(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】残時間表示機能付歩行者用信号灯器
(51)【国際特許分類】
G08G 1/096 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
G08G1/096 A
(21)【出願番号】P 2020069907
(22)【出願日】2020-04-08
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(72)【発明者】
【氏名】五十住 力
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-188029(JP,A)
【文献】特開2005-310015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/096
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号制御機と、該信号制御機に接点信号を出力する押ボタン、及び前記信号制御機からの入力により待機を通知する表示部を備える押ボタン箱とに接続し、
赤信号の残り点灯時間である赤残時間を表示する複数の赤残時間点灯部から構成する赤残時間表示部を有し、前記赤残時間に基づいて、全ての前記赤残時間点灯部が点灯する赤残点灯パターンから、最下段の前記赤残時間点灯部のみを点灯する赤残点灯パターンまで、順次に点灯する残時間表示機能付歩行者用信号灯器であって、
前記信号制御機から、赤色灯器に応じた赤信号出力線、青色灯器に応じた青信号出力線、及び前記押ボタン箱の前記表示部への待信号出力線を処理部に接続させて、
前記処理部は、
前記待信号出力線からの電力の入力によって発生する赤信号出力線の入力から青信号出力線の入力への切換えから、次に発生する前記赤信号出力線の入力から前記青信号出力線の入力への切換えまでの計時時間と、予め記憶した所定の秒数域で所定秒数の間隔で定義された複数の周期の1又は複数回分の秒数を表した周期算出表とに基づいて、現示テーブルの周期を算出し、
前記待信号出力線から電力が入力された時点で、算出した前記周期と、該周期における経過秒数とから得られる前記赤残時間に基づいて、前記赤残点灯パターンの各点灯時間を設定することを特徴とする残時間表示機能付歩行者用信号灯器。
【請求項2】
前記処理部は、前記赤残点灯パターンの各点灯時間に対して、平均値になるように前記赤残時間を割り振ることを特徴とする請求項1に記載の残時間表示機能付歩行者用信号灯器。
【請求項3】
前記処理部は、前記最下段の前記赤残時間点灯部のみを点灯する赤残点灯パターンの終了タイミングと、前記青信号出力線の入力タイミングが略一致するか否かを判定し、略一致しない場合は、算出した前記周期をリセットし、再度前記赤信号出力線及び前記青信号出力線の入力に基づいて、前記周期を再算出することを特徴とする請求項1
又は2に記載の残時間表示機能付歩行者用信号灯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者用押ボタン箱が設置された交差点において、灯色が青に切換わるまでの残時間を表示する残時間表示機能付きの歩行者用信号灯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、横断可能までの待ち時間を表示する横断残時間表示機能を有する歩行者用信号灯器が開示されている。この歩行者用信号灯器の赤信号、青信号を示す人形灯の横に、均等間隔で複数の赤残時間、青残時間点灯部が配設されており、赤残時間点灯部では赤信号の人形図柄が点灯すると同時に、青信号の人形図柄横の全ての赤残時間点灯部が点灯し、青残時間表示部では青信号の人形図柄が点灯すると同時に、赤信号の人形図柄の横の全ての青残時間点灯部が点灯する。
【0003】
そして、赤人形灯の横の全ての青残時間表示部は、時間の経過に伴い、上方から順次に消灯してゆき、全ての青残時間表示部が消灯することで、青信号の人形灯の点滅に切換わる。このようにして、歩行者は青信号のおおよその残りの点灯時間を知ることができ、青残時間表示部の残りの点灯個数に応じて交差点を渡る速度を調整することが可能となる。
【0004】
また、交差点に設置された押ボタン箱の押ボタンが歩行者により押下されると、信号制御機は押下されたタイミングから歩行者用信号灯器の青信号が点灯するまでの時間を計算して、青残時間表示部の点灯制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の赤残時間、青残時間点灯部の点灯制御は、信号制御機内の制御部から歩行者用点灯器駆動回路を介して行っている。従って、残時間点灯部のない従来の押ボタン対応式歩行者用信号灯器に対して、歩行者用点灯器駆動回路と残時間点灯部との間に、新たに残時間点灯部用の制御線を設ける必要があった。このため、既設の信号制御機及び歩行者用信号灯器を使用して、後付で残時間点灯部を設置する場合には、歩行者用信号灯器の改修以外に信号制御機も残時間点灯部を制御するプログラムの大幅な改修を必要とし、費用を要した。
【0007】
本発明の目的は、上述の課題を解決し、既設の信号制御機のプログラム改修を必要とせずに、信号制御機からの既存の出力のみを利用して、灯色が青に切換わるまでの残時間の点灯制御を行う残時間表示機能付歩行者用信号灯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る残時間表示機能付歩行者用信号灯器は、信号制御機と、該信号制御機に接点信号を出力する押ボタン、及び前記信号制御機からの入力により待機を通知する表示部を備える押ボタン箱とに接続し、赤信号の残り点灯時間である赤残時間を表示する複数の赤残時間点灯部から構成する赤残時間表示部を有し、前記赤残時間に基づいて、全ての前記赤残時間点灯部が点灯する赤残点灯パターンから、最下段の前記赤残時間点灯部のみを点灯する赤残点灯パターンまで、順次に点灯する残時間表示機能付歩行者用信号灯器であって、前記信号制御機から、赤色灯器に応じた赤信号出力線、青色灯器に応じた青信号出力線、及び前記押ボタン箱の前記表示部への待信号出力線を処理部に接続させて、前記処理部は、前記待信号出力線からの電力の入力によって発生する赤信号出力線の入力から青信号出力線の入力への切換えから、次に発生する前記赤信号出力線の入力から前記青信号出力線の入力への切換えまでの計時時間と、予め記憶した所定の秒数域で所定秒数の間隔で定義された複数の周期の1又は複数回分の秒数を表した周期算出表とに基づいて、現示テーブルの周期を算出し、
前記待信号出力線から電力が入力された時点で、算出した前記周期と、該周期における経過秒数とから得られる前記赤残時間に基づいて、前記赤残点灯パターンの各点灯時間を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る残時間表示機能付歩行者用信号灯器によれば、既設の押ボタン対応式歩行者用信号灯器に、後付で青残時間表示部及び赤残時間表示部を設置した場合でも、残時間点灯制御部を設けることで、既設の信号制御機のプログラム改修や新たな制御線を敷設することなく、信号制御機からの既存の出力のみを利用して、押ボタンを押下したタイミングに応じた赤残時間表示部の点灯制御、及び青残時間表示部の点灯制御を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】押ボタン対応式の残時間表示機能付歩行者用信号灯器を含む交通信号制御システムのブロック回路図である。
【
図4】押ボタンモードの現示テーブルの一例である。
【
図5】残時間表示機能付歩行者用信号灯器の正面図である。
【
図6】周期を算出するプログラムのフローチャート図である。
【
図7】赤残時間表示部の点灯制御を行うプログラムのフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は十字路交差点に設置されている交通信号制御システムの全体構成図であり、
図2は押ボタン対応式の残時間表示機能付歩行者用信号灯器を含む交通信号制御システムのブロック回路図である。
【0012】
押ボタン箱を備える通常の交差点Cには、交通量の多い側の道路である主道路及び交通量の少ない側の道路である従道路の各道路毎に対となる信号灯器が設置されている。これらの信号灯器は、図示するように例えば1交差点Cに対して、歩行者用信号灯器が8器、車両用信号灯器が4器の計12器が配置されており、交差点Cの規模や交通量等に応じて設置数は増減される。
【0013】
そして、従道路側の信号灯器1は、車両用信号灯器10と押ボタン対応式の残時間表示機能付歩行者用信号灯器11とから構成され、主道路側の信号灯器2は車両用信号灯器20と残時間表示機能付歩行者用信号灯器21とから構成されている。
【0014】
交差点近傍の電柱等に取り付けられる信号制御機30は、筐体内に信号灯器1及び信号灯器2の点灯制御を行う制御部31と、この制御部31と接続され、歩行者用信号灯器11の近傍に配置された押ボタン箱40に対して、入出力処理を行う押ボタン制御部32と、制御部31と接続され、交通管制センタ等に設置された中央装置Mと有線又は無線で通信を行う通信部33と、この制御部31と接続され、信号灯器1及び信号灯器2への駆動電力を出力する第1の灯器駆動盤34及び第2の灯器駆動盤35とが収納されている。
【0015】
なお、押ボタン箱40には、押ボタン箱の動作が歩行者に判別できるように「押して下さい」や「お待ち下さい」などの文字列を表示する表示器を備えており、Po、Woの各DC出力線により交互に点灯制御を行っている。
【0016】
信号制御機30は商用電源である商用交流電力から電力を取得し、制御部31で処理される主、従道路の信号灯器2及び信号灯器1の点灯制御プログラムに従って、歩行者用信号灯器11に赤信号の点灯期間には電力線RoにAC100Vを、青信号の点灯期間には電力線GoにAC100Vを出力して、青信号及び赤信号の点灯、消灯の制御を第1の灯器駆動盤34を介して行っている。
【0017】
また、押ボタン制御部32は、押ボタン箱40に対して、押ボタン41が押されていない場合の文字列、例えば「押して下さい」等の文字列を押ボタン箱40の表示部に表示させるDC12VのDC出力線Poと、押ボタン41が押下された場合の文字列、例えば、「お待ち下さい」等の文字列を押ボタン箱40の表示部に表示させるDC12VのDC出力線Woとが接続されている。また、押ボタン制御部32から出力されるDC出力線Woは、分岐して押ボタン対応式の歩行者用信号灯器11にも接続されている。
【0018】
更に、押ボタン制御部32には、押ボタン箱40の押ボタン41が押下されることで出力される接点信号Swが信号線Siを介して入力されている。後述する押ボタンモードの際は、この接点信号Swに応じてDC出力線Poの出力からDC出力線Woの出力に切換える。
【0019】
制御部31から電力線Roへの駆動電力の出力は、赤信号点灯時間に渡って連続して出力し続け、赤信号から青信号に切換わった場合は、青信号を点灯させる電力線Goに対して、青信号点灯時間に渡って出力される。ただし、電力線Goの出力は、青信号点灯時間である所定時間は連続して出力されるが、この所定経過後は歩行者用青信号の点滅制御のため間欠的に出力されることになる。
【0020】
信号制御機30は通信部33を介して中央装置Mと接続し、中央装置Mからの制御指令に基づいて、時間帯によって設定した信号制御モードで運用したり、時間帯や曜日によって異なる周期Cyによる信号灯器1、2の点灯制御を行っている。
【0021】
信号制御機30は、
図3に示す現示テーブルTb1に従って点灯制御を行う通常モードと、
図4に示す現示テーブルTb2に従って点灯制御を行う押ボタンモードとから成る信号制御モードの何れかのモードを採用して、信号灯器1、2の点灯制御を行っている。
【0022】
時間帯、曜日等による信号制御モードの設定は、中央装置Mからの制御指令により信号制御機30に送信され、例えば昼間の時間帯は通常モードで運用し、夜間の人通りの少ない時間帯は押ボタンモードで運用するように、信号制御機30に設定される。
【0023】
図3、
図4に示す現示テーブルTb1、Tb2は一例であり、信号制御機30の電源を投入し、全ての信号灯器が赤点灯した後は、最初の階梯Kである階梯K1、K2、K3の順に保持秒数に従って、階梯K10まで信号灯器1、2の点灯制御が行われる。そして、最終の階梯Kである階梯K10の次は、最初の階梯Kである階梯K1に戻り、順次繰り返される。
【0024】
点灯時間の階梯K1~K10までの保持秒数の合計値、つまり、信号機の制御が一巡する時間を周期Cyという。なお、本実施例では、説明しやすくするために歩行者用信号灯器11の青点灯の開始タイミングである階梯K6を周期Cyの始点とし、説明する。
【0025】
階梯K1~K10の各保持秒数は、固定秒数又は最低限点灯を保持する上限秒数及び下限秒数が交差点の規模や交通量、占有率に応じて定義されており、周期Cyには上限値として、例えば240秒が定義されている。これらの定義の範囲内で、適宜のK1~K10の各保持秒数を設定する。
【0026】
また、通常モードでは、接点信号Swの入力に関係なく、階梯K1~K5、K7~K10の間にDC出力線Woから電力が出力されている。押ボタンモードでは、接点信号Swの入力に応じて、DC出力線Poの出力からDC出力線Woの出力に切換える、つまり、押ボタン箱40の表示部の「押して下さい」表示から「お待ち下さい」表示に切り換える制御を行う。
【0027】
また、通常モードでは現示テーブルTb1を繰り返す点灯制御を行うが、押ボタンモードは、現示テーブルTb2の出力状態で、つまり主道路の信号灯器2が青信号の点灯を維持する状態で、制御部31から主、従道路の信号灯器2及び信号灯器1に駆動電力が出力されている。これらの出力状態で信号制御機30は時間経過に伴って、階梯K1~K10に順次に移行する制御を行っている。
【0028】
そして、押ボタンモードでは、押ボタン41が押下されたタイミングに応じて、現示テーブルTb1の階梯K2~K10までの出力を割り込む点灯制御が行われる。なお、押ボタン41以外に、従道路側に車両感知器を設置して、従道路に車両が停止した場合に、感知されたタイミングに応じて上述の割り込み点灯制御を行うようにしてもよい。
【0029】
例えば、
図4に示す現示テーブルTb2の出力状態において、階梯K1のタイミングB1で押ボタン41が押下された、又は車両感知器により車両が感知された場合には、直ちに現示テーブルTb2の点灯制御から現示テーブルTb1の点灯制御に切換わり、出力赤残時間Wt1後に階梯K6の出力が開始される。
【0030】
また、
図4に示す現示テーブルTb2の出力状態において、タイミングB2のように階梯K2~K5の間に押ボタン41が押下された、又は車両感知器により車両が感知された場合には、主道路の信号灯器2を赤点灯にする点灯制御が間に合わず危険を伴うため、次の周期Cyの階梯K1から現示テーブルTb2の点灯制御から現示テーブルTb1の点灯制御に切換わる。つまり、1周期余分に長い赤残時間Wt2後に、階梯K6の出力が開始される。
【0031】
なお、階梯K2~K5の保持秒数は交差点の規模や交通量に応じて決められた固定値であるから、階梯K6を70秒の周期Cyの始点とすると、0秒~60秒までの間に押ボタン41が押下された場合は、赤残時間Wt1が採用され、周期Cyの開始から60秒~70秒までの間に押ボタン41が押下された場合は、1周期余分に長い赤残時間Wt2が採用されることになる。
【0032】
押ボタン箱40は、信号制御機30の押ボタン制御部32に対して、信号線Siを介して接点信号Swを出力するボタンスイッチである押ボタン41と、歩行者に「押して下さい」等の押ボタン41の押下を促す文字列をDC出力線Poを介して、入力された駆動電力により表示する第1の表示部42と、「お待ち下さい」等の押ボタン41が押された場合の待機を通知する文字列をDC出力線Woを介して、入力された駆動電力により表示する第2の表示部43とから構成されている。
【0033】
通常モードでは、押ボタン41の押下の有無に関係なく、階梯K1~K5及び階梯K7~K10の間は、待信号の出力線であるDC出力線Woに対してDC12Vが出力され、「お待ち下さい」の文字列が第2の表示部43により表示される。
【0034】
押ボタンモードでは、押ボタン41が押されていない階梯K1~K10の間は、DC出力線Poに対してDC12Vが出力され、「押して下さい」の文字列が第1の表示部42により表示される。
【0035】
そして、押ボタン41が階梯K1~K5及び階梯K7~K10の間で押下されることで、信号制御機30に入力された接点信号Swに基づいて、DC出力線Poに対する駆動電力の出力から、DC出力線Woに対する駆動電力の出力に切換わり、第1の表示部42による表示が消えて、「お待ち下さい」の文字列が第2の表示部43により表示されることになる。併せて、分岐したDC出力線Woを介して歩行者用信号灯器11にもDC12Vが出力される。
【0036】
押ボタン対応式の歩行者用信号灯器11は信号制御機30と接続する端子接続部12と、この端子接続部12を介して信号制御機30と接続する赤色灯器13及び青色灯器14と、これらの赤色灯器13、青色灯器14と接続し、かつ端子接続部12を介して信号制御機30と接続する残時間点灯制御部15から構成されている。
【0037】
赤色灯器13は人形灯器部13aを備え、コネクタC1を介して電力線Roが接続されている。人形灯器部13aは赤信号の点灯期間を示すAC100Vが入力されている間、赤人形灯13bを点灯する。
【0038】
また、赤色灯器13は青信号の点灯と連動する青残時間点灯部131~138から成る青残時間表示部13cを備えている。この青残時間表示部13cは、青信号の残り点灯時間を表示するものである。
【0039】
電力線Roは赤色灯器13内で分岐し、分岐線Rtoを介して残時間点灯制御部15にAC100Vを出力している。コネクタC1は灯器内外の電力線Ro及び灯器内外の分岐線Rtoを連結するものであり、コネクタC1が汚損や外れた場合には、人形灯器部13a及び残時間点灯制御部15に電力が供給されることはない。
【0040】
青色灯器14も赤色灯器13と同様に人形灯器部14aを備え、信号制御機30から青信号の点灯期間を示すAC100Vが入力され、分岐線Gtoを介して残時間点灯制御部15に出力する。人形灯器部14aは青信号の点灯期間を示すAC100Vが入力されている間、青人形灯14bが点灯する。
【0041】
また、青色灯器14は赤信号の点灯と連動する赤残時間点灯部141~148から成る赤残時間表示部14cを備えている。この赤残時間表示部14cは、赤信号の残り点灯時間である赤残時間Wtを表示するものである。
【0042】
図5に示すように、赤人形灯13bの横に、縦方向に等間隔で配置された青残時間表示部13cの青残時間点灯部131~138は、青人形灯14bの点灯に連動して、全ての青残時間点灯部131~138が点灯し、時間経過と共に最上段の青残時間点灯部138から順次に消灯してゆくことになる。そして、青人形灯14bの点滅、つまり電力線Goへの出力がオフになることに連動して、青残時間表示部13cを消灯させる。
【0043】
青人形灯14bの横に、縦方向に等間隔で配置された赤残時間表示部14cの赤残時間点灯部141~148は、赤人形灯13bの点灯に連動して、青人形灯14bの横の全ての赤残時間点灯部141~148が点灯し、時間経過と共に最上段の赤残時間点灯部148から順次に消灯してゆくことになる。そして、青人形灯14bの点灯に連動して、赤残時間表示部14cを消灯させる。
【0044】
図3においては、赤人形灯13b及び青人形灯14bの一方側の右側にのみ、青残時間表示部13c及び赤残時間表示部14cを設けているが、人形灯の両側に配置するようにしてもよい。また、青残時間点灯機能及び赤残時間点灯機能は既存の青残時間点灯機能及び赤残時間点灯機能を備えない歩行者用信号灯器11に対して、追加して改造することが可能である。
【0045】
このように追加して改造する場合には、既存の信号制御機30の制御部31に青残時間点灯及び赤残時間点灯制御プログラムを追加する必要はなく、既存の歩行者用信号灯器に青残時間表示部13c、赤残時間表示部14c及び残時間点灯制御部15を追加する。更に既設のDC出力線Woに対して、分岐して残時間点灯制御部15に引き込むように改造することで、容易に青残時間点灯機能及び赤残時間点灯機能を付加することができる。
【0046】
残時間点灯制御部15は、赤色灯器13を介して信号制御機30から人形灯器部13aの点灯状態を示す分岐線RtoのAC100Vの入力と、青色灯器14を介して信号制御機30から人形灯器部14aの点灯状態を示す分岐線GtoのAC100Vの入力とを、それぞれ処理部15bに点灯指令を送るため直流電圧にレベル変換するフォトカプラ等のAC/DC変換部15a-R、15a-Gを備えている。また、コネクタC2によって、残時間点灯制御部15の内外の分岐線Rto及び内外の分岐線Gtoを連結している。
【0047】
AC/DC変換部15a-R及びAC/DC変換部15a-Gにより、変換された直流電力はDC出力線Rt’o及びDC出力線Gt’oを介して、処理部15bに出力される。
【0048】
残時間点灯制御部15は、DC出力線Gt’o、DC出力線Rt’o及びDC出力線Woからの電力入力に基づいて、青残時間表示部13c及び赤残時間表示部14cの点灯制御を行う処理部15bと、この処理部15bと接続し、周期Cyと、DC出力線Gt’oの入力時間である青点灯時間Tgを記憶する記憶部15cと、赤色灯器13の青残時間表示部13c及び青色灯器14の赤残時間表示部14cに電力を供給する電源部15dとを備えている。
【0049】
電源部15dは、定期的に切換わる分岐線Rto及び分岐線Gtoからの分岐線のAC100Vの入力に対して、AC/DC変換した後に、それぞれの電力線DCoを介して、青残時間表示部13c内の電源3DC、及び赤残時間表示部14c内の電源4DCと接続し、青残時間表示部13c及び赤残時間表示部14cに対して、常時、電力を供給している。
【0050】
また、電源部15dは分岐線Rto及び分岐線Gtoに対して、それぞれ配置し、分岐線Rto及び分岐線Gtoの入力をAC/DC変換した後に、それぞれ青残時間表示部13c及び赤残時間表示部14cに対して、電力を出力するようにしてもよい。
【0051】
残時間点灯制御部15と、赤色灯器13及び青色灯器14とを接続する点灯出力線Gt、Rt及び電力線DCoは、一端を処理部15bのコネクタC3を介して、残時間点灯制御部15に連結し、他端を青残時間表示部13c及び赤残時間表示部14cのコネクタC4を介して、赤色灯器13及び青色灯器14に連結している。
【0052】
図6は処理部15bによる周期Cyを算出する第1のプログラムPr1のフローチャート図であり、
図7は赤残時間表示部14cの点灯制御を行う第2のプログラムPr2のフローチャート図である。
【0053】
処理部15bは、DC出力線Rt’o及びDC出力線Gt’oからの入力に基づいて、周期Cyを算出する第1のプログラムPr1と、算出した周期Cyの経過状態と、DC出力線Woからの入力とに基づいて、赤残時間表示部14cの点灯制御を行う第2のプログラムPr2を有している。
【0054】
処理部15bに電源が供給されると共に起動し、
図6に示すステップSt11において第1のプログラムPr1が開始される。続いてステップSt12において、DC出力線Rt’oの入力からDC出力線Gt’oの入力に切換わったか、つまり歩行者用信号灯器11が赤信号から青信号に切換わったか否かを判定する。この判定は、現示テーブルTb1における階梯K5から階梯K6にシフトしたか否かを判定することを意味する。
【0055】
ステップSt12でDC出力線Gt’oの入力有りと判定した場合は、ステップSt13に移行し、DC出力線Gt’oの入力があるまでループ処理を行う。ステップSt13では、処理部15bに内蔵するタイマ機能による計時を行っている否かを判定する。
【0056】
タイマ機能により計時を行っていない場合は、ステップSt14に移行し、タイマ機能による計時を開始して、ステップSt12に戻る。既に、タイマ機能により計時を行っている場合は、ステップSt15に移行する。
【0057】
ステップSt15では、計時している計時秒数に基づいて、周期Cyを算出可能か否かを判定する。周期Cyを算出できない場合は、ステップSt14に移行し、計時秒数をリセットして計時を開始する。なお、周期Cyの算出方法については後述する。
【0058】
ステップSt15において周期Cyを算出した場合には、ステップSt16に移行し、算出した周期Cyを記憶部15cに記憶する。そして、ステップSt17に移行して、周期Cyを算出する第1のプログラムPr1を終了すると共に、第2のプログラムPr2を開始する。
【0059】
図7に示すように開始した第2のプログラムPr2は、先ずステップSt21において、DC出力線Woからの入力の有無を判定する。なお、信号制御機30のDC出力線Woの出力は、
図3に示す通常モードでは、階梯K7にシフトした際に発生し、階梯K6にシフトするまで連続して出力される。
【0060】
図4に示す押ボタンモードでは、押ボタン41が押下されることで、現示テーブルTb2の運用に対して、現示テーブルTb1の階梯K2~K10までの出力の割り込み処理が発生し、押下された階梯K1~K10のタイミングから現示テーブルTb1の階梯K6にシフトするまでの時間である赤残時間Wtの間、信号制御機30からDC出力線Woの出力が連続して出力される。
【0061】
そして、ステップSt21において、DC出力線Woからの入力有りと判定した場合は、ステップSt22に移行し、DC出力線Woの入力があるまでループ処理を行う。
【0062】
ステップSt22において、赤残時間表示部14cの赤残時間点灯部141~148に対して、赤残点灯パターンP1~赤残点灯パターンP8を順次に点灯する点灯制御を開始する。
【0063】
これらの赤残点灯パターンP1~赤残点灯パターンP8は、全ての赤残時間点灯部141~148を点灯させる赤残点灯パターンP1から、時間経過と共に最上段の赤残時間点灯部148から順次に消灯してゆき、最下段の赤残時間点灯部141のみを点灯する最終点灯パターンの赤残点灯パターンP8までの点灯パターンである。
【0064】
そして、赤残点灯パターンP1~赤残点灯パターンP8の点灯時間は、DC出力線Woが入力された時点で、記憶している周期Cyと、周期Cyにおける経過秒数とから得られる階梯K6にシフトするまでの赤残時間Wtに基づいて、算出される。
【0065】
例えば、
図3に示す周期Cyが70秒である現示テーブルTb1による通常モードでは、DC出力線Woが入力される階梯K7から階梯K5までの赤残時間Wtが50秒となるので、赤残点灯パターンP1~赤残点灯パターンP7の各点灯時間を6秒として、赤残点灯パターンP8の点灯時間を8秒と設定する。
【0066】
図4に示す現示テーブルTb2の押ボタンモードでは、例えば押ボタン41を押下した際の赤残時間Wt1が32秒の場合は、赤残点灯パターンP1~赤残点灯パターンP8の各点灯時間が4秒とし、また、例えば赤残時間Wt2が72秒の場合は、赤残点灯パターンP1~赤残点灯パターンP8の各点灯時間が9秒として、赤残時間Wtに対して各赤残点灯パターンPの点灯時間が平均値になるように割り振る。
【0067】
ステップSt23では、DC出力線Gt’oの入力の有無を判定する。DC出力線Gt’oからの入力有りと判定した場合は、ステップSt24に移行し、DC出力線Gt’oの入力があるまでループ処理を行う。
【0068】
ステップSt24において、赤残時間表示部14cの終了タイミングである赤残点灯パターンP8の終了タイミングと、DC出力線Gt’oの入力タイミングが略一致するか否かを判定する。つまり、処理部15bにおいて算出した赤残時間Wtの0秒である周期Cyの終了時と、信号制御機30から出力される周期Cyの終了時とが一致するか否かを判定する。
【0069】
赤残点灯パターンP8の終了タイミングと、DC出力線Gt’oの入力タイミングが略一致した場合は、ステップSt21に戻り、ステップSt21~St24を繰り返す。
【0070】
赤残点灯パターンP8の終了タイミングと、DC出力線Gt’oの入力タイミングが不一致の場合は、ステップSt25に移行し、保存している周期Cyをリセットして、タイマ機能による計時を開始する。
【0071】
これらのタイミングの不一致は、信号制御機30で時間帯制御等により周期Cyが変更された場合等に発生する。例えば、周期Cyが70秒で点灯制御していた時間帯から、90秒の時間帯に変更した場合には、処理部15bでは記憶している周期Cyが変更されたことを判断することができない。
【0072】
従って、周期Cyが変更されると、赤残時間表示部14cの赤残点灯パターンP8の終了タイミングと異なるタイミングで、DC出力線Gt’oが入力される。赤残時間WtよりDC出力線Gt’oの入力タイミングが早い場合は、途中で赤残点灯パターンPは打切りとなり、赤残時間WtよりDC出力線Gt’oの入力タイミングが遅い場合は、赤残点灯パターンP8の点灯状態がDC出力線Gt’oの入力まで維持される。
【0073】
ステップSt25からステップSt26に移行し、第2のプログラムPr2を終了すると共に、変更された周期Cyを算出するために
図6のステップST11の第1のプログラムPr1の開始に移行する。
【0074】
第1のプログラムPr1に戻り、再度、DC出力線Gt’oが入力されることで、更新した周期Cyを記憶部15cに記憶する。そして、処理部15bにおいて算出した周期Cyと、周期Cyにおける経過秒数とを保持する。
【0075】
続いて、第1のプログラムPr1のステップSt15における計時秒数に基づく周期Cyの算出方法について説明する。通常の交差点では周期Cyは、±20~30秒程度の差を有する秒数域で、5秒程度の間隔の秒数の何れかを採用して運用されている。例えば、
図8の周期Cy算出表に示すように、55秒から85秒の間で5秒刻みに定義された周期Cyの何れかが用いられることになる。また、周期Cy算出表には、定義された周期Cyの1及び複数回の周期Cy分の秒数が記憶されている。なお、
図8に示す周期Cy群は一例であり、交差点の交通量や車線数等に応じて、最適な値を適宜に設定した周期Cy群が用いられる。
【0076】
現示テーブルTb1の通常モード時では、毎周期Cy毎に必ずDC出力線Rt’oの入力からDC出力線Gt’oの入力に切換わるため、タイマ機能による計時秒数は1周期分となる。従って、周期Cyは55秒から85秒までの何れかを算出することができる。
【0077】
しかし、現示テーブルTb2の押ボタンモード時では、押ボタン41が押下されない場合には、DC出力線Rt’oの入力からDC出力線Gt’oの入力の切換わりが発生しない。従って、複数回の周期Cyに渡ってタイマ機能による計時が継続されることもある。
【0078】
歩行者により押ボタン41が押下されることで、DC出力線Rt’oの入力からDC出力線Gt’oの入力の切換えが発生し、連続して歩行者により押ボタン41が押下されることで、1又は複数回の周期Cy分の計時秒数を得ることができる。計時秒数と、この計時秒数に対応する周期Cy算出表とに基づいて、周期Cyを算出する。例えば、計時秒数が280秒の場合は、70秒の周期Cyは4回分計時したものとして、周期Cyは70秒であると算出する。また、計時秒数に対して、周期Cy算出表内の最も近似する秒数を採用し、周期Cyを算出するようにしてもよく、例えば計時秒数が281秒の場合も、周期Cyは70秒であると算出する。
【0079】
また、計時秒数には上限値、例えば600秒を設定し、この上限値を計時秒数が超えた場合は、周期Cy算出表に基づく周期Cyの算出を行わず、第1のプログラムPr1のステップSt15に示すように、リセット処理を行う。この処理は、計時秒数が長くなると周期Cyの切換わり等が含まれる可能性が高くなり、算出する周期Cyの信頼性が低下するためである。
【0080】
このように、第1のプログラムPr1、第2のプログラムPr2のフローチャートから分かるように、周期Cyが算出されない限り、赤残時間表示部14cが点灯されることはない。
【0081】
続いて、青残時間表示部13cの青残時間点灯部131~138に対して、青残点灯パターンP1~青残点灯パターンP8を点灯する点灯制御について説明する。
【0082】
これらの青残点灯パターンP1~青残点灯パターンP8は、全ての青残時間点灯部131~138を点灯させる青残点灯パターンP1から、時間経過と共に最上段の青残時間点灯部38から順次に消灯してゆき、最下段の青残時間点灯部131のみを点灯する最終点灯パターンの青残点灯パターンP8までの点灯パターンである。
【0083】
また、現示テーブルTbの階梯K6のDC出力線Gt’oが入力、つまり青信号のオン状態から階梯K7のDC出力線Gt’oの点滅時の最初のオフ状態になるまでの経過秒数を、青点灯時間Tgとして記憶部15cに記憶する。
【0084】
記憶した青点灯時間Tgに対して、前述の赤残時間表示部14cの赤残点灯パターンP1~赤残点灯パターンP8と同様に、青残時間表示部13cの青残点灯パターンP1~青残点灯パターンP8の点灯時間が平均値になるように割り振る。
【0085】
そして、DC出力線Rt’oの入力からDC出力線Gt’oの入力に切換わった際に、青残点灯パターンP1~青残点灯パターンP8を点灯する点灯制御を開始する。
【0086】
青残点灯パターンP8の終了タイミングと、DC出力線Gt’oの入力タイミングが略一致するか否かを判定し、タイミングが不一致の場合は、現示テーブルTbの階梯K6のDC出力線Gt’oのオン状態から階梯K7のDC出力線Gt’oのオフ状態になるまでの経過秒数を、再度計時して新たな青点灯時間Tgとして記憶部15cに記憶する。
【0087】
このように、本発明に係る残時間表示機能付歩行者用信号灯器11によれば、既設の押ボタン対応式歩行者用信号灯器に、後付で青残時間表示部13c及び赤残時間表示部14cを設置した場合でも、残時間点灯制御部15を設けることで、既設の信号制御機のプログラム改修や新たな制御線を敷設することなく、信号制御機からの既存の出力のみを利用して、押ボタン41を押下したタイミングに応じた赤残時間表示部14cの点灯制御、及び青残時間表示部13cの点灯制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0088】
1、2 信号灯器
11 残時間表示機能付歩行者用信号灯器
13 赤色灯器
14 青色灯器
14c 赤残時間表示部
141~148 赤残時間点灯部
15 残時間点灯制御部
15b 処理部
30 信号制御機
31 制御部
32 押ボタン制御部
40 押ボタン箱
41 押ボタン
Cy 周期
Gt’o、Rt’o、Wo DC出力線
Wt 赤残時間