(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】活性化剤投入方式の調節によるポリアマイド製造方法及びそれにより製造されたポリアマイド
(51)【国際特許分類】
C08G 69/18 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
C08G69/18
(21)【出願番号】P 2020526274
(86)(22)【出願日】2018-10-29
(86)【国際出願番号】 KR2018012938
(87)【国際公開番号】W WO2019098569
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-05-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-20
(31)【優先権主張番号】10-2017-0151495
(32)【優先日】2017-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515358285
【氏名又は名称】ハンファ ケミカル コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA CHEMICAL CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヘ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドゥ ギョン
(72)【発明者】
【氏名】ト、スン フェ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジン ソ
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ギョン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム、デ ハク
(72)【発明者】
【氏名】イム、ギョン ウォン
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】藤原 浩子
【審判官】大畑 通隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-17476(JP,A)
【文献】特表2010-514877(JP,A)
【文献】特表2010-514876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/00- 69/50
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰イオン重合反応による活性化剤投入方式の調節によるポリアマイド製造方法であって、
ラクタム、前記ラクタム全体100重量部に対して、開始剤としてアルカリ金属0.01
~20重量部、分子量調節剤0.3
~10重量部、活性化剤として二酸化炭素(CO2)0.01
~1.0重量部で含み、
前記活性化剤を、間隔をおいて、投入量を調節して少なくとも2回投入し、
前記活性化剤の投入間隔は1
~10分であ
り、
前記活性化剤は重合反応溶液中に直接注入される
ことを特徴とする活性化剤投入方式の調節によるポリアマイド製造方法。
【請求項2】
前記活性化剤の投入速度は反応器体積1m3に対して0.001
~10L/min範囲以内である
請求項1に記載の活性化剤投入方式の調節によるポリアマイド製造方法。
【請求項3】
前記活性化剤は分散管を用いた噴射方式で注入する
請求項1に記載の活性化剤投入方式の調節によるポリアマイド製造方法。
【請求項4】
前記アルカリ金属は金属水素化物(metal hydride)、金属水酸化物(metal hydroxide)及び金属アルコキシド(metal alkoxide)からなる群より選択された少なくとも1種以上を含む
請求項1に記載の活性化剤投入方式の調節によるポリアマイド製造方法。
【請求項5】
前記重合反応は0.5
~120分範囲内で行われる
請求項1に記載の活性化剤投入方式の調節によるポリアマイド製造方法。
【請求項6】
前記重合反応で前記ラクタムは95%以上の転化率を持つ
請求項1に記載の活性化剤投入方式の調節によるポリアマイド製造方法。
【請求項7】
前記重合温度は180
~300℃範囲で行われる
請求項1に記載の活性化剤投入方式の調節によるポリアマイド製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、活性化剤投入方式の調節によるポリアマイド製造方法及びそれにより製造されたポリアマイドに関し、さらに詳しくは、陰イオン重合で発生するゲル化(gelation)現象を防止するように活性化剤の投入方式を調節して重合転化率及び分子量分布度(PDI)を向上させることができる活性化剤投入方式の調節によるポリアマイド製造方法及びそれにより製造されたポリアマイドに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂はアミド(-NHCO-)結合によって結合された直線型高分子であって、強靭で耐摩擦、耐摩耗、耐油、耐溶劑性などの物性に優れ溶融成形が容易で、衣服素材用、産業資材用繊維、エンジニアリングプラスチックなどとして広く用いられている。ポリアミドは分子構造によって脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、脂肪族環ポリアミドに分類されることができ、そのうち脂肪族ポリアミドの場合はナイロン(Nylon)、芳香族ポリアミドの場合はアラミド(Aramid)と通称することもある。
【0003】
このようなポリアミドは、様々な重合方法で製造され、ナイロン6のようにラクタムの開環重合によるもの、ナイロン6,6、ナイロン6,10及びナイロン4,6のようにジアミンと二塩基酸の重縮合によるもの、ナイロン11及びナイロン12のようにアミノカルボン酸の重縮合によるものに大きく分けられる。その他、カプロラクタムと6,10-ナイロン塩(ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸塩)との混成縮合物などの所謂共重合ナイロンが工業的に生産されており、また、分子中に側鎖、水酸基などの作用基、芳香環とヘテロ環を含む各種のポリアミドが研究されている。
【0004】
ラクタム、例えばカプロラクタムは陰イオン重合され得る。この方法は、一般に触媒、及び/又は開始剤(活性剤とも呼ばれる)を使用する(活性化された陰イオン重合)。これまで主に使用される開始剤又は活性剤はジイソシアネート又はそれらの誘導体を含む。
【0005】
特許文献1には、ビウレット基(biuret group)を含み非芳香族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートを活性剤として使用してポリアマイドを製造するラクタムの活性化された陰イオン重合が記述されている。
【0006】
特許文献2には、平均3.5個を超過するNCO作用基を有するポリイソシアヌレートを成分Aとして含む組成物、及び/又は、前述の組成物を用いて表面コーティング組成物を製造する方法が開示されている。
【0007】
特許文献3はキャッピングされていないポリイソシアネートを使用し(よって、反応性を顕著に減少させる)、その実施例における活性剤濃度は非常に低い(1/200~1/50モル)。重合は、この米国特許で用いられた濃度では3分超を要する。
【0008】
特許文献4は多重作用性活性剤の前駆体としてゴム(すなわち、弾性重合体)を使用し、したがって、その結果として生成されたPAは最大1.12GPaで硬質ではない。前記活性剤は高いMwを有し、ここでは、多量の活性剤が必要である(20%以上)。二官能性活性剤と多官能性活性剤の混合物が使用され、よって、生成されたポリアマイドは架橋された物質ではない。
【0009】
また、特許文献5では、押出機によるラクタム陰イオン重合技術として一定の吐出量(output)及び均一な粘度と物性を得るために押出機本体(body)と押出機ダイ(die)の間に定量ポンプ(metering pump)を設置した方法で、粘度の不均一性を機械的に解決しようとしたが根本的な解決策ではない。
【0010】
特許文献6では、熱分解によって粘度が不安定な問題と構造的に不規則な分岐構造(disorderly branching structure)の形成を指摘しているが、合成した重合体の分解(decomposition)を防ぐために、より酸性を持つ添加剤で問題の解決を試みているのみで、不均一な分岐構造の解決に対する言及は皆無である。ちなみにポリアマイド陰イオン重合時に発生する分岐副反応に関しては、非特許文献1~2で詳細に言及している。
【0011】
特に、特許文献7では、より均一な製品を得るために触媒と開始剤(反応促進剤)を同時に含有する溶液液体システム(solution liquid system)を導入している。ここでは、溶液システムを導入して一定の品質を有する均一な製品を得て、再現性の高い結果を得たと述べているが、反応押出方法に適用するには溶媒除去の問題などにより効率的ではない問題点がある。
【0012】
さらに、従来の陰イオン重合は活性化剤の投入過程で小さな分子サイズによって反応速度は速いが一度に過量を投入する場合にはゲル化現象が発生する問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】US4754000号(Bayer AG)
【文献】EP1091991号(BASF AG)
【文献】US3423372号
【文献】EP0156129号
【文献】米国特許第4067861号(1978年)
【文献】米国特許第3878173号(1975年)
【文献】米国特許第5,747,634号(1998年)
【文献】US6713596B1
【文献】大韓民国登録特許第10-1533891号
【文献】大韓民国登録特許第10-1349063号
【文献】大韓民国登録特許第10-0322263号
【非特許文献】
【0014】
【文献】M. P. Stevens、‘Polymer Chemistry’、2nd Ed.、Oxford University Press、p429(1990)
【文献】G. Odian、‘Principles of Polymerization’、2nd Ed.、John Wiley&Sons、p541(1981)
【文献】METHOD FOR ANIONIC POLYMERIZATION OF LACTAMS(Atofina)J.Applied Polymer Science、2003、90、344-351、IN-situ Formation and Compounding of Polyamide 12 by Reactive Extrusion
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本願発明は、上記の従来技術の問題点と過去から求められてきた技術的課題を解決するのを目的とする。
【0016】
本願発明の目的は、陰イオン重合で発生するゲル化(gelation)現象を防止するように活性化剤の投入方式を調節して重合転化率及び分子量分布度(PDI)を向上させることができる活性化剤投入方式の調節によるポリアマイド製造方法及びそれにより製造されたポリアマイドを提供することにある。
【0017】
本願発明の他の目的は、副産物が発生せず触媒として溶媒を使用しない環境に優しい工程方法で従来の重合方法に比べて低温かつ短い重合反応時間内に高い転化率を持って均一な分子量の高分子重合が可能な活性化剤投入方式の調節によるポリアマイド製造方法及びそれにより製造されたポリアマイドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
このような目的を達成するための本願発明による活性化剤投入方式の調節によるポリアマイド製造方法は、陰イオン重合反応による活性化剤投入方式の調節によるポリアマイド製造方法で、ラクタム、前記ラクタム全体100重量部に対して、開始剤としてアルカリ金属0.01ないし20重量部、分子量調節剤0.3ないし10重量部、活性化剤0.002ないし7.0重量部で含み、前記活性化剤を少なくとも2回以上の間隔に投入量を調節して投入する方式であり得る。
【0019】
本発明の好ましい一例で、前記活性化剤の投入間隔は1ないし10分以内であり得る。
【0020】
本発明の好ましい一例で、前記活性化剤の1回投入量は0.002ないし7.0重量部範囲以内であり得る。
【0021】
本発明の好ましい一例で、前記活性化剤は二酸化炭素(CO2)、ベンゾイルクロリド(benzoylchloride)、N-アセチルカプロラクタム(N-acetyl caprolactam)、N-アセチルラウロラクタム(N-acetyl laurolactam)、オクタデシルイソシアネート(octadecyl isocyanate(SIC))、トルエンジイソシアネート(toluene diisocyanate(TDI))、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate(HDI))及びそれらの混合物からなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0022】
本発明の好ましい一例で、前記活性化剤はスパージャー(Sparger)を用いた噴射方式で注入され得る。
【0023】
本発明の好ましい一例で、前記活性化剤は重合体内部で注入される方式であり得る。
【0024】
本発明の他の好ましい例で、前記活性化剤は重合体の上部、すなわち表面から噴射される方式で注入され得る。
【0025】
本発明の好ましい一例で、前記活性化剤の投入速度は反応器体積1m3に対して0.001ないし10L/min以内であり得る。
【0026】
本発明の好ましい一例で、前記アルカリ金属は金属水素化物(metal hydride)、金属水酸化物(metal hydroxide)及び金属アルコキシド(metal alkoxide)からなる群より選択された少なくとも1種以上を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0027】
本発明の好ましい一例で、前記重合反応は0.5ないし120分範囲内で行われ得る。ここで、前記重合反応時間は特に制限されず、投入される化合物の重量又は反応器のサイズ及び種類によって適切に調節され得ることは無論である。
【0028】
本発明の好ましい一例で、前記重合反応で前記ラクタムは95%以上の転化率を持つことができる。
【0029】
本発明の好ましい一例で、前記重合温度は180ないし300℃範囲で行われ得る。
【0030】
一方、本発明は、上記の方法で製造されたポリアマイドを提供する。
【0031】
本発明の好ましい一例で、前記ポリアマイドは3.0以下の分子量分布範囲を持つことができる。
【0032】
本発明の好ましい一例で、前記ポリアマイドの重量平均分子量(Mw)は20,000ないし100,000以内の範囲を持つことができる。
【0033】
本発明の好ましい一例で、前記ポリアマイドは線形、分枝型、超分枝型(hyperbranched)又は樹枝状(dendritic)構造であり得る。
【0034】
なお、本発明は、前記ポリアマイドを含んで製造される車両用素材、電子機器用素材、産業用パイプ素材、建築土木用素材、3Dプリンタ用素材、繊維用素材、被服素材、工作機械用素材、医療用素材、航空用素材、太陽光素材、電池用素材、スポーツ用素材、家電用素材、家庭用素材及び化粧品用素材からなる群より選択される部品素材を提供する。
【0035】
具体的な例で、前記部品素材を含む製品は車両用エアダクト、プラスチック/ゴム化合物、接着剤、ライト、高分子光学繊維、燃料フィルタキャップ、ラインシステム、電子機器のケーブル、反射体、ケーブルのシース、光学繊維、電線保護管、コントロールユニット、ライト、パイプ用管、ライナー、パイプコーティング剤、油田探査ホース、3Dプリンタ、マルチフィラメント、スプレーホース、バルブ、ダクト、パルプ、ギア、医療用カテーテル、航空機用難燃材、太陽電池保護板、化粧料、高硬度フィルム、スキーブーツ、ヘッドセット、メガネフレーム、歯ブラシ、水差し又はアウトソールであり得るが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0036】
以上、説明した通り、本発明は、陰イオン重合で発生するゲル化(gelation)現象を防止するように活性化剤の投入方式を調節して重合転化率及び分子量分布度(PDI)を向上させることができる活性化剤投入方式の調節によるポリアマイド製造方法及びそれにより製造されたポリアマイドを製造できる。
【0037】
本発明は、また、副産物が発生せず触媒として溶媒を使用しない環境に優しい工程方法で従来の重合方法に比べて低温かつ短い重合反応時間内に高い転化率を持って均一な分子量の高分子重合が可能な効果がある。
【0038】
本発明は、また、重合時間が短くバルク重合が可能で連続工程によって生産性を大きく向上させて製造工程の効率及び製造コストを大幅に低減させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明による活性化剤投入方式の調節によるポリアマイド製造方法の活性化剤投入方式を示す構成図である。
【
図2】本発明による活性化剤投入方式の調節によるポリアマイド製造方法の活性化剤投入方式を示す構成図である。
【
図3】本発明による活性化剤投入方式の調節によるポリアマイド製造方法の活性化剤投入方式を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
後述する本発明に対する説明は、本発明が実施され得る特定の実施例を例示として参照する。これらの実施例は当業者が本発明を十分に実施できるように詳細に説明される。本発明の様々な実施例は、互いに異なるが相互排他的である必要はないことが理解されるべきである。例えば、本明細書に記載される特定の形状、構造及び特性は一実施例に関連して本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の実施例として具現され得る。
【0041】
したがって、後述する詳細な説明は限定的な意味として取ろうとするものでなく、本発明の範囲は、適切に説明された場合、その請求項らが主張するものと均等な全ての範囲とともに添付された請求項によってのみ限定される。
【0042】
また、本明細書で特に言及がない限り、“置換”ないし“置換された”は、本発明の作用基のうち1つ以上の水素原子がハロゲン原子(-F、-Cl、-Br又は-I)、ハイドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボキシル基、エステル基、ケトン基、置換又は非置換されたアルキル基、置換又は非置換された脂環族有機基、置換又は非置換されたアリール基、置換又は非置換されたアルケニル基、置換又は非置換されたアルキニル基、置換又は非置換されたヘテロアリール基、及び置換又は非置換されたヘテロ環基からなる群より選択される1種以上の置換基に置換されたことを意味し、前記置換基らは互いに連結されて環を形成することもできる。
【0043】
本発明で、前記“置換”は特に言及がない限り、水素原子がハロゲン原子、炭素数1ないし20の炭化水素基、炭素数1ないし20のアルコキシ基、炭素数6ないし20のアリールオキシ基などの置換基に置換されたことを意味する。
【0044】
また、前記“炭化水素基”は特に言及がない限り、線形、分枝型又は環状の飽和又は不飽和炭化水素基を意味し、前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などは線形、分枝型又は環状であり得る。
【0045】
また、本明細書で特に言及がない限り、“アルキル基”とは、C1ないしC30アルキル基を意味し、“アリール基”とは、C6ないしC30アリール基を意味する。本明細書で、“ヘテロ環基”とは、O、S、N、P、Si及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるヘテロ原子を1つの環内に1つないし3つ含有する基を意味し、例えば、ピリジン、チオフェン、ピラジンなどを意味するが、これに制限されない。
【0046】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できるようにするために、本発明の好ましい実施例に関して詳細に説明する。
【0047】
上述のように、従来の陰イオン重合では陰イオン重合で活性化剤の投入過程で発生するゲル化現象が発生する問題点があり、さらには重合転化率及び分子量分布度(PDI)を向上させるには限界があった。
【0048】
よって、本発明では、陰イオン重合反応による活性化剤投入方式の調節によるポリアマイド製造方法で、ラクタム、前記ラクタム全体100重量部に対して、開始剤としてアルカリ金属0.01ないし20重量部、分子量調節剤0.3ないし10重量部、活性化剤0.002ないし7.0重量部で含み、前記活性化剤を少なくとも2回以上の所定の時間間隔に投入量を調節して投入することによって、前述した問題点に対する解決案を模索した。
【0049】
具体的には、本発明によれば、前記活性化剤を少なくとも2回以上1分ないし10分の間隔で投入でき、好ましくは前記活性化剤を少なくとも2回以上3分ないし7分の間隔で投入できる。
【0050】
これに関して、
図1ないし
図3には本発明によるポリアマイド12製造のための重合体に前記活性化剤として二酸化炭素を投入する状態を示す図面が模式的に図示されている。
【0051】
図1に示したように、前記重合体の表面に活性化剤として前記二酸化炭素を2回以上5分の間隔でワンライン(one-line)注入することによってゲル化現象を防止して重合転化率及び分子量分布度(PDI:polydispersity index)を向上させることができる。
【0052】
また、本発明によれば、
図2に示したように、活性化剤として前記二酸化炭素を2回以上5分の間隔でスパージャー(Sparger)方式で噴射して注入できる。
【0053】
場合によっては、
図3に示したように、活性化剤として前記二酸化炭素を2回以上5分の間隔で前記重合体内部に直接ワンライン(one-line)方式で注入できる。
【0054】
この時、本発明によれば、前記活性化剤の投入回数が2回未満の場合にはPDIが増加し得るので2回以上が好ましい。
【0055】
また、本発明によれば、前記活性化剤の投入速度は反応器体積1m3に対して0.001ないし10L/min範囲以内であり得る。
【0056】
したがって、前記活性化剤が重合体によって効率的に噴射され重合効率を向上させてゲル化現象を根本的に防止できる。
【0057】
具体的には、以下、本発明による陰イオン開環重合によるポリアマイド製造に含まれる組成物を説明する。
【0058】
まず、本発明による前記ラクタムはポリアマイドを製造するためのモノマーとして好ましく用いられることができる、ただし、これに限定されず、例えば、カプロラクタム、ピペリドン、ピロリドン、エナントールラクタム及びカプリルラクタムを含むことができ、場合によっては、プロピオラクタム(propiolactam)、2-ピロリドン(2-pyrrolidone)、バレロラクタム(valerolactam)、カプロラクタム(caprolactam)、ヘプタラクタム(heptanolactam)、オクタノラクタム(octanolactam)、ノナノラクタム(nonanolactam)、デカノラクタム(decanolactam)、ウンデカンラクタム(undecanolactam)及びドデカノラクタム(dodecanolactam)を含むことができる。
【0059】
本発明による前記アルカリ金属触媒は、ポリアマイドを製造するための開始剤であって前記ラクタム陰イオン形成を許容する化合物として、金属水素化物(metal hydride)、金属水酸化物(metal hydroxide)及び金属アルコキシド(metal alkoxide)からなる群より選択された少なくとも1種以上を含むことができる。
【0060】
具体的な例で、前記金属水素化物は水素化ナトリウム(sodium hydride)及び水素化カリウム(potassium hydride)を含むことができ、前記金属水酸化物は水酸化ナトリウム(sodium hydroxide)及び水酸化カリウム(potassium hydroxide)を含むことができ、前記金属アルコキシドはカリウムtert-ブトキシド(potassium tert-butoxide)及びアルミニウムイソプロポキシド(aluminum isopropoxide)を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0061】
例えば、 前記金属アルコキシドはナトリウムカプロラクタメート又はカリウムカプロラクタメート、アルカリ土類金属カプロラクタメート、例えば、マグネシウムブロマイドカプロラクタメート、マグネシウムクロライドカプロラクタメート、又はマグネシウムビスカプロラクタメート、アルカリ金属、例えば、ナトリウム又はカリウム、アルカリ金属塩基、例えば、ナトリウム塩基、例えば、水素化ナトリウム、ナトリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムメタノラート、ナトリウムエタノラート、ナトリウムプロパンオラート、又はナトリウムブタノラート、又は、例えば、カリウム塩基、例えば、水素化カリウム、カリウム、水酸化カリウム、カリウムメタノラート、カリウムエタノラート、カリウムプロパンオラート、カリウムブタノラート、又はそれらの混合物からなる群、好ましくはナトリウムカプロラクタメート、カリウムカプロラクタメート、マグネシウムブロマイドカプロラクタメート、マグネシウムクロライドカプロラクタメート、マグネシウムビスカプロラクタメート、水素化ナトリウム、ナトリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムエタノラート、ナトリウムメタノラート、ナトリウムプロパンオラート、ナトリウムブタノラート、水素化カリウム、カリウム、水酸化カリウム、カリウムメタノラート、カリウムエタノラート、カリウムプロパンオラート、カリウムブタノラート、又はそれらの混合物からなる群より選択された1種以上を含むことができる。また、水素化ナトリウム、ナトリウム、及びナトリウムカプロラクタメート、及びそれらの混合物からなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0062】
このような金属触媒は固体の形態又は溶液として用いられることができ、触媒を固体の形態で用いることが好ましい。触媒は好ましくは触媒が溶解され得るラウロラクタム溶融物に添加される。これらの触媒は特に迅速な反応をもたらし、これにより、本発明によるポリアマイドのための製造工程の効率を増加させることができる。
【0063】
ここで、本発明によれば、前記アルカリ金属触媒は前記ラクタム全体100重量部に対して、0.01ないし20重量部で含むことができる。好ましくは0.03ないし10重量部で含むことができ、さらに好ましくは0.05ないし5.0重量部で含むことができる。
【0064】
この時、前記アルカリ金属触媒が0.01重量部未満で添加された場合は未重合又は反応速度低下の問題が生じる場合があり、前記アルカリ金属触媒が20重量部を超過する場合は低分子量の高分子生成の問題が生じる場合があるので上記の範囲が良い。
【0065】
次に、本発明による前記分子量調節剤は、好ましくは、エチレン-ビス-ステアロアマイド(EBS:ethylene-bis-stearamide)であり得るが、これに限定されず、アミン(amine)化合物、ウレア(urea)化合物及びジウレア(di-urea)化合物からなる群より選択された少なくとも1種以上を含むことができる。
【0066】
ここで、本発明によれば、前記分子量調節剤は前記ラクタム全体100重量部に対して、0.3ないし10重量部で含むことができる。好ましくは0.4ないし7.0重量部で含むことができ、さらに好ましくは0.5ないし3.0重量部で含むことができる。
【0067】
この時、前記分子量調節剤が0.3重量部未満で添加された場合はゲル化の問題が生じる場合があり、前記分子量調節剤が10重量部を超過する場合は低分子量の高分子が生成される問題が生じる場合があるので上記の範囲が良い。
【0068】
最後に、本発明によれば、前記活性化剤は、好ましくは二酸化炭素(CO2)であり得るが、これに限定されず、例えば、ベンゾイルクロリド(benzoyl chloride)、N-アセチルカプロラクタム(N-acetyl caprolactam)、N-アセチルラウロラクタム(N-acetyl laurolactam)、オクタデシルイソシアネート(octadecyl isocyanate(SIC))、トルエンジイソシアネート(toluene diisocyanate(TDI))及びヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate(HDI))からなる群より選択された少なくとも1種以上を含むことができる。
【0069】
ここで、本発明によれば、前記活性化剤は前記ラクタム全体100重量部に対して、0.002ないし7.0重量部で含むことができる。好ましくは0.005ないし5.0重量部で含むことができ、さらに好ましくは0.01ないし1.0重量部で含むことができる。
【0070】
この時、前記活性化剤が0.002重量部未満で添加された場合には未重合による低分子量の高分子が製造されるか、反応速度が低下する問題が生じる場合があり、前記活性化剤が7.0重量部を超過する場合にはゲル化(gelation)や低分子量の高分子が製造される問題が生じる場合があるので上記の範囲良い。
【0071】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例(example)を提示する。ただし、下記の実施例は本発明の理解を助けるためのものに過ぎず、本発明が下記の実験例によって限定されることはない。
【実施例】
【0072】
<実施例1>
二酸化炭素投入によるポリアミド12の製造
フラスコ内の水分を除去するために真空状態で80℃に維持し、フラスコに真空を解除した後にラウロラクタム15g、EBS0.12g、NaH0.03gを入れて窒素雰囲気下に165℃で鎔融させた。この後、230℃に昇温させた後、二酸化炭素を溶液上段に1mlを注入して反応させた。
【0073】
その後、5分経過後、二酸化炭素1mlを追加的に注入して10分経過後、ギ酸水溶液(ギ酸:蒸溜水=1:1)をフラスコに入れて反応を終了させ、下記表1による含有量を持つポリアマイド12試料を回収した。これを使用して分子量及び分子量分布度(PDI:polydispersity index)を確認し、その結果を表3に表した。
【0074】
【0075】
<実施例2>
二酸化炭素を5分の間隔で10mlずつ2回注入したことを除けば、実施例1と同様に実施してポリアマイド12試料を製造した。
【0076】
<実施例7>
二酸化炭素を5分の間隔で1mlずつ3回注入したことを除けば、実施例1と同様に実施してポリアマイド12試料を製造した。
【0077】
<実施例4>
二酸化炭素をSpargerに注入することを除けば実施例1と同様に実施してポリアマイド12試料を製造した。
【0078】
<実施例5>
二酸化炭素をone-lineを用いて溶液内部に注入することを除けば実施例1と同様に実施してポリアマイド12試料を製造した。
【0079】
<実施例6>
反応器内部圧力を0.9barに下げて二酸化炭素をone-lineを用いて溶液内部に注入することを除けば実施例1と同様に実施してポリアマイド12試料を製造した。反応は35分後に終了させた。
【0080】
<実施例7>
フラスコ内の水分を除去するために真空状態で80℃に維持し、フラスコに真空を解除した後にラウロラクタム3.5kg、EBS26g、NaH7.1gを入れて窒素雰囲気下に165℃で鎔融させた。その後、230℃に昇温させた後、二酸化炭素を300ml/minの速度で溶液上段に2分間注入して反応させた。
【0081】
35分経過後、反応を終了させて下記表2による含有量を持つポリアマイド12試料を回収した。これを使用して分子量及び分子量分布度(PDI:polydispersity index)を確認し、その結果を表4に表した。
【0082】
<実施例8>
二酸化炭素を800ml/minの速度で溶液上段に45秒間注入することを除けば、実施例7と同様に実施して下記表2による含有量を持つポリアマイド12試料を製造し、13分経過後、反応を終了した。
【0083】
【0084】
<実施例9~10>
二酸化炭素の代わりにN-Acetyl caprolactam(NAC)を注入して下記の表3と同じ条件を含むように調節したことを除けば、実施例1と同様に実施してポリアマイド12試料を製造した。
【0085】
【0086】
[比較例]
<比較例1>
二酸化炭素を一度に20ml注入したことを除けば、実施例1と同様に実施してポリアマイド12試料を製造した。
【0087】
<比較例2>
二酸化炭素を5分の間隔で500mlずつ2回注入したことを除けば、実施例1と同様に実施してポリアマイド12試料を製造した。
【0088】
【0089】
上記表4に示したように、活性化剤として二酸化炭素を一度に20ml注入した比較例1の場合に実施例1と比べて目標範囲から離れた高い分子量と広い分子量分布を示し、二酸化炭素を5分の間隔で500mlずつ2回注入した比較例2の場合に実施例1と比べて目標範囲から離れた非常に高い分子量と広い分子量分布を示した。
【0090】
【0091】
上記表5に示したように、実施例7と比べて二酸化炭素注入速度が相対的に速やかな実施例8が重合時間が短く分子量が大きいことを確認した。
【0092】
以上、本発明の実施例による図面を参照して説明したが、本発明の属する分野における通常の知識を持つ者であれば上記内容に基づいて本発明の範疇内で多様な応用及び変形を行うことが可能である。