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特許7431708酸性ガス除去制御装置、酸性ガス除去制御方法、および酸性ガス除去装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】酸性ガス除去制御装置、酸性ガス除去制御方法、および酸性ガス除去装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20240207BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20240207BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
B01D53/14 220
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020153278
(22)【出願日】2020-09-11
(65)【公開番号】P2022047388
(43)【公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】加藤 康博
(72)【発明者】
【氏名】宇田津 満
(72)【発明者】
【氏名】村岡 大悟
(72)【発明者】
【氏名】森垣 勇人
(72)【発明者】
【氏名】村井 伸次
(72)【発明者】
【氏名】藤田 己思人
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-012899(JP,A)
【文献】特開2016-107203(JP,A)
【文献】特開2011-000529(JP,A)
【文献】国際公開第2013/132962(WO,A1)
【文献】特開2012-130879(JP,A)
【文献】特開平06-154554(JP,A)
【文献】特開2017-113665(JP,A)
【文献】国際公開第2014/077373(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14-53/18
B01D 53/34-53/73
B01D 53/74-53/85
C01B 32/00-32/991
F23J 13/00-99/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性ガスとして二酸化炭素を含む第1ガスとリーン液とを接触させ、前記二酸化炭素を吸収した前記リーン液であるリッチ液と、前記二酸化炭素が除去された前記第1ガスを含む第2ガスとを排出する吸収部と、
前記吸収部により排出された前記リッチ液から前記二酸化炭素を分離し、前記二酸化炭素と分離された前記リッチ液である前記リーン液と、前記リッチ液から分離された前記二酸化炭素を含む第3ガスとを排出する再生部と、
前記再生部により排出された前記リーン液を加熱し、加熱された前記リーン液を前記再生部に戻すリボイラと、
前記再生部内の前記リーン液の温度を計測する計測部と、
を備える酸性ガス除去装置を制御する酸性ガス除去制御装置であって、
前記計測部により計測された前記温度を受信する受信部と、
前記受信部により受信された前記温度に基づいて、前記リッチ液または前記リーン液からの酸成分の除去を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記受信部により受信された前記温度が第1設定温度まで上昇した場合に、前記酸成分の除去を開始し、
前記受信部により受信された前記温度が前記第1設定温度より高い間は、前記酸成分の除去を継続し、
前記受信部により受信された前記温度が前記第1設定温度より低い第2設定温度まで下降した場合に、前記酸成分の除去を終了し、
前記第1設定温度と前記第2設定温度との差は、1℃~20℃である、
酸性ガス除去制御装置。
【請求項2】
前記第1設定温度は、前記再生部内の全圧における水の飽和温度より低い、請求項1に記載の酸性ガス除去制御装置。
【請求項3】
前記酸性ガス除去装置は、前記リッチ液または前記リーン液から前記酸成分を除去する酸成分除去部をさらに備え、
前記制御部は、前記受信部により受信された前記温度に基づいて、前記酸成分除去部による前記酸成分の除去を制御する、
請求項1または2に記載の酸性ガス除去制御装置。
【請求項4】
前記酸性ガス除去装置は、前記リッチ液または前記リーン液に補給液を補給する補給部と、前記リッチ液または前記リーン液から前記酸成分を除去する酸成分除去部とをさらに備え、
前記制御部は、前記受信部により受信された前記温度に基づいて、前記補給部による前記補給液の補給と、前記酸成分除去部による前記酸成分の除去とを制御し、
前記補給液は、前記リッチ液または前記リーン液への補給用の吸収液成分を含む新たな吸収液である、
請求項1または2に記載の酸性ガス除去制御装置。
【請求項5】
前記補給部は、前記リッチ液または前記リーン液に前記補給液を補給する第1流路に設けられた第1バルブを備え、
前記制御部は、前記第1バルブを制御することで、前記補給部による前記補給液の補給を制御する、請求項4に記載の酸性ガス除去制御装置。
【請求項6】
前記吸収部は、前記第1ガスと前記リーン液とを接触させる気液接触部を備え、
前記第1流路は、前記吸収部内における前記気液接触部の下方の空間に前記補給液を導入することで、前記吸収部内の前記リッチ液に前記補給液を補給する、請求項5に記載の酸性ガス除去制御装置。
【請求項7】
前記酸成分除去部は、前記酸成分除去部に前記リッチ液または前記リーン液を供給する第2流路に設けられた第2バルブを備え、
前記制御部は、前記第2バルブを制御することで、前記酸成分除去部による前記酸成分の除去を制御する、請求項3または4に記載の酸性ガス除去制御装置。
【請求項8】
前記第2流路は、前記再生部から前記吸収部に向かう第3流路を流れる前記リーン液を前記酸成分除去部に供給する、請求項7に記載の酸性ガス除去制御装置。
【請求項9】
酸性ガスとして二酸化炭素を含む第1ガスとリーン液とを接触させ、前記二酸化炭素を吸収した前記リーン液であるリッチ液と、前記二酸化炭素が除去された前記第1ガスを含む第2ガスとを排出する吸収部と、
前記吸収部により排出された前記リッチ液から前記二酸化炭素を分離し、前記二酸化炭素と分離された前記リッチ液である前記リーン液と、前記リッチ液から分離された前記二酸化炭素を含む第3ガスとを排出する再生部と、
前記再生部により排出された前記リーン液を加熱し、加熱された前記リーン液を前記再生部に戻すリボイラと、
前記再生部内の前記リーン液の温度を計測する計測部と、
を備える酸性ガス除去装置を制御する酸性ガス除去制御方法であって、
前記計測部により計測された前記温度を受信部により受信し、
前記受信部により受信された前記温度に基づいて、前記リッチ液または前記リーン液からの酸成分の除去を制御部により制御する、
ことを含み、
前記受信部により受信された前記温度が第1設定温度まで上昇した場合に、前記酸成分の除去を前記制御部により開始し、
前記受信部により受信された前記温度が前記第1設定温度より高い間は、前記酸成分の除去を前記制御部により継続し、
前記受信部により受信された前記温度が前記第1設定温度より低い第2設定温度まで下降した場合に、前記酸成分の除去を前記制御部により終了する、
ことをさらに含み、
前記第1設定温度と前記第2設定温度との差は、1℃~20℃である、
酸性ガス除去制御方法。
【請求項10】
酸性ガスとして二酸化炭素を含む第1ガスとリーン液とを接触させ、前記二酸化炭素を吸収した前記リーン液であるリッチ液と、前記二酸化炭素が除去された前記第1ガスを含む第2ガスとを排出する吸収部と、
前記吸収部により排出された前記リッチ液から前記二酸化炭素を分離し、前記二酸化炭素と分離された前記リッチ液である前記リーン液と、前記リッチ液から分離された前記二酸化炭素を含む第3ガスとを排出する再生部と、
前記再生部により排出された前記リーン液を加熱し、加熱された前記リーン液を前記再生部に戻すリボイラと、
前記再生部内の前記リーン液の温度を計測する計測部と、
前記計測部により計測された前記温度に基づいて、前記リッチ液または前記リーン液からの酸成分の除去を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記計測部により計測された前記温度が第1設定温度まで上昇した場合に、前記酸成分の除去を開始し、
前記計測部により計測された前記温度が前記第1設定温度より高い間は、前記酸成分の除去を継続し、
前記計測部により計測された前記温度が前記第1設定温度より低い第2設定温度まで下降した場合に、前記酸成分の除去を終了し、
前記第1設定温度と前記第2設定温度との差は、1℃~20℃である、
酸性ガス除去装置。
【請求項11】
酸性ガスとして二酸化炭素を含む第1ガスとリーン液とを接触させ、前記二酸化炭素を吸収した前記リーン液であるリッチ液と、前記二酸化炭素が除去された前記第1ガスを含む第2ガスとを排出する吸収部と、
前記吸収部により排出された前記リッチ液から前記二酸化炭素を分離し、前記二酸化炭素と分離された前記リッチ液である前記リーン液と、前記リッチ液から分離された前記二酸化炭素を含む第3ガスとを排出する再生部と、
前記再生部により排出された前記リーン液を加熱し、加熱された前記リーン液を前記再生部に戻すリボイラと、
前記再生部内の前記リーン液の温度を計測する計測部と、
を備える酸性ガス除去装置を制御する酸性ガス除去制御装置であって、
前記計測部により計測された前記温度を受信する受信部と、
前記受信部により受信された前記温度に基づいて、前記リッチ液または前記リーン液への補給液の補給を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記受信部により受信された前記温度が第1設定温度まで上昇した場合に、前記補給液の補給を開始し、
前記受信部により受信された前記温度が前記第1設定温度より高い間は、前記補給液の補給を継続し、
前記受信部により受信された前記温度が前記第1設定温度より低い第2設定温度まで下降した場合に、前記補給液の補給を終了し、
前記第1設定温度と前記第2設定温度との差は、1℃~20℃であり、
前記補給液は、前記リッチ液または前記リーン液への補給用の吸収液成分を含む新たな吸収液である、
酸性ガス除去制御装置。
【請求項12】
前記酸性ガス除去装置は、前記リッチ液または前記リーン液に前記補給液を補給する補給部をさらに備え、
前記制御部は、前記受信部により受信された前記温度に基づいて、前記補給部による前記補給液の補給を制御する、
請求項11に記載の酸性ガス除去制御装置。
【請求項13】
酸性ガスとして二酸化炭素を含む第1ガスとリーン液とを接触させ、前記二酸化炭素を吸収した前記リーン液であるリッチ液と、前記二酸化炭素が除去された前記第1ガスを含む第2ガスとを排出する吸収部と、
前記吸収部により排出された前記リッチ液から前記二酸化炭素を分離し、前記二酸化炭素と分離された前記リッチ液である前記リーン液と、前記リッチ液から分離された前記二酸化炭素を含む第3ガスとを排出する再生部と、
前記再生部により排出された前記リーン液を加熱し、加熱された前記リーン液を前記再生部に戻すリボイラと、
前記再生部内の前記リーン液の温度を計測する計測部と、
を備える酸性ガス除去装置を制御する酸性ガス除去制御方法であって、
前記計測部により計測された前記温度を受信部により受信し、
前記受信部により受信された前記温度に基づいて、前記リッチ液または前記リーン液への補給液の補給を制御部により制御する、
ことを含み、
前記受信部により受信された前記温度が第1設定温度まで上昇した場合に、前記補給液の補給を前記制御部により開始し、
前記受信部により受信された前記温度が前記第1設定温度より高い間は、前記補給液の補給を前記制御部により継続し、
前記受信部により受信された前記温度が前記第1設定温度より低い第2設定温度まで下降した場合に、前記補給液の補給を前記制御部により終了する、
ことをさらに含み、
前記第1設定温度と前記第2設定温度との差は、1℃~20℃であり、
前記補給液は、前記リッチ液または前記リーン液への補給用の吸収液成分を含む新たな吸収液である、
酸性ガス除去制御方法。
【請求項14】
酸性ガスとして二酸化炭素を含む第1ガスとリーン液とを接触させ、前記二酸化炭素を吸収した前記リーン液であるリッチ液と、前記二酸化炭素が除去された前記第1ガスを含む第2ガスとを排出する吸収部と、
前記吸収部により排出された前記リッチ液から前記二酸化炭素を分離し、前記二酸化炭素と分離された前記リッチ液である前記リーン液と、前記リッチ液から分離された前記二酸化炭素を含む第3ガスとを排出する再生部と、
前記再生部により排出された前記リーン液を加熱し、加熱された前記リーン液を前記再生部に戻すリボイラと、
前記再生部内の前記リーン液の温度を計測する計測部と、
前記計測部により計測された前記温度に基づいて、前記リッチ液または前記リーン液への補給液の補給を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記計測部により計測された前記温度が第1設定温度まで上昇した場合に、前記補給液の補給を開始し、
前記計測部により計測された前記温度が前記第1設定温度より高い間は、前記補給液の補給を継続し、
前記計測部により計測された前記温度が前記第1設定温度より低い第2設定温度まで下降した場合に、前記補給液の補給を終了し、
前記第1設定温度と前記第2設定温度との差は、1℃~20℃であり、
前記補給液は、前記リッチ液または前記リーン液への補給用の吸収液成分を含む新たな吸収液である、
酸性ガス除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、酸性ガス除去制御装置、酸性ガス除去制御方法、および酸性ガス除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所や製鉄所では、様々なガスが使用され排出される。このようなガスの例は、化石燃料を燃焼させることで発生する燃焼排ガスや、石炭をガス化することで生成される石炭ガス化ガスや、燃料として使用される天然ガスなどである。これらのガスは、例えばCO(二酸化炭素)、SO(硫黄酸化物)、NO(窒素酸化物)、HS(硫化水素)などの酸性ガス成分を含んでいる。
【0003】
このような酸性ガス成分が大気中に放出されることを抑制するために、酸性ガス成分を吸収液に吸収させて、酸性ガス成分を除去する方法が精力的に研究されている。このような吸収液の例は、アミノ基含有化合物(アミン系化合物)を含む水溶液である。酸性ガス成分を含む処理対象ガスと吸収液とを気液接触させることで、処理対象ガス中の酸性ガス成分を吸収液に吸収させ、処理対象ガスから酸性ガス成分を除去することができる。
【0004】
例えば、排ガスと吸収液とを接触させて、排ガス中のCOを吸収液に吸収させる吸収塔と、COを吸収した吸収液を加熱して、吸収液からCOを放出させる再生塔とを備えるCO回収装置が知られている。COを放出して再生された吸収液は、再び再生塔から吸収塔に供給され、吸収塔内で再利用される。この装置では、吸収液が吸収塔と再生塔との間で循環して使用される。
【0005】
しかし、アミン成分などの吸収液成分は、熱の影響や酸素の影響などで分解する可能性や、吸収塔の出口から排出されるガスと共に放散される可能性がある。このような分解や放散が起こると、吸収液から徐々に吸収液成分が消失する。吸収液中の吸収液成分が減少すると、吸収液の酸性ガス回収性能が低下するため、定期的な吸収液成分の補給や吸収液の交換が必要となる。
【0006】
また、吸収液中のアミン成分が、硫化カルボニル、シアン化水素、チオシアン酸、チオ硫酸、その他の無機酸と反応すると、熱安定性アミン塩(HSAS:Heat Stable Amine Salt)と呼ばれる劣化物が生成される。熱安定性アミン塩は、熱の影響や酸素の影響などでアミン成分が分解することでも生成される。これらの熱安定性アミン塩は、再生塔内で吸収液を再生する際に与えられる熱では分解されず、吸収液から分離されないため、吸収液中に蓄積される。熱安定性アミン塩が吸収液中に蓄積されると、吸収液の酸性ガス回収性能が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平6-154554号公報
【文献】特開平8-89756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
CO回収装置などの酸性ガス除去装置では、アミン成分の補給や酸成分の除去により吸収液の酸性ガス吸収性能を維持するために、吸収液中のアミン含有量や酸蓄積量(酸成分蓄積量)を定期的に分析する必要がある。しかし、吸収液中のアミン含有量や酸蓄積量を定期的に分析することは、酸性ガス除去装置を運用する上で大きな負担となる。
【0009】
また、上述の再生塔は、吸収液を蒸気により加熱することで、吸収液からCOを放出させる。一方、吸収液中のアミン成分が減少したり、吸収液中に酸が蓄積したりすると、所定のCO回収量を維持する中で再生塔内の吸収液の温度は一般に高くなる。吸収液が高温になるほど、アミン成分が分解されやすくなるため、再生塔内の吸収液の温度はなるべく低く維持することが好ましい。
【0010】
そこで、本発明の実施形態は、吸収液成分の補給や酸成分の除去を好適に行うことが可能な酸性ガス除去制御装置、酸性ガス除去制御方法、および酸性ガス除去装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一の実施形態によれば、酸性ガス除去装置は、酸性ガスを含む第1ガスとリーン液とを接触させ、前記酸性ガスを吸収した前記リーン液であるリッチ液と、前記酸性ガスが除去された前記第1ガスを含む第2ガスとを排出する吸収部と、前記吸収部により排出された前記リッチ液から前記酸性ガスを分離し、前記酸性ガスと分離された前記リッチ液である前記リーン液と、前記リッチ液から分離された前記酸性ガスを含む第3ガスとを排出する再生部と、前記再生部内の前記リッチ液または前記リーン液の温度を計測する計測部とを備える。さらに、前記酸性ガス除去装置を制御する酸性ガス除去制御装置は、前記計測部により計測された前記温度を受信する受信部と、前記受信部により受信された前記温度に基づいて、前記リッチ液または前記リーン液への補給液の補給、または、前記リッチ液または前記リーン液からの酸成分の除去を制御する制御部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態の酸性ガス除去装置の構成を示す模式図である。
図2】第1実施形態のアミン濃度と再生塔スチル温度との関係を示すグラフである。
図3】第2実施形態の酸性ガス除去装置の構成を示す模式図である。
図4】第2実施形態の酸濃度と再生塔スチル温度との関係を示すグラフである。
図5】第3実施形態の酸性ガス除去装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1から図5において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の酸性ガス除去装置の構成を示す模式図である。図1の酸性ガス除去装置は例えば、処理対象ガス中のCOを回収するCO回収装置である。
【0015】
図1の酸性ガス除去装置は、吸収塔1と、熱交換器2と、再生塔3と、リボイラ4と、冷却器5と、循環ポンプ6と、冷却器7と、気液分離器8と、温度計11と、補給液タンク12と、補給液ポンプ13と、バルブ14と、制御装置15とを備えている。吸収塔1は、気液接触部1aと、ガス洗浄部1bとを備えている。再生塔3は、気液接触部3aを備えている。制御装置15は、受信部15aと、記憶部15bと、制御部15cとを備えている。吸収塔1は吸収部の例であり、再生塔3は再生部の例である。温度計11は計測部の例であり、制御装置15は酸性ガス除去制御装置の例である。補給液タンク12、補給液ポンプ13、およびバルブ14は補給部の例であり、バルブ14は第1バルブの例である。
【0016】
本実施形態の処理対象ガスは、COを含む排ガス101aであり、排ガス101a中のCOを酸性ガス除去装置内で吸収液に吸収させる。COが除去された排ガス101aである排ガス101bは、酸性ガス除去装置外に排出される。排ガス101aは第1ガスの例であり、排ガス101bは第2ガスの例である。
【0017】
CO含有濃度が高い吸収液はリッチ液と呼ばれ、CO含有濃度が低い吸収液はリーン液と呼ばれる。リーン液は、COを吸収することでリッチ液に変化する。リッチ液は、COを放出することでリーン液に変化する。
【0018】
本実施形態では、吸収塔1、熱交換器2、再生塔3、リボイラ4、および冷却器5の間で吸収液が循環する。吸収液は、このように循環する間に、リーン液からリッチ液に変化したり、リッチ液からリーン液に変化したりする。図1は、吸収塔1から熱交換器2へと流れるリッチ液102aと、熱交換器2から再生塔3へと流れるリッチ液102bと、再生塔3とリボイラ4との間を流れるリーン液102cと、再生塔3から熱交換器2へと流れるリーン液102dと、熱交換器2から冷却器5を介して吸収塔1へと流れるリーン液102eとを示している。
【0019】
本実施形態の吸収液は、アミン系化合物(アミノ基含有化合物)と水とを含むアミン系水溶液である。アミン系化合物は例えば、モノエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールのような第1級アミン類、ジエタノールアミン、2-メチルアミノエタノールのような第2級アミン類、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミンのような第3級アミン類、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、キシリレンジアミンのようなポリアミン類、ピペラジン類、ピペリジン類、ピロリジン類のような環状アミン類、メチルアミノカルボン酸のようなアミノ酸類などである。吸収液は、これらのアミン系化合物のうちの1種類のみを含んでいてもよいし、これらのアミン系化合物のうちの2種類以上を含んでいてもよい。本実施形態の吸収液は例えば、10~70重量%のアミン系化合物を含む水溶液である。
【0020】
本実施形態の吸収液は、アミン系化合物および水と共に、その他の物質を含んでいてもよい。このような物質の例は、化学反応を促進するための反応促進剤、COの吸収性能を向上させるための含窒素化合物、プラント設備の腐食を防止するための防食剤、吸収液の泡立ちを防止するための消泡剤、吸収液の劣化を防止するための酸化防止剤、吸収液のpHを調整するためのpH調整剤などである。吸収液は、このような物質を吸収液の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。
【0021】
排ガス101aの例は、火力発電所のボイラやガスタービンから排出される燃焼排ガスや、製鉄所で発生するプロセス排ガスである。排ガス101aは例えば、送風機により昇圧され、冷却塔で冷却された後、排ガスラインL1(例えば煙道)を介して吸収塔1内に導入される。排ガスラインL1は、吸収塔1内における気液接触部1aの下方の空間に、排ガス101aを導入する。
【0022】
吸収塔1は、吸収塔1内における気液接触部1aの下方の空間に排ガス101aを取り込み、吸収塔1内における気液接触部1aとガス洗浄部1bとの間の空間にリーン液102eを取り込む。気液接触部1aは、排ガス101aとリーン液102eとを接触させ、排ガス101a中のCOをリーン液102eに吸収させる。
【0023】
COが除去された排ガス101aは、ガス洗浄部1bに供給される。ガス洗浄部1bは、排ガス101aを洗浄し、排ガス101aに同伴するアミンを回収する。洗浄された排ガス101aは、処理済みガスである排ガス101bとして、吸収塔1から吸収塔出口ラインL2に排出され、吸収塔出口ラインL2から酸性ガス除去装置外に排出される。一方、COを吸収したリーン液102eは、リッチ液102aとして、吸収塔1からリッチ液ラインL3に排出される。
【0024】
本実施形態の気液接触部1aは、充填材で形成されており、これにより排ガス101aとリーン液102eとの気液接触効率を高めている。気液接触部1aの上方には、液分散器が設けられている。液分散器は、吸収塔1内に取り込まれたリーン液102eを、気液接触部1aへと分散落下させる。一方、吸収塔1内に取り込まれた排ガス101aは、吸収塔1の底部から頂部へと上昇する。吸収塔1内を上昇する排ガス101aが、気液接触部1a内でリーン液102eと対向流接触により接触すると、例えば式(1)や式(2)のような反応が起き、熱分解性塩(RNHCO)や熱安定性アミン塩(RNHX)が形成される。
【0025】
N+CO+HO → RNHCO ・・・(1)
N+HX → RNHX ・・・(2)
式(1)の反応により、排ガス101a中のCOがリーン液102eに吸収され、排ガス101aからCOが除去される。COを吸収したリーン液102eは、リッチ液102aとして、吸収塔1の底部に貯留される。リッチ液102aは、熱分解性塩と熱安定性アミン塩とを含んでいる。リッチ液102aはさらに、排ガス101aに含まれる酸素との反応により生じた有機酸を含みうる。リッチ液102aはさらに、排ガス101aに含まれるSO、NO、硫化カルボニル、シアン化水素、チオシアン酸、チオ硫酸、その他の無機酸を吸収して生じた熱安定性アミン塩を含みうる。
【0026】
気液接触部1aを通過した排ガス101aは、吸収塔1内をさらに上昇して、ガス洗浄部1bに供給される。ガス洗浄部1bのさらなる詳細については、後述する。
【0027】
吸収塔1の底部に貯留されたリッチ液102aは、吸収塔1からリッチ液ラインL3に排出される。リッチ液102aは、リッチ液ラインL3上の不図示のポンプにより昇圧され、リッチ液ラインL3上の熱交換器2に導入される。熱交換器2は、リッチ液102aとリーン液102dとの熱交換を行い、リッチ液102aを加熱する。熱交換器2は例えば、プレート熱交換器やシェル&チューブ熱交換器である。加熱されたリッチ液102aは、リッチ液102bとして、リッチ液ラインL3を介して再生塔3に導入される。
【0028】
再生塔3は、再生塔3内における気液接触部3aの上方の空間に、リッチ液102bを取り込み、再生塔3内における気液接触部3aの下方の空間に、リボイラ4からのガスを取り込む。気液接触部3aは、リボイラ4からのガスとリッチ液102bとを接触させ、リボイラ4からのガスでリッチ液102bを加熱する。その結果、リッチ液102bからCOが放出され、リッチ液102bからCOが分離される。リッチ液102bは、リッチ液102b中のすべてのCOを放出してもよいし、リッチ液102b中の一部のCOのみを放出してもよい。
【0029】
リッチ液102bから分離されたCOは、その他のガスと共に、再生塔出口ガス103aとして、再生塔3から再生塔出口ラインL4に排出される。再生塔出口ガス103aは、第3ガスの例である。一方、COと分離されたリッチ液102bは、リーン液102cとして再生塔3からリーン液ラインL5に排出されるか、リーン液102dとして再生塔3からリーン液ラインL6に排出される。このように、リッチ液102bは、再生塔3内でリーン液102c、102dとして再生される。
【0030】
リーン液ラインL5に排出されたリーン液102cは、リーン液ラインL5上のリボイラ4に導入される。リボイラ4は、リーン液102cと蒸気との熱交換を行い、リーン液102cを加熱する。その結果、リーン液102cからCOや水蒸気が発生する。加熱されたリーン液102cは、発生したCOや水蒸気と共に、リーン液ラインL5を介して再生塔3の底部に戻される。
【0031】
本実施形態の気液接触部3aは、上述の気液接触部1aと同様に、充填材で形成されている。気液接触部3aの上方には、液分散器が設けられている。液分散器は、再生塔3内に取り込まれたリッチ液102bを、気液接触部3aへと分散落下させる。一方、リボイラ4からのガス、即ち、リボイラ4から戻されたCOや水蒸気は、再生塔3の底部から頂部へと上昇する。再生塔3内を上昇する当該ガスが、気液接触部3a内でリッチ液102bと対向流接触により接触すると、リッチ液102bが当該ガスにより加熱される。その結果、リッチ液102bからCOが脱離したり、リッチ液102bから水蒸気が蒸発したりする。
【0032】
COを放出したリッチ液102bは、リーン液102c、102dとして、再生塔3の底部に貯留される。一方、リッチ液102bから発生したCOや水蒸気は、再生塔3内をさらに上昇した後、再生塔出口ガス103aとして再生塔3から再生塔出口ラインL4に排出される。再生塔出口ラインL4のさらなる詳細については、後述する。
【0033】
リーン液ラインL6に排出されたリーン液102dは、リーン液ラインL6上の不図示のポンプにより昇圧され、リーン液ラインL6上の熱交換器2に導入される。熱交換器2は、リーン液102dとリッチ液102aとの熱交換を行い、リーン液102dを冷却する。冷却されたリーン液102dは、リーン液102eとして、リーン液ラインL6を介して吸収塔1に導入される。なお、リーン液102eは、吸収塔1内に導入される前に、リーン液ラインL6上の冷却器5によりさらに冷却される。
【0034】
次に、ガス洗浄部1bのさらなる詳細を説明する。
【0035】
本実施形態のガス洗浄部1bは、排ガス101aを洗浄液104aにより洗浄し、排ガス101aに同伴するアミンを洗浄液104a中に回収する。ガス洗浄部1bは、排ガス101aの流れる方向において気液接触部1aの下流に配置されており、気液接触部1aの上方に配置されている。なお、ガス洗浄部1bは、吸収塔1外に設けられたガス洗浄塔としてもよい。
【0036】
ガス洗浄部1bの上方には、液分散器が設けられている。液分散器は、洗浄液104aをガス洗浄部1bへと分散落下させる。一方、排ガス101aは、吸収塔1の底部から頂部へと上昇する。吸収塔1内を上昇する排ガス101aは、ガス洗浄部1b内で洗浄液104aと接触することで、洗浄液104aにより洗浄される。洗浄された排ガス101aは、吸収塔1内をさらに上昇した後、処理済みガスである排ガス101bとして酸性ガス除去装置外に排出される。
【0037】
一方、アミンを回収した洗浄液104aは、ガス洗浄部1bの下方に設けられた不図示の洗浄液貯留部に貯留される。洗浄液貯留部は、洗浄液ラインL7と連結されている。洗浄液貯留部に貯留された洗浄液104aは、洗浄液ラインL7上の循環ポンプ6により送液され、ガス洗浄部1bの上方の液分散器に再び供給される。このように、洗浄液104aは、ガス洗浄部1bと洗浄液ラインL7との間を循環して使用される。
【0038】
洗浄液104aは、例えば純水や硫酸水である。一般に、洗浄液104aのpHが低いほど、洗浄液104aの洗浄効率は高くなる。
【0039】
洗浄液104aを使用し続けると、洗浄液104a中のアミン濃度が上昇し、洗浄液104aのアミン回収性能が低下する。そのため、本実施形態では、ガス洗浄部1bと洗浄液ラインL7との間を循環している洗浄液104aの一部を、酸性ガス除去装置外に排出するか、酸性ガス除去装置内の吸収液と混合してもよい。この場合、洗浄液ラインL7に新しい洗浄液を補充してもよい。
【0040】
次に、再生塔出口ラインL4のさらなる詳細を説明する。
【0041】
再生塔出口ラインL4に排出された再生塔出口ガス103aは、COガスと水蒸気とを含んでいる。本実施形態の酸性ガス除去装置は、再生塔出口ガス103aを処理するための冷却器7および気液分離器8を、再生塔出口ラインL4上に備えている。
【0042】
冷却器7は、再生塔出口ガス103aを冷却し、再生塔出口ガス103a中の水蒸気を液体の水(凝縮水)へと凝縮させる。冷却器7は、前述のCOガスおよび凝縮水を含む気液二相流103bを気液分離器8に排出する。
【0043】
気液分離器8は、気液二相流103bをCOガス103cと凝縮水103dとに分離する。COガス103cは、気液分離器8から酸性ガス除去装置外に排出される。本実施形態の酸性ガス除去装置は、このようにして排ガス101aからCOガス103cを回収することができる。一方、凝縮水103dは、気液分離器8から再生塔出口ラインL4を介して再生塔3内に戻される。
【0044】
次に、温度計11、補給液タンク12、補給液ポンプ13、バルブ14、および制御装置15の詳細を説明する。
【0045】
温度計11は、再生塔3内の吸収液の温度を計測し、この温度の計測結果を含む信号を制御装置15に出力する。この吸収液は例えば、再生塔3内のリッチ液でもよいし、再生塔3内のリーン液でもよい。本実施形態の温度計11は、再生塔スチル温度、即ち、再生塔3の底部(スチル部)に貯留されたリーン液の温度を計測する。このリーン液は、再生塔3からリーン液102cまたはリーン液102dとして排出される。
【0046】
補給液タンク12は、酸性ガス除去装置内の吸収液に補給する補給液105aを貯留している。補給液105aは例えば、新たな吸収液である。補給液タンク12は、リッチ液に補給液105aを補給してもよいし、リーン液に補給液105aを補給してもよい。本実施形態では、補給タンク12と吸収塔1が補給液ラインL11で連結されており、補給タンク12内の補給液105aが、補給液ラインL11から吸収塔1に供給される。補給液ラインL11は、吸収塔1内における気液接触部1aの下方の空間に補給液105aを導入することで、吸収塔1の底部のリッチ液102aに補給液105aを補給する。補給液ラインL11は、第1流路の例である。
【0047】
補給液ポンプ13およびバルブ14は、補給液ラインL11上に設けられている。補給液ポンプ13は、補給液タンク12内の補給液105aを吸収塔1に送液する。バルブ14は、補給液タンク12から吸収塔1への補給液105aの送液を制御するために使用される。例えば、補給液105aの補給を開始する場合にはバルブ14が開放され、補給液105aの補給を停止する場合にはバルブ14が閉鎖される。
【0048】
制御装置15は、酸性ガス除去装置の種々の動作を制御する。制御装置15の例は、プロセッサ、電気回路、PC(Personal Computer)などである。制御装置15は例えば、温度計11からの信号を監視したり、バルブ14の開閉や開度を制御する。
【0049】
受信部15aは、再生塔3内の吸収液の温度の計測結果を含む信号を、温度計11から受信する。本実施形態の受信部15aは例えば、温度計11により計測された再生塔スチル温度のデータを受信する。
【0050】
記憶部15bは、酸性ガス除去装置の動作を制御するための種々のデータを記憶するために使用される。本実施形態の記憶部15bは例えば、後述する設定温度Ta1、Ta2を記憶している(図2を参照)。
【0051】
制御部15cは、受信部15aにより受信された温度に基づいて、酸性ガス除去装置内の吸収液への補給液105aの補給を制御する。例えば、酸性ガス除去装置内の吸収液に補給液105aを補給する際には、制御部15cは、補給液ラインL11上のバルブ14を開放する。これにより、補給液タンク12から補給液ラインL11を介して吸収塔1内に補給液105aが導入され、吸収塔1の底部のリッチ液102aに補給液105aが補給される。
【0052】
図2は、第1実施形態のアミン濃度と再生塔スチル温度との関係を示すグラフである。
【0053】
図2のグラフにおいて、横軸は、再生塔3の底部に貯留されたリーン液中のアミン濃度を示し、縦軸は、再生塔3の底部に貯留されたリーン液の温度(再生塔スチル温度)を示している。図2は、リボイラ4内で熱交換に使用される蒸気の流量が一定の場合における、アミン濃度と再生塔スチル温度との関係を示している。図2に示すように、リーン液中のアミン濃度が低下すると、再生塔スチル温度が上昇する。
【0054】
上述のように、吸収液中のアミン成分が減少すると、吸収液のCO回収性能が低下するため、吸収液にアミン成分を補給することが望ましい。しかし、吸収液中のアミン成分が減少したことを検知するために、吸収液中のアミン含有量を定期的に分析することにすると、酸性ガス除去装置を運用する上で大きな負担となる。
【0055】
そこで、本実施形態の酸性ガス除去装置は、図2に示す関係を利用して、吸収液にアミン成分を補給する。例えば、再生塔スチル温度が高い場合には、制御部15cは、吸収液中のアミン濃度が低いと判断し、吸収液に補給液105aを補給する。一方、再生塔スチル温度が低い場合には、制御部15cは、吸収液中のアミン濃度が高いと判断し、吸収液に補給液105aを補給しない。本実施形態によれば、吸収液中のアミン含有量を分析せずに、代わりに吸収液の温度を計測することで、吸収液に補給液105aを補給するタイミングを判断することが可能となる。
【0056】
本実施形態では、このような制御を行うために、図2に示す設定温度Ta1、Ta2を使用する。設定温度Ta1は、アミン濃度がCa1の場合の再生塔スチル温度であり、設定温度Ta2は、アミン濃度がCa2の場合の再生塔スチル温度である。設定温度Ta1は、補給液105aの補給を開始するための閾値として使用される。設定温度Ta2は、補給液105aの補給を終了するための閾値として使用される。本実施形態では、設定温度Ta2が設定温度Ta1よりも低く(Ta2<Ta1)、アミン濃度Ca2がアミン濃度Ca1よりも高い(Ca2>Ca1)。設定温度Ta1は、第1設定温度の例である。設定温度Ta2は、第2設定温度の例である。
【0057】
次に、図1を再び参照し、本実施形態の酸性ガス除去装置の動作を説明する。
【0058】
制御部15cは、受信部15aにより受信された温度(受信温度)が、設定温度Ta1まで上昇した場合には、バルブ14を開放する。これにより、補給液105aの補給が開始され、酸性ガス除去装置内の吸収液中のアミン濃度が増加する。
【0059】
制御装置15cは、受信温度が設定温度Ta1よりも高い間は、バルブ14を開放し続け、補給液105aの補給を継続する。一方、制御装置15cは、受信温度が設定温度Ta1まで低下しても、バルブ14を閉鎖しない。制御装置15cは、受信温度が設定温度Ta2まで低下したら、バルブ14を閉鎖する。これにより、補給液105aの補給が終了される。
【0060】
本実施形態によれば、設定温度Ta2(補給終了の閾値)を設定温度Ta1(補給開始の閾値)よりも低く設定することで、受信温度が設定温度Ta1付近で振動した場合にバルブ14の開閉が短期間で繰り返されることを抑制することが可能となる。設定温度Ta1、Ta2は、例えば100℃~150℃である。また、設定温度Ta1と設定温度Ta2との差(Ta1-Ta2)は、例えば5℃~50℃である。
【0061】
制御装置15cは、受信温度が設定温度Ta2よりも低い間は、バルブ14を閉鎖し続け、補給液105aの補給を停止し続ける。一方、制御装置15cは、受信温度が設定温度Ta2まで上昇しても、バルブ14を開放しない。制御装置15cは、受信温度が設定温度Ta1まで上昇したら、バルブ14を再び開放する。これにより、補給液105aの補給が再び開始され、酸性ガス除去装置内の吸収液中のアミン濃度が増加する。本実施形態では、補給液105aの補給の開始と終了が交互に繰り返される。
【0062】
次に、本実施形態の酸性ガス除去装置の動作の種々の変形例を説明する。
【0063】
本実施形態では、再生塔スチル温度に基づく代わりに、リボイラ4内で熱交換に使用される必要蒸気流量に基づいて、補給液105aの補給を制御することも可能である。この場合、温度計11は流量計に置き換えられる。しかし、蒸気流量よりも吸収液の温度の方が吸収液温度の高温化を防いで管理しやすいため、再生塔スチル温度に基づいて補給液105aの補給を制御する方が望ましい。
【0064】
本実施形態では、補給開始と補給終了の両方の閾値として、設定温度Ta1を使用してもよい。例えば、受信温度が設定温度Ta1付近で振動する可能性が低い場合には、設定温度Ta1のみを閾値として使用してもよい。一方、受信温度が設定温度Ta1付近で振動する可能性が高い場合には、設定温度Ta1、Ta2の両方を閾値として使用することが望ましい。
【0065】
補給液105aは、吸収塔1の底部のリッチ液102a以外の吸収液に補給されてもよい。補給液105aは例えば、吸収塔1内、再生塔3内、リッチ液ラインL3上、リーン液ラインL5上、またはリーン液ラインL6上で、リッチ液102a、102bまたはリーン液102c、102d、102eに補給してもよい。
【0066】
また、補給液105aを吸収液に補給する際に、補給液105aを補給する量や時間は任意に設定可能である。例えば、受信温度が設定温度Ta1まで上昇して、補給液105aの補給が開始された場合に、制御部15cは、受信温度が設定温度Ta2まで低下したら補給液105aの補給を終了する代わりに、補給液105aの補給開始から所定の時間が経過したら、または所定の補給量が補給されたら、補給液105aの補給を終了してもよい。補給の完了後、所定の待ち時間を設定してもよい。所定の待ち時間の経過後の再生塔スチル温度が設定温度Ta2に達しているかを計測し、さらに補給を実施することで、補給に伴う再生塔スチル温度の突発的な変動の影響を低減することができる。
【0067】
また、制御部15cは、再生塔スチル温度の瞬時値に基づいて補給液105aの補給を制御してもよいし、再生塔スチル温度の平均値に基づいて補給液105aの補給を制御してもよい。前者の場合には、再生塔スチル温度の瞬時の変化を、補給液105aの補給に反映させることが可能となる。後者の場合には、再生塔スチル温度の短時間での変化を、誤差として無視することが可能となる。排ガス101a中のCO濃度の変動などの影響により、再生塔スチル温度も変動することがあるため、変化幅が大きい場合は平均値を用いることが好ましい。上記平均値は任意で設定することができるが、例えば、再生塔スチル温度の1時間~1日あたりの平均値である。
【0068】
また、設定温度Ta1、Ta2は、任意に設定可能である。設定温度Ta1は例えば、再生塔3内の全圧における水の飽和温度より低く設定することが望ましい。これにより、吸収液が飽和温度に達する前に、補給液105aの補給を開始することが可能となり、吸収液が高温になることを抑制できる。
【0069】
以上のように、本実施形態の制御部15cは、温度計11により計測された吸収液の温度に基づいて、吸収液への補給液105aの補給を制御する。よって、本実施形態によれば、吸収液への補給液105aの補給を好適に行うことが可能となる。例えば、吸収液中の吸収液成分の含有量を分析せずに、代わりに吸収液の温度を計測することで、吸収液に補給液105aを補給するタイミングを判断することが可能となる。
【0070】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態の酸性ガス除去装置の構成を示す模式図である。
【0071】
図3の酸性ガス除去装置は、図1の酸性ガス除去装置と同様の構成を有しているが、補給液タンク12、補給液ポンプ13、およびバルブ14の代わりに、バルブ16、電気透析装置17、および酸回収液供給部18を備えている。電気透析装置17は、吸収液精製室17aと、酸回収室17bと、陰イオン交換膜17cとを、少なくとも1つずつ備えている。バルブ16、電気透析装置17、および酸回収液供給部18は酸成分除去部の例であり、バルブ16は第2バルブの例である。
【0072】
バルブ16、電気透析装置17、および酸回収液供給部18は、別の手段に置き換えてもよい。このような手段の例は、蒸留、減圧蒸留、イオン交換樹脂、膜分離などである。以降は、電気透析を例として記載する。
【0073】
図3の酸性ガス除去装置はさらに、図1の酸性ガス除去装置と同様のラインを有しているが、補給液ラインL11の代わりに、リーン液ラインL12、酸回収液ラインL13、リーン液ラインL14、および酸回収液ラインL15を備えている。
【0074】
リーン液ラインL12は、リーン液ラインL6からバルブ16を介して電気透析装置17へと延びている。リーン液ラインL14は、電気透析装置17からリーン液ラインL6へと延びている。図3は、リーン液ラインL12を流れるリーン液102fと、リーン液ラインL14を流れるリーン液102gとを示している。本実施形態のリーン液ラインL12とリーン液ラインL14は、リーン液ラインL6に対し、冷却器5と吸収塔1との間の地点で連結されている。ただし、リーン液ラインL14とリーン液ラインL6との連結地点は、リーン液ラインL12とリーン液ラインL6との連結地点よりも下流に位置している。リーン液ラインL12は第2流路の例であり、リーン液ラインL6は第3流路の例である。
【0075】
一方、酸回収液ラインL13は、酸回収液供給部18から電気透析装置17へと延びている。酸回収液ラインL15は、電気透析装置17から酸回収液供給部18へと延びている。図3は、酸回収液ラインL13を流れる酸回収液106aと、酸回収液ラインL15を流れる酸回収液106bとを示している。
【0076】
バルブ16は、リーン液ラインL12上に設けられている。リーン液ラインL12は、図3に示すようにリーン液ラインL6と電気透析装置17とを連結しており、リーン液ラインL6を流れるリーン液102eの少なくとも一部を、リーン液102fとして、電気透析装置17に供給する。バルブ16は、リーン液ラインL6から電気透析装置17へのリーン液102fの送液を制御するために使用される。例えば、酸成分の除去を開始する場合にはバルブ16が開放され、酸成分の除去を停止する場合にはバルブ16が閉鎖される。
【0077】
電気透析装置17は、電気透析によりリーン液102fから酸成分を除去する。具体的には、本実施形態の電気透析装置17は、リーン液102fから酸回収液106aに酸成分を回収することで、リーン液102fから酸成分を除去する。酸成分が除去されたリーン液102fは、リーン液102gとして、電気透析装置17からリーン液ラインL14に排出され、リーン液ラインL14からリーン液ラインL6に戻される。一方、酸成分を回収した酸回収液106aは、酸回収液106bとして、電気透析装置17から酸回収液ラインL15に排出される。回収対象の酸成分は例えば、上述の熱安定性アミン塩(RNHX)であり、より詳細には、RNHX中のXである。この場合、酸回収液106aとして例えば、熱安定性アミン塩(RNHX)を含む水溶液を使用する。
【0078】
電気透析装置17は、不図示の陰極と不図示の陽極との間に、吸収液精製室17aと、酸回収室17bとを備えている。陰イオン交換膜17cは、吸収液精製室17aと酸回収室17bとの間に設けられている。電気透析装置17は、上記陰極と上記陽極との間に電圧が印加された状態で使用される。
【0079】
リーン液102fは、吸収液精製室17aに導入される。吸収液精製室17a内では、リーン液102f中のRNHXが、RNHとXとに電離している。吸収液精製室17a内のXは、陽極に引き付けられることで陰イオン交換膜17cを通過し、酸回収室17b内に移動する。
【0080】
酸回収液106aは、酸回収室17bに導入され、移動してきたXを回収する。
【0081】
リーン液102fは、リーン液102gとして、吸収液精製室17aから排出される。リーン液102gは、リーン液102fより低濃度のXを含んでいる。これは、リーン液102fからリーン液102gに変化する際に、RNHXが減少し、RNが増加したと表現することができる。このように、電気透析装置17は、リーン液102fからX(酸成分)を除去することができる。
【0082】
酸回収液106aは、酸回収液106bとして、酸回収室17bから排出される。酸回収液106bは、酸回収液106aより高濃度のXを含んでいる。このように、電気透析装置17は、リーン液102f中のX(酸成分)を酸回収液106aに回収することができる。
【0083】
酸回収液供給部18は、酸回収液106aを酸回収液ラインL13を介して電気透析装置17に供給する。酸回収液106aは例えば、電気透析が可能な電気導電性を有する液体であり、純水でもよいが、あらかじめ酸やアルカリや塩などを少量含んでいることが望ましい。このような酸の例は、硫酸、硝酸、ギ酸、酢酸などである。電気透析装置17内で使用された酸回収液106aは、酸回収液106bとして酸回収液ラインL15に排出され、酸回収液ラインL15から酸回収液供給部18に戻される。
【0084】
制御装置15は、第1実施形態の場合と同様に、酸性ガス除去装置の種々の動作を制御する。制御装置15は例えば、温度計11からの信号を監視したり、バルブ16の開閉や開度を制御する。
【0085】
受信部15aは、再生塔3内の吸収液の温度の計測結果を含む信号を、温度計11から受信する。本実施形態の受信部15aは例えば、第1実施形態の場合と同様に、温度計11により計測された再生塔スチル温度のデータを受信する。
【0086】
記憶部15bは、酸性ガス除去装置の動作を制御するための種々のデータを記憶するために使用される。本実施形態の記憶部15bは例えば、後述する設定温度Tb1、Tb2を記憶している(図4を参照)。
【0087】
制御部15cは、受信部15aにより受信された温度に基づいて、酸性ガス除去装置内の吸収液からの酸成分の除去を制御する。例えば、酸性ガス除去装置内の吸収液から酸成分を除去する際には、制御部15cは、リーン液ラインL12上のバルブ16を開放し、電気透析装置17を稼働させる。これにより、リーン液ラインL6からリーン液ラインL12を介して電気透析装置17内にリーン液102fが導入され、電気透析装置17によりリーン液102fから酸成分が除去される。
【0088】
図4は、第2実施形態の酸濃度と再生塔スチル温度との関係を示すグラフである。
【0089】
図4のグラフにおいて、横軸は、再生塔3の底部に貯留されたリーン液中の酸濃度(酸成分濃度)を示し、縦軸は、再生塔3の底部に貯留されたリーン液の温度(再生塔スチル温度)を示している。図4は、リボイラ4内で熱交換に使用される蒸気の流量が一定の場合における、酸濃度と再生塔スチル温度との関係を示している。図4に示すように、リーン液中の酸濃度が上昇すると、再生塔スチル温度が上昇する。
【0090】
上述のように、吸収液中に酸成分が蓄積し、吸収液中の酸濃度が増加すると、吸収液のCO回収性能が低下するため、吸収液から酸成分を除去することが望ましい。しかし、吸収液中の酸成分が増加したことを検知するために、吸収液中の酸蓄積量を定期的に分析することにすると、酸性ガス除去装置を運用する上で大きな負担となる。
【0091】
そこで、本実施形態の酸性ガス除去装置は、図4に示す関係を利用して、吸収液から酸成分を除去する。例えば、再生塔スチル温度が高い場合には、制御部15cは、吸収液中の酸濃度が高いと判断し、吸収液から酸成分を除去する。一方、再生塔スチル温度が低い場合には、制御部15cは、吸収液中の酸濃度が低いと判断し、吸収液から酸成分を除去しない。本実施形態によれば、吸収液中の酸蓄積量を分析せずに、代わりに吸収液の温度を計測することで、吸収液から酸成分を除去するタイミングを判断することが可能となる。
【0092】
本実施形態では、このような制御を行うために、図4に示す設定温度Tb1、Tb2を使用する。設定温度Tb1は、酸濃度がCb1の場合の再生塔スチル温度であり、設定温度Tb2は、酸濃度がCb2の場合の再生塔スチル温度である。設定温度Tb1は、酸成分の除去を開始するための閾値として使用される。設定温度Tb2は、酸成分の除去を終了するための閾値として使用される。本実施形態では、設定温度Tb2が設定温度Tb1よりも低く(Tb2<Tb1)、酸濃度Cb2が酸濃度Cb1よりも低い(Cb2<Cb1)。設定温度Tb1は、第1設定温度の例である。設定温度Tb2は、第2設定温度の例である。
【0093】
次に、図3を再び参照し、本実施形態の酸性ガス除去装置の動作を説明する。
【0094】
制御部15cは、受信部15aにより受信された温度(受信温度)が、設定温度Tb1まで上昇した場合には、バルブ16を開放し、電気透析装置17を稼働させる。これにより、酸成分の除去が開始され、酸性ガス除去装置内の吸収液中の酸濃度が減少する。
【0095】
制御装置15cは、受信温度が設定温度Tb1よりも高い間は、バルブ16を開放し続け、酸成分の除去を継続する。一方、制御装置15cは、受信温度が設定温度Tb1まで低下しても、バルブ16を閉鎖しない。制御装置15cは、受信温度が設定温度Tb2まで低下したら、バルブ16を閉鎖する。これにより、酸成分の除去が終了される。
【0096】
本実施形態によれば、設定温度Tb2(除去終了の閾値)を設定温度Tb1(除去開始の閾値)よりも低く設定することで、受信温度が設定温度Tb1付近で振動した場合にバルブ16の開閉が短期間で繰り返されることを抑制することが可能となる。設定温度Tb1、Tb2は、例えば100℃~150℃である。また、設定温度Tb1と設定温度Tb2との差(Tb1-Tb2)は、例えば1℃~20℃である。
【0097】
制御装置15cは、受信温度が設定温度Tb2よりも低い間は、バルブ16を閉鎖し続け、酸成分の除去を停止し続ける。一方、制御装置15cは、受信温度が設定温度Tb2まで上昇しても、バルブ16を開放しない。制御装置15cは、受信温度が設定温度Tb1まで上昇したら、バルブ16を再び開放し、電気透析装置17を稼働させる。これにより、酸成分の除去が再び開始され、酸性ガス除去装置内の吸収液中の酸濃度が減少する。本実施形態では、酸成分の除去の開始と終了が交互に繰り返される。
【0098】
次に、本実施形態の酸性ガス除去装置の動作の種々の変形例を説明する。
【0099】
本実施形態では、再生塔スチル温度に基づく代わりに、リボイラ4内で熱交換に使用される蒸気の流量に基づいて、酸成分の除去を制御することも可能である。この場合、温度計11は流量計に置き換えられる。しかし、蒸気流量よりも吸収液の温度の方が吸収液温度の高温化を防いで管理しやすいため、再生塔スチル温度に基づいて酸成分の除去を制御する方が望ましい。
【0100】
本実施形態では、除去開始と除去終了の両方の閾値として、設定温度Tb1を使用してもよい。例えば、受信温度が設定温度Tb1付近で振動する可能性が低い場合には、設定温度Tb1のみを閾値として使用してもよい。一方、受信温度が設定温度Tb1付近で振動する可能性が高い場合には、設定温度Tb1、Tb2の両方を閾値として使用することが望ましい。
【0101】
電気透析装置17および酸回収液供給部18からなる酸成分除去部は、吸収液から酸成分を除去する別の手段に置き換えてもよい。このような手段の例は、蒸留、減圧蒸留、イオン交換樹脂、膜分離などである。
【0102】
電気透析装置17は、リーン液ラインL6上のリーン液102e以外の吸収液を取り込んでもよい。電気透析装置17は例えば、吸収塔1内、再生塔3内、リッチ液ラインL3上、リーン液ラインL5上、またはリーン液ラインL6上のリッチ液102a、102bまたはリーン液102c、102d、102eを取り込んでもよい。ただし、電気透析装置17やイオン交換樹脂が取り込む吸収液は、低温であることが望ましいため、この場合の吸収液は、リッチ液102aやリーン液102eとすることが望ましい。リッチ液102aとリーン液102eとを比較した場合、リッチ液102a中のCOは酸除去の邪魔になるため、リッチ液102aよりリーン液102eを使用する方が望ましい。また、冷却器5の上流のリーン液102eの温度よりも、冷却器5の下流のリーン液102eの温度の方が低いため、冷却器5の下流のリーン液102eを使用することが望ましい。
【0103】
また、酸成分を除去する際に、電気透析装置17にリーン液102fや酸回収液106aを供給する量や、酸成分を除去する時間は、任意に設定可能である。例えば、受信温度が設定温度Tb1まで上昇して、酸成分の除去が開始された場合に、制御部15cは、受信温度が設定温度Tb2まで低下したら酸成分の除去を終了する代わりに、酸成分の除去から所定の時間が経過したら酸成分の除去を終了してもよい。酸成分除去の完了後、所定の待ち時間を設定することはさらに好ましい。所定の待ち時間の経過後の再生塔スチル温度が設定温度Tb2に達しているかを計測し、もしTb2より高い温度が継続するなら、さらに酸成分除去を実施することで、酸成分除去に伴う再生塔スチル温度の突発的な変動の影響を低減することができる。
【0104】
また、制御部15cは、再生塔スチル温度の瞬時値に基づいて酸成分の除去を制御してもよいし、再生塔スチル温度の平均値に基づいて酸成分の除去を制御してもよい。前者の場合には、再生塔スチル温度の瞬時の変化を、酸成分の除去に反映させることが可能となる。後者の場合には、再生塔スチル温度の短時間での変化を、誤差として無視することが可能となる。排ガス101a中のCO濃度の変動などの影響により、再生塔スチル温度も変動することがあるため、変化幅が大きい場合は平均値を用いることが好ましい。上記平均値は例えば、再生塔スチル温度の1時間~1日あたりの平均値である。
【0105】
また、設定温度Tb1、Tb2は、任意に設定可能である。設定温度Tb1は例えば、再生塔3内の全圧における水の飽和温度より低く設定することが望ましい。これにより、吸収液が飽和温度に達する前に、酸成分の除去を開始することが可能となり、吸収液が高温になることを抑制できる。
【0106】
また、本実施形態の設定温度Tb1は、第1実施形態の設定温度Ta1と同じ温度でも異なる温度でもよい。ただし、再生塔スチル温度の好ましい上限温度は、第1実施形態でも本実施形態でも同じである場合が多いと考えられるため、設定温度Tb1は設定温度Ta1と同じ温度であることが望ましい。
【0107】
また、本実施形態の設定温度Tb2は、第1実施形態の設定温度Ta2と同じ温度でも異なる温度でもよい。例えば、本実施形態のマージン温度「Tb1-Tb2」を、第1実施形態のマージン温度「Ta1-Ta2」と異なる温度に設定したい場合には、設定温度Tb1を設定温度Ta1と同じ温度に設定し、設定温度Tb2を設定温度Ta2と異なる温度に設定してもよい。
【0108】
以上のように、本実施形態の制御部15cは、温度計11により計測された吸収液の温度に基づいて、吸収液からの酸成分の除去を制御する。よって、本実施形態によれば、吸収液からの酸成分の除去を好適に行うことが可能となる。例えば、吸収液中の酸成分の含有量を分析せずに、代わりに吸収液の温度を計測することで、吸収液から酸成分を除去するタイミングを判断することが可能となる。
【0109】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態の酸性ガス除去装置の構成を示す模式図である。
【0110】
図5の酸性ガス除去装置は、吸収塔1と、熱交換器2と、再生塔3と、リボイラ4と、冷却器5と、循環ポンプ6と、冷却器7と、気液分離器8と、温度計11と、補給液タンク12と、補給液ポンプ13と、バルブ14と、制御装置15と、バルブ16と、電気透析装置17と、酸回収液供給部18とを備えている。このように、図5の酸性ガス除去装置は、図1に示す構成要素と図3に示す構成要素の両方を備えている。
【0111】
以下、本実施形態の制御装置15の動作を説明する。
【0112】
制御装置15は、第1および第2実施形態の場合と同様に、酸性ガス除去装置の種々の動作を制御する。制御装置15は例えば、温度計11からの信号を監視したり、バルブ14、16の開閉や開度を制御する。
【0113】
受信部15aは、再生塔3内の吸収液の温度の計測結果を含む信号を、温度計11から受信する。本実施形態の受信部15aは例えば、第1および第2実施形態の場合と同様に、温度計11により計測された再生塔スチル温度のデータを受信する。
【0114】
記憶部15bは、酸性ガス除去装置の動作を制御するための種々のデータを記憶するために使用される。本実施形態の記憶部15bは例えば、前述の設定温度Ta1、Ta2、Tb1、Tb2を記憶している(図2および図4を参照)。設定温度Ta1と設定温度Tb1は、同じ温度でも異なる温度でもよいし、設定温度Ta2と設定温度Tb2も、同じ温度でも異なる温度でもよい。本実施形態の以下の説明では、設定温度Ta1と設定温度Tb1は同じ温度とし(Ta1=Tb1)、設定温度Ta2と設定温度Tb2も同じ温度とする(Ta2=Tb2)。
【0115】
制御部15cは、受信部15aにより受信された温度に基づいて、酸性ガス除去装置内の吸収液への補給液105aの補給と、酸性ガス除去装置内の吸収液からの酸成分の除去とを制御する。例えば、酸性ガス除去装置内の吸収液に補給液105aを補給する際には、制御部15cは、補給液ラインL11上のバルブ14を開放する。これにより、補給液タンク12から補給液ラインL11を介して吸収塔1内に補給液105aが導入され、吸収塔1の底部のリッチ液102aに補給液105aが補給される。また、酸性ガス除去装置内の吸収液から酸成分を除去する際には、制御部15cは、リーン液ラインL12上のバルブ16を開放する。これにより、リーン液ラインL6からリーン液ラインL12を介して電気透析装置17内にリーン液102fが導入され、電気透析装置17によりリーン液102fから酸成分が除去される。
【0116】
次に、図5を引き続き参照し、本実施形態の酸性ガス除去装置の動作を説明する。
【0117】
制御部15cは、受信部15aにより受信された温度(受信温度)が、設定温度Ta1(=Tb1)まで上昇した場合には、バルブ14、16を開放する。これにより、補給液105aの補給が開始され、酸性ガス除去装置内の吸収液中のアミン濃度が増加する。さらには、酸成分の除去が開始され、酸性ガス除去装置内の吸収液中の酸濃度が減少する。
【0118】
上記のようにバルブ14、16を開放する際、バルブ14、16は、同時に開放してもよいし、所定の順番で開放してもよい。例えば、受信温度が設定温度Ta1まで上昇した場合には、まずバルブ14を開放し、次にバルブ16を開放してもよい。この場合、バルブ14、16を開放する順番を設定する設定データを、記憶部15b内にあらかじめ記憶しておいてもよい。
【0119】
制御装置15cは、受信温度が設定温度Ta1よりも高い間は、バルブ14、16を開放し続け、補給液105aの補給と酸成分の除去とを継続する。一方、制御装置15cは、受信温度が設定温度Ta1まで低下しても、バルブ14、16を閉鎖しない。制御装置15cは、受信温度が設定温度Ta2(=Tb2)まで低下したら、バルブ14、16を閉鎖する。これにより、補給液105aの補給と酸成分の除去とが終了される。
【0120】
上記のようにバルブ14、16を閉鎖する際、バルブ14、16は、同時に閉鎖してもよいし、所定の順番で開放してもよい。例えば、受信温度が設定温度Ta2まで低下した場合には、まずバルブ14を閉鎖し、次にバルブ16を閉鎖してもよい。この場合、バルブ14、16を閉鎖する順番を設定する設定データを、記憶部15b内にあらかじめ記憶しておいてもよい。
【0121】
本実施形態によれば、設定温度Ta2(補給終了および除去終了の閾値)を設定温度Ta1(補給開始および除去開始の閾値)よりも低く設定することで、受信温度が設定温度Ta1付近で振動した場合にバルブ14、16の開閉が短期間で繰り返されることを抑制することが可能となる。設定温度Ta1、Ta2は、例えば100℃~150℃である。また、設定温度Ta1と設定温度Ta2との差(Ta1-Ta2)は、例えば1℃~20℃である。
【0122】
制御装置15cは、受信温度が設定温度Ta2よりも低い間は、バルブ14、16を閉鎖し続け、補給液105aの補給と酸成分の除去とを停止し続ける。一方、制御装置15cは、受信温度が設定温度Ta2まで上昇しても、バルブ14、16を開放しない。制御装置15cは、受信温度が設定温度Ta1まで上昇したら、バルブ14、16を再び開放する。これにより、補給液105aの補給が再び開始され、酸性ガス除去装置内の吸収液中のアミン濃度が増加する。さらには、酸成分の除去が再び開始され、酸性ガス除去装置内の吸収液中の酸濃度が減少する。本実施形態では、補給液105aの補給の開始と終了が交互に繰り返され、かつ、酸成分の除去の開始と終了が交互に繰り返される。
【0123】
なお、第1実施形態の酸性ガス除去装置の動作の種々の変形例や、第2実施形態の酸性ガス除去装置の動作の種々の変形例は、本実施形態の酸性ガス除去装置の動作にも適用可能である。以下、本実施形態の酸性ガス除去装置の動作のさらなる変形例を説明する。
【0124】
一般に、酸性ガス除去装置内での吸収液成分の減少と酸成分の増加は、同時に起こる。そのため、補給液105aの補給と酸成分の除去の一方しか行わないと、再生塔スチル温度の上昇を抑制できない可能性がある。本実施形態によれば、受信温度が設定温度Ta1よりも高い場合には補給液105aの補給と酸成分の除去の両方を行うことで、再生塔スチル温度の上昇を効果的に抑制することが可能となる。
【0125】
制御装置15cは、受信温度が設定温度Ta1よりも高い間、バルブ14、16を開放し続ける代わりに、バルブ14、16を交互に開放してもよい。例えば、制御装置15cは、バルブ14を開放しバルブ16を閉鎖する第1処理と、バルブ14を閉鎖しバルブ16を開放する第2処理とを、交互に繰り返し行ってもよい。これにより、補給液105aの補給と、酸成分の除去とが、交互に繰り返し行われる。
【0126】
また、バルブ14、16を順番で開放する場合には、バルブ14、16はどのようなタイミングで開放してもよい。例えば、バルブ14は、受信温度が設定温度Ta1まで上昇したことが検出されたタイミングで開放し、バルブ16は、その後に所定量を補給または所定時間が経過しても受信温度が設定温度Ta2まで低下しないことが検出されたタイミングで開放してもよい。これにより、再生塔スチル温度を効果的に低下させることが可能となる。同様に、バルブ14、16を順番で閉鎖する場合には、バルブ14、16はどのようなタイミングで閉鎖してもよい。
【0127】
また、制御装置15cは、受信温度が設定温度Ta1より高くなったらバルブ14のみを開放し補給し、設定温度Ta2に到達したらバルブ14を閉鎖する第1処理の後、受信温度が設定温度Tb1より高くなったらバルブ16のみを開放し酸成分を除去し、設定温度Tb2に到達したらバルブ16を閉鎖する第2処理を、交互に繰り返しても構わない。さらに第1処理と第1処理を交互ではなく、第1処理→第2処理→第2処理→第1処理→第2処理→第2処理→と、プラントの運転実績に応じて第1処理と第2処理の頻度や繰り返しパターンを変えても構わない。これにより、再生塔スチル温度をより効果的に低下させることが可能となる。この場合、第1処理と第2処理の順番の設定データを、記憶部15b内にあらかじめ記憶しておいてもよい。
【0128】
以上のように、本実施形態の制御部15cは、温度計11により計測された吸収液の温度に基づいて、吸収液への補給液105aの補給と、吸収液からの酸成分の除去とを制御する。よって、本実施形態によれば、吸収液への補給液105aの補給と、吸収液からの酸成分の除去とを好適に行うことが可能となる。例えば、吸収液中の吸収液成分や酸成分の含有量を分析せずに、代わりに吸収液の温度を計測することで、吸収液に補給液105aを補給するタイミングと、吸収液から酸成分を除去するタイミングとを判断することが可能となる。
【0129】
なお、第1から第3実施形態の酸性ガス除去装置は、処理対象ガスからCO以外の酸性ガスを除去する装置でもよい。このような酸性ガスの例は、SO、NO、HSなどである。また、処理対象ガスは、排ガス以外のガスでもよい。
【0130】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置および方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置および方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0131】
1:吸収塔、1a:気液接触部、1b:ガス洗浄部、2:熱交換器、
3:再生塔、3a:気液接触部、4:リボイラ、5:冷却器、
6:循環ポンプ、7:冷却器、8:気液分離器、
11:温度計、12:補給液タンク、13:補給液ポンプ、14:バルブ、
15:制御装置、15a:受信部、15b:記憶部、15c:制御部、
16:バルブ、17:電気透析装置、17a:吸収液精製室、
17b:酸回収室、17c:陰イオン交換膜、18:酸回収液供給部、
101a:排ガス(処理前)、101b:排ガス(処理後)、
102a:吸収液(リッチ液)、102b:吸収液(リッチ液)、
102c:吸収液(リーン液)、102d:吸収液(リーン液)、
102e:吸収液(リーン液)、102f:吸収液(リーン液)、
102g:吸収液(リーン液)、103a:再生塔出口ガス、103b:気液二相流、
103c:COガス、103d:凝縮水、104a:洗浄液、105a:補給液、
106a:酸回収液(回収前)、106b:酸回収液(回収後)、
L1:排ガスライン、L2:吸収塔出口ライン、L3:リッチ液ライン、
L4:再生塔出口ライン、L5:リーン液ライン、L6:リーン液ライン、
L7:洗浄液ライン、L11:補給液ライン、L12:リーン液ライン、
L13:酸回収液ライン、L14:リーン液ライン、L15:酸回収液ライン
図1
図2
図3
図4
図5