(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】プーリアッセンブリ、ウインドレギュレータ及びプーリアッセンブリの組立て方法
(51)【国際特許分類】
E05F 11/48 20060101AFI20240207BHJP
B60J 1/17 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
E05F11/48 C
B60J1/17 A
(21)【出願番号】P 2020141903
(22)【出願日】2020-08-25
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000146434
【氏名又は名称】株式会社城南製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上原 一樹
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 晃一
【審査官】小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-157693(JP,A)
【文献】特開2009-013668(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0154310(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 11/48
B60J 1/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤが巻き掛けられるプーリと、
前記プーリを支持するプーリブラケットと、
前記プーリブラケットに取り付けられると共に、前記プーリを覆い前記プーリからの前記ワイヤの脱落を防止するプーリカバーと、
前記プーリブラケット及び前記プーリカバーのいずれか一方に形成され、前記プーリカバーを前記プーリブラケットに取り付ける前の状態において前記ワイヤを取付け可能に構成されると共に、前記プーリカバーを前記プーリブラケットに取り付けた後の状態において、取り付けられた前記ワイヤを前記プーリカバーの内側の位置に保持する仮保持部と、を備えたことを特徴とするプーリアッセンブリ。
【請求項2】
前記仮保持部は、前記プーリカバーに形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプーリアッセンブリ。
【請求項3】
前記仮保持部は、前記プーリカバーを前記プーリブラケットに取り付けた後の状態において、前記ワイヤに張力を付与したとき、前記ワイヤが外れることを特徴とする請求項1又は2に記載のプーリアッセンブリ。
【請求項4】
前記仮保持部は、
前記ワイヤを収容するワイヤ収容部と、
前記ワイヤ収容部の開口を、前記ワイヤの直径よりも狭く且つ前記ワイヤが変形することで通過可能な隙間が形成されるように、部分的に閉塞する閉塞突起と、を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプーリアッセンブリ。
【請求項5】
前記プーリカバーは、前記プーリの周縁の外側に面し、前記プーリに前記ワイヤが巻き掛けられているか否かを確認可能な確認窓を有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプーリアッセンブリ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプーリアッセンブリと、
車両の窓ガラスが取り付けられたキャリアプレートと、
前記窓ガラスの昇降方向に沿って前記キャリアプレートを昇降させると共に、前記プーリアッセンブリに方向転換される前記ワイヤと、を備えたことを特徴とするウインドレギュレータ。
【請求項7】
ワイヤが巻き掛けられるプーリと、
前記プーリを支持するプーリブラケットと、
前記プーリブラケットに取り付けられると共に、前記プーリを覆い前記プーリからの前記ワイヤの脱落を防止するプーリカバーと、
前記プーリブラケット及び前記プーリカバーのいずれか一方に形成され、前記プーリカバーを前記プーリブラケットに取り付ける前の状態において前記ワイヤを取付け可能に構成されると共に、前記プーリカバーを前記プーリブラケットに取り付けた後の状態において、取り付けられた前記ワイヤを前記プーリカバーの内側の位置に保持する仮保持部と、を備えたプーリアッセンブリの組立て方法であって、
前記仮保持部に、前記ワイヤを取り付けるワイヤ取付け工程と、
前記ワイヤ取付け工程の後、前記プーリカバーを前記プーリブラケットに取り付けるカバー取付け工程と、
前記カバー取付け工程の後、前記仮保持部から前記ワイヤを外して前記プーリに巻き掛けるワイヤ巻掛け工程と、を実行することを特徴とするプーリアッセンブリの組立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プーリアッセンブリ、ウインドレギュレータ及びプーリアッセンブリの組立て方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プーリアッセンブリとして、例えば、ワイヤ式且つレールレスのウインドレギュレータにおいて、ワイヤの方向転換に用いられるものがある(特許文献1参照)。このプーリアッセンブリは、プーリが回転自在に取り付けられたプーリブラケット(ベース)と、プーリブラケットに装着され、プーリを覆いプーリからのワイヤの脱落を防止するカバーと、を備えている。このプーリアッセンブリの組立ては、プーリブラケットにプーリを取り付けた後、プーリにワイヤを巻き掛け、その後、プーリブラケットにカバーを装着することで行われる。
このプーリアッセンブリでは、プーリに巻き掛けたワイヤをその両側から引っ張った状態で、カバーをプーリブラケットに装着する。これにより、カバーをプーリブラケットに装着するときに、ワイヤがプーリから浮き上がってカバーの外側に出てしまうといった組立て不備を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のウインドレギュレータでは、ワイヤを両側から引っ張った状態で、カバーをプーリブラケットに装着する必要があるため、プーリアッセンブリの組立てが煩雑であるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、組立てが容易で且つ組立て不備が生じることのないプーリアッセンブリ、ウインドレギュレータ及びプーリアッセンブリの組立て方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、ワイヤが巻き掛けられるプーリと、前記プーリを支持するプーリブラケットと、前記プーリブラケットに取り付けられると共に、前記プーリを覆い前記プーリからの前記ワイヤの脱落を防止するプーリカバーと、前記プーリブラケット及び前記プーリカバーのいずれか一方に形成され、前記プーリカバーを前記プーリブラケットに取り付ける前の状態において前記ワイヤを取付け可能に構成されると共に、前記プーリカバーを前記プーリブラケットに取り付けた後の状態において、取り付けられた前記ワイヤを前記プーリカバーの内側の位置に保持する仮保持部と、を備えたことを特徴とするプーリアッセンブリを提供する。
【0007】
また、本発明は、上記目的を達成するため、上記のプーリアッセンブリと、車両の窓ガラスが取り付けられたキャリアプレートと、前記窓ガラスの昇降方向に沿って前記キャリアプレートを昇降させると共に、前記プーリアッセンブリに方向転換される前記ワイヤと、を備えたことを特徴とするウインドレギュレータを提供する。
【0008】
また、本発明は、上記目的を達成するため、ワイヤが巻き掛けられるプーリと、前記プーリを支持するプーリブラケットと、前記プーリブラケットに取り付けられると共に、前記プーリを覆い前記プーリからの前記ワイヤの脱落を防止するプーリカバーと、前記プーリブラケット及び前記プーリカバーのいずれか一方に形成され、前記プーリカバーを前記プーリブラケットに取り付ける前の状態において前記ワイヤを取付け可能に構成されると共に、前記プーリカバーを前記プーリブラケットに取り付けた後の状態において、取り付けられた前記ワイヤを前記プーリカバーの内側の位置に保持する仮保持部と、を備えたプーリアッセンブリの組立て方法であって、前記仮保持部に、前記ワイヤを取り付けるワイヤ取付け工程と、前記ワイヤ取付け工程の後、前記プーリカバーを前記プーリブラケットに取り付けるカバー取付け工程と、前記カバー取付け工程の後、前記仮保持部から前記ワイヤを外して前記プーリに巻き掛けるワイヤ巻掛け工程と、を実行することを特徴とするプーリアッセンブリの組立て方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るプーリアッセンブリ、ウインドレギュレータ及びプーリアッセンブリの組立て方法は、組立てが容易で且つ組立て不備が生じるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るウインドレギュレータ、及びウインドレギュレータが設けられる自動車のドアを示す全体概略図である。
【
図2】ウインドレギュレータを示した正面図である。
【
図3】第1プーリアッセンブリを示した正面図(a)、下面図(b)及び斜視図(c)である。
【
図4】プーリブラケットを示した正面図(a)、下面図(b)及び裏面図(c)である。
【
図5】プーリカバーを示した正面図(a)、下面図(b)及び裏面図(c)である。
【
図6】(a)は、挿入孔部周りを示したA‐A´線断面図であり、(b)は、第1仮保持部周りを示した下面図であり、(c)は、第2仮保持部周りを示した側面図である。
【
図7】(a)は、第2プーリアッセンブリを示した平面図であり、(b)は、第3プーリアッセンブリを示した平面図である。
【
図8】プーリアッセンブリの組立て動作の前半を示した説明図である。
【
図9】プーリアッセンブリの組立て動作の後半を示した説明図である。
【
図10】変形例の第1プーリアッセンブリを示した下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るウインドレギュレータについて説明する。このウインドレギュレータは、自動車(車両)のドアパネルに取り付けられ、自動車に設けられたドアの窓ガラスを昇降する昇降装置である。特に、本ウインドレギュレータは、ワイヤの方向転換を行うプーリアッセンブリを改良し、プーリアッセンブリの組立て性を向上させたものである。
【0012】
図1は、窓ガラスGの全閉状態におけるウインドレギュレータ1、及びウインドレギュレータ1が設けられる自動車のドアDを示す全体概略図であり、窓ガラスGを二点鎖線で示したものである。
図2は、ウインドレギュレータ1を示した正面図である。以下、
図1及び
図2に示す通り、ウインドレギュレータ1の左右及び上下を規定して説明する。なお、ウインドレギュレータ1の上下方向は、窓ガラスGの昇降方向と一致している。
図1及び
図2に示すように、ウインドレギュレータ1は、ドアパネル(不図示)の内部に取り付けられており、ガラスホルダH、Hを介して窓ガラスGが取り付けられた右側の第1キャリアプレート2及び左側の第2キャリアプレート3(キャリアプレート)と、各キャリアプレート2、3を窓ガラスGの昇降方向に沿って昇降させる3本のワイヤ4、4、4と、3本のワイヤ4、4、4を駆動する駆動部7と、を備えている。すなわち、本ウインドレギュレータ1は、ワイヤ式且つレールレスのウインドレギュレータ1である。
【0013】
また、ウインドレギュレータ1は、第1キャリアプレート2の上下に配設され、ワイヤ4の方向転換を行う上側の第1プーリアッセンブリ8(プーリアッセンブリ)及び下側のワイヤガイド9と、第2キャリアプレート3の上下に配設され、ワイヤ4の方向転換を行う上側の第2プーリアッセンブリ10及び下側の第3プーリアッセンブリ11(プーリアッセンブリ)と、を備えている。さらに、ウインドレギュレータ1は、駆動部7と第1プーリアッセンブリ8との間、ワイヤガイド9と第2プーリアッセンブリ10との間、及び第3プーリアッセンブリ11と駆動部7との間に配設され、その部分のワイヤ4を進退自在に被覆する3本のアウターチューブ12、12、12を備えている。
【0014】
3本のワイヤ4、4、4は、一端が駆動部7のドラム72(後述する)に連結され、第1プーリアッセンブリ8を介して、他端が第1キャリアプレート2に連結された第1のワイヤ4と、一端が第1キャリアプレート2に連結され、ワイヤガイド9及び第2プーリアッセンブリ10を介して、他端が第2キャリアプレート3に連結された第2のワイヤ4と、一端が第2キャリアプレート3に連結され、第3プーリアッセンブリ11を介して、他端がドラム72に連結された第3のワイヤ4と、から成る。すなわち、3本のワイヤ4、4、4は、3つのプーリアッセンブリ8、10、11及び1つのワイヤガイド9によって、全体として横倒し「8」の字状に掛け渡されている。
【0015】
駆動部7は、減速機付きのモータ71と、モータ71によって回転駆動され、回転することにより第1のワイヤ4及び第3のワイヤ4の巻き取り及び繰り出しを行う円筒状のドラム72と、モータ71を保持すると共にドラム72を収容するハウジング73と、を有している。
【0016】
モータ71を正転駆動すると、ドラム72が正転し、これに伴って、第3のワイヤ4が繰り出されつつ第1のワイヤ4が巻き取られる。これにより、第1のワイヤ4によって第1キャリアプレート2が上方に引っ張られると共に、第1キャリアプレート2に連結された第2のワイヤ4によって、第2キャリアプレート3が上方に引っ張られる。これによって、第1キャリアプレート2及び第2キャリアプレート3が上方に移動し、これらに取り付けられた窓ガラスGが上昇する。一方、モータ71を逆転駆動すると、ドラム72が逆転し、これに伴って、第1のワイヤ4が繰り出されつつ第3のワイヤ4が巻き取られる。これにより、第3のワイヤ4によって第2キャリアプレート3が下方に引っ張られると共に、第2キャリアプレート3に連結された第2のワイヤ4によって、第1キャリアプレート2が下方に引っ張られる。これによって、第1キャリアプレート2及び第2キャリアプレート3が下方に移動し、これらに取り付けられた窓ガラスGが下降する。これにより、第1キャリアプレート2、第2キャリアプレート3及び窓ガラスGを、昇降方向に昇降させる。
【0017】
3本のアウターチューブ12は、駆動部7と第1プーリアッセンブリ8との間に配設された第1のアウターチューブ12と、ワイヤガイド9と第2プーリアッセンブリ10との間に配設された第2のアウターチューブ12と、第3プーリアッセンブリ11と駆動部7との間に配設された第3のアウターチューブ12と、から成る。第1のアウターチューブ12は、一端が駆動部7のハウジング73に、他端が第1プーリアッセンブリ8に取り付けられており、駆動部7と第1プーリアッセンブリ8との間の第1のワイヤ4を進退自在に被覆する。一方、第2のアウターチューブ12は、一端がワイヤガイド9に、他端が第2プーリアッセンブリ10に取り付けられており、ワイヤガイド9と第2プーリアッセンブリ10との間の第2のワイヤ4を進退自在に被覆する。また、第3のアウターチューブ12は、一端が第3プーリアッセンブリ11に、他端が駆動部7のハウジング73に取り付けられており、第3プーリアッセンブリ11と駆動部7との間の第3のワイヤ4を進退自在に被覆する。
【0018】
次に
図3乃至
図7を参照して、第1プーリアッセンブリ8、第2プーリアッセンブリ10及び第3プーリアッセンブリ11について説明する。以下、各
図3乃至
図7に示す通り、第1プーリアッセンブリ8、第2プーリアッセンブリ10及び第3プーリアッセンブリ11の左右、前後及び上下を規定して説明する。
図3に示すように、第1プーリアッセンブリ8は、ワイヤ4が巻き掛けられるプーリ81と、プーリ81を支持する金属製のプーリブラケット82と、プーリブラケット82に取り付けられると共に、プーリ81を覆いプーリ81からのワイヤ4の脱落を防止する樹脂製のプーリカバー83と、を備えている。プーリ81は、ワイヤ4が巻き掛けられるガイド溝81aが周設されていると共に、鍔付きのシャフト84によってプーリブラケット82に回転自在に取り付けられている。なお、プーリ81には、右部から上部に到る90°の範囲にワイヤ4が巻き掛けられる。すなわち、プーリ81のガイド溝81aにおける右部及び上部の位置が、プーリ81からワイヤ4を繰り出す繰出し位置となっている。
【0019】
図4に示すように、プーリブラケット82は、略平板状に形成されており、シャフト84が挿通する挿通孔111aを有しプーリ81を回転自在に取り付ける略円形のプーリ取付け部111と、プーリ取付け部111から右側に延出し、プーリカバー83の係合爪123(後述する)と係合する係合受け部112と、プーリ取付け部111の上部から左側に延出し、プーリカバー83の挿入孔部124、124(後述する)に挿入される挿入部113と、を有している。挿入部113は、上下に並び且つ左方向に延在した2つの挿入爪113aを有し、この2つの挿入爪113aが、プーリカバー83の2つの挿入孔部124、124にそれぞれ挿入される。また、挿入部113の上下端部には、前側に立ち上がるリブ113b、113bが形成されている。
【0020】
図5に示すように、プーリカバー83は、プーリブラケット82に支持されたプーリ81を覆う略横倒し台形状の本体部121と、本体部121から左側に延出し、アウターチューブ12の一端を取り付けるチューブ取付け部122と、本体部121の右端に形成された係合爪123と、チューブ取付け部122の後面側に形成された2つの挿入孔部124、124と、各挿入孔部124、124の右側に隣接して配設された線状の2つの押圧突起125と、を有している。また、プーリカバー83は、本体部121の右部及び上部に形成され、ワイヤ4を仮保持する第1仮保持部126及び第2仮保持部127(仮保持部)と、本体部121に形成され、ワイヤ4がプーリ81に巻き掛けられているかを確認する3つの確認窓128と、を有している。
【0021】
本体部121は、プーリブラケット82に対し平行に且つ対面するように形成された平板部131と、平板部131の上部から後方に立設された天壁部132と、平板部131の右端から後方に立設された側壁部133と、を有し、プーリブラケット82に支持されたプーリ81を覆う構成となっている。天壁部132が、プーリ81の上部に面し、側壁部133が、プーリ81の右部に面することで、プーリ81の右部及び上部からワイヤ4が脱落するのを防止し、これによって、プーリ81からワイヤ4が脱落するのを防止している。
【0022】
チューブ取付け部122は、ワイヤ4を導入するワイヤ導入溝141と、アウターチューブ12の一端を嵌合するチューブ嵌合穴142と、を有している。ワイヤ導入溝141にワイヤ4を導入した後、チューブ嵌合穴142にアウターチューブ12の一端を嵌合させることで、アウターチューブ12がチューブ取付け部122に取り付けられる。
【0023】
係合爪123は、本体部121の右端(側壁部133)から後方に突出し、先端がフック状に形成された部材であり、スナップフィット方式でプーリブラケット82の係合受け部112と係合する。
【0024】
2つの挿入孔部124は、チューブ取付け部122の後面側において上下に並んで配設されており、左右方向を深さ方向とする孔状に形成されている。2つの挿入孔部124は、プーリブラケット82における挿入部113の2つの挿入爪113aが、右側からそれぞれ挿入される。2つの押圧突起125は、各挿入孔部124の右側に配設され、左右方向に延在した線状の突起(リブ)である。
図6(a)に示すように、各押圧突起125は、各挿入孔部124に挿入された各挿入爪113aの前面に当接して、各挿入爪113aを各挿入孔部124の内面に押圧する。これにより、各挿入孔部124に挿入された各挿入爪113aは、各押圧突起125と各挿入孔部124の内面とに挟持される。これによって、プーリブラケット82に対するプーリカバー83の前後方向のガタを抑制することができる。
【0025】
図5、
図6(b)及び
図6(c)に示すように、第1仮保持部126及び第2仮保持部127は、それぞれ、ワイヤ4を収容するワイヤ収容部152、154と、ワイヤ収容部152、154の開口に面し、当該開口を部分的に閉塞する閉塞突起153、155と、を有している。プーリカバー83には、平板部131から後方に迫り出し、側壁部133に対面する位置から、天壁部132に対面する位置まで円弧状に形成された迫出し部151が形成されており、第1仮保持部126及び第2仮保持部127のワイヤ収容部152、154は、この迫出し部151と、平板部131と、側壁部133又は天壁部132と、によって形成されている。すなわち、
図6(b)に示すように、第1仮保持部126のワイヤ収容部152は、平板部131と、側壁部133と、迫出し部151の側壁部133に対面する部分とで形成されており、後面側を開口としている。また、第1仮保持部126の閉塞突起153は、側壁部133に形成されている。一方、
図6(c)に示すように、第2仮保持部127のワイヤ収容部154は、平板部131と、天壁部132と、迫出し部151の天壁部132に対面する部分とで形成されており、後面側を開口としている。また、第2仮保持部127の閉塞突起155は、天壁部132に形成されている。各仮保持部126、127のワイヤ収容部152、154は、プーリカバー83をプーリブラケット82に取り付けた後の状態において、プーリ81の周縁の外側であり且つプーリカバー83の内側の位置で、ワイヤ4を収容し保持する。なお、迫出し部151は、確認窓128によって2つの部材に分割されている。
【0026】
また、
図6(b)及び
図6(c)に示すように、各仮保持部126、127の閉塞突起153、155は、ワイヤ収容部152、154の開口を、ワイヤ4の直径より若干狭く且つワイヤ4が変形することで通過可能な隙間が形成されるように、部分的に閉塞する。そのため、各仮保持部126、127では、プーリカバー83をプーリブラケット82に取り付ける前の状態において、ワイヤ収容部152、154の手前の位置からワイヤ4をワイヤ収容部152、154に押し込むことで、ワイヤ4が変形してワイヤ4をワイヤ収容部152、154内に入れ込むことができる。これにより、ワイヤ4が仮保持部126、127に取り付けられる。一方、プーリカバー83をプーリブラケット82に取り付けた後の状態において、ワイヤ4がワイヤ収容部152、154の開口側(後方)に引っ張られることで、ワイヤ4が変形してワイヤ4をワイヤ収容部152、154外に出すことができる。これにより、ワイヤ4が仮保持部126、127から取り外される。仮保持部126、127によるワイヤ4の保持位置は、第1プーリアッセンブリ8におけるワイヤ4の導出位置に対し、前方に位置ずれした位置となっている。そのため、ワイヤ4を当該導出位置から引っ張ることで、ワイヤ4がワイヤ収容部152、154から後方に引っ張られて、ワイヤ4が仮保持部126、127から外れる構成となっている。
【0027】
なお、第1プーリアッセンブリ8の下方向へのワイヤ4の導出位置と、プーリ81の下方向へのワイヤ4の繰出し位置とは、前後左右方向で一致し、第1プーリアッセンブリ8の左方向へのワイヤ4の導出位置と、プーリ81の左方向へのワイヤ4の繰出し位置とは、上下前後方向で一致している。そのため、ワイヤ4を各導出位置から引っ張ることで、仮保持部126、127から外れたワイヤ4が、自然にプーリ81のガイド溝81aに入り込みプーリ81に巻き掛けられるようになっている。すなわち、仮保持部126、127は、プーリカバー83をプーリブラケット82に取り付けた後の状態において、ワイヤ4を引っ張ることでワイヤ4が仮保持部126、127から外れプーリ81のガイド溝81aに入り込むように、ワイヤ4を保持するといえる。
【0028】
このように、各仮保持部126、127は、プーリカバー83をプーリブラケット82に取り付ける前の状態において、ワイヤ4を取付け可能に構成されると共に、プーリカバー83をプーリブラケット82に取り付けた後の状態において、取り付けられたワイヤ4をプーリカバー83の内側の位置に保持し、また、プーリカバー83をプーリブラケット82に取り付けた後の状態において、ワイヤ4に張力を付与したとき、ワイヤ4が外れる構成となっている。
【0029】
図3及び
図5に示すように、3つの確認窓128は、平板部131に開口されたものであり、プーリ81の周縁の外側に面して形成されている。3つの確認窓128は、プーリ81の右側に位置する第1の確認窓128と、プーリ81の上側に位置する第2の確認窓128と、プーリ81の右上側に位置する第3の確認窓128と、から成る。第1の確認窓128及び第2の確認窓128は、方形に形成され、第1仮保持部126及び第2仮保持部127の位置にそれぞれ形成されている。一方、第3の確認窓128は、プーリ81の外縁に倣う略四分円状に形成されている。なお、閉塞突起153、155を成形するときにできる開口を、確認窓128として利用する構成であっても良い。
【0030】
各確認窓128、128、128では、そこからワイヤ4が視認できるかによって、ワイヤ4がプーリ81に正常に巻き掛けられているか否かを確認することができる。すなわち、ワイヤ4がプーリ81に巻き掛けられてガイド溝81a内に位置している状態では、各確認窓128、128、128からワイヤ4を視認できない。そのため、各確認窓128、128、128からワイヤ4を視認できないことで、ワイヤ4がプーリ81に巻き替えられていることを確認することができる。一方、ワイヤ4がプーリ81に巻き替えられておらずガイド溝81a外に位置している状態では、各確認窓128、128、128からワイヤ4を視認することできる。そのため、各確認窓128、128、128からワイヤ4を視認できることで、ワイヤ4がプーリ81に正常に巻き替えられていないことを確認することができる。特に、ワイヤ4が仮保持部126、127に取り付けられた状態では、各確認窓128、128、128からワイヤ4が視認できるため、ワイヤ4が仮保持部126、127に取り付けられた状態であるか、ワイヤ4が仮保持部126、127から外れ、プーリ81に巻き替えられた状態であるか、を確認することができる。
【0031】
図7(a)は、第2プーリアッセンブリ10を示した正面図である。
図7(a)に示すように、第2プーリアッセンブリ10は、左右対称であることを除き、第1プーリアッセンブリ8と同一の構造を有している。すなわち、第2プーリアッセンブリ10は、プーリ81、プーリブラケット82及びプーリカバー83を備え、第2プーリアッセンブリ10のプーリブラケット82は、第1プーリアッセンブリ8のプーリブラケット82と左右対称の形で、プーリ取付け部111、係合受け部112及び挿入部113を有し、第2プーリアッセンブリ10のプーリカバー83は、第1プーリアッセンブリ8のプーリカバー83と左右対称の形で、本体部121、チューブ取付け部122、係合爪123、2つの挿入孔部124、124、2つの押圧突起125、125、第1仮保持部126、第2仮保持部127及び3つの確認窓128、128、128を有している。
【0032】
図7(b)は、第3プーリアッセンブリ11を示した正面図である。
図7(b)に示すように、第3プーリアッセンブリ11は、プーリブラケット82において、ドアパネル(不図示)に固定するための固定部114が形成されていることを除き、第1プーリアッセンブリ8と同一の構造を有している。すなわち、第3プーリアッセンブリ11は、プーリ81、プーリブラケット82及びプーリカバー83を備え、第3プーリアッセンブリ11のプーリブラケット82は、プーリ取付け部111、係合受け部112、挿入部113及び固定部114を有し、第3プーリアッセンブリ11のプーリカバー83は、本体部121、チューブ取付け部122、係合爪123、2つの挿入孔部124、124、2つの押圧突起125、125、第1仮保持部126、第2仮保持部127及び3つの確認窓128、128、128を有している。
【0033】
次に
図8を参照して、プーリアッセンブリ8、10、11の組立て動作(組立て方法)について説明する。なお、第1プーリアッセンブリ8、第2プーリアッセンブリ10及び第3プーリアッセンブリ11の組立て動作は、同一であるため、以下、第1プーリアッセンブリ8の組立て動作を説明し、第2プーリアッセンブリ10及び第3プーリアッセンブリ11の組立て動作の説明を省略するものとする。なお、本組立て動作は、プーリ81をプーリブラケット82に取り付けた後の状態で行われる。
【0034】
第1プーリアッセンブリ8の組立て動作では、まず、アウターチューブ12にワイヤ4を通した状態で、プーリカバー83の仮保持部126、127にワイヤ4を取り付ける(ワイヤ取付け工程)。すなわち、
図8(a)に示すように、ワイヤ4をワイヤ導入溝141に導入し、アウターチューブ12をチューブ嵌合穴142に嵌合させた後、ワイヤ4を第2仮保持部127に取り付ける。その後、
図8(b)に示すように、ワイヤ4を迫出し部151に沿って引き回し、引き回した先のワイヤ4を第1仮保持部126に取り付ける。これにより、プーリカバー83の仮保持部126、127にワイヤ4が取り付けられる。
【0035】
プーリカバー83の仮保持部126、127にワイヤ4を取り付けたら、仮保持部126、127にワイヤ4を取り付けたままの状態で、プーリカバー83をプーリブラケット82に取り付ける(カバー取付け工程)。すなわち、
図9(c)に示すように、プーリブラケット82の2つの挿入爪113a、113aを、プーリカバー83の2つの挿入孔部124、124に挿入する。その後、
図9(d)に示すように、プーリカバー83の係合爪123を、プーリブラケット82の係合受け部112にスナップフィット方式で係合する。これにより、プーリカバー83がプーリブラケット82に取り付けられる。
【0036】
プーリカバー83をプーリブラケット82に取り付けたら、仮保持部126、127からワイヤ4を外してプーリ81に巻き掛ける(ワイヤ巻掛け工程)。すなわち、
図9(e)に示すように、ワイヤ4の両側を第1プーリアッセンブリ8の各導出位置から引っ張って、仮保持部126、127からワイヤ4を外し、ワイヤ4をプーリ81に巻き掛ける。
【0037】
(実施形態の作用及び効果)
以上、上記実施形態によれば、プーリカバー83をプーリブラケット82に取り付ける前に、ワイヤ4を仮保持部126、127に取り付け、プーリカバー83をプーリブラケット82に取り付けた後、ワイヤ4を仮保持部126、127から外してプーリ81に巻き掛ける構成であるため、プーリカバー83をプーリブラケット82に取り付けるときに、ワイヤ4がプーリカバー83の外側に出てしまうといった組立て不備を防止することができる。また、ワイヤ4を引っ張った状態でプーリカバー83をプーリブラケット82に取り付ける必要がなく、プーリアッセンブリ8、10、11の組立てを容易に行うことができる。
【0038】
また、仮保持部126、127について、ワイヤ4に張力を付与したとき、ワイヤ4が外れる構成であるため、プーリカバー83をプーリブラケット82に取り付けた後の状態で、仮保持部126、127からワイヤ4を容易に取り外すことができる。
【0039】
さらに、プーリカバー83に確認窓128、128、128を設けたことで、ワイヤ4がプーリ81に正常に巻き掛けられているか否かを確認することができる。特に、ワイヤ4が、仮保持部126、127に保持された状態から、プーリ81に巻き掛けられた状態に移行したことを確認することができる。
【0040】
(その他の実施形態について)
なお、上記実施形態においては、仮保持部126、127をプーリカバー83に形成する構成であったが、仮保持部126、127をプーリブラケット82に形成する構成であっても良い。
【0041】
また、上記実施形態においては、プーリブラケット82側に係合受け部112が形成され、プーリカバー83側に係合爪123が形成される構成であったが、
図10に示すように、プーリブラケット82側に係合爪123が形成され、プーリカバー83側に係合受け部112が形成される構成であっても良い。
【0042】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記した実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1:ウインドレギュレータ、 2:第1キャリアプレート、 3:第2キャリアプレート、 4:ワイヤ、 8:第1プーリアッセンブリ、 10:第2プーリアッセンブリ、 11:第3プーリアッセンブリ、 81:プーリ、 82:プーリブラケット、 83:プーリカバー、 126:第1仮保持部、 127:第2仮保持部、 152:ワイヤ収容部、 153:閉塞突起、 154:ワイヤ収容部、 155:閉塞突起、 G:窓ガラス