(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】チトクロムP450モノオキシゲナーゼが触媒するセスキテルペンの酸化
(51)【国際特許分類】
C12P 7/02 20060101AFI20240207BHJP
C12N 9/02 20060101ALI20240207BHJP
C12N 15/53 20060101ALI20240207BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240207BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240207BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240207BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240207BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
C12P7/02
C12N9/02
C12N15/53 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
(21)【出願番号】P 2020529443
(86)(22)【出願日】2019-01-16
(86)【国際出願番号】 EP2019051070
(87)【国際公開番号】W WO2019141739
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2021-12-08
(32)【優先日】2018-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒェル シャルク
(72)【発明者】
【氏名】レティツィア ロッチ
(72)【発明者】
【氏名】ファビエンヌ ドゥゲリー
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-532418(JP,A)
【文献】特表2016-533707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/53
C12N 15/63
C12P 7/00
C12N 9/02
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ジザエン化合物の製造方法において、
a.ジザエンまたはジザエン含有組成物を、チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドであって、
i.配列番号19と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVzCP8201、
iii.配列番号20と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVzCP7186、または
iv.前記ポリペプチドの組み合わせ
から選択されるポリペプチドと接触させて、少なくとも1つのジザエン酸化産物を得ること
を含み、
前記ステップa.のジザエンの変換が、P450レダクターゼ(CPR)活性を有するポリペプチドの存在下で実施され、
前記CPRが、配列番号23と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、方法。
【請求項2】
b.ステップa.で得られたジザエン酸化産物を単離することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップa.が、細胞培養中、酸素の存在下でインビボで実施されるか、液体反応培地中、酸素の存在下でインビトロで実施される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
ステップa.が、少なくとも1つの前記チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドを発現する非ヒト宿主生物または細胞を、ジザエンまたはジザエン含有組成物の存在下で、ジザエンの酸化に適した条件で培養することにより実行される、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ステップa.の前に、ジザエンシンターゼ活性を有するポリペプチドの存在下でのファルネシル二リン酸(FPP)の環化をさらに含む、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記ジザエンシンターゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号33、38、または42と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
ステップc.として、ジザエノールのジザエノンへの変換、またはジザエノンおよびエピ-ジザエノンを含む混合物への変換をさらに含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドが、
i.配列番号19と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、N末端が少なくとも1つのアミノ酸残基により伸長しているVzCP8201;および
iii.配列番号20と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、N末端が少なくとも1つのアミノ酸残基により伸長しているVzCP7186
から選択される、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドが、
i.配列番号7または配列番号10と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVzCP8201;および
iii.配列番号13または配列番号15と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVzCP7186
から選択される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
配列番号20(VzCP7186)と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、かつチトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有し、かつジザエンをジザエノールへと、および/またはイソバレンセンをイソバレンセノールへと変換する能力を特に有する、ポリペプチド。
【請求項11】
配列番号13および配列番号15から選択されるアミノ酸配列を含む、または配列番号13もしくは配列番号15と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、ポリペプチドから選択される、請求項10記載のポリペプチド。
【請求項12】
i.請求項10または11記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列またはその相補配列;または
ii.配列番号11、配列番号12、または配列番号14と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、かつ、チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、核酸。
【請求項13】
配列番号13、配列番号15、または配列番号20と少なくとも90%の同一性を有するポリペプチドをコードするコードヌクレオチド配列またはその相補配列を含む、請求項12記載の核酸。
【請求項14】
請求項12または13記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項15】
請求項12または13記載の少なくとも1つの核酸を内包している、非ヒト宿主生物または細胞。
【請求項16】
テルペン化合物を酸化することができる変異ポリペプチドを調製する方法であって、
a.請求項12または13記載の核酸を選択するステップ;
b.前記選択された核酸を修飾して、少なくとも1つの変異核酸を得るステップ;
c.宿主細胞または単細胞生物に前記変異核
酸を与えて、前記変異核酸
の核酸配列によりコードされるポリペプチドを発現させるステップ;および
d.テルペン化合物を酸化する活性を有する少なくとも1つの変異ポリペプチドを選別するステップを含む、方法。
【請求項17】
e.前記変異ポリペプチドが
テルペン化合物を酸化する活性をもたない場合、
テルペン化合物を酸化する活性を有するポリペプチドが得られるまで、プロセスステップa.からd.を繰り返すステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
f.ステップd.またはe.で
テルペン化合物を酸化する活性を有する変異ポリペプチドが同定された場合、対応する前記変異核酸を単離するステップをさらに含む、請求項16または17記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のチトクロムP450モノオキシゲナーゼを、酸化させたいセスキテルペン分子と接触させることを含む、セスキテルペン分子を酸化する方法を提供する。本発明はまた、セスキテルペン分子を酸化することができる新規のチトクロムP450モノオキシゲナーゼ、該新規の酵素およびその変異体の生成に利用可能な対応するコード配列、発現ベクター、組み換え非ヒト宿主生物も提供する。
【0002】
発明の背景
テルペン類は、ほとんどの生物(微生物、動物、および植物)に見られる。これらの化合物は、イソプレンユニットと呼ばれる5炭素のユニットで構成されており、該ユニットが構造内に存在する数によって分類される。したがって、モノテルペン、セスキテルペン、およびジテルペンは、それぞれ10個、15個、および20個の炭素原子を含むテルペンである。たとえばジテルペンは、広く植物界に見られ、2500を超えるジテルペン構造が記述されている(Connolly and Hill, Dictionary of terpenoids, 1991, Chapman & Hall, London)。ベチベリア・ジザニオイデス(Vetiveria zizanoides)という植物の根から抽出されるベチベル油は、種々の酸化段階(アルコール、ケトン、アルデヒド、およびカルボン酸)の多数の二環式および三環式セスキテルペンの貴重な供給源である(M. Maffei, Vetriveria, 2002も参照)。テルペン分子およびそれらの酸化誘導体は、その風味および香りの特性、ならびにその香粧、医薬、および抗菌効果により、数千年にわたり関心を集めている。水蒸気蒸留または溶媒抽出などの種々の手段により得られる植物エキスは、テルペン分子の酸化誘導体の供給源として用いられている。また、植物エキスに含まれるか生合成プロセスにより得られるテルペン分子が、化学的および酵素的プロセスにより酸化されている。
【0003】
テルペンの酵素的酸化には、チトクロムP450(P450)と呼ばれる酵素が関与することが多く、該酵素は典型的には、テルペン分子などの疎水性基質をより親水性の基質に転換する触媒能力がある。チトクロムP450酵素は、細菌、古細菌、および真核生物に見られる血液タンパク質のスーパーファミリーを形成する。最も一般的な活性の1つでは、チトクロムP450は、分子状酸素の一方の酸素原子を基質分子に挿入し、他方の酸素原子を水へと還元することにより、モノオキシゲナーゼとして作用する。
【0004】
この触媒反応は、分子状酸素を活性化させるために、2個の電子を要する。真核生物由来のP450は、外部還元剤および電子供給源として、NADPHを使用する。2個の電子は1個ずつチトクロムP450活性部位に移されるが、この移動には電子供与タンパク質であるチトクロムP450レダクターゼ(CPR)を要する。1つのCPRが1つのチトクロムP450に特異的というわけではない。所与の生物において、あるCPRが複数種のP450の電子供与タンパク質となる。さらに、ある生物由来のCPRが、他の生物由来のP450の電子供与タンパク質として作用することができる。場合によっては、P450はチトクロムb5タンパク質と結合することもあり、後者は電子供与タンパク質として作用することができるか、CPRからP450への電子移動の効率を改善することができる。真核細胞、特に植物では、P450およびCPRは一般には膜結合タンパク質であり、小胞体に結合している。これらのタンパク質は、N末端膜貫通ヘリックスにより膜に係留されている。
【0005】
多くのP450は低い基質特異性を有しており、したがってたとえば種々のテルペン分子などの多様な構造の酸化を触媒することができる。こうした酵素の大半は所与の基質について特定の位置選択性および立体選択性を有するが、特定の基質から数種類の産物の混合体が生成されることが多い。このようなP450はふつう、生体異物などの分子の分解および解毒作用に関与しており、一般に細菌および動物に見られる。他方で、生合成経路に関与するP450はふつう、特定の基質のタイプならびに位置選択性および立体選択性に特異性を示す。植物のP450の大半はこれに該当する。
【0006】
自然界では、特に植物において、多数のP450を見出すことができる。1つの植物のゲノムが、P450をコードする数百の遺伝子を含む場合もある。多くの植物P450が特徴決定されているが、膨大な数のP450が植物に存在することを考えれば、それらの機能のほとんどは未解明のままである。
【0007】
したがって、さもなければベチベル油のような天然油から困難かつ高価な古典的単離ステップを経ることでしかアクセスできないような、酸化セスキテルペンなどの貴重な酸素化化合物の酵素的生成を触媒することができる、新たなチトクロムP450を探究することが望ましい。
【0008】
また、そのような酵素的生成に利用できる自体公知のP450酵素を同定することも望ましい。
【0009】
本発明の具体的な目的は、香水成分および/またはアロマ成分として有用な酸素化セスキテルペンのテルペン、特にイソバレンセノール、イソヌートカトール、および/またはジザエノール、ならびにそれらのさらなる酸化誘導体を作るための酵素触媒法を提供することである。
【0010】
さらなる目的は、セスキテルペン分子、特にイソバレンセン、および/またはジザエンおよび/またはバレンセンおよび/またはスピロベチバ-1(10),7(11)-ジエンを酸化することができる新規のチトクロムP450酵素を提供することである。
【0011】
国際公開第2013/064411号は、ベチベリア・ジザニオイデス(Vetiveria zizanoides)由来の2つのチトクロムP450酵素、VzCP521-11およびVzCP521-16の単離、特徴決定、および使用について記載している。該公報では、特に(+)ジザエンのC12位の酸化による(+)ジザエンからクシモールへの生物変換が報告されている。イソバレンセンの生物変換ならびにジザエンからジザエノールへの変換は、報告されていない。
【0012】
以前に、2017年7月19日に出願された未公開のPCT/EP2017/068268が、特にベチベリア・ジザニオイデス(Vetiveria zizanoides)由来のチトクロムP450酵素、およびそのバリアントを開示している。VzCP8201 P450酵素によるイソバレンセンのC12位の酸化によるイソバレンセンからイソバレンセノールへの生物変換、ならびにその後のE.コリ(E.coli)バックグラウンド酵素活性によるエステル化が記載されている。このP450酵素について、ジザエンの生物変換は記載されていない。
【0013】
使用される略語
bp 塩基対
CoA コエンザイムA
DMAPP ジメチルアリル二リン酸
DNA デオキシリボ核酸
cDNA 相補的DNA
CPR チトクロムP450レダクターゼ
EDTA エチレンジアミン四酢酸
FAD フラビンアデノシンジヌクレオチド
FMN フラビンモノヌクレオチド
FPP ファルネシルピロリン酸
GPP ゲラニルピロリン酸
GGPP ゲラニルゲラニルピロリン酸
GC ガスクロマトグラフィー
HMG ヒドロキシメチルグルタリル
IPP イソペンテニル二リン酸
IPTG イソプロピル-D-チオガラクト-ピラノシド
LB 溶原性ブロス
MS 質量分析
NADP ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸
NADPH ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸、還元型
P450 チトクロムP450
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
RMCE リコンビナーゼ媒介カセット交換
RT-PCR 逆転写ポリメラーゼ連鎖反応
RNA リボ核酸
mRNA メッセンジャーリボ核酸
RBS リボソーム結合部位
VzZs ベチベリア・ジザニオイデス(Vetiveria zizanoides)由来のジザエンシンターゼ
VzCp ベチベリア・ジザニオイデス(Vetiveria zizanoides)由来のチトクロムP450
VzTps ベチベリア・ジザニオイデス(Vetiveria zizanoides)由来のテルペンシンターゼ
VzTrspt ベチベリア・ジザニオイデス(Vetiveria zizanoides)由来の転写物。
【0014】
発明の概要
上述の問題は、驚くべきことに、以下により解決された:
-(+)ジザエンのC3位を酸化してジザエノールを形成させる能力を有する、かつイソバレンセンのC12位を酸化してイソバレンセノールを形成させる能力を有する、新規のチトクロムP450モノオキシゲナーゼ(VzCP7186;配列番号20)の提供;
-VzCP7186(配列番号20を含む)、VzCP521-11(配列番号21を含む)、およびVzCP8201(配列番号19を含む)から選択されるジザエンのC3位を酸化する1つまたは複数のチトクロムP450酵素を用いることによる、(+)ジザエンからジザネオール(zizaneol)への酸化プロセスの提供;
-VzCP7186(配列番号20)およびVzCP521-11(配列番号21)から選択される1つまたは複数のチトクロムP450酵素を任意選択によりVzCP8201(配列番号19)と組み合わせて用いることによる、イソバレンセンからイソバレンセノール、イソヌートカトール、またはそれらを含む混合物への酸化プロセスの提供。以下でさらに具体的に述べるが、VzCP7186(配列番号20)自体、および任意選択によりVzCP8201(配列番号19)との組み合わせは、イソバレンセンの特にC12位を酸化し、酵素VzCP521-11(配列番号21)はイソバレンセンのC2位およびC12位を酸化する能力を有する;
-上記の反応を、ジザエンからジザネオン(zizaneone)および/またはエピ-ジザエノンがアクセス可能であり;イソバレンセンからイソヌートカトンおよび/またはイソバレンセニルエステルがアクセス可能である、さらなる化学的または酵素的酸化ステップと組み合わせること;および
-テルペンシンターゼ酵素の好適な組み合わせ、特にイソバレンセンシンターゼ(配列番号3)およびジザエンシンターゼ(配列番号33、38、または42)と、本明細書に記載されるそれぞれのチトクロムP450酵素との組み合わせを提供することによる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】A~Dは、VzTps1718の主産物、VzCP521-11、VzCP7186、およびVzCP8201の酸化産物、ならびに誘導体例の構造および名称である。
【
図2】改変細菌細胞内で組み換えVzTps1718酵素によりインビボ生成されたセスキテルペンのGC-MS分析の図である。同定された産物に対応するピークが示されている:イソバレンセン(化合物1)、スピロベチバ-1(10),7(11)-ジエン(化合物2)、およびバレンセン(化合物3)。MW204およびMW222と表示されたピークはそれぞれ、構造は決定していないがセスキテルペン炭化水素およびセスキテルペンアルコールに対応する。FOH:E.コリ(E.coli)内在性酵素活性によるFPPの加水分解により生成されたファルネソール。
【
図3】VzTps1718産物混合体(
図2)の化合物1の質量スペクトル(A)、およびイソバレンセン既知標準物質の質量スペクトル(B)である。
【
図4】VzTps1718産物混合体(
図2)の化合物2の質量スペクトル(A)、およびスピロベチバ-1(10),7(11)-ジエン既知標準物質の質量スペクトル(B)である。
【
図5】VzTps1718産物混合体(
図2)の化合物3の質量スペクトル(A)、および(+)-バレンセン既知標準物質の質量スペクトル(B)である。
【
図6】組み換えVzTps1718セスキテルペンシンターゼを単独で(A)、機能的VzCP8201チトクロムP450酵素とともに(B)、または機能的VzCP7186チトクロムP450酵素とともに(C)生成するように改変されたE.コリ(E.coli)細胞により生成されたセスキテルペン化合物のGC-MS分析の図である。アステリスクがついたピークは、チトクロムP450酵素によるセスキテルペン炭化水素の酸化により製造された酸素化合物に対応する。イソバレンセノールおよび酢酸イソバレンセニルとして同定されたピークを示す。他のピークはすべて、VzTps1718セスキテルペンシンターゼにより生成されたセスキテルペン化合物である。
【
図7】
図6Bおよび
図6Cの保持時間13.02分のピークの質量スペクトル(A)、および既知イソバレンセノール標準物質の質量スペクトル(B)の図である。
【
図8】
図6Bおよび
図6Cの保持時間14.25分のピークの質量スペクトル(A)、および既知酢酸イソバレンセニル標準物質の質量スペクトル(B)の図である。
【
図9】組み換えVzTps1718セスキテルペンシンターゼを単独で(A)、また機能的VzCP521-11チトクロムP450酵素とともに(B)生成するように改変されたE.コリ(E.coli)細胞により生成されたセスキテルペン化合物のGC-MS分析の図である。アステリスクがついたピークは、チトクロムP450酵素によるセスキテルペン炭化水素の酸化により製造された酸素化合物に対応する。イソヌートカトール、イソバレンセノールおよび酢酸イソバレンセニルとして同定されたピークを示す。他のピークはすべて、VzTps1718セスキテルペンシンターゼにより生成されたセスキテルペン化合物である。
【
図10】
図9Bの保持時間13.2分のピークの質量スペクトル(A)、および既知イソヌートカトール標準物質の質量スペクトル(B)の図である。
【
図11】組み換えVzTps1718セスキテルペンシンターゼを機能的VzCP8201チトクロムP450酵素とともに(A)、機能的VzCP7186チトクロムP450酵素とともに(B)、または機能的VzCP8201およびVzCP7186チトクロムP450酵素とともに(C)生成するように改変されたE.コリ(E.coli)細胞により生成されたセスキテルペン化合物のGC-MS分析の図である。アステリスクがついたピークは、チトクロムP450酵素によるセスキテルペン炭化水素の酸化により製造された酸素化合物に対応する。
【
図12】AおよびBは、ベチベリア・ジザニオイデス(Vetiveria zizanoides)(+)-ジザエンシンターゼ(VzZS)およびチトクロム-P450モノオキシゲナーゼにより生成されたセスキテルペン化合物の構造である。
【
図13】改変細菌細胞内で発現した組み換えジザエンシンターゼ(A)VsZS1、(B)VzZS2、および(C)VzZS2-Nter2によりインビボで生成されたセスキテルペンのGC-MSトータルイオンクロマトグラムの図である。ジザエンに対応するピークを示す。組み換え酵素のマイナー産物のなかにはα-フネブレン、β-フネブレン、およびプレジザエン(それぞれラベル1、2、および3)も検出された。ISとは内部標準のことである。
【
図14】ジザエンシンターゼと、機能的VzCP8201チトクロムP450酵素とを(A)、機能的VzCP7186チトクロムP450酵素とを(B)、または機能的VzCP521-11チトクロムP450酵素とを(C)発現するE.コリ(E.coli)細胞により生成されたセスキテルペンのGC-MSトータルイオンクロマトグラムの図である。アルファ-ジザエノールおよびクシモールとして同定されたピークを示す。
【
図15】
図14(A)の保持時間12.03分のピークの質量スペクトル(A)、および既知アルファ-ジザエノール標準物質の質量スペクトル(B)の図である。
【
図16】
図14Cの保持時間12.8分のピークの質量スペクトル(A)、および既知クシモール標準物質の質量スペクトル(B)の図である。
【
図17】ジザエンシンターゼを、機能的VzCP8201チトクロムP450酵素と組み合わせて(A)、または機能的VzCP7186と組み合わせて(B)、またはVzCP8201およびVzCP7186チトクロムP450酵素と組み合わせて(C)発現するE.コリ(E.coli)細胞により生成されたセスキテルペンのGC-MSトータルイオンクロマトグラムの図である。アルファ-ジザエノールおよびジザエノンとして同定されたピークを示す。
【
図18】
図17Cの保持時間11.96分のピークの質量スペクトル(A)、および既知ジザエノン標準物質の質量スペクトル(B)の図である。
【
図19】本発明のイソバレンセン酸素化シーケンスの概略図である。ある好ましい実施形態の反応ステップそれぞれの主産物を記述する反応スキームを示す。
【
図20】本発明のジザエン酸素化シーケンスの概略図である。ある好ましい実施形態の反応ステップそれぞれの主産物を記述する反応スキームを示す。
【
図21】インビボで構築されたプラスミドからの異なるジザエンシンターゼ:(A)VzZS1、(B)VzZS2、および(C)VzZS2-Nter2を発現する改変サッカロミケス・ケレウィシアエ(Saccharomyces cerevisiae)細胞により生成されたセスキテルペンのGC-MSクロマトグラムの図である。内部標準(IS)のピーク、およびジザエンとして同定されたピークを示す。
【
図22】VzZS2ジザエンシンターゼおよびVzCP521-11チトクロムP450を発現する改変サッカロミケス・ケレウィシアエ(Saccharomyces cerevisiae)株YST124により生成された酸素化セスキテルペンのGC-MSクロマトグラムの図である。ファルネソール、ジザエノン、ジザエノール、およびクシモールとして同定されたピークを示す。
【0016】
具体的な定義
本願では、本願で引用するすべての化合物は
図1および
図12に表すそれらの式により定義されるものとする。
【0017】
「チトクロムP450」、または「チトクロムP450活性を有するポリペプチド」、または「チトクロムP450酸化活性」は、本発明の目的では、テルペン分子の酸化を触媒してアルコール、アルデヒド、ケトン、またはカルボン酸などの酸素化化合物を形成させることができるポリペプチドとする。特定の実施形態では、チトクロムP450は「チトクロムP450モノオキシゲナーゼ」として作用し、すなわち各触媒サイクルで、特にはテルペン化合物のような、より具体的にはセスキテルペン化合物のような化合物に、酸素原子を1個だけ付加することにより、「チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性」を示す。ポリペプチドが特にセスキテルペンのような特定のテルペンの酸化を触媒する能力は、実験の部で詳しく述べるような酵素アッセイを実施することにより、簡単に確認することができる。
【0018】
「チトクロムP450酸化活性」または「チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性」は、本発明の文脈では、酵素が、モノテルペン、セスキテルペン、またはジテルペン基質から選択されるテルペン基質の、より具体的には好ましくはジザエンおよびイソバレンセンから選択される少なくとも1つのセスキテルペン基質の、あるいは両方の基質の組み合わせの酸化反応を触媒する能力として理解される。第1の態様では、酵素がジザエンのC3位の、特にジザエノールを形成する酸化反応を触媒する能力を記載することが理解される。特にジザエノールが、「主産物」として形成される。第2の態様では、酵素が、イソバレンセンのC2位および/またはC12位の、特にイソバレンセノールおよび/またはイソヌートカトールを「主産物」として形成する酸化反応を触媒する能力を記載することも理解される。第3の態様では、上記の態様1および2の酵素活性を記載することが理解される。
【0019】
本発明では、「テルペンシンターゼ」は、GPP、FPP、またはGGPPから選択される非環式テルペン前駆体から、特にFPPから、少なくとも1つの線状、特に少なくとも1つの単環式または多環式テルペンを形成する能力を包含する。第1の特定の実施形態では、本発明のテルペンシンターゼは、FPPをイソバレンセンに、またはイソバレンセンと任意選択によりスピロベチバ-1(10),7(11)-ジエンおよびバレンセンとを含むセスキテルペン混合物に変換する能力を包含する。第2の特定の実施形態では、本発明のテルペンシンターゼは、FPPをジザエンに、 ジザエンを含むセスキテルペン混合物に変換する能力を包含する。
【0020】
「セスキテルペン酸化活性」は、本明細書において以下の実施例でより詳しく記載される「標準条件」で決定される:培養組み換えチトクロムP450発現宿主細胞、破壊チトクロムP450発現細胞、それらの画分、または濃縮もしくは精製チトクロムP450酵素を用いて、好ましくは緩衝されているpH6~11、好ましくは6~8の範囲である培養培地または反応培地中で、分子状酸素の存在下、温度約20~45℃、好ましくは35~38℃のような約25~40℃の範囲で、基準基質、ここでは初期濃度1~10mg/ml、好ましくは3~7mg/mlの範囲で添加されるか宿主細胞内で生成されるジザエンおよび/またはイソバレンセンの存在下で決定され得る。
【0021】
「テルペンシンターゼ活性」は、本明細書で以下に記載される「標準条件」で決定される:組み換えテルペンシンターゼ発現宿主細胞、破壊テルペンシンターゼ発現細胞、それらの画分、または濃縮もしくは精製テルペンシンターゼ酵素を用いて、好ましくは緩衝されているpH6~11、好ましくは6~8の範囲の培養培地または反応培地中、温度約20~45℃、好ましくは35~38℃のような約25~40℃の範囲で、基準基質、ここでは特に初期濃度1~10mg/ml、好ましくは3~7mg/mlの範囲で添加されるか宿主細胞内で生成されるFPPの存在下で決定され得る。
【0022】
「メバロン酸経路」は、「イソプレノイド経路」または「HMG-CoAレダクターゼ経路」としても知られる、真核生物、古細菌、および一部の細菌に存在する重要な代謝経路である。メバロン酸経路は、アセチル-CoAから開始して、イソペンテニルピロリン酸(IPP)およびジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)と呼ばれる2種類の5炭素構成単位を生成する。基幹酵素は、アセトアセチル-CoAチオラーゼ(atoB)、HMG-CoAシンターゼ(mvaS)、HMG-CoAレダクターゼ(mvaA)、メバロン酸キナーゼ(MvaK1)、ホスホメバロン酸キナーゼ(MvaK2)、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(MvaD)、およびイソペンテニル二リン酸イソメラーゼ(idi)である。メバロン酸経路と、特にFPPシンターゼ(ERG20)のような酵素活性とを組み合わせてテルペン前駆体GPP、FPP、またはGGPPを生じさせることで、組み換え細胞によるテルペン生成が可能になる。
【0023】
「生物学的機能」、「機能」、「生物学的活性」、または「活性」という用語は、本明細書で定義されるテルペン合成またはテルペン酸化酵素が、それぞれの基質からのテルペンまたは酸化テルペンの形成を触媒する能力を指す。
【0024】
本明細書では、「宿主細胞」または「形質転換細胞」という用語は、少なくとも1つの核酸分子、たとえば転写後に本明細書に記載される使用のためのポリペプチドを与える所望のタンパク質または核酸配列をコードする組み換え遺伝子を内包するように変更された、原核または真核細胞または生物を指す。宿主細胞は、特に、細菌細胞、真菌細胞、または植物細胞である。宿主細胞は、該宿主細胞の核ゲノムまたは小器官ゲノム内に組み込まれている組み換え遺伝子を含有する場合がある。あるいは宿主は、組み換え遺伝子を染色体外に含有する場合がある。
【0025】
「相同」配列としては、オルソロガスまたはパラロガス配列が挙げられる。系統発生学的方法、配列類似性、およびハイブリダイゼーション法といったオルソログまたはパラログを同定する方法が当技術分野で公知であり、本明細書にも記載されている。
【0026】
「パラログ」またはパラロガス配列は、類似の配列および類似の機能をもつ2つ以上の遺伝子を生じさせる遺伝子複製の結果生じる。パラログは典型的には互いに集まり、近縁植物種内で遺伝子の複製により形成される。パラログは、ペアワイズBlast分析により、またはCLUSTALなどのプログラムを用いての遺伝子ファミリーの系統発生分析の際に、類似の遺伝子群に見出される。パラログでは、近縁遺伝子内の配列に特徴的であり、かつ類似の遺伝子機能を有する、コンセンサス配列が同定され得る。
【0027】
「オルソログ」またはオルソロガス配列は、互いに類似した配列であるが、それはこれらが共通の祖先から派生した種に見られるためである。たとえば、共通の祖先をもつ植物種は、類似の配列および機能をもつ多くの酵素を含有することが知られている。当業者であれば、たとえばCLUSTALまたはBLASTプログラムを用いてある種の遺伝子ファミリーの多遺伝子樹を構築することにより、オルソロガス配列を同定し、そして該オルソログの機能を予測することができる。複数の相同配列の類似機能を同定または確認する方法は、宿主細胞または生物、たとえば植物または微生物において、関連ポリペプチドを過剰発現する、または(ノックアウト/ノックダウンでは)発現しない、転写物プロファイルの比較による。当業者であれば、共通の調節転写物が50%よりも多い、または共通の調節転写物が70%よりも多い、または共通の調節転写物が90%よりも多い、類似の転写物プロファイルを有する遺伝子が、類似の機能をもつことを理解しよう。本明細書の配列のホモログ、パラログ、オルソログ、および任意の他のバリアントは、同様に機能すると考えられる。
【0028】
「植物」という用語は、再生された植物、または植物の一部、または植物器官、たとえば根、茎、葉、花、花粉、胚珠、胚芽、果実等を生じさせる、植物プロトプラスト、植物組織、植物細胞組織培養物をひっくるめた植物細胞を含むように交換可能に用いられる。任意の植物を用いて、本明細書の実施形態の方法を実行することができる。
【0029】
ある特定の宿主は、テルペンまたは酸化テルペンを天然生成する場合、またはテルペンを天然生成しないが、本明細書に記載される核酸による形質転換の前に、または該核酸といっしょに、テルペンまたは酸化テルペンを生成するように形質転換されている場合に、該テルペンまたは酸化テルペンを「生成することができる」ものとする。天然の宿主よりも大量のテルペンまたは酸化テルペンを生成するように形質転換された宿主も、テルペンまたは酸化テルペンを「生成することができる宿主」または「生成することができる生物または細胞」に包含される。
【0030】
「精製された」、「実質的に精製された」、および「単離された」という用語は、本明細書では、本発明の化合物が通常その天然の状態で結合している他の異種化合物を含まない状態を指し、したがって「精製された」、「実質的に精製された」、および「単離された」対象は、重量基準で所与の試料の少なくとも0.5%、1%、5%、10%、もしくは20%、または少なくとも50%もしくは75%の質量を含む。一実施形態では、これらの用語は、重量基準で所与の試料の少なくとも95、96、97、98、99、または100%の質量を含む本発明の化合物を指す。本明細書では、核酸またはタンパク質に言及する場合、「精製された」、「実質的に精製された」、および「単離された」、「単離された」という用語はまた、核酸またはタンパク質の、たとえば原核または真核環境における、たとえば細菌もしくは真菌細胞における、または哺乳類における、特にヒト体内などにおける天然のものとは異なる精製または濃度の状態を指す。天然よりも高いあらゆる度合いの精製または濃度は、(1)結合している他の構造または化合物からの精製、または(2)該原核または真核環境において通常は結合していない構造または化合物との結合を含め、「単離された」という意味に含まれる。本明細書に記載される核酸もしくはタンパク質、または核酸もしくはタンパク質のクラスは、当業者には公知の多様な方法およびプロセスにより、単離されているか、あるいは自然界では通常結合していないような構造および化合物に結合している場合がある。
【0031】
本明細書で提供される記載および添付請求項の文脈では、「または(or)」の使用は、特に断らない限り「および/または」を意味する。
【0032】
同様に、「含む」を意味するcomprise、comprises、comprising、include、include、およびincludingは交換可能であり、かつ限定を意図するものではない。
【0033】
さまざまな実施形態の記載で「含む」という用語が使用される場合、当業者であれば、一部の具体例では、ある実施形態が「実質的に~からなる」または「からなる」という表現でも記載され得ることを理解することを、さらに理解されたい。
【0034】
「約」という用語は、記載値の±25%の可能な変動、特に±15%、±10%、より具体的には±5%、±2%、または±1%の可能な変動を示す。
【0035】
「実質的に」という用語は、約80~100%の、たとえば、85~99.9%、特に90~99.9%、より具体的には95~99.9%、または98~99.9%、特に99~99.9%などの範囲の値を記載する。
【0036】
「主に」は、50%を超える範囲、たとえば51~100%の範囲、特に75~99.9%の範囲、より具体的には95~99%のような85~98.5%の範囲にある比率を指す。
【0037】
本発明の文脈では、「主産物」は、単一の化合物、または2、3、4、5以上のような、少なくとも2つの化合物の群、特に2つまたは3つの化合物の群を指し、該単一の化合物または化合物群は、本明細書に記載される反応により「主に」調製され、該反応により形成する産物の構成要素の総量に対し主たる比率で、該反応に含有される。この比率は、モル比率、重量比率、または好ましくはクロマトグラフィー解析に基づき、対応する反応産物のクロマトグラムから計算される面積の比率であり得る。
【0038】
本発明の文脈では、「副産物」は、単一の化合物、または2、3、4、5以上のような、少なくとも2つの化合物の群、特に2つまたは3つの化合物の群を指し、該単一の化合物または化合物群は、本明細書に記載される反応により「主に」調製されない。
【0039】
酵素反応は可逆的なので、本発明は、特に断らない限り、本明細書に記載される酵素反応または生体触媒反応の両方向の反応に関する。
【0040】
本明細書に記載されるポリペプチドの「機能的変異体」には、以下に定義されるそのようなポリペプチドの「機能的均等物」も含まれる。
【0041】
「立体異性体」という用語には、特に立体配座異性体が含まれる。
【0042】
本発明には、一般に、本明細書に記載される化合物のすべての「立体異性体の形態」、たとえば構造異性体、および特に立体異性体、ならびにそれらの混合体、たとえば光学異性体、または幾何異性体、たとえばE異性体およびZ異性体、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。1つの分子にいくつかの不斉中心が存在する場合、本発明は、それらの不斉中心の異なる立体配座のあらゆる組み合わせ、たとえば鏡像体の対を包含する。
【0043】
「立体選択性」とは、ある化合物の特定の立体異性体を立体異性体的に純粋な形態で生成する能力、または本明細書に記載される酵素触媒法で複数の立体異性体から特定の立体異性体を厳密に変換する能力を記載している。より具体的には、立体選択性は、本発明の産物が特定の立体異性体に関して濃縮されていること、またはある分離物が特定の立体異性体に関して枯渇し得ることを意味する。立体選択性は、式
%ee=[XA-XB]/[XA+XB]*100
[式中、XAおよびXBは、立体異性体AおよびBのモル比を表す]により計算される純度%eeパラメーターにより定量化することができる。
【0044】
本発明の反応の「収率」および/または「変換率」は、反応が行われる所定の時間、たとえば4、6、8、10、12、16、20、24、36、または48時間で決定される。反応は特に、精密に定義された条件、たとえば本明細書で定義される「標準条件」の下で実行される。
【0045】
異なる収率パラメーター(「収率」またはYP/S;「比生成率」;または空時収率(STY))が当技術分野で周知であり、それらは文献に記載されるようにして決定される。
【0046】
本明細書では「収率」および「YP/S」(それぞれ、生成された産物の質量/消費された材料の質量として表される)は同義語として用いられる。
【0047】
「テルペン」は、特に断らない限り、モノテルペン、セスキテルペン、およびジテルペンを包含する。特定のテルペンは、イソバレンセンおよびジザエンのような、セスキテルペンである。
【0048】
比生成率は、1時間あたり、かつ発酵ブロス(または培養培地)1Lあたり、かつバイオマス1gあたり生成される、テルペンまたは酸化テルペンのような産物の量を記載する。WCWとして記述される湿細胞重量の量は、生化学的反応における生物活性微生物の量を記載する。その値は、WCW1gあたりの1時間あたりの産物gとして与えられる(すなわちg/gWCW-1h-1)。
【0049】
「発酵的生成」または「発酵」という用語は、微生物が細胞培養中、インキュベーションに添加されるたとえば炭素供給源を含む少なくとも1つの栄養供給源を利用して、(該微生物が含有するか生成する酵素活性に助けられながら)化学物質を生成する能力を指す。
【0050】
「発酵ブロス」という用語は、発酵プロセスに基づく、かつワークアップされていない、またはたとえば本明細書に記載されるようにワークアップされている液体、特に水溶液/含水有機溶液を意味するものと理解される。
【0051】
「酵素触媒」法または「生体触媒」法は、該方法が、本明細書で定義される酵素変異体も含めた酵素の触媒作用の下で実施されることを意味する。したがって、該方法は、単離(精製、濃縮)形態もしくは粗形態の該酵素の存在下で、または細胞系、特に該酵素の活性体を含有しかつ本明細書で開示される変換反応を触媒する能力を有する天然もしくは組み換え微生物細胞の存在下で、実施することができる。
【0052】
「選択的に変換する」または「選択性を増加させる」という用語は、一般に、前述の反応全体の間(すなわち反応開始から終結までの間)か、前述の反応中の特定の時点か、前述の反応のある「期間」の間に、炭化水素の特定の立体異性体の形態、たとえば(+)体が、対応する(-)体よりも(モルベースの比較で)高い比率または量で変換されることを意味する。特に、当初の基質量の1~99%、2~95%、3~90%、5~85%、10~80%、15~75%、20~70%、25~65%、30~60、または40~50%の変換に相当するそのような選択性が、ある「期間」の間に観測され得る。このようなより高い比率または量は、たとえば、
-反応全体または該反応の前述の期間の間に観測される、異性体のより高い最大収率;
-基質変換値の所定の程度(%)での、異性体のより高い相対量;および/または
-変換値のより高い程度(%)での、異性体の同一の相対量;
という点において表され得、
これらはそれぞれ、好ましくは基準方法に対し相対的に観測され、該基準方法は、ほかの点では同一の条件で、公知の化学的または生化学的手段を用いて実施される。
【0053】
本発明にはまた、一般に、本明細書に記載される化合物のすべての「異性体の形態」、たとえば構造異性体、および特に立体異性体、ならびにそれらの混合体、たとえば光学異性体、または幾何異性体、たとえばE異性体およびZ異性体、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。1つの分子にいくつかの不斉中心が存在する場合は、本発明は、それらの不斉中心の異なる立体配座のあらゆる組み合わせ、たとえば鏡像体の対、または立体異性体の形態の任意の混合体を包含する。
【0054】
本開示が、優先度の異なる特徴、パラメーター、およびそれらの範囲(一般的な、別段好ましくはない特徴、パラメーター、およびそれらの範囲も含む)に言及する場合は、特に断らない限り、それぞれの個別の優先度に関係なく、そうした特徴、パラメーター、およびそれらの範囲の2つ以上の任意の組み合わせが本明細書の開示に包含される。
【0055】
発明の詳細な説明
a.本発明の特定の実施形態
本発明は特に、以下の実施形態に言及する:
a1.ジザエンの酸化
1.酸化ジザエン化合物の製造方法において、
a.ジザエンまたはジザエン含有組成物を、チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドであって、
i.配列番号19と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVzCP8201、
ii.配列番号21と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVzCP521-11、
iii.配列番号20と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVzCP7186、または
iv.該ポリペプチドの2つ以上の組み合わせ
から選択されるポリペプチドと接触させて、具体的にはジザエンを好ましくはアルファ-および/またはベータ-ジザエノール、特にアルファ-ジザエノール(すなわち(+)-ジザエノール)を含むジザエノールへと変換することにより、少なくとも1つのジザエン酸化産物、またはそのようなジザエノールを含有する酸化産物、特にそのようなジザエノールを主に含有する酸化産物を得ること;および
b.任意選択により、ステップa.で得られた少なくとも1つの酸化産物、たとえばジザエノール、特にアルファ-ジザエノールを単離すること
を含む、方法。
【0056】
ステップbは、前ステップの1つまたは複数の酸化産物を事前に単離してもしなくても、実施することができる。
【0057】
「ジザエノール」は、特に断らない限り、任意の他のジザエノン前駆体と組み合わされていてもよい、アルファ-および/またはベータ-ジザエノールを包含する。
【0058】
「ジザエンの酸化産物」または「ジザエノールを含む酸化産物」は、アルファ-および/またはベータ-ジザエノールを包含し、これらはさらなる酸化産物:クシモールのような、構造が異なるアルコール、任意の他のジザエノン前駆体;および/またはジザエノンのような、それらのさらなる酸化産物;および/またはエピ-ジザエノンのような、先述のジザエン酸化産物の任意の異性体と組み合わされていてもよい。該さらなる酸化産物は、主産物として、または特に副産物として得られる場合がある。
【0059】
上記の方法は、以下で詳述するように、インビトロでもインビボでも実行することができる。
【0060】
2.ステップa.が、インビボで、少なくとも1つの該チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドを含有する細胞培養中、かつ分子状酸素の存在下で実施される;またはインビトロで、培養液または反応培地中、分子状酸素および単離された形態の少なくとも1つの該チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドの存在下で実施される、実施形態1の方法。
【0061】
3.ステップa.が、インビボで、少なくとも1つの該チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドを発現する組み換え非ヒト宿主生物または細胞、特にそれを発現するように形質転換された組み換え宿主を、ジザエンまたはジザエン含有組成物の存在下で、ジザエンの酸化に適した条件で培養することにより実行される、実施形態1および2のいずれかの方法。
【0062】
4.ステップa.のジザエンの変換が、P450レダクターゼ(CPR)活性を有するポリペプチドの存在下で;および任意選択により、添加された酸化還元等価物、特にNAD(P)Hの存在下で実施される、先の実施形態のいずれか1つの方法。
【0063】
触媒活性のために、上記のP450をP450-レダクターゼ(CPR)と組み合わせて用いる必要があり、後者はNADPH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)からP450活性部位へと電子を移動させることができ、したがってP450活性を再構成する。プロセスをインビトロおよびインビボのどちらで実行する場合も、CPRが存在しなくてはならない。方法がインビボで実行される場合、CPRは、宿主生物または細胞内に天然に存在している場合もあるし、そのような生物または細胞を、本発明のポリペプチドを発現するための形質転換の前、同時、または後に、CPRを発現するように形質転換する場合もある。本発明の好ましい実施形態では、宿主細胞または生物は、本発明のP450ポリペプチドおよびCPRの両方を含む融合ポリペプチドにより、形質転換されている。別の好ましい実施形態では、CPRは植物CPRである。それは最も好ましくは、メンタ・ピペリタ(Mentha piperita)CPRに由来する。
【0064】
方法がインビトロで実行される場合、テルペン化合物およびCPRと接触させるチトクロムP450は、それを発現する任意の生物から標準的なタンパク質または酵素抽出技術を用いて抽出することにより、得ることができる。宿主生物が、本発明のポリペプチドを培養培地へ放出する単細胞生物または細胞である場合、たとえば膜アンカーが存在しない場合、該ポリペプチドはたとえば遠心法により培養培地から簡単に回収することができ、任意選択により、続いて洗浄ステップを行い、そして好適な緩衝液に再懸濁させる。生物または細胞が、その細胞内にポリペプチドを蓄積させる場合、該ポリペプチドは、細胞を破壊または溶解し、そしてさらに細胞溶解物からポリペプチドを抽出することで、得ることができる。植物の天然P450およびCPRなど、P450およびCPRが膜アンカー配列を含む場合、これらは膜に結合しているので、細胞溶解物の膜画分に存在する。膜画分(ミクロソーム)は、公知の方法を用いて粗細胞溶解物を分画遠心することにより、他のタンパク質画分から容易に分離することができる。
【0065】
インビトロの方法では、P450およびCPRが単離された形態で独立して提供される場合もあれば、タンパク質抽出物の一部として提供され、最適なpHの緩衝液に懸濁される場合もある。酵素活性を最適化するために、塩、DTT、NADPH、NADH、FAD、FMN、および他の種類の酵素補因子が適宜添加され得る。適切な条件は、以後の実施例でより詳しく記載されている。
【0066】
5.該CPRが、配列番号23と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態4の方法。
【0067】
本明細書の実施形態のいずれかの特定の一態様では、CPRは、配列番号22と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸によりコードされる。
【0068】
6.ステップa.の前に、ジザエンシンターゼ活性を有するポリペプチドの存在下でのファルネシル二リン酸(FPP)の環化をさらに含む、先の実施形態のいずれか1つの方法。
【0069】
7.該ジザエンシンターゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号33、38、または42と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態6の方法。
【0070】
8.細胞培養中、FPPを内部で生成する宿主、またはFPPを生成するように遺伝子改変された、もしくは(非改変宿主に対し相対的に)増量したFPPを生成するように遺伝子改変された宿主を用いることにより実施される、先の実施形態のいずれか1つの方法。
【0071】
9.該宿主が、増量したFPPを生成するように、特にメバロン酸代謝経路を触媒する酵素セット(アセトアセチル-CoAチオラーゼ(atoB)、HMG-CoAシンターゼ(mvaS)、HMG-CoAレダクターゼ(mvaA)、メバロン酸キナーゼ(MvaK1)、ホスホメバロン酸キナーゼ(MvaK2)、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(MvaD)、およびイソペンテニル二リン酸イソメラーゼ(idi)を含む)を発現するように遺伝子改変されている、実施形態8の方法。
【0072】
10.ステップc.として、ジザエノール、特に(+)-ジザエノールのジザエノンへの変換、またはジザエノンおよびエピ-ジザエノンを含む混合物への変換をさらに含む、先の実施形態のいずれか1つの方法。
【0073】
ステップcは、前ステップの1つまたは複数の反応産物を事前に単離してもしなくても、実施することができる。
【0074】
11.ステップc.が、化学的酸化または生化学的酸化を含み;該生化学的酸化はインビボで細胞培養中、またはインビトロで液体反応培地中、かつジザエノール酸化活性を有する少なくとも1つのポリペプチドの存在下で、特にジザエノール脱水素活性を有するポリペプチドの存在下で、および任意選択により、添加された酸化還元等価物、特にNAD(P)H、および任意選択により、好適な酵素ベース補因子再生系の存在下で実施され得る、実施形態10の方法。
【0075】
12.ステップc.が、ジザエノール脱水素化活性を有する少なくとも1つのポリペプチドを発現する、特に発現するように遺伝子改変されている、より具体的には発現するように形質転換されている、非ヒト宿主生物、特に組み換え宿主、または細胞を、ジザエノール、特に(+)-ジザネノール(zizanenol)、またはジザエノールを特に主にアルファ-ジザエノールを含有する反応産物のような、ジザエノール含有組成物の存在下で、ジザエノールの酸化(脱水素化)に適した条件で培養することにより実行される、実施形態11の方法。
【0076】
13.該チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドが、
i.配列番号19と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、N末端が少なくとも1つのアミノ酸残基により伸長しているVzCP8201、
ii.配列番号21と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、N末端が少なくとも1つのアミノ酸残基により伸長しているVzCP521-11;および
iii.配列番号20と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、N末端が少なくとも1つのアミノ酸残基により伸長しているVzCP7186
から選択される、先の実施形態のいずれか1つの方法。
【0077】
たとえばポリペプチドは、1個の天然アミノ酸残基、特にメチオニン残基により、または1~50、1~40、1~30、1~25、特に5~25、もしくは15~25の連続するアミノ酸残基を含む任意の配列により、伸長している場合がある。配列は異なる機能性を有し得、たとえば、膜アンカー配列として機能し得、タンパク質発現を改善し得、または酵素機能を改善し得る。
【0078】
14.該チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドが、
i.配列番号19と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、N末端がメチオニンまたはその天然もしくは合成膜アンカー配列により伸長しているVzCP8201、
ii.配列番号21と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、N末端がメチオニンまたはその天然もしくは合成膜アンカー配列により伸長しているVzCP521-11;および
iii.配列番号20と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、N末端がメチオニンまたはその天然もしくは合成膜アンカー配列により伸長しているVzCP7186
から選択される、実施形態13の方法。
【0079】
特に、それぞれの天然アンカー配列は、本明細書で開示されるそれぞれの全長配列に由来し得る。やはりアンカー配列として機能し得る人工N末端配列が、容易に合成され得る。例として、配列番号24のアミノ酸配列を含むN末端ペプチド、またはそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する機能的均等配列もしくはアナログ配列が言及され得る。
【0080】
15.該チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドが、
i.配列番号7または10と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVzCP8201;
ii.配列番号18と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVzCP521-11;および
iii.配列番号13と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVzCP7186
から選択される、実施形態14の方法。
【0081】
a2.イソバレンセンの酸化
16.酸化イソバレンセン化合物の製造方法であって、
a.イソバレンセンまたはイソバレンセン含有組成物を、チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドであって、
i.配列番号21と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVzCP521-11、
ii.配列番号20と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVzCP7186、または
iii.該ポリペプチドの2つ以上の組み合わせ;または
iv.i.、ii.、またはiii.と、配列番号19と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVzCP8201との組み合わせ
から選択されるポリペプチドと接触させて、イソバレンセンを少なくとも1つの酸化産物へと変換すること、特にイソバレンセンをイソバレンセノールへと、またはイソバレンセノールを含有する酸化産物、特にイソバレンセノールを主に含有する酸化産物へと変換することにより、変換すること;あるいはイソバレンセンをイソヌートカトールへと、またはイソヌートカトールを含有する酸化産物へと、特にイソヌートカトールを主に含有する酸化産物へと変換すること;あるいはイソバレンセンをイソバレンセノールおよびイソヌートカトールを含有する混合物へと、またはイソバレンセノールおよびイソヌートカトールを主に含有する混合物へと変換することであって;イソバレンセノールが得られる場合、酸化産物はイソバレンセニルエステルも含み得;
および
b.任意選択により、ステップa.で得られた少なくとも1つの酸化産物を単離すること
を含む、方法。
【0082】
ステップbは、前ステップの1つまたは複数の反応産物を事前に単離してもしなくても、実施することができる。
【0083】
具体的には、「イソバレンセンの酸化産物」は、主産物としてのイソバレンセノールおよび/またはイソヌートカトール;ならびに任意選択により、さらなる主産物または副産物として、特に副産物として、イソヌートカトンおよび/またはイソバレンセニルエステルのような、それらの1つまたは複数のさらなる酸化産物を包含する。スピロベチバ-1(10).7(11)-ジエン、(+)バレンセンのような非酸化化合物、および特に、ヌートカトール、ヌートカトン、ベータ-ベチボールおよびベータ-ベチボンのような、それらの対応する酸化産物も含み得る(
図1も参照)。
【0084】
上記の方法は、以下で詳述するように、インビトロでもインビボでも実行することができる。
【0085】
この実施形態の特定の一態様では、主産物として、イソヌートカトールとイソバレンセノールとの、および任意選択によりイソバレンセニルエステルとの組み合わせが調製される。より具体的には、この変換は、
a)配列番号21と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVzCP521-11;
b)a)と、配列番号19と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVzCP8201との組み合わせ、
c)a)と、配列番号20と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVzCP7186との組み合わせ、または
d)a)と、配列番号19と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVzCP8201;および配列番号20と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVzCP7186との組み合わせ
から選択される、P450モノオキシゲナーゼを用いることにより実施される。
【0086】
イソバレンセニルエステルは、エステルを形成する酵素活性、たとえばエステラーゼ、またはリパーゼ、またはアシルトランスフェラーゼ酵素活性の存在下で生成され得る。該エステラーゼ活性は、イソバレンセノールを含有する反応混合物に添加してもよく、または該方法が宿主系を用いてインビボで実施される場合は、内在する酵素活性により該変換を触媒させてもよい。イソバレンセニルエステルは、好ましくは、カルボン酸エステル、特に飽和短鎖カルボン酸エステル、より具体的には炭素数2~4個のカルボン酸エステル、特に酢酸イソバレンセニルから選択される。
【0087】
この実施形態の別の特定の態様では、主産物は、イソバレンセニルエステルと組み合わされていてもよい、イソバレンセノールである。より具体的には、この変換は、
a)配列番号20と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVzCP7186、または
b)a)と、配列番号19と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVzCP8201との組み合わせ
から選択される、P450モノオキシゲナーゼを用いることにより実施される。
【0088】
イソバレンセニルエステルは、たとえばエステラーゼ、リパーゼ、アシルトランスフェラーゼ、またはアセチルトランスフェラーゼ酵素活性の存在下で生成され得る。該酵素活性は、イソバレンセノールを含有する反応混合物に添加してもよく、または該方法が宿主系を用いてインビボで実施される場合は、内在する酵素活性により該変換を触媒させてもよい。イソバレンセニルエステルは、好ましくは、カルボン酸エステル、特に飽和短鎖カルボン酸エステル、より具体的には炭素数2~4個のカルボン酸エステル、特に酢酸イソバレンセニルから選択される。
【0089】
17.ステップa.が、インビボで、少なくとも1つの該チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドを含有する細胞培養中、かつ分子状酸素の存在下で実施される;またはインビトロで、反応培養液中、分子状酸素および単離された形態の少なくとも1つの該チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドの存在下で実施される、実施形態16の方法。
【0090】
18.ステップa.が、少なくとも1つの該チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドを発現する組み換え非ヒト宿主生物または細胞、特にそれを発現するように形質転換された組み換え細胞を、イソバレンセンまたはイソバレンセン含有組成物の存在下で、イソバレンセンの酸化に適した条件で培養することにより実行される、実施形態16および17のいずれかの方法。
【0091】
19.ステップa.のイソバレンセンの変換が、P450レダクターゼ(CPR)活性を有するポリペプチドの存在下で、および任意選択により、添加された酸化還元等価物、特にNAD(P)Hの存在下で実施される、実施形態16~18のいずれか1つの方法。
【0092】
触媒活性のために、上記のP450をP450-レダクターゼ(CPR)と組み合わせて用いる必要があり、後者はNADPH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)からP450活性部位へと電子を移動させることができ、したがってP450活性を再構成する。プロセスをインビトロおよびインビボのどちらで実行する場合も、CPRが存在しなくてはならない。方法がインビボで実行される場合、CPRは、宿主生物または細胞内に天然に存在している場合もあるし、そのような生物または細胞を、本発明のチトクロムP450ポリペプチドを発現するための形質転換の前、同時、または後に、CPRを発現するように形質転換する場合もある。本発明の好ましい実施形態では、宿主細胞または生物は、本発明のポリペプチドおよびCPRの両方を含む融合ポリペプチドにより、形質転換されている。別の好ましい実施形態では、CPRは植物CPRである。それは最も好ましくは、メンタ・ピペリタ(Mentha piperita)CPRに由来する。
【0093】
方法がインビトロで実行される場合、テルペン化合物およびCPRと接触させるチトクロムP450は、それを発現する任意の生物から標準的なタンパク質または酵素抽出技術を用いて抽出することにより、得ることができる。宿主生物が、本発明のポリペプチドを培養培地へ放出する単細胞生物または細胞である場合、たとえば膜アンカーが存在しない場合、該ポリペプチドはたとえば遠心法により培養培地から簡単に回収することができ、任意選択により、続いて洗浄ステップを行い、そして好適な緩衝液に再懸濁させる。生物または細胞が、その細胞内にポリペプチドを蓄積させる場合、該ポリペプチドは、細胞を破壊または溶解し、そしてさらに細胞溶解物からポリペプチドを抽出することで、得ることができる。植物の天然P450およびCPRなど、P450およびCPRが膜アンカー配列を含む場合、これらは膜に結合しているので、細胞溶解物の膜画分に存在する。膜画分(ミクロソーム)は、公知の方法を用いて粗細胞溶解物を分画遠心することにより、他のタンパク質画分から容易に分離することができる。
【0094】
インビトロの方法では、P450およびCPRが単離された形態で独立して提供される場合もあれば、タンパク質抽出物の一部として提供され、最適なpHの緩衝液に懸濁される場合もある。酵素活性を最適化するために、塩、DTT、NADPH、NADH、FAD、FMN、および他の種類の酵素補因子が適宜添加され得る。適切な条件は、以後の実施例でより詳しく記載されている。
【0095】
20.該CPRが、配列番号23と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態19の方法。
【0096】
21.ステップa.の前に、イソバレンセンシンターゼ活性を有するポリペプチドの存在下でのファルネシル二リン酸(FPP)の環化をさらに含む、実施形態16~20のいずれか1つの方法。
【0097】
22.該イソバレンセンシンターゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号3と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態21の方法。
【0098】
23.細胞培養中、FPPを内部で生成する宿主、またはFPPを生成するように遺伝子改変された、もしくは(非改変宿主に対し相対的に)増量したFPPを生成するように遺伝子改変された宿主を用いることにより実施される、実施形態16~22のいずれか1つの方法。
【0099】
24.該宿主が、増量したFPPを生成するように、特にメバロン酸代謝経路を触媒する酵素セット(アセトアセチル-CoAチオラーゼ(atoB)、HMG-CoAシンターゼ(mvaS)、HMG-CoAレダクターゼ(mvaA)、メバロン酸キナーゼ(MvaK1)、ホスホメバロン酸キナーゼ(MvaK2)、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(MvaD)、およびイソペンテニル二リン酸イソメラーゼ(idi))を含む)を発現するように遺伝子改変されている、実施形態23の方法。
【0100】
25.ステップcとして、化学的または生化学的にイソバレンセノールを修飾する方法をさらに含む、実施形態16~24のいずれか1つの方法。
【0101】
ステップcは、前ステップの1つまたは複数の反応産物を事前に単離してもしなくても、実施することができる。
【0102】
26.
a.ステップc1.として、イソバレンセノールのイソバレンセニルカルボン酸エステルへのエステル化;および/または
b.ステップc2.として、イソヌートカトールのイソヌートカトンへの酸化
を含む、実施形態25の方法。
【0103】
27.
a.ステップc1.が、化学的エステル化または生化学的エステル化を含み、該生化学的エステル化は、インビボで細胞培養中、またはインビトロで液体反応培地中、かつイソバレンセノールエステル化活性を有する少なくとも1つのポリペプチドの存在下で、特にエステラーゼ、リパーゼ、アシルトランスフェラーゼ、またはアセチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドの存在下で実施され得;
b.ステップc2.が、化学的酸化または生化学的酸化を含み、該生化学的酸化はインビボで細胞培養中、またはインビトロで液体反応培地中、かつイソヌートカトール酸化活性を有する少なくとも1つのポリペプチドの存在下で、特にイソヌートカトール脱水素活性を有するポリペプチドの存在下で、および任意選択により、添加された酸化還元等価物、特にNAD(P)H、および任意選択により、好適な酵素ベース補因子再生系の存在下で実施され得る、
実施形態26の方法。
【0104】
28.
i.ステップc1.が、イソバレンセノールエステル化活性を有する少なくとも1つのポリペプチドを発現する、特に発現するように遺伝子改変されている、より具体的には発現するように形質転換されている、非ヒト宿主生物、特に組み換え宿主または細胞を、イソバレンセノールをまたは主にイソバレンセノールを含有する反応産物のような、イソバレンセノール含有組成物の存在下で、イソバレンセノールのエステル化に適した条件で培養することにより実行され;または
ii.ステップc2.が、イソヌートカトール脱水素化活性を有する少なくとも1つのポリペプチドを発現する、特に発現するように遺伝子改変されている、より具体的には発現するように形質転換されている、非ヒト宿主生物、特に組み換え宿主または細胞を、イソヌートカトールをまたは主にイソヌートカトールを含有する反応産物のような、イソヌートカトール含有組成物の存在下で、イソヌートカトールの酸化(脱水素化)に適した条件で培養することにより実行される、
実施形態27の方法。
【0105】
29.該チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドが、
i.配列番号19と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、N末端が少なくとも1つのアミノ酸残基により伸長しているVzCP8201、
ii.配列番号21と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、N末端が少なくとも1つのアミノ酸残基により伸長しているVzCP521-11;および
iii.配列番号20と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、N末端が少なくとも1つのアミノ酸残基により伸長しているVzCP7186
から選択される、実施形態16~28のいずれか1つの方法。
【0106】
たとえばポリペプチドは、1個の天然アミノ酸残基、特にメチオニン残基により、または1~50、1~40、1~30、1~25、特に5~25、もしくは15~25の連続するアミノ酸残基を含む任意の配列により、伸長している場合がある。配列は異なる機能性を有し得、たとえば、膜アンカー配列として機能し得、タンパク質発現を改善し得、または酵素機能を改善し得る。
【0107】
30.該チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドが、
i.配列番号19と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、N末端がメチオニンまたはその天然もしくは合成膜アンカー配列により伸長しているVzCP8201、
ii.配列番号21と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、N末端がメチオニンまたはその天然もしくは合成膜アンカー配列により伸長しているVzCP521-11;および
iii.配列番号20と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、N末端がメチオニンまたはその天然もしくは合成膜アンカー配列により伸長しているVzCP7186
から選択される、実施形態29の方法。
【0108】
特に、それぞれの天然アンカー配列は、本明細書で開示されるそれぞれの全長配列に由来し得る。やはりアンカー配列として機能し得る人工N末端配列が、容易に合成され得る。例として、配列番号24のアミノ酸配列を含むN末端ペプチド、またはそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する機能的均等配列もしくはアナログ配列が言及され得る。
【0109】
31.該チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有するポリペプチドが、
i.配列番号7または10と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVzCP8201;
ii.配列番号18と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVzCP521-11;および
iii.配列番号13と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVzCP7186
から選択される、実施形態30の方法。
【0110】
イソヌートカトールは、たとえば生化学的または化学的に、対応するケトンへと容易に酸化され得(たとえばOxidation of Alcohols to Aldehydes and Ketones, G. Tojo and M. Fernadez, in Basic Reactions in Organic Synthesis (2007)を参照)、それによってベチベル油の主構成要素の1つであるイソヌートカトンが生成される。同様に、ベータ-ベチボールからベータ-ベチボンを、そしてヌートカトールからヌートカトンを得ることができる。
【0111】
a3.新規のチトクロムP450酵素
32.配列番号20(VzCP7186)と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を含み、かつチトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有する、特にジザエンを、ジザエノール、特にアルファ-ジザエノール(すなわち(+)-ジザエノール)へと、またはジザエノール、特にアルファ-ジザエノールを主に含有する反応産物へと変換する能力を有する、かつ/あるいはイソバレンセンをイソバレンセノールへと、またはイソバレンセノールを主に含有する反応産物へと変換する能力を有する、ポリペプチド。
【0112】
33.膜アンカー配列をさらに含む、実施形態32のポリペプチド。
【0113】
34.配列番号13および15から選択されるアミノ酸配列を含む、または配列番号13もしくは15と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を含む、ポリペプチドから選択される、実施形態32または33のポリペプチド。
【0114】
35.実施形態32~34のいずれか1つのポリペプチドをコードする核酸。
【0115】
36.配列番号13、15、または20と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するポリペプチドをコードするコードヌクレオチド配列またはその相補配列を含む、実施形態35の核酸。
【0116】
37.実施形態35および36のいずれか1つのコード核酸を含む、発現ベクター。
【0117】
38.ウイルスベクター、バクテリオファージ、またはプラスミドの形態の、実施形態37の発現ベクター。
【0118】
39.コード核酸が、少なくとも1つの調節配列、たとえば転写、翻訳開始または終結を制御する、たとえば転写プロモーター、オペレーター、もしくはエンハンサー、またはmRNAリボソーム結合部位に連結されており、かつ任意選択により、少なくとも1つの選択マーカーを含んでいる、実施形態37または38の発現ベクター。
【0119】
40.実施形態35および36のいずれか1つの少なくとも1つの核酸を内包している、非ヒト宿主生物または細胞。
【0120】
41.該非ヒト宿主生物が、真核生物または原核生物、特に植物、細菌、または真菌、特に酵母である、実施形態40の非ヒト宿主生物。
【0121】
42.該細菌が、エスケリキア(Escherichia)科の、特にE.コリ(E.coli)であり、該酵母が、サッカロミケス(Saccharomyces)科の、特にS.ケレウィシアエ(S.cerevisiae)である、実施形態41の非ヒト宿主生物。
【0122】
43.植物細胞である、実施形態40の非ヒト宿主細胞。
【0123】
44.実施形態32~34のいずれか1つの少なくとも1つのポリペプチドを製造する方法であって、
a)実施形態35および36のいずれか1つの少なくとも1つの核酸を内包し、かつ実施形態32~34のいずれか1つの少なくとも1つのポリペプチドを発現するか過剰発現する、非ヒト宿主生物または細胞を培養すること;
b)任意選択により、ステップa.で培養した非ヒト宿主生物または細胞から該ポリペプチドを単離すること
を含む、方法。
【0124】
ある好ましい実施形態によると、該方法は、ステップa)の前に、非ヒト宿主生物または細胞を、本発明のポリペプチドを発現するか過剰発現するように、本発明の少なくとも1つの核酸で形質転換することをさらに含む。非ヒト宿主生物または細胞の、たとえば形質転換による遺伝子移入、および培養は、酸化テルペンをインビボで生成する方法について本明細書に記載されるようにして、実行され得る。
【0125】
ステップb)は、生物または細胞から特定のポリペプチドを単離するための当技術分野で周知の任意の技法を用いて実施され得る。
【0126】
45.ステップa.の前に、非ヒト宿主生物または細胞に、実施形態32~34のいずれか1つのポリペプチドを発現するか過剰発現するように、実施形態35および36のいずれか1つの少なくとも1つの核酸を与えることをさらに含む、実施形態44の方法。
【0127】
46.テルペン化合物を酸化することができる変異ポリペプチドを調製する方法であって、
a.実施形態35および36のいずれか1つの核酸を選択するステップ;
b.選択された核酸を修飾して、少なくとも1つの変異核酸を得るステップ;
c.宿主細胞または単細胞生物に変異核酸配列を与えて、変異核酸配列によりコードされるポリペプチドを発現させるステップ;
d.テルペン化合物を酸化する活性を有する少なくとも1つの変異ポリペプチドを選別するステップ;
e.任意選択により、変異ポリペプチドが所望の活性をもたない場合、所望の活性を有するポリペプチドが得られるまで、プロセスステップa.からd.を繰り返すステップ;および
f.任意選択により、ステップd.またはe.で所望の活性を有する変異ポリペプチドが同定された場合、対応する変異核酸を単離するステップ
を含む、方法。
【0128】
ステップ(b)では、たとえばランダム変異誘発、部位特異的変異誘発、またはDNAシャフリングにより、多数の変異核酸配列が作製され得る。以下に、より詳しく記載する。
【0129】
したがって、配列番号13または15を含むポリペプチドをコードする核酸またはその相補配列が、チトクロムP450をコードする任意の他の核酸、たとえばベチベリア・ジザニオイデス(L.)ナッシュ(Vetiveria zizanioides(L.)Nash)以外の生物から単離された核酸と組み換えられ得る。こうして変異核酸を得ることおよび分離することができ、それを標準的な手順、たとえば本実施例で開示されるような手順にしたがい、宿主細胞の形質転換に用いることができる。
【0130】
ステップ(d)では、ステップ(c)で得られたポリペプチドを、少なくとも1つの修飾されたチトクロムP450活性について選別する。発現したポリペプチドが選別され得る所望の修飾されたチトクロムP450活性の例としては、KMまたはVmax値により測定される増強または低下した酵素活性、修飾された位置化学または立体化学、および変更された基質利用または産物分布が挙げられる。酵素活性の選別は、当業者にはよく知られる、本実施例で開示されるような手順にしたがい、実施され得る。
【0131】
ステップ(e)は、プロセスステップ(a)~(d)の繰り返しを提供しており、それは好ましくは並行して実施され得る。したがって、かなりの数の変異核酸を作製することで、多数の宿主細胞が同時に異なる変異核酸で形質転換され得、次いでより多数のポリペプチドの選別が可能になる。こうして当業者の裁量により、所望のバリアントポリペプチドを得る確率を上昇させることができる。上記の実施形態の各々では、配列同一性の程度は互いに独立して、それぞれの配列番号の配列と好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも98%同一である。より好ましい実施形態では、言及したポリペプチドは、それぞれの配列番号の配列を含む。さらに好ましくは、それぞれの配列番号の配列からなる。
【0132】
47.酸化テルペンを調製する方法であって、
a.少なくとも1つのテルペン基質を、実施形態32~34のいずれか1つで定義されたチトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有するか、実施形態35および36のいずれか1つで定義された核酸によりコードされるポリペプチドと接触させることであって、
そうすることにより、少なくとも1つのテルペンを少なくとも1つの酸化産物へと変換すること;および
b.任意選択により、ステップa.で得られた少なくとも1つの酸化産物を単離すること
を含む、方法。
【0133】
本発明の上記の実施形態では、チトクロムP450の配列は、膜アンカー配列も含み得る。同一性パーセンテージは好ましくは、特に断らない限り、ポリペプチドにおいてP450活性を提供する前述の部分に言及するものである。真核生物では、P450モノオキシゲナーゼは膜結合タンパク質であり、これらのタンパク質のN末端配列はこれらの酵素の膜局在に不可欠な膜アンカーを構成する。タンパク質のこの部分は、ふつうはプロリンが豊富なドメインにより区切られており、酵素活性の特異性の制御には重要ではない。したがってこの領域は、触媒活性に影響を与えることなく、欠失、挿入、または変異により修飾され得る。しかし、植物P450を含めた真核P450のN末端領域の特異的な修飾は、微生物で発現すると、機能的組み換えタンパク質のレベルに好影響を及ぼすことがわかっている(Halkier et al (1995) Arch. Biochem. Biophys. 322, 369-377; Haudenschield et al (2000) Arch. Biochem. Biophys. 379, 127-136)。したがって、こうした過去の観測に基づき、 の膜アンカー領域を、ポリペプチドを発現する生物に好適なアンカー配列が得られるように再設計することが可能であり、一般的なタイプの宿主生物用に設計された配列が当業者には公知である。任意の好適なアンカー配列を、本発明のポリペプチドと組み合わせて用いることができる。
【0134】
本明細書で用いるP450酵素およびテルペンシンターゼは、好ましくはベチベリア・ジザニオイデス(L.)ナッシュ(Vetiveria zizanioides(L.)Nash)から単離された核酸によりコードされる。
【0135】
P450酵素については、アルコールの、対応するアルデヒド、ケトン、および/またはカルボン酸への、同じ炭素原子の連続的酸化を触媒することが公知である。したがって、上記の実施形態では、ジザエノールのジザエノンまたは他の対応する酸化産物への酸化は、同じP450酵素または別のジザエノール酸化活性により、触媒され得る。さらに、上記の実施形態では、イソバレンセノールまたはイソヌートカトールの、他のイソバレンセノール酸化産物(アルデヒドまたはケトン)またはイソヌートカトンまたは他の対応する酸化産物への酸化は、同じP450酵素または別のイソバレンセノールもしくはイソヌートカトール酸化活性により、触媒され得る。
【0136】
方法、ベクター、または非ヒト宿主生物を含めた本明細書の任意の実施形態の特定の一態様では、チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有するVzCP8201ポリペプチドが、配列番号7、配列番号10、または配列番号19と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0137】
方法、ベクター、または非ヒト宿主生物を含めた本明細書の任意の実施形態の特定の一態様では、チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有するVzCP8201ポリペプチドが、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号55と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸によりコードされる。
【0138】
方法、ベクター、または非ヒト宿主生物を含めた本明細書の任意の実施形態の特定の一態様では、チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有するVzCP521-11ポリペプチドが、配列番号18または配列番号21と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0139】
方法、ベクター、または非ヒト宿主生物を含めた本明細書の任意の実施形態の特定の一態様では、チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有するVzCP521-11ポリペプチドが、配列番号16、配列番号17、または配列番号54と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸によりコードされる。
【0140】
方法、ベクター、または非ヒト宿主生物を含めた本明細書の任意の実施形態の特定の一態様では、チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有するVzCP7186ポリペプチドが、配列番号13、配列番号15、または配列番号20と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0141】
方法、ベクター、または非ヒト宿主生物を含めた本明細書の任意の実施形態の特定の一態様では、チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有するVzCP7186ポリペプチドが、配列番号11、配列番号12、または配列番号14と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸によりコードされる。
【0142】
方法、ベクター、または非ヒト宿主生物を含めた本明細書の任意の実施形態の特定の一態様では、ジザエンシンターゼ活性を有するポリペプチドが、(a)配列番号33と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、または(b)配列番号31、配列番号32、配列番号34、または配列番号51と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸によりコードされる、VzZS1である。
【0143】
方法、ベクター、または非ヒト宿主生物を含めた本明細書の任意の実施形態の特定の一態様では、ジザエンシンターゼ活性を有するポリペプチドが、(a)配列番号38と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、または(b)配列番号35、配列番号36、配列番号37、または配列番号52と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸によりコードされる、VzZS2である。
【0144】
方法、ベクター、または非ヒト宿主生物を含めた本明細書の任意の実施形態の特定の一態様では、ジザエンシンターゼ活性を有するポリペプチドが、(a)配列番号42と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、または(b)配列番号39、配列番号40、配列番号41、または配列番号53と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸によりコードされる、VzZS2-Nter2である。
【0145】
方法、ベクター、または非ヒト宿主生物を含めた本明細書の任意の実施形態の特定の一態様では、CPRが、配列番号22と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸によりコードされる。
【0146】
b.本発明で利用可能なポリペプチド
この文脈では、以下の定義が適用される:
「ポリペプチド」という用語は、連続的に重合したアミノ酸残基、たとえば少なくとも15残基、少なくとも30残基、少なくとも50残基の、アミノ酸配列を意味する。本明細書のいくつかの実施形態では、ポリペプチドは、酵素であるアミノ酸配列、またはその断片、バリアント、もしくは変異体を含む。
【0147】
「タンパク質」という用語は、アミノ酸がペプチド共有結合により連結されている任意の長さのアミノ酸配列を指し、天然または合成にかかわらずオリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド、および全長タンパク質を含む。
【0148】
「単離(された)」ポリペプチドという用語は、当技術分野で公知の、組み換え法、生化学的方法、および合成方法などの、任意の方法または方法の組み合わせにより、その天然環境から取り出されたアミノ酸配列を指す。
【0149】
「標的ペプチド」は、タンパク質またはポリペプチドを標的とするアミノ酸配列、細胞内小器官、すなわちミトコンドリアもしくはプラスチド、または細胞外スペース(分泌シグナルペプチド)を指す。標的ペプチドをコードする核酸配列は、タンパク質またはポリペプチドのアミノ末端端部、たとえばN末端端部をコードする核酸配列に融合させてもよく、あるいはネイティブ標的ポリペプチドと交換するように用いてもよい。
【0150】
「膜アンカーペプチド」は、真核チトクロムP450の、これら酵素の膜局在に不可欠な、N末端部分を指す。
【0151】
本発明はまた、本明細書に具体的に記載されるポリペプチドの「機能的均等物」(「アナログ」または「機能的変異」または「バリアント」とも呼ばれる)に関する。
【0152】
たとえば、「機能的均等物」は、本明細書で言及される酵素の酵素活性、たとえばイソバレンセンもしくはジザエン酸化活性またはジザエンシンターゼ活性またはイソバレンセンシンターゼ活性を決定するのに用いられる試験において、本明細書に具体的に記載される特定のポリペプチドの活性と比べて少なくとも1~10%、または少なくとも20%、または少なくとも50%、または少なくとも75%、または少なくとも90%高いか低い活性を示すポリペプチドを指す。
【0153】
本発明のポリペプチドのそのような「機能的均等物」または「バリアント」は、たとえば所望の増強もしくは低下した酵素活性、修飾された位置化学もしくは立体化学、または変更された基質利用もしくは産物分布、基質に対し増加した親和性、1つもしくは複数の所望の化合物の生成について改善された特異性、増加した酵素反応速度、特定の環境(pH、温度、溶媒、その他)におけるより高い活性もしくは安定性、または所望の発現系における改善された発現レベルを得るために、用いられ得る。バリアントまたは変異体は、当技術分野で公知の任意の方法により作ることができる。ネイティブポリペプチドのバリアントおよび誘導体は、他のまたは同じ植物の系統または種の天然のバリアントまたはバリアントのヌクレオチド配列から単離することによって、あるいは本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の変異を人工的にプログラムすることによって、得ることができる。ネイティブアミノ酸配列の変更は、多数の従来の方法(以下を参照)のいずれかにより達成することができる。
【0154】
本発明の「機能的均等物」はまた、本明細書に記載のアミノ酸配列の少なくとも1つの配列位置において、具体的に記載したものとは異なるアミノ酸を有するが、前述の生物学的活性の1つ、たとえばイソバレンセン酸化活性、ジザエン酸化活性、ジザエンシンターゼ活性、またはイソバレンセンシンターゼ活性のような酵素活性をもつ特定の変異体も含む。したがって「機能的均等物」は、1~20、特に1~15、または5~10のような1つまたは複数のアミノ酸の付加、置換、特に保存的置換、欠失、および/または反転により得られる変異体を含み、こうした変更は、本発明の特性プロファイルをもつ変異体が得られるならば、どの位置に存在してもよい。機能的均等物はまた、特に、変異体と未変ポリペプチドとで活性のパターンが質的に一致する場合、すなわち、たとえば同じアゴニストまたはアンタゴニストまたは基質との相互作用が、たとえ比率(すなわち当技術分野に好適なEC
50もしくはIC
50値、または任意の他のパラメーターにより表される)は違っても観測される場合に、提供される。好適な(保存的)アミノ酸置換の例を下の表に示す:
【表1】
【0155】
そのような置換の効果は、PAM-120、PAM-200、およびPAM-250などの、Altschul(J. Mol. Biol. 219:555-65, 1991)で論じられているような置換スコアのマトリックスを用いて計算することができる。他のそのような保存的置換、たとえば類似の疎水性特徴を有する全領域の置換が周知である。本発明のポリペプチドは、非保存的置換に供することもでき、したがってより多様なバリアントが生じるが、ただしそのようなバリアントは所望の酵素活性を保持している。バリアントは、バリアントポリペプチドをコードする核酸配列のヌクレオチド置換、欠失、挿入によっても生成され得る。
【0156】
上記の意味の「機能的均等物」は、本明細書に記載されるポリペプチドの「前駆体」、ならびにポリペプチドの「機能的誘導体」および「塩」でもある。
【0157】
その場合の「前駆体」は、所望の生物学的活性のある、またはない、ポリペプチドの天然または合成の前駆体である。
【0158】
「塩」という表現は、本発明のタンパク質分子のカルボキシル基の塩ならびにアミノ基の酸付加塩を意味する。カルボキシル基の塩は、公知の方法で生成することができ、無機塩、たとえばナトリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄、および亜鉛の塩、ならびにたとえばアミン、たとえばトリエタノールアミン、アルギニン、リジン、ピペリジン等の有機塩基との塩を含む。酸付加の塩、たとえば無機酸、たとえば塩酸または硫酸との塩、および有機酸、たとえば酢酸およびシュウ酸との塩も、本発明に含まれる。
【0159】
本発明のポリペプチドの「機能的誘導体」も、アミノ酸の機能的側鎖またはそれらのN末端もしくはC末端の端部に、公知の技法を用いて生成され得る。そのような誘導体としては、たとえば、カルボン酸基の脂肪族エステル、アンモニアとのまたは第一級もしくは第二級アミンとの反応により得られるカルボン酸基のアミド;アシル基との反応により生成される遊離アミノ基のN-アシル誘導体;またはアシル基との反応により生成される遊離ヒドロキシル基のO-アシル誘導体が挙げられる。
【0160】
天然の「機能的均等物」には、他の生物から得ることができるポリペプチド、ならびに天然のバリアントも含まれる。たとえば、配列比較により相同配列領域エリアを確立することができ、そして本発明の具体的なパラメーターを根拠に均等なポリペプチドを決定することができる。
【0161】
「機能的均等物」には、本発明のポリペプチドの、個々のドメインもしくは配列モチーフのような、またはN末端もしくはC末端の切断形態のような、「断片」も含まれ、これらは所望の生物学的機能を示す場合も示さない場合もある。好ましくは、そのような「断片」は少なくとも質的には所望の生物学的機能を保持している。
【0162】
「機能的均等物」は、さらに、融合タンパク質であって、本明細書に記載のポリペプチド配列の1つ、またはそれに由来する機能的均等物と、機能的に異なる少なくとも1つのさらなる異種配列とを、機能的N末端結合またはC末端結合として(すなわち融合タンパク質部分が実質的に相互に損なうことなく)有する。そのような融合ポリペプチドは、関心対象のポリペプチドの発現を増強するのに用いることができ、タンパク質の精製に有用であり得、または所望の環境もしくは発現系におけるポリペプチドの酵素活性を改善することができる。これらの異種配列の非限定例は、たとえばシグナルペプチド、ヒスチジンアンカー、膜アンカー、または他の酵素である。
【0163】
本発明に含まれる「機能的均等物」としては、具体的に開示されるポリペプチドのホモログも挙げられる。これらは、具体的に開示されるアミノ酸配列に対し、Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad, Sci. (米国) 85(8), 1988, 2444-2448のアルゴリズムにより計算される、少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、特に少なくとも80%または85%の、たとえば90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%などの相同性(または同一性)を有する。パーセンテージとして表される本発明の相同ポリペプチドの相同性または同一性は、本明細書に具体的に記載されるアミノ酸配列の1つの全体の長さに対しパーセンテージとして表されるアミノ酸残基の同一性を、特に意味する。
【0164】
パーセンテージとして表される同一性データは、BLASTアラインメント、アルゴリズムblastp(タンパク質-タンパク質BLAST)の支援により、または本明細書で以下に指定するClustal設定を用いることにより、決定することもできる。
【0165】
タンパク質のグリコシル化があり得る場合、本発明の「機能的均等物」は、脱グリコシル化またはグリコシル化された形態の、ならびにグリコシル化パターンの変更により得ることができる修飾された形態の、本明細書に記載されるポリペプチドを含む。
【0166】
本発明のポリペプチドの機能的均等物またはホモログは、変異誘発により、たとえば点変異により、タンパク質の伸長もしくは短縮により、または以下により詳しく記載されるようにして、生成され得る。
【0167】
本発明のポリペプチドの機能的均等物またはホモログは、変異体、たとえば短縮変異体のコンビナトリアルデータベースを選別することにより同定され得る。たとえば、核酸レベルのコンビナトリアル変異誘発により、たとえば合成オリゴヌクレオチドの混合物の酵素的連結により、タンパク質バリアントの多様なデータベースを生成することができる。縮重オリゴヌクレオチド配列から可能なホモログのデータベースを生成するのに使用できる方法が非常に多くある。縮重遺伝子配列の化学合成は、自動DNAシンセサイザーで実行することができ、次いで合成遺伝子を好適な発現ベクター内で連結することができる。縮重ゲノムを使用することにより、所望のセットの可能なタンパク質配列をコードする全配列を、混合体として供給することが可能になる。縮重オリゴヌクレオチドの合成方法は、当業者には公知である。
【0168】
従来技術では、点変異または短縮により生成されたコンビナトリアルデータベースの遺伝子産物を選別する、そして選択された特性を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリーを選別するいくつかの技法が公知である。これらの技法を、本発明のホモログのコンビナトリアル変異誘発により生成された遺伝子バンクの高速選別に適応させてもよい。ハイスループット分析に基づく、巨大遺伝子バンクの選別に最も頻繁に用いられる技法には、複製可能な発現ベクターにおける遺伝子バンクのクローニング、得られたベクターデータベースでの好適な細胞の形質転換、および所望の活性の検出が、産物が検出された遺伝子をコードするベクターの単離を容易にする、という条件での、コンビナトリアル遺伝子の発現が含まれる。ホモログを同定するために、データベース中の機能的変異体の頻度を増加させる技法である再帰集団変異誘発(Recursive Ensemble Mutagenesis)(REM)を、選別試験と組み合わせて用いることができる。
【0169】
本明細書で提供する実施形態は、本明細書で開示されるポリペプチドのオルソログおよびパラログ、ならびにそのようなオルソログおよびパラログを同定し単離する方法を提供する。
【0170】
c.本発明で利用可能なコード核酸配列
この文脈では、以下の定義が適用される:
「核酸配列」、「核酸」、「核酸分子」、および「ポリヌクレオチド」という用語は交換可能に用いられ、ヌクレオチドの配列を意味する。核酸配列は、任意の長さの一本鎖または二本鎖デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドであってもよく、遺伝子のコードまたは非コード配列、エキソン、イントロン、センスおよびアンチセンス相補配列、ゲノムDNA、cDNA、miRNA、siRNA、mRNA、rRNA、tRNA、組み換え核酸配列、単離および精製された天然DNAおよび/またはRNA配列、合成DNAおよびRNA配列、断片、プライマー、および核酸プローブを含み得る。当業者であれば、RNAの核酸配列は、チミン(T)がウラシル(U)で置換されている以外はDNA配列と同一であることを知っている。「ヌクレオチド配列」という用語はまた、分離した断片の形態の、またはより大きい核酸の構成成分としてのポリヌクレオチド分子またはオリゴヌクレオチド分子を含むものと理解されたい。
【0171】
「単離(された)核酸」または「単離(された)核酸配列」は、核酸または核酸配列が天然に存在する環境とは異なる環境に存在する核酸または核酸配列に関し、かつ汚染内在物質を実質的に含まないものを含み得る。本明細書で核酸に使われる「天然に(存在している)」という用語は、自然界の生物細胞に見られる核酸であって、人間がラボで意図的に修飾していない核酸を指す。
【0172】
ポリヌクレオチドまたは核酸配列の「断片」は、本明細書の実施形態のポリヌクレオチドの、特に少なくとも15bp、少なくとも30bp、少なくとも40bp、少なくとも50bp、および/または少なくとも60bpの長さの、一続きのヌクレオチドを指す。特に、ポリヌクレオチドの断片は、本明細書の実施形態のポリヌクレオチドの、少なくとも25、より具体的には少なくとも50、より具体的には少なくとも75、より具体的には少なくとも100、より具体的には少なくとも150、より具体的には少なくとも200、より具体的には少なくとも300、より具体的には少なくとも400、より具体的には少なくとも500、より具体的には少なくとも600、より具体的には少なくとも700、より具体的には少なくとも800、より具体的には少なくとも900、より具体的には少なくとも1000の一続きのヌクレオチドを含む。限定ではないが、本明細書におけるポリヌクレオチドの断片は、PCRプライマーとして、および/またはプローブとして、あるいはアンチセンス遺伝子サイレンシングまたはRNAiのために使用され得る。
【0173】
本明細書では、特定の条件での「ハイブリダイゼーション」またはハイブリダイズするという用語は、互いに極めて同一または相同であるヌクレオチド配列同士が結合を維持するような、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を記載するものである。条件は、少なくとも約70%、たとえば少なくとも約80%、およびたとえば少なくとも約85%、90%、または95%同一である配列同士が結合を維持するようなものであり得る。低ストリンジェンシー、中ストリンジェンシー、および高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件の定義を、本明細書で以下に提供する。Ausubelら(1995, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, セクション2、4、および6)で例示されているように、最小限の実験で、当業者が適切なハイブリダイゼーション条件を選択することもできる。さらに、Sambrookら(1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Press, 第7、9、および11章)にもストリンジェンシー条件が記載されている。
【0174】
「組み換え核酸配列」は、ラボで使用される方法(たとえば分子クローニング)により、2つ以上の供給源からの遺伝子材料を合わせ、天然に存在しない、かつそうでなければ生物学的生物には見られない核酸配列を作製するか修飾することで得られる、核酸配列である。
【0175】
「組み換えDNA技術」は、たとえばWeigel and Glazebrook編集のLaboratory Manuals, 2002, Cold Spring Harbor Lab Press;およびSambrook et al., 1989, Cold Spring Harbor, NY, Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されるような、組み換え核酸配列を調製する分子生物学的手順を指す。
【0176】
「遺伝子」という用語は、細胞においてRNA分子、たとえばmRNAに転写される領域を含み、好適な調節領域、たとえばプロモーターに機能的に連結されている、DNA配列を意味する。したがって遺伝子は、プロモーター、たとえば翻訳開始に関わる配列を含む5’リーダー配列、cDNAまたはゲノムDNAのコード領域、イントロン、エキソン、および/またはたとえば転写終結部位を含む3’非翻訳配列などの、いくつかの機能的に連結された配列を含み得る。
【0177】
「多シストロン性」は、同じ核酸分子内で2つ以上のポリペプチドを別々にコードすることができる核酸分子、特にmRNAを指す。多シストロン性核酸は、2つ以上のオープン読み枠(ORF)を含有し、各ORFの情報がポリペプチドに翻訳される。多シストロン性核酸内のORF配列は、翻訳開始のためのリボソーム結合部位(RBS)を一般に含む非コード配列により分離されている。
【0178】
「キメラ遺伝子」は、ある種において通常天然には見られない任意の遺伝子、特に天然では互いに関連のない核酸配列の1つまたは複数の部分が存在する遺伝子を指す。たとえばプロモーターが、転写領域または別の調節領域の一部または全部と、自然界では関連がない。「キメラ遺伝子」という用語は、プロモーターまたは転写調節配列が、1つまたは複数のコード配列に、またはアンチセンス、すなわちセンス鎖の逆相補鎖または逆方向反復配列に、機能的に連結されている(センスおよびアンチセンス、したがって転写後RNA転写物は二本鎖RNAを形成)、発現コンストラクトを含むと理解される。「キメラ遺伝子」という用語はまた、新しい遺伝子を生成するため1つまたは複数のコード配列の部分の組み合わせにより得られた遺伝子を含む。
【0179】
「3’UTR」または「3’非翻訳配列」(「3’非翻訳領域」または「3’末端」とも呼ばれる)は、遺伝子のコード配列の下流にみられる核酸配列を指し、たとえば転写終結部位、および(すべてではないが、ほとんどの真核mRNAにおいて)AAUAAAなどのポリアデニル化シグナルまたはそのバリアントを含む。転写の終結後、mRNA転写物はポリアデニル化シグナルの下流で切断され得、そしてmRNAの翻訳部位、たとえば細胞質への輸送に関与する、ポリ(A)尾部が付加され得る。
【0180】
「プライマー」という用語は、鋳型核酸配列にハイブリダイズして、該鋳型に相補的な核酸配列の重合に用いられる、短い核酸配列を指す。
【0181】
「選択マーカー」という用語は、発現すると、細胞または該選択マーカーを含む細胞の選択に使うことができる任意の遺伝子を指す。選択マーカーの例を以下に記載する。当業者には、種々の標的種に対し、種々の抗生物質、殺菌剤、栄養要求性、または除草剤選択マーカーが利用可能であることは公知である。
【0182】
「形質転換(された)」という用語は、宿主が上記の任意の実施形態で必要とされる各核酸の1つ、2つ、またはそれ以上のコピーを含むように遺伝子操作されている、という事実を指すので、特に断らない限り、本発明の文脈では広義に理解すべきである。好ましくは「形質転換(された)」という用語は、宿主が、形質転換された核酸によりコードされるポリペプチドを異種発現すること、ならびに該ポリペプチドを過剰発現することを指す。したがって、一実施形態では、本発明は、形質転換されていない同じ生物よりも多量にポリペプチドを発現する形質転換生物を提供する。
【0183】
一実施形態では、形質転換されたDNAが宿主生物および/または細胞の染色体内に組み込まれ、したがって安定組み換え系が生じる。本発明は、当技術分野で公知の任意の染色体組み込み法を用いて実施することができ、限定ではないが、リコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)、ウイルス部位特異的染色体挿入、アデノウイルスおよび前核インジェクションが挙げられる。本発明はまた、本明細書で定義されるポリペプチドをコードする核酸配列に関する。具体的には、本発明はまた、たとえば人工ヌクレオチドアナログを用いて得ることができる、上記のポリペプチドおよびそれらの機能的均等物の1つをコードする核酸配列(一本鎖および二本鎖DNAおよびRNA配列、たとえばcDNA、ゲノムDNA、およびmRNA)に関する。
【0184】
本発明は、本発明のポリペプチドまたはその生物活性セグメントをコードする単離核酸分子と、たとえば本発明のコード核酸を同定または増幅するためのハイブリダイゼーションのプローブまたはプライマーとして用いられ得る核酸断片との両方に関する。
【0185】
本発明はまた、本明細書で具体的に開示される配列に対しある程度の「同一性」を有する核酸に関する。2つの核酸間の「同一性」は、いずれの場合も、核酸の全長におけるヌクレオチドの同一性を意味する。
【0186】
2つのヌクレオチド配列間の「同一性」(ペプチドまたはアミノ酸配列の場合も同様)は、これら2つの配列のアラインメントを生成した場合の、これら2つの配列において同一であるヌクレオチド残基(またはアミノ酸残基)の数の関数である。同一残基は、アラインメントの所与の位置で、2つの配列における同じ残基と定義される。本明細書では、配列同一性パーセンテージは、最適なアラインメントから、2つの配列間で同一の残基の数を最短配列の残基の総数で割ってから100をかけることにより、計算される。最適なアラインメントは、同一性パーセンテージが最大となるアラインメントである。最適なアラインメントを得るために、アラインメントの片方または両方の配列の1つまたは複数の位置にギャップを導入する場合がある。その場合、配列同一性パーセンテージの計算では、これらのギャップを非同一残基として考慮に入れる。アミノ酸または核酸配列の同一性パーセンテージを決定する目的でのアラインメントは、コンピュータープログラム、たとえばワールド・ワイド・ウェブ上で利用できる一般公開されているコンピュータープログラムを用いるなど、さまざまな方法で実現することができる。
【0187】
特に、アメリカ国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のウェブサイトncbi.nlm.nih.gov/BLAST/bl2seq/wblast2.cgiから入手可能なBLASTプログラム(Tatiana et al, FEMS Microbiol Lett., 1999, 174:247-250, 1999)をデフォルトのパラメーター設定で用いて、タンパク質または核酸配列の最適なアラインメントを得、そして配列同一性パーセンテージを計算することができる。
【0188】
別の例では、同一性を、Informax社(米国)のVector NTI Suite 7.1により、Clustal Method(Higgins DG, Sharp PM. (1989))を以下の設定で用いて計算することができる:
多重アラインメントパラメーター:
ギャップ・オープニング・ペナルティ 10
ギャップ・エクステンション・ペナルティ 10
ギャップ・セパレーション・ペナルティ範囲 8
ギャップ・セパレーション・ペナルティ オフ
アラインメント遅延の同一性% 40
残基特異的ギャップ オフ
親水性残基ギャップ オフ
転位ウェイト 0
ペアワイズ・アラインメント・パラメーター:
FASTアルゴリズム オン
K-tupleサイズ 1
ギャップ・ペナルティ 3
ウィンドウ・サイズ 5
ベスト・ダイアゴナル数 5。
【0189】
あるいは同一性は、Chennaら(2003)のウェブページ:http://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw/index.html#にしたがい、以下の設定で決定することもできる:
DNAギャップ・オープン・ペナルティ 15.0
DNAギャップ・エクステンション・ペナルティ 6.66
DNAマトリックス 同一性
タンパク質ギャップ・オープン・ペナルティ 10.0
タンパク質ギャップ・エクステンション・ペナルティ 0.2
タンパク質マトリックス Gonnet
タンパク質/DNA ENDGAP -1
タンパク質/DNA GAPDIST 4。
【0190】
本明細書に記載のすべての核酸配列(一本鎖および二本鎖DNAおよびRNA配列、たとえばcDNAおよびmRNA)は、ヌクレオチド構成単位から公知の方法で化学合成により、たとえば二重らせんの個々の重複する相補的核酸構成単位の断片縮合により、生成することができる。オリゴヌクレオチドの化学合成は、たとえばホスホアミダイト(phosphoamidite)法(Voet, Voet, 2nd edition, Wiley Press, New York, p. 896-897)により、公知の方法で実施することができる。DNAポリメラーゼのKlenow断片を使った合成オリゴヌクレオチドの蓄積およびギャップ充填、および連結反応、ならびに一般的なクローニング技法が、Sambrookら(1989)に記載されている。以下を参照されたい。
【0191】
本発明の核酸分子は、コード遺伝子領域の3’および/または5’末端からの非翻訳配列をさらに含む場合もある。
【0192】
本発明はさらに、具体的に記載したヌクレオチド配列またはそのセグメントに対し相補的な核酸分子に関する。
【0193】
本発明のヌクレオチド配列は、他の細胞種および生物における相同配列の同定および/またはクローニングに使用することができるプローブおよびプライマーの生成を可能にする。そのようなプローブまたはプライマーは一般に、「ストリンジェント」条件(本明細書で別途定義されている)で、本発明の核酸配列のセンス鎖または対応するアンチセンス鎖の少なくとも約12、好ましくは少なくとも約25、たとえば約40、50、または75の連続するヌクレオチドにハイブリダイズする、ヌクレオチド配列領域を含む。
【0194】
「単離(された)」核酸分子は、核酸の天然供給源に存在する他の核酸分子から分離され、しかも組み換え技法により生成されていれば、他の細胞物質または培養培地を実質的に含まないことができ、化学的に合成されていれば、化学的前駆体または他の化学物質を含まないことができる。
【0195】
本発明の核酸分子は、分子生物学の標準的技法および本発明が提供する配列情報を使って単離することができる。たとえば、具体的に開示される完全配列の1つまたはそのセグメントをハイブリダイゼーションプローブとして用いて、標準ハイブリダイゼーション技法(たとえばSambrook(1989)に記載されている)により、好適なcDNAライブラリーからcDNAを単離することができる。
【0196】
さらに、開示配列の1つまたはそのセグメントを含む核酸分子を、この配列に基づき構築されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応により単離することができる。こうして増幅された核酸を、好適なベクター内でクローニングすることができ、そしてDNAシーケンシングにより特徴決定することができる。本発明のオリゴヌクレオチドはまた、標準的な合成方法により、たとえば自動DNAシンセサイザーを用いて、生成することもできる。
【0197】
本発明の核酸配列またはその誘導体、これらの配列のホモログまたは一部は、たとえば、他の細菌から、たとえばゲノムまたはcDNAライブラリーを介して、ふつうのハイブリダイゼーション技法またはPCR技法により単離することができる。これらのDNA配列は、本発明の配列と標準条件でハイブリダイズする。
【0198】
「ハイブリダイズする」とは、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドが、ほぼ相補的な配列に標準条件で結合する能力を意味するが、これらの条件では非相補的パートナー間の非特異的結合は生じない。そのためには、配列は90~100%相補的であり得る。互いに特異的に結合できる相補配列の特性は、たとえばノザン・ブロッティングもしくはサザン・ブロッティングに、またはPCRもしくはRT-PCRのプライマー結合に利用される。
【0199】
保存領域の短いオリゴヌクレオチドが、ハイブリダイゼーションに有利に用いられる。しかし、本発明の核酸のもっと長い断片または完全配列をハイブリダイゼーションに使うことも可能である。これらの「標準条件」は、使用する核酸(オリゴヌクレオチド、より長い断片、または完全配列)によって変わり、またはどのタイプの核酸(DNAまたはRNA)をハイブリダイゼーションに使うかによって変わる。たとえば、DNA:DNAハイブリッドの溶融温度は、同じ長さのDNA:RNAハイブリッドよりも、およそ10℃低い。
【0200】
たとえば、特定の核酸によっては、標準条件は、温度42~58℃、濃度0.1~5xSSC(1XSSC=0.15MのNaCl、15mMのクエン酸ナトリウム、pH7.2)の緩衝水溶液中、または追加で50%ホルムアミドの存在下の、たとえば42℃、5xSSC、50%ホルムアミドを意味する。有利には、DNA:DNAハイブリッドのハイブリダイゼーション条件は、0.1xSSC、温度約20℃~45℃、好ましくは約30℃~45℃である。DNA:RNAハイブリッドでは、ハイブリダイゼーション条件は有利には、0.1xSSC、温度約30℃~55℃、好ましくは約45℃~55℃である。これらのハイブリダイゼーション温度は、ホルムアミドの非存在下、およそ100ヌクレオチド長のG+C含有率50%の核酸について計算した溶融温度の値の例である。DNAハイブリダイゼーションの実験条件は、関連の遺伝学の教科書、たとえばSambrookら、1989に記載されており、当業者に公知の式を使って、たとえば核酸長さ、ハイブリッドの種類、またはG+C含有率に応じて、計算することができる。当業者は、Ausubelら(編)(1985)、Brown(編)(1991)といった教科書から、ハイブリダイゼーションに関するさらなる情報を得ることができる。
【0201】
「ハイブリダイゼーション」は特に、ストリンジェント条件で実行され得る。そのようなハイブリダイゼーション条件は、たとえばSambrook (1989)、またはCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6に記載されている。
【0202】
本明細書では、特定の条件でのハイブリダイゼーションまたはハイブリダイズするという用語は、互いに極めて同一または相同であるヌクレオチド配列同士が結合を維持するような、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を記載するものである。条件は、少なくとも約70%、たとえば少なくとも約80%、およびたとえば少なくとも約85%、90%、または95%同一である配列同士が結合を維持するようなものであり得る。低ストリンジェンシー、中ストリンジェンシー、および高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件の定義を、本明細書で提供する。
【0203】
Ausubelら(1995, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, セクション2、4、および6)で例示されているように、最小限の実験で、当業者が適切なハイブリダイゼーション条件を選択することもできる。さらに、Sambrookら(1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Press, 第7、9、および11章)にもストリンジェンシー条件が記載されている。
【0204】
本明細書では、低ストリンジェンシーと定義される条件は以下の通りである。DNA含有フィルターを、35%ホルムアミド、5xSSC、50mMのTris-HCl(pH7.5)、5mMのEDTA、0.1%PVP、0.1%Ficoll、1%BSA、および500μg/mlの変性サケ精子DNAを含有する溶液中、40℃で6時間、前処理する。同溶液に以下の改変を加えてハイブリダイゼーションを実行する:0.02%PVP、0.02%Ficoll、0.2%BSA、100μg/mlのサケ精子DNA、10%(wt/vol)デキストラン硫酸、および5~20x106 32P標識プローブを用いる。ハイブリダイゼーション混合物中、フィルターを40℃で18~20時間インキュベートした後、2xSSC、25mMのTris-HCl(pH7.4)、5mMのEDTA、および0.1%SDSを含有する溶液中、55℃で1.5時間洗浄する。洗浄液を新鮮な溶液と交換し、さらに、60℃で1.5時間インキュベートする。フィルターをドライブロットし、オートラジオグラフィーに曝露する。
【0205】
本明細書では、中ストリンジェンシーと定義される条件は以下の通りである。DNA含有フィルターを、35%ホルムアミド、5xSSC、50mMのTris-HCl(pH7.5)、5mMのEDTA、0.1%PVP、0.1%Ficoll、1%BSA、および500μg/mlの変性サケ精子DNAを含有する溶液中、50℃で7時間、前処理する。同溶液に以下の改変を加えてハイブリダイゼーションを実行する:0.02%PVP、0.02%Ficoll、0.2%BSA、100μg/mlのサケ精子DNA、10%(wt/vol)デキストラン硫酸、および5~20x106 32P標識プローブを用いる。ハイブリダイゼーション混合物中、フィルターを50℃で30時間インキュベートした後、2xSSC、25mMのTris-HCl(pH7.4)、5mMのEDTA、および0.1%SDSを含有する溶液中、55℃で1.5時間洗浄する。洗浄液を新鮮な溶液と交換し、さらに、60℃で1.5時間インキュベートする。フィルターをドライブロットし、オートラジオグラフィーに曝露する。
【0206】
本明細書では、高ストリンジェンシーと定義される条件は以下の通りである。DNA含有フィルターのプレハイブリダイゼーションが、6xSSC、50mMのTris-HCl(pH7.5)、1mMのEDTA、0.02%PVP、0.02%Ficoll、0.02%BSA、および500μg/mlの変性サケ精子DNAで構成されるバッファー中、65℃で8時間~一晩実行される。フィルターを、100μg/mlの変性サケ精子DNAおよび5~20x106 cpmの32P標識プローブを含むプレハイブリダイゼーション混合物中、65℃で48時間ハイブリダイズする。フィルターの洗浄は、2xSSC、0.01%PVP、0.01%Ficoll、および0.01%BSAを含有する溶液中、37℃で1時間かけて実施する。この後、0.1xSSC中、50℃で45分間洗浄する。
【0207】
上記の条件が(たとえば異種間ハイブリダイゼーションで使用される場合に)不適切である場合は、当技術分野で周知の他の(たとえば異種間ハイブリダイゼーションで使用されるような)低、中、および高ストリンジェンシー条件を使用してもよい。
【0208】
本発明のポリペプチドをコードする核酸配列の検出キットには、該ポリペプチドをコードする核酸配列に特異的なプライマーおよび/またはプローブ、ならびに該プライマーおよび/またはプローブを用いて試料中の該ポリペプチドをコードする核酸配列を検出するための関連プロトコルが含まれ得る。そのような検出キットは、植物、生物、微生物、または細胞が修飾されているかどうか、すなわち、該ポリペプチドをコードする配列で形質転換されているかどうかを決定するのに用いられ得る。
【0209】
本明細書の実施形態のバリアントDNA配列の機能を試験するために、関心対象の配列を選択または選別マーカー遺伝子に機能的に連結し、そして該リポーター遺伝子の発現を一過的発現アッセイで、たとえば微生物を用いて、またはプロトプラストを用いて、または安定的に形質転換された植物において、試験する。
【0210】
本発明はまた、具体的に開示される核酸配列の誘導体、または誘導可能な核酸配列に関する。
【0211】
したがって、本発明のさらなる核酸配列は、本明細書に具体的に開示される配列に由来することができ、該配列とは1~20のように1つまたは複数の、特に1~15または5~10の、(たとえば1~10のように)1つまたはいくつかのヌクレオチドの付加、置換、挿入、または欠失により異なり得、かつ所望の特性プロファイルを有するポリペプチドをさらにコードし得る。
【0212】
本発明はまた、いわゆるサイレント変異を含む、または特殊なオリジナルまたは宿主生物のコドン使用により、具体的に記載される配列と比べて変更されている、核酸配列を包含する。
【0213】
本発明の特定の実施形態では、バリアントの核酸が、そのヌクレオチド配列を特定の発現系に合わせるために調製され得る。たとえば、細菌発現系は、アミノ酸が特定のコドンによりコードされていれば、ポリペプチドをより効率よく発現することが公知である。遺伝子コードの縮重によって、2つ以上のコドンが同じアミノ酸配列をコードする場合があり、複数の核酸配列が同じタンパク質またはポリペプチドをコードすることができるが、そうしたDNA配列のすべてが、本明細書の実施形態に包含される。本明細書に記載されるポリペプチドをコードする核酸配列は、宿主細胞内で発現が増加するように適宜最適化され得る。たとえば、本明細書の実施形態の核酸を、発現を改善するために、宿主に特有のコドンを用いて合成してもよい。
【0214】
本発明はまた、本明細書に記載される配列の天然のバリアント、たとえばスプライシングバリアントまたはアレルバリアントを包含する。
【0215】
アレルバリアントは、誘導されたアミノ酸レベルで、全配列範囲の少なくとも60%の相同性、好ましくは少なくとも80%の相同性、極めて特に好ましくは少なくとも90%の相同性を有し得る(アミノ酸レベルの相同性に関しては、上記のポリペプチドに関する詳細を参照されたい)。有利にも、相同性は、配列の部分的領域でより高くなり得る。
【0216】
本発明はまた、保存的ヌクレオチド置換(すなわちその結果、問題のアミノ酸が、同じ電荷、サイズ、極性、および/または溶解度のアミノ酸と交換される)により得ることができる配列に関する。
【0217】
本発明はまた、具体的に開示される核酸から配列多型により派生する分子に関する。そのような遺伝子多型は、異集団からの細胞に、または天然のアレル変種により一集団内の細胞に存在し得る。アレルバリアントはまた、機能的均等物も含み得る。これらの天然変種はふつう、遺伝子のヌクレオチド配列に1~5%の相違を生成する。該多型は、本明細書で開示されるポリペプチドのアミノ酸配列を変化させ得る。アレルバリアントには、機能的均等物も含まれ得る。
【0218】
さらに、誘導体は、本発明の核酸配列のホモログであること、たとえば動物、植物、真菌、または細菌のホモログ、短縮配列、コードおよび非コードDNA配列の一本鎖DNAまたはRNAであることも理解される。たとえば、ホモログは、DNAレベルで、本明細書で具体的に開示される配列の所与のDNA領域全体の、少なくとも40%、好ましくは少なくとも60%、特に好ましくは少なくとも70%、極めて特に好ましくは少なくとも80%の相同性を有する。
【0219】
さらに、誘導体は、たとえばプロモーターとの融合物であることが理解される。記載のヌクレオチド配列に付加されるプロモーターは、少なくとも1つのヌクレオチド交換、少なくとも1つの挿入、反転、および/または欠失により修飾され得るが、プロモーターの機能性または有効性が損なわれることはない。さらに、プロモーターの有効性は、それらの配列を変更することでより増加する場合もあり、または科が異なる生物のものであってもより有効なプロモーターと完全に交換される場合もある。
【0220】
d.機能的ポリペプチド変異体の生成
当業者は、機能的変異体、すなわち本明細書で開示されるアミノ酸関連の配列番号のいずれかと少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するポリペプチドをコードする、かつ/または本明細書で開示されるヌクレオチド関連の配列番号のいずれかと少なくとも70%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸分子によりコードされる、ヌクレオチド配列を生成する方法を熟知している。
【0221】
使用する技法によっては、当業者は、まったくランダムな、あるいはより定方向的な変異を、遺伝子に、あるいは(たとえば発現の調節に重要な)非コード核酸領域に導入することがあり、続いて遺伝子ライブラリーを生成することがある。この目的で必要な分子生物学の方法は、当事者には公知であり、たとえばSambrook and Russell, Molecular Cloning. 3rd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press 2001に記載されている。
【0222】
遺伝子を修飾する方法、したがってこれら遺伝子によりコードされるポリペプチドを修飾する方法は、当事者には昔から公知であり、たとえば以下のようなものがある。
【0223】
-遺伝子の1つまたはいくつかのヌクレオチドが定方向的に交換される、部位特異的変異誘発(Trower MK (Ed.) 1996; In vitro mutagenesis protocols. Humana Press, New Jersey)、
-任意のアミノ酸のコドンが、遺伝子の任意のポイントで交換または添加され得る、飽和変異誘発(Kegler-Ebo DM, Docktor CM, DiMaio D (1994) Nucleic Acids Res 22:1593; Barettino D, Feigenbutz M, Valcarel R, Stunnenberg HG (1994) Nucleic Acids Res 22:541; Barik S (1995) Mol Biotechnol 3:1)、
-エラープローンDNAポリメラーゼによりヌクレオチド配列を変異させる、エラープローンポリメラーゼ連鎖反応(Eckert KA, Kunkel TA (1990) Nucleic Acids Res 18:3739);
-好ましい交換をポリメラーゼが阻止する、SeSaM方法(配列飽和法)。Schenk et al., Biospektrum, Vol. 3, 2006, 277-279
-たとえば欠損DNA修復機構によって、ヌクレオチド配列の変異率が増加する、ミューテーター株の遺伝子の継代培養(Trower MK (Ed.) In vitro mutagenesis protocols. Humana Press, New JerseyのGreener A, Callahan M, Jerpseth B (1996) An efficient random mutagenesis technique using an E.coli mutator strain)、または
-近縁遺伝子のプールが作られ、消化され、そして断片がポリメラーゼ連鎖反応の鋳型として用いられ、ここで鎖の結合と分離を繰り返すことにより、最終的に全長モザイク遺伝子が生成する、DNAシャフリング(Stemmer WPC (1994) Nature 370:389; Stemmer WPC (1994) Proc Natl Acad Sci USA 91:10747)。
【0224】
いわゆる定向的進化(特にDemain AL, Davies JE (Ed.) Manual of industrial microbiology and biotechnology. American Society for MicrobiologyのReetz MT and Jaeger K-E (1999), Topics Curr Chem 200:31; Zhao H, Moore JC, Volkov AA, Arnold FH (1999), Methods for optimizing industrial polypeptides by directed evolutionに記載されている)により、当事者は、定方向的に、かつ大規模に、機能的変異体を生成することができる。そのためには、第1のステップで、たとえば上記の方法により、まずはそれぞれのポリペプチドの遺伝子ライブラリーが生成される。この遺伝子ライブラリーを好適な方法で、たとえば細菌で、またはファージディスプレイ系で発現させる。
【0225】
所望の特性に概ね対応する特性をもつ機能的変異体を発現する宿主生物の関連遺伝子を、別の変異サイクルに供することができる。本機能的変異体が所望の特性を十分な程度に有するまで、変異および選択または選別のステップを反復的に繰り返すことができる。この反復手順を使えば、限られた数の変異、たとえば1、2、3、4、または5回の変異を段階的に実施することができ、そして問題の活性に対するそれらの影響について査定し選択することができる。次に、選択された変異体を、同様にさらなる変異ステップに供することができる。こうすれば、調査すべき変異体の個数を大幅に削減できる。
【0226】
本発明の結果はまた、関連ポリペプチドの構造および配列に関する重要な情報を提供し、この情報は、所望の改変特性をもつさらなるポリペプチドの標的化された生成に必要である。特に、いわゆる「ホットスポット」、すなわち標的化変異を導入することにより特性を改変するのに潜在的に適している配列セグメントを、画定することができる。
【0227】
変異が活性にほとんど影響を及ぼすことなく実現できる領域における、可能な「サイレント変異」として指定され得るアミノ酸配列の位置について、情報を推量することもできる。
【0228】
e.本発明のポリペプチドを発現するためのコンストラクト
この文脈では、以下の定義が適用される:
「遺伝子の発現」は、「異種発現」および「過剰発現」を包含し、かつ遺伝子の転写およびmRNAのタンパク質への翻訳を含む。過剰発現は、トランスジェニック細胞または生物におけるmRNA、ポリペプチド、および/または酵素活性のレベルにより測定される遺伝子産物の生成が、類似の遺伝子バックグラウンドの非形質転換細胞または生物における生成レベルを上回ることを指す。
【0229】
本明細書では「発現ベクター」は、分子生物学的方法および外来性または外因性DNAを宿主細胞内に送達する組み換えDNA技術により改変された核酸分子を意味する。発現ベクターは、典型的には、ヌクレオチド配列の適切な転写に必要な配列を含む。コード領域はふつうは関心対象のタンパク質をコードするが、RNA、たとえばアンチセンスRNA、siRNA等をコードする場合もある。
【0230】
本明細書では「発現ベクター」には、限定ではないがウイルスベクター、バクテリオファージ、およびプラスミドなどの、任意の線状または環状組み換えベクターが含まれる。当業者であれば、発現系に応じて好適なベクターを選択することができる。一実施形態では、発現ベクターは、転写、翻訳、開始および終結を制御する、転写プロモーター、オペレーターもしくはエンハンサー、またはmRNAリボソーム結合部位などの少なくとも1つの「調節配列」に機能的に連結された本明細書の実施形態の核酸を含み、任意選択により、少なくとも1つの選択マーカーを含んでいる。ヌクレオチド配列は、調節配列が本明細書の実施形態の核酸と機能的に関連している場合、「機能的に連結」されている。
【0231】
本明細書では「発現系」は、2つ以上のポリペプチドの同時発現に必要な核酸分子の任意の組み合わせを包含する。それぞれのコード配列は、1つの核酸分子またはベクターに、たとえば2つ以上のプロモーター配列を含有するベクターに、または多シストロン性核酸に存在してもよいし、または2つ以上の物理的に別々のベクターに分散させてもよい。
【0232】
本明細書では、「増幅すること」および「増幅」という用語は、以下により詳しく記載されるように、天然発現した核酸の組み換えを生成または検出する任意の好適な増幅法の使用を指す。たとえば、本発明は、天然発現した(たとえばゲノムDNAまたはmRNA)または本発明の組み換え(たとえばcDNA)核酸を、インビボ、エクスビボ、またはインビトロで、(たとえばポリメラーゼ連鎖反応、PCRにより)増幅するための方法および試薬(たとえば、特異的および/または縮重オリゴヌクレオチドプライマー対、オリゴdTプライマー)を提供する。
【0233】
「調節配列」は、本明細書の実施形態の核酸配列の発現レベルを決定する、かつ調節配列に機能的に連結された核酸配列の転写率を調節することができる、核酸配列を指す。調節配列としては、プロモーター、エンハンサー、転写因子、プロモーターエレメント等が挙げられる。
【0234】
「プロモーター」、「プロモーター活性を有する核酸」、または「プロモーター配列」は、本発明では、転写される核酸に機能的に連結されると、該核酸の転写を調節する核酸として理解される。「プロモーター」は特に、RNAポリメラーゼの結合部位、ならびに限定ではないが転写因子結合部位、リプレッサーおよびアクチベータータンパク質結合部位といった適切な転写に必要な他の因子を提供することにより、コード配列の発現を制御する核酸配列を指す。プロモーターという用語の意味はまた、「プロモーター調節配列」という用語も含む。プロモーター調節配列は、転写、RNAプロセシング、または結合したコード核酸配列の安定性に影響し得る上流および下流エレメントを含み得る。プロモーターは、天然派生配列および合成配列を含む。コード核酸配列はふつう、転写開始部位から開始する転写の方向に対し相対的に、プロモーターの下流に位置する。
【0235】
この文脈では、「機能的(functional)」または「機能的(operative)」な連結は、たとえば核酸の1つと調節配列との配列の整列を意味するものとして理解される。たとえば、プロモーター活性を有する配列、および転写される核酸配列の 、および任意選択によりさらなる調節エレメント、たとえば核酸の転写を確実にする核酸配列、およびたとえばターミネーターが、核酸配列の転写後にこれら調節エレメント各々がその機能を実行できるような方法で連結される。このことは、必ずしも化学的意味での直接の連結を必要としない。遺伝子制御配列、たとえばエンハンサー配列は、標的配列に対し、もっと離れた位置から、または他のDNA分子からでも、その機能を発揮することができる。好ましい整列は、転写される核酸配列が、プロモーター配列の下流(すなわち3’末端)に位置し、したがって2つの配列が共有結合しているものである。プロモーター配列と、組み換え発現する核酸配列との距離は、200塩基対よりも短い、または100塩基対よりも短い、または50塩基対よりも短い場合がある。
【0236】
プロモーターおよびターミネーターに加えて、他の調節エレメントの例として、ターゲティング配列、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、選択マーカー、増幅シグナル、複製起点等を挙げることができる。好適な調節配列が、たとえばGoeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)に記載されている。
【0237】
「構成的プロモーター」という用語は、それが機能的に連結されている核酸配列の連続的な転写を可能にする、非調節プロモーターを指す。
【0238】
本明細書では、「機能的に連結」という用語は、ポリヌクレオチドエレメントの機能的関係の連結を指す。核酸は、別の核酸配列と機能的関係に置かれると「機能的に連結」される。たとえば、プロモーター、またはむしろ転写調節配列は、コード配列の転写に影響を及ぼす場合、該コード配列に機能的に連結されている。機能的に連結されているとは、連結されたDNA配列が、典型的には一続きであることを意味する。プロモーター配列と結合しているヌクレオチド配列は、形質転換される生物に対し、起源が同種でも異種でもよい。配列はまた、全体的または部分的に合成であってもよい。起源にかかわらず、プロモーター配列と結合した核酸配列は、本明細書の実施形態のポリペプチドに結合した後、それが連結されているプロモーターの特性に応じて、発現する場合もあれば、サイレンスの場合もある。結合した核酸は、その生物全体で常に、または特定のときにもしくは特定の組織、細胞、もしくは細胞コンパートメントで、発現することまたは抑制されることが望ましいタンパク質をコードすることができる。そのようなヌクレオチド配列は特に、それによって変更されたか形質転換された宿主細胞または生物に望ましい表現型の特色を与えるタンパク質をコードする。より具体的には、結合したヌクレオチド配列は、細胞または生物において、本明細書に明記するテルペン化合物の生成をもたらす。
【0239】
本明細書で上述したヌクレオチド配列は、「発現カセット」の一部であり得る。「発現カセット」と「発現コンストラクト」という用語は、同義的に用いられる。この(好ましくは組み換え)発現コンストラクトは、本発明のポリペプチドをコードする、かつ調節核酸配列の遺伝子制御下にある、ヌクレオチド配列を含有する。
【0240】
本発明で用いるプロセスでは、発現カセットは、「発現ベクター」の、特に組み換え発現ベクターの一部であり得る。
【0241】
「発現ユニット」は、本発明では、本明細書で定義されるプロモーターを含む、発現活性を有する核酸として理解され、該プロモーターは、発現する核酸または遺伝子と機能的に連結した後、該核酸または該遺伝子の発現を調節する、すなわち転写および翻訳を調節する。したがって、プロモーターはこれに関し「調節核酸配列」とも呼ばれる。プロモーターに加えて、他の調節エレメント、たとえばエンハンサーも存在し得る。
【0242】
「発現カセット」または「発現コンストラクト」は、本発明では、発現する核酸または発現する遺伝子と機能的に連結されている発現ユニットを意味するものとして理解される。したがって、発現ユニットと違って発現カセットは、転写および翻訳を調節する核酸配列だけでなく、転写および翻訳の結果タンパク質として発現する核酸配列も含んでいる。
【0243】
「発現」または「過剰発現」という用語は、本発明の文脈では、対応するDNAによりコードされる、微生物中の1つまたは複数のポリペプチドの細胞内活性の生成または増加を記載する。そのためには、たとえば、遺伝子を生物に導入すること、既存の遺伝子を別の遺伝子と交換すること、遺伝子のコピー数を増加させること、強力なプロモーターを使用すること、または対応するポリペプチドを高活性でコードする遺伝子を使用することが可能であり;任意選択により、これらの策を組み合わせてもよい。
【0244】
好ましくは、本発明のそのようなコンストラクトは、それぞれのコード配列の5’側上流にプロモーター、および3’側下流にターミネーター配列、および任意選択により他の通常の調節エレメントを、いずれについてもコード配列との機能的連結により、含む。
【0245】
本発明の核酸コンストラクトは、特に、ポリペプチドをコードする配列、たとえば本明細書に記載されるアミノ酸関連配列番号から誘導される配列、またはその逆相補配列、またはその誘導体およびホモログを含み、かつ1つまたは複数の調節シグナルに機能的に(operatively)または機能的に(functionally)連結されて、有利には遺伝子発現を制御する、たとえば増加させる。
【0246】
これらの調節配列に加えて、これらの配列の天然の調節が、実際の構造遺伝子の前になおも存在していてもよく、また任意選択により遺伝子改変して、天然の調節をオフにし、遺伝子の発現を増強させてもよい。しかし核酸コンストラクトは、もっとシンプルに構築されていてもよく、すなわちコード配列の前に追加の調節シグナルが挿入されておらず、天然のプロモーターが調節を有した状態で、除去されていない。かわりに、天然の調節配列を変異させて、調節が起きないようにし、遺伝子発現を増加させる。
【0247】
好ましい核酸コンストラクトはまた、有利には、プロモーターと機能的に連結された1つまたは複数の先述の「エンハンサー」配列を含み、該配列によって、核酸配列の発現を増強することが可能になる。さらなる調節エレメントまたはターミネーターなどの追加の有利な配列を、DNA配列の3’末端に挿入してもよい。本発明の核酸の1つまたは複数のコピーが1つのコンストラクト中に存在し得る。該コンストラクトには任意選択により、該コンストラクトが選択できるように、栄養要求性または抗生物質耐性を補完する遺伝子などの他のマーカーも存在してもよい。
【0248】
プロモーターには、cos、tac、trp、tet、trp-tet、lpp、lac、lpp-lac、lacIq、T7、T5、T3、gal、trc、ara、rhaP(rhaPBAD)SP6、ラムダ-PR、またはラムダ-PLプロモーターなど、好適な調節配列の例が存在し、これらは有利にはグラム陰性細菌に用いられる。さらなる有利な調節配列が、たとえばグラム陽性プロモーターamyおよびSPO2、酵母または真菌プロモーターADC1、MFアルファ、AC、P-60、CYC1、GAPDH、TEF、rp28、ADHに存在する。人工プロモーターも調節に使用することができる。
【0249】
宿主生物における発現では、核酸コンストラクトは有利には、宿主における最適な遺伝子発現を可能にする、たとえばプラスミドまたはファージなどのベクターに挿入される。ベクターはまた、プラスミドおよびファージに加えて、当事者には公知の他の全ベクター、すなわち、たとえばウイルス、たとえばSV40、CMV、バキュロウイルス、およびアデノウイルス、トランスポゾン、ISエレメント、ファスミド、コスミド、および線状または環状DNAまたは人工染色体を意味するものとして理解される。これらのベクターは、宿主生物において自律的に、あるいは染色体的に複製することができる。これらのベクターは、本発明のさらなる開発物である。バイナリまたは同時組み込み(co-integration)ベクターも用いることができる。
【0250】
好適なプラスミドは、たとえば、E.コリ(E.coli)のpLG338、pACYC184、pBR322、pUC18、pUC19、pKC30、pRep4、pHS1、pKK223-3、pDHE19.2、pHS2、pPLc236、pMBL24、pLG200、pUR290、pIN-III113-B1、λgt11、またはpBdCI、ストレプトミケス(Streptomyces)のpIJ101、pIJ364、pIJ702、またはpIJ361、バチルス(Bacillus)のpUB110、pC194、またはpBD214、コリネバクテリウム(Corynebacterium)のpSA77またはpAJ667、真菌のpALS1、pIL2、またはpBB116、酵母の2アルファM、pAG-1、YEp6、YEp13、またはpEMBLYe23、あるいは植物のpLGV23、pGHlac+、pBIN19、pAK2004、またはpDH51である。上述したプラスミドは、可能なプラスミドのわずかな選択肢である。さらなるプラスミドが当事者には周知であり、たとえばCloning Vectors(Eds. Pouwels P. H. et al. Elsevier, Amsterdam-New York-Oxford, 1985, ISBN 0 444 904018)という書籍に記載されている。
【0251】
ベクターのさらなる開発物では、本発明の核酸コンストラクトまたは本発明の核酸を含むベクターはまた、有利には、線状DNAの形態で微生物に導入され得、そして異種または相同組み換えにより宿主生物のゲノム内に組み込まれ得る。この線状DNAは、プラスミドなどの線状ベクターから、または本発明の核酸コンストラクトもしくは核酸のみからなる場合がある。
【0252】
生物における異種遺伝子の最適な発現のために、その生物で用いられる特定の「コドン使用」とマッチするように核酸配列を修飾することが有利である。「コドン使用」は、問題の生物の他の公知の遺伝子のコンピューター評価により、容易に決定することができる。
【0253】
本発明の発現カセットが、好適なプロモーターを好適なコードヌクレオチド配列およびターミネーターまたはポリアデニル化シグナルに融合させることにより生成される。この目的では、一般的な組み換えおよびクローニング技法が使用され、それらはたとえばT. Maniatis, E.F. Fritsch and J. Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1989)およびT.J. Silhavy, M.L. Berman and L.W. Enquist, Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1984)およびAusubel, F.M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience (1987)に記載されている。
【0254】
好適な宿主生物における発現のために、組み換え核酸コンストラクトまたは遺伝子コンストラクトが、宿主における遺伝子の最適な発現を可能にする宿主特異的ベクターに有利には挿入される。ベクターは、当事者には周知であり、たとえば“cloning vectors”(Pouwels P. H. et al., Ed., Elsevier, Amsterdam-New York-Oxford, 1985)に記載されている。
【0255】
本明細書の実施形態の代替実施形態は、宿主細胞内で「遺伝子発現を変える」方法を提供する。たとえば本明細書の実施形態のポリヌクレオチドが、宿主細胞または宿主生物において、ある文脈では(たとえば特定の温度または培養条件に曝露すると)、増強され得、または過剰発現し得、または誘発され得る。
【0256】
本明細書で提供されるポリヌクレオチドの発現を変えると、改変された、および対照または野生型の生物において、異なる発現パターンである異所的発現が得られることもある。発現の変更は、本明細書の実施形態のポリペプチドと外来性または内在性修飾因子との相互作用から、あるいは該ポリペプチドの化学的修飾の結果として、生じる。この用語はまた、検出レベル未満のまたは完全に抑制された活性で変更された本明細書の実施形態のポリヌクレオチドの、変更された発現パターンを指す。
【0257】
一実施形態では、本明細書で提供されるポリペプチドまたはバリアントポリペプチドをコードする、単離された、組み換えの、または合成ポリヌクレオチドも本明細書で提供される。
【0258】
一実施形態では、いくつかのポリペプチドコード核酸配列が、1つの宿主内で、特に異なるプロモーターの制御下で、同時発現する。別の実施形態では、いくつかのポリペプチドコード核酸配列が、1つの形質転換ベクターに存在し得、または同時に別々のベクターを用いて、かつ両方のキメラ遺伝子を含む形質転換体を選択して、同時形質転換され得る。同様に、1つまたはそれ以上のポリペプチドコード遺伝子を、他のキメラ遺伝子とともに1つの植物、細胞、微生物、または生物内で発現させてもよい。
【0259】
f.本発明で利用される宿主
文脈によるが、「宿主」(または「宿主細胞または生物」)という用語は、野生型宿主、または遺伝子改変された組み換え宿主、またはその両方を意味し得る。「宿主生物」は、植物、真菌、原核生物、または哺乳類宿主のような高等真核生物の培養物をひっくるめた、任意の原核または真核生物を含む。微生物は、特に、原核生物、真菌、および酵母を含む。
【0260】
本発明のベクターを用いて、組み換え宿主を生成することができ、後者は、たとえば本発明の少なくとも1つのベクターで形質転換されており、本発明のポリペプチドの生成または本明細書で定義される酵素触媒変換反応の実施に使用することができる。有利には、本発明の上記の組み換えコンストラクトは、好適な宿主系に導入されて発現する。好ましくは、当業者には公知の一般的なクローニングおよびトランスフェクションの方法、たとえば共沈、プロトプラスト融合、電気穿孔、レトロウイルストランスフェクション等により、記載の核酸をそれぞれの発現系で発現させる。たとえば、トランスジェニック植物を作るには、現行の方法として、植物プロトプラストの電気穿孔、リポソーム媒介形質転換、アグロバクテリウム媒介形質転換、ポリエチレングリコール媒介形質転換、微粒子銃、植物細胞のマイクロインジェクション、およびウイルスを用いた形質転換が挙げられる。
【0261】
好適な系が、たとえばCurrent Protocols in Molecular Biology, F. Ausubel et al., Ed., Wiley Interscience, New York 1997、またはSambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載されている。特に高等植物および/または植物細胞用のクローニングおよび発現ベクターが当業者には利用可能である。たとえばSchardl et al. Gene 61: 1-11, 1987を参照されたい。
【0262】
原則的に、植物、真菌、原核生物、または哺乳類宿主のような高等真核生物の培養物をひっくるめたすべての原核または真核生物を、本発明の核酸または核酸コンストラクトの組み換え宿主生物とみなすことができる。有利には、細菌、真菌/酵母などの微生物を宿主生物として用いる。有利には、グラム陽性またはグラム陰性細菌、好ましくはエンテロバクテリアケアエ(Enterobacteriaceae)、シュードモナダケアエ(Pseudomonadaceae)、リゾビアケアエ(Rhizobiaceae)、ストレプトミケタケアエ(Streptomycetaceae)、またはノカルジアケアエ(Nocardiaceae)の系統の細菌、特に好ましくはエスケリキア(Escherichia)、シュードモナス(Pseudomonas)、ストレプトミケス(Streptomyces)、ノカルジア(Nocardia)、ブルクホルデリア(Burkholderia)、サルモネラ(Salmonella)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、クロストリジウム(Clostridium)、またはロードコッカス(Rhodococcus)の属の細菌を用いる。エスケリキア・コリ(Escherichia coli)の科および種が、特に非常に好ましい。さらに、他の有利な細菌が、アルファ-プロテオバクテリア(alpha-Proteobacteria)、ベータ-プロテオバクテリア(beta-Proteobacteria)、またはガンマ-プロテオバクテリア(gamma-Proteobacteria)の群に見出される。
【0263】
宿主生物によっては、本発明の方法で使用される生物は、当業者には公知のやり方で生育または培養される。培養は、バッチ式、セミバッチ式、または連続式であり得る。栄養分は、発酵の開始時に存在しても、後で半連続的または連続的に補給してもよい。このことはまた、以下により詳しく記載される。
【0264】
上述のように、本発明では、新規のポリペプチドの組み換え生成ならびに酸化テルペン化合物の製造方法に、宿主生物または細胞を用いることができる。
【0265】
酸化テルペンのインビボの生成を実行するために、酸化テルペンの生成に適した条件で宿主を培養する。そのような条件は、宿主生物または細胞の生育をもたらす任意の条件である。好ましくは、そのような条件は、宿主の最適な生育のために設計される。したがって、宿主がトランスジェニック植物であれば、たとえば最適な光、水、および栄養条件などの、最適な生育条件が提供される。宿主が単細胞生物であれば、酸化テルペンの生成に適した条件は、好適な補因子を宿主の培養培地に添加することを含み得る。さらに、テルペン酸化を最大化するように、培養培地が選択され得る。最適な培養条件は当業者には公知であり、本発明に特化されない。好適な条件の例は、以下の実施例で詳細に記載される。
【0266】
本発明の方法をインビボで実行するのに好適な非ヒト宿主は、任意の非ヒト多細胞生物または単細胞生物であってよい。好ましい実施形態では、本発明をインビボで実行するために用いられる非ヒト宿主は、植物、原核生物、または真菌である。任意の植物、原核生物、または真菌を用いることができる。特に有用な植物は、テルペンを大量に天然生成するものである。より好ましい実施形態では、植物は、ソラナケアエ(Solanaceae)、プロアケアエ(Poaceae)、ブラッシカケアエ(Brassicaceae)、フェバケアエ(Fabaceae)、マルバケアエ(Malvaceae)、アステラケアエ(Asteraceae)、またはラミアケアエ(Lamiaceae)の系統から選択される。たとえば、植物は、ニコチアナ(Nicotiana)、ソラヌム(Solanum)、ソルグム(Sorghum)、アラビドプシス(Arabidopsis)、ブラッシカ(Brassica)(レイプ(rape))、メジカゴ(Medicago)(アルファルファ(alfalfa))、ゴッシピウム(Gossypium)(コットン(cotton))、アルテミシア(Artemisia)、サルビア(Salvia)、およびミンタ(Minta)の属から選択される。好ましくは、植物は、ニコチアナ・タバクム(Nicotiana tabacum)種に属する。
【0267】
より好ましい実施形態では、本発明の方法をインビボで実行するのに用いられる宿主は、微生物である。任意の微生物が使用できるが、より好ましい実施形態では、該微生物は細菌または真菌である。好ましくは、該真菌は酵母である。最も好ましくは、該細菌はE.コリ(E.coli)であり、該酵母はサッカロミケス・ケレウィシアエ(Saccharomyces cerevisiae)である。
【0268】
こうした生物のいくつかは、酸化されるテルペンを天然生成しない。本発明の方法の実行に適するように、これらの生物を、該テルペンを生成するように形質転換しなければならない。そのように形質転換することは、上記で説明した上記の実施形態のいずれかに記載の核酸での形質転換の前、同時、または後に行うことができる。生物、たとえば微生物を、テルペンシンターゼを発現するように形質転換する方法は、当技術分野では既に公知である。そのような方法は、たとえば国際公開第2010/134004号に記載されており、該公報は、多様な宿主生物および細胞の、ジザエンシンターゼ、すなわちファルネシルピロリン酸からのジザエンの生成を触媒することができる酵素での形質転換を記載している。特に、それらを有利には、ゲラニルピロリン酸またはゲラニルゲラニルピロリン酸、および特にファルネシルピロリン酸などの非環式テルペン前駆体の生成の代謝に関与するポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子で、さらに形質転換することができる。そのようなポリペプチドとしては、たとえばMEP経路の酵素、MVA経路の酵素、および/またはプレニルトランスフェラーゼが挙げられる。テルペン化合物を生成することができる生物または細胞を、本発明の任意の実施形態で記載される本発明のポリペプチド、およびCPR、またはその両方を含む融合ポリペプチドで形質転換することは、テルペンの酸化を生じさせるには十分である。とはいえ、非環式テルペン前駆体および/またはイソペンテニル二リン酸(IPP)もしくはジメチルアリル二リン酸(DMAPP)の生成に関与する少なくとも1つの酵素でのさらなる形質転換により、酸化させることができるテルペンの量が増えるという利点がある。
【0269】
特定の実施形態では、そのような宿主が、本発明の任意の実施形態のポリペプチドを異種発現または過剰発現する。
【0270】
ある好ましい実施形態によると、宿主が本明細書で定義されるチトクロムP450酵素のようなテルペン酸化酵素を発現する場合、該宿主は上記のP450-レダクターゼ(CPR)をさらに発現する。CPRは、宿主生物または細胞に天然に存在する場合もあるし、そのような生物または細胞を、チトクロムP450を発現するための形質転換の前、同時、または後に、CPRを発現するように形質転換する場合もある。本発明の好ましい実施形態では、宿主細胞または生物は、チトクロムP450およびCPRの両方を含む融合ポリペプチドを発現するように形質転換される。
【0271】
別の好ましい実施形態では、宿主は、酸化されるテルペンを生成することができる。それは、宿主が該テルペンの形成を触媒することができるテルペンシンターゼを発現する場合である。
【0272】
代替実施形態では、酸化されるテルペン化合物を、該宿主の培養培地に添加する場合がある。テルペン化合物は宿主の膜を透過するので、該宿主が発現する本発明のP450との反応に利用できる。
【0273】
g.本発明のポリペプチドの組み換え生成
本発明はさらに、本発明のポリペプチドまたはその機能的生物活性断片を組み換え生成する方法に関し、該方法ではポリペプチドを生成する微生物が培養され、任意選択によりポリペプチドの発現が誘発され、これらが培養から単離される。所望であれば、このやり方でポリペプチドを産業レベルで生成することもできる。
【0274】
本発明で生成される微生物は、連続的または断続的に、バッチ方法で、または流加方法で、または反復流加方法で、培養され得る。公知の培養方法の概要が、Chmiel著の教科書(Bioprozesstechnik 1. Einfuehrung in die Bioverfahrenstechnik [Bioprocess technology 1. Introduction to bioprocess technology] (Gustav Fischer Verlag, Stuttgart, 1991))、またはStorhas著の教科書(Bioreaktoren und periphere Einrichtungen [Bioreactors and peripheral equipment] (Vieweg Verlag, Braunschweig/Wiesbaden, 1994))に記載されている。
【0275】
使用する培養培地は、それぞれの株の要件を満たさなくてはならない。さまざまな微生物の培地の解説が、The American Society for Bacteriologyの“Manual of Methods for General Bacteriology”(米国ワシントンD.C.、1981)に提供されている。
【0276】
本発明で使用可能なこれらの培地は、ふつう、1つまたは複数の炭素供給源、窒素供給源、無機塩、ビタミン、および/または微量元素を含む。
【0277】
好ましい炭素供給源は、単糖、二糖、または多糖などの糖類である。非常に良好な炭素供給源は、たとえばグルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、リボース、ソルボース、リブロース、ラクトース、マルトース、スクロース、ラフィノース、デンプン、またはセルロースである。糖類はまた、モルトエキス、モラセスなどの複合化合物、または他の糖精製副生成物を介して培地に添加してもよい。異なる炭素供給源の混合物を添加することも有利であり得る。可能な他の炭素供給源は、油脂、たとえば大豆油、ヒマワリ油、ピーナツ油、およびココナツ油、脂肪酸、たとえばパルミチン酸、ステアリン酸、またはリノール酸、アルコール、たとえばグリセロール、メタノール、またはエタノール、ならびに有機酸、たとえば酢酸または乳酸である。
【0278】
窒素供給源はふつう、有機または無機窒素化合物であるか、これらの化合物を含有する物質である。窒素供給源の例としては、アンモニアガスまたはアンモニウム塩、たとえば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、または硝酸アンモニウム、硝酸塩、尿素、アミノ酸、または複合窒素供給源、たとえばコーンスティープリカー、大豆粉、大豆タンパク質、酵母エキス、肉エキスその他が挙げられる。窒素供給源は、単独でも混合物としても用いることができる。
【0279】
培地に存在し得る無機塩化合物としては、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、コバルト、モリブデン、カリウム、マンガン、亜鉛、銅、および鉄の塩化物塩、リン塩、または硫酸塩が挙げられる。
【0280】
無機硫黄含有化合物、たとえば硫酸塩、亜硫酸塩、亜ジチオン酸塩、テトラチオン酸塩、チオ硫酸塩、硫化物、ならびにメルカプタンおよびチオールなどの有機硫黄化合物を、硫黄供給源として用いることができる。
【0281】
リン酸、リン酸二水素カリウム、またはリン酸水素二カリウム、または対応するナトリウム含有塩を、リン供給源として用いることができる。
【0282】
溶液中に金属イオンを保有するために、キレート剤を培地に添加することができる。特に好適なキレート剤としては、ジヒドロキシフェノール、たとえばカテコールもしくはプロトカテクアート、または有機酸、たとえばクエン酸が挙げられる。EDTAも添加され得る。
【0283】
本発明で用いる発酵培地はふつう、たとえばビオチン、リボフラビン、チアミン、葉酸、ニコチン酸、パントテン酸塩、およびピリドキシンといったビタミンまたは生育プロモーターなどの他の生育因子も含有する。生育因子および塩は、酵母エキス、モルトエキス、モラセス、コーンスティープリカーなど、複合培地の構成成分から生じるものが多い。培養培地にはさらに、好適な前駆体も添加され得る。培地中の化合物の実際の組成は、それぞれの実験に大きく左右され、事例ごとに個別に決められる。培地最適化に関する情報は、教科書“Applied Microbiol. Physiology, A Practical Approach”(Ed. P.M. Rhodes, P.F. Stanbury, IRL Press (1997) p. 53-73, ISBN 0 19 963577 3)に記載されている。生育培地はまた、Standard 1(Merck社)またはBHI(ブレインハートインフュージョン、DIFCO社)等、業者から購入することもできる。
【0284】
培地の構成成分をすべて、熱(1.5bar、121℃で、20分)により、または滅菌ろ過により、滅菌する。構成成分は、一緒に滅菌しても、必要に応じて別々に滅菌してもよい。培地の構成成分がすべて培養開始時に存在しても、連続的またはバッチ式に添加されてもよい。
【0285】
培養温度は通常、15℃~45℃、好ましくは25℃~40℃であり、実験中に変えても一定にしてもよい。培地のpHは5~8.5の範囲、好ましくは7.0前後とする。生育のためのpHは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、もしくはアンモニア水などの塩基化合物、またはリン酸もしくは硫酸などの酸化合物を添加することにより、生育中に制御することができる。消泡剤、たとえば脂肪酸ポリグリコールエステルを用いて発泡を制御することができる。プラスミドの安定性を維持するために、好適な選択物質、たとえば抗生物質を培地に添加することができる。有酸素条件を維持するために、酸素または酸素含有ガス混合物、たとえば周囲大気を培養に供給する。培養の温度は、通常、20℃~45℃の範囲である。培養は、所望の産物が最大限に形成するまで続けられる。この目標は、通常、10時間~160時間以内に達成される。
【0286】
次に、発酵ブロスをさらに加工する。要件に応じて、分離技法、たとえば遠心法、ろ過、デカンティング、またはこれらの方法の組み合わせにより、バイオマスを発酵ブロスから完全にまたは部分的に除去する場合もあれば、そのまま残しておく場合もある。
【0287】
ポリペプチドが培養培地中に分泌されない場合、細胞を溶解させて、タンパク質単離の公知の方法により溶解物から産物を得ることもできる。任意選択により細胞を、高周波数超音波により、たとえばフレンチプレスで高圧により、オスモライシス(osmolysis)により、洗剤、溶解酵素、もしくは有機溶媒の作用により、ホモジナイザーにより、または前述の方法のいくつかの組み合わせにより、破壊することもできる。
【0288】
ポリペプチドは、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲルろ過)、たとえばQ-セファロースクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、および疎水性クロマトグラフィーなどの公知のクロマトグラフィー技法により、ならびに超ろ過、結晶化、塩析、透析、およびネイティブゲル電気泳動などの他の一般的な技法を用いて、精製することができる。好適な方法が、たとえばCooper, T. G., Biochemische Arbeitsmethoden [Biochemical processes], Verlag Walter de Gruyter, Berlin, New YorkまたはScopes, R., Protein Purification, Springer Verlag, New York, Heidelberg, Berlinに記載されている。
【0289】
組み換えタンパク質の単離では、所定のヌクレオチド配列によりcDNAを伸長させ、したがって改変されたポリペプチドまたは融合タンパク質をコードする、ベクター系またはオリゴヌクレオチドの使用が有利であり得、たとえば精製がより簡単になる。このタイプの好適な修飾は、たとえばアンカーとして機能するいわゆる「タグ」、たとえばヘキサヒスチジンアンカーとして公知の修飾、または抗体の抗原として認識され得るエピトープである(たとえばHarlow, E. and Lane, D., 1988, Antibodies: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor (N.Y.) Pressに記載されている)。これらのアンカーは、固体担体、たとえばクロマトグラフィーカラムの充填に使われ得るたとえばポリマーマトリックスに、タンパク質を付着させる働きをし得、またはマイクロタイタープレートもしくは何らかの他の担体上で使うことができる。
【0290】
同時に、これらのアンカーはまた、タンパク質の認識にも使われ得る。タンパク質の認識では、さらに、一般的なマーカー、たとえば蛍光色素、基質との反応後に検出可能な反応産物を形成する酵素マーカー、または放射活性マーカーを、単独で、またはタンパク質誘導体化アンカーと組み合わせて使用することも可能である。
【0291】
h.ポリペプチドの固定化
本発明の酵素またはポリペプチドを、本明細書に記載される方法で、遊離状態でまたは固定化して使用することができる。固定化酵素は、不活性担体に固定された酵素である。好適な担体物質、およびそれに固定化された酵素が、欧州特許出願公開第1149849号明細書、欧州特許出願公開第1069183号明細書、およびDE-OS100193773、およびそれらの引用文献から公知である。この点で、これらの文書の開示の全文を参照する。好適な担体物質としては、たとえば粘土、粘土鉱物、たとえばカオリナイト、珪藻土、パーライト、ケイ素、酸化アルミニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、セルロース粉末、陰イオン交換物質、合成ポリマー、たとえばポリスチレン、アクリル樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン、およびポリオレフィン、たとえばポリエチレンおよびポリプロピレンが挙げられる。酵素を支持させるために、担体物質はふつう、粉砕された粒子状で用いられ、多孔体が好ましい。担体物質の粒径はふつう、5mm以下、特に2mm以下である(粒径分布曲線)。同様に、全細胞触媒としてデヒドロゲナーゼを用いる場合、遊離または固定化の形態が選択され得る。担体物質はたとえばアルギン酸カルシウムおよびカラギナンである。細胞と同じく酵素も、グルタルアルデヒドと直接架橋され得る(CLEAとの架橋)。対応のおよび他の固定化技法が、たとえばJ. Lalonde and A. Margolin “Immobilization of Enzymes”in K. Drauz and H. Waldmann, Enzyme Catalysis in Organic Synthesis 2002, Vol. III, 991-1032, Wiley-VCH, Weinheimに記載されている。本発明の方法を実行するための生物形質転換およびバイオリアクターに関するさらなる情報が、たとえばRehm et al. (Ed.) Biotechnology, 2nd Edn, Vol 3, Chapter 17, VCH, Weinheimに記載されている。
【0292】
i.本発明の生体触媒生成法の反応条件
本発明の方法の最中に、または上記で定義された複数ステップの方法の個々のステップの最中に存在する、少なくとも1つのポリペプチド/酵素は、生細胞に天然に存在してもよいし、採取した細胞中、死細胞中、透過処理した細胞中、粗細胞抽出物中、精製抽出物中、または基本的に純粋なもしくは完全に純粋な形態で、1つまたは複数の酵素を組み換え生成してもよい。少なくとも1つの酵素は、溶液中に存在しても、担体に固定化された酵素として存在してもよい。1つまたはいくつかの酵素が、可溶形態および/または固定化形態で同時に存在してもよい。
【0293】
本発明の方法は、当業者に公知の一般的な反応器で、かつ幅広い規模で、たとえばラボスケール(数ミリリットルから数十リットルの反応量)から産業スケール(数リットルから数千立方メートルの反応量)まで実施することができる。ポリペプチドを、任意選択により透過処理された非生細胞に封入された形態で、多少精製された細胞抽出物の形態で、または精製された形態で用いる場合、化学的反応器を用いることができる。化学的反応器はふつう、少なくとも1つの酵素の量、少なくとも1つの基質の量、pH、温度、および反応培地の循環の制御を可能にする。少なくとも1つのポリペプチド/酵素が生細胞に存在する場合、このプロセスは発酵となる。この場合、生体触媒の生成はバイオリアクター(発酵槽)内で行われ、生細胞の好適な生存条件に必要なパラメーター(たとえば栄養分を含む培養培地、温度、pH、撹拌、給気、酸素または他のガスの存在または不存在、抗生物質等)を制御することができる。当業者であれば、化学的反応器またはバイオリアクターについて、たとえばラボスケールから産業スケールへと化学的またはバイオテクノロジー的方法をアップスケールする、またはプロセスパラメーターを最適化する手順について熟知しており、それらはまた文献に広く記載されている(バイオテクノロジー的方法については、たとえばCrueger und Crueger, Biotechnologie - Lehrbuch der angewandten Mikrobiologie, 2. Ed., R. Oldenbourg Verlag, Muenchen, Wien, 1984を参照)。
【0294】
少なくとも1つの酵素を含有する細胞は、超音波もしくは高周波パルス、フレンチプレスなどの物理的もしくは機械的手段によって、または低浸透圧培地、溶解酵素、および培地に存在する洗剤などの化学的手段によって、あるいはこれらの方法の組み合わせによって、透過処理をすることができる。洗剤の例は、ジギトニン、n-ドデシルマルトシド、オクチルグリコシド、Triton(登録商標)X-100、Tween(登録商標)20、デオキシクロラート、CHAPS(3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート)、Nonidet(登録商標)P40(エチルフェノルポリ(エチレングリコールエーテル)等である。
【0295】
少なくとも1つの酵素が固定化されている場合、それは上記の不活性担体に付着している。
【0296】
変換反応は、バッチ式、セミバッチ式、または連続的に実行され得る。反応物(および任意選択により栄養分)は、反応開始時に供給しても、後から半連続的または連続的に供給してもよい。
【0297】
本発明の反応は、特定の反応タイプに応じて、水性、水性有機、または非水性反応培地で実施され得る。
【0298】
水性または水性有機培地は、pH値を6~10のように5~11の範囲に調節するための好適なバッファーを含有し得る。
【0299】
水性有機培地では、水と混和する、部分混和する、または混和しない有機溶媒が用いられ得る。好適な有機溶媒の非限定例を以下にリストする。さらなる例は、一価または多価、芳香族または脂肪族アルコール、特にグリセロールのような多価脂肪族アルコールである。
【0300】
非水性培地は、実質的に水を含まず、すなわち約1重量%または0.5重量%よりも少ない水を含有する。
【0301】
生体触媒法は、有機非水性培地で実施される場合もある。好適な有機溶媒としては、たとえば5~8個の炭素原子を有する、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、またはシクロオクタンのような脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、またはジクロロベンゼンのような芳香族炭水化物、ジエチルエーテル、メチル-tert.-ブチルエーテル、エチル-tert.-ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルのような脂肪族非環式化合物およびエーテル;またはそれらの混合物が挙げられる。
【0302】
反応物/基質の濃度は、最適の反応条件に合わせることができ、使用される具体的な酵素に左右され得る。たとえば、初期の基質濃度は、0.1~0.5M、たとえば10~100mMであり得る。
【0303】
反応温度は、最適の反応条件に合わせることができ、使用される具体的な酵素に左右され得る。たとえば、反応は、温度0~70℃、たとえば20~50または25~40℃の範囲で実施され得る。反応温度の例は、約30℃、約35℃、約37℃、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、および約60℃である。
【0304】
プロセスは、基質間の平衡が得られるまで進行することができ、そうして産物が得られるが、もっと早くに停止してもよい。ふつうのプロセス時間は、1分~25時間の範囲、特に10分~6時間、たとえば1時間~4時間、特に1.5時間~3.5時間の範囲である。
【0305】
宿主がトランスジェニック植物であれば、たとえば最適な光、水、および栄養条件などの、最適な生育条件が提供され得る。
【0306】
k.酸化テルペンの発酵的インビボ生成
本発明は、本明細書で定義される酸化テルペンの発酵的生成の方法にも関する。
【0307】
本発明で用いられる発酵は、たとえば撹拌発酵槽、バブルカラム、およびループリアクターで実施することができる。スタラーのタイプおよび幾何学的デザインを含めた可能な方法のタイプの包括的な概要が、“Chmiel: Bioprozesstechnik: Einfuhrung in die Bioverfahrenstechnik, Band 1”に記載されている。本発明のプロセスでは、利用できる典型的なバリアントは、当業者に公知の、またはたとえば“Chmiel, Hammes and Bailey: Biochemical Engineering”で説明されているような、バッチ、流加、反復流加、またはそれ以外の、バイオマスのリサイクルありおよびなしの連続的発酵などのバリアントである。生成株によっては、よい収率(YP/S)を得るために、空気、酸素、二酸化炭素、水素、窒素、または適切なガス混合物のスパージングを行うこともある。
【0308】
使用する培養培地は、特定の株の要件を適切に満たす必要がある。さまざまな微生物の培地の解説が、The American Society for Bacteriologyの“Manual of Methods for General Bacteriology”(米国ワシントンD.C.、1981)に提供されている。
【0309】
本発明で使用可能なこれらの培地は、1つまたは複数の炭素供給源、窒素供給源、無機塩、ビタミン、および/または微量元素を含む場合がある。
【0310】
好ましい炭素供給源は、単糖、二糖、または多糖などの糖類である。非常に良好な炭素供給源は、たとえばグルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、リボース、ソルボース、リブロース、ラクトース、マルトース、スクロース、ラフィノース、デンプン、またはセルロースである。糖類はまた、モラセスなどの複合化合物、または他の糖精製副生成物を介して培地に添加してもよい。さまざまな炭素供給源の混合物を添加することも有利であり得る。可能な他の炭素供給源は、油脂、たとえば大豆油、ヒマワリ油、ピーナツ油、およびココナツ油、脂肪酸、たとえばパルミチン酸、ステアリン酸、またはリノール酸、アルコール、たとえばグリセロール、メタノール、またはエタノール、ならびに有機酸、たとえば酢酸または乳酸である。
【0311】
窒素供給源はふつう、有機または無機窒素化合物であるか、これらの化合物を含有する物質である。窒素供給源の例としては、アンモニアガスまたはアンモニウム塩、たとえば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、または硝酸アンモニウム、硝酸塩、尿素、アミノ酸、または複合窒素供給源、たとえばコーンスティープリカー、大豆粉、大豆タンパク質、酵母エキス、肉エキスその他が挙げられる。窒素供給源は、別々でも混合物としても用いることができる。
【0312】
培地に存在し得る無機塩化合物としては、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、コバルト、モリブデン、カリウム、マンガン、亜鉛、銅、および鉄の塩化物塩、リン酸塩、または硫酸塩が挙げられる。
【0313】
無機硫黄含有化合物、たとえば硫酸塩、亜硫酸塩、亜ジチオン酸塩、テトラチオン酸塩、チオ硫酸塩、硫化物を、またメルカプタンおよびチオールなどの有機硫黄化合物も、硫黄供給源として用いることができる。
【0314】
リン酸、リン酸二水素カリウム、またはリン酸水素二カリウム、または対応するナトリウム含有塩を、リン供給源として用いることができる。
【0315】
溶液中に金属イオンを保有するために、キレート剤を培地に添加することができる。特に好適なキレート剤としては、ジヒドロキシフェノール、たとえばカテコールもしくはプロトカテクアート、または有機酸、たとえばクエン酸が挙げられる。
【0316】
本発明で用いる発酵培地は、たとえばビオチン、リボフラビン、チアミン、葉酸、ニコチン酸、パントテン酸塩、およびピリドキシンといったビタミンまたは生育プロモーターなどの他の生育因子も含有し得る。生育因子および塩は、酵母エキス、モラセス、コーンスティープリカーなど、培地の複合構成成分に由来するものが多い。培養培地にはさらに、好適な前駆体も添加され得る。培地中の化合物の精密な組成は、特定の実験に大きく左右され、具体的な事例ごとに個別に決めなくてはならない。培地最適化に関する情報は、教科書“Applied Microbiol. Physiology, A Practical Approach”(1997)に記載されている。生育培地はまた、Standard 1(Merck社)またはBHI(ブレインハートインフュージョン、DIFCO社)他、業者から購入することもできる。
【0317】
培地の構成成分をすべて、加熱(1.5bar、121℃で、20分)により、または滅菌ろ過により、滅菌する。構成成分は、一緒に滅菌しても、必要に応じて別々に滅菌してもよい。培地の構成成分がすべて生育開始時に存在しても、任意選択により連続的または流加的に添加してもよい。
【0318】
培養温度は通常、15℃~45℃、好ましくは25℃~40℃であり、実験中に変えても一定にしてもよい。培地のpH値は5~8.5の範囲、好ましくは7.0前後とする。生育のためのpH値は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、もしくはアンモニア水などの塩基化合物、またはリン酸もしくは硫酸などの酸化合物を添加することにより、生育中に制御することができる。消泡剤、たとえば脂肪酸ポリグリコールエステルを用いて発泡を制御することができる。プラスミドの安定性を維持するために、選択作用のある好適な物質、たとえば抗生物質を培地に添加することができる。有酸素条件を維持するために、酸素または酸素含有ガス混合物、たとえば周囲大気を培養に供給する。培養の温度は、通常、20℃~45℃である。培養は、所望の産物が最大限に形成するまで続けられる。これは、通常、1時間~160時間以内に実現される。
【0319】
発酵中に自然に生成されない場合、変換される基質の濃度をたとえば0.1~50mg/Lの範囲の値となるようにする。
【0320】
本発明の方法は、そのような酸化テルペンを回収するステップをさらに含み得る。
【0321】
「回収(すること)」という用語は、培養培地から化合物を抽出すること、採取すること、単離すること、または精製することを含む。化合物の回収は、当技術分野で公知の任意の従来の単離または精製法で実施され得、限定ではないが、従来の樹脂(たとえば陰イオンまたは陽イオン交換樹脂、非イオン性吸着樹脂、その他)での処理、従来の吸着剤(たとえば活性炭、ケイ酸、シリカゲル、セルロース、アルミナ、その他)での処理、pHの変更、溶媒抽出(たとえばアルコール、酢酸エチル、ヘキサン等の従来の溶媒を使用)、蒸留、透析、ろ過、濃縮、結晶化、再結晶化、pH調節、凍結乾燥等が挙げられる。
【0322】
所期の単離の前に、ブロスのバイオマスが除去され得る。バイオマスを除去するプロセスは、たとえばろ過、沈降、および浮遊など、当業者に公知である。したがって、たとえば遠心機、分離機、デカンター、フィルター、または浮遊装置でバイオマスが除去され得る。価値ある産物を最大限に回収するために、たとえば透析ろ過の形態で、バイオマスを洗浄したほうがよいことが多い。方法の選択は、発酵槽ブロス中のバイオマス成分、およびバイオマスの特性、ならびにバイオマスと価値ある産物との相互作用に左右される。
【0323】
一実施形態では、発酵ブロスが滅菌または低温殺菌され得る。さらなる実施形態では、発酵ブロスが濃縮される。要件によっては、この濃縮はバッチ式に、または連続的に行われる。圧力および温度の範囲は、第一に産物に損傷が生じないように、第二に装置およびエネルギーの使用が必要最低限となるように、選択すべきである。多段階蒸発の圧力および温度レベルを巧みに選択すれば、特に省エネが可能になる。
【0324】
l.産物の単離
本発明の方法は、任意選択により立体異性体的または鏡像体的に実質的に純粋な形態の、最終産物または中間産物を回収するステップをさらに含み得る。「回収(すること)」という用語は、培養培地または反応培地から化合物を抽出すること、採取すること、単離すること、または精製することを含む。化合物の回収は、当技術分野で公知の任意の従来の単離または精製法で実施され得、限定ではないが、従来の樹脂(たとえば陰イオンまたは陽イオン交換樹脂、非イオン性吸着樹脂、その他)での処理、従来の吸着剤(たとえば活性炭、ケイ酸、シリカゲル、セルロース、アルミナ、その他)での処理、pHの変更、溶媒抽出(たとえばアルコール、酢酸エチル、ヘキサン等の従来の溶媒を使用)、蒸留、透析、ろ過、濃縮、結晶化、再結晶化、pH調節、凍結乾燥等が挙げられる。
【0325】
単離産物の素性および純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、(IR、UV、NMRのような)分光法、染色法、TLC、NIRS、酵素または微生物アッセイのような、公知の技法により決定され得る。(たとえばPatek et al. (1994) Appl. Environ. Microbiol. 60:133-140; Malakhova et al. (1996) Biotekhnologiya 11 27-32;および Schmidt et al. (1998) Bioprocess Engineer. 19:67-70. Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry (1996) Bd. A27, VCH: Weinheim, S. 89-90, S. 521-540, S. 540-547, S. 559-566, 575-581およびS. 581-587; Michal, G (1999) Biochemical Pathways: An Atlas of Biochemistry and Molecular Biology, John Wiley and Sons; Fallon, A. et al. (1987) Applications of HPLC in Biochemistry in: Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Bd. 17を参照されたい。)。
【0326】
本願で言及したすべての出版物は、これらの出版物の引用と関連して方法および/または材料を開示し記載するために、参照により本明細書に援用される。
【0327】
以下の実施例は例示のみを目的とし、要約、明細書、および特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲を限定するものではない。
【0328】
本明細書で提供される開示を踏まえて当業者にはすぐに明白になる多くの可能な変更形態も、本発明の範囲内である。
【0329】
実験の部
以下の実施例によって、本発明をさらに詳しく記載していく。
【0330】
材料:
特に断らない限り、本明細書で用いるすべての化学的材料および生化学的材料ならびに微生物または細胞は、市販製品である。
【0331】
特に断らない限り、組み換えタンパク質は、たとえばSambrook, J., Fritsch, E.F. and Maniatis, T., Molecular cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載されているような標準的な方法でクローニングし、発現させる。
【0332】
方法:
用いられた酵素アッセイ(標準)(E.コリ(E.coli)細胞の培養を用いてのテルペン化合物のインビボ生成)
テルペン前駆体の細胞内プールの増大を可能にする酵素をコードする核酸配列を担持し、かつテルペン生合成酵素をコードする1つまたは複数の核酸配列を担持する1つまたは複数の発現プラスミドで形質転換したKRX E.コリ(E.coli)細胞(Promega社)を用いて、テルペン化合物を生成する。形質転換細胞を、適切な抗生物質を添加したLB寒天プレート上で選択し、単コロニーからの細胞を同じ抗生物質を添加した5mLの液体LB培地に接種する。培養物を37℃で一晩インキュベートする。翌日、同じ抗生物質を添加した2mLのTB培地に、0.2mLの一晩培養物を接種する。37℃で6時間インキュベーションした後、培養物を20℃まで冷却し、0.1mMのIPTGおよび0.02%ラムノースを各チューブに添加した。培養物を20℃で48時間インキュベートした。次に培養物を2容量のMTBEで2回抽出し、有機相を500μLまで濃縮し、GC-MSで分析した。
【0333】
ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)
Agilent 6890 Series GCシステムをAgilent 5975質量検出器に接続して、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)を実行した。GCは、内径0.25mmの30mのDB-1MSキャピラリーカラム(Agilent社)を備えていた。キャリアガスは、1mL/分の定流のヘリウムであった。入口温度を250℃に設定した。初期オーブン温度は80℃とし、次いで10℃/分の勾配で220℃に、そして30℃/分の第2の勾配で280℃にした。産物の同定は、既知標準物質および内部質量スペクトルデータベースとの、質量スペクトルおよび保持指標の比較に基づいた。
【0334】
1.実施例-イソバレンセンの酸素化
実施例1:植物材料および全RNA抽出
ベチベルソウ(ベチベリア・ジザニオイデス(Vetiveria zizanoides))の苗を種苗場(仏国レユニオン島、Les AvironsのThe Austral Plants Company)から入手した。温室内の鉢で苗を栽培し(スイス国ジュネーブのLullier Agronomy research Station)、6カ月齢から1年齢の集団に分けて、栄養繁殖させた。根を採取するために鉢から植物を抜いて、水道水で洗った。
【0335】
RNAを抽出するために、若齢植物(繁殖後4~6カ月)、十分に発育し密な根系をもつ加齢植物(繁殖後1~2年)、および鉢から抜いた後室温で24~36時間乾燥させた若齢植物を含め、数本の植物の根を集めた。植物の気中部分から根を切り落とし、液体窒素中で凍らせた。まずは液体窒素中でWaring Blendor(米国トーリントンのWaring Laboratory)を使って根を荒く刻み、そして乳鉢および乳棒を使ってすりつぶし、細かい粉末にした。Kolosovaら(Kolosova N, Miller B, Ralph S, Ellis BE, Douglas C, Ritland K, and Bohlmann J, Isolation of high-quality RNA from gymnosperm and angiosperm trees. J. Biotechniques, 36(5), 821-4, 2004)に記載の手順にしたがい全RNAを抽出し、次のように修飾した。すりつぶした組織2グラムに対し20mLの抽出バッファーを用い、抽出バッファーには2%(w/v)のPVP(ポリビニルピロリドン、Sigma-Aldrich社)を添加した。CTAB(セチルトリメチルアンモニウム臭化物、Sigma-Aldrich社)抽出ステップでは、核酸ペレットを2mLのTEバッファー(10mMのTris-HCl、pH8、1mMのEDTA)に再懸濁し、2mLの5M NaClおよび1mlLの10%CTABで抽出を実施した。イソプロパノール沈殿では、核酸ペレットを500μLのTEに溶解させた。最終RNAペレットを50μLの水に再懸濁した。
【0336】
実施例2:トランスクリプトームのシーケンシング
Illumina社の技術を用いてベチベルソウ根のトランスクリプトームの配列を決定した。全シーケンシングステップは、Fasteris SA(スイス国プランレズワト、CH-1228)により実施された。TruSeq Stranded mRNA Library Preparation Kit(Illumina社)を用いてmRNAライブラリーを調製した。断片化およびサイズ選択は、長さ500~550bpのDNA断片を選択し精製するようにした。DNAシーケンシングは、MiSeqReagentKitV3(Illumina社)を用いてMiSeqシーケンサーで実施した。1回のフルフローセルをライブラリーのシーケンシングに用い、2X300のシーケンシングサイクルを実施した。このシーケンシングで、17’453’393の2X300重複ペアリードが提供された(全部で10.5メガ塩基)。
【0337】
まずはFastqJoinを用いてペアリードを前処理して、ペアエンドリードの重複末端を結合した。このステップで58.3%のペアエンドリードを結合することができ、平均サイズ430塩基の850万の結合リードを得た。次に、これらの新リードならびに非結合ペアエンドリードを、CLC bio社デノボ・アセンブリ・ツール、CLC Genomic Workbench 7(CLC bio社)を用いてアセンブリした。最終的に、アセンブルしたベチベルソウ根トランスクリプトームは、平均長577塩基の333’633のユニークcontig配列を含有しており、最大長15’800塩基であり、N50は546塩基であった。
【0338】
実施例3:ベチベルソウ根トランスクリプトームからのテルペンシンターゼコードcDNAの単離
tBlastnアルゴリズム(Altschul et al, J. Mol. Biol. 215, 403-410, 1990)を用いてトランスクリプトームデータを検索し、クエリとして、過去に記述されている同じ植物から単離された既知のセスキテルペンシンターゼのアミノ酸配列を用いた(国際公開第2010134004号および国際公開第2006134523号)。このアプローチにより、新しいセスキテルペンコード配列が得られた。このcDNA(VzTps1718)(配列番号1)は、長さ1835塩基対であり、オープン読み枠(配列番号2)を含有し、567アミノ酸長さのタンパク質(配列番号3)をコードした。
【0339】
VzTps1718のDNA配列をコドン最適化し(配列番号4)、インビトロで合成し、pJ401発現プラスミド(米国カリフォルニア州ニューアークのATUM社)内でクローニングした。pJ401-VzTps1718発現コンストラクトを用いて、E.コリ(E.coli)細胞内でセスキテルペン化合物を生成することができる。細胞の生成性を上げるために、異種性FPPシンターゼ、および完全異種性メバロン酸(MVA)経路からの酵素を、同じ細胞内で発現させた。FPPシンターゼ遺伝子および完全MVA経路の遺伝子を含有する発現プラスミドの構築は、国際公開第2013064411号またはSchalk et al (2013) J. Am. Chem. Soc. 134, 18900-18903に記載されている。簡単に説明すると、完全メバロン酸経路の酵素をコードする遺伝子で構成される2つのオペロンを含有する発現プラスミドを調製した。E.コリ(E.coli)アセトアセチル-CoAチオラーゼ(atoB)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)HMG-CoAシンターゼ(mvaS)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)HMG-CoAレダクターゼ(mvaA)、およびサッカロミケス・ケレウィシアエ(Saccharomyces cerevisiae)FPPシンターゼ(ERG20)遺伝子からなる第1の合成オペロンをインビトロで合成し(米国カリフォルニア州ニューアークのATUM社)、NcoI-BamHI消化pACYCDuet-1ベクター(Invitrogen社)に連結して、pACYC-29258を得た。メバロン酸キナーゼ(MvaK1)、ホスホメバロン酸キナーゼ(MvaK2)、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(MvaD)、およびイソペンテニル二リン酸イソメラーゼ(idi)を含有する第2のオペロンを、ストレプトコッカス・ニューモニアエ(Streptococcus pneumoniae)のゲノムDNA(ATCC BAA-334)から増幅し、pACYC-29258の第2のマルチクローニング部位に連結して、プラスミドpACYC-29258-4506を得た。このプラスミドは、したがって、アセチル-コエンザイムAからFPPまで生合成経路の全酵素をコードする遺伝子を含有している。
【0340】
プラスミドpACYC-29258-4506およびプラスミドpJ401-VzTps1718でKRX E.コリ(E.coli)細胞(Promega社)を同時形質転換し、形質転換細胞をカナマイシン(50μg/mL)およびクロラムフェニコール(34μg/mL)のLBagarプレートで選択した。改変細胞によるテルペン化合物の生成および同定を、方法セクションに記載したように実施した。これらの条件では、VzTps1718酵素(配列番号3)がセスキテルペンシンターゼ活性を示し、FPPをセスキテルペン炭化水素および酸素化セスキテルペンをはじめとするいくつかのテルペン産物に変換した(
図2)。主産物は、エレモフィラン、ベチスピラン(vetispirane)、およびオイデスマン骨格をもつセスキテルペンであった。産物のうち、保持指標および質量スペクトルの一致に基づきいくつかの化合物を同定できた(
図3~5):イソバレンセン(化合物1)、スピロベチバ-1(10),7(11)-ジエン(化合物2)、およびバレンセン(化合物3)(
図1参照)。VzTps1718を用いて得られた産物混合体の相対的な組成を以下の表1に詳述する。同定されたセスキテルペン産物、スピロベチバ-1(10),7(11)-ジエン、イソバレンセン、およびバレンセンの産物混合体中の相対的存在量は、それぞれ14.7%、39.0%、および5.1%であった。
【0341】
【0342】
化合物1または化合物2を生成するこの産物またはシンターゼの混合物を生成するセスキテルペンシンターゼは、これまで知られていない。VzTps1718の産物の酸素化誘導体、特にアルコール、ケトン、アルデヒド、およびカルボン酸は、既知のベチベル油成分であり、これらの誘導体の一部は典型的な複雑なベチベルの香りに寄与している。
【0343】
実施例4:ベチベルソウ根トランスクリプトームに由来するチトクロムP450コードcDNAの同定
VzTps1718酵素により生成されるセスキテルペン炭化水素の酸素化誘導体を生成するために、すべてベチベルソウの根に由来するいくつかのチトクロムP450酵素を選択した。
【0344】
tBlastnアルゴリズム(Altschul et al, J. Mol. Biol. 215, 403-410, 1990)を用いて、ベチベルソウ根トランスクリプトームのデータをチトクロムP450コード配列について検索し、クエリとして、国際公開第2013064411号の配列番号1および2などの、テルペンヒドロキシラーゼ活性を有する既知のチトクロムP450のアミノ酸配列を用いた。いくつかのチトクロムP450コード転写物を単離した。転写物VzTrspt-9_Locus_8201-12(配列番号5)は、1521塩基対のオープン読み枠(配列番号6)を含有し、チトクロムP450アミノ酸配列と相同性を示す、506アミノ酸のタンパク質、VzCP8201-12(配列番号7)をコードした。公開されている最も近い配列は、モロコシ(Sorghum bicolor)由来の推定チトクロムP450タンパク質(ジテルペンヒドロキシラーゼ、とアノテーションが付けられている、NCBI受託番号XP_002466860.1またはXP_002466859.2を有する配列など)であり、VzCP8201-12と比較して配列同一性は84%未満である。
【0345】
1521のオープン読み枠(配列番号12)を含有し、506アミノ酸の推定チトクロムP450タンパク質、VzCP7186(配列番号13)をコードする、別の転写物、VzTrsp7_contig_7186(配列番号11)も選択された。公開配列データベース中の最も近い配列は、モロコシ(Sorghum bicolor)由来の受託番号XP_002466859.2を有する配列であり、86%の配列同一性を有する。
【0346】
第3のチトクロムP450酵素、配列番号16によりコードされるVzCP521-11(国際公開第2013064411号)(配列番号18)が、選択された。このチトクロムP450酵素は、さまざまなセスキテルペンに対しテルペンヒドロキシラーゼ活性を有することが以前示された。
【0347】
実施例5:チトクロムP450の異種発現のためのDNA配列最適化
植物由来のチトクロムP450は、N末端アンカーペプチドをもつ膜結合タンパク質である。チトクロムP450の膜アンカー配列と触媒ドメインとは、ふつうはプロリンが豊富な領域により区切られている。VzCP8201、VzCP7186、およびVzCP521-11の触媒部分(それぞれ配列番号19、20、および21)は、タンパク質の酵素活性を担持する。N末端膜アンカーペプチドは、チトクロムP450酵素の膜への結合に関与している。したがってN末端配列は、酵素の触媒活性を変えることなく修飾され得る。P450コードcDNAの5’末端を修飾して、膜アンカーペプチドのアミノ酸配列を変更することで、微生物宿主細胞における酵素の発現が改善され得る。
【0348】
したがって、全長VzCP8201-12(配列番号7)タンパク質をコードするcDNA(配列番号8)配列を、細菌での最適な発現のためにコドン使用を用いて設計し、VzCP8201-12のN末端修飾バリアント(VzCP8201bovと呼ばれる、配列番号10)をコードする第2のcDNA(配列番号9)も設計した。この修飾に含まれるのは、最初の20個のN末端アミノ酸の欠失、およびMALLLAVFLGLSCLLLLSLWペプチド(配列番号24)での置換である。この2つのcDNAを合成し、pCWori発現プラスミド内でサブクローニングして(Barnes, H.J. Method Enzymol. 272, 3-14; (1996))、それぞれpCWori-VzCP8201-12プラスミドおよびpCWori-VzCP8201Bovプラスミドを得た。
【0349】
VzCP7186では、N末端領域アミノ酸配列の類似の修飾を有するバリアント(VzCP7186op、配列番号15)を設計して、最初の20個のアミノ酸をMALLLAVFLGLSCLLLLSLW配列(配列番号24)で置換し、E.コリ(E.coli)発現用にコドン使用最適化された新しいcDNAを合成し(配列番号14)、pJ401プラスミド内でクローニングした(米国カリフォルニア州ニューアークのATUM社)。
【0350】
VzCP521-11では、野生型アミノ酸配列(配列番号18)をE.コリ(E.coli)での異種発現のため保存し、コドン最適化配列のみによりcDNAを合成し(配列番号17)、pJ401プラスミド内でクローニングした(米国カリフォルニア州ニューアークのATUM社)。
【0351】
ベチベルP450酵素の機能的特徴決定のために、タンパク質をE.コリ(E.coli)細胞内で異種発現させた。植物P450の活性を再構成するために、第2の膜タンパク質の存在が必要である。このタンパク質、P450-レダクターゼ(CPR)は、補因子NADPH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)からP450活性部位への電子の移動に関与する。ある植物由来のCPRが、別の植物由来のチトクロムP450酵素の活性を補完し得ることがわかっている(Jensen and Moller (2010) Photochemistry 71, 132-141)。異なる植物供給源からのCPRをコードするDNA配列がいくつか報告されている。本発明者らは、メンタ・ピペリタ(Mentha piperita)から過去に単離されたCPR(CPRm、未公開データ、配列番号23)を選択し、全長cDNA(配列番号22)のコドン使用を最適化し、それをpACYCDuet-1発現プラスミド(Novagen社)のNcoIおよびHindIII制限部位へとクローニングして、プラスミドpACYC-CPRmを得た。
【0352】
実施例6:チトクロムP450、チトクロムP450-レダクターゼ、およびテルペンシンターゼを同時発現させる発現プラスミドの構築
P450、CPR、およびテルペンシンターゼコードcDNAで構成される合成オペロンを含有するpCWori+プラスミド(Barnes H.J (1996) Method Enzymol. 272, 3-14)を含むプラスミドを構築した。これらのコンストラクトは、各cDNAの上流にリボソーム結合部位(RBS)を挿入するように設計した。実施例5に記載のpCWori-VzCP8201Bovプラスミドが、VzCP8201BovコードcDNAの上流にNdeI認識配列を、およびVzCP8201BovコードcDNAの下流にポリリンカーDNA配列(GTCGACAATTAACCATGGTTAATTAAGCTTATATATGGTACCATATATGAATTCATTAATCTCGAG(配列番号25)を含むように設計されたVzCP8201BovコードcDNA(配列番号9)を含有し、かつSalI、NcoI、HindIII、KpnI、EcoRI、およびXhoI認識配列を含有した。最適化CPRm cDNAは、5’末端に、開始コドンの前にスペーサー配列、SalI認識配列、およびRBS配列を含む26bp伸長(GTCGACAATTAGGTAAAAAATAAACC(配列番号26)を付加するように、かつ3’末端にHindIII認識配列を付加するように、修飾された。最適化CPRm cDNA(配列番号22)を、pCWori-VzCP8201BovプラスミドのSalI部位とHindIII部位との間でサブクローニングして、pCWori-VzCP8201Bov-CPRmプラスミドを得た。pJ401プラスミド(米国カリフォルニア州メンローパークのDNA2.0)内でクローニングされたVzTps1718の最適化cDNA配列(配列番号4)は、HindIII認識配列およびRBS配列で構成される5’非コード配列(AAGCTTAAGGAGGTAAAAA)(配列番号27)ならびにKpnI、EcoRI、およびXhoI認識部位で構成される3’非コード配列(GGTACCATATATGAATTCATTAATCTCGAG)(配列番号28)を含有する。VzTps1718-pJ401プラスミドからのインサートをHindIIIおよびXhoI制限酵素により消化させ、pCWori-VzCP8201Bov-CPRmプラスミドの同じ制限酵素認識部位の間でサブクローニングした。得られたプラスミドpCWori:VzCP8201Bov:CPRm:VzTps1718は、したがって、VzCP8201BovコードcDNA、CPRmコードcDNA、およびVzTps1718コードcDNAを含むオペロンを含有する。
【0353】
N末端修飾VzCP7186タンパク質(配列番号15)をコードする最適化cDNA(配列番号14)を、もとのpJ401プラスミド(実施例5)からpCWori:VzCP8201Bov:CPRm:VzTps1718へと、NdeIおよびHindIII制限酵素での消化/連結により移した。この新しいプラスミド、pCWori:VzCp7186:CPRm:VzTps1718は、したがって、VzCP7186optコードcDNA、CPRmコードcDNA、およびVzTps1718コードcDNAを含むオペロンを含有する。
【0354】
同様に、pCWori:VzCP521-11:CPRm:VzTps1718プラスミドを、VzCP521-11最適化cDNAを、pJ401プラスミドからNdeIおよびHindIII消化pCWori:VzCP8201Bov:CPRm:VzTps1718プラスミドへとクローニングすることにより、構築した。
【0355】
最後に、VzCP8201コードcDNAの1コピーおよびVzCP7186コードcDNAの1コピーを、CPRおよびテルペンシンターゼコードcDNAと組み合わせて多シストロン性プラスミドを構築した。VzCP7186 cDNAを、プライマーInf8201-7186-Fw(TAATTTTATTCCGAACTAAGTCGAAGGAGGTAATATGGCGTTGCTGTTGGCTGTTTTTCTGG)(配列番号29)およびInf8201-7186-Rev(ATTTTTTACCTAATTGTCGACTTAGTTCGGAATAAAGTTATTGTACGGAC)(配列番号30)を用いて増幅した。増幅DNA断片を、SalI制限酵素で線形にしたpCWori:VzCP8201Bov:CPRm:VzTps1718プラスミド内でクローニングした。クローニング反応は、In-Fusion(登録商標)技法(Clontech、Takara Bio Europe社)を用いて実施した。得られたプラスミドpCWori:VzCP8201:VzCP7186:CPRm:VzTps1718はしたがって、単一のオペロン内にVzCP8201、VzCP7186、CPRm、およびVzTps1718をそれぞれコードするcDNAを含有する。
【0356】
実施例7.VzTps1718およびチトクロムP450酵素を用いての酸素化セスキテルペン化合物のインビボの生成
実施例6に記載の4つのpCWoriプラスミドの1つ、および完全メバロン酸経路を担持するプラスミドpACYC-29258-4506(実施例3)で、KRX E.コリ(E.coli)細胞(Promega社)を同時形質転換した。形質転換細胞を培養し、そしてテルペン化合物の生成を実験セクションに記載のように評価したが、ただし75μg/Lのδ-アミノレブリン酸(Sigma社)を培養培地に添加した。
【0357】
図6は、組み換えVzTps1718セスキテルペンシンターゼを単独で、またはVzCP8201またはVzCP7186チトクロムP450酵素とともに生成するように改変されたE.コリ(E.coli)細胞を用いて形成された産物のGC-MS分析を示す。この生物変換中に、イソバレンセノール(
図7)および酢酸イソバレンセニル(
図8)をはじめとするいくつかの酸素化セスキテルペン化合物が形成された。イソバレンセノール産物は、VzCP8201またはVzCP7186によるイソバレンセンの酸化により形成する。酢酸イソバレンセニル産物は、バックグラウンドE.コリ(E.coli)酵素活性によるイソバレンセノールのアセチル化により形成する。
図6は、VzCP8201およびVzCp7186が触媒する水酸化反応の選択性が類似していることも示している。
【0358】
図9は、組み換えVzTps1718セスキテルペンシンターゼをVzCP521-11チトクロムP450酵素とともに生成するように改変されたE.コリ(E.coli)細胞を用いて形成された産物のGC-MS分析を示す。この生物変換中に、 をはじめとするいくつかの酸素化セスキテルペン化合物が形成された。これらの産物の一部、特にイソバレンセノールおよび酢酸イソバレンセノールは、VzCP8201またはVzCP7186でも観測された。VzCP521-11の主要な酸化産物のうち、イソヌートカトールが、既知標準物質と質量スペクトルの一致により観測することができた(
図10)。イソヌートカトールは、たとえば生化学的または化学的に、対応するケトンへと酸化されやすく(Basic Reactions in Organic Synthesis (2007)のOxidation of Alcohols to Aldehydes and Ketones, G. Tojo and M. Fernadez)、それによってベチベル油の主成分の1つであるα-ベチボンを生成する。
【0359】
図11は、組み換えVzTps1718セスキテルペンシンターゼをVzCP8201およびVzCP7186チトクロムP450酵素とともに生成するように改変されたE.コリ(E.coli)細胞を用いて形成された産物のGC-MS分析を示す。この分析は、酸化セスキテルペンの量の増加、および非酸素化セスキテルペンに対する酸素化セスキテルペンの比率の増加を示す。
【0360】
2.実施例-ジザエンの酸素化
実施例8:ジザエンシンターゼのバリアントの同定
ジザエンシンターゼ活性を有するテルペンシンターゼが、国際公開第2010134004号に記載されている。tBlastnアルゴリズム(Altschul et al, J. Mol. Biol. 215, 403-410, 1990)を用いてこの新しいトランスクリプトームデータを検索し、クエリとして国際公開第2010134004号のアミノ酸配列配列番号1を用いた。このアプローチにより、ジザエンシンターゼのバリアントVzZS2およびVzZS2-Nter2(それぞれ配列番号38および配列番号42)をコードする、2つの新しいcDNA(VzTrspt_4_contig_995(配列番号35);オープン読み枠を有する全長cDNAを配列番号36に示す)およびVzTrspt_10_contig_49(配列番号39;オープン読み枠を有する全長cDNAを配列番号40に示す)が同定できた。これらの2つのバリアントは、先に同定したジザエンシンターゼ(VzZS1、配列番号33)とはそれぞれ12アミノ酸および17アミノ酸だけ異なる。非コード領域を含めた対応するVzZS1コード全長cDNAを配列番号31に、そしてオープン読み枠を配列番号32に示す。
【0361】
VzZS2をコードするコドン最適化DNA(配列番号37)およびVzZS2-Nter2をコードするコドン最適化DNA(配列番号41)ならびにVzZS1をコードするコドン最適化DNA(国際公開第2010134004号の配列番号1)(本明細書ではVzZS1アミノ酸配列=配列番号33;コドン最適化cDNA=配列番号34)を合成し、pJ401発現プラスミド(米国カリフォルニア州ニューワークのATUM社)内でクローニングした。これらの3つの発現プラスミドを用いてE.コリ(E.coli)細胞を形質転換し、方法セクションに記載の手順によりセスキテルペン化合物を生成させたが、ただしGC-MS分析では、初期のオーブン温度を100℃で1分に設定し、その後12℃/分の上昇により240℃にし、50℃/分の第2の上昇により300℃にした。
【0362】
これらの条件では、3つの組み換えタンパク質すべてが主産物としてジザエンを生成した(
図12)。VzZS2およびVzZS2-Nter2は、先に同定したシンターゼ(VzZS1)よりも38%および42%多い量のジザエンを生成した(
図13)。
【0363】
実施例9:チトクロムP450、チトクロムP450-レダクターゼ、およびジザエンシンターゼを同時発現させる発現プラスミドの構築
pJ401プラスミド(米国カリフォルニア州メンローパークのDNA2.0)内でクローニングされたVzZS2-Nter2の最適化cDNA配列は、HindIII認識配列およびRBS配列で構成される5’非コード配列(AAGCTTAAGGAGGTAAAAA 配列番号27)ならびにKpnI、EcoRI、およびXhoI認識部位で構成される3’非コード配列(GGTACCATATATGAATTCATTAATCTCGAG(配列番号28)を含有する。VzZS2-Nter2-pJ401プラスミドからのインサートをHindIIIおよびXhoI制限酵素により除去して、実施例6に記載の3つの3シストロン性プラスミド各々の同じ制限酵素認識の間でサブクローニングし、それによってテルペンシンターゼコードcDNAを置換した。その結果として3つの新しいプラスミドpCWori:VzCP8201Bov:CPRm:VzZS2-Nter2、pCWori:VzCp7186:CPRm:VzZS2-Nter2、およびpCWori:VzCp521-11:CPRm:VzZS2-Nter2が得られ、各々が、CPRmコードcDNA、ジザエンシンターゼコードcDNA、および3つのチトクロムP450コードcDNAの1つを担持していた。
【0364】
実施例10:VzZS2-Nter2およびチトクロムP450酵素を用いての酸素化セスキテルペン化合物のインビボの生成
実施例9に記載のpCWoriプラスミドの1つ、および完全メバロン酸経路を担持するプラスミドpACYC-29258-4506(実施例3)で、KRX E.コリ(E.coli)細胞(Promega社)を同時形質転換し、形質転換細胞を、実験セクションに記載のように、テルペン化合物の生成について評価した。
【0365】
図14は、組み換えジザエンシンターゼ(VzZS2-Nter2)をVzCP8201、VzCP7186、またはVzCP521-11チトクロムP450酵素とともに生成するように改変されたE.コリ(E.coli)細胞を用いて形成された産物のGC-MS分析を示す。3つのチトクロムP450酵素各々によりα-ジザエノールが生成された(
図15)。VzCP521-11により、α-ジザエノールに加えてクシモールがマイナー産物として生成された(
図16)。
【0366】
実施例11:同じ細胞でのジザエンシンターゼ、VzCP8201チトクロムP450、およびVzCP7186チトクロムP450の同時発現
VzCP8201コードcDNAの1コピーおよびVzCP7186コードcDNAの1コピーを、CPRおよびジザエンシンターゼコードcDNAと組み合わせて多シストロン性プラスミドを構築した。VzCP7186 cDNAを、プライマーInf8201-7186-Fw(TAATTTTATTCCGAACTAAGTCGAAGGAGGTAATATGGCGTTGCTGTTGGCTGTTTTTCTGG)(配列番号29)およびInf8201-7186-Rev(ATTTTTTACCTAATTGTCGACTTAGTTCGGAATAAAGTTATTGTACGGAC)(配列番号30)を用いて増幅した。増幅DNA断片を、SalI制限酵素で線形にしたpCWori:VzCP8201Bov:CPRm:VzZS2-Nter2プラスミド内でクローニングした。クローニング反応は、In-Fusion(登録商標)技法(Clontech、Takara Bio Europe社)を用いて実施した。得られたプラスミドpCWori:VzCP8201:VzCP7186:CPRm:VzZS2-Nter2はしたがって、単一のオペロン内にVzCP8201、VzCP7186、CPRm、およびVzZS2-Nter2をそれぞれコードするcDNAを含有する。
【0367】
図17Cは、VzCP8201またはVzCP7186のみを含有する細胞(
図17Aおよび17B)と比較しての、組み換えジザエンシンターゼをVzCP8201およびVzCP7186チトクロムP450酵素とともに生成するように改変されたE.コリ(E.coli)細胞を用いて形成された産物のGC-MS分析を示す。この分析は、VzCP8201およびVzCP7186チトクロムP450酵素を同時発現する細胞内で生成されるa-ジザエノールの量の増加を示す。これらの条件では、ジザエノールの酸化誘導体、ジザエノンも検出された(
図17Cおよび
図18)。
【0368】
実施例12:ジザエンシンターゼのバリアントを用いてのサッカロミケス・ケレウィシアエ(Saccharomyces cerevisiae)細胞におけるジザエンのインビボの生成
ジザエンの生成のために、3つの異なるジザエンシンターゼをコードする遺伝子、VzZS1(配列番号33)、VzZS2(配列番号38)、およびVzZS2-Nter2(配列番号42)を、内在性ファルネシル二リン酸(FPP)のレベルを増加させた改変サッカロミケス・ケレウィシアエ(Saccharomyces cerevisiae)細胞内で発現させた。
【0369】
S.ケレウィシアエ(S.cerevisiae)細胞内の内在性ファルネシル二リン酸(FPP)プールのレベルを増加させるために、アセチル-CoAC-アセチルトランスフェラーゼをコードするERG10からFPPシンセターゼをコードするERG20まで、メバロン酸経路に関与するすべての酵母内在性遺伝子の余分なコピーを、S.ケレウィシアエ(S.cerevisiae)株CEN.PK2-1C(独国フランクフルトのEuroscarf社)のゲノムに、ガラクトース誘発性プロモーターの制御下で、Paddon et al., Nature, 2013, 496:528-532に記載されているのと同様にして組み込んだ。簡単に説明すると、3つのカセットをそれぞれLEU2、TRP1、およびURA3座位に組み込んだ。二方向性プロモーターGAL10/GAL1の制御下の遺伝子ERG20および切断HMG1(Donald et al., Proc Natl Acad Sci USA, 1997, 109:E111-8に記載されているtHMG1)、およびやはりGAL10/GAL1プロモーターの制御下の遺伝子ERG19およびERG13を含有する第1のカセットは、LEU2の上流セクションおよび下流セクションに対応する2つの100ヌクレオチド領域に挟まれた。遺伝子IDI1およびtHMG1がGAL10/GAL1プロモーターの制御下にあり、遺伝子ERG13がGAL7のプロモーター領域の制御下にある第2のカセットは、TRP1の上流セクションおよび下流セクションに対応する2つの100ヌクレオチド領域に挟まれた。すべてGAL10/GAL1プロモーターの制御下の遺伝子ERG10、ERG12、tHMG1、およびERG8を有する第3のカセットは、URA3の上流セクションおよび下流セクションに対応する2つの100ヌクレオチド領域に挟まれた。3つのカセットのすべての遺伝子が、自体のターミネーター領域の200ヌクレオチドを含んだ。また、Griggs and Johnston, Proc Natl Acad Sci USA, 1991, 88:8597-8601に記載されるように、自体のプロモーターの変異バージョンの制御下のGAL4の余分なコピーがERG9プロモーター領域の上流に組み込まれた。さらに、ERG9の発現をプロモーター交換により修飾した。GAL7、GAL10、およびGAL1遺伝子を、自体のプロモーターおよびターミネーターを有するHIS3遺伝子を含有するカセットを用いて削除した。得られた株を株CEN.PK2-1D(独国フランクフルトのEuroscarf社)と交配させて、YST045と呼ばれる二倍体株を得、Solis-Escalante et al, FEMS Yeast Res, 2015, 15:2にしたがい胞子形成を誘発した。子嚢を2μLのzymolyase(1000UmL-1、カリフォルニア州アーバインのZymoresearch社)を含む200μLの0.5Mソルビトールに再懸濁させて胞子分離を行い、37℃で20分インキュベートした。この混合物を次に、20g/Lのペプトン、10g/Lの酵母エキス、および20g/Lの寒天を含有する培地に播き、発生した1つの胞子を単離し、YST075と名付けた。
【0370】
YST075におけるVzZS1,VzZS2、およびVzZS2-Nter2の発現ために、Kuijpers et al., Microb Cell Fact., 2013, 12:47で以前に記載されているように、酵母内在性相同組み換えによりインビボでプラスミドのセットを構築した。プラスミドは5つのDNA断片で構成され、これらをS.ケレウィシアエ(S.cerevisiae)の同時形質転換に用いた。断片は:
a)PCRにより、プラスミドpESC-LEU(米国カリフォルニア州のAgilent Technologies社)を鋳型とし、プライマー5’AGGTGCAGTTCGCGTGCAATTATAACGTCGTGGCAACTGTTATCAGTCGTACCGCGCCATTCGACTACGTCGTAAGGCC-3’(配列番号43)および5’TCGTGGTCAAGGCGTGCAATTCTCAACACGAGAGTGATTCTTCGGCGTTGTTGCTGACCATCGACGGTCGAGGAGAACTT-3’(配列番号44)を用いて構築された、LEU2酵母マーカー;
b)PCRにより、プラスミドpESC-URAを鋳型とし、プライマー5’-TGGTCAGCAACAACGCCGAAGAATCACTCTCGTGTTGAGAATTGCACGCCTTGACCACGACACGTTAAGGGATTTTGGTCATGAG-3’(配列番号45)および5’-AACGCGTACCCTAAGTACGGCACCACAGTGACTATGCAGTCCGCACTTTGCCAATGCCAAAAATGTGCGCGGAACCCCTA-3’(配列番号46)を用いて構築された、AmpR E.コリ(E.coli)マーカー;
c)PCRにより、pESC-URAを鋳型とし、プライマー5’-TTGGCATTGGCAAAGTGCGGACTGCATAGTCACTGTGGTGCCGTACTTAGGGTACGCGTTCCTGAACGAAGCATCTGTGCTTCA-3’(配列番号5y)および5’-CCGAGATGCCAAAGGATAGGTGCTATGTTGATGACTACGACACAGAACTGCGGGTGACATAATGATAGCATTGAAGGATGAGACT-3’(配列番号48)を用いて構築された、酵母複製起点;
d)PCRにより、プラスミドpESC-URAを鋳型とし、プライマー5’-ATGTCACCCGCAGTTCTGTGTCGTAGTCATCAACATAGCACCTATCCTTTGGCATCTCGGTGAGCAAAAGGCCAGCAAAAGG-3’(配列番号49)および5’-CTCAGATGTACGGTGATCGCCACCATGTGACGGAAGCTATCCTGACAGTGTAGCAAGTGCTGAGCGTCAGACCCCGTAGAA-3’(配列番号50)を用いて構築された、E.コリ(E.coli)複製起点;
e)断片“d”の最後の60ヌクレオチド、酵母遺伝子PGK1のストップコドン下流の200ヌクレオチド、S.ケレウィシアエ(S.cerevisiae)での発現のためにコドン最適化された被験ジザエンシンターゼコード遺伝子の1つ(配列番号51、配列番号52、配列番号53、それぞれVzZS1、VzZS2、およびVzZS2-Nter2)、酵母プロモーターGAL1、および断片“a”の始まりに対応する60ヌクレオチドで構成される断片、であって、これらの断片はDNA合成(カリフォルニア州94025メンローパークのATUM社)およびPCRオーバーラップ伸長(Yolov and Shabarova., Nucleic Acids Res. 1990, 18(13):3983-6)により得られた。
【0371】
YST075をインビボのプラスミドのアセンブリに必要な断片で形質転換した。酵母の形質転換は、Gietz and Woods, Methods Enzymol., 2002, 350:87-96に記載される酢酸リチウムプロトコルにより実施した。形質転換混合物を、アミノ酸を含まない6.7g/LのYeast Nitrogen Base(米国ニュージャージー州のBD Difco社)、ロイシンを含まない1.6g/LのDropoutサプリメント(米国ミズーリ州のSigma Aldrich社)、20g/Lのグルコース、および20g/Lの寒天を含有するSm Leu培地に播いた。プレートを30℃で3~4日間インキュベートした。各コロニーを用いて、Westfall et al., Proc Natl Acad Sci USA, 2012, 109:E111-118に記載の培地、およびドデカンを有機オーバーレイとして収容するガラスチューブ内で、ジザエンを生成した。培養物を30℃で3~4日間インキュベートした。内部標準を用いてGC-MS分析によりジザエン生成が同定され定量化された。
【0372】
これらの培養条件で、すべての被験ジザエンシンターゼが主産物としてジザエンを生成した。先に同定したシンターゼVzZS1(国際公開第2010134004号の配列番号1)と比べて、VzZS2およびVzZS2-Nter2は、286%および42.3%の量のジザエンを生成した(
図21)。VzZS2が最高のジザエン生成量を与えた。
【0373】
実施例13:ジザエンシンターゼおよびチトクロムP450酵素を用いてのサッカロミケス・ケレウィシアエ(Saccharomyces cerevisiae)細胞における酸素化セスキテルペン化合物のインビボの生成
酸素化セスキテルペン化合物の生成のために、ジザエンシンターゼVzZS1、VzZS2、およびVzZS2-Nter2をコードする遺伝子、ならびにチトクロムP450のVzCP521-11およびVzCP8201をコードする遺伝子(それぞれ配列番号54および配列番号55)を、改変サッカロミケス・ケレウィシアエ(Saccharomyces cerevisiae)細胞内で発現させた。すべての遺伝子がS.ケレウィシアエ(S.cerevisiae)での発現のためにコドン最適化されていた。
【0374】
チトクロムレダクターゼAaCPRおよびチトクロムb5 CYB5をコードする遺伝子のコドン最適化バージョン(アルテミシア・アンヌア(Artemisia annua)由来、GenBank受託番号はそれぞれJF951732およびJQ582841;Paddon et al., Nature, 2013, 496:528-532に記載されている)をYST075のゲノムに組み込んだ。AaCPRおよびCYB5をコードする遺伝子の発現は、それぞれGAL3およびGAL7遺伝子のプロモーター領域の制御下にあった。生成した株をYST091と名付けた。
【0375】
YST091における異なる被験遺伝子の発現のために、Kuijpers et al., Microb Cell Fact., 2013, 12:47で以前に記載されているように、6つのプラスミドのセットを酵母内在性相同組み換えによりインビボで構築した。プラスミドは実施例12での記載と同様に5つのDNA断片で構成されるが、違いは、断片“e”が、1つの被験ジザエンシンターゼおよび1つの被験チトクロムP450を含有したことであり、どちらも二方向性GAL10/GAL1プロモーターにより制御された。YST091をインビボのプラスミドのアセンブリに必要な断片で形質転換し、ガラスチューブの代わりにディープウェル・プレートを用いて、実施例12に記載のように試験した。ディープウェル・プレートは、Westfall et al., Proc Natl Acad Sci USA, 2012, 109:E111-118に記載の培地、および有機オーバーレイとしてパラフィンオイル(米国ミズーリ州のSigma Aldrich社)を含有した。ディープウェル・プレートを30℃で3~4日間インキュベートした。酵母細胞により生成された分子を抽出するために、内部標準を含有する酢酸エチルを各ウェルに添加した。ジザエンおよびジザエノールの生成をGC-MS分析により同定し、GC-FIDにより定量化した。
【0376】
これらの培養条件では、VzCP8201を酵母細胞内で発現させたときは酸素化ジザエンは同定されなかった。一方、ジザエンシンターゼとP450 VzCP521-11との3通りの組み合わせでは、ジザエンもジザエノールも両方生成された。最高量のジザエノールがVzZS2およびVzCP521-11をコードする遺伝子を内包するプラスミドで得られたが、他の2つの組み合わせ、VzZS1/VzCP521-11およびVzZS2-Nter2/VzCP521-11は、それぞれジザエノール最高量の53%および11%を生成した。
【0377】
安定酵母株を構築する目的で、プラスミド構築に用いられるVzZS2およびVzCP521-11をコードする遺伝子を含有するDNA断片を、LEU2およびTRP1マーカー遺伝子の支援により、2つの配列組み換えイベントで2度、YST091のゲノムに組み込んだ。さらに、GAL10プロモーターの制御下でVzCP521-11をコードする遺伝子のみを含有するDNA断片の3つ目の組み込みを、URA3マーカー遺伝子を用いて実施した。得られた株をYST124と名付けた。
【0378】
YST124を、Westfall et al., Proc Natl Acad Sci USA, 2012, 109:E111-118に記載されているのと同様にして、酸素化セスキテルペンの生成について評価した。
図22は、YST124の培養で形成された酸素化セスキテルペンのGC-MS分析を示し、ジザエノールだけでなくジザエノンも形成され、より少量であるがクシモールも形成された。
【0379】
【0380】
配列
配列番号1
3’および5’非コード領域を含むVzTps1718野生型cDNA配列:
【化1】
【0381】
配列番号2
VzTps1718野生型cDNAのオープン読み枠配列:
【化2-1】
【化2-2】
【0382】
配列番号3
VzTps1718の全長アミノ酸配列:
【化3】
【0383】
配列番号4
VzTps1718コドン最適化cDNA配列
【化4-1】
【化4-2】
【0384】
配列番号5
VzTrspt-9_Locus_8201-12、5’および3非翻訳配列を含有する全長転写物
【化5】
【0385】
配列番号6
VzCp8201-12野生型cDNA配列、オープン読み枠のみ
【化6】
【0386】
配列番号7
VzCP8201-12、野生型アミノ酸配列
【化7】
【0387】
配列番号8
VzCP8201-228093、VzCP8201-12をコードする最適化DNA配列、NdeI部位を5’末端に、およびポリリンカーを3’末端に含む
【化8-1】
【0388】
【0389】
配列番号9
VzCP8201-228092、VzCP8201-12-bovをコードする最適化DNA配列、NdeI部位を5’末端に、およびポリリンカーを3’末端に含む
【化9-1】
【化9-2】
【0390】
配列番号10
VzCP8201-12-bov、VzCP8201-12のN末端バリアントのアミノ酸配列
【化10】
【0391】
配列番号11
VzTrspt7_contig_7186、5’および3非翻訳配列を含有する全長転写物
【化11】
【0392】
配列番号12
VzTrspt7_contig_7186野生型cDNA配列、オープン読み枠のみ
【化12-1】
【0393】
【0394】
配列番号13
VzCP7186、野生型アミノ酸配列
【化13】
【0395】
配列番号14
VzCP7186のN末端バリアントをコードする最適化cDNA
【化14-1】
【化14-2】
【0396】
配列番号15
VzCP7186のN末端バリアント=VzCP7186op
【化15】
【0397】
配列番号16
VzCP521-11野生型cDNAオープン読み枠配列:
【化16-1】
【0398】
【0399】
配列番号17
VzCP521-11をコードする最適化cDNA配列
【化17】
【0400】
配列番号18
VzCP521-11、アミノ酸配列
【化18】
【0401】
配列番号19
VzCP8201の触媒ドメイン
【化19】
【0402】
配列番号20
VzCP7186の触媒ドメイン
【化20】
【0403】
配列番号21
VzCP521-11の触媒ドメイン
【化21】
【0404】
配列番号23
メンタ・ピペリタ(Mentha piperita)(CPRm)アミノ酸配列からのP450レダクターゼ
【化22】
【0405】
配列番号22
メンタ・ピペリタ(Mentha piperita)(CPRm)DNA配列からのP450レダクターゼ
【化23】
【0406】
配列番号24
20アミノ酸置換ペプチド:
MALLLAVFLGLSCLLLLSLW。
【0407】
配列番号25
ポリリンカーDNA配列
GTCGACAATTAACCATGGTTAATTAAGCTTATATATGGTACCATATATGAATTCATTAATCTCGAG。
【0408】
配列番号26
26bp伸長配列
GTCGACAATTAGGTAAAAAATAAACC。
【0409】
配列番号27
5’非コード配列
AAGCTTAAGGAGGTAAAAA配列番号。
【0410】
配列番号28
3’非コード配列
GGTACCATATATGAATTCATTAATCTCGAG(配列番号。
【0411】
配列番号29
プライマーInf8201-7186-Fw
TAATTTTATTCCGAACTAAGTCGAAGGAGGTAATATGGCGTTGCTGTTGGCTGTTTTTCTGG。
【0412】
配列番号30
プライマーInf8201-7186-Rev
ATTTTTTACCTAATTGTCGACTTAGTTCGGAATAAAGTTATTGTACGGAC。
【0413】
配列番号31
Vzctg306、VzZS1をコードする全長cDNA、非コード領域を含む
【化24-1】
【0414】
【0415】
配列番号32
VzCtg306-ORF、VzZS1をコードする全長cDNA、オープン読み枠のみ
【化25】
【0416】
配列番号33
VzZs1、アミノ酸配列
【化26-1】
【0417】
【0418】
配列番号34
VzZS1をコードするコドン最適化cDNA
【化27】
【0419】
配列番号35
VzTrspt_4_contig_995、VzZS2をコードする全長cDNA、非コード領域を含む
【化28-1】
【0420】
【0421】
配列番号36
VzTrspt_4_contig_995、VzZS2をコードする全長cDNA、オープン読み枠のみ
【化29-1】
【0422】
【0423】
配列番号37
VzZS2をコードするコドン最適化cDNA
【化30】
【0424】
配列番号38
VzZS2 アミノ酸配列
【化31】
【0425】
配列番号39
VzTrspt_10_contig_49、VzZS2-Nter2をコードする全長cDNA、非コード領域を含む
【化32】
【0426】
配列番号40
VzTrspt_10_contig_49、VzZS2-Nter2をコードする全長cDNA、オープン読み枠のみ
【化33-1】
【0427】
【0428】
配列番号41
VzZS2-Nter2 SR optをコードするコドン最適化cDNA
【化34】
【0429】
配列番号42
VzZS2-Nter2 アミノ酸配列
【化35-1】
【0430】
【0431】
配列番号43
LEU2マーカーPCRのプライマー
【化36】
【0432】
配列番号44
LEU2マーカーPCRのプライマー
【化37】
【0433】
配列番号45
AmpR,E.コリ(E.coli)マーカーPCRのプライマー
【化38】
【0434】
配列番号46
AmpR,E.コリ(E.coli)マーカーPCRのプライマー
【化39】
【0435】
配列番号47
酵母複製起点PCRのプライマー
【化40】
【0436】
配列番号48
酵母複製起点PCRのプライマー
【化41】
【0437】
配列番号49
E.コリ(E.coli)複製起点PCRのプライマー
【化42】
【0438】
配列番号50
E.コリ(E.coli)複製起点PCRのプライマー
【化43】
【0439】
配列番号51
サッカロミケス・ケレウィシアエ(Saccharomyces cerevisiae)用コドン最適化VzZS1 DNA
【化44】
【0440】
配列番号52
サッカロミケス・ケレウィシアエ(Saccharomyces cerevisiae)用コドン最適化VzZS2 DNA
【化45-1】
【0441】
【0442】
配列番号53
サッカロミケス・ケレウィシアエ(Saccharomyces cerevisiae)用コドン最適化VzZS2-Nter2 DNA
【化46】
【0443】
配列番号54
サッカロミケス・ケレウィシアエ(Saccharomyces cerevisiae)用コドン最適化VzCP521-11 DNA
【化47】
【0444】
配列番号55
サッカロミケス・ケレウィシアエ(Saccharomyces cerevisiae)用コドン最適化VzCP8201 DNA
【化48-1】
【0445】
【配列表】