(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/533 20060101AFI20240207BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20240207BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
A61F13/533 100
A61F13/511 110
A61F13/15 220
(21)【出願番号】P 2020140247
(22)【出願日】2020-08-21
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】永橋 歩美
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-149798(JP,A)
【文献】特開2018-166717(JP,A)
【文献】国際公開第2017/115673(WO,A1)
【文献】特開2017-209521(JP,A)
【文献】特開2020-039509(JP,A)
【文献】特開2016-067821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品の肌当接面に、非肌当接面側に窪んだ圧搾部が、吸収性物品の長手方向に沿って形成されるとともに、前方部と後方部とがそれぞれ前側折り線及び後側折り線にて体液排出部対向部の肌当接面側に折り畳まれて個別包装される吸収性物品であって、
前記圧搾部は、前記後側折り線より後方において、該圧搾部が延びる方向に沿って所定の間隔で複数の非圧搾部を有しており、
前記後側折り線の後方に位置する第1の領域において、隣り合う前記非圧搾部間に設けられる前記圧搾部の長さが相対的に短く、前記第1の領域の後方に位置する第2の領域において、隣り合う前記非圧搾部間に設けられる前記圧搾部の長さが相対的に長いことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記第1の領域の吸収性物品長手方向の長さは40~70mmである請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記第1の領域における前記圧搾部の長さは5~10mmであり、前記第2の領域における前記圧搾部の長さは11~30mmである請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記非圧搾部の吸収性物品長手方向の長さは5~7mmである請求項1~3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記後側折り線は、着用者の会陰部に対応する部位より前側に設けられている請求項1~
4いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記後側折り線より後方において、前記圧搾部が幅方向中央部の両側にそれぞれ、幅方向に離隔して複数設けられている請求項1~5いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項7】
内側の前記圧搾部と外側の前記圧搾部とが吸収性物品の幅方向に一致する範囲に設けられている請求項6記載の吸収性物品。
【請求項8】
内側の前記圧搾部が外側の前記圧搾部より吸収性物品の後方にずれて配置されている請求項6記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記非圧搾部の幅方向の重なり代は、3~5mmである請求項8記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記非圧搾部に代えて、前記圧搾部より相対的に圧搾深さが浅い低圧搾部が設けられている請求項1~9いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経血やおりものなどを吸収するための生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品に係り、詳細には肌当接面に、非肌当接面側に窪んだ圧搾部が形成された吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、生理用ナプキンなどを装着した着用者が、スポーツなどの激しい動きをすると、身体と生理用ナプキンとの間に隙間が生じて、フィット性が低下し、漏れが発生することが知られている。このようなフィット性の低下による漏れの発生を不安に感じる使用者は、生理期間中のスポーツや激しい動きを控える傾向にあった。
【0003】
この種の吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、フィット性や漏れ防止性を向上させるなどの目的で、吸収性物品の肌当接面に、非肌当接面側に窪ませた圧搾部を形成する技術が存在する。
【0004】
たとえば、下記特許文献1には、吸収体中高部に対応する吸収体の非肌当接面側に吸収性物品の長手方向に沿って断続的な凹状溝を形成することが開示されている。また、下記特許文献2には、排泄口当接域を挟んで両側に配置され、前後方向に延びる第1サイド圧搾部と、前記排泄口当接域の後側に位置する後側域において両側に配置された前後方向に延びる第2サイド圧搾部とを有し、前記第1サイド圧搾部と第2サイド圧搾部とが前後方向に離間するとともに、前記第2サイド圧搾部が前後方向に分断された分断部を有することが開示されている。更に、下記特許文献3には、中央域に、吸収コアが厚み方向に圧縮された第1圧搾部が形成されており、前記第1圧搾部は、吸収コアの第1低目付部の少なくとも一部に重なり、かつ前記第1低目付部に沿って延びていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-263205号公報
【文献】特開2017-118984号公報
【文献】特開2019-188104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載の吸収性物品では、前記凹状溝の形成列を軸とする長手方向可撓軸によって横断方向の変形性能が確保され、吸収体中高部をさらに隆起させるように変形するため、吸収体中高部の剛性が高くなって、臀部の前後方向の湾曲形状に沿った吸収性物品の長手方向への変形性能が低下するおそれがあった。上記特許文献1では、凹状溝を断続的に形成することにより、凹状溝間の部分を通る多数の横断方向軸を可撓軸として長手方向の変形性を確保しているが、凹状溝がほぼ等間隔に配置されているため、全長に亘ってほぼ一定の曲率半径でしか湾曲できず、身体の細かな凹凸に沿って変形させることが困難であった。特に、膣口から後方側の肛門付近にかけての会陰部に相当する部分は、臀部の緩やかな膨出形状と比較して、小さな湾曲形状となっているため、この部分に対するフィット性が低下することが懸念されていた。
【0007】
また、上記特許文献2、3記載の吸収性物品では、吸収体の低目付部を設けることにより、着用者に与える違和感を軽減するとともに、更にこの低目付部に合わせて圧搾部又は圧搾部の分断部を設けることにより、身体の丸みに沿って変形しやすくしているが、特に会陰部の小さな湾曲形状に対するフィット性を考慮した構造となっていない。
【0008】
また、上記特許文献1~3では、吸収性物品を個別包装する際の折り線位置について考慮されていないが、吸収性物品の後方部を体液排出部対向部の肌当接面側に折り畳む後側折り線が、着用者の会陰部に対応する会陰部対応領域に設けられた場合には、個別包装時の折り癖によって、折り線部分が非肌側に突出し、肌面と吸収性物品表面との間に隙間が生じ、フィット性が低下するという問題があった。
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、膣口から後方側の身体の形状にフィットしやすくし、後漏れを効果的に防止した吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために第1の態様として、吸収性物品の肌当接面に、非肌当接面側に窪んだ圧搾部が、吸収性物品の長手方向に沿って形成されるとともに、前方部と後方部とがそれぞれ前側折り線及び後側折り線にて体液排出部対向部の肌当接面側に折り畳まれて個別包装される吸収性物品であって、
前記圧搾部は、前記後側折り線より後方において、該圧搾部が延びる方向に沿って所定の間隔で複数の非圧搾部を有しており、
前記後側折り線の後方に位置する第1の領域において、隣り合う前記非圧搾部間に設けられる前記圧搾部の長さが相対的に短く、前記第1の領域の後方に位置する第2の領域において、隣り合う前記非圧搾部間に設けられる前記圧搾部の長さが相対的に長いことを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0011】
上記第1の態様では、前記圧搾部は、前記後側折り線より後方において、該圧搾部が延びる方向に沿って所定の間隔で複数の非圧搾部を有しており、これによって前記圧搾部は、吸収性物品の長手方向に沿って断続的に形成されるようになっている。このように圧搾部が断続的に形成された吸収性物品では、圧搾部間の非圧搾部を通る横断方向軸が可撓軸となって長手方向の変形性能を確保することができる。
【0012】
そして、前記後側折り線の後方に位置する第1の領域において、隣り合う前記非圧搾部間に設けられる前記圧搾部の長さが相対的に短く、前記第1の領域の後方に位置する第2の領域において、隣り合う前記非圧搾部間に設けられる前記圧搾部の長さが相対的に長く形成されている。このため、圧搾部の長さが相対的に短い第1の領域では、着用者の膣口から後方側の肛門付近にかけての会陰部に対応する部位の、肌面の小さな湾曲形状に沿って変形しやすくなり、圧搾部の長さが相対的に長い第2の領域では、会陰部より後側の臀裂部の前後方向の緩やかな湾曲形状に沿って変形しやすくなる。
【0013】
また、前記後側折り線が会陰部に対応する第1の領域より前側に配置されているため、個別包装時の折り癖により、肌面と吸収性物品表面との間に隙間が生じて会陰部の小さな湾曲形状にフィットしないという問題が生じない。
【0014】
したがって、膣口から後方側の会陰部及び臀部溝の身体の形状にフィットしやすく、後漏れが効果的に防止できるようになる。
【0015】
第2の態様として、前記第1の領域の吸収性物品長手方向の長さは40~70mmである請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0016】
上記第2の態様では、前記第1の領域を着用者の会陰部に対応した範囲に形成するため、吸収性物品長手方向の長さを40~70mmで形成している。
【0017】
第3の態様として、前記第1の領域における前記圧搾部の長さは5~10mmであり、前記第2の領域における前記圧搾部の長さは11~30mmである請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0018】
上記第3の態様では、前記第1の領域が着用者の会陰部に沿って湾曲変形できるように最適な圧搾部の長さについて規定するとともに、第2の領域が着用者の臀裂部の前後の丸みに沿って湾曲変形できるように最適な圧搾部の長さについて規定している。
【0019】
第4の態様として、前記非圧搾部の吸収性物品長手方向の長さは5~7mmである請求項1~3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
上記第4の態様では、前記非圧搾部を通る横断方向軸を可撓軸とした長手方向の変形を生じさせるのに最適な、非圧搾部の長さについて規定している。
【0021】
第5の態様として、前記後側折り線は、着用者の会陰部に対応する部位より前側に設けられている請求項1~4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0022】
上記第5の態様では、前記後側折り線を着用者の会陰部対応領域より前側に設けることにより、吸収性物品の表面が会陰部の小さな湾曲形状に沿って確実にフィットできるようにしている。
【0023】
第6の態様として、前記後側折り線より後方において、前記圧搾部が幅方向中央部の両側にそれぞれ、幅方向に離隔して複数設けられている請求項1~5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0024】
上記第6の態様では、前記後側折り線より後方において、前記圧搾部が幅方向中央部の両側にそれぞれ、幅方向に離隔して複数設けられているため、後方部で前記圧搾部による体液の塞き止め効果が向上し、漏れ防止性を高めることができる。
【0025】
第7の態様として、内側の前記圧搾部と外側の前記圧搾部とが吸収性物品の幅方向に一致する範囲に設けられている請求項6記載の吸収性物品が提供される。
【0026】
上記第7の態様では、前記圧搾部を幅方向中央部の両側にそれぞれ幅方向に離隔して複数設けた場合において、内側の圧搾部と外側の圧搾部とを吸収性物品の幅方向に一致する範囲に設けることによって、非圧搾部が吸収性物品の幅方向に一致する位置に配置されるようにし、この非圧搾部を通る横断方向軸を可撓軸とする長手方向の変形を生じやすくしている。
【0027】
第8の態様として、内側の前記圧搾部が外側の前記圧搾部より吸収性物品の後方にずれて配置されている請求項6記載の吸収性物品が提供される。
【0028】
上記第8の態様では、前記圧搾部を幅方向中央部の両側にそれぞれ幅方向に離隔して複数設けた場合において、内側の圧搾部を外側の圧搾部より吸収性物品の後方にずらして配置することによって、体液排出部対向部から後方の斜め外側に向けて流れる体液が、内側の非圧搾部を通って外側に流れ出た際、外側の圧搾部によって捕捉されやすくし、幅方向外側への体液の漏れを確実に防止できるようにしている。
【0029】
第9の態様として、前記非圧搾部の幅方向の重なり代は、3~5mmである請求項8記載の吸収性物品が提供される。
【0030】
上記第9の態様では、前記圧搾部を幅方向中央部の両側にそれぞれ幅方向に離隔して複数設けるとともに、内側の圧搾部と外側の圧搾部を位置ずれさせて配置した場合において、前記非圧搾部を通る横断方向軸を可撓軸とする長手方向の変形を確実に生じさせるため、吸収性物品の幅方向に対して、前記非圧搾部が所定長さの重なり代を有するように配置している。
【0031】
第10の態様として、前記非圧搾部に代えて、前記圧搾部より相対的に圧搾深さが浅い低圧搾部が設けられている請求項1~9いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0032】
上記第10の態様では、横断方向軸を可撓軸とする長手方向の変形を生じさせるには、前記低圧搾部とした場合でも同じ効果が得られるため、前記非圧搾部に代えて前記低圧搾部を設けている。
【発明の効果】
【0033】
以上詳説のとおり本発明によれば、膣口から後方側の身体の形状にフィットしやすくなり、後漏れが効果的に防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
【
図5】変形例に係る生理用ナプキン1の展開図である。
【
図7】変形例に係る肌当接面側後方部の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0036】
(生理用ナプキン1の基本構造)
本発明に係る生理用ナプキン1は、
図1~
図3に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる不透液性の裏面シート2と、経血やおりものなど(以下、まとめて体液ともいう。)を速やかに透過させる透液性の表面シート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、肌当接面側の両側部に前後方向のほぼ全長に亘って設けられたサイド不織布7とを備え、かつ前記吸収体4の周囲においては、その前後端縁部では前記裏面シート2と表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合されることにより、吸収体が介在しないフラップ部が形成されたものである。なお、図示例では、前記吸収体4の形状保持および拡散性向上のために、前記吸収体4をクレープ紙又は不織布などからなる被包シート5で囲繞しているが、この被包シート5は設けなくてもよい。また、図示しないが、前記表面シート3の非肌側に隣接して、前記表面シート3とほぼ同形状の親水性の不織布などからなるセカンドシートを配設してもよい。
【0037】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記裏面シート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、蒸れ防止の観点から透湿性を有するものを用いるのが望ましい。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記吸収体4が介在する本体部分の裏面シート2の非肌側面(外面)にはナプキン前後方向に沿って1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するようになっている。前記裏面シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0038】
次いで、前記表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。前記表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、体液が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維の複合繊維を好適に用いることもできる。
【0039】
前記裏面シート2と表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえば綿状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。前記吸収体4の目付は、100~750g/m2、好ましくは200~700g/m2とするのがよい。ただし、後述する中高部6を設ける場合、中高部6以外の周辺部では100~480g/m2(吸収体4の目付)、中高部6では200~750g/m2(中高部6及び吸収体4の合計目付)とするのが好ましい。
【0040】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0041】
前記吸収体4の肌側面には、肌側に増厚された吸収体の中高部6が形成されている。前記吸収体4及び中高部6は、それぞれ別個に製造した後、組立工程で積層してもよいし、吸収体を立体的に積繊することによって一体的に形成してもよい。また、吸収体4の上段に中高部6を積繊する二段積繊構造としてもよい。前記中高部6は、幅方向中央部にナプキン長手方向に細長く、かつ周方向にほぼ閉合している圧搾部10によって区画される領域に設けられている。この中高部6は、生理用ナプキン1の前方部Bから後方部Aまでの範囲に亘り細長く形成されている。
【0042】
前記表面シート3の幅寸法は、図示例では、
図2及び
図3の横断面図に示されるように、吸収体4の幅と同程度とされ、吸収体4を覆うだけに止まり、それより外方側は前記表面シート3とは別のサイド不織布7、具体的には経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されたサイド不織布7が配設されている。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を13~23g/m
2として作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0043】
前記サイド不織布7は、
図2及び
図3に示されるように、幅方向中間部より外側部分を所定の内側位置から裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着し、これら前記サイド不織布7と裏面シート2との積層シート部分により吸収体4の両側部に吸収体4が介在しないフラップ部が形成されている。このフラップ部は、ほぼ着用者の体液排出部Hに相当する吸収体側部位置に左右一対のウイング状フラップW、Wを形成するとともに、これより臀部側(後部側)位置にヒップホールド用フラップW
B、W
Bを形成する。これらウイング状フラップW、Wおよびヒップホールド用フラップW
B、W
Bの外面側にはそれぞれ粘着剤層(図示せず)が備えられ、ショーツに対する装着時に、前記ウイング状フラップW、Wを基端部の折返し線RL(
図1参照。)位置にて反対側(裏面シート2側)に折り返し、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着するとともに、前記ヒップホールド用フラップW
Bをショーツの内面に止着するようになっている。
【0044】
本生理用ナプキン1は、両側に前記ウイング状フラップW、Wが形成された長手範囲を、着用者の体液排出部Hに当接させるようにして装着される(
図4参照)。このため、前記ウイング状フラップWの基端部のナプキン長手方向の長さは、概ね着用者の体液排出部Hの長さ、すなわち女性の陰裂に相当する長さで形成するのが好ましく、具体的には60~100mm、好ましくは70~90mmとするのがよい。
【0045】
一方、前記サイド不織布7の内方側部分はほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部の前後方向中間部に、両端または前後方向の適宜の位置が固定された1又は複数本の、図示例では3本の糸状弾性伸縮部材9、9…が伸長状態で配設されている。この二重シート部分は前後端部では
図3に示されるように、折り畳んで積層された状態で吸収体4側に接着されている。これによって、
図2に示されるように、前後方向中間部の前記糸状弾性伸縮部材9…の配置範囲が、前記糸状弾性伸縮部材9…の収縮力により肌側に起立する立体ギャザーBS、BSを形成している。
【0046】
(生理用ナプキン1の個別包装)
前記生理用ナプキン1を個別包装するに際しては、前記本体部分の裏面シート2の外面に設けられた粘着剤層及びウイング状フラップW、ヒップホールド用フラップWBの外面側に設けられた粘着剤層をそれぞれ、紙またはフィルムからなる剥離シートによって被覆するとともに、生理用ナプキン1の外面側に包装シートを配置し、生理用ナプキン1、剥離シート及び包装シートを共に長手方向に三つ折り又は四つ折りとし、側縁部分をヒートシールするとともに、開封端部をテープ等により止着する。
【0047】
前記生理用ナプキン1を長手方向に折り畳む際には、
図1に示されるように、ウイング状フラップWの後側基端部の後方に幅方向に沿って延びる後側折り線L1位置にて、生理用ナプキン1の後方部Aを、体液排出部対向部Cの肌当接面側に長手方向に折り畳んだならば、ウイング状フラップWの前側基端部の前方に幅方向に沿って延びる前側折り線L2位置にて、生理用ナプキン1の前方部Bを、体液排出部対向部Cの肌当接面側に折り畳まれた前記後方部Aの上層に重ねて長手方向に折り畳む。図示例のように後方部Aのナプキン長手方向の長さが体液排出部対向部Cのナプキン長手方向の長さより長い場合には、後方部Aの中間部に幅方向に沿って延びる折り線L3位置にて後方部Aを2つに折り畳んだ上で、この2つに折り畳まれた後方部Aを前記後側折り線L1位置にて長手方向に折り畳むようにする。
【0048】
図1に示されるように、前記後側折り線L1は、前記ウイング状フラップWの後側基端部の後方に位置しており、ウイング状フラップWの後側基端部からナプキン長手方向に対して0~30mm、好ましくは3~15mmの離隔距離S1を有するように配置するのがよい。生理用ナプキン1を装着する際、上述の通り、両側に前記ウイング状フラップW、Wが形成された長手範囲を着用者の体液排出部H(女性の陰裂)に合わせた状態で装着されるため、ウイング状フラップWの後側基端部から所定の範囲内に前記後側折り線L1を設けることにより、この後側折り線L1が会陰部と重ならない位置に配置されるようになる。後側折り線L1が会陰部と重ならない位置に配置されることにより、個別包装時の折り癖により、生理用ナプキン表面が肌面から突出して肌面と生理用ナプキン表面との間に隙間が生じ、会陰部の小さな湾曲形状に対して生理用ナプキン表面がフィットしないという問題が生じにくくなる。
【0049】
(圧搾部)
本生理用ナプキン1では、生理用ナプキン1の肌当接面に、非肌当接面側に窪んだ圧搾部10が、生理用ナプキン1の長手方向に沿って形成されている。前記圧搾部10は、表面シート3の肌当接面側からの圧搾により、表面シート3及び吸収体4を一体的に裏面シート2側に窪ませた部分である。前記圧搾部10は、生理用ナプキン1の長手方向中心線に対して左右対で設けられており、好ましくは、
図1に示されるように、前記中高部6を囲むように、ナプキン長手方向に細長い形状で形成するのがよい。
【0050】
前記圧搾部10は、大きく分けると、生理用ナプキン1の体液排出部対向部C及び前方部Bに配置される前方圧搾部11と、生理用ナプキン1の後方部Aに配置される後方圧搾部12とを備えている。
【0051】
前記前方圧搾部11は、体液排出部Hの両側にそれぞれ長手方向に沿って延びるとともに、この左右の圧搾部の前端同士を体液排出部Hの前方において略半円弧状に連結する形状で形成されている。前記前方圧搾部11は、少なくとも前記ウイング状フラップWの基端部のナプキン長手方向の長さを含む範囲に設けられており、生理用ナプキン1の体液排出部対向部C及び前方部Bに亘って途中で分断することなく連続的に形成されている。
【0052】
前記後方圧搾部12は、前記前方圧搾部11の後端から連続して後方に延びており、前記前方圧搾部11の直ぐ後側に後方に向けて左右の離隔幅が徐々に狭くなる離隔幅変化部12aが形成されるとともに、その後方に左右の離隔幅がほぼ一定で後端同士が略半円弧状に連結された細長部12bが形成されている。
【0053】
前記後方圧搾部12は、前記後側折り線L1より後方において、該圧搾部12が延びる方向に沿って所定の間隔で複数の非圧搾部14、14…を有している。すなわち、前記非圧搾部14において後方圧搾部12が分断されており、後方圧搾部12と非圧搾部14とが後方圧搾部12が延びる方向に沿って交互に配置されるようになっている。
【0054】
図1に示されるように、前記後側折り線L1の後方に位置する第1の領域M1において、隣り合う前記非圧搾部14、14間に設けられる後方圧搾部12の長さが相対的に短く、前記第1の領域の後方に位置する第2の領域M2において、隣り合う前記非圧搾部14、14間に設けられる前記圧搾部後方圧搾部12の長さが相対的に長くなっている。つまり、第1の領域M1では非圧搾部14が短い間隔で配置され、第2の領域M2では非圧搾部14が長い間隔で配置されている。
【0055】
前記第1の領域M1は、生理用ナプキン1の装着状態で、着用者の体液排出部と肛門より後側に延びる臀裂部との中間、すなわち着用者の会陰部が当接する領域である。このため、前記第1の領域M1のナプキン長手方向の長さは40~70mm、好ましくは60~70mmとするのがよい。前記第1の領域M1は、前記後側折り線L1の後方に位置しており、前記後側折り線L1からの離隔距離S2は、0~10mmとするのが好ましい。前記第1の領域M1には、左右の後方圧搾部12、12の離隔幅が後方に向けて徐々に狭くなる離隔幅変化部12aが形成されている。
【0056】
一方、前記第2の領域M2は、生理用ナプキン1の装着状態で、着用者の臀裂部が当接する領域である。前記第2の領域M2のナプキン長手方向の長さは、生理用ナプキン1の全長によって異なるが、概ね30~130mm、好ましくは30~100mmとするのがよい。前記第2の領域M2は、第1の領域M1から離隔せず、第1の領域M1の直ぐ後側に設けられている。前記第2の領域M2には、左右の後方圧搾部12、12の離隔幅がほぼ一定の細長部12bが形成されている。
【0057】
上述の通り、本生理用ナプキン1では、
図1及び
図4に示されるように、両側にウイング状フラップW、Wが形成された領域を着用者の体液排出部に合わせて装着することにより、前記第1の領域M1が着用者の会陰部に当接するとともに、前記第2の領域M2が着用者の臀裂部に当接するようになる。
【0058】
前記第1の領域M1におけるナプキン長手方向に隣り合う非圧搾部14、14間に延びる後方圧搾部12の長さは、第2の領域M2におけるナプキン長手方向に隣り合う非圧搾部14、14間に延びる後方圧搾部12の長さより短くなっている。前記後方圧搾部12の長さとは、ナプキン長手方向に沿った長さのことである。
図1に示されるように、第1の領域M1における後方圧搾部12の長さK1は、5~10mmとするのが好ましく、第2の領域M2における後方圧搾部12の長さK2は11~30mmとするのが好ましい。第1の領域M1における後方圧搾部12の長さを相対的に短くすることにより、非圧搾部14が短い間隔で多数形成されるため、第1の領域M1では非圧搾部14を通る横断方向軸が可撓軸となって長手方向に変形する基点が短いピッチでより多く形成され、長手方向に対して小さな湾曲形状で変形しやすくなる。
【0059】
一方、前記非圧搾部14のナプキン長手方向の長さNは、5~7mmとするのが好ましい。これにより、この非圧搾部14を通る横断方向軸が可撓軸となって生理用ナプキン1が長手方向に湾曲変形しやすくなる。
【0060】
前記非圧搾部14は、第1の領域M1では、2~8箇所、好ましくは2~4箇所程度設けるのがよく、第2の領域M2では、1~5箇所、好ましくは1~3箇所程度設けるのがよい。
【0061】
前記圧搾部10の効果について説明すると、後方圧搾部12は、後側折り線L1より後方において、該後方圧搾部12が延びる方向に沿って所定の間隔で複数の非圧搾部14を有しているため、前記後方圧搾部12、12間の非圧搾部14を通る横断方向軸が可撓軸となって長手方向の変形性能を確保することができるようになる。
【0062】
前記非圧搾部14の配置は、前記第1の領域M1において、隣り合う非圧搾部14、14間に設けられる後方圧搾部12の長さが相対的に短く、その後方に位置する第2の領域M2において、隣り合う非圧搾部14、14間に設けられる後方圧搾部12の長さが相対的に長くなるように成されているため、後方圧搾部12の長さが相対的に短い第1の領域M1では、前記非圧搾部14を通る横断方向軸を可撓軸とした長手方向の変形が細かくなり、着用者の膣口から後方側の肛門付近にかけての会陰部に対応する部位の肌面の小さな湾曲形状に沿ってナプキンが湾曲変形しやすくなり、後方圧搾部12の長さが相対的に長い第2の領域M2では、前記非圧搾部14を通る横断方向軸を可撓軸とした長手方向の変形が緩やかとなり、着用者の臀裂部の前後方向の緩やかな湾曲形状に沿ってナプキンが湾曲変形しやすくなる。
【0063】
したがって、膣口から後方側の会陰部及び臀裂部の身体の形状に沿ってナプキンの各部が湾曲変形できるようになり、ナプキン表面が肌面にフィットしやすく、体液の後漏れが効果的に防止できるようになる。
【0064】
次に、前記圧搾部10の変形例について説明する。上記形態例では、表面シート3及び吸収体4を全く圧搾しない非圧搾部14を設けていたが、
図5及び
図6に示されるように、前記非圧搾部14に代えて、前記後方圧搾部12より相対的に圧搾深さが浅い低圧搾部15を設けるようにしてもよい。前記低圧搾部15についても前記非圧搾部14と同様に、この低圧搾部15を通る横断方向軸が可撓軸となってナプキンが長手方向に変形しやすくなるという効果が得られるため、フィット性が維持でき、後漏れが効果的に防止できるようになる。また、圧搾深さが浅いながらも、後方圧搾部12が分断せず、全長に亘って連続的な圧搾溝が形成されるため、体液の塞き止め効果が向上し、後漏れをより効果的に防止できるようになる。
図6に示されるように、前記低圧搾部15の深さD’は、前記後方圧搾部12の深さDに対して、50%以下、好ましくは30%以下とするのがよい。
【0065】
次いで、他の変形例について説明すると、前記後側折り線L1より後方において、前記後方圧搾部12が幅方向中央部の両側にそれぞれ、幅方向に離隔して複数設けられるようにしてもよい。前記後方圧搾部12を左右にそれぞれ複数本ずつ配置することにより、幅方向中央から外側に向けて拡散する体液を前記後方圧搾部12でより確実に捕捉することができ、体液の後漏れがより確実に防止できるようになる。
【0066】
図1に示される形態例では、後方圧搾部12の両側にそれぞれ離隔して、ナプキン長手方向に沿う第2後方圧搾部13、13が形成されている。前記第2後方圧搾部13は、生理用ナプキン1の幅方向外側に曲率中心を有する幅方向中央側に膨出した弧状曲線を成している。前記第2後方圧搾部13は、後方圧搾部12のナプキン長手方向の中間部に形成され、後方圧搾部12の前端部及び後端部の両側には形成されていない。
図1に示されるように、前記第2後方圧搾部13は、第1の領域M1と第2の領域M2とに跨がって配置されるのが好ましいが、第1の領域M1又は第2の領域M2のみに配置してもよい。
【0067】
前記第2後方圧搾部13も前記後方圧搾部12と同様に前記非圧搾部14が設けられており、この非圧搾部14によって第2後方圧搾部13が分断されている。第1の領域M1及び第2の領域M2における前記非圧搾部14の配置形態も上記後方圧搾部12の場合と同様である。
【0068】
図1に示される形態例では、内側の後方圧搾部12と外側の第2後方圧搾部13とが、生理用ナプキン1の幅方向に一致する範囲に形成されている。すなわち、後方圧搾部12と第2後方圧搾部13とで、前記非圧搾部14が、生理用ナプキン1の幅方向に対して同じ位置に設けられている。このように、幅方向に一致する位置に非圧搾部14が設けられることにより、前記第2後方圧搾部13を設けた場合でも、これら非圧搾部14…を通る横断方向軸を可撓軸とした長手方向の変形が生じやすくなる。
【0069】
一方、
図7に示されるように、内側の後方圧搾部12が外側の第2後方圧搾部13より生理用ナプキン1の後方にずれて配置されるようにしてもよい。すなわち、内側の後方圧搾部12と外側の第2後方圧搾部13とで、非圧搾部14の配置位置をナプキン長手方向に若干ずらしている。これにより、体液排出部対向部から後方の斜め外側に向けて流れる体液が、内側の非圧搾部14を通って外側に流れ出た際、外側の第2後方圧搾部13で捕捉されやすくなるため、幅方向外側への体液の漏れが確実に防止できるようになる。
【0070】
ただし、この場合でも、生理用ナプキン1の幅方向に配置される複数の非圧搾部14…を通る横断方向軸を可撓軸とする長手方向の変形を確実に生じさせるため、生理用ナプキン1の幅方向に対して、後方圧搾部12に配置された非圧搾部14と、第2後方圧搾部13に配置された非圧搾部14との重なり代Rを、3~5mm確保するのが好ましい。また、内側の後方圧搾部12と外側の第2後方圧搾部13とのナプキン長手方向の位置ずれ量Uは、1~3mmとするのがよい。
【符号の説明】
【0071】
1…生理用ナプキン、2…裏面シート、3…表面シート、4…吸収体、5…被包シート、6…中高部、7…サイド不織布、9…糸状弾性伸縮部材、10…圧搾部、11…前方圧搾部、12…後方圧搾部、13…第2後方圧搾部、14…非圧搾部、15…低圧搾部