(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】車両用空気調和装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20240207BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20240207BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240207BHJP
B60L 58/15 20190101ALI20240207BHJP
B60L 58/34 20190101ALI20240207BHJP
【FI】
B60H1/22 611C
B60H1/22 611D
B60H1/22 651A
B60H1/22 651C
B60K11/04 G
B60L50/60
B60L58/15
B60L58/34
(21)【出願番号】P 2020058006
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】石関 徹也
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-162933(JP,A)
【文献】特開2015-162947(JP,A)
【文献】特開2019-119291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
B60K 11/04
B60L 50/60
B60L 58/15
B60L 58/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータに給電するバッテリを搭載した車両において、
加温用熱媒体を循環させる加温回路と、
車室内の空調を行うために空調用熱媒体を循環させる冷凍サイクル回路と、を備えた車両用空気調和装置であって、
前記加温回路は、
前記加温用熱媒体を加温するヒータと、
前記冷凍サイクル回路の前記空調用熱媒体との間で熱交換を行なう熱交換器と、
前記熱交換器と並列に設けられ、外気との間で熱交換を行なうラジエータと、を備え、
車両走行時に回生充電される前記バッテリの残容量に応じて回路を切り替える回路切替制御部を備え、
前記回路切替制御部は、
車両走行時に回生充電される前記バッテリの残容量が予め定めた閾値以上であるときに、前記ヒータを作動させ、加温された前記加温用熱媒体を、前記冷凍サイクル回路の運転に応じて前記熱交換器及び前記ラジエータの何れか一方に循環させることを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項2】
前記回路切替制御部は、
前記冷凍サイクル回路で暖房を行なっているときには、加温された前記加温用熱媒体を前記熱交換器に循環させ、前記冷凍サイクル回路で冷房を行なっているときには、加温された前記加温用熱媒体を前記ラジエータに循環させることを特徴とする請求項1に記載の車両用空気調和装置。
【請求項3】
前記回路切替制御部は、
前記冷凍サイクル回路の運転が暖房であり、且つ前記熱交換器を通過した前記加温用熱媒体の温度が予め定めた閾値以上であるときには、加温された前記加温用熱媒体を前記ラジエータに循環させることを特徴とする請求項2に記載の車両用空気調和装置。
【請求項4】
前記加温回路は、
前記冷凍サイクル回路の暖房を補助するために、前記加温用熱媒体を循環させる回路であることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の車両用空気調和装置。
【請求項5】
車両に搭載され、加温を必要とする電力機器を備え、
前記加温回路は、
前記電力機器を加温するために、前記加温用熱媒体を循環させる回路であることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の車両用空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車では、走行時の回生によってバッテリの充電を行なうが、バッテリは過充電になると劣化する。そこで、バッテリの残容量が高いときには、抵抗回路を用いて電力を消費させるか、又は特許文献1に示されるように、電気負荷を作動させて電力を消費させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリの過充電を防ぐために、抵抗回路や電気負荷等の放電手段を用いると、新たな構成部品を追加することになるため、改善の余地があった。
本発明の課題は、既存の構成部品によってバッテリの電力を消費し、過充電を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る車両用空気調和装置は、電動モータに給電するバッテリを搭載した車両において、加温用熱媒体を循環させる加温回路と、車室内の空調を行うために空調用熱媒体を循環させる冷凍サイクル回路と、を備えた車両用空気調和装置であって、加温回路は、加温用熱媒体を加温するヒータと、冷凍サイクル回路の空調用熱媒体との間で熱交換を行なう熱交換器と、熱交換器と並列に設けられ、外気との間で熱交換を行なうラジエータと、を備え、車両走行時に回生充電されるバッテリの残容量に応じて回路を切り替える回路切替制御部を備え、回路切替制御部は、車両走行時に回生充電されるバッテリの残容量が予め定めた閾値以上であるときに、ヒータを作動させ、加温された加温用熱媒体を、冷凍サイクル回路の運転に応じて熱交換器及びラジエータの何れか一方に循環させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、バッテリの残容量が予め定めた閾値以上であるときに、加温回路のヒータを作動させてバッテリの電力を消費させる。加温回路のヒータは、車両に搭載されることが一般的になりつつある。したがって、既存の構成部品によってバッテリの電力を消費させ、バッテリの過充電を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図7】放電制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】暖房運転+ヒータ作動(ラジエータ放熱)を示す図である。
【
図13】ヒータによる暖房補助運転を示す図である(ヒータコア)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
《一実施形態》
《構成》
図1は、車両用空気調和装置を示す図である。
車両は、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車等、外部電源からの充電によってバッテリ45を充電可能で、且つバッテリ45に充電された電力によって電動モータ46を駆動し、走行する車両である。車両用空気調和装置11は、車両に搭載され、バッテリ45の電力で駆動される。車両用空気調和装置11は、冷凍サイクル回路12及びHVACユニット13を備え、空調用熱媒体を用いたヒートポンプにより、暖房運転、除湿暖房運転、冷房運転、除湿冷房運転の各空調運転を選択的に実行し、車室内の空調を行なう。
【0010】
先ず、冷凍サイクル回路12の基本的な構成要素について説明する。
冷凍サイクル回路12は、圧縮機21と、放熱器22と、室外膨張弁23、室外熱交換器24と、室内膨張弁25と、吸熱器26と、アキュムレータ27と、を備える。
圧縮機21は、気相である低圧の空調用熱媒体を圧縮することにより、液化しやすい高圧の空調用熱媒体に昇圧させるものであり、例えばスクロール圧縮機、斜板式圧縮機等である。圧縮機21の駆動源は、例えば電動モータである。圧縮機21は、空調用熱媒体と共に循環するオイルによって潤滑が行なわれる給油式であり、空調用熱媒体に対するオイル濃度は数%程度である。
【0011】
放熱器22は、HVACユニット13内に設けられており、放熱フィンの周囲を通過する空気とチューブ内を通過する高温高圧の空調用熱媒体(熱媒)との間で熱交換を行なう。すなわち、チューブ内の空調用熱媒体が放熱によって凝縮液化することにより、放熱フィンの周囲の空気を加温する。
室外膨張弁23は、液相で高圧の空調用熱媒体を霧状にして吹き出すことにより、気化しやすい低圧の空調用熱媒体に減圧するものであり、開度が全閉から全開まで調整可能である。
【0012】
室外熱交換器24は、車体におけるフロントグリルの内側に設けられており、放熱フィンの周囲を通過する外気とチューブ内を通過する空調用熱媒体との間で熱交換を行なう。外気とは主に走行風であるが、十分な走行風が得られないときは、送風機28が駆動されることで、放熱フィンに対して外気が送風される。暖房時や除湿暖房時には、室外熱交換器24を蒸発器、つまり吸熱器として機能させ、放熱フィンの周囲を通過する外気とチューブ内を通過する低温の空調用熱媒体(冷媒)との間で熱交換を行なう。すなわち、チューブ内の空調用熱媒体に吸熱させ、蒸発気化させる。一方、除湿冷房時や冷房時には、室外熱交換器24を凝縮器、つまり放熱器として機能させ、放熱フィンの周囲を通過する外気とチューブ内を通過する高温の空調用熱媒体(熱媒)との間で熱交換を行なう。すなわち、チューブ内の空調用熱媒体に放熱させ、凝縮液化させる。
【0013】
室内膨張弁25は、液相で高圧の空調用熱媒体を霧状にして吹き出すことにより、気化しやすい低圧の空調用熱媒体に減圧するものであり、開度が全閉から全開まで調整可能である。
吸熱器26は、HVACユニット13内に設けられており、放熱フィンの周囲を通過する空気とチューブ内を通過する低温の空調用熱媒体(冷媒)との間で熱交換を行なう。すなわち、チューブ内の空調用熱媒体が吸熱によって蒸発気化することにより、放熱フィンの周囲の空気を冷却すると共に、放熱フィンの表面に結露を生じさせて除湿を行なう。
アキュムレータ27と、空調用熱媒体の気液分離を行ない、気相の空調用熱媒体だけを圧縮機21へと供給する。
【0014】
次に、冷凍サイクル回路12の基本的な回路構成について説明する。
図中、空調用熱媒体の流路を実線で示している。圧縮機21の出口は、配管31aを介して放熱器22の入口に連通している。放熱器22の出口は、配管31bを介して室外熱交換器24の入口に連通しており、配管31bには、室外膨張弁23が設けられている。
室外熱交換器24の出口は、配管31cを介して圧縮機21の入口に連通しており、配管31cには、室外熱交換器24の側から放熱器22の側に向かって、開閉弁32、逆止弁33、アキュムレータ27が、順に設けられている。開閉弁32は、配管31cを開放又は閉鎖する。逆止弁33は、開閉弁32の側からアキュムレータ27の側への通過を許容し、逆方向の通過を阻止する。
【0015】
配管31bのうち、放熱器22と室外膨張弁23との間には分岐点34があり、この分岐点34は、配管31dを介して吸熱器26の入口に連通しており、配管31dには、分岐点34の側から吸熱器26の側に向かって、開閉弁35、及び室内膨張弁25が、順に設けられている。開閉弁35は、配管31dを開放又は閉鎖する。
配管31cのうち、室外熱交換器24と開閉弁32との間には分岐点36があり、また配管31dのうち、開閉弁35と室内膨張弁25との間には分岐点37がある。分岐点36は、配管31eを介して分岐点37に連通しており、配管31eには、逆止弁38が設けられている。逆止弁38は、分岐点36の側から分岐点37の側への通過を許容し、逆方向の通過を阻止する。
配管31cのうち、開閉弁32と逆止弁33との間には分岐点39があり、吸熱器26の出口は、配管31fを介して分岐点39に連通している。
【0016】
次に、HVACユニット13の基本構成について説明する。
HVACユニット13(HVAC:Heating Ventilation and Air Conditioning)は、ダッシュボードの内部に配置されており、一端側から外気や内気を導入し、他端側から車室内へ空気を供給するダクトによって形成されている。HVACユニット13の内部には、送風ファン14と、吸熱器26と、放熱器22と、エアミックスダンパ15と、が設けられている。送風ファン14は、HVACユニット13の一端側に設けられており、駆動されるときに、外気又は内気を吸引し、他端側へと吐出する。吸熱器26は、送風ファン14よりも下流側に設けられている。送風ファン14から吹き出された空気は、全て吸熱器26を通過する。HVACユニット13の内部で吸熱器26の下流側には、放熱器22を通過する流路16と、放熱器22を迂回する流路17と、が形成されている。流路16と流路17とは下流側が合流している。
【0017】
エアミックスダンパ15は、流路16を開放して流路17を閉鎖する位置と、流路16を閉鎖して流路17を開放する位置と、の間で回動可能である。エアミックスダンパ15が流路16を開放して流路17を閉鎖する位置にあるときには、吸熱器26を通過した空気は全て放熱器22を通過する。エアミックスダンパ15が流路16を閉鎖して流路17を開放する位置にあるときには、吸熱器26を通過した空気は全て放熱器22を迂回する。エアミックスダンパ15が流路16と流路17の双方を開放する位置にあるときには、吸熱器26を通過した空気のうち、一部が放熱器22を通過し、残りが放熱器22を迂回し、HVACユニット13の下流側にて、放熱器22を通過した空気と、放熱器22を迂回した空気とが混合される。
【0018】
次に、付加的な構成について説明する。
車両用空気調和装置11は、温調回路41を備え、温調用熱媒体を循環させることでバッテリ45の温調を行なう。温調とは温度を調整又は調節することを意味する。温調用熱媒体は、例えば水であるが、冷媒やクーラント等、他の流体を用いてもよい。
先ず、温調回路41の主な構成要素について説明する。
温調回路41は、メインポンプ42と、ヒータ43と、ヒータコア44と、バッテリ45と、電動モータ46と、熱交換器47と、ラジエータ48と、サブポンプ49と、を備える。
【0019】
メインポンプ42は、温調回路41の温調用熱媒体を一方の側から吸引し、他方の側に吐出することで、温調用熱媒体を循環させる。
ヒータ43は、温調用熱媒体を加温する例えば水加熱ヒータ(ECH:Electric Coolant Heater)である。
ヒータコア44は、流路16の放熱器22よりも下流側に設けられており、放熱フィンの周囲を通過する空気とチューブ内を通過する温調用熱媒体(熱媒)との間で熱交換を行なう。ヒータコア44は、加温された温調用熱媒体が供給されるときに、放熱フィンの周囲の空気を加温する。
【0020】
バッテリ45は、電動モータ46に電力を供給する蓄電池であり、例えばリチウムイオンバッテリである。バッテリ45に形成されたウォータージャケットに温調用熱媒体が流れることで、バッテリ45の温調が行なわれる。バッテリ45は、温調を必要とする電力機器の一つであるが、これに限定されるものではない。温度管理が求められる電力機器として、他にも電源システム、充電器、インバータ、及び高電圧部品等に適用してもよい。
電動モータ46は、車両走行用のモータである。電動モータ46に形成されたウォータージャケットに温調用熱媒体が流れることで、電動モータ46への蓄熱、又は電動モータ46の冷却が行なわれる。
【0021】
熱交換器47は、温調用熱媒体が通過する温調用熱媒体流路47Aと、空調用熱媒体が通過する空調用熱媒体流路47Bと、を備え、冷凍サイクル回路12の一部の空調用熱媒体と温調回路41の温調用熱媒体との間で熱交換を行なう。
ラジエータ48は、室外熱交換器24の風下側に配置され、内部を通過する温調用熱媒体と周囲を通過する外気との間で熱交換を行ない、チューブ内の温調用熱媒体に放熱させる。室外熱交換器24の風上側には、送風機28が設けられており、車両が停止しているとき又は低速で走行しているときでも、送風機28を駆動させることで、室外熱交換器24及びラジエータ48に送風が供給される。
サブポンプ49は、温調回路41の温調用熱媒体を一方の側から吸引し、他方の側に吐出することで、温調用熱媒体を循環させる。
【0022】
次に、温調回路41の回路構成について説明する。
図中、温調用熱媒体の流路を破線で示している。メインポンプ42の出口は、配管51aを介してヒータコア44の入口に連通している。ヒータコア44の出口は、配管51bを介してメインポンプ42の入口に連通している。配管51aには、メインポンプ42の側からヒータコア44の側に向かって、ヒータ43、三方弁52が、順に設けられている。配管51bには、ヒータコア44の側からメインポンプ42の側に向かって、分岐点53、分岐点54が、順に設けられている。
【0023】
三方弁52は、入口がヒータ43に連通し、一方の出口がヒータコア44の入口に連通し、他方の出口が配管51cを介して熱交換器47における温調用熱媒体流路47Aの入口に連通している。熱交換器47における温調用熱媒体流路47Aの出口は、配管51dを介して分岐点54に連通している。配管51cには、三方弁52の側から熱交換器47の側に向かって、三方弁61、バッテリ45、分岐点62、三方弁63、分岐点64、電動モータ46、三方弁65、分岐点66が、順に設けられている。配管51dには、三方弁68が設けられている。
【0024】
三方弁61は、入口が三方弁52に連通し、一方の出口がバッテリ45に連通し、他方の出口が配管51eを介して分岐点62に連通している。三方弁63は、入口が分岐点62に連通し、一方の出口が分岐点64に連通し、他方の出口が配管51fを介して分岐点53に連通している。配管51fには、三方弁68が設けられている。三方弁68は、入口が三方弁63に連通し、一方の出口が分岐点53に連通し、他方の出口が配管51gを介して分岐点66に連通している。
【0025】
サブポンプ49の出口は、配管51hを介して分岐点64に連通している。三方弁65は、入口が電動モータ46に連通し、一方の出口が分岐点66に連通し、他方の出口が配管51iを介してサブポンプ49の入口に連通している。配管51iには、三方弁65の側からサブポンプ49の側に向かって、ラジエータ48、分岐点69が、順に設けられている。三方弁68は、一方の入口が熱交換器47における温調用熱媒体流路47Aに連通し、他方の入口が配管51jを介して分岐点69に連通し、出口が分岐点54に連通している。
【0026】
次に、冷凍サイクル回路12の付加的な構成要素について説明する。
冷凍サイクル回路12は、膨張弁55と、熱交換器47と、を備える。
膨張弁55は、液相で高圧の空調用熱媒体を霧状にして吹き出すことにより、気化しやすい低圧の空調用熱媒体に減圧するものであり、開度が全閉から全開まで調整可能である。
次に、冷凍サイクル回路12の付加的な回路構成について説明する。
配管31dのうち、分岐点37と室内膨張弁25との間には分岐点56があり、配管31cのうち、逆止弁33とアキュムレータ27との間には分岐点57がある。分岐点56は、配管31gを介して熱交換器47における空調用熱媒体流路47Bの入口に連通し、熱交換器47における空調用熱媒体流路47Bの出口は、配管31hを介して分岐点57に連通している。配管31gには、膨張弁55が設けられている。
【0027】
次に、車両用空気調和装置11の基本的な運転について説明する。
コントローラ71は、例えばマイクロコンピュータであり、ユーザからの運転要求に応じて、暖房運転、除湿暖房運転、冷房運転、除湿冷房運転の各空調運転を選択的に実行し、車室内の空調を行なう。ここでは、基本的な運転について説明するため、冷凍サイクル回路12の動作、及びHVACユニット13の動作について説明する。すなわち、コントローラ71は、圧縮機21、室外膨張弁23、開閉弁32、開閉弁35、室内膨張弁25、膨張弁55、送風機28、送風ファン14、及びエアミックスダンパ15を駆動制御する。
【0028】
[暖房運転]
図2は、暖房運転を示す図である。
図中、低圧の空調用熱媒体が通過する流路を太い点線で示し、高圧の空調用熱媒体が通過する流路を太い実線で示し、開放された開閉弁を白抜きで示し、閉鎖された開閉弁を黒塗りで示している。冷凍サイクル回路12によって、暖房運転を行なう場合、室外膨張弁23を僅かに開放し、開閉弁32を開放し、開閉弁35を閉鎖し、室内膨張弁25を閉鎖し、膨張弁55を閉鎖した状態で、圧縮機21を駆動する。
【0029】
これにより、空調用熱媒体は、圧縮機21、放熱器22、分岐点34、室外膨張弁23、室外熱交換器24、分岐点36、開閉弁32、分岐点39、逆止弁33、分岐点57、及びアキュムレータ27を順に経由して循環する。この循環経路において、気相の空調用熱媒体は、圧縮機21で圧縮され高圧となり、放熱器22で放熱することで凝縮液化し、低温になる。液相の空調用熱媒体は、室外膨張弁23で膨張され低圧となり、室外熱交換器24で吸熱することで蒸発気化し、高温になる。
一方、HVACユニット13では、送風ファン14を駆動すると共に、エアミックスダンパ15で流路17を閉じ気味にしつつ、放熱器22を通過する割合を調整する。これにより、導入された空気が放熱器22で加温され、温かい空気が車室内に供給される。
【0030】
なお、暖房運転では、室外熱交換器24が蒸発器として機能するため、室外熱交換器24の周囲が冷却されることで空気中の水分が昇華し、放熱フィンに着霜が生じることがある。また、霜が成長し放熱フィンの通風路が塞がれると、室外熱交換器24の熱交換効率が低下する。そこで、室外熱交換器24の温度から着霜の発生を検出したときには、除霜運転を行なう。除霜運転を行なう場合、送風ファン14を停止し、エアミックスダンパ15で流路16を閉塞することを除いては。暖房運転と同じである。これにより、空調用熱媒体は、放熱器22での放熱が抑制されるので、高温のまま室外熱交換器24へと供給され、霜が融解される。
【0031】
[除湿暖房運転]
図3は、除湿暖房運転を示す図である。
図中、低圧の空調用熱媒体が通過する流路を太い点線で示し、高圧の空調用熱媒体が通過する流路を太い実線で示し、開放された開閉弁を白抜きで示し、閉鎖された開閉弁を黒塗りで示している。冷凍サイクル回路12によって、除湿暖房運転を行なう場合、室外膨張弁23を僅かに開放し、開閉弁32を開放し、開閉弁35を開放し、室内膨張弁25を僅かに開放し、膨張弁55を閉鎖した状態で、圧縮機21を駆動する。
【0032】
これにより、空調用熱媒体は、圧縮機21、放熱器22、分岐点34、室外膨張弁23、室外熱交換器24、分岐点36、開閉弁32、分岐点39、逆止弁33、分岐点57、及びアキュムレータ27を順に経由して循環する。また、放熱器22を通過した空調用熱媒体の一部は、分岐点34から分流され、開閉弁35、分岐点37、分岐点56、室内膨張弁25、及び吸熱器26を経由して分岐点39に合流する。これらの循環経路において、気相の空調用熱媒体は、圧縮機21で圧縮され高圧となり、放熱器22で放熱することで凝縮液化し、低温になる。液相の空調用熱媒体は、室外膨張弁23で膨張され低圧となり、室外熱交換器24で吸熱することで蒸発気化し、高温になる。また、液相の空調用熱媒体の一部は、室内膨張弁25で膨張され低圧となり、吸熱器26で吸熱することで蒸発気化し、高温となる。
一方、HVACユニット13では、送風ファン14を駆動すると共に、エアミックスダンパ15で流路17を閉じ気味にしつつ、放熱器22を通過する割合を調整する。これにより、導入された空気が吸熱器26で除湿された後に、放熱器22で加温され、除湿された温かい空気が車室内に供給される。
【0033】
[除湿冷房運転]
図4は、除湿冷房運転を示す図である。
図中、低圧の空調用熱媒体が通過する流路を太い点線で示し、中圧の空調用熱媒体が通過する流路を太い破線で示し、高圧の空調用熱媒体が通過する流路を太い実線で示し、開放された開閉弁を白抜きで示し、閉鎖された開閉弁を黒塗りで示している。冷凍サイクル回路12によって、除湿冷房運転を行なう場合、室外膨張弁23を開き気味にし、開閉弁32を閉鎖し、開閉弁35を閉鎖し、室内膨張弁25を僅かに開放し、膨張弁55を閉鎖した状態で、圧縮機21を駆動する。
【0034】
これにより、空調用熱媒体は、圧縮機21、放熱器22、分岐点34、室外膨張弁23、室外熱交換器24、分岐点36、逆止弁38、分岐点37、分岐点56、室内膨張弁25、吸熱器26、分岐点39、逆止弁33、分岐点57、及びアキュムレータ27を順に経由して循環する。この循環経路において、気相の空調用熱媒体は、圧縮機21で圧縮され高圧となり、室外膨張弁23で膨張され中圧となり、室外熱交換器24で放熱することで凝縮液化し、低温になる。液相の空調用熱媒体は、室内膨張弁25で膨張され低圧となり、吸熱器26で吸熱することで蒸発気化し、高温となる。
一方、HVACユニット13では、送風ファン14を駆動すると共に、エアミックスダンパ15で流路16を閉じ気味にしつつ、放熱器22を迂回する割合を調整する。これにより、導入された空気が吸熱器26で除湿冷却され、涼しい空気が車室内に供給される。
【0035】
[冷房運転]
図5は、冷房運転を示す図である。
図中、低圧の空調用熱媒体が通過する流路を太い点線で示し、高圧の空調用熱媒体が通過する流路を太い実線で示し、開放された開閉弁を白抜きで示し、閉鎖された開閉弁を黒塗りで示している。冷凍サイクル回路12によって、冷房運転を行なう場合、室外膨張弁23を全開にし、開閉弁32を閉鎖し、開閉弁35を閉鎖し、室内膨張弁25を僅かに開放し、膨張弁55を閉鎖した状態で、圧縮機21を駆動する。
【0036】
これにより、空調用熱媒体は、圧縮機21、放熱器22、分岐点34、室外膨張弁23、室外熱交換器24、分岐点36、逆止弁38、分岐点37、分岐点56、室内膨張弁25、吸熱器26、分岐点39、逆止弁33、分岐点57、及びアキュムレータ27を順に経由して循環する。この循環経路において、気相の空調用熱媒体は、圧縮機21で圧縮され高圧となり、室外熱交換器24で放熱することで凝縮液化し、低温になる。液相の空調用熱媒体は、室内膨張弁25で膨張され低圧となり、吸熱器26で吸熱することで蒸発気化し、高温となる。
一方、HVACユニット13では、送風ファン14を駆動すると共に、エアミックスダンパ15で流路16を閉じ気味にしつつ、放熱器22を迂回する割合を調整する。これにより、導入された空気が吸熱器26で冷却され、涼しい空気が車室内に供給される。
【0037】
次に、車両用空気調和装置11の主要な制御処理について説明する。
図6は、車両用空気調和装置のブロック図である。
車両用空気調和装置11は、コントローラ71と、SOC取得部72と、温度センサ73と、を備える。
SOC取得部72は、バッテリ45の残容量に相当する充電状態(SOC:State Of Charge)を取得する。例えば、バッテリ45内の充放電電流、及びセル電圧を測定することで、バッテリ45の充電状態を取得する。温度センサ73は、熱交換器47の温調用熱媒体流路47A出口側における温調用熱媒体の温度Tcを検出する。各信号はコントローラ71に入力される。
【0038】
コントローラ71は、放電制御処理を実行し、冷凍サイクル回路12、HVACユニット13、及び温調回路41を駆動制御する。すなわち、コントローラ71は、冷凍サイクル回路12の圧縮機21、室外膨張弁23、開閉弁32、開閉弁35、室内膨張弁25、膨張弁55、及び送風機28を駆動制御する。また、コントローラ71は、HVACユニット13の送風ファン14、及びエアミックスダンパ15を駆動制御する。さらに、コントローラ71は、温調回路41のメインポンプ42、ヒータ43、サブポンプ49、三方弁52、三方弁61、三方弁63、三方弁65、三方弁68、及び三方弁68を駆動制御する。
【0039】
図7は、放電制御処理の一例を示すフローチャートである。
放電制御処理は、所定時間毎のタイマ割込み処理として実行される。
ステップS101では、バッテリ45の残容量が予め定めた閾値th以上であるか否かを判定する。閾値thは満充電よりも少し低い値であり、例えば90%程度である。ここで、バッテリ45の残容量が閾値th未満であるときには、まだ回生充電を行なえると判断して、そのまま所定のメインプログラムに復帰する。一方、バッテリ45の残容量が閾値th以上であるときには、もう回生充電を行なえないと判断してステップS102に移行する。
【0040】
ステップS102では、ヒータ43を作動させる。
続くステップS103では、冷凍サイクル回路12で暖房運転を行なっているか否かを判定する。ここで、冷凍サイクル回路12が暖房運転を行なっているときにはステップS103に移行する。一方、冷凍サイクル回路12が暖房運転を行なっていない、つまり冷房運転を行なっている、又は空調運転を停止しているときにはステップS106に移行する。ここでは、説明を簡単にするために、単に暖房運転を行なっているか否かを判定しているが、車室内を暖めるという点で暖房運転と除湿暖房運転は同等であるため、暖房運転及び除湿暖房運転の何れかを行なっているか否かを判定することも含むものとする。
【0041】
ステップS104では、熱交換器47の温調用熱媒体流路47A出口側における温調用熱媒体の温度Tcが予め定めた閾値T1未満であるか否かを判定する。閾値T1は、例えば約40~50℃である。ここで、温調用熱媒体の温度Tcが閾値T1未満であるときには、熱交換器47で十分な放熱ができていると判断してステップS105に移行する。一方、温調用熱媒体の温度Tcが閾値T1以上であるときには、熱交換器47で十分な放熱ができていないと判断してステップS106に移行する。
【0042】
ステップS105では、冷凍サイクル回路12によって暖房運転を行ない、且つヒータ43で加温した温調用熱媒体を、熱交換器47の温調用熱媒体流路47Aで放熱させ、所定のメインプログラムに復帰する。具体的に、冷凍サイクル回路12では、室外膨張弁23を僅かに開放し、開閉弁32を開放し、開閉弁35を開放し、室内膨張弁25を閉鎖し、膨張弁55を僅かに開放した状態で、圧縮機21を駆動する。一方、温調回路41では、ヒータ43を作動させた状態で、メインポンプ42を駆動し、サブポンプ49を停止し、温調用熱媒体を循環させる。また、温調用熱媒体が、メインポンプ42、ヒータ43、三方弁52、三方弁61、配管51e、分岐点62、三方弁63、三方弁68、分岐点66、熱交換器47の温調用熱媒体流路47A、三方弁67、及び分岐点54を順に経由して循環するように、各三方弁を制御する。
【0043】
ステップS106では、冷凍サイクル回路12の運転に関わらず、ヒータ43で加温した温調用熱媒体を、ラジエータ48で放熱させ、所定のメインプログラムに復帰する。具体的に、温調回路41では、メインポンプ42を駆動し、サブポンプ49を停止し、温調用熱媒体を循環させる。また、温調用熱媒体が、メインポンプ42、ヒータ43、三方弁52、三方弁61、配管51e、分岐点62、三方弁63、三方弁68、分岐点66、三方弁65、ラジエータ48、分岐点69、三方弁67、及び分岐点54を順に経由して循環するように、各三方弁を制御する。
【0044】
次に、一実施形態の主要な運転モードについて説明する。
[暖房運転+ヒータ作動]
図8は、暖房運転+ヒータ作動を示す図である。
図中、低圧の空調用熱媒体が通過する流路を太い点線で示し、高圧の空調用熱媒体が通過する流路を太い実線で示し、開放された開閉弁を白抜きで示し、閉鎖された開閉弁を黒塗りで示している。また、温調用熱媒体が通過する流路を太い破線で示す。
ここでは、暖房運転を行ない、且つヒータ43を作動させる運転について説明する。冷凍サイクル回路12によって、暖房運転を行なう場合、室外膨張弁23を僅かに開放し、開閉弁32を開放し、開閉弁35を閉鎖し、室内膨張弁25を閉鎖し、膨張弁55を閉鎖した状態で、圧縮機21を駆動する。一方、温調回路41では、ヒータ43を作動させ、メインポンプ42を駆動し、サブポンプ49を停止し、温調用熱媒体を循環させる。また、温調用熱媒体が、メインポンプ42、ヒータ43、三方弁52、三方弁61、配管51e、分岐点62、三方弁63、三方弁68、分岐点66、熱交換器47の温調用熱媒体流路47A、三方弁67、及び分岐点54を順に経由して循環するように、各三方弁を制御する。
【0045】
これにより、空調用熱媒体は、圧縮機21、放熱器22、分岐点34、室外膨張弁23、室外熱交換器24、分岐点36、開閉弁32、分岐点39、逆止弁33、分岐点57、及びアキュムレータ27を順に経由して循環する。また、放熱器22を通過した空調用熱媒体の一部は、分岐点34から分流され、開閉弁35、分岐点37、分岐点56、膨張弁55、及び熱交換器47の空調用熱媒体流路47Bを経由して分岐点57に合流する。これらの循環経路において、気相の空調用熱媒体は、圧縮機21で圧縮され高圧となり、放熱器22で放熱することで凝縮液化し、低温になる。液相の空調用熱媒体は、室外膨張弁23で膨張され低圧となり、室外熱交換器24で吸熱することで蒸発気化し、高温になる。また、液相の空調用熱媒体の一部は、膨張弁55で膨張され低圧となり、熱交換器47の空調用熱媒体流路47Bで吸熱することで蒸発気化し、高温となる。
【0046】
また、温調用熱媒体は、メインポンプ42、ヒータ43、三方弁52、三方弁61、配管51e、分岐点62、三方弁63、三方弁68、分岐点66、熱交換器47の温調用熱媒体流路47A、三方弁67、及び分岐点54を順に経由して循環する。この循環経路において、温調用熱媒体は、ヒータ43で吸熱することで高温となり、熱交換器47の温調用熱媒体流路47Aで放熱することで低温となる。
一方、HVACユニット13では、送風ファン14を駆動すると共に、エアミックスダンパ15で流路17を閉じ気味にしつつ、放熱器22を通過する割合を調整する。これにより、導入された空気が放熱器22で加温され、温かい空気が車室内に供給される。
【0047】
[冷房運転+ヒータ作動]
図9は、冷房運転+ヒータ作動を示す図である。
図中、低圧の空調用熱媒体が通過する流路を太い点線で示し、高圧の空調用熱媒体が通過する流路を太い実線で示し、開放された開閉弁を白抜きで示し、閉鎖された開閉弁を黒塗りで示している。また、温調用熱媒体が通過する流路を太い破線で示す。
ここでは、暖房以外の運転として例えば冷房運転を行ない、ヒータ43で電力を消費し、且つラジエータ48で放熱するときの運転について説明する。冷凍サイクル回路12によって、冷房運転を行なう場合、室外膨張弁23を全開放し、開閉弁32を閉鎖し、開閉弁35を閉鎖し、室内膨張弁25を僅かに開放し、膨張弁55を閉鎖した状態で、圧縮機21を駆動する。一方、温調回路41では、ヒータ43を作動させ、メインポンプ42を駆動し、サブポンプ49を停止し、温調用熱媒体を循環させる。また、温調用熱媒体が、メインポンプ42、ヒータ43、三方弁52、三方弁61、配管51e、分岐点62、三方弁63、三方弁68、分岐点66、三方弁65、ラジエータ48、分岐点69、三方弁67、及び分岐点54を順に経由して循環するように、各三方弁を制御する。ここでは、暖房以外の運転として冷房運転を行なうことを説明したが、暖房以外とは、空調運転を停止していることも含むものとする。
【0048】
これにより、空調用熱媒体は、圧縮機21、放熱器22、分岐点34、室外膨張弁23、室外熱交換器24、分岐点36、逆止弁38、分岐点37、分岐点56、室内膨張弁25、吸熱器26、分岐点39、逆止弁33、分岐点57、及びアキュムレータ27を順に経由して循環する。この循環経路において、気相の空調用熱媒体は、圧縮機21で圧縮され高圧となり、室外熱交換器24で放熱することで凝縮液化し、低温になる。液相の空調用熱媒体は、室内膨張弁25で膨張され低圧となり、吸熱器26で吸熱することで蒸発気化し、高温となる。
また、温調用熱媒体は、メインポンプ42、ヒータ43、三方弁52、三方弁61、配管51e、分岐点62、三方弁63、三方弁68、分岐点66、三方弁65、ラジエータ48、分岐点69、三方弁67、及び分岐点54を順に経由して循環する。この循環経路において、温調用熱媒体は、ヒータ43で吸熱することで高温となり、ラジエータ48で放熱することで低温となる。
一方、HVACユニット13では、送風ファン14を駆動すると共に、エアミックスダンパ15で流路16を閉じ気味にしつつ、放熱器22を迂回する割合を調整する。これにより、導入された空気が吸熱器26で冷却され、涼しい空気が車室内に供給される。
【0049】
[暖房運転+ヒータ作動(ラジエータ放熱)]
図10は、暖房運転+ヒータ作動(ラジエータ放熱)を示す図である。
図中、低圧の空調用熱媒体が通過する流路を太い点線で示し、高圧の空調用熱媒体が通過する流路を太い実線で示し、開放された開閉弁を白抜きで示し、閉鎖された開閉弁を黒塗りで示している。また、温調用熱媒体が通過する流路を太い破線で示す。
ここでは、暖房運転を行ない、ヒータ43で電力を消費し、且つラジエータ48で放熱するときの運転について説明する。冷凍サイクル回路12によって、暖房運転を行なう場合、室外膨張弁23を僅かに開放し、開閉弁32を開放し、開閉弁35を閉鎖し、室内膨張弁25を閉鎖し、膨張弁55を閉鎖した状態で、圧縮機21を駆動する。一方、温調回路41では、ヒータ43を作動させ、メインポンプ42を駆動し、サブポンプ49を停止し、温調用熱媒体を循環させる。また、温調用熱媒体が、メインポンプ42、ヒータ43、三方弁52、三方弁61、配管51e、分岐点62、三方弁63、三方弁68、分岐点66、三方弁65、ラジエータ48、分岐点69、三方弁67、及び分岐点54を順に経由して循環するように、各三方弁を制御する。
【0050】
これにより、空調用熱媒体は、圧縮機21、放熱器22、分岐点34、室外膨張弁23、室外熱交換器24、分岐点36、開閉弁32、分岐点39、逆止弁33、分岐点57、及びアキュムレータ27を順に経由して循環する。この循環経路において、気相の空調用熱媒体は、圧縮機21で圧縮され高圧となり、放熱器22で放熱することで凝縮液化し、低温になる。液相の空調用熱媒体は、室外膨張弁23で膨張され低圧となり、室外熱交換器24で吸熱することで蒸発気化し、高温になる。
また、温調用熱媒体は、メインポンプ42、ヒータ43、三方弁52、三方弁61、配管51e、分岐点62、三方弁63、三方弁68、分岐点66、三方弁65、ラジエータ48、分岐点69、三方弁67、及び分岐点54を順に経由して循環する。この循環経路において、温調用熱媒体は、ヒータ43で吸熱することで高温となり、ラジエータ48で放熱することで低温となる。
一方、HVACユニット13では、送風ファン14を駆動すると共に、エアミックスダンパ15で流路17を閉じ気味にしつつ、放熱器22を通過する割合を調整する。これにより、導入された空気が放熱器22で加温され、温かい空気が車室内に供給される。
【0051】
次に、他の運転について補足説明する。
[バッテリ加温運転]
図11は、バッテリ加温運転を示す図である。
図中、温調用熱媒体が通過する流路を太い破線で示す。ここでは、バッテリ45の温度が予め定めた閾値よりも低いときに実行されるバッテリ加温運転について説明する。冷凍サイクル回路12については、独立して機能しているものとして説明を省略する。温調回路41では、ヒータ43を作動させ、メインポンプ42を駆動し、サブポンプ49を停止し、温調用熱媒体を循環させる。また、温調用熱媒体が、メインポンプ42、ヒータ43、三方弁52、三方弁61、バッテリ45、分岐点62、三方弁63、三方弁68、分岐点53、及び分岐点54を順に経由して循環するように、各三方弁を制御する。この循環経路において、温調用熱媒体は、ヒータ43で吸熱することで高温となり、バッテリ45で放熱することで低温となる。これにより、バッテリ45は、温調用熱媒体によって加温される。
【0052】
[バッテリ冷却運転]
図12は、バッテリ冷却運転を示す図である。
図中、温調用熱媒体が通過する流路を太い破線で示す。ここでは、バッテリ45の温度が予め定めた閾値よりも高いときに実行されるバッテリ冷却運転について説明する。冷凍サイクル回路12については、独立して機能しているものとして説明を省略する。温調回路41では、ヒータ43を停止し、メインポンプ42を駆動し、サブポンプ49を停止し、温調用熱媒体を循環させる。また、温調用熱媒体が、メインポンプ42、ヒータ43、三方弁52、三方弁61、バッテリ45、分岐点62、三方弁63、三方弁68、分岐点66、三方弁65、ラジエータ48、分岐点69、三方弁67、及び分岐点54を順に経由して循環するように、各三方弁を制御する。この循環経路において、温調用熱媒体は、バッテリ45で吸熱することで高温となり、ラジエータ48で放熱することで低温となる。これにより、バッテリ45は、温調用熱媒体によって冷却される。
【0053】
[ヒータによる暖房補助運転]
図13は、ヒータによる暖房補助運転を示す図である。
図中、低圧の空調用熱媒体が通過する流路を太い点線で示し、高圧の空調用熱媒体が通過する流路を太い実線で示し、開放された開閉弁を白抜きで示し、閉鎖された開閉弁を黒塗りで示している。また、温調用熱媒体が通過する流路を太い破線で示す。
ここでは、ヒータ43による暖房補助運転について説明する。冷凍サイクル回路12によって、暖房運転を行なう場合、室外膨張弁23を僅かに開放し、開閉弁32を開放し、開閉弁35を閉鎖し、室内膨張弁25を閉鎖し、膨張弁55を閉鎖した状態で、圧縮機21を駆動する。一方、温調回路41では、ヒータ43を作動させ、メインポンプ42を駆動し、サブポンプ49を停止し、温調用熱媒体を循環させる。また、温調用熱媒体が、メインポンプ42、ヒータ43、三方弁52、ヒータコア44、分岐点53、及び分岐点54を順に経由して循環するように、各三方弁を制御する。
【0054】
これにより、空調用熱媒体は、圧縮機21、放熱器22、分岐点34、室外膨張弁23、室外熱交換器24、分岐点36、開閉弁32、分岐点39、逆止弁33、分岐点57、及びアキュムレータ27を順に経由して循環する。これらの循環経路において、気相の空調用熱媒体は、圧縮機21で圧縮され高圧となり、放熱器22で放熱することで凝縮液化し、低温になる。液相の空調用熱媒体は、室外膨張弁23で膨張され低圧となり、室外熱交換器24で吸熱することで蒸発気化し、高温になる。
また、温調用熱媒体は、メインポンプ42、ヒータ43、三方弁52、ヒータコア44、分岐点53、及び分岐点54を順に経由して循環する。この循環経路において、温調用熱媒体は、ヒータ43で吸熱することで高温となり、ヒータコア44で放熱することで低温となる。
一方、HVACユニット13では、送風ファン14を駆動すると共に、エアミックスダンパ15で流路17を閉じ気味にしつつ、放熱器22を通過する割合を調整する。これにより、導入された空気が放熱器22で加温されると共に、ヒータコア44で加温され、さらに温かい空気が車室内に供給される。
【0055】
[モータ冷却運転]
図14は、モータ冷却運転を示す図である。
図中、温調用熱媒体が通過する流路を太い破線で示す。ここでは、電動モータ46の温度が予め定めた閾値よりも高いときに実行されるモータ冷却運転について説明する。冷凍サイクル回路12については、独立して機能しているものとして説明を省略する。温調回路41では、ヒータ43を停止し、メインポンプ42を停止し、サブポンプ49を駆動し、温調用熱媒体を循環させる。また、温調用熱媒体が、サブポンプ49、分岐点64、電動モータ46、及び三方弁65、ラジエータ48、及び分岐点69を順に経由して循環するように、各三方弁を制御する。この循環経路において、温調用熱媒体は、電動モータ46で吸熱することで高温となり、ラジエータ48で放熱することで低温となる。これにより、電動モータ46は、温調用熱媒体によって冷却される。
【0056】
上記より、温調回路41が「加温回路」に対応し、冷凍サイクル回路12が「冷凍サイクル回路」に対応し、ヒータ43が「ヒータ」に対応し、熱交換器47が「熱交換器」に対応し、ラジエータ48が「ラジエータ」に対応する。ステップS101~S106の処理が「回路切替制御部」に対応する。バッテリ45が「電力機器」及び「バッテリ」に対応する。温調用熱媒体が「加温用熱媒体」に対応する。
【0057】
《作用》
次に、一実施形態の主要な作用効果について説明する。
走行時の回生によってバッテリ45の充電を行なうが、バッテリ45は過充電になると劣化するので、バッテリ45が満充電であるときには、回生を行なえなくなる。バッテリ45の過充電を防ぐために、抵抗回路や電気負荷等の放電手段を用いることが一般的であるが、新たな構成部品を追加することになるため、改善の余地があった。
【0058】
そこで、バッテリ45の温調を行なう温調回路41のヒータ43を利用する。すなわち、バッテリ45の残容量が閾値th以上であるときに(ステップS101の判定が“Yes”)、ヒータ43を作動させる(ステップS102)。このように、バッテリ45で残容量が閾値th以上であるときに、温調回路41のヒータ43を作動させてバッテリ45の電力を消費させる。温調回路41のヒータ43は、電気自動車やハイブリッド自動車に搭載されることが一般的になりつつある。したがって、既存の構成部品によってバッテリ45の電力を消費させ、バッテリ45の過充電を抑制することができる。また、ヒータ43で加温した温調用熱媒体は、熱交換器47で放熱させるか、又はラジエータ48で放熱させる。熱交換器47、及びラジエータ48についても、何れも温調回路41に対して、一般的に付随しているため、やはり既存の構成部品によって確実に放熱することができる。
【0059】
また、冷凍サイクル回路12で暖房を行なっているときには(ステップS103の判定が“Yes”)、ヒータ43で加温した温調用熱媒体を、熱交換器47の温調用熱媒体流路47Aで放熱させる(ステップS105)。一方、冷凍サイクル回路12が停止している又は冷房運転を行なっているときには(ステップS103の判定が“No”)、ヒータ43で加温した温調用熱媒体を、ラジエータ48で放熱させる(ステップS106)。このように、冷凍サイクル回路12の運転に応じて、温調用熱媒体の循環経路を切り替えるため、温調用熱媒体の放熱を適切に行なうことができる。
さらに、通常の暖房運転では、室外熱交換器24で吸熱することになるが、室外熱交換器24での吸熱量が多いほど着霜が生じやすい。しかしながら、ヒータ43を利用して暖房運転を補助すると、それだけ室外熱交換器24での吸熱量を低減することができる。したがって、室外熱交換器24の着霜を遅延させる効果がある。
【0060】
また、冷凍サイクル回路12で暖房運転を行なっているときでも(ステップS103の判定が“Yes”)、熱交換器47の温調用熱媒体流路47A出口側における温調用熱媒体の温度Tcが閾値T1以上であるときには(ステップS104の判定が“No”)、ヒータ43で加温した温調用熱媒体を、ラジエータ48で放熱させる(ステップS106)。熱交換器47の温調用熱媒体流路47A出口側で温調用熱媒体の温度Tcが高温であるなら、十分に放熱できていないことを意味する。このようなときは、温調用熱媒体にラジエータ48で放熱させることで、確実に温調用熱媒体の温度を低下させることができる。
【0061】
また、温調回路41は、冷凍サイクル回路12の暖房を補助するために、温調用熱媒体を循環させる回路である。このような温調回路41は、電気自動車やハイブリッド自動車に搭載されることが一般的になりつつある。したがって、既存の構成部品によってバッテリ45の電力を消費させ、バッテリ45の過充電を抑制することができる。
また、温調回路41は、バッテリ45を加温するために、温調用熱媒体を循環させる回路でもある。このような温調回路41も、電気自動車やハイブリッド自動車に搭載されることが一般的になりつつある。したがって、既存の構成部品によってバッテリ45の電力を消費させ、バッテリ45の過充電を抑制することができる。
【0062】
《変形例》
本実施形態では、バッテリ45を加温したり冷却したりする構成について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、本実施形態では、バッテリ45を少なくとも加温できればよいため、バッテリ45を冷却する構成については省略してもよい。
本実施形態では、温調回路41において、温調用熱媒体の流れを三方弁で切り替えているが、これに限定されるものではない。例えば、三方弁を設ける代わりに、各流路の夫々に開閉可能な二方弁を設け、一方を開くときに他方を閉じ、一方を閉じるときに他方を開くようにしてもよい。
本実施形態では、冷房時に室外膨張弁23を全開にする構成について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、室外膨張弁23を迂回するバイパス流路を設け、このバイパス流路を開閉可能に構成してもよい。これにより、冷房時に室外膨張弁23を閉鎖し、バイパス流路を開放すれば、圧力損失を低減することができる。
【0063】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0064】
11…車両用空気調和装置、12…冷凍サイクル回路、13…HVACユニット、14…送風ファン、15…エアミックスダンパ、16…流路、17…流路、21…圧縮機、22…放熱器、23…室外膨張弁、24…室外熱交換器、25…室内膨張弁、26…吸熱器、27…アキュムレータ、28…送風機、31a…配管、31b…配管、31c…配管、31d…配管、31e…配管、31f…配管、31g…配管、31h…配管、32…開閉弁、33…逆止弁、34…分岐点、35…開閉弁、36…分岐点、37…分岐点、38…逆止弁、39…分岐点、41…温調回路、42…メインポンプ、43…ヒータ、44…ヒータコア、45…バッテリ、46…電動モータ、47…熱交換器、47A…温調用熱媒体流路、47B…空調用熱媒体流路、48…ラジエータ、49…サブポンプ、51a…配管、51b…配管、51c…配管、51d…配管、51e…配管、51f…配管、51g…配管、51h…配管、51i…配管、51j…配管、52…三方弁、53…分岐点、54…分岐点、55…膨張弁、56…分岐点、57…分岐点、61…三方弁、62…分岐点、63…三方弁、64…分岐点、65…三方弁、66…分岐点、67…三方弁、68…三方弁、69…分岐点、71…コントローラ、72…SOC取得部、73…温度センサ