(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】ガスタービンエンジンのユニゾンリング
(51)【国際特許分類】
F02C 7/042 20060101AFI20240207BHJP
F01D 25/00 20060101ALN20240207BHJP
F02C 9/22 20060101ALN20240207BHJP
【FI】
F02C7/042
F01D25/00 L
F02C9/22 Z
(21)【出願番号】P 2020061796
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安東 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 広和
(72)【発明者】
【氏名】竹村 英俊
(72)【発明者】
【氏名】立松 展大
(72)【発明者】
【氏名】川勝 光紘
(72)【発明者】
【氏名】浦口 良介
(72)【発明者】
【氏名】行 耕平
【審査官】古▲瀬▼ 裕介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0271502(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0245676(US,A1)
【文献】米国特許第05700129(US,A)
【文献】米国特許第04307994(US,A)
【文献】特開2012-072763(JP,A)
【文献】特開2007-332970(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0252680(US,A1)
【文献】特開2004-197742(JP,A)
【文献】国際公開第2015/093243(WO,A1)
【文献】特開2009-068491(JP,A)
【文献】特表2010-531404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/042
F04D 29/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、燃焼器及びタービンを備えるガスタービンエンジンのケーシングの外周に沿って配置され、前記圧縮機の複数の可変静翼に連結されるユニゾンリングであって、
樹脂及び強化繊維を含む繊維強化樹脂を有し、環状体又は複数の円弧体からなり、
前記ユニゾンリングの軸線方向に直交する径方向にピンが挿通されるピン孔を有し、
前記繊維強化樹脂の前記強化繊維の主配向が、前記ユニゾンリングの周方向に向いて
おり、
前記ユニゾンリングは、
前記径方向に向いた主面を含み、前記ピン孔を有し、同心円状に配置された内板部及び外板部と、
前記軸線方向に向いた主面を含み、前記内板部を前記外板部に連結する連結板部と、
前記軸線方向に向いた主面を含み、前記内板部及び前記外板部の少なくとも一方の前記軸線方向の端から前記径方向に突出した少なくとも1つのフランジ板部と、を備え、
前記少なくとも1つのフランジ板部は、前記内板部の前記軸線方向の両端から前記径方向の内方に突出した一対の内フランジ板部を含む、ガスタービンエンジンのユニゾンリング。
【請求項2】
前記ユニゾンリングの前記周方向に直交する断面は、前記径方向における寸法が前記軸線方向における寸法よりも大きい形状を有する、請求項1に記載のガスタービンエンジンのユニゾンリング。
【請求項3】
前記少なくとも1つのフランジ板部は
、
前記外板部の前記軸線方向の両端から前記径方向の外方に突出した一対の外フランジ板
部を含む、請求項
1又は2に記載のガスタービンエンジンのユニゾンリング。
【請求項4】
前記連結板部は、前記内板部の前記軸線方向の一端を前記外板部の前記軸線方向の一端に連結し、
前記内板部と前記外板部との間の空間は、前記軸線方向において前記連結板部と反対側に向けて開放されている、請求項
1乃至3のいずれか1項に記載のガスタービンエンジンのユニゾンリング。
【請求項5】
前記ユニゾンリングの前記周方向に直交する断面は、前記軸線方向を上下方向にして見てπ形状を有する、請求項1乃至
4にいずれか1項に記載のガスタービンエンジンのユニゾンリング。
【請求項6】
前記樹脂は、ビスマレイミド、エポキシ及びポリイミドから選ばれ、
前記強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維及びアラミド繊維から選ばれる、請求項1乃至
5にいずれか1項に記載のガスタービンエンジンのユニゾンリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機、燃焼器及びタービンを備えるガスタービンエンジンのケーシングの外周に沿って配置され、前記圧縮機の複数の可変静翼に連結されるユニゾンリングに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンは、ケーシング内において回転軸に沿って並んで配置された、圧縮機、燃焼器及びタービンを備える(例えば、特許文献1参照)。圧縮機は、回転軸に接続された複数の動翼と、ケーシングに接続された複数の可変静翼とを有する。可変静翼の回動軸部はケーシングの外方に突出し、ケーシングの外周側にはユニゾンリングが配置され、ユニゾンリングのピン孔に挿通されたピンがレバーを介して可変静翼の回動軸部に連結されている。アクチュエータによってユニゾンリングをケーシングの外周面に沿って所望の角度だけ回転させると、その回転がレバーを介して可変静翼の回動軸部に伝達され、可変静翼の角度が変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アクチュエータによってユニゾンリングを回転させるとき、圧縮機内の圧縮空気から可変静翼が受ける圧力がレバーを介してユニゾンリングに反力として作用する。そのため、ユニゾンリングに曲げ応力及び捩れ応力が発生し、ユニゾンリングが変形し得る。ユニゾンリングが変形すると、可変静翼の角度が目標角度からずれることになる。可変静翼の角度に誤差が生じると、圧縮機の動作が不安定になる、及び、効率低下が発生し得る。
【0005】
そこで本発明は、ユニゾンリングを工夫して、ガスタービンエンジンの圧縮機の動作安定性の低下、及び、効率低下を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るガスタービンエンジンのユニゾンリングは、圧縮機、燃焼器及びタービンを備えるガスタービンエンジンのケーシングの外周に沿って配置され、前記圧縮機の複数の可変静翼に連結されるユニゾンリングであって、樹脂及び強化繊維を含む繊維強化樹脂を有し、環状体又は複数の円弧体からなり、前記ユニゾンリングの軸線方向に直交する径方向にピンが挿通されるピン孔を有し、前記繊維強化樹脂の前記強化繊維の主配向が、前記ユニゾンリングの周方向に向いている。
【0007】
前記構成によれば、ユニゾンリングが繊維強化樹脂を含み且つ強化繊維の主配向がユニゾンリングの周方向に向いているため、ユニゾンリングを軽量としながらもユニゾンリングの曲げ剛性を高めることができる。よって、可変静翼の角度誤差を低減でき、ガスタービンエンジンの圧縮機の作動安定性の低下、及び、効率低下を防止できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ユニゾンリングの剛性を高め、ガスタービンエンジンの圧縮機の作動安定性低下、及び、効率低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係るガスタービンを示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すガスタービンエンジンのユニゾンリングの正面図である。
【
図3】
図3(A)は、
図2のIIA-IIA線断面図である。
図3(B)は、
図2のIIB-IIB線断面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示すユニゾンリングの部分斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2に示すユニゾンリングを適用したガスタービンエンジンの要部断面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示すユニゾンリング等を径方向外方から見てユニゾンリングのピン孔の動作軌跡を説明する図面である。
【
図7】
図7(A)は、第1変形例のユニゾンリングの断面図である。
図7(B)は、第2変形例のユニゾンリングの断面図である。
図7(C)は、第3変形例のユニゾンリングの断面図である。
【
図8】
図8は、断面形状ごとのユニゾンリングの曲げ剛性値のグラフである。
【
図9】
図9は、断面形状ごとのユニゾンリングの捩れ剛性値のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係るガスタービンを示す模式図である。
図1に示すように、ガスタービンエンジン1は、ケーシング2を備える。ケーシング2には、圧縮機3、燃焼器4及びタービン5が収容されている。圧縮機3及びタービン5は、互いに回転軸6によって連結されている。圧縮機3は、タービン5に連動して回転することで空気を圧縮し、その圧縮空気を燃焼器4に供給する。燃焼器4から噴出される燃焼ガスは、タービン5を回転させると共に外部に排出される。ガスタービンエンジン1は、航空機エンジンとして利用され得る。
【0012】
圧縮機3は、複数組の動翼列及び静翼列を有する。圧縮機3の少なくとも1列の静翼列は、それぞれ迎え角を調節可能なようにケーシング2の周方向に並んで配置された複数の可変静翼11(
図5参照)を有する。ケーシング2には、ガスタービンエンジン1の軸線方向に並ぶように複数のユニゾンリング10が外嵌されている。ユニゾンリング10は、ケーシング2の外周面に対して周方向に相対回転可能である。ユニゾンリング10がケーシング2の外周面に沿って周方向(回転方向)に角変位することによって可変静翼11の迎え角が変更される。
【0013】
図2は、
図1に示すガスタービンエンジン1のユニゾンリング10の正面図である。
図3(A)は、
図2のIIA-IIA線断面図である。
図3(B)は、
図2のIIB-IIB線断面図である。
図4は、
図2に示すユニゾンリング10の部分斜視図である。
図2~4に示すように、ユニゾンリング10は、繊維強化樹脂製の一体成形された環状体である。なお、ユニゾンリング10は、周状に配置された互いに別体の複数の円弧体からなり全体として実質的に環状を呈する構成としてもよい。
【0014】
ユニゾンリング10の軸線Xは、ユニゾンリング10の中心を通ってユニゾンリング10の径方向Rに直交する。ユニゾンリング10の軸線Xが延びる方向(以下、軸線方向Xと称する)は、ユニゾンリング10の径方向Rに直交する方向である。ユニゾンリング10の周方向Cは、ユニゾンリング10の外周面に沿った方向である。即ち、ユニゾンリング10の周方向Cは、軸線方向Xから見てユニゾンリング10の軸線Xを中心とした円に沿った方向である。
【0015】
ユニゾンリング10の周方向Cに直交する断面(ユニゾンリング10の軸線Xを含む断面)において、ユニゾンリング10は、種々の断面形状を採用し得る。一例として、ユニゾンリング10は、内板部21、外板部22、連結板部23、一対の内フランジ板部24及び一対の外フランジ板部25を有する。内板部21及び外板部22は、径方向Rに向いた主面を含む円筒形状を有する。外板部22は、内板部21から径方向Rの外方に離れた状態で内板部21と同心円状に配置されている。内板部21及び外板部22は、周方向に間隔をあけて配置された複数のピン孔21a,22aを有する。内板部21のピン孔21aと外板部22のピン孔22aとは、径方向Rに見てそれぞれ互いに合致している。
【0016】
連結板部23は、軸線方向Xに向いた主面を含む環状平板形状を有する。連結板部23は、内板部21の軸線方向Xの一端を外板部22の軸線方向Xの一端に連結している。内板部21と外板部22との間の中間空間Sは、軸線方向Xにおいて連結板部23と反対側に向けて開放されている。換言すると、ユニゾンリング10は、内板部21の軸線方向Xの他端を外板部22の軸線方向Xの他端との間に開口Qを有する。
【0017】
一対の内フランジ板部24の各々は、軸線方向Xに向いた主面を含む環状平板形状を有する。一対の内フランジ板部24は、互いに軸線方向Xに離れている。一対の内フランジ板部24は、内板部21の軸線方向Xの両端からそれぞれ径方向Rの内方に突出している。一対の外フランジ板部25の各々は、軸線方向Xに向いた主面を含む環状平板形状を有する。一対の外フランジ板部25は、互いに軸線方向Xに離れている。一対の外フランジ板部25は、外板部22の軸線方向Xの両端からそれぞれ径方向Rの外方に突出している。
【0018】
一対の外フランジ板部25は、部分的に径方向Rに突出した支持部25aを有する。支持部25aは、外フランジ板部25の一部として一体成形されている。支持部25aは、軸線方向Xに貫通した支持孔Hを有する。支持部25aは、ケーシング2に対してユニゾンリング10を軸線X周りに角変位させるため、後述するアクチュエータ18の駆動力が入力される部分である。
【0019】
本実施形態では、ユニゾンリング10の周方向Cに直交する断面は、軸線方向Xを上下方向にして見て実質的にπ形状を有する。ユニゾンリング10の周方向Cに直交する断面は、その断面が周方向Cの何れの位置のものであっても、径方向Rにおける寸法L1が軸線方向Xにおける寸法L2よりも大きい形状を有する。即ち、
図3(B)に示す断面だけでなく、
図3(A)に示す断面においても、L1>L2が成り立つ。
【0020】
ユニゾンリング10は、前述したように樹脂及び強化繊維を含む繊維強化樹脂で形成されている。前記樹脂は、ビスマレイミド、エポキシ及びポリイミド等から選ばれる樹脂材料からなる。前記強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維及びアラミド繊維等から選ばれる繊維材料からなる。ユニゾンリング10は、複数の強化繊維シートに樹脂を含侵させてなる複数のプリプレグを積層し、加圧成形して製造される。
【0021】
前記複数の強化繊維シートは、例えば、強化繊維を一方向に配向したUD材からなるシートと、強化繊維を二方向に配向したファブリック材からなるシートとを含む。UD材の配向は、ユニゾンリング10の周方向Cに向いて延びる。ファブリック材の配向の1つは、ユニゾンリング10の周方向Cに向いて延びる。例えば、ファブリック材の強化繊維の全体のうち、ユニゾンリング10の周方向Cに延びた強化繊維の割合は、50%以上とし得る。
【0022】
ユニゾンリング10の全体において、前記強化繊維の全ての配向のうち最も多い配向は、ユニゾンリング10の周方向Cに向いて延びる。即ち、前記繊維強化樹脂の前記強化繊維の主配向が、ユニゾンリング10の周方向Cに向いている。
【0023】
前記複数の強化繊維シートは、複数の第1強化繊維シート、複数の第2強化繊維シート及び複数の第3強化繊維シートを含む。第1~第3強化繊維シートのうち2つのシート同士が、部分的に積層される。第1~第3強化繊維シートは、ユニゾンリング10の周方向Cに直交する断面において互いに異なる方向に分岐して配置されている。
【0024】
そのため、第1~第3強化繊維シートによって囲まれる隙間が発生する。その隙間には樹脂が含浸された強化繊維フィラーが挿入され、隙間による強度低下が防止される。例えば、強化繊維フィラーには、強化繊維シートを筒状に丸めたものを用いることができる。なお、強化繊維フィラーの強化繊維の主配向は、ユニゾンリング10の周方向Cに向いていると好ましい。
【0025】
図5は、
図2に示すユニゾンリング10を適用したガスタービンエンジン1の要部断面図である。
図5に示すように、ユニゾンリング10の内板部21及び外板部22のピン孔21a,22aには、ピン13が抜け止めされた状態で径方向Rに挿通される。ピン13は、レバー14の一端部14aに回動自在に挿通される。レバー14の一端部14aは、ユニゾンリング10の中間空間Sにおいてピン13に回転自在に接続され、ユニゾンリング10の開口Qを通って中間空間Sの外側に軸線方向Xに延びている。
【0026】
可変静翼11は、静翼本体部11a及び軸部11bを有する。静翼本体部11aは、圧縮機3内の流体に接触して当該流体を整流する羽根である。軸部11bは、静翼本体部11aから径方向Rの外方に突出してケーシング2の外側に突出する。レバー14の他端部14bは、可変静翼11の軸部11bに対して相対回転不能に締結具15によって固定される。可変静翼11の回転軸線Yは、軸部11bの軸線である。レバー14の一端部14aが周方向Cに変位することで、レバー14の他端部14bが可変静翼11を軸線Y周りに角変位させる。
【0027】
図6は、
図5に示すユニゾンリング10等を径方向Rの外方から見てユニゾンリング10のピン孔22aの動作軌跡Tを説明する図面である。
図6に示すように、一対の外フランジ板部25の支持孔H(
図2も参照)には、ロッド17の先端部に回動自在に挿通されたピン16の両端部が、抜け止めされた状態で挿通されている。ロッド17は、ユニゾンリング10の外周面に沿って周方向Cに進退するようにアクチュエータ18に駆動される。なお、
図2では、簡略化のためにアクチュエータ18がロッド17に直接的に接続された態様で図示されているが、特許文献1のようにアクチュエータ18とロッド17との間に図示しないクランク機構等が介在し得る。
【0028】
アクチュエータ18の駆動力によってロッド17が進退すると、ユニゾンリング10が周方向Cにおいて軸線X周りに角変位する。それに伴い、ピン13が周方向Cに移動してレバー14が軸線Y周りに回動し、可変静翼11が軸線Y周りに角変位する。この際、アクチュエータ18の駆動力は、ユニゾンリング10の支持部25aに入力されるため、ユニゾンリング10には周方向Cにおいて部分的に荷重が入力されることになる(
図2では荷重入力部位(支持部25a)が2ヶ所)。よって、ユニゾンリング10には、径方向Rに向けた曲げ変形を生じさせようとする応力が発生する。
【0029】
また、レバー14の長さは一定であるため、ピン13及びピン孔22aは、可変静翼11の軸線Yを中心とした円弧状の軌跡T上を移動することになる。そのため、ユニゾンリング10は、ロッド17の進退に伴って、周方向Cだけでなく軸線方向Xにも僅かに移動する。そうすると、ロッド17の進退方向がユニゾンリング10の周方向Cと僅かに一致しなくなる。よって、ユニゾンリング10には、周方向C周りの捩れ変形を生じさせようとする応力が発生する。
【0030】
ユニゾンリング10の断面形状は前述したものに限られず、種々の断面形状を採用することができる。
図7(A)は、第1変形例のユニゾンリング110の断面図である。
図7(B)は、第2変形例のユニゾンリング210の断面図である。
図7(C)は、第3変形例のユニゾンリング310の断面図である。なお、ユニゾンリング10と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0031】
図7(A)に示すように、第1変形例のユニゾンリング110では、
図3(A)のユニゾンリング10に比べ、内板部21と外板部22との間の中間空間Sを開放する開口Qが設けられていない。即ち、ユニゾンリング110では、一対の連結板部23のうち一方が、内板部21の軸線方向Xの一端を外板部22の軸線方向Xの一端に連結し、一対の連結板部23のうち他方が、内板部21の軸線方向Xの他端を外板部22の軸線方向Xの他端に連結している。なお、他の構成は前述したユニゾンリング10と同様であるため説明を省略する。
【0032】
図7(B)に示すように、第2変形例のユニゾンリング210では、外フランジ板部25が設けられていない。このユニゾンリング210においても、径方向Rにおける寸法が軸線方向Xにおける寸法よりも大きいことが好ましい。なお、他の構成は前述したユニゾンリング10と同様であるため説明を省略する。
【0033】
図7(C)に示すように、第3変形例のユニゾンリング310では、内フランジ板部24が設けられていない。このユニゾンリング310においても、径方向Rにおける寸法が軸線方向Xにおける寸法よりも大きいことが好ましい。なお、他の構成は前述したユニゾンリング10と同様であるため説明を省略する。
【0034】
次に、ユニゾンリングの断面形状の違いによる曲げ剛性及び捩れ剛性の違いを検討する。コンピュータシミュレーションを用いて、異なる断面形状のユニゾンリングごとの曲げ剛性値及び捩れ剛性値の計算結果を求めた。本シミュレーションには、Altair Engineering社のソフトウェアであるInspireを用いた。なお、本シミュレーションでは、断面形状以外の条件を互いに同一に設定した。
【0035】
図8は、断面形状ごとのユニゾンリングの曲げ剛性値のグラフである。
図9は、断面形状ごとのユニゾンリングの捩れ剛性値のグラフである。Baseの断面形状は、従来のユニゾンリングの断面形状である矩形形状である。Case1の断面形状は、環状形状である。Case2の断面形状は、I形状である。Case3の断面形状は、馬蹄形状である。Case4は、
図7(A)の断面形状である。Case5の断面形状は、
図3(A)の断面形状である。Case6は
図7(B)の断面形状である。Case7の断面形状は、
図7(C)の断面形状である。なお、
図8及び9のグラフの縦軸は、Baseの断面形状における値を基準とした相対値を示している。
【0036】
図8に示すように、ユニゾンリングの曲げ剛性については、Base及びCase1に比べ、Case2-7が優れていることが分かった。
図9に示すように、ユニゾンリングの捩れ剛性については、Case2-3に比べ、Base及びCase4-7が優れていることが分かった。よって、ユニゾンリングの曲げ剛性及び捩れ剛性の両方については、Case4-7が優れていることが分かった。
【0037】
以上に説明した構成によれば、ユニゾンリング10が繊維強化樹脂を含み且つ強化繊維の主配向がユニゾンリング10の周方向Cに向いているため、ユニゾンリング10を軽量としながらもユニゾンリング10の曲げ剛性を高めることができる。よって、可変静翼11の角度誤差を低減でき、ガスタービンエンジン1の圧縮機3の作動安定性低下、及び、効率低下を防止できる。
【0038】
また、ユニゾンリング10の周方向Cに直交する断面は、径方向Rにおける寸法L1が軸線方向Xにおける寸法L2よりも大きい形状を有することで、ユニゾンリング10の径方向Rの曲げ剛性を更に高めることができる。
【0039】
また、連結板部23によって軽量で曲げ剛性を高めながらも、フランジ板部24,25によって捩れ剛性も高めることができる。また、内板部21と外板部22との間の中間空間Sは、軸線方向Xにおいて連結板部23と反対側に向けて開放されているので、可変静翼11に連結されたレバー14を内板部21と外板部22との間の中間空間Sにおいてピン13に接続することができ、レイアウト自由度を向上できる。
【0040】
また、ユニゾンリング10に用いる樹脂は、ビスマレイミド、エポキシ及びポリイミド等から選ばれ、ユニゾンリング10に用いる強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維及びアラミド繊維等から選ばれるので、高比強度かつ高耐熱性のユニゾンリング10を実現できる。
【0041】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、その構成を変更、追加、又は削除することができる。ユニゾンリングが繊維強化樹脂製であって強化繊維の主配向がユニゾンリングの周方向に向いたものであれば、ユニゾンリングの断面形状を任意の形状としてもよく、例えば、
図8及び9に示した何れの形状としてもよい。ユニゾンリングには、内フランジ板部24及び外フランジ板部25が無くてもよい。ユニゾンリングに内フランジ板部24、及び、外フランジ板部25が無い場合には、外板部22の径方向Rの外側においてレバー14がピン13に接続されてもよいし、内板部21の径方向Rの内側においてレバー14がピン13に接続されてもよい。ユニゾンリング10の周方向Cに直交する断面は、径方向Rにおける寸法が軸線方向Xにおける寸法よりも小さい形状を有するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 ガスタービンエンジン
2 ケーシング
3 圧縮機
4 燃焼器
5 タービン
10,110,210,310 ユニゾンリング
11 可変静翼
21 内板部
21a ピン孔
22 外板部
22a ピン孔
23 連結板部
24 内フランジ板部
25 外フランジ板部
C 周方向
G 隙間
Q 開口
R 径方向
S 中間空間
T 軌跡
X 軸線方向
Y 軸線