(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】ウインドレギュレータ及びウインドレギュレータの組付け方法
(51)【国際特許分類】
E05F 11/48 20060101AFI20240207BHJP
E05F 11/38 20060101ALI20240207BHJP
B60J 1/17 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
E05F11/48 D
E05F11/38 F
B60J1/17 C
(21)【出願番号】P 2020150063
(22)【出願日】2020-09-07
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000146434
【氏名又は名称】株式会社城南製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 秋吾
(72)【発明者】
【氏名】吉原 宏大
【審査官】小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-094315(JP,A)
【文献】特開2008-088777(JP,A)
【文献】特開2007-278000(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0251149(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 11/48
E05F 11/38
B60J 1/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓ガラスに固定されたガラスホルダと、
前記ガラスホルダを介して前記窓ガラスが取り付けられるキャリアプレートと、
前記キャリアプレートを前記窓ガラスの昇降方向に沿って昇降させるワイヤと、
前記ワイヤを駆動する駆動部と、
前記駆動部を支持するパネル部材と、を備え、
前記パネル部材には、前記窓ガラスを取り付ける前の前記キャリアプレートを位置固定する仮保持部が形成されていることを特徴とするウインドレギュレータ。
【請求項2】
前記キャリアプレートは、前記仮保持部と係合する被係合部を有することを特徴とする請求項1に記載のウインドレギュレータ。
【請求項3】
前記仮保持部は、前記キャリアプレートを前記昇降方向に移動させたとき、前記キャリアプレートが外れることを特徴とする請求項2に記載のウインドレギュレータ。
【請求項4】
前記仮保持部は、前記昇降方向に直交する方向において前記被係合部と係合して、前記キャリアプレートを位置固定する爪部を有し、
前記爪部は、前記被係合部と係合した状態において、前記キャリアプレートを前記昇降方向に移動させたとき、前記被係合部との係合が解除されることを特徴とする請求項3に記載のウインドレギュレータ。
【請求項5】
前記キャリアプレートは、前記ガラスホルダに締結される締結部を有し、
前記仮保持部は、前記キャリアプレートを前記ガラスホルダに締結するときの締結力によって、前記キャリアプレートが外れることを特徴とする請求項2に記載のウインドレギュレータ。
【請求項6】
前記キャリアプレートは、前記窓ガラスを前記キャリアプレートに取り付ける位置まで移動させるときの前記ガラスホルダに接触し、前記キャリアプレートを前記ガラスホルダに引き寄せる引寄せ部を有し、
前記仮保持部は、前記引寄せ部により前記キャリアプレートを引き寄せるときの力によって、前記キャリアプレートが外れることを特徴とする請求項2に記載のウインドレギュレータ。
【請求項7】
前記仮保持部は、前記パネル部材から離れる方向において前記被係合部と係合して、前記キャリアプレートを位置固定する係合爪を有し、
前記係合爪は、前記被係合部と係合した状態において、前記被係合部に前記パネル部材から離れる方向への所定の力が作用したとき、前記被係合部との係合が解除されるように変形することを特徴とする請求項5又は6に記載のウインドレギュレータ。
【請求項8】
前記仮保持部は、前記被係合部が前記仮保持部に押し込まれることで、前記被係合部と係合することを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載のウインドレギュレータ。
【請求項9】
ドアの窓ガラスが取り付けられるキャリアプレートと、
前記キャリアプレートを前記窓ガラスの昇降方向に沿って昇降させるワイヤと、
前記ワイヤを駆動する駆動部と、
前記駆動部を支持するパネル部材と、を備えたウインドレギュレータを前記ドアに組み付けるウインドレギュレータの組付け方法であって、
前記キャリアプレートを前記パネル部材に位置固定させた状態で、前記窓ガラスを前記キャリアプレートに取り付けることを特徴とするウインドレギュレータの組付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインドレギュレータ及びウインドレギュレータの組付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ウインドレギュレータとして、例えば、ガイドレール無しでキャリアプレートをワイヤで昇降させて、窓ガラスを昇降するレールレスのワイヤ式ウインドレギュレータがある(特許文献1参照)。このウインドレギュレータは、窓ガラスの下縁に固定されたガラスホルダと、ガラスホルダと連結され、ガラスホルダを介して窓ガラスを支持するキャリアプレートと、キャリアプレートに連結されるワイヤ(インナーケーブル)と、ワイヤを巻取り駆動するドラムと、ドラムを駆動する駆動部と、を含んでいる。
このウインドレギュレータでは、窓ガラスにガラスホルダを固定した状態で、ガラスホルダがキャリアプレートの位置に来るように窓ガラスを移動し、その後、ガラスホルダをキャリアプレートにボルト締結させることで、ガラスホルダを介して、窓ガラスをキャリアプレートに取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のウインドレギュレータでは、窓ガラスをキャリアプレートに取り付けるとき、キャリアプレートが、ワイヤに連結されるのみのフリーの状態となっている。そのため、キャリアプレートの位置が安定せず、キャリアプレートに対し窓ガラスを取り付け辛いという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、キャリアプレートに対する窓ガラスの取付けを容易に行うことができるウインドレギュレータ及びウインドレギュレータの組付け方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、窓ガラスに固定されたガラスホルダと、前記ガラスホルダを介して前記窓ガラスが取り付けられるキャリアプレートと、前記キャリアプレートを前記窓ガラスの昇降方向に沿って昇降させるワイヤと前記ワイヤを駆動する駆動部と、前記駆動部を支持するパネル部材と、を備え、前記パネル部材には、前記窓ガラスを取り付ける前の前記キャリアプレートを位置固定する仮保持部が形成されていることを特徴とするウインドレギュレータを提供する。
【0007】
また、本発明は、上記目的を達成するため、ドアの窓ガラスが取り付けられるキャリアプレートと、前記キャリアプレートを前記窓ガラスの昇降方向に沿って昇降させるワイヤと、前記ワイヤを駆動する駆動部と、前記駆動部を支持するパネル部材と、を備えたウインドレギュレータを前記ドアに組み付けるウインドレギュレータの組付け方法であって、前記キャリアプレートを前記パネル部材に位置固定させた状態で、前記窓ガラスを前記キャリアプレートに取り付けることを特徴とするウインドレギュレータの組付け方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るウインドレギュレータ及びウインドレギュレータの組付け方法は、キャリアプレートに対する窓ガラスの取付けを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るウインドレギュレータ、及びウインドレギュレータが設けられる自動車のドアを示す全体概略図である。
【
図2】ウインドレギュレータを示した正面図である。
【
図3】ガラスホルダを示した正面図(a)、側面図(b)及び裏面図(c)である。
【
図4】キャリアプレートを示した正面図(a)、下面図(b)及び裏面図(c)である。
【
図5】(a)は、被係合部を示した下面図であり、(b)は、仮保持部を示した下面図であり、(c)は、係合状態の被係合部及び仮保持部を示した下面図であり、(d)は、係合状態の被係合部及び仮保持部を示したA‐A´線断面図である。
【
図6】モジュールパネルを示した正面図(a)及び平面図(b)である。
【
図7】被係合部を仮保持部に押し込んだときの挙動を示した下面図である。
【
図8】組付け動作前の状態のウインドレギュレータを示した正面図である。
【
図9】ウインドレギュレータの組付け動作を示した説明図である。
【
図10】(a)第2実施形態に係るウインドレギュレータの被係合部を示した下面図であり、(b)第2実施形態に係るウインドレギュレータの仮保持部を示した下面図であり、(c)第2実施形態に係るウインドレギュレータの係合状態の被係合部及び仮保持部を示した下面図である。
【
図11】第2実施形態に係るウインドレギュレータの窓ガラス取付け時の挙動を示した説明図である。
【
図12】第3実施形態に係るウインドレギュレータのキャリアプレートを示した正面図(a)及び斜視図(b)である。
【
図13】第3実施形態に係るウインドレギュレータの窓ガラス取付け時の挙動を示した説明図である。
【
図14】(a)は、第1変形例の被係合部及び仮保持部を示した下面図であり、(b)は、第2変形例の被係合部及び仮保持部を示した下面図であり、(c)は、第3変形例の被係合部及び仮保持部を示した下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るウインドレギュレータについて説明する。このウインドレギュレータは、自動車(車両)に設けられたドアの内部に取り付けられ、ドアの窓ガラスを昇降する昇降装置である。特に、本ウインドレギュレータは、キャリアプレートを仮保持する構造を備えたことで、キャリアプレートに対する窓ガラスの取付け性を向上させたものである。なお、以下、窓ガラスの昇降方向を、単に昇降方向と呼称する。また、以下、各図に示す通り、左右、前後及び上下を規定して説明する。なお、各図に示すウインドレギュレータの上下方向は、昇降方向に対し若干傾いた構成となっており、各図に示すウインドレギュレータの前後方向は、自動車の車幅方向と一致している。
【0011】
図1は、第1実施形態に係るウインドレギュレータ1、及びウインドレギュレータ1が設けられる自動車のドアDを示す全体概略図であり、窓ガラスGを二点鎖線で示したものである。また、
図2は、窓ガラスGの全閉状態におけるウインドレギュレータ1を示した正面図である。
図1及び
図2に示すように、ウインドレギュレータ1は、ドアDに取り付けられており、窓ガラスGの下端に固定された左右2つのガラスホルダ2、2と、ガラスホルダ2、2を介して窓ガラスGが取り付けられ、ガラスホルダ2、2を介して窓ガラスGを支持する左右2つのキャリアプレート3、3と、各キャリアプレート3、3を昇降方向に沿って昇降させる3本のワイヤ4、4、4と、3本のワイヤ4、4、4を駆動する駆動部7と、を備えている。すなわち、本ウインドレギュレータ1は、レールレスのワイヤ式ウインドレギュレータ1である。
【0012】
また、ウインドレギュレータ1は、右側のキャリアプレート3の上下に配設され、ワイヤ4の方向転換を行う上側の第1プーリ8及び下側の第2プーリ9と、左側のキャリアプレート3の上下に配設され、ワイヤ4の方向転換を行う上側の第3プーリ10及び下側の第4プーリ11と、ドアDに取り付けられ、駆動部7及び各プーリ8、9、10、11を支持するモジュールパネル12(パネル部材)と、を備えている。なお、キャリアプレート3、3を昇降方向に沿って昇降させるべく、第1プーリ8及び第2プーリ9は、右側のキャリアプレート3に対して昇降方向における上下に配設されており、第3プーリ10及び第4プーリ11は、左側のキャリアプレート3に対して昇降方向における上下に配設されている。
【0013】
3本のワイヤ4、4、4は、一端が駆動部7のドラム72(後述する)に連結され、第1プーリ8を介して、他端が右側のキャリアプレート3に連結された第1のワイヤ4と、一端が右側のキャリアプレート3に連結され、第2プーリ9及び第3プーリ10を介して、他端が左側のキャリアプレート3に連結された第2のワイヤ4と、一端が左側のキャリアプレート3に連結され、第4プーリ11を介して、他端がドラム72に連結された第3のワイヤ4と、から成る。すなわち、3本のワイヤ4、4、4は、4つのプーリ8、9、10、11によって、全体として横倒し「8」の字状に掛け渡されている。
【0014】
駆動部7は、減速機付きのモータ(不図示)と、モータによって回転駆動され、回転することにより第1のワイヤ4及び第3のワイヤ4の巻き取り及び繰り出しを行う円筒状のドラム72と、モジュールパネル12に支持され、モータを保持すると共にドラム72を収容するハウジング73と、を有している。
【0015】
モータを正転駆動すると、ドラム72が正転し、これに伴って、第3のワイヤ4が繰り出されつつ第1のワイヤ4が巻き取られる。これにより、第1のワイヤ4によって右側のキャリアプレート3が昇降方向上方に引っ張られると共に、右側のキャリアプレート3に連結された第2のワイヤ4によって、左側のキャリアプレート3が昇降方向上方に引っ張られる。これによって、2つのキャリアプレート3が昇降方向上方に移動し、これらに取り付けられた窓ガラスGが上昇する。一方、モータを逆転駆動すると、ドラム72が逆転し、これに伴って、第1のワイヤ4が繰り出されつつ第3のワイヤ4が巻き取られる。これにより、第3のワイヤ4によって左側のキャリアプレート3が昇降方向下方に引っ張られると共に、左側のキャリアプレート3に連結された第2のワイヤ4によって、右側のキャリアプレート3が昇降方向下方に引っ張られる。これによって、2つのキャリアプレート3が昇降方向下方に移動し、これらに取り付けられた窓ガラスGが下降する。これにより、キャリアプレート3、3及び窓ガラスGを、昇降方向に昇降させる。
【0016】
図3に示すように、ガラスホルダ2は、窓ガラスGを保持するガラス保持部21と、ガラス保持部21の下端から下方に延出し、キャリアプレート3を締結するホルダ締結部22と、を有している。
【0017】
ガラス保持部21は、正面視矩形且つ側面視角「U」字状に形成されており、窓ガラスGの下端を挟み込むように保持している。窓ガラスGの下端は、ガラス保持部21に保持された状態で、ガラス保持部21に対し接着剤等で固定されている。
【0018】
ホルダ締結部22は、後面側にキャリアプレート3に対する締結面22aを有すると共に、ボルト締結孔22bを有している。ボルト締結孔22bの内周面には、締結ボルトB(
図2参照)に対する雌ネジが形成されており、締結ボルトBを、キャリアプレート3のボルト挿通孔33b(後述する)に通しつつ、当該ボルト締結孔22bの雌ネジに螺合させることで、キャリアプレート3とガラスホルダ2とが締結される。これによって、ガラスホルダ2を介して、窓ガラスGがキャリアプレート3に取り付けられる。
【0019】
図4に示すように、キャリアプレート3は、右側に配設された樹脂製の樹脂成形部31と、左側に配設された金属製の金属成形部32と、を有している。金属成形部32は、ガラスホルダ2に締結されるキャリア締結部33(締結部)を有している。キャリア締結部33は、前面側に締結面33aを有すると共に、前後方向を深さ方向とするボルト挿通孔33bを有している。ボルト挿通孔33bは、締結ボルトBを通す通し孔であり、左右方向に長い長孔状に形成されている。
【0020】
樹脂成形部31は、略矩形状の本体部34と、本体部34の右端上部に形成され、上昇側のワイヤ4が取り付けられる上昇側ワイヤ取付け部35と、本体部34の右端下部に形成され、下降側のワイヤ4が取り付けられる下降側ワイヤ取付け部36と、本体部34の後面から突出して形成され、モジュールパネル12の仮保持部122(後述する)と係合する被係合部37と、を有している。なお、上昇側ワイヤ取付け部35及び下降側ワイヤ取付け部36には、上昇側のワイヤ4及び下降側のワイヤ4が張った状態で取り付けられている。
【0021】
図5(a)は、被係合部37を示した下面図である。なお、
図5に示す各下面図は、いずれも昇降方向下側から見た下面図である。これに係り、以下、被係合部37及び仮保持部122の説明では、昇降方向及び前後方向に直交する方向を左右方向として説明する。
図5(a)に示すように、被係合部37は、全体としてフック状に形成されており、本体部34の後面に立設された胴部37aと、胴部37aの先端から右方向に延出した爪部37bと、を有している。
図5(c)に示すように、爪部37bは、その前面37cが、モジュールパネル12の仮保持部122と係合する被係合面となっている。また、爪部37bの後面には、仮保持部122に形成された誘導斜面122dに倣う傾斜面37dが形成されている。
【0022】
図6に示すように、モジュールパネル12は、ドアDの室内側のドアパネル(不図示)に取り付けられ、駆動部7を支持すると共に、各プーリ8、9、10、11を回転自在に支持している。これにより、ウインドレギュレータ1の各部を支持している。また、モジュールパネル12には、モジュールパネル12をドアパネルに取り付けるための複数の取付け孔120と、窓ガラスGの取付け作業を行うための左右2つの開口部121、121と、各開口部121、121の右側に隣接して配設され、窓ガラスGを取り付ける前の各キャリアプレート3、3を仮保持する2つの仮保持部122、122と、が形成されている。
【0023】
図5(b)は、仮保持部122を示した下面図である。
図5(b)に示すように、仮保持部122は、モジュールパネル12の前面に立設された胴部122aと、胴部122aの先端から左方向に延出した爪部122bと、を有している。
図5(c)及び
図5(d)に示すように、爪部122bは、その後面122cが、被係合部37の爪部37b前面37cと係合する係合面となっている。すなわち、爪部122bは、前後方向(昇降方向に直交する方向)において被係合部37と係合して、キャリアプレート3を位置固定する。これによって、仮保持部122は、窓ガラスGを取り付ける前のキャリアプレート3を位置固定する。これにより、窓ガラスGを取り付ける前のキャリアプレート3がモジュールパネル12に位置固定される。具体的には、キャリアプレート3が前後方向に動かないように、且つ、キャリアプレート3がワイヤ取付け部35、36を中心に回転しない(前後に傾かない)ように位置固定される。キャリアプレート3に対する窓ガラスGの取付けは、被係合部37と仮保持部122(の爪部122b)とを係合させ、キャリアプレート3がモジュールパネル12に位置固定させた状態で行われる。
【0024】
なお、被係合部37と仮保持部122とが係合した状態におけるキャリアプレート3の位置は、キャリアプレート3の本来の昇降位置よりも後方に位置ズレしている。そのため、キャリアプレート3が仮保持部122から外れた状態で、窓ガラスGの昇降動作を行うときには、キャリアプレート3の被係合部37が仮保持部122に干渉しないようになっている。
【0025】
一方、
図4及び
図6に示すように、仮保持部122及び被係合部37は、昇降方向に倣うように傾いて形成されており、
図5(d)に示すように、仮保持部122は、昇降方向においては、被係合部37と非係合となっている。そのため、仮保持部122は、窓ガラスGをキャリアプレート3に取り付けた後に、爪部122bが被係合部37と係合した状態において、窓ガラスGの昇降動作(ワイヤ4の駆動)を行い、キャリアプレート3を昇降方向に昇降させたとき、爪部122bと被係合部37との係合が解除され、キャリアプレート3が外れる構成となっている。なお、寸法誤差によって意図せず、爪部122bと被係合部37との係合が解除されてしまわないように、仮保持部122の爪部122bの昇降方向における幅は、被係合部37の爪部37bの昇降方向における幅より広く形成されている。
【0026】
また、
図5(b)に示すように、爪部122bの先端側前面には、被係合部37を仮保持部122に押し込んだときに被係合部37と接触して、キャリアプレート3を誘導する誘導斜面122dが形成されている。誘導斜面122dは、爪部122bの先端側に向かって前方から後方に傾斜した傾斜面である。
【0027】
図7(a)に示すように、被係合部37を仮保持部122に押し込むとき、まず、仮保持部122の誘導斜面122dが、被係合部37の傾斜面37dに接触する。そして、被係合部37を仮保持部122に押し込んでいくと、
図7(b)に示すように、誘導斜面122dによって被係合部37が仮保持部122の爪部122b先端に向かって誘導され、連結されたワイヤ4を引っ張るようにしてキャリアプレート3が左方向に誘導されていく。そして、被係合部37を仮保持部122に更に押し込んでいき、
図7(c)に示すように、被係合部37が仮保持部122の爪部122b先端に達し、被係合部37の爪部37bが仮保持部122の爪部122bの後方に達すると、ワイヤ4の復元力によって、キャリアプレート3が右方向に戻り、被係合部37の爪部37b前面37cと、仮保持部122の爪部122b後面122cと、が係合する。このように、誘導斜面122dは、被係合部37を仮保持部122に押し込んだとき、被係合部37と仮保持部122とが係合するように、キャリアプレート3を誘導する。これにより、仮保持部122は、被係合部37が仮保持部122に押し込まれることで、被係合部37と係合する構成となっている。
【0028】
次に
図9を参照して、ウインドレギュレータ1をドアDに組み付けるウインドレギュレータ1の組付け動作(組付け方法)について説明する。本組付け動作は、
図8に示すように、モジュールパネル12に、ウインドレギュレータ1におけるガラスホルダ2、2以外の各部を組み付け、各キャリアプレート3、3を各開口部121、121の位置に位置させた状態で行われる。より言えば、各キャリアプレート3、3のボルト挿通孔33bを各開口部121、121の位置に位置させた状態で行われる。
【0029】
ウインドレギュレータ1の組付け動作では、まず、
図9(b)に示すように、各キャリアプレート3、3の被係合部37を各仮保持部122、122に押し込むことで、各キャリアプレート3、3の被係合部37と各仮保持部122とを係合させる。これにより、各キャリアプレート3、3をモジュールパネル12に位置固定させる。なお、被係合部37と仮保持部122とが係合した状態のキャリアプレート3の位置は、本来のキャリアプレート3の昇降位置から後方に位置ズレしているため、ワイヤ4(上昇側のワイヤ4及び下降側のワイヤ4)を後方に引っ張る形でキャリアプレート3を後方に移動させて、被係合部37と仮保持部122とを係合させる。また、被係合部37と仮保持部122とが係合した状態では、キャリアプレート3が、ワイヤ4によって前方に引っ張られた状態になっている。
【0030】
各キャリアプレート3、3の被係合部37と各仮保持部122、122とを係合させたら、ガラスホルダ2以外の各部が組み付けられたモジュールパネル12をドアDのドアパネルに取り付ける。その後、
図9(c)に示すように、下端に2つのガラスホルダ2、2が固定された窓ガラスGを、ドアDのサッシに入れ込んで、各キャリアプレート3、3に取り付けられる位置まで下方に移動させる。すなわち、各ガラスホルダ2,2が各キャリアプレート3、3に達する位置まで窓ガラスGを移動させる。
【0031】
窓ガラスGを移動させたら、
図9(d)に示すように、キャリアプレート3がモジュールパネル12に位置固定された状態で、モジュールパネル12の開口部121、121から、締結ボルトBによって各ガラスホルダ2、2に各キャリアプレート3、3を締結する。これによって、各ガラスホルダ2、2を介して、窓ガラスGが各キャリアプレート3、3に取り付けられる。
【0032】
窓ガラスGを取り付けたら、
図9(e)に示すように、駆動部7を駆動して窓ガラスGの昇降動作(上昇動作又は下降動作)を行うことで、各キャリアプレート3、3の被係合部37と各仮保持部122、122との係合を解除し、仮保持部122、122から各キャリアプレート3、3を外す。これにより、本組付け動作を終了する。
【0033】
(第2実施形態)
次に
図10及び
図11を参照して、第2実施形態のウインドレギュレータ1について、第1実施形態と異なる部分のみ説明する。第2実施形態のウインドレギュレータ1は、ガラスホルダ2にキャリアプレート3を締結するときに、仮保持部122から被係合部37が外れ、キャリアプレート3が外れるようにしたものである。
図10(a)は、第2実施形態のウインドレギュレータ1における被係合部37の下面図である。なお、
図10に示す各下面図は、いずれも昇降方向下側から見た下面図であり、第1実施形態と同様、被係合部37及び仮保持部122の説明は、昇降方向及び前後方向に直交する方向を左右方向として説明する。
図10(a)に示すように、第2実施形態の被係合部37は、本体部34の後面に立設された立設部201と、立設部201の先端に形成され、立設部201より幅広に形成された先端部202と、を有している。先端部202は、後端から左右端まで延びる後側傾斜面202a、202aと、前端から左右端まで延びる前側傾斜面202b、202bと、が形成された八角形状を有している。
【0034】
図10(b)は、第2実施形態のウインドレギュレータ1における仮保持部122を示した下面図である。
図10(b)に示すように、第2実施形態の仮保持部122は、全体として角「U」字状に形成されており、モジュールパネル12の前面から突出し、左右方向に延在した平板部211と、平板部211の左右両端から前方に立設された一対の係合爪212、212と、を有している。
図10(c)に示すように、一対の係合爪212、212は、その各先端が内側に斜めに屈曲して形成されており、この各先端の内面が、上記先端部202の各前側傾斜面202b、202bと係合する。これによって、一対の係合爪212、212は、モジュールパネル12から離間する方向において、被係合部37と係合して、キャリアプレート3を位置固定する。これにより、仮保持部122は、窓ガラスGに取り付ける前のキャリアプレート3を位置固定し、窓ガラスGに取り付ける前のキャリアプレート3がモジュールパネル12に位置固定される。
【0035】
また、一対の係合爪212、212は、その両先端の間に、被係合部37の先端部202より幅狭の隙間を形成すると共に、相互に拡開するように変形可能に構成されている。被係合部37が仮保持部122に押し込まれたとき、後側傾斜面202a、202aによって一対の係合爪212、212が拡開するように変形し、被係合部37の先端部202が一対の係合爪212、212の間を通過して、被係合部37と仮保持部122(の一対の係合爪212、212)とが係合する。このように、被係合部37が仮保持部122に押し込まれることで、被係合部37と仮保持部122とが係合し、被係合部37が仮保持部122に保持される。一方、一対の係合爪212、212は、被係合部37と係合した状態において、被係合部37にモジュールパネル12から離間する方向への所定の力(所定以上の力)が作用したとき、前側傾斜面202b、202bによって拡開するように変形する。すなわち、仮保持部122は、一対の係合爪212、212と被係合部37とが係合した状態において、被係合部37にモジュールパネル12から離間する方向への所定の力が作用したとき、被係合部37との係合が解除されるように一対の係合爪212、212が変形し、キャリアプレート3が外れる構成となっている。第2実施形態では、キャリアプレート3をガラスホルダ2に締結するときの締結力によって、被係合部37にモジュールパネル12から離間する方向への力が作用し、これによって、仮保持部122からキャリアプレート3が外れるようになっている。
【0036】
次に
図11を参照して、第2実施形態のウインドレギュレータ1の組付け動作について説明する。第2実施形態の組付け動作は、キャリアプレート3をガラスホルダ2に締結するときに仮保持部122からキャリアプレート3が外れる点、及び締結後の昇降を省略した点で、第1実施形態とは異なっている。
図11(b)に示すように、キャリアプレート3をガラスホルダ2に締結するとき、締結ボルトBをガラスホルダ2のボルト締結孔22bに締め込んでいくと、締結ボルトBの締結力によって、キャリアプレート3がガラスホルダ2に徐々に近づいていく。このとき、被係合部37の前側傾斜面202b、202bによって、仮保持部122の一対の係合爪212、212が押し開かれる。その後、
図11(c)に示すように、締結ボルトBをガラスホルダ2のボルト締結孔22bに更に締め込んでいくと、一対の係合爪212、212から被係合部37が外れて仮保持部122からキャリアプレート3が外れると共に、キャリアプレート3のガラスホルダ2への締結が終了する。これにより、第2実施形態の組付け動作が終了する。
【0037】
(第3実施形態)
次に
図12及び
図13を参照して、第3実施形態のウインドレギュレータ1について説明する。第3実施形態のウインドレギュレータ1は、窓ガラスGを、キャリアプレート3に取り付けられる位置まで移動するときに、キャリアプレート3をガラスホルダ2に引き寄せる構造を有し、キャリアプレート3がガラスホルダ2に引き寄せられたとき、仮保持部122からキャリアプレート3が外れるようにしたものである。
図12に示すように、第3実施形態のキャリアプレート3は、
図4に示す各部に加え、窓ガラスGをキャリアプレート3に取り付けられる位置まで移動させるときのガラスホルダ2に接触し、キャリアプレート3をガラスホルダ2に引き寄せる引寄せ部221を有している。引寄せ部221は、キャリア締結部33の左端から前方に延びた後、上方に屈曲された「L」字状の腕部221aと、腕部221aの先端に配設された樹脂製の接触部221bと、を有している。接触部221bの上部後側には、上端から後端まで延びる誘導斜面221cが形成されている。窓ガラスGをキャリアプレート3に取り付けられる位置に移動するとき、この誘導斜面221cがガラスホルダ2に接触し、誘導斜面221cによってキャリアプレート3がガラスホルダ2に引き寄せられる。その後は、引寄せ部221によって、キャリアプレート3とガラスホルダ2との近接状態が維持される。すなわち、ガラスホルダ2に、キャリアプレート3が位置固定された状態となる(仮固定)。
【0038】
一方、第3実施形態の被係合部37及び仮保持部122は、第2実施形態と同一の形状及び構造を有している。特に、仮保持部122は、一対の係合爪212、212と仮保持部122とが係合した状態において、被係合部37にモジュールパネル12から離間する方向への所定の力が作用したとき、被係合部37との係合が解除されるように一対の係合爪212、212が変形し、キャリアプレート3が外れる構成になっている。第3実施形態では、仮保持部122は、引寄せ部221によりキャリアプレート3がガラスホルダ2に引き寄せたときの力によって、キャリアプレート3が外れるようになっている。
【0039】
次に
図13を参照して、第3実施形態のウインドレギュレータ1の組付け動作について説明する。第3実施形態の組付け動作は、窓ガラスGをキャリアプレート3に取り付ける位置まで移動するとき、キャリアプレート3をガラスホルダ2に引き寄せる点、キャリアプレート3をガラスホルダ2に引き寄せるときに仮保持部122からキャリアプレート3が外れる点、及び締結後の昇降を省略した点で、第1実施形態とは異なっている。
図13(b)に示すように、窓ガラスGをサッシから入れ込んで、窓ガラスGをキャリアプレート3に取り付ける位置まで下方に移動するとき、引寄せ部221がガラスホルダ2に接触し、キャリアプレート3をガラスホルダ2に引き寄せていく。このとき、被係合部37の前側傾斜面202b、202bによって、仮保持部122の一対の係合爪212、212が押し開かれる。その後、
図13(c)に示すように、窓ガラスGの移動が進み、キャリアプレート3をガラスホルダ2に更に引き寄せていくと、一対の係合爪212、212から被係合部37が外れて仮保持部122からキャリアプレート3が外れると共に、窓ガラスGの移動及びキャリアプレート3の引寄せが終了する。その後、キャリアプレート3とガラスホルダ2とを締結することで、第3実施形態の組付け動作が終了する。
【0040】
(実施形態の作用及び効果)
以上、上記各実施形態によれば、モジュールパネル12に仮保持部122を設けたことで、モジュールパネル12にキャリアプレート3を位置固定させた状態で、キャリアプレート3に窓ガラスGを取り付けることができる。これにより、キャリアプレート3に対する窓ガラスGの容易に行うことができる。すなわち、従来のレールレスのワイヤ式ウインドレギュレータでは、キャリアプレート3に窓ガラスGを取り付けるとき、キャリアプレート3がワイヤ4に連結されるのみのフリーの状態であったため、キャリアプレート3の位置が動いてしまい、特にキャリアプレート3がワイヤ取付け部35、36を中心に回転して(傾いて)しまい、窓ガラスGを取り付け辛いという問題があったが、上記実施形態の構成によれば、モジュールパネル12にキャリアプレート3を位置固定させた状態で、キャリアプレート3に窓ガラスGを取り付けることができるため、キャリアプレート3に対する窓ガラスGの容易に行うことができる。
【0041】
また、第1実施形態の構成によれば、動作テスト等で駆動部7を駆動し窓ガラスGの昇降動作を行うと、仮保持部122からキャリアプレート3が外れる構成であるため、仮保持部122からキャリアプレート3を取り外す手間を省くことができる。
【0042】
また、第2実施形態の構成によれば、キャリアプレート3をガラスホルダ2に締結するときの締結力によって、仮保持部122からキャリアプレート3が外れる構成であるため、仮保持部122からキャリアプレート3を取り外す手間を省くことができる。
【0043】
さらに、第3実施形態の構成によれば、キャリアプレート3をガラスホルダ2に引き寄せるときの力によって、仮保持部122からキャリアプレート3が外れる構成であるため、仮保持部122からキャリアプレート3を取り外す手間を省くことができる。
【0044】
また、上記各実施形態によれば、被係合部37を仮保持部122に押し込むことで、被係合部37と仮保持部122とが係合する構成であるため、キャリアプレート3を仮保持部122に容易に取り付けることができる。
【0045】
(その他の実施形態について)
なお、上記第2及び第3実施形態においては、被係合部37が、八角形状の先端部202を有し、仮保持部122が、角「U」字状である構成であったが、
図14(a)に示すように、被係合部37が、円形状の先端部202を有し、仮保持部122が、横倒し「C」字状である構成であっても良い。かかる場合、被係合部37において、円形状の後側右部及び後側左部が後側傾斜面202a、202aとなり、円形状の前側右部及び前側左部が前側傾斜面202b、202bとなる。また、仮保持部122において、右半部及び左半部が、一対の係合爪212、212となる。
【0046】
また、上記第2及び第3実施形態において、第1実施形態と同様のフック状の被係合部37及び仮保持部122を用いる構成であっても良い。かかる場合、被係合部37にモジュールパネル12から離れる方向への所定の力が作用したとき、フック状の被係合部37及び仮保持部122が、相互の係合が解除されるように変形する係合爪として機能する。
【0047】
また、上記第1実施形態において、第2実施形態と同様、被係合部37が、立設部201と立設部201より幅広に形成された先端部202とを有し、仮保持部122が、一対の係合爪212、212を有する構成であっても良い。かかる場合、
図14(b)に示すように、被係合部37において、先端部202を前側傾斜面202b、202bを省略した台形状とし、仮保持部122において、係合爪212の先端を左右方向に垂直に屈曲させ、仮保持部122全体を横倒し角「C」字状にする。また、
図14(c)に示すように、被係合部37において、先端部202を半円状とし、仮保持部122を、先端部202の半円状に倣う横倒し「C」字状にする構成であっても良い。かかる場合、第2実施形態の変形例と同様、仮保持部122において、右半部及び左半部が一対の係合爪212となる。これらの場合には、一対の係合爪212が、前後方向(昇降方向に直交する方向)において被係合部37と係合して、キャリアプレート3を位置固定すると共に、被係合部37と係合した状態において、キャリアプレート3を昇降方向に移動させたとき、被係合部37との係合が解除される爪部として機能する。
【0048】
さらに、上記第2及び第3実施形態、並びに上記各変形例において、被係合部37の形状と仮保持部122の形状とを逆にする構成であっても良い。すなわち、仮保持部122が、立設部201と立設部201より幅広に形成された先端部202とを有し、被係合部37が、一対の係合爪212、212を有する構成であっても良い。
【0049】
なお、上記各実施形態においては、被係合部37を、キャリアプレート3における樹脂成形部31の左端に配設する構成であったが、被係合部37を、キャリアプレート3全体の左端、すなわち、金属成形部32の左端に配設する構成であっても良い。かかる場合、被係合部37を、モジュールパネル12の開口部121を超えた位置に配設し、仮保持部122を、開口部121の左側に隣接して配設する構成とする。
【0050】
また、上記各実施形態においては、キャリアプレート3が樹脂製の部材と金属製の部材とから成り、キャリアプレート3を金属と樹脂との2種類の材料で構成したが、キャリアプレート3全体を樹脂製の部材で構成し、キャリアプレート3を樹脂のみで構成しても良い。
【0051】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記した実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1:ウインドレギュレータ、 2:ガラスホルダ、 3:キャリアプレート、 4:ワイヤ、 7:駆動部、 12:モジュールパネル、 33:キャリア締結部、 37:被係合部、 122:仮保持部、 122b:爪部、 212:係合爪、 221:引寄せ部、 D:ドア、 G:窓ガラス