(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】パワーデバイス用冷却器
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20240207BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20240207BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20240207BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H01L25/04 C
H05K7/20 N
(21)【出願番号】P 2020210997
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390000158
【氏名又は名称】日軽金ALMO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【氏名又は名称】中本 菊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】関 和仁
(72)【発明者】
【氏名】平山 智将
(72)【発明者】
【氏名】石田 祥一朗
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-172024(JP,A)
【文献】特開2006-310485(JP,A)
【文献】特開2008-205371(JP,A)
【文献】国際公開第2015/194259(WO,A1)
【文献】特開2006-324647(JP,A)
【文献】特開2019-140276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
H01L 25/07
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受熱面を有すると共に、長手方向の両端側に肉部を残して、長手方向に対して直交する幅方向に沿う互いに平行な複数の冷媒流路を有する扁平状の冷却器本体と、
上記冷却器本体の上記受熱面と反対側に装着され、上記冷媒流路の一端側に連通する冷媒流入路及び上記冷媒流路の他端側に連通する冷媒流出路を有するカバー材とからなり、
上記冷却器本体は、長手方向の一端側の上記肉部に上記冷媒流入路に連通する冷媒流入口が設けられ、他端側の上記肉部に上記冷媒流出路に連通する冷媒流出口が設けられている、
ことを特徴とするパワーデバイス用冷却器。
【請求項2】
請求項1に記載のパワーデバイス用冷却器において、
上記冷媒流路は、上記冷却器本体の長手方向に沿って設けられた矩形状中空部の内側上面と下面に連結する複数の仕切壁によって形成されている、ことを特徴とするパワーデバイス用冷却器。
【請求項3】
請求項1に記載のパワーデバイス用冷却器において、
上記冷媒流路は、上記冷却器本体の長手方向に沿って設けられた矩形状中空部の内側上面及び下面に接合されるコルゲートフィンにて形成されている、ことを特徴とするパワーデバイス用冷却器。
【請求項4】
請求項1に記載のパワーデバイス用冷却器において、
上記冷媒流路は、上記冷却器本体の長手方向に沿って設けられた矩形状中空部の内側上面から垂下される複数の上部フィンと、上記矩形状中空部の内側下面から上記上部フィン間に起立される複数の下部フィンとの間に形成されている、ことを特徴とするパワーデバイス用冷却器。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のパワーデバイス用冷却器において、
上記冷却器本体は、該冷却器本体の長手方向に沿う両側にそれぞれ上記冷媒流路に連通する切欠き段部が設けられ、上記切欠き段部のそれぞれが上記冷媒流入路及び上記冷媒流出路の一部を構成してなる、ことを特徴とするパワーデバイス用冷却器。
【請求項6】
請求項5に記載のパワーデバイス用冷却器において、
上記冷媒流入路は、上記冷却器本体の上記冷媒流入口を設けた上記肉部を覆う冷媒導入部と、上記切欠き段部の一方と上記冷媒流路の一端側を覆う上流流入部とからなる略L字状に形成され、
上記冷媒流出路は、上記冷却器本体の上記冷媒流出口を設けた上記肉部を覆う冷媒排出部と、上記切欠き段部の他方と上記冷媒流路の他端側を覆う下流流出部とからなる略L字状に形成され、
上記冷媒流入路及び上記冷媒流出路の底部は、それぞれ外面が同一面となる平坦状に形成されている、
ことを特徴とするパワーデバイス用冷却器。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のパワーデバイス用冷却器において、
上記冷却器本体をアルミニウム製形材にて形成すると共に、上記カバー材をアルミニウム製部材にて形成し、上記冷却器本体と上記カバー材をろう付け接合してなる、ことを特徴とするパワーデバイス用冷却器。
【請求項8】
請求項3に記載のパワーデバイス用冷却器において、
上記冷却器本体をアルミニウム製形材にて形成すると共に、上記コルゲートフィンをアルミニウム製部材にて形成し、上記冷却器本体と上記コルゲートフィンをろう付け接合してなる、ことを特徴とするパワーデバイス用冷却器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パワーデバイス用冷却器に関するもので、更に詳細には、例えば電気自動車やハイブリッド自動車のパワーコントロールユニット用いられる半導体デバイス等のパワーデバイス用冷却器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気自動車やハイブリッド自動車のパワーコントロールユニットに用いられる半導体デバイス等のパワーデバイスは、動作状態において、半導体デバイスは発熱するため、裏面側に冷却器を配置して半導体デバイスを冷却している(例えば、特許文献1,2,3参照)。
【0003】
特許文献1には、冷却器を備えた放熱装置上の装着面に発熱部品である複数のパワー半導体モジュール(パワーデバイス)を装着してなり、冷却器は、該冷却器の長手方向に沿って平行な複数の冷却路を備え、一端部に冷却路内に冷却水(冷媒)を取り込む取込口が設けられ、他端に冷却路内を通過した冷却水の排出口が設けられた構造が開示されている。特許文献1によれば、複数の発熱部品が並ぶ方向に対して直列方向に冷却水を流して発熱部品を冷却することができる。
【0004】
特許文献2には、受熱面である受熱部の下方に設けられた放冷部内に、複数の冷却流体通路が仕切部材を介して上下方向に積層状に形成され、放冷部に、下側冷却流体通路に冷却流体入口と、上側冷却流体通路に冷却流体出口とを設けると共に、受熱面から下側冷却流体通路を流れる冷却流体(冷媒)に熱を伝える伝熱部を設け、下側冷却流体通路と上側冷却流体通路を連通する連通部を設ける冷却装置が開示されている。特許文献2によれば、冷却流体入口に連通する下側冷却流体通路内を流れる冷却流体と冷却流体出口に連通する上側冷却流体通路内を流れる冷却流体によって冷却することができる。
【0005】
特許文献3には、頂壁及び周壁を形成する箱状の上構成部材と、底壁を形成する板状の下構成部材とからなるケーシングと、ケーシング内に配置されかつケーシングの頂壁及び底壁に取り付けられる放熱器とを備え、ケーシングに、冷却液入口と冷却液出口が設けられ、放熱器に、冷却液入口から冷却液出口に向かって一方向に流す複数の冷却液流路が、上下方向及び左右方向に間隔をおいて形成される液冷式冷却装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-212286号公報
【文献】特開2012-60040号公報
【文献】特開2017-195226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1,2に記載のものは、いずれも発熱部品が並ぶ方向に対し直列方向に冷媒を流すため、冷媒の上流と下流とで温度差が生じ、冷却効率が低下する懸念がある。また、引用文献3に記載のものにおいても、発熱体に対して一方向に冷媒を流すため、特許文献1,2に記載のものと同様に、冷媒の上流と下流とで温度差が生じ、冷却効率が低下する懸念がある。
なお、長手方向にヘッダーを用いて発熱部品に対して並列方向に冷媒を流す構造とすることも考えられるが、このような構造においては、受熱面の水平が保たれず発熱部品の取り付けに懸念がある。また、構成部材が多くなり、構造が複雑かつ大型化する懸念がある。
【0008】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、冷媒の上流と下流の温度差を抑制して冷却効率の向上を図ることができ、構成部材の削減が図れると共に、受熱面の水平を保った状態で受熱面への発熱部品の取付を容易にすることができるパワーデバイス用冷却器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、この発明の冷却器は、受熱面を有すると共に、長手方向の両端側に肉部を残して、長手方向に対して直交する幅方向に沿う互いに平行な複数の冷媒流路を有する扁平状の冷却器本体と、上記冷却器本体の上記受熱面と反対側に装着され、上記冷媒流路の一端側に連通する冷媒流入路及び上記冷媒流路の他端側に連通する冷媒流出路を有するカバー材とからなり、上記冷却器本体は、長手方向の一端側の上記肉部に上記冷媒流入路に連通する冷媒流入口が設けられ、他端側の上記肉部に上記冷媒流出路に連通する冷媒流出口が設けられている、ことを特徴とする(請求項1)。
【0010】
このように構成することにより、冷媒流入口に供給される冷媒が、冷却器本体の長手方向の一側側の冷媒流入路から長手方向に対して直交する幅方向に沿う互いに平行な複数の冷媒流路内を流れて冷却器本体の長手方向の他側側の冷媒流出路を流れ、冷媒流出口から排出される。したがって、冷媒は冷却器の長手方向の一側から長手方向に対して直交する方向に流れて長手方向の他側に流れる。
【0011】
この発明において、上記冷媒流路は、上記冷却器本体の長手方向に沿って設けられた矩形状中空部の内側上面と下面に連結する複数の仕切壁によって形成されるか(請求項2)、上記冷却器本体の長手方向に沿って設けられた矩形状中空部の内側上面及び下面に接合されるコルゲートフィンにて形成される(請求項3)。また、上記冷媒流路は、上記冷却器本体の長手方向に沿って設けられた矩形状中空部の内側上面から垂下される複数の上部フィンと、上記矩形状中空部の内側下面から上記上部フィン間に起立される複数の下部フィンとの間に形成される(請求項4)。
【0012】
また、この発明において、上記冷却器本体は、該冷却器本体の長手方向に沿う両側にそれぞれ上記冷媒流路に連通する切欠き段部が設けられ、上記切欠き段部のそれぞれが上記冷媒流入路及び上記冷媒流出路の一部を構成しているのが好ましい(請求項5)。
【0013】
このように構成することにより、冷媒流入路及び冷媒流出路を受熱面より外方に突出させることなく受熱面の下方側に設けることができると共に、冷媒流入路及び冷媒流出路と冷媒流路とを確実に連通させることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明において、上記冷媒流入路は、上記冷却器本体の上記冷媒流入口を設けた上記肉部を覆う冷媒導入部と、上記切欠き段部の一方と上記冷媒流路の一端側を覆う上流流入部とからなる略L字状に形成され、上記冷媒流出路は、上記冷却器本体の上記冷媒流出口を設けた上記肉部を覆う冷媒排出部と、上記切欠き段部の他方と上記冷媒流路の他端側を覆う下流流出部とからなる略L字状に形成され、上記冷媒流入路及び上記冷媒流出路の底部は、それぞれ外面が同一面となる平坦状に形成されているのが好ましい(請求項6)。
【0015】
このように構成することにより、カバー材に設けられる冷媒流入路と冷媒流出路を長手方向及び長手方向と直交する方向に対して対称位置に設けることができると共に、冷媒流入路及び冷媒流出路の底部を、受熱面と平行な平坦状に形成することができる。
【0016】
加えて、この発明において、上記冷却器本体をアルミニウム製形材にて形成すると共に、上記カバー材をアルミニウム製部材にて形成し、上記冷却器本体と上記カバー材をろう付け接合してなるのが好ましい(請求項7)。ここで、アルミニウムとはアルミニウム合金を含む意味である。また、冷媒流路をコルゲートフィンにて形成する場合は、上記冷却器本体をアルミニウム製形材にて形成すると共に、上記コルゲートフィンをアルミニウム製部材にて形成し、上記冷却器本体と上記コルゲートフィンをろう付け接合してなるのが好ましい(請求項8)。
【0017】
このように構成することにより、冷却器本体とカバー材とを一体ろう付けすることができる。また、冷媒流路をコルゲートフィンにて形成する場合は、冷却器本体とコルゲートフィン及びカバー材を一体ろう付けすることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0019】
(1)請求項1~4に記載の発明によれば、冷媒は冷却器の長手方向の一側から長手方向に対して直交する方向に流れて長手方向の他側に流れるので、冷媒の上流と下流の温度差を抑制して冷却効率の向上を図ることができる。
また、受熱面を有すると共に、長手方向の両端側に肉部を残して、長手方向に対して直交する幅方向に沿う互いに平行な複数の冷媒流路を有する扁平状の冷却器本体と、冷媒流路の一端側に連通する冷媒流入路及び冷媒流路の他端側に連通する冷媒流出路を有するカバー材とで構成することで、構成部材の削減が図れると共に、受熱面の水平を保った状態で受熱面への発熱部品の取付を容易にすることができる。
【0020】
(2)請求項5に記載の発明によれば、冷媒流入路及び冷媒流出路を受熱面より外方に突出させることなく受熱面の下方側に設けることができると共に、冷媒流入路及び冷媒流出路と冷媒流路とを確実に連通させることができるので、上記(1)に加えて更に冷却効率の向上を図ることができる。
【0021】
(3)請求項6に記載の発明によれば、冷媒流入路と冷媒流出路を長手方向及び長手方向と直交する方向に対して対称位置に設けることができると共に、冷媒流入路及び冷媒流出路の底部を、受熱面と平行な平坦状に形成することができるので、受熱面の温度を均温化できると共に、限られたスペース内での冷却器の配置を容易にすることができる。
【0022】
(4)請求項7に記載の発明によれば、冷却器本体とカバー材とを一体ろう付けすることができるので、上記(1)~(3)に加えて、更に冷却器本体とカバー材の接合を容易かつ強固にすることができる。
【0023】
(5)請求項8に記載の発明によれば、冷却器本体とコルゲートフィン及びカバー材を一体ろう付けすることができるので、上記(1)~(4)に加えて、更に冷却器本体とコルゲートフィン及びカバー材の接合を容易かつ強固にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】この発明に係る冷却器の使用状態の一例を示す概略斜視図である。
【
図2】この発明に係る冷却器の一部を断面で示す平面図である。
【
図5】
図2のIII-III線に沿う断面図である。
【
図6】この発明における冷却器本体の第1実施形態を示す斜視図である。
【
図7】この発明におけるカバー材を示す斜視図である。
【
図8】上記冷却器本体の成形前の形材を示す斜視図である。
【
図9A】この発明における冷却器本体の第2実施形態の一部を示す斜視図である。
【
図9B】この発明における冷却器本体の第3実施形態の一部を示す斜視図である。
【
図10A】第2実施形態の冷却器本体の要部を示す断面図である。
【
図10B】第3実施形態の冷却器本体の要部を示す断面図である。
【
図11】第2及び第3実施形態の冷却器本体の成形前の形材を示す一部断面斜視図である。
【
図12】この発明における冷却器本体の第4実施形態を示す斜視図である。
【
図13】第4実施形態の冷却器本体の要部を示す断面図である。
【
図14】第4実施形態の冷却器本体の成形前の形材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、この発明を実施するための形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
この発明に係る冷却器1は、
図1に示すように、発熱部品である複数のパワー半導体モジュール等のパワーデバイス5を冷却する平面視が矩形状の受熱面11を有すると共に、長手方向の両端側に肉部12a,12bを残して、長手方向に対して直交する幅方向に沿う互いに平行な複数の冷媒流路15を有する扁平状の冷却器本体10と、冷却器本体10の受熱面11と反対側に装着され、冷媒流路15の一端側に連通する冷媒流入路21及び冷媒流路15の他端側に連通する冷媒流出路22を有するカバー材20とを具備する。この場合、受熱面11には長手方向に沿って複数例えば3個のパワーデバイス5が取付部材6によって取り付けられている。
【0027】
冷却器本体10は、アルミニウム(アルミニウム合金を含む)製の押出形材にて形成されており、冷却器本体10の長手方向に沿って設けられた矩形状中空部10aの内側上面と下面に連結する複数の仕切壁15aによって冷媒流路15が形成されている。また、長手方向の一端側の肉部12aに冷媒流入路21に連通する冷媒流入口13が設けられており、長手方向の他端側の肉部12bに冷媒流出路22に連通する冷媒流出口14が設けられている。
【0028】
この場合、冷媒流入口13と冷媒流出口14は肉部12a,12bを貫通する円形孔にて形成されており、冷媒流入口13には円筒状の冷媒流入管2がOリング2aを介して接続され、冷媒流出口14には円筒状の冷媒排出管3がOリング3aを介して接続されている(
図4,
図5参照)。
【0029】
冷却器本体10は、冷却器本体10の長手方向に沿う両側にそれぞれ冷媒流路15に連通する切欠き段部16a,16bが設けられ、切欠き段部16a,16bのそれぞれが冷媒流入路21及び冷媒流出路22の一部を構成している。また、冷却器本体10の長手方向の両端部には、それぞれ肉部12a,12bより受熱面11側が突出した段部16c,16dが設けられている。これら段部16c,16dと切欠き段部16a,16bとは連なって受熱面11の裏面側周縁に形成されている。
【0030】
冷却器本体10は、
図8に示すように、長手方向の両端部に段部16c,16dと肉部12a,12bを有し、両肉部12a,12b間において長手方向に対して直交する幅方向に沿う互いに平行な複数の冷媒流路15を有する押出形材にて形成される素材10Aを切削加工によって成形されている。
【0031】
この場合、肉部12a,12bには円形の孔加工によって冷媒流入口13と冷媒流出口14が設けられ、長手方向の両側には切削加工によって冷媒流路15の一端側すなわち上流側には切欠き段部16aが設けられ、冷媒流路15の他端側すなわち下流側には切欠き段部16bが設けられる。なお、
図2に示すように、切欠き段部16aにおける長手方向の他端側の肉部12bと冷媒流路15との境には、冷媒の下流側への流入を阻止する仕切片17aが設けられ、切欠き段部16bにおける長手方向の一端側の肉部12aと冷媒流路15との境には、冷媒の上流側への流入を阻止する仕切片17bが設けられている。
【0032】
なお、上記第1実施形態では、冷媒流路15は、冷却器本体10の長手方向に沿って設けられた矩形状中空部10aの内側上面と下面に連結する複数の仕切壁15aによって冷却器本体10と一体に形成される場合について説明したが、冷媒流路を以下に示す第2,第3実施形態のような別の構造としてもよい。
【0033】
第2実施形態の冷媒流路15Aは、
図9A及び
図10Aに示すように、冷却器本体10の長手方向に沿って設けられた矩形状中空部10aの内側上面と下面に接合される連続する円弧波形状のコルゲートフィン15Aによって形成される。
また、第3実施形態の冷媒流路15Bは、
図9A及び
図10Aに示すように、冷却器本体10の長手方向に沿って設けられた矩形状中空部10aの内側上面と下面に接合される連続する台形波形状のコルゲートフィン18Bによって形成される。
【0034】
この場合、コルゲートフィン18A,18Bはアルミニウム合金製の板材(心材の両面にろう材がクラッドされたブレージングシート)を屈曲することにより連続波形状に形成されている。このように形成されたコルゲートフィン18A,18Bが、矩形状中空部10aの内側上面と下面にろう付け接合されて冷媒流路15A,15Bが形成される。
なお、
図9A,
図9B,
図10A及び
図10Bにおいて、その他の部分は上記第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0035】
第2,第3実施形態における冷却器本体10は、
図11に示すように、長手方向の両端部に段部16c,16dと肉部12a,12bを有し、両肉部12a,12b間において長手方向に沿って設けられた矩形状中空部10aを有する押出形材にて形成される素材10Bを切削加工によって成形されている。
【0036】
冷媒流路の更に別の構造として、以下に示す第4実施形態のような構造としてもよい。
第4実施形態の冷媒流路15Cは、
図12及び
図13に示すように、冷却器本体10の長手方向に沿って設けられた矩形状中空部10aの内側上面から垂下される互いに平行な複数の上部フィン19aと、矩形状中空部10aの内側下面から隣接する上部フィン19a間に起立される互いに平行な複数の下部フィン19bとの間に形成される。
【0037】
第4実施形態における冷却器本体10は、
図14に示すように、長手方向の両端部に段部16c,16dと肉部12a,12bを有し、両肉部12a,12b間において長手方向に沿って設けられた矩形状中空部10aの内側上面から垂下される互いに平行な複数の上部フィン19aと、矩形状中空部10aの内側下面から隣接する上部フィン19a間に起立される互いに平行な複数の下部フィン19bを有する押出形材にて形成される素材10Cを切削によって成形される。
なお、
図12~
図14において、その他の部分は上記第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0038】
カバー材20は、アルミニウム合金製の板材をプレス加工によって成形されている。この場合、冷媒流入路21は、冷却器本体10の冷媒流入口13を設けた肉部12aを覆う冷媒導入部21aと、一方の切欠き段部16aと冷媒流路15の一端側(上流側)を覆う上流流入部21bとからなる略L字状に形成されている。冷媒流出路22は、冷却器本体10の冷媒流出口14を設けた肉部12bを覆う冷媒排出部22aと、他方の切欠き段部16bと冷媒流路15の他端側(下流側)を覆う下流流出部22bとからなる略L字状に形成されている。また、冷媒流入路21の底部21c及び冷媒流出路22の底部22cは、それぞれ外面が同一面となる平坦状に形成されている。なお、この場合、カバー材20は、ろう材が皮材として貼り合わされたブレージングシートにて形成されている。
【0039】
また、カバー材20の周縁には、冷却器本体10の切欠き段部16a,16bと段部16c,16dに接合可能な外向きフランジ部23が設けられている。
【0040】
上記のように形成される冷却器本体10とカバー材20は、角部を合わせた状態でろう付け接合される。なお、冷却器本体10とカバー材20とをろう付け接合すると同時に、冷媒流入口13に冷媒流入管2をろう付け接合し、冷媒流出口14に冷媒排出管3をろう付け接合して冷却器1を製造する。このように構成される冷却器1においては、冷媒流入路21及び冷媒流出路22を受熱面11より外方に突出させることなく受熱面11の下方側に設けることができると共に、冷媒流入路21及び冷媒流出路22と冷媒流路15とを確実に連通させることができる。
【0041】
なお、上記実施形態では、カバー材20が、ろう材が皮材として貼り合わされたブレージングシートにて形成される場合について説明したが、必ずしもこのように構成する必要はない。例えば、カバー材20をブレージングシートにて形成する代わりに、冷却器本体10の表面にろう材を塗布して、冷却器本体10とカバー材20をろう付け接合してもよい。
【0042】
上記のように構成される実施形態の冷却器1によれば、冷媒流入口13に供給される冷媒、例えば冷却液は、冷却器本体の長手方向の一側側の冷媒流入路21の冷媒導入部21aを介して上流流入部21bに流れ、上流流入部21bから長手方向に対して直交する幅方向に沿う互いに平行な複数の冷媒流路15(15A,15B,15C)内を流れて冷却器本体10の長手方向の他側側の冷媒流出路22の下流流出部22bを流れ、冷媒排出部22aを介して冷媒流出口14から排出される。したがって、冷媒は冷却器1の長手方向の一側から長手方向に対して直交する方向に流れて長手方向の他側に流れるので、冷媒の上流と下流の温度差を抑制して冷却効率の向上を図ることができる。
【0043】
また、冷却器本体10は、受熱面11を有すると共に、長手方向の両端側に肉部12a,12bを残して、長手方向に対して直交する幅方向に沿う互いに平行な複数の冷媒流路15(15A,15B,15C)を有する扁平状のアルミニウム(アルミニウム合金を含む)製押出形材にて形成されているので、受熱面11の水平を保った状態で受熱面11への発熱部品であるパワーデバイス5の取付を容易にすることができる。
【0044】
また、冷却器1は、上記のように形成される押出形材製の冷却器本体10と、冷媒流路15(15A,15B,15C)の一端側に連通する冷媒流入路21及び冷媒流路15の他端側に連通する冷媒流出路22を有するカバー材20とをろう付け接合して構成されるので、構成部材の削減が図れる。なお、冷媒流路15A,15Bをコルゲートフィン18A,18Bによって形成する場合においても、コルゲートフィン18A,18Bを押出形材製の冷却器本体10に形成された矩形状中空部10aの内側上面と下面にろう付け接合して冷媒流路15A,15Bを形成するので、構成部材の削減が図れる。
【0045】
また、冷媒流入路21及び冷媒流出路22を受熱面11より外方に突出させることなく受熱面11の下方側に設けることができると共に、冷媒流入路21及び冷媒流出路22と冷媒流路15とを確実に連通させることができるので、冷却効率の向上を図ることができると共に、冷却器本体10とカバー材20の接合を容易かつ強固にすることができる。
【0046】
また、冷媒流入路21と冷媒流出路22を長手方向及び長手方向と直交する方向に対して対称位置に設けることができると共に、冷媒流入路21及び冷媒流出路22の底部を、受熱面11と平行な平坦状に形成することができるので、受熱面11の温度を均温化できると共に、限られたスペース内での冷却器1の配置を容易にすることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 冷却器
2 冷媒流入管
3 冷媒排出管
10 冷却器本体
10a 矩形状中空部
11 受熱面
12a,12b 肉部
13 冷媒流入口
14 冷媒流出口
15,15A,15B,15C 冷媒流路
15a 仕切壁
16a,16b 切欠き段部
16c,16d 段部
18A,18B コルゲートフィン
19a 上部フィン
19b 下部フィン
20 カバー材
21 冷媒流入路
21a 冷媒導入部
21b 上流流入部
21c 底部
22 冷媒流出路
22a 冷媒排出部
22b 下流流出部
22c 底部
23 外向きフランジ部