(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】インプリント方法、インプリント装置および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240207BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
(21)【出願番号】P 2020081502
(22)【出願日】2020-05-01
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関口 浩之
(72)【発明者】
【氏名】小林 謙一
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-058735(JP,A)
【文献】特開2018-182300(JP,A)
【文献】特開2019-021749(JP,A)
【文献】特開2019-067918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型を用いて基板のショット領域の上のインプリント材を成形するインプリント方法であって、
前記インプリント材と前記型のパターン領域とが接触した状態で前記ショット領域と前記型とのアライメントを行うアライメント工程と、
前記アライメント工程の後に、前記インプリント材に硬化光を照射することによって前記インプリント材を硬化させる硬化工程と、を含み、
前記アライメント工程は、前記ショット領域を変形させるための変形光が前記インプリント材を通して前記基板に照射される期間と前記インプリント材の粘度を高めるための重合光が前記インプリント材に照射される期間とが互いに重複する重複期間を含むように制御され、
前記インプリント材に照射される前記重合光
の光量は、前記重複期間に前記インプリント材に照射される前記変形光
の光量に応じて制御される、
ことを特徴とするインプリント方法。
【請求項2】
前記
重合光と前記変形光とは波長帯域が互いに異なる、
ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント方法。
【請求項3】
前記インプリント材の粘度は、前記変形光および前記重合光の双方が前記インプリント材に照射された場合、前記変形光および前記重合光のうち前記変形光のみが前記インプリント材に照射された場合よりも高くなる、
ことを特徴とする請求項2に記載のインプリント方法。
【請求項4】
前記変形光は、前記変形光および前記重合光のうち前記変形光のみが前記インプリント材に照射された場合において、前記インプリント材に光重合反応を起こさせない波長帯域を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載のインプリント方法。
【請求項5】
前記基板に対する前記変形光の照射を制御するための変形制御情報を生成する第1生成工程と、
前記変形制御情報に基づいて、前記インプリント材に対する前記重合光の照射を制御するための重合制御情報を生成する第2生成工程と、
を更に含むことを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1項に記載のインプリント方法。
【請求項6】
前記第2生成工程では、
前記インプリント材に対する前記重合光の照射によって前記インプリント材の粘度が目標粘度に達するように、前記変形制御情報に基づい
て前記重合制御情報を生成する、
ことを特徴とする請求項
5に記載のインプリント方法。
【請求項7】
前記重複期間に前記インプリント材に照射される前記重合光の照度は、前記変形制御情報に従う、
ことを特徴とする請求項
5又は6に記載のインプリント方法。
【請求項8】
前記重複期間は、前記変形制御情報に従う、
ことを特徴とする請求項
5乃至7のいずれか1項に記載のインプリント方法。
【請求項9】
前記第2生成工程では、前記重複期間に前記ショット領域に照射される前記変形光の光量を前記ショット領域において平均した値に基づいて前記重合制御情報を生成することを特徴とする請求項
5に記載のインプリント方法。
【請求項10】
前記変形制御情報は、前記変形光の照度分布、照射面積および照射時間の少なくとも1つを示す情報を含む、
ことを特徴とする請求項
5乃至8のいずれか1項に記載のインプリント方法。
【請求項11】
前記変形制御情報は、前記ショット領域と前記パターン領域とのアライメント誤差が目標精度に収まるように前記ショット領域の形状を制御するための情報であり、
前記重合制御情報は、前記インプリント材の粘度が目標粘度に達するように前記重合光の照射を制御する情報である、
ことを特徴とする請求項
5乃至10のいずれか1項に記載のインプリント方法。
【請求項12】
型を用いて基板のショット領域の上のインプリント材を成形するインプリント方法であって、
前記インプリント材と前記型のパターン領域とが接触した状態で前記ショット領域と前記型とのアライメントを行うアライメント工程と、
前記アライメント工程の後に、前記インプリント材に硬化光を照射することによって前記インプリント材を硬化させる硬化工程と、を含み、
前記アライメント工程は、前記ショット領域を変形させるための変形光が前記インプリント材を通して前記基板に照射される期間と前記インプリント材の粘度を高めるための重合光が前記インプリント材に照射される期間とが互いに重複する重複期間を含むように制御され、
前記インプリント材に照射される前記重合光は、前記重複期間に前記インプリント材に照射される前記変形光に応じて制御され
、
前記インプリント方法は、
前記基板に対する前記変形光の照射を制御するための変形制御情報を生成する第1生成工程と、
前記変形制御情報に基づいて、前記インプリント材に対する前記重合光の照射を制御するための重合制御情報を生成する第2生成工程と、を更に含み、
前記第2生成工程では、前記重複期間に前記ショット領域に照射される前記変形光の光量を前記ショット領域において平均した値に基づいて前記重合制御情報を生成する、
ことを特徴とするインプリント方法。
【請求項13】
基板のショット領域の上のインプリント材と型のパターン領域とを接触させ、前記ショット領域と前記パターン領域とのアライメントを行い、前記インプリント材に硬化光を照射することによって前記インプリント材を硬化させるインプリント装置であって、
前記アライメントにおいて、前記ショット領域を変形させるための変形光が前記インプリント材を通して前記基板に照射される期間と前記インプリント材の粘度を高めるための重合光が前記インプリント材に照射される期間とが互いに重複する重複期間を含むように、前記基板に対する前記変形光の照射および前記インプリント材に対する前記重合光の照射を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記重複期間に前記インプリント材に照射される前記変形光
の光量に応じて前記インプリント材に対する前記重合光
の光量の照射を制御する、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項14】
前記重合光と前記変形光とは波長帯域が互いに異なる、
ことを特徴とする請求項13に記載のインプリント装置。
【請求項15】
前記インプリント材の粘度は、前記変形光および前記重合光の双方が前記インプリント材に照射された場合、前記変形光および前記重合光のうち前記変形光のみが前記インプリント材に照射された場合よりも高くなる、
ことを特徴とする請求項14に記載のインプリント装置。
【請求項16】
前記変形光は、前記変形光および前記重合光のうち前記変形光のみが前記インプリント材に照射された場合において、前記インプリント材に光重合反応を起こさせない波長帯域を有する、
ことを特徴とする請求項15に記載のインプリント装置
。
【請求項17】
基板のショット領域の上のインプリント材と型のパターン領域とを接触させ、前記ショット領域と前記パターン領域とのアライメントを行い、前記インプリント材に硬化光を照射することによって前記インプリント材を硬化させるインプリント装置であって、
前記アライメントにおいて、前記ショット領域を変形させるための変形光が前記インプリント材を通して前記基板に照射される期間と前記インプリント材の粘度を高めるための重合光が前記インプリント材に照射される期間とが互いに重複する重複期間を含むように、前記基板に対する前記変形光の照射および前記インプリント材に対する前記重合光の照射を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記重複期間に前記インプリント材に照射される前記変形光に応じて前記インプリント材に対する前記重合光の照射を制御
し、
前記制御部は、
前記基板に対する前記変形光の照射を制御するための変形制御情報を生成する第1生成手段と、
前記変形制御情報に基づいて、前記インプリント材に対する前記重合光の照射を制御するための重合制御情報を生成する第2生成手段と、を含み、
前記第2生成手段では、前記重複期間に前記ショット領域に照射される前記変形光の光量を前記ショット領域において平均した値に基づいて前記重合制御情報を生成する、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項18】
請求項1乃至
12のいずれか1項に記載のインプリント方法に従って基板の上にパターンを形成する工程と、
前記工程において前記パターンが形成された基板の加工を行う工程と、
を含み、前記加工が行われた前記基板から物品を得ることを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント方法、インプリント装置および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インプリント材の粘弾性を高める光をインプリント材に照射する工程と、該光がインプリント材に照射された基板と型の位置合わせを行う工程と、インプリント材を硬化させる光を照射する工程とを含むインプリント方法が記載されている。特許文献2には、型のパターン領域を変形させる形状補正機構と、基板の基板側パターン領域を加熱して基板側パターン領域を変形させる加熱機構と、制御部とを備えるインプリント装置が記載されている。該制御部は、型のパターン領域と、基板側パターン領域との形状の差に関する情報に基づいて、型のパターン領域と基板側パターン領域との形状の差を低減するように、形状補正機構および加熱機構を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-058735号公報
【文献】特開2013-102132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板のショット領域と型のパターン領域との重ね合わせを高精度に行いつつスループットを高めるために、インプリント材を硬化させない波長帯の光を使ってショット領域を変形させるとともにアライメント時にインプリント材の粘度を高めることが有効である。しかし、ショット領域を変形させるための変形光とインプリント材の粘度を高めるための重合光とが同時にインプリント材に照射されると、重合光のみがインプリント材に照射される場合よりもインプリント材の粘度が高くなる現象が確認された。したがって、アライメントにおける変形光の照射条件と重合光の照射条件とを独立に定めると、インプリント材の粘度が目標粘度よりも高くなってしまい、重ね合わせ精度が低下したり、アライメントに要する時間が長くなりスループットが低下したりしうる。
【0005】
本発明は、重ね合わせ精度およびスループットの向上に有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの側面は、型を用いて基板のショット領域の上のインプリント材を成形するインプリント方法に係り、前記インプリント方法は、前記インプリント材と前記型のパターン領域とが接触した状態で前記ショット領域と前記型とのアライメントを行うアライメント工程と、前記アライメント工程の後に、前記インプリント材に硬化光を照射することによって前記インプリント材を硬化させる硬化工程と、を含み、前記アライメント工程は、前記ショット領域を変形させるための変形光が前記インプリント材を通して前記基板に照射される期間と前記インプリント材の粘度を高めるための重合光が前記インプリント材に照射される期間とが互いに重複する重複期間を含むように制御され、前記インプリント材に照射される前記重合光の光量は、前記重複期間に前記インプリント材に照射される前記変形光の光量に応じて制御される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、重ね合わせ精度およびスループットの向上に有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態のインプリント装置の構成を示す図。
【
図2】
図1のインプリント装置の露光部の構成を例示する図。
【
図3】実施形態のインプリントシーケンスを示す図。
【
図4】基板に対して照射される変形光の照度分布(光量分布)を例示する図。
【
図6】重合制御情報の生成方法を例示するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
図1には、実施形態のインプリント装置1の構成が模式的に示されている。インプリント装置1は、基板10のショット領域の上のインプリント材IMと型Mとを接触させ、該ショット領域と型Mとのアライメントを行い、インプリント材IMに硬化光を照射することによってインプリント材IMを硬化させうる。これにより、基板10のショット領域の上にインプリント材IMの硬化物からなるパターンが形成されうる。その後、インプリント装置1は、インプリント材IMの硬化物からなるパターンから型Mを分離しうる。インプリント装置1は、型Mを用いて基板10のショット領域の上のインプリント材IMを成形するインプリント方法を実施する装置として理解されてもよい。型Mは、モールド、テンプレートまたは原版とも呼ばれうる。インプリント装置1は、物品、例えば、半導体デバイスなどのデバイスの製造に使用されうる。
【0011】
インプリント装置1は、型Mを保持し駆動する型駆動機構3(インプリントヘッド)、基板10を保持し駆動する基板駆動機構4、基板10の上にインプリント材IMを供給する供給部5(ディスペンサ)を備えうる。また、インプリント装置1は、インプリント材IMの粘度を高め、または、インプリント材IMを硬化させる重合光108または硬化光109をインプリント材IMに照射する露光部2を備えうる。また、インプリント装置1は、基板10、インプリント材IMおよび型Mに照明光18を照射し、例えば、型Mとインプリント材IMとの接触状態、異物の有無を検査するための撮像を行う撮像部6を備えうる。また、インプリント装置1は、インプリント装置1の動作を制御する制御部7を備えうる。また、インプリント装置1は、型Mのアライメントマークおよび基板10のアライメントマークを検出する検出器12を備えうる。検出器12は、アライメントマークを照明するための検出光15をアライメントマークに照射するための照明(不図示)と、アライメントマークを撮像する撮像部(不図示)とを含みうる。
【0012】
基板駆動機構4は、基板10を保持する基板チャック16と、基板チャック16を支持する基板ステージ17と、基板ステージ17を駆動する基板ステージ駆動部26とを含みうる。インプリント装置1は、基板ステージ17の位置を検出する検出システム24(例えば、干渉計、エンコーダ)を備えうる。基板10の位置は、検出システム24による検出結果に基づいて基板ステージ17の位置を制御することによって制御されうる。
【0013】
型駆動機構3は、型Mを保持するための型チャック11と、型チャック11を駆動する型チャック駆動部19(アクチュエータ)とを含みうる。型駆動機構3は、型Mのパターン領域PRを基板10のショット領域の上のインプリント材IMに接触させる接触動作、インプリント材IMを硬化させた後の離型動作を行いうる。型駆動機構3は、型Mの裏面側(パターン領域PRとは反対側)に密閉空間13を有することができる。型駆動機構3は、密閉空間13の圧力を制御することによってパターン領域PRの形状を制御する圧力制御部(不図示)を更に含みうる。接触動作および離型動作において、該圧力制御部は、密閉空間13の圧力を陽圧にすることによって型Mあるいはパターン領域PRを基板10に向かって凸形状に変形させうる。
【0014】
インプリント装置1は、照度分布形成部20を備えうる。照度分布形成部20は、インプリント材IMまたは基板10に照射される光の照度分布を制御するデバイス、例えば、DMD(Digital Mirror Device)を含みうる。照度分布形成部20は、基板10のショット領域を目標形状に変形させるように照度分布が制御された変形光107をインプリント材IMを通して基板10に照射しうる。変形光107の照射により、基板10には、変形光107の照度分布(光量分布)に応じた温度分布が形成され、これによって基板10のショット領域が変形しうる。また、照度分布形成部20は、インプリント材IMに目標粘度分布を持たせるように照度分布が制御された重合光106をインプリント材IMに照射しうる。ここで、変形光107と重合光106は、互いに異なる波長帯域の光でありうる。変形光107は、変形光107のみがインプリント材IMに照射された場合において、インプリント材IMに光重合反応を起こさせない波長帯域を有しうる。重合光106は、重合光106がインプリント材IMに照射された場合において、インプリント材IMに光重合反応を起こさせる波長帯域を有しうる。
【0015】
インプリント材IMに対する重合光106の照射は、基板10のショット領域の上のインプリント材IMと型Mのパターン領域PRとが接触した状態でなされる基板10のショット領域と型Mのパターン領域PRとのアライメントにおいてなされうる。インプリント材IMに対する重合光106の照射によって、インプリント材IMによる基板10と型Mとの結合強度が高まり、基板10と型Mとの間の相対的な振動が抑制されうる。これにより、基板10のショット領域と型Mのパターン領域PRとのアライメントに要する時間を短縮することができる。これは、スループットの向上に寄与しうる。
【0016】
一例において、照度分布形成部20は、制御部7からの指令に応じて、変形光107および重合光106の一方を選択的に基板10に向けて照射しうる。基板10のショット領域と型Mのパターン領域PRとのアライメントと並行して、基板10のショット領域と型Mのパターン領域PRとの間の空間へのインプリント材IMの充填およびパターン領域PRの凹部へのインプリント材IMの充填がなされうる。
【0017】
インプリント装置1は、インプリント材IMに光重合反応を起こさせる重合光108または硬化光109をインプリント材IMに照射する露光部2を備えうる。重合光108は、アライメント工程においてインプリント材IMに照射される光であり、硬化光109は、アライメント工程の後の硬化工程においてインプリント材IMに照射される光でありうる。重合光108と硬化光109の波長帯域は、互いに同じであってもよし、互いに異なってもよい。なお、重合光および硬化光は、いずれもインプリント材IMの重合度を増加させる露光光であるが、この明細書では、両者を区別するために、アライメント時に使用される露光光を重合光と呼び、アライメント後に使用される露光光を硬化光と呼ぶ。
【0018】
合成ミラー22は、照明光18と変形光107又は重合光106とを合成し、基板10に向けて照射する。ダイクロイックミラー23aは、照明光18、変形光107および重合光106を透過し、検出光15を反射する。ダイクロイックミラー23bは、ダイクロイックミラー23aからの光を透過し、重合光108および硬化光109を反射する。検出器12は、型Mのアライメントマークと基板10のアライメントマークとの相対位置を検出するために使用される。制御部7は、検出器12を使って検出される型Mのアライメントマークと基板10のアライメントマークとの相対位置(複数組)に基づいて、基板10のショット領域と型Mのパターン領域PRとのアライメント誤差を検出しうる。制御部7は、アライメント誤差に基づいて、基板駆動機構4および型駆動機構3の少なくとも一方を制御することによってアライメント誤差を低減(すなわち、ショット領域とパターン領域PRとのアライメント)を行いうる。
【0019】
制御部7は、型駆動機構3、基板駆動機構4、供給部5、露光部2、検出器12、照度分布形成部20、撮像部6を制御するように構成されうる。制御部7は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Arrayの略。)などのPLD(Programmable Logic Deviceの略。)、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuitの略。)、又は、プログラムが組み込まれた汎用又は専用のコンピュータ、又は、これらの全部または一部の組み合わせによって構成されうる。
【0020】
インプリント材IMとしては、光の照射によって硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。該光は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される、赤外線、可視光線、紫外線などでありうる。光の照射によって硬化する硬化性組成物は、重合性化合物と光重合開始剤とを少なくとも含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。インプリント材IMは、スピンコーターやスリットコーターにより基板上に膜状に付与される。あるいは液体噴射ヘッドにより、液滴状、或いは複数の液滴が繋がってできた島状又は膜状となって基板10上に付与されてもよい。インプリント材14の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上、100mPa・s以下である。基板10は、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられ、必要に応じて、その表面に基板10とは別の材料からなる部材が形成されていてもよい。基板10は、例えば、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスなどでありうる。
【0021】
図2には、露光部2の構成例が示されている。露光部2は、例えば、光源83と、シャッタ機構81と、結像光学系84と、ハエの目レンズ85と、結像光学系86とを含みうる。光源83は、例えば、水銀ランプ等のランプ、または、レーザーまたはLED等の固体光源でありうる。シャッタ機構81は、シャッタ板811と、シャッタ板811を駆動するアクチュエータ819とを含みうる。アクチュエータ819は、例えば、シャッタ板811を回動するように構成されうるが、シャッタ板811を一軸方向に駆動(往復駆動)するように構成されてもよい。
【0022】
シャッタ板811が配置される面には、光源83の中間像が形成されうる。結像光学系84は、シャッタ板811が配置される面とハエの目レンズ85の入射面とを光学的に共役な位置関係にするように構成されうる。結像光学系86は、ハエの目レンズ85の入射面と基板10とを光学的に共役な位置関係にするように構成されうる。シャッタ板811は、駆動軸812を介してアクチュエータ819に接続され、アクチュエータ819によって回動されうる。
図2(b)中の点線は、光源83からの露光光9が入射する領域(光路)を示している。シャッタ板811は、光源83からの露光光9を遮断する遮断部813を有しうる。また、シャッタ板811は、ショット領域の上のインプリント材IMの全体のうちの一部の粘度を高めるように該一部に重合光108を照射(予備露光)するための第1通過部814を有しうる。この例では、第1通過部814を通過する露光光9が重合光108である。また、シャッタ板811は、ショット領域の上のインプリント材IMの全体に硬化光109を照射するための第2通過部815を有しうる。この例では、第2通過部815を通過する露光光9が硬化光109である。
図2(b)の例では、シャッタ板811は、2回対称の構造を有するが、他の構造を有してもよい。
【0023】
この例では、光源83からの露光光9を遮断しないことによって、アライメント後にインプリント材IMを硬化させるための硬化光109が生成される。また、光源83からの露光光9を部分的に遮断することによって、アライメント時にインプリント材IMの粘度を高めるための重合光108が生成される。しかし、硬化光を発生する光源と重合光を発生する光源とが別々に設けられてもよい。
【0024】
一例において、第1通過部814を通過する重合光108は、照度分布形成部20からの重合光106よりも強い強度を有しうる。これは、より短い時間でインプリント材IMに重合反応を起こさせ、粘度を高めるために有利である。一方で、インプリント材IMの粘度を高い精度で目標粘度に調整するためには、第1通過部814を通過する重合光108よりも強度が弱い照度分布形成部20からの重合光106が有利である。そのため、第1通過部814を通過する重合光108が先にインプリント材IMに照射され、その後に、照度分布形成部20からの重合光106がインプリント材IMに照射されうる。しかし、第1通過部814を通過する重合光108と照度分布形成部20からの重合光106との双方がインプリント材IMに照射される期間が存在してもよい。
【0025】
図8には、インプリントシーケンスにおけるインプリント材IMに対する光の照射の比較例が示されている。重合光(B)106および変形光107は、照度分布形成部20によって生成される。重合光(A)108および硬化光109は、露光部2によって生成される。インプリント材の硬化物からなるパターンを形成するインプリントシーケンスは、例えば、降下工程101、接触工程102、アライメント工程103、硬化工程104、分離工程105を含みうる。降下工程101では、制御部7は、型Mが所定高さまで降下するように型駆動機構3を動作させる。接触工程102では、制御部7は、型Mが更に降下してショット領域の上のインプリント材IMと型Mのパターン領域PRとが接触するように型駆動機構3を動作させる。インプリント材IMと型Mのパターン領域PRとの接触により、インプリント材IMの充填が開始される。インプリント材IMの充填は、基板10のショット領域と型Mのパターン領域PRとの間の空間へのインプリント材IMの充填およびパターン領域PRの凹部へのインプリント材IMの充填を含みうる。
【0026】
アライメント工程103では、制御部7は、基板10のショット領域と型Mのパターン領域PRとのアライメントを行う。アライメントは、ショット領域とパターン領域PRとの相対的な位置および回転誤差の低減、ならびに、ショット領域とパターン領域PRとの形状差の低減を含みうる。前者は、検出器12を使って検出されるアライメント誤差に基づいて、該アライメント誤差が低減されるように制御部7が基板駆動機構4および型駆動機構3の少なくとも一方を動作させることによってなされうる。後者は、ショット領域とパターン領域PRとの形状差が低減されるように、照度分布形成部20が発生する変形光107を制御部7が制御することによってなされうる。ショット領域とパターン領域PRとの形状差は、検出器12を使ってリアルタイムに計測されてもよいし、事前に計測されてもよい。
【0027】
硬化工程104では、制御部7は、インプリント材IMと型Mとが接触した状態でインプリント材IMに硬化光109が照射されるように露光部2を制御することによってインプリント材IMを硬化させる。分離工程105では、制御部7は、インプリント材IMの硬化物からなるパターンから型Mが分離されるように型駆動機構3を動作させる。
【0028】
アライメント工程103の開始後、制御部7は、インプリント材IMに重合光(A)108が照射されるように露光部2を動作させる。これにより、インプリント材IMは、その粘度が変化しやすい状態に変化しうる。その後、アライメント工程103において、制御部7は、インプリント材IMに重合光(B)106が照射されるように照度分布形成部20を動作させる。これにより、インプリント材IMの粘度が目標粘度まで高められうる。その後、アライメント工程103において、制御部7は、インプリント材IMを介して基板10に変形光107が照射されるように照度分布形成部20を動作させる。これにより、基板10のショット領域が目標形状に変形されうる。その後、硬化工程104において、制御部7は、インプリント材IMに硬化光109が照射されるように露光部2を動作させる。これにより、インプリント材IMが硬化される。その後、分離工程105において、インプリント材IMの硬化物からなるパターンから型Mが分離される。
【0029】
図8において、アライメント波形は、基板10のショット領域と型Mのパターン領域PRとのアライメント誤差の一成分(例えば、XまたはY方向の偏差)を示している。照度分布形成部20によってインプリント材IMに重合光(B)106が照射されることによってインプリント材IMの粘度が高まり、それに応じてアライメント誤差が小さく変化している。その後、照度分布形成部20は、インプリント材IMに照射される光を重合光(B)106から変形光107に変更し、ショット領域が目標形状に変形されている。
【0030】
図3には、インプリントシーケンスにおけるインプリント材IMに対する光の照射の実施形態が示されている。
図3に示された実施形態は、特に言及しない限り比較例に従いうる。本実施形態では、アライメント工程103は、変形光107がインプリント材IMを通して基板10に照射される期間と重合光(A)108がインプリント材IMに照射される期間とが互いに重複する重複期間Tを含むように制御部7によって制御されうる。また、インプリント材IMに照射される重合光(A)108および重合光(B)106は、重複期間Tにインプリント材IMに照射される変形光107に応じて制御部7によって制御されうる。
【0031】
重複期間Tの存在は、照度分布形成部20によってインプリント材IMに変形光107が照射される期間の全部または一部が露光部2によってインプリント材IMに重合光(A)108が照射される期間の全部または一部と重複することを意味する。重複期間Tを設けることにより、アライメントに要する時間が短縮され、これは、スループットの向上をもたらしうる。照度分布形成部20は、インプリント材IMを介して基板10に変形光107を照射した後に重合光(B)106をインプリント材IMに照射してもよい。
【0032】
ここで、照度分布形成部20がインプリント材IMに照射する変形光107は、変形光107のみがインプリント材IMに照射されたときには、インプリント材IMの粘度(重合度)を変化させない。しかし、変形光107および重合光(A)108がインプリント材IMに照射された場合、重合光(A)108のみがインプリント材IMに照射された場合よりもインプリント材IMの粘度(重合度)が高くなることが実験により確認された。
【0033】
この理由を、変形光107の波長をX、重合光(A)108の波長をYとして説明する。インプリント材IMの光重合開始剤は、波長Xの変形光107の単独照射では光重合を開始できない。しかし、波長Yの重合光(A)108によって励起された状態の光重合開始剤が波長Xの光を吸収する特性を有すると、波長Xおよび波長Yを含む光の照射により、波長Xの変形光107の単独照射よりも、光重合の速度が速くなる。
【0034】
変形光107の照射によるインプリント材IMの粘度変化の促進は、アライメント時におけるショット領域とパターン領域との相対的な振動の収束に影響を与えうる。
図4には、基板10に対して照射される変形光107の照度分布(光量分布)が例示されている。ここで、各矩形は、ショット領域を示している。各ショット領域におけるアライメント誤差を最小化するために、変形光107の照度分布(光量分布)は、ショット領域ごとに決定されうる。ショット領域ごとの変形光107の照度分布(光量分布)は、ショット領域の形状に応じて決定されうる。各ショット領域の形状は、製造するデバイスの設計、製造プロセス等に依存しうる。
【0035】
前述のように、変形光107の照射によるインプリント材IMの粘度変化の促進は、アライメント時におけるショット領域とパターン領域との相対的な振動の収束に影響を与えうる。そこで、本実施形態では、制御部7は、重複期間Tにインプリント材IMに照射される変形光107に応じて、インプリント材IMに照射される重合光(A)108および重合光(B)106を制御するように構成されうる。このような制御は、ショット領域ごとに個別になされうる。すなわち、変形光107の制御は、ショット領域ごとに異なりうるし、それに応じて、重合光(A)108および重合光(B)106の制御も、ショット領域ごとに異なりうる。
【0036】
図5には、実施形態のパターン形成方法が示されている。工程S201では、基板10のショット領域と型Mのパターン領域との形状差が計測される。工程S201は、例えば、インプリント装置1によって基板10のショット領域の上に型Mを用いてパターン領域PRを転写し、該ショット領域と転写されたパターン領域との形状差とを重ね合わせ検査装置等によって計測することを含みうる。工程S201は、インプリント装置1において基板10のショット領域上のインプリント材IMに型Mのパターン領域PRを接触させ、検出器12を用いて型Mのアライメントマークと基板10のアライメントマークとの相対位置を検出することを含んでもよい。検出器12を用いる方法は、デバイス等の物品をインプリント装置1によって製造する際にアライメント工程において実施されてもよいし、物品の製造の前にテスト基板を用いて実施されてもよい。
【0037】
工程S202(第1生成工程)では、工程S201で得られた形状差に基づいて、変形光107を制御するための変形制御情報が生成される。変形制御情報は、変形光107の照度分布、照射面積および照射時間の少なくとも1つを示す情報を含みうる。変形制御情報は、ショット領域とパターン領域PRとのアライメント誤差が目標精度に収まるように該ショット領域の形状を制御するための情報でありうる。工程S202は、制御部7によって実行されてもよいし、インプリント装置1の外部のコンピュータ等によって実行されてもよい。工程S203(第2生成工程)では、工程S202で生成された変形制御情報に基づいて、インプリント材IMに対する重合光(A)108および重合光(B)106の照射を制御するための重合制御情報が生成される。工程S203は、制御部7によって実行されてもよいし、インプリント装置1の外部のコンピュータ等によって実行されてもよい。重合制御情報は、変形光107がインプリント材IMを通して基板10に照射される期間と重合光A(107)がインプリント材IMに照射される期間とが互いに重複する重複期間Tを含むように生成されうる。
【0038】
一例において、工程S203(第2生成工程)では、重複期間Tにショット領域に照射される変形光107の光量を該ショット領域において平均した値に基づいて重合制御情報が生成されうる。他の例において、工程S203(第2生成工程)では、重合光(A)108および重合光(B)106を制御するために予め設定された基準情報を変形制御情報に基づいて補正することによって重合制御情報が生成されうる。重複期間Tにインプリント材IMに照射される重合光(A)108の照度は、変形制御情報に従って決定されうる。重複期間Tは、変形制御情報に従って決定されうる。重合制御情報は、インプリント材IMの粘度が目標粘度に達するように重合光(A)108および重合光(B)106の照射を制御する情報でありうる。工程S204では、インプリント装置1において、
図3に示されるようなインプリントシーケンスが基板10の各ショット領域に対して実行され、これによって基板10の各ショット領域にインプリント材の硬化物からなるパターンが形成される。
【0039】
図6を参照しながら工程S203における重合制御情報の生成方法を例示的に説明する。ここでは、重合光(B)106の照射条件(例えば、照度分布、照射時間)を固定の条件とし、重合光(A)108の照射条件の一例としての照射時間(重複期間T)を決定する例を説明する。重合光(A)108の照射時間(重複期間T)は、当該重複期間Tにインプリント材IMに照射される変形光107(例えば、変形光107の光量J)に応じて決定されうる。これにより、重合光(A)108および重合光(B)106の照射後におけるインプリント材IMの粘度を複数のショット領域あるいは複数の基板10において一定にし、基板10の型Mとの相対的な振動の収束状態を安定させることができる。
【0040】
図6において、横軸は、ショット領域内における変形光107の光量Jの平均値を示し、縦軸は、重合光(A)108の照射時間(重複時間T)を示す。変形光107の照射がない場合、つまりJ=0の場合に最適な重合光(A)108の照射時間TをT0とする。変形光107の光量Jが増えるに従って、重合光(A)108によるインプリント材IMの粘度の変化(増加)が促進されるため、照射時間Tを減らす必要がある。また、変形光107の光量Jによるインプリント材14の粘度の変化は、光量J1までであり、それ以上の光量では粘度の変化は起きず、T=T1となる。これを式で表すと、式(1)のようになる。
【0041】
【0042】
係数αは、予め実験により決定しておくことができる。
【0043】
図4には、基板10の各ショット領域と型Mのパターン領域PRとの形状差を低減するように決定された変形光107の照度分布が例示されている。黒が濃いほど強い照度(光量)であることを示す。なお、光量は、照度を照射時間で積分した値であり、照度が一定であれば、光量は照度に比例する。
図4の照度分布(変形制御情報)基づいて、式(1)に従って重合光(A)108の照射時間(重複期間T)を計算した結果が
図7に示されている。変形光107の照度(光量)が低いショット領域ほど、重合光(A)108の照射時間が長くなる(結果として、重合光A、Bの照射時間も長くなる)ことが分かる。
【0044】
上記に例では、変形光107の照度(光量)に基づいて重合光(A)108の照射時間(重複期間T)が調整あるいは決定されるが、変形光107の照度(光量)に基づいて重合光(A)108の照度が調整あるいは決定されてもよい。また、重合光(A)108の照射時間および/または照度を調整する代わりに、重合光(B)106の照射時間および/または照度が調整されてもよい。また、重合光(B)106の照射は、必ずしも必要はない。
【0045】
また、上記の例では、変形光107の照度あるいは光量をショット領域において平均した値に基づいて重合制御情報を生成するが、変形光107の照度分布、照射面積および照射時間の少なくとも1つを示す情報に基づいて重合制御情報を生成することができる。例えば、ショット領域において、変形光107が当たっている部分の方が、変形光107が当たっていない部分よりも、インプリント材の粘度の変化が大きい。そこで、変形光107の照度分布において照度が高い部分は、重合光Aおよび/又は重合光Bの強度を弱くしうる。これにより、インプリント材の充填性をショット領域内で均一化することができる。
【0046】
基準となる照度分布を規定する基準変形制御情報に適合した重合光の照射条件を規定する基準重合制御情報を予め設定しておき、基準変形制御情報に対する変形制御情報の差分等に基づいて基準重合制御情報を補正することによって重合正制御情報を生成してもよい。
【0047】
以上のように、本実施形態によれば、変形光がインプリント材を通して基板に照射される期間と重合光がインプリント材に照射される期間とが互いに重複する重複期間を設けられる。また、インプリント材に照射される重合光は、重複期間にインプリント材に照射される変形光に応じて制御されうる。これにより、重ね合わせ精度およびスループットが向上しうる。
【0048】
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0049】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0050】
次に、インプリント装置によって基板にパターンを形成し、該パターンが形成された基板を処理し、該処理が行われた基板から物品を製造する物品製造方法について説明する。
図9(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0051】
図9(b)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。
図9(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを介して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0052】
図9(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0053】
図9(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。
図9(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0054】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0055】
1:インプリント装置、2:露光部、9:露光光(重合光、硬化光)、10:基板、20:照度分布形成部、211:変形光、212:重合光、M:型