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特許7431726単色複合材ミリングブロックおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】単色複合材ミリングブロックおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/14 20060101AFI20240207BHJP
   A61C 5/77 20170101ALI20240207BHJP
   A61C 5/20 20170101ALI20240207BHJP
   A61C 13/003 20060101ALI20240207BHJP
   B29C 33/02 20060101ALI20240207BHJP
   B29C 43/36 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
A61C13/14 Z
A61C5/77
A61C5/20
A61C13/003
B29C33/02
B29C43/36
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020519314
(86)(22)【出願日】2018-10-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 EP2018076592
(87)【国際公開番号】W WO2019068612
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-05-28
(31)【優先権主張番号】102017122993.0
(32)【優先日】2017-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517275117
【氏名又は名称】クルツァー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Kulzer GmbH
【住所又は居所原語表記】Leipziger Strasse 2, D-63450 Hanau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ルッパート
(72)【発明者】
【氏名】アルフレート ホーマン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン デーケアト
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア ハンバッハ
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-506139(JP,A)
【文献】国際公開第2016/159219(WO,A1)
【文献】特開2012-214398(JP,A)
【文献】国際公開第2012/157568(WO,A1)
【文献】特開2001-137263(JP,A)
【文献】米国特許第9662189(US,B2)
【文献】独国特許出願公開第102014209085(DE,A1)
【文献】特開2015-137251(JP,A)
【文献】国際公開第2018/074583(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/073572(WO,A1)
【文献】特開2008-167810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/00-13/38
A61C 5/00-90
B29C 33/02
B29C 43/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合歯科用複合材の少なくとも1つの材料のブロック(3)の製造方法であって、
(i)重合性歯科用複合材を、耐圧性鋳造鋳型(100)に移し、前記耐圧性鋳造鋳型(100)が、複数の部品で形成され、かつ少なくとも、a)少なくとも2個の鋳型キャビティ(2)を有する少なくとも1つの一体型中央部(1)を有する下部(0)、ならびに少なくとも1つの上部カバー(7)を含むか、またはb)下部(0)、少なくとも2個の鋳型キャビティ(2)を有する少なくとも1つの中央部(1)、ならびに少なくとも1つの上部カバー(7)を含み、ここで、前記重合性歯科用複合材が、
(a)70~85重量%の、少なくとも1種の歯科用ガラスを含む無機充填剤成分、
(b)10~30重量%の、二価の脂環式基を有する少なくとも1種の二官能性ウレタン(メタ)アクリレートおよび二価のアルキレン基を有する二官能性ウレタン(メタ)アクリレートを含む少なくとも2種の異なるウレタン(メタ)アクリレートの混合物、
(c)0.01~5重量%の、ウレタン(メタ)アクリレートではない、少なくとも1種の二官能性、三官能性、四官能性または多官能性モノマー、
(d)0.01~10重量%の、少なくとも1種の開始剤、開始剤系、ならびに任意で少なくとも1種の安定剤、および任意で少なくとも1種の顔料
を含み、ここで、前記複合材の合計組成が100重量%になる、
(ii)100~500MPaの範囲の圧力を、前記耐圧性鋳造鋳型内の前記重合性歯科用複合材に加え、
(iii)前記鋳造鋳型の少なくとも一部ならびに前記重合性材料を、規定の方法で90~150℃の温度に加熱し、
ここで、前記耐圧性鋳造鋳型内の前記重合性歯科用複合材を、熱間静水圧プレスして重合し、ここで、重合フロントが、力のベクトル(N)に対して実質的に垂直である、方法。
【請求項2】
前記耐圧性鋳造鋳型、下部、少なくとも個の鋳型キャビティを有する中央部および/または上部カバーが、それぞれ独立して、金属、金属合金、または耐熱性プラスチック、または耐熱性ハイブリッド材料で作られることを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項3】
(i.1)で、25~50℃の範囲の温度に予熱された前記重合性歯科用複合材が、前記耐圧性鋳造鋳型の少なくとも1個の鋳型キャビティに移され、(i.2)で、予熱された複合材で充填された少なくとも1個の鋳型キャビティが得られる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
a)(i.3)で、前記耐圧性鋳造鋳型の上部カバーが、予熱された複合材で充填された前記少なくとも個の鋳型キャビティ上に被せられる、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
a)(i.3)で、前記耐圧性鋳造鋳型の上部カバーが、予熱された複合材で充填された前記少なくともつの鋳型キャビティ上に被せられ、ここで、少なくともつのプレスパンチ(8)が前記上部カバーに配置され、雄型部品としての前記プレスパンチは、前記鋳造鋳型(100)の雌型部品としての鋳型キャビティ(2)に入るか、またはb)(i.1)で、前記耐圧性鋳造鋳型の上部カバーが、複合材で充填された少なくともつの鋳型キャビティ上に被せられ、ここで、好ましくは少なくともつのプレスパンチが前記上部カバーに配置され、雄型部品としての前記プレスパンチは、前記鋳造鋳型の雌型部品としての前記鋳型キャビティに入る、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
少なくともつのプレスパンチが、前記上部カバーに配置され、雄型部品としての前記プレスパンチが、前記鋳造鋳型の雌型部品としての前記鋳型キャビティに入る、請求項または記載の方法。
【請求項7】
(ii)で、125~250MPaの範囲の圧力を、前記耐圧性鋳造鋳型内の前記重合性歯科用複合材に加えることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
(iii)で、前記鋳造鋳型の少なくとも一部または重合性材料を、規定の方法で110~150℃の温度に0.1~60秒間、加熱することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記耐圧性鋳造鋳型内の前記重合性歯科用複合材を、熱間静水圧プレスして重合する(HIPP)ことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記耐圧性鋳造鋳型内の前記重合性歯科用複合材を、熱指向方式で熱間静水圧プレスして重合する(HIPP)ことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
全材料のブロックを基準として、15・10-6体積%~14・10-4体積%の欠陥体積を有する、重合複合材の材料のブロックが得られることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
複数の部品で形成され、かつ少なくとも1つの下部(0)、少なくとも個の鋳型キャビティ(2)を有する少なくとも1つの中央部(1)、ならびに少なくとも1つの上部カバー(7)を含むことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法において使用される、耐圧性鋳造鋳型(100)。
【請求項13】
平らな下部が、少なくとも1個の鋳型キャビティ(2)を有する少なくとも1つの中央部(1)、ならびに少なくとも1つの上部カバー(7)を含むことを特徴とする、請求項12記載の耐圧性鋳造鋳型(100)。
【請求項14】
前記少なくとも1個の鋳型キャビティが幾何学的形状を有することを特徴とする、請求項12または13記載の耐圧性鋳造鋳型。
【請求項15】
前記少なくとも個の鋳型キャビティ(2)の内側表面が、規定の表面粗さ、N3~N9での平均粗さ値Rを有することを特徴とする、請求項12から14までのいずれか1項記載の耐圧性鋳造鋳型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合歯科用複合材の材料のブロックの製造方法、ならびにその方法に従って得られる材料のブロックに関し、ここで、(i)重合性歯科用複合材は、耐圧性鋳造鋳型に移され、(ii)10~500MPaの範囲の圧力が、耐圧性鋳造鋳型内の重合性歯科用複合材に加えられ、かつ(iii)鋳造鋳型の少なくとも一部または重合性材料が、規定の方法で90~150℃の温度に加熱される。
【0002】
高充填された複合材から複合材ミリングブロックを製造する場合、ミリングブロックの寸法決定および重合収縮のためにしばしば亀裂が生じる。さらに、ミリングブロックを製造する場合、高充填された複合材ペーストの製造中および射出中の望ましくない気泡の形成も技術的な課題である。これらの欠陥により、ミリングブロックの不良率が増加する。材料に形成された目に見えない気泡は、材料の処理中にのみ顕著になり、特に有害である。
【0003】
したがって、本発明の課題は、材料除去プロセス、好ましくはレーザーエネルギーによるミリングまたは複合材除去プロセスに適した複合材ミリングブロックの製造方法を提供することであった。さらに、規定の寸法のミリングブロックは、この方法によって経済的に生産可能であるものとする。この方法は、ミリングブロック内部の欠陥、ブローホール、クラック、気泡、外部形状の変化および/または応力の形成を確実に回避し、好ましくは防止するものとする。この方法に従って製造されたミリングブロックは、単一歯冠および小縮尺ブリッジの製造に適している。
【0004】
これらの課題は、請求項1に記載の本発明による方法によって、ならびに本発明による鋳造鋳型の使用によって、そして本発明による方法に従って得られる材料のブロックによって解決され、これらのブロックは、レーザーエネルギーによるフライス加工または材料除去プロセス用のミリングブロックとして適している。
【0005】
本発明によれば、この課題は、高充填された高粘性の複合材を、好ましくは、材料のブロックを製造するために、所望のサイズで、1つ以上の鋳型キャビティを有する金属鋳型に好ましくは充填し、規定の加熱および規定の高圧下で重合することによって解決される。
【0006】
本発明の主題は、重合歯科用複合材の少なくとも1つの材料のブロック、特に少なくとも1つの材料の三次元ブロックの製造方法であって、
(i)重合性歯科用複合材を、耐圧性鋳造鋳型に移し、
(ii)10~500MPaの範囲、好ましくは125~250MPaの範囲の圧力を、耐圧性鋳造鋳型内、特に鋳造鋳型のそれぞれの鋳型キャビティ内の重合性歯科用複合材に加え、
(iii)鋳造鋳型の少なくとも一部または重合性材料を、規定の方法で90~150℃の温度に加熱し、ここで、特に重合歯科用複合材を、熱重合し、好ましくは少なくとも1つの材料のブロックを得る、製造方法である。
【0007】
工程(iii)の後、鋳造鋳型は、a)圧力下またはb)常圧(1バール)下で冷却され得る。好ましくは、20~23℃までの冷却が使用される。次の工程では、少なくとも1つの材料のブロックが、鋳造鋳型、特に鋳型キャビティから取り除かれ得る。好ましくは、1つの材料のブロックは、鋳型キャビティごとに得られ、これは材料除去プロセスでの補綴修復物の製造に適している。
【0008】
耐圧性鋳造鋳型内の重合性歯科用複合材は、好ましくは、本発明による方法で熱間静水圧プレスされて重合される(以下ではHIPPと呼ぶ)。さらに特に好ましい実施形態によれば、耐圧性鋳造鋳型内の重合性歯科用複合材は、熱間静水圧プレスされ、特に片側熱供給により、熱指向方式で重合(HIPP)される。この場合、熱指向とは、重合性複合材における空間的に指向された重合フロントを意味すると理解される。前記重合フロントは、重合性複合材、特に、鋳造鋳型の幾何学的な鋳型キャビティ内にある重合性複合材の片側焼き戻しによって生成され得る。
【0009】
この方法で鋳型に加えられる圧力は、10~500MPa、好ましくは50~250MPa、好ましくは100~250MPa、特に好ましくは100~200MPaになり得る。本発明によれば、圧力は、好ましくは125~250MPaになり得る。鋳造鋳型への圧力は、方法の間維持され、必要であれば、設定された圧力が維持されるように再調整される。複合材、特にパスティ複合材は、規定の圧力下で、任意に方法で規定の温度で鋳造鋳型に押し込まれる。鋳造鋳型は、続いて、少なくとも1つの上部カバーで閉じられ、上部カバー付き耐圧性鋳造鋳型は、プレス鋳型と呼ばれることもある。
【0010】
好ましくは、材料の三次元ブロックは、幾何学的形状を有し、特に、材料のブロックは、規定の幾何学的三次元の形を有する。材料の三次元ブロックは、好ましくは、少なくとも10mmのエッジ長、または好ましくは14mmのエッジ長を少なくとも有する。ミリングブロックとして使用される材料のブロックは、好ましくは、直方体の形であり、ここで、立方体は、好ましくは12mm×14mmの面積ならびに17mmまたは18mmの高さ、代替的に、14mm×14mmまたは15mm×15mmの面積ならびに17mm~18mmの高さを有する。1つからすべてのエッジおよび頂点は、直線であっても、丸みを帯びていてもよい。
【0011】
同様に、本発明の主題は、0.05mm以上の一次元の範囲を有するブローホール、クラックおよび/またはキャビティを有さず、好ましくはそれらの次元が100μm以下、特に好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下である、材料の歯科用ブロックである。
【0012】
本発明の別の主題は、14mm以上の少なくとも1つの第1のエッジ長さおよび14mm以上の少なくとも1つの第2のエッジ長さおよび任意で14mm以上のさらなるエッジ長さを有する、材料のブロック、特に立方体である。
【0013】
この方法の工程(i)では、複合材は、周囲の室温(20℃)で予熱せずに、または好ましくは予熱されて、特に25~50℃に予熱されて、鋳型に移される。複合材は、好ましくは35~45℃に予熱される。
【0014】
さらに、鋳造鋳型が25~45℃に調節または予熱され、そこに予熱された複合材が次いで移されることが有利であり得る。鋳造鋳型は、好ましくは40~30℃に予熱され得る。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、方法の工程(i)、(i.1)で、25~50℃の範囲、好ましくは30~45℃の範囲、特に35~40℃プラス/マイナス5℃の範囲、好ましくは35℃プラス/マイナス3℃の範囲の温度に予熱された重合性歯科用複合材が、特に圧力下で、耐圧性鋳造鋳型の少なくとも1個の鋳型キャビティに移され、好ましくは鋳造鋳型の少なくとも2つの鋳型キャビティに移され、(i.2)で、予熱された複合材で充填された少なくとも1個の鋳型キャビティが得られるか、予熱された複合材で充填された少なくとも2つの鋳型キャビティが得られる。鋳造鋳型は、好ましくは2~100個の鋳型キャビティ、好ましくは2~10個の鋳型キャビティ、または例えば4~10個の鋳型キャビティを有し得る。
【0016】
さらに、複合材は、好ましくは圧力下で鋳型キャビティに充填され、好ましくはその後、プレスパンチによって圧力下で保持される。複合材が鋳型キャビティ内に移される圧力は、好ましくは2~10バール、特に2.5~5バールの範囲である。
【0017】
高充填された高粘性の複合材は、100重量%の全組成を基準として、60~85重量%の無機フィラー含有量を含む。
【0018】
続いて、(i.3)耐圧性鋳造鋳型の上部カバーが、予熱された複合材で充填された少なくとも1個の鋳型キャビティ上に被せられ、ここで、好ましくは少なくとも1つのプレスパンチが上部カバーに配置され、雄型部品としてのプレスパンチは、鋳造鋳型の雌型部品としての鋳型キャビティに噛み合う。
【0019】
代替的に、耐圧性鋳造鋳型の上部カバーは、好ましくは(i.1)で、複合材で充填された少なくとも1個の鋳型キャビティ上に被せられてもよく、ここで好ましくは少なくとも1つのプレスパンチが上部カバーに配置され、雄型部品としてのプレスパンチは、鋳造鋳型の雌型部品としての鋳型キャビティに噛み合う。
【0020】
さらに代替的に、耐圧性鋳造鋳型の上部カバーは、予熱された複合材で充填された少なくとも2つの鋳造鋳型上に被せられてもよく、ここで、好ましくは少なくとも2つのプレスパンチが上部カバーに配置され、雄型部品としての各プレスパンチは、鋳造鋳型の雌型部品としての1つの鋳型キャビティと噛み合う。プレスパンチと鋳型キャビティは、好ましくは鋳型キャビティのキャビティ内でプレスパンチの水平方向および/または垂直方向の動きがほとんどできないような方法で、互いに噛み合っていてもよい。プレスパンチと鋳型キャビティは、プレスパンチが鋳型キャビティ内にある複合材を圧縮できるように、特にプレスパンチが規定の圧力を複合材に再現可能に蓄積できるように設計されている。特に、適合性のあるプレスパンチと鋳型キャビティは、それぞれのプレスパンチがそれぞれの鋳型キャビティ内にある複合材を圧縮できるように、特にプレスパンチが規定の圧力を複合材に再現可能に蓄積できるように設計されている。好ましくは、下記の圧力は、プレスパンチを介して複合材に伝達される。
【0021】
周囲シーリング面が、鋳型キャビティの周りに形成され、シーリング面も、プレスパンチの周りに負の周囲として形成される。少なくとも1つの余水路が、鋳型キャビティの周囲シーリング面の外側の中央部分に設けられて、溢れ出しているまたは絞り出された複合材を受け入れる。
【0022】
方法の工程(ii)では、125~250MPaの範囲の圧力が、耐圧性鋳造鋳型内の重合性歯科用複合材に加えられる。
【0023】
特に、方法工程(ii)では、10~25トン、好ましくは12~25トン、特に好ましくは15~20トンの重量が鋳造鋳型に適用される。
【0024】
本発明によれば、耐圧性鋳造鋳型材料中の重合性歯科用複合材が、熱間静水圧プレスおよび重合されることがより好ましく、ここで重合フロントは、力のベクトル(N=kg・m・s-2)に対して実質的に垂直である。この文脈では、重合フロントが、力のベクトルに対して垂直な力のベクトルに合うように動作することが特に好ましい。したがって重合フロントの移動の方向は、加えられた圧力に対して平行である。この方法では、重合フロントが適用された力に合うように動作し、好ましくは圧力を方法の間に再調整できるように、鋳造鋳型の下部を加熱することが好ましい。
【0025】
続いて、方法工程(iii)では、鋳造鋳型の少なくとも一部および/または重合性材料は、規定の方法で110~150℃の温度に加熱される。好ましくは、鋳造鋳型の下部および/または鋳造鋳型の上部カバーは、110~150℃、好ましくは110~130℃の範囲の温度に加熱される。好ましくは、下部または上部カバーのみが一方向に加熱されて、方向付けられた重合を確実にする。好ましくは、方法(iii)では、鋳造鋳型の少なくとも一部および/または重合性材料が、規定の方法で110~150℃の温度に0.1~60分間加熱される。
【0026】
この文脈では、重合性材料を30分以内に110~150℃に加熱すること、好ましくは20分以内に110~140℃に加熱すること、より好ましくは15分以内に130℃に加熱することがより好ましい。
【0027】
代替的に、鋳造鋳型の下部および/または鋳造鋳型の上部カバーが、5~30分以内に110~150℃の範囲の温度に加熱されること、好ましくは20分以内に110~140℃に加熱されること、より好ましくは15分以内に130℃に加熱されることが好ましい。重合性歯科用材料は、熱伝導により加熱されて、重合される。
【0028】
そうすることで、鋳造鋳型の少なくとも一部、特に下部は、20分以内に90~150℃の温度に加熱され、好ましくは15分以内に90~150℃の温度に加熱され、特に好ましくは15分以内に110~140℃に加熱される。好ましくは、約10分プラス/マイナス3分以内に120~140℃プラス/マイナス5℃にする。好ましくは、下部は、加熱され、重合性複合材は、鋳造鋳型の熱伝導を介して加熱される。代替的に、上部カバーがそれに応じて加熱されても、上部カバーと下部とが一緒に加熱されてもよい。しかしながら、熱間静水圧プレスは、好ましくは、圧力が、鋳造鋳型内の加熱された成分に対向する側からかかるように、すなわち、圧力が一方の側から鋳造鋳型に加えられ、鋳造鋳型が反対側から加熱されるように行われる。
【0029】
本発明による方法では、全材料のブロックを基準として、15・10-6体積%~14・10-4体積%の欠陥体積を有する、材料のブロック、特に、重合複合材の材料の幾何学的なブロックが、好ましくは工程(iv)で好ましくは得られる。
【0030】
本発明による方法では、複合材は、(i)70~85重量%の、少なくとも1種の歯科用ガラス、ならびに任意で少なくとも1種の非晶質金属酸化物、例えば、特に非晶質二酸化ケイ素および/または二酸化ジルコニウムを含む無機充填剤成分、(ii)10~30重量%の、少なくとも2種の異なるウレタン(メタ)アクリレートの混合物、(iii)0.01~5重量%の、ウレタン(メタ)アクリレートではない、少なくとも1種の二官能性、三官能性、四官能性または多官能性モノマー、(iv)0.01~10重量%の、少なくとも1種の開始剤、開始剤系、ならびに任意で少なくとも1種の安定剤、および任意で少なくとも1種の顔料を含む、重合性歯科用複合材として使用することができ、ここで、複合材の合計組成は100重量%になる。
【0031】
本発明の主題は、(i)70~85重量%の少なくとも1種の歯科用ガラス、ならびに任意で少なくとも1種の非晶質金属酸化物を含む無機充填剤成分、(ii)10~30重量%の少なくとも2種の異なるウレタン(メタ)アクリレートの混合物、(iii)0.01~5重量%の、ウレタン(メタ)アクリレートではない、少なくとも1種の二官能性、三官能性、四官能性または多官能性モノマー、および(iv)0.01~10重量%の、少なくとも1種の開始剤、開始剤系、ならびに任意で安定剤、および任意で顔料を含む、重合性歯科用複合材であって、複合材の合計組成が100重量%になる重合性歯科用複合材、ならびに230MPa以上の曲げ強度および15~20GPaの弾性率を有する重合複合材である。
【0032】
特に好ましい実施形態によれば、歯科用複合材は、(ii)10~30重量%の、二価の脂環式基を有する少なくとも1種の二官能性ウレタン(メタ)アクリレートおよび二価のアルキレン基を有する二官能性ウレタン(メタ)アクリレートを含む少なくとも2種の異なるウレタン(メタ)アクリレートの混合物、例えば、UDMAならびに任意で少なくとも1種の少なくとも四官能性の樹枝状ウレタン(メタ)アクリレートを含む。
【0033】
二価の脂環式基を有する特に好ましい二官能性ウレタン(メタ)アクリレートは、5~20個のC原子、ならびに任意で2~5個のO原子、および任意でさらに1~3個のN原子をアルキレン残基中に有する二官能性2’-アザ-アルキレンテトラヒドロジシクロペンタジエンを含む。ビス(4’,7’-ジオキサ-3’,8’-ジオキソ-2’-アザ-デシル-9’-エン)テトラヒドロジシクロペンタジエン、ビス-(4’,7’-ジオキサ-3’,8’-ジオキソ-2’-アザ-9’-メチル-デシル-9’-エン)テトラヒドロジシクロペンタジエンおよび/またはそれらの混合物ならびに異性体の混合物が特に好ましい。異性体は、おそらくシス異性体またはトランス異性体として存在する、3,8-/3,9-/4,8-/3,10-/4,10異性体を含み得る。ビス-(4’,7’-ジオキサ-3’,8’-ジオキソ-2’-アザ-デシル-9’-エン)テトラヒドロジシクロペンタジエンの一般化された構造は、以下に例示的に示される:
【化1】
【0034】
好ましくは、成分(iii)の含有量は、0.15~5重量%、特に好ましくは1.0~2重量%のポリエーテルのジメタクリル酸エステル、例えば、好ましくは、ジメタクリレートポリエチレングリコール、ジメタクリレートポリプロピレングリコールである。ジメタクリレートトリエチレングリコール(TEGDMA)およびジエチレングリコールジメタクリレート(DEGMA)が特に好ましい。
【0035】
本発明の別の主題は、好ましくは、230MPa以上の曲げ強度および15~20GPaの弾性率を有する、本発明による方法により得られる、重合歯科用複合材の材料のブロック、特に材料の幾何学的ブロックである。ISO6872は、試験棒の寸法による測定のために選択される。材料のブロックは、ミリングの手段による材料除去処理のプロセスおよび/またはレーザーエネルギーの手段による材料除去プロセスでの使用に適している。
【0036】
重合複合材の本発明による材料のブロックは、好ましくは15・10-6体積%~14・10-4体積%、好ましくは20・10-6体積%~10・10-5体積%の欠陥体積を有する。
【0037】
好ましくは、材料のブロックは、以下の寸法:10mm以上15mm以下の高さおよび3mm以上7mm以下の半径、代替的に、10mm以上20mm以下の高さおよび5mm以上7mm以下の半径を有する円筒であり、材料のブロックの直方体の寸法は、好ましくは、a、bおよびcについて4mm以上、特に10mm以上20mm以下、特にaについて18mm以下、bについて14mm以下、およびcについて20mm以下、特にcについて18mm以下である。
【0038】
本発明による材料のブロックは、複合材で作られた材料の単色ブロック、特に材料の均質な単色ブロックである。
【0039】
さらに、重合複合材で作られた材料のブロックは、クラウン、インレー、オンレー、上部構造、人工歯、補綴歯、歯科用ブリッジ、デンタルバー、スペーサ、ベニアを含む歯科補綴修復物の、ミリングブランクの、歯科補綴物の、外科用補綴物の一部の、インプラントの、および歯科矯正器具の製造に使用され得る。重合複合材は、さらに、直接接着性歯科修復物、歯列矯正器具および器械の製造のための複合材として使用され得る。
【0040】
本発明の別の主題は、複数の部品で形成され、かつa)少なくとも1個の鋳型キャビティ、好ましくは少なくとも2~20個の鋳型キャビティ、有利には2~6個の鋳型キャビティを有する少なくとも1つの一体型中央部を有する少なくとも1つの下部、ならびに少なくとも1つの上部カバーを含む耐圧性鋳造鋳型が使用される方法である。代替的に、複数の部品の鋳造鋳型は、b)少なくとも1つの下部、特に平らな下部、少なくとも1個の鋳型キャビティ、好ましくは少なくとも2個の鋳型キャビティを有する少なくとも1つの中央部、ならびに少なくとも1つの上部カバーを有し得る。下部および中央部は、一体に形成されていても、複数の部品で形成されていてもよい。一体にとは、少なくとも1個の鋳型キャビティ、好ましくは少なくとも2個~場合により50個の鋳型キャビティを有する下部および中央部が、1つの部分で一体型のコンポーネントから製造されることを意味すると理解される。
【0041】
耐圧鋳造鋳型、下部、少なくとも1個の鋳型キャビティ、好ましくは少なくとも2個の鋳型キャビティを有する中央部、および/または上部カバーは、それぞれ独立して、金属、金属合金、または高性能ポリマーなどの耐熱性プラスチック、または耐熱性ハイブリッド材料で作られてもよい。好ましくは、鋳造鋳型のすべてのコンポーネントは、同じ材料で作られている。好ましくは、それらは鋼で作られており、有利な鋼は、クロムおよび/またはモリブデン含有鋼、例えば、1.2343(C0.37/Si1.0/Cr5.3/Mo1.3/V0.4)、好ましくは硬化した1.2312(C0.4/Mn1.4/Cr1.9/Mo0.2/S0.05)または1.4571(Cr17/Mo2/No11.5/Ti0.7)であり、ステンレス鋼、好ましくはステンレス鋼の表面は、電解研磨されていない(詳細は重量%である)。鋳造鋳型内の鋳型キャビティの表面は、好ましくは規定の表面粗さが与えられている。セラミック、炭化ケイ素および耐圧ハイブリッド材料は、さらなる材料と見なされる。
【0042】
同様に本発明の主題は、特に本発明による方法で使用するための耐圧性鋳造鋳型であり、ここで、耐圧性鋳造鋳型は、複数の部品で形成され、かつ少なくとも1つの下部、特に平らな下部、少なくとも1個の鋳型キャビティ、好ましくは少なくとも2個の鋳型キャビティを有する少なくとも1つの中央部、ならびに少なくとも1つの上部カバーを含む。耐圧性鋳造鋳型のすべてのコンポーネントは、好ましくはステンレス鋼で作られている。
【0043】
鋳造鋳型内の少なくとも1個の鋳型キャビティは、好ましくは幾何学的形状を有し、特に、鋳型キャビティは、規定の幾何学的三次元の形を有する。好ましくは、幾何学的形状は、アンダーカットなしで形成される。さらに、鋳型キャビティの幾何学的形状は、ドラフト、特に0.5°~2°、好ましくは1°~2°の開き角を有するドラフトを有する。好ましくは、少なくとも1個の鋳型キャビティは、実質的に長方形の円錐状に先細になっている。
【0044】
少なくとも1個の鋳型キャビティの内側表面は、好ましくは、規定の表面粗さ、特にN3~N9、好ましくはN4~N8、好ましくはN4~N7、特に好ましくはN6での平均粗さ値Rを有する。Rは、好ましくは1.0μm未満である。
【0045】
有利には、鋳型キャビティ2は、重合プロセス後の材料の幾何学的ブロック3の離型を容易にするための約1°~2°の小さなドラフトを有する。さらに、鋳型キャビティ2の内側表面11が極端に滑らかではないが、規定の-低い-表面粗さ(約R7またはR6以下)を有する場合、離型に有利であることが判明した。しかしながら、高すぎる粗さが離型を干渉/防止する。
【0046】
以下、図1a~1c、2、3および4において、本発明を限定することなく、特定の実施形態が例示される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1は耐圧性鋳造鋳型を示す。
図2図2は一体型プレスパンチを有する耐圧性鋳造鋳型を示す。
図3図3はホットプレスを示す。
図4図4は非破壊X線CT法によるデータを示す。
【0048】
耐圧性鋳造鋳型100は、3つの単一コンポーネントを含み得るか、3つのコンポーネント、すなわち、平らな下部0(図1を参照)、適切な鋳造鋳型を有する中央部1(図1a、1bおよび1cを参照)ならびに一体型プレスパンチ8(図2を参照)から構成され得る。コンポーネントは、例えばガイドボルト4および適切なブラインドホール5などの適切な構造要素を介して、ただ1つの位置で互いに対して配置される。図1bは、内側表面11だけでなく、鋳型キャビティ2および余水路9でのシーリング面10も示すことにより、鋳型キャビティの一般化された断面を示す。
【0049】
プロセスの手順:まず、中央部1が、下部プレート0の上に置かれ、設けられたブラインドホール5でガイドボルト4を介して互いに接続される。続いて、鋳型キャビティ2が、約35℃の温度を有する規定量の予熱された非重合複合材で、好ましくは無気泡充填される。利用可能な鋳型キャビティ2を充填した後、プレスパンチ8が鋳型キャビティ2の上に正確に配向されるように、上部カバー7が被せられる。プレスパンチ8および鋳造鋳型2の寸法が正確に調整されるので、プレスパンチと鋳造鋳型との互いに対して正確な位置は、歯科用に適した高品質な材料のブロックの製造にとって重要である。この正確な調整により、鋳造鋳型とプレスパンチとの間に残っているギャップは、可能な限り小さく保たれ、規定のすき間は、好ましくは51/100mm以下、好ましくは31/100mm以下である。
【0050】
耐圧性鋳造鋳型100は、ここでホットプレス12(図3を参照)に移され、耐圧性鋳造鋳型100への圧力は、約5~10秒以内に約15~20トンに上げられる。フィットの精度を改善し、鋳造鋳型のより良いシーリングを可能にするわずかに円錐形のプレスパンチ8が、余剰材料を鋳造鋳型から余水路9に絞り出し、次に圧力を増加させて適切なシーリング面(プレスパンチでの6シーリング面、鋳造鋳型での10シーリング面)によって鋳造鋳型を密閉する。鋳造鋳型2、プレスパンチ8およびシーリング面6/10の選択された形状により、プレスパンチ8は、複合材に圧力をかけることができ、それにより重合収縮を補償し、好ましくは回避するために最小化することができる。同時に、おそらく複合材にある気泡が、等方的にグラウトされ得る。プレス圧力を与えた後、温度が上昇し、重合が開始される。プレス圧力は、維持され、全熱重合プロセス中に再調整される。したがって、本発明による方法では、まず、プレス圧力が調整され、任意に、温度が規定の方法で90~150℃に加熱され、その際、プレス圧力は、好ましくは、全加熱時間にわたって再調整される。好ましくは、プレス圧力は、冷却中も維持される。
【0051】
鋳型100全体は、有利には、高いプレス力を受けるために前述の鋼で作られており、中央部1は、鋳型キャビティが幾何学的に変形しないようにさらに硬化される。
【0052】
図3によるホットプレス12のプレスプレート13を閉じた後、鋳型100が、熱伝導の手段によって約10分以内に120℃にゆっくり加熱されて、重合反応が開始される。これにより、耐圧性鋳造鋳型100は、トップカバー7で加えられた力により、125~250MPaの圧力14下で維持される。この文脈では、下部から上部カバー7に向けて、指示された方法で重合を制御するために、たった1つのプレスプレート13、ここでは下部プレート0を加熱することが好ましい。この手段によって、上部カバー7で対向するプレスパンチが、最後まで押され、重合収縮が補償され得る。同様に、上部カバープレート7を加熱し、下部プレート0にさらに圧力14を加えることが可能である。
【0053】
重合プロセスの終了後、応力を回避するために、鋳型は、指示された方法で10分以内に約40℃に冷却され、鋳型は、分解され、重合ブロックが取り除かれる。冷却は、好ましくは、応力を避けるために、上部カバーおよび下部を介して両側から対称的に行われる。
【0054】
材料ブロックは、X線CTによって目に見えない気泡について確認され得る。キャビティは、図4に示される図における規定の厚さの規定のインクリメンタルレイヤーの欠陥体積として検出され得る。本発明によれば、15・10-6体積%~14・10-4体積%以下の欠陥体積を有する重合複合材の材料のブロックが得られる。サンプルは、非破壊X線CT法を使用して分析される。
【符号の説明】
【0055】
0 下部、特に下部プレート
1 中央部
2 鋳型キャビティ
3 材料のブロック
4 ガイドボルト
5 ブラインドホール
6 プレスパンチのシーリング面
7 上部カバー、特に上部カバープレート
8 プレスパンチ
9 余水路
10 鋳型キャビティでのシーリング面
11 内側表面
12 ホットプレス
13 プレスプレート
14 圧力
15 温度制御
100 耐圧性鋳造鋳型
図1a
図1b
図1c
図1d
図2
図3
図4