(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】DARICインターロイキン受容体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240207BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240207BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240207BHJP
C07K 14/715 20060101ALI20240207BHJP
C07K 14/435 20060101ALI20240207BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240207BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240207BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240207BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240207BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20240207BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240207BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240207BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240207BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240207BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/12
C07K19/00 ZNA
C07K14/715
C07K14/435
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61K38/16
A61K48/00
A61K35/15
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/06
A61P29/00
(21)【出願番号】P 2020532804
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(86)【国際出願番号】 US2018065786
(87)【国際公開番号】W WO2019118895
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-12-09
(32)【優先日】2017-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521438515
【氏名又は名称】2セブンティ バイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】レオン, ワイ-ハン
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-531567(JP,A)
【文献】国際公開第2017/029512(WO,A1)
【文献】Dinarello, C. A. et al.,"Interleukin-18 and IL-18 binding protein",Front. Immunol.,2013年,Vol. 4; 289,pp. 1-10
【文献】Trinchieri, G.,"Interleukin-12 and the regulation of innate resistance and adaptive immunity",Nat. Rev. Immunol.,2003年,Vol. 3,pp. 133-146
【文献】Ogawa, K. et al.,"Construction of unnatural heterodimeric receptors based on IL-2 and IL-6 receptor subunits",Biotechnol. Prog.,2013年,Vol. 29,pp. 1512-1518
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
A61K 38/00-38/58
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第一のポリペプチドであって、以下の順に、
(i)第一の細胞外多量体化ドメイン、
(ii)第一の膜貫通ドメイン、および
(iii)IL-18R1免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメイン、を含む第一のポリペプチド、
(b)ポリペプチド切断シグナル;ならびに
(c)第二のポリペプチドであって、以下の順に、
(i)第二の細胞外多量体化ドメイン、
(ii)第二の膜貫通ドメイン、および
(iii)IL-18RAP免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメイン、を含む第二のポリペプチド、を含有する、融合ポリペプチドであって、
前記第一の細胞外多量体化ドメインがFKBP12-ラパマイシン結合(FRB)ポリペプチドを含み、前記第二の細胞外多量体化ドメインがFK506結合タンパク質(FKBP12)ポリペプチドを含
み、
前記融合ポリペプチドが、配列番号5と少なくとも95%の同一性を有する配列を有し、
前記融合ポリペプチドは、細胞内において発現されるとき、
ラパマイシンまたはそのラパログである架橋因子の存在下で、前記融合ポリペプチドを有しない細胞によるIFNγの産生と比べて、IFNγの産生を増加させることができる、融合ポリペプチド。
【請求項2】
前記第一の細胞外多量体化ドメインおよび前記第二の細胞外多量体化ドメインは、ラパマイシンまたはそのラパログである架橋因子と会合する、請求項1に記載の融合ポリペプチド。
【請求項3】
前記第
一の細胞外多量体化ドメインは、FRB T2098LおよびFRB T82Lから選択される、請求項1または2に記載の融合ポリペプチド。
【請求項4】
前記第一の膜貫通ドメインおよび前記第二の膜貫通ドメインは、CD4膜貫通ドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、amnionless(AMN)膜貫通ドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD154膜貫通ドメイン、およびCD71膜貫通ドメイン、からなる群から独立して選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項5】
前記第一の膜貫通ドメインおよび前記第二の膜貫通ドメインは、CD4膜貫通ドメインおよびCD8α膜貫通ドメインからなる群から独立して選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項6】
前記第一の膜貫通ドメインがIL-18R1膜貫通ドメインまたはIL-18RAP膜貫通ドメインである、請求項1~4のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項7】
前記第二の膜貫通ドメインがIL-18R1膜貫通ドメインまたはIL-18RAP膜貫通ドメインである、請求項1~4のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項8】
前記ポリペプチド切断シグナルは、口蹄疫ウイルス(FMDV)(F2A)ペプチド、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)(E2A)ペプチド、Thosea asignaウイルス(TaV)(T2A)ペプチド、ブタテッショウウイルス-1(PTV-1)(P2A)ペプチド、タイロウイルス2Aペプチド、および脳心筋炎ウイルス2Aペプチドからなる群から選択されるウイルス自己切断ポリペプチドである、請求項1~7のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項9】
前記第一の細胞外多量体化ドメインは、前記第一のポリペプチドが発現されるとき、細胞外に局在し、前記第二の細胞外多量体化ドメインは、前記第二のポリペプチドが発現されるとき、細胞外に局在する、請求項1~8のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項10】
配列番号5のアミノ酸配列を含む融合ポリペプチド。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項11に記載のポリヌクレオチドを含有するベクター。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド、請求項1~
9のいずれか一項に記載の第一のポリペプチドおよび第二のポリペプチド、請求項11に記載のポリヌクレオチド、または請求項12に記載のベクターを含有する細胞。
【請求項14】
前記細胞が、
a)造血細胞である;
b)T細胞である;
c)CD3
+、CD4
+および/またはCD8
+細胞である;
d)免疫エフェクター細胞である;
e)細胞障害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、またはヘルパーT細胞である;または
f)ナチュラルキラー(NK)細胞またはナチュラルキラーT(NKT)細胞である、
請求項13に記載の細胞。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド、請求項11に記載のポリヌクレオチド、請求項12に記載のベクター、または請求項13もしくは請求項14に記載の細胞を含有する組成物。
【請求項16】
薬学的に許容可能な担体、ならびに請求項1~10のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド、請求項11に記載のポリヌクレオチド、請求項12に記載のベクター、または請求項13もしくは請求項14に記載の細胞を含有する医薬組成物。
【請求項17】
癌、感染性疾患、自己免疫性疾患、炎症性疾患および免疫不全の少なくとも1つの症状、もしくはそれらと関連する状態の治療、予防または改善において使用するための、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
固形癌の治療において使用するための、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記固形癌は、
a)肝癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、膀胱癌、脳腫瘍、肉腫、頭頚部癌、骨癌、甲状腺癌、腎癌、もしくは皮膚癌を含む;または
b)膵臓癌、肺癌もしくは乳癌を含む、
請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
悪性血液疾患を治療するための、請求項16に記載の組成物。
【請求項21】
前記悪性血液疾患は、白血病、リンパ腫または多発性骨髄腫である、請求項20に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119(e)の定めのもと、2017年12月14日に出願された米国仮特許出願第62/598,923号明細書の利益を主張するものであり、当該出願は、その全体で参照により本明細書に援用される。
【0002】
配列表に関する声明
本出願に関する配列表は紙媒体の代わりにテキストフォーマットで提出され、本明細書に参照により援用される。配列表を含有するテキストファイルの名称は、BLBD_092_01WO_ST25.txtである。このテキストファイルは28KBであり、2018年12月14日に作成された。そして本明細書の出願と同時にEFS-Webを介して電子的に提出される。
【背景技術】
【0003】
本開示は、養子細胞療法に関する。より具体的には、本開示は、養子免疫療法中の細胞シグナル伝達の開始および下流反応の空間的ならびに時間的な制御の調節を目的とした、化学的に制御されるシグナル伝達分子、細胞およびそれらの使用方法の改善に関するものである。
【0004】
関連分野に関する記載
世界中で、癌は、1975年~2000年の間に倍増した。世界で罹患率および死亡率の2番目の主因は癌であり、2012年にはおよそ1410万人が新たに発症し、820万人が癌関連で死亡している。最も多い癌は乳癌、肺および気管支の癌、前立腺癌、結腸および直腸の癌、膀胱癌、皮膚のメラノーマ、非ホジキンリンパ腫、甲状腺癌、腎臓および腎盂の癌、子宮内膜癌、白血病、ならびに膵臓癌である。今後20年間で新たな癌の発症数は、2200万に及ぶと予想されている。
【0005】
養子細胞療法は、複雑な生物シグナルを送達して癌を治療する強力なパラダイムとして浮上した。低分子医薬や生物医薬とは対照的に、養子細胞療法は、無数の感覚性および反応性のプログラム、そしてさらに明確化された遺伝子制御メカニズムによって、固有の治療タスクを発揮する可能性を有している。そうした治療的価値を実現するために、細胞は、局所的な生理学的環境と関連する化学的および/または生物学的情報を理解し、統合する機構を備える必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概して本開示は部分的に、IL DARIC組成物、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、ならびにそれらの作製方法および使用方法に関する。
【0007】
様々な実施形態において、本開示は部分的に、第一の多量体化ドメイン、第一の膜貫通ドメイン、および第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインを含む第一のポリペプチド;ポリペプチド切断シグナル;ならびに第二の多量体化ドメイン、第二の膜貫通ドメイン、および第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインを含む第二のポリペプチド、を含む融合ポリペプチドを予期するものである。
【0008】
ある実施形態では、第一の多量体化ドメインおよび第二の多量体化ドメインは、同一である。
【0009】
一部の実施形態では、第一の多量体化ドメインおよび第二の多量体化ドメインは、異なっている。
【0010】
一部の実施形態では、第一の多量体化ドメインおよび第二の多量体化ドメインは、以下からなる群から選択される架橋因子と会合する:ラパマイシンまたはそのラパログ、クーママイシンまたはその誘導体、ジベレリンまたはその誘導体、アブシジン酸(ABA)またはその誘導体、メトトレキサートまたはその誘導体、シクロスポリンAまたはその誘導体、FK506/シクロスポリンA(FKCsA)またはその誘導体、およびトリメトプリム(Tmp)-FK506結合タンパク質(FKBP)の合成リガンド(SLF)またはその誘導体。
【0011】
特定の実施形態では、第一の多量体化ドメインおよび第二の多量体化ドメインは、以下からなる群から選択されるペアである:FKBPおよびFKBP12-ラパマイシン結合(FRB)またはそのバリアント;FKBPおよびカルシニューリンまたはそのバリアント;FKBPおよびシクロフィリンまたはそのバリアント;FKBPおよび細菌ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)またはそのバリアント;カルシニューリンおよびシクロフィリンまたはそのバリアント;PYR1-like 1(PYL1)およびabscisic acid insensitive 1(ABI1)またはそのバリアント;ならびにGIB1およびGAIまたはそのバリアント。
【0012】
様々な実施形態では、第一の多量体化ドメインは、FKBPポリペプチドまたはそのバリアントを含み、第二の多量体化ドメインは、FRBポリペプチドまたはそのバリアントを含む。
【0013】
ある実施形態では、第一の多量体化ドメインは、FRBポリペプチドまたはそのバリアントを含み、第二の多量体化ドメインは、FKBPポリペプチドまたはそのバリアントを含む。
【0014】
特定の実施形態では、第一および第二の多量体化ドメインは、FRB T2098L、およびFKBP12から選択され、架橋因子はAP21967である。
【0015】
特定の実施形態では、架橋因子は、以下からなる群から選択される:AP21967、シロリムス、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダフォロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、およびゾタロリムス。
【0016】
一部の実施形態では、第一の膜貫通ドメインおよび第二の膜貫通ドメインは、以下からなる群から独立して選択される:CD4膜貫通ドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、amnionless(AMN)膜貫通ドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD154膜貫通ドメイン、およびCD71膜貫通ドメイン。
【0017】
特定の実施形態では、第一の膜貫通ドメインおよび第二の膜貫通ドメインは、以下からなる群から独立して選択される:CD4膜貫通ドメインおよびCD8α膜貫通ドメイン。
【0018】
一部の実施形態では、第一の膜貫通ドメインおよび第二の膜貫通ドメインは、同一である。
【0019】
様々な実施形態では、第一の膜貫通ドメインおよび第二の膜貫通ドメインは、異なっている。
【0020】
ある実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインおよび第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、サイトカイン受容体、インターロイキン受容体、パターン認識受容体またはtoll様受容体から単離される。
【0021】
特定の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-12Rβ2細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-12Rβ1細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0022】
特定の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-12Rβ1細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-12Rβ2細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0023】
一部の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-7Rα細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0024】
ある実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-7Rα細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0025】
様々な実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rβ細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0026】
特定の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rβ細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0027】
一部の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-21R細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0028】
ある実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-21R細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0029】
特定の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-18R1細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-18RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0030】
様々な実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-18RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-18R1細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0031】
一部の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1R1細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0032】
様々な実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1R1細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0033】
ある実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1RL2細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0034】
様々な実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1RL2細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0035】
特定の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IFNAR1細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IFNAR2細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0036】
ある実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IFNAR2細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IFNAR1細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0037】
特定の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR1細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR1細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0038】
一部の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR2細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR2細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0039】
特定の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR3細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR3細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0040】
様々な実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR4細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR4細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0041】
ある実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR5細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR5細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0042】
様々な実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR6細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR6細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0043】
特定の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR7細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR7細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0044】
一部の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR8細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR8細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0045】
特定の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR9細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR9細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0046】
一部の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR10細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR10細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0047】
様々な実施形態では、ポリペプチド切断シグナルは、ウイルス自己切断ポリペプチドである。
【0048】
特定の実施形態では、ポリペプチド切断シグナルは、ウイルス自己切断2Aポリペプチドである。
【0049】
ある実施形態では、ポリペプチド切断シグナルは、以下からなる群から選択されるウイルス自己切断ポリペプチドである:口蹄疫ウイルス(FMDV)(F2A)ペプチド、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)(E2A)ペプチド、Thosea asignaウイルス(TaV)(T2A)ペプチド、ブタテッショウウイルス-1(PTV-1)(P2A)ペプチド、タイロウイルス2Aペプチド、および脳心筋炎ウイルス2Aペプチド。
【0050】
ある実施形態では、第一の多量体化ドメインは、第一のポリペプチドが発現されるとき、細胞外に局在し、第二の多量体化ドメインは、第二のポリペプチドが発現されるとき、細胞外に局在する。
【0051】
特定の実施形態では、本明細書に予期される融合ポリペプチドを含有する組成物が提供される。
【0052】
様々な実施形態において、本開示は部分的に、第一の多量体化ドメイン、第一の膜貫通ドメイン、および第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインを含む第一のポリペプチド;ならびに第二の多量体化ドメイン、第二の膜貫通ドメイン、および第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインを含む第二のポリペプチド、を含む組成物を予期するものである。
【0053】
一部の実施形態では、第一の多量体化ドメインおよび第二の多量体化ドメインは、同一である。
【0054】
様々な実施形態では、第一の多量体化ドメインおよび第二の多量体化ドメインは、異なっている。
【0055】
特定の実施形態では、第一の多量体化ドメインおよび第二の多量体化ドメインは、以下からなる群から選択される架橋因子と会合する:ラパマイシンまたはそのラパログ、クーママイシンまたはその誘導体、ジベレリンまたはその誘導体、アブシジン酸(ABA)またはその誘導体、メトトレキサートまたはその誘導体、シクロスポリンAまたはその誘導体、FK506/シクロスポリンA(FKCsA)またはその誘導体、およびトリメトプリム(Tmp)-FK506結合タンパク質(FKBP)の合成リガンド(SLF)またはその誘導体。
【0056】
様々な実施形態では、第一の多量体化ドメインおよび第二の多量体化ドメインは、以下からなる群から選択されるペアである:FKBPおよびFKBP12-ラパマイシン結合(FRB)またはそのバリアント;FKBPおよびカルシニューリンまたはそのバリアント;FKBPおよびシクロフィリンまたはそのバリアント;FKBPおよび細菌ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)またはそのバリアント;カルシニューリンおよびシクロフィリンまたはそのバリアント;PYR1-like 1(PYL1)およびabscisic acid insensitive 1(ABI1)またはそのバリアント;ならびにGIB1およびGAIまたはそのバリアント。
【0057】
特定の実施形態では、第一の多量体化ドメインは、FKBPポリペプチドまたはそのバリアントを含み、第二の多量体化ドメインは、FRBポリペプチドまたはそのバリアントを含む。
【0058】
一部の実施形態では、第一の多量体化ドメインは、FRBポリペプチドまたはそのバリアントを含み、第二の多量体化ドメインは、FKBPポリペプチドまたはそのバリアントを含む。
【0059】
ある実施形態では、第一および第二の多量体化ドメインは、FRB T2098L、およびFKBP12から選択され、架橋因子はAP21967である。
【0060】
様々な実施形態では、架橋因子は、以下からなる群から選択される:AP21967、シロリムス(sirolimus)、エベロリムス(everolimus)、ノボリムス(novolimus)、ピメクロリムス(pimecrolimus)、リダフォロリムス(ridaforolimus)、タクロリムス(tacrolimus)、テムシロリムス(temsirolimus)、ウミロリムス(umirolimus)、およびゾタロリムス(zotarolimus)。
【0061】
様々な実施形態では、第一の膜貫通ドメインおよび第二の膜貫通ドメインは、以下からなる群から独立して選択される:CD4膜貫通ドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、amnionless(AMN)膜貫通ドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD154膜貫通ドメイン、およびCD71膜貫通ドメイン。
【0062】
一部の実施形態では、第一の膜貫通ドメインおよび第二の膜貫通ドメインは、以下からなる群から独立して選択される:CD4膜貫通ドメインおよびCD8α膜貫通ドメイン。
【0063】
ある実施形態では、第一の膜貫通ドメインおよび第二の膜貫通ドメインは、同一である。
【0064】
様々な実施形態では、第一の膜貫通ドメインおよび第二の膜貫通ドメインは、異なっている。
【0065】
特定の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインおよび第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、サイトカイン受容体、インターロイキン受容体、パターン認識受容体またはtoll様受容体から単離される。
【0066】
様々な実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-12Rβ2細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-12Rβ1細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0067】
特定の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-12Rβ1細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-12Rβ2細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0068】
特定の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-7Rα細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0069】
一部の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-7Rα細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0070】
一部の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rβ細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0071】
ある実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rβ細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0072】
様々な実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-21R細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0073】
特定の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-21R細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0074】
様々な実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-18R1細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-18RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0075】
ある実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-18RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-18R1細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0076】
ある実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1R1細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0077】
特定の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1R1細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0078】
一部の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1RL2細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0079】
ある実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1RL2細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0080】
様々な実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IFNAR1細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IFNAR2細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0081】
特定の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IFNAR2細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IFNAR1細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0082】
特定の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR1細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR1細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0083】
特定の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR2細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR2細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0084】
一部の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR3細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR3細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0085】
様々な実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR4細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR4細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0086】
ある実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR5細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR5細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0087】
特定の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR6細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR6細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0088】
様々な実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR7細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR7細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0089】
一部の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR8細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR8細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0090】
特定の実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR9細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR9細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0091】
様々な実施形態では、第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR10細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR10細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0092】
特定の実施形態では、組成物は、細胞をさらに含有する。
【0093】
ある実施形態では、本明細書において予期される第一および第二のポリペプチドを含むポリペプチド複合体が提供される。
【0094】
特定の実施形態では、本明細書において予期される融合ポリペプチド、または第一および第二のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0095】
様々な実施形態では、本明細書において予期される融合ポリペプチド、または第一および第二のポリペプチドをコードするcDNAが提供される。
【0096】
一部の実施形態では、本明細書において予期される融合ポリペプチド、または第一および第二のポリペプチドをコードするRNAが提供される。
【0097】
様々な実施形態では、本明細書に予期されるポリヌクレオチドを含有するベクターが提供される。
【0098】
ある実施形態では、本明細書において予期される融合ポリペプチド、第一および第二のポリペプチド、ポリヌクレオチド、またはベクターを含む細胞が提供される。
【0099】
特定の実施形態では、細胞は、造血細胞である。
【0100】
様々な実施形態では、細胞は、T細胞である。
【0101】
一部の実施形態では、細胞は、CD3+、CD4+、および/またはCD8+の細胞である。
【0102】
様々な実施形態では、細胞は、免疫エフェクター細胞である。
【0103】
特定の実施形態では、細胞は、細胞障害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)またはヘルパーT細胞である。
【0104】
一部の実施形態では、細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞またはナチュラルキラーT(NKT)細胞である。
【0105】
特定の実施形態では、細胞の源は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位の組織、腹水、胸水、脾臓組織または腫瘍である。
【0106】
様々な実施形態では、細胞は、操作された抗原受容体をさらに含有する。
【0107】
ある実施形態では、当該操作された抗原受容体は、以下からなる群から選択される:操作されたT細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、DARIC受容体またはその構成要素、およびキメラサイトカイン受容体。
【0108】
様々な実施形態では、本明細書において予期される融合ポリペプチド、第一および第二のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、または細胞を含む組成物が提供される。
【0109】
様々な実施形態では、薬学的に許容可能な担体、ならびに本明細書において予期される融合ポリペプチド、第一および第二のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、または細胞を含む組成物を含有する医薬組成物が提供される。
【0110】
様々な実施形態では、その必要のある対象を治療する方法であって、本明細書に予期される組成物の有効量を当該対象に投与することを含む方法が提供される。
【0111】
様々な実施形態では、癌、感染性疾患、自己免疫性疾患、炎症性疾患および免疫不全の少なくとも1つの症状、もしくはそれらと関連する状態を治療、予防または改善する方法であって、本明細書に予期される組成物の有効量を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0112】
様々な実施形態では、固形癌を治療する方法であって、本明細書に予期される組成物の有効量を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0113】
特定の実施形態では、固形癌は、肝癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、膀胱癌、脳腫瘍、肉腫、頭頚部癌、骨癌、甲状腺癌、腎癌、または皮膚癌を含む。
【0114】
ある実施形態では、固形癌は、膵臓癌、肺癌または乳癌である。
【0115】
様々な実施形態では、本開示は部分的に悪性血液疾患を治療する方法を予期するものであり、当該方法は、本明細書に予期される組成物の有効量を対象に投与することを含む。
【0116】
特定の実施形態では、悪性血液疾患は、白血病、リンパ腫または多発性骨髄腫である。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【
図1A】IL-18R DARICおよびIL-18R DARIC-GFPの構築物およびポリペプチドに関する図を示す。
【
図1B】IL-18R-DARIC-GFPをコードするLVVを形質導入されたドナーPBMCにおけるGFP発現を示す。
【
図1C】非形質導入ドナーPBMCと、IL-18R-DARIC-GFPをコードするLVVを形質導入されたPBMCの増殖曲線を示す。
【
図1D】非形質導入ドナーPBMCと、IL-18R-DARIC-GFPをコードするLVVを形質導入されたPBMCにおけるCD62LとCD45Raの発現を示す。
【
図2】50ng/mLのヒト組み換えIL-12で24時間、前処置され、その後に培地のみ、100ng/mLのヒト組み換えIL-18を含む培地中、または1nMのラパマイシンを含む培地中で培養された、非形質導入ドナーPBMC、およびIL-18R-DARIC-GFPをコードするLVVを形質導入されたPBMCにおけるIFNγ産生を示す。
【発明を実施するための形態】
【0118】
配列番号に関する簡単な説明
配列番号1は、IL-18R DARICシグナル伝達構成要素のアミノ酸配列を記載する。
【0119】
配列番号2は、IL-18R DARICシグナル伝達構成要素のアミノ酸配列を記載する。
【0120】
配列番号3は、IL-18R DARIC結合構成要素のアミノ酸配列を記載する。
【0121】
配列番号4は、IL-18R DARIC結合構成要素のアミノ酸配列を記載する。
【0122】
配列番号5は、ウイルスP2Aドメインにより分離されるIL-18R DARIC結合構成要素とIL-18R DARICシグナル伝達構成要素を含有するIL-18R DARICポリプロテインのアミノ酸配列を記載する。
【0123】
配列番号6は、ウイルスP2Aドメインにより分離されるIL-18R DARIC結合構成要素、IL-18R DARICシグナル伝達構成要素、およびGFPを含有するIL-18R DARIC-GFPポリプロテインのアミノ酸配列を記載する。
【0124】
配列番号7~17は、様々なリンカーのアミノ酸配列を記載する。
【0125】
配列番号18~42は、プロテアーゼ切断部位および自己切断性ポリペプチドの切断部位のアミノ酸配列を記載する。
【0126】
A.概要
本開示は概して、ポリペプチドを発現する細胞に免疫刺激性シグナルを伝達する化学的制御可能なポリペプチドに関する。任意の学説に拘束されることは望まないが、本明細書において予期されるポリペプチドは、免疫エフェクター細胞の活性と機能を刺激する1つまたは複数の免疫刺激性内部ドメイン(endodomain)に結合された化学的誘導性多量体化ドメインを含有する融合ポリペプチドである。当該融合ポリペプチドの多量体化および活性化を誘導する因子の存在下で、免疫エフェクター細胞において免疫刺激性融合ポリペプチドを共発現させることで、当該細胞は、炎症促進性サイトカインの分泌を回復または増加させることにより、TMEの免疫抑制性の影響に対し抵抗性となる。特に好ましい実施形態では、融合ポリペプチドは、DARIC免疫受容体と呼称される。
【0127】
様々な実施形態では、本開示は部分的に、免疫受容体の細胞内ドメインの多量体化による、または通して介在される、化学的シグナルを免疫刺激性シグナルに転換するポリペプチドを予期するものである。
【0128】
様々な実施形態では、本開示は部分的に、サイトカイン受容体の細胞内ドメインの多量体化による、または通して介在される、化学的シグナルを免疫刺激性シグナルに転換するポリペプチドを予期するものである。
【0129】
様々な実施形態では、本開示は部分的に、インターロイキン受容体の細胞内ドメインの多量体化による、または通して介在される、化学的シグナルを免疫刺激性シグナルに転換するポリペプチドを予期するものである。
【0130】
様々な実施形態では、本開示は部分的に、パターン認識受容体の細胞内ドメインの多量体化による、または通して介在される、化学的シグナルを免疫刺激性シグナルに転換するポリペプチドを予期するものである。
【0131】
様々な実施形態では、本開示は部分的に、toll様受容体の細胞内ドメインの多量体化による、または通して介在される、化学的シグナルを免疫刺激性シグナルに転換するポリペプチドを予期するものである。
【0132】
特定の実施形態では、本開示は部分的に、誘導性多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、および1つもしくは複数の免疫受容体の1つまたは複数の細胞内ドメインを含むポリペプチド;ならびに別の誘導性多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、および1つもしくは複数の免疫受容体の1つまたは複数の細胞内ドメインを含むポリペプチドを予期するものである。1つの実施形態では、ポリペプチドは、例えば2Aポリペプチド切断シグナルなどのポリペプチド切断シグナルにより互いに連結される。
【0133】
特定の実施形態では、本開示は部分的に、誘導性多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、および1つもしくは複数の免疫受容体の1つまたは複数の細胞内ドメインを含むポリペプチド;ならびに別の誘導性多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、および1つもしくは複数の免疫受容体の1つまたは複数の細胞内ドメインを含むポリペプチドを発現する、例えばCAR T細胞または操作されたTCR T細胞などの免疫エフェクター細胞を予期するものである。
【0134】
特定の実施形態では、膜貫通ドメインは、免疫エフェクター細胞上に発現される受容体から単離される。そして細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-12受容体、IL-7受容体、IL-15受容体、IL-21受容体、IL-2受容体、IL-1受容体、IL-18受容体、IL-36受容体、I型IFN受容体、TLR1受容体、TLR2受容体、TLR3受容体、TLR4受容体、TLR5受容体、TLR6受容体、TLR7受容体、TLR8受容体、TLR9受容体、またはTLR10受容体から単離される。
【0135】
特定の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-12Rβ2、IL-7Rα、IL-2Rγ、IL-2Rβ、IL-21R、IL-18R1、IL-18RAP、IL-1R1、IL-1RAP、IFNAR1、IFNAR2、IL-1RL2、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9またはTLR10から単離される。
【0136】
組み換え(すなわち操作された)DNA、ペプチドおよびオリゴヌクレオチドの合成、免疫アッセイ、組織培養、形質転換(例えばエレクトロポレーション法、リポフェクション法)、酵素反応、精製に関する方法、ならびに関連する技術および手順は概して、本明細書全体を通じて引用および検討されるように、微生物学、分子生物学、生化学、分子遺伝学、細胞生物学、ウイルス学および免疫学の概論ならびに各論の様々な参照文献において記載されるように実施されてもよい。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons,updated July 2008);Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience;Glover,DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I & II(IRL Press,Oxford Univ.Press USA,1985);Current Protocols in Immunology(Edited by:John E.Coligan,Ada M.Kruisbeek,David H.Margulies,Ethan M.Shevach,Warren Strober 2001 John Wiley & Sons,NY,NY);Real-Time PCR:Current Technology and Applications,Edited by Julie Logan,Kirstin Edwards and Nick Saunders,2009,Caister Academic Press,Norfolk,UK;Anand,Techniques for the Analysis of Complex Genomes,(Academic Press,New York,1992);Guthrie and Fink,Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology(Academic Press,New York,1991);Oligonucleotide Synthesis(N.Gait,Ed.,1984);Nucleic Acid The Hybridization(B.Hames & S.Higgins,Eds.,1985);Transcription and Translation(B.Hames & S.Higgins,Eds.,1984);Animal Cell Culture(R.Freshney,Ed.,1986);Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984);Next-Generation Genome Sequencing(Janitz,2008 Wiley-VCH);PCR Protocols(Methods in Molecular Biology)(Park,Ed.,3rd Edition,2010 Humana Press);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986);the treatise,Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller and M.P.Calos eds.,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Harlow and Lane,Antibodies,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1998);Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London,1987);Handbook Of Experimental Immunology,Volumes I-IV(D.M.Weir and CC Blackwell,eds.,1986);Roitt,Essential Immunology,6th Edition,(Blackwell Scientific Publications,Oxford,1988);Current Protocols in Immunology(Q.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach and W.Strober,eds.,1991);Annual Review of Immunology;ならびに例えばAdvances in Immunologyなどの雑誌の研究論文を参照のこと。
【0137】
B.定義
本開示を詳細に記載する前に、本明細書において使用される用語の定義を提供することで、その理解の助けとなるであろう。
【0138】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって普遍的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似した、または均等の方法および材料を、特定の実施形態の実施または検証に使用することができるが、本明細書においては好ましい組成物、方法および材料の実施形態を開示する。本開示の目的に対し、以下の用語を、以下に規定する。
【0139】
「a」、「an」および「the」といった冠詞は、本明細書において、当該冠詞の文法上の対象の1つまたは複数(すなわち少なくとも1つ、または1つもしくは複数)を指すために使用される。例示として、「an element」とは、1つの要素、または1つもしくは複数の要素を意味する。
【0140】
選択肢(例えば「または」)の使用は、いずれか1つ、両方、またはその選択肢の任意の組み合わせを意味すると理解されたい。
【0141】
「および/または」という用語は、いずれか1つ、またはその選択肢の両方を意味すると理解されたい。
【0142】
本明細書において使用される場合、「約」または「およそ」という用語は、基準の数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、または長さに対し、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%までも変化する数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、または長さを指す。1つの実施形態では、「約」または「およそ」という用語は、基準の数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、または長さに関し、±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%または±1%の数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、または長さの範囲を指す。
【0143】
本明細書全体を通じて、別段であることが要求されない限り、「含む」および「含むこと」という文言は、記載される工程、または要素、または工程もしくは要素の群の含有を示唆するが、任意の他の工程、または要素、または工程もしくは要素の群の除外は示唆しないことを理解されたい。「~からなる」とは、「~からなる」という文言に続くものを含むが、それらに限定されることを意味する。ゆえに、「~からなる」という文言は、列記される要素が必要または義務であり、他の要素は存在し得ないことを示す。「本質的に~からなる」とは、当該文言の後に列記される任意の要素、および列記される要素に対し、本開示中に特定される活性もしくは作用に干渉しない、または寄与しない他の要素に限定される任意の要素を含むことを意味する。ゆえに、「本質的に~からなる」という文言は、列記される要素が必須または義務であり、しかし列記される要素の活性または作用に実質的に影響を与える他の要素は存在しないことを示す。
【0144】
本明細書全体を通じて「1つの実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「ある実施形態」、「追加的実施形態」、もしくは「さらなる実施形態」、またはそれらの組み合わせに対する参照は、当該実施形態と関連付けて記載される特定の性質、構造または特徴が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。ゆえに本明細書全体の様々な箇所での前述の文言の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指しているわけではない。さらに特定の性質、構造または特徴は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な様式で組み合わされ得る。さらに、1つの実施形態でのある性質の肯定的な列挙は、特定の実施形態では当該性質の除外の根拠として機能することを理解されたい。
【0145】
「抗原(Ag)」とは、動物へ注射される、または吸収される組成物(例えば癌特異的タンパク質を含む組成物など)を含む、動物において抗体産生またはT細胞反応を刺激し得る化合物、組成物または物質を指す。抗原の例としては限定されないが、脂質、炭水化物、多糖、糖タンパク質、ペプチドまたは核酸が挙げられる。抗原は、例えば本開示抗原などの異種抗原により誘導される産物を含む、特異的な液性免疫または細胞性免疫の産物と反応する。
【0146】
「標的抗原」または「対象の標的抗原」は、本明細書に予期される結合ドメインが結合するよう設計された抗原である。特定の実施形態では、標的抗原は、以下からなる群から選択される:アルファ葉酸受容体、5T4、αvβ6インテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CAIX、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、ErbB2(HER2)を含むEGFRファミリー、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、EphA2、EpCAM、FAP、胎児性AchR、FRα、GD2、GD3、グリピカン-3(GPC3)、HLA-A1+MAGE1、HLA-A2+MAGE1、HLA-A3+MAGE1、HLA-A1+NY-ESO-1、HLA-A2+NY-ESO-1、HLA-A3+NY-ESO-1、IL-11Rα、IL-13Rα2,ラムダ、ルイス-Y,カッパ、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、STn、TAG72、TEMs、VEGFR2、およびWT-1。1つの実施形態では、抗原は、例えばクラスI MHC-ペプチド複合体またはクラスII MHC-ペプチド複合体などのMHC-ペプチド複合体である。
【0147】
「抗体」とは、抗原のエピトープを特異的に認識し、結合する少なくとも軽鎖または重鎖の免疫グロブリン可変領域を含有するポリペプチドである結合物質を指し、そうした抗原としては例えば脂質、炭水化物、多糖、糖タンパク質、ペプチドまたは核酸が挙げられ、免疫細胞により認識されるものなどの抗原性決定基を含有する。
【0148】
「エピトープ」または「抗原性決定基」とは、結合物質が結合する抗原の領域を指す。
【0149】
抗体は、例えばラクダIg、リャマIg、アルパカIg、Ig NAR、Fab’断片、F(ab’)2断片、二特異性Fab二量体(Fab2)、三特異性Fab三量体(Fab3)、Fv、一本鎖Fvタンパク質(scFv)、bis-scFv、(scFv)2、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(dsFv)、およびシングルドメイン抗体(sdAb、ラクダ科VHH、ナノボディ)、ならびに全長抗体の抗原結合に寄与する部分などのその抗原結合断片を含む。当該用語はさらに、例えばキメラ抗体(例えばヒト化マウス抗体)、ヘテロ複合体化抗体(例えば二特異性抗体)、およびその抗原結合断片などの遺伝子操作型も含む。Pierce Catalog and Handbook,1994-1995(Pierce Chemical Co.,Rockford,IL);Kuby,J.,Immunology,3rd Ed.,W.H.Freeman & Co.,New York,1997も参照のこと。
【0150】
「リンカー」とは、様々なポリペプチドドメイン間の複数のアミノ酸残基を指し、分子の適切な間隔および立体構造のために付加される。特定の実施形態では、リンカーは、可変領域を結合させる配列である。「可変領域を結合させる配列」は、VHとVLを繋げるアミノ酸配列であり、2つの下位結合ドメインの相互作用と適合可能なスペーサー機能を提供し、得られたポリペプチドは、同じ軽鎖可変領域と重鎖可変領域を含む抗体と同じ標的分子に対する特異的結合アフィニティを保持する。特定の実施形態では、リンカーは、1つもしくは複数の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメイン、ヒンジドメイン、多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激性ドメイン、および/または一次シグナル伝達ドメインを分離させる。
【0151】
本明細書において予期される特定の実施形態での使用に適したリンカーの例示としては、限定されないが、以下のアミノ酸配列が挙げられる:GGG;DGGGS(配列番号7);TGEKP(配列番号8)(例えば、Liu et al.,PNAS 5525-5530(1997)を参照のこと);GGRR(配列番号9)(Pomerantz et al.1995、上記);(GGGGS)n 式中、n=1、2、3、4または5(配列番号10)(Kim et al.,PNAS 93,1156-1160(1996.);EGKSSGSGSESKVD(配列番号11)(Chaudhary et al.,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:1066-1070);KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号12)(Bird et al.,1988,Science 242:423-426)、GGRRGGGS(配列番号13);LRQRDGERP(配列番号14);LRQKDGGGSERP(配列番号15);LRQKD(GGGS)2 ERP(配列番号16)。あるいは、DNA結合部位とそのペプチドの両方をモデリングすることができるコンピュータープログラム(Desjarlais & Berg,PNAS 90:2256-2260(1993)、PNAS 91:11099-11103(1994))を使用して、またはファージディスプレイ法により、可塑性リンカーが合理的に設計されてもよい。1つの実施形態では、リンカーは、以下のアミノ酸配列を含む:GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号17)(Cooper et al.,Blood,101(4):1637-1644(2003))。
【0152】
「スペーサードメイン」とは、2つのドメインを分離させるポリペプチドを指す。1つの実施形態では、スペーサードメインは、エフェクター細胞の表面から抗原結合ドメインを離れさせ、適切な細胞/細胞の接触、抗原結合、および活性化を可能にする(Patel et al.,Gene Therapy,1999;6:412-419)。特定の実施形態では、スペーサードメインは、1つもしくは複数の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメイン、多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激性ドメイン、および/または一次シグナル伝達ドメインを分離させる。スペーサードメインは、天然源、合成源、半合成源、または組み換え源のいずれかから誘導されてもよい。ある実施形態では、スペーサードメインは、1つまたは複数の重鎖定常領域、例えばCH2およびCH3などを含む免疫グロブリンの部分である。スペーサードメインは、天然免疫グロブリンヒンジ領域、または改変免疫グロブリンヒンジ領域のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0153】
「ヒンジドメイン」とは、エフェクター細胞の表面から抗原結合ドメインを離れて配置させ、適切に細胞/細胞を接触させる、抗原結合させる、および活性化させることに重要な役割を果たすポリペプチドを指す。特定の実施形態では、ポリペプチドは、結合ドメインと多量体化ドメインの間、結合ドメインと膜貫通ドメイン(TM)の間、または多量体化ドメインと膜貫通ドメインの間に1つまたは複数のヒンジドメインを含んでもよい。ヒンジドメインは、天然源、合成源、半合成源、または組み換え源のいずれかから誘導されてもよい。ヒンジドメインは、天然免疫グロブリンヒンジ領域、または改変免疫グロブリンヒンジ領域のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0154】
本明細書において使用される場合、「多量体化ドメイン」とは、別の異なるポリペプチドと直接、または化学誘導性二量体化剤などの架橋分子を介して優先的に相互作用する、または会合するポリペプチドを指し、この場合において異なる多量体化ドメインとの相互作用は、多量体化に大きく貢献し、または多量体化を効率的に促進する(すなわち、二量体、三量体または多分節複合体の形成であり、それらはホモ二量体、ヘテロ二量体、ホモ三量体、ヘテロ三量体、ホモ多量体、ヘテロ多量体であり得る)。多量体化ドメインは、天然源、合成源、半合成源、または組み換え源のいずれかから誘導されてもよい。
【0155】
本明細書において予期される特定の実施形態での使用に適した多量体化ドメインの例示としては、FK506結合タンパク質(FKBP)ポリペプチドもしくはそのバリアント、FKBP12-ラパマイシン結合(FRB)ポリペプチドもしくはそのバリアント、カルシニューリンポリペプチドもしくはそのバリアント、シクロフィリンポリペプチドもしくはそのバリアント、細菌ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)ポリペプチドもしくはそのバリアント、PYR1-like 1(PYL1)ポリペプチドもしくはそのバリアント、abscisic acid insensitive 1(ABI1)ポリペプチドもしくはそのバリアント、GIB1ポリペプチドもしくはそのバリアント、またはGAIポリペプチドもしくはそのバリアントが挙げられる。
【0156】
本明細書において使用される場合、「FKBP-ラパマイシン結合ポリペプチド」という用語は、FRBポリペプチドを指す。特定の実施形態では、FRBポリペプチドは、FKBP12-ラパマイシン結合ポリペプチドである。本明細書において予期される特定の実施形態での使用に適したFRBポリペプチドは、少なくとも約85~約100アミノ酸残基を含有する。ある実施形態では、FRBポリペプチドは、GenBankアクセッション番号L34075.1に関して、Ile-2021~Lys -2113の93アミノ酸配列、およびT2098Lの変異を含む。本明細書において予期されるFRBポリペプチドは、架橋因子を介してFKBPポリペプチドに結合し、それにより三連複合体を形成する。
【0157】
本明細書において使用される場合、「FK506結合タンパク質」という用語は、FKBPポリペプチドを指す。特定の実施形態では、FKBPポリペプチドは、FKBP12ポリペプチドである。ある実施形態では、FKBPドメインは、「ラパマイシン結合ドメイン」とも呼称される場合がある。様々なFKBP種のヌクレオチド配列、クローニング、および他の態様に関する情報は、当分野に公知である(例えば、Staendart et al.,Nature 346:671,1990(human FKBP12);Kay,Biochem.J.314:361,1996を参照のこと)。本明細書において予期されるFKBPポリペプチドは、架橋因子を介してFRBポリペプチドに結合し、それにより三連複合体を形成する。
【0158】
「架橋因子」とは、2つ以上の多量体化ドメインと関連付けられ、それらの間に配置される分子を指す。特定の実施形態では、多量体化ドメインは、架橋因子の存在下でのみ、ポリペプチド複合体の形成に大きく貢献し、または効率的に促進する。特定の実施形態では、多量体化ドメインは、架橋因子の非存在下では、ポリペプチド複合体の形成に貢献せず、または効率的に促進しない。本明細書において予期される特定の実施形態での使用に適した架橋因子の例示としては限定されないが、AP21967、ラパマイシン(シロリムス)もしくはそのラパログ(rapalog)、クメルマイシン(coumermycin)もしくはその誘導体、ジベレリンもしくはその誘導体、アブシジン酸(ABA:abscisic acid)もしくはその誘導体、メトトレキサートもしくはその誘導体、シクロスポリンAもしくはその誘導体、FKCsAもしくはそれらの誘導体、トリメトプリム(Tmp)-FKBPの合成リガンド(SLF:synthetic ligand for FKBP)もしくはその誘導体、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0159】
ラパマイシンアナログ(ラパログ)としては限定されないが、米国特許第6,649,595号に記載されるものが挙げられる。当該特許は、その全体で参照により本明細書に組み込まれる。ある実施形態では、架橋因子は、ラパマイシンと比較して免疫抑制性効果が大きく減少したラパログである。好ましい実施形態では、ラパログは、AP21967(C 16-(S)-7-メチルインドールラパマイシンとしても知られている、IC50=10nM、化学的に改変された非免疫抑制性ラパマイシンアナログ)である。本明細書において予期される特定の実施形態での使用に適したラパログの他の例としては限定されないが、エベロリムス(everolimus)、ノボリムス(novolimus)、ピメクロリムス(pimecrolimus)、リダフォロリムス(ridaforolimus)、タクロリムス(tacrolimus)、テムシロリムス(temsirolimus)、ウミロリムス(umirolimus)およびゾタロリムス(zotarolimus)が挙げられる。
【0160】
「免疫抑制性効果が大きく減少した」とは、臨床的に、もしくはインビトロで適切に(例えばT細胞増殖の阻害など)、またはヒト免疫抑制活性のインビボサロゲートのいずれかで測定される同じ投与量に対して観察される、または予測される免疫抑制性効果の少なくとも0.1~0.005倍未満を指す。
【0161】
「膜貫通ドメイン」または「TMドメイン」は、ポリペプチドを細胞膜に固定させるドメインである。TMドメインは、天然源、合成源、半合成源、または組み換え源のいずれかから誘導されてもよい。
【0162】
「細胞内シグナル伝達ドメイン」または「エンドドメイン」とは、エフェクター機能シグナルを伝達するタンパク質部分を指し、細胞に専門的機能を実行するよう指示を出す。通常は細胞内シグナル伝達ドメインの全体が使われ得るが、多くの場合、ドメイン全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの切断部分が使用される範囲について、エフェクター機能シグナルが伝達される限りにおいて、ドメイン全体に代わり、そうした切断部分が使用されてもよい。細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、エフェクター機能シグナルの伝達に充分な細胞内シグナル伝達ドメインの任意の切断部分を含むことが意図される。
【0163】
「エフェクター機能」または「エフェクター細胞機能」という用語は、免疫エフェクター細胞の専門的な機能を指す。エフェクター機能としては限定されないが、活性化、サイトカイン産生、増殖、および細胞障害性因子の放出を含む細胞障害活性、または免疫エフェクター細胞上に発現される受容体への抗原結合で惹起される他の細胞反応が挙げられる。
【0164】
TCRのみを通じて生じたシグナルは、T細胞の完全な活性化には不充分であること、および二次的シグナルまたは共刺激性シグナルも必要であることが知られている。ゆえにT細胞の活性化は、2つの別種の細胞内シグナル伝達ドメインにより介在されると言うこともできる。一次シグナル伝達ドメインは、TCR(例えばTCR/CD3複合体)を通じて抗原依存性の一次活性化を開始させる。そして共刺激性シグナル伝達ドメインは、抗原依存性の様式で作用して、二次性または共刺激性のシグナルを生じさせる。
【0165】
「一次シグナル伝達ドメイン」とは、刺激性または阻害性のいずれかで、TCR複合体の一次活性化を制御するシグナル伝達ドメインを指す。刺激性に作用する一次シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motifs)またはITAMとして知られているシグナル伝達モチーフを含有する場合がある。特定の実施形態での使用に適したITAM含有一次シグナル伝達ドメインの例示としては限定されないが、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dに由来するものが挙げられる。
【0166】
本明細書において使用される場合、「共刺激性シグナル伝達ドメイン」または「共刺激性ドメイン」とは、共刺激性分子の細胞内シグナル伝達ドメインを指す。共刺激性分子は、抗原受容体またはFc受容体以外の細胞表面分子であり、抗原が結合したときのTリンパ球の効率的な活性化および機能に必要とされる二次的なシグナルを生じさせる。共刺激性ドメインが単離され得る共刺激性分子の例示としては限定されないが、以下が挙げられる:TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C、SLP76、TRIM、およびZAP70。
【0167】
「免疫障害」とは、免疫系からの反応を引き起こす疾患を指す。特定の実施形態では、「免疫障害」という用語は、癌、自己免疫性疾患、または免疫不全を指す。1つの実施形態では、免疫障害は、感染性疾患を包含する。
【0168】
本明細書において使用される場合、「癌」という用語は概して、異常な細胞が制御されずに分裂し、近傍組織へと浸潤し得る、ある種の疾患または状態に関連する。
【0169】
本明細書において使用される場合、「悪性」という用語は、腫瘍細胞群が、制御不能な増殖(すなわち正常限界を超える分裂)、浸潤(すなわち隣接組織への侵入と破壊)、および転移(すなわちリンパまたは血液を介して身体の他の場所へ拡散)のうちの1つまたは複数を呈する癌を指す。本明細書において使用される場合、「転移する」という用語は、身体の一部分から、別の部分へと癌が拡散することを指す。拡散した細胞により形成された腫瘍は、「転移腫瘍」または「転移癌」と呼ばれる。転移腫瘍は、元の腫瘍(原発腫瘍)の細胞と似た細胞を含有する。
【0170】
本明細書において使用される場合、「良性」または「非悪性」という用語は、大きく成長するが、身体の他の部分に拡散しない腫瘍を指す。良性腫瘍は自己限定的であり、多くの場合、浸潤せず、または転移しない。
【0171】
「癌細胞」とは、癌性増殖または癌性組織の個々の細胞を指す。癌細胞には、固形癌と液性癌の両方が含まれる。「腫瘍」または「腫瘍細胞」とは概して、細胞の異常な増殖による膨張、または細胞の異常な増殖により形成された病変を指し、良性、前癌性、または悪性であり得る。殆どの癌は腫瘍を形成するが、例えば白血病などの液性癌は必ずしも腫瘍を形成するわけではない。腫瘍を形成する癌に関し、癌(細胞)という用語、および腫瘍(細胞)という用語は相互交換可能に使用される。個体中の腫瘍の量は、「腫瘍組織量(tumor burden)」であり、腫瘍の数、体積または重量で測定され得る。
【0172】
「再発」という用語は、ある期間の改善または寛解の後に、癌の復活の診断、または癌の復活の徴候および症状の診断がされたことを指す。
【0173】
「寛解」とは、「臨床的寛解」とも呼ばれ、部分寛解と完全寛解の両方を含む。部分寛解では、すべてではなく一部の癌の徴候および症状が消失する。完全寛解では、すべての癌の徴候および症状が消失するが、癌はまだ体内に存在する場合がある。
【0174】
「難治性」とは、特定の治療剤を用いた療法に抵抗性である、または非反応性である癌を指す。癌は、治療の開始時から難治性である場合(すなわち治療剤の初回暴露に非反応性)、または最初の治療期間、もしくはその後の治療期間のいずれかのうちに治療剤に対して抵抗性を発現した結果として難治性となる場合がある。
【0175】
「抗原陰性」とは、抗原を発現しない細胞、または検出できないごく少量の抗原を発現する細胞を指す。1つの実施形態では、抗原陰性細胞は、抗原の目的となる受容体に結合しない。1つの実施形態では、抗原陰性細胞は、抗原の目的となる受容体に実質的に結合しない。
【0176】
「自己免疫性疾患」とは、身体が、自身の組織の構成物質の一部に対し、免疫原性(すなわち免疫系)反応を生じさせる疾患を指す。言い換えると、免疫系が、身体内の組織またはシステムの一部を「自己」として認識する能力を失い、外来性であるとして攻撃してしまう。自己免疫性疾患は、主に1つの器官が影響を受けるもの(例えば溶血性貧血および自己免疫性甲状腺炎など)と、自己免疫性疾患プロセスが多くの組織に拡散されるもの(例えば全身性エリテマトーデスなど)に分類され得る。例えば多発性硬化症は、脳および脊髄の神経線維を取り囲む鞘をT細胞が攻撃することで発生すると考えられている。これによって、協調運動障害、脱力、および視力障害が生じる。自己免疫疾患は当分野に公知であり、例えば橋本甲状腺炎、グレーブス病、紅斑性狼瘡、多発性硬化症、リウマチ性関節炎、溶血性貧血、抗免疫性甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、セリアック病、クローン病、大腸炎、糖尿病、強皮症、乾癬などが挙げられる。
【0177】
「免疫不全」とは、疾患または化学物質投与によって免疫系が機能障害を受けた患者の状態を意味する。これにより、外来性物質に対する防御に必要とされる血液細胞の数とタイプにおいて免疫系が不完全な状態となる。免疫不全状態または免疫不全疾患は当分野に公知であり、例えばAIDS(後天性免疫不全症候群)、SCID(重症複合型免疫不全症)、選択的IgA欠損症、分類不能型免疫不全症、X連鎖無ガンマグロブリン血症、慢性肉芽腫症、抗IgM症候群、および糖尿病が挙げられる。
【0178】
「感染性疾患」とは、ヒトからヒトへと伝達され得る、または生物から生物へと伝達され得る疾患を指し、微生物またはウイルスにより発生する(例えば、風邪)。感染性疾患は当分野に公知であり、例えば肝炎、性感染症(例えば、クラミジア、淋病)、結核、HIV/AIDS、ジフテリア、B型肝炎、C型肝炎、コレラ、およびインフルエンザが挙げられる。
【0179】
本明細書において使用される場合、「個体」および「対象」という用語はしばしば相互交換可能に使用され、癌の症状または他の免疫性障害の症状を呈する任意の動物を指し、本明細書に別段に予期される組成物および方法で治療され得る。適切な対象(例えば、患者)としては、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギまたはモルモット)、家畜(farm animal、domestic animal)、およびペット(例えば、ネコまたはイヌ)が挙げられる。非ヒト霊長類、好ましくはヒト患者も含まれる。典型的な対象としては、癌もしくは別の免疫性障害と診断された、またはそのリスクのある、または癌もしくは別の免疫性障害を有するヒト患者が挙げられる。
【0180】
本明細書において使用される場合、「患者」という用語は、本明細書の別段に開示される組成物および方法で治療され得る癌または別の免疫障害と診断された対象を指す。
【0181】
本明細書において使用される場合、「治療」または「治療すること」には、疾患の症状もしくは病理、または病的状態に対する何らかの有益な効果または望ましい効果が含まれ、治療される疾患もしくは状態の1つまたは複数の測定可能なマーカーの最小の減少であっても含まれ得る。治療には、任意選択で、疾患もしくは状態の減少、または疾患もしくは状態の進行の遅延、例えば腫瘍増生の遅延が含まれてもよい。「治療」は必ずしも、疾患もしくは状態、またはその関連症状の完全な排除または治癒を示すものではない。
【0182】
本明細書において使用される場合、「予防する」、および例えば「予防される」、「予防すること」といった類似の文言は、疾患もしくは状態の予防、阻害、または発生もしくは再発の可能性の低下を目的としたアプローチを示す。さらに、疾患もしくは状態の発生または再発の遅延、または疾患もしくは状態の症状の発生または再発の遅延も指す。本明細書において使用される場合、「予防」およびその類似文言も、疾患もしくは症状の発生または再発の前の、疾患もしくは状態の強度、作用、症状、および/または負荷量の低下を含む。
【0183】
本明細書において使用される場合、「~の少なくとも1つの症状の改善」とは、対象が治療される疾患もしくは状態の1つまたは複数の症状の減少を指す。特定の実施形態では、治療される疾患または状態は、癌であり、この場合において改善される1つまたは複数の症状としては限定されないが、脱力、疲労、息切れ、あざができやすい、および出血しやすい、頻発する感染、リンパ節の拡張、腹部膨張または腹部疼痛(膨張した腹部臓器が原因)、骨または関節の疼痛、骨折、予期せぬ体重減少、食欲低下、寝汗、持続性の微熱、および排尿減少(腎機能の障害が原因)が挙げられる。
【0184】
「強化する」、または「促進する」、または「増加する」、または「拡張する」とは概して、本明細書において予期される組成物が、ビヒクルまたは対照の分子/組成物による反応と比較して、大きな生理学的反応(すなわち下流効果)をもたらす、惹起させる、または発生させる能力を指す。測定可能な生理学的反応としては特にT細胞の拡張の増加、活性化、持続性、サイトカイン分泌、および/または癌細胞殺傷能力の増加が挙げられ、当分野および本明細書の記載の理解から明白である。「増加した」または「強化された」量は、典型的には「統計的に有意な」量であり、ビヒクルまたは対照組成物によりもたらされる反応の1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30またはそれ以上(例えば500倍、1000倍)(その間および1を超えるすべての整数および小数点を含む、例えば1.5、1.6、1.7、1.8など)である増加を含む場合がある。
【0185】
「減少する」、または「下げる」、または「低める」、または「低下する」、または「弱める」とは概して、本明細書において予期される組成物が、ビヒクルまたは対照の分子/組成物による反応と比較して、小さな生理学的反応(すなわち下流効果)をもたらす、惹起させる、または発生させる能力を指す。「減少」または「低下した」量は、典型的には「統計的に有意な」量であり、ビヒクル、対照組成物によりもたらされる反応、または特定の細胞株での反応の1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30またはそれ以上(例えば500倍、1000倍)(その間および1を超えるすべての整数および小数点を含む、例えば1.5、1.6、1.7、1.8など)である減少を含む場合がある。
【0186】
「維持する」、または「保存する」、または「維持」、または「変化がない」、または「実質的な変化がない」、または「実質的な減少が無い」とは概して、本明細書において予期される組成物が、ビヒクル、対照の分子/組成物により生じた反応、または特定の細胞株での反応と比較して、細胞において実質的に類似した、または同等の生理学的反応(すなわち、下流効果)をもたらす、惹起させる、または生じさせる能力を指す。同等の反応は、基準反応と実質的に違わない、または測定可能な程度に違わない反応である。
【0187】
追加の定義は、本開示全体を通じて記載されている。
【0188】
C.DARIC免疫受容体
特定の実施形態では、架橋因子へ暴露されたときに、免疫刺激性のシグナルを伝達する1つまたは複数のDARIC免疫受容体が予期される。本明細書において使用される場合、「DARIC免疫受容体」という用語は、多量体化剤または架橋因子に暴露されたときに免疫エフェクター細胞において、例えば免疫エフェクター細胞の活性および機能を刺激する、炎症促進性サイトカインの産生および/または分泌を増加させるなどの免疫刺激性シグナルを伝達する1つまたは複数の天然ポリペプチドを指す。
【0189】
特定の実施形態では、DARIC免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、例えば限定されないがサイトカイン受容体、インターロイキン受容体、パターン認識受容体およびtoll様受容体を含むヒト免疫受容体などの免疫受容体の細胞内シグナル伝達ドメイン;ポリペプチド切断シグナル;ならびに第二の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、ならびに例えば限定されないがサイトカイン受容体、インターロイキン受容体、パターン認識受容体およびtoll様受容体を含むヒト免疫受容体などの免疫受容体の細胞内シグナル伝達ドメイン、を含有するポリペプチドである。
【0190】
他の実施形態では、DARIC免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、ならびに限定されないがサイトカイン受容体、インターロイキン受容体、パターン認識受容体およびtoll様受容体を含む免疫受容体の細胞内シグナル伝達ドメインを含有する第一のポリペプチド;ならびに第二の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、ならびに限定されないがサイトカイン受容体、インターロイキン受容体、パターン認識受容体およびtoll様受容体を含む免疫受容体の細胞内シグナル伝達ドメインを含有する第二のポリペプチド、を含むポリペプチドの複合体である。
【0191】
本明細書において使用される場合、「免疫受容体」という用語は、同系リガンドと結合したときに免疫反応を調節する、免疫細胞表面上に発現される受容体を指す。特定の実施形態における使用に適した免疫受容体としては限定されないが、サイトカイン受容体、インターロイキン受容体、パターン認識受容体、およびtoll様受容体が挙げられ、この場合において当該免疫受容体を介したシグナル伝達は、免疫反応を刺激する。
【0192】
本明細書において予期される特定のDARIC免疫受容体における使用に適した多量体化ドメインの例示としては限定されないが、FK506結合タンパク質(FKBP)ポリペプチドもしくはそのバリアント、FKBP12-ラパマイシン結合(FRB)ポリペプチドもしくはそのバリアント、カルシニューリンポリペプチドもしくはそのバリアント、シクロフィリンポリペプチドもしくはそのバリアント、細菌ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)ポリペプチドもしくはそのバリアント、PYR1-like 1(PYL1)ポリペプチドもしくはそのバリアント、abscisic acid insensitive 1(ABI1)ポリペプチドもしくはそのバリアント、GIB1ポリペプチドもしくはそのバリアント、またはGAIポリペプチドもしくはそのバリアントが挙げられる。
【0193】
本明細書において予期される特定のDARIC免疫受容体における使用に適した免疫受容体膜貫通ドメインの例示としては限定されないが、T細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖、ガンマ鎖もしくはデルタ鎖、CD3ε、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD 16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD71、CD80、CD86、CD 134、CD137、CD152、CD 154、AMN、PD1、IL-12Rβ2、IL-7Rα、IL-2Rγ、IL-2Rβ、IL-21R、IL-18R1、IL-18RAP、IL-1R1、IL-1RAP、IFNAR1、IFNAR2、IL-1RL2、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、またはTLR10の膜貫通ドメインが挙げられる。
【0194】
本明細書において予期される特定のDARIC免疫受容体における使用に適した免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインの例示としては限定されないが、IL-12受容体、IL-7受容体、IL-15受容体、IL-21受容体、IL-2受容体、IL-1受容体、IL-18受容体、IL-36受容体、I型IFN受容体、TLR1受容体、TLR2受容体、TLR3受容体、TLR4受容体、TLR5受容体、TLR6受容体、TLR7受容体、TLR8受容体、TLR9受容体、またはTLR10受容体から単離される細胞内シグナル伝達ドメインが挙げられる。
【0195】
本明細書において予期される特定のDARIC免疫受容体における使用に適した免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインの例示としては限定されないが、IL-12Rβ2、IL-7Rα、IL-2Rγ、IL-2Rβ、IL-21R、IL-18R1、IL-18RAP、IL-1R1、IL-1RAP、IFNAR1、IFNAR2、IL-1RL2、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、またはTLR10が挙げられる。
【0196】
本明細書において予期される特定のDARIC免疫受容体における使用に適したサイトカイン受容体細胞内シグナル伝達ドメインの例示としては限定されないが、IL-12Rβ2、IL-7Rα、IL-2Rγ、IL-2Rβ、IL-21R、IL-18R1、IL-18RAP、IL-1R1、IL-1RAP、IFNAR1、IFNAR2およびIL-1RL2が挙げられる。
【0197】
本明細書において予期される特定のDARIC免疫受容体における使用に適したインターロイキン受容体細胞内シグナル伝達ドメインの例示としては限定されないが、IL-12Rβ2、IL-7Rα、IL-2Rγ、IL-2Rβ、IL-21R、IL-18R1、IL-18RAP、IL-1R1、IL-1RAPおよびIL-1RL2が挙げられる。
【0198】
本明細書において予期される特定のDARIC免疫受容体における使用に適したtoll様受容体細胞内シグナル伝達ドメインの例示としては限定されないが、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、およびTLR10が挙げられる。
【0199】
1.IL-18 DARIC免疫受容体
インターロイキン-18(IL-18)は、部分的にはIFNγの発現を高めること、T細胞増殖を増加させること、および活性化誘導型細胞死(AICD:activation induced cell death)に対して防御することにより、T細胞の機能と活性を促進するサイトカインである。IL-18は、インターロイキン18受容体1(IL-18R1、CD218aとしても知られる)とインターロイキン18受容体アクセサリータンパク質(IL-18RAP、CD218b)に結合する。
【0200】
IL-18R1とIL-18RAPを介したIL-18のシグナル伝達は、MyD88アダプタータンパク質を介した活性化、およびIRAK4のリン酸化を生じさせる。IRAK4のリン酸化と、それに続くIRAK1/2のリン酸化は最終的に、NF-カッパBおよびAP-1転写因子の活性化をもたらし、IFNγ発現を増加させ、IL-12に対する感受性を高める。IL-18により誘導される転写プログラムはさらに、T細胞増殖を増加させ、AICDに対して防御する。
【0201】
様々な実施形態では、操作された抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞を含む、1つまたは複数の免疫エフェクター細胞は、IL-18 DARIC免疫受容体をコードする1つもしくは複数のポリヌクレオチドまたはベクターを導入することにより改変される。様々な実施形態では、1つまたは複数の免疫エフェクター細胞は、IL-18 DARIC免疫受容体および操作された抗原受容体をコードする1つもしくは複数のポリヌクレオチドまたはベクターを導入することにより改変される。
【0202】
特定の実施形態では、IL-18 DARIC免疫受容体は、架橋因子へ暴露されたときに、IL-18介在性の免疫刺激性のシグナルを伝達する。特定の実施形態では、本明細書において予期されるIL-18 DARIC免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、およびIL-18RAP細胞内シグナル伝達ドメイン;ポリペプチド切断シグナル;ならびに第二の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、およびIL-18R1細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。特定の実施形態では、本明細書において予期されるIL-18 DARIC免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、およびIL-18R1細胞内シグナル伝達ドメイン;ポリペプチド切断シグナル;ならびに第二の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、およびIL-18RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0203】
特定の実施形態では、ポリペプチド切断シグナルは、ウイルス自己切断ポリペプチドであり、より好ましくはウイルス自己切断2Aポリペプチドであり、より好ましくは、以下からなる群から選択されるウイルス自己切断ポリペプチドである:口蹄疫ウイルス(FMDV)(F2A)ペプチド、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)(E2A)ペプチド、Thosea asignaウイルス(TaV)(T2A)ペプチド、ブタテッショウウイルス-1(PTV-1)(P2A)ペプチド、タイロウイルス2Aペプチド、および脳心筋炎ウイルス2Aペプチド。1つの実施形態では、ポリペプチド切断シグナルは、P2AまたはT2Aウイルス自己切断ポリペプチドである。
【0204】
特定の実施形態において、IL-18 DARIC免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、第一の膜貫通ドメイン、およびIL-18RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含む第一のポリペプチド;ならびに第二の多量体化ドメイン、第二の膜貫通ドメイン、およびIL-18R1細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチド、を含有するポリペプチド複合体である。特定の実施形態において、IL-18免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、第一の膜貫通ドメイン、およびIL-18R1細胞内シグナル伝達ドメインを含む第一のポリペプチド;ならびに第二の多量体化ドメイン、第二の膜貫通ドメイン、およびIL-18RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチド、を含有するポリペプチド複合体である。
【0205】
特定の実施形態では、第一および第二の膜貫通ドメインは、以下からなる群から選択される:CD4、CD5、CD8α、CD9、CD 16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD71、CD80、CD86、CD 134、CD137、CD152、CD 154、AMN、およびPD1。
【0206】
1つの実施形態では、第一および第二の多量体化ドメインは、同一である。
【0207】
ある実施形態では、IL-18 DARIC免疫受容体は、FKBPとFRB、FKBPとカルシニューリン、FKBPとシクロフィリン、FKBPと細菌DHFR、カルシニューリンとシクロフィリン、PYL1とABI1、またはGIB1とGAI、またはそれらのバリアントから選択されるペアから選択される第一または第二の多量体化ドメインを含有する。
【0208】
ある実施形態において、第一のポリペプチドは、FKBPポリペプチドまたはそのバリアントを含む多量体化ドメイン、CD4またはCD8α膜貫通ドメイン、およびIL-18R1細胞内シグナル伝達ドメインを含有し;第二のポリペプチドは、FRBポリペプチドまたはそのバリアント、CD4またはCD8α膜貫通ドメインおよびIL-18RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0209】
ある実施形態において、第一のポリペプチドは、FRBポリペプチドまたはそのバリアントを含む多量体化ドメイン、CD4またはCD8α膜貫通ドメイン、およびIL-18R1細胞内シグナル伝達ドメインを含有し;第二のポリペプチドは、FKBPポリペプチドまたはそのバリアント、CD4またはCD8α膜貫通ドメインおよびIL-18RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0210】
一部の実施形態では、架橋因子は、AP21967、シロリムス、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダフォロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、またはゾタロリムスからなる群から選択される。
【0211】
特定の実施形態では、FRBポリペプチドは、FRB T2098Lであり、FKBPポリペプチドは、FKBP12であり、架橋因子は、AP21967である。
【0212】
特定の実施形態では、FRBポリペプチドは、FRBであり、FKBPポリペプチドは、FKBP12であり、架橋因子は、ラパマイシン、テムシロリムスまたはエベロリムスである。
【0213】
2.IL-12 DARIC免疫受容体
インターロイキン-12(IL-12)は、部分的にはIFNγの発現を高めること、T細胞増殖を増加させること、およびIL-12シグナル伝達を強化することにより、T細胞の機能と活性を促進するサイトカインである。IL-12は、インターロイキン12受容体、ベータ1(IL-12Rβ1、CD212としても知られる)、およびインターロイキン12受容体、ベータ2(IL-12Rβ2)に結合する。
【0214】
IL-12Rβ1およびIL-12Rβ2を介したIL-12のシグナル伝達は、STAT3、STAT4およびSTAT5のリン酸化を生じさせる。リン酸化されたSTAT3/STAT4は核に移行し、IFNγプロモーターに結合して、IFNγの産生を増加させる。リン酸化されたSTAT4はさらにJun癌遺伝子(c-Jun)をIFNγプロモーターへとリクルートし、IFNγの発現を増加させ、IL-12Rβ2の転写を増加させることでIL-12のシグナル伝達を強化する。STAT5リン酸化は、T細胞の増殖を増加させる。
【0215】
IL-12のシグナル伝達はさらに、STAT4およびc-JunをIL-2Rのプロモーターにリクルートすることでインターロイキン2受容体、アルファ(IL-2R)の発現を増加させ、T細胞の増殖を強化する。
【0216】
様々な実施形態では、操作された抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞を含む、1つまたは複数の免疫エフェクター細胞は、IL-12 DARIC免疫受容体をコードする1つもしくは複数のポリヌクレオチドまたはベクターを導入することにより改変される。様々な実施形態では、1つまたは複数の免疫エフェクター細胞は、IL-12 DARIC免疫受容体および操作された抗原受容体をコードする1つもしくは複数のポリヌクレオチドまたはベクターを導入することにより改変される。
【0217】
特定の実施形態では、IL-12 DARIC免疫受容体は、架橋因子へ暴露されたときに、IL-12介在性の免疫刺激性のシグナルを伝達する。特定の実施形態では、本明細書において予期されるIL-12 DARIC免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、およびIL-12Rβ1細胞内シグナル伝達ドメイン;ポリペプチド切断シグナル;ならびに第二の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、およびIL-12Rβ2細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。特定の実施形態では、本明細書において予期されるIL-12 DARIC免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、およびIL-12Rβ2細胞内シグナル伝達ドメイン;ポリペプチド切断シグナル;ならびに第二の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、およびIL-12Rβ1細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0218】
特定の実施形態では、ポリペプチド切断シグナルは、ウイルス自己切断ポリペプチドであり、より好ましくはウイルス自己切断2Aポリペプチドであり、より好ましくは、以下からなる群から選択されるウイルス自己切断ポリペプチドである:口蹄疫ウイルス(FMDV)(F2A)ペプチド、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)(E2A)ペプチド、Thosea asignaウイルス(TaV)(T2A)ペプチド、ブタテッショウウイルス-1(PTV-1)(P2A)ペプチド、タイロウイルス2Aペプチド、および脳心筋炎ウイルス2Aペプチド。1つの実施形態では、ポリペプチド切断シグナルは、P2AまたはT2Aウイルス自己切断ポリペプチドである。
【0219】
特定の実施形態において、IL-12 DARIC免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、第一の膜貫通ドメイン、およびIL-12Rβ1細胞内シグナル伝達ドメインを含む第一のポリペプチド;ならびに第二の多量体化ドメイン、第二の膜貫通ドメイン、およびIL-12Rβ2細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチド、を含有するポリペプチド複合体である。特定の実施形態において、IL-12免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、第一の膜貫通ドメイン、およびIL-12Rβ2細胞内シグナル伝達ドメインを含む第一のポリペプチド;ならびに第二の多量体化ドメイン、第二の膜貫通ドメイン、およびIL-12Rβ1細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチド、を含有するポリペプチド複合体である。
【0220】
特定の実施形態では、第一および第二の膜貫通ドメインは、以下からなる群から選択される:CD4、CD5、CD8α、CD9、CD 16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD71、CD80、CD86、CD 134、CD137、CD152、CD 154、AMN、およびPD1。
【0221】
1つの実施形態では、第一および第二の多量体化ドメインは、同一である。
【0222】
ある実施形態では、IL-12 DARIC免疫受容体は、FKBPとFRB、FKBPとカルシニューリン、FKBPとシクロフィリン、FKBPと細菌DHFR、カルシニューリンとシクロフィリン、PYL1とABI1、またはGIB1とGAI、またはそれらのバリアントから選択されるペアから選択される第一または第二の多量体化ドメインを含有する。
【0223】
ある実施形態において、第一のポリペプチドは、FKBPポリペプチドまたはそのバリアントを含む多量体化ドメイン、CD4またはCD8α膜貫通ドメイン、およびIL-12Rβ1細胞内シグナル伝達ドメインを含有し;第二のポリペプチドは、FRBポリペプチドまたはそのバリアント、CD4またはCD8α膜貫通ドメインおよびIL-12Rβ2細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0224】
ある実施形態において、第一のポリペプチドは、FRBポリペプチドまたはそのバリアントを含む多量体化ドメイン、CD4またはCD8α膜貫通ドメイン、およびIL-12Rβ1細胞内シグナル伝達ドメインを含有し;第二のポリペプチドは、FKBPポリペプチドまたはそのバリアント、CD4またはCD8α膜貫通ドメインおよびIL-12Rβ2細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0225】
一部の実施形態では、架橋因子は、AP21967、シロリムス、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダフォロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、またはゾタロリムスからなる群から選択される。
【0226】
特定の実施形態では、FRBポリペプチドは、FRB T2098Lであり、FKBPポリペプチドは、FKBP12であり、架橋因子は、AP21967である。
【0227】
特定の実施形態では、FRBポリペプチドは、FRBであり、FKBPポリペプチドは、FKBP12であり、架橋因子は、ラパマイシン、テムシロリムスまたはエベロリムスである。
【0228】
3.IL-7 DARIC免疫受容体
インターロイキン-7(IL-7)は、部分的にはT細胞前駆体の生存と増殖を改善することにより、T細胞の機能と活性化を促進するサイトカインである。IL-7は、インターロイキン7受容体アルファ(IL-7Rα、CD127としても知られる)およびインターロイキン2受容体、共通ガンマ鎖(IL-2Rγ、CD132およびγcとしても知られる)に結合する。IL-7のシグナル伝達は、JAK/STAT、PI-3KおよびSrcキナーゼ経路を活性化し、抗アポトーシス遺伝子の転写と、T細胞前駆体の増殖を促進する遺伝子の転写を生じさせる。
【0229】
様々な実施形態では、操作された抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞を含む、1つまたは複数の免疫エフェクター細胞は、IL-7 DARIC免疫受容体をコードする1つもしくは複数のポリヌクレオチドまたはベクターを導入することにより改変される。様々な実施形態では、1つまたは複数の免疫エフェクター細胞は、IL-7 DARIC免疫受容体および操作された抗原受容体をコードする1つもしくは複数のポリヌクレオチドまたはベクターを導入することにより改変される。
【0230】
特定の実施形態では、IL-7 DARIC免疫受容体は、架橋因子へ暴露されたときに、IL-7介在性の免疫刺激性のシグナルを伝達する。特定の実施形態では、本明細書において予期されるIL-7 DARIC免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、およびIL-7Rα細胞内シグナル伝達ドメイン;ポリペプチド切断シグナル;ならびに第二の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、およびIL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。特定の実施形態では、本明細書において予期されるIL-7 DARIC免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、およびIL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメイン;ポリペプチド切断シグナル;ならびに第二の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、およびIL-7Rα細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0231】
特定の実施形態では、ポリペプチド切断シグナルは、ウイルス自己切断ポリペプチドであり、より好ましくはウイルス自己切断2Aポリペプチドであり、より好ましくは、以下からなる群から選択されるウイルス自己切断ポリペプチドである:口蹄疫ウイルス(FMDV)(F2A)ペプチド、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)(E2A)ペプチド、Thosea asignaウイルス(TaV)(T2A)ペプチド、ブタテッショウウイルス-1(PTV-1)(P2A)ペプチド、タイロウイルス2Aペプチド、および脳心筋炎ウイルス2Aペプチド。1つの実施形態では、ポリペプチド切断シグナルは、P2AまたはT2Aウイルス自己切断ポリペプチドである。
【0232】
特定の実施形態において、IL-7 DARIC免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、第一の膜貫通ドメイン、およびIL-7Rα細胞内シグナル伝達ドメインを含む第一のポリペプチド;ならびに第二の多量体化ドメイン、第二の膜貫通ドメイン、およびIL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチド、を含有するポリペプチド複合体である。特定の実施形態において、IL-7免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、第一の膜貫通ドメイン、およびIL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含む第一のポリペプチド;ならびに第二の多量体化ドメイン、第二の膜貫通ドメイン、およびIL-7Rα細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチド、を含有するポリペプチド複合体である。
【0233】
特定の実施形態では、第一および第二の膜貫通ドメインは、以下からなる群から選択される:CD4、CD5、CD8α、CD9、CD 16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD71、CD80、CD86、CD 134、CD137、CD152、CD 154、AMN、およびPD1。
【0234】
1つの実施形態では、第一および第二の多量体化ドメインは、同一である。
【0235】
ある実施形態では、IL-7 DARIC免疫受容体は、FKBPとFRB、FKBPとカルシニューリン、FKBPとシクロフィリン、FKBPと細菌DHFR、カルシニューリンとシクロフィリン、PYL1とABI1、またはGIB1とGAI、またはそれらのバリアントから選択されるペアから選択される第一または第二の多量体化ドメインを含有する。
【0236】
ある実施形態において、第一のポリペプチドは、FKBPポリペプチドまたはそのバリアントを含む多量体化ドメイン、CD4またはCD8α膜貫通ドメイン、およびIL-7Rα細胞内シグナル伝達ドメインを含有し;第二のポリペプチドは、FRBポリペプチドまたはそのバリアント、CD4またはCD8α膜貫通ドメインおよびIL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0237】
ある実施形態において、第一のポリペプチドは、FRBポリペプチドまたはそのバリアントを含む多量体化ドメイン、CD4またはCD8α膜貫通ドメイン、およびIL-7Rα細胞内シグナル伝達ドメインを含有し;第二のポリペプチドは、FKBPポリペプチドまたはそのバリアント、CD4またはCD8α膜貫通ドメインおよびIL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0238】
一部の実施形態では、架橋因子は、AP21967、シロリムス、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダフォロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、またはゾタロリムスからなる群から選択される。
【0239】
特定の実施形態では、FRBポリペプチドは、FRB T2098Lであり、FKBPポリペプチドは、FKBP12であり、架橋因子は、AP21967である。
【0240】
特定の実施形態では、FRBポリペプチドは、FRBであり、FKBPポリペプチドは、FKBP12であり、架橋因子は、ラパマイシン、テムシロリムスまたはエベロリムスである。
【0241】
4.IL-15 DARIC免疫受容体
インターロイキン-15(IL-15)は、部分的にはT細胞前駆体の生存と増殖を改善することにより、T細胞の機能と活性化を促進するサイトカインである。IL-15は、高いアフィニティでIL-15Rα(CD215としても知られる)に結合し、次いで同じ細胞上(シス-提示)または異なる細胞上(トランス-提示)のいずれかで発現されるIL-2Rβ(IL-15RβおよびCD122としても知られる)とIL-2Rγ(CD132およびγcとしても知られる)を含有する複合体と会合する。IL-15のシグナル伝達は、JAK/STAT、PI-3KおよびSrcキナーゼ経路を活性化し、抗アポトーシス遺伝子の転写と、T細胞前駆体の増殖を促進する遺伝子の転写を生じさせる。
【0242】
様々な実施形態では、操作された抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞を含む、1つまたは複数の免疫エフェクター細胞は、IL-15 DARIC免疫受容体をコードする1つもしくは複数のポリヌクレオチドまたはベクター、および任意で、IL-15Rαポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはベクターを導入することにより改変される。様々な実施形態では、1つまたは複数の免疫エフェクター細胞は、IL-15 DARIC免疫受容体および操作された抗原受容体をコードする1つもしくは複数のポリヌクレオチドまたはベクター、および任意で、IL-15Rαポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはベクターを導入することにより改変される。
【0243】
特定の実施形態では、IL-15 DARIC免疫受容体は、架橋因子へ暴露されたときに、IL-15介在性の免疫刺激性のシグナルを伝達する。特定の実施形態では、本明細書において予期されるIL-15 DARIC免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、およびIL-2Rβ細胞内シグナル伝達ドメイン;ポリペプチド切断シグナル;ならびに第二の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、およびIL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。特定の実施形態では、本明細書において予期されるIL-15 DARIC免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、およびIL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメイン;ポリペプチド切断シグナル;ならびに第二の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、およびIL-2Rβ細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0244】
特定の実施形態では、ポリペプチド切断シグナルは、ウイルス自己切断ポリペプチドであり、より好ましくはウイルス自己切断2Aポリペプチドであり、より好ましくは、以下からなる群から選択されるウイルス自己切断ポリペプチドである:口蹄疫ウイルス(FMDV)(F2A)ペプチド、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)(E2A)ペプチド、Thosea asignaウイルス(TaV)(T2A)ペプチド、ブタテッショウウイルス-1(PTV-1)(P2A)ペプチド、タイロウイルス2Aペプチド、および脳心筋炎ウイルス2Aペプチド。1つの実施形態では、ポリペプチド切断シグナルは、P2AまたはT2Aウイルス自己切断ポリペプチドである。
【0245】
特定の実施形態において、IL-15 DARIC免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、第一の膜貫通ドメイン、およびIL-2Rβ細胞内シグナル伝達ドメインを含む第一のポリペプチド;ならびに第二の多量体化ドメイン、第二の膜貫通ドメイン、およびIL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチド、を含有するポリペプチド複合体である。特定の実施形態において、IL-15免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、第一の膜貫通ドメイン、およびIL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含む第一のポリペプチド;ならびに第二の多量体化ドメイン、第二の膜貫通ドメイン、およびIL-2Rβ細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチド、を含有するポリペプチド複合体である。
【0246】
特定の実施形態では、第一および第二の膜貫通ドメインは、以下からなる群から選択される:CD4、CD5、CD8α、CD9、CD 16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD71、CD80、CD86、CD 134、CD137、CD152、CD 154、AMN、およびPD1。
【0247】
1つの実施形態では、第一および第二の多量体化ドメインは、同一である。
【0248】
ある実施形態では、IL-15 DARIC免疫受容体は、FKBPとFRB、FKBPとカルシニューリン、FKBPとシクロフィリン、FKBPと細菌DHFR、カルシニューリンとシクロフィリン、PYL1とABI1、またはGIB1とGAI、またはそれらのバリアントから選択されるペアから選択される第一または第二の多量体化ドメインを含有する。
【0249】
ある実施形態において、第一のポリペプチドは、FKBPポリペプチドまたはそのバリアントを含む多量体化ドメイン、CD4またはCD8α膜貫通ドメイン、およびIL-2Rβ細胞内シグナル伝達ドメインを含有し;第二のポリペプチドは、FRBポリペプチドまたはそのバリアント、CD4またはCD8α膜貫通ドメインおよびIL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0250】
ある実施形態において、第一のポリペプチドは、FRBポリペプチドまたはそのバリアントを含む多量体化ドメイン、CD4またはCD8α膜貫通ドメイン、およびIL-2Rβ細胞内シグナル伝達ドメインを含有し;第二のポリペプチドは、FKBPポリペプチドまたはそのバリアント、CD4またはCD8α膜貫通ドメインおよびIL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0251】
一部の実施形態では、架橋因子は、AP21967、シロリムス、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダフォロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、またはゾタロリムスからなる群から選択される。
【0252】
特定の実施形態では、FRBポリペプチドは、FRB T2098Lであり、FKBPポリペプチドは、FKBP12であり、架橋因子は、AP21967である。
【0253】
特定の実施形態では、FRBポリペプチドは、FRBであり、FKBPポリペプチドは、FKBP12であり、架橋因子は、ラパマイシン、テムシロリムスまたはエベロリムスである。
【0254】
5.IL-21 DARIC免疫受容体
インターロイキン-21(IL-21)は、部分的にはT細胞前駆体の生存と増殖を改善することにより、T細胞の機能と活性化を促進するサイトカインである。IL-21は、インターロイキン21受容体(IL-21R、CD360としても知られる)およびIL-2Rγ(CD132およびγcとしても知られる)に結合する。IL-21のシグナル伝達は、JAK/STAT、PI-3KおよびSrcキナーゼ経路を活性化し、抗アポトーシス遺伝子の転写と、T細胞前駆体の増殖を促進する遺伝子の転写を生じさせる。
【0255】
様々な実施形態では、操作された抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞を含む、1つまたは複数の免疫エフェクター細胞は、IL-21 DARIC免疫受容体をコードする1つもしくは複数のポリヌクレオチドまたはベクターを導入することにより改変される。様々な実施形態では、1つまたは複数の免疫エフェクター細胞は、IL-21 DARIC免疫受容体および操作された抗原受容体をコードする1つもしくは複数のポリヌクレオチドまたはベクターを導入することにより改変される。
【0256】
特定の実施形態では、IL-21 DARIC免疫受容体は、架橋因子へ暴露されたときに、IL-21介在性の免疫刺激性のシグナルを伝達する。特定の実施形態では、本明細書において予期されるIL-21 DARIC免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、およびIL-21R細胞内シグナル伝達ドメイン;ポリペプチド切断シグナル;ならびに第二の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、およびIL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。特定の実施形態では、本明細書において予期されるIL-21 DARIC免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、およびIL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメイン;ポリペプチド切断シグナル;ならびに第二の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、およびIL-21R細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0257】
特定の実施形態では、ポリペプチド切断シグナルは、ウイルス自己切断ポリペプチドであり、より好ましくはウイルス自己切断2Aポリペプチドであり、より好ましくは、以下からなる群から選択されるウイルス自己切断ポリペプチドである:口蹄疫ウイルス(FMDV)(F2A)ペプチド、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)(E2A)ペプチド、Thosea asignaウイルス(TaV)(T2A)ペプチド、ブタテッショウウイルス-1(PTV-1)(P2A)ペプチド、タイロウイルス2Aペプチド、および脳心筋炎ウイルス2Aペプチド。1つの実施形態では、ポリペプチド切断シグナルは、P2AまたはT2Aウイルス自己切断ポリペプチドである。
【0258】
特定の実施形態において、IL-21 DARIC免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、第一の膜貫通ドメイン、およびIL-21R細胞内シグナル伝達ドメインを含む第一のポリペプチド;ならびに第二の多量体化ドメイン、第二の膜貫通ドメイン、およびIL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチド、を含有するポリペプチド複合体である。特定の実施形態において、IL-21免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、第一の膜貫通ドメイン、およびIL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含む第一のポリペプチド;ならびに第二の多量体化ドメイン、第二の膜貫通ドメイン、およびIL-21R細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチド、を含有するポリペプチド複合体である。
【0259】
特定の実施形態では、第一および第二の膜貫通ドメインは、以下からなる群から選択される:CD4、CD5、CD8α、CD9、CD 16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD71、CD80、CD86、CD 134、CD137、CD152、CD 154、AMN、およびPD1。
【0260】
1つの実施形態では、第一および第二の多量体化ドメインは、同一である。
【0261】
ある実施形態では、IL-21 DARIC免疫受容体は、FKBPとFRB、FKBPとカルシニューリン、FKBPとシクロフィリン、FKBPと細菌DHFR、カルシニューリンとシクロフィリン、PYL1とABI1、またはGIB1とGAI、またはそれらのバリアントから選択されるペアから選択される第一または第二の多量体化ドメインを含有する。
【0262】
ある実施形態において、第一のポリペプチドは、FKBPポリペプチドまたはそのバリアントを含む多量体化ドメイン、CD4またはCD8α膜貫通ドメイン、およびIL-21R細胞内シグナル伝達ドメインを含有し;第二のポリペプチドは、FRBポリペプチドまたはそのバリアント、CD4またはCD8α膜貫通ドメインおよびIL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0263】
ある実施形態において、第一のポリペプチドは、FRBポリペプチドまたはそのバリアントを含む多量体化ドメイン、CD4またはCD8α膜貫通ドメイン、およびIL-21R細胞内シグナル伝達ドメインを含有し;第二のポリペプチドは、FKBPポリペプチドまたはそのバリアント、CD4またはCD8α膜貫通ドメインおよびIL-12Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0264】
一部の実施形態では、架橋因子は、AP21967、シロリムス、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダフォロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、またはゾタロリムスからなる群から選択される。
【0265】
特定の実施形態では、FRBポリペプチドは、FRB T2098Lであり、FKBPポリペプチドは、FKBP12であり、架橋因子は、AP21967である。
【0266】
特定の実施形態では、FRBポリペプチドは、FRBであり、FKBPポリペプチドは、FKBP12であり、架橋因子は、ラパマイシン、テムシロリムスまたはエベロリムスである。
【0267】
6.IL-1 DARIC免疫受容体
インターロイキン-1(IL-1)は、部分的にはIFNγの発現を高めること、T細胞増殖を増加させること、および活性化誘導型細胞死(AICD:activation induced cell death)に対する防御を強化することにより、T細胞の機能と活性を促進するサイトカインである。IL-1は、インターロイキン1受容体1(IL-1R1、CD121aとしても知られる)とインターロイキン1受容体アクセサリータンパク質(IL-1RAP)に結合する。
【0268】
IL-1R1とIL-1RAPを介したIL-1のシグナル伝達は、MyD88アダプタータンパク質を介した活性化、およびIRAK4のリン酸化を生じさせる。IRAK4のリン酸化と、それに続くIRAK1/2のリン酸化は最終的に、NF-カッパBおよびAP-1転写因子の活性化をもたらし、IFNγ発現を増加させ、IL-12に対する感受性を高める。IL-1により誘導される転写プログラムは、T細胞増殖も増加させ、AICDを防ぐ。
【0269】
様々な実施形態では、操作された抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞を含む、1つまたは複数の免疫エフェクター細胞は、IL-1 DARIC免疫受容体をコードする1つもしくは複数のポリヌクレオチドまたはベクターを導入することにより改変される。様々な実施形態では、1つまたは複数の免疫エフェクター細胞は、IL-1 DARIC免疫受容体および操作された抗原受容体をコードする1つもしくは複数のポリヌクレオチドまたはベクターを導入することにより改変される。
【0270】
特定の実施形態では、IL-1 DARIC免疫受容体は、架橋因子へ暴露されたときに、IL-1介在性の免疫刺激性のシグナルを伝達する。特定の実施形態では、本明細書において予期されるIL-1 DARIC免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、およびIL-1RAP細胞内シグナル伝達ドメイン;ポリペプチド切断シグナル;ならびに第二の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、およびIL-1R1細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。特定の実施形態では、本明細書において予期されるIL-1 DARIC免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、およびIL-1R1細胞内シグナル伝達ドメイン;ポリペプチド切断シグナル;ならびに第二の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、およびIL-1RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0271】
特定の実施形態では、ポリペプチド切断シグナルは、ウイルス自己切断ポリペプチドであり、より好ましくはウイルス自己切断2Aポリペプチドであり、より好ましくは、以下からなる群から選択されるウイルス自己切断ポリペプチドである:口蹄疫ウイルス(FMDV)(F2A)ペプチド、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)(E2A)ペプチド、Thosea asignaウイルス(TaV)(T2A)ペプチド、ブタテッショウウイルス-1(PTV-1)(P2A)ペプチド、タイロウイルス2Aペプチド、および脳心筋炎ウイルス2Aペプチド。1つの実施形態では、ポリペプチド切断シグナルは、P2AまたはT2Aウイルス自己切断ポリペプチドである。
【0272】
特定の実施形態において、IL-1 DARIC免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、第一の膜貫通ドメイン、およびIL-1RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含む第一のポリペプチド;ならびに第二の多量体化ドメイン、第二の膜貫通ドメイン、およびIL-1R1細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチド、を含有するポリペプチド複合体である。特定の実施形態において、IL-1免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、第一の膜貫通ドメイン、およびIL-1R1細胞内シグナル伝達ドメインを含む第一のポリペプチド;ならびに第二の多量体化ドメイン、第二の膜貫通ドメイン、およびIL-1RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチド、を含有するポリペプチド複合体である。
【0273】
特定の実施形態では、第一および第二の膜貫通ドメインは、以下からなる群から選択される:CD4、CD5、CD8α、CD9、CD 16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD71、CD80、CD86、CD 134、CD137、CD152、CD 154、AMN、およびPD1。
【0274】
1つの実施形態では、第一および第二の多量体化ドメインは、同一である。
【0275】
ある実施形態では、IL-1 DARIC免疫受容体は、FKBPとFRB、FKBPとカルシニューリン、FKBPとシクロフィリン、FKBPと細菌DHFR、カルシニューリンとシクロフィリン、PYL1とABI1、またはGIB1とGAI、またはそれらのバリアントから選択されるペアから選択される第一または第二の多量体化ドメインを含有する。
【0276】
ある実施形態において、第一のポリペプチドは、FKBPポリペプチドまたはそのバリアントを含む多量体化ドメイン、CD4またはCD8α膜貫通ドメイン、およびIL-1RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有し;第二のポリペプチドは、FRBポリペプチドまたはそのバリアント、CD4またはCD8α膜貫通ドメインおよびIL-1R1細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0277】
ある実施形態において、第一のポリペプチドは、FRBポリペプチドまたはそのバリアントを含む多量体化ドメイン、CD4またはCD8α膜貫通ドメイン、およびIL-1RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有し;第二のポリペプチドは、FKBPポリペプチドまたはそのバリアント、CD4またはCD8α膜貫通ドメインおよびIL-1R1細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0278】
一部の実施形態では、架橋因子は、AP21967、シロリムス、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダフォロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、またはゾタロリムスからなる群から選択される。
【0279】
特定の実施形態では、FRBポリペプチドは、FRB T2098Lであり、FKBPポリペプチドは、FKBP12であり、架橋因子は、AP21967である。
【0280】
特定の実施形態では、FRBポリペプチドは、FRBであり、FKBPポリペプチドは、FKBP12であり、架橋因子は、ラパマイシン、テムシロリムスまたはエベロリムスである。
【0281】
7.TLR DARIC免疫受容体
toll様受容体(TLR1~TLR10)はパターン認識受容体であり、侵入病原体を検出し、自然免疫反応および適応免疫反応を活性化する。様々なリガンドによるTLRの活性化は、炎症促進性の転写プログラムの誘導、および複数の炎症性サイトカインの発現を生じさせる。
【0282】
TLRシグナル伝達は、TLRシグナル伝達ドメインのホモ二量体化を介して発生し、MyD88アダプタータンパク質を介した活性化とIRAK4のリン酸化を導く。IRAK4のリン酸化と、それに続くIRAK1/2のリン酸化は最終的に、NF-カッパBおよびAP-1転写因子の活性化をもたらし、炎症性サイトカインの産生を増加させ、増殖を誘導する。TLR活性化はさらにIRF3転写因子とIRF7転写因子の活性化も生じさせ得る。
【0283】
様々な実施形態では、操作された抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞を含む、1つまたは複数の免疫エフェクター細胞は、TLR DARIC免疫受容体をコードする1つもしくは複数のポリヌクレオチドまたはベクターを導入することにより改変される。様々な実施形態では、1つまたは複数の免疫エフェクター細胞は、TLR DARIC免疫受容体および操作された抗原受容体をコードする1つもしくは複数のポリヌクレオチドまたはベクターを導入することにより改変される。
【0284】
特定の実施形態では、TLR DARIC免疫受容体は、架橋因子へ暴露されたときに、TLR介在性の免疫刺激性のシグナルを伝達する。特定の実施形態では、本明細書において予期されるTLR DARIC免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、およびTLR細胞内シグナル伝達ドメイン;ポリペプチド切断シグナル;ならびに第二の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、および同一のTLR細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。特定の実施形態では、本明細書において予期されるTLR DARIC免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、およびTLR細胞内シグナル伝達ドメイン;ポリペプチド切断シグナル;ならびに第二の多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、および同一のTLR細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0285】
特定の実施形態では、ポリペプチド切断シグナルは、ウイルス自己切断ポリペプチドであり、より好ましくはウイルス自己切断2Aポリペプチドであり、より好ましくは、以下からなる群から選択されるウイルス自己切断ポリペプチドである:口蹄疫ウイルス(FMDV)(F2A)ペプチド、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)(E2A)ペプチド、Thosea asignaウイルス(TaV)(T2A)ペプチド、ブタテッショウウイルス-1(PTV-1)(P2A)ペプチド、タイロウイルス2Aペプチド、および脳心筋炎ウイルス2Aペプチド。1つの実施形態では、ポリペプチド切断シグナルは、P2AまたはT2Aウイルス自己切断ポリペプチドである。
【0286】
特定の実施形態において、TLR DARIC免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、第一の膜貫通ドメイン、およびTLR細胞内シグナル伝達ドメインを含む第一のポリペプチド;ならびに第二の多量体化ドメイン、第二の膜貫通ドメイン、および同一のTLR細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチド、を含有するポリペプチド複合体である。特定の実施形態において、TLR免疫受容体は、第一の多量体化ドメイン、第一の膜貫通ドメイン、およびTLR細胞内シグナル伝達ドメインを含む第一のポリペプチド;ならびに第二の多量体化ドメイン、第二の膜貫通ドメイン、および同一のTLR細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチド、を含有するポリペプチド複合体である。
【0287】
好ましい実施形態において、TLR細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9またはTLR10から単離される。
【0288】
特定の実施形態では、第一および第二の膜貫通ドメインは、以下からなる群から選択される:CD4、CD5、CD8α、CD9、CD 16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD71、CD80、CD86、CD 134、CD137、CD152、CD 154、AMN、およびPD1。
【0289】
1つの実施形態では、第一および第二の多量体化ドメインは、同一である。
【0290】
ある実施形態では、TLR DARIC免疫受容体は、FKBPとFRB、FKBPとカルシニューリン、FKBPとシクロフィリン、FKBPと細菌DHFR、カルシニューリンとシクロフィリン、PYL1とABI1、またはGIB1とGAI、またはそれらのバリアントから選択されるペアから選択される第一または第二の多量体化ドメインを含有する。
【0291】
ある実施形態において、第一のポリペプチドは、FKBPポリペプチドまたはそのバリアントを含む多量体化ドメイン、CD4またはCD8α膜貫通ドメイン、およびTLR細胞内シグナル伝達ドメインを含有し;第二のポリペプチドは、FRBポリペプチドまたはそのバリアント、CD4またはCD8α膜貫通ドメインおよび同一のTLR細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0292】
ある実施形態において、第一のポリペプチドは、FRBポリペプチドまたはそのバリアントを含む多量体化ドメイン、CD4またはCD8α膜貫通ドメイン、およびTLR細胞内シグナル伝達ドメインを含有し;第二のポリペプチドは、FKBPポリペプチドまたはそのバリアント、CD4またはCD8α膜貫通ドメインおよび同一のTLR細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0293】
一部の実施形態では、架橋因子は、AP21967、シロリムス、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダフォロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、またはゾタロリムスからなる群から選択される。
【0294】
特定の実施形態では、FRBポリペプチドは、FRB T2098Lであり、FKBPポリペプチドは、FKBP12であり、架橋因子は、AP21967である。
【0295】
特定の実施形態では、FRBポリペプチドは、FRBであり、FKBPポリペプチドは、FKBP12であり、架橋因子は、ラパマイシン、テムシロリムスまたはエベロリムスである。
【0296】
D.操作された抗原受容体
特定の実施形態では、ポリペプチドは、操作された抗原受容体、ポリペプチド切断シグナル、およびDARIC免疫受容体を含有する。他の特定の実施形態では、DARIC免疫受容体をコードするポリヌクレオチドまたはベクターは、操作された抗原受容体を含む免疫エフェクター細胞内に導入される。何らかの特定の学説に拘束されることは望まないが、特定の実施形態では、当分野に公知の任意のメカニズムを使用して、操作された抗原受容体、およびDARIC免疫受容体を、同じ免疫エフェクター細胞、または細胞群に導入し、共発現させて、TMEに対する免疫エフェクター細胞の抵抗性を増加させ、免疫エフェクター細胞反応の効率、有効性および耐久性を強化し、高め得ることが予期される。
【0297】
特定の実施形態では、本明細書において予期される免疫エフェクター細胞は、操作された抗原受容体、およびDARIC免疫受容体を含有する。特定の実施形態では、当該操作された抗原受容体は、操作されたT細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはゼータカインである。
【0298】
1.操作されたTCR
特定の実施形態では、本明細書において予期される免疫エフェクター細胞は、操作されたTCR、およびDARIC免疫受容体を含有する。1つの実施形態では、T細胞は、1つまたは複数のポリペプチド切断シグナルにより分離された、操作されたTCR、およびDARIC免疫受容体をコードするポリヌクレオチドまたはベクターを導入することにより操作される。1つの実施形態では、T細胞は、操作されたTCRをコードするポリヌクレオチドまたはベクター、およびDARIC免疫受容体をコードするポリヌクレオチドまたはベクターを導入することにより操作される。1つの実施形態では、T細胞は、操作されたTCRを発現するように操作され、さらに、DARIC免疫受容体をコードするポリヌクレオチドまたはベクターを導入することにより操作される。
【0299】
天然のT細胞受容体は2つのサブユニット、つまりアルファ鎖とベータ鎖のサブユニットを含有し、その各々が、各T細胞ゲノムの組み換え事象により生成される固有タンパク質である。TCRのライブラリは、特定の標的抗原に対する選択性に関してスクリーニングされてもよい。このようにして、標的抗原に対する高いアビディティと反応性を有する天然TCRが選択され、クローニングされ、そしてその後、養子免疫療法に使用されるT細胞群内に導入される。
【0300】
1つの実施形態では、T細胞は、TCRサブユニットを導入することにより改変され、TCRサブユニットは、標的抗原を発現する腫瘍細胞に対する特異性をT細胞に付与するTCRを形成する能力を有する。特定の実施形態では、サブユニットは、天然サブユニットと比較して、1つもしくは複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入または改変を有するが、ただし当該サブユニットは、TCRを形成し、トランスフェクトされたT細胞に標的細胞へと戻る能力を付与し、そして免疫学的に関連性のあるサイトカインシグナル伝達に関与する能力を保持するものとする。操作されたTCRはさらに、関連性のある腫瘍関連ペプチドを呈する標的細胞に高いアビディティで結合し、任意で関連ペプチドを提示する標的細胞の効率的な殺傷をインビボで介在することが好ましい。
【0301】
操作されたTCRをコードする核酸は、T細胞の(天然)染色体における本来の状況から単離されることが好ましく、本明細書において別段に記載されるように適切なベクター内に導入されることができる。核酸、および当該核酸を含むベクターの両方が、細胞、好ましくは特定の実施形態ではT細胞内にトランスファーされることができる。その後、改変T細胞は、形質導入された核酸によりコードされるTCRの1つまたは複数の鎖を発現することができる。好ましい実施形態では、操作されたTCRは、当該特定のTCRを通常は発現しないT細胞内に導入されるという点で、外来性のTCRである。操作されたTCRの本質的側面は、主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)または類似の免疫構成要素により提示される腫瘍抗原に対し高いアビディティを有するということである。操作されたTCRとは対照的に、CARは、MHC非依存性の様式で、標的抗原に結合するよう操作される。
【0302】
TCRは、TCRのアルファ鎖もしくはベータ鎖のアミノ末端部分またはカルボキシル末端部分に付加された追加ポリペプチドとともに発現されてもよいが、ただし当該付加された追加ポリペプチドは、アルファ鎖またはベータ鎖が、機能性T細胞受容体を形成する能力、およびMHC依存性の抗原認識能力に干渉しないものとする。
【0303】
特定の実施形態において予期される操作されたTCRにより認識される抗原としては限定されないが、血液癌または固形腫瘍の両方での抗原を含む、癌抗原が挙げられる。抗原の例示としては限定されないが、アルファ葉酸受容体、アルファ葉酸受容体、5T4、αvβ6インテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CAIX、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、ErbB2(HER2)を含むEGFRファミリー、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、EphA2、EpCAM、FAP、胎児性AchR、FRα、GD2、GD3、グリピカン-3(GPC3)、HLA-A1+MAGE1、HLA-A2+MAGE1、HLA-A3+MAGE1、HLA-A1+NY-ESO-1、HLA-A2+NY-ESO-1、HLA-A3+NY-ESO-1、IL-11Rα、IL-13Rα2,Lambda、Lewis-Y,Kappa、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、TAG72、TEMs、VEGFR2、およびWT-1が挙げられる。
【0304】
2.キメラ抗原受容体
様々な実施形態では、免疫エフェクター細胞は、腫瘍細胞へと細胞障害活性を再指向化させるCARを発現する。CARは、標的抗原(例えば腫瘍抗原)に対する抗体系の特異性と、T細胞受容体活性化細胞内ドメインを組み合わせて、特異的な抗腫瘍細胞性免疫活性を呈するキメラタンパク質を生成する分子である。本明細書において使用される場合、「キメラ」という用語は、異なる起源に由来する異なるタンパク質部分またはDNA部分から構成されるものを表す。
【0305】
特定の実施形態では、本明細書において予期される免疫エフェクター細胞は、CARおよびDARIC免疫受容体を含有する。1つの実施形態では、T細胞は、1つまたは複数のポリペプチド切断シグナルにより分離された、CARおよびDARIC免疫受容体をコードするポリヌクレオチドまたはベクターを導入することにより操作される。1つの実施形態では、T細胞は、CARをコードするポリヌクレオチドまたはベクター、およびDARIC免疫受容体をコードするポリヌクレオチドまたはベクターを導入することにより操作される。1つの実施形態では、T細胞は、CARを発現するように操作され、さらに、DARIC免疫受容体をコードするポリヌクレオチドまたはベクターを導入することにより操作される。
【0306】
様々な実施形態では、CARは、特異的標的抗原に結合する細胞外ドメイン(結合ドメイン、または抗原特異的結合ドメインとも呼称される)、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。CARの主な特徴は、免疫エフェクター細胞の特異性を再指向化させる能力であり、この能力によって、増殖、サイトカイン産生、ファゴサイトーシス、または標的抗原発現細胞の細胞死を、主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)非依存性の様式で介在し得る分子の産生が誘発され、モノクローナル抗体、可溶性リガンドまたは細胞特異的コレセプターの細胞特異的標的化能力が引き出される。
【0307】
特定の実施形態では、CARは、標的ポリペプチドに特異的に結合する細胞外結合ドメインを含有する。結合ドメインは、対象の生物分子に対する任意の天然結合パートナー、合成パートナー、半合成パートナー、または組み換え産生された結合パートナーを含有する。
【0308】
特定の実施形態では、細胞外結合ドメインは、抗体またはその抗原結合断片を含有する。
【0309】
1つの好ましい実施形態では、結合ドメインは、scFvである。
【0310】
別の好ましい実施形態では、結合ドメインは、ラクダ科抗体である。
【0311】
特定の実施形態では、CARは、以下からなる群から選択される抗原に結合する細胞外ドメインを含有する:アルファ葉酸受容体、5T4、αvβ6インテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CAIX、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、ErbB2(HER2)を含むEGFRファミリー、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、EphA2、EpCAM、FAP、胎児性AchR、FRα、GD2、GD3、グリピカン-3(GPC3)、HLA-A1+MAGE1、HLA-A2+MAGE1、HLA-A3+MAGE1、HLA-A1+NY-ESO-1、HLA-A2+NY-ESO-1、HLA-A3+NY-ESO-1、IL-11Rα、IL-13Rα2,ラムダ、ルイス-Y,カッパ、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、TAG72、TEMs、VEGFR2、およびWT-1。
【0312】
特定の実施形態では、CARは、例えば抗体、または抗原に結合するその抗原結合断片などの細胞外結合ドメインを含有し、この場合において当該抗原は、例えばクラスI MHC-ペプチド複合体、またはクラスII MHC-ペプチド複合体などのMHC-ペプチド複合体である。
【0313】
1つの実施形態では、スペーサードメインは、IgG1、IgG4またはIgDのCH2およびCH3を含有する。
【0314】
本明細書に記載されるCARにおける使用に適したヒンジドメインの例示としては、例えばCD8αおよびCD4といった1型膜タンパク質の細胞外領域に由来するヒンジ領域が挙げられ、これら分子の野生型ヒンジ領域であってもよく、または改変されてもよい。別の実施形態では、ヒンジドメインは、CD8αヒンジ領域を含有する。
【0315】
1つの実施形態では、ヒンジは、PD-1ヒンジまたはCD152ヒンジである。
【0316】
CARの膜貫通ドメイン(TM)は、細胞外結合部分と細胞内シグナル伝達ドメインを結合させ、CARを、免疫エフェクター細胞の細胞膜に固定する。TMドメインは、天然源、合成源、半合成源、または組み換え源のいずれかから誘導されてもよい。
【0317】
TMドメインの例示としては、T細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖、ガンマ鎖またはデルタ鎖、CD3δ、CD3ε、CD3γ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD 16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD 134、CD137、CD152、CD154、AMN、およびPD-1の少なくとも膜貫通ドメインに由来してもよい(すなわち含有してもよい)。
【0318】
1つの実施形態では、CARは、CD8α由来のTMドメインを含有する。別の実施形態では、本明細書において予期されるCARは、CD8α由来のTMドメインと、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10アミノ酸の長さの短オリゴリンカーまたはポリペプチドリンカーを含有し、当該リンカーは、CARのTMドメインと細胞内シグナル伝達ドメインを結合させる。グリシン-セリンリンカーが、特に適切なリンカーを提供する。
好ましい実施形態では、CARは、1つまたは複数の「共刺激性シグナル伝達ドメイン」と、「一次シグナル伝達ドメイン」を含む細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0319】
刺激性に作用する一次シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motifs)またはITAMとして知られているシグナル伝達モチーフを含有する場合がある。
【0320】
特定の実施形態で予期されるCARにおける使用に適したITAM含有一次シグナル伝達ドメインの例示としては、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dに由来するものが挙げられる。特定の好ましい実施形態では、CARは、CD3ζ一次シグナル伝達ドメイン、および1つまたは複数の共刺激性シグナル伝達ドメインを含有する。細胞内の一次シグナル伝達ドメインおよび共刺激性シグナル伝達ドメインは、任意の順序でタンデムに、膜貫通ドメインのカルボキシル末端に結合されてもよい。
【0321】
特定の実施形態では、CARは、1つまたは複数の共刺激性シグナル伝達ドメインを含有し、CAR受容体を発現するT細胞の有効性および拡張を強化する。
【0322】
特定の実施形態で予期されるCARにおける使用に適した共刺激性分子の例示としては、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C、SLP76、TRIM、およびZAP70が挙げられる。1つの実施形態では、CARは、CD28、CD137およびCD134からなる群から選択される1つまたは複数の共刺激性シグナル伝達ドメイン、およびCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含有する。
【0323】
様々な実施形態では、CARは、以下からなる群から選択される抗原に結合する細胞外ドメイン:BCMA、CD19、CSPG4、PSCA、ROR1、およびTAG72;以下からなる群から選択されるポリペプチドから単離される膜貫通ドメイン:CD4、CD8α、CD154、およびPD-1;以下からなる群から選択されるポリペプチドから単離される1つまたは複数の細胞内共刺激性シグナル伝達ドメイン:CD28、CD134、およびCD137;ならびに以下からなる群から選択されるポリペプチドから単離されるシグナル伝達ドメイン、を含有する:FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66d。
【0324】
3.ゼータカイン
様々な実施形態では、免疫エフェクター細胞は、腫瘍細胞へ細胞障害活性を再指向化させるキメラサイトカイン受容体を含有する。ゼータカインは、キメラ膜貫通型免疫受容体であり、支持領域に結合された可溶性受容体リガンドを含む細胞外ドメインを含有し、当該支持領域は、細胞外ドメインを、細胞表面、膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインに繋ぐことができる。Tリンパ球表面上でゼータカインが発現される場合、ゼータカインは、T細胞活性を、可溶性受容体リガンドに対して特異的な受容体を発現する細胞へと指向させる。ゼータカインキメラ免疫受容体は、特にヒト悪性腫瘍に利用されるオートクライン/パラクラインのサイトカインシステムを介してT細胞の抗原特異性を再指向化させ、様々な癌の治療に適用される。
【0325】
特定の実施形態では、本明細書において予期される免疫エフェクター細胞は、ゼータカイン受容体の1つまたは複数の鎖、およびDARIC免疫受容体を含有する。1つの実施形態では、T細胞は、1つまたは複数のポリペプチド切断シグナルにより分離された、ゼータカイン受容体の1つまたは複数の鎖、およびDARIC免疫受容体をコードするポリヌクレオチドまたはベクターを導入することにより操作される。1つの実施形態では、T細胞は、ゼータカイン受容体の1つまたは複数の鎖をコードするポリヌクレオチドまたはベクター、およびDARIC免疫受容体をコードするポリヌクレオチドまたはベクターを導入することにより操作される。1つの実施形態では、T細胞は、ゼータカイン受容体の1つまたは複数の鎖を発現するように操作され、さらに、DARIC免疫受容体をコードするポリヌクレオチドまたはベクターを導入することにより操作される。
【0326】
特定の実施形態では、ゼータカインは、免疫抑制性サイトカインまたはそのサイトカイン受容体結合バリアント、リンカー、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。
【0327】
特定の実施形態では、サイトカイン、またはそのサイトカイン受容体結合バリアントは、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-10(IL-10)、およびインターロイキン-13(IL-13)からなる群から選択される。
【0328】
ある実施形態では、リンカーは、CH2CH3ドメイン、ヒンジドメインなどを含有する。1つの実施形態では、リンカーは、IgG1、IgG4またはIgDのCH2ドメインおよびCH3ドメインを含有する。1つの実施形態では、リンカーは、CD8αまたはCD4のヒンジドメインを含有する。
【0329】
特定の実施形態では、膜貫通ドメインは、T細胞受容体のアルファ鎖またはベータ鎖、CD3δ、CD3ε、CD3γ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD 16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD 134、CD137、CD152、CD154、AMN、およびPD-1からなる群から選択される。
【0330】
特定の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、ITAM含有一次シグナル伝達ドメイン、および/または共刺激性ドメインからなる群から選択される。
【0331】
特定の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、以下からなる群から選択される:FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66d。
【0332】
特定の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、以下からなる群から選択される:TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C、SLP76、TRIM、およびZAP70。
【0333】
1つの実施形態では、キメラサイトカイン受容体は、CD28、CD137およびCD134からなる群から選択される1つまたは複数の共刺激性シグナル伝達ドメイン、およびCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含有する。
【0334】
E.ポリペプチド
様々なポリペプチドが本明細書において予期され、限定されないが、DARIC免疫受容体、操作されたTCR、CAR、ゼータカイン、前述のポリペプチドおよびその断片を含有する融合タンパク質が挙げられる。好ましい実施形態では、ポリペプチドは、配列番号1~6のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含有する。「ポリペプチド」「ペプチド」、および「タンパク質」は、相互交換可能に使用され、反対であることが明記されない限り、従来的な意味に従う。すなわちアミノ酸配列として使用される。1つの実施形態では、「ポリペプチド」は、融合ポリペプチドおよび他のバリアントを含む。ポリペプチドは、様々な公知の組み換え技術および/または合成技術のいずれかを使用して調製され得る。ポリペプチドは特定の長さに限定されない。例えばポリペプチドは、全長タンパク質配列、全長タンパク質の断片、または融合タンパク質を含有してもよい。ポリペプチドは、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化などのポリペプチドの翻訳後修飾を含んでもよく、ならびに当分野に公知の天然および非天然の他の修飾を含んでもよい。特定の好ましい実施形態では、融合ポリペプチド、ポリペプチド、断片、およびそれらの他のバリアントは、1つまたは複数のヒトポリペプチドから調製され、取得され、または単離される。
【0335】
本明細書において使用される場合、「単離ペプチド」または「単離ポリペプチド」などは、細胞環境からの、および細胞の他の構成要素との会合からの、ペプチド分子またはポリペプチド分子のインビトロでの単離および/または精製を指す。すなわち、インビボでの物質と実質的に関連づけられていない。特定の実施形態では、単離ポリペプチドは、合成ポリペプチド、半合成ポリペプチド、または組み換え源から取得された、もしくは誘導されたポリペプチドである。
【0336】
ポリペプチドは、「ポリペプチドバリアント」を含む。ポリペプチドバリアントは、1つまたは複数の置換、欠失、付加および/または挿入により、天然ポリペプチドとは異なっている場合がある。そうしたバリアントは、天然であってもよく、または例えば上述のポリペプチド配列の1つまたは複数を改変することにより合成的に生成されてもよい。例えば特定の実施形態では、1つまたは複数の置換、欠失、付加および/または挿入をポリペプチドに導入することにより、ポリペプチドの結合アフィニティおよび/または他の生物学的性質を改善することが望ましい場合がある。特定の実施形態では、ポリペプチドは、本明細書において予期される参照配列のいずれかに対し、少なくとも約65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、86%、97%、98%、または99%のアミノ酸同一性を有するポリペプチドを含み、典型的には、当該バリアントは、参照配列の少なくとも1つの生物学的活性を維持している。特定の実施形態では、生物学的活性は、結合アフィニティである。特定の実施形態では、生物学的活性は、酵素活性である。
【0337】
ある実施形態では、ポリペプチド複合体は、(i)第一のポリペプチド、例えば第一の多量体化ドメインを有する第一の融合ポリペプチド、および(ii)第二のポリペプチド、例えば第一の多量体化ドメインと同一ではない第二の多量体化ドメインを有する第二の融合ポリペプチド、を含有し、当該第一および第二の多量体化ドメインは、架橋因子の存在下で、ポリペプチド複合体の形成に大きく貢献する、または効率的に促進する。第一の多量体化ドメイン、第二の多量体化ドメインまたは架橋因子の非存在下で、第一の融合ポリペプチドと第二の融合ポリペプチドの間の会合が統計的に有意に低下する場合、第一の多量体化ドメインと第二の多量体化ドメインの間の相互作用は、第一の融合ポリペプチドと第二の融合ポリペプチドの多量体化に大きく貢献し、または効率的に促進する。ある実施形態では、第一の融合ポリペプチドと第二の融合ポリペプチドが共発現される場合、第一の一本鎖ポリペプチドと第二の一本鎖ポリペプチドの少なくとも約60%、例えば少なくとも約60%~約70%、少なくとも約70%~約80%、少なくとも約80%~約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%、および少なくとも約90%~約92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%が、架橋因子の存在下で互いに多量体を形成する。
【0338】
ポリペプチドバリアントは、生物学的に活性な「ポリペプチド断片」を含む。生物学的に活性なポリペプチド断片の例示としては、結合ドメイン、シグナル伝達ドメインなどが挙げられる。本明細書において使用される場合、「生物学的に活性な断片」または「最小の生物学的に活性な断片」という用語は、天然ポリペプチドの少なくとも100%、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、少なくとも20%、少なくとも10%、または少なくとも5%の活性を保持するポリペプチド断片を指す。ある実施形態では、ポリペプチド断片は、少なくとも5~約1700アミノ酸の長さのアミノ酸鎖を含有し得る。ある実施形態では、断片は、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、またはそれ以上のアミノ酸の長さである。
【0339】
特定の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、「X」と示される1つまたは複数のアミノ酸を含有してもよい。アミノ酸配列番号中にある場合、「X」とは、いずれか1つまたは複数のアミノ酸を指す。特定の実施形態では、融合タンパク質を示す配列番号は、任意のscFvを累積的に表す、連続するX残基の配列を含有する。
【0340】
上述のように、ポリペプチドは、アミノ酸の置換、欠失、切断および挿入を含む、様々な方法で改変されてもよい。そうした操作のための方法は、当分野において一般的に公知である。例えば、参照ポリペプチドのアミノ酸配列バリアントは、DNA中の突然変異により作製され得る。突然変異誘導およびヌクレオチド配列改変のための方法は、当分野に公知である。例えば、Kunkel(1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.82:488-492)、Kunkel et al.,(1987,Methods in Enzymol,154:367-382)、米国特許第4,873,192号、Watson,J.D.et al.、(Molecular Biology of the Gene,Fourth Edition,Benjamin/Cummings,Menlo Park,Calif.,1987)、およびそれらにおいて引用される参照文献を参照のこと。対象タンパク質の生物活性に影響を与えない適切なアミノ酸置換に関するガイダンスは、Dayhoff et al.,(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.)のモデルに見出され得る。
【0341】
ある実施形態では、ポリペプチドバリアントは、1つまたは複数の保存的置換を含有する。「保存的置換」は、アミノ酸が、類似した性能を有する別のアミノ酸に置換される置換であり、ペプチド化学分野の当業者であれば、そうした置換によって、当該ポリペプチドの二次構造および疎水親水的性質が実質的に変化しないと予測するであろう。特定の実施形態において予期されるポリヌクレオチドおよびポリペプチドの構造に改変を行ってもよく、それでも所望の特徴を有するバリアントポリペプチドまたは誘導体ポリペプチドをコードする機能性分子が取得される。ポリペプチドのアミノ酸配列を変更し、均等な、または改善されたバリアントポリペプチドを生成することが望ましい場合、当業者は、例えば表1に従い、コードDNA配列のコドンのうちの1つまたは複数を変えることができる。
表1-アミノ酸コドン
【表1】
【0342】
どのアミノ酸残基が、生物活性を無効化することなく置換、挿入または欠失させ得るかを決定するガイダンスは、当分野に公知のコンピュータープログラム、例えばDNASTAR、DNA Strider、Geneious、Mac Vector、またはVector NTIソフトウェアなどを使用して見出すことができる。本明細書に開示されるタンパク質バリアント中のアミノ酸の変化は、保存的アミノ酸変化、すなわち類似した荷電アミノ酸、または非荷電アミノ酸の置換であることが好ましい。保存的アミノ酸変化には、その側鎖で関連付けられているアミノ酸ファミリーの1つの置換を含む。天然アミノ酸は一般的に以下の4つのファミリーに分けられる:酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性アミノ酸(リシン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性アミノ酸(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、および非荷電極性アミノ酸(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン)。フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは、合わせて芳香族アミノ酸として分類される場合もある。ペプチドまたはタンパク質において、アミノ酸の適切な保存的置換は当業者に公知であり、一般的に得られる分子の生物活性を変化させることなく行うことができる。当業者であれば、ポリペプチドの非必須領域中の一アミノ酸置換は概して、生物活性を大きくは変化させないと認識している(例えば、Watson et al.Molecular Biology of the Gene,4th Edition,1987,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,p.224を参照のこと)。
【0343】
1つの実施形態では、2つ以上のポリペプチドの発現が望ましい場合、それらをコードするポリヌクレオチド配列は、本明細書において別段に開示されるようにIRES配列により分離されてもよい。
【0344】
特定の実施形態において予期されるポリペプチドは、融合ポリペプチドを含む。特定の実施形態では、融合ポリペプチド、および融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。融合ポリペプチドおよび融合タンパク質とは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10個以上のポリペプチドセグメントを有するポリペプチドを指す。好ましい実施形態では、融合ポリペプチドは、DARIC免疫受容体である。他の好ましい実施形態では、融合ポリペプチドは、1つまたは複数のDARIC免疫受容体を含有する。特に好ましい実施形態では、融合ポリペプチドは、1つまたは複数のヒトポリペプチドの1つまたは複数のセグメント、断片、またはドメインを含有する。
【0345】
別の実施形態では、2つ以上のポリペプチドが、本明細書において別段に開示されるように、1つまたは複数の自己切断ポリペプチド配列を含有する融合タンパク質として発現されてもよい。
【0346】
融合ポリペプチドは、限定されないが、シグナルペプチド、細胞透過性ペプチドドメイン(CPP:cell permeable peptide)、結合ドメイン、シグナル伝達ドメインなど、エピトープタグ(例えばマルトース結合タンパク質(MBP)、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、HIS6、MYC、FLAG、V5、VSV-G、およびHA)、ポリペプチドリンカー、およびポリペプチド切断シグナルをはじめとする1つまたは複数のポリペプチドドメインまたはポリペプチドセグメントを含有してもよい。融合ポリペプチドは、典型的にはC末端~N末端で結合されるが、C末端~C末端、N末端~N末端、またはM末端~C末端で結合されることもできる。特定の実施形態では、融合タンパク質のポリペプチドは、任意の順序であってもよい。融合ポリペプチドまたは融合タンパク質は、保存的に改変されたバリアント、多型バリアント、アレル、突然変異体、下位配列、および種間ホモログを含み得るが、ただし融合ポリペプチドの望ましい活性は保存されるものとする。融合ポリペプチドは、化学合成法により、または2つの部分の間の化学的結合により作製されてもよく、または他の標準的な方法を使用して一般的に調製されてもよい。融合ポリペプチドを含むライゲーションされたDNA配列は、本明細書において別段に開示されるように適切な転写制御因子または翻訳制御因子に操作可能に連結される。
【0347】
融合ポリペプチドは任意でリンカーを含んでもよく、当該リンカーを使用して、1つもしくは複数のポリペプチド、またはポリペプチド内のドメインを結合させることができる。ペプチドリンカー配列を採用して任意の2つ以上のポリペプチド構成要素を、各ポリペプチドが適切な二次構造および三次構造へとフォールディングされるために充分な距離をとって分離させてもよく、それによりポリペプチドドメインが、その望ましい機能を発揮することが可能となる。そうしたペプチドリンカー配列は、当分野において標準的な技術を使用して融合ポリペプチドへと組み込まれる。適切なペプチドリンカー配列は、以下の因子に基づき選択されてもよい:(1)柔軟な拡張立体構造をとる能力、(2)第一のポリペプチドおよび第二のポリペプチド上の機能性エピトープと相互作用し得る二次構造をとらない能力、および(3)ポリペプチドの機能性エピトープと反応する可能性がある疎水性または荷電性の残基の欠落。好ましいペプチドリンカー配列は、Gly残基、Asn残基およびSer残基を含有する。他の近しい中性アミノ酸、例えばThrやAlaなどもリンカー配列に使用され得る。リンカーとして有用に採用され得るアミノ酸配列は、Maratea et al.,Gene 40:39-46,1985;Murphy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci. USA 83:8258-8262,1986、米国特許第4,935,233号および米国特許第4,751,180号に記載されるものが挙げられる。特定の融合ポリペプチドセグメントが非必須N末端アミノ酸領域を含有し、当該領域を使用して機能性ドメインを分離させ、立体干渉を防ぐことができる場合には、リンカー配列は必要ない。好ましいリンカーは、典型的には、柔軟性のあるアミノ酸下位配列であり、当該配列は組み換え融合タンパク質の一部として合成される。リンカーポリペプチドは、1~200アミノ酸の長さ、1~100アミノ酸の長さ、または1~50アミノ酸の長さであってもよく、当該数値の間のすべての整数値が含まれる。
【0348】
ポリペプチド切断シグナルの例としては、例えばプロテアーゼ切断部位、ヌクレアーゼ切断部位(例えば、稀な制限酵素認識部位、自己切断リボザイム認識部位)、および自己切断ウイルスオリゴペプチド(deFelipe and Ryan,2004.Traffic,5(8);616-26を参照のこと)といったポリペプチド切断認識部位が挙げられる。
【0349】
適切なプロテアーゼ切断部位および自己切断ペプチドは、当業者に公知である(例えば、Ryan et al.,1997.J.Gener.Virol.78,699-722;Scymczak et al.(2004)Nature Biotech.5,589-594を参照のこと)。プロテアーゼ切断部位の例としては限定されないが、ポチウイルスNIaプロテアーゼ(例えばタバコエッチ病ウイルスプロテアーゼ)、ポチウイルスHCプロテアーゼ、ポチウイルスP1(P35)プロテアーゼ、ビオウイルス(byovirus)NIaプロテアーゼ、ビオウイルスRNA-2-コードプロテアーゼ、アフトウイルスLプロテアーゼ、エンテロウイルス2Aプロテアーゼ、ライノウイルス2Aプロテアーゼ、ピコルナ3Cプロテアーゼ、コモウイルス24Kプロテアーゼ、ネポウイルス24Kプロテアーゼ、RTSV(ワイカウイルス)3C様プロテアーゼ、PYVF(パースニップ黄斑ウイルス)3C様プロテアーゼ、ヘパリン、トロンビン、第Xa因子、およびエンテロキナーゼの切断部位が挙げられる。切断ストリンジェンシーが高いために、1つの実施形態ではTEV(タバコエッチ病ウイルス)プロテアーゼ切断部位、例えばEXXYXQ(G/S)(配列番号18)、例えばENLYFQG(配列番号19)およびENLYFQS(配列番号20)が好ましく、式中、Xは、任意のアミノ酸を表している(TEVによる切断は、QとGの間、またはQとSの間で発生する)。
【0350】
特定の実施形態では、ポリペプチド切断シグナルは、ウイルス自己切断ペプチドまたはリボソームスキッピング配列である。
【0351】
リボソームスキッピング配列の例示としては限定されないが、2Aもしくは2A様の部位、配列またはドメインが挙げられる(Donnelly et al.,2001.J.Gen.Virol.82:1027-1041)。特定の実施形態では、ウイルス2Aペプチドは、アフトウイルス2Aペプチド、ポチウイルス2Aペプチド、またはカルジオウイルス2Aペプチドである。
【0352】
1つの実施形態では、ウイルス2Aペプチドは、以下からなる群から選択される:口蹄疫ウイルス(FMDV)(F2A)ペプチド、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)(E2A)ペプチド、Thosea asignaウイルス(TaV)(T2A)ペプチド、ブタテッショウウイルス-1(PTV-1)(P2A)ペプチド、タイロウイルス2Aペプチド、および脳心筋炎ウイルス2Aペプチド。
【0353】
2A部位の例示を表2に提示する。
表2:
【表2】
【0354】
好ましい実施形態では、ポリペプチドまたは融合ポリペプチドは、DARIC免疫受容体ポリペプチドを含有する。
【0355】
F.ポリヌクレオチド
特定の実施形態では、DARIC免疫受容体、操作されたTCR、CAR、ゼータカイン、前述のポリペプチドを含む融合タンパク質、およびそれらの断片をコードするポリヌクレオチドが提供される。本明細書において使用される場合、「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、およびDNA/RNAハイブリッドを指す。ポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖であってもよく、および組み換え、合成または単離されていてもよい。ポリヌクレオチドとしては限定されないが、以下が挙げられる:プレメッセンジャーRNA(pre-mRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、RNA、低分子干渉RNA(siRNA)、短ヘアピン型RNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、ゲノムRNA(gRNA)、プラス鎖RNA(RNA(+))、マイナス鎖RNA(RNA(-))、tracrRNA、crRNA、シングルガイドRNA(sgRNA)、合成RNA、合成mRNA、ゲノムDNA(gDNA)、PCR増幅DNA、相補的DNA(cDNA)、合成DNA、または組み換えDNA。ポリヌクレオチドとは、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも5000、少なくとも10000、または少なくとも15000以上のヌクレオチドの長さのヌクレオチドの多量体型を指し、リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチド、またはいずれかタイプのヌクレオチドの改変型、ならびにすべての中間の長さのものを指す。本文脈において、「中間の長さ」とは、例えば6、7、8、9など、101、102、103など、151、152、153など、201、202、203などの引用されている値の間の任意の長さを意味すると容易に理解されるであろう。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドまたはバリアントは、参照配列に対し、少なくとも、もしくは約50%、55%、60%、65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%,76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。
【0356】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、コドン最適化されてもよい。本明細書において使用される場合、「コドン最適化された」という用語は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド中のコドンを置換して、ポリペプチドの発現、安定性および/または活性を向上させることを指す。コドン最適化に影響を及ぼす因子としては限定されないが、以下のうちの1つまたは複数が挙げられる:(i)2つ以上の生物体または遺伝子の間のコドンバイアスの変動または合成構築されたバイアステーブル、(ii)生物体、遺伝子または遺伝子セット内のコドンバイアスの程度の変動、(iii)コンテキストを含むコドンの体系的変動、(iv)その解読tRNAに伴うコドンの変動、(v)全体または三つ組の1つの位置のいずれかのGC%に伴うコドンの変動、(vi)例えば天然配列などの参照配列に対する類似性における変動、(vii)コドン頻度のカットオフにおける変動、(viii)DNA配列から転写されたmRNAの構造的性質、(ix)コドン置換セットの設計の基礎となるDNA配列の機能に関する予備知識、(x)各アミノ酸に対するコドンセットの合成的変動、および/または(xi)誤った翻訳開始位置の分離された除去。
【0357】
本明細書において使用される場合、「ヌクレオチド」という用語は、リン酸化糖とN-グリコシド結合した複素環の窒素含有塩基を指す。ヌクレオチドは、天然塩基、および当分野に認識される広範な改変塩基を含むと理解される。そうした塩基は一般的に、ヌクレオチド糖部分の1’位に配置される。ヌクレオチドは一般的に、塩基、糖およびリン酸基を含有する。リボ核酸(RNA)では、糖はリボースであり、デオキシリボ核酸(DNA)では、糖はデオキシリボースである。すなわち、デオキシリボースは、リボース中に存在するヒドロキシル基を欠いた糖である。天然の窒素含有塩基の例としては、プリン類のアデノシン(A)およびグアニジン(G)、そしてピリミジン類のシチジン(C)とチミジン(T)(またはRNAの場合には、ウラシル(U))が挙げられる。デオキシリボースのC-1原子は、ピリミジンのN-1、またはプリンのN-9に結合される。ヌクオチドは通常、一、二または三リン酸塩である。ヌクレオチドは、非改変であっても、または糖部分、リン酸部分、および/もしくは塩基部分で改変されてもよい(ヌクレオチドアナログ、ヌクレオチド誘導体、改変ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド、および非標準ヌクレオチドと相互交換可能に言及される。例えばWO92/07065およびWO93/15187を参照のこと)。改変核酸塩基の例は、Limbachら(1994,Nucleic Acids Res.22,2183-2196)に要約されている。
【0358】
ヌクレオチドは、ヌクレオシドのリン酸エステルとみなすこともでき、エステル化は、糖のC-5に結合したヒドロキシル基上で発生する。本明細書において使用される場合、「ヌクレオシド」という用語は、糖とN-グリコシド結合した複素環の窒素含有塩基を指す。ヌクレオシドは当分野において、天然塩基を含むと認識されており、そして公知の改変塩基も含むと認識されている。そうした塩基は一般的に、ヌクレオシド糖部分の1’位に配置される。ヌクレオシドは一般的に塩基と糖類を含有する。ヌクレオシドは、非改変であっても、または糖部分および/もしくは塩基部分で改変されてもよい(ヌクレオシドアナログ、ヌクレオシド誘導体、改変ヌクレオシド、非天然ヌクレオシド、または非標準ヌクレオシドと相互交換可能に言及される)。上述のように、改変核酸塩基の例は、Limbachら(1994,Nucleic Acids Res.22,2183-2196)に要約されている。
【0359】
ポリヌクレオチドの例示としては限定されないが、配列番号1~6をコードするポリヌクレオチドが挙げられる。
【0360】
様々な例示的実施形態において、本明細書において予期されるポリヌクレオチドとしては限定されないが、DARIC免疫受容体、操作された抗原受容体、融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ならびに本明細書において予期されるポリヌクレオチドを含む発現ベクター、ウイルスベクターおよびトランスファープラスミドが挙げられる。
【0361】
本明細書において使用される場合、「ポリヌクレオチドバリアント」および「バリアント」などの用語は、参照ポリヌクレオチド配列と相当の配列同一性を呈するポリヌクレオチド、または本明細書において規定されるストリンジェントな条件下で参照配列とハイブリダイズするポリヌクレオチドを指す。これらの用語には、少なくとも1つのヌクレオチドの付加、欠失、置換または改変によって参照ポリヌクレオチドと識別されるポリヌクレオチドも包含される。従って、「ポリヌクレオチドバリアント」および「バリアント」という用語には、1つまたは複数のヌクレオチドが付加もしくは欠失もしくは改変され、または別のヌクレオチドと置換されたポリヌクレオチドが含まれる。この点に関し、当分野において、参照ポリヌクレオチドに対し、変異、付加、欠失および置換を含むある変更が為され、変更されたポリヌクレオチドは、参照ポリヌクレオチドの生物学的機能または生物活性を保持し得ると理解されている。
【0362】
1つの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下で標的核酸配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含有する。「ストリンジェントな条件下」でハイブリダイズするとは、互いに少なくとも60%同一であるヌクレオチド配列がハイブリダイズした状態を維持するハイブリダイゼーションプロトコールを説明するものである。一般的に、規定のイオン強度およびpHで、特有の配列の熱融解点(Tm)よりも約5℃低いストリンジェントな条件が選択される。Tmは、標的配列に対して相補的なプローブの50%が、平衡状態で標的配列に(規定のイオン強度、pH、および核酸濃度で)ハイブリダイズする温度である。標的配列は一般的に過剰状態で存在するため、Tmでは、プローブの50%が平衡状態で占有される。
【0363】
「配列同一性」、または例えば「~に対して50%同一の配列」を含む、という文章は、本明細書において使用される場合、比較ウィンドウ上で配列が、ヌクレオチド毎で同一である、またはアミノ酸ごとで同一である程度を指す。ゆえに「配列同一性の百分率」は、比較ウィンドウ上の2つの最適アライメント配列を比較する工程、同一核酸塩基(例えばA、T、C、G、I)または同一アミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、CysおよびMet)が、両方の配列中に存在する位置の数を決定して、合致位置数を算出する工程、合致位置数を、比較ウィンドウ中の総位置数(すなわちウィンドウサイズ)で割る工程、および結果に100を掛けて、配列同一性の百分率を算出する工程、により計算されてもよい。本明細書に記載される参照配列のいずれかに対し、少なくとも約50%、55%、60%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、86%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するヌクレオチドおよびポリペプチドが含まれ、典型的には、当該ポリペプチドバリアントは、参照ポリペプチドの少なくとも1つの生物活性を維持している。
【0364】
2つ以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの間の配列相関性を記載するために使用される用語としては、「参照配列」、「比較ウィンドウ」、「配列同一性」、「配列同一性の百分率」、および「実質的同一性」が挙げられる。「参照配列」は、少なくとも12個、しばしば15~18個、通常は少なくとも25個の単量体単位の長さであり、単位にはヌクレオチド残基およびアミノ酸残基が含まれる。2つのポリヌクレオチドはそれぞれ、(1)当該2つのポリヌクレオチドの間で似ている配列(すなわち、完全ポリヌクレオチド配列の一部のみ)と、(2)2つのポリヌクレオチドの間で相違する配列、を含み得るため、2つ(またはそれ以上)のポリヌクレオチドの間の配列比較は、多くの場合、2つのポリヌクレオチドの配列を「比較ウィンドウ」上で比較し、配列類似性の局所領域を特定および比較することにより実施される。「比較ウィンドウ」とは、少なくとも6個の連続する位置、通常は約50~100個、より普遍的には約100~150個の連続する位置の概念的なセグメントを指し、2つの配列が最適にアライメントされた後、そのセグメント中で配列は同じ連続位置数の参照配列と比較される。比較ウィンドウは、2つの配列の最適アライメントを目的として、参照配列(付加または欠失を含まない)と比較し約20%以下の付加または欠失(すなわちギャップ)を含む場合がある。比較ウィンドウの整列のための最適な配列アライメントは、アルゴリズム(米国ウィスコンシン州マジソン、サイエンスドライブ575、Genetics Computer GroupのWisconsin Genetics Software Package Release 7.0のGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)をコンピューター実装することで実施されてもよく、または選択される様々な方法のいずれかにより行われる検査と最適アライメント(すなわち比較ウィンドウ上で最も高い相同性百分率を生じさせるアライメント)により実施されてもよい。参照も、例えばAltschul et al.,1997,Nucl.Acids Res.25:3389により開示されるように、BLASTファミリーのプログラムに対して為されてもよい。配列解析の詳細な検討については、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons Inc,1994-1998,Chapter 15のUnit 19.3に見出すことができる。
【0365】
本明細書において使用される場合、「単離ポリヌクレオチド」とは、自然状態で隣接する配列から精製されたポリヌクレオチドを指し、例えば、通常では当該断片と隣接する配列から取り出されたDNA断片を指す。「単離ポリヌクレオチド」はさらに、自然界では存在せず、ヒトの手により作製された相補的DAN(cDNA)、組み換えDNA、または他のポリヌクレオチドも指す。特定の実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、合成ポリヌクレオチド、半合成ポリヌクレオチド、または組み換え源から取得された、もしくは誘導されたポリヌクレオチドである。
【0366】
様々な実施形態では、ポリヌクレオチドは、本明細書において予期されるポリペプチドをコードするmRNAを含有する。ある実施形態では、mRNAは、キャップ、1つまたは複数のヌクレオチド、そしてポリ(A)尾部を含有する。
【0367】
ポリヌクレオチドの方向性を説明する用語としては、5’(通常、遊離リン酸基を有するポリヌクレオチド末端)、および3’(通常、遊離ヒドロキシル(OH)基を有するポリヌクレオチド末端)が挙げられる。ポリヌクレオチド配列は、5~3’の方向で、または3’~5’の方向でアノテーションされることができる。DNAおよびmRNAに関しては、5’~3’鎖が、「センス」鎖、「プラス」鎖または「コーディング」鎖と指定される。その理由は、当該配列は、プレメッセンジャー(premRNA)の配列と[DNAのチミン(T)の代わりのRNAのウラシル(U)を除き]同一であるためである。DNAおよびmRNAに関し、相補的な3’~5’鎖は、RNAポリメラーゼにより転写された鎖であり、「鋳型」鎖、「アンチセンス」鎖、「マイナス」鎖または「非コーディング」鎖と指定される。本明細書において使用される場合、「逆方向」という用語は、3’~5’方向で記載された5’~3’配列を指し、または5’~3’の方向で記載された3’~5’配列を指す。
【0368】
「相補的」または「相補性」という用語は、塩基対形成の規則に関連するポリヌクレオチド(すなわちヌクレオチド配列)を指す。例えばDNA配列の5’ A G T C A T G 3’の相補鎖は、3’ T C A G T A C 5’である。後者の配列はしばしば、左側に5’末端、右側に3’末端を置いて、5’ C A T G A C T 3’のように逆相補として記載される。自身の逆相補と同一である配列は、パリンドローム配列と呼ばれる。相補性は「部分的」であってもよく、その場合、核酸の塩基の一部のみが、塩基対形成規則に従い合致する。または核酸の間に、「完全な」または「全体の」相補性があってもよい。
【0369】
さらに当業者であれば、遺伝子コードの縮重の結果として、本明細書に記載されるポリペプチドまたはそのバリアント断片をコードするヌクレオチド配列は多数存在することを認識するであろう。これらポリヌクレオチドの一部は、任意の天然遺伝子のヌクレオチド配列に対し、最小の相同性を担持する。とはいえコドン使用頻度の差異によって変化するポリヌクレオチドが予期され、特定の実施形態では例えばヒトおよび/または霊長類のコドン選択に最適化されたポリヌクレオチドが予期される。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、発現および/または安定性を目的としてコドン最適化される。さらに本明細書に提供されるポリヌクレオチド配列を含む遺伝子のアレルも使用され得る。アレルは、例えばヌクレオチドの欠失、付加および/または置換などの1つまたは複数の変異の結果として変化する内因性の遺伝子である。
【0370】
本明細書において使用される場合、、「核酸カセット」または「発現カセット」という用語は、RNAを発現し、その後にポリペプチドを発現することができるベクター中の遺伝子配列を指す。1つの実施形態では、核酸カセットは、対象遺伝子、例えば対象ポリヌクレオチドを含有する。別の実施形態では、核酸カセットは、1つまたは複数の発現制御配列、例えばプロモーター、エンハンサー、ポリ(A)配列、および例えば対象ポリヌクレオチドなどの対象遺伝子を含有する。ベクターは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個以上の核酸カセットを含有してもよい。核酸カセットは、ベクター内で位置的に、そして連続的に方向付けられる。それにより、カセット中の核酸はRNAに転写され得、必要な場合にはタンパク質またはポリペプチドへと翻訳され、形質転換細胞での活動に必要とされる適切な翻訳後修飾を受け、適切な細胞内コンパートメントに標的化することで、生物活性に適したコンパートメントへと移行され、または細胞外コンパートメントへと分泌されることができる。カセットは、ベクター内への即時の挿入に適合された3’末端および5’末端を有することが好ましく、例えば各末端に制限エンドヌクレアーゼ部位を有している。好ましい実施形態では、核酸カセットは、遺伝子障害を治療、予防または改善するために使用される治療用遺伝子の配列を含有する。カセットは、取り出され、そして単一ユニットとしてプラスミドまたはウイルスベクター内に挿入されることができる。
【0371】
ポリヌクレオチドは、対象ポリヌクレオチドを含む。本明細書において使用される場合、「対象ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書において予期される、ポリペプチドもしくは融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または阻害性ポリヌクレオチドの転写用の鋳型としての役割を果たすポリヌクレオチドを指す。
【0372】
本明細書において予期されるポリヌクレオチドは、本明細書において別段に記載されるように、または当分野に公知のように、それ自体のコード配列の長さに関わらず、例えばプロモーターおよび/またはエンハンサー、非翻訳領域(UTR)、シグナル配列、Kozak配列、ポリアデニル化シグナル、追加の制限酵素部位、多重クローニングサイト、内部リボソーム侵入部位(IRES)、リコンビナーゼ認識部位(例えばLoxP、FRTおよびAtt部位)、終止コドン、転写終止シグナル、および自己切断ポリペプチド、エピトープタグをコードするポリヌクレオチドなどの他のDNA配列と組み合わされて、その全体の長さを大幅に変化させてもよい。ゆえに、ほとんどすべての長さのポリヌクレオチド断片が採用され得ること、好ましくは全体の長さは調製の容易さ、および意図される組み換えDNAプロトコールでの用途により制限されることが予期される。
【0373】
ポリヌクレオチドは、当分野で公知および利用可能な様々な確立された技術のいずれかを使用して調製され、操作され、発現され、および/または送達されてもよい。所望のポリペプチドを発現するために、当該ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、適切なベクターに挿入されてもよい。
【0374】
ベクターの例示としては限定されないが、プラスミド、自己複製配列、および転移性因子、例えばSleeping Beauty、PiggyBacなどが挙げられる。
【0375】
ベクターの追加的な例示としては限定されないが、プラスミド、ファージミド、コスミド、人工染色体、例えば酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、またはP1由来人工染色体(PAC)、バクテリオファージ、例えばラムダファージまたはM13ファージ、および動物ウイルスが挙げられる。
【0376】
ベクターとして有用なウイルスの例示としては限定されないが、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴型ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、およびパポバウイルス(例えばSV40)が挙げられる。
【0377】
発現ベクターの例示としては限定されないが、哺乳動物細胞での発現用のpClneoベクター(Promega社)、哺乳動物細胞でのレンチウイルス介在型遺伝子移送および発現用のpLenti4/V5-DEST(商標)、pLenti6/V5-DEST(商標)、およびpLenti6.2/V5-GW/lacZ(Invitrogen社)が挙げられる。特定の実施形態では、本明細書に開示されるポリペプチドのコード配列は、哺乳動物細胞でのポリペプチドの発現のために、そうした発現ベクター内にライゲートされてもよい。
【0378】
特定の実施形態では、ベクターは、エピソーム性ベクター、または染色体外で維持されるベクターである。本明細書において使用される場合、「エピソーム性」という用語は、宿主の染色体DNAに統合されることなく複製することができるベクターであり、宿主細胞の分裂により徐々に減少することがないということは、当該ベクターが染色体外で、またはエピソーム性に複製することも意味している。
【0379】
発現ベクター中に存在する「発現制御配列」、「制御因子」、または「制御性配列」は、ベクターの非翻訳領域であり、限定されないが、複製起源、選択カセット、プロモーター、エンハンサー、翻訳開始シグナル(Shine Dalgarno配列またはKozak配列)、イントロン、ポリアデニル化配列、5’および3’非翻訳領域が挙げられ、それらはすべて宿主の細胞タンパク質と相互作用して、転写と翻訳を実行する。そうした因子は、その強度および特異性を変化させてもよい。利用するベクターシステムおよび宿主に応じて、ユビキタスプロモーターおよび誘導性プロモーターをはじめとする任意の数の適切な転写因子および翻訳因子を使用してもよい。
【0380】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、限定されないが発現ベクターおよびウイルスベクターをはじめとするベクターを含有する。ベクターは、1つまたは複数の外因性、内因性、または異種の制御配列、例えばプロモーターおよび/またはエンハンサーを含有してもよい。「内因性制御配列」は、ゲノム中で所与の遺伝子と本来連結される配列である。「外因性制御配列」は、遺伝子操作の手段(すなわち分子生物学的技術)により、遺伝子に並置して置かれる配列であり、当該遺伝子の転写は、その連結したエンハンサー/プロモーターにより誘導される。「異種制御配列」は、遺伝子操作される細胞とは異なる種に由来する外因性配列である。「合成」制御配列は、特定の療法に対し最適なプロモーター活性および/またはエンハンサー活性を提供する、1つもしくは複数の内因性および/または外因性の配列の因子、ならびに/またはインビトロもしくはインシリコで決定された配列を含有してもよい。
【0381】
本明細書において使用される場合、「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼが結合するポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)の認識部位を指す。RNAポリメラーゼは、プロモーターに操作可能に連結されたポリヌクレオチドの転写を開始させる。特定の実施形態では、哺乳動物細胞で動作するプロモーターは、転写が開始される部位からおよそ25~30塩基上流に位置するAT-リッチ領域、および/または転写開始部位から70~80塩基上流に存在する別の配列であるCNCAAT領域を含有し、式中、Nは任意のヌクレオチドであり得る。
【0382】
「エンハンサー」という用語は、転写の強化を提供することができる配列を含むDNAセグメントを指し、一部の場合では、別の制御配列に対する方向性に関係なく機能することができる。エンハンサーは、プロモーター因子および/または他のエンハンサー因子と共同して、または付加的に機能することができる。「プロモーター/エンハンサー」という用語は、プロモーター機能とエンハンサー機能の両方を提供することができる配列を含むDNAセグメントを指す。
【0383】
「操作可能に連結された」という用語は、開示される構成要素が、その意図される様式で機能することが可能な関係性にある並置を指す。1つの実施形態では、当該用語は、核酸発現制御配列(例えばプロモーター、および/またはエンハンサー)と、第二のポリヌクレオチド配列、例えば対象ポリヌクレオチドの間の機能的結合を指し、この場合において当該発現制御配列は、第二の配列に対応する核酸の転写を誘導する。
【0384】
本明細書において使用される場合、「構造的発現制御配列」という用語は、操作可能に連結された配列の継続的な、または連続的な転写を可能にするプロモーター、エンハンサー、またはプロモーター/エンハンサーを指す。構造的発現制御配列は、様々な細胞型と組織型での発現を可能にする「ユビキタス」なプロモーター、エンハンサー、プロモーター/エンハンサーであってもよく、または限定的な細胞型および組織型での発現を可能にする、それぞれ「細胞特異的」、「細胞型特異的」、「細胞株特異的」、または「組織特異的」なプロモーター、エンハンサー、またはプロモーター/エンハンサーであってもよい。
【0385】
特定の実施形態における使用に適したユビキタス発現制御配列の例示としては限定されないが、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、ウイルス性シミアンウイルス40(SV40)(例えば初期または後期)、モロニ-マウス白血病ウイルス(MoMLV)LTRプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTR、単純ヘルペスウイルス(HSV)(チミジンキナーゼ)プロモーター、ワクシニアウイルス由来のH5、P7.5およびP11プロモーター、伸長因子1α(EF1a)プロモーター、early growth response 1(EGR1)、フェリチンH(FerH)、フェリチンL(FerL)、グリセルアルデヒド三リン酸脱水素酵素(GAPDH)、eukaryotic translation initiation factor 4A1(EIF4A1)、heat shock 70kDa protein 5(HSPA5)、heat shock protein 90kDa beta,member 1(HSP90B1)、heat shock protein 70kDa(HSP70)、β-キネシン(β-KIN)、ヒトROSA 26座位(Irions et al.,Nature Biotechnology 25,1477 - 1482(2007))、ユビキチンCプロモーター(UBC)、phosphoglycerate kinase-1(PGK)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン(CAG)プロモーター、β-アクチンプロモーターおよび骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサー、ネガティブ制御領域欠失型、dl587revプライマー結合部位置換(MND)U3プロモーター(Haas et al.Journal of Virology.2003;77(17):9439-9450)が挙げられる。
【0386】
1つの実施形態では、ベクターは、MNDU3プロモーターを含有する。
【0387】
1つの実施形態では、ベクターは、ヒトEF1a遺伝子の第一イントロンを含むEF1aプロモーターを含有する。
【0388】
1つの実施形態では、ベクターは、ヒトEF1a遺伝子の第一イントロンを欠くEF1aプロモーターを含有する。
【0389】
特定の実施形態では、細胞、細胞型、細胞株、または組織に特異的な発現制御配列を使用して、所望のポリヌクレオチド配列の細胞型特異的、細胞株特異的、または組織特異的な発現を実現することが望ましい場合もある(例えば特定のポリペプチドをコードする核酸を、細胞型、細胞株、または組織のサブセットにおいてのみ、または発生の特定のステージでのみ発現させる)。
【0390】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドを、T細胞特異的プロモーターで発現させることが望ましい場合がある。
【0391】
本明細書において使用される場合、「条件付き発現」とは、限定されないが、誘導性発現、抑制性発現、特定の生理学的状態、生物学的状態もしくは疾患状態にある細胞または組織での発現をはじめとする条件付き発現の任意の型を指す場合がある。この定義は、細胞型または組織に特異的な発現を除外することは意図されない。ある実施形態は、対象ポリヌクレオチドの条件付き発現を提供するものであり、例えば発現は、細胞、組織、生物体を、ポリヌクレオチドが発現される処理または条件、または対象ポリヌクレオチドにコードされるポリヌクレオチドの発現が増加もしくは減少する処理または条件に曝すことにより制御される。
【0392】
誘導性プロモーター/システムの例示としては限定されないが、ステロイド誘導性プロモーター、例えばグルココルチコイド受容体またはエストロゲン受容体をコードする遺伝子のプロモーター(対応するホルモンの処理で誘導可能)、メタロチオネインプロモーター(様々な重金属の処理で誘導可能)、MX-1プロモーター(インターフェロンで誘導可能)、「GeneSwitch」ミフェプリストン制御性システム(Sirin et al.,2003,Gene,323:67)、クミン酸塩(cumate)誘導性遺伝子スイッチ(WO 2002/088346)、テトラサイクリン依存性制御システムなどが挙げられる。誘導物質としては限定されないが、グルココルチコイド、エストロゲン、ミフェプリストン(RU486)、金属、インターフェロン、低分子、クミン酸塩、テトラサイクリン、ドキシサイクリンおよびそれらのバリアントが挙げられる。
【0393】
条件付き発現は、部位特異的なDNAリコンビナーゼを使用することでも実現することができる。ある実施形態では、ベクターは、部位特異的リコンビナーゼにより介在される組み換え用の部位を少なくとも1つ(典型的には2つ)含有する。本明細書において使用される場合、「リコンビナーゼ」または「部位特異的リコンビナーゼ」という用語は、除去的または統合的なタンパク質、酵素、補因子または関連タンパク質を含み、それらは1つまたは複数の組み換え部位(例えば2、3、4、5、7、10、12、15、20、30、50など)を含む組み換え反応に関与しており、野生型タンパク質(Landy,Current Opinion in Biotechnology 3:699-707(1993)を参照のこと)であってもよく、またはその変異型、誘導体(例えば組み換えタンパク質配列を含む融合タンパク質またはその断片)、断片、およびバリアントであってもよい。特定の実施形態における使用に適したリコンビナーゼの例示としては限定されないが、以下が挙げられる:Cre、Int、IHF、Xis、Flp、Fis、Hin、Gin、ΦC31、Cin、Tn3リゾルベース、TndX、XerC、XerD、TnpX、Hjc、Gin、SpCCE1、およびParA。
【0394】
ポリヌクレオチドは、様々な部位特異的リコンビナーゼのいずれかに対する組み換え部位を1つまたは複数含有してもよい。部位特異的リコンビナーゼの標的部位は、例えばレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターなどのベクターの統合に必要とされる任意の部位に追加されることを理解されたい。本明細書において使用される場合、「組み換え配列」、「組み換え部位」または「部位特異的組み換え部位」という用語は、リコンビナーゼが認識し、結合する特定の核酸配列を指す。
【0395】
例えばCreリコンビナーゼの1つの認識部位は、loxPであり、これは、8塩基対のコア配列に隣接する13塩基対の逆位反復(リコンビナーゼ結合部位としての役割を果たす)を2つ含む34塩基対の配列である(Sauer,B.,Current Opinion in Biotechnology 5:521-527(1994)の
図1を参照のこと)。loxP部位の他の例としては限定されないが、lox511(Hoess et al.,1996;Bethke and Sauer,1997)、lox5171(Lee and Saito,1998)、lox2272(Lee and Saito,1998)、m2(Langer et al.,2002)、lox71(Albert et al.,1995)、およびlox66(Albert et al.,1995)が挙げられる。
【0396】
FLPリコンビナーゼの適切な認識部位としては限定されないが、以下が挙げられる:FRT(McLeod,et al.,1996)、F1、F2、F3(Schlake and Bode,1994)、F4、F5(Schlake and Bode,1994)、FRT(LE)(Senecoff et al.,1988)、FRT(RE)(Senecoff et al.,1988)。
【0397】
認識配列の他の例は、attB配列、attP配列、attL配列、およびattR配列であり、これらはリコンビナーゼ酵素のλインテグラーゼ、例えばphi-c31に認識される。φC31 SSRは、異型部位のattB(34bpの長さ)とattP(39bpの長さ)の間でのみ組み換えを介在する(Groth et al.,2000)。attBとattPはそれぞれ細菌ゲノムとファージゲノム上のファージインテグラーゼの結合部位に由来しており、両方とも、φC31ホモ二量体に結合されると推定される不完全な逆位反復を含有する(Groth et al.,2000)。産生部位のattLおよびattRは、次のφC31介在組み換えでは事実上、不活性となるため(Belteki et al.,2003)、反応は不可逆的なものとなる。挿入の触媒について、attB担持DNAをゲノムattP部位に挿入することは、ゲノムattB部位にattPを挿入するよりも簡単であることが判明している(Thyagarajan et al.,2001;Belteki et al.,2003)。そのため典型的には、attP担持「ドッキング部位」を規定の座位に相同組み換えし、次いで挿入用のattB担持入配列と組み合わせる戦略が取られている。
【0398】
本明細書において使用される場合、「内部リボソーム侵入部位」または「IRES」とは、シストロン(タンパク質コード領域)の例えばATGなどの開始コドンに内部リボソームが直接侵入することを促進し、キャップ非依存性の遺伝子翻訳を生じさせる因子を指す。例えば、Jackson et al.,1990.Trends Biochem Sci 15(12):477-83)およびJackson and Kaminski.1995.RNA 1(10):985-1000を参照のこと。当業者により一般的に採用されるIRESの例としては、米国特許第 第6,692,736号に記載されるものが挙げられる。当分野に公知の「IRES」のさらなる例としては限定されないが、ピコルナウイルスから取得可能なIRES(Jackson et al.,1990)、および例えば免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(BiP)、血管内皮増殖因子(VEGF)などのウイルスmRNAまたは細胞mRNAを源として取得可能なIRES(Huez et al.1998.Mol.Cell.Biol.18(11):6178-6190)、線維芽細胞増殖因子2(FGF-2)、およびインスリン様増殖因子(IGFII)、翻訳開始因子のeIF4G、ならびに酵母転写因子のTFIIDおよびHAP4、Novagen社から販売されている脳心筋炎ウイルス(EMCV)(Duke et al.,1992.J.Virol 66(3):1602-9)およびVEGF IRES(Huez et al.,1998.Mol Cell Biol 18(11):6178-90)が挙げられる。IRESは、ピコルナウイルス科、ジシストロウイルス科、およびフラビウイルス科の種のウイルスゲノム、ならびにHCV、フレンドマウス白血病ウイルス(FrMLV)、およびモロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)においても報告されている。
【0399】
1つの実施形態では、本明細書において予期されるポリヌクレオチドに使用されるIRESは、EMCV IRESである。
【0400】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、コンセンサスKozak配列を有し、所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する。本明細書において使用される場合、「Kozak配列」という用語は、リボソーム小サブユニットへのmRNAの初期結合を大きく促進し、翻訳を増加させる短いヌクレオチド配列を指す。コンセンサスKozak配列は、(GCC)RCCATGG(配列番号43)であり、式中、Rはプリン(AまたはG)である(Kozak,1986.Cell.44(2):283-92、およびKozak,1987.Nucleic Acids Res.15(20):8125-48)。
【0401】
異種核酸転写物の効率的な終止とポリアデニル化を誘導する因子は、異種遺伝子の発現を増加させる。転写終止シグナルは、一般的にポリアデニル化シグナルの下流に存在する。特定の実施形態では、ベクターは、発現されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの3’側にポリアデニル化配列を含有する。本明細書において使用される場合、「ポリA部位」または「ポリA配列」という用語は、RNAポリメラーゼIIによる初期RNA転写物の終止とポリアデニル化の両方を誘導するDNA配列を示す。ポリアデニル化配列は、ポリA尾部をコード配列の3’末端に付加することでmRNAの安定性を促進し、それにより翻訳効率の増強に寄与することができる。切断およびポリアデニル化は、RNA中のポリ(A)配列により誘導される。哺乳動物のプレmRNAのコアポリ(A)配列は、切断-ポリアデニル化部位に隣接する2つの認識因子を有する。典型的には、ほぼ不変のAAUAAA六量体が、U残基またはGU残基が豊富な可変因子の上流に、20~50ヌクレオチド存在する。初期転写物の切断はこれら2つの因子の間で発生し、5’切断産物に最大で250個のアデノシンが付加される。特定の実施形態では、コアポリ(A)配列は、最良のポリA配列(例えば、AATAAA、ATTAAA、AGTAAA)である。特定の実施形態では、ポリ(A)配列は、SV40のポリA配列、ウシ成長ホルモンポリA配列(BGHpA)、ウサギβ-グロビンポリA配列(rβgpA)、それらのバリアント、または当分野に公知の別の適切な異種または内因性ポリA配列である。特定の実施形態では、ポリ(A)配列は、合成である。
【0402】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチド、またはポリヌクレオチドを保有する細胞は、直接的な毒性および/または非制御増幅のリスクを減少させるための誘導性自殺遺伝子をはじめとする自殺遺伝子を利用する。特定の実施形態では、自殺遺伝子は、ポリヌクレオチドを保有する宿主、または細胞に対して免疫原性ではない。使用され得る自殺遺伝子の例は、カスパーゼ-9またはカスパーゼ-8またはシトシンデアミナーゼである。カスパーゼ-9は、二量体化の特定の化学誘導物質(CID)を使用して活性化され得る。
【0403】
ある実施形態では、ポリヌクレオチドは、例えばT細胞などの免疫エフェクター細胞がインビボでのネガティブ選択に感受性となる遺伝子セグメントを含有する。「ネガティブ選択」とは、注入された細胞が、個々のインビボ条件における変化の結果として排除され得ることを意味する。ネガティブ選択的表現型は、例えば化合物などの投与剤に対する感受性に寄与する遺伝子の挿入から生じ得る。ネガティブ選択的遺伝子は当分野に公知であり、特に以下が挙げられる:ガンシクロビル感受性に寄与する単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-I TK)遺伝子(Wigler et al.,Cell 11:223,1977)、細胞ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子、細胞アデノシンホスホリボシルトランスフェラーゼ(APRT)遺伝子、および細菌シトシンデアミナーゼ(Mullen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.89:33(1992))。
【0404】
一部の実施形態では、例えばT細胞などの遺伝子改変免疫エフェクター細胞は、ポジティブマーカーをさらに含むポリヌクレオチドを含有し、それによりインビトロでネガティブ選択的表現型の細胞の選択が可能となる。ポジティブ選択的マーカーは、宿主細胞に導入されたときに優性表現型を発現する遺伝子であってもよく、それにより当該遺伝子を担持する細胞のポジティブ選択が可能となる。このタイプの遺伝子は当分野に公知であり、特に、ハイグロマイシンBに対する抵抗性に寄与するハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子(hph)、抗生物質G418に対する抵抗性をコードするTn5に由来するアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neoまたはaph)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子、アデノシンデアミナーゼ遺伝子(ADA)、および多剤耐性(MDR)遺伝子が挙げられる。
【0405】
1つの実施形態では、ポジティブ選択的マーカーとネガティブ選択的因子が結合され、ネガティブ選択的因子の消失は必然的にポジティブ選択的マーカーの消失も伴う。特定の実施形態では、ポジティブおよびネガティブの選択的マーカーは融合され、1つが消失すると義務的に他方の消失も生じる。上述の望ましいポジティブ選択およびネガティブ選択の特性の両方に寄与するポリペプチドを発現産物として生じさせる融合ポリヌクレオチドの例は、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼチミジンキナーゼ融合遺伝子(HyTK)である。この遺伝子の発現によって、インビトロでのポジティブ選択用のハイグロマイシンB抵抗性に寄与するポリペプチドと、インビボでのネガティブ選択用のガンシクロビル感受性に寄与するポリペプチドが生じる。さらに、S.D.LuptonによるPCT US91/08442およびPCT/US94/05601の公表特許を参照のこと。これらは優性ポジティブ選択的マーカーとネガティブ選択的マーカーを融合させることで得られる、二機能性選択的融合遺伝子の使用について記載している。
【0406】
好ましいポジティブ選択的マーカーは、hph、ncoおよびgptからなる群から選択される遺伝子に由来するものであり、好ましいネガティブ選択的マーカーは、シトシンデアミナーゼ、HSV-I TK、VZV TK、HPRT、APRTおよびgptからなる群から選択される遺伝子に由来するものである。特定の実施形態で予期される二機能性選択的融合遺伝子の例としては限定されないが、ポジティブ選択的マーカーが、hphまたはneoに由来し、ネガティブ選択的マーカーが、シトシンデアミナーゼまたはTK遺伝子または選択的マーカーに由来する。
【0407】
特定の実施形態では、1つまたは複数のポリペプチドまたは融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、例えばT細胞などの免疫エフェクター細胞に、非ウイルス法およびウイルス法の両方により導入され得る。特定の実施形態では、1つまたは複数のポリヌクレオチドの送達は、同じ方法もしくは異なる方法で提供されてもよく、および/または同じベクターもしくは異なるベクターで提供されてもよい。
【0408】
「ベクター」という用語は、本明細書において、もう1つの核酸分子を移送または輸送することができる核酸分子を指すために使用される。移送される核酸は一般的にベクター核酸分子に連結され、例えば挿入される。ベクターは、細胞中での自律的複製を誘導する配列を含んでもよく、または宿主細胞DNAへの統合が充分に可能となる配列を含んでもよい。特定の実施形態では、非ウイルスベクターを使用して、本明細書に予期される1つまたは複数のポリヌクレオチドがT細胞に送達される。
【0409】
非ウイルス性ベクターの例示としては限定されないが、プラスミド(例えばDNAプラスミドまたはRNAプラスミド)、トランスポゾン、コスミド、および細菌人工染色体が挙げられる。
【0410】
特定の実施形態で予期されるポリヌクレオチドの非ウイルス性の送達法の例示としては限定されないが、エレクトロポレーション法、ソノポレーション法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法、バイオリステック法、ウイロゾーム法、リポソーム法、免疫リポソーム法、ナノ粒子法、ポリカチオンまたは脂質:核酸複合体、ネイキッドDNA法、人工ビリオン、DEAE-デキストラン介在移送、遺伝子銃、およびヒートショックが挙げられる。
【0411】
特定の実施形態において予期される特定の実施形態での使用に適したポリヌクレオチド送達システムの例示としては限定されないが、Amaxa Biosystems,Maxcyte,Inc.、BTX Molecular Delivery Systems、およびCopernicus Therapeutics Inc.により提供されるシステムが挙げられる。リポフェクション試薬は市販されている(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体-認識リポフェクションに適したカチオン性脂質および中性脂質は、文献に記載されている。例えば、Liu et al.(2003)Gene Therapy.10:180-187;およびBalazs et al.(2011)Journal of Drug Delivery.2011:1-12を参照のこと。抗体標的化送達、細菌誘導送達、非生物ナノセル系送達も特定の実施形態において予期される。
【0412】
特定の実施形態において予期されるポリヌクレオチドを含有するウイルスベクターは、個々の患者に投与することにより、典型的には以下に記載されるように全身投与(例えば静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下または頭蓋内点滴)または局所適用することによりインビボで送達され得る。あるいはベクターは、例えば個々の患者から外殖された細胞(例えば動員(mobilized)末梢血、リンパ球、骨髄吸引液、組織生検等)またはユニバーサルドナーの造血幹細胞などの細胞に生体外で送達されてもよく、その後、患者に当該細胞を再移植してもよい。
【0413】
1つの実施形態では、本明細書において予期されるポリヌクレオチドを含むウイルスベクターは生物体に直接投与され、インビボで細胞に形質導入される。あるいはネイキッドDNAが投与されてもよい。投与は、分子を導入して最終的には血液または組織細胞と接触させるために通常に使用される経路のいずれかによるものであり、限定されないが、注射、点滴、局所適用およびエレクトロポレーションが挙げられる。そうした核酸の適切な投与方法は当業者に利用可能および公知であるが、複数の経路を使用して特定の組成物を投与してもよく、特定の経路はしばしば、別の経路よりも即時性で高い効果的反応を提供することができる。
【0414】
特定の実施形態において予期される特定の実施形態での使用に適したウイルスベクター系の例示としては限定されないが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス、およびワクシニアウイルスのベクターが挙げられる。
【0415】
様々な実施形態では、1つまたは複数のポリヌクレオチドが、当該1つまたは複数のポリヌクレオチドを含有する組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)とともに細胞に形質導入されることで、例えばT細胞などの免疫エフェクター細胞に導入される。
【0416】
AAVは、小さな(約26nm)の複製能力を欠いた、主にエピソーム性の非エンベロープウイルスである。AAVは、分裂細胞と非分裂細胞の両方に感染することができ、そのゲノムを宿主細胞のゲノムに組み込む場合がある。組み換えAAV(rAAV)は典型的には、最小で導入遺伝子とその制御配列、ならびに5’および3’のAAV逆位末端反復(ITR)から構成される。ITR配列は約145bpの長さである。特定の実施形態では、rAAVは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9またはAAV10から単離されたITRとカプシド配列を含有する。
【0417】
一部の実施形態では、キメラrAAVが使用される。ITR配列は、1つのAAV血清型から単離され、カプシド配列は別のAAV血清型から単離される。例えばAAV2由来のITR配列と、AAV6由来のカプシド配列を含むrAAVは、AAV2/AAV6と呼ばれる。特定の実施形態では、rAAVベクターは、AAV2由来のITRと、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9またはAAV10のいずれか1つに由来するカプシドタンパク質を含有してもよい。好ましい実施形態では、rAAVは、AAV2由来のITR配列と、AAV6由来のカプシド配列を含有する。好ましい実施形態では、rAAVは、AAV2由来のITR配列と、AAV2由来のカプシド配列を含有する。
【0418】
一部の実施形態では、操作法と選択法をAAVカプシドに行い、それらが対象細胞に形質導入される確率を高くしてもよい。
【0419】
rAAVベクターの構築、産生、および精製は、例えば米国特許第9,169,494号、第9,169,492号、第9,012,224号、第8,889,641号、第8,809,058号、および第8,784,799号に開示されている。それら文献はその全体で参照により本明細書に援用される。
【0420】
様々な実施形態では、1つまたは複数のポリヌクレオチドが、当該1つまたは複数のポリヌクレオチドを含有する例えばレンチウイルスなどのレトロウイルスとともに細胞に形質導入されることで、例えばT細胞などの免疫エフェクター細胞に導入される。
【0421】
本明細書において使用される場合、「レトロウイルス」という用語は、自身のゲノムRNAを直線的二本鎖DNAコピーへと逆転写し、次いで自身のゲノムDNAを宿主ゲノムへと共有結合的に統合させるRNAウイルスを指す。特定の実施形態における使用に適したレトロウイルスの例示としては限定されないが、以下が挙げられる:モロニーマウス白血病ウイルス(M-MuLV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(MoMSV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MuMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、ネコ白血病ウイルス(FLV)、スプマウイルス、フレンドマウス白血病ウイルス、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、およびラウス肉腫ウイルス(RSV)、およびレンチウイルス。
【0422】
本明細書において使用される場合、「レンチウイルス」という用語は、複合的なレトロウイルスの群(または属)を指す。レンチウイルスの例としては、以下が挙げられる:HIV(ヒト免疫不全ウイルス、HIV1型およびHIV2型を含む)、ビスナ-マエディウイルス(VMV)、ヤギ関節炎-脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)。1つの実施形態では、HIVをベースとしたベクター骨格(すなわちHIVシス作用性配列因子)が好ましい。
【0423】
様々な実施形態では、本明細書に予期されるレンチウイルスベクターは、1つまたは複数のLTR、および以下のアクセサリー因子のうちの1つまたは複数またはすべてを含有する:cPPT/FLAP、Psi(Ψ)パッケージシグナル、輸出因子(export element)、ポリ(A)配列。および任意で、本明細書において別段に検討されるように、WPREまたはHPRE、インシュレーター因子、選択的マーカー、および細胞自殺遺伝子を含有してもよい。
【0424】
特定の実施形態では、本明細書において予期されるレンチウイルスベクターは、統合的、または非統合的、または統合能力を欠くレンチウイルスであってもよい。本明細書において使用される場合、「統合能力を欠くレンチウイルス」または「IDLV」という用語は、ウイルスゲノムを宿主細胞ゲノムに統合させる能力を欠くインテグラーゼを有するレンチウイルスを指す。統合能力のないウイルスベクターは、特許出願WO2006/010834に記載されており、当該出願はその全体で参照により本明細書に援用される。
【0425】
インテグラーゼ活性の低下に適したHIV-1 pol遺伝子中の変異の例としては限定されないが、以下が挙げられる:H12N、H12C、H16C、H16V、S81 R、D41A、K42A、H51A、Q53C、D55V、D64E、D64V、E69A、K71A、E85A、E87A、D116N、D1161、D116A、N120G、N1201、N120E、E152G、E152A、D35E、K156E、K156A、E157A、K159E、K159A、K160A、R166A、D167A、E170A、H171A、K173A、K186Q、K186T、K188T、E198A、R199c、R199T、R199A、D202A、K211A、Q214L、Q216L、Q221 L、W235F、W235E、K236S、K236A、K246A、G247W、D253A、R262A、R263AおよびK264H。
【0426】
「長末端反復(LTR:long terminal repeat)」という用語は、レトロウイルスDNAの末端に位置する塩基対のドメインを指し、本来の配列コンテキストではLTRはダイレクトリピートであり、U3、RおよびU5領域を含有する。
【0427】
本明細書において使用される場合、「FLAP因子」、または「cPPT/FLAP」という用語は、その配列が、例えばHIV-1およびHIV-2などのレトロウイルスの中心ポリプリン帯(central polypurine tract)と中心末端配列(central termination sequences)(cPPTおよびCTS)を含む核酸を指す。適切なFLAP因子は、米国特許第6,682,907号およびZennou,et al.,2000,Cell,101:173に記載されている。
【0428】
本明細書において使用される場合、「パッケージシグナル」または「パッケージ配列」という用語は、レトロウイルスゲノム内に位置するpsi[Ψ]配列を指し、ウイルスカプシドまたはウイルス粒子内にウイルスRNAを挿入するために必要とされる。例えば、Clever et al.,1995.J.of Virology,Vol.69,No.4;pp.2101-2109を参照のこと。
【0429】
「輸出因子」という用語は、シス作用性の転写後制御因子を指し、核から細胞質へのRNA転写物の輸送を制御する。RNA輸出因子の例としては限定されないが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のrev反応性因子(RRE)(例えば、Cullen et al.,1991.J.Virol.65:1053;およびCullen et al.,1991.Cell 58:423を参照のこと)およびB型肝炎ウイルスの転写後制御因子(HPRE)が挙げられる。
【0430】
特定の実施形態では、ウイルスベクター中の異種配列の発現は、転写後制御因子、効率的ポリアデニル化部位、および任意で転写終止シグナルをベクターに組み込むことで増加する。様々な転写後制御因子が、タンパク質での異種核酸の発現を増加させることができる。例えばウッドチャック肝炎ウイルスの転写後制御因子(WPRE;Zufferey et al.,1999,J.Virol.,73:2886);B型肝炎ウイルス中に存在する転写後制御因子(HPRE)(Huang et al.,Mol.Cell.Biol.,5:3864);など(Liu et al.,1995,Genes Dev.,9:1766)が挙げられる。
【0431】
レンチウイルスベクターは、LTR改変を行い、いくつかの安全性強化因子を含有することが好ましい。「自己不活化」(SIN:self-inactivating)ベクターとは、複製能力を欠いたベクターを指し、例えば右(3’)LTRエンハンサー-プロモーター領域はU3領域として知られているが、この領域が(例えば欠失または置換により)改変されて、ウイルス複製の最初のラウンドを超えたウイルス転写が阻害される、レトロウイルスまたはレンチウイルスのベクターなどがある。自己不活化は、ベクターDNA、すなわちベクターRNAを生成するために使用されるDNAの3’LTRのU3領域に欠失を導入することで実現されることが好ましい。そうすることで、逆転写の間にこの欠失がプロウイルスDNAの5’LTRに移送される。特定の実施形態では、U3配列を充分に除去して、LTRの転写活性を大きく減少させる、または完全に無効化させることが望ましく、それにより形質導入された細胞において全長ベクターRNAの産生が大きく減少または無効化される。HIVをベースにしたレンチベクターの場合、そうしたベクターは、LTR TATA box(例えば-418~-18の欠失)の除去を含む大幅なU3欠失に耐用性があり、ベクター力価の大きな低下は伴わないことが判明している。
【0432】
追加的な安全性の向上は、5’LTRのU3領域を、ウイルス粒子の産生中にウイルスゲノムの転写を誘導する異種プロモーターと置き換えることで提供される。使用され得る異種プロモーターの例としては例えば、シミアンウイルス40(SV40)(例えば初期または後期)、サイトメガロウイルス(CMV)(例えば前初期)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、および単純ヘルペスウイルス(HSV)(チミジンキナーゼ)のプロモーターが挙げられる。
【0433】
本明細書において使用される場合、「偽型」または「偽型の」という用語は、そのウイルスエンベロープタンパク質が、好ましい特性を有する別のウイルスのエンベロープと置き換えられたウイルスを指す。例えば、HIVエンベロープタンパク質(env遺伝子にコードされる)は通常、CD4+提示細胞に対してウイルスを標的化するが、水泡性口炎ウイルスのG-タンパク質(VSV-G)エンベロープタンパク質でHIVを偽型化することで、広範な細胞にHIVが感染できるようになる。
【0434】
ある実施形態では、レンチウイルスベクターは、公知の方法により産生される。例えば、Kutner et al.,BMC Biotechnol.2009;9:10.doi:10.1186/1472-6750-9-10;Kutner et al.Nat.Protoc.2009;4(4):495-505.doi:10.1038/nprot.2009.22を参照のこと。
【0435】
本明細書に予期されるある特定の実施形態によると、ほとんど、またはすべてのウイルスベクターの骨格配列は、例えばHIV-1などのレンチウイルスに由来する。ただし、レトロウイルス配列および/またはレンチウイルス配列の多くの様々な源を使用してもよく、もしくは組み合わせてもよく、そして本明細書に記載される機能を実行するトランスファーベクターの能力を損なうことなく、特定のレンチウイルス配列に多くの置換および変更を含ませてもよいことを理解されたい。さらに、様々なレンチウイルスベクターが当分野に公知である。Naldini et al.,(1996a,1996b,and 1998);Zufferey et al.,(1997);Dull et al.,1998、米国特許第6,013,516号および第5,994,136号を参照のこと。それらの多くが、本明細書に予期されるウイルスベクターまたはトランスファープラスミドの産生に適合され得る。
【0436】
様々な実施形態では、1つまたは複数のポリヌクレオチドが、当該1つまたは複数のポリヌクレオチドを含有する組み換えアデノウイルスとともに細胞に形質導入されることで、免疫エフェクター細胞に導入される。
【0437】
アデノウイルス系のベクターは、多くの細胞型で非常に高い効率で形質導入を行うことができ、そして細胞分裂を必要としない。そうしたベクターを用いることで、高い力価と、高レベルの発現が得られる。このベクターは、比較的シンプルなシステムで大量に作製することができる。ほとんどのアデノウイルスベクターが、導入遺伝子がAd E1a、E1b、および/またはE3遺伝子を置換するよう操作されている。その結果、複製能力を欠くベクターはヒト293細胞中で増幅され、当該細胞が失われた遺伝子機能をトランスで供給する。Adベクターは、例えば肝臓、腎臓および筋肉中に存在する細胞などの非分裂細胞、分化細胞を含む、複数のタイプの組織にインビボで形質導入することができる。従来的なAdベクターは、大きな運搬能力を有している。
【0438】
複製能力を欠く現在のアデノウイルスベクターの作製と増幅は、293と呼ばれるユニークなヘルパー細胞株を利用する場合がある。この細胞株は、ヒト胚腎臓細胞からAd5 DNA断片により形質転換されたものであり、E1タンパク質を構造的に発現している(Graham et al.,1977)。アデノウイルスゲノムのE3領域は必須ではないため(Jones & Shenk,1978)、現在のアデノウイルスベクターは、293細胞の補助を得て、E1、D3またはその両方の領域に外来性DNAを担持している(Graham & Prevec,1991)。アデノウイルスベクターは、真核細胞遺伝子の発現(Levrero et al.,1991;Gomez-Foix et al.,1992)およびワクチン開発(Grunhaus & Horwitz,1992;Graham & Prevec,1992)に使用されている。組み換えアデノウイルスを様々な組織に投与する実験としては、気管滴下(Rosenfeld et al.,1991;Rosenfeld et al.,1992)、筋肉注射(Ragot et al.,1993)、末梢静脈注射(Herz & Gerard,1993)、および脳内への定位性接種(Le Gal La Salle et al.,1993)が挙げられる。臨床試験におけるAdベクターの使用例には、筋肉内注射を用いた抗腫瘍免疫を目的としたポリヌクレオチド療法が含まれる(Sterman et al.,Hum.Gene Ther.7:1083-9(1998))。
【0439】
様々な実施形態では、1つまたは複数のポリヌクレオチドが、当該1つまたは複数のポリヌクレオチドを含有する例えばHSV-1、HSV-2といった単純ヘルペスウイルスとともに細胞に形質導入されることで、免疫エフェクター細胞に導入される。
【0440】
成熟HSVビリオンは、152kbの直線型二本鎖DNA分子からなるウイルスゲノムを含む、エンベロープ型正20面体カプシドからなる。1つの実施形態では、HSVをベースとしたウイルスベクターは、1つもしくは複数の必須または非必須のHSV遺伝子が欠落している。1つの実施形態では、HSVをベースとしたウイルスベクターは、複製能力を欠く。殆どの複製能力を欠くHSVベクターは、1つまたは複数の中間-初期、初期、または後期のHSV遺伝子を除去するための欠失を含有し、複製が阻害されている。例えばHSVベクターは、以下からなる群から選択される前初期遺伝子が欠落していてもよい:ICP4、ICP22、ICP27、ICP47、およびそれらの組み合わせ。HSVベクターの利点は、後期ステージに入り、長期的にDNA発現を生じさせることができる能力と、最大25kbもの外因性DNAインサートを収容できる、その巨大なウイルスDNAゲノムである。HSV系のベクターは、例えば米国特許第5,837,532号、第5,846,782号および第5,804,413号、ならびに国際特許出願WO91/02788、WO96/04394、WO98/15637およびWO99/06583に記載されており、それらはその全体で参照により本明細書に援用される。
【0441】
G.遺伝子改変細胞
様々な実施形態では、細胞は、癌治療における使用を目的として、本明細書において予期されるDARIC免疫受容体、操作されたTCR、CAR、ゼータカイン、および/または融合タンパク質を発現するよう改変される。細胞は、本明細書において予期されるポリペプチドを発現するよう非遺伝的に改変されてもよく、または特定の好ましい実施形態では、細胞は、本明細書において予期されるポリペプチドを発現するよう遺伝的に改変されてもよい。本明細書において使用される場合、「遺伝子操作された」または「遺伝的に改変された」という用語は、DNAまたはRNAの形態の追加遺伝物質を、細胞中の総遺伝物質に加えることを指す。「遺伝的に改変された細胞」、「改変細胞」、および「再指向化細胞」という用語は、特定の実施形態において相互交換可能に使用される。
【0442】
特定の実施形態では、本明細書において予期されるDARIC免疫受容体ポリペプチドは、免疫エフェクター細胞に導入および発現され、TME中の免疫抑制性シグナルに対する細胞の抵抗性を改善する。特定の実施形態では、DARIC免疫受容体ポリペプチドは、操作された抗原受容体を細胞中で共発現することにより、標的細胞に再指向化された免疫エフェクター細胞に導入され、および発現される。
【0443】
「免疫エフェクター細胞」は、1つまたは複数のエフェクター機能(例えば細胞障害性の細胞殺傷活性、サイトカイン分泌、ADCCおよび/またはCDCの誘導など)を有する免疫系の任意の細胞である。本明細書において予期される免疫エフェクター細胞の例示は、Tリンパ球であり、特に細胞障害性T細胞(CTL;CD8+T細胞)、TIL、およびヘルパーT細胞(HTL;CD4+T細胞)である。1つの実施形態では、免疫エフェクター細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞を含む。1つの実施形態では、免疫エフェクター細胞は、ナチュラルキラーT(NKT)細胞を含む。免疫エフェクター細胞は、自己(self)または非自己(non-self、例えば同種、同系または異種)であってもよい。
【0444】
本明細書において使用される場合、「自己」とは、同じ対象に由来する細胞を指す。本明細書において使用される場合、「同種」とは、比較すると当該細胞と遺伝的に異なる同種の細胞を指す。本明細書において使用される場合、「同系」とは、比較すると当該細胞と遺伝的に同一である、異なる対象の細胞を指す。本明細書において使用される場合、「異種」とは、比較すると当該細胞と異なる種の細胞を指す。好ましい実施形態では、細胞は、自己である。
【0445】
本明細書において予期されるDARIC免疫受容体ポリペプチドの導入に適した免疫エフェクター細胞の例としては、Tリンパ球が挙げられる。「T細胞」または「Tリンパ球」という用語は、当分野において認識されており、胸腺細胞、未成熟Tリンパ球、成熟Tリンパ球、静止Tリンパ球、または活性化Tリンパ球を含むことが意図される。T細胞は、例えばTヘルパー1(Th1)細胞またはTヘルパー2(Th2)細胞などのTヘルパー(Th)細胞であってもよい。T細胞は、ヘルパーT細胞(HTL;CD4+T細胞)のCD4+T細胞、細胞障害性T細胞(CTL:CD8+T細胞)、CD4+CD8+T細胞、CD4-CD8-T細胞、またはT細胞の任意の他のサブセットであってもよい。特定の実施形態における使用に適したT細胞群の他の例としては、ナイーブT細胞およびメモリーT細胞が挙げられる。
【0446】
当業者に理解されるように、他の細胞も、本明細書において予期されるDARIC免疫受容体ポリペプチドを含む免疫エフェクター細胞として使用され得る。特定の実施形態では、免疫エフェクター細胞は、NK細胞、NKT細胞、好中球およびマクロファージも含む。免疫エフェクター細胞は、エフェクター細胞の前駆体も含み、この場合においてそうした前駆細胞は、インビボまたはインビトロで免疫エフェクター細胞に分化するように誘導されてもよい。したがって特定の実施形態では、免疫エフェクター細胞は、例えば臍帯血、骨髄または動員末梢血に由来する細胞のCD34+集団内に含有される造血幹細胞(HSC)などの免疫エフェクター細胞の前駆体を含み、それらは対象に投与されたときに成熟免疫エフェクター細胞へと分化し、またはインビトロで誘導されて成熟免疫エフェクター細胞へと分化してもよい。
本明細書において使用される場合、特定のキメラ受容体を含有するよう遺伝子操作された免疫エフェクター細胞は、「抗原特異的再指向化免疫エフェクター細胞」と呼称される場合がある。
【0447】
本明細書において使用される場合、「CD34+細胞」という用語は、その細胞表面上にCD34タンパク質を発現する細胞を指す。本明細書において使用される場合、「CD34」とは、細胞-細胞付着因子として作用することが多く、リンパ節へのT細胞の侵入に関与する細胞表面糖タンパク質(例えばシアロムチンタンパク質)を指す。CD34+細胞集団は、造血幹細胞(HSC)を含有し、HSCは患者に投与されたときに分化し、T細胞、NK細胞、NKT細胞、好中球、および単球/マクロファージ系統の細胞を含むすべての造血系の元となる。
【0448】
本明細書において予期される1つまたは複数のDARIC免疫受容体ポリペプチドを発現する免疫エフェクター細胞を作成する方法は、特定の実施形態に提示される。1つの実施形態では、方法は、個体から単離された免疫エフェクター細胞にトランスフェクトまたは形質導入することを含み、それにより当該1つもしくは複数の核酸および/またはベクターまたはそれらの組み合わせを含む免疫エフェクター細胞が、本明細書において予期される1つまたは複数のDARIC免疫受容体ポリペプチドを含有する。1つの実施形態では、方法は、個体から単離された免疫エフェクター細胞にトランスフェクトまたは形質導入することを含み、それにより当該免疫エフェクター細胞が、本明細書において予期される1つまたは複数のDARIC免疫受容体ポリペプチド、および操作された抗原受容体を発現する。ある実施形態では、免疫エフェクター細胞は、個体から単離され、および遺伝子改変され、インビトロでさらなる操作は受けない。次いでそうした細胞を当該個体に直接再投与してもよい。さらなる実施形態では、免疫エフェクター細胞は最初にインビトロで活性化され、そして刺激されて増殖し、その後、遺伝子改変される。これに関し、免疫エフェクター細胞は、遺伝子改変される前、および/または後に培養され得る。
【0449】
特定の実施形態では、本明細書に記載される免疫エフェクター細胞のインビトロ操作または遺伝子改変の前に、対象から細胞源が取得される。特定の実施形態では、改変免疫エフェクター細胞は、T細胞を含有する。
【0450】
T細胞は、限定されないが、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位の組織、腹水、胸水、脾臓組織および腫瘍を含む多くの源から取得されることができる。ある実施形態では、T細胞は、例えばFICOLL(商標)分離などの沈殿作用といった当業者に公知の任意の数の技術を使用して、対象から採取された血液ユニットから取得されることができる。
【0451】
他の実施形態では、単離された、または精製されたT細胞群が使用される。一部の実施形態では、PBMCの単離後、細胞障害性Tリンパ球とヘルパーTリンパ球の両方を、活性化、拡張および/もしくは遺伝子改変の前または後に、ナイーブT細胞亜群、メモリーT細胞亜群およびエフェクターT細胞亜群へとソーティングしてもよい。
1つの実施形態では、単離された、または精製されたT細胞群は、限定されないが、CD3+、CD4+、CD8+またはそれらの組み合わせを含むマーカーのうちの1つまたは複数を発現する。
【0452】
ある実施形態では、T細胞が個体から単離され、インビトロで最初に活性化および刺激されて増殖し、その後に改変されて、1つまたは複数のDARIC免疫受容体ポリぺプチドを発現する。
【0453】
T細胞組成物の充分な治療投与量を獲得するために、しばしばT細胞に、1ラウンドまたは複数ラウンドの刺激、活性化および/または拡張が行われる。T細胞は一般的に、例えば米国特許第6,352,694号、第6,534,055号、第6,905,680号、第6,692,964号、第5,858,358号、第6,887,466号、第6,905,681号、第7,144,575号、第7,067,318号、第7,172,869号、第7,232,566号、第7,175,843号、第5,883,223号、第6,905,874号、第6,797,514号、および第6,867,041号に記載される方法を使用して活性化および拡張され得る。それら特許はその全体で参照により本明細書に援用される。特定の実施形態では、T細胞は、約6時間、約12時間、約18時間、または約24時間活性化および拡張され、その後に1つまたは複数のDARIC免疫受容体ポリペプチドをコードするベクターまたはポリヌクレオチドが導入される。任意で、本明細書において予期される操作された抗原受容体と組み合わされる。
【0454】
1つの実施形態では、T細胞は、改変されるときに同時に活性化される。
【0455】
様々な実施形態では、免疫エフェクター細胞の作製方法は、T細胞を含む細胞群を活性化させること、および当該T細胞群を拡張させることを含む。T細胞活性化は、T細胞のTCR/CD3複合体を介して一次刺激シグナルを提供し、そして例えばCD28などのアクセサリー分子を介して二次共刺激シグナルを提供することにより達成され得る。
【0456】
TCR/CD3複合体は、T細胞と、適切なCD3結合剤、例えばCD3リガンドや抗CD3モノクローナル抗体を接触させることにより刺激されてもよい。CD3抗体の例示としては限定されないが、OKT3、G19-4、BC3および64.1が挙げられる。
【0457】
TCR/CD3複合体を介して提供される一次刺激シグナルに加えて、T細胞反応の誘導には二次的な共刺激性シグナルを必要とする。特定の実施形態では、CD28結合剤を使用して、共刺激性シグナルを提供してもよい。CD28結合剤の例示としては限定されないが、天然CD28リガンド、例えばCD28に対する天然リガンド(例えばタンパク質のB7ファミリーのメンバー、例えばB7-1(CD80)およびB7-2(CD86);および抗CD28モノクローナル抗体、またはCD28分子と交差結合することができるその断片、例えばモノクローナル抗体の9.3、B-T3、XR-CD28、KOLT-2、15E8、248.23.2、およびEX5.3D10が挙げられる。
【0458】
1つの実施形態では、一次刺激シグナルを提供する分子、例えばTCR/CD3複合体を介して刺激を提供する分子、および共刺激分子は、同じ表面に連結される。
【0459】
ある実施形態では、刺激シグナルおよび共刺激シグナルを提供する結合剤は、細胞表面上に局在する。これは、細胞に、結合剤をコードする核酸を、細胞表面上での発現に適した形態でトランスフェクトすることにより、もしくは形質導入することにより、または結合剤と細胞表面を連結させることにより、実現され得る。
【0460】
別の実施形態では、一次刺激シグナルを提供する分子、例えばTCR/CD3複合体を介して刺激を提供する分子、および共刺激分子は、抗原提示細胞上に提示される。
【0461】
1つの実施形態では、一次刺激シグナルを提供する分子、例えばTCR/CD3複合体を介して刺激を提供する分子、および共刺激分子は、別の表面上に提示される。
【0462】
ある実施形態では、刺激シグナルおよび共刺激シグナルを提供する結合剤のうちの1つは、可溶性であり(溶液で提供される)、他方の剤は、1つまたは複数の表面上に提供される。
【0463】
特定の実施形態では、刺激シグナルおよび共刺激シグナルを提供する結合剤は両方とも可溶型で提供される(溶液で提供される)。
【0464】
様々な実施形態では、本明細書において予期されるT細胞を作製する方法は、T細胞を、抗CD3抗体および抗CD28抗体を用いて活性化することを含む。
【0465】
1つの実施形態では、本明細書において予期される方法により活性化されたT細胞の拡張は、T細胞を含む細胞群を、数時間(約3時間)~約7日~約28日、またはその間の任意の整数の時間数の間、培養することをさらに含む。別の実施形態では、T細胞組成物は、14日間培養されてもよい。特定の実施形態では、T細胞は、約21日間培養される。別の実施形態では、T細胞組成物は、約2~3日間培養される。数サイクルの刺激/活性化/拡張が望ましい場合もあり、それによりT細胞の培養時間は60日間以上になる可能性もある。
【0466】
特定の実施形態では、T細胞培養に適した条件は、適切な培地(例えばMinimal Essential MediaまたはRPMI Media 1640またはX-vivo 15(Lonza社))、および増殖と活性に必要な1つまたは複数の因子が含まれ、限定されないが血清(例えばウシ胎児血清またはヒト血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-γ、IL-4、IL-7、IL-21、GM-CSF、IL-10、IL-12、IL-15、TGFβおよびTNF-αまたは当業者に公知の細胞増殖に適した任意の他の添加物が挙げられる。
【0467】
細胞培養培地のさらなる例示としては限定されないが、RPMI 1640、Clicks、AIM-V、DMEM、MEM、a-MEM、F-12、X-Vivo 15、およびX-Vivo 20、Optimizerが挙げられ、それらにアミノ酸、ピルビン酸ナトリウムおよびビタミン類が添加され、無血清であるか、または適切な量の血清(または血漿)もしくは所定のホルモンの組み合わせ、および/またはT細胞の増殖と拡張に充分な量のサイトカインが補充される。
【0468】
例えばペニシリンやストレプトマイシンなどの抗生物質は、実験培養でのみ含有され、対象への注入用の細胞培養には含有されない。標的細胞は、例えば適切な温度(例えば37℃)および大気(例えば空気に5%CO2を加える)など、増殖をサポートするために必要な条件下で維持される。
【0469】
特定の実施形態では、PBMC、または単離T細胞は、通常はビーズまたは他の表面上に結合された例えば抗CD3抗体および抗CD28抗体などの刺激剤および共刺激剤と、例えばIL-2、IL-7および/またはIL-15などの適切なサイトカインを含む培養培地中で、接触する。
【0470】
他の実施形態では、K562細胞、U937細胞、721.221細胞、T2細胞およびC1R細胞を操作して、様々な共刺激分子およびサイトカインの安定的な発現と分泌を誘導することにより、人工APC(aAPC)が作製される。特定の実施形態では、K32 aAPCまたはU32 aAPCを使用して、AAPC細胞表面上の1つまたは複数の抗体系刺激分子の提示が誘導される。T細胞群は、限定されないがCD137L(4-1BBL)、CD134L(OX40L)および/またはCD80もしくはCD86を含む様々な共刺激分子を発現するaAPCにより拡張されてもよい。最終的に、aAPCは、遺伝子改変されたT細胞の拡張と、CD8αT細胞上のCD28発現の維持に効率的なプラットフォームを提供する。WO03/057171およびUS2003/0147869に提示されるaAPCは、その全体で参照により本明細書に援用される。
【0471】
特定の実施形態では、1つまたは複数のDARIC免疫受容体ポリペプチドおよび操作された抗原受容体をコードするポリヌクレオチドが、T細胞群に導入される。特定の実施形態では、1つまたは複数のDARIC免疫受容体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、操作された抗原受容体を発現するT細胞群に導入される。ポリヌクレオチドは、マイクロインジェクション、トランスフェクション、リポフェクション、ヒートショック、エレクトロポレーション、形質導入、遺伝子銃、マイクロインジェクション、DEAE-デキストラン介在移送などによりT細胞に導入されてもよい。
【0472】
好ましい実施形態では、ポリヌクレオチドは、ウイルス形質導入によりT細胞に導入される。
【0473】
免疫エフェクター細胞またはCD34+細胞へのポリヌクレオチドの導入に適したウイルスベクターシステムの例示としては限定されないが、遺伝子移送用のアデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルスのベクターが挙げられる。
【0474】
1つの実施形態では、ポリヌクレオチドは、AAV形質導入によりT細胞に導入される。
【0475】
1つの実施形態では、ポリヌクレオチドは、レトロウイルス形質導入によりT細胞に導入される。
【0476】
1つの実施形態では、ポリヌクレオチドは、レンチウイルス形質導入によりT細胞に導入される。
【0477】
1つの実施形態では、ポリヌクレオチドは、アデノウイルス形質導入によりT細胞に導入される。
【0478】
1つの実施形態では、ポリヌクレオチドは、単純ヘルペスウイルス形質導入によりT細胞に導入される。
【0479】
1つの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ワクシニアウイルス形質導入によりT細胞に導入される。
【0480】
H.組成物および製剤
本明細書において予期される組成物は、1つまたは複数のポリペプチド、ポリヌクレオチド、それらを含むベクター、遺伝子改変された免疫エフェクター細胞、架橋因子などを含んでもよい。組成物としては限定されないが、医薬組成物が挙げられる。「医薬組成物」とは、細胞または動物への投与に対し、薬学的に許容可能な溶液または生理学的に許容可能な溶液中で、単独で、または1つもしくは複数の他の治療モダリティと併用されて製剤化される組成物を指す。所望の場合には、組成物は、例えばサイトカイン、増殖因子、ホルモン、低分子、化学療法剤、プロドラッグ、薬剤、抗体、または他の様々な薬学的に活性な剤などの他の剤も同様に併用されて投与され得ることも理解されたい。事実上、組成物に含有され得る他の構成要素に制限はないが、追加される剤は、意図される療法を送達する組成物の能力に有害な影響を与えないものとする。
【0481】
本明細書において、「薬学的に許容可能」という文言は、適切な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わずにヒトおよび動物の組織と接触して使用することに適し、合理的な利益/リスク比に見合った、それら化合物、物質、組成物および/または剤型を指すために採用される。
【0482】
「薬学的に許容可能な担体」という用語は、架橋因子、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、それらを含むベクター、または遺伝子改変された免疫エフェクター細胞と一緒に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルを指す。薬学的な担体の例示は、例えば細胞培養培地、水および油などの滅菌された液体であってもよく、石油、動物、植物または合成を起源とするものが挙げられ、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱物油、ごま油などがある。生理食塩水およびブドウ糖液およびグリセロール溶液も、特に注射用溶液に関して液性担体として採用され得る。特定の実施形態における適切な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、白墨、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、滑石、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。任意の従来的な媒または剤が、活性成分と不適合である場合を除き、治療組成物中でのその使用が予期される。補足的な活性成分も、組成物内に組み込まれ得る。
【0483】
1つの実施形態では、薬学的に許容可能な担体を含む組成物が、対象への投与に適している。特定の実施形態では、担体を含む組成物は、例えば血管内(静脈内または動脈内)投与、腹腔内投与または筋肉内投与などの非経口投与に適している。特定の実施形態では、薬学的に許容可能な担体を含む組成物は、脳室内投与、髄腔内投与またはくも膜腔内投与に適している。薬学的に許容可能な担体としては、滅菌水溶液、細胞培養培地または分散液が挙げられる。薬学的に活性な物質に対する、そのような媒および剤の使用は、当分野に公知である。任意の従来的な媒または剤が、架橋因子、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、それらを含むベクター、または遺伝子改変された免疫エフェクター細胞と不適合である場合を除き、医薬組成物におけるそれらの使用が予期される。
【0484】
特定の実施形態では、本明細書において予期される組成物は、遺伝子改変されたT細胞と、薬学的に許容可能な担体を含む。本明細書において予期される細胞をベースとした組成物を含有する組成物は、腸内投与または非経口投与により別個に投与されてもよく、または所望の治療目的を果たすための他の適切な化合物と併用して投与されてもよい。
【0485】
特定の実施形態では、本明細書において予期される組成物は、架橋因子と、薬学的に許容可能な担体を含む。
【0486】
薬学的に許容可能な担体は、充分に高い純度のものでなくてはならず、そして治療されるヒト対象への投与に適するよう、充分に毒性が低いものでなければならない。さらに組成物の安定性を維持または増加させなければならない。薬学的に許容可能な担体は、液体または固体であってもよく、予定される投与様式を踏まえ、組成物の他の構成要素と混合されたときに、望ましい体積、濃度を提供するよう選択される。例えば薬学的に許容可能な担体は、限定されないが、結合剤(例えば前ゼラチン化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、充填剤(例えばラクトースまたは他の糖類、微結晶セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレート、リン酸水素カルシウムなど)、潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、滑石、シリカ、コロイド状二酸化シリコン、ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、水素化植物油、トウモロコシデンプン、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど)、崩壊剤(例えば、デンプン、グリコール酸ナトリウムデンプンなど)、または湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウムなど)であってもよい。本明細書において予期される組成物のための他の適切な薬学的に許容可能な担体としては限定されないが、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、滑石、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0487】
そうした担体溶液は、緩衝剤、希釈剤および他の適切な添加剤を含んでもよい。本明細書において使用される場合、「緩衝剤」という用語は、その化学組成が、pHに大きな変化を与えることなく酸または塩基を中和する溶液または液体を指す。本明細書において予期される緩衝剤の例としては限定されないが、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、リンゲル溶液、5%ブドウ糖溶液(D5W)、生理食塩水(0.9% NaCl)が挙げられる。
【0488】
薬学的に許容可能な担体は、組成物のpHを約7に維持するために充分な量で存在してもよい。あるいは組成物は、約6.8~約7.4の範囲のpH、例えば6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3および7.4のpHを有する。さらに別の実施形態では、組成物は約7.4のpHを有する。
【0489】
本明細書において予期される組成物は、非毒性の薬学的に許容可能な培地を含有してもよい。組成物は、懸濁液であってもよい。本明細書において使用される場合、「懸濁液」という用語は、細胞が固形支持体に結合しない非接着性の状態を指す。例えば懸濁液として維持される細胞は、攪拌またはかき混ぜられてもよく、例えば培養皿などの支持体に付着しない。
【0490】
特定の実施形態では、本明細書において予期される組成物は、懸濁液で製剤化され、この場合、改変T細胞は、受容可能な液体培地または溶液、例えば生理食塩水中または無血清培地中に、静脈(IV)バッグなどにおいて分散される。受容可能な希釈剤としては限定されないが、水、PlasmaLyte、リンゲル溶液、等張塩化ナトリウム溶液(生理食塩水)、無血清細胞培養培地、および極低温保存に適した培地、例えばCryostor(登録商標)培地が挙げられる。
【0491】
ある実施形態では、薬学的に許容可能な担体は、ヒトまたは動物を起源とする天然タンパク質を実質的に含まず、改変T細胞群を含む組成物の保存に適している。治療用組成物は、ヒト患者への投与が意図されており、そのため例えばウシ血清アルブミン、ウマ血清およびウシ胎児血清などの細胞培養成分を実質的に含まない。
【0492】
一部の実施形態では、組成物は、薬学的に許容可能な細胞培養培地中で製剤化される。そうした組成物は、ヒト対象への投与に適している。特定の実施形態では、薬学的に許容可能な細胞培養培地は、無血清培地である。
【0493】
無血清培地は、血清含有培地を超える利点をいくつか有しており、シンプルでより明白な組成、汚染物質量の低下、感染性実体の源となる可能性の排除、コスト低下が挙げられる。様々な実施形態では、無血清培地は、動物質を含まず、任意で無タンパク質であってもよい。任意で培地はバイオ医薬品的に受容可能な組み換えタンパク質を含有してもよい。「動物質を含まない」培地とは、構成要素が非動物源に由来する培地を指す。組み換えタンパク質は、動物質を含まない培地中で動物性タンパク質を置き換え、その栄養素は合成、植物または微生物の源から取得される。「タンパク質を含まない」培地は、対照的に、実質的にタンパク質を含まないと規定される。
【0494】
特定の組成物において使用される無血清培地の例示としては限定されないが、QBSF-60(Quality Biological,Inc.)、StemPro-34(Life Technologies社)、およびX-VIVO 10が挙げられる。
【0495】
好ましい実施形態では、改変T細胞を含む組成物は、PlasmaLyte中で製剤化される。
【0496】
様々な実施形態では、改変T細胞を含む組成物は、凍結保存培地中で製剤化される。例えば凍結保存剤を含む凍結保存培地を使用して、融解後に高い細胞活性成績を維持してもよい。特定の組成物において使用される凍結保存培地の例示としては限定されないが、CryoStor CS10、CryoStor CS5、およびCryoStor CS2が挙げられる。
【0497】
1つの実施形態では、組成物は、50:50のPlasmaLyte AとCryoStor CS10を含む溶液中で製剤化される。
【0498】
特定の実施形態では、組成物は、マイコプラズマ、エンドトキシンおよび微生物汚染を実質的に含まない。エンドトキシンに関して「実質的に含まない」とは、生物製剤に関してFDAにより許可されるよりも低い細胞投与量当たりのエンドトキシンであることを意味し、1日当たり、5EU/体重kgの総エンドトキシンであり、平均70kgのヒトに対し、総投与量の細胞当たり350EUである。特定の実施形態では、本明細書において予期される組成物は、約0.5 EU/mL~約5.0 EU/mL、または約0.5 EU/mL、1.0 EU/mL、1.5 EU/mL、2.0 EU/mL、2.5 EU/mL、3.0 EU/mL、3.5 EU/mL、4.0 EU/mL、4.5 EU/mL、もしくは5.0 EU/mLを含有する。
【0499】
特定の実施形態では、薬学的に許容可能な担体溶液の製剤は、当分野に公知であり、例えば腸内および非経口、例えば血管内、静脈内、動脈内、骨内、脳室内、大脳内、頭蓋内、髄腔内、クモ膜下腔内、および髄内の投与ならびに製剤を含む様々な治療レジメンにおける、本明細書に記載の特定の組成物の使用に関する適切な投薬レジメンおよび治療レジメンの開発も同様である。当業者であれば、本明細書において予期される特定の実施形態は、例えば薬学分野で公知であり、そして例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy,volume I and volume II. 22nd Edition.Edited by Loyd V.Allen Jr.Philadelphia,PA:Pharmaceutical Press;2012に記載される製剤などの他の製剤を含んでもよいことを理解するであろう。当該文献はその全体で参照により本明細書に援用される。
【0500】
特定の実施形態では、組成物は、本明細書において予期される1つまたは複数のDARIC免疫受容体ポリペプチドを発現するCAR T細胞を含む免疫エフェクター細胞の量を含む。本明細書において使用される場合、「量」という用語は、臨床結果を含む、有益な、もしくは所望の予防的結果または治療結果を実現するための本明細書に予期される1つまたは複数のDARIC免疫受容体ポリペプチドなどを含む細胞の「有効な量」または「有効量」を指す。
【0501】
「予防有効量」とは、所望の予防的結果を実現するのに有効な、本明細書に予期される1つまたは複数のDARIC免疫受容体ポリペプチドなどを含む細胞の量を指す。必ずではないが典型的には、予防的投与量は、疾患の早期ステージの前の対象、または早期ステージにある対象において使用されるため、予防的有効量は、治療的有効量よりも少ない。
【0502】
「治療有効量」とは、対象(例えば患者)を「治療する」のに有効な、本明細書に予期される1つまたは複数のDARIC免疫受容体ポリペプチドを含む細胞の量を指す。治療的な量が示されている場合、投与される組成物の正確な量は、患者(対象)の年齢、体重、腫瘍の大きさ、感染または転移の程度、および状態における個々の差を考慮し、医師により決定され得る。一般的に、本明細書に記載される免疫エフェクター細胞を含む医薬組成物は、102~1010細胞/体重kg、好ましくは105~106細胞/体重kgの用量で、当該範囲内のすべての整数値を含み、投与され得ると言える。細胞数は、組成物の意図される最終用途に依存し、組成物中に含有される細胞のタイプも同様である。本明細書において提示される用途に関し、細胞は一般的に、リットル以下の量であり、500mL以下、さらには250mLまたは100mL以下であり得る。ゆえに所望される細胞の密度は、多くの場合、106細胞/ml超であり、一般的には、107細胞/ml超、一般的には108細胞/ml以上である。臨床的に関連する免疫細胞数は、複数回の点滴に分けられてもよく、累積的には105、106、107、108、109、1010、1011または1012細胞以上となる。一部の実施形態では、具体的には注入される全細胞は特定の標的抗原へと再指向化されるため、106/キログラム(患者当たり106-1011)の範囲の小数の細胞が投与される場合がある。望ましい場合、治療は、本明細書に記載されるようにマイトージェン(例えばPHA)またはリンホカイン、サイトカインおよび/もしくはケモカイン(例えば、IFN-γ、IL-2、IL-12、TNF-アルファ、IL-18、およびTNF-ベータ、GM-CSF、IL-4、IL-13、Flt3-L、RANTES、MIP1αなど)の投与を含み、免疫反応の誘導を強化してもよい。
【0503】
一般的に、本明細書に記載されるように活性化および拡張された細胞を含む組成物は、免疫不全状態の個体で生じる疾患の治療および予防に活用されてもよい。特に本明細書において予期される組成物は、癌の治療に使用される。特定の実施形態では、免疫エフェクター細胞は、単独で投与されてもよく、または担体、希釈剤、賦形剤を併用した医薬組成物として、および/または例えばIL-2もしくは他のサイトカインもしくは他の細胞群などの他の構成要素を併用した医薬組成物として投与されてもよい。
【0504】
特定の実施形態では、医薬組成物は、遺伝子改変されたT細胞の量を、1つもしくは複数の薬学的または生理学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤と併用して含有する。
【0505】
特定の実施形態では、組成物は、本明細書に予期される1つまたは複数のDARIC免疫受容体ポリペプチドを含む免疫エフェクター細胞の有効量を、単独で、または1つもしくは複数の治療剤、例えば放射線療法、化学療法、移植、免疫療法、ホルモン療法、光線力学的療法などと併用して含有する。組成物は、抗生物質と併用して投与されてもよい。そうした治療剤は、例えば特定の癌などの本明細書に記載の特定の疾患状態に対する標準治療として当分野において承認されている場合がある。予期される治療剤の例としては、サイトカイン、成長因子、ステロイド、NSAIDs、DMARDs、抗炎症剤、化学療法剤、放射線療法、治療用抗体、または他の活性で補助的な剤が挙げられる。
【0506】
ある実施形態では、本明細書において予期される1つまたは複数のDARIC免疫受容体ポリペプチドをふくむ免疫エフェクター細胞を含む組成物は、任意の数の化学療法剤と併せて投与されてもよい。化学療法剤の例示としては、アルキル化剤、例えばチオテパおよびシクロホスファミド(CYTOXAN(商標));スルホン酸アルキル、例えばブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)およびウレドーパ(uredopa);アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミドおよびトリメチロロメラミンレジューム(trimethylolomelamine resume)を含むエチレンイミンおよびメチラメラミン;ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えば、アクラノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアミシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗薬、例えば、メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸アナログ、例えば、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリンアナログ、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FU;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎剤(anti-adrenal)、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補液(folic acid replenisher)、例えば、フォリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド(aldophosphamide glycoside);アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビスアントレン;エダトラキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジクオン;エルホミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(Ara-C);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology社、ニュージャージー州プリンストン)およびドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhne-Poulenc Rorer社、フランス、アントニー);クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金アナログ、例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸誘導体、例えばTargretin(商標)(ベキサロテン)、Panretin(商標)(アリトレチノイン);ONTAK(商標)(デニロイキン・ディフティトックス);エスペラミシン;カペシタビン;および上述のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸または誘導体が挙げられる。この定義には、癌に対するホルモンの作用を制御または阻害するように作用する抗ホルモン剤も含まれ、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害性4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン、およびトレミフェン(Fareston)をはじめとする抗エストロゲン;例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリドおよびゴセレリンなどの抗アンドロゲン;および上述のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸または誘導体がある。
【0507】
様々な他の治療剤が、本明細書に記載の組成物と併せて使用されてもよい。1つの実施形態では、本明細書において予期される1つまたは複数のDARIC免疫受容体ポリペプチドをふくむ免疫エフェクター細胞を含む組成物は、抗炎症剤と共に投与される。抗炎症剤または抗炎症薬としては限定されないが、ステロイドおよびグルココルチコイド(ベタメタゾン、ブデソニド、デキサメタゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン)、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、メトトレキサート、スルファサラジン、レフルノミド、抗TNF医薬、シクロホスファミドおよびミコフェノール酸塩を含む非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)が挙げられる。
【0508】
他のNSAIDsの例としては、イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、Cox-2阻害剤、例えばVIOXX(登録商標)(ロフェコキシブ)およびCELEBREX(登録商標)(セレコキシブ)、ならびにシアリレート(sialylate)からなる群から選択される。鎮痛剤の例は、アセトアミノフェン、オキシコドン、プロポルキシフェン(proporxyphene)塩酸塩のトラマドールからなる群から選択される。グルココルチコイドの例は、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロンまたはプレドニゾンからなる群から選択される。生体反応調節物質の例としては、細胞表面マーカー(例えばCD4、CD5など)に対して指向化された分子、サイトカイン阻害剤、例えばTNFアンタゴニスト(例えばエタネルセプト(ENBREL(登録商標))、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))およびインフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、ケモカイン阻害剤、ならびに付着分子阻害剤が挙げられる。生物反応調節物質には、モノクローナル抗体ならびに組み換え型分子が含まれる。DMARDsの例としては、アザチオプリン、シクロホスファミド、シクロスポリン、メトトレキサート、ペニシラミン、レフルノミド、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、Gold(経口(オーラノフィン)および筋肉内)およびミノサイクリンが挙げられる。
【0509】
本明細書において予期される1つまたは複数のDARIC免疫受容体ポリペプチドを含む改変T細胞との併用に適した治療用抗体の例示としては限定されないが、アテゾリズマブ、アベルマブ、バビツキシマブ、ベバシズマブ(アバスチン)、ビバツズマブ、ブリナツモマブ、コナツムマブ、ダラツムマブ、デュリゴツマブ(duligotumab)、ダセツズマブ、ダロツズマブ、デュルバルマブ、エロツズマブ(HuLuc63)、ゲムツズマブ、イブリツモマブ、インダツキシマブ、イノツズマブ、イピリムマブ、ロルボツズマブ、ルカツムマブ、ミラツズマブ、モキセツモマブ、ニボルマブ、オカラツズマブ、オファツムマブ、ペムブロリズマブ、リツキシマブ、シルツキシマブ、テプロツムマブ、およびウブリツキシマブが挙げられる。
【0510】
ある実施形態では、本明細書に記載の組成物は、サイトカインと併せて投与される。本明細書において使用される場合、「サイトカイン」とは、1つの細胞群により放出され、別の細胞に対して細胞間メディエーターとして作用するタンパク質の総称を意味する。そうしたサイトカインの例としては、リンホカイン、モノカインおよび従来的なポリペプチドホルモンである。サイトカインの中でも、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;サイロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;糖タンパク質ホルモン、例えば卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体形成ホルモン(LH);肝細胞増殖因子;線維芽細胞増殖因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;腫瘍壊死因子αおよびβ;ミュラー管抑制因子;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);神経成長因子、例えばNGFβ:血小板由来成長因子;形質転換成長因子(TGF)、例えばTGFαおよびTGFβ;インスリン様成長因子-Iおよび-II;エリスロポエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロン、例えばインターフェロンα、βおよびγ;コロニー刺激因子(CSF)、例えばマクロファージ-CSF(M-CSF);顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF);ならびに顆粒球-CSF(G-CSF);インターロイキン(IL)、例えばIL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-15;腫瘍壊死因子、例えばTNF-αまたはTNF-β;ならびにLIFおよびkitリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が挙げられる。本明細書において使用される場合、サイトカインという用語は、天然源由来のタンパク質、または組み換え細胞培養に由来するタンパク質、および天然配列サイトカインと均等な生物活性のタンパク質を含む。
【0511】
I.治療方法
本明細書において予期されるDARIC免疫受容体を含有する、CAR T細胞をはじめとする免疫エフェクター細胞は、癌、GVHD、感染性疾患、自己免疫性疾患、炎症性疾患、または免疫不全と関連する少なくとも1つの症状の予防、治療および改善における使用のための養子免疫療法、または予防する、治療する、もしくは改善するための養子免疫療法の改善された方法を提供する。
【0512】
本明細書において予期される操作された受容体およびDARIC免疫受容体を含有する免疫エフェクター細胞は、癌、GVHD、感染性疾患、自己免疫性疾患、炎症性疾患、または免疫不全の少なくとも1つの症状の予防、治療または改善における使用のための改善された医薬品を提供する。本明細書において使用される場合、「医薬品」という用語は、本明細書において予期される組成物および方法を使用して作製された改変細胞を指す。特定の実施形態では、医薬品は、遺伝子改変された免疫エフェクター細胞、操作された受容体を含むT細胞、またはDARIC免疫受容体を発現するようさらに改変されたCAR T細胞を含有する。さらに特定の実施形態において予期される改変T細胞は、T細胞消耗に対して抵抗性であり、腫瘍微小環境において高い耐久性と持続性を呈して、継続的な治療を導き得ることから、より安全で有効性が高い養子細胞療法を提供する。
【0513】
特定の実施形態では、操作された受容体およびDARIC免疫受容体を含む改変免疫エフェクター細胞またはT細胞の有効量は、癌、GVHD、感染性疾患、自己免疫性疾患、炎症性疾患、または免疫不全の少なくとも1つの症状を予防、治療または改善するために対象に投与される。
【0514】
特定の実施形態では、癌の少なくとも1つの症状を予防する、治療する、または改善する方法は、対象に、DARIC免疫受容体、および操作されたTCR、CAR、または腫瘍もしくは癌に細胞を再指向化させるための他の治療用導入遺伝子を含む改変免疫エフェクター細胞またはT細胞の有効量を投与することを含む。遺伝子改変された細胞は、耐久性が高く持続的な医薬品である。その理由は、当該細胞は、化学的に制御された免疫刺激性シグナルを伝達することで、腫瘍微小環境からの免疫抑制性シグナルに対する抵抗性が高いためである。
【0515】
特定の実施形態では、本明細書において予期される改変免疫エフェクター細胞は、固形腫瘍または癌の治療に使用される。
【0516】
特定の実施形態では、本明細書において予期される改変免疫エフェクター細胞は、限定されないが、副腎癌、副腎皮質癌、肛門癌、虫垂癌、星状細胞腫、非定型奇形腫様腫瘍/非定型横紋筋様腫瘍、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳/CNS癌、乳癌、気管支腫瘍、心臓腫瘍、子宮頸癌、胆管癌、軟骨肉腫、脊索腫、結腸癌、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、非浸潤性乳管癌(DCIS)、子宮内膜癌、上位腫、食道癌、鼻腔神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、眼癌、卵管癌、線維性組織肉腫、線維肉腫、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、神経膠腫、グリア芽腫、頭頚部癌、血管芽細胞腫、肝細胞癌、下咽頭癌、眼内黒色腫、カポジ肉腫、腎癌、咽頭癌、平滑筋肉腫、舌癌、脂肪肉腫、肝癌、肺癌、非小細胞肺癌、胚カルチノイド腫瘍、悪性中皮腫、髄様癌、髄芽腫、髄膜腫、黒色腫、メルケル細胞癌、正中線癌、口腔癌、粘液肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性新生物、鼻腔および副鼻腔の癌、上咽頭癌、神経芽細胞腫、乏突起膠腫、口腔癌(oral cancer、oral cavity cancer)、口腔咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、膵島細胞腫瘍、乳頭癌、傍神経節腫、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体腫、下垂体腫瘍、胸膜肺芽腫、原発性胸膜腫、前立腺癌、直腸癌、網膜芽腫、腎細胞癌、腎盂および尿管の癌、横紋筋肉腫、唾液腺癌、皮脂腺癌、皮膚癌、軟部組織肉腫、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、小腸癌、胃癌、汗腺癌、滑液腫瘍、精巣癌、咽頭癌、胸腺癌、甲状腺癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、血管癌、外陰癌、およびウィルムス腫瘍を含む固形腫瘍または癌の治療に使用される
【0517】
特定の実施形態では、本明細書において予期される改変免疫エフェクター細胞は、限定されないが、肝癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、膀胱癌、脳腫瘍、骨癌、甲状腺癌、腎癌または皮膚癌を含む固形腫瘍または癌の治療に使用される。
【0518】
特定の実施形態では、本明細書において予期される改変免疫エフェクター細胞は、限定されないが、膵臓癌、膀胱癌および肺癌を含む様々な癌の治療に使用される。
【0519】
特定の実施形態では、本明細書において予期される改変免疫エフェクター細胞は、液状の癌または血液の癌の治療に使用される。
【0520】
特定の実施形態では、本明細書において予期される改変免疫エフェクター細胞は、限定されないが、白血病、リンパ腫および多発性骨髄腫を含むB細胞悪性腫瘍の治療に使用される。
【0521】
特定の実施形態では、本明細書において予期される改変免疫エフェクター細胞は、限定されないが、白血病、リンパ腫および多発性骨髄腫:急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、赤白血病、有毛細胞白血病(HCL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、および慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、および真性多血症、ホジキンリンパ腫、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、菌状息肉症、未分化大細胞リンパ腫、セザリー症候群、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、多発性骨髄腫、顕性多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、形質細胞白血病、非分泌性骨髄腫、IgD骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、孤立性骨形質細胞腫、および髄外形質細胞腫を含む液状の癌の治療に使用される。
【0522】
本明細書において予期される方法における使用に好ましい細胞としては、自己(self)細胞、好ましくは造血細胞、より好ましくはT細胞、そしてより好ましくは免疫エフェクター細胞が挙げられる。
【0523】
特定の実施形態では、本明細書において予期される改変免疫エフェクター細胞、または当該細胞を含む組成物の治療有効量を単独で、または1つもしくは複数の治療剤と併用して、その必要のある患者に投与することを含む方法が提供される。ある実施形態では、細胞は、癌、GVHD、感染性疾患、自己免疫性疾患、炎症性疾患または免疫不全を発症するリスクがある患者の治療に使用される。したがって特定の実施形態は、癌、感染性疾患、自己免疫性疾患、炎症性疾患または免疫不全の少なくとも1つの症状の治療または予防または改善を含み、その必要のある対象に、本明細書において予期される改変免疫エフェクター細胞の治療有効量を投与することを含む。
【0524】
1つの実施形態では、その必要のある対象における、癌、GVHD、感染性疾患、自己免疫性疾患、炎症性疾患または免疫不全の治療方法は、本明細書において予期される改変免疫エフェクター細胞を含む組成物の有効量、例えば治療有効量を投与することを含む。投与の量および頻度は、患者の状態、患者の疾患のタイプおよび重大度といった因子により決定されるが、適切な用量は、臨床試験により決定されてもよい。
【0525】
1つの例示的な実施形態では、対象に提供される改変免疫エフェクター細胞の有効量は、少なくとも2x106細胞/kg、少なくとも3x106細胞/kg、少なくとも4x106細胞/kg、少なくとも5x106細胞/kg、少なくとも6x106細胞/kg、少なくとも7x106細胞/kg、少なくとも8x106細胞/kg、少なくとも9x106細胞/kg、または少なくとも10x106細胞/kg、またはそれ以上であり、すべてのその間の細胞投与量を含む。
【0526】
別の例示的な実施形態では、対象に提供される改変免疫エフェクター細胞の有効量は、約2x106細胞/kg、約3x106細胞/kg、約4x106細胞/kg、約5x106細胞/kg、約6x106細胞/kg、約7x106細胞/kg、約8x106細胞/kg、約9x106細胞/kg、または約10x106細胞/kg、またはそれ以上であり、すべてのその間の細胞投与量を含む。
【0527】
別の例示的な実施形態では、対象に提供される改変免疫エフェクター細胞の有効量は、約2x106細胞/kg~約10x106細胞/kg、約3x106細胞/kg~約10x106細胞/kg、約4x106細胞/kg~約10x106細胞/kg、約5x106細胞/kg~約10x106細胞/kg、2x106細胞/kg~約6x106細胞/kg、2x106細胞/kg~約7x106細胞/kg、2x106細胞/kg~約8x106細胞/kg、3x106細胞/kg~約6x106細胞/kg、3x106細胞/kg~約7x106細胞/kg、3x106細胞/kg~約8x106細胞/kg、4x106細胞/kg~約6x106細胞/kg、4x106細胞/kg~約7x106細胞/kg、4x106細胞/kg~約8x106細胞/kg、5x106細胞/kg~約6x106細胞/kg、5x106細胞/kg~約7x106細胞/kg、5x106細胞/kg~約8x106細胞/kg、または6x106細胞/kg~約8x106細胞/kgであり、すべてのその間の細胞投与量を含む。
【0528】
当業者であれば、所望の治療効果を発揮させるために、特定の実施形態において予期される組成物の複数回の投与が必要とされる場合があることを認識するであろう。例えば組成物は、1週、2週、3週、1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、1年、2年、5年、10年またはそれ以上の期間にわたり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回以上投与される場合がある。
【0529】
ある実施形態では、対象に活性化T細胞が投与され、次いで対象から採血して(またはアフェレーシス療法を実施し)、T細胞を活性化し、そしてこれら活性化および拡張されたT細胞を患者に再注入することが望ましい場合がある。このプロセスは、数週ごとに複数回実施されてもよい。ある実施形態では、T細胞は、10cc~400ccの採血から活性化されてもよい。ある実施形態では、T細胞は、20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、70cc、80cc、90cc、100cc、150cc、200cc、250cc、300cc、350cc、または400cc以上の採血から活性化される。学説には拘束されないが、複数回の採血/複数回の再注入のプロトコールを使用することで、T細胞のある群の選択に役立つ場合がある。
【0530】
1つの実施形態では、癌と診断された対象を治療する方法は、当該対象から免疫エフェクター細胞を採取すること、操作された抗原受容体および1つまたは複数のDARIC免疫受容体をコードする1つまたは複数のベクターを導入することにより当該免疫エフェクター細胞を改変すること、および改変免疫エフェクター細胞群を生成すること、および当該対象に、当該改変免疫エフェクター細胞群を投与することを含む。好ましい実施形態では、免疫エフェクター細胞は、T細胞を含有する。
【0531】
特定の実施形態において予期される細胞組成物を投与する方法は、生体外で改変された免疫エフェクター細胞の再導入を生じさせるために有効である任意の方法、または対象への導入時に成熟免疫エフェクター細胞へと分化する免疫エフェクター細胞の改変前駆体の再導入に有効である任意の方法を含む。1つの方法は、操作された抗原受容体、および1つまたは複数のDARIC免疫受容体をコードする1つまたは複数のベクターを導入することにより生体外で末梢血T細胞を改変すること、および当該対象に当該形質導入された細胞を戻すことを含む。
【0532】
本明細書に引用されるすべての公表文献、特許出願および登録特許が、個々の公表文献、特許出願または登録特許のそれぞれが具体的に、および個々に参照により援用されることが示されているように、参照により本明細書に援用される。
【0533】
前述の実施形態は、明確性および理解を目的として、図および実施例により詳細に記載されているが、本明細書に予期される教示に照らし、特定の変化および改変が、添付の請求の範囲の主旨または範囲から逸脱することなく実施され得ることが当業者には容易に明らかであろう。以下の実施例は、解説のみを目的として提供されるものであり、限定ではない。当業者であれば、本質的に類似した結果を得るために特定の実施形態において変えられ得る、または改変され得る重要ではない様々なパラメーターが容易に認識されるであろう。
【実施例】
【0534】
実施例1
ラパマイシンは、IL-18受容体DARIC T細胞において、IFNγ発現を誘導する。
IL-18受容体(IL-18R)DARIC結合構成要素およびシグナル伝達構成要素を設計、構築し、実証した。IL-18R DARICレンチウイルスベクターは、以下をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結されたMNDU3プロモーターを含んで構築された:DARICシグナル伝達構成要素(CD8α-シグナルペプチド、FRBバリアント(T82L)、ならびにIL-18R1膜貫通ドメインおよびシグナル伝達ドメイン);P2A配列;およびDARIC結合構成要素(Igκ-シグナルペプチド、FKBP12ドメイン、ならびにIL-18RAP膜貫通ドメインおよびシグナル伝達ドメイン)。IL-18R DARIC-GFPレンチウイルスベクターは、前述のベクターにおいて、IL-18R1シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドに、P2A配列およびGRPをコードする別のポリヌクレオチドを付加することにより構築された。IL-18R DARICおよびIL-18R DARIC-GFPレンチウイルスベクターが形質導入されたT細胞は、
図1に示されるポリペプチドを発現する。例えば、配列番号 1-4を参照のこと。
【0535】
IL-18R-DARIC-GFPをコードするLVVを形質導入されたドナーPBMCにおいてGFP発現が測定され、形質導入効率が評価された。
図1B。
【0536】
IL-18R-DARIC-GFPをコードするLVVを形質導入されたドナーPBMCにおいて、細胞増殖が測定された。形質導入細胞は、非形質導入対照PBMCと同等の増殖速度を示した。
図1C。
【0537】
IL-18R-DARIC-GFPをコードするLVVを形質導入されたドナーPBMCにおいて、CD62LとCD45Raの発現が測定された。T細胞サブセットの発達は、CD62LおよびCD45Raの発現により評価され、IL-18R-DARIC-GFP形質導入細胞と非形質導入対照の間で同等であった。
図1D。
【0538】
ドナーPBMCに、IL-18R-DARIC-GFPをコードするLVVが形質導入された。形質導入されたPBMCと、非形質導入対照PBMCは、50ng/mLのヒト組み換えIL-12で24時間、前処理された。処理細胞は洗浄され、培地のみ、100ng/mLのヒト組み換えIL-18を含む培地、または1nMのラパマイシンを含む培地において培養された。IL-18中で培養されたT細胞は、非形質導入対照と、IL-18R-DARIC-GFPを形質導入された細胞の両方においてIFNγ産生の増加を示した。対照的に、IL-18R-DARIC-GFPを形質導入された細胞のみが、ラパマイシンで処理されたときにIFNγ産生の増加を示した。
図2。
【0539】
一般的に以下の請求の範囲において、使用される用語は、請求の範囲を本明細書に開示される特定の実施形態に限定するとは解釈されず、請求の範囲は、当該請求の範囲が権利付与される均等の全範囲に沿って、すべての可能性のある実施形態を含むと解釈されるものとする。したがって、請求の範囲は、本開示により限定されない。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
(a)第一のポリペプチドであって、
(i)第一の多量体化ドメイン、
(ii)第一の膜貫通ドメイン、および
(iii)第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメイン、を含む第一のポリペプチド、
(b)ポリペプチド切断シグナル;ならびに
(c)第二のポリペプチドであって、
(i)第二の多量体化ドメイン、
(ii)第二の膜貫通ドメイン、および
(iii)第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメイン、を含む第二のポリペプチド、を含有する、融合ポリペプチド。
(項目2)
前記第一の多量体化ドメインおよび前記第二の多量体化ドメインが同一である、項目1に記載の融合ポリペプチド。
(項目3)
前記第一の多量体化ドメインおよび前記第二の多量体化ドメインが異なっている、項目1に記載の融合ポリペプチド。
(項目4)
前記第一の多量体化ドメインおよび前記第二の多量体化ドメインは、ラパマイシンまたはそのラパログ、クーママイシンまたはその誘導体、ジベレリンまたはその誘導体、アブシジン酸(ABA)またはその誘導体、メトトレキサートまたはその誘導体、シクロスポリンAまたはその誘導体、FK506/シクロスポリンA(FKCsA)またはその誘導体、およびトリメトプリム(Tmp)-FK506結合タンパク質(FKBP)の合成リガンド(SLF)またはその誘導体、からなる群から選択される架橋因子と会合する、項目1~3のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目5)
前記第一の多量体化ドメインおよび前記第二の多量体化ドメインは、FKBPおよびFKBP12-ラパマイシン結合(FRB)またはそのバリアント;FKBPおよびカルシニューリンまたはそのバリアント;FKBPおよびシクロフィリンまたはそのバリアント;FKBPおよび細菌ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)またはそのバリアント;カルシニューリンおよびシクロフィリンまたはそのバリアント;PYR1-like 1(PYL1)およびabscisic acid insensitive 1(ABI1)またはそのバリアント;ならびにGIB1およびGAIまたはそのバリアント、からなる群から選択されるペアである、項目1~4のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目6)
前記第一の多量体化ドメインは、FKBPポリペプチドまたはそのバリアントを含み、前記第二の多量体化ドメインは、FRBポリペプチドまたはそのバリアントを含む、項目1~5のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目7)
前記第一の多量体化ドメインは、FRBポリペプチドまたはそのバリアントを含み、前記第二の多量体化ドメインは、FKBPポリペプチドまたはそのバリアントを含む、項目1~5のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目8)
前記第一および第二の多量体化ドメインは、FRB T2098LおよびFKBP12から選択され、前記架橋因子は、AP21967である、項目1~5のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目9)
前記架橋因子が、AP21967、シロリムス、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダフォロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、およびゾタロリムスからなる群から選択される、項目4~7のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目10)
前記第一の膜貫通ドメインおよび前記第二の膜貫通ドメインは、CD4膜貫通ドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、amnionless(AMN)膜貫通ドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD154膜貫通ドメイン、およびCD71膜貫通ドメイン、からなる群から独立して選択される、項目1~9のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目11)
前記第一の膜貫通ドメインおよび前記第二の膜貫通ドメインは、CD4膜貫通ドメインおよびCD8α膜貫通ドメインからなる群から独立して選択される、項目1~10のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目12)
前記第一の膜貫通ドメインおよび前記第二の膜貫通ドメインは、同一である、項目1~11のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目13)
前記第一の膜貫通ドメインおよび前記第二の膜貫通ドメインは、異なっている、項目1~11のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目14)
第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインおよび前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、サイトカイン受容体、インターロイキン受容体、パターン認識受容体またはtoll様受容体から単離される、項目1~13のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目15)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-12Rβ2細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-12Rβ1細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目1~14のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目16)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-12Rβ1細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-12Rβ2細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目1~14のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目17)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-7Rα細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目1~14のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目18)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-7Rα細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目1~14のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目19)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rβ細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目1~14のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目20)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rβ細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目1~14のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目21)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-21R細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目1~14のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目22)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-21R細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目1~14のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目23)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-18R1細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-18RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目1~14のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目24)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-18RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-18R1細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目1~14のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目25)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1R1細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目1~14のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目26)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1R1細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目1~14のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目27)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1RL2細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目1~14のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目28)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1RL2細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目1~14のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目29)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IFNAR1細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IFNAR2細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目1~14のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目30)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IFNAR2細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IFNAR1細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目1~14のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目31)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR1細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR1細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目1~14のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目32)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR2細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR2細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目1~14のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目33)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR3細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR3細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目1~14のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目34)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR4細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR4細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目1~14のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目35)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR5細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR5細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目1~14のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目36)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR6細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR6細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目1~14のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目37)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR7細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR7細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目1~14のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目38)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR8細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR8細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目1~14のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目39)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR9細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR9細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目1~14のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目40)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR10細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR10細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目1~14のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目41)
前記ポリペプチド切断シグナルが、ウイルス自己切断ポリペプチドである、項目1~40のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目42)
前記ポリペプチド切断シグナルが、ウイルス自己切断2Aポリペプチドである、項目1~41のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目43)
前記ポリペプチド切断シグナルは、口蹄疫ウイルス(FMDV)(F2A)ペプチド、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)(E2A)ペプチド、Thosea asignaウイルス(TaV)(T2A)ペプチド、ブタテッショウウイルス-1(PTV-1)(P2A)ペプチド、タイロウイルス2Aペプチド、および脳心筋炎ウイルス2Aペプチドからなる群から選択されるウイルス自己切断ポリペプチドである、項目1~42のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目44)
前記第一の多量体化ドメインは、前記第一のポリペプチドが発現されるとき、細胞外に局在し、前記第二の多量体化ドメインは、前記第二のポリペプチドが発現されるとき、細胞外に局在する、項目1~43のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
(項目45)
項目1~44のいずれか1項に記載の融合ポリペプチドを含有する組成物。
(項目46)
(a)第一のポリペプチドであって、
(i)第一の多量体化ドメイン、
(ii)第一の膜貫通ドメイン、および
(iii)第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメイン、を含む第一のポリペプチド、および
(b)第二のポリペプチドであって、
(i)第二の多量体化ドメイン、
(ii)第二の膜貫通ドメイン、および
(iii)第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメイン、を含む第二のポリペプチド、を含有する、組成物。
(項目47)
前記第一の多量体化ドメインおよび前記第二の多量体化ドメインが同一である、項目46に記載の組成物。
(項目48)
前記第一の多量体化ドメインおよび前記第二の多量体化ドメインが異なっている、項目46に記載の組成物。
(項目49)
前記第一の多量体化ドメインおよび前記第二の多量体化ドメインは、ラパマイシンまたはそのラパログ、クーママイシンまたはその誘導体、ジベレリンまたはその誘導体、アブシジン酸(ABA)またはその誘導体、メトトレキサートまたはその誘導体、シクロスポリンAまたはその誘導体、FK506/シクロスポリンA(FKCsA)またはその誘導体、およびトリメトプリム(Tmp)-FK506結合タンパク質(FKBP)の合成リガンド(SLF)またはその誘導体、からなる群から選択される架橋因子と会合する、項目46~48のいずれか1項に記載の組成物。
(項目50)
前記第一の多量体化ドメインおよび前記第二の多量体化ドメインは、FKBPおよびFKBP12-ラパマイシン結合(FRB)またはそのバリアント;FKBPおよびカルシニューリンまたはそのバリアント;FKBPおよびシクロフィリンまたはそのバリアント;FKBPおよび細菌ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)またはそのバリアント;カルシニューリンおよびシクロフィリンまたはそのバリアント;PYR1-like 1(PYL1)およびabscisic acid insensitive 1(ABI1)またはそのバリアント;ならびにGIB1およびGAIまたはそのバリアント、からなる群から選択されるペアである、項目46~49のいずれか1項に記載の組成物。
(項目51)
前記第一の多量体化ドメインは、FKBPポリペプチドまたはそのバリアントを含み、前記第二の多量体化ドメインは、FRBポリペプチドまたはそのバリアントを含む、項目46~50のいずれか1項に記載の組成物。
(項目52)
前記第一の多量体化ドメインは、FRBポリペプチドまたはそのバリアントを含み、前記第二の多量体化ドメインは、FKBPポリペプチドまたはそのバリアントを含む、項目46~50のいずれか1項に記載の組成物。
(項目53)
前記第一および第二の多量体化ドメインは、FRB T2098LおよびFKBP12から選択され、前記架橋因子は、AP21967である、項目46~50のいずれか1項に記載の組成物。
(項目54)
前記架橋因子が、AP21967、シロリムス、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダフォロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、およびゾタロリムスからなる群から選択される、項目49~52のいずれか1項に記載の組成物。
(項目55)
前記第一の膜貫通ドメインおよび前記第二の膜貫通ドメインは、CD4膜貫通ドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、amnionless(AMN)膜貫通ドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD154膜貫通ドメイン、およびCD71膜貫通ドメイン、からなる群から独立して選択される、項目46~54のいずれか1項に記載の組成物。
(項目56)
前記第一の膜貫通ドメインおよび前記第二の膜貫通ドメインは、CD4膜貫通ドメインおよびCD8α膜貫通ドメインからなる群から独立して選択される、項目46~55のいずれか1項に記載の組成物。
(項目57)
前記第一の膜貫通ドメインおよび前記第二の膜貫通ドメインは、同一である、項目46~56のいずれか1項に記載の組成物。
(項目58)
前記第一の膜貫通ドメインおよび前記第二の膜貫通ドメインは、異なっている、項目46~56のいずれか1項に記載の組成物。
(項目59)
第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインおよび前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、サイトカイン受容体、インターロイキン受容体、パターン認識受容体またはtoll様受容体から単離される、項目46~58のいずれか1項に記載の組成物。
(項目60)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-12Rβ2細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-12Rβ1細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目46~59のいずれか1項に記載の組成物。
(項目61)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-12Rβ1細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-12Rβ2細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目46~59のいずれか1項に記載の組成物。
(項目62)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-7Rα細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目46~59のいずれか1項に記載の組成物。
(項目63)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-7Rα細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目46~59のいずれか1項に記載の組成物。
(項目64)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rβ細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目46~59のいずれか1項に記載の組成物。
(項目65)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rβ細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目46~59のいずれか1項に記載の組成物。
(項目66)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-21R細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目46~59のいずれか1項に記載の組成物。
(項目67)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-2Rγ細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-21R細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目46~59のいずれか1項に記載の組成物。
(項目68)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-18R1細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-18RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目46~59のいずれか1項に記載の組成物。
(項目69)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-18RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-18R1細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目46~59のいずれか1項に記載の組成物。
(項目70)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1R1細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目46~59のいずれか1項に記載の組成物。
(項目71)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1R1細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目46~59のいずれか1項に記載の組成物。
(項目72)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1RL2細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目46~59のいずれか1項に記載の組成物。
(項目73)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1RAP細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IL-1RL2細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目46~59のいずれか1項に記載の組成物。
(項目74)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IFNAR1細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IFNAR2細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目46~59のいずれか1項に記載の組成物。
(項目75)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IFNAR2細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、IFNAR1細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目46~59のいずれか1項に記載の組成物。
(項目76)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR1細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR1細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目46~59のいずれか1項に記載の組成物。
(項目77)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR2細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR2細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目46~59のいずれか1項に記載の組成物。
(項目78)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR3細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR3細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目46~59のいずれか1項に記載の組成物。
(項目79)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR4細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR4細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目46~59のいずれか1項に記載の組成物。
(項目80)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR5細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR5細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目46~59のいずれか1項に記載の組成物。
(項目81)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR6細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR6細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目46~59のいずれか1項に記載の組成物。
(項目82)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR7細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR7細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目46~59のいずれか1項に記載の組成物。
(項目83)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR8細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR8細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目46~59のいずれか1項に記載の組成物。
(項目84)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR9細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR9細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目46~59のいずれか1項に記載の組成物。
(項目85)
前記第一の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR10細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、前記第二の免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、TLR10細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、項目46~59のいずれか1項に記載の組成物。
(項目86)
細胞をさらに含有する、項目45~85のいずれか1項に記載の組成物。
(項目87)
項目1~85のいずれか1項に記載の第一および第二のポリペプチドを含有するポリペプチド複合体。
(項目88)
項目1~45のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド、または項目1~85のいずれか1項に記載の第一および第二のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
(項目89)
項目1~45のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド、または項目1~85のいずれか1項に記載の第一および第二のポリペプチドをコードするcDNA。
(項目90)
項目1~45のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド、または項目1~85のいずれか1項に記載の第一および第二のポリペプチドをコードするRNA。
(項目91)
項目88~90のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含有するベクター。
(項目92)
項目1~45のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド、項目1~85のいずれか1項に記載の第一および第二のポリペプチド、項目88~90のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、または項目91に記載のベクターを含有する細胞。
(項目93)
前記細胞が、造血細胞である、項目92に記載の細胞。
(項目94)
前記細胞が、T細胞である、項目92または93に記載の細胞。
(項目95)
前記細胞が、CD3
+
、CD4
+
および/またはCD8
+
細胞である、項目92~94のいずれか1項に記載の細胞。
(項目96)
前記細胞が、免疫エフェクター細胞である、項目92~95のいずれか1項に記載の細胞。
(項目97)
前記細胞が、細胞障害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、またはヘルパーT細胞である、項目92~96のいずれか1項に記載の細胞。
(項目98)
前記細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞またはナチュラルキラーT(NKT)細胞である、項目92~96のいずれか1項に記載の細胞。
(項目99)
前記細胞の源は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位の組織、腹水、胸水、脾臓組織または腫瘍である、項目92~98のいずれか1項に記載の細胞。
(項目100)
操作された抗原受容体をさらに含む、項目92~99のいずれか1項に記載の細胞。
(項目101)
前記操作された抗原受容体は、操作されたT細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、DARIC受容体またはその構成要素、およびキメラサイトカイン受容体、からなる群から選択される、項目100に記載の細胞。
(項目102)
項目1~45のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド、項目1~85のいずれか1項に記載の第一および第二のポリペプチド、項目88~90のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、項目91に記載のベクター、または項目92~101のいずれか1項に記載の細胞を含有する組成物。
(項目103)
薬学的に許容可能な担体、ならびに項目1~45のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド、項目1~85のいずれか1項に記載の第一および第二のポリペプチド、項目88~90のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、項目91に記載のベクター、または項目92~101のいずれか1項に記載の細胞を含有する医薬組成物。
(項目104)
その必要のある対象を治療する方法であって、項目103に記載の組成物の有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
(項目105)
癌、感染性疾患、自己免疫性疾患、炎症性疾患および免疫不全の少なくとも1つの症状、もしくはそれらと関連する状態を治療、予防または改善する方法であって、項目103に記載の組成物の有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
(項目106)
固形癌を治療する方法であって、項目103に記載の組成物の有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
(項目107)
前記固形癌は、肝癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、膀胱癌、脳腫瘍、肉腫、頭頚部癌、骨癌、甲状腺癌、腎癌、または皮膚癌を含む、項目106に記載の方法。
(項目108)
前記固形癌は、膵臓癌、肺癌または乳癌である、項目105または106に記載の方法。
(項目109)
悪性血液疾患を治療する方法であって、項目103に記載の組成物の有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
(項目110)
前記悪性血液疾患は、白血病、リンパ腫または多発性骨髄腫である、項目109に記載の方法。
【配列表】