは、サクション装置4の吸引力によって、吸引圧縮されたことにより積層状態が維持されている。このとき上側のパルプ繊維ウエブPFWの繊維が密にされた状態ではある。しかし、このまま予備的積層体PWebを下流側の水流交絡装置5内に搬送投入すると、ウォータジェット(高圧の水流)によってパルプ繊維PFの一部が舞い上がるおそれがある。
そこで、本製造装置1では、予備的積層体PWebを上下から挟んでスパンボンド不織布SW上でのパルプ繊維ウエブPFWの載置状態を安定化させる為の挟持ローラ28、そして水流交絡装置5の上流側に繊維飛散防止用に水分を付与するプレウエット装置30が配備してある。プレウエット装置30は、好適には、予備的積層体PWebの上方からウォータミストを吹き付ける噴霧ノズル31と予備的積層体PWebの下側(すなわち、パルプ繊維ウエブPFWの下面)から吸引力を印加するサクション装置32とを含んで構成されている。
【0023】
なお、図1では、上記のように水流交絡装置5前にプレウエット装置30を新たな装置として設ける場合を例示しているが、これに限らない。水流交絡装置5に含まれる後述するウォータジェットヘッド51とサクション装置52とからなるセットの複数について、先頭に位置するセットを上記プレウエット装置30として流用するような設計変更をしてもよい。この場合には先頭のウォータジェットヘッド51から低圧のウォータミストが噴霧されるように調整すればよい。
水流交絡処理を行うのに十分な、ウォータジェットヘッド51とサクション装置52とのセット数が確保されている水流交絡装置5の場合、上記のように先頭のウォータジェットヘッド51とサクション装置52をプレウエット装置として活用することは、装置設備コストの抑制に効果的である。
【0024】
そして、水流交絡装置5では、前処理部となる挟持ローラ28およびプレウエット装置30の処理を受けた予備的積層体PWebに高圧のウォータジェットを吹き付けることによりパルプ繊維同士の交絡を促進する。これにより上側に位置するパルプ繊維ウエブPFW層と下側に位置するスパンボンド不織布SW層との一体化が促進される(水流交絡処理)。
図1で例示的に示している水流交絡装置5は、搬送方向TDに沿って多段(図1では例示しているのは4段)にウォータジェットヘッド51が配置されている。
なお、図1では、搬送方向TDに対して直角な方向(ウエブの幅方向CD)において延在しているウォータジェットヘッド51に設けたノズルの様子は図示していないが、幅方向において複数のウォータジェットノズルが適宜の位置に配置してある。このウォータジェットノズルの穴直径φは、好ましくは0.06~0.15mmである。また、ウォータジェットノズルの間隔は0.4~1.0mmとするのが好ましい。
【0025】
上記水流交絡処理をする際の水圧は、パルプ繊維ウエブPFWとスパンボンド不織布SWとの坪量を勘案して設定するのが望ましい。例えば、1~30MPaの範囲において選択するのが好ましい。
【0026】
そして、上記ウォータジェットヘッド51と対向するように、サクション装置52が配設してある。ウォータジェットヘッド51から出る高圧のウォータジェットを上側に位置しているパルプ繊維ウエブPFWに吹き付けつつ、下側に位置しているスパンボンド不織布SWの下側にサクション装置52の吸引力を作用させる。ウォータジェットヘッド51とサクション装置52との協働作用によって、パルプ繊維ウエブPFW側のパルプ繊維が下側のスパンボンド不織布SWに入り込んだ状態や、スパンボンド不織布SWを貫通して反対側にまで至った状態などが形成されると推定される。その作用により2つの層の一体化が促進される。
【0027】
水流交絡装置5にも、搬送ワイヤ55が配設してある。搬送ワイヤ55は前処理部28、30の下流で予備的積層体PWebを受けて、水流交絡装置5内へと搬送する。搬送ワイヤ55は水流交絡装置5のウォータジェットヘッド51とサクション装置52との間を、上流側から下流に向かって通過するように配設されている。
よって、搬送ワイヤ55上を搬送される予備的積層体PWebは、搬送方向TDで下流に向かう程に、より多くの水流交絡処理を受けることになり、水流交絡装置5を出るときには上側のパルプ繊維ウエブPFW層と下側のスパンボンド不織布SW層との十分な交絡処理が実現される。
水流交絡装置5を出た直後の複合型不織布にあっては、ウエット状態にあり、パルプ繊維同士などの結合は十分に確立されてはいない。
【0028】
そこで、図1で示すように、水流交絡装置5の下流側にはパルプ繊維ウエブに残留する水分を吸引除去する脱水処理、その後に乾燥処理を行って、複合型不織布WPの製造を完了するためのサクション装置6および乾燥装置7が配備してある。このように複合型不織布WPの製造の後段で、サクション装置6および乾燥装置7による脱水処理、乾燥処理を行うと効率よく複合型不織布を製造でき、また、製造される水流交絡後の複合型不織布に大きな外圧を掛けることなく乾燥した複合型不織布を製造できる。
しかしながら、先に指摘したように、複合型不織布WP上のパルプ繊維ウエブから離脱するパルプ繊維を確実に抑止できる複合型不織布とする必要がある。そのため、本製造装置1には、パルプ繊維の脱落を抑止するための薬剤を添加するための添加装置9が配置されている。
【0029】
サクション装置6は、例えばバキューム式で水流交絡後の複合型不織布を下側から脱水する。搬送される複合型不織布WPを間にして、サクション装置6の上方には、紙力剤添加装置9が配設されている。
上記添加装置9は、水流交絡装置5で複合化された後の複合型不織布WPの上側、すなわちパルプ繊維ウエブPWFから紙力剤と両性樹脂とを混合した混合添加剤を添加する。複合化が完了した複合型不織布のパルプ繊維ウエブ表面に混合添加剤を外側から添加するので、混合添加剤が効率的に作用してパルプ繊維同士を接続する機能を果たす。紙力剤添加装置9より下流では乾燥処理されるので、添加された混合添加剤が洗い流されて流出するなどの無駄もない。
また、下側にはサクション装置があるので、混合添加剤がパルプ繊維ウエブ内に浸透するのに優位であり、これによってパルプ繊維の脱落を更に確実に抑止することができる。添加は、スプレー塗布とすることにより、噴霧液状となった混合添加剤がパルプ繊維ウエブ内に浸透するのにより一層優位となる。そして、添加装置9では、製造される複合型不織布WPの状態を確認して、混合添加剤の量をコントロールすることも容易に行える。
なお、上記添加装置9で混合添加剤がスプレー塗布される際のパルプ繊維ウエブPWF部分の水分(添加装置9に進入する直前の入口水分%)は120~400%となるように調整しておくのが好ましい。
また、混合添加剤のスプレー塗布後、10秒以内に脱水処理しておくのが好ましい。すなわち、上記図1により説明したように混合添加剤をスプレー塗布した直下で脱水してもよいし、スプレー塗布から少し離れた位置(搬送時間10秒以内の位置)で脱水処理してもよい。要するに、混合添加剤をスプレー塗布した際のパルプ繊維ウエブPWF内部への薬液の浸透拡散状態を確認して、最適な時間(ただし、スプレー塗布後10秒以内)を適宜に決定すればよい。
上記添加装置9としては、スプレー塗布、サイズプレス、ロールコーティング、グラビアコーティング、ロッドバーコーティング、エアナイフコーティング等、公知の装置を用いて混合添加剤を添加することできる。ここで特に限定はされないが、スプレー塗布が好ましい。
なお、上述した添加装置9は紙力剤と両性樹脂とを予め混合した混合添加剤をパルプ繊維ウエブPWFに塗布する場合を好適な一例として説明したものであるが塗布の形態はこれに限らない。上記紙力剤と上記両性樹脂とを個別に、パルプ繊維ウエブPWFに塗布するようにしてもよい。このように個別とする場合の添加装置9は、紙力剤を塗布する第1の塗布装置と両性樹脂を塗布する第2の塗布装置との両方を備えた装置として構成する。ここで、第1の塗布装置と第2の塗布装置とが同時にそれぞれの薬剤(紙力剤と両性樹脂)を塗布するようにしてもよいし、ウエブの搬送方向で第1の塗布装置と第2の塗布装置とを若干、前後にずらした位置で塗布するようにしてもよい。この場合もスプレー塗布を採用するのが好ましい。
【0030】
前記パルプ繊維ウエブPWFにおける上記は紙力剤と上記両性樹脂とのそれぞれについて、その固形分で換算した添加量が、パルプ繊維ウエブPWFの固形重量に対して所定範囲となるように添加するのが好ましい。具体的には、前記紙力剤の固形分で換算した添加量が前記パルプ繊維ウエブの固形重量に対して、0.04~1.0%であり、好ましくは0.1~0.8%とする。また、前記両性樹脂の固形分で換算した添加量が前記パルプ繊維ウエブの固形重量に対して、0.06~1.5%であり、好ましくは、0.15~1.2%とする。そして、紙力剤と両性樹脂との混合割合である紙力剤/両性樹脂は好ましくは10/90~70/30、より好ましくは20/80~60/40とする。
上記紙力剤および両性樹脂の添加量が少なすぎると繊維脱落抑止の効果が低下し、逆に多すぎると繊維の脱落は抑止できるものの手触り(柔らかさ)が悪くなってしまう。
また、スプレー塗布する場合には、前記混合添加剤は好ましくは濃度0.10~2.50%、より好ましくは0.70~1.50%とし、好ましくは吐出圧力0.1~1.0Mpa、より好ましくは、0.3~0.8Mpaとしてパルプ繊維ウエブPWFにスプレー塗布する。圧力が低いと、搬送されているパルプ繊維ウエブによって起こされる風により混合添加剤が飛び散ってしまい、歩留りが低下する。一方で、圧力が高すぎると、搬送されているパルプ繊維ウエブの紙面で跳ね返りが発生して、この場合も歩留りが悪化する。
そして、上記紙力剤としては、上記したとおり、製紙工程において湿潤紙力剤として知られているものが好ましく用いられ、具体的にはポリアミドエピクロロヒドリン系、ポリアミドエポキシ系、およびポリアミドポリアミン系よりなる群から選択した少なくとも1つを用いることが好ましく、ポリアミドエピクロロヒドリン系のものを用いるのがより好ましく、例えば星光PMC社製の紙力剤WS4030、WS4038、WS4027等を用いることができる。
上記両性樹脂としては、上記したとおり、ポリアクリルアミド系、澱粉系、グァーガム等が例示可能であるが、ポリアクリルアミド系のものを用いるのが好ましく、例えば星光PMC社製のFC8501等を用いることができる。上記2種類を所定の条件で混合して使用することにより繊維脱落を効果的に抑止できると共に手触りの良い複合型不織布を得ることができる。
【0031】
そして、上記サクション装置6及び添加装置9の下流には、更に乾燥装置7が設置されており、混合添加剤がスプレー塗布されたパルプ繊維ウエブPWFを備える複合型不織布WPが乾燥処理される。ここでの乾燥装置7は非圧縮型のドライヤ、好適にエアスルードライヤを採用することが好ましい。図1で、エアスルードライヤの回転可能なドライヤ本体71は筒状体であり、その周表面には多数の貫通孔が設けてあり、図示しない熱源で加熱された熱風がドライヤ本体の外周から中心部側に向かって吸い込む構成とするのがよい。
このように連続的に製造される複合型不織布WPは乾燥後に巻取装置8のロール81に巻取られる。
以上で説明したように、製造装置1により、本発明に係るパルプ繊維脱落が少ない複合型不織布を得ることができる。
【0032】
(実施例)
以下、本発明の複合型不織布の実施例および比較例について説明する。
複合型不織布の坪量、混合されてパルプ繊維ウエブPFWに添加される紙力剤および両性樹脂それぞれの添加量および混合割合を、表1に示す通りである、実施例1~3の複合型不織布、並びにその比較例1~4について、複合型不織布の脱落繊維の少なさ(パルプ繊維脱落の抑止性)および手触り(柔らかさ)について使用時の官能評価をした。
なお、紙力剤として星光PMC社製WS4030(ポリアミドエピクロロヒドリン系)を使用し、両性樹脂として星光PMC社製FC8501(ポリアクリルアミド系)を使用した。また、いずれの複合型不織布もパルプ繊維ウエブについてはサザンパインを用いている。

1)脱落繊維の少なさ:複合型不織布の繊維脱落本数
縦19.8cm×横21.0cmの試料片1枚を縦方向を軸としてパルプ面同士が対面するように折り返して重ね合わせ、試料片の両横端を両手で持ち、1.5リットルの水中で150~200gfの力で略横方向に幅10cmで30往復擦り合せ、得られたスラリー中のパルプ繊維数をファイバーテスターでカウントした(1回の測定300ml×5回測定、5回の測定結果を合算)。この試験を5回行い、パルプ繊維数の測定結果の平均値を繊維脱落本数とした。
評価は次の通りとした
パルプ繊維数が4,000本未満:脱落繊維が少なく使い易い(優)
パルプ繊維数が4,000本以上、10,000本未満:問題ないレベル(良)
パルプ繊維数が10,000本以上:脱落繊維が多く使い難い(不可)
2)手触り(柔らかさ):複合型不織布をワイプ用途で使用した際の手触り感、柔らかさ
柔らかく使用感良好(優◎)
少し硬く感じるが問題なく使用できる(良○)
硬く使用感が劣る(不可×)
【0033】
【表1】
【0034】
上記表1に示すように、上記実施例1~4では、複合型不織布の坪量が40.0~165.0g/mである。また、パルプ繊維ウエブの固形重量に対して、紙力剤の固形分で換算した添加量が0.04~1.0%、且つ、両性樹脂の固形分で換算した添加量が0.06~1.5%となるように複合型不織布が形成してあり、実施例1~4は製品として提供できるものである。
一方、比較例1~4では、繊維脱落の抑止性、手触り(柔らかさ)の官能評価のいずれかで不可であった。
比較例1、2では紙力剤と両性樹脂との混合条件が不適であると、繊維脱落の抑止効果が低くなることが確認できる。
また、比較例3から紙力剤と両性樹脂の量が不足すると繊維脱落の抑止効果が低くなることが、比較例4から紙力剤と両性樹脂の量が過剰であると繊維脱落の抑止効果を高くすることができるが、その影響で手触りが悪い複合型不織布になってしまうことが確認される。
【0035】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0036】
1 複合型不織布の製造装置
2 エアレイド装置
3 スパンボンド不織布供給装置
4 サクション装置
5 水流交絡装置
6 サクション装置
7 乾燥装置
8 巻取装置
9 添加装置
21 解繊機
22 ダクト
23 エアレイドホッパ
24 積層位置
28 挟持ローラ
30 プレウエット装置
31 噴霧ノズル
32 サクション装置
41 サクション装置本体
42 サクション部
43 搬送ワイヤ
51 ウォータジェットヘッド
52 サクション装置
55 搬送ワイヤ
SW スパンボンド不織布
PF パルプ繊維
PFW パルプ繊維ウエブ
PWeb 予備的積層体(積層ウエブ)
WP 複合型不織布
TD 搬送方向
CD 幅方向
図1