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特許7431621逆洗方法、並びに、制御装置、水処理システムおよびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】逆洗方法、並びに、制御装置、水処理システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/28 20230101AFI20240207BHJP
   C02F 3/06 20230101ALI20240207BHJP
【FI】
C02F1/28 D
C02F3/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020041283
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2021142458
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(74)【代理人】
【識別番号】100141449
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆芳
(74)【代理人】
【識別番号】100142446
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 覚
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】米谷 貴志
【審査官】▲高▼橋 明日香
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-113650(JP,A)
【文献】特開2001-212557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/28
C02F 3/02-3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭処理槽内の活性炭層の逆洗方法であって、
逆洗開始直後に逆洗用水を第一の平均流速で通水させる工程(A)と、
前記工程(A)の後に、逆洗用水を前記第一の平均流速よりも大きい第二の平均流速で通水させる工程(B)と、
を含み、
前記工程(A)と前記工程(B)との双方において、前記活性炭処理槽内で逆洗排水の透明性を評価し、
前記工程(B)において前記透明性を評価する位置が、前記工程(A)において前記透明性を評価する位置よりも上側である、逆洗方法。
【請求項2】
前記工程(A)の終期を、前記逆洗排水の透明性を用いて決定し、
前記終期を、前記透明性が所定のレベル以上になった後とする、請求項に記載の逆洗方法。
【請求項3】
前記透明性の評価では、前記逆洗排水の透過度、吸光度、濁度および透視度の少なくとも1つを測定し、
前記工程(A)の終期を、前記透過度が所定値以上になった後、前記吸光度が所定値以下になった後、前記濁度が所定値以下になった後、および、前記透視度が所定値以上になった後の少なくとも1つの条件を満たした後とする、請求項に記載の逆洗方法。
【請求項4】
前記工程(B)では、前記逆洗排水の透明性を用いて前記逆洗用水の流速を制御する、請求項の何れかに記載の逆洗方法。
【請求項5】
前記透明性の評価は透明性評価装置によって評価され、
前記工程(A)中の前記透明性評価装置の位置は前記工程(A)の前記活性炭層の上端よりも上側かつ前記第二の平均流速で前記逆洗用水を流通させた際の前記活性炭層の上端よりも下側であり、前記工程(B)中の前記透明性評価装置の位置は前記第二の平均流速で前記逆洗用水を流通させた際の前記活性炭層の上端よりも上側である、請求項1~4の何れかに記載の逆洗方法。
【請求項6】
活性炭処理槽内の活性炭層の逆洗方法であって、
逆洗開始直後に逆洗用水を第一の平均流速で通水させる工程(A)と、
前記工程(A)の後に、逆洗用水を前記第一の平均流速よりも大きい第二の平均流速で通水させる工程(B)と、
を含み、
前記工程(A)において、透明性評価装置によって逆洗排水の透明性を評価し、
前記工程(A)中の前記透明性評価装置の位置は前記工程(A)の前記活性炭層の上端よりも上側かつ前記第二の平均流速で前記逆洗用水を流通させた際の前記活性炭層の上端よりも下側であり、
前記工程(B)の終了のタイミングは、前記透明性の評価以外の方法で定められる、逆洗方法。
【請求項7】
活性炭処理槽の活性炭層の逆洗に用いられる逆洗機構の動作を制御する制御装置であって、
前記逆洗機構を、逆洗開始直後に逆洗用水を第一の平均流速で通水させた後、逆洗用水を前記第一の平均流速よりも大きい第二の平均流速で通水させるように動作させ、
前記第一の平均流速及び前記第二の平均流速で通水させた逆洗排水の透明性に関する情報を入手し、前記逆洗用水を前記第一の平均流速で通水させる動作の終期を、前記逆洗排水の透明性を用いて決定し、
前記第二の平均流速で通水させた前記逆洗排水の前記透明性に関する情報の位置が、前記第一の平均流速で通水させた前記逆洗排水の前記透明性に関する情報の位置よりも上側である、制御装置。
【請求項8】
活性炭層を有する活性炭処理槽と、前記活性炭処理槽の活性炭層の逆洗に用いられる逆洗機構と、前記逆洗機構の動作を制御する請求項7に記載の制御装置と、逆洗排水の透明性を評価して前記制御装置へと前記逆洗排水の透明性に関する情報を提供する透明性評価装置とを備える、水処理システム。
【請求項9】
活性炭層を有する活性炭処理槽と、前記活性炭処理槽の活性炭層の逆洗に用いられる逆洗機構と、逆洗排水の透明性を評価する透明性評価装置とを備える水処理システムに、
逆洗開始直後に逆洗用水を第一の平均流速で通水させるステップ(a)と、
前記ステップ(a)の後に、逆洗用水を前記第一の平均流速よりも大きい第二の平均流速で通水させるステップ(b)と、
前記第一の平均流速で通水させた逆洗排水の透明性を評価するステップ(c)と、
前記逆洗排水の透明性に基づいて前記ステップ(a)を終了させるステップ(d)と、
前記第二の平均流速で通水させた逆洗排水の透明性を評価するステップ(e)と、
を実行させ
前記ステップ(e)において前記透明性を評価する位置が、前記ステップ(c)において前記透明性を評価する位置よりも上側である、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆洗方法に関し、特には、活性炭処理槽内の活性炭層を逆洗する方法に関するものである。また、本発明は、当該逆洗方法を実施し得る制御装置、水処理システムおよびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、浄水処理などの各種水処理分野において、被処理水を活性炭層に通水することにより、被処理水中の汚濁物を活性炭に吸着させると共に、活性炭の表面に付着した微生物により被処理水中の有機物を分解・除去する生物活性炭処理が用いられている。
【0003】
そして、生物活性炭処理等の、活性炭層を用いて被処理水を処理する活性炭処理の技術分野では、通常、所定のタイミング毎に活性炭層を逆流洗浄(逆洗)しつつ被処理水を処理している。
【0004】
ここで、逆洗時に逆洗用水を活性炭層に通水すると、活性炭層は被処理水の処理時と比較して膨張する。そして、逆洗時の活性炭層の膨張の程度は、逆洗用水の流速に加え、水温などの影響も受けて変化する。そこで、例えば特許文献1では、逆洗時の活性炭層の膨張レベルを界面計により検出し、活性炭層の膨張レベルが一定となるように逆洗用水の流速を制御しつつ活性炭層を逆洗する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-197484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本発明者が活性炭層の逆洗について検討を行ったところ、逆洗開始直後は、活性炭層内に捕捉されていた汚濁物等が比較的多く含まれる透明性の低い逆洗排水が流出するため、上記従来の技術では、活性炭層の界面の把握および逆洗用水の流速の設定を適切に行うことができず、活性炭の流出などの問題が起こり得ることが明らかとなった。
【0007】
そこで、本発明は、活性炭の流出を抑制しつつ活性炭層を効果的に逆洗する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の逆洗方法は、活性炭処理槽内の活性炭層の逆洗方法であって、逆洗開始直後に逆洗用水を第一の平均流速で通水させる工程(A)と、前記工程(A)の後に、逆洗用水を前記第一の平均流速よりも大きい第二の平均流速で通水させる工程(B)とを含むことを特徴とする。このように、逆洗開始直後に工程(A)を実施すれば、逆洗開始直後に排出される透明性の低い逆洗排水を、低い平均流速で活性炭の流出を抑制しつつ流出させることができる。また、工程(A)の後に工程(B)を実施すれば、逆洗排水を第一の平均流速で通水させる場合と比較し、大きな平均流速で逆洗排水を通水させて活性炭層を良好に膨張させることができる。従って、活性炭層を効果的に逆洗することができる。
【0009】
ここで、本発明の逆洗方法は、逆洗排水の透明性を評価する工程(α)を更に含むことが好ましい。逆洗排水の透明性を評価すれば、活性炭層の逆洗の状況を適切に把握することができる。
【0010】
また、本発明の逆洗方法は、前記工程(A)の終期を、前記逆洗排水の透明性を用いて決定し、前記終期を、前記透明性が所定のレベル以上になった後とすることが好ましい。工程(A)の終期を逆洗排水の透明性が所定のレベル以上になった後とすれば、逆洗開始直後に排出される透明性の低い逆洗排水を、大きな平均流速で逆洗排水を通水させる工程(B)を実施する前に十分に排出させることができる。
【0011】
更に、本発明の逆洗方法は、前記工程(α)では、前記逆洗排水の透過度、吸光度、濁度および透視度の少なくとも1つを測定し、前記工程(A)の終期を、前記透過度が所定値以上になった後、前記吸光度が所定値以下になった後、前記濁度が所定値以下になった後、および、前記透視度が所定値以上になった後の少なくとも1つの条件を満たした後とすることが好ましい。透過度、吸光度、濁度または透視度を使用すれば、逆洗排水の透明性を簡便に評価することができる。また、工程(A)の終期を上述した条件を満たした後とすれば、逆洗開始直後に排出される透明性の低い逆洗排水を、大きな平均流速で逆洗排水を通水させる工程(B)を実施する前に十分に排出させることができる。
【0012】
また、本発明の逆洗方法は、前記工程(B)では、前記逆洗排水の透明性を用いて前記逆洗用水の流速を制御することが好ましい。透明性の低い逆洗排水を工程(A)において排出させた後であれば、逆洗排水の透明性を用いて活性炭層の過度な膨張および活性炭の流出を検知することができる。従って、逆洗排水の透明性を用いて逆洗用水の流速を制御すれば、活性炭の流出を抑制しつつ活性炭層をより効果的に逆洗することができる。
【0013】
そして、本発明の逆洗方法では、前記工程(A)と前記工程(B)との双方において、前記活性炭処理槽内で前記逆洗排水の透明性を評価し、前記工程(B)において前記透明性を評価する位置が、前記工程(A)において前記透明性を評価する位置よりも上側であることが好ましい。工程(A)において透明性を評価する位置を工程(B)において透明性を評価する位置よりも下側にすれば、透明性の低い逆洗排水の排出の終了をより迅速に検知することができる。また、工程(B)において透明性を評価する位置を工程(A)において透明性を評価する位置よりも上側にすれば、活性炭層を十分に膨張させて活性炭層をより効果的に逆洗しつつ、活性炭層の過度な膨張および活性炭の流出を効果的に抑制することができる。
【0014】
また、本発明の制御装置は、活性炭処理槽の活性炭層の逆洗に用いられる逆洗機構の動作を制御する制御装置であって、前記逆洗機構を、逆洗開始直後に逆洗用水を第一の平均流速で通水させた後、逆洗用水を前記第一の平均流速よりも大きい第二の平均流速で通水させるように動作させ、逆洗排水の透明性に関する情報を入手し、前記逆洗用水を前記第一の平均流速で通水させる動作の終期を、前記逆洗排水の透明性を用いて決定することを特徴とする。このような制御装置によれば、本発明の逆洗方法を実施し、活性炭層を効果的に逆洗することができる。
【0015】
更に、本発明の水処理システムは、活性炭層を有する活性炭処理槽と、前記活性炭処理槽の活性炭層の逆洗に用いられる逆洗機構と、前記逆洗機構の動作を制御する請求項7に記載の制御装置と、逆洗排水の透明性を評価して前記制御装置へと前記逆洗排水の透明性に関する情報を提供する透明性評価装置とを備えることを特徴とする。このような水処理システムによれば、本発明の逆洗方法を実施し、活性炭層を効果的に逆洗することができる。
【0016】
そして、本発明のプログラムは、活性炭層を有する活性炭処理槽と、前記活性炭処理槽の活性炭層の逆洗に用いられる逆洗機構と、逆洗排水の透明性を評価する透明性評価装置とを備える水処理システムに、逆洗開始直後に逆洗用水を第一の平均流速で通水させるステップ(a)と、前記ステップ(a)の後に、逆洗用水を前記第一の平均流速よりも大きい第二の平均流速で通水させるステップ(b)と、逆洗排水の透明性を評価するステップ(c)と、前記逆洗排水の透明性に基づいて前記ステップ(a)を終了させるステップ(d)とを実行させることを特徴とする。このようなプログラムによれば、水処理システムに本発明の逆洗方法を実施させ、活性炭層を効果的に逆洗することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、活性炭の流出を抑制しつつ活性炭層を効果的に逆洗することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)~(d)は、被処理水を活性炭処理した後に活性炭層を本発明の逆洗方法の一例に従い逆洗する様子を示す説明図である。
図2】(a)および(b)は、本発明の逆洗方法の他の例に従い活性炭層を逆洗する様子を示す説明図である。
図3】本発明の水処理システムの一例の概略構成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一の構成要素を示すものとする。また、各図においては、理解を容易にするため、一部の構成の寸法を拡大または縮小して示している。
【0020】
(逆洗方法)
ここで、本発明の逆洗方法は、被処理水に対し、生物活性炭処理等の活性炭処理を実施する際に用いられる活性炭処理槽内の活性炭層を洗浄する際に用いられるものであり、逆洗開始直後に逆洗用水を第一の平均流速で通水させる工程(A)と、工程(A)の後に、逆洗用水を前記第一の平均流速よりも大きい第二の平均流速で通水させる工程(B)とを含み、任意に、工程(A)の前、工程(A)と工程(B)の間、または、工程(B)の後にその他の工程を更に含有し得る。また、本発明の逆洗方法では、任意に、逆洗用水を活性炭層に通水させた際に生じる逆洗排水の透明性を評価する工程(α)を実施し得る。
【0021】
なお、逆洗排水の透明性の評価(工程(α))は、逆洗の開始から終了まで連続して行ってもよいし、断続的に行ってもよい。具体的には、工程(α)は、例えば工程(A)の間のみ行ってもよいし、工程(B)の間のみ行ってもよいし、工程(A)の間および工程(B)の間の双方で行ってもよい。
また、透明性は、特に限定されることなく、逆洗排水について、光の透過度、吸光度、濁度または透視度などのパラメータを測定することにより、評価することができる。中でも、逆洗排水の透明性を簡便に評価する観点からは、透明性は、光の透過度を測定することにより評価することが好ましい。また、上述したパラメータの測定は、リアルタイムで行うことが好ましい。
【0022】
ここで、本発明の逆洗方法を適用する活性炭処理槽としては、特に限定されることなく、活性炭層を有する任意の活性炭処理槽を挙げることができる。具体的には、活性炭処理槽としては、例えば、図1(a)~(d)に示すような、活性炭粒子を充填してなる活性炭層1と、活性炭層1よりも上側に設けられた透明性評価装置2、被処理水流入ライン3および逆洗排水排出ライン6と、活性炭層1の下側に設けられた処理水排出ライン4および逆洗用水流入ライン5とを備え、任意に、活性炭層の洗浄時に曝気により活性炭の流動を促進するための曝気装置(図示せず)を活性炭層1の下部に更に備える活性炭処理槽10が挙げられる。
なお、透明性評価装置2としては、特に限定されることなく、透明性の評価に用いるパラメータに応じた測定装置(例えば、光源と受光センサーとの組み合わせ、吸光度計、濁度計、透視度計など)を用いることができる。また、透明性評価装置2の設置位置は、逆洗時に活性炭層1が所望のレベルまで膨張したと仮定した際の活性炭層の上端の位置よりも上側であることが好ましい。
【0023】
そして、活性炭処理槽10では、通常、図1(a)に示すように被処理水が活性炭層1を下向流で通過して処理され、下側の処理水排出ライン4から処理水が流出する。なお、活性炭処理槽は、被処理水を上向流で通過させて処理するものであってもよい。
【0024】
また、活性炭処理槽10では、所定のタイミングで、図1(b)に示すように被処理水の流入を停止させ、活性炭層1を本発明の逆洗方法の一例を用いて逆洗する。
なお、「所定のタイミング」は、特に限定されることなく、例えば、被処理水の処理の開始または再開から一定時間が経過したタイミング、処理水の水質が所定の水質まで低下したタイミング、或いは、活性炭層の圧力損失の大きさが所定の大きさになったタイミング等とすることができる。
【0025】
具体的には、まず、逆洗開始直後に、図1(c)に示すように上向流の逆洗用水を活性炭層1に第一の平均流速で通水させる(工程(A))。この際、活性炭層1からは、活性炭層1内に捕捉されていた汚濁物等が比較的多く含まれる透明性の低い逆洗排水が流出する。
なお、逆洗用水としては、特に限定されることなく、被処理水の活性炭処理により得られた処理水や、浄水を用いることができる。
【0026】
ここで、上述したように、逆洗開始直後は透明性の低い逆洗排水が流出するため、活性炭層1の状態(例えば、膨張の程度や活性炭の流出の有無)の把握が困難である。そのため、第一の平均流速は、活性炭の流出を確実に抑制しつつ透明性の低い逆洗排水を効率的に排出し得る程度の大きさであることが好ましい。
【0027】
なお、工程(A)中の逆洗用水の流速は、一定であってもよいし、工程(A)中に変化させてもよい。具体的には、逆洗用水の流速は、活性炭の流出が起こらない範囲であれば、一時的に大きく(例えば、第二の平均流速よりも大きく)してもよいし、一時的に小さくしてもよい。
中でも、逆洗の安定性の観点からは、工程(A)中の逆洗用水の流速は、一定であることが好ましい。
【0028】
そして、工程(A)は、例えば、逆洗排水の透明性が上昇し、活性炭層1の状態(例えば、膨張の程度や活性炭の流出の有無)の把握が可能となった段階で終了することができる。具体的には、工程(A)中に上述した工程(α)を実施する場合、工程(A)は、逆洗排水の透明性が所定のレベル以上になった後、好ましくは逆洗排水の透明性が所定のレベルになったタイミングで終了させることができる。工程(A)の終期が逆洗排水の透明性が所定のレベル以上になった後であれば、逆洗開始直後に排出される透明性の低い逆洗排水を工程(B)を実施する前に十分に排出させることができる。
【0029】
ここで、工程(A)において「逆洗排水の透明性が所定のレベル以上になる」とは、透明性の評価に光の透過度を用いた場合には透過度が所定値以上になることを指し、透明性の評価に吸光度を用いた場合には吸光度が所定値以下になることを指し、透明性の評価に濁度を用いた場合には濁度が所定値以下になることを指し、透明性の評価に透視度を用いた場合には透視度が所定値以上になることを指す。そして、工程(A)における「所定のレベル」は、例えば予備実験により決定することができる。
【0030】
次に、工程(B)では、図1(d)に示すように、上向流の逆洗用水を第一の平均流速よりも大きい第二の平均流速で活性炭層1に通水させる。なお、工程(B)は、工程(A)に続けて行うことが好ましい。具体的には、特に限定されることなく、工程(B)は、例えば逆洗用水の流速を工程(A)の終了時よりも増加させて開始することができる。
【0031】
ここで、工程(B)では、逆洗用水を第一の平均流速よりも大きい第二の平均流速で流すことにより、活性炭層1を良好に膨張させ、活性炭層を効果的に逆洗する。そのため、第二の平均流速は、活性炭層1の高さが被処理水の処理時の高さの1.1倍以上1.5倍以下まで膨張する速度であることが好ましい。第二の平均流速が上記範囲内であれば、活性炭が流出するのを十分に抑制しつつ、活性炭層1を良好に膨張させて洗浄することができる。
【0032】
なお、工程(B)中の逆洗用水の流速は、一定であってもよいし、工程(B)中に変化させてもよい。具体的には、逆洗用水の流速は、活性炭の流出が起こらない範囲であれば、一時的に大きくしてもよいし、一時的に小さくしてもよい。
【0033】
中でも、工程(B)中に上述した工程(α)を実施する場合、工程(B)中の逆洗用水の流速は、逆洗排水の透明性を用いて制御することが好ましい。具体的には、工程(B)中の逆洗用水の流速は、逆洗排水の透明性が所定のレベル以上となるように制御することが好ましい。即ち、逆洗用水の流速は、逆洗排水の透明性が所定のレベル以下となった場合には低下するように制御することが好ましい。工程(A)の実施により工程(B)では活性炭層1の状態(例えば、膨張の程度や活性炭の流出の有無)の把握が可能になっているところ、工程(A)の実施により一度上昇した逆洗排水の透明性が所定のレベル以下に再び低下することは、活性炭が過度に舞い上がっており、活性炭の流出の虞があることを示している。そのため、逆洗排水の透明性が所定のレベル以上となるように逆洗用水の流速を制御すれば、活性炭の流出を抑制することができる。
【0034】
ここで、工程(B)において「逆洗排水の透明性が所定のレベル以下になる」とは、透明性の評価に光の透過度を用いた場合には透過度が所定値以下になることを指し、透明性の評価に吸光度を用いた場合には吸光度が所定値以上になることを指し、透明性の評価に濁度を用いた場合には濁度が所定値以上になることを指し、透明性の評価に透視度を用いた場合には透視度が所定値以下になることを指す。そして、工程(B)における「所定のレベル」は、例えば予備実験により決定することができる。
【0035】
そして、工程(B)は、特に限定されることなく、例えば工程(B)の開始から所定の時間が経過したタイミングや、逆洗排水の性状が所定の性状になったタイミングで終了させることができる。
【0036】
(水処理システム)
本発明の水処理システムは、活性炭層を有する活性炭処理槽と、活性炭処理槽の活性炭層の逆洗に用いられる逆洗機構と、逆洗機構の動作を制御する本発明の制御装置とを備え、任意に、逆洗排水の透明性を評価して制御装置へと逆洗排水の透明性に関する情報を提供する透明性評価装置を更に備え得る。そして、本発明の水処理システムでは、被処理水の処理時には、被処理水が活性炭処理槽の活性炭層で処理されると共に、所定のタイミングで、逆洗機構を用いて活性炭処理槽の活性炭層が逆洗される。
なお、「所定のタイミング」としては、逆洗方法に関して上述したものと同様のものが挙げられる。
【0037】
具体的には、図3に示すように、本発明の水処理システムの一例としての水処理システム100は、活性炭処理槽10と、透明性評価装置2と、逆洗機構として機能する各種弁31,41,51,61および逆洗用水ポンプ52と、制御装置70とを備えている。
【0038】
ここで、活性炭処理槽10は、活性炭粒子を充填してなる活性炭層1と、活性炭層1よりも上側に設けられた被処理水流入ライン3および逆洗排水排出ライン6と、活性炭層1の下側に設けられた処理水排出ライン4および逆洗用水流入ライン5とを備え、任意に、活性炭層の洗浄時に曝気により活性炭の流動を促進するための曝気装置(図示せず)を活性炭層1の下部に更に備えている。
【0039】
また、透明性評価装置2は、活性炭処理槽10内の活性炭層1よりも上側に設けられている。なお、透明性評価装置2としては、具体的には、逆洗方法に関して上述したものと同様のものを用いることができる。
そして、透明性評価装置2では、逆洗排水の透明性が測定され、得られた測定結果が制御装置70へと送られる。
【0040】
逆洗機構は、被処理水流入ライン3に設けられた被処理水弁31、処理水排出ライン4に設けられた処理水弁41、逆洗用水流入ライン5に設けられた逆洗用水弁51および逆洗用水ポンプ52、並びに、逆洗排水排出ライン6に設けられた逆洗排水弁61を含み、任意に上述した曝気装置を更に含む。そして、逆洗機構によれば、被処理水弁31および処理水弁41を閉じ、逆洗用水弁51および逆洗排水弁61を開いた状態で逆洗用水ポンプ52を運転させることで、活性炭層1の逆洗が可能になる。また、被処理水弁31および処理水弁41を開き、逆洗用水弁51および逆洗排水弁61を閉じて逆洗用水ポンプ52を停止させた状態とすることで、活性炭層1を用いた被処理水の処理が可能になる。
【0041】
制御装置70は、逆洗機構の動作を制御し、上述した本発明の逆洗方法を用いて活性炭層1を逆洗し得るようにする。即ち、制御装置70は、上述した工程(A)、工程(B)、工程(α)およびその他の工程を実施し得るように逆洗機構の動作を制御する。
【0042】
具体的には、制御装置70は、まず、被処理水弁31および処理水弁41を閉じ、逆洗用水弁51および逆洗排水弁61を開いた状態で逆洗用水ポンプ52を運転させることにより、上向流の逆洗用水を活性炭層1に第一の平均流速で通水させる(工程(A))。その後、例えば逆洗用水ポンプ52を介して送水される逆洗用水の流量を増加させ、逆洗用水を第一の平均流速よりも大きい第二の平均流速で流すことにより、活性炭層1を良好に膨張させ、活性炭層1を効果的に逆洗する(工程(B))。
なお、制御装置70を用いて行う工程(A)および工程(B)の内容は、上述した逆洗方法と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0043】
また、制御装置70は、透明性評価装置2から入手した逆洗排水の透明性に関する情報を利用し、逆洗用水を前記第一の平均流速で通水させる動作(工程(A))の終期を決定する。そして、逆洗装置70は、例えば、逆洗用水ポンプ52の出力の調整および/または逆洗用水弁51の開度の調整などを行って工程(A)を終了させ、逆洗機構に次の工程(例えば、工程(B))を実施させる。
なお、制御装置70における工程(A)の終期の決定は、逆洗方法に関して上述したのと同様に行うことができるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0044】
(プログラム)
本発明のプログラムは、活性炭層を有する活性炭処理槽と、活性炭処理槽の活性炭層の逆洗に用いられる逆洗機構と、逆洗排水の透明性を評価する透明性評価装置とを備える水処理システムにおいて活性炭層を逆洗する際に用いられる。
なお、活性炭処理槽、逆洗機構および透明性評価装置としては、逆洗方法および水処理システムに関して上述したものと同様のものを用いることができるので、ここでは説明を省略する。
【0045】
具体的には、本発明のプログラムの一例は、上述した本発明の逆洗方法を用いて活性炭層を逆洗する際に用いられる。そして、当該プログラムは、活性炭層を有する活性炭処理槽と、活性炭処理槽の活性炭層の逆洗に用いられる逆洗機構と、逆洗排水の透明性を評価する透明性評価装置とを備える水処理システムに、逆洗開始直後に逆洗用水を第一の平均流速で通水させるステップ(a)と、ステップ(a)の後に、逆洗用水を第一の平均流速よりも大きい第二の平均流速で通水させるステップ(b)とを実行させ、任意に、逆洗排水の透明性を評価するステップ(c)と、逆洗排水の透明性に基づいてステップ(a)を終了させるステップ(d)とを更に実行させる。
より具体的には、本発明のプログラムの一例は、例えば、逆洗機構の動作を制御するコンピュータ等の制御装置を介して逆洗機構に上述したステップを実行させる。ここで、本発明のプログラムが実行させる各ステップの内容は、本発明の逆洗方法に関して上述した各工程と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0046】
なお、このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。このような記録媒体を用いれば、プログラムをコンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録された記録媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROMなどの記録媒体であってもよい。また、このプログラムは、ネットワークを介したダウンロードによって提供することもできる。
【0047】
以上、一例を用いて本発明の逆洗方法、制御装置、水処理システムおよびプログラムについて説明したが、本発明の逆洗方法、制御装置、水処理システムおよびプログラムは上述した一例に限定されるものではない。
【0048】
具体的には、本発明では、逆洗中(例えば工程(A)の初期など、逆洗用水を流している間)に活性炭層を曝気してもよい。また、本発明により逆洗を行う前(即ち、逆洗用水を流して工程(A)を開始する前)に活性炭層を曝気して活性炭層から汚れを剥離させてもよい。
【0049】
また、上述した例では透明性評価装置2を活性炭処理槽10内に設置し、活性炭処理槽10内を流れる逆洗排水について透明性を評価したが、透明性評価装置は逆洗排水排出ライン内などの活性炭処理槽外に設置してもよい。
【0050】
更に、上述した例では透明性評価装置2の位置が固定されていたが、透明性評価装置は活性炭処理槽内を少なくとも上下方向に移動可能に構成されていてもよい。具体的には、例えば図2に示すように、透明性評価装置2は、工程(B)において透明性を評価する位置が、工程(A)において透明性を評価する位置よりも上側となるように移動可能であることが好ましい。より具体的には、第一の平均流速で逆洗用水を流通させる工程(A)の活性炭層1の上端の位置は、第一の平均流速よりも大きい第二の平均流速で逆洗用水を流通させる工程(B)の活性炭層1の上端よりも下になるところ、工程(A)中の透明性評価装置2の位置は工程(A)の活性炭層1の上端よりも上側かつ第二の平均流速で逆洗用水を流通させた際の活性炭層1の上端よりも下側となる位置にし、工程(B)中の透明性評価装置2の位置は第二の平均流速で逆洗用水を流通させた際の活性炭層1の上端よりも上側となる位置にすることが好ましい。このようにすれば、工程(A)では透明性の低い逆洗排水の排出の完了をより迅速に検知しつつ、工程(B)では活性炭層の過度な膨張および活性炭の流出を効果的に抑制することができる。また、逆洗時の活性炭層の膨張の程度は水温などの影響も受けるところ、透明性評価装置2の位置が少なくとも上下方向に移動可能であれば、季節に応じて適当な位置で逆洗排水の透明性を評価することができる。なお、上述したように透明性評価装置を上下方向に移動可能に構成することに替えて、活性炭処理槽内の上下方向の異なる位置に複数台の透明性評価装置を設置してもよい。具体的には、工程(A)の活性炭層1の上端よりも上側かつ第二の平均流速で逆洗用水を流通させた際の活性炭層1の上端よりも下側となる位置と、第二の平均流速で逆洗用水を流通させた際の活性炭層1の上端よりも上側となる位置とを含む複数の位置に透明性評価装置をそれぞれ設置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、活性炭の流出を抑制しつつ活性炭層を効果的に逆洗することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 活性炭層
2 透明性評価装置
3 被処理水流入ライン
4 処理水排出ライン
5 逆洗用水流入ライン
6 逆洗排水排出ライン
10 活性炭処理槽
31,41,51,61 弁
52 逆洗用水ポンプ
70 制御装置
100 水処理システム
図1
図2
図3