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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】ドレス研削装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/18 20060101AFI20240207BHJP
   B23Q 17/22 20060101ALI20240207BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20240207BHJP
   B24B 53/075 20060101ALI20240207BHJP
   B24B 53/14 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
B24B49/18
B23Q17/22 C
B24B49/10
B24B53/075
B24B53/14
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020067101
(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公開番号】P2021160062
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000174987
【氏名又は名称】三井精機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098279
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 聖
(72)【発明者】
【氏名】浅井 岳見
(72)【発明者】
【氏名】石井 武文
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-030022(JP,A)
【文献】特開2011-177850(JP,A)
【文献】特開2018-024051(JP,A)
【文献】特開2016-083744(JP,A)
【文献】特開2007-125644(JP,A)
【文献】特開2009-172695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/18
B23Q 17/22
B24B 49/10
B24B 53/075
B24B 53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ研削盤用のドレス研削装置において、切り込み方向の直線軸をU軸、前記U軸に直交する水平方向の直線軸をW軸、前記U軸と前記W軸の双方に直交する直線軸廻りの回転軸をB軸とした場合において、
U-W-B同期制御もしくはU-B同期制御が可能なねじ研削盤用のドレス研削装置であって、AEセンサを設け、砥石とドレッサが接触したらそれを知らせる信号を制御装置に送ることが出来ると共に、その信号を受けた制御装置は一旦送りを止め信号を受けた座標を記録することが出来るスキップ機能を持っており、該ドレス研削装置は、まず、粗ドレス目標まで粗ドレスを行う粗ドレス手段と、前記粗ドレス後に、切り込み厚み一定の仕上げドレスを行う仕上げドレス手段を有し、U-W軸を砥石に対して仕上げで切り込みたい一定厚みuに対応した分だけ下げ、その上で前記粗ドレスの目標上の軌跡で動かすと本来ならダイヤ先端はB軸の向いた方向に後uだけ送れば砥石とダイヤ先端は接触することを前記AEセンサを用いたスキップ機能で確認する第1の工程と、
uに対する偏差を使って前記粗ドレスの目標の指令をU-Wで補正を行い、この補正を適用した粗ドレス目標に置き換える第2の工程を、有することを特徴とするねじ研削盤用のドレス研削装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削盤用のドレス研削装置及びその制御方法に関し、特に、ねじ研削盤用のドレス研削装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、研削盤による研削、特にボールねじ研削においては、ねじ溝としてJIS B 1192-1:2018にあるようにゴシック形状の溝及びわずかにそれを補正する等して派生させた溝を作ることが多い。図1はゴシック形状溝の形状の概要を示しており、左右対称であるが右側と左側の円弧の中心がずらしてある。一般にはこれを派生させ溝の縁の面取を加えるとか溝中央を深めに掘るなど要求に応じた形状が使用される。このとき、ねじ研削盤を用いたねじ溝の研削においては、ねじ溝に作る形状に合わせた形で砥石の形を作り、その砥石断面形状を螺旋に沿ってほぼそのまま転写することで所望の溝形状を作るということが一般的である。この砥石の形を作るドレス装置として、種々の機構の装置が用意され市場で使用されているが、例えば、ロータリドレッサを備える研削盤のドレス装置及び方法が使用されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭62-11560公報
【文献】特開平3-55160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、ねじ研削盤用のドレス研削装置として、例えば、図2に示すようなドレス装置も使用されており、この図2に示す装置も、ロータリドレッサを回転する機構を有している。一般的に砥石の成形をツルーイング、砥石の目立てをドレスと言うが、ここでは砥石の形状を造る操作もドレスと呼ぶこととする。図2に示す装置において、ロータリドレッサの外周には砥石を削る物体が配されており、回転しながら砥石に当てると砥石の形が変わる。通常はダイヤモンドが使われるのでダイヤが外周に配された円盤そのものを、ここではロータリダイヤと呼ぶ。図2に示す装置では、X-Z平面内で2次元の位置を定めるそれぞれ直線軸のU軸(X軸に平行)及びW軸(Z軸に平行)を持ち、回転軸B軸(X-Zに垂直な軸周りの回転)をもっており砥石を削る工具に相当するロータリダイヤをB軸で旋回させたときにその刃先に相当するダイヤの先端のB軸旋回中心からのオフセット量(図2のB軸旋回半径)の調整用の送り軸もしくは調整機構を持っている。このような装置では、ゴシック形状の円弧部分はU-Wの円弧補間で作ることも出来るうえにU-Wの座標を定めてB軸を旋回させることで成形することが出来る。U-Wの円弧補間では2軸同期制御でありB軸旋回では1軸制御であり、一般には同期制御軸数が少ないB軸旋回による円弧成形が精度を安定させ易い。必ずしもU-Wのどちらかが砥石の回転軸に平行になっている必要はなく、組み合わせて平面内の平行移動の動きを作り出せればよいが、図2に示す装置の場合には、ドレスの際には砥石の径に合わせて毎回円弧の中心をU軸で前進させる。また、この装置では半径の増加にあわせてU-W2軸同期制御で円弧補間をしてB軸でロータリダイヤの特定部分を砥石に向ける一般に法線方向制御と呼ばれる方法により形状を作ることも可能である。
【0005】
このとき、ある程度ドレスが進行して十分に砥石形状が安定してくると、図3(b)の細い線が、一回前のドレスで成形した砥石形状でハッチングの領域が今回のドレスで削り取る領域となる。この形状をみると、たとえU軸方向に1だけ前進していても、この1が微小であるという条件の下で近似するとB = θyの付近(図4参照)では厚み計算でcosθyしか削らないことになる。θy = 60 度なら0.5である。従って、薄く削られる部分は形状はきれいに仕上がるが、目立てが不十分になりやすくその砥石を使用すると研削焼けを引き起こし易くなるという問題を生じる。かといって図4の薄い部分を厚くしようとしてU軸を過度に大きくすると、ロータリダイヤに過度の負荷がかかり砥石の種類によってはロータリダイヤに損傷を与えてしまう。
【0006】
しかし、実際にはマイクロメートルのオーダではダイヤ先端の位置を把握していない場合が多い。例えば、ロータリドレッサの製造上の公差や組み立て上の偏差やドレス装置の熱変形などでマイクロメートルオーダでは設計位置からずれていることもある。U-W補間だけを使用して円弧を削っている場合には問題にならないが、B軸の円弧とU-Wの動きを組み合わせた場合には実際には偏差の影響で削りにばらつき生じる虞れがある。
【0007】
本発明の目的は、十分な目立てが可能な上に、研削焼けやロータリダイヤの損傷を有効に防止し得ると共に、ダイヤ先端の位置の設計からの偏差の影響を低減できる研削盤用のドレス研削装置及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、十分な目立てが可能な上に、研削焼けやロータリダイヤの損傷を有効に防止し得るねじ研削盤用ドレス研削装置及びその制御方法について、鋭意研究した結果、切り込み方向の直線軸をU軸、前記U軸に直交する水平方向の直線軸をW軸、前記U軸と前記W軸の双方に直交する直線軸廻りの回転軸をB軸とした場合において、U-W-B同期制御もしくはU-B同期制御で、図5(a)の太線の粗ドレス目標まで粗ドレスを行い、しかる後に(b)の切り込み厚み一定の仕上げドレスを行うという二段階ドレスを行うことを見出した。勿論、図5(a)の粗ドレスの線まで一気に削り落とせない場合には複数回に分けて削り落とす。尚、図5(a)の太線の粗ドレス目標は仕上げドレスの目標オフセットを与えて厳密に算出される線ではあるが、適宜 多角形近似をしてもよいし、図3のU軸方向の負方向の頂点だけを削り落とすように簡易化しても良い。
【0009】
更に、ダイヤ先端の位置の設計からの偏差の影響を低減するために、以下のようなドレス制御方法が有効であることを見出した。
まず、前提として、対象とする装置はAEセンサを設け、砥石とドレッサが接触したらそれを知らせる信号を制御装置に送ることが出来るものとする。また、その信号を受けた制御装置は一旦送りを止め信号を受けた座標を記録することが出来る一般にスキップ機能といわれる機能を持っているものとする。
そのドレス研削装置の制御方法では、第1の工程として、図6(a)に示すように、U-W軸を砥石に対して仕上げで切り込みたい一定厚みuに対応した分だけ下げる。その上で図5の粗ドレス目標上の軌跡で動かすと本来ならダイヤ先端はB軸の向いた方向に後uだけ送れば砥石とダイヤ先端は接触するはずである。これを、図6(b)に示すように、AEセンサを用いたスキップ機能で確認する。つまり軌跡上の数箇所で一旦止めてB軸の向いた方向にU-W軸で送って計画のuに対する偏差を求める。
次に、第2の工程として、uに対する偏差を使って図5の粗ドレス目標の指令をU-W軸で補正を行い(角度に応じたずらし量を数列や関数にする。)、この補正を適用した粗ドレス目標で図5(a)を置き換える。
尚、偏差が厚み分より大きい場合には、図6(c)に示すように、一旦、切り込みたい一定厚みuより大きめの厚みuL下げるようにすれば良い。そのとき粗ドレス目標に相当する軌跡も大きめに調整する必要がある。先ほどと同じようにAEセンサを用いたスキップ機能で上記大きめの厚みuLに対する偏差を求め軌跡を補正する。(角度に応じたずらし量を数列や関数にする。)後は先に記述した第2の工程から実行する。
但し、偏差の大きさと上記大きめの厚みuLに設定したものの大きさによっては、このまま上記一定厚みuに相当する分だけもどしてその上で補正粗ドレス目標上の軌跡で動かすとまだ不適切な切込み(Bの角度により削りが途切れたり削りすぎたり)が残る場合が考えられるので、上記uLより更に小さくずらしたuL’で補正粗ドレス目標の軌跡で粗ドレス目標の軌跡で置き換えて上記第1の工程を行うという操作を繰り返して不都合が生じなくなるまで続けていく。
このようにすれば、図2のようなドレス装置において、「薄く削らない部分は形状はきれい(面粗さ・光沢など)に仕上がるが、目立てが不十分になりやすくその砥石を使用すると研削焼けを引き起こしやすくなる」と言う問題を回避する際にダイヤ先端の位置の設計からの偏差の影響を低減できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、十分な目立てが可能な上に、研削焼けやロータリダイヤの損傷を有効に防止し得ると共に、ダイヤ先端の位置の設計からの偏差の影響を低減できる研削盤用のドレス研削装置及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ゴシック形状溝の輪郭の一例を示す図である。
図2】U-W-B同期制御もしくはU-B同期制御が可能なねじ研削盤用のドレス研削装置の基本構成を示す図である。
図3】(a)は、砥石につける形状例、(b)は、次のドレスでの砥石の削り落とし領域例を、それぞれ示す図である。
図4】従来のねじ研削盤用ドレス研削装置及びその制御方法の問題点を説明するための図である。
図5】本発明の実施形態に係るねじ研削盤用のドレス研削装置及びその制御方法における(a)は、粗ドレス目標、(b)は、仕上げドレス目標を、それぞれ示す図である。
図6】本発明の実施形態に係るねじ研削盤用ドレス研削方法を説明するための第1の図である。
図7】本発明の実施形態に係るねじ研削盤用のドレス研削装置の制御系の機能ブロック図である。
図8】本発明の実施形態に係るねじ研削盤用ドレス研削装置の要部の構成を示す概略図である。
図9】本発明の実施形態に係るねじ研削盤用ドレス研削方法を説明するための第2の図である。
図10】本発明の実施形態に係るねじ研削盤用ドレス研削方法を説明するための第3の図である。
図11】本発明のねじ研削盤用ドレス研削方法を用いる機械構成において、CNC内蔵のねじ研削装置(主機)と、CNC内蔵のドレス装置(補機)とを備える例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本発明の理解を容易にするため、本発明の適用対象となるねじ研削盤用のドレス研削装置の構成について、改めて図2を参照して詳細に説明する。図2は、ねじ研削盤用のドレス研削装置において、切り込み方向の直線軸をU軸、前記U軸に直交する水平方向の直線軸をW軸、前記U軸と前記W軸の双方に直交する直線軸廻りの回転軸をB軸とした場合において、U-W-B同期制御もしくはU-B同期制御が可能なねじ研削盤用のドレス研削装置の基本構成を示す概略図である。図2に示すように、本発明の適用対象となるねじ研削盤用のドレス研削装置100は、後述するロータリドレッサをW(軸)方向に移動可能なW(軸)送り装置102と、同様にU(軸)方向に移動可能なU(軸)送り装置104と、同様にB軸廻りに旋回可能なB軸旋回装置106と、半径調整装置108を備えている。B軸旋回装置106と半径調整装置108には、ロータリドレッサ回転装置110が、B軸旋回可能且つ後述するようにダイヤ先端の半径を調整可能に取り付けられている。また、このロータリドレッサ回転装置110の回転軸110aには、ロータリドレッサ112が取り付けられている。このロータリドレッサ112の円周面には、各部断面が三角錐形状や角柱形状などになるようにダイヤモンド112Aが装着されている。尚、半径調整装置108は、B軸旋回装置106によって旋回でき、ロータリドレッサ回転装置110を支え、B軸を旋回した時のダイヤ先端112aの半径を調整可能に構成されている。このような構成により、ロータリドレッサ回転装置110がW(軸)方向送り操作、U(軸)方向送り操作、B軸廻り旋回操作、ダイヤ先端112aのB軸旋回中心115からのオフセット量(B軸旋回半径)113(B軸旋回中心115とダイヤ先端112aまでの距離)を調整操作され、ロータリドレッサ112を回転させつつ、同期して回転するドレス対象となる砥石200に当てることにより、砥石200の周面をダイヤ先端112aによりドレスする。尚、ここでいう「ドレス」とは、前述したように、「砥石の目立て」だけでなく、砥石の形状を造る操作も含む意味である。以上のように構成されるねじ研削盤用のドレス研削装置100等では、図2において定義されるU-W-B軸方向において、U-W-B同期制御もしくはU-B同期制御が可能であれば、ねじ研削盤用の砥石200をドレス研削可能である。かかる構成のドレス研削装置100では、従来、ロータリドレッサ112を回転しつつダイヤ先端112aの軌跡を一定に繰り返し描けるようにしておき、この繰り返す軌跡をU軸方向に移動操作することで、砥石をドレスして前述したゴシック形状溝を形成することができる。
【0013】
図5は、本実施形態に係るねじ研削盤用のドレス研削装置100における(a)は、粗ドレス目標、(b)は、仕上げドレス目標を、それぞれ示す図である。ここで、前述したように、従来のドレス方法では、薄く削られる部分で目立てが不十分になり、その砥石を使用すると研削焼けを引き起こし易くなる一方、U軸を過度に大きくするとロータリダイヤに負荷がかかるという問題を生じかねない。そこで、本実施形態のねじ研削盤用のドレス研削装置及びその方法では、前述したU-W-B同期制御もしくはU-B同期制御が可能なねじ研削盤用のドレス研削装置100(図2参照)を用い、まず、図5(a)の太線の粗ドレス目標まで粗ドレスを行い、しかる後に図5(b)の切り込み厚み一定の仕上げドレスを行うという二段階ドレスを行うようにした。即ち、図5(b)に太線で示すのは、仕上げドレス目標56である。勿論、図5(a)に太線で示す粗ドレス目標52まで一気に削り落とせない場合には複数回に分けて削り落とす。尚、図5(a)に太線で示す粗ドレス目標52は、仕上げドレスの目標オフセットを与えて厳密に算出される線である。つまり、U軸方向のオフセットを考えなければ、RをR+r (r:仕上げで切り込みたい厚み)に置き換えるだけである。砥石についている形状を旧軌跡、こうして用意した軌跡を新軌跡と呼ぶ。U軸方向のオフセットは、削りに使う範囲の端54で旧軌跡と新軌跡が交差するように配置する。半径の調整用の送り軸があればその軸の調整だけで達成できるが、手動になっている場合にはB軸の動作にU-W方向のオフセットを同期させる(B旋回による半径方向外側に向けてずらす)。ずらし量は、厳密に解くなら、以下の数式(1)で得られる。
【数1】
である。
【0014】
しかし、実際にはマイクロメートルのオーダではダイヤ先端の位置を把握していない場合が多い。例えば、ロータリドレッサの製造上の公差や組み立て上の偏差やドレス装置の熱変形などでマイクロメートルオーダでは設計位置からずれていることもある。U-W補間だけを使用して円弧を削っている場合には問題にならないが、B軸の円弧とU-Wの動きを組み合わせた場合には実際には偏差の影響で削りにばらつき生じる虞れがある。
【0015】
そこで、本発明者は、以下のような方法により、十分な目立てが可能な上に、研削焼けやロータリダイヤの損傷を有効に防止し得ると共に、ダイヤ先端の位置の設計からの偏差の影響を低減できるようにした。即ち、まず、U-W-B同期制御もしくはU-B同期制御で、図5(a)の太線の粗ドレス目標まで粗ドレスを行い、しかる後に(b)の切り込み厚み一定の仕上げドレスを行うという二段階ドレスを行う。勿論、図5(a)の粗ドレスの線まで一気に削り落とせない場合には複数回に分けて削り落とす。尚、図5(a)の太線の粗ドレス目標は仕上げドレスの目標オフセットを与えて厳密に算出される線ではあるが、適宜 多角形近似をしてもよいし、図3のU軸方向の負方向の頂点だけを削り落とすように簡易化しても良い。
【0016】
更に、ダイヤ先端の位置の設計からの偏差の影響を低減するために、以下のようなドレス制御方法が有効であることを見出した。以下、本発明の実施形態に係るねじ研削盤用のドレス研削装置の制御方法について、図6乃至図10を参照して説明する。まず、前提として、対象とするドレス制御装置はAEセンサを設け、砥石とドレッサが接触したらそれを知らせる信号を制御装置に送ることが出来るものとする。また、その信号を受けた制御装置は一旦送りを止め信号を受けた座標を記録することが出来る一般にスキップ機能といわれる機能を持っているものとする。
【0017】
図6は、本発明の実施形態に係るねじ研削盤用ドレス研削装置の制御方法を示す第1の図である。図6(a)では、粗ドレス目標と同じ軌跡(U-Wオフセット)62に対する現在の砥石形状64を示し、図6(b)では、このズレをスキップ機能で確認し、その点のB軸旋回中心に向かってU-W直線補間(スキップ信号まで)を行うこと、即ち、接触までの距離をスキップ機能で確認することを示している。また、図6(c)では、偏差が厚み分より大きい場合に、一旦、切り込みたい一定厚みuより大きめの厚みuL下げるようにする制御方法を示している。尚、この場合には、粗ドレス目標に相当する軌跡も大きめに調整する必要がある。図6(b)と同様に、AEセンサを用いたスキップ機能で上記大きめの厚みuLに対する偏差を求め軌跡を補正する。図7は、本実施形態に係るねじ研削盤用ドレス研削装置の制御系の概略を示す機能ブロック図である。本実施形態に係るねじ研削盤用ドレス研削装置100は、制御系として、ドレス制御装置700と、入出力装置710と、各軸モータ720及びそれぞれのモータドライブ730、ロータリダイヤ軸回転モータ740とロータリダイヤ軸モータドライブ750を有している。ドレス制御装置700は、軸制御部702と、プログラマブルコントローラ704と、I/O(入出力)モジュール706を有している。本実施形態に係るドレス研削装置100の制御系には、入出力装置710として、各種スイッチ等と、本発明のポイントであるスキップ信号に関わるAEセンサ、エンコーダ等も有している。これら制御系から成るドレス制御装置は、ねじ研削盤の制御装置(図示せず)とは別置の制御装置でも良いし、ねじ研削盤の制御装置(図示せず)の一部を用いても良い。
【0018】
図8は、本実施形態に係るねじ研削盤用ドレス研削装置の要部の構成を示す概略図である。即ち、図8は、AEセンサによる接触検知と、その信号処理と制御の対応関係を示しており、AEセンサ802による接触検知がなされると、信号処理装置804を介して接触検知信号がドレス制御装置700に伝送される。ここで、AEセンサは、ドレス装置100(図2参照)に内蔵しても良いし、図示しないねじ研削盤の砥石軸(図示せず)の装置側に内蔵しても良い。図8では、固定側にAEセンサを設置しているが、このセンサは、接触点に近く設置できる回転軸内に備えるタイプの方が好適である。
【0019】
図9は、本実施形態に係るねじ研削盤用のドレス研削方法を説明するための第2の図である。図9(a)では、図6(a)に示した粗ドレス目標と同じ軌跡62からのズレ(オフセット)はB軸旋回角度位置の如何に拘らず均一であることを想定している。即ち、図9(a)において、グラフの横軸は、0°から±75°までのB軸旋回角度位置を示し、縦軸は、オフセット量を示している。しかしながら、機械の関係で、実際は、図9(b)に示すように、B軸旋回角度位置の如何によりオフセット量がずれることがある。これに対して、本実施形態に係るねじ研削盤用のドレス研削方法では、このズレをスキップ機能で確認し、その点のB軸旋回中心に向かってU-W直線補間(スキップ信号まで)を行うことで、このズレの問題を解消する。図10は、本実施形態に係るねじ研削盤用ドレス研削方法を示す第3の図である。即ち、本実施形態に係るねじ研削盤用のドレス研削方法では、図10(a)に示すように、機械の関係でずれる実際のオフセット量を各点で(ところどころ)測定し、図10(b)に示すように、各点でのズレをスキップ機能で確認し、その点のB軸旋回中心に向かってU-W直線補間(スキップ信号まで)を行った上で、軌跡を修正して近づけるようにする。これにより、図10(c)に示すように、B軸旋回角度位置の如何に拘らず均一な想定しているオフセットが得られる。
【0020】
このように、本実施形態に係るねじ研削盤用のドレス研削装置の制御方法では、第1の工程として、図6(a)に示すように、U-W軸を砥石に対して仕上げで切り込みたい一定厚みuに対応した分だけ下げる。その上で図5の粗ドレス目標上の軌跡で動かすと本来ならダイヤ先端はB軸の向いた方向に、あと上記一定厚みuだけ送れば砥石とダイヤ先端は接触するはずである。これを、図6(b)に示すように、AEセンサを用いたスキップ機能で確認する。つまり、軌跡上の数箇所で一旦止めてB軸の向いた方向にU-W軸で送って計画とする上記一定厚みuに対する偏差を求める。次に、第2の工程として、uに対する偏差を使って図5の粗ドレス目標の指令をU-W軸で補正を行い(角度に応じたずらし量を数列や関数にする。)、この補正を適用した粗ドレス目標で図5(a)を置き換える。尚、偏差が厚み分より大きい場合には、図6(c)に示すように、一旦、切り込みたい一定厚みuより大きめの厚みuL下げるようにすれば良い。そのとき粗ドレス目標に相当する軌跡も大きめに調整する必要がある。先ほどと同じようにAEセンサを用いたスキップ機能でuLに対する偏差を求め軌跡を補正する。(角度に応じたずらし量を数列や関数にする。)後は先に記述した第2の工程から実行する。
【0021】
但し、偏差の大きさと大きめのuLに設定したものの大きさによっては、このまま先と同じ一定厚みuに相当する分だけもどしてその上で補正粗ドレス目標上の軌跡で動かすとまだ不適切な切込み(Bの角度により削りが途切れたり削りすぎたり)が残る場合が考えられるので、uLより更に小さいずらしuL’で補正粗ドレス目標の軌跡で粗ドレス目標の軌跡で置き換えて上記第1の工程を行うという操作を繰り返して不都合が生じなくなるまで続けていく。 このようにすれば、図2のようなドレス装置において、「薄く削らない部分は形状はきれい(面粗さ・光沢など)に仕上がるが、目立てが不十分になりやすくその砥石を使用すると研削焼けを引き起こしやすくなる」と言う問題を回避する際にダイヤ先端の位置の設計からの偏差の影響を低減できる。
【0022】
本発明の実施形態によれば、十分な目立てが可能な上に、研削焼けやロータリダイヤの損傷を有効に防止し得ると共に、ダイヤ先端の位置の設計からの偏差の影響を低減できる研削盤用のドレス研削装置及びその制御方法を提供することができる。
【0023】
尚、以上において、ドレス装置の制御は、別置きの制御器があって、それにより行っても良いし、ねじ研削盤本体の制御器によって行っても良い。即ち、図11に示す例では、CNC内蔵のねじ研削装置(主機)110と、CNC内蔵のドレス装置(補機)120とを備えている。
CNC内蔵のねじ研削装置(主機)110は、制御器112と、複数個の1軸ドライブ114と各モータ(アクチュエータ)115と、砥石軸ドライブ116とそのモータ(アクチュエータ)117と、入出力装置118(位置センサ、速度センサ、スイッチ、ランプ、タッチプローブ、キーボード…)を有している。ここで、制御器112は、NC制御器112a、表示器及び入出力装置用制御器112b、補助(シーケンス)制御器112cを含んでいる。
CNC内蔵のドレス装置(補機)120は、制御器122と、複数個の1軸ドライブ124と各モータ(アクチュエータ)125と、ダイヤドライブ126とそのモータ(アクチュエータ)127と、入出力装置128を有している。ここで、制御器122は、NC制御器122a、補助制御器122cを含んでいる。
上記1軸ドライブの形は1つでも複数軸分モータを動かせるものもある。NC制御器からドライブへ直接制御を出すのではなく補助制御器が動かすようになっている場合も多い。NC制御器や補助制御器や表示器などの制御器の実体は、一つにまとまっていて各機能の一部または全部がソフトウェアとして実装されている場合も多い。つまり、複数台分の制御器を一台にまとめることは容易である。そのため、ドレス装置の制御器は主機の制御器と共通とし、主機側のソフトウェアとして実装することも可能である。当然、その場合には、主機と補機の枠は明確でない。
【符号の説明】
【0024】
52 粗ドレス目標、 54 削りに使う範囲の端、56 仕上げドレス目標、62 粗ドレス目標と同じ軌跡(U-Wオフセット)、 64 現在の砥石形状、100 ねじ研削盤用のドレス研削装置、102 W(軸)送り装置、 104 U(軸)送り装置、106 B軸旋回装置、108 半径調整装置、110 ロータリドレッサ回転装置、110a 回転軸、112 ロータリドレッサ、 112A ダイヤモンド、112a ダイヤ先端、 115 B軸旋回中心、113 オフセット量(B軸旋回半径)、200 砥石、
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