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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】増強された透過を有する医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5513 20060101AFI20240207BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240207BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240207BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240207BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240207BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240207BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240207BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240207BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240207BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20240207BHJP
   A61K 9/68 20060101ALI20240207BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20240207BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20240207BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20240207BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20240207BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20240207BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240207BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20240207BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
A61K31/5513
A61K47/10
A61K47/38
A61K47/14
A61K47/12
A61K47/42
A61K47/36
A61K47/34
A61K47/32
A61K9/70
A61K9/68
A61P25/08
A61P25/22
A61P25/30
A61P25/14
A61P25/20
A61P9/00
A61P21/02
A61P43/00 111
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020517586
(86)(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 US2018053026
(87)【国際公開番号】W WO2019067667
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-09-24
(31)【優先権主張番号】15/717,856
(32)【優先日】2017-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/735,822
(32)【優先日】2018-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/724,234
(32)【優先日】2017-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504322976
【氏名又は名称】アクエスティブ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー マーク ショベル
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー マリー バージャン
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ポール ワルガクキ
【審査官】平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-084177(JP,A)
【文献】国際公開第2008/149440(WO,A1)
【文献】特開2004-043450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリクス;
該ポリマーマトリクス中の医薬活性成分;及び
透過エンハンサー、
を含む、医薬組成物であって、
該組成物が、縁が互いに完全に重なっている少なくとも1つの面を有する多層フィルムに含有されており;
該医薬活性成分が、ジアゼパムであり;
該透過エンハンサーが、オイゲノール、酢酸オイゲノール、桂皮酸、桂皮酸エステル、桂皮アルデヒド、クローブ油、クローブ植物の精油抽出物、クローブ植物の葉の精油抽出物、クローブ植物の花芽の精油抽出物又はクローブ植物の茎の精油抽出物、カプリロカプロイルポリオキシル-8グリセリドを含むラブラゾル、β-カリオフィレン、フェノール、リノール酸、オレイン酸、ペグ200、ベンジルアルコール、プロピレングリコールモノカプリレート、ポリグリセリル-3オレイン酸エステル、ラウロイルポリオキシル-32グリセリド、カプリオール90、plurol oleique、TDM、及びGelucire 44/14からなる群から選択される、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記ポリマーマトリクスが、ポリマーを含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記ポリマーが、水溶性ポリマーを含む、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記ポリマーが、以下の群:ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースから選択されるセルロース系ポリマーを含む、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項5】
チュワブルもしくはゼラチンベースの剤形である、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記ポリマーマトリクスが、ポリエチレンオキシド、セルロース系ポリマー、ポリエチレンオキシド及びポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド及び多糖、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び多糖、又はポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖及びポリビニルピロリドンを含む、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記ポリマーマトリクスが、以下の群:プルラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、キサンタンガム、トラガントガム、グアーガム、アカシアゴム、アラビアゴム、ポリアクリル酸、メチルメタクリレートコポリマー、カルボキシビニルコポリマー、デンプン、ゼラチン、エチレンオキシド-プロピレンオキシドコポリマー、コラーゲン、アルブミン、ポリアミノ酸、ポリホスファゼン、多糖、キチン、キトサン、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも1つのポリマーを含む、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項8】
安定化剤をさらに含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記ポリマーマトリクスが、樹状ポリマー又は高分岐ポリマーを含む、請求項1記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は、2017年10月3日に出願された米国特許出願第15/724,234号の一部継続出願であり、且つ2016年5月5日に出願された米国特許出願第62/331,993号に対し米国特許法第119条(e)項の優先権を主張し且つ2018年9月24日に出願された米国特許出願第62/735,822号に対し米国特許法第119条(e)項の優先権を主張する2017年5月4日に出願された米国特許出願第15/587,376号の一部継続出願である2017年9月27日に出願された米国特許出願第15/717,856号の一部継続出願であり、それらの各々は、その全体が引用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
(技術分野)
本発明は、医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
薬物又は医薬などの活性成分は、計画的な様式で、患者へ送達される。フィルムを使用する経皮的又は経粘膜的な薬物又は医薬の送達は、該薬物又は医薬が、有効且つ効率的な様式で、生体膜を透過するか又は別の方法で横断することを必要とすることがある。
【発明の概要】
【0004】
(概要)
概して、医薬組成物は、ポリマーマトリクス、該ポリマーマトリクス中の医薬活性成分、及びアドレナリン受容体相互作用物質を含有することができる。ある実施態様において、本医薬組成物は、更に透過エンハンサーを含むことができる。アドレナリン受容体相互作用物質は、アドレナリン受容体遮断薬であることができる。本透過エンハンサーはまた、フラボノイドであるか、又はフラボノイドと組合せて使用されることができる。
【0005】
ある実施態様において、本アドレナリン受容体相互作用物質は、テルペノイド、テルペン又はC3-C22アルコールもしくは酸であることができる。本アドレナリン受容体相互作用物質は、セスキテルペンであることができる。ある実施態様において、本アドレナリン受容体相互作用物質は、ファルネソール、リノール酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタン酸、又はドコサペンタン酸、又はそれらの組合せを含むことができる。
【0006】
ある実施態様において、本医薬組成物は、ポリマーマトリクス、該ポリマーマトリクス中の医薬活性成分、及びアポルフィンアルカロイド相互作用物質を含むことができる。
【0007】
別の実施態様において、本医薬組成物は、ポリマーマトリクス、該ポリマーマトリクス中の医薬活性成分、及び血管拡張剤相互作用物質を含むことができる。
【0008】
ある実施態様において、本医薬組成物は、ポリマーマトリクスを更に含有するフィルムとすることができ、前記医薬活性成分は、該ポリマーマトリクスに含有される。
【0009】
ある実施態様において、本アドレナリン受容体相互作用物質は、植物抽出物であることができる。
【0010】
ある実施態様において、本透過エンハンサーは、植物抽出物であることができる。
【0011】
ある実施態様において、本透過エンハンサーは、フェニルプロパノイドを含むことができる。
【0012】
別の実施態様において、本フェニルプロパノイドは、オイゲノールであることができる。
【0013】
ある実施態様において、本医薬組成物は、真菌抽出物を含むことができる。
【0014】
ある実施態様において、本医薬組成物は、飽和又は不飽和のアルコールを含むことができる。
【0015】
ある実施態様において、本アルコールは、ベンジルアルコールであることができる。
【0016】
一部の場合において、前記フラボノイド、植物抽出物、フェニルプロパノイド、オイゲノール、又は真菌抽出物を、可溶化剤として使用することができる。
【0017】
他の実施態様において、前記フェニルプロパノイドは、オイゲノールであることができる。ある実施態様において、前記フェニルプロパノイドは、酢酸オイゲノールであることができる。ある実施態様において、前記フェニルプロパノイドは、桂皮酸であることができる。他の実施態様において、前記フェニルプロパノイドは、桂皮酸エステルであることができる。他の実施態様において、フェニルプロパノイドは、桂皮アルデヒドであることができる。
【0018】
他の実施態様において、前記フェニルプロパノイドは、ヒドロ桂皮酸であることができる。ある実施態様において、前記フェニルプロパノイドは、カビコールであることができる。他の実施態様において、前記フェニルプロパノイドは、サフロールであることができる。
【0019】
ある実施態様において、本植物抽出物は、クローブ植物の精油抽出物であることができる。別の例において、本植物抽出物は、クローブ植物の葉の精油抽出物であることができる。本植物抽出物は、クローブ植物の花芽の精油抽出物であることができる。他の実施態様において、本植物抽出物は、クローブ植物の茎の精油抽出物であることができる。
【0020】
ある実施態様において、本植物抽出物は、合成のものであることができる。ある実施態様において、本植物抽出物は、40~95%のオイゲノール、及び60~95%のオイゲノールを含めて、20~95%のオイゲノールを含むことができる。ある実施態様において、本植物抽出物は、80~95%のオイゲノールを含むことができる。
【0021】
他の実施態様において、本医薬活性成分は、エピネフリンであることができる。
【0022】
ある実施態様において、本医薬活性成分は、ジアゼパムであることができる。
【0023】
ある実施態様において、本医薬活性成分は、アルプラゾラムであることができる。
【0024】
ある実施態様において、本ポリマーマトリクスは、ポリマーを含むことができる。ある実施態様において、本ポリマーは、水溶性ポリマーを含むことができる。
【0025】
ある実施態様において、本ポリマーは、ポリエチレンオキシドであることができる。
【0026】
ある実施態様において、本ポリマーは、セルロース系ポリマーであることができる。ある実施態様において、本セルロース系ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及び/又はカルボキシメチルセルロースナトリウムであることができる。
【0027】
ある実施態様において、本ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むことができる。
【0028】
ある実施態様において、本ポリマーは、ポリエチレンオキシド及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むことができる。
【0029】
ある実施態様において、本ポリマーは、ポリエチレンオキシド及び/又はポリビニルピロリドンを含むことができる。
【0030】
ある実施態様において、本ポリマーマトリクスは、ポリエチレンオキシド及び/又は多糖を含むことができる。
【0031】
ある実施態様において、本ポリマーマトリクスは、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又は多糖を含むことができる。
【0032】
ある実施態様において、本ポリマーマトリクスは、ポリエチレンオキシド、セルロース系ポリマー、多糖及び/又はポリビニルピロリドンを含むことができる。
【0033】
ある実施態様において、本ポリマーマトリクスは、以下の群:プルラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、キサンタンガム、トラガカントガム、グアーガム、アカシアゴム、アラビアゴム、ポリアクリル酸、メチルメタクリレートコポリマー、カルボキシビニルコポリマー、デンプン、ゼラチン、エチレンオキシド、プロピレンオキシドコポリマー、コラーゲン、アルブミン、ポリアミノ酸、ポリホスファゼン、多糖、キチン、キトサン、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも1つのポリマーを含むことができる。
【0034】
ある実施態様において、本医薬組成物は、更に安定化剤を含むことができる。安定化剤は、物質の望ましくない酸化を防止することができる抗酸化剤、キレート錯体を形成し、そうしなければ触媒として作用してしまう微量の金属イオンを失活させることができる金属イオン封鎖剤、エマルジョンを安定化することができる乳化剤及び界面活性剤、物質を紫外線の有害作用から保護することができる紫外線安定化剤、紫外線を吸収しそれが組成物に侵入することを防止する化学物質であるUV吸収剤、放射エネルギーに化学結合を破壊させずに、それを熱として消散させることができる消光剤、又は紫外線により形成されるフリーラジカルを除去することができるスカベンジャーを含むことができる。
【0035】
更に別の態様において、本医薬組成物は、親水性サッカリドとの結合により連結される疎水性アルキル基を有する、好適な無毒の非イオン性アルキル配糖体を、以下:(a)凝集阻害剤;(b)電荷修飾剤;(c)pH調節剤;(d)分解酵素阻害剤;(e)粘液溶解剤又は粘液除去剤;(f)線毛運動障害剤(ciliostatic agent);(g)以下:(i)界面活性剤;(ii)胆汁酸塩;(ii)リン脂質添加剤、混合ミセル、リポソーム、もしくは担体;(iii)アルコール;(iv)エナミン;(v)一酸化窒素供与化合物;(vi)長鎖両親媒性分子;(vii)低分子疎水性浸透エンハンサー;(viii)ナトリウム又はサリチル酸誘導体;(ix)アセト酢酸のグリセロールエステル;(x)シクロデキストリン又はβ-シクロデキストリン誘導体;(xi)中鎖脂肪酸;(xii)キレート化剤;(xiii)アミノ酸又はその塩;(xiv)N-アセチルアミノ酸又はその塩;(xv)選択された膜成分に対して分解性の酵素;(ix)脂肪酸合成の阻害剤;(x)コレステロール合成の阻害剤;及び、(xi) (i)~(x)に記載の膜浸透促進剤の任意の組合せから選択される膜透過促進剤;(h)上皮ジャンクション生理機能の調整剤;(i)血管拡張剤;(j)選択輸送促進剤;並びに、(k)安定化送達ビヒクル、担体、粘膜付着性物質、支持体、又は複合体形成種であって、それとともに、本化合物が効果的に配合され、会合され、含有され、封入され、又は結合されて、増強された粘膜送達のための化合物の安定化をもたらす、前記安定化送達ビヒクル、担体、粘膜付着性物質、支持体、又は複合体-形成種から選択される粘膜送達促進剤と組み合わせて有し、ここで経粘膜的な送達促進剤を含む本化合物の製剤は、対象の血漿中の本化合物の生物学的利用能の増大を提供する。
【0036】
一般に、医薬組成物の製造方法は、アドレナリン受容体相互作用物質を、医薬活性成分と配合し、且つ該アドレナリン受容体相互作用物質及び該医薬活性成分を含む医薬組成物を形成することを含むことができる。
【0037】
本医薬組成物は、チュアブル又はゼラチンベースの剤形、スプレー、ガム、ゲル、クリーム、錠剤、液体又はフィルムであることができる。
【0038】
一般に、医薬組成物は、装置から分配することができる。この装置は、チュアブル又はゼラチンベースの剤形、スプレー、ガム、ゲル、クリーム、錠剤、液体又はフィルムとして、所定の用量で、医薬組成物を分配することができる。装置は、ポリマーマトリクス;該ポリマーマトリクス中の医薬活性成分;及び、アドレナリン受容体相互作用物質を含む、ある量の医薬組成物を保持するハウジング、並びに所定の量の医薬組成物を分配する開口部を備えることができる。本装置はまた、フェニルプロパノイド及び/又は植物抽出物を含む透過エンハンサーを含む医薬組成物を分配することができる。
【0039】
ある実施態様において、医薬組成物は、ポリマーマトリクス、該ポリマーマトリクス中の医薬活性成分;及び、フェニルプロパノイド及び/又は植物抽出物を含む透過エンハンサーを含むことができる。
【0040】
ある実施態様において、医薬組成物は、ポリマーマトリクス;該ポリマーマトリクス中の医薬活性成分;及び増加した血流を生じさせるか又は組織のフラッシングを可能にして、該医薬活性成分の経粘膜的な取り込みを変化させる相互作用物質を含むことができる。
【0041】
ある実施態様において、医薬組成物は、ポリマーマトリクス;該ポリマーマトリクス中の医薬活性成分;及び正又は負の溶解熱を有し、経粘膜的な取り込みを変化(増加又は減少)させる補助剤として使用される相互作用物質を含むことができる。
【0042】
別の実施態様において、医薬組成物は、ポリマーマトリクス、該ポリマーマトリクス中の医薬活性成分、及び相互作用物質を含み、該組成物は、縁が境界線を共にしている少なくとも1つの面を有する多層フィルムに含有されている。
【0043】
概して、医学的状態を治療する方法は、ポリマーマトリクス、該ポリマーマトリクス中の医薬活性成分、及びアドレナリン受容体相互作用物質を含む、有効量の医薬組成物を投与することを含むことができる。該医薬活性成分は、エピネフリン、ジアゼパム、又はアルプラゾラムであってもよい。医学的状態は、発作などのてんかんの症状を含むことができる。ある実施態様において、前記方法は、発作中状態の間にジアゼパムを含む前記医薬組成物を投与することを含む。ある実施態様において、前記方法は、発作周辺期状態の間にジアゼパムを含む前記医薬組成物を投与することを含む。ある実施態様において、前記方法は、発作間欠期状態の間にジアゼパムを含む前記医薬組成物を投与することを含む。この医学的状態は、不安、薬物離脱、睡眠時随伴症、アルコール離脱、筋けいれん、又は発作性疾患も含むことができる。この医学的状態は、鎮静剤としての治療を含むことができる。該医学的状態は、医学的な処置のための鎮静も含むことができる。
【0044】
他の態様、実施態様、及び特徴は、以下の説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
(図面の簡単な説明)
図1図1Aに関して、フランツ拡散セル100は、ドナー化合物101、ドナーチャンバー102、膜103、サンプリングポート104、レセプターチャンバー105、撹拌子106、及びヒーター/サーキュレーター107を備える。 図1Bに関して、医薬組成物は、ポリマーマトリクス200を含むフィルム100であり、医薬活性成分300は、このポリマーマトリクス中に含まれている。このフィルムは、透過エンハンサー400を含むことができる。
図2図2A及び2Bに関して、グラフは、組成物からの活性物質の透過を示す。図2Aに関して、このグラフは、8.00mg/mL酒石酸水素エピネフリン及び4.4mg/mL可溶化エピネフリン塩基による、透過した活性物質の平均量対時間を示す。 図2Bに関して、このグラフは、8.00mg/mL酒石酸水素塩及び4.4mg/mL可溶化エピネフリン塩基による、平均フラックス対時間を示す。
図3図3に関して、このグラフは、濃度の関数としての、酒石酸水素エピネフリンのエクスビボ透過を示す。
図4図4に関して、このグラフは、溶液のpHの関数としての、酒石酸水素エピネフリンの透過を示す。
図5図5に関して、このグラフは、時間の関数としての、透過した量として示された、エピネフリンの透過に対するエンハンサーの影響を示す。
図6図6A及び6Bに関して、これらのグラフは、透過量(μg)対時間として示された、ポリマープラットフォームに対するエピネフリンの放出(6A)、及びその放出に対するエンハンサーの作用(6B)を示す。
図7図7に関して、このグラフは、雄のYucatanミニブタにおける、薬物動態モデルを示す。この試験は、0.3mgエピペン、0.12mgエピネフリンIV、及びプラセボフィルムを比較している。
図8図8に関して、このグラフは、40mgエピネフリンフィルム対0.3mgエピペンの濃度プロファイルに対するエンハンサー非存在の影響を示す。
図9図9に関して、このグラフは、40mgエピネフリンフィルム対0.3mgエピペンの濃度プロファイルに対する、エンハンサーA(ラブラゾル)の影響を示す。
図10図10に関して、このグラフは、2種の40mgエピネフリンフィルム(10-1-1)及び(11-1-1)対0.3mgエピペンの濃度プロファイルに対するエンハンサーL(クローブ油)の影響を示す。
図11図11に関して、このグラフは、40mgエピネフリンフィルム対0.3mgエピペンの濃度プロファイルに対するエンハンサーL(クローブ油)及びフィルム寸法(10-1-1薄く大きいフィルム及び11-1-1厚く小さいフィルム)の影響を示す。
図12図12に関して、このグラフは、0.3mgエピペンに対する、エンハンサーL(クローブ油)のための一定のマトリクスにおけるエピネフリンフィルムの変動用量に関する濃度プロファイルを示す。
図13図13に関して、このグラフは、0.3mgエピペンに対する、エンハンサーL(クローブ油)のための一定のマトリクス中のエピネフリンフィルムの変動用量に関する濃度プロファイルを示す。
図14図14に関して、このグラフは、0.3mgエピペンに対する、エンハンサーA(ラブラゾル)のための一定のマトリクス中のエピネフリンフィルムの変動用量に関する濃度プロファイルを示す。
図15図15に関して、このグラフは、時間の関数としての、透過した量として示された、ジアゼパムの透過に対するエンハンサーの影響を示す。
図16図16に関して、このグラフは、時間の関数としての平均フラックスを示す(ジアゼパム+エンハンサー)。
図17図17に関して、このグラフは、40mgエピネフリンフィルム対0.3mgエピペンの血漿濃度プロファイルに対する、ファルネソール及びリノール酸と組合せたファルネソールの影響を示す。
図18図18に関して、このグラフは、40mgエピネフリンフィルム対0.3mgエピペンの血漿濃度プロファイルに対する、ファルネソールの影響を示す。
図19図19に関して、このグラフは、40mgエピネフリンフィルム対0.3mgエピペンの血漿濃度プロファイルに対する、リノール酸と組合せたファルネソールの影響を示す。
図20図20に関して、このグラフは、40mgエピネフリンフィルム対0.3mgエピペンの血漿濃度プロファイルに対する、ファルネソール及びリノール酸と組合せたファルネソールの影響を示す。
図21図21に関して、このグラフは、対数表示での、40mgエピネフリンフィルムの濃度プロファイル(同じく図22に示した)に対する、エンハンサーL(クローブ油)と組合せたエンハンサーA(ラブラゾル)の影響を示す。
図22図22に関して、このグラフは、0.3mgエピペンから収集した平均データと比較した、40mgエピネフリンフィルムの濃度プロファイルに対する、エンハンサーL(クローブ油)と組合せたエンハンサーA(ラブラゾル)の影響を示す。
図23図23に関して、このグラフは、個別の動物対象として示された、40mgエピネフリンフィルムの濃度プロファイルに対する、エンハンサーL(クローブ油)と組合せたエンハンサーA(ラブラゾル)の影響を示す。
図24図24Aに関して、このグラフは、アルプラゾラム経口崩壊錠(ODT)の舌下投与後の時間の関数としてのアルプラゾラム血漿濃度を示す。 図24Bに関して、このグラフは、アルプラゾラム医薬組成物フィルムの舌下投与後の時間の関数としてのアルプラゾラム血漿濃度を示す。 図24Cに関して、このグラフは、アルプラゾラム医薬組成物フィルムの舌下投与後の時間の関数としてのアルプラゾラム血漿濃度を示す。
図25図25Aに関して、このグラフは、アルプラゾラムODT及びアルプラゾラム医薬組成物フィルムの舌下投与後の時間の関数としての平均アルプラゾラム血漿濃度を示す。 図25Bに関して、このグラフは、舌下投与後の時間の関数としてのアルプラゾラム血漿濃度を示す。 図25Cに関して、このグラフは、舌下投与後の時間の関数としてのアルプラゾラム血漿濃度を示す。
図26図26Aに関して、このグラフは、アルプラゾラムODTの舌下投与後の時間の関数としてのアルプラゾラム血漿濃度を示す。 図26Bに関して、このグラフは、アルプラゾラム医薬組成物フィルムの舌下投与後の時間の関数としてのアルプラゾラム血漿濃度を示す。 図26Cに関して、このグラフは、アルプラゾラム医薬組成物フィルムの舌下投与後の時間の関数としてのアルプラゾラム血漿濃度を示す。
図27図27Aに関して、このグラフは、アルプラゾラムODT及び医薬組成物フィルムの舌下投与後の時間の関数としての平均アルプラゾラム血漿濃度を示す。 図27Bに関して、このグラフは、アルプラゾラムODT及び医薬組成物フィルムの舌下投与後の時間の関数としての平均アルプラゾラム血漿濃度を示す。 図27Cに関して、このグラフは、アルプラゾラムODT及び医薬組成物フィルムの舌下投与後の時間の関数としてのアルプラゾラム血漿濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
(詳細な説明)
口腔粘膜などの粘膜表面は、高度に血管形成され、且つ透過性であり、消化器系を通過することがなく、これにより初回通過代謝を避けるという理由で、増大した生物学的利用能及び作用の迅速な開始を提供するという事実のために、粘膜表面は、体への薬物送達のための都合の良い経路である。特に、頬側組織及び舌下組織は、口腔粘膜の高度に透過性の領域であり、全身循環への直接のアクセスを有するよう口腔粘膜からの薬物の拡散を可能にするので、これらの組織は、薬物送達にとって有利な部位を提供する。これはまた、利便性の増加をもたらし、従って患者のコンプライアンスを高める。ある種の薬物又は医薬活性成分に関して、透過エンハンサーは、粘膜障壁を乗り越え、透過性を改善することを補助することができる。透過エンハンサーは、薬物吸収に有利なように障壁層の浸透性を可逆的に調整する。透過エンハンサーは、上皮を通る分子の輸送を促進する。吸収プロファイル及びそれらの速度は、非限定的に、フィルムサイズ、薬物負荷、エンハンサーの種類/負荷、ポリマーマトリクス放出速度及び粘膜滞留時間などの、様々なパラメーターにより制御及び調整され得る。
【0047】
医薬組成物は、医薬活性成分を計画的であつらえられた様式で送達するように設計することができる。しかし、医薬活性成分のインビボにおける、特に対象の口内における、溶解度及び透過性は、かなり変動し得る。特定のクラスの透過エンハンサーは、医薬活性成分のインビボにおける取込み及び生物学的利用能を向上することができる。特に、フィルムを介して口へ送達される場合、透過エンハンサーは、対象の粘膜を通り血流へ入る医薬活性成分の透過性を向上することができる。透過エンハンサーは、医薬活性成分の吸収の速度及び量を、組成物中の他の成分に応じて、5%超、10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、100%超、150%超、約200%以上、又は200%未満、150%未満、100%未満、90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、もしくは5%未満、又はこれらの範囲の組合せだけ、向上することができる。
【0048】
ある実施態様において、医薬組成物は、親水性サッカリドとの結合により連結された疎水性アルキル基を有する、好適な無毒の非イオン性アルキル配糖体を、以下:(a)凝集阻害剤;(b)電荷修飾剤;(c)pH調節剤;(d)分解酵素阻害剤;(e)粘液溶解剤又は粘膜除去剤;(f)線毛運動障害剤;(g)以下:(i)界面活性剤;(ii)胆汁酸塩;(ii)リン脂質添加剤、混合ミセル、リポソーム、もしくは担体;(iii)アルコール;(iv)エナミン;(v)NO供与化合物;(vi)長鎖両親媒性分子;(vii)低分子疎水性浸透エンハンサー;(viii)ナトリウム又はサリチル酸誘導体;(ix)アセト酢酸のグリセロールエステル;(x)シクロデキストリン又はβ-シクロデキストリン誘導体;(xi)中鎖脂肪酸;(xii)キレート化剤;(xiii)アミノ酸又はその塩;(xiv)N-アセチルアミノ酸又はその塩;(xv)選択された膜成分に対して分解性の酵素;(ix)脂肪酸合成の阻害剤;(x)コレステロール合成の阻害剤;及び、(xi) (i)~(x) に記載の膜浸透促進剤の任意の組合せから選択される膜透過促進剤;(h)上皮ジャンクション生理機能の調整剤;(i)血管拡張剤;(j)選択的輸送促進剤;並びに、(k)安定化送達ビヒクル、担体、粘膜付着性物質、支持体、又は複合体形成種であって、それとともに、本化合物が効果的に配合され、会合され、含有され、封入され、又は結合されて、増強された粘膜送達のための化合物の安定化をもたらす、前記安定化送達ビヒクル、担体、粘膜付着性物質、支持体、又は複合体-形成種から選択される粘膜送達促進剤と組合せて有し、ここで経粘膜的な送達促進剤を含む本化合物の製剤は、対象の血漿中の本化合物の生物学的利用能の増大を提供する。浸透エンハンサーは、J. Nicolazzoらの文献、J. of Controlled Disease, 105 (2005) 1-15に説明されており、これは引用により本明細書中に組み込まれている。口腔粘膜が、治療薬の全身循環への送達のための魅力的部位である理由は多い。頬側上皮から内頚静脈への血液の直接ドレナージのために、肝臓及び腸における初回通過代謝を回避することができる。初回通過効果は、経口投与された場合の、一部の化合物の生物学的利用能の不良の主な理由となり得る。加えて、口腔を覆う粘膜は、容易にアクセス可能であり、このことは、剤形が、必要とされる部位へ適用され、且つ緊急の場合は容易に除去され得ることを確実にする。しかし、皮膚のように、頬側粘膜は、生体異物の吸収に対する障壁として作用し、このことは、この組織を超える化合物の透過を妨害することができる。結果的に、安全且つ有効な浸透エンハンサーの確定は、口腔粘膜薬物送達の向上の探求における大きな目標となっている。
【0049】
化学的浸透エンハンサーは、生体膜を通り共投与される薬物の透過速度を制御する物質である。大規模な研究が、浸透エンハンサーが腸管及び経皮の透過性をどのように変化させるかについてのより良い理解を得ることに焦点を当てているが、頬側及び舌下の浸透増強に係わる機序に関しては、ほとんどわかっていない。
【0050】
頬側粘膜は、頬の内側の裏打ち、並びに歯茎と上下唇の間の領域の輪郭を描き、且つこれは、100cm2の平均表面積を有する。頬側粘膜の表面は、波打つ基底膜(厚さおよそ1~2μmの細胞外物質の連続層)により、下側結合組織(固有層及び粘膜下層)から分離されている重層扁平上皮からなる。この重層扁平上皮は、基底領域から細胞が脱落する表在領域へと移るにつれ、サイズ、形状、及び含有物が変化する、細胞の分化している層からなる。そこにはおよそ40~50の細胞層が存在し、厚さ500~600μmの頬側粘膜が生じている。
【0051】
構造的に、舌下粘膜は、頬側粘膜と同等であるが、この上皮の厚さは100~200μmである。この膜も、角質化されず、比較的薄いことで、頬側粘膜よりもより透過性であることが明らかにされている。舌下粘膜への血流は、頬側粘膜と比べより遅く、1.0ml/分-1/cm-2の桁である。
【0052】
頬側粘膜の透過性は、皮膚のそれよりも大きいが、腸のそれよりも小さい。透過性の相違は、各組織の間の構造的相違の結果である。頬側粘膜の細胞間隙中の組織化された脂質ラメラの非存在は、皮膚の角質化された上皮と比べ、外来化合物のより大きい透過性を生じ;他方で、増加した厚さ及び密着結合の欠如は、頬側粘膜が腸組織よりも透過性が低くなることをもたらす。
【0053】
頬側粘膜の一次障壁特性は、頬側上皮の上側1/3~1/4に起因するとされている。研究者らは、表面上皮を超える、角質化されていない口腔粘膜の透過性障壁はまた、膜被覆顆粒から上皮細胞間隙へ押し出された内容物に帰せられることを知っている。
【0054】
口腔の角質化されていない領域の細胞間脂質は、表皮、口蓋、及び歯肉の脂質よりも、より極性のある性質であり、且つこの脂質の化学的性質の差は、これらの組織間で認められる透過性の差に寄与している。結果的に、これは、より効果的な障壁を作り出す角質化された上皮の角質層での細胞間脂質充填の程度がより大きいことのみではなく、その障壁内に存在する脂質の化学的性質でもあることは明らかである。
【0055】
口腔粘膜内の親水性領域及び親油性領域の存在は、研究者らに、頬側粘膜を通る2種の薬物輸送経路-傍細胞(細胞間)及び経細胞(細胞を超える)-の存在を仮定させた。
【0056】
頬側粘膜を通る薬物送達は、上皮及び吸収に利用可能な領域の障壁の性質により限定されるので、全身循環へ治療的に適切な量の薬物を送達するためには、様々な増強戦略が必要である。化学的浸透エンハンサーの使用、プロドラッグ、及び物理的方法を含む様々な方法を、頬側粘膜の障壁特性を克服するために利用することができる。
【0057】
化学的浸透エンハンサー、すなわち吸収プロモーターは、膜の損傷及び/又は毒性の惹起を伴わずに、共投与される薬物の膜透過又は吸収の速度を増大するために、医薬製剤に添加される物質である。化学的浸透エンハンサーの、皮膚、鼻粘膜、及び腸を超える化合物の送達に対する作用を調べる、多くの研究が存在する。近年、頬側粘膜の透過性に対するこれらの物質の作用に、より多くの注意が払われている。頬側粘膜を超える透過性は、受動拡散プロセスであると考えられるので、定常状態フラックス(Jss)は、フィックの拡散第一法則に従い、ドナーチャンバー濃度(CD)の増加とともに増加するはずである。
【0058】
界面活性剤及び胆汁酸塩は、インビトロ及びインビボの両方において、様々な化合物の頬側粘膜を超える透過性を増強することが示されている。これらの研究から得られたデータは、透過性の増強が、粘膜の細胞間脂質に対する界面活性剤の作用によるものであることを、強力に示唆している。
【0059】
脂肪酸は、いくつかの薬物の皮膚を通る透過を増強することが示されており、且つこれは、示差走査熱量測定及びフーリエ変換赤外線分光法により、細胞間脂質の流動性の増加に関連することが示されている。
【0060】
加えて、エタノールによる前処理が、腹側舌粘膜を超えるトリチウム水及びアルブミンの透過性を増強し、且つブタの頬側粘膜を超えるカフェイン透過性を増強することが示されている。また、アゾン(登録商標)の口腔粘膜を通る化合物の透過性に対する増強作用のいくつかの報告もある。更に、生体適合性且つ生分解性ポリマーであるキトサンが、腸及び鼻の粘膜を含む、様々な組織を通る薬物送達を増強することが示されている。
【0061】
経口経粘膜的薬物送達(OTDD)は、全身作用を達成するための、医薬活性物質の口腔粘膜を通る投与である。OTDDの透過経路及び予測モデルは、例えばM. Sattarの文献「経口経粘膜的薬物送達-最新の状況及び今後の見通し(Oral transmucosal drug delivery- Current status and future prospects)」、Int’l. Journal of Pharmaceutics, 47(2014) 498-506に説明されており、この文献は引用により本明細書中に組み込まれている。OTDDは、学術界及び産業界の科学者の注意を引き付け続けている。皮膚及び鼻の送達経路と比べ口腔内の透過経路の限定された特徴決定にもかかわらず、最近のイオン化分子が頬側上皮を透過する程度に関する研究者らの理解の進展、並びに口腔を研究するための新たな分析技術の出現、並びに頬側及び舌下の透過を予測するインシリコモデルの進行中の開発;見通しは明るい。
【0062】
より広範なクラスの薬物を頬側粘膜を超えて送達するためには、この組織の障壁能を低下させる可逆的方法が利用されるべきである。この必要条件は、頬側粘膜の透過性の制約を安全に変更する浸透エンハンサーの研究を促している。頬側浸透は、胆汁酸塩、界面活性剤、脂肪酸及びそれらの誘導体、キレート化剤、シクロデキストリン及びキトサンなどの、様々なクラスの経粘膜的及び経皮的透過エンハンサーを使用することにより改善され得ることが示されている。薬物透過増強のために使用されるこれらの化学物質の中で、胆汁酸塩が最も一般的である。
【0063】
胆汁酸塩の化合物の頬側透過に対する増強作用に関するインビトロ研究は、Sevda Senelの文献「頬側経路による薬物透過増強:可能性及び制限(Drug permeation enhancement via buccal route: possibilities and limitations)」、Journal of Controlled Release 72 (2001) 133-144において考察されており、この文献は引用により本明細書中に組み込まれている。その記事はまた、ジヒドロキシ胆汁酸塩、グリコデオキシコール酸ナトリウム(SGDC)及びタウロデオキシコール酸ナトリウム(TDC)及びトリ-ヒドロキシ胆汁酸塩、グリココール酸ナトリウム(GC)及びタウロコール酸ナトリウム(TC)の、濃度100mMでの、頬側上皮の透過性の作用に関する最新の研究についても、組織学的作用に関連した透過性の変化を含めて、考察している。フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、硫酸モルヒネが、各々、モデル化合物として使用された。
【0064】
キトサンもまた、動物モデル及びヒト志願者において、低分子極性分子及びペプチド/タンパク質薬物の鼻粘膜を通る吸収を促進することが示されている。他の研究は、腸粘膜及び培養されたCaco-2細胞を超える化合物の浸透に対する増強作用を示している。
【0065】
透過エンハンサーは、植物抽出物であることができる。植物抽出物は、植物材料の蒸留により抽出された精油であるか又は精油を含む組成物であることができる。ある状況において、植物抽出物は、植物材料から抽出された化合物の合成アナログ(すなわち、有機合成により生成された化合物)を含むことができる。植物抽出物は、フェニルプロパノイド、例えば、フェニルアラニン、オイゲノール、酢酸オイゲノール、桂皮酸、桂皮酸エステル、桂皮アルデヒド、ヒドロ桂皮酸、カビコール、もしくはサフロール、又はそれらの組合せを含むことができる。植物抽出物は、クローブ植物、例えばクローブ植物の葉、茎、又は花芽の精油抽出物であることができる。クローブ植物は、シジギウム・アロマティクム(Syzygium aromaticum)である。この植物抽出物は、20~95%のオイゲノールを含み、40~95%のオイゲノールを含み、60~95%のオイゲノール、例えば、80~95%のオイゲノールを含むことができる。この抽出物はまた、5%~15%の酢酸オイゲノールも含むことができる。この抽出物はまた、カリオフィレンを含むことができる。この抽出物はまた、最大2.1%までのα-フムレンも含むことができる。クローブ精油中により低い濃度で含まれる他の揮発性化合物は、β-ピネン、リモネン、ファルネソール、ベンズアルデヒド、2-ヘプタノン又はヘキサン酸エチルであることができる。別の透過エンハンサーを、薬物の吸収を改善するために、組成物へ添加してもよい。好適な透過エンハンサーは、天然又は合成の胆汁酸塩、例えばフシジン酸ナトリウム;グリココール酸又はデオキシコール酸及びそれらの塩など;脂肪酸及び誘導体、例えばラウリン酸ナトリウム、オレイン酸、オレイルアルコール、モノオレイン、又はパルミトイルカルニチンなど;キレート化剤、例えば、EDTA二ナトリウム、クエン酸ナトリウム及びラウリル硫酸ナトリウム、アゾン、コール酸ナトリウム、5-メトキシサリチル酸ナトリウム、ソルビタンラウレート、グリセリルモノラウレート、オクトキシノニル-9、ラウレス-9、ポリソルベート、ステロール、又はグリセリド、例えばカプリロカプロイルポリオキシルグリセリド、例えばラブラゾルなどを含む。透過エンハンサーは、植物抽出物の誘導体及び/又はモノリグノールを含むことができる。透過エンハンサーはまた、真菌抽出物であることもできる。
【0066】
植物起源の一部の天然の生成物は、血管拡張作用を有することがわかっている。植物ベースの産物が血管拡張を引き起こすことができるいくつかの機構又は様式が存在する。総説については、引用により本明細書中に組み込まれている、McNeill J.R.及びJurgens, T.M.の文献、Can. J. Physiol. Pharmacol. 84:803-821 (2006)を参照されたい。具体的に、オイゲノールの血管弛緩作用が、いくつかの動物研究において報告されている。例えば、各々が引用により本明細書中に組み込まれている、Lahlou, S.らの文献、J. Cardiovasc. Pharmacol. 43:250-57 (2004)、Damiani, C.E.N.らの文献、Vascular Pharmacol. 40:59-66 (2003)、Nishijima, H.らの文献、Japanese J. Pharmacol. 79:327-334 (1998)、及びHume W.R.の文献、J. Dent Res. 62(9):1013-15 (1983)を参照されたい。カルシウムチャネル遮断が、植物精油、又はその主成分オイゲノールにより誘導される血管弛緩の主因であることが示唆された。引用により本明細書中に組み込まれているInteraminense L.R.L.らの文献、Fundamental & Clin. Pharmacol. 21: 497-506 (2007)を参照されたい。
【0067】
脂肪酸は、薬物調製品又は薬物ビヒクル中の不活性成分として使用することができる。脂肪酸はまた、それらのある種の機能作用及びそれらの生体適合性の性質のために、製剤成分として使用することもできる。遊離脂質及び複合脂質の一部の双方の脂肪酸は、主要な代謝燃料(貯蔵及び輸送エネルギー)、全ての膜及び遺伝子調節因子の必須成分である。総説については、引用により本明細書中に組み込まれているRustan A.C.及びDrevon, C.A.の文献、「生命科学百科事典、脂肪酸:構造及び性質(Fatty Acids: Structures and Properties, Encyclopedia of Life Sciences)」 (2005)を参照されたい。人体で代謝される必須脂肪酸には、二つのファミリーが存在する:ω-3及びω-6多価不飽和脂肪酸(PUFA)である。第一の二重結合がω炭素から三番目と四番目の炭素原子の間に認められる場合、これらは、ω-3脂肪酸と称される。第一の二重結合が六番目と七番目の炭素原子の間に認められる場合、これらは、ω-6脂肪酸と称される。PUFAは更に、炭素原子の付加及び不飽和化(水素の除去)により、体内において代謝される。ω-6脂肪酸であるリノール酸は、γ-リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、アドレン酸、テトラコサテトラエン酸、テトラコサペンタエン酸、及びドコサペンタエン酸に代謝される。ω-3脂肪酸であるα-リノレン酸は、オクタデカテトラエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸、及びドコサヘキサエン酸(DHA)に代謝される。
【0068】
パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、及びエイコサペンタエン酸などの脂肪酸は、Na+K+-APTaseポンプの活性化に関与する機序を介して、ブタの冠動脈平滑筋細胞の弛緩及び過分極を誘導したこと、及びシス不飽和度が増大するにつれて、脂肪酸がより高い効力を有したことが報告されている。引用により本明細書中に組み込まれている、Pomposiello, S.I.らの文献、Hypertension 31:615-20 (1998)を参照されたい。興味深いことに、リノール酸の代謝産物であるアラキドン酸に対する肺血管反応は、投与量、動物種、アラキドン酸投与の様式、及び肺循環の調子(tone)に応じて、血管収縮性又は血管拡張性のいずれかとなり得る。例えば、アラキドン酸は、シクロオキシゲナーゼ-依存性及び-非依存性の肺血管拡張を引き起こすことが、報告されている。各々が引用により本明細書中に組み込まれている、Feddersen, C.O.らの文献、J. Appl. Physiol. 68(5):1799-808 (1990);並びに、Spannhake, E.W.らの文献、J .Appl. Physiol. 44:397-495 (1978)及びWicks, T.C.らの文献、Circ. Res. 38:167-71 (1976)を参照されたい。
【0069】
多くの研究が、エイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)の、口から摂取可能な形態として投与された後の、血管の反応性に対する作用を報告している。いくつかの研究は、EPA-DHA又はEPA単独が、前腕微小循環における、ノルエピネフリンの血管収縮作用を抑制し又はアセチルコリンへの血管拡張反応を増強したことを認めた。各々が引用により本明細書中に組み込まれている、Chin, J.P.F.らの文献、Hypertension 21:22-8 (1993)、及びTagawa, H.らの文献、J Cardiovasc Pharmacol 33:633-40 (1999)を参照されたい。別の研究は、EPA及びDHAの両方が、全身の動脈系コンプライアンスを増大させ、且つ脈圧及び総血管抵抗を低下させる傾向があることを発見した。引用により本明細書中に組み込まれている、Nestel, P.らの文献、Am J. Clin. Nutr. 76:326-30 (2002)を参照されたい。その一方で、研究は、EPAではなく、DHAが、高脂血症の過体重男性の前腕微小循環において、血管拡張機序を増強し、且つ収縮反応を減弱したことを発見した。引用により本明細書中に組み込まれている、Mori, T.A.らの文献、Circulation 102:1264-69 (2000)を参照されたい。別の研究は、インビトロにおける分離されたヒト冠状動脈の律動収縮に対するDHAの血管拡張作用を発見した。引用により本明細書中に組み込まれている、Wu, K.-T.らの文献、Chinese J. Physiol. 50(4):164-70 (2007)を参照されたい。
【0070】
アドレナリン受容体(又はアドレノレセプター)は、カテコールアミンの、特にノルエピネフリン(ノルアドレナリン)及びエピネフリン(アドレナリン)の標的である、Gタンパク質-共役受容体のクラスである。エピネフリン(アドレナリン)は、α-及びβ-アドレノレセプターの両方と相互作用し、各々、血管収縮及び血管拡張を引き起こす。α受容体は、エピネフリンに対する感受性が低いが、末梢α1受容体のほうがβ-アドレノレセプターよりも多いので、活性化された場合に、これらはβ-アドレノレセプターにより媒介される血管拡張を無効にする。結果、高いレベルの循環エピネフリンは、血管収縮を引き起こす。比較的低いレベルの循環エピネフリンでは、β-アドレノレセプター刺激が優位であり、血管拡張、それに続く末梢血管抵抗の減少を生じる。α1-アドレノレセプターは、平滑筋収縮、散瞳、皮膚、粘膜及び腹部内臓における血管収縮、並びに胃腸(GI)管及び膀胱の括約筋収縮に関して知られている。α1-アドレナリン受容体は、Gqタンパク質-共役受容体スーパーファミリーの一員である。活性化時に、ヘテロ三量体Gタンパク質、Gqは、ホスホリパーゼC(PLC)を活性化する。その作用機序は、カルシウムチャネルとの相互作用を伴い、細胞内カルシウム含量を変化させる。総説については、引用により本明細書中に組み込まれている、Smith R. S.らの文献、Journal of Neurophysiology 102(2): 1103-14 (2009)を参照されたい。多くの細胞が、これらの受容体を有する。
【0071】
α1-アドレナリン受容体は、脂肪酸に関する主要受容体であることができる。例えば、良性前立腺肥大(BPH)の治療に広く使用されるノコギリヤシ抽出液(SPE)は、α1-アドレナリン作動性、ムスカリン作動性、且つ1,4-ジヒドロピリジン(1,4-DHP)系カルシウムチャネル拮抗性の受容体に結合することが報告されている。各々が引用により本明細書中に組み込まれている、Abe M.らの文献、Biol. Pharm. Bull. 32(4) 646-650 (2009)、及びSuzuki M.らの文献、Acta Pharmacologica Sinica 30:271-81 (2009)を参照されたい。SPEは、ラウリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、及びリノール酸を含む、様々な脂肪酸を含んでいる。ラウリン酸及びオレイン酸は、α1-アドレナリン作動性、ムスカリン作動性、且つ1,4-DHP系カルシウムチャネル拮抗性の受容体へ、非競合的に結合することができる。
【0072】
ある実施態様において、透過エンハンサーは、アドレナリン受容体相互作用物質であることができる。アドレナリン受容体相互作用物質とは、アドレナリン受容体の作用を修飾する且つ/又はそうでなければ変化させる化合物又は物質を指す。例えば、アドレナリン受容体相互作用物質は、それらの結合能を増加又は減少させることにより、受容体の刺激を防止することができる。このような相互作用物質は、短期作用型又は長期作用型のいずれかで提供されることができる。ある短期作用型相互作用物質は、迅速に作用することができるが、それらの作用は、数時間持続するのみである。ある長期作用型相互作用物質は、作用するまでに長時間を要するが、それらの作用はより長く持続することができる。この相互作用物質は、例えば、所望の送達及び投与量、活性医薬成分、透過修飾因子、透過エンハンサー、マトリクス、及び治療される状態のうちの1つ以上に基づき、選択及び/又は設計されることができる。アドレナリン受容体相互作用物質は、アドレナリン受容体遮断薬であることができる。アドレナリン受容体相互作用物質は、テルペン(例えば、イソプレンの単位に由来する、植物精油中にみられる揮発性不飽和炭化水素)、又はC3~C22アルコールもしくは酸、好ましくはC7~C18アルコールもしくは酸であることができる。ある実施態様において、アドレナリン受容体相互作用物質は、ファルネソール、リノール酸、アラキドン酸、ドコサヘキサン酸、エイコサペンタン酸、及び/又はドコサペンタン酸を含むことができる。この酸は、カルボン酸、リン酸、硫酸、ヒドロキサム酸、又はそれらの誘導体であることができる。この誘導体は、エステル又はアミドであることができる。例えば、アドレナリン受容体相互作用物質は、脂肪酸又は脂肪族アルコールであることができる。
【0073】
C3-C22アルコール又は酸は、直鎖C3-C22炭化水素、例えば任意に少なくとも1つの二重結合、少なくとも1つの三重結合、又は少なくとも1つの二重結合と1つの三重結合を含むC3-C22炭化水素鎖を有するアルコール又は酸であることができ;該炭化水素鎖は、任意にC1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C1-4アルコキシ、ヒドロキシル、ハロ、アミノ、ニトロ、シアノ、C3-5シクロアルキル、3-5員のヘテロシクロアルキル、単環のアリール、5-6員のヘテロアリール、C1-4アルキルカルボニルオキシ、C1-4アルキルオキシカルボニル、C1-4アルキルカルボニル、又はホルミルにより置換されており;且つ、更に任意に、-O-、-N(Ra)-、-N(Ra)-C(O)-O-、-O-C(O)-N(Ra)-、-N(Ra)-C(O)-N(Rb)-、又は-O-C(O)-O-が間に挟まっている。Ra及びRbの各々は、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ヒドロキシルアルキル、ヒドロキシル、又はハロアルキルである。
【0074】
不飽和度がより高い脂肪酸は、薬物の透過を増強するのに有効な候補である。不飽和脂肪酸は、飽和脂肪酸よりも高い増強を示し、且つ増強は、二重結合の数とともに増大した。引用により本明細書中に組み込まれている、A. Mittalらの文献、「皮膚浸透エンハンサーとしての脂肪酸の状態-総説(Status of Fatty Acids as Skin Penetration Enhancers - A Review)」、Current Drug Delivery, 2009, 6, pp. 274-279を参照されたい。二重結合の位置もまた、脂肪酸の活性の増強に影響を及ぼす。二重結合の位置の差に起因する脂肪酸の物理化学特性の差異は、皮膚浸透エンハンサーとしての、これらの化合物の効力を決定する可能性が最も高い。二重結合の位置が親水性末端へシフトされるにつれ、皮膚分布は増加する。偶数位置に二重結合を有する脂肪酸は、奇数位置に二重結合を有する脂肪酸よりも、角質層及び真皮の両方の構造の乱れ(perturbation)に、より迅速に作用することも、報告されている。鎖内のシス-不飽和は、活性を増加する傾向がある。
【0075】
アドレナリン受容体相互作用物質は、テルペンであることができる。精油中のテルペンの血圧降下活性が、報告されている。引用により本明細書中に組み込まれている、Menezes I.A.らの文献、Z. Naturforsch. 65c:652-66 (2010)を参照されたい。ある実施態様において、透過エンハンサーは、セスキテルペンであることができる。セスキテルペンは、3つのイソプレン単位からなり、且つ実験式C15H24を有する、テルペンのクラスである。モノテルペンのように、セスキテルペンは、非環式であることもあり、もしくは多くの独自の組合せを含む、環を含むこともある。酸化又は転位のような生化学修飾は、関連するセスキテルペノイドを生成する。
【0076】
アドレナリン受容体相互作用物質は、リノール酸などの、不飽和脂肪酸であることができる。ある実施態様において、透過エンハンサーは、ファルネソールであることができる。ファルネソールは、非環式セスキテルペンアルコールである、15-炭素有機化合物であり、これはピロリン酸ファルネシルの天然の脱リン酸化された形態である。標準の条件下で、これは、無色の液体である。これは、疎水性であり、従って水に不溶性であるが、油分とは混和性である。ファルネソールは、シトロネラ、ネロリ、シクラメン、及びゲッカコウなどの植物の油分から抽出することができる。これは、脊椎動物におけるメバロン酸からのコレステロールの生合成の中間工程である。これは、繊細な花の香り又は弱い柑橘-ライムの香りを有し、且つ香水及び香料において使用される。ファルネソールは、初代造血細胞に優先して、急性骨髄性白血病芽球及び白血球細胞株を選択的に死滅させることが、報告されている。引用により本明細書中に組み込まれている、Rioja A.らの文献、FEBS Lett 467 (2-3): 291-5 (2000)を参照されたい。ファルネシルアナログの血管作動特性が、報告されている。引用により本明細書中に組み込まれている、Roullet, J.-B.らの文献、J. Clin. Invest., 1996, 97:2384-2390を参照されたい。ファルネソール及びN-アセチル-S-トランス,トランス-ファルネシル-L-システイン(AFC)、ファルネシル化されたタンパク質のカルボキシル末端の合成模倣物の両方は、ラット大動脈輪において血管収縮を阻害した。
【0077】
ある実施態様において、相互作用物質を、アポルフィンアルカロイドとすることができる。例えば、相互作用物質を、ジセントリンとすることができる。
【0078】
一般に、相互作用物質を、血管拡張剤又は治療用血管拡張剤とすることもできる。血管拡張剤は、血管を開く又は拡げる薬物である。血管拡張剤は、通常、高血圧症、心不全、及び狭心症を治療するのに用いられるが、例えば緑内障を含む他の状態を治療するのに用いることもできる。抵抗血管に対して主に作用する一部の血管拡張剤(動脈拡張薬)は、高血圧症、及び心不全、及び狭心症に使用される;しかしながら、反射性の心刺激が、一部の動脈拡張薬を狭心症に不適とする。静脈拡張薬は、狭心症に非常に有効であり、時には、心不全に使用されるが、高血圧症の一次療法としては使用されない。血管拡張薬は、動脈及び静脈の双方を拡張させるという点で混合型(又はバランス型)血管拡張剤となることができ、従って、高血圧症、心不全、及び狭心症において広く応用できる。一部の血管拡張剤は、それらの作用機序を理由として、場合によっては、それらの治療的有用性を強化することができるか又はいくつかの追加の治療的利益を提供することができる別の重要な作用も有する。例えば、一部のカルシウムチャネルブロッカーは、血管を拡張させるだけでなく、心臓の機械的機能及び電気的機能を低下させ、このことにより、それらの抗高血圧作用を強化することができ、且つ不整脈をブロックすることなどの追加の治療的利益を付与することができる。
【0079】
血管拡張薬は、それらの作用部位(動脈性対静脈)に基づいてか又は作用機序によって分類することができる。主に、抵抗血管を拡張させる薬物(動脈拡張薬;例えば、ヒドララジン)もあり、主に静脈の容量血管に影響を及ぼす薬物(静脈拡張薬;例えば、ニトログリセリン)もある。フェントラミンなどの、多くの血管拡張薬は、混合型の動脈及び静脈拡張性を有する(混合型拡張薬;例えば、α-アドレナリン受容体アンタゴニスト、アンジオテンシン変換酵素阻害剤)。
【0080】
しかしながら、主要な作用機序に基づいて血管拡張薬を分類することがより一般的である。右の図は、血管拡張薬の重要な機序のクラスを表す。これらの薬物のクラス、及び血管拡張を生じさせる他のクラスには:α-アドレナリン受容体アンタゴニスト(α-遮断薬);アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤;アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB);β2-アドレナリン受容体アゴニスト(β2-アゴニスト);カルシウムチャネル遮断薬(CCB);中枢作用型交感神経遮断薬;直接作用型血管拡張剤;エンドセリン受容体アンタゴニスト;神経節遮断薬;ニトロ拡張薬;ホスホジエステラーゼ阻害剤;カリウムチャネル開口薬;レニン阻害剤が含まれる。
【0081】
一般に、活性又は不活性な成分又は材料は、増加した血流又は組織のフラッシングを生じさせ、APIの経粘膜的な取り込みの変化又は相違(増加又は減少)を可能にする物質もしくは化合物、及び/又は正又は負の溶解熱を有し、経粘膜的な取り込みを変化(増加又は減少)させる補助剤として使用される物質もしくは化合物とすることができる。
【0082】
(透過エンハンサー及び活性医薬成分の配列)
所望の粘膜表面に送達される透過エンハンサー及び活性医薬成分(API)の配置(arrangement)、順序(order)、又は配列(sequence)を、所望の薬物動態プロファイルを達成するために異ならせることができる。例えば、フィルムによってか、スワブ、スプレー、ゲル、すすぎによってか、又はフィルムの第1の層によって先ず透過エンハンサーを適用し、その後、単一のフィルムによってか、スワブによってか、又はフィルムの第2の層によってAPIを適用することができる。本配列は、例えば、フィルムによってか、スワブによってか、又はフィルムの第1の層によって先ずAPIを適用し、その後、フィルムによってか、スワブ、スプレー、ゲル、すすぎによってか、又はフィルムの第2の層によって透過エンハンサーを適用することによって、逆にしたり、変更したりすることができる。別の実施態様において、フィルムによって透過エンハンサーを適用し、且つ薬物を別のフィルムによって適用してもよい。例えば、所望の薬物動態プロファイルに応じて、APIを含有するフィルムの下に位置する透過エンハンサーフィルム、又は透過エンハンサーを含有するフィルムの下に位置するAPIを含有するフィルムである。
【0083】
例えば、透過エンハンサーを、前処置のみとしてか、又は少なくとも1種のAPIと組み合わせて用いて、APIのさらなる吸収のために粘膜をプレコンディショニングすることができる。この処置に、ニートの透過エンハンサーでの別の処置を続けて、前記少なくとも1種のAPIの粘膜への適用に続けることができる。本前処置は、別個の処置(フィルム、ゲル、溶液、スワブなど)としてか、又は1つ以上の層の多層フィルム構造体内の層として適用することができる。同様に、本前処置は、透過エンハンサー又はAPIを含むか含まない第二のドメインの放出の前に粘膜へ溶解及び放出するように設計された単一のフィルムの別個のドメイン内に含まれてもよい。その後、本活性成分は、第2の処置から、単独で又は追加の透過エンハンサーと組み合わせて送達され得る。互いに異なる比率又は他の処置の総負荷と比較して異なる比率のいずれかで、追加の透過エンハンサー及び/又は少なくとも1種のAPIもしくはプロドラッグを送達する第3の処置又はドメインが存在してもよい。このことは、あつらえの薬物動態プロファイルを得ることを可能とする。このように、本製品は、意図された薬物動態プロファイル及び/又は薬力学的効果を達成する所望の吸収量及び/又は吸収速度に繋がる粘膜への適用順序、組成、濃度、又は総負荷を異ならせることができる透過エンハンサー及びAPIを含む単一又は複数のドメインを有し得る。
【0084】
本フィルム形式は、明確な面が存在しないように、又はフィルムが、縁が共終端する(共有された境界(border)又は境界(limit)を有するか又はそこで接触する)多層フィルムの少なくとも1つの面を有するように向きを合わせることができる。
【0085】
本医薬組成物は、チュアブル又はゼラチンベースの剤形、スプレー、ガム、ゲル、クリーム、錠剤、液剤又はフィルムであることができる。本組成物は、テクスチャ(textures)、例えば、表面の極微針又は微小突起を含むことができる。最近、皮膚透過性の増大におけるミクロンスケール針の使用が、巨大分子を含み、特に巨大分子に関して、経真皮送達をかなり増加することが示されている。ほとんどの薬物送達研究は、インビトロにおいて広範な分子及びナノ粒子に対する皮膚透過性を増加することが示されている、中実の(solid)極微針を重要視している。インビボ研究は、オリゴヌクレオチドの送達、インスリンによる血糖値の低下、並びにタンパク質ワクチン及びDNAワクチンからの免疫応答の誘導を明らかにしている。そのような研究に関して、針アレイは、皮膚に孔をあけて拡散もしくはイオン導入法による輸送を増大するために、又は極微針表面コーティングから皮膚へ薬物を放出する薬物担体として使用されている。中空の極微針もまた開発され、且つインスリンを糖尿病ラットへ微量注入することが示されている。極微針の実際の適用に対処するためには、極微針破砕強度の皮膚挿入力に対する比(すなわち、安全域)が、小さい先端半径及び大きい壁厚を持つ針について最適であることが分かった。ヒト対象の皮膚に挿入された極微針は、無痛として報告された。まとめると、これらの結果は、極微針が、広範な可能性のある適用のために治療的化合物を皮膚へ送達する有望な技術となることを示唆している。マイクロ電子産業の道具を使用して、極微針が、広範なサイズ、形状及び材料で作製されている。極微針は、例えば、最小の侵襲性の様式で封入された薬物を送達する、ポリマーの微視的な針であることができるが、他の好適な材料を使用することができる。
【0086】
本出願人は、極微針が、特に特許請求された組成物による、口腔粘膜を通る薬物の送達を増強するために使用することができることを見出した。極微針は、口腔粘膜中にミクロンサイズの孔を作製し、これは該粘膜を超える薬物の送達を増強することができる。中実、中空、又は溶解性の極微針を、金属、ポリマー、ガラス及びセラミックを含むが、これらに限定されるものではない、好適な材料で作製することができる。微細加工プロセスは、フォトリソグラフィー、シリコンエッチング、レーザー切断、金属電気めっき、金属電解研摩及び成型を含むことができる。極微針は、組織を前処理するために使用され、且つフィルムの適用前に取り除かれる固形物であることができる。本出願に説明される薬物負荷されたポリマーフィルムは、極微針それ自身のマトリクス材料として使用することができる。これらのフィルムは、それらの表面上に作製された極微針又は微小突起を有することができ、これらはそれを通り薬物が透過することができる粘膜中のマイクロチャネルを形成した後に溶解するであろう。
【0087】
用語「フィルム」は、長方形、正方形、又は他の所望の形状を含む、任意の形状の、フィルム及びシートを含むことができる。フィルムは、任意の所望の厚さ及びサイズであることができる。好ましい実施態様において、フィルムは、使用者に投与、例えば、使用者の口腔へ配置されることができるような、厚さ及びサイズを有することができる。フィルムは、約0.0025mm~約0.250mmの比較的薄い厚さを有するか、又はフィルムは、約0.250mm~約1.0mmのやや厚めの厚さを有することができる。一部のフィルムに関して、厚さは、更に比較的大きくてもよく、すなわち約1.0mmよりも大きくてもよく、或いは比較的薄くてもよく、すなわち約0.0025mm未満であってもよい。フィルムは、単層であることができ、又はフィルムは、積層フィルムもしくは多重キャストフィルムを含む、多層であることができる。透過エンハンサー及び医薬活性成分は、単一の層中で一緒にされるか、各々が個別の層に含有されるか、或いはそうでなければ各々が、同じ剤形の離れた領域中に含有されることができる。ある実施態様において、ポリマーマトリクスに含有される医薬活性成分は、マトリクス中に分散されることができる。ある実施態様において、ポリマーマトリクス中に含有される透過エンハンサーは、マトリクス中に分散されることができる。
【0088】
口腔溶解性フィルムは、3つの主要クラス:即時溶解性、中等度溶解性及び緩徐溶解性に分類することができる。口腔溶解性フィルムはまた、前記カテゴリーのいずれかの組合せを含むことができる。即時溶解性フィルムは、口内で、1秒超、5秒超、10秒超、20秒超、及び30秒未満を含む、約1秒~約30秒で溶解することができる。中等度溶解性フィルムは、口内で、1分超、5分超、10分超、20分超又は30分未満を含む、約1~約30分間で、溶解することができ、緩徐溶解性フィルムは、口内で30分超かけて溶解することができる。一般的傾向として、即時溶解性フィルムは、低分子量親水性ポリマー(例えば、分子量約1,000~9,000ダルトンを有するポリマー、又は分子量最大200,000ダルトンを有するポリマー)を含む(又はからなる)ことができる。対照的に、緩徐溶解性フィルムは一般に、高分子量ポリマー(例えば分子量数百万を有する)を含む。中等度溶解性フィルムは、即時溶解性フィルムと緩徐溶解性フィルムの間に収まる傾向がある。
【0089】
中等度溶解性フィルムであるフィルムを使用することが好ましいこともある。中等度溶解性フィルムは、かなり迅速に溶解することができるが、粘膜付着の良好なレベルも有する。中等度溶解性フィルムはまた、柔軟であり、迅速に湿潤可能であり、且つ典型的には使用者にとって非刺激性である。このような中等度溶解性フィルムは、十分迅速な、最も望ましくは約1分~約20分の、溶解速度を提供することができる一方で、使用者の口腔内に一旦配置されたならば、フィルムが容易に取り外されないような、許容し得る粘膜付着レベルを提供する。このことは、医薬活性成分の使用者への送達を確実にすることができる。
【0090】
医薬組成物は、1種以上の医薬活性成分を含むことができる。この医薬活性成分は、単一の医薬成分又は医薬成分の組合せであることができる。医薬活性成分は、抗炎症性鎮痛薬、ステロイド系抗炎症薬、抗ヒスタミン薬、局所麻酔薬、殺菌剤、消毒薬、血管収縮剤、止血薬、化学療法薬、抗生物質、角質溶解剤、焼灼薬、抗ウイルス薬、抗リウマチ薬、高血圧治療薬、気管支拡張薬、抗コリン作用薬、抗不安薬、制吐化合物、ホルモン、ペプチド、タンパク質又はワクチンであることができる。本医薬活性成分は、化合物、薬物の医薬として許容し得る塩、プロドラッグ、誘導体、薬物複合体又は薬物のアナログであることができる。用語「プロドラッグ」とは、体内で代謝され、生物学的活性薬物を生成することができる、生物学的に不活性の化合物を指す。
【0091】
一部の実施態様において、2種以上の医薬活性成分が、フィルムに含まれてよい。この医薬活性成分は、ACE阻害剤、狭心症治療薬、抗-不整脈薬、抗-喘息薬、抗-コレステロール血症薬、鎮痛薬、麻酔薬、抗けいれん薬、抗欝薬、糖尿病治療薬、下痢止め調製品、解毒薬、抗-ヒスタミン薬、高血圧治療薬、抗炎症薬、抗-脂質薬、抗躁薬、悪心治療薬、卒中防止薬、抗-甲状腺調製品、アンフェタミン、抗-腫瘍薬、抗ウイルス薬、座瘡治療薬、アルカロイド、アミノ酸調製品、鎮咳薬、抗-尿路結石薬、抗-ウイルス薬、同化作用調製品、全身性及び非全身性感染症治療薬、抗-新生物形成薬、パーキンソン治療薬、抗-リウマチ薬、食欲増進薬、血液修飾因子、骨代謝調節因子、心臓血管系作用薬、中枢神経刺激薬、コリンエステラーゼ阻害剤、避妊薬、充血除去剤、栄養補助食品、ドパミン受容体アゴニスト、子宮内膜症管理薬、酵素、勃起障害治療、不妊治療薬、胃腸薬、ホメオパシーレメディ、ホルモン、高カルシウム血症及び低カルシウム血症管理薬、免疫調節物質、免疫抑制薬、片頭痛調製品、酔い止め薬、筋弛緩薬、肥満症管理薬、骨粗鬆症用調製品、子宮収縮薬、副交感神経遮断薬、副交感神経作用薬、プロスタグランジン、精神治療薬、呼吸器系薬剤、鎮静薬、禁煙補助薬、交感神経遮断薬、振戦治療調製品、尿道系薬剤、血管拡張薬、緩下薬、制酸薬、イオン交換樹脂、下熱薬、食欲抑制剤、去痰薬、抗-不安薬、抗-潰瘍薬、抗炎症性物質、冠血管拡張剤、脳血管(cerebral)の拡張薬、末梢血管拡張薬、向精神薬、興奮剤(stimulants)、高血圧治療薬、血管収縮剤、片頭痛治療薬、抗生物質、トランキライザー、抗精神病薬、抗-腫瘍薬、抗凝固薬、抗血栓薬、催眠薬、制吐薬、抗-悪心薬、抗けいれん薬、神経筋作用薬、血糖上昇剤及び降下剤、甲状腺及び抗-甲状腺調製品、利尿薬、抗痙攣薬、子宮弛緩剤、抗-肥満薬、赤血球形成薬、抗-喘息薬、鎮咳剤、粘液溶解薬、DNA及び遺伝子改変薬、診断薬、造影剤、色素、又はトレーサー、及びそれらの組合せであることができる。
【0092】
例えば、本医薬活性成分は、ブプレノルフィン、ナロキソン、アセトアミノフェン、リルゾール、クロバザム、リザトリプタン、プロポフォール、サリチル酸メチル、サリチル酸モノグリコール、アスピリン、メフェナム酸、フルフェナム酸、インドメタシン、ジクロフェナク、アルクロフェナク、ジクロフェナクナトリウム、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、プラノプロフェン、フェノプロフェン、スリンダク、フェンクロフェナク、クリダナク、フルルビプロフェン、フェンチアザク、ブフェキサマク、ピロキシカム、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、クロフェゾン、ペンタゾシン、メピリゾール、チアラミド塩酸塩、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸デキサメタゾン、ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、フルメタゾン、フルオロメトロン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、フルオシノニド、エダラボン、ルラシドン、エソメプラゾール、ルマテペロン、ナルデメジン、ドキシラミン、ピリドキシン、ジフェンヒドラミン塩酸塩、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン塩酸塩、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸イソチペンジル、塩酸トリペレナミン、塩酸プロメタジン、塩酸メトジラジン、ジブカイン塩酸塩、ジブカイン、リドカイン塩酸塩、リドカイン、ベンゾカイン、p-ブチルアミノ安息香酸2-(ジエチルアミノ)エチルエステル塩酸塩、塩酸プロカイン、テトラカイン、塩酸テトラカイン、塩酸クロロプロカイン、塩酸オキシプロカイン、メピバカイン、コカイン塩酸塩、ピペロカイン塩酸塩、ジクロニン、ジクロニン塩酸塩、チメロサール、フェノール、チモール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、ポビドンヨード、塩化セチルピリジニウム、オイゲノール、トリメチルアンモニウムブロミド、ナファゾリン硝酸塩、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸オキシメタゾリン、フェニレフリン塩酸塩、トラマゾリン塩酸塩、トロンビン、フィトナジオン、硫酸プロタミン、アミノカプロン酸、トラネキサム酸、カルバゾクロム、カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム、ルチン、ヘスペリジン、スルファミン、スルファチアゾール、スルファジアジン、ホモスルファミン、スルフイソキサゾール、スルフイソミジン、スルファメチゾール、ニトロフラゾン、ペニシリン、メチシリン、オキサシリン、セファロチン、セファロリジン(cefalordin)、エリスロマイシン、リンコマイシン、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、メタサイクリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、バシトラシン、サイクロセリン、サリチル酸、ポドフィラム樹脂、ポドリフォックス(podolifox)、カンタリジン、クロロ酢酸、硝酸銀、プロテアーゼ阻害剤、チミジンキナーゼ阻害剤、糖又は糖タンパク質合成阻害剤、構造タンパク質合成阻害剤、付着及び吸着阻害剤、並びにヌクレオシドアナログ、例えばアシクロビル、ペンシクロビル、バラシクロビル、及びガンシクロビルなど、ヘパリン、インスリン、LHRH、TRH、インターフェロン、オリゴヌクリド(oligonuclides)、カルシトニン、オクトレオチド、オメプラゾン、フルオキセチン、エチニルエストラジオール、アミオジピン(amiodipine)、パロキセチン、エナラプリル、リシノプリル、ロイプロリド、プレバスタチン(prevastatin)、ロバスタチン、ノルエチンドロン、リスペリドン、オランザピン、アルブテロール、ヒドロクロロチアジド、プソイドエフェドリン、ワルファリン、テラゾシン、シサプリド、イプラトロピウム、バスプリオン(busprione)、メチルフェニデート、レボチロキシン、ゾルピデム、レボノルゲストレル、グリブリド、ベナゼプリル、メドロキシプロゲステロン、クロナゼパム、オンダンセトロン、ロサルタン、キナプリル、ニトログリセリン、ミダゾラムベルセド、セチリジン、ドキサゾシン、グリピジド、B型肝炎ワクチン、サルメテロール、スマトリプタン、トリアムシノロンアセトニド、ゴセレリン、ベクロメタゾン、グラニステロン(granisteron)、デソゲストレル、アルプラゾラム、エストラジオール、ニコチン、インターフェロンβ1A、クロモリン、ホシノプリル、ジゴキシン、フルチカゾン、ビソプロロール、カルシトリル、カプトプリル、ブトルファノール、クロニジン、プレマリン、テストステロン、スマトリプタン、クロトリマゾール、ビサコジル、デキストロメトルファン、ニトログリセリン、ナファレリン、ジノプロストン、ニコチン、ビサコジル、ゴセレリン、又はグラニセトロンであることができる。ある実施態様において、本医薬活性成分は、エピネフリン、ジアゼパムもしくはロラゼパムなどのベンゾジアゼピン、又はアルプラゾラムである。
【0093】
(エピネフリン、ジアゼパム及びアルプラゾラムの例)
一例において、エピネフリン又はその塩もしくはエステルを含有する組成物は、例えばエピペンを用いて、注射により投与されるエピネフリンの、生体送達(biodelivery)プロファイルに類似した生体送達プロファイルを有し得る。エピネフリンは、約0.01mg~約100mg/用量の量で、例えば、0.1mg、5mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg又は100mg用量で存在することができ、これは0.1mg超、5mg超、20mg超、30mg超、40mg超、50mg超、60mg超、70mg超、80mg超、90mg超、又は100mg未満、90mg未満、80mg未満、70mg未満、60mg未満、50mg未満、40mg未満、30mg未満、20mg未満、10mg未満又は5mg未満、或いはそれらの任意の組合せを含む。別の例において、ジアゼパムを含有する組成物は、ジアゼパム錠剤又はゲル剤の生体送達プロファイルに類似した、又はより良い生体送達プロファイルを有することができる。ジアゼパム又はその塩は、約0.5mg~約100mg/用量の量で、例えば、0.5mg、1mg、5mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg又は100mg用量で存在することができ、これは1mg超、5mg超、20mg超、30mg超、40mg超、50mg超、60mg超、70mg超、80mg超、90mg超、又は100mg未満、90mg未満、80mg未満、70mg未満、60mg未満、50mg未満、40mg未満、30mg未満、20mg未満、10mg未満、又は5mg未満、或いはそれらの任意の組合せを含む。
【0094】
別の例において、組成物(例えば、アルプラゾラム、ジアゼパム又はエピネフリンを含むもの)は、親水性サッカリドとの結合により連結される疎水性アルキル基を有する、好適な無毒の非イオン性アルキル配糖体を、以下:(a)凝集阻害剤;(b)電荷修飾剤;(c)pH調節剤;(d)分解酵素阻害剤;(e)粘液溶解剤又は粘液除去剤;(f)線毛運動障害剤;(g)以下:(i)界面活性剤;(ii)胆汁酸塩;(ii)リン脂質添加剤、混合ミセル、リポソーム、もしくは担体;(iii)アルコール;(iv)エナミン;(v)NO供与化合物;(vi)長鎖両親媒性分子;(vii)疎水性浸透エンハンサー;(viii)ナトリウム又はサリチル酸誘導体;(ix)アセト酢酸のグリセロールエステル;(x)シクロデキストリン又はβ-シクロデキストリン誘導体;(xi)中鎖脂肪酸;(xii)キレート化剤;(xiii)アミノ酸又はその塩;(xiv)N-アセチルアミノ酸又はその塩;(xv)選択された膜成分に対して分解性の酵素;(ix)脂肪酸合成の阻害剤;(x)コレステロール合成の阻害剤;及び、(xi) (i)~(x)に記載の膜浸透促進剤の任意の組合せから選択される膜浸透促進剤;(h)上皮ジャンクション生理機能の調整剤;(i)血管拡張剤;(j)選択輸送-促進剤;又は、(k)安定化送達ビヒクル、担体、粘膜付着性物質、支持体又は複合体-形成種であって、それとともに、本化合物が効果的に配合され、会合され、含有され、封入され、又は結合されて、増強された粘膜送達のための本化合物の安定化を生じる、前記安定化送達ビヒクル、担体、粘膜付着性物質、支持体又は複合体-形成種から選択される粘膜送達促進剤と組合せて有することができ、ここで経粘膜的な送達-促進剤を含む本化合物の製剤は、対象の血漿中の本化合物の生物学的利用能の増大を提供する。この製剤は、ジアゼパムとアルプラゾラムについての他の例におけるものと、ほぼ同じ活性医薬成分(API):エンハンサー比を含むことができる。
【0095】
(治療又は補助治療)
てんかん重積症(SE)は、5分間よりも長い発作又は発作間に正常に戻ることのない5分以内で2回以上の発作の、てんかん発作である。別の以前の定義は、30分間の時間制限を使用していた。ベンゾジアゼピンは、急性発作及びてんかん重積症の治療における最も有効な薬物の一部である。てんかん重積症の治療に最も一般的に使用されるベンゾジアゼピンは、ジアゼパム(Valium)、ロラゼパム(Ativan)、又はミダゾラム(Versed)を含む。医薬組成物(例えば、医薬組成物フィルム)中の医薬活性成分は、アンゲルマン症候群(AS)、小児の良性ローランド性てんかん(BREC)及び中心側頭棘波を伴う良性ローランド性てんかん(BECTS)、CDKL5障害、小児期欠神てんかん(CAE)、ミオクローヌス-失立てんかん又はドゥーゼ症候群、ドラベ症候群、初期ミオクローヌス脳症(EME)、全般性強直間代発作のみを伴うてんかん(EGTCS)、覚醒時強直間代発作を伴うてんかん、ミオクロニー欠神てんかん、前頭葉てんかん、グルコーストランスポーター1欠損症候群、視床下部過誤腫(HH)、点頭発作(ISとも称される)又はウェスト症候群、若年性欠神てんかん(JAE)、若年性ミオクローヌスてんかん(JME)、ラフォラ進行性ミオクローヌスてんかん(ラフォラ病)、ランドー・クレフナー症候群、レノックス・ガストー症候群(LGS)、大田原症候群(OS)、Panayiotopoulos症候群(PS)、PCDH19てんかん、進行性ミオクローヌスてんかん、ラスムッセン症候群環状20番染色体症候群(RC20)、反射性てんかん、TBCK-関連知的障害症候群、側頭葉てんかん及び色素失調症を含む発作に関連し得る神経皮膚症候群、1型神経線維腫症、スタージ・ウェーバー症候群(脳三叉神経領域血管腫症)、及び結節性硬化症のための、治療又は補助治療であることができる。
【0096】
フィルム及び/又はその成分は、水溶性、水膨潤性又は水不溶性であることができる。用語「水溶性」とは、水を含むが、これに限定されるものではない、水性溶媒中に少なくとも部分的に溶解可能である物質を指すことができる。用語「水溶性」は、物質が水性溶媒中に100%溶解可能であることを、必ずしも意味しなくてよい。用語「水不溶性」とは、水を含むが、これに限定されるものではない、水性溶媒中に溶解しない物質を指す。溶媒は、水を含むか、或いは他の溶媒(好ましくは極性溶媒)をそれらだけで又は水と組合せて含むことができる。
【0097】
本組成物は、ポリマーマトリクスを含むことができる。任意の所望のポリマーマトリクスは、経口で溶解可能又は侵食可能であるならば、使用されてよい。この剤形は、容易に除去されないのに十分な生体付着性を有し、且つ投与される場合にゲル様構造を形成しなければならない。これらは、口腔において中等度に溶解することができ、且つ特に医薬活性成分の送達に適しているが、即時放出型、遅延放出型、制御放出型及び持続放出型の組成物の全てもまた、意図された様々な実施態様の中にある。
【0098】
(分岐ポリマー)
本医薬組成物フィルムは、様々な構造上のアーキテクチャを持つ高度に分岐した巨大分子を含むことができる樹状ポリマーを含むことができる。樹状ポリマーは、デンドリマー、樹状化されたポリマー(樹状グラフト化されたポリマー)、線状樹状ハイブリッド、マルチアーム星型ポリマー、又は高分岐ポリマーを含むことができる。
【0099】
高分岐ポリマーは、それらの構造において不完全性を有する、高度に分岐したポリマーである。しかし、これらは、単工程反応において合成することができ、これは他の樹状構造に勝る利点であり、従って大量の利用に適している。それらの球状構造は別として、これらのポリマーの特性は、豊富な官能基、分子内空洞、低い粘性及び高い溶解度である。樹状ポリマーは、いくつかの薬物送達応用において使用される。例えば、引用により本明細書中に組み込まれている、「薬物担体としてのデンドリマー:薬物投与の異なる経路での適用(Dendrimers as Drug Carriers: Applications in Different Routes of Drug Administration)」、J Pharm Sci, VOL. 97, 2008, 123-143を参照されたい。
【0100】
樹状ポリマーは、薬物を封入することができる内部空洞を有することができる。高密度ポリマー鎖により引き起こされる立体障害は、薬物の結晶化を防止することができる。従って、分岐したポリマーは、ポリマーマトリクス中に結晶性薬物を製剤化するという、追加の利点を提供することができる。
【0101】
好適な樹状ポリマーの例は、ポリ(エーテル)ベースのデンドロン、デンドリマー、及び高分岐ポリマー、ポリ(エステル)ベースのデンドロン、デンドリマー及び高分岐ポリマー、ポリ(チオエーテル)ベースのデンドロン、デンドリマー及び高分岐ポリマー、ポリ(アミノ酸)ベースのデンドロン、デンドリマー及び高分岐ポリマー、ポリ(アリールアルキレンエーテル)ベースのデンドロン、デンドリマー及び高分岐ポリマー、ポリ(アルキレンイミン)ベースのデンドロン、デンドリマー及び高分岐ポリマー、ポリ(アミドアミン)ベースのデンドロン、デンドリマー又は高分岐ポリマーを含む。
【0102】
高分岐ポリマーの他の例は、ポリ(アミン)、ポリカーボネート、ポリ(エーテルケトン)、ポリウレタン、ポリカルボシラン、ポリシロキサン、ポリ(エステルアミン)、ポリ(スルホンアミン)、ポリ(ウレタン尿素)又はポリエーテルポリオール、例えばポリグリセリンなどを含む。
【0103】
フィルムは、少なくとも1種のポリマー、及び任意に他の成分を含む溶媒の組合せにより、作製することができる。溶媒は、水、非限定的にエタノール、イソプロパノール、アセトンを含む極性有機溶媒、又はそれらの任意の組合せであってよい。一部の実施態様において、溶媒は、塩化メチレンなどの、非極性有機溶媒であってよい。フィルムは、選択された流延法又は析出法(deposition method)及び制御された乾燥プロセスを利用することにより、調製され得る。例えば、フィルムは、粘弾性構造を形成するための、湿ったフィルムマトリクスへの熱及び/又は放射線エネルギーの適用を含む、制御された乾燥プロセスを通じて調製されてよく、これによりフィルムの内容物の均一性が制御される。制御された乾燥プロセスは、フィルムの上側もしくはフィルムの下側、又は流延もしくは析出(deposited)もしくは押出されたフィルムを支持する基板に接触するか、又は乾燥プロセスの間に同時又は異なる時点で2つ以上の表面に接触する、空気のみ、熱のみを含むか、又は熱と空気を一緒に含むことができる。このようなプロセスの一部は、米国特許第8,765,167号及び米国特許第8,652,378号に詳細に説明されており、これらは引用により本明細書中に組み込まれている。或いは、フィルムは、引用により本明細書中に組み込まれている米国特許公報第2005/0037055A1号に記載されているように押し出されてよい。
【0104】
フィルムに含まれるポリマーは、水溶性、水膨潤性、水不溶性であるか、或いは水溶性、水膨潤性、水不溶性ポリマーのいずれか1種以上の組合せであってよい。ポリマーは、セルロース、セルロース誘導体又はガムを含んでよい。有用な水溶性ポリマーの具体例は、ポリエチレンオキシド、プルラン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、キサンタンガム、トラガカントガム、グアーガム、アカシアゴム、アラビアゴム、ポリアクリル酸、メチルメタクリレートコポリマー、カルボキシビニルコポリマー、デンプン、ゼラチン、及びそれらの組合せを含むが、これらに限定されるものではない。有用な水不溶性ポリマーの具体例は、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、及びそれらの組合せを含むが、これらに限定されるものではない。より高用量に関して、より低用量と比べ、高レベルの粘性を提供するポリマーを組み入れることが望ましいこともある。
【0105】
本明細書で使用される語句「水溶性ポリマー」及びその変形は、少なくとも部分的に水に溶解する、望ましくは完全に又は大部分は水に溶解する、或いは水を吸収する、ポリマーを指す。水を吸収するポリマーは、水膨潤性ポリマーと称されることが多い。本発明に有用な物質は、室温及び他の温度で、例えば室温を超える温度で、水溶性又は水膨潤性であってよい。更に、これらの材料は、大気圧より低い圧力で、水溶性又は水膨潤性であってよい。一部の実施態様において、このような水溶性ポリマーから形成されたフィルムは、体液との接触時に溶解させることができるのに十分に水溶性であってよい。
【0106】
フィルムへ組み入れるのに有用な他のポリマーは、生分解性ポリマー、コポリマー、ブロックポリマー又はそれらの組合せを含む。用語「生分解性」は、物理的にばらばらに破壊される物質(すなわち生体侵食性物質)とは対照的に、化学的に分解する物質を含むことが意図されることは理解される。フィルムに組み入れられたポリマーはまた、生分解性又は生体侵食性の物質の組合せを含むこともできる。前記基準に合致する公知の有用なポリマー又はポリマークラスには:ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリジオキサン、ポリオキサレート、ポリ(α-エステル)、ポリ酸無水物、ポリアセテート、ポリカプロラクトン、ポリ(オルトエステル)、ポリアミノ酸、ポリアミノカーボネート、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、並びにそれらの混合物及びコポリマーが含まれる。追加の有用なポリマーは、L-及びD-乳酸のステレオポリマー、ビス(p-カルボキシフェノキシ)プロパン酸及びセバシン酸のコポリマー、セバシン酸コポリマー、カプロラクトンのコポリマー、ポリ(乳酸)/ポリ(グリコール酸)/ポリエチレングリコールコポリマー、ポリウレタン及び(ポリ(乳酸))のコポリマー、α-アミノ酸及びカプロン酸のコポリマー、α-ベンジルグルタミン酸エステル及びポリエチレングリコールのコポリマー、コハク酸エステル及びポリ(グリコール)のコポリマー、ポリホスファゼン、ポリヒドロキシ-アルカノエート又はそれらの混合物を含む。ポリマーマトリクスは、1、2、3、4種又はそれよりも多い成分を含むことができる。
【0107】
様々な異なるポリマーを使用してよいが、フィルムに粘膜付着性の特性、並びに所望の溶解及び/又は崩壊速度を提供するポリマーを選択することは望ましい。特に、フィルムの粘膜組織への接触を維持することが望ましい時間は、組成物に含有される医薬活性成分の種類によって決まる。一部の医薬活性成分は、粘膜組織を通る送達にはわずか数分しか必要としないことがあるのに対し、他の医薬活性成分は、最長で数時間、さらにはより長い時間を必要とすることがある。従って一部の実施態様において、前述の1種以上の水溶性ポリマーが、フィルムを形成するために使用されてよい。しかし他の実施態様において、水溶性ポリマーと、先に提供されたような水膨潤性、水不溶性及び/又は生分解性のポリマーの組合せを使用することが望ましいことがある。水膨潤性、水不溶性及び/又は生分解性である1種以上のポリマーを含めることは、水溶性ポリマーのみで形成されたフィルムよりも、より遅い溶解速度又は崩壊速度を持つフィルムを提供することができる。従って、このフィルムは、最大で数時間などの、比較的長い時間、粘膜組織に付着し、このことはある種の医薬活性成分の送達にとって望ましいものとなる。
【0108】
望ましくは、医薬フィルムの個別のフィルム剤形(dosage)は、好適な厚さ且つ小さいサイズを有することができ、これは、約0.0625~3インチ(1.5875mm×76.2mm)×約0.0625~3インチの間である。フィルムサイズはまた、少なくとも一つの態様において、0.0625インチ超、0.5インチ(12.7mm)超、1インチ(25.4mm)超、2インチ(50.8mm)超、又は約3インチ(76.2mm)、又は3インチ超、3インチ未満、2インチ未満、1インチ未満、0.5インチ未満、0.0625インチ未満であるか、或いは別の態様において、0.0625インチ超、0.5インチ超、1インチ超、2インチ超、又は3インチ超、約3インチ、3インチ未満、2インチ未満、1インチ未満、0.5インチ未満、又は0.0625インチ未満であることもできる。厚さ、長さ及び幅を含むアスペクト比は、ポリマーマトリクスの化学特性及び物理特性、活性医薬成分、投薬量、エンハンサー、及び関与する他の添加剤、並びに望ましい分配ユニットの寸法を基に、当業者により最適化されることができる。このフィルム剤形は、使用者の頬側口腔又は舌下領域内に配置された場合に、良好な付着性を有さなければならない。更に、このフィルム剤形は、穏やかな速度で分散し且つ溶解しなければならず、最も望ましくは、約1分以内に分散し、且つ約3分以内に溶解する。一部の実施態様において、このフィルム剤形は、約1~約30分、例えば約1~約20分、又は1分超、5分超、7分超、10分超、12分超、15分超、20分超、30分超、約30分、又は30分未満、20分未満、15分未満、12分未満、10分未満、7分未満、5分未満、又は1分未満の速度で、分散及び溶解することが可能である。舌下の分散速度は、頬側分散速度よりも短くてよい。
【0109】
例えば、一部の実施態様において、これらのフィルムは、ポリエチレンオキシドを単独で、又は第二ポリマー成分と組合せて含有することができる。第二ポリマーは、別の水溶性ポリマー、水膨潤性ポリマー、水不溶性ポリマー、生分解性ポリマー又はそれらの任意の組合せであってよい。好適な水溶性ポリマーは、先に提供されたものを含むが、これらに限定されるものではない。一部の実施態様において、水溶性ポリマーは、親水性セルロース系ポリマー、例えばヒドロキシプロピルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースなどを含む。一部の実施態様において、1種以上の水膨潤性、水不溶性及び/又は生分解性ポリマーもまた、ポリエチレンオキシド-ベースのフィルム中に含まれてよい。先に提供される水膨潤性、水不溶性又は生分解性ポリマーのいずれかが、利用されてよい。第二ポリマー成分は、ポリマー成分中約0%~約80重量%の量で、より具体的には約30%~約70重量%、及び更により具体的には約40%~約60重量%の量で利用されてよく、これは重量で5%超、10%超、15%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、及び70%超、約70%、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、又は5%未満を含む。
【0110】
添加剤は、これらのフィルム中に含まれてよい。添加剤のクラスの例は、保存剤、抗微生物薬、賦形剤、滑沢剤、緩衝剤、安定化剤、発泡剤、顔料、着色剤、充填剤、増量剤、甘味剤、香味剤、香料、放出修飾剤、アジュバント、可塑剤、流動促進剤、離型剤、ポリオール、造粒剤、希釈剤、結合剤、緩衝剤、吸収剤、滑剤、接着剤、接着防止剤、酸味剤、柔軟剤、樹脂、粘滑剤、溶媒、界面活性剤、乳化剤、エラストマー、粘着防止剤、帯電防止剤及びそれらの混合物を含む。これらの添加剤は、医薬活性成分(複数可)と共に添加されてよい。
【0111】
本明細書で使用される用語「安定化剤」は、活性医薬成分、別の賦形剤、又はそれらの組合せの、凝集又は他の物理的分解、並びに化学的分解を防止することが可能である賦形剤を意味する。
【0112】
安定化剤はまた、先に記載され且つ以下により詳細に記載されるように、抗酸化剤、金属イオン封鎖剤、pH調節剤、乳化剤及び/又は界面活性剤、並びに紫外線安定化剤として分類され得る。
【0113】
抗酸化剤(すなわち、酸化プロセスを減速、阻害、中断及び/又は停止する、医薬として適合性のある化合物(複数可)又は組成物(複数可))は、特に以下の物質:トコフェロール及びそれらのエステル、ゴマ油のセサモール、ベンゾイン樹脂の安息香酸コニフェリル、ノルジヒドログアイアレチン酸樹脂及びノルジヒドログアヤレト酸(NDGA)、没食子酸塩(とりわけ、没食子酸メチル、エチル、プロピル、アミル、ブチル、ラウリル)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA/BHT、ブチル-p-クレゾールとも);アスコルビン酸並びにその塩及びエステル(例えば、パルミチン酸アスコルビル)、エリソルビン酸(イソアスコルビン酸)並びにその塩及びエステル、モノチオグリセロール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、プロピオン酸を含む。代表的抗酸化剤は、トコフェロール、例えば、α-トコフェロール及びそのエステル、ブチル化ヒドロキシトルエン及びブチル化ヒドロキシアニソールである。用語「トコフェロール」はまた、トコフェロールのエステルも含む。公知のトコフェロールは、α-トコフェロールである。用語「α-トコフェロール」は、α-トコフェロールのエステル(例えば、酢酸α-トコフェロール)を含む。
【0114】
金属イオン封鎖剤(すなわち、活性成分又は別の賦形剤などの別の化合物と、ホスト-ゲスト錯体形成中に加わることができる任意の化合物;封鎖剤とも称される)は、塩化カルシウム、エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム、グルコノデルタ-ラクトン、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、及びそれらの組合せを含む。金属イオン封鎖剤はまた、環状オリゴ糖、例えばシクロデキストリン、シクロマンニン(α結合により1,4位置で連結された、5個以上のα-D-マンノピラノース単位)、シクロガラクチン(β結合により1,4位置で連結された、5個以上のβ-D-ガラクトピラノース単位)、シクロアルトリン(α結合により1,4位置で連結された、5個以上のα-D-アルトロピラノース単位)、及びそれらの組合せも含む。
【0115】
pH調節剤は、酸(例えば、酒石酸、クエン酸、乳酸、フマル酸、リン酸、アスコルビン酸、酢酸、コハク酸、アジピン酸及びマレイン酸)、酸性アミノ酸(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸など)、そのような酸性物質の無機塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩など)、そのような酸性物質の有機塩基(例えば、塩基性アミノ酸、例えばリジン、アルギニンなど及び同類のもの、メグルミン及び同類のもの)との塩、並びにそれらの溶媒和物(例えば水和物)を含む。pH調節剤の他の例は、ケイ化微結晶性セルロース、アルミノメタケイ酸マグネシウム、リン酸のカルシウム塩(例えば、リン酸水素カルシウムの無水物又は水和物、炭酸もしくは炭酸水素カルシウム、ナトリウムもしくはカリウム、及び乳酸カルシウム又はそれらの混合物)、カルボキシメチルセルロースのナトリウム及び/又はカルシウム塩、架橋されたカルボキシメチルセルロース(例えば、クロスカルメロースナトリウム及び/又はカルシウム)、ポラクリリンカリウム、アルギン酸ナトリウム及び/又はカルシウム、ドクサートナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、もしくは亜鉛、パルミチン酸マグネシウム、及びオレイン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、及びそれらの組合せを含む。
【0116】
乳化剤及び/又は界面活性剤の例は、ポロキサマー又はプルロニック、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリエトキシル化及び水素化されたヒマシ油、アルキルポリオシド、疎水性主鎖上にグラフト重合された水溶性タンパク質、レシチン、グリセリルモノステアラート、グリセリルモノステアラート/ポリオキシエチレンステアラート、ケトステアリルアルコール/ラウリル硫酸ナトリウム、カルボマー、リン脂質、(C10~C20)-アルキル及びアルキレンカルボキシラート、カルボン酸アルキルエーテル、脂肪族アルコール硫酸塩、脂肪族アルコールエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩及びスルホン酸塩、脂肪酸アルキルアミドポリグリコールエーテル硫酸塩、アルカンスルホン酸塩及びヒドロキシアルカンスルホン酸塩、オレフィンスルフォン酸塩、イセチオン酸のアシルエステル、α-スルホ脂肪酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェノールグリコールエーテルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、スルホコハク酸のモノエステル及びジエステル、脂肪族アルコールエーテルリン酸塩、タンパク質/脂肪酸縮合生成物、アルキルモノグリセリド硫酸塩及びスルホン酸塩、アルキルグリセリドエーテルスルホン酸塩、脂肪酸メチルタウリド、脂肪酸サルコシネート、スルホリシノレート、及びアシルグルタミン酸塩、第四級アンモニウム塩(例えば、ジ-(C10~C24)-アルキル-ジメチルアンモニウムクロリド又はブロミド)、(C10-C24)-アルキル-ジメチルエチルアンモニウムクロリド又はブロミド、(C10-C24)-アルキル-トリメチルアンモニウムクロリド又はブロミド(例えば、セチルトリメチルアンモニウムクロリド又はブロミド)、(C10-C24)-アルキル-ジメチルベンジルアンモニウムクロリド又はブロミド(例えば、(C12-C18)-アルキル-ジメチルベンジルアンモニウムクロリド)、N-(C10-C18)-アルキル-ピリジニウムクロリド又はブロミド(例えば、N-(C12-C16)-アルキル-ピリジニウムクロリド又はブロミド)、N-(C10-C18)-アルキル-イソキノリニウムクロリド、ブロミド又はモノアルキル硫酸塩、N-(C12-C18)-アルキル-ポリオイルアミノホルミルメチルピリジニウムクロリド、N-(C12-C18)-アルキル-N-メチルモルホリニウムクロリド、ブロミド又はモノアルキル硫酸塩、N-(C12-C18)-アルキル-N-エチルモルホリニウムクロリド、ブロミド又はモノアルキル硫酸塩、(C16-C18)-アルキル-ペンタオキセチルアンモニウムクロリド、ジイソブチルフェノキシエトキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、N,N-ジ-エチルアミノエチルステアリルアミド及び-オレイルアミドの塩酸、酢酸、乳酸、クエン酸、リン酸との塩、N-アシルアミノエチル-N,N-ジエチル-N-メチルアンモニウムクロリド、ブロミド又はモノアルキル硫酸塩、並びにN-アシルアミノエチル-N,N-ジエチル-N-ベンジルアンモニウムクロリド、ブロミド又はモノアルキル硫酸塩(前述のものにおいて、「アシル」は例えばステアリル又はオレイルを表す)、並びにそれらの組合せを含む。
【0117】
紫外線安定化剤の例は、UV吸収剤(例えば、ベンゾフェノン)、UV消光剤(すなわち、UVエネルギーに分解作用を持たせしまうのではなく、該エネルギーを熱として消散させる任意の化合物)、スカベンジャー(すなわち、UV放射線への曝露から生じるフリーラジカルを除去する任意の化合物)、及びそれらの組合せを含む。
【0118】
他の実施態様において、安定化剤は、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸、アルファトコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、システインHC1、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、メチオニン、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、没食子酸プロピル、グルタチオン、チオグリセロール、一重項酸素消光剤、ヒドロキシルラジカルスカベンジャー、ヒドロペルオキシド除去剤、還元剤、金属キレート化剤、洗浄剤、カオトロープ、及びそれらの組合せを含む。「一重項酸素消光剤」は、アルキルイミダゾール(例えば、ヒスチジン、L-カモシン、ヒスタミン、イミダゾール4-酢酸)、インドール(例えば、トリプトファン及びその誘導体、例えばN-アセチル-5-メトキシトリプタミン、N-アセチルセロトニン、6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-ベータ-カルボリン)、含硫アミノ酸(例えば、メチオニン、エチオニン、ジエンコル酸、ランチオニン、N-ホルミルメチオニン、フェリニン、S-アリルシステイン、S-アミノエチル-L-システイン)、フェノール系化合物(例えば、チロシン及びその誘導体)、芳香族酸(例えば、アスコルビン酸塩、サリチル酸、及びそれらの誘導体)、アジド(例えば、アジ化ナトリウム)、トコフェロール及び関連ビタミンE誘導体、並びにカロテン及び関連ビタミンA誘導体を含むが、これらに限定されるものではない。「ヒドロキシルラジカルスカベンジャー」は、アジド、ジメチルスルホキシド、ヒスチジン、マンニトール、ショ糖、グルコース、サリチル酸塩、及びL-システインを含むが、これらに限定されるものではない。「ヒドロペルオキシド除去剤」は、カタラーゼ、ピルビン酸塩、グルタチオン、及びグルタチオンペルオキシダーゼを含むが、これらに限定されるものではない。「還元剤」は、システイン及びメルカプトエチレンを含むが、これらに限定されるものではない。「金属キレート化剤」は、EDTA、EGTA、o-フェナントロリン、及びクエン酸塩を含むが、これらに限定されるものではない。「洗浄剤」は、SDS及びラウロイルサルコシンナトリウムを含むが、これらに限定されるものではない。「カオトロープ」は、塩酸塩グアニジウム、イソチオシアネート、尿素、及びホルムアミドを含むが、これらに限定されるものではない。本明細書において考察したように、安定化剤は、0.0001%~50重量%で存在することができ、これは、重量で、0.0001%超、0.001%超、0.01%超、0.1%超、1%超、5%超、10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、1%未満、0.1%未満、0.01%未満、0.001%未満、又は0.0001%未満を含む。
【0119】
有用な添加剤は、例えば、ゼラチン、植物(vegetable)タンパク質、例えばヒマワリタンパク質、大豆タンパク質、綿実タンパク質、ピーナツタンパク質、グレープシードタンパク質など、ホエータンパク質、ホエータンパク質単離体、血液タンパク質、卵タンパク質、アクリル化タンパク質、水溶性多糖、例えばアルギネート、カラゲナン、グアーガム、寒天、キサンタンガム、ゲランガム、アラビアゴム及び関連したガム(ガッティガム、カラヤガム、トラガカントガム)、ペクチンなど、セルロースの水溶性誘導体:アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース及びヒドロキシアルキルアルキルセルロース、例えばメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロースなど、セルロースエステル及びヒドロキシアルキルセルロースエステル、例えば酢酸フタル酸セルロース(CAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC);カルボキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロースエステル、例えばカルボキシメチルセルロース及びそれらのアルカリ金属塩;水溶性合成ポリマー、例えばポリアクリル酸及びポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸及びポリメタクリル酸エステル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、ポリビニルピロリドン(PVP)、PVA/酢酸ビニルコポリマー、又はポリクロトン酸を含むことができ;また、フタル酸ゼラチン、コハク酸ゼラチン、架橋ゼラチン、シェラック、デンプンの水溶性化学誘導体、例えば第三級もしくは第四級アミノ基、例えば、望ましいならば四級化されたジエチルアミノエチル基などを有する陽イオン修飾されたアクリレート及びメタクリレート;又は、他の類似のポリマーも適している。
【0120】
追加成分は、全ての組成物成分の重量を基準として、最大で約80%の範囲、望ましくは約0.005%~50%、より望ましくは1%~20%の範囲内であることができ、これは1%超、5%超、10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、約80%、80%超、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、約3%、又は1%未満を含む。他の添加剤は、抗-粘着剤、流動化剤及び乳白剤、例えばマグネシウム、アルミニウム、ケイ素、チタンの酸化物などを、望ましいならば全フィルム成分の重量を基準として、濃度範囲約0.005%~約5重量%、及び望ましいならば約0.02%~約2重量%で、含むことができ、これは0.02%超、0.2%超、0.5%超、1%超、1.5%超、2%超、4%超、約5%、5%超、4%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.2%未満、又は0.02%未満を含む。
【0121】
ある実施態様において、本組成物は、可塑剤を含むことができ、これは、ポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン-プロピレングリコールなど、低分子量の有機可塑剤、例えばグリセロール、グリセロールモノアセテート、ジアセテートもしくはトリアセテートなど、トリアセチン、ポリソルベート、セチルアルコール、プロピレングリコール、糖アルコールソルビトール、ジエチルスルホコハク酸ナトリウム、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、植物抽出物、脂肪酸エステル、脂肪酸、油状物及び同類のものを含むことができ、組成物の重量を基準として、約0.1%~約40%の範囲の、望ましいならば約0.5%~約20%の範囲の濃度で添加され、これは、0.5%超、1%超、1.5%超、2%超、4%超、5%超、10%超、15%超、約20%、20%超、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、4%未満、2%未満、1%未満、又は0.5%未満を含む。フィルム材料のテクスチュア特性を向上する化合物、例えば、動物性又は植物性脂肪などを、望ましくはそれらの水素化形態で、更に添加してもよい。この組成物はまた、製品のテクスチュア特性を向上する化合物を含むこともできる。他の成分としては、フィルムの容易な形成及び全般的品質に寄与する結合剤が挙げられる。結合剤の非限定的例は、デンプン、天然ゴム、α化デンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルオキサゾリドン、又はポリビニルアルコールを含む。
【0122】
更なる可能性のある添加剤は、活性成分との封入化合物を形成する物質などの、溶解度増強剤を含む。このような物質は、非常に不溶性が高い且つ/又は不安定な活性物質の特性を改善するのに有用であることができる。概して、これらの物質は、疎水性内部空洞及び親水性外部を有するドーナツ型の分子である。不溶性且つ/又は不安定な医薬活性成分は、疎水性空洞内に嵌合し、これにより封入複合体が生じ、これは水に溶ける。従って、封入複合体の形成は、非常に不溶性の高い且つ/又は不安定な医薬活性成分の、水への溶解を可能にする。このような物質の特に望ましい例は、シクロデキストリンであり、これはデンプンから誘導される環状炭水化物である。しかし他の類似の物質は、本発明の範囲内に収まると考えられる。
【0123】
好適な着色剤は、食品、医薬品及び化粧品の着色料(FD&C)、医薬品及び化粧品の着色料(D&C)、又は外用薬及び化粧品の着色料(Ext. D&C)を含む。これらの着色料は、色素、それらの対応するレーキ、並びにある種の天然及び誘導された着色剤である。レーキは、水酸化アルミニウム上に吸収された色素である。着色剤の他の例は、公知のアゾ染料、有機もしくは無機の顔料、又は天然起源の着色剤を含む。無機顔料、例えば酸化物又は鉄もしくはチタンが好ましく、これらの酸化物は、全成分の重量を基準として、約0.001~約10%、好ましくは約0.5~約3%の範囲の濃度で添加され、これは0.001%超、0.01%超、0.1%超、0.5%超、1%超、2%超、5%超、約10%、10%超、10%未満、5%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満、0.01%未満、又は0.001%未満を含む。
【0124】
香料は、天然及び合成の香味のある液体から選択されてよい。このような物質の例示的なリストは、揮発油、合成香味油、香味のある芳香族、油分、液体、含油樹脂、又は植物、葉、花、果実、茎、及びそれらの組合せから誘導された抽出物を含む。例の非限定的な代表的リストは、ミント油、ココア、及び柑橘油、例えばレモン、オレンジ、ライム及びグレープフルーツなど、並びにリンゴ、ナシ、モモ、ブドウ、イチゴ、ラズベリー、サクランボ、プラム、パイナップル、アプリコットを含む果実のエッセンス、又は他の果実香料を含む。他の有用な香味料は、アルデヒド及びエステル、例えばベンズアルデヒド(サクランボ、アーモンド)、シトラール、すなわちアルファシトラール(レモン、ライム)、ネラール、すなわち、ベータ-シトラール(レモン、ライム)、デカナール(オレンジ、レモン)、アルデヒドC-8(柑橘果実)、アルデヒドC-9(柑橘果実)、アルデヒドC-12(柑橘果実)、トルイルアルデヒド(サクランボ、アーモンド)、2,6-ジメチルオクタノール(緑色(green)果実)、又は2-ドデセナール(柑橘、マンダリン)、それらの組合せなどを含む。
【0125】
甘味料は、以下の非限定的リスト:グルコース(コーンシロップ)、デキストロース、転化糖、フルクトース、及びそれらの組合せ;サッカリン及びその様々な塩、例えばナトリウム塩;ジペプチドベースの甘味料、例えばアスパルテーム、ネオテーム、アドバンテーム;ジヒドロカルコン化合物、グリチルリチン;ステビア(Stevia Rebaudiana)(ステビオシド);ショ糖の塩素誘導体、例えばスクラロース;糖アルコール、例えばソルビトール、マンニトール、キシリトール、及び同類のものから選択されてよい。また、水素化されたデンプン加水分解物及び合成甘味料3,6-ジヒドロ-6-メチル-1-1-1,2,3-オキサチアジン-4-オン-2,2-二酸化物、特にカリウム塩(アセスルファム-K)、並びにそれらのナトリウム塩及びカルシウム塩、並びに天然の強力な(intensive)甘味料、例えばLo Han Kuoなどがある。他の甘味料もまた、使用されてよい。
【0126】
消泡剤及び/又は脱泡剤成分も、フィルムで使用されてよい。これらの成分は、フィルム-形成組成物からの、捕獲された空気などの、空気の除去を助ける。このような捕獲された空気は、不均一なフィルムにつながることがある。シメチコンは、一つの特に有用な消泡剤及び/又は脱泡剤である。しかし本発明は、そのように限定されず、且つ他の好適な消泡剤及び/又は脱泡剤が使用されてよい。シメチコン及び関連物質は、高密度化目的で利用されてよい。より具体的には、このような物質は、空隙、空気、湿気、及び類似の望ましくない成分の除去を促進することができ、これにより、より緻密なフィルムを、従ってより均一なフィルムを提供する。この機能を実行する物質又は成分は、高密度化剤(densification agent)又は密度上昇物質(densifying agent)と称される。先に説明されたように、捕獲された空気又は望ましくない成分は、不均一なフィルムへつながり得る。
【0127】
先に言及した、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第7,425,292号及び第8,765,167号に記載されたいずれか他の任意の成分もまた、本明細書記載のフィルムに含まれ得る。
【0128】
本フィルム組成物は更に、フィルム組成物のpHを制御するために、緩衝剤を含有することが望ましい。任意の所望のレベルの緩衝剤が、医薬活性成分が組成物から放出される際に遭遇する所望のpHレベルを提供するために、フィルム組成物に組み込まれる。この緩衝剤は、医薬活性成分のフィルムからの放出及び/又は体への吸収を制御するのに十分な量で提供されることが好ましい。一部の実施態様において、緩衝剤は、クエン酸ナトリウム、クエン酸、酒石酸水素塩及びそれらの組合せを含んでよい。
【0129】
本明細書記載の医薬フィルムは、任意の所望のプロセスにより形成されてよい。好適なプロセスは、米国特許第8,652,378号、第7,425,292号及び第7,357,891号に説明されており、これらは引用により本明細書中に組み込まれている。一実施態様において、フィルム剤形組成物は、湿潤組成物を最初に調製することにより形成され、この湿潤組成物は、ポリマー性担体マトリクス及び治療有効量の医薬活性成分を含む。この湿潤組成物は、流延してフィルムとされ、その後十分に乾燥され、自立型のフィルム組成物を形成する。この湿潤組成物は、流延して個々の剤形にされるか、又はこれは流延してシートとされ、次にこのシートが個々の剤形に切断される。
【0130】
本医薬組成物は、粘膜表面に付着することができる。本発明は、口、膣、臓器、又は他の種類の粘膜表面などの、湿った表面を有し且つ体液の影響を受けやすい、体の組織、患部、又は創傷の局所的治療に特に用いられる。本組成物は、医薬を運搬し、且つ粘膜表面への適用及び付着時に、保護層をもたらし、且つ治療部位、周囲の組織、及び他の体液に医薬を送達する。水溶液又は唾液などの体液中の侵食の制御、並びに送達と同時又はその後のフィルムの緩徐で自然な侵食を前提とすると、この組成物は、治療部位での有効な薬物送達に適した滞留時間を提供する。
【0131】
本組成物の滞留時間は、製剤において使用される水侵食性ポリマーの侵食速度及びそれらの各濃度によって決まる。侵食速度は、例えば、異なる溶解特性を持つ成分又は化学的に異なるポリマー、例えばヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースを一緒に混合することにより;低分子量及び中分子量のヒドロキシエチルセルロースの混合など、同じポリマーの異なる分子量の等級を用いることにより;様々な親油値又は水溶解度特性の賦形剤又は可塑剤(本質的に不溶性の成分を含む)を使用することにより;水溶性の有機塩及び無機塩を使用することにより;部分架橋のために、ヒドロキシエチルセルロースなどのポリマーと、グリオキサールなどの架橋剤を使用することにより;或いは、一旦得られたならば、その結晶化度もしくは相転移を含むフィルムの物理状態を変更することができる、処置後の照射又は硬化により、調節されてよい。これらの戦略は、フィルムの侵食動態を変化させるために、単独で又は組合せて利用されてよい。適用時に、医薬組成物フィルムは、粘膜表面へ付着し、且つその場に保持される。水の吸収は、この組成物を軟化させ、これにより異物感を減らす。この組成物が粘膜表面に置かれている間、薬物の送達が起こる。滞留時間は、選択された医薬の送達の所望のタイミング及び担体の所望の寿命に応じて、広範に調節され得る。しかし一般に、滞留時間は、約数秒から約数日の間で調整される。好ましくは、ほとんどの医薬の滞留時間は、約5秒~約24時間で調節される。より好ましくは、滞留時間は、約5秒~約30分で調節される。薬物送達の提供に加え、一旦組成物が粘膜表面に付着してしまえば、治療部位の保護も提供し、侵食可能な包帯として作用する。親油性物質は、崩壊及び溶解を減少するために、侵食性を遅延するように、設計することができる。
【0132】
アミラーゼなどの酵素に対し感受性があり、水中に非常に溶けやすい賦形剤、例えば、水溶性有機塩及び無機塩などを添加することにより、本組成物の侵食性の動態を調節することも、可能である。好適な賦形剤は、塩化物、炭酸塩、炭酸水素塩、クエン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、安息香酸塩、リン酸塩、フッ化物、硫酸塩、又は酒石酸塩のナトリウム塩及びカリウム塩を含んでよい。添加される量は、侵食動態が、どの程度変更されるか、並びに組成物中の他の成分の量及び性質に応じて、異なり得る。
【0133】
先に記載された水-ベースのエマルジョンで典型的に使用される乳化剤は、好ましくは、リノール酸、パルミチン酸、ミリストレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、セトレイン酸又はオレイン酸及び水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムから選択される場合に、現場で得られるか、或いはソルビトール及び無水ソルビトールのラウリン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、もしくはオレイン酸エステル、モノオレエート、モノステアレート、モノパルミテート、モノラウレートを含むポリオキシエチレン誘導体、脂肪族アルコール、アルキルフェノール、アリルエーテル、アルキルアリールエーテル、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート及び/又はソルビタンモノパルミテートから選択されるかのいずれかである。
【0134】
使用される医薬活性成分の量は、所望の治療強度及びこれらの層の組成物によって決まるが、好ましくは医薬成分は、組成物の約0.001%~約99%、より好ましくは約0.003~約75%、及び最も好ましくは約0.005%~約50重量%を構成し、これは0.005%超、0.05%超、0.5%超、1%超、5%超、10%超、15%超、20%超、30%超、約50%、50%超、50%未満、30%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、1%未満、0.5%未満、0.05%未満、又は0.005%未満を含む。他の成分の量は、薬物又は他の成分に応じて変動してよいが、典型的にはこれらの成分は、組成物の総重量で、50%を超えず、好ましくは30%を超えず、及び最も好ましくは15%を超えないよう構成する。
【0135】
フィルムの厚さは、各層の厚さ及び層の数によって、変動してよい。前述のように、層の厚さ及び量の両方は、侵食動態を変化させるために調節されてよい。好ましくは、組成物が2層のみを有する場合、厚さは、0.005mm~2mm、好ましくは0.01~1mm、より好ましくは0.1~0.5mmの範囲であり、これは、0.1mm超、0.2mm超、約0.5mm、0.5mm超、0.5mm未満、0.2mm未満、又は0.1mm未満を含む。各層の厚さは、層化された組成物の全体の厚さの10~90%を変動してよく、好ましくは30~60%を変動し、これは、10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、70%超、90%超、約90%、90%未満、70%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、又は10%未満を含む。従って、各層の好ましい厚さは、0.01mm~0.9mm、又は0.03mm~0.5mmを変動してよい。
【0136】
当業者が理解するように、全身送達、例えば経粘膜又は経皮送達が望ましい場合、治療部位は、フィルムが、血液、リンパ液、又は他の体液中に所望のレベルの医薬を送達及び/又は維持することが可能である任意の領域を含み得る。典型的には、このような治療部位は、口、食道、耳、眼球、肛門、鼻、及び膣の粘膜組織、並びに皮膚を含む。皮膚が治療部位として利用される場合、通常、上腕又は大腿部などの、動作がフィルムの付着を妨害しない比較的大きい領域の皮膚が、好ましい。
【0137】
本医薬組成物はまた、創傷包帯として使用することもできる。洗浄除去することができる、物理的で、適合性であり、酸素及び水分透過性で、可撓性な障壁の提供により、フィルムは、創傷を保護するのみではなく、治癒、無菌、瘢痕形成(scarification)を促進するため、疼痛を緩和するため、又は罹患者の状態を全体的に改善するために、医薬を送達することもできる。以下に提供される実施例の一部は、皮膚又は創傷への適用に、良く適している。当業者が理解するように、本製剤は、長期間にわたり、乾燥した皮膚上の良好な付着を維持することを助けるであろう、特異的親水性/吸湿性の賦形剤を組み入れることを必要とするであろう。この様式で利用する場合の別の本発明の利点は、フィルムが、皮膚上で目立つことを望まない場合、色素又は着色物質の使用は、不要である。他方で、フィルムが目立つことが望ましい場合、色素又は着色物質を利用することができる。
【0138】
本医薬組成物は、もともと湿潤組織である粘膜組織に付着することができる一方で、皮膚又は創傷などの、他の表面上でも使用することができる。本医薬フィルムは、皮膚への適用に先立ち、水、唾液、傷からの排液又は発汗など水性ベースの流体により湿っている場合にも、皮膚へ付着することができる。このフィルムは、例えば、水洗い、シャワー、入浴又は洗浄などにより、水との接触が原因でそれが侵食されるまで、皮膚に付着することができる。このフィルムはまた、組織へ著しい損傷を伴わずに、剥がして容易に取り除くことができる。
【0139】
フランツ拡散セルは、製剤開発において使用される、インビトロ皮膚透過アッセイである。フランツ拡散セル装置(図1A)は、例えば、動物又はヒト組織の膜により分離された、2個のチャンバーからなる。被験製品は、上側チャンバーを介して、膜に適用される。下側チャンバーは、膜を透過する活性量を決定する分析のために、それから試料が一定間隔で採取される流体を含む。図1Aに関して、フランツ拡散セル100は、ドナー化合物101、ドナーチャンバー102、膜103、サンプリングポート104、レセプターチャンバー105、撹拌子106、及びヒーター/サーキュレーター107を備える。
【0140】
図1Bに関して、医薬組成物は、ポリマーマトリクス200を含むフィルム100であり、医薬活性成分300は、該ポリマーマトリクス中に含有されている。このフィルムは、透過エンハンサー400を含むことができる。
【0141】
図2A及び2Bに関して、グラフは、組成物からの活性物質の透過を示す。このグラフは、インサイチュで可溶化されるエピネフリン塩基対本質的に可溶性の酒石酸水素エピネフリンに関して、有意差は認められなかったことを示す。酒石酸水素エピネフリンは、加工の容易さを基に更なる開発のために選択された。フラックスは、時間の関数としての透過量の勾配として誘導される。定常状態フラックスは、レシーバー媒体の体積を乗じ、且つ透過面積について規準化された、フラックス対時間曲線のプラトーから得る。
【0142】
図2Aに関して、このグラフは、8.00mg/mL酒石酸水素エピネフリン及び4.4mg/mL可溶化エピネフリン塩基による、透過した活性物質の平均量対時間を示す。
【0143】
図2Bに関して、このグラフは、8.00mg/mL酒石酸水素エピネフリン及び4.4mg/mL可溶化エピネフリン塩基による、平均フラックス対時間を示す。
【0144】
図3に関して、このグラフは、濃度の関数としての、酒石酸水素エピネフリンのエクスビボ透過を示す。この試験は、4mg/mL、8mg/mL、16mg/mL及び100mg/mLの濃度を比較した。結果は、増加する濃度が、増加した透過を示したこと、及び増強のレベルが、より高い負荷で減少することを示した。
【0145】
図4に関して、このグラフは、溶液pHの関数としての、酒石酸水素エピネフリンの透過を示す。酸性条件は、安定性を促進するかどうかを調べた。結果は、酒石酸水素エピネフリンpH3緩衝液及び酒石酸水素エピネフリンpH5緩衝液を比較し、且つ酒石酸水素エピネフリンpH5緩衝液が、わずかに好ましいことが認められた。
【0146】
図5に関して、このグラフは、時間の関数としての透過量として示された、エピネフリンの透過に対するエンハンサーの影響を示している。ラブラゾル、カプリオール90、Plurol Oleique、ラブラフィル、TDM、SGDC、Gelucire 44/14及びクローブ油を含む、複数のエンハンサーをスクリーニングした。開始までの時間及び定常状態フラックスに対する顕著な影響が達成され、驚くべきことに増強された透過が、クローブ油及びラブラゾルについて達成された。
【0147】
図6A及び6Bに関して、これらのグラフは、透過量(μg)対時間として示された、ポリマープラットフォーム上のエピネフリンの放出及びその放出に対するエンハンサーの作用を示す。図6Aは、異なるポリマープラットフォームからのエピネフリン放出を示す。図6Bは、エピネフリン放出に対するエンハンサーの影響を示す。
【0148】
図7に関して、このグラフは、雄のYucatanミニブタにおける薬物動態モデルを示す。この試験は、0.3mgエピペン、0.12mgエピネフリンIV、及びプラセボフィルムを比較する。
【0149】
図8に関して、このグラフは、40mgエピネフリンフィルム対0.3mgエピペンの濃度プロファイルに対するエンハンサーなしの影響を示す。
【0150】
図9に関して、このグラフは、40mgエピネフリンフィルム対0.3mgエピペンの濃度プロファイルに対するエンハンサーA(ラブラゾル)の影響を示す。
【0151】
図10に関して、このグラフは、2種の40mgエピネフリンフィルム(10-1-1)及び(11-1-1)対0.3mgエピペンの濃度プロファイルに対するエンハンサーL(クローブ油)の影響を示す。
【0152】
図11に関して、このグラフは、40mgエピネフリンフィルム対0.3mgエピペンの濃度プロファイルに対する、エンハンサーL(クローブ油)及びフィルム寸法(10-1-1薄く大きいフィルム及び11-1-1厚く小さいフィルム)の影響を示す。
【0153】
図12に関して、このグラフは、0.3mgエピペンに対する、エンハンサーL(クローブ油)に関する一定のマトリクス中のエピネフリンフィルムの投与量の変動に関する、濃度プロファイルを示す。
【0154】
図13に関して、このグラフは、0.3mgエピペンに対する、エンハンサーL(クローブ油)に関する一定のマトリクス中のエピネフリンフィルムの投与量の変動に関する、濃度プロファイルを示す。
【0155】
図14に関して、このグラフは、0.3mgエピペンに対する、エンハンサーA(ラブラゾル)に関する一定のマトリクス中のエピネフリンフィルムの投与量の変動に関する、濃度プロファイルを示す。
【0156】
図15に関して、このグラフは、時間の関数としての透過量として示される、ジアゼパムの透過に対するエンハンサーの影響を示す。
【0157】
図16に関して、このグラフは、時間の関数としての、平均フラックスを示す(ジアゼパム+エンハンサー)。
【0158】
図17に関して、このグラフは、40mgエピネフリンフィルム対0.3mgエピペンの血漿濃度プロファイルに対する、ファルネソール及びリノール酸と組合せたファルネソールの影響を示す。
【0159】
図18に関して、このグラフは、40mgエピネフリンフィルム対0.3mgエピペンの血漿濃度プロファイルに対する、ファルネソール及びリノール酸と組合せたファルネソールの影響を示す。
【0160】
図19に関して、このグラフは、40mgエピネフリンフィルム対0.3mgエピペンの血漿濃度プロファイルに対する、リノール酸と組合せたファルネソールの影響を示す。
【0161】
図20に関して、このグラフは、40mgエピネフリンフィルム対0.3mgエピペンの血漿濃度プロファイルに対する、ファルネソール及びリノール酸と組合せたファルネソールの影響を示す。
【0162】
下記実施例は、本明細書記載の医薬組成物、並びに医薬組成物を製造する方法及び使用する方法、並びに装置を例示するために提供される。
【実施例
【0163】
(実施例)
(実施例1 透過エンハンサー-エピネフリン)
透過の増強を、いくつかの透過エンハンサーを用い、酒石酸水素エピネフリン濃度16.00mg/mLにより、試験した。結果は、以下のデータに表されたフラックス増強を示す。100%オイゲノール及び100%クローブ油に関して、結果は、定常状態フラックスには顕著に早く到達し、予想外に高められたフラックス増強率(%)を伴ったことを示した。
【表1】
1定常状態フラックスにかなり早い時点で到達した
*0.3%オイゲノール対0.3%クローブ-互いに類似したフラックス速度
【0164】
これらの例に関して、クローブ油は、クローブ葉から得た。同様の結果が、クローブ芽及び/又はクローブ茎由来のクローブ油から得られるであろう。本データに基づき、エピネフリンに構造的に類似した医薬化合物から、類似の透過性増強の結果を、予想することができる。
【0165】
(実施例2 ジアゼパム溶解度及び透過性)
ジアゼパムが、頬側領域(頬)に適用され、口腔粘膜を通して拡散し、直接血流に入った。ジアゼパムの溶解度も、様々な賦形剤を用いて試験した。図15は、時間の関数として透過量(ug)として示された、ジアゼパムの透過に対するエンハンサーの影響を示している。図16は、ジアゼパム及びある種の選択されたエンハンサーの溶液中の、時間(分)の関数としての、μg/cm*分として示される平均フラックスを示す。
【0166】
以下の賦形剤もまた、溶解度を改善するために試験されている。
【表2】
【0167】
下記賦形剤:シナモン葉、バジル、ローリエ、ナツメグ、Kolliphor(登録商標)TPGS、ビタミンE PEGコハク酸エステル、Kolliphor(登録商標)EL、ポリオキシル35ヒマシ油USP/NF、メントール、N-メチル-2-ピロリドン、SLS(SDS)、SDBS、フタル酸ジメチル、ショ糖パルミチン酸エステル(Sisterna PS750-C)、ショ糖ステアリン酸エステル(Sisterna SP70-C)、CHAPS、オクチルグルコシド、Triton X 100(オクトキシノール-9)、エチルマルトール(粉末香味料)、Brij 58(セテス-20)、ビタミンEトコフェロール、酢酸トコフェロール又はコハク酸トコフェロール、ステロール、植物抽出物、精油又はタラ肝油もまた、類似の増強特性のために適用することができる。
【0168】
下記の結果を、濃度8.00mg/mLを有するジアゼパム溶液において得た。
【表3】
【0169】
(実施例3 全般的透過手法-エクスビボ透過試験プロトコール)
一例において、透過手法は、以下のように実行される。温浴は、37℃に設定し、レシーバー媒体を、温度を調節するために、水浴中に配置し、脱気を開始する。フランツ拡散セルを、入手し且つ準備する。フランツ拡散セルは、ドナー化合物、ドナーチャンバー、膜、サンプリングポート、レセプターチャンバー、撹拌子、及びヒーター/サーキュレーターを備える。撹拌子は、フランツ拡散セルに挿入される。組織を、フランツ拡散セルの上に配置し、且つ組織が、ガラスジョイント上に重なりを伴い全面を覆うことを確実にする。拡散セルの最上部を、組織の上に配置し、セルの最上部を、底部にクランプで固定させる。レセプター媒体約5mLを、レシーバー領域に負荷させ、空気泡がセルの受け部分に捕獲されないことを確実にする。このことは、5mL全てが、レシーバー領域にフィットすることができることを確実にする。撹拌を開始し、温度を、約20分間平衡化させる。一方で、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)バイアルを、セルの数及び時点別にラベルを付ける。その後、加熱時に溶液からガスが抜ける際に、気泡を再度チェックしなければならない。
【0170】
フィルムを試験する場合、以下の次工程:(1)フィルムを秤量し、拡散領域に合致する(又はより小さい)ようにパンチングし、再度秤量し、パンチング前及び後の重量を記録する工程;(2)およそ100μLのリン酸緩衝液で、ドナー領域を湿らせる工程;(3)フィルムをドナー表面上に配置し、400μLのリン酸緩衝液を被せて、且つタイマーを始動する工程を実行することができる。
【0171】
溶液試験に関して、以下の工程:(1)マイクロピペットを用い、溶液500μLを各ドナーセルに分配し、タイマーを始動する工程;(2)以下の時点(時間=0分、20分、40分、60分、120分、180分、240分、300分、360分)で、200μLをサンプリングし、且つラベルを付けたHPLCバイアル内に配置し、封をしたバイアルを叩いて、空気がバイアルの底部に捕獲されないことを確実にする工程;(3)各サンプリング時間に、200μLのレセプター媒体で置き換える(5mLを維持するように)工程;(4)全ての時点が完了したら、セルを分解し、全ての物質を適切に廃棄する工程を実行することができる。
【0172】
(実施例4 エクスビボ透過評価)
エクスビボ透過評価の例は、以下のようである:
1. 組織を、新たに摘出し、且つ4℃で配送する(例えば一晩)。
2. 組織を、処理し、且つ使用前に最長3週間、-20℃で、凍結する。
3. 組織を、正確な厚さに採皮する(dermatome)。
4. およそ5mLのレシーバー媒体を、レシーバーコンパートメントに添加する。この媒体は、シンク条件を確実にするように選択する。
5. 組織を、ドナー化合物、ドナーチャンバー、膜、サンプリングポート、レセプターチャンバー、撹拌子、及びヒーター/サーキュレーターを備える、フランツ拡散セル内に配置する。
6. およそ0.5mLのドナー溶液を適用し、且つ8mm円形フィルムを、500μLのPBS緩衝液で湿潤させる。
7. 試料を、所定の間隔で、レシーバーチャンバーから採取し、且つ新鮮な媒体と置き換える。
【0173】
(実施例5 ドキセピンの経頬側送達)
以下は、ドキセピンの経頬側送達の例示的な透過試験である。本試験は、バルセロナ大学(スペイン)の動物実験倫理委員会及びカタロニア地域自治政府(スペイン)の動物実験委員会により、承認されたプロトコールの下で実行された。3~4月齢の雌ブタを使用した。Bellvitge Campus(バルセロナ大学、スペイン)の動物施設内で、チオペンタールナトリウム麻酔の過剰投与を用い、ブタを屠殺した後、直ちにブタの頬領域由来の頬側粘膜を摘出した。新鮮な頬側組織を、ハンクス溶液を満たした容器に入れ、病院から検査室へ移した。残りの組織検体は、凍結保護剤として4%アルブミン及び10%DMSOを含有するPBS混合物の入った容器内で、-80℃で保管した。
【0174】
透過試験のために、拡散障壁に寄与する(Sudhakarらの文献、「頬側生体付着薬物送達-経口効率の低い薬物のための有望な選択肢(Buccal bioadhesive drug delivery - A promising option for orally less efficient drugs)」、Journal of Controlled Release, 114 (2006) 15-40)ブタの頬側粘膜を、電気採皮刀(GA 630, Aesculap, Tuttlingen, ドイツ)を用いて500±50μmの厚さのシートに切断し、且つ適切な小片へと外科用鋏で切りそろえた。下側結合組織の大半は、外科用メスにより除去した。
【0175】
次に膜を、9mmの透過オリフィス直径を持つ特別にデザインされた膜ホルダーに取り付けた(拡散面積0.636cm2)。膜ホルダーを用いて、各ブタの頬側膜を、ドナーコンパートメント(1.5mL)とレセプターコンパートメント(6mL)の間に取り付け、ここで、上皮側が、静置型フランツ型拡散セル(Vidra Foc Barcelona, スペイン)のドナーチャンバーに面し、且つ結合組織領域が、そのレシーバーに面するようにし、泡の発生を防いだ。
【0176】
無限(infinite)投与量条件を、飽和ドキセピン溶液の100μLをドナー溶液として、レセプターチャンバー内へ適用し、且つ水の蒸発を防ぐために直ちにパラフィルムにより封止することにより確実にした。本実験を実行する前に、拡散セルを、全てのセル内の温度が等しくなるよう(37℃±℃)、水浴中で1時間インキュベーションした。各セルには、小型のテフロン1でコートされた磁気撹拌子が入っており、これは実験中に、レセプターコンパートメント内の流体が、均質であり続けることを確実にするために使用された。
【0177】
シンク条件は、レセプター媒体中のドキセピン飽和濃度を最初に試験することにより、全ての実験において確実にした。試料(300μL)を、6時間にわたり予め選択された時間間隔(0.1、0.2、0.3、0.7、1、2、3、4、5及び6時間)で、レセプターコンパートメントの中央から、注射器により抜き取った。膜の下側に空気が捕獲されるのを避けるようよく注意しながら、取り出した試料容積を、同じ容積の新鮮なレセプター媒体(PBS;pH7.4)と、直ちに置き換えた。
【0178】
追加の詳細は、A. Gimemoらの文献、「ドキセピンの経頬側送達:透過及び組織学的評価の研究(Transbuccal delivery of doxepin: Studies on permeation and histological evaluation)」、International Journal of Pharmaceutics 477 (2014), 650-654に認めることができ、これは引用により本明細書中に組み込まれている。
【0179】
(実施例6 経口経粘膜的送達)
ブタの口腔粘膜組織は、ヒト口腔粘膜組織に類似の組織学的特徴を有する(Heaney TG、Jones RSの文献、「上皮分化に対する成体ブタ肺胞粘膜結合組織の影響の組織学的研究(Histological investigation of the influence of adult porcine alveolar mucosal connective tissues on epithelial differentiation)」、Arch Oral Biol 23 (1978) 713-717;Squier CA、及びCollins Pの文献、「軟部組織付着、上皮下方成長及び表面多孔度の間の関係(The relationship between soft tissue attachment, epithelial downgrowth and surface porosity)」、Journal of Periodontal Research 16 (1981) 434-440)。Leschらの文献、「ヒト口腔粘膜及び皮膚の水に対する透過性(The Permeability of Human Oral Mucosa and Skin to Water)」、J Dent Res 68 (9), 1345-1349, 1989)は、ブタの頬側粘膜の水透過性が、ヒト頬側粘膜とは顕著に異ならないが、口腔底は、ヒト組織での方が、ブタ組織でよりもより透過性であることを報告した。新鮮なブタ組織検体と-80℃で保管した検体の間の比較は、凍結の結果として、透過性に対する顕著な作用はないことを明らかにした。ブタの頬側粘膜吸収が、インビトロ及びインビボの両方において広範な薬物分子について試験されている(例えば、引用により本明細書中に組み込まれている、M. Sattarの文献、「経口経粘膜的薬物送達-最新状態及び今後の展望(Oral transmucosal drug delivery - current status and future prospects)」、International Journal of Pharmaceutics 471 (2014) 498-506の表1を参照されたい)。典型的には、インビトロ試験は、ウッシングチャンバー、フランツセル又は類似の拡散装置における、摘出したブタの頬側組織を取り付けることを含む。この文献に説明されたインビボ試験は、溶液、ゲル又は組成物としての薬物の、ブタの頬側粘膜への適用、その後の血漿サンプリングを含んでいる。
【0180】
Nicolazzoらの文献(「頬側粘膜の透過特性に対する様々なインビトロ条件の作用(The Effect of Various in Vitro Conditions on the Permeability Characteristics of the Buccal Mucosa)」、Journal of Pharmaceutical Sciences 92(12) (2002) 2399-2410)は、モデル親水性分子及び親油性分子としてカフェイン及びエストラジオールを使用して、ブタの頬側組織の透過性に対する様々なインビトロ条件の作用を調べた。頬側粘膜における薬物透過を、改造したウッシングチャンバーを用いて試験した。比較透過試験を、完全厚さの上皮組織、新鮮組織及び凍結組織を通して行った。組織完全性を、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)-標識したデキストラン20kDa(FD20)の吸収によりモニタリングし、組織生存度を、MTT(3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)生化学アッセイ及び組織学的評価を用いて評価した。頬側上皮を通した透過性は、完全厚の頬側組織と比べて、カフェインについて1.8倍、及びエストラジオールについて16.7倍大きかった。両方の化合物に関するフラックス値は、新鮮な頬側上皮及び凍結した頬側上皮について同等であったが、組織学的評価は、凍結組織における細胞死の徴候を明らかにした。この組織は、MTT生存度アッセイを用い、死後最長12時間生存し続けたように見え、このことは組織学的評価によっても確認された。
【0181】
Kulkarniらは、ブタの頬側組織の障壁特性に対する、上皮及び結合組織の相対寄与を調べた。インビトロ透過試験を、モデル透過物(permeant)として、アンチピリン、ブスピロン、ブピバカイン及びカフェインを用いて行った。厚さ250、400、500、600、及び700μmの頬側粘膜を超えるモデル拡散物(diffusant)の透過性を、決定した。上皮及び結合組織の障壁機能への相対寄与を描くために、二重層膜モデルを開発した。透過性障壁としての結合組織領域の相対寄与は、粘膜組織厚の増加とともに、顕著に増加した。およそ500μmの粘膜組織厚が、インビトロ経頬側透過試験について、著者らにより推奨された。これは、上皮が、この厚さで全ての拡散物に関する主要な透過性障壁を表したためである。著者らはまた、ブタの頬側粘膜における同じ群のモデル透過物の透過性に対する、いくつかの生物学的変数及び実験的変数の作用を調べた(インビトロモデルとしてのブタの頬側粘膜:生物学的及び実験的変数の作用、Kulkarniらの文献、J Pharm Sci. 2010 99(3):1265-77)。顕著に、透過物のより高い透過性が、より厚い頬の領域(250~280μm)と比べ、口唇の裏側のより薄い領域(170~220μm)について認められた。ブタの頬側粘膜は、クレブス炭酸水素リンゲル液中で、4℃で、24時間、その完全性を維持した。上皮を下側の結合組織から分離するための熱処理は、外科的分離と比べ、その透過性及び完全性の特徴に有害には作用しなかった。
【0182】
追加の詳細は、M. Sattarの文献、「経口経粘膜的薬物送達-最新の状況及び今後の展望(Oral transmucosal drug delivery- current status and future prospects)」、International Journal of Pharmaceutics 471 (2014) 498-506に認めることができ、これは引用により本明細書中に組み込まれている。
【0183】
(実施例7 頬側粘膜の凍結保存)
ブタの頬側粘膜の異なる領域は、異なるパターンの透過性を有し、口唇の裏側領域において、頬の領域と比べ、顕著により高い透過性が存在し、その理由は、ブタの頬側粘膜においては、上皮が、透過性障壁として作用し、頬上皮の厚さが、口唇の裏側領域の厚さよりもより大きいからである(Harris及びRobinsonの文献、1992)。例示的な透過試験において、拡散障壁に寄与する(Sudhakarらの文献、2006)、同じ領域に由来する新鮮な又は凍結したブタの頬側粘膜を、厚さ500±50μmのシートに切断し、電気採皮刀(モデル GA 630, Aesculap, Tuttlingen, ドイツ)を用いて得て、且つ適切な小片に外科用鋏で切りそろえた。利用した全ての装置は、予め滅菌した。下側結合組織の大半を、外科用メスにより除去した。次に膜を、9mmの透過オリフィス直径を持つ特別にデザインされた膜ホルダーに取り付けた(拡散面積0.63cm2)。膜ホルダーを用いて、各ブタの頬側膜を、ドナーコンパートメント(1.5mL)とレセプターコンパートメント(6mL)の間に取付け、ここで、上皮側が、静的フランツ-型拡散セル(Vidra Foc Barcelona, スペイン)のドナーチャンバーに面し、且つ結合組織領域が、そのレシーバーに面するようにし、泡の発生を防いだ。実験を、モデル薬物として、親油性特徴を有し(logP=1.16;n-オクタノール/PBS、pH7.4)、イオン化可能であり(pKa=9.50)、且つMW=259.3g/molを有するPPを用いて実行した(Modamioらの文献、2000)。
【0184】
無限投与量条件を、PBS(pH7.4)中のPP飽和溶液(37℃±1℃で、C0=588005±5852μg/mL、n=6)の300μLをドナー溶液として、レセプターチャンバー内へ適用し、且つ水の蒸発を防ぐために直ちにパラフィルムにより封止することにより確実にした。
【0185】
本実験を実行する前に、拡散セルを、全てのセルの中の温度が平衡化されるように(37℃±1℃)、水浴中で1時間インキュベーションした。各セルには、小型のテフロンでコートされた磁気撹拌子が入っており、これは実験中に、レセプターコンパートメント内の流体が、均質であり続けることを確実にするために使用された。シンク条件は、レセプター媒体中のPP飽和濃度を最初に試験した後に、全ての実験において確実とされた。
【0186】
試料(300μL)を、下記の時間間隔:0.25、0.5、1、2、3、4、5及び6時間で、レセプターコンパートメントの中央から、注射器により抜き取った。真皮の下側に空気が捕獲されるのを避けるようよく注意しながら、取り出した試料容積を、同じ容積の新鮮なレセプター媒体(PBS;pH7.4)で、直ちに置き換えた。粘膜の単位表面積(cm2)を浸透する薬物(μg)の累積量を、除去された試料について補正し、時間(h)に対してプロットした。この拡散実験は、新鮮な頬側粘膜については27回、凍結した頬側粘膜については22回実行した。
【0187】
追加の詳細は、S. Amoresの文献、「フランツ拡散セルを使用するエクスビボ薬物浸透試験におけるブタの頬側粘膜のための改良凍結保存法(An improved cryopreservation method for porcine buccal mucosa in ex vivo drug permeation studies using Franz diffusion cells)」、European Journal of Pharmaceutical Sciences 60 (2014) 49-54に認めることができる。
【0188】
(実施例8 舌下粘膜区画を超えるキニーネの透過)
ブタ及びヒトの口腔膜は、組成、構造及び透過性の測定値が類似しているので、ブタの口腔粘膜は、ヒト口腔粘膜の好適なモデルである。ブタの口腔粘膜を超える透過性は、代謝と関連せず、従って組織が生存可能であることは重要ではない。
【0189】
ブタの膜を準備するために、ブタの口腔底及び腹側(下側)舌粘膜を、外科用メスを使用する鈍的切除により摘出した。摘出した粘膜を、およそ1cmの正方形に切り出し、使用時まで、アルミ箔上で-20℃で、凍結した(<2週間)。ブタの舌の凍結しなかった腹側表面について、この粘膜を、摘出の3時間以内に、透過試験において使用した。
【0190】
キニーネに対する膜の透過性を、公称レセプター容積3.6mL及び拡散面積0.2cm2の、全てガラス製のフランツ拡散セルを用いて決定した。このセルのフランジに、高性能真空グリースを塗り、膜を、レセプターコンパートメントとドナーコンパートメントの間に取付け、粘膜表面を一番上側にした。クランプを使用して膜を適所に保持し、その後レセプターコンパートメントを、脱気したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.4で満たした。微小磁気攪拌子を、レセプターコンパートメントに加え、完全セルを、37℃の水浴中に配置した。この膜を、ドナーコンパートメントに適用されたPBSにより20分間平衡化させ、その後ピペットで吸引した。種々のビヒクル中のキニーネ溶液の5μL又はQ/2-HP-β-CD複合体の飽和溶液の100μLのアリコートを、各ドナーコンパートメントに適用した。舌の腹側表面を超えるキニーネの透過に対する唾液の作用を決定する試験において、滅菌した唾液100μLを、ドナーコンパートメントに添加し、その後キニーネ溶液5μLを添加した。
【0191】
2、4、6、8、10及び12時間で、レセプター相を、サンプリングポートから抜き出し、且つ試料の1mLアリコートを、HPLC自動サンプラーバイアルへ移し、その後37℃で保管した新鮮なPBSと置き換えた。Q/2-HP-β-CD飽和溶液が関与する試験(無限の投与量が実験の開始時に適用される)とは別に、それぞれのキニーネ溶液5μLを、最長10時間まで再度ドナー相に適用した。これの目的は、投与間の2時間の間隔を基にした仮説使用時有限投薬レジメンを表すことであった。少なくとも3回の反復を、各試験について実行した。
【0192】
追加の詳細は、C. Ongの文献、「インビトロにおける舌下粘膜を超えるキニーネの透過(Permeation of quinine across sublingual mucosa, in vitro)」、International Journal of Pharmaceutics 366 (2009) 58-64に認めることができる。
【0193】
(実施例9 エクスビボ初期試験-APIの形態)
この実施例において、インサイチュで可溶化エピネフリン塩基対本質的に可溶性の酒石酸水素エピネフリンの透過を試験し、差異は認められなかった。酒石酸水素エピネフリンを、加工の容易さを基に更なる開発のために選択した。フラックスは、時間の関数としての透過量の勾配として誘導される。定常状態フラックスは、レシーバー媒体の容積を乗じた、フラックス対時間曲線のプラトーから外挿された。図2Aのグラフは、8.00mg/mL酒石酸水素エピネフリン及び4.4mg/mL可溶化エピネフリン塩基による、平均透過量対時間を示す。図2Bのグラフは、8.00mg/mL酒石酸水素エピネフリン及び4.4mg/mL可溶化エピネフリン塩基による、平均フラックス対時間を示す。
【表4】
【0194】
(実施例10 透過/フラックスに対する濃度依存性)
この試験において、濃度の関数としての、酒石酸水素エピネフリンのエクスビボ透過を試験した。図3は、濃度の関数としての、酒石酸水素エピネフリンのエクスビボ透過を示す。この試験は、濃度4mg/mL、8mg/mL、16mg/mL及び100mg/mLを比較した。結果は、濃度の増加により透過が増加し、且つ増強のレベルは、より高い負荷で減少することを示した。本試験は、濃度4mg/mL、8mg/mL、16mg/mL及び100mg/mLを比較した。
【表5】
【表6】
【0195】
(実施例11 pHの影響)
この実施例において、溶液pHの関数としての、酒石酸水素エピネフリンの透過を試験した。この実施例において、酸性条件を、安定性を促進する能力があるかどうかについて調べた。結果は、pH5が、pH3と比べてわずかに好ましいことを示した。調べた濃度範囲の溶液中の酒石酸水素エピネフリンの固有のpHは、4.5~5である。緩衝剤によるpH調節は、不要であった。
【0196】
図4は、溶液pHの関数としての、酒石酸水素エピネフリンの透過を示す。酸性条件を、安定性を促進するために調べた。結果は、酒石酸水素エピネフリンpH3緩衝液及び酒石酸水素エピネフリンpH5緩衝液を比較し、且つ酒石酸水素エピネフリンpH5緩衝液が、わずかに好ましいことを見いだした。
【0197】
(実施例12 エンハンサーのエピネフリン透過に対する影響)
この実施例において、経粘膜的送達を試験するための、エピネフリンの透過を、透過量(μg)対時間(分)として試験した。以下のエンハンサーを、エピネフリン16.00mg/mLを含有する溶液において、濃度作用についてスクリーニングした。図5のグラフは、時間の関数としてのこれらのエンハンサーの結果を示している。
【表7】
【0198】
エンハンサーは、粘膜中の様々な障壁に影響を及ぼす機能性を持つよう選択し且つ設計した。全ての試験したエンハンサーは、経時的に透過量を改善したが、特に、クローブ油及びラブラゾルは、顕著で予想外の高い透過増強を示した。
【表8】
【0199】
(実施例13 エピネフリン放出に対するエンハンサーの影響)
エピネフリン放出に対するエンハンサー(ラブラゾル及びクローブ油)の影響を決定するために、エピネフリンの放出プロファイルを試験した。図6Aは、異なるポリマープラットフォームからのエピネフリン放出を示す。図6Bは、エピネフリン放出に対するエンハンサーの影響を示す。これらの結果は、透過量が、約40分後に、およそ3250~4250μgの間で横ばいとなったことを示した。試験したエンハンサーは、マトリクスからのエピネフリンの放出を制限しないことを示した。
【0200】
(実施例14 加速安定性)
安定化剤の負荷の違いを試験した。
【表9】
【0201】
(実施例15 エンハンサーの影響)
雄のYucatanミニブタにおける薬物動態モデルを試験した。図7のグラフは、雄のYucatanミニブタにおける薬物動態モデルの結果を示す。この試験は、0.3mgエピペン、0.12mgエピネフリンIV及びプラセボを比較する。
【0202】
エンハンサーを含まない0.3mgエピペン及び40mgエピネフリンフィルムの濃度プロファイルに対するエンハンサーなしの影響を、図8に示す。
【0203】
エンハンサー3%ラブラゾルの影響を、図9に示し、これは、40mgエピネフリンフィルム対0.3mgエピペンの濃度プロファイルに対するエンハンサーA(ラブラゾル)の影響を示す。図10は、2種の40mgエピネフリンフィルム(10-1-1)及び(11-1-1)対0.3mgエピペンの濃度プロファイルに対するエンハンサーL(クローブ油)の影響を示す。
【0204】
加えて、フィルム寸法の影響及びクローブ油(3%)の影響も、図11に示す。この試験は、0.30mgエピペン(n=4)、40mgエピネフリンフィルム(10-1-1)(n=5)及び40mgエピネフリンフィルム(11-1-1)(n=5)を比較して実行した。この濃度対時間プロファイルは、雄のミニブタへの舌下又は筋肉内へのエピネフリン投与後のものである。
【0205】
試験を行い、エンハンサーに対するエピネフリンの比を変化させた。これらの試験はまた、雄のミニブタへの舌下又は筋肉内へのエピネフリン投与後の、濃度対時間プロファイルであった。エピネフリン対クローブ油(エンハンサーL)の比を変化させることにより、図12に示した結果が得られた。この試験は、0.30mgエピペン(n=4)、40mgエピネフリンフィルム(12-1-1)(n=5)及び20mgエピネフリンフィルム(13-1-1)(n=5)を比較して実行された。
【0206】
(実施例16)
変動用量を、エンハンサーラブラゾル(3%)及びクローブ油(3%)による一定のマトリクスで実行し、各々、図13及び図14に示した。図13の試験は、0.30mgエピペン(n=4)、40mgエピネフリンフィルム(18-1-1)(n=5)及び30mgエピネフリンフィルム(20-1-1)(n=5)を比較して行った。図14の試験は、0.30mgエピペン(n=4)、40mgエピネフリンフィルム(19-1-1)(n=5)及び30mgエピネフリンフィルム(21-1-1)(n=5)を比較して行った。これらの試験はまた、雄のミニブタへの舌下又は筋肉内へのエピネフリン投与後の、濃度対時間プロファイルであった。
【0207】
(実施例17)
エンハンサー(ファルネソール)のエピネフリン濃度に対する経時的な影響を決定するために、雄ミニブタにおける薬物動態モデルを試験した。図17のグラフは、ファルネソール透過エンハンサーの舌下又は筋肉内投与後の、時間(分)の関数としてのエピネフリン血漿濃度(ng/mL)を示す。この試験は、0.3mgエピペン(n=3)、30mgエピネフリンフィルム31-1-1(n=5)及び30mgエピネフリンフィルム32-1-1(n=5)を比較し、各エピネフリンフィルムは、ファルネソールエンハンサーと共に製剤化されている。この図に示したように、31-1-1フィルムは、約30~40分から始まりおよそ130分まで、エピネフリン濃度の増強された安定性を示す。
【0208】
図18のグラフは、図17と同じ試験から得たが、専ら、0.3mgエピペンを、30mgエピネフリンフルム31-1-1(n=5)に対して比較するデータポイントのみを示す。
【0209】
図19のグラフは、図17と同じ試験から得たが、専ら、0.3mgエピペンを、30mgエピネフリンフィルム32-1-1(n=5)に対して比較するデータポイントのみを示す。
【0210】
(実施例18)
図20に関して、このグラフは、舌下又は筋肉内投与後の、経時的な、エピネフリン濃度に対する、エンハンサー(ファルネソール)の影響を決定するために試験した雄のミニブタにおける薬物動態モデルを示す。エピネフリン血漿濃度(ng/mL)を、エピネフリンフィルム中のファルネソール透過エンハンサーの舌下又は筋肉内投与後の、時間(分)の関数として示す。この試験は、5種の30mgエピネフリンフィルム(32-1-1)に対し、3種の0.3mgエピペンからのデータを比較した。このデータは、約20~30分から始まりおよそ130分まで、エピネフリン濃度の増強された安定性を有するエピネフリンフィルムを示している。
【0211】
(実施例19)
一実施態様において、エピネフリン医薬組成物フィルムは、下記の処方で製造することができる:
【表10】
【0212】
(実施例20)
エピネフリン医薬組成物フィルムを、下記の処方で製造した:
【表11】
【0213】
(実施例21)
別の実施態様において、医薬フィルム組成物を、下記の処方で製造した:
【表12】
【0214】
(実施例22)
別の実施態様において、医薬フィルム組成物を、下記の処方で製造した:
【表13】
【0215】
(実施例23)
図21に関して、このグラフは、舌下又は筋肉内投与後の、経時的エピネフリン血漿濃度に対する、エンハンサー(6%クローブ油及び6%ラブラゾル)の影響を決定するために試験した、雄ミニブタにおける薬物動態モデル(対数スケール)を示す。エピネフリン血漿濃度(ng/mL)を、エピネフリンフィルム中のファルネソール透過エンハンサーの舌下又は筋肉内投与後の時間(分)の関数として示す。このデータは、10分の時点直後から約30分にかけて始まりおよそ100分まで、エピネフリン濃度の増強された安定性を有するエピネフリンフィルムを示す。
【0216】
図22に関して、このグラフは、0.3mgエピペン(菱形のデータポイントで示す)から収集した平均データに対して比較した、図21で言及したような雄ミニブタにおけるエピネフリンフィルム製剤の薬物動態モデルを示す。このデータが示すように、0.3mgエピペンの平均血漿濃度は、0.5~1ng/mLの間にピークがあった。対照的に、エピネフリンフィルム製剤は、4~4.5ng/mLの間にピークがあった。
【0217】
(実施例24)
図23に関して、このグラフは、7匹の動物モデルにわたる、舌下又は筋肉内投与後の、経時的エピネフリン濃度に対する、エンハンサー(9%クローブ+3%ラブラゾル)の影響を決定するために試験した、雄ミニブタにおける薬物動態モデルを示している。全般のピーク濃度に、10~30分の間に到達した。
【0218】
(アルプラゾラムデータ)
(実施例25)
図24A図24B、及び図24Bに関して、これらのグラフは、経口アルプラゾラム崩壊錠(ODT)及びアルプラゾラム医薬組成物フィルムの舌下投与時の、経時的(時間単位での)アルプラゾラム血漿濃度を比較する、雄ミニブタ試験からのデータを表している。
【0219】
図24Aは、アルプラゾラムODT(グループ1)からの平均データを示す。7~12ng/mL間のピーク濃度に、およそ1~8時間で到達した。
【0220】
図24Bは、アルプラゾラム医薬組成物フィルム(グループ2)からの平均データを示す。5ng/mL超、10ng/mL超、12ng/mL超、15ng/mL超、17ng/mL超、17ng/mL未満、15ng/mL未満、12ng/mL未満、10ng/mL未満、5ng/mL未満を含む、5~17ng/mL間のピーク濃度に、10分超、20分超、30分超、45分超、1時間超、1.5時間超、2時間超、2.5時間超、3時間超、3.5時間超、又は約4時間、4時間未満、3.5時間未満、3時間未満、2.5時間未満、2時間未満、1.5時間未満、1時間未満、45分未満、30分未満、又は20分未満を含む、10分~4時間で到達した。
【0221】
図24Cは、別の雄ミニブタの群(グループ3)からの、アルプラゾラム医薬組成物フィルムからの平均データを示す。5ng/mL超、10ng/mL超、12ng/mL超、15ng/mL超、17ng/mL超、17ng/mL未満、15ng/mL未満、12ng/mL未満、10ng/mL未満、5ng/mL未満を含む、5~17ng/mLのピーク濃度に、10分超、20分超、30分超、45分超、1時間超、1.5時間超、2時間超、2.5時間超、3時間超、3.5時間超、及び約4時間、4時間未満、3.5時間未満、3時間未満、2.5時間未満、2時間未満、1.5時間未満、1時間未満、45分未満、30分未満、又は20分未満を含む、10分~4時間で到達した。
【0222】
(実施例26)
図25Aに関して、このグラフは、経口アルプラゾラム崩壊錠(ODT)(円形のデータポイントで示した)と、アルプラゾラム医薬組成物フィルムによる2群(正方形及び三角形のデータポイントで示した)の舌下投与後の経時的(時間単位での)アルプラゾラム血漿濃度を比較する、雄ミニブタ試験からのデータを示している。
【0223】
このグラフが示すように、アルプラゾラム医薬組成物フィルム(両群)からのデータは、10分超、20分超、約30分間、30分超、30分未満、20分未満、15分未満、又は10分未満を含む、約30分間以下の治療ウインドウにおいて最高でおよそ15~25mg/mLの比較的高いアルプラゾラム血漿濃度を得た。
【0224】
図25Bに関して、このグラフは、図25Aで言及した試験からの個別のデータポイントを示す。
【0225】
図25Cに関して、このグラフは、0~1時間の図25Aで言及した試験からの個別のデータポイントを示す。
【0226】
図26Aに関して、このグラフは、図25Cで言及したアルプラゾラムODTに関する個別のデータポイントを示す。
【0227】
図26Bに関して、このグラフは、図25Cで言及したアルプラゾラム医薬フィルムに関する個別のデータポイントを示す。
【0228】
図26Cに関して、このグラフは、図25Cで言及したアルプラゾラム医薬フィルム(第二群)に関する個別のデータポイントを示す。
【0229】
先に言及したグラフからのデータはまた、以下の表にもまとめられている。
【表14】
【0230】
(実施例27)
図27Aに関して、この図は、経口アルプラゾラム崩壊錠(ODT)(円形のデータポイントで示した)と、アルプラゾラム医薬組成物フィルムの2群(正方形及び三角形のデータポイントで示した)の舌下投与後の経時的アルプラゾラム血漿濃度を比較する、雄ミニブタ試験からの平均データを示している。データが示すように、0.5mgアルプラゾラムODTは、10分超、20分超、30分超、45分超、1時間超、1.5時間超、2時間超、2.5時間超、3時間超、3.5時間超、又は約4時間、4時間未満、3.5時間未満、3時間未満、2.5時間未満、2時間未満、1.5時間未満、1時間未満、45分未満、30分未満、又は20分未満を含む、0~4時間の間に、ピーク濃度の範囲約5~6ng/mLに到達した。0.5mgアルプラゾラム医薬組成物フィルムは、10分超、20分超、30分超、45分超、1時間超、1.5時間超、2時間超、2.5時間超、3時間超、3.5時間超、又は約4時間、4時間未満、3.5時間未満、3時間未満、2.5時間未満、2時間未満、1.5時間未満、1時間未満、45分未満、30分未満、又は20分未満を含む、0~4時間の間に、各々、約7~8ng/mL及び6~7ng/mLのピーク濃度に到達した。
【0231】
図27Bに関して、このグラフは、0~2時間の間の、経口アルプラゾラム崩壊錠(ODT)(円形のデータポイントで示した)と、アルプラゾラム医薬組成物フィルムの2群(正方形及び三角形のデータポイントで示した)の舌下投与後の経時的なアルプラゾラム血漿濃度の平均データを示す。ODTとは異なり、アルプラゾラム医薬組成物フィルムの治療ウインドウは、10~15分で始まるのに対し、ODTはおよそ17~20分で始まった。
【0232】
図27Cに関して、このグラフは、ODT(n=4)、0.5mgアルプラゾラム医薬組成物フィルム14-1-1(n=5)、及び0.5mgアルプラゾラム医薬組成物フィルム15-1-1(n=5)に関する、図27Bで言及されている完全データを示している。
【0233】
先に言及したグラフからのデータを、以下の表にまとめている:
【表15】
【0234】
(実施例28)
一調査において、成人てんかん患者における経口処置としてのジアゼパム頬側可溶性フィルムの有用性を試験した。ジアゼパム頬側可溶性フィルム(DBSF)は、特許請求される主題の例示的な実施態様である。DBSFは、増加した発作活動のエピソードを制御するためにジアゼパムの断続的な使用を必要とする、選択された難治性てんかん患者の管理のために開発中のジアゼパムの新規剤形である。DBSFは、本適応症のためのはじめての経口投与される治療となる見込みがあり、且つ直腸ジアゼパムゲルの代替物を提供し得る。DBSFは、フィルムを、頬の内面に当てて置くことで投与され、そこで、フィルムは付着し、溶解し、頬側粘膜上に薬物を放出する。このDBSF剤形は、幅広いてんかん患者によって受け入れられることが期待される。てんかんモニタリングユニット(EMU)での第2相薬物動態学的試験では、DBSFの安全性、薬物動態、及び有用性を評価した。
【0235】
成人対象での第2相、多施設、非盲検、クロスオーバー試験を、少なくとも3週間あけた2回の治療受診の間に試験した。本試験には、EMU評価を必要としたてんかん(意識が損なわれた強直間代発作又は焦点発作)の臨床診断を受けた17~65歳の男性及び女性対象を登録した。対象は、発作間欠期状態の間(処置A)及び発作中/発作周辺期状態の間(発作中又は発作の5分以内;処置B)に12.5mgで投与されたDBSFを受けた。治験責任医師のDBSFの配置の有用性エンドポイントには:(1)配置が成功したかどうか、(2)フィルムの挿入に成功するのに必要とされた試行の数、(3)対象が、フィルムを吐き出したり吹き出したりしたかどうか、及び(4)DBSFが嚥下されたかどうかが含まれた。
【0236】
結果は以下のようであった:合計で35名の対象が、少なくとも1用量のDBSFを投与された。これらの対象のうち、33名の対象から、処置Aの間に有用性データが収集され、33名の対象から、処置Bの間に有用性データが収集された。処置A及び処置B双方の間、DBSF挿入の失敗はなかった。処置Aの間の対象2名(6.1%)、及び処置Bの間の対象1名(3.0%)は、投薬の間にDBSFを嚥下したと記録された。さらに3名の対象(9.1%)が、全ての対象に、配置の15分後にフィルムが完全に溶解しなかった場合にそれを嚥下するよう指示するプロトコールに従ってDBSFを嚥下した。処置Aの間に、頬側粘膜へ初めに付着させた後にDBSFを吐き出したり吹き出したりした患者はいなかったが、処置Bの間に、3名の対象(9.1%)が、初めの配置の後にフィルムを吐き出したか又は吹き出した。DBSFは、一般に安全であり、良好な耐容性を示す。薬物におそらく関連していた最も好発した有害事象は、35名の対象のうち2名(5.7%)で報告された傾眠であった。治験薬に関連した重篤な有害事象はなく、有害事象を理由として離脱した対象はいなかった。
【0237】
このことは、治験責任医師が、驚くべきことに、EMUの設定において、DBSFは、発作間欠期状態及び発作中/発作周辺期状態の双方において、成功裏に投与されたと結論付けることを可能とした。この試験データは、増加した発作活動のエピソードを制御するために断続的なジアゼパムの使用を必要とする選択された難治性てんかん患者の管理のためのDBSFの安全且つ有効な使用を支持する。このことはまた、家庭の場での有用性の可能性を支持し得る。
【0238】
(実施例29)
別の調査で、成人てんかん患者においてジアゼパム頬側可溶性フィルムの薬物動態を評価した。発作周辺期投与及び発作間欠期投与での生物学的利用能の比較を評価した。
【0239】
上で示したように、ジ頬側可溶性フィルム(DBSF)は、特許請求される主題の例示的な実施態様である。これは、増加した発作活動のエピソードを制御するために断続的なジアゼパムの使用を必要とする選択された難治性てんかん患者の管理のために開発中のジアゼパムの新規剤形である。この試験において、治験責任医師は、発作中又は発作直後の薬物動態学的(PK)パフォーマンスを評価しようと努めた。対象は、臨床的てんかんモニタリングユニット(EMU)評価を受けながら及び別のPKのみの受診で調査され、受診は、約3週間の間をあけた。本試験では、発作間欠期条件及び発作中/発作周辺期条件下でのDBSFの単回投与後の、てんかん成人対象におけるジアゼパム最大血漿濃度(Cmax)、最大濃度までの時間(Tmax)、及び2又は4時間での部分曲線下面積(部分AUC)を調査した。
【0240】
この試験において、制御不良の意識が損なわれた強直間代発作又は焦点発作の17~65歳の成人男性及び女性(N=35)が、臨床EMU設定において発作間欠期条件(処置A)及び発作中/発作周辺期条件(処置B)下の双方でDBSF 12.5mgを投与される単一用量クロスオーバーに登録された。投与前及び投薬の2時間又は4時間後まで間隔を置いてジアゼパムの分析用の血漿試料を得た。投与は、その前の4時間に発作活動が観察されなかった場合に発作間欠期であると分類され、臨床的に発作活動が観察されている間又は発作活動がおさまった5分以内にDBSFが投与された場合には、発作中/発作周辺期であると分類された。対象は、試験の始めから終わりまで有害事象(AE)についてモニタリングされた。
【0241】
結果は、以下のようであった:双方の処置条件の分析に有効な薬物動態学的(PK)プロファイルが、21名の対象について入手可能であった。これらの対象の大部分は、4時間まで試料を採取されたが、3名の対象は、2時間までのみ試料採取された。対象は、双方の処置を終えられなかった場合(N=4)、濃度データを知らされていない専門家が判断して、重要なPK時点を逃した場合(N=3)、投与前ジアゼパム濃度が、Cmaxの5%超であった場合(N=2)、又はDBSFが、指示に反した様式で投与された場合(N=5)に、分析から除外された。表は、Cmax、AUC(0-2h)、及びAUC(0-4h)(幾何平均)の値、並びに幾何平均の比(処置B/処置A)を90%CIで示す。驚くべきことに、Cmax、AUC(0-2h)、及びAUC(0-4h)の値は、発作間欠期状態及び発作中/発作周辺期状態で類似しており、Tmaxの中央値に有意な差はなかった(表)。DBSF 12.5mgは、有効で、安全であり、且つ良好な耐容性を示すことが示された。薬物におそらく関連した最も好発した有害事象は、35名の対象のうちの2名(5.7%)で報告された傾眠であった。治験薬に関連する重篤な有害事象はなく有害事象を理由として離脱した対象はいなかった。
【0242】
驚くべきことに、これらの結果は、てんかんの成人に投与されたDBSF 12.5mgの単回投与が、発作中/発作周辺期条件の双方で、間の発作間欠期条件下で得られるそれと同程度であるジアゼパムへの曝露を提供することを示した。
(発作間欠期状態及び発作中/発作周辺期状態におけるDBSF 12.5mg後の薬物動態学的パラメーターの表)
【表16】
【0243】
本明細書で引用した全ての参考文献は、それらの全体が本明細書に参照により組み込まれている。他の実施態様は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
ポリマーマトリクス;
該ポリマーマトリクス中の医薬活性成分;及び
アドレナリン受容体相互作用物質
を含む医薬組成物。
(態様2)
透過エンハンサーをさらに含む、態様1記載の医薬組成物。
(態様3)
前記アドレナリン受容体相互作用物質が、テルペノイド、テルペン、又はセスキテルペンを含む、態様1記載の医薬組成物。
(態様4)
前記透過エンハンサーが、ファルネソール又はラブラゾルを含む、態様2記載の医薬組成物。
(態様5)
前記透過エンハンサーが、リノール酸を含む、態様2記載の医薬組成物。
(態様6)
ポリマーマトリクスをさらに含むフィルムである、態様1記載の医薬組成物であって、前記医薬活性成分が、該ポリマーマトリクス中に含有されている、前記医薬組成物。
(態様7)
前記アドレナリン受容体相互作用物質が、フェニルプロパノイドを含む、態様1記載の医薬組成物。
(態様8)
前記フェニルプロパノイドが、オイゲノール又は酢酸オイゲノールである、態様7記載の医薬組成物。
(態様9)
前記フェニルプロパノイドが、桂皮酸、桂皮酸エステル、桂皮アルデヒド、又はヒドロ桂皮酸である、態様7記載の医薬組成物。
(態様10)
前記フェニルプロパノイドが、カビコールである、態様7記載の医薬組成物。
(態様11)
前記フェニルプロパノイドが、サフロールである、態様7記載の医薬組成物。
(態様12)
前記アドレナリン受容体相互作用物質が、植物抽出物である、態様1記載の医薬組成物。
(態様13)
前記植物抽出物が、クローブ植物の精油抽出物をさらに含む、態様12記載の医薬組成物。
(態様14)
前記植物抽出物が、クローブ植物の葉の精油抽出物をさらに含む、態様12記載の医薬組成物。
(態様15)
前記植物抽出物が、クローブ植物の花芽の精油抽出物をさらに含む、態様12記載の医薬組成物。
(態様16)
前記植物抽出物が、クローブ植物の茎の精油抽出物をさらに含む、態様12記載の医薬組成物。
(態様17)
前記植物抽出物が、合成又は生合成のものである、態様12記載の医薬組成物。
(態様18)
前記植物抽出物が、40~95%のオイゲノールをさらに含む、態様12記載の医薬組成物。
(態様19)
前記医薬活性成分が、エピネフリン、ジアゼパム、又はアルプラゾラムである、態様1記載の医薬組成物。
(態様20)
前記ポリマーマトリクスが、ポリマーを含む、態様1記載の医薬組成物。
(態様21)
前記ポリマーが、水溶性ポリマーを含む、態様20記載の医薬組成物。
(態様22)
前記ポリマーが、以下の群:ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースから選択されるセルロース系ポリマーを含む、態様20記載の医薬組成物。
(態様23)
チュワブルもしくはゼラチンベースの剤形、スプレー、ガム、ゲル、クリーム、錠剤、液剤、又はフィルムである、態様20記載の医薬組成物。
(態様24)
前記ポリマーマトリクスが、ポリエチレンオキシド、セルロース系ポリマー、ポリエチレンオキシド、及びポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド及び多糖、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び多糖、又はポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖、及びポリビニルピロリドンを含む、態様20記載の医薬組成物。
(態様25)
前記ポリマーマトリクスが、以下の群:プルラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、キサンタンガム、トラガントガム、グアーガム、アカシアゴム、アラビアゴム、ポリアクリル酸、メチルメタクリレートコポリマー、カルボキシビニルコポリマー、デンプン、ゼラチン、エチレンオキシド、プロピレンオキシドコポリマー、コラーゲン、アルブミン、ポリアミノ酸、ポリホスファゼン、多糖、キチン、キトサン、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも1つのポリマーを含む、態様20記載の医薬組成物。
(態様26)
安定化剤をさらに含む、態様1記載の医薬組成物。
(態様27)
前記ポリマーマトリクスが、樹状ポリマー又は高分岐ポリマーを含む、態様1記載の医薬組成物。
(態様28)
アドレナリン受容体相互作用物質を医薬活性成分と配合する;及び
該アドレナリン受容体相互作用物質及び該医薬活性成分を含む医薬組成物を形成すること
を含む医薬組成物を製造する方法。
(態様29)
ある量の医薬組成物を保持するハウジングであって、該医薬組成物が:
ポリマーマトリクス;
該ポリマーマトリクス中の医薬活性成分、及び
アドレナリン受容体相互作用物質
を含む、前記ハウジング;並びに
所定の量の該医薬組成物を分配する開口部
を備える装置。
(態様30)
ポリマーマトリクス;
該ポリマーマトリクス中の医薬活性成分;及び
アポルフィンアルカロイド相互作用物質
を含む医薬組成物。
(態様31)
ポリマーマトリクス;
該ポリマーマトリクス中の医薬活性成分;及び
血管拡張剤相互作用物質
を含む医薬組成物。
(態様32)
ポリマーマトリクス;
該ポリマーマトリクス中の医薬活性成分;及び
増加した血流を生じさせるか又は組織のフラッシングを可能にして、該医薬活性成分の経粘膜的な取り込みを変化させる相互作用物質
を含む医薬組成物。
(態様33)
ポリマーマトリクス;
該ポリマーマトリクス中の医薬活性成分;及び
正又は負の溶解熱を有し、経粘膜的な取り込みを変化させる補助剤として使用される相互作用物質
を含む医薬組成物。
(態様34)
ポリマーマトリクス;
該ポリマーマトリクス中の医薬活性成分;及び
相互作用物質
を含む医薬組成物であって、
縁が境界線を共にしている少なくとも1つの面を有する多層フィルムに含有されている、前記医薬組成物。
(態様35)
医学的状態を治療する方法であって、
ポリマーマトリクス;
該ポリマーマトリクス中の医薬活性成分;及び
アドレナリン受容体相互作用物質
を含む医薬組成物の有効量を投与することを含む、前記方法。
(態様36)
前記医薬活性成分が、エピネフリン、ジアゼパム、又はアルプラゾラムである、態様35記載の方法。
(態様37)
前記医学的状態が、てんかんの症状を含む、態様35記載の方法。
(態様38)
前記組成物が、発作間欠期状態の間に投与されるジアゼパムを含む、態様35記載の方法。
(態様39)
前記組成物が、発作中状態の間に投与されるジアゼパムを含む、態様35記載の方法。
(態様40)
前記組成物が、発作周辺期状態の間に投与されるジアゼパムを含む、態様35記載の方法。
(態様41)
前記医学的状態が、不安、薬物離脱、睡眠時随伴症、アルコール離脱、筋けいれん、又は発作性疾患を含む、態様35記載の方法。
(態様42)
前記医学的状態が、鎮静剤としての治療を含む、態様35記載の方法。
(態様43)
前記医学的状態が、医学的な処置のための鎮静を含む、態様35記載の方法。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24A-B】
図24C
図25A
図25B
図25C
図26A
図26B
図26C
図27A
図27B
図27C