(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】チャンバ洗浄装置及びチャンバ洗浄方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240207BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
H01L21/304 645Z
C23C16/44 J
(21)【出願番号】P 2020541516
(86)(22)【出願日】2019-02-07
(86)【国際出願番号】 KR2019001547
(87)【国際公開番号】W WO2019156489
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】10-2018-0015852
(32)【優先日】2018-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0013071
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510149600
【氏名又は名称】ジュソン エンジニアリング カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ ドンホワン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジェホ
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョンイル
(72)【発明者】
【氏名】ユン ホジン
(72)【発明者】
【氏名】イ ジェワン
(72)【発明者】
【氏名】イム ビョングワン
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/037190(WO,A1)
【文献】特開2013-087346(JP,A)
【文献】特開平11-149998(JP,A)
【文献】特開平11-140675(JP,A)
【文献】特開2011-054950(JP,A)
【文献】特開2006-060167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C23C 16/44
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛酸化物を蒸着するチャンバを洗浄する方法であって、
前記チャンバ内に含塩素(Cl)ガス及び含水素(H)ガスを分離して供給するステップと、
前記供給されたガスを前記チャンバ内において活性化させ、且つ、反応させて反応ガスを生成するステップと、
前記チャンバを前記反応ガスで1次洗浄するステップと、
を含
み、
前記反応ガスを生成するステップにおいては、
前記含塩素(Cl)ガスをガス噴射部の外部において活性化させ、
前記含水素(H)ガスをガス噴射部の内部から活性化させる、チャンバ洗浄方法。
【請求項2】
前記反応ガスは、塩化水素(HCl)ガスを含む請求項1に記載のチャンバ洗浄方法。
【請求項3】
前記反応ガスを生成するステップにおいては、
前記含塩素(Cl)ガス及び含水素(H)ガスを互いに異なる大きさの活性化領域において活性化させる請求項1に記載のチャンバ洗浄方法。
【請求項4】
前記反応ガスを生成するステップにおいては、
前記チャンバ内において活性化された含塩素(Cl)ガス及び含水素(H)ガスをガス噴射部の外部において反応させる請求項1に記載のチャンバ洗浄方法。
【請求項5】
前記チャンバを活性化された含水素(H)洗浄ガスで2次洗浄するステップと、
前記チャンバを活性化された含酸素(O)洗浄ガスで3次洗浄するステップと、
をさらに含む請求項1に記載のチャンバ洗浄方法。
【請求項6】
前記2次洗浄するステップは、前記チャンバ内に残留する塩素(Cl)成分を取り除くステップを含み、
前記3次洗浄するステップは、前記チャンバ内に残留する水素(H)成分を取り除くステップを含む請求項
5に記載のチャンバ洗浄方法。
【請求項7】
前記塩素(Cl)成分を取り除くステップは、前記チャンバ内において含水素(H)洗浄ガスを活性化させて行われ、
前記水素(H)成分を取り除くステップは、前記チャンバ内において含酸素(O)洗浄ガスを活性化させて行われる請求項
6に記載のチャンバ洗浄方法。
【請求項8】
前記含水素(H)洗浄ガスは、前記含水素(H)ガスと同じ経路で前記チャンバ内に供給される請求項
6に記載のチャンバ洗浄方法。
【請求項9】
前記1次洗浄するステップと、前記2次洗浄するステップ及び3次洗浄するステップは、150~350℃の温度条件下で行われる請求項
5に記載のチャンバ洗浄方法。
【請求項10】
含塩素(Cl)ガス及び含水素(H)ガスの一方である第1のガスを提供する第1のガス提供部と、
含塩素(Cl)ガス及び含水素(H)ガスの他方である第2のガスを提供する第2のガス提供部と、
チャンバの内部に設けられて、前記第1のガスを供給するための第1のガス供給経路及び前記第2のガスを供給するための第2のガス供給経路が分離されて形成されるガス噴射部と、
前記ガス噴射部と接続されて、前記ガス噴射部に電源を供給するための電源供給部と、
前記第1のガス及び第2のガスを活性化させ、且つ、互いに反応させて前記チャンバ内の副産物をエッチングするための反応ガスを生成するように、前記ガス噴射部及び電源供給部を制御する制御部と、
を備え
、
前記制御部は、前記含塩素(Cl)ガスを前記ガス噴射部の外部において活性化させ、前記含水素(H)ガスを前記ガス噴射部の内部から活性化させるように前記ガス噴射部及び前記電源供給部を制御する、チャンバ洗浄装置。
【請求項11】
前記ガス噴射部は、
前記チャンバの内部に設けられる上フレームと、
前記上フレームから下方に離れて設けられる下フレームと、
を備え、
前記上フレーム及び下フレームの少なくとも一方の内部にはヒーティング手段が設けられる請求項
10に記載のチャンバ洗浄装置。
【請求項12】
前記ヒーティング手段は、前記上フレーム及び下フレームの少なくとも一方に複数分割されて設けられる請求項
11に記載のチャンバ洗浄装置。
【請求項13】
前記上フレーム及び下フレームの少なくとも一方の内部にはクーリング手段が設けられる請求項
11に記載のチャンバ洗浄装置。
【請求項14】
前記ガス噴射部は、
噴射面に沿って複数が並んで形成される第1の電極と、
前記第1の電極から離れるように前記第1の電極の周りに形成される第2の電極と、
を備え、
前記電源供給部は、
前記第1の電極及び第2の電極の少なくとも一方に電源電圧を供給する請求項
10に記載のチャンバ洗浄装置。
【請求項15】
前記第1のガス供給経路は、前記第1の電極を貫通して形成され、
前記第2のガス供給経路は、前記第1の電極と前記第2の電極との間の離隔空間に接続されるように形成される請求項
14に記載のチャンバ洗浄装置。
【請求項16】
前記制御部は、
前記第1のガス、第2のガス及び反応ガスの種類に応じて前記第1のガス及び第2のガスの供給量を制御する請求項
10に記載のチャンバ洗浄装置。
【請求項17】
含酸素(O)ガスを提供する含酸素(O)ガス提供部をさらに備え、
前記ガス噴射部は、
前記第1のガス供給経路及び第2のガス供給経路の少なくとも一方の経路を介して前記チャンバ内に含酸素(O)ガスを供給する請求項
10に記載のチャンバ洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャンバ洗浄装置及びチャンバ洗浄方法に係り、さらに詳しくは、基板の上に薄膜を蒸着する過程において汚れるチャンバを洗浄することのできるチャンバ洗浄装置及びチャンバ洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体素子は、基板の上に色々な物質を薄膜状に蒸着し、且つ、これをパターニングして製造される。このために、蒸着工程、エッチング工程、洗浄工程、及び乾燥工程など色々な段階の互いに異なる工程が行われる。ここで、蒸着工程は、基板の上に半導体素子として求められる性質を有する薄膜を形成するための工程である。しかしながら、薄膜の形成のための蒸着工程の最中には、基板の上の所望の領域ばかりではなく、蒸着工程が行われるチャンバの内部にも蒸着物を含む副産物が積もってしまう。
【0003】
チャンバの内部に積もる副産物は、それが厚くなると剥離されてパーティクル(particle)が生じる原因となる。このようにして生じたパーティクルは、基板の上に形成される薄膜内に取り込まれたり、薄膜の表面に付着したりして半導体素子の欠陥の原因として働いて製品の不良率を高める。この理由から、これらの副産物が剥離されないうちにチャンバの内部に積もった副産物を取り除く必要がある。
【0004】
特に、有機金属化学気相蒸着(MOCVD:Metal-Organic Chemical Vapor Deposition)の場合、これを行う蒸着装置は、蒸着中に多量のパーティクルを生じさせるが故に、非常に頻繁に洗浄を行うことが求められる。しかしながら、この場合、チャンバ内の副産物は、主としてウェットエッチングにより洗い落され、これは、チャンバを開いた状態で作業者が自らマニュアルにて洗浄を行う場合がほとんどであるため、洗浄コストが高騰し、しかも、装置の再現性及び稼働率を確保しにくいという不都合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】大韓民国公開特許第10-2011-0074912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、薄膜の形成のための蒸着中に生じる副産物を有効にインサイチュ(In-Situ)にて洗浄することのできるチャンバ洗浄装置及びチャンバ洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係るチャンバ洗浄方法は、亜鉛酸化物を蒸着するチャンバを洗浄する方法であって、前記チャンバ内に含塩素(Cl)ガス及び含水素(H)ガスを供給するステップと、前記供給されたガスを前記チャンバ内において活性化させ、且つ、反応させて反応ガスを生成するステップと、前記チャンバを前記反応ガスで1次洗浄するステップと、を含む。
【0008】
前記含塩素(Cl)ガス及び含水素(H)ガスを供給するステップは、前記含塩素(Cl)ガスと前記含水素(H)ガスとを分離して供給してもよい。
【0009】
前記反応ガスは、塩化水素(HCl)ガスを含んでいてもよい。
【0010】
前記反応ガスを生成するステップにおいては、前記含塩素(Cl)ガスをガス噴射部の外部において活性化させ、前記含水素(H)ガスをガス噴射部の内部から活性化させてもよい。
【0011】
前記反応ガスを生成するステップにおいては、前記含塩素(Cl)ガス及び含水素(H)ガスを互いに異なる大きさの活性化領域において活性化させてもよい。
【0012】
前記反応ガスを生成するステップにおいては、前記チャンバ内において活性化された含塩素(Cl)ガス及び含水素(H)ガスをガス噴射部の外部において反応させてもよい。
【0013】
前記チャンバ洗浄方法は、前記チャンバを活性化された含水素(H)洗浄ガスで2次洗浄するステップと、前記チャンバを活性化された含酸素(O)洗浄ガスで3次洗浄するステップと、をさらに含んでいてもよい。
【0014】
前記2次洗浄するステップは、前記チャンバ内に残留する塩素(Cl)成分を取り除くステップを含み、前記3次洗浄するステップは、前記チャンバ内に残留する水素(H)成分を取り除くステップを含んでいてもよい。
【0015】
前記塩素(Cl)成分を取り除くステップは、前記チャンバ内において含水素(H)洗浄ガスを活性化させて行われ、前記水素(H)成分を取り除くステップは、前記チャンバ内において含酸素(O)洗浄ガスを活性化させて行われてもよい。
【0016】
前記含水素(H)洗浄ガスは、前記含水素(H)ガスと同じ経路で前記チャンバ内に供給されてもよい。
【0017】
前記1次洗浄するステップと、前記2次洗浄するステップ及び3次洗浄するステップは、150~350℃の温度条件下で行われてもよい。
【0018】
また、本発明の実施形態に係るチャンバ洗浄装置は、第1のガスを提供する第1のガス提供部と、第2のガスを提供する第2のガス提供部と、チャンバの内部に設けられて、前記第1のガスを供給するための第1のガス供給経路及び前記第2のガスを供給するための第2のガス供給経路が分離されて形成されるガス噴射部と、前記ガス噴射部と接続されて、前記ガス噴射部に電源を供給するための電源供給部と、前記第1のガス及び第2のガスを活性化させ、且つ、互いに反応させて前記チャンバ内の副産物をエッチングするための反応ガスを生成するように、前記ガス噴射部及び電源供給部を制御する制御部と、を備える。
【0019】
前記ガス噴射部は、前記チャンバの内部に設けられる上フレームと、前記上フレームから下方に離れて設けられる下フレームと、を備え、前記上フレーム及び下フレームの少なくとも一方の内部にはヒーティング手段が設けられてもよい。
【0020】
前記ヒーティング手段は、前記上フレーム及び下フレームの少なくとも一方に複数分割されて設けられてもよい。
【0021】
前記上フレーム及び下フレームの少なくとも一方の内部にはクーリング手段が設けられてもよい。
【0022】
前記ガス噴射部は、噴射面に沿って複数が並んで形成される第1の電極と、前記第1の電極から離れるように前記第1の電極の周りに形成される第2の電極と、を備え、前記電源供給部は、前記第1の電極及び第2の電極の少なくとも一方に電源を供給してもよい。
【0023】
前記第1のガス供給経路は、前記第1の電極を貫通して形成され、前記第2のガス供給経路は、前記第1の電極と前記第2の電極との間の離隔空間に接続されるように形成されてもよい。
【0024】
前記制御部は、前記第1のガス、第2のガス及び反応ガスの種類に応じて前記第1のガス及び第2のガスの供給量を制御してもよい。
【0025】
前記チャンバ洗浄装置は、含酸素(O)ガスを提供する含酸素(O)ガス提供部をさらに備え、前記ガス噴射部は、前記第1のガス供給経路及び第2のガス供給経路の少なくとも一方の経路を介して前記チャンバ内に含酸素(O)ガスを供給してもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の実施形態に係るチャンバ洗浄装置及びチャンバ洗浄方法によれば、チャンバ内に互いに異なる経路で分離されて供給される第1のガス及び第2のガスを活性化させ、且つ、互いに反応させて生成される反応ガスでチャンバ内の副産物をエッチングすることにより、洗浄中にガス噴射部がエッチングされ且つ損なわれ、しかも、パーティクルが生じるという現象を防ぐことができる。
【0027】
また、ガス噴射部の噴射面に沿って形成される第1の電極及び第2の電極によりプラズマを形成してチャンバ内のプラズマ密度を向上させ、分離供給される第1のガス及び第2のガスを互いに有効に反応させることができる。
【0028】
さらに、上フレーム及び下フレームの少なくとも一方にヒーティング手段を組み込んでチャンバ内の温度を高め、洗浄のための最適な温度を保つことにより、チャンバ内の副産物をより有効に取り除くことができる。
【0029】
のみならず、本発明の実施形態に係るチャンバ洗浄装置及びチャンバ洗浄方法によれば、頻繁な洗浄が求められる化学気相蒸着工程においてチャンバを取り外すことなくインサイチュにて洗浄を行うことが可能になることから、作業能率の向上及び高い装置再現性と稼働率の確保を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態に係るチャンバ洗浄装置を概略的に示す図。
【
図2】本発明の実施形態に係るガス噴射部を概略的に示す図。
【
図4】本発明の実施形態によりプラズマが形成される様子を示す図。
【
図5】本発明の実施形態に係るチャンバ洗浄方法を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態をより詳しく説明する。しかしながら、本発明は以下に開示される実施形態に何ら限定されるものではなく、異なる様々な形態に具体化され、単にこれらの実施形態は本発明の開示を完全たるものにし、通常の知識を有する者に発明の範囲を完全に知らせるために提供されるものである。図中、同じ符号は、同じ構成要素を指し示す。
【0032】
図1は、本発明の実施形態に係るチャンバ洗浄装置を概略的に示す図である。また、
図2は、本発明の実施形態に係るガス噴射部300を概略的に示す図であり、
図3は、
図2に示すガス噴射部300を分解して示す図である。
【0033】
図1から
図3を参照すると、本発明の実施形態に係るチャンバ洗浄装置は、第1のガスを提供する第1のガス提供部100と、第2のガスを提供する第2のガス提供部200と、チャンバ10の内部に設けられて、前記第1のガスを供給するための第1のガス供給経路110及び前記第2のガスを供給するための第2のガス供給経路210が分離されて形成されるガス噴射部300と、前記ガス噴射部300と接続されて、前記ガス噴射部300に電源を供給するための電源供給部400と、前記第1のガス及び第2のガスを活性化させ、且つ、互いに反応させて前記チャンバ10内の副産物をエッチングするための反応ガスを生成するように、前記ガス噴射部300及び電源供給部400を制御する制御部500と、を備える。
【0034】
本発明の実施形態に係るチャンバ洗浄装置は、基板の処理、例えば、薄膜の蒸着工程中に生じてチャンバ10内に積もる副産物を取り除く。このため、チャンバ10は、基板処理工程を行う反応空間を提供する。ここで、基板処理工程は、基板の上にインジウムとガリウムとがドープされた亜鉛酸化物(IGZO)を蒸着する工程であってもよく、この場合、チャンバ10内に積もる副産物は、インジウムとガリウムとがドープされた亜鉛酸化物を含んでいてもよい。また、この場合、チャンバ10内には少なくとも1枚の基板を支持する基板支持部20が設けられてもよい。ここで、基板支持部20は、基板処理工程が行われることにつれて上昇または下降するように設けられてもよく、回転自在に設けられてもよい。このような基板支持部20の昇降及び回転は、チャンバ10の底面を貫通する支持軸22及び前記支持軸22に接続される駆動部24により行われ、チャンバ10の底面に露出される支持軸22は、蛇腹26により密閉されてもよい。
【0035】
第1のガス提供部100及び第2のガス提供部200は、それぞれチャンバ10の外部に設けられてもよく、第1のガス及び第2のガスをガス噴射部300に提供する。第1のガス及び第2のガスは、それぞれ別々に活性化されてチャンバ10内の反応空間において互いに反応してチャンバ10内の副産物をエッチングして洗浄するための反応ガスを生成する。亜鉛酸化物などの有機金属酸化物を含む副産物を効率よくエッチングするために、前記反応ガスは、塩化水素(HCl)ガスを含んでいてもよく、これにより、第1のガス及び第2のガスのどちらか一方は、含塩素(Cl)ガスを含み、前記第1のガス及び第2のガスの他方は、含水素(H)ガスを含んでいてもよい。また、含塩素(Cl)ガスは、Cl2 、BCl3 、ClF3 及びClF4 のうちの少なくとも一種を含み、含水素(H)ガスは、H2 、CH4 及びH2 Oのうちの少なくとも一種を含んでいてもよいが、本発明はこれに何ら制限されるものではなく、それぞれ塩素(Cl)または水素(H)を元素として含む様々な種類のガスを用いてもよいことはいうまでもない。
【0036】
このように、第1のガス及び第2のガスとして含塩素(Cl)ガスと含水素(H)ガスを用いる場合、第1のガスと第2のガスとを活性化させ、且つ、反応させてチャンバ10内において塩化水素(HCl)ガスを生成してもよく、生成された塩化水素(HCl)ガスによりチャンバ10内に積もる亜鉛酸化物などの有機金属酸化物を含む副産物を効率よくエッチングすることが可能になる。第1のガスと第2のガスとを反応させて塩化水素(HCl)ガスを生成する具体的な過程については後述する。
【0037】
ガス噴射部300は、チャンバ10の内部、例えば、チャンバリッド12の下面に着脱自在に設けられて、第1のガスを供給するための第1のガス供給経路110及び第2のガスを供給するための第2のガス供給経路210が形成される。ここで、第1のガス供給経路110及び第2のガス供給経路210は、互いに分離されるように形成されて、第1のガス及び第2のガスをチャンバ10の内部に分離して供給してもよい。
【0038】
チャンバ10内に積もる亜鉛酸化物などの有機金属酸化物を含む副産物をエッチングするために塩化水素(HCl)ガスをチャンバ10内に供給する場合、ガス噴射部300を介して直接的に塩化水素(HCl)ガスを噴射してもよく、含水素(H)ガスと含塩素(Cl)ガスとを混合して噴射してもよい。しかしながら、ガス噴射部300を介して直接的に塩化水素(HCl)ガスを噴射する場合、塩化水素(HCl)ガスによりガス噴射部300がエッチングされ且つ損なわれて,むしろパーティクルが生じ、これによりガス噴射部300のガス供給経路が閉塞されてしまう。また、ガス噴射部300を介して含塩素(Cl)ガスと含水素(H)ガスとを混合して噴射する場合、ガス噴射部300内において含塩素(Cl)ガスと含水素(H)ガスとが激しく反応してしまい、その結果、上記の問題がさらに深刻化してしまうという不都合があった。これに対し、本発明の実施形態により含塩素(Cl)ガスを供給するためのガス供給経路と含水素(H)ガスを供給するためのガス供給経路とをガス噴射部300内において分離すれば、ガス噴射部300が損なわれてしまうという不都合を防ぐことができ、チャンバ10の内部をより有効に洗浄することが可能になる。
【0039】
このために、ガス噴射部300は、上フレーム310及び下フレーム320を備えていてもよい。ここで、上フレーム310は、チャンバリッド12の下面に着脱自在に結合されるとともに、上面の一部、例えば、上面の中心部が前記チャンバリッド12の下面から所定の距離だけ離れる。これにより、上フレーム310の上面とチャンバリッド12の下面との間の空間において第1のガス提供部100からの第1のガスが拡散され、且つ、一時的に貯留されることが可能になる。また、下フレーム320は、上フレーム310の下面に一定の間隔を隔てて設けられる。これにより、下フレーム320の上面と上フレーム310の下面との間の空間において第2のガス提供部200からの第2のガスが拡散され、且つ、一時的に貯留されることが可能になる。ここで、上フレーム310と下フレーム320は、外周面に沿って接続されて内部に離隔空間を形成して一体に形成されてもよく、別途のシール部材350により外周面を密閉するような構造に形成されてもよいことはいうまでもない。
【0040】
すなわち、第1のガス供給経路110は、第1のガス提供部100からの第1のガスがチャンバリッド12の下面と上フレーム310との間の空間において拡散され、且つ、一時的に貯留されて、上フレーム310及び下フレーム320を貫通してチャンバ10の内部に供給されるように形成される。また、第2のガス供給経路210は、第2のガス提供部200からの第2のガスが上フレーム310の下面と下フレーム320の上面との間の空間において拡散され、且つ、一時的に貯留されて下フレーム320を貫通してチャンバ10の内部に供給されるように形成される。第1のガス供給経路110及び第2のガス供給経路210は、互いに連通されず、これにより、第1のガス及び第2のガスは、ガス噴射部300からチャンバ10の内部に分離して供給される。
【0041】
ここで、上フレーム310及び下フレーム320の少なくとも一方の内部にはヒーティング(heating)手段312、322が設けられてもよい。洗浄工程中には低い洗浄温度に起因して装置の内部に副産物が付着する虞がある。このような現象は、下フレーム320の下面と後述する第1の電極342及び第2の電極344においてさらに深刻化する。このため、上フレーム310の内部には第1のヒーティング手段312を設け、下フレーム320の内部には第2のヒーティング手段322を設けて、上フレーム310、下フレーム320、第1の電極342及び第2の電極344に副産物が付着することを防ぎ、副産物が付着する場合にも剥がれ取られ易いようにすることができる。このとき、ヒーティング手段312、322は、ヒーティングライン(heating line)として形成されてもよい。
【0042】
また、ヒーティング手段312、322は、上フレーム310及び下フレーム320の少なくとも一方に複数に分割されて設けられてもよい。このとき、複数に分割されて設けられるヒーティング手段312、322は、上フレーム310及び下フレーム320の少なくとも一方を領域別に加熱してもよい。例えば、ヒーティング手段312、322は、上フレーム310及び下フレーム320の少なくとも一方において2つ、3つまたは4つの領域にそれぞれ設けられてもよく、チャンバ10の内部の中心軸に比べてより低い温度を有するチャンバ壁側の温度をさらに高めるためにチャンバ壁寄りにさらに多くのヒーティング手段が配置可能である。このように、上フレーム310及び下フレーム320の少なくとも一方にヒーティング手段312、322を組み込んでチャンバ10内の温度を高め、洗浄のための最適な温度を保つことにより、チャンバ10内の副産物をより有効に取り除くことができる。
【0043】
一方、第2のヒーティング手段322は、下フレーム320を直接的に加熱する。このとき、下フレーム320から発せられる熱は、基板支持部20へ向かう第1の電極342の端部まで有効に伝わる必要がある。したがって、下フレーム320と第1の電極342は金属接触(metal contact)されて熱伝導率が向上する。
【0044】
ヒーティング手段312、322により上フレーム310及び下フレーム320の少なくとも一方を加熱する場合、チャンバ10内の温度は、150℃以上、且つ、350℃以下の温度に保たれ得る。これにより、洗浄工程が行われる洗浄温度は、150~350℃の温度に保たれ得る。洗浄温度が150℃未満である場合、洗浄効率が急減し、洗浄温度が350℃を超える場合、Oリング(O-ring)及びこれに係わる構造に歪みが生じてしまうという不都合があるため、ヒーティング手段312、322によりチャンバ10内の温度は150℃以上、且つ、350℃以下の温度に加熱し、これを保つことにより、チャンバの内部に生じる副産物を有効に取り除くことが可能になる。
【0045】
一方、上フレーム310及び下フレーム320の少なくとも一方の内部にはクーリング(cooling)手段314、324が設けられてもよい。このようなクーリング手段314、324は、例えば、蒸着工程中に高い蒸着温度に起因して上フレーム310または下フレーム320が歪まれてしまうことを防ぐ。クーリング手段314、324は、クーリングライン(cooling line)として形成されてもよく、ヒーティング手段312、322について説明するときに述べた事項と同様に、上フレーム310及び下フレーム320の少なくとも一方に複数に分割されて設けられてもよい。
【0046】
図1においては、ヒーティング手段312、322及びクーリング手段314、324が上フレーム310及び下フレーム320の内部の全領域にわたって積層されて設けられる構造を例にとって示したが、ヒーティング手段312、322及びクーリング手段314、324の位置及び配設領域は種々に変更して適用可能であることはいうまでもない。
【0047】
ガス噴射部300は、下フレーム320の下面に設けられる絶縁プレート330を備えていてもよい。ここで、絶縁プレート330は、後述する第2の電極344と下フレーム320とを電気的に絶縁する役割を果たし、下フレーム320の下面のうち第1の電極342が形成される領域を除く残りの領域、または下フレーム320の下面のうち第1の電極342が形成される領域と、第1の電極342と第2の電極344とが離れる領域とを除く残りの領域を覆うように下フレーム320の下面に着脱自在に設けられてもよい。
【0048】
また、ガス噴射部300は、噴射面に沿って複数が並んで形成される第1の電極342と、前記第1の電極342から離れるように前記第1の電極342の周りに形成される第2の電極344と、を備えていてもよい。
【0049】
第1の電極342は、下フレーム320の下面に下方に突き出るように形成されてガス噴射部300から噴射されるガスの噴射面に沿って複数が並んで形成される。また、第1の電極342は、下フレーム320と一体に形成されてもよい。ここで、第1の電極342は、円形状または多角形状の断面を有するように突き出てもよく、第1の電極342のそれぞれは、角部において生じるアーキング(アーク発生、arcing)を防止したり極力抑えたりするために各角部が所定の曲げ率を有するように凸状に丸められたり凹状に丸められたりしてもよい。
【0050】
第2の電極344は、第1の電極342から離れるように前記第1の電極342の周りに沿って絶縁プレート330の下面に形成される。ここで、第2の電極344は、第1の電極342の形状に応じて円形状または多角形状に貫通され、第1の電極342から離れるように第1の電極342の各側面を取り囲む。
【0051】
ここで、第1のガス供給経路110は、第1の電極342を貫通して形成され、第2のガス供給経路210は、第1の電極342と第2の電極344との間の離隔空間に接続されるように形成されてもよい。すなわち、第1のガスを供給するための第1のガス噴射孔112は、第1の電極342を貫通して形成され、第2のガスを供給するための第2のガス噴射孔212は、第1の電極342と第2の電極344との間の離隔空間において下フレーム320または絶縁プレート330を貫通して形成されてもよい。ここで、第2のガス噴射孔212は、第1の電極342と第2の電極344との間の離隔空間に沿って複数形成されてもよい。なお、下フレーム320の各側面と第2の電極344の周縁部分には絶縁体360が配備されてチャンバリッド12と第2の電極344とを電気的に絶縁してもよい。
【0052】
電源供給部400は、ガス噴射部300と接続されて、ガス噴射部300に電源を供給する。ここで、電源供給部400は、第1の電極342及び第2の電極344の少なくとも一方に電源を供給してもよい。すなわち、電源供給部400は第1の電極342に電源電圧を供給し、第2の電極344は接地されるように構成してもよく、逆に、第2の電極344に電源電圧を供給し、第1の電極342は接地されるように構成してもよい。また、第1の電極342と第2の電極344に互いに異なる電源電圧を供給してもよいことはいうまでもない。なお、基板支持部20は接地されてもよいが、電源供給部400により第1の電極342及び第2の電極の少なくとも一方とは異なる電源電圧が供給されてもよいことはいうまでもない。
【0053】
電源供給部400が供給する電源は、高周波電力またはRF(Radio Frequency)電力、例えば、LF(Low Frequency)電力、MF(Middle Frequency)、HF(High Frequency)電力、またはVHF(Very High Frequency)電力になり得る。このとき、LF電力は、3kHz~300kHzの範囲の周波数を有し、MF電力は、300kHz~3MHzの範囲の周波数を有し、HF電力は、3MHz~30MHzの範囲の周波数を有し、VHF電力は、30MHz~300MHzの範囲の周波数を有していてもよい。
【0054】
さらに、電源供給部400は、第1の電極342または第2の電極344に供給されるプラズマ電源の負荷インピーダンスとソースインピーダンスとを整合させるためのインピーダンスマッチング回路を備えていてもよい。前記インピーダンスマッチング回路は、可変キャパシタ及び可変インダクタの少なくとも一方から構成される少なくとも2つのインピーダンス素子を備えていてもよい。
【0055】
制御部500は、第1のガス及び第2のガスを活性化させ、且つ、互いに反応させて前記チャンバ10内の副産物をエッチングするための反応ガスを生成するように、前記ガス噴射部300及び電源供給部400を制御してもよい。制御部500は、ガス噴射部300から供給される各ガスの供給量、供給流量などを制御し、電源供給部400からガス噴射部300へと印加される電力の種類、周波数範囲などを全般的に制御して、活性化された第1のガスと第2のガスからチャンバ10内の副産物をエッチングするための反応ガス、例えば、塩化水素(HCl)ガスが生成されるようにしてもよい。ここで、制御部500は、第1のガス、第2のガス及び反応ガスの種類に応じて、第1のガス及び第2のガスの供給量を制御してもよい。例えば、第1のガスとして塩素ガス(Cl2 )が用いられ、第2のガスとして水素ガス(H2 )が用いられる場合、制御部500は、第1のガスと第2のガスの供給量を同量に制御してもよい。これに対し、第1のガスとして三塩化ホウ素ガス(BCl3 )が用いられ、第2のガスとして水素ガス(H2 )が用いられる場合、第2のガスの供給量が第1のガスの供給量よりも多くなるように制御してもよい。このように、制御部500は、第1のガス、第2のガス及び反応ガスの種類に応じて第1のガス及び第2のガスの供給量を制御することにより、チャンバ10内に最大限の効率で反応ガスを生成することが可能になる。
【0056】
図4は、本発明の実施形態によりプラズマが形成される様子を示す図である。
図4においては、第1の電極342及び基板支持部20が接地され、第2の電極344に電源電圧が供給される場合を例にとって示しているが、電源の供給構造はこれに何ら制限されないことはいうまでもない。
【0057】
図4に示すように、第1のガスは、実線にて示す矢印に沿ってチャンバ10内に供給され、第2のガスは、点線にて示す矢印に沿ってチャンバ10内に供給されてもよい。第1のガスは、第1の電極342の内部を貫通してチャンバ10の内部に供給され、第2のガスは、第1の電極342と第2の電極344との間の離隔空間を介してチャンバ10の内部に供給される。
【0058】
ここで、第1の電極342及び基板支持部20が接地され、第2の電極344に電源電圧が供給される場合、ガス噴射部300と基板支持部20との間には第1の活性化領域、すなわち、第1のプラズマ領域P1が形成され、第1の電極342と第2の電極344との間には第2の活性化領域、すなわち、第2のプラズマ領域P2が形成される。つまり、第2の電極344と基板支持部20には互いに異なる電圧が供給されて、第2の電極344と基板支持部20との間において第1のプラズマ領域P1が形成され、第1の電極342と第2の電極344にも互いに異なる電圧が供給されるため、第1の電極342と第2の電極344との間において第2のプラズマ領域P2が形成される。
【0059】
したがって、第1のガスが第1の電極342を貫通して供給される場合、第1のガスはガス噴射部300の外部に形成される第1のプラズマ領域P1において活性化される。また、第2のガスが第1の電極342と第2の電極344との間の離隔空間を介して供給される場合、第2のガスはガス噴射部300の内部に相当する第1の電極342と第2の電極344との間、すなわち、第2のプラズマ領域P2から第1のプラズマ領域P1までの領域にわたって活性化される。したがって、本発明の実施形態に係るチャンバ洗浄装置は、第1のガスと第2のガスとを互いに異なる大きさのプラズマ領域において活性化させることができる。このように、本発明の実施形態に係るチャンバ洗浄装置の場合、プラズマが形成される領域を第1の電極342と第2の電極344との間の領域まで拡張させてチャンバ10内のプラズマ密度を向上させることができる。なお、第1のガスと第2のガスとが互いに異なる大きさのプラズマ領域において活性化されることにより、反応ガスを生成するための最適な供給経路で各ガスを振り分けることができる。このようにして活性化された第1のガスと第2のガスは、ガス噴射部300の外部、例えば、第1のプラズマ領域P1において反応され、チャンバ10内の副産物をエッチングして洗浄するための反応ガスを生成する。
【0060】
以下、
図5に基づき、本発明の実施形態に係るチャンバ洗浄方法について詳しく説明する。本発明の実施形態に係るチャンバ洗浄方法について説明するに当たって、前述したチャンバ洗浄装置に関する説明と重複する説明は省略する。
【0061】
図5は、本発明の実施形態に係るチャンバ洗浄方法を概略的に示す図である。
図5を参照すると、本発明の実施形態に係るチャンバ洗浄方法は、互いに異なる経路でチャンバ10内に第1のガス及び第2のガスを供給するステップ(S100)と、前記第1のガス及び第2のガスを活性化させ、且つ、反応させて反応ガスを生成するステップ(S200)と、前記反応ガスで前記チャンバ10内の副産物をエッチングするステップ(S300)と、前記チャンバ10内に残留する残渣を取り除くステップ(S400)と、を含む。
【0062】
第1のガス及び第2のガスを供給するステップ(S100)においては、第1のガス提供部100からの第1のガスと第2のガス提供部200からの第2のガスとをガス噴射部300を介してチャンバ10内に供給する。すなわち、第1のガス及び第2のガスは、チャンバ10内に設けられる単一のガス噴射部300から同時に供給されてもよく、ここで、第1のガス及び第2のガスは、ガス噴射部300内に互いに異なる経路として形成される第1のガス供給経路110及び第2のガス供給経路210に沿ってチャンバ10内に供給されてもよい。
【0063】
ここで、第1のガス及び第2のガスは、前記チャンバ10内の反応空間において互いに反応して反応ガスを生成するためのものであり、前記第1のガス及び第2のガスのどちらか一方は含塩素(Cl)ガスを含み、前記第1のガス及び第2のガスの他方は含水素(H)ガスを含んでいてもよい。また、含塩素(Cl)ガスは、Cl2 、BCl3 、ClF3 及びClF4 のうちの少なくとも一種を含み、含水素(H)ガスは、H2 、CH4 及びH2 Oのうちの少なくとも一種を含んでいてもよいが、本発明はこれに制限されるものではなく、上述したように、ぞれぞれ塩素(Cl)または水素(H)を元素として含む多種多様なガスを用いてもよい。以下では、説明のしやすさのために、第1のガスとして含塩素(Cl)ガスを用い、第2のガスとして含水素(H)ガスを用いる場合を例にとって説明するが、これとは反対の場合にも同様に適用可能であることはいうまでもない。
【0064】
また、第1のガスは、含塩素(Cl)ガスを含んでいてもよく、第2のガスは、含水素(H)ガスを含んでいてもよいが、各ガスは、含塩素(Cl)ガス及び含水素(H)ガスの他にも、それぞれアルゴン(Ar)、ゼノン(Ze)及びヘリウム(He)などの少なくとも一種のノニオン性ガスをさらに含んでいてもよい。この場合、ノニオン性ガスはキャリアガスの役割を果たしたり、含塩素(Cl)ガス及び含水素(H)ガスが逆流することを防ぐ役割を果たしたりしてもよく、電源が供給される場合、プラズマの形成のための放電効率を向上させることができる。
【0065】
第1のガス及び第2のガスは、ガス噴射部300内においてそれぞれ別々の経路に沿ってチャンバ10内に分離供給される。すなわち、第1のガスは、ガス噴射部300内に形成された第1のガス供給経路110に沿ってチャンバ10内に供給され、第2のガスは、ガス噴射部300内に形成されて第1のガス供給経路110と連通されない第2のガス供給経路210に沿ってチャンバ10内に供給される。このように、第1のガス及び第2のガスをガス噴射部300内においてそれぞれ別々の経路に沿ってチャンバ10内に供給することにより、ガス噴射部300内において第1のガスと第2のガスとが反応することを防ぐことができ、これにより、ガス噴射部300の損傷を防ぎ、チャンバ10の内部をより有効に洗浄することが可能になる。
【0066】
さらに、第1のガス及び第2のガスを供給するステップ(S100)においては、第1のガス、第2のガス及び反応ガスの種類に応じて第1のガスと第2のガスの供給量を制御して供給してもよい。すなわち、制御部500は、前述したように、第1のガス、第2のガス及び反応ガスの種類に応じて第1のガスと第2のガスの供給量を同量に制御してもよく、第1のガスまたは第2のガスが他のガスよりもさらに多い供給量で供給されるように制御してもよい。
【0067】
第1のガス及び第2のガスを活性化させ、且つ、反応させて反応ガスを生成するステップ(S200)においては、第1のガスと第2のガスをチャンバ10の内部に形成されるプラズマ領域において活性化させ、プラズマ領域において活性化された第1のガスと第2のガスとを反応させて反応ガスを生成する。このために、電源供給部400は、前述したように、第1の電極342及び第2の電極344の少なくとも一方に電源電圧を供給してもよく、第1の電極342または第2の電極344にのみ電源電圧を供給したり、第1の電極342と第2の電極344に互いに異なる電源電圧を供給したりしてもよい。
【0068】
さらにまた、ガス噴射部300において、第1の電極342は、下フレーム320の下面に下方に突き出るように形成されてガス噴射部300から噴射されるガスの噴射面に沿って複数が並んで形成されてもよく、第2の電極344は、第1の電極342から離れるように前記第1の電極342の周りに沿って絶縁プレート330の下面に形成されてもよい。すなわち、第1の電極342及び第2の電極344は、ガス噴射部300の噴射面に沿って形成されてもよく、この場合、別途の遠隔プラズマソース(RPS:Remote Plasma Source)が不要になり、温度の制約が少ないばかりではなく、プラズマ密度を向上させることができる。ガス噴射部300と、第1の電極342及び第2の電極344の詳細な構造は、本発明の実施形態に係るチャンバ洗浄装置と関連して説明した通りであるため、これと重複する説明は省略する。
【0069】
ここで、反応ガスを生成するステップ(S200)においては、第1のガスをガス噴射部300の外部において活性化させ、第2のガスをガス噴射部300の内部から活性化させてもよい。すなわち、
図4に基づいて上述したように、第1のガスが第1の電極342を貫通して供給される場合、第1のガスは、ガス噴射部300の外部に形成される第1のプラズマ領域P1において活性化される。また、第2のガスが第1の電極342と第2の電極344との間の離隔空間を介して供給される場合、第2のガスは、ガス噴射部300の内部に相当する第1の電極342と第2の電極344との間、すなわち、第2のプラズマ領域P2から活性化されて、第1のプラズマ領域P1にわたって活性化される。これにより、反応ガスを生成するステップ(S200)においては、第1のガスと第2のガスを互いに異なる大きさのプラズマ領域において活性化させることができ、プラズマが形成される領域を第1の電極342と第2の電極344との間の領域まで拡張させてチャンバ10内のプラズマ密度を向上させることができるだけではなく、反応ガスを生成するための最適な供給経路で第1のガスと第2のガスを振り分けることができる。
【0070】
さらにまた、活性化された第1のガスと第2のガス、例えば、含塩素(Cl)ガスと含水素(H)ガスはそれぞれ別々の経路でチャンバ10内に供給されて、直接的にチャンバ10の洗浄のための洗浄ガスとしても一部用いられてもよいが、活性化された含塩素(Cl)ガスと活性化された含水素(H)ガスは相互反応性が高いため、ガス噴射部300の外部、例えば、第1のプラズマ領域P1において反応し、その結果、チャンバ10内の副産物をエッチングするための反応ガス、例えば、塩化水素(HCl)ガスを生成する。生成された塩化水素(HCl)ガスは、チャンバ10内に積もる亜鉛酸化物などの有機金属酸化物を含む副産物を効率よくエッチングするための主な洗浄ガスとなる。
【0071】
反応ガスで前記チャンバ10内の副産物をエッチングするステップ(S300)においては、生成された反応ガスをチャンバ10内の副産物と物理化学的に反応させてエッチングする。例えば、塩化水素(HCl)ガスは、チャンバ10内に積もる副産物と物理化学的に反応して、有機金属化学気相蒸着(MOCVD:Metal-Organic Chemical Vapor Deposition)工程などから生じる亜鉛酸化物などの有機金属酸化物を含む副産物を効率よくエッチングして1次洗浄してもよい。
【0072】
残渣を取り除くステップ(S400)においては、前述した副産物をエッチングするステップ(S300)において生じるチャンバ10内の残渣をチャンバ10の外部に排出して取り除く。ここで、残渣を取り除くステップ(S400)は、前記チャンバを活性化された含水素(H)洗浄ガスで2次洗浄するステップと、前記チャンバを活性化された含酸素(O)洗浄ガスで3次洗浄するステップと、を含んでいてもよい。なお、2次洗浄するステップは、前記チャンバ内に残留する塩素(Cl)成分を取り除くステップを含み、3次洗浄するステップは、前記チャンバ内に残留する水素(H)成分を取り除くステップを含んでいてもよい。
【0073】
活性化された含塩素(Cl)ガスと含水素(H)ガスとを反応させて塩化水素(HCl)ガスを生成し、生成された塩化水素(HCl)ガスによりチャンバ10内の副産物をエッチングすれば、活性化された含塩素(Cl)ガス及び塩化水素(HCl)ガスにより生じる塩素(Cl)原子、塩素(Cl)ラジカル、塩素(Cl)イオン及び電子を含む塩素(Cl)成分の残渣がチャンバ10内に残留してしまう。このため、このような塩素(Cl)成分の残渣を取り除くために、チャンバ10内を活性化された含水素(H)洗浄ガスで水素プラズマ処理して2次洗浄する。水素プラズマ処理のために水素プラズマは遠隔プラズマを用いてチャンバ10内に供給されてもよいが、チャンバ10内に供給される含水素(H)洗浄ガスを活性化させてチャンバ10内において直接的に行われてもよく、第2のガスとして水素ガス(H2 )を用いる場合には、第2のガスをそのまま用いて水素プラズマ処理を行ってもよい。このような水素プラズマ処理により形成される水素(H)ラジカルは塩素(Cl)成分と反応し、これにより、チャンバ10内に残留する塩素(Cl)成分の残渣が取り除かれる。
【0074】
また、水素プラズマ処理後には、活性化された含水素(H)ガス及び水素プラズマ処理後に生じる水素(H)原子、水素(H)ラジカル、水素(H)イオン及び電子を含む水素(H)成分の残渣がチャンバ10内に残留してしまう。このため、このような水素(H)成分の残渣を取り除くためにチャンバ10内を活性化された含酸素(O)洗浄ガスで酸素プラズマ処理して3次洗浄する。酸素プラズマは、水素プラズマの場合と同様に、遠隔プラズマを用いてチャンバ10内に供給されてもよいが、チャンバ10内に供給される含酸素(O)洗浄ガスを活性化させてチャンバ10内において直接的に行われてもよい。この場合、含酸素(O)洗浄ガスを提供する含酸素(O)ガス提供部(図示せず)をさらに備えていてもよく、含酸素(O)ガス、例えば、酸素ガス(O2 )は、ガス噴射部300を介してチャンバ10内に供給されてもよい。
【0075】
ここで、水素プラズマ処理のための含水素洗浄ガスと酸素プラズマ処理のための含酸素洗浄ガスは、第1のガス及び第2のガスの少なくとも一方と同じ経路でチャンバ10内に供給されてもよい。また、前述したように、第2のガス供給経路210は、電源が供給される第1の電極342と第2の電極344との間の離隔空間に接続されるように形成されるので、水素プラズマまたは酸素プラズマを高密度にてより効率よく生じさせるために、水素プラズマ処理または酸素プラズマ処理の際に供給される含水素洗浄ガスまたは含酸素洗浄ガスは、第2のガス供給経路210を介してチャンバ10内に供給してもよい。
【0076】
このような1次洗浄ステップ、2次洗浄ステップ及び3次洗浄ステップは、150℃以上、且つ、350℃以下の温度条件下で行われてもよい。前述したように、上フレーム310及び下フレーム320の少なくとも一方の内部にはヒーティング手段312、322が設けられてもよいため、ヒーティング手段312、322による加熱により、各洗浄ステップにおいて、チャンバの内部は150~350℃の温度に制御可能である。この場合、前述したように、Oリング及びこれに係わる構造の歪みを防ぐとともに、副産物を取り除くための最適な温度範囲を有する。
【0077】
本発明の実施形態に係るチャンバ洗浄方法は、基板処理過程とインサイチュ(In-Situ)にて行われてもよい。すなわち、基板支持部20に基板が載置されて、例えば、有機金属化学気相蒸着工程が行われて基板の上に亜鉛酸化物、すなわち、インジウムとガリウムとがドープされた亜鉛酸化物(IGZO)が蒸着され、蒸着が終わると、基板は外部に搬出される。次いで、チャンバ10の内部を洗浄するために、チャンバ10の内部に工程ガスを供給することなく、含塩素(Cl)ガス及び含水素(H)ガスを含む第1のガス及び第2のガスを供給する。電源が供給されて活性化された第1のガス及び第2のガスが反応して塩化水素(HCl)ガスが生成されれば、チャンバ10の内部において副産物と物理化学的に反応して副産物がエッチングされて取り除かれる。一方、洗浄が終わると、第1のガス及び第2のガスの供給を中断し、再び基板をチャンバ10の内部に搬入して有機金属化学気相蒸着工程を行ってもよい。
【0078】
したがって、本発明の実施形態に係るチャンバ洗浄装置及びチャンバ洗浄方法によれば、チャンバ10内に互いに異なる経路で分離されて供給される第1のガス及び第2のガスを活性化させ、且つ、互いに反応させて生成される反応ガスでチャンバ10内の副産物をエッチングすることにより、洗浄中にガス噴射部がエッチングされ且つ損なわれ、しかも、パーティクルが生じるという現象を防ぐことができる。
【0079】
また、ガス噴射部300の噴射面に沿って形成される第1の電極342及び第2の電極344によりプラズマを形成してチャンバ10内のプラズマ密度を向上させ、分離供給される第1のガス及び第2のガスを互いに有効に反応させることができる。
【0080】
さらに、上フレーム及び下フレームの少なくとも一方にヒーティング手段を組み込んでチャンバ内の温度を高め、洗浄のための最適な温度を保つことにより、チャンバ内の副産物をより有効に取り除くことができる。
【0081】
のみならず、本発明の実施形態に係るチャンバ洗浄装置及びチャンバ洗浄方法によれば、頻繁な洗浄が求められる化学気相蒸着工程においてチャンバを取り外すことなくインサイチュにて洗浄を行うことが可能になることから、作業能率の向上及び高い装置再現性と稼働率の確保を図ることができる。
【0082】
以上、本発明の好適な実施形態が特定の用語を用いて説明及び図示されたが、これらの用語は、単に本発明を明確に説明するためのものに過ぎず、本発明の実施形態及び記述された用語は、特許請求の範囲の技術的思想及び範囲から逸脱することなく、種々の変更及び変化が加えられるということは明らかである。これらの変形された実施形態は、本発明の思想及び範囲から個別的に理解されてはならず、本発明の特許請求の範囲内に属するものといえるべきである。