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特許7431694情報処理装置、膜形成装置、物品の製造方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】情報処理装置、膜形成装置、物品の製造方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240207BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020127639
(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公開番号】P2022024826
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 貴博
(72)【発明者】
【氏名】大口 雄一郎
【審査官】菅原 拓路
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-201146(JP,A)
【文献】特開2019-087732(JP,A)
【文献】特開2011-003616(JP,A)
【文献】特開2016-042501(JP,A)
【文献】特開2018-082175(JP,A)
【文献】特開2014-041081(JP,A)
【文献】特開2014-033050(JP,A)
【文献】特開2015-026671(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0173839(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/00
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性組成物を基板上または型上に供給し、前記基板と前記型との間の空間に前記硬化性組成物の膜を形成する処理において、前記硬化性組成物を撮影して得られた撮影画像を取得する取得部と、
前記処理における前記基板上での前記硬化性組成物の挙動の予測結果を示す予測画像を生成する生成部と、
前記撮影画像および前記予測画像を対比可能なように表示部に表示する表示制御部と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記撮影画像の変化と前記予測画像の変化とが同期するように、前記撮影画像および前記予測画像を前記表示部に表示する、ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記型と前記基板との距離を変更している間に経時的に前記硬化性組成物を撮影して得られた複数の撮影画像を取得し、
前記生成部は、前記距離が互いに異なる複数の条件の各々について前記硬化性組成物の挙動を予測することにより複数の予測画像を生成し、
前記表示制御部は、前記複数の撮影画像のうち前記表示部に表示する対象撮影画像と、前記複数の予測画像のうち前記表示部に表示する対象予測画像とを、前記距離が同期するように選択する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記対象撮影画像と前記距離が対応する予測画像を前記対象予測画像として前記複数の予測画像の中から選択する、ことを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記対象撮影画像における干渉縞に基づいて前記距離を求め、求めた前記距離に対応する予測画像を前記対象予測画像として前記複数の予測画像の中から選択する、ことを特徴とする請求項3又は4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記処理において経時的に前記硬化性組成物を撮影して得られた複数の撮影画像を取得し、
前記生成部は、前記処理における経時的な前記硬化性組成物の挙動を予測することにより複数の予測画像を生成し、
前記表示制御部は、前記複数の撮影画像のうち前記表示部に表示する対象撮影画像と、前記複数の予測画像のうち前記表示部に表示する対象予測画像とを、前記処理の経過時間が同期するように選択する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記取得部は、前記処理において、前記硬化性組成物への前記型の押印力の変化および前記型の形状を制御する圧力の変化に応じて前記硬化性組成物を撮影して得られた複数の撮影画像を取得し、
前記生成部は、前記処理における前記押印力および前記圧力の変化に応じて前記硬化性組成物の挙動を予測することにより複数の予測画像を生成し、
前記表示制御部は、前記複数の撮影画像のうち前記表示部に表示する対象撮影画像と、前記複数の予測画像のうち前記表示部に表示する対象予測画像とを、前記処理の前記押印力および前記圧力が同期するように選択する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記撮影画像および前記予測画像を、それらの寸法および回転の少なくとも一方を合わせて前記表示部に表示する、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記表示制御部は、前記基板における複数のショット領域のレイアウト情報を前記表示部に表示し、前記レイアウト情報における前記複数のショット領域の中から選択されたショット領域の前記撮影画像および前記予測画像を前記表示部に表示する、ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記表示制御部は、前記撮影画像および前記予測画像を前記表示部における同一画面に表示する、ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記表示制御部は、前記撮影画像および前記予測画像を互いに重ね合わせて前記表示部に表示する、ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記表示制御部は、前記撮影画像および前記予測画像を動画として前記表示部に表示する、ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記撮影画像は、前記処理中に前記型と前記基板との距離に応じて生じる干渉縞を撮影して得られた画像である、ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記予測画像は、前記処理中に前記型と前記基板との距離に応じて生じる干渉縞の予測結果を示す画像である、ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記予測画像は、前記処理中に前記硬化性組成物の内部に残存する気泡の分布の予測結果を示す画像である、ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項16】
前記予測画像は、前記気泡の位置、圧力、体積および気体分子数のうち少なくとも1つの情報を含む、ことを特徴とする請求項15に記載の情報処理装置。
【請求項17】
硬化性組成物を基板上または型上に供給し、前記基板と前記型との間の空間に前記硬化性組成物の膜を形成する処理を行う膜形成装置であって、
前記型と前記基板とを相対的に駆動する駆動部と、
前記基板と前記型との間の前記硬化性組成物を撮影する撮影部と、
前記処理を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の情報処理装置を含む、ことを特徴とする膜形成装置。
【請求項18】
請求項17に記載の膜形成装置を用いて前記基板上に前記硬化性組成物の膜を形成する形成工程と、
前記形成工程で前記硬化性組成物の膜が形成された前記基板を加工する加工工程と、
前記加工工程で加工された前記基板から物品を製造することを特徴とする物品の製造方法。
【請求項19】
請求項1乃至16のいずれか1項に記載の情報処理装置の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、膜形成装置、物品の製造方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性組成物を基板上または型上に供給し、基板と型との間の空間に硬化性組成物の膜を形成する膜形成装置が知られている。このような膜形成装置としては、インプリント装置および平坦化装置などが挙げられうる。インプリント装置では、パターンを有する型を用いることにより、基板上の硬化性組成物にパターンを転写することができる。また、平坦化装置では、平坦面を有する型を用いることにより、基板上の硬化性組成物を平坦化することができる。
【0003】
膜形成装置では、硬化性組成物を基板上または型上に供給し、基板と型との間の空間に硬化性組成物の膜を形成する処理における様々なパラメータ(条件)を最適化する必要があり、その最適化においてシミュレーション技術が活用されうる。特許文献1には、凹凸パターンにより規定されるパターン形成面における複数の液滴の濡れ拡がりおよび合一を予測するためのシミュレーション方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5599356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
膜形成装置により硬化性組成物の膜を形成する実際の処理では、シミュレーションで考慮しきれなかった事象が発生することがあり、当該事象を早急に把握して対処することが望まれる。また、硬化性組成物の膜の形成において当該事象が問題ないとされた場合には、シミュレーションの設定条件を修正(更新)することが望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、基板と型との間に硬化性組成物の膜を形成する処理においてシミュレーションで考慮しきれなかった事象の把握を容易にするために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての情報処理装置は、硬化性組成物を基板上または型上に供給し、前記基板と前記型との間の空間に前記硬化性組成物の膜を形成する処理において、前記硬化性組成物を撮影して得られた撮影画像を取得する取得部と、前記処理における前記基板上での前記硬化性組成物の挙動の予測結果を示す予測画像を生成する生成部と、前記撮影画像および前記予測画像を対比可能なように表示部に表示する表示制御部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、基板と型との間に硬化性組成物の膜を形成する処理においてシミュレーションで考慮しきれなかった事象の把握を容易にするために有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】膜形成装置と情報処理装置とを含むシステムの構成例を示す図
図2】干渉縞の発生原理を説明するための図
図3】膜形成処理(インプリント処理)を示すフローチャート
図4】型M、基板Sおよび硬化性組成物IMの状態の変化を示す図
図5】撮影画像および予測画像の表示例を示す図
図6】撮影画像および予測画像の表示例を示す図
図7】撮影画像および予測画像の表示例を示す図
図8】基板に段差が生じている場合の撮影画像および予測画像を示す図
図9】撮影画像および予測画像の表示制御方法を示すフローチャート
図10】撮影画像および予測画像の表示例を示す図
図11】撮影画像および予測画像の表示例を示す図
図12】撮影画像および予測画像の表示例を示す図
図13】膜形成処理で異常が発生した場合の撮影画像を説明するための図
図14】物品の製造方法の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
<第1実施形態>
本発明に係る第1実施形態について説明する。図1は、膜形成装置IMPと情報処理装置1とを含むシステムの構成例を示す図である。膜形成装置IMPは、基板Sの上に配置された硬化性組成物IMの複数の液滴と型M(モールド)とを接触させ、基板Sと型Mとの間の空間に硬化性組成物IMの膜を形成する処理(以下では、膜形成処理と呼ぶことがある)を実行する。膜形成装置IMPは、例えば、インプリント装置として構成されてもよいし、平坦化装置として構成されてもよい。ここで、基板Sと型Mとは相互に入れ替え可能であり、型Mの上に配置された硬化性組成物IMの複数の液滴と基板Sとを接触させ、型Mと基板Sとの間の空間に硬化性組成物IMの膜が形成されてもよい。したがって、包括的には、膜形成装置IMPは、第1部材の上に配置された硬化性組成物IMの複数の液滴と第2部材とを接触させ、第1部材と第2部材との間の空間に硬化性組成物IMの膜を形成する処理を実行する装置である。この場合、第1部材を基板Sとし、第2部材を型Mとしてもよいし、第1部材を型Mとし、第2部材を基板Sとしてもよい。
【0013】
インプリント装置は、パターンを有する型Mを用いて、基板Sの上の硬化性組成物IMに型Mのパターンを転写する装置である。インプリント装置では、凹凸パターンが設けられたパターン領域PRを有する型Mが使用されうる。インプリント装置では、基板Sの上の硬化性組成物IMと型Mのパターン領域PRとを接触させ、基板Sのパターンを形成すべき領域と型Mとの間の空間に硬化性組成物IMを充填させ、その後に、硬化性組成物IMが硬化されうる。これにより、基板Sの上の硬化性組成物IMに型Mのパターン領域PRのパターンが転写される。インプリント装置では、例えば、基板Sにおける複数のショット領域のそれぞれの上に硬化性組成物IMの硬化物からなるパターンが形成されうる。
【0014】
平坦化装置では、平坦面を有する型Mを用いて、基板Sの上の硬化性組成物IMと該平坦面とを接触させ硬化性組成物IMを硬化させることによって平坦な上面を有する膜を基板上に形成する装置である。平坦化装置では、通常は、基板Sの全域をカバーしうる大きさを有する型Mが使用され、基板Sの全域に硬化性組成物IMの硬化物からなる膜が形成されうる。
【0015】
硬化性組成物IMとしては、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する材料が使用されうる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱等が用いられうる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、例えば、赤外線、可視光線、紫外線などでありうる。硬化性組成物IMは、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物でありうる。これらのうち、光の照射により硬化する光硬化性組成物IMは、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。硬化性組成物IMの粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下でありうる。基板Sの材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられうる。必要に応じて、基板Sの表面に、基板Sとは別の材料からなる部材が設けられてもよい。基板Sは、例えば、シリコンウェハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスである。
【0016】
本明細書および添付図面では、基板Sの表面に平行な方向をXY平面とするXYZ座標系において方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向とし、X軸周りの回転、Y軸周りの回転、Z軸周りの回転をそれぞれθX、θY、θZとする。X軸、Y軸、Z軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向に関する制御または駆動を意味する。また、θX軸、θY軸、θZ軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な軸の周りの回転、Y軸に平行な軸の周りの回転、Z軸に平行な軸の周りの回転に関する制御または駆動を意味する。また、位置は、X軸、Y軸、Z軸の座標に基づいて特定されうる情報であり、姿勢は、θX軸、θY軸、θZ軸の値で特定されうる情報である。位置決めは、位置および/または姿勢を制御することを意味する。
【0017】
膜形成装置IMPは、基板Sを保持する基板保持部SH、基板保持部SHを駆動することによって基板Sを駆動する基板駆動機構SD、および、基板駆動機構SDを支持する支持ベースSBを備えうる。また、膜形成装置IMPは、型Mを保持する型保持部MH、および、型保持部MHを駆動することによって型Mを駆動する型駆動機構MDを備えうる。基板駆動機構SDおよび型駆動機構MDは、基板Sと型Mとの相対位置が調整されるように基板SDと型MDとを相対的に駆動する相対駆動機構(駆動部)を構成しうる。当該相対駆動機構による相対位置の調整は、基板S上の硬化性組成物IMと型Mとの接触、および、硬化した硬化性組成物IMからの型Mの分離のための駆動を含みうる。また、該相対駆動機構による相対位置の調整は、基板Sと型Mとの位置合わせを含みうる。基板駆動機構SDは、基板Sを複数の軸(例えば、X軸、Y軸、θZ軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について駆動するように構成されうる。型駆動機構MDは、型Mを複数の軸(例えば、Z軸、θX軸、θY軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について駆動するように構成されうる。
【0018】
膜形成装置IMPは、基板Sと型Mとの間の空間に充填された硬化性組成物IMを硬化させるための硬化部CUを備えうる。硬化部CUは、例えば、型Mを介して硬化性組成物IMに硬化用のエネルギー(例えば紫外線)を照射し、これによって硬化性組成物IMを硬化させうる。膜形成装置IMPは、型Mの裏面側(基板Sに対面する面の反対側)に空間SPを形成するための透過部材TRを備えうる。透過部材TRは、硬化部CUからの硬化用のエネルギーを透過させる材料で構成され、これにより、硬化性組成物IMに対する硬化用のエネルギーの照射を可能にする。また、膜形成装置IMは、空間SPの圧力を制御することによって型MのZ軸方向への変形を制御する圧力制御部PCを備えうる。例えば、圧力制御部PCが空間SPの圧力を大気圧より高くすることによって、型Mは、基板Sに向けて凸形状に変形しうる。圧力制御部PCにより型Mの変形を制御しながら型Mと基板上の硬化性組成物IMとを接触させることにより、型Mと基板上の硬化性組成物IMとの接触面積を徐々に広げ、型Mと基板Sとの間の硬化性組成物IMに残存する気泡を低減することができる。
【0019】
膜形成装置IMは、膜形成処理において型Mおよび基板Sの少なくとも一方を撮影して撮影画像を得る撮影部CM(観察部)を備えうる。本実施形態の場合、撮影部CMは、例えば、光源と撮像素子とを含み、膜形成処理において型Mを介して基板上の硬化性組成物IMを経時的に撮影し、膜形成処理の状況を示す複数の撮影画像を得る。撮影部CMで得られた複数の撮影画像は、静止画または動画として、制御部CNTのメモリおよび/または情報処理装置1のメモリ20に記憶される。
【0020】
撮影部CMは、光源から射出された光(撮影光)を、型Mを介して基板S(ショット領域)に照射し、型Mのパターン領域PRで反射された光Lと基板Sの表面で反射された光Lとを撮像素子で検出する。図2(a)に示すように、圧力制御部PCにより凸形状に変形させた型Mのパターン領域PRを基板上の硬化性組成物IMに接触させる場合、型Mと基板Sとの間隔(ギャップ)がXY方向の位置に応じて異なる。この場合、パターン領域PRで反射された光Lと基板Sで反射された光Lとの光路長差がXY方向の位置に応じて異なるため、図2(b)に示すように、撮影部CMで得られた撮影画像51に干渉縞(所謂、ニュートンリング)が形成されうる。つまり、撮影部CMは、型Mと基板上の硬化性組成物IMとを接触させる処理において、型Mと基板Sとの距離に応じて生じる干渉縞の画像を撮影画像として得ることができる。なお、撮影部CMで用いられる光(撮影光)は、硬化性組成物IMを硬化させない波長であることが好ましい。
【0021】
膜形成装置IMPは、基板Sの上に硬化性組成物IMを配置、供給あるいは分配するためのディスペンサDSP(供給部)を備えうる。膜形成装置IMPには、他の装置によって硬化性組成物IMが配置された基板Sが供給されてもよく、この場合には、ディスペンサDSPは膜形成装置IMPに備えられていなくてもよい。膜形成装置IMPは、基板S(または基板Sのショット領域)と型Mとの位置合わせ誤差を計測するためのアライメントスコープASを備えてもよい。また、膜形成装置IMPは、膜形成装置IMPの各部を制御する制御部CNTを備えうる。制御部CNTは、例えばCPUやメモリなどを有するコンピュータによって構成されうる。制御部CNTは、後述する情報処理装置1(または、その機能)を含むように構成されてもよい。
【0022】
情報処理装置1は、例えば、汎用または専用のコンピュータにシミュレーションプログラム21を組み込むことによって構成されうる。あるいは、情報処理装置1は、FPGA(Field Programmable Gate Arrayの略。)などのPLD(Programmable Logic Deviceの略。)、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuitの略。)によって構成されうる。一例において、情報処理装置1は、プロセッサ10、メモリ20、表示部30(ディスプレイ)および入力部40(入力デバイス)を有するコンピュータによって構成され、メモリ20にシミュレーションプログラム21が格納されている。メモリ20は、半導体メモリであってもよいし、ハードディスク等のようなディスクであってもよいし、他の形態のメモリであってもよい。シミュレーションプログラム21は、コンピュータによって読み取り可能なメモリ媒体に格納されてもよいし、電気通信回線等の通信設備を介して情報処理装置1に提供されてよい。
【0023】
本実施形態のプロセッサ10は、CPU等によって構成され、取得部11と、生成部12と、表示制御部13とを含みうる。
取得部11は、膜形成処理において撮影部CMにより基板上の硬化性組成物IMを経時的に撮影して得られた複数の撮影画像(静止画、動画)を、膜形成装置IMPから取得して管理しうる。例えば、取得部11は、撮影部CMで得られた複数の撮影画像を、型Mと基板Sとの距離に関連付けてメモリ20に記憶させてもよい。型Mと基板Sとの距離としては、Z方向における型M(例えばパターン領域PR以外の箇所)と基板Sとの相対位置の計測結果が用いられてもよいし、Z方向における型保持部MHと基板保持部SHとの相対位置の計測結果が用いられてもよい。また、取得部11は、撮影部CMで取得された複数の撮影画像を、基板Sのショット領域ごとに(即ち、各ショット領域に関連付けて)、および/または、基板Sごとに(即ち、各基板に関連付けて)メモリ20に記憶させてもよい。ここで、取得部11は、撮影部CMで得られた複数の撮影画像を制御部CNTのメモリに記憶させてもよい。
【0024】
生成部12は、シミュレーションプログラム21に従って、膜形成処理における基板上での硬化性組成物IMの挙動を予測(シミュレーション)し、その予測結果を示す予測画像(計算画像)を生成する。例えば、生成部12は、型Mと基板上の硬化性組成物IMとを接触させる接触処理における当該硬化性組成物IMの挙動を予測し、膜形成処理中(接触処理中)に型Mと基板Sとの距離に応じて生じる干渉縞の予測結果を示す予測画像を生成しうる。また、生成部12は、膜形成処理中(接触処理中)に硬化性組成物IMの内部に残存する気泡の分布を示す予測画像を生成してもよい。生成部12は、気泡の分布を示す予測画像として、基板上における気泡の位置、圧力、体積および気体分子数のうち少なくとも1つの情報を含む画像を生成してもよい。
【0025】
表示制御部13は、取得部11で取得された撮影画像と生成部12で生成された予測画像との表示部30への表示を制御する。本実施形態の場合、表示制御部13は、撮影画像と予測画像とを対比可能なように表示部30に表示する。なお、本実施形態では、表示部30における1つのディスプレイ(1つの画面、同一画面)に撮影画像および予測画像を対比可能なように表示した例を説明する。しかしながら、それに限られず、例えば、表示部30が複数のディスプレイ(複数の画面)を有する場合には、表示制御部13は、撮影画像および予測画像を対比可能なように別々のディスプレイに表示してもよい。また、本実施形態では、表示部30を情報処理装置1の構成要素としているが、それに限られず、表示部30を情報処理装置1の外部装置として構成してもよい。この場合、表示制御部13は、撮影画像および予測画像を対比可能なように表示するための画面データを、外部装置としての表示部30に出力しうる。
【0026】
[膜形成処理]
次に、図3図4を参照しながら、膜形成処理について説明する。ここで、膜形成処理として、インプリント装置により基板上の硬化性組成物IM(インプリント材)に型Mのパターンを転写するインプリント処理を例示して説明する。図3は、インプリント処理を示すフローチャートであり、図4(a)~(f)は、インプリント処理における型M、基板Sおよび硬化性組成物IMの状態の変化を示す図である。インプリント処理は、図3に示すように、供給処理(S11)と、接触処理(S12)と、硬化処理(S13)と、離型処理(S14)とを含みうる。
【0027】
供給処理(S11)は、ディスペンサDSPに硬化性組成物IMを複数の液滴として吐出させ、基板S上に硬化性組成物IMを供給する処理である。例えば、図4(a)は、インプリント処理を開始する前の基板Sを示している。この基板SをディスペンサDSPの下方に移動させ、基板S上の所定の位置に硬化性組成物IMの液滴が供給されるように、基板SとディスペンサDSPとを相対的に移動させながらディスペンサDSPに硬化性組成物IMを複数の液滴として吐出させる。基板SとディスペンサDSPとの相対的な移動は、例えば基板駆動機構SDによって行われうる。これにより、図4(b)に示すように、硬化性組成物IMの液滴の配列を基板S上に形成することができる。なお、硬化性組成物IMは型M上に供給されてもよい。
【0028】
接触処理(S12)は、型Mと基板SとのZ方向の距離を狭めることにより、型Mと基板S上の硬化性組成物IMとを接触させる処理である。接触処理(S12)は、基板S上の硬化性組成物IMに型Mを押し付ける処理(押印処理)と言うこともでき、接触処理では、基板S上の刻課性組成物IMに型Mを押し付ける力(押印力)が変化しうる。例えば、図4(c)に示すように、圧力制御部PCにより型Mを凸形状に変形させた状態で型Mと基板SとのZ方向の距離を狭めていき、型Mと基板S上の硬化性組成物IMとの接触が開始したら、圧力制御部PCによる型Mの変形を徐々に解除していく。型Mと基板SとのZ方向の距離を狭める動作は、相対駆動機構(型駆動機構MDおよび/または基板駆動機構SD)によって行われうる。これにより、型Mと基板S上の硬化性組成物IMとの接触面積を中央部から周辺部に向けてXY方向に徐々に拡げ、硬化性組成物IMへの気泡の残存が低減するように型Mと基板S上の硬化性組成物IMとを接触させることができる。
【0029】
ここで、接触処理(S12)において撮影部MCで得られる撮影画像は、上述したように干渉縞を含む画像となる。この撮影画像は、型Mと基板SとのZ方向の距離に応じて、例えば干渉縞の寸法やピッチ、間隔が経時的に変化しうる。また、撮影部CMで用いられる光(撮影光)の波長は既知であるため、当該波長を用いて、撮影画像における干渉縞の寸法やピッチ、間隔から型Mのパターン領域PRの表面形状(例えば、パターン領域PRの高さ分布(Z位置分布))を推定することができる。つまり、撮影画像の干渉縞と撮影光の波長とに基づいて、型Mと基板SとのZ方向の間隔(例えば、当該間隔に関するXY方向の分布)を推定することができる。なお、接触処理の初期段階では、型Mと基板SとのZ方向の間隔が硬化性組成物IMの液滴の大きさ(一般に100μm以下)より大きい。この場合、撮影画像の干渉縞に基づいて算出されるZ方向の距離を、近似的に型Mと基板SとのZ方向の間隔とみなすことができる。また、接触処理が進むと、型Mと基板SとのZ方向の間隔が硬化性組成物IMの大きさ以下になる。この場合においても、硬化性組成物IMが撮影光を透過する材質であるため、撮影画像の干渉縞から算出されるZ方向の距離を、近似的に型Mと基板SとのZ方向の間隔とみなすことができる。
【0030】
硬化処理(S13)は、型Mと基板S上の硬化性組成物IMとが接触している状態で当該硬化性組成物IMを硬化させる処理である。例えば、図4(d)に示すように、型Mのパターン領域PRの全域が基板S上の硬化性組成物IMに接触している状態で硬化部CUにより硬化性組成物IMにエネルギーE(例えば紫外線)を照射することで、当該硬化性組成物IMを硬化させることができる。硬化処理は、接触処理により型Mのパターン領域PRの全域が基板S上の硬化性組成物IMに接触し、型Mに形成された凹凸パターンの凹部に硬化性組成物IMを充填させるための所定の時間が経過した後に実行されうる。
【0031】
離型処理(S14)は、型Mと基板SとのZ方向の距離を広げることにより、基板S上の硬化した硬化性組成物IMから型を剥離(分離)する処理である。例えば、離型処理では、図4(e)に示すように、圧力制御部PCにより型Mを凸形状に変形させながら型Mを硬化性組成物IMから剥離するとよい。これにより、基板S上の硬化した硬化性組成物IMから型Mを引き離すための力(離型力)を低減し、硬化性組成物IMに形成されたパターンの損壊を回避することができる。また、離型処理において型Mを凸形状に変形させながら型Mを硬化性組成物IMから剥離する場合、接触処理と同様に、撮影部CMで得られる撮影画像に干渉縞が観察されうる。このような上記の処理(S11~S14)を経ることにより、図4(f)に示すように、型Mのパターンに対応するパターンを、基板S上の硬化性組成物IMに形成することができる。
【0032】
[画像の表示例]
膜形成装置IMPは、膜形成処理(インプリント処理)において考慮されるべき装置特有のパラメータ(条件)を多く有している。装置特有のパラメータの一例としては、型Mを保持する力、型Mと基板Sとの相対傾き、型Mおよび基板Sの形状、基板S上に供給される硬化性組成物IMの液滴の量、液滴の数、基板S上の液滴の供給位置が挙げられる。また、装置特有のパラメータの一例として、型Mまたは基板Sを硬化性組成物IMと接触させるときの速度および力、硬化性組成物IMの周辺の雰囲気(気体の種類および圧力)、型Mのパターンに硬化性組成物IMを充填するための待機時間も挙げられる。さらに、装置特有のパラメータの一例として、硬化性組成物IMを硬化させる光照射条件(照度および照射時間)、硬化した硬化性組成物IMから型Mもしくは基板Sを剥離するときの速度および力も挙げられる。
【0033】
このような装置特有のパラメータの最適化では、実際に膜形成処理を行って試行錯誤を繰り返すことは煩雑であり長時間を費やしてしまうため、シミュレーション技術が活用されることが好ましい。シミュレーション技術を用いることにより、パラメータの最適化のために実際に膜形成処理を行って試行錯誤を繰り返すべきパラメータの範囲を狭める(絞り込む)ことができるため、パラメータの最適化に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0034】
本実施形態の場合、シミュレーション技術は、膜形成処理における基板S上での硬化性組成物IMの挙動を予測するものであり、情報処理装置1におけるプロセッサ10の生成部12で実行されうる。シミュレーション技術の一例としては、型Mへの硬化性組成物IMの充填過程をシミュレーション(予測)するための充填シミュレーションが挙げられる。充填シミュレーションとしては、例えば流体力学シミュレーションを用いてもよいし、流体潤滑近似等の近似手法を用いたシミュレーション手法でもよいが、これらに限らず硬化性組成物IMの流動が計算できるものであればよい。また、充填シミュレーションを使うことにより、生成部12は、型Mと基板SとのZ方向の距離を計算することができ、当該距離と撮影光の波長とに基づいて、当該距離に応じて生じる干渉縞の予測結果を示す画像(予測画像)を生成することができる。つまり、生成部12は、型Mと基板SとのZ方向の距離に応じて撮影部CMで得られると予測される画像を予測画像として生成することができる。
【0035】
ここで、シミュレーション技術(充填シミュレーション)は、外乱の少ない状態(予め設定した前提条件(設定条件))における予測結果を出力するものである。そのため、実際の膜形成処理の結果が、充填シミュレーションで得られた予測結果と異なる場合がある。つまり、実際の膜形成処理では、シミュレーションで考慮しきれなかった事象が発生する場合があり、この場合、当該事象を早急に把握して対処することが望まれる。また、膜形成処理において当該事象が問題ないとされた場合においても、シミュレーションの設定条件を修正(更新)することが望まれる。
【0036】
そこで、本実施形態の情報処理装置1では、取得部11が、膜形成処理において撮影部CMで得られた撮影画像を取得し、生成部12が、膜形成処理における基板S上での硬化性組成物IMの挙動の予測結果(シミュレーション結果)を示す予測画像を生成する。そして、表示制御部13が、取得部11で取得された撮影画像と生成部12で生成された予測画像とを対比可能なように表示部30(ディスプレイ)に表示する。このとき、表示制御部13は、撮影画像と予測画像とを、それらの寸法および回転の少なくとも一方を互いに合わせて(例えば一致させるように)表示部30に表示するとよい。例えば、型Mのパターン領域PRはメサ構造に設けられており、パターン領域PRの形状を認識しやすい。そのため、表示制御部13は、パターン領域PRの寸法および回転の少なくとも一方が一致するように撮影画像および予測画像を加工して表示部30に表示するとよい。また、表示制御部13は、撮影画像の変化と予測画像の変化とが同期するように、撮影画像および予測画像とを表示部30に表示するとよい。このように撮影画像および予測画像を対比可能なように表示部30に表示することにより、膜形成処理においてシミュレーションで考慮しきれなかった事象をユーザ(オペレータ)が容易に把握することができる。
【0037】
図5図6は、取得部11で取得された撮影画像51と、生成部12で生成された予測画像52とを、対比可能なように表示部30の表示画面DW(表示領域)に表示した例を示している。図5は、干渉縞を含む撮影画像51および予測画像52を、静止画として同一の表示画面DW(同一画面)に同時に表示した例を示している。図6は、干渉縞を含む撮影画像51および予測画像52を、動画として同一の表示画面DWに同時に表示した例を示している。動画としての撮影画像51および予測画像52は、膜形成処理における任意の期間に取得・生成された画像であってもよいが、一例として、供給処理の終了から離型処理の終了までの期間に取得・生成された画像でありうる。このように、撮影画像51と予測画像52とを対比可能なように表示部30(表示画面DW)に表示することで、膜形成処理におけるシミュレーションとの差(撮影画像51と予測画像52との差分)を容易に且つ迅速にユーザに把握させることができる。その結果、ユーザは、シミュレーションで考慮しきれなかった事象を早急に把握して対処することができる。
【0038】
図7は、干渉縞を含む撮影画像51と予測画像52とを互いに対して重ね合わせて同一の表示画面DWに表示した例を示している。図7において、実線が撮影画像51を示しており、破線が予測画像52を示している。図7に示す例では、図を見やすくするため、撮影画像51および予測画像52を、互いの位置をずらして表示画面DWに表示しているが、互いの位置を一致させて表示画面DWに表示してもよい。このように撮影画像51と予測画像52とを互いに重ね合わせて表示画面DWに表示することにより、撮影画像51と予測画像52との異なる部分が視覚的に把握しやすくなる。
【0039】
図5図7に示す表示画面DWには、撮影画像51および予測画像52のみが表示されているが、それらの画像以外に、膜形成装置IMPの操作パネルや情報処理装置1の操作パネルなどの情報が表示されてもよい。そして、当該情報が表示された表示画面DWを、ユーザインタフェースとして膜形成装置IMPのディスプレイに表示してもよい。さらに、撮影画像51および予測画像52を外部の表示装置(表示部)に表示してもよい。この場合、表示制御部13は、図5図7に示す表示画面DWを表示するためのデータを外部の表示装置に出力しうる。
【0040】
ここで、撮影画像51と予測画像52との間で差分が生じる例について説明する。図8は、基板Sに段差が生じている場合の撮影画像51および予測画像52を示している。図8では、基板S上に段差が生じている箇所(以下、段差箇所STと呼ぶことがある)を破線によって示しており、このような段差箇所STでは、撮影画像51および予測画像52の干渉縞に歪み(ずれ)が生じうる。図8(a)に示すように、撮影画像51と予測画像52とがほぼ一致している場合では、実際の膜形成処理において、シミュレーションでは考慮しきれなかった事象が生じていないと判断することができる。即ち、シミュレーションで用いた設計条件(目標条件)と同様の条件で膜形成処理が行われていると判断することができる。一方、図8(b)に示すように、干渉縞の歪みが予測画像52より撮影画像51の方が大きい場合、実際の膜形成処理において、シミュレーションで用いた設計条件(段差)よりも大きい段差が生じていると判断することができる。このような段差箇所STとしては、例えば、基板S上に供給された硬化性組成物IMの偏りや、基板S上に付着した異物(パーティクル)、前の処理において目標値を超えて基板Sに生じた段差などが挙げられうる。
【0041】
[画像の表示制御方法]
次に、表示制御部13による撮影画像51および予測画像52の表示制御方法について説明する。本実施形態の場合、表示制御部13は、撮影画像51および予測画像52を、膜形成処理における型Mと基板SとのZ方向の距離が同期するように表示部30の表示画面DWに表示しうる。即ち、表示制御部13は、膜形成処理における型Mと基板SとのZ方向の距離が対応するように撮影画像51および予測画像52を表示部30の表示画面DWに表示しうる。
【0042】
図9は、撮影画像51および予測画像52の表示制御方法を示すフローチャートである。図9に示すフローチャートは、表示制御部13によって実行されうる。また、図9に示すフローチャートは、撮影画像51および予測画像52を静止画で表示する場合と動画で表示する場合との双方で適用することができる。ここで、以下の説明では、図9に示すフローチャートの開始前において、取得部11は、膜形成処理(例えば接触処理)において経時的に硬化性組成物IMを撮影して得られた複数の撮影画像51を膜形成装置IMP(撮影部CM)から取得しているものとする。また、生成部12は、膜形成処理における型Mと基板SとのZ方向の距離が互いに異なる複数の条件(状態)の各々について硬化性組成物IMの挙動を予測することにより、複数の予測画像52を生成しているものとする。複数の撮影画像51および複数の予測画像52は、膜形成処理における型Mと基板SとのZ方向の距離データに関連付けてメモリ20に記憶されているものとする。以下では、型Mと基板SとのZ方向の距離データを、単に「距離データ」と呼ぶことがある。
【0043】
ステップS21では、表示制御部13は、取得部11により取得された複数の撮影画像51の中から、表示部30の表示画面DWに表示する対象撮影画像を選択する。例えば、表示制御部13は、入力部40を介してユーザにより指定された撮影画像51を対象撮影画像として選択してもよいし、膜形成装置IMP(撮影部CM)から送信されてきた撮影画像51を対象撮影画像として逐次選択してもよい。また、表示制御部13は、複数の撮影画像51を動画として表示画面DWに表示する場合、現時点で表示画面DWに表示されている撮影画像51の次に表示すべき撮影画像51を対象撮影画像として選択してもよい。
【0044】
ステップS22では、表示制御部13は、ステップS21で選択した対象撮影画像を得たとき(即ち、撮影部CMにより硬化性組成物IMを撮影したとき)における型Mと基板SとのZ方向の距離を特定する。例えば、複数の撮影画像51の各々が、撮影画像51を得たときの距離データと関連付けて記憶されている場合、表示制御部13は、その距離データに基づいて、対応撮影画像を得たときの距離を特定することができる。一方、複数の撮影画像51の各々が距離データと関連づけて記憶されていない場合には、表示制御部13は、対象撮影画像における干渉縞の寸法、ピッチおよび間隔の少なくとも1つに基づいて、対応撮影画像を得たときの距離を求める(特定する)ことができる。
【0045】
ステップS23では、表示制御部13は、生成部12により生成された複数の予測画像52の中から、表示部30の表示画面DWに表示する対象予測画像を選択する。例えば、上述したように、複数の予測画像52の各々は距離データと関連づけて記憶されている。そのため、表示制御部13は、ステップS22で特定された距離に対応する(例えば一致する)距離データを有する予測画像52を、複数の予測画像52の中から対象予測画像として選択することができる。ここで、複数の予測画像52の中に、ステップS22で特定した距離に対応する距離データを有する予測画像52が存在しない場合がある。この場合、表示制御部13は、ステップS22で特定された距離を含むように所定の範囲を設定し、当該範囲に収まる距離データを有する予測画像52を対象予測画像として選択してもよい。
【0046】
ステップS24では、表示制御部13は、ステップS21で選択された対象撮影画像と、ステップS23で選択された対象予測画像とを、対比可能なように表示部30の表示画面DWに表示する。例えば、表示制御部13は、例えば図5図7に示すように対象撮影画像および対象予測画像を表示部30の表示画面DWに表示しうる。
【0047】
ここで、本実施形態では、撮影画像51および予測画像52を、膜形成処理における型Mと基板SとのZ方向の距離を同期させて表示部30の表示画面DWに表示する例について説明した。しかしながら、それに限られるものではなく、表示制御部13は、膜形成処理(例えば接触処理)の開始からの経過時間が同期するように撮影画像51および予測画像52を表示部30の表示画面DWに表示してもよい。また、表示制御部13は、膜形成処理(例えば接触処理)における膜形成装置IMPの各種パラメータ(例えば、押印力および型Mの裏面の空間SPの圧力)が同期するように撮影画像51および予測画像52を表示部30の表示画面DWに表示してもよい。即ち、撮像画像における変化と予測画像における変化が対比可能なように同期して表示させるとよい。この場合、例えば、取得部11は、膜形成処理(例えば接触処理)において、押印力の変化および/または型Mの空間SPの圧力に応じて撮影部CMにより硬化性組成物IMを撮影して得られた複数の撮影画像を取得する。生成部12は、押印力および/または型Mの空間SPの圧力に応じた硬化性組成物IMの挙動を予測することにより複数の予測画像を生成する。そして、表示制御部13は、複数の撮影画像のうち表示部30に表示する対象撮影画像と、複数の撮影画像のうち表示部30に表示する対象予測画像とを、押印力および/または型Mの空間SPの圧力が同期するように選択する。なお、型Mの裏面の空間SPの圧力は、型Mの形状を制御する圧力と言うこともできる。
【0048】
上述したように、本実施形態における情報処理装置1の表示制御部13は、取得部11で取得された撮影画像51と生成部で生成された予測画像52とを対比可能なように表示部30に表示する。これにより、膜形成処理におけるシミュレーションとの差(撮影画像51と予測画像52との差分)を容易に且つ迅速にユーザに把握させることができる。また、膜形成処理の供給処理(S11)、接触処理(S12)、硬化処理(S13)および離型処理(S14)における各処理間での変化のタイミングや処理の異常をユーザに容易に把握させることができる。
【0049】
<第2実施形態>
本発明に係る第2実施形態について説明する。本実施形態では、撮影画像51と予測画像52とを対比可能なように表示部30の表示画面DWに表示する他の例について説明する。なお、本実施形態は、第1実施形態を基本的に引き継ぐものであり、以下で特に言及されない限り、膜形成装置IMPおよび情報処理装置1の構成・処理は第1実施形態と同様である。
【0050】
図10は、干渉縞を含む撮影画像51および予測画像52とともに、撮影画像51と予測画像52との差分を示す画像(差分画像53)を同一の表示画面DWに同時に表示した例を示している。例えば、プロセッサ(例えば表示制御部13)は、公知の画像処理により撮影画像51と予測画像52との差分を計算して差分画像53を生成し、当該差分画像53を、撮影画像51および予測画像52とともに表示部30の表示画面DWに表示しうる。これにより、ユーザごとの判断基準の曖昧さによらずに、膜形成処理におけるシミュレーションとの差を容易に且つ迅速にユーザに把握させることができる。また、自動で差分画像53を生成することにより、より効率的に装置特有のパラメータの最適化を実施することができる。
【0051】
図11は、基板Sにおける複数のショット領域のレイアウト情報を示す画像(以下では、レイアウト画像54と呼ぶことがある)を表示画面DWに表示した例を示している。例えば、撮影画像51および予測画像52は、基板Sにおける複数のショット領域の各々に関連付けてメモリ20に記憶されうる。表示制御部13は、レイアウト画像54を表示部30の表示画面DWに表示し、レイアウト画像54に示される複数のショット領域のうち、入力部40を介してユーザにより選択されたショット領域の撮影画像51および予測画像52を表示画面DWに表示する。表示制御部13は、図11に示すように、撮影画像51と予測画像52との差分を示す差分画像53を表示画面DWに表示してもよい。これにより、ショット領域間での膜形成処理の違いや、ショット領域の位置に応じた膜形成処理の傾向などをユーザに把握させることができる。
【0052】
ここで、表示制御部13は、2以上のショット領域に関連付けて記憶された2以上の撮影画像51を同一の表示画面DWに同時に表示してもよい。また、表示制御部13は、2以上の膜形成装置IMPでそれぞれ取得された撮影画像51を同一の表示画面DWに同時に表示してもよいし、他の情報処理装置で生成された予測画像52を読み込んで表示画面DWに表示してもよい。
【0053】
<第3実施形態>
本発明に係る第3実施形態について説明する。本実施形態では、干渉縞の予測結果の代わりに、膜形成処理中に硬化性組成物の内部に残存する気泡の分布の予測結果を示す予測画像55を、撮影画像51と対比可能なように表示部30の表示画面DWに表示する例を説明する。なお、本実施形態は、第1実施形態を基本的に引き継ぐものであり、以下で特に言及されない限り、膜形成装置IMPおよび情報処理装置1の構成・処理は第1実施形態と同様である。
【0054】
例えば、生成部12は、接触処理における硬化性組成物IMの挙動を予測(シミュレーション)し、膜形成処理中(接触処理中)に型Mと基板Sと間の硬化性組成物IMの内部に残存する気泡の分布の予測結果を示す予測画像55を生成する。また、生成部12は、充填シミュレーションにより、硬化性組成物IMの膜中に残存しうる気泡の位置、圧力および体積を計算することができるとともに、各気泡における圧力と体積との積に比例する量として気体分子数も計算することができる。つまり、気泡の分布の予測結果を示す予測画像55には、残存しうる気泡の位置、圧力、体積および気体分子数のうち少なくとも1つの情報が含まれてもよい。
【0055】
図12(a)は、接触処理中に型Mと基板Sとの間の硬化性組成物IMの内部に残存しうる気泡55aの位置の予測結果を示す予測画像55である。また、図12(b)は、図12(a)に示す予測画像55を、撮影部CMにより得られた干渉縞の撮影画像51に重ね合わせて表示部30の表示画面DWに表示した例を示している。接触処理では、硬化性組成物IMの膜の厚さを均一化すること、および、硬化性組成物IMの膜中に残存する気泡を低減することが求められうる。そのため、ユーザは、図12(b)に示すように撮影画像51と予測画像55とを含む表示画面DWを確認することにより、膜形成処理(接触処理)におけるどのような位置・タイミングで気泡が発生しているのかを容易に把握することができる。また、例えば基板Sに段差(凹凸)がある場合、段差が生じている箇所において撮影画像51の干渉縞が同心円形状から歪む。そのため、ユーザは、干渉縞が歪んでいる箇所に気泡55a(気泡欠陥)が発生しているか否かを、撮影画像51および予測画像55から把握することができる。干渉縞が歪んでいる箇所に気泡が発生している場合、ユーザは、基板Sの段差が平坦化(補償)されるように、供給処理における硬化性組成物IMの液滴の量および配置を調整するなどの対処を行うことができる。
【0056】
図12(c)は、気泡55aの位置および気体分子数の予測結果を示す予測画像55を、撮影部CMにより得られた干渉縞の撮影画像51に重ね合わせて表示部30の表示画面DWに表示した例を示している。図12(c)では、気泡55aの位置を表す丸印の大きさが気泡55aの気体分子数の大きさを表している。気泡55aの気体分子数の大きさは、丸印の大きさに限られず、色コンターやその他の方法で表してもよい。各気泡55aは、気体分子数が大きいほど、硬化性組成物IMの膜中に残存しやすい傾向となる。気体分子数の大きい気泡55aは、型Mのパターンへの硬化性組成物IMの充填時間を長くすることによって低減することができる。
【0057】
図12(d)は、気泡55aの位置および体積の予測結果を示す予測画像55を、撮影部CMにより得られた干渉縞の撮影画像51に重ね合わせて表示部30の表示画面DWに表示した例を示している。図12(c)では、気泡55aの位置を表す丸印の大きさが気泡55aの体積の大きさを表している。気泡55aの体積の大きさは、丸印の大きさに限られず、色コンターやその他の方法で表してもよい。各気泡55aは、体積が大きいほど、硬化性組成物IMの膜中に残存しやすい傾向となる。体積の大きい気泡55aは、接触処理において液滴間に気体の抜け道を形成することにより低減することができる。したがって、ユーザは、接触処理の後に気泡55aが残存していることを確認した場合、接触処理において液滴間に気体の抜け道が形成されるように、供給処理における硬化性組成物IMの液滴の配置を調整するなどの対処を行うことができる。
【0058】
図12(e)は、気泡55aの位置および気体分子数の予測結果を示す予測画像55を、撮影部CMにより得られた干渉縞の撮影画像51に重ね合わせて表示部30の表示画面DWに表示した例を示している。図12(e)では、段差箇所STを有する基板Sに対して膜形成処理を行う例を示しており、気泡55aの位置を表す丸印の大きさが気泡55aの気体分子数の大きさを表している。基板Sに段差箇所STが存在する場合、その段差箇所STの近傍で型Mと基板SとのZ方向の距離が非連続的に変化しうる。このような場所では、干渉縞の形状も非連続的に変化しうる。また、段差箇所STの近傍では、平坦な場合と比較して硬化性組成物IMの充填が阻害されるため、図12(e)に示すように、段差箇所STの近傍で気泡55a(気泡欠陥)が発生しやすくなる。この場合、ユーザは、段差箇所STの形状に応じて、その段差を打ち消すように(表面が平らになるように)硬化性組成物IMの液滴の配置を調整するなどの対処を行うことができる。
【0059】
ここで、図12では、一例として充填シミュレーションを使って計算した気泡分布の予測画像55を撮影画像51を重ね合わせて例を示したが、充填シミュレーション使って計算した気泡分布以外の予測画像を撮影画像51に重ね合わせてもよい。また、図12では、一例として、一種類の気泡情報を有する予測画像55を撮影画像51に重ね合わせた例を用いて説明したが、複数の気泡情報を有する予測画像55を撮影画像51と同時に表示してもよい。さらに、予測画像55および撮影画像51を動画として表示してもよい。
【0060】
気泡欠陥以外の欠陥としては、化学的欠陥がある。化学的欠陥は、雰囲気中の不純物を硬化性組成物IMが取り込み、それらの不純物が各液滴の液滴境界部分に偏析することによって発生しうる。化学的欠陥は、気泡欠陥とは異なり、物理的に空隙ができるわけではないため一見しても欠陥とは分からない。しかし、例えば、膜形成処理の次に行われるエッチング処理において、硬化性組成物IMと不純物とでエッチング耐性が異なる場合に問題となってくる。例えば、硬化性組成物IMよりも不純物のエッチング耐性が小さい場合、不純物部分がより多くエッチングされることにより、所望のパターンが得られなくなる。充填シミュレーションでは、各液滴の液滴境界部分を可視化することができる。そのため、エッチング処理で異常が発生した場合の発生位置と、シミュレーションから求めた液滴境界位置とを比較することによって、化学的欠陥の可能性を解析することができる。異常が液滴境界部分で発生しており化学的欠陥が疑われる場合には、膜形成装置IMPの内部の雰囲気の状態を確認するとともに、膜形成装置IMPの化学フィルタの交換や気流制御方法の見直しを行うことができる。
【0061】
図13は、膜形成処理において異常が発生した場合の撮影画像51を示している。図13(a)は、X軸方向の左右からショット領域の内側に向かって型Mが押され、型MがU字に変形することによって発生する異常を表している。このような場合、型Mと基板Sとの相対位置のずれが発生し、所望の位置に型Mのパターンを形成することが困難になりうる。例えば、型Mの外周に接することによって型Mを保持している場合、その保持部を介して型Mを押す力を特定方向(ここではX軸方向)だけ弱めることにより型Mの変形を改善することができる。別の方法としては、入熱手段(不図示)を用いて基板Sの一部もしくは全部に入熱して基板Sを変形させることにより、型Mと基板Sとの相対位置のずれを改善することができる。また、接触処理において型Mを硬化性組成物IMに押し付ける力を制御することによっても、型Mと基板Sとの相対位置のずれを改善することができる。例えば、型Mを硬化性組成物IMに押し付ける力(押印力)を小さくすることにより、凸形状への型Mの変形量(撓み量)を抑制し、当該相対値のずれを改善することができる。さらに、型Mを硬化性組成物IMに押し付ける速度を遅くする、つまり、ゆっくりと型Mを基板Sに近づけることによって気泡を低減することもできる。図13(a)とは逆に、型Mの変形量が足りない場合、例えば想定よりも広い領域が硬化性組成物IMに接液してしまう場合には、圧力制御部PCにより型Mの裏面の空間SPの圧力を上昇させ、型Mが所望の変形量となるように調整することもできる。
【0062】
図13(b)は、型Mが傾いている場合などに発生する異常を表している。凸形状に変形させている型Mが傾くことによって、ショット領域の中央部から外れた位置で最初に硬化性組成物IMと接触することになる。この場合、型Mへの硬化性組成物IMの充填速度が遅い領域(例えば図13(b)の右側領域)で硬化性組成物IMが充填されない場合がありうる。この場合、型Mもしくは基板Sの保持部における傾き補正機構(不図示)を調整することにより、ショット領域の中央部で型Mと硬化性組成物IMとを最初に接触させることができる。また、補正したい軸(ここではY軸)に対して、型Mもしくは基板Sの回転(θZ方向)を調整することによっても、ショット領域の中央部で型Mと硬化性組成物IMとを最初に接触させることができる。
【0063】
図13(c)は、型Mと基板Sとの間に異物PT(パーティクル)が混入した場合などに発生する異常を表している。型Mと基板Sとの間に異物PTが挟まると、型Mのパターンが硬化性組成物IMに転写されないなどの異常が発生しうる。図13(c)では、当該異常を分かりやすく表現するために、異物PTを大きく図示し、撮影画像51も大きく変形させているが、実際には非常に小さな変化でありうる。例えば、異物PTは1μm以下の小さなものでも問題となり、その大きさが小さくなるにつれて撮影画像51では確認しづらくなる。したがって、上述したように撮影画像51と予測画像55とを対比可能なように表示部30の表示画面に表示することにより、異物PTによる撮影画像51の変化をより敏感に検出することができる。また、ユーザの目視では確認が困難な撮影画像51の小さな変化がある場合、プロセッサ10により撮影画像51と予測画像55との差分を示す差分画像を生成し、当該差分画像を表示画面に表示することで、当該小さな変化を認識しやすくすることができる。
【0064】
また、局所的に意図しない凹みが基板Sにあった場合などには、図13(c)に示した撮影画像51のように干渉縞の歪として観察されうる。この場合、その凹み部分だけ硬化性組成物IMの膜厚を厚くして、できるだけ全体としての硬化性組成物IMの表面が平坦となるようにすることで改善することができる。例えば、硬化性組成物IMの液滴の量もしくは密度を変化させることによって、硬化性組成物IMの硬化物の厚さを変化させることができる。硬化性組成物IMの液滴の位置も同時に制御できることから、これらを組み合わせることによって、硬化性組成物IMの膜厚分布を制御することができる。この制御技術を使うことによって、局所的に意図しない凹みが基板Sにあった場合などに、その凹みの部分だけ硬化性組成物IMの膜厚を厚くして、できるだけ全体としての硬化性組成物IMの表面を平坦化することができる。
【0065】
<物品の製造方法の実施形態>
本発明の実施形態にかかる物品の製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。本実施形態の物品の製造方法は、上記の膜形成装置を用いて基板上に硬化性組成物の硬化膜を形成する工程と、かかる工程で硬化性組成物の硬化膜が形成された基板を加工する工程とを含む。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0066】
膜形成装置を用いて基板上に形成した硬化性組成物の硬化膜は、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0067】
硬化物組成物の硬化膜は、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0068】
次に、物品の具体的な製造方法について説明する。ここでは、膜形成装置としてインプリント装置を例示して説明する。図14(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウェハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0069】
図14(b)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。図14(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを通して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0070】
図14(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0071】
図14(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。図14(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0072】
<その他の実施例>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0073】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0074】
1:情報処理装置、10:プロセッサ、11:取得部、12:生成部、13:表示制御部、20:メモリ、30:表示部、40:入力部
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