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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】ナット保持部材、及び、連結構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 37/04 20060101AFI20240207BHJP
   F16B 39/02 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
F16B37/04 M
F16B39/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020078744
(22)【出願日】2020-04-27
(65)【公開番号】P2021173357
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100203460
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 肇
(72)【発明者】
【氏名】池場 賢次
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-308196(JP,A)
【文献】特開2016-011693(JP,A)
【文献】実開平06-080099(JP,U)
【文献】特開2000-346285(JP,A)
【文献】特開2015-154537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 37/04
F16B 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナットの螺着軸と交差する方向への移動、及び、ねじ込まれるボルトとの共回りを抑制した状態で前記ナットを保持可能な保持部を備え、
前記ナットの螺着軸が同一軸心上となるように複数を重ね合わせ可能であり、
前記保持部が、螺着軸方向に前記ナットが移動可能な空隙を有する、ナット保持部材。
【請求項2】
前記空隙の前記螺着軸の軸方向の高さは、前記ナットの雌ネジの1ピッチ以上である、請求項1に記載のナット保持部材。
【請求項3】
別の前記ナット保持部材との重ね合わせ方向に凹む凹部と、
別の前記ナット保持部材と重ね合わせた場合に、別の前記ナット保持部材の前記凹部に対して重ね合わせた方向へ向けて嵌まり込み可能な凸部と、をさらに備え、
前記凸部の突出量は、前記ナットの雌ネジの1ピッチよりも大きい、請求項1又は2に記載のナット保持部材。
【請求項4】
重ね合わされた状態において前記螺着軸が同一軸心上に位置する状態を維持可能な位置維持手段を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のナット保持部材。
【請求項5】
複数の物体をボルト及びナットにより連結する連結構造であって、
物体が、ナットの螺着軸と交差する方向への移動、及び、ねじ込まれるボルトとの共回りを抑制した状態で前記ナットを保持部により保持しており、
前記物体は、複数が、前記ナットの螺着軸が同一軸心上に位置するように配置されており、
前記ボルトの螺入方向手前側の前記物体の前記保持部が、前記ナットが螺着軸方向へと移動可能な空間を有する、連結構造。
【請求項6】
雌ネジを有する複数の物体をボルトにより連結する連結構造であって、
前記物体は、複数が、前記雌ネジの螺着軸が同一軸心上に位置するように配置されており、
前記複数の物体のうちボルトの螺入方向の最奥側に位置する物体以外の物体は、前記雌ネジを有するナットを前記螺着軸と交差する方向への移動、及び、前記ボルトとの共回りを抑制した状態で保持部により保持しており、
前記保持部は、前記ナットが螺着軸方向へと移動可能な空間を有する、連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部にナットを保持し、そのナットを利用して互いに連結可能なナット保持部材、及び、そのナット保持部材を利用した連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボルトとナットとを利用して、上下方向に積み重ねられたものを連結固定することが広く一般的に行われている。このような構造を有するものとして、特許文献1に記載の台座がある。特許文献1に記載の台座では、台座と載置面との間にスペーサを設けてかさ上げを行ううえで、ボルトとナットとを利用して連結固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-154537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の台座のように、ボルトとナットとを用いて連結を行う場合、部材どうしのずれなどを抑制するうえで改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、ボルトとナットとを用いて連結を行ううえで、より好適に連結可能なナット保持部材、及び、連結構造を提供することにある。
【0006】
第1の構成は、ナット保持部材であって、ナットの螺着軸と交差する方向への移動、及び、ねじ込まれるボルトとの共回りを抑制した状態で前記ナットを保持可能な保持部を備え、前記ナットの螺着軸が同一軸心上となるように複数を重ね合わせ可能であり、前記保持部が、螺着軸方向に前記ナットが移動可能な空隙を有する。
【0007】
共回りが抑制されている複数のナットに対してボルトをねじ込む場合、第1のナットにボルトをねじ込んだ後に第2のナットにボルトをねじ込み始める際に、ボルトの山の始点とナットの谷の始点とが一致するまでボルトは空回りする。このとき、すでにねじ込んである第1のナットは共回りが抑制されているために、ボルトの回転に伴い第2のナットから離間することになる。この点、第1の構成では、保持部にナットが移動可能な空隙が設けられているため、第1のナットが第2のナットから離間した場合でもナット保持部材どうしの離間を抑制することができる。
【0008】
第2の構成は、第1の構成に加えて、前記空隙の前記螺着軸の軸方向の高さは、前記ナットの雌ネジの1ピッチ以上である。
【0009】
第1のナットにボルトをねじ込んだ後に第2のナットにボルトをねじ込み始める際に、ボルトは約1回転の空転をする場合がある。このとき、第1のナットにはボルトの1ピッチ分の長さがねじ込まれることとなり、ナットが雌ネジの1ピッチ分だけ移動することとなる。第2の構成では、空隙の高さをナットの雌ネジの1ピッチ以上としているため、ボルトが約1回転した場合でもナットは保持部内で移動することができるため、ナット保持部材どうしの離間を抑制することができる。
【0010】
第3の構成は、第1又は第2の構成に加えて、別の前記ナット保持部材との重ね合わせ方向に凹む凹部と、別の前記ナット保持部材と重ね合わせた場合に、別の前記ナット保持部材の前記凹部に対して重ね合わせた方向へ向けて嵌まり込み可能な凸部と、をさらに備え、前記凸部の突出量は、前記雌ネジの1ピッチよりも大きい。
【0011】
空隙内をナットが移動した場合、第1のナットと第2のナットとの間隔は最大で1ピッチ分だけ開くため、別の固定手段により固定するまでは、ナット保持部材どうしも最大で1ピッチ分だけ離間する余地がある。第3の構成では、ナット保持部材どうしが離間した場合でも、凹部に凸部の一部が嵌まり込んだ状態が維持されるため、ナット保持部材どうしのナットの移動方向以外の相対位置の変化を抑制することができる。
【0012】
第4の構成は、第1~第3のいずれかの構成に加えて、重ね合わされた状態において前記螺着軸が同一軸心上の位置する状態を維持可能な位置維持手段を備える。
【0013】
第4の構成では、ナットにボルトを螺入する場合に位置の調節が不要となるため、より容易にナット保持部材どうしを連結することができる。
【0014】
第5の構成は、複数の物体をボルト及びナットにより連結する連結構造であって、物体が、ナットの螺着軸と交差する方向への移動、及び、ねじ込まれるボルトとの共回りを抑制した状態で前記ナットを保持部により保持しており、前記物体は、複数が、前記ナットの螺着軸が同一軸心上に位置するように配置されており、前記ボルトの螺入方向手前側の前記物体の前記保持部が、前記ナットが螺着軸方向へと移動可能な空間を有する。
【0015】
第5の構成では、第1の構成に準ずる効果を奏する連結構造を提供することができる。
【0016】
第6の構成は、雌ネジを有する複数の物体をボルトにより連結する連結構造であって、前記物体は、複数が、前記雌ネジの螺着軸が同一軸心上に位置するように配置されており、前記複数の物体のうちボルトの螺入方向の最奥側に位置する物体以外の物体は、前記雌ネジを有するナットを前記螺着軸と交差する方向への移動、及び、前記ボルトとの共回りを抑制した状態で保持部により保持しており、前記保持部は、前記ナットが螺着軸方向へと移動可能な空間を有する。
【0017】
第6の構成でも、第1の構成に準ずる効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】台座の右斜め上方からの斜視図である。
図2】台座の右斜め下方からの斜視図である。
図3】台座の正面図である。
図4】台座の右側面図である。
図5】台座の平面図である。
図6】台座の底面図である。
図7】A-A線断面図である。
図8】B-B線断面図である。
図9図8の拡大図である。
図10】台座を前後方向が一致する向きで積み上げた場合の正面図である。
図11】台座を前後方向が一致する向きで積み上げた場合の右側面図である。
図12】C-C線断面図である。
図13】D-D線断面図である。
図14】台座を前後方向が異なる向きで積み上げた場合の正面図である。
図15】台座を前後方向が異なる向きで積み上げた場合の右側面図である。
図16】E-E線断面図である。
図17】F-F線断面図である。
図18】収容部内におけるナットの位置の変化を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施形態に係るナット保持部材として機能する台座10について、図1図8を参照して説明する。本実施形態に係る台座10は、金属又は硬質の樹脂で一体成型されている。台座10は、本実施形態では、地面や屋上、床等に載置されて使用されるものであり、天地方向を上下方向として定義する。また、台座10の全体形状は略四角錐台筒状であり、且つ、平面視にて略長方形状であるため、短辺の側を前後方向と称して一方を正面、他方を背面とし、長辺の側を左右方向と称して一方を右側面、他方を左側面とする。
【0020】
台座10は、正面側に、上方へ向かうにつれ後方へと傾斜している平板状の正面側下段21を備えている。この正面側下段21は、左右方向の断面形状が略均一であり、且つ、厚みも略均一である。正面側下段21の上端には、正面側下段21の上端から後方へ向けて水平に張り出す正面側支承部22が形成されている。この正面側支承部22の上下方向の厚みは、略一定である。この正面側支承部22の後端側における、正面側下段21の正面からは、上方へ向かうにつれ後方へと傾斜している平板状の正面側上段23が設けられている。この正面側上段23は、左右方向の断面形状が略均一であり、且つ、厚みも略均一である。そして、正面側上段23の傾斜角は、正面側下段21の傾斜角と等しくなっている。
【0021】
正面側上段23の下端には、正面へ向けて均一な量だけ正面側上段23から突出し、且つ、上下幅は左右方向に亘って均一である正面側張出部24が設けられている。この正面側張出部24は正面側上段23から正面へ向けて均一な量だけ突出しているため、傾斜角は正面側下段21及び正面側上段23と等しい。また、この正面側張出部24の正面から正面側下段21の正面までの、正面側支承部22の幅は、正面側下段21の厚みよりも大きく形成されている。また、正面側支承部22の左右方向の中央には、平面視にて四角形であり、上下方向の高さが正面側張出部24よりも低い、正面側凸部25が設けられている。この正面側凸部25の後端は正面側張出部24の正面と接続されており、正面側凸部25の前端は、正面側支承部22の前端よりも若干後方に位置している。なお、この正面側凸部25の高さについては、後述する。
【0022】
正面側下段21、正面側上段23、及び正面側張出部24は、いずれも厚みが略均一であるため、それぞれの内面である正面側下段内面21a、正面側上段内面23a、及び正面側張出部内面24aは、後方へ向けて傾斜した平面となっている。正面側下段内面21a、正面側上段内面23a、及び正面側張出部内面24aがこのような形状であるため、これらによる形状は、正面側下段21、正面側上段23、及び正面側張出部24の正面の形状と相似の形状である。
【0023】
台座10の背面側には、背面側下段31、背面側支承部32、背面側上段33、背面側張出部34、背面側凸部35が設けられている。これらの形状は、正面側下段21、正面側支承部22、正面側上段23、正面側張出部24、正面側凸部25と面対称な形状であるため、その説明を省略する。同様に、背面側下段31、背面側上段33、背面側張出部34の内面である背面側下段内面31a、背面側上段内面33a、背面側張出部内面34aについても、正面側下段内面21a、正面側上段内面23a、正面側張出部内面24aと面対称な形状であるため、その説明を省略する。これらの場合に、各構成が面対称となる面を、前後対称面と称する。
【0024】
台座10は、右側面に、上方へ向かうにつれ左方へと傾斜している平板状の右側面下段41を備えている。この右側面下段41の傾斜角は、正面側下段21等の傾斜角と等しく、前後方向の断面形状が略均一であり、且つ、厚みも略均一である。加えて、右側面下段41の上端は、正面側下段21及び背面側下段31の上端の位置よりも下方に位置している。右側面下段41の上端には、右側面下段41の上端から左方へ向けて水平に張り出す右側面支承部42が形成されている。この右側面支承部42の上下方向の厚みは、略一定である。この右側面支承部42の左端側における、右側面下段41の正面からは、上方へ向かうにつれ左方へと傾斜している平板状の右側面上段43が設けられている。この右側面上段43は、前後方向の断面形状が略均一であり、且つ、厚みも略均一である。そして、右側面上段43の傾斜角は、右側面下段41の傾斜角と等しくなっている。
【0025】
右側面上段43の下端には、正面へ向けて均一な量だけ右側面上段43から突出し、且つ、上下幅は左右方向に亘って均一である右側面張出部44が設けられている。この右側面張出部44は右側面上段43から右方向へ向けて均一な量だけ突出しているため、傾斜角は右側面下段41及び右側面上段23と等しい。この右側面張出部44の右方向への突出量は、正面側張出部24及び背面側張出部34の突出量と等しくなっている。また、右側面張出部44の正面から右側面下段41の正面までの、右側面支承部42の幅は、右側面下段41の厚みよりも小さく形成されている。
【0026】
右側面下段41、右側面上段43、及び右側面張出部44は、いずれも厚みが略均一であるため、それぞれの内面である右側面下段内面41a、右側面上段内面43a、及び右側面張出部内面44aは、後方へ向けて傾斜した平面となっている。右側面下段内面41a、右側面上段内面43a、及び右側面張出部内面44aがこのような形状であるため、これらによる形状は、右側面下段41、右側面上段43、及び右側面張出部24により構成される右側面と相似の形状である。
【0027】
台座10の左側面には、左側面下段51、左側面支承部52、左側面上段53、左側面張出部54が設けられている。これらの形状は、右側面下段41、右側面支承部42、右側面上段43、右側面張出部44と面対称な形状であるため、その説明を省略する。同様に、背左側面下段51、左側面上段53、左側面張出部54の内面である左側面下段内面51a、左側面上段内面53a、左側面張出部内面54aについても、右側面下段内面41a、右側面上段内面43a、右側面張出部内面44aと面対称な形状であるため、その説明を省略する。これらの場合に、各構成が面対称となる面を、左右対称面と称する。
【0028】
以上説明した各構成が互いに接続されている4隅は、円弧状に面取りされている。すなわち、正面側支承部22、正面側張出部24、背面側支承部32、及び背面側張出部34の右端は、右側面上段43へと回り込み、左端は左側面上段53へと回り込む。同様に、右側面支承部42、右側面張出部44、左側面支承部52、及び左側面部54の前端は、正面側下段21へと回り込み、後端は背面側下段31へと回り込む。
【0029】
正面側下段21の下端には、正面側へ張り出した正面側フランジ26が設けられており、 背面側下段31の下端には、背面側へ張り出した背面側フランジ36が設けられており、
右側面下段41の下端には、右側方へ張り出した右側面フランジ46が設けられており、
左側面下段51の下端には、左側方へ張り出した左側面フランジ56が設けられている。これら正面側フランジ26、背面側フランジ36、右側面フランジ46、左側面フランジ56の上下方向の厚みは、いずれも等しく且つ略均一であり、それらの底面は、水平な同一平面状に位置する。また、それらの接続箇所の端部である四隅は、円弧状に面取りされている。
【0030】
正面側フランジ26の下面には、上方へ向けて凹んだ正面側凹部27が設けられている。この正面側凹部27の左右の幅は、正面側凸部25及び背面側凸部35の幅と略等しく、上下の深さは正面側凸部25及び背面側凸部35の高さと略等しい。そして、正面側フランジ26の下面の前端から後端に至るまで形成されている。背面側フランジ36の下面には、正面側凹部27と同一形状の背面側凹部37が設けられており、その説明については省略する。右側面フランジ46の下面には、上方へ向けて凹んだ右側面凹部47が設けられている。この右側面凹部47の左右の幅は、正面側凸部25及び背面側凸部35の幅と略等しく、上下の深さは正面側凸部25及び背面側凸部35の高さと略等しい。そして、左側面フランジ46の下面の右端から左端に至るまで形成されている。左側面フランジ56の下面には、右側面凹部47と同一形状の左側面凹部57が設けられており、その説明については省略する。
【0031】
以上説明した各構成の一部の具体的な寸法について説明する。右側面下段内面41aの下端と左側面下段内面51aの下端との間隔は、右側面張出部44の下端の正面と左側面張出部54の下端の正面との間隔と略等しい。また、右側面下段内面41aの下端と左側面下段内面51aの下端との間隔は、正面側張出部24の下端の正面と背面側張出部34の下端の正面との間隔とも略等しい。その他の構成の寸法については、上述した構造の主旨を逸脱しない範囲で、様々な変更を行うことができる。
【0032】
正面側上段23の上端、背面側上段33の上端、右側面上段43の上端、及び、左側面上段53で囲まれる領域は、水平な板状の上面61により、略閉塞されている。上述した通り、台座10は略四角台錐筒状であり、且つ、平面視にて略長方形状であるため、上面61も略長方形状であり、その4隅は弧状に面取りされている。上面61には、下方へ向けて窪んだ窪み62が2つ設けられている。この窪み62は、平面視にて左右方向へ延びる略長方形状であり、平面視にて正面側上段23の上端及び背面側上段33の上端と並行である。すなわち、窪み62には互いに平行である。
【0033】
上面61には、内部に上下方向へ延びる正六角筒状の空間を形成する、保持部71が設けられている。この保持部71の正六角筒状の空間にはナット80が保持されるため、まず、そのナット80について説明する。ナット80は平面視にて略正六角形であり、上下方向に略一定の厚みを有している。すなわち、ナット80の外径は略正六角柱状である、このナット80には、上下方向へ延び、略一定のピッチで形成された雌ネジ81が設けられている。保持部71はこのようなナット80の回転を抑制した状態で保持するため、正六角形の各辺の長さは、ナットの六角形の各辺の長さと略等しいか、若干大きく形成されている。
【0034】
保持部71の六角形の頂点の内の一対の頂点は、左右対称面上に位置しており、正六角筒状の空間は、前後対称面において面対称となっている。すなわち、保持部71の上下方向に延びる中心軸は、左右対称面と前後対称面とが交差する直線状に位置する。すなわち、保持部71に保持されるナット80の雌ネジ81の上下方向の軸である螺着軸が、左右対称面と前後対称面とが交差する直線状に位置することになる。
【0035】
保持部71の上面は正六角筒状の空間の一部を閉塞している。この保持部71の上面の中央は円形に開口しており、その開口の直径は、ナット80の雌ネジ81の谷の径と略等しいか若干大きく形成されている。すなわち、保持部71がナット80を保持した状態で、平面視にてナット80の雌ネジ81が視認可能となっている。
【0036】
保持部71の右側面73には、下端から上方へ向けて切れ込んだ一対の切れ込み73aが前後方向に所定の間隔を空けて設けられている。同様に、保持部71の左側面74には、下端から上方へ向けて切れ込んだ一対の切れ込み74aが前後方向に所定の間隔を空けて設けられている。このように切れ込み73a,74aが設けられているため、保持部71の右側面73及び左側面74は、左右方向に撓ませることができる。
【0037】
右側面73及び左側面74のそれぞれの下端側には、内側へ向けて突出した支持爪73b,74bが設けられている。支持爪73b,74bの上面は水平面を構成しており、その水平面から閉塞部72の下面までの距離は、ナット80の高さに、ナット80の雌ネジ81の1ピッチの上下方向の高さを加えたものよりも若干大きい。すなわち、図9の拡大図に示すように、ナット80が保持部71に保持され、ナット80の下面が支持爪73b、74bの上面に当接している状態で、ナット80の上面と閉塞部72の下面との間に、空隙間が生ずる。したがって、図9に示すように、雌ネジ81の1ピッチに相当する高さPよりも若干高い高さSの空隙が設けられることとなる。
【0038】
ここで、正面側凸部25及び背面側凸部35の高さについて、説明する。正面側凸部25及び背面側凸部35の高さは、雌ネジ81の1ピッチに相当する高さPと略同等か、若干高く形成されている。また、ナット80の上面と閉塞部72の下面との間の空隙の高さSと略同等としてもよい。
【0039】
以上のように構成される台座の使用方法について、図10~17を参照して説明する。本実施形態に係る台座は、上下方向に積み上げることで、最上段に位置する台座の上面から最下段に位置する台座の下面までの高さを変更することができる。台座10の積み重ね方によっては、向きが相対的に異なっているため、図9~16では、上段側の台座10の正面の向きを正面と定義する。また、下側の台座10’については、符号に「’」を付与し、上側の台座10と区別している。なお、図10~17において、保持部71を構成する各部位について、図示が冗長となるため、一部の符号の付与を省略している。
【0040】
まず、下側の台座10’の向きと、上側の台座10の向きとを一致させて積み上げる場合について図9~12を参照して説明する。なお、図10~13では、下側の台座10’と上側の台座10は前後対称な形状であるため、一方の前後の向きが逆であっても同等である。
【0041】
この場合には、下側の台座10’の右側面支承部42’及び左側面支承部52’よりも上方の部分が、上側の台座10の中空部の内部に入り込む。このとき、下側の台座10の正面側上段23’、背面側上段33’、右側面上段43’、左側面上段53’が、それぞれ、上側の台座10の正面側下段内面21a、背面側下段内面31a、右側面下段内面41a、左側面下段内面51aと対向する。加えて、下側の台座10’の右側面張出部44’と、上側の台座10の右側面下段内面41aとが、前後方向の略全面に亘って当接し、下側の台座10’の左側面張出部54’と、上側の台座10の左側面下段内面51aとが、前後方向の略全面に亘って当接する。なお、上側の台座10の右側面下段内面41a及び左側面下段内面51aと、下側の台座10’の右側面張出部44’及び 左側面張出部54’とにより、上側の台座10と下側の台座10’との前後左右方向への移動が抑制される。これにより、ナット80,80’の螺着軸の軸心の位置が維持されるため、右側面下段内面41a、左側面下段内面51a、右側面張出部44’、 左側面張出部54を纏めて位置維持手段と称することができる。
【0042】
さらに、右側面フランジ46の下面の内面寄りの位置が、右側面支承部42’により支持され、左側面フランジ56の下面の内面寄りの位置が、左側面支承部52’により支持される。すなわち、上側の台座10の中空部の開口縁が、右側面支承部42’及び左側面支承部52’により支持されることとなる。
【0043】
続いて、下側の台座10’の向きと、上側の台座10の向きとを、左右対称面と前後対称面とが交差する直線を回転軸として、相対的に90°回転させて積み上げる場合について図14~17を参照して説明する。この図14~17なお、図13~16では、上側の台座10の前後が逆であっても同等である。
【0044】
この場合には、下側の台座10’の正面側支承部22’及び背面側支承部32’よりも上方の部分が、上側の台座10の中空部の内部に入り込む。このとき、下側の台座10’の正面側上段23’、背面側上段33’、右側面上段43’の一部、左側面上段53’の一部が、それぞれ、上側の台座10の右側面下段内面41a、左側面下段内面51a、背正面側下段内面31a、正面側下段内面21a、と対向する。加えて、下側の台座10’の正面側張出部24’と、上側の台座10の右側面下段内面41aとが、前後方向の略全体に亘って当接し、下側の台座10’の背面側張出部34’と、上側の台座10の左側面下段内面51aとが、当接する。なお、上側の台座10の右側面下段内面41a及び左側面下段内面51aと、下側の台座10’の正面側張出部24’及び 背面側張出部34’とにより、上側の台座10と下側の台座10’との前後左右方向への移動が抑制される。これにより、ナット80,80’の螺着軸の軸心の位置が維持されるため、右側面下段内面41a、左側面下段内面51a、正面側張出部24’、背面側張出部34を纏めて位置維持手段と称することができる。
【0045】
さらに、右側面フランジ46の下面の内面寄りの位置が、正面側支承部22’により支持され、左側面フランジ56の下面の内面寄りの位置が、背面側支承部32’により支持される。すなわち、上側の台座10の中空部の開口縁が、正面側承部22’及び背面側支承部32’により支持されることとなる。すなわち、台座10,10’の向きが同じ場合と同じ箇所が、正面側承部22’及び背面側支承部32’により支持される。この場合に、下側の台座10’の正面側凸部25’が上側の台座10の右側面凹部47に嵌まり込み、下側の台座10’の背面側凸部35’が上側の台座10の左側面凹部57に嵌まり込む。これら正面側凸部25’、背面側凸部35’、右側面凹部47、左側面凹部57についても、ナット80,80’の螺着軸の軸心の位置が維持に寄与するため、位置維持手段と称することができる。
【0046】
以上のようにして、2つの台座10,10’を積み重ねれば、下側の台座10’の向きと上側の台座10の向きとを一致させて積み重ねる場合と、相対的に異ならせて積み重ねる場合とで、下段側の台座10’の下端から上段側の台座10の上端までの高さが異なることとなる。
【0047】
以上、2つの台座10,10’を積み重ねて使用する例を示したが、必要に応じて、3つ以上の台座10を積み重ねて使用することもできる。この場合には、すべての台座10の向きを一致させて積み上げることもできるし、2つの台座10の向きを一致させ、残りの台座10の向きを異ならせる等して、必要に応じて高さを変更することができる。また、台座10を積み重ねずに使用することもできる。
【0048】
上述したように2つの台座10,10’と積み重ねたあと、雄ネジを備えるボルト(図示略)をナット80に螺入することで、上下の台座10,10’をより確実に連結することができる。この場合、上下のいずれから螺入しても同様であるため、上方から螺入する場合について説明する。
【0049】
上方からボルトを螺入する場合、まず、上側の台座10の保持部71に保持されたナット80の雌ネジ81に螺入されている。このとき、ボルトの先端が雌ネジ81に到達し、且つ、ボルトの雄ネジの山の始点とナット80の雌ネジ81の谷の始点とが一致した時点で、螺入が開始される。ナット80は、保持部71により螺入軸回りの回転が抑制されており、支持爪73b,74bにより下方への移動が抑制されているため、ナット80が支持爪73b,74bの上面に当接した状態で、雄ネジの螺入が進行する。
【0050】
雄ネジの先端が下段側の台座10’の保持部71’に保持されているナット80’に到達した場合、雄ネジの山の始点と雌ネジ81’の谷の始点が一致するまで、雄ネジは空回りする。すなわち、最大で約1回転、雄ネジが空回りする。このとき、上側の台座10のナット80の雌ネジ81には雄ネジが螺入される。上側の台座10と下側の台座10’との相対的位置が変化しなければ、上側の台座80に対するナット80の相対的な位置が変化するため、雄ネジの螺入に伴い、図18に示すように、ナット80が保持部71内を上方へと移動する。この移動は、雄ネジの山の始点と雌ネジ81’の谷の始点が一致するまで行われる。
【0051】
雄ネジの山の始点と雌ネジ81’の谷の始点が一致すれば、雄ネジの雌ネジ81’への螺入が開始される。これにより、上段側のナット80と下段側のナット80’との相対位置が維持された状態で、雄ネジの螺入が進行する。雄ネジを必要なぶんだけ螺入した後は、上段側の台座10の上面71から、雄ネジに対して別のナットをねじ込んでもよい。これにより、その別のナットと下段側のナット80’とにより、台座10,10’を挟持して固定することができる。また、ボルトを利用して、台座10と支持対象とを連結固定してもよい。なお、以上のようにして台座10,10’はボルトとナット80,80’とにより連結されるため、纏めて連結構造と称することができる。
【0052】
上記構成により、本実施形態に係るナット保持部材である台座10及び、その台座10を備える連結構造は、以下の効果を奏する。
【0053】
・保持部71にナット80が移動可能な空隙が設けられているため、上段側のナット80が下段側のナット80’から相対的に離間した場合でも上段側のナット80がその空隙を移動するため、台座10,10’どうしの離間を抑制することができる。加えて、その空隙の高さSをナット80の雌ネジ81の1ピッチ以上としているため、ボルトが約1回転した場合でもナット80は保持部71内で移動することができ、台座10,10’どうしの離間をより好適に抑制することができる。
【0054】
・ナット80,80’へボルトを螺入する際に、上段側のナット80は保持部71内を上方へと移動した場合、ナット80の下面が支持爪73b,74bから離間する。この場合には、台座10,10’どうしが、最大でナット80の雌ネジ81の1ピッチ分だけ離間する可能性を意味する。本実施形態では、各凹部27,37,47,57に嵌まり込む正面側凸部25及び背面側凸部35の高さを、ナット80の雌ネジ81の1ピッチ分よりも高くしているため、ボルトが1回転の空回りをして台座10,10’どうしが離間した場合でも、凸部25,35は凹部27,37,47,57が嵌まり込んだ状態を維持することができる。
【0055】
・台座10,10’の外面の形状と内面の形状とを、略相似形としているため、台座10,10’の向きを一致させて積み重ねる場合に、位置のずれを抑制することができる。
【0056】
・台座10,10’の向きを異ならせて積み重ねる場合に、下側の台座10’の正面側凸部25’が上側の台座10の右側面凹部47に嵌まり込み、下側の台座10’の背面側凸部35’が上側の台座10の左側面凹部57に嵌まり込むため、上側の台座10と下側の台座10’との位置のずれを抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態に係る台座10は、副次的な効果として、以下の効果を奏する。
【0058】
・同一形状の台座10を上下方向に積み重ねることで異なる高さを形成することができるため、異なる形状の台座や、台座以外の部材を用意することなく、複数の高さを設けることができる。
【0059】
・上側の台座10のナット80の雌ネジ81の螺着軸と、下側の台座10’のナット80’の雌ネジ81’の螺着軸とが同一直線状に位置するため、いずれの向きにおいてもボルトにより2つの台座10,10’を連結することができ、2つの台座10,10 ’をより確実に固定することができる。
【0060】
・台座10’の外径を四角錐台形とすることにより、2つの向きにおいて対向する2箇所の支承部22’,32’,42’,52’で支持可能であるため、より安定した支持を可能とすることができる。
【0061】
・ナット80を保持部71から取り外し可能としているため、台座10を単体で使用する場合や、雌ネジ81を利用した連結が必要でない場合などに、ナット80を取り外すことができる。
【0062】
<変形例>
・実施形態においてナット保持部材として機能する台座10について説明したが、ナットとボルトとを用いて重ね合わせて連結する必要があるものであれば、台座10以外の様々なものに適用することができる。
【0063】
・実施形態では、上下段の両方の台座10,10’がナット80,80’を保持するものとしたが、少なくとも、ボルトの螺入方向手前側(実施形態では上段側)の台座10がナット80を保持部71により保持し、その保持部71にナット80が上下方向に移動可能な空隙を設けるものとしてもよい。この場合には、ボルトの螺入方向奥側(実施形態では下段側)の台座10’に雌ネジが形成されていれば、実施形態と同等の効果を得ることができる。また、3つ以上の台座10を重ね合わせて連結する場合には、ボルトの螺入方向の最奥側の台座10以外の台座10が、ナット80を保持部71により保持し、且つ、その保持部71にナット80の移動空間が設けられていればよい。
【0064】
・実施形態では、台座10,10’どうしの向きを一致させた場合、及び、異ならせた場合のいずれにおいても、下段側の台座10’の一部が上段側の台座の中空部内に入るものとした。この点、向きが異なる場合において、下段側の台座10’が上段側の台座10の中空部内に入り込まず、上段側の台座10の上面61に載置されるものとしてもよい。
【0065】
・実施形態では、台座10の外径を四角錐台状としたが他の多角錐台状としてもよい。この場合に、奇数角錐台状としてもよいが、偶数角錐台状とし、対向する一対の面の支承部により上段側の台座を支持するようにすれば、いずれの面の組み合わせにおいても2箇所で支持することができ、積み重ね時の安定性を向上させることができる。
【0066】
・実施形態では、支承部22,32,42,52がフランジ26,36,46,56の下面を支持するものとしたが、中空部内に段差等を設け、支承部22,32,42,52がその段差等を支持するものとしてもよい。
【0067】
・実施形態では、支承部22,32,42,52を水平な段差として設けるものとしているが、傾斜面としてもよく、この場合には、支承部により支持される部分を支承部の形状に対応したものとすればよい。
【0068】
・支承部22,32,42,52は必須の構成ではなく、下段側の台座の各面が上段側の台座の中空部内に当接することで、上段側の台座を支持するものとしてもよい。
【0069】
・実施形態では、ナット80を保持部71に取り外し可能に取り付けるものとしたが、取り外しができないように封入するものとしてもよい。
【0070】
・実施形態では、保持部71におけるナット80が移動可能な空隙の高さを、ナット80の雌ネジ81の1ピッチ以上としたが、1ピッチよりも低くてもよい。この場合においても、ボルトの空回り時におけるナット80の移動を一定程度抑制することができる。
【0071】
・凸部25,35及び凹部27,37,47,57は必ずしも必要な構成ではない。保持部71にナット80が移動可能な空隙が設けられていれば、ナット80,80’どうしが離間したとしても、台座10,10’の離間を抑制することができる。なお、凸部25,35及び凹部27,37,47,57を設けない場合には、上下段の台座10,10’の向きを異ならせて積み上げる場合に上段の台座10が下段の台座10’の前後方向にスライドする可能性がある。これを防ぐことが可能な部位を、台座10,10’の外面、又は、内面に設けてもよい。
【0072】
・実施形態では、ナット80の形状を正六角形としたが、ナット80の形状は四角形等の他の多角形であってもよい。この場合には、保持部71の形状を変更すればよい。
【0073】
・実施形態では、台座10を金属又は硬質の樹脂により一体成型するものとしたが、複数の部材を組み合わせて構成するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0074】
台座…10、正面側凸部…25、正面側凹部27、背面側凸部…35、背面側凹部37、右側面凸部…45、右側面凹部47、右側面凸部…55、右側面凹部57、保持部…71,ナット…80,雌ネジ…81
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
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図15
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図17
図18