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  • 特許-農作業機 図1
  • 特許-農作業機 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】農作業機
(51)【国際特許分類】
   A01B 63/16 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
A01B63/16
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020097821
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021185889
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000198330
【氏名又は名称】株式会社IHIアグリテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】森 素広
【審査官】小林 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-293633(JP,A)
【文献】特開2006-288296(JP,A)
【文献】特開平03-218201(JP,A)
【文献】特開2018-000021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 63/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源とコントロールボックスと入出力ユニットと監視部を備え、
前記電源は、電力を電力線を通じて各機器に送り、
前記コントロールボックスは、制御部と前記電力線の電圧を測定する電圧計測器を有し、
前記制御部は、前記機器に信号線を通じて制御信号を送り、
前記制御信号は、いずれかの機器を制御する制御情報を含むものであり、
前記入出力ユニットは、前記電力線の電流を測定する電流計測器を備え、
前記監視部は、前記制御信号に含まれる制御情報と前記電圧計測器で計測された電圧情報と前記電流計測器で計測された電流情報に基づき、故障または異常の候補を報知することを特徴とする農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、農作業機が故障した際、その状況下で故障機器を推定し、機器単体で動作確認を行い、消去法で原因を特定していた。
また、個別の機器に故障センサを設けることも特許文献1のように記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-113029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機に搭載される部品点数は多く、すべての機器に故障センサを取り付けることは簡単なことではなかった。
本発明は、簡単に多数の機器を監視できる手段の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、電源とコントロールボックスと入出力ユニットと監視部を備え、
前記電源は、電力を電力線を通じて各機器に送り、前記コントロールボックスは、制御部と前記電力線の電圧を測定する電圧計測器を有し、前記制御部は、前記機器に信号線を通じて制御信号を送り、前記制御信号は、いずれかの機器を制御する制御情報を含むものであり、前記入出力ユニットは、前記電力線の電流を測定する電流計測器を備え、前記監視部は、前記制御信号に含まれる制御情報と前記電圧計測器で計測された電圧情報と前記電流計測器で計測された電流情報に基づき、故障または異常の候補を報知することを特徴とする農作業機とすることで課題を解決した。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、電源からの電力供給の経路を、コントロールボックスまたはコントロールボックスと通信を行う入出力端子を介して機器に送るよう構成した上で、前記コントロールボックスまたは前記入出力端子の電圧または電流を監視する。これにより、簡単に多数の機器の監視ができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例の農作業機の全体図
図2】実施例の信号および電力の流れを説明する概念図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施例)
(全体構成)
図1は、実施例の農作業機9の概念図である。農作業機9は、作業機92であるラッピングマシンと、それをけん引するトラクタ91とからなる。トラクタ91には、電源1とコントロールボックス2が搭載されており、電源1から出力される電力は、コントロールボックス2を介し、入出力ユニット3を経由しないと機器4であるモータ41、コネクタ42、センサ44などへ送られないように構成されている。
実施例では回転テーブル130を回転させる機器4の例としてモータ41が示されている。また、機器4の別の例として回転テーブル130の位置を検出するセンサ44が示されている。これらは、ワイヤーハーネスにより入出力ユニット3と接続されている。
コントロールボックス2は、CAN(Controller Area Network)通信を行えるように構成されており、様々な機器4へ制御信号21と電力を送ることができる。コントロールボックス2からモータ41までは、信号線23と電力線24を複合したケーブルが延びている。
入出力ユニット3の例としては、国際標準(ISO 11783)に準拠したISOBUSコネクタがある。ISOBUSコネクタは、CAN通信を行う端子と、電力を送る端子が備えられており、各機器4へと制御信号21と駆動するための電力を送ることができるようになっている。実施例では、入出力ユニット3としてISBUSコネクタを採用している。
機器4としては、実施例ではモータ41、コネクタ42及びセンサ44を示したが、農作業機9に搭載された電力と関連するあらゆる機器4が含まれる。例えば、信号線23、電力線24、灯火(図示せず)など電力に関連するならばすべて機器4に含まれる。
【0009】
図2は、実施例の信号および電力の流れを説明する概念図である。電源1は、バッテリーであり、コントロールボックス2に接続されている。電源1から出力される電力は、コントロールボックス2を介さないと作業機92(ラッピングマシン)に搭載された機器4へ送られないように構成されている。コントロールボックス2内には、電圧計測器51が設けられており、機器4へ送られる電圧が計測され、計測された電圧情報62は、監視部6へと送られる。
【0010】
コントロールボックス2内に設けられた制御部25は、機器4を動作させるための制御信号21を出力し、入出力端子26から信号線23を通り、入出力ユニット3を経由して機器4(モータ41)へと送られる。
機器4(モータ41)は、作業機(ラッピングマシン)92に搭載された図示しない制御装置により制御信号21に従って駆動するように制御されている。機器4がセンサ44である場合は、制御信号21に従い測定情報65(測定データ)を含む返信信号22を出力して、制御部25へ送るようになっている。
【0011】
入出力ユニット3は、機器4へと送られる電力(電流)を電流計測器52により測定し、その電流情報63を含む通信信号33を制御部25へと送る。制御部25は通信信号33(電流情報63)を監視部6へと送る。
【0012】
(監視部)
前述したように、作業機92(ラッピングマシン)の機器4(モータ41)を駆動する電力は、すべてコントロールボックス2を介し入出力ユニット3を経由して送られる。そして、作業機92(ラッピングマシン)の機器4(モータ41)の駆動(作動)を制御する制御信号21も、コントロールボックス2から入出力ユニット3を経由して機器4(モータ41)へと届くようになっている。
以上のように構成したのは、電源1関連の情報をコントロールボックス2に配置した電圧計測器51の計測により調べるためである。電源1の異常に伴い電流も異常を示すので、まず、異常の原因が電源1にあるかを特定することが優先される。
入出力ユニット3は、作業機92(ラッピングマシン)に送られるすべての電力および制御信号21が通る関門となっている。入出力ユニット3の電流を電流計測器52で測定するということは、電力を必要とする作業機92(ラッピングマシン)に搭載された機器4の異常を検出できることを意味する。図示していないが、信号線23はワイヤーハーネスとなっており、コントロールボックス2を出てから入出力ユニット3に接続されるまで様々なトラクタ91に搭載された機器へと分岐している。コントロールボックス2内で電流を測定したとしても、トラクタ91に搭載した機器4の異常か作業機92(ラッピングマシン)に搭載した機器4の異常かを判別することができない。
入出力ユニット3に、電流計測器52を設けたのは、以上の理由による。
なお、実施例では、入出力ユニット3をトラクタ91と作業機92(ラッピングマシン)との間に設けられたISOBUSコネクタとしたが、例えば、トラクタ91に設けられたエンジンのスタータおよび作業機92(ラッピングマシン)の上流に入出力ユニット3を設けた場合は、トラクタに設けたエンジンのスタータも監視部6の監視対象に含まれるようになる。また、入出力ユニット3を、回転テーブル130のモータ41のすぐ上流に設ければ、当該モータ41を重点監視対象とすることもできる。入出力ユニット3の電流計測器52で監視される機器4の範囲は、適宜増減でき、作業機92(ラッピングマシン)に搭載された機器4に限られるものではない。
また、漏電のように、監視部6が監視する対象は機器4である必要もない。
【0013】
監視部6へと送られる情報は、
(1)コントロールボックス2から出力される電力の電圧情報62
(2)制御信号21によって機器4(センサ44)から返信信号22に含まれる測定情報65
(3)入出力ユニット3を通り機器4へ送られる電力の電流情報63
(4)制御信号21(制御情報64)
の4つである。
この内、制御情報64は、制御信号21により、どの機器4をどの程度動かすように指示を送ったのか等の情報を含むものである。
監視部6は、これらの情報からどの機器4に異常が起きている可能性が高いかを推測し、故障の候補を報知部61から報知する。報知部61はディスプレイで視覚的に報知してもよいし、ブザー音や、音声による報知でもよい。故障の候補をどのように報知するかは任意である。
実施例で、監視部6をコントロールボックス2内に設けたのは、コントロールボックス2が情報を集めるのに適しているからである。しかし、監視部6は、必ずコントロールボックス2内に設ける必要はなく、どこに設けてもよいことは言うまでもない。
ネットワークに接続して情報を送れば、監視部6を農作業機9の外部にも設けることさえ可能である。このようにした場合、メンテナンス会社が機器4の故障を知ることができ、いち早くメンテナンスに向かうことができる。また、部品交換の必要性を作業者に通知することもできる。
【0014】
(監視の具体例)
1.電源の異常
農作業機起動時に、電圧情報62が通常より低い電圧を検出したとき、電源1(バッテリー)が上がっている可能性や劣化が推測され、報知部61から故障の候補として電源1を候補として報知する。また、急激な電圧変動(過負荷または過放電)が起きたときにも候補として報知する。なお、故障原因も特定できるなら併せて報知してもよい。
【0015】
2.電力線の断線、コネクタ抜け
入出力ユニット3に設けた電流計測器52で検出される電流が検出されなかった場合に、電力線24の断線、コネクタ42抜けの可能性があると推測できる。
例えば、モータ41を駆動すべく制御信号21を送ると同時にモータ41に電力が送られる。このモータ41を駆動せよという制御情報64が出ているにもかかわらず適正な電流情報63が監視部6へと送られて来ない場合は、モータ41と入出力ユニット3の間に電力線24の断線やコネクタ42抜けがあると推測でき、これを故障の候補として報知することができる。複数のモータ41があっても、どのモータ41に制御信号21を送ったかという制御情報64と合わせることで、どこに断線、コネクタ42抜けがあるかおおよそ知ることができ、報知部61はこれを報知する。
【0016】
3.漏電
大きな電流値を入出力ユニット3に設けた電流計測器52で計測した場合、漏電またはモータ41などの比較的大きな電流を使う機器4に過負荷がかかっていると推測できる。
漏電かモータ41の過負荷の区別は、制御部25がモータ41に向けて駆動するような指令、すなわち、制御情報64を合せて分析すれば特定できる。制御信号21を送っていないにもかかわらず、入出力ユニット3で大きな電流値を計測した場合は、作業機92(ラッピングマシン)側で漏電が起きている可能性がある。また、モータ41へ制御信号21を送っているにもかわらず入出力ユニット3で電流がほとんど検出されない場合、トラクタ91側の漏電が考えられる。これらを、故障や異常の候補として報知部61から報知する。
【0017】
4.モータの異常
トラクタ91側であれ作業機92(ラッピングマシン)側であれ、モータ41に過負荷が生じると定格電流以上の電流が電源1から流れる。作業機92(ラッピングマシン)側に設けられた複数のモータ41のどれに故障または異常をきたしているかの判断基準は、モータ41毎に設定された定格電流とすることができる。制御情報64を分析し制御信号21を送ったモータ41の定格電流より大きな電流が流れているか否かを判別することで、より細かく故障や異常を判断できる。制御信号21を送ったモータ41こそが故障または異常を起こしている。
当該モータ41が故障または異常の候補として報知されることで、作業者は、一時的に停止するなどすることで、モータ41が過負荷により壊れることを防止することもできる。また、過負荷の原因が、異物がモータ41の回転を止めているような場合にも、故障または異常の候補として報知されたモータ41が分かれば対応できるようになる。
【0018】
5.センサの異常
センサ44に制御信号21を送り、測定データを要求したとき、センサ44が測定値を返信信号22に乗せて制御部25へ送り返してくる。ところが、返信信号22が送り返されない場合、センサ44に異常があると推測できる。
また、センサ44が常に同じ測定値を返信信号22に乗せて送り返してくる場合、センサ44の検出部が何らかの障害を起こしていることが推測される。
センサ44から測定データを要求した制御情報64と合わせればどのセンサに故障または異常が起きているか特定でき、当該センサ44を候補として報知する。
【0019】
以上に記載した故障または異常の候補の報知例は、一例にすぎず、これ以外にも本願発明に含まれることは言うまでもない。
【0020】
(始動時点検)
農作業機9の始動時に、故障検知シークエンス(機器4に順番に制御信号21を送り起動させる)に従い、順番に機器4を起動させて、点検を行うことができる。これにより、農作業を始める前に故障や異常を知ることができる。
【0021】
(農作業中)
モータ41に過負荷がかかっている場合、前述したように過負荷がかかっているモータが、故障の候補として報知される。報知を受けた作業者は、直ちに農作業機9を停止させることができる。これにより、機器4が過負荷により故障することを防止できる。
【0022】
以上、本発明に係る実施例そして他の態様を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施例や他の態様に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0023】
上記実施例や他の態様は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 電源

2 コントロールボックス
21 制御信号
22 返信信号
23 信号線
24 電力線
25 制御部
26 入出力端子

3 入出力ユニット
33 通信信号

4 機器
42 コネクタ
41 モータ
44 センサ

51 電圧計測器
52 電流計測器

6 監視部
61 報知部
62 電圧情報
63 電流情報
64 制御情報
65 測定情報

9 農作業機
91 トラクタ
92 作業機(ラッピングマシン)

130 回転テーブル
図1
図2