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  • 特許-壁面走行装置 図1
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  • 特許-壁面走行装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】壁面走行装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/16 20060101AFI20240207BHJP
   F16J 15/46 20060101ALI20240207BHJP
   B62D 57/02 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
F16J15/16 A
F16J15/46
B62D57/02 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020114266
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022012440
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 茂
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 政司
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 修
(72)【発明者】
【氏名】青木 将一
(72)【発明者】
【氏名】浦上 不可止
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-270860(JP,A)
【文献】特開2018-071262(JP,A)
【文献】特開2003-155470(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180100(WO,A1)
【文献】特開2000-072059(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0289757(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/16
F16J 15/46
B62D 57/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉壁に対向する開口部を有する真空チャンバーと、
前記真空チャンバーを前記炉壁に沿って移動させる駆動部と、
前記開口部の縁部から外側に広がるように配置された環状のシール部材と、
該シール部材を前記縁部側で前記真空チャンバーに固定する内側固定部、及び前記外側で前記真空チャンバーに固定する外側固定部と、
を備え、
前記シール部材は、
繊維シートと、
前記繊維シートの前記炉壁側に設けられたエラストマーからなる弾性層と、
を有し、
前記内側固定部は、前記外側固定部よりも前記炉壁側に位置している壁面走行装置。
【請求項2】
前記弾性層は、前記繊維シートよりも高い伸縮性を有する請求項1に記載の壁面走行装置。
【請求項3】
前記弾性層は、前記繊維シートよりも摩擦係数が小さく、かつ耐摩耗性が高い請求項1又は2に記載の壁面走行装置。
【請求項4】
前記シール部材における前記開口部に接する部分では、他の部分に比べて厚さが大きい請求項1から3のいずれか一項に記載の壁面走行装置。
【請求項5】
前記シール部材は、前記炉壁側に向かって撓んだ状態で取り付けられている請求項1から4のいずれか一項に記載の壁面走行装置。
【請求項6】
前記シール部材の内側の空間を加圧する加圧部をさらに備える請求項1から5のいずれか一項に記載の壁面走行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、壁面走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば石炭火力プラントのような火炉が用いられている。このような火炉の壁面(炉壁)には、経年使用に伴って種々の異物が付着する。この異物を除去するため、従来は炉壁に沿って足場を組んだ上で、この足場から炉壁に人力でブラスト材を吹き付けていた。一方、近年では、炉壁に沿って走行可能なロボットによってブラスト処理を行う例も提唱されている。
【0003】
例えば下記特許文献1には、可撓性を有するリング状のシール部材によって壁面との間に減圧空間を形成して、当該壁面に装置を吸着させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2836947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した火炉の壁面は平坦ではなく、円弧状の断面形状を有する凸部が間隔をあけて配列された凹凸形状をなしている。このため、上記特許文献1に記載されたシール部材は炉壁の凹凸に十分に追従できず、装置が炉壁から脱落する虞がある。また、シール部材の柔軟性を高めた場合には、炉壁に対する引きずり抵抗が過大となり、装置を円滑に移動させることに困難が生じてしまう。また、シール部材の耐摩耗性が不足する場合には、シール部材が破損し、短時間しか使用できない。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、炉壁に安定的に吸着した状態で円滑に走行することが可能な壁面走行装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る壁面走行装置は、炉壁に対向する開口部を有する真空チャンバーと、前記真空チャンバーを前記炉壁に沿って移動させる駆動部と、前記開口部の縁部から外側に広がるように配置された環状のシール部材と、該シール部材を前記縁部側で前記真空チャンバーに固定する内側固定部、及び前記外側で前記真空チャンバーに固定する外側固定部と、を備え、前記シール部材は、繊維シートと、前記繊維シートの前記炉壁側に設けられたエラストマーからなる弾性層と、を有し、前記内側固定部は、前記外側固定部よりも前記炉壁側に位置している
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、炉壁に安定的に吸着した状態で円滑に走行することが可能な壁面走行装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係る壁面走行装置の構成を示す平面図である。
図2図1のII-II線における断面図である。
図3図1のIII-III線における断面図である。
図4】本開示の実施形態に係るシール部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(壁面走行装置の構成)
以下、本開示の実施形態に係る壁面走行装置100について、図1から図4を参照して説明する。壁面走行装置100は、上下方向に延びる炉壁Wに沿って移動することで、ブラスト処理を含む各種の作業を行うための装置である。炉壁Wには、図1に示すように、上下方向に延びる複数の凹凸が形成されている。より具体的には図2に示すように、炉壁Wは火炉の幅方向に間隔をあけて配列された複数の円筒形面を有する壁管Aと、これら壁管A同士を接続する平坦状の接続部Bとによって構成されている。
【0011】
壁面走行装置100は、このような炉壁Wの表面に吸着した状態で、主として上下方向に移動することが可能とされている。以降の説明では、壁管Aが延びる方向を単に「上下方向」と呼ぶ。また、炉壁Wに沿ってこの上下方向に直交する方向を単に「幅方向」と呼ぶ。さらに、これら上下方向と幅方向とに直交する方向を単に「法線方向」と呼ぶ。
【0012】
(駆動部の構成)
図1及び図2に示すように、壁面走行装置100は、装置本体80と、駆動部10と、を備えている。駆動部10は、複数(4つ)の車輪10wと、これら車輪10wを回転駆動する動力源10mと、を有する。車輪10wは、平面視で矩形をなす装置本体80の4つの角部にそれぞれ1つずつ設けられている。各車輪10wは、装置本体80から幅方向に延びる回転軸Ax回りに回転可能である。動力源10mによって車輪10wを回転させることによって装置本体80に推進力が与えられる。
【0013】
(チャンバー形成部の構成)
図2及び図3に示すように、装置本体80は、チャンバー形成部30と、ゴム吸盤50と、フレーム60と、ブラスト部70と、シール部材Sと、を有する。チャンバー形成部30は、上下方向及び幅方向に広がる矩形板状をなしている。チャンバー形成部30の中央部には炉壁Wに向かって開口する開口部hが形成されている。開口部hは、法線方向から見て矩形をなしている。この開口部hを基準として炉壁Wから離間する側には、真空チャンバーChとしての空間が形成されている。つまり、チャンバー形成部30は、真空チャンバーChの外縁を形成している。
【0014】
(ゴム吸盤の構成)
真空チャンバーChの開口部hには、ゴム吸盤50が取り付けられている。ゴム吸盤50は、法線方向から見て円形の断面形状を有している。ゴム吸盤50は、開口部hから炉壁W側に向かうに従って次第に縮径している。ゴム吸盤50は例えばウレタンゴムで一体に形成されている。ゴム吸盤50の中央部には、吸盤開口部50hが形成されている。つまり、上述の真空チャンバーChは、この吸盤開口部50hと、開口部hとを通じて、炉壁Wの表面に連通している。
【0015】
(シール部材の構成)
シール部材Sは、ゴム吸盤50の炉壁W側の面に取り付けられている。シール部材Sは、吸盤開口部50h及び開口部hの縁部から広がる環状をなしている。詳しくは後述するが、シール部材Sはシート状をなすとともに、ゴム吸盤50に対して炉壁W側に向かって撓んだ状態で取り付けられている。シール部材Sは、吸盤開口部50hの周縁に設けられた内側固定部51と、ゴム吸盤50の外周側の端縁に設けられた外側固定部52とによって、ゴム吸盤50に対して固定されている。内側固定部51は、法線方向において、外側固定部52よりも炉壁W側に位置している。内側固定部51、及び外側固定部52としては、例えばボルトとナットのような締結構造が好適に用いられる。
【0016】
このシール部材Sによって、吸盤開口部50hの炉壁W側には、外周側(つまり、上下方向両側及び幅方向両側)から囲まれた空間が形成されている。この空間は、真空チャンバーChに連通している。真空チャンバーChに対して、掃気口E(図3参照)を通じてポンプによる真空引きを行うことで、上記のシール部材Sによって囲まれた空間は負圧となる(以下の説明では負圧空間Vnと呼ぶ。)。この負圧空間Vnが形成されることによって、装置本体80は炉壁Wに向かって吸着することが可能である。
【0017】
このシール部材Sとゴム吸盤50との間の空間Vs(つまり、シール部材Sの内側に形成される空間)には、加圧部40(図3参照)によって空気が供給される。これにより、空間Vsの圧力が高まり、シール部材Sは炉壁W側に向かって膨らむことが可能とされている。
【0018】
図4に示すように、シール部材Sは二層構造をなしている。シール部材Sは、繊維シートS1と、弾性層S2と、を有している。繊維シートS1は、装置本体80側の層であり、弾性層S2は、炉壁Wに摺接する側の層である。繊維シートS1としては、伸縮量が比較的に小さく、かつ引張強度が高い織布が用いられる。より具体的には、0.2mm程度の厚さを有するアラミド系織布が好適である。具体例として、帝国繊維株式会社製のケブラー織布KE3351が挙げられる。
【0019】
弾性層S2は、エラストマーからなる弾性変形可能な膜状をなしている。弾性層S2は、繊維シートS1よりも高い伸縮性を有する。また、弾性層S2は、繊維シートよりも摩擦係数が小さく、かつ耐摩耗性が高い。このような材料として、具体的には0.2mm程度の厚さ、硬度90程度、摩擦係数0.4~0.7を有するポリウレタンゴムが好適に用いられる。具体例として、日本マタイ株式会社製の熱可塑性ポリウレタンシート:エスマーURS(登録商標)が挙げられる。
【0020】
繊維シートS1と弾性層S2とは、互いに接着によって結合されている。又は、繊維シートS1の表面に弾性層S2をコーティングによって形成することも可能である。なお、繊維シートS1の弾性に異方性を持たせる場合には、幅方向の弾性変形量を相対的に大きくし、上下方向の弾性変形量を相対的に小さくすることが望ましい。
【0021】
(ブラスト部の構成)
図2又は図3に示すように、ブラスト部70は、チャンバー形成部30に取り付けられている。ブラスト部70は、開口部h、及び吸盤開口部50hを通じて炉壁Wに向かってブラスト材を噴射する。ブラスト材の噴射によって炉壁Wから剥離した異物は、上述の掃気口Eを通じて空気とともに負圧空間Vnから外部に導かれる。
【0022】
(作用効果)
次いで、本実施形態に係る壁面走行装置100の動作の一例について説明する。壁面走行装置100は、炉壁Wに吸着した状態で動作する。より具体的には、真空チャンバーChを通じてシール部材Sの内側の空間(上述の負圧空間Vn)を負圧状態とすることで、装置本体80が炉壁Wに吸着した状態となる。
【0023】
ここで、上述のようにシール部材Sの内側固定部51(つまり、吸盤開口部50h側の端縁)は、外側固定部52よりも炉壁W側に近接している。これにより、吸着の初期段階では、シール部材Sと炉壁Wとの間の隙間が小さくなる。その結果、真空チャンバーChによる吸引力が微弱な初期の段階から装置本体80を炉壁Wに安定的に吸着させることができる。一方で、吸引力が十分に高まった場合には、ゴム吸盤50が炉壁Wから法線方向に弾性変形することで、内側固定部51と炉壁Wとの間のクリアランスが確保される。
【0024】
この状態で、駆動部10(車輪10w)によって推進力を与えることで、装置本体80は主として上下方向に炉壁W上を移動する。移動に伴って、例えば上述のブラスト部70によるブラスト処理を炉壁Wに施す。
【0025】
ところで、上述したように、炉壁Wは平坦ではなく、円弧状の断面形状を有する凸部(壁管A)が間隔をあけて配列された凹凸形状をなしている。このため、従来は炉壁Wの凹凸にシール部材が十分に追従できず、装置本体80が炉壁Wから脱落する虞があった。また、炉壁Wへの追従性を求めてシール部材の柔軟性を過度に高めた場合には、炉壁Wに対する引きずり抵抗が過大となり、装置本体80を円滑に移動させることに困難があった。
【0026】
そこで、本実施形態では、シール部材Sが、繊維シートS1と弾性層S2とによって構成されている。繊維シートS1によってシール部材S全体としての引張強度が確保される。つまり、壁面走行装置100が炉壁Wを移動する際に、摩擦によってシール部材Sに生じる引張に対して十分に抗することができる。さらに、繊維シートS1は、柔軟性も一定程度有することから、シール部材Sの一部として炉壁Wの凹凸に追従することもできる。一方で、エラストマーからなる弾性層S2は、高い柔軟性と小さな摩擦係数を有する。これによって、シール部材Sを炉壁Wに十分に追従させることができる。さらに、摩擦抵抗が減少することでシール部材Sが炉壁Wの凹凸に引っ掛かる可能性を低減することができる。これにより、壁面走行装置100をさらに安定的にかつ円滑に運用することが可能となる。
【0027】
さらに、上記構成によれば、弾性層S2が繊維シートS1よりも高い伸縮性を有することから、シール部材Sに引っ張り応力が生じた場合には、弾性層S2が伸長することで、繊維シートS1によってその応力の大部分を負担することができる。言い換えると、弾性層S2には引っ張りによる負荷がかからないか、又はごく小さな負荷となる。これにより、シール部材Sをより長期にわたって安定的に使用することができる。
【0028】
加えて、上記構成によれば、弾性層S2は、繊維シートS1よりも小さな摩擦係数を有し、かつ高い耐摩耗性を有する。これにより、弾性層S2が炉壁Wに摺接する際に、表面の凹凸に引っ掛かってしまう可能性を低減することができる。また、炉壁Wとの連続的な摺接に耐え得ることから、さらに長期にわたってシール部材Sを使用することができる。
【0029】
また、上記構成によれば、シール部材Sが炉壁W側に向かって撓んだ状態で取り付けられている。このように撓んでいる分だけ、炉壁Wに対してシール部材Sが追従しやすくなる。その結果、壁面走行装置100をより安定的に炉壁に吸着させることができる。
【0030】
さらに加えて、上記構成によれば、シール部材Sの内側の空間Vsを加圧することで、当該シール部材Sは膨らむ。これにより、炉壁Wに対してシール部材Sがさらに追従しやすくなる。その結果、壁面走行装置100をさらに安定的に炉壁Wに吸着させることができる。
【0031】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、シール部材Sの厚さを、開口部h(吸盤開口部50h)を臨む部分(つまり、負圧空間Vnを形成する部分)では、他の部分に比べて大きくする構成を採ることも可能である。この構成によれば、ブラスト材が噴射される開口部hに接する部分では、ブラスト材が擦過することによる早期の摩耗や損耗を抑えることができる。これにより、さらに長期にわたってシール部材Sを使用することができる。また、ブラスト部ん70に代えて、例えばウォータージェットを噴射する装置や、レーザークリーニング装置を搭載することも可能である。
【0032】
<付記>
各実施形態に記載の壁面走行装置100は、例えば以下のように把握される。
【0033】
(1)第1の態様に係る壁面走行装置100は、炉壁Wに対向する開口部hを有する真空チャンバーChと、前記真空チャンバーChを前記炉壁Wに沿って移動させる駆動部10と、前記開口部hの縁部から外側に広がるように配置された環状のシール部材Sと、を備え、前記シール部材Sは、繊維シートS1と、前記繊維シートS1の前記炉壁W側に設けられたエラストマーからなる弾性層S2と、を有する。
【0034】
上記構成によれば、シール部材Sは繊維シートS1と弾性層S2とによって構成されている。繊維シートS1によってシール部材S全体としての引張強度が確保される。つまり、壁面走行装置100が炉壁Wを移動する際に、摩擦によってシール部材Sに生じる引張に対して十分に抗することができる。さらに、繊維シートS1は、柔軟性も一定程度有することから、シール部材Sの一部として炉壁Wの凹凸に追従することもできる。一方で、エラストマーからなる弾性層S2は、高い柔軟性と小さな摩擦係数を有する。これによって、シール部材S2を炉壁Wに十分に追従させることができる。さらに、摩擦抵抗が減少することでシール部材Sが炉壁Wの凹凸に引っ掛かる可能性を低減することができる。これにより、壁面走行装置100をさらに安定的にかつ円滑に運用することが可能となる。
【0035】
(2)第2の態様に係る壁面走行装置100では、前記弾性層S2は、前記繊維シートS1よりも高い伸縮性を有する。
【0036】
上記構成によれば、弾性層S2が繊維シートS1よりも高い伸縮性を有することから、シール部材Sに引っ張り応力が生じた場合には、弾性層S2が伸長することで、繊維シートS1によってその応力の大部分を負担することができる。言い換えると、弾性層S2には引っ張りによる負荷がかからないか、又はごく小さな負荷となる。これにより、シール部材Sをより長期にわたって安定的に使用することができる。
【0037】
(3)第3の態様に係る壁面走行装置100では、前記弾性層S2は、前記繊維シートS1よりも摩擦係数が小さく、かつ耐摩耗性が高い。
【0038】
上記構成によれば、弾性層S2は、繊維シートS1よりも小さな摩擦係数を有し、かつ高い耐摩耗性を有する。これにより、弾性層S2が炉壁Wに摺接する際に、表面の凹凸に引っ掛かってしまう可能性を低減することができる。また、炉壁Wとの連続的な摺接に耐え得ることから、さらに長期にわたってシール部材Sを使用することができる。
【0039】
(4)第4の態様に係る壁面走行装置100は、前記シール部材Sにおける前記開口部hに接する部分では、他の部分に比べて厚さが大きい。
【0040】
上記構成によれば、例えばブラスト材が噴射される開口部hに接する部分では、シール部材Sの厚さが他の部分よりも大きい。このため、当該部分にブラスト材が擦過することによる早期の摩耗や損耗を抑えることができる。これにより、さらに長期にわたってシール部材Sを使用することができる。
【0041】
(5)第5の態様に係る壁面走行装置100は、前記シール部材Sは、前記炉壁W側に向かって撓んだ状態で取り付けられている。
【0042】
上記構成によれば、シール部材Sが炉壁W側に向かって撓んだ状態で取り付けられている。このように撓んでいる分だけ、炉壁Wに対してシール部材Sが追従しやすくなる。その結果、壁面走行装置100をより安定的に炉壁に吸着させることができる。
【0043】
(6)第6の態様に係る壁面走行装置100は、前記シール部材Sの内側の空間Vsを加圧する加圧部40をさらに備える。
【0044】
上記構成によれば、シール部材Sの内側の空間Vsを加圧することで、当該シール部材Sは膨らむ。これにより、炉壁Wに対してシール部材Sがさらに追従しやすくなる。その結果、壁面走行装置100をさらに安定的に炉壁Wに吸着させることができる。
【符号の説明】
【0045】
100 壁面走行装置
10 駆動部
10m 動力源
10w 車輪
30 チャンバー形成部
40 加圧部
50 ゴム吸盤
51 内側固定部
52 外側固定部
50h 吸盤開口部
70 ブラスト部
A 壁管
Ax 回転軸
B 接続部
Ch 真空チャンバー
E 掃気口
h 開口部
S シール部材
S1 繊維シート
S2 弾性層
Vn 負圧空間
Vs 空間
W 炉壁
図1
図2
図3
図4