(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】ワイヤ式レギュレータ
(51)【国際特許分類】
E05F 11/48 20060101AFI20240207BHJP
B60J 1/17 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
E05F11/48 D
B60J1/17 C
(21)【出願番号】P 2020060546
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】山本 健次
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 賢一
(72)【発明者】
【氏名】横山 和也
(72)【発明者】
【氏名】匂坂 享史
(72)【発明者】
【氏名】五嶋 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】金子 研二
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/064266(WO,A1)
【文献】特開2017-48529(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0294951(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/17
E05F 11/38
E05F 11/48
E06B 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓ガラスの昇降方向に沿ったガイドレールと、前記窓ガラスが取り付けられ、前記ガイドレールに移動可能に係合したスライダと、一端が前記スライダの上昇用ワイヤエンド収納部に係止され、前記スライダの上方に延出する上昇用ワイヤと、一端が前記スライダの下降用ワイヤエンド収納部に係止され、前記スライダの下方に延出する下降用ワイヤと
を有し、前記上昇用ワイヤ、前記下降用ワイヤを前記ガイドレールに沿って移動させることにより、前記スライダを前記ガイドレールに沿って昇降させるワイヤ式レギュレータにおいて、
前記スライダの前記上昇用ワイヤエンド収納部の下端より上部に、前記上昇用ワイヤエンド収納部と、前記下降用ワイヤエンド収納部と、前記上昇用ワイヤが通る溝部への雨水の侵入を防ぐ第1雨水案内部
の一部分が設けられ
て他部分が設けられず、
前記第1雨水案内部は、第1庇と、前記第1庇の下方で、雨水等の落下方向において、前記第1庇と重なる第2庇と、を有し、
前記第1庇と前記第2庇の上端部は、前記上昇用ワイヤが通る前記溝部に隣接して設けられている
ことを特徴とするワイヤ式レギュレータ。
【請求項2】
前記第1雨水案内部は、前記上昇用ワイヤを介して、前記スライダの一方の側にあり、
前記スライダの他方の側には、第3庇を有する第2雨水案内部があり、
前記第3庇は、雨水等の落下方向において、少なくとも一部が前記第1庇の上方に設けられ、
前記第3庇の上端部は前記上昇用ワイヤが通る前記溝部に隣接して設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤ式レギュレータ。
【請求項3】
前記スライダに、雨水等の落下方向において、前記第3庇と重なり、雨水等の落下方向において、少なくとも一部が前記第2庇の上方に設けられる第4庇を形成し、
前記第4庇の上端部は上昇用ワイヤエンドが通る前記溝部に隣接して設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載のワイヤ式レギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓ガラスの昇降方向に沿ったガイドレールと、前記窓ガラスが取り付けられ、前記ガイドレールに移動可能に係合したスライダと、一端が前記スライダの上昇用ワイヤエンド収納部に係止され、前記スライダの上方に延出する上昇用ワイヤと、一端が前記スライダの下降用ワイヤエンド収納部に係止され、前記スライダの下方に延出する下降用ワイヤと、前記上昇用ワイヤ、前記下降用ワイヤを前記ガイドレールに沿って移動させることにより、前記スライダを前記ガイドレールに沿って昇降させるワイヤ式レギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両の窓ガラスを開閉するレギュレータは、ドアのインナパネルとアウタパネルとの間の空間に設けられる。
レギュレータとしては、窓ガラスの昇降方向に沿ったガイドレールと、窓ガラスが取り付けられ、ガイドレールに移動可能に係合したスライダと、一端がスライダのワイヤエンド収納部に係止されると共に、ワイヤを張る方向に付勢され、スライダの上方に延出する上昇用ワイヤと、一端がスライダのワイヤエンド収納部に係止されると共に、ワイヤを張る方向に付勢され、スライダの下方に延出する下降用ワイヤと、上昇用ワイヤと下降用ワイヤとが巻回されるドラムを駆動する駆動部とからなり、駆動部がドラムに巻回された下降用ワイヤと上昇用ワイヤとをドラムから繰り出したり、巻き取ったりしてスライダをガイドレールに沿って昇降させるワイヤ式レギュレータがある。
【0003】
このようなワイヤ式レギュレータにおいて、窓ガラスを伝わってドア内部に浸入する雨水等が、ガイドレールやスライダや下降用ワイヤ等を伝わって下方に流れることにより、ガイドレールや下降用ワイヤが錆びる場合がある。
これを防止するために、スライダにドア内部に浸入した雨水等をガイドレールや下降用ワイヤに伝わらない位置まで案内する庇(雨樋)を設けたものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、庇の上面に当たった雨水等の一部が、表面張力によりの庇の終端から、庇の下面に回り、落下する場合がある。
落下した水がワイヤエンド収納部に侵入すると、低温時凍結し、ワイヤ式レギュレータの作動不良が発生する。また、落下した水がワイヤやガイドレールに付着すると、ワイヤやガイドレールが錆び、ワイヤ式レギュレータの作動不良が発生する。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みて成されたもので、その課題は、ワイヤ式レギュレータの作動不良を防止できるワイヤ式レギュレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映したワイヤ式レギュレータは、窓ガラスの昇降方向に沿ったガイドレールと、前記窓ガラスが取り付けられ、前記ガイドレールに移動可能に係合したスライダと、一端が前記スライダの上昇用ワイヤエンド収納部に係止され、前記スライダの上方に延出する上昇用ワイヤと、一端が前記スライダの下降用ワイヤエンド収納部に係止され、前記スライダの下方に延出する下降用ワイヤとを有し、前記上昇用ワイヤ、前記下降用ワイヤを前記ガイドレールに沿って移動させることにより、前記スライダを前記ガイドレールに沿って昇降させるワイヤ式レギュレータにおいて、前記スライダの前記上昇用ワイヤエンド収納部の下端より上部に、前記上昇用ワイヤエンド収納部と、前記下降用ワイヤエンド収納部と、前記上昇用ワイヤが通る溝部への雨水の侵入を防ぐ第1雨水案内部の一部分が設けられて他部分が設けられず、前記第1雨水案内部は、第1庇と、前記第1庇の下方で、雨水等の落下方向において、前記第1庇と重なる第2庇と、を有し、前記第1庇と前記第2庇の上端部は、前記上昇用ワイヤが通る前記溝部に隣接して設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明の他の特徴は、以下に述べる発明を実施するための形態並びに添付の図面から一層明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明のワイヤ式レギュレータによれば、
前記第1雨水案内部は、
第1庇と、
前記第1庇の下方で、雨水等の落下方向において、前記第1庇と重なる第2庇と、
を有する
ことにより、
第1庇の上面に当たった雨水等の一部が、表面張力により第1庇の下面に回り、落下しても、第2庇の上面に落下するので、上昇用ワイヤエンド収納部に浸入したり、ワイヤやガイドレールに付着しない。よって、上昇用ワイヤエンド収納部が凍結したり、ワイヤやガイドレールが錆びたりせず、ワイヤ式レギュレータの作動不良が発生しない。
【0010】
本発明の他の効果は、以下に述べる発明を実施するための形態並びに添付の図面から一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ワイヤ式レギュレータの正面図である
図6のスライダの拡大図である。
【
図4】実施形態のワイヤ式レギュレータの主要部の正面図である。
【
図5】
図4のガラス、ブラケットを除いた状態の拡大図である。
【
図7】
図5のVII方向から見た拡大矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図4-
図7を用いて、本実施形態のワイヤ式レギュレータを説明する。
図4は実施形態のワイヤ式レギュレータの主要部の正面図、
図5は
図4のガラス、ブラケットを除いた状態の拡大図、
図6は
図5の右側面図、
図7は
図5のVII方向から見た拡大矢視図である。
これらの図において、ガイドレール101は、窓ガラス5の昇降方向(鉛直線と交差する線分に沿う方向/斜め上方向、斜め下方向)に沿ってドアのインナパネルに設けられる。このガイドレール101の表面側(
図4、
図5に現れているガイドレール101の面)には、ブラケット102、104を介して窓ガラス105を保持するスライダ3が移動可能に係合している。
【0013】
スライダ103には、スライダ103の上方に延出する上昇用ワイヤ131の一端部と、スライダ103の下方に延出する下降用ワイヤ135の一端部とが係止されている。
上昇用ワイヤ131の他端部、下降用ワイヤ135の他端部は図示しないドラムに巻回されている。そして、ドラムを回転駆動することにより、ドラムに巻回された下降用ワイヤ135と上昇用ワイヤ131とをドラムから繰り出したり、巻き取ったりすると、スライダ103はガイドレール101に沿って昇降する。
【0014】
次に、
図1-
図3を用いてスライダ103の説明を行う。
図1は本実施形態のワイヤ式レギュレータの正面図である
図4のスライダの拡大図、
図2は
図1において右側から見た斜視図、
図3は
図1において左側から見た斜視図である。
本実施形態のスライダ103は、樹脂部材と金属部材とのインサート成形品であり、板状の金属部111と、金属部111の表面F.S.(
図1-
図3に現れている金属部111の面)と裏面B.S.(
図1-
図3に現れていない金属部111の面)の一部を覆う樹脂部151とに大別される。
【0015】
金属部111の表面F.S.側の樹脂部151は、スリットSを介して、上部に位置する第1樹脂部153と下部に位置する第2樹脂部155とに分かれている。
金属部111にはブラケット102、ブラケット104が取り付けられる2つの孔113、孔115が形成されている。
【0016】
樹脂部151の第1樹脂部153には、スライダ103の上方に延出する上昇用ワイヤ131のワイヤエンド133が設けられる上昇用ワイヤエンド収納部157が形成されている。このワイヤエンド133を付勢する図示しない付勢手段により、上昇用ワイヤ131は張る方向に付勢されている。さらに、上昇用ワイヤエンド収納部157に連接して上昇用ワイヤ131をスライダ103の上部へ案内する案内部159、溝161(上昇用ワイヤ溝)が同一直線状に沿って形成されている。
【0017】
なお、
図1において雨水等の落下方向を矢印Rで示す。そして、上昇用ワイヤ131をスライダ103の上部へ案内する案内部159、溝161の延出方向は、矢印Rで示す雨水等の落下方向と交差する方向となっている。
さらに、樹脂部151の第1樹脂部153には、スライダ3の下方に延出する下降用ワイヤ135のワイヤエンド137が設けられる下降用ワイヤエンド収納部163が形成されている。このワイヤエンド137を付勢する図示しない付勢手段により、下降用ワイヤ135は張る方向に付勢されている。さらに、下降用ワイヤエンド収納部163に連接して下降用ワイヤ135をスライダ103の下部へ案内する案内部165、溝167(下降用ワイヤ溝)が同一直線状に沿って形成されている。そして、下降用ワイヤ135をスライダ103の下部へ案内する案内部165、溝167の延出方向は、矢印Rで示す雨水等の落下方向と交差する方向となっている。
【0018】
溝161に案内された上昇用ワイヤ131を介して、一方の側には、複数の庇(雨樋)を有する第1雨水案内部170が、他方の側には第2雨水案内部190が設けられている。
最初に、第1庇171と、第2庇173と、第1孔75とからなる第1雨水案内部170を説明する。第1雨水案内部170は、スライダ103の上昇用ワイヤエンド収納部157の下端より上部に設けられ、窓ガラス5から落ちてきた雨水等を受ける第1庇71を有している。第1庇171は、上昇用ワイヤ131から離れる方向で、下方に向かって傾斜する本体部171aと、本体部171aの下端からは、上方に向かって延出する終端部171bとからなっている。第1庇171の下方には、第2庇173が形成されている。この第2庇173は、雨水の落下方向Rにおいて、第1庇171と重なる重複部173aと、重複部173aの下端部に連設され、下方に向かって延出する下方延出部173bと、下方延出部173bの下端部に連設され、上昇用ワイヤエンド収納部157から離れる方向で、下方に向かって傾斜する傾斜部173cと、傾斜部173cの下端に連設され、金属部111の縁部から外部に突出し、傾斜部173cより傾斜が急な終端部173dとからなっている。又、第1庇171の本体部171aと終端部171bとに囲まれた部分には、樹脂部151(第1樹脂部153)と金属部111とを貫通する第1孔175が形成されている。
【0019】
さらに、第1庇171の本体部171aの上端部と第2庇173の重複部173aの上端部は、溝161に隣接している。
次に、第11庇191と第12庇193と第11孔195とを有する第2雨水案内部190を説明する。
【0020】
第2雨水案内部190は、窓ガラス105から落ちてきた雨水等を受ける第11庇(請求項の第3庇に相当する)191を有している。第11庇191は、雨水等の落下方向Rにおいて、少なくとも一部が第1庇171の上方に設けられ、上昇用ワイヤ131から離れる方向で、下方に向かって傾斜する第1本体部191aと、第1本体部191aの下端から略垂直に下方に向かって延出する段部191bと、段部191bの下端から上昇用ワイヤ31から離れる方向で、下方に向かって傾斜する第2本体部191cと、第2本体部191cの下端に連設され、金属部111の縁部から外部に突出する終端部191dとからなっている。第11庇91の下方には、第12庇(請求項の第4庇に相当する)193が形成されている。この第12庇193は、雨水等の落下方向Rにおいて、少なくとも一部が第2庇173の上方に設けられ、雨水等の落下方向Rにおいて、第11庇191の第1本体部191aと重なる第1重複部193aと、第1重複部193aの下端部に連設され、第1重複部193aの下端から略垂直に下方に向かって延出する段部193bと、段部193bの下端に連設され、第11庇191の第2本体部191cと雨水等の落下方向Rにおいて、重なる第2重複部193cと、第2重複部193cの下端から上方に向かって延び、第11庇191の第2本体部191cの下面に接続する接続部193dとからなっている。又、第11庇191の第2本体部191cと、第12庇193の第2重複部193c、接続部193dとの囲まれた部分には、樹脂部151(第1樹脂部53)と金属部111とを貫通する第11孔195が形成されている。
【0021】
さらに、第11庇191の第1本体部191aの上端部と第12庇193の第1重複部193aの上端部は、溝161に隣接している。
このような構成によれば、以下のような効果が得られる。
(1)第1庇171、第1庇171と雨水等の落下方向で重なる第2庇173を設けたことにより、第1庇171の上面に当たった雨水等の一部が、表面張力により第1庇171の下面に回り、落下しても、第2庇173の上面に落下するので、上昇用ワイヤエンド収納部157に浸入したり、上昇用ワイヤ131やガイドレール101に付着しない。よって、上昇用ワイヤエンド収納部157が凍結したり、上昇用ワイヤ131やガイドレール101が錆びたりせず、ワイヤ式レギュレータの作動不良が発生しない。
(2)第11庇191と雨水等の落下方向で重なる第12庇193を設けたことにより、第11庇191の上面を流れる雨水等の一部が第11庇191の下面に回り、落下しても、第12庇193の上面に落下するので、上昇用ワイヤエンド収納部157に浸入したり、上昇用ワイヤ131やガイドレール101に付着しない。よって、上昇用ワイヤエンド収納部157が凍結したり、上昇用ワイヤ131やガイドレール101が錆びたりせず、ワイヤ式レギュレータの作動不良が発生しない。
【符号の説明】
【0022】
101 ガイドレール
103 スライダ
105 窓ガラス
131 上昇用ワイヤ
135 下降用ワイヤ
157 上昇用ワイヤエンド収納部
163 下降用ワイヤエンド収納部
171 第1庇
173 第2庇
191 第11庇(第3庇)
193 第12庇(第4庇)