(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】ゼラチン中のエンドトキシンを低減する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/42 20170101AFI20240207BHJP
A61K 35/60 20060101ALI20240207BHJP
C07K 1/18 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
A61K47/42
A61K35/60
C07K1/18
(21)【出願番号】P 2020546887
(86)(22)【出願日】2019-03-07
(86)【国際出願番号】 IB2019000234
(87)【国際公開番号】W WO2019171173
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-03-07
(32)【優先日】2018-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519135460
【氏名又は名称】キャタレント・ユーケー・スウィンドン・ザイディス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イク・テン・ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ホジャステ・シルカニ
(72)【発明者】
【氏名】アミ・ポウ
(72)【発明者】
【氏名】サラ・スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】チャーリ・スマードン
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-231225(JP,A)
【文献】特開2007-211170(JP,A)
【文献】特開2008-024611(JP,A)
【文献】特開平04-080278(JP,A)
【文献】特開平08-169848(JP,A)
【文献】米国特許第05616689(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0132682(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0142200(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/42
A61K 35/60
C07K 1/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼラチン中のエンドトキシンを低減する方法であって、
ゼラチン、及び溶媒を含むゼラチン溶液に、塩を溶解して、ゼラチン-塩溶液を形成する工程であって、前記ゼラチンのエンドトキシン含有量が少なくとも6,000EU/gであり、前記ゼラチン-塩溶液中の塩濃度が、125~300mMである工程と;
ろ液のゼラチン-塩溶液が、2,500EU/g未満のエンドトキシン含有量を有するように、陰イオン交換吸着体を通して前記ゼラチン-塩溶液をろ過する工程と;
前記ろ液のゼラチン-塩溶液を脱塩して、2,500EU/g未満のエンドトキシン含有量を有する低エンドトキシンゼラチン溶液を形成する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記ゼラチン-塩溶液中の塩濃度が、約145~155mMである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゼラチン溶液が、1~20%w/wのゼラチン溶液である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記塩が塩化ナトリウムである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ゼラチンが魚ゼラチンである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ゼラチン溶液に塩を溶解する工程が、前記ゼラチン溶液を50~70℃に加熱することを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶媒が水である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ろ液のゼラチン-塩溶液及び前記低エンドトキシンゼラチン溶液のエンドトキシン含有量が、1,000EU/g未満である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
陰イオン交換吸着体を通して前記ゼラチン-塩溶液をろ過する工程が、前記溶液のエンドトキシン含有量を少なくとも95%低減することができる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
陰イオン交換吸着体を通して前記ゼラチン-塩溶液をろ過する工程の後に、前記ろ液のゼラチン-塩溶液中のゼラチン含有量の少なくとも約85%が回収される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ろ液のゼラチン-塩溶液を脱塩する工程が、ダイアフィルトレーションプロセスによって達成される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ダイアフィルトレーションプロセスが、前記ろ液のゼラチン-塩溶液を第2の溶媒で希釈し、希釈されたろ液のゼラチン-塩溶液をろ過して、希釈されたろ液のゼラチン溶液を形成することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記希釈されたろ液のゼラチン溶液の導電性が、前記
希釈されたろ液のゼラチン
-塩溶液の導電性の25%未
満になるまで、前記希釈されたろ液のゼラチン-塩溶液がろ過される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ろ液のゼラチン-塩溶液と第2の溶媒の
質量比が、1:1~1:4である、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記希釈されたろ液のゼラチン溶液から前記第2の溶媒を除去して、前記低エンドトキシンゼラチン溶液を形成する、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記希釈されたろ液のゼラチン溶液の質量が、前記ろ液のゼラチン-塩溶液の質量の5%未
満になるまで、前記希釈されたろ液のゼラチン溶液から前記第2の溶媒が除去される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の溶媒が水を含む、請求項12から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記低エンドトキシンゼラチン溶液から前記溶媒を除去して、2,500EU/g未満のエンドトキシン含有量を有する低エンドトキシンゼラチンを形成する工程を更に含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ゼラチン、及び溶媒を含むゼラチン溶液に、塩を溶解して、ゼラチン-塩溶液を形成する工程であって、前記ゼラチンのエンドトキシン含有量が少なくとも6,000EU
/gであり、前記ゼラチン-塩溶液中の塩濃度が、125~300mMである工程と;
ろ液のゼラチン-塩溶液が、2,500EU/g未満のエンドトキシン含有量を有するように、陰イオン交換吸着体を通してゼラチン-塩溶液をろ過する工程と;
ろ液のゼラチン-塩溶液を脱塩して、2,500EU/g未満のエンドトキシン含有量を有する低エンドトキシンゼラチン溶液を形成する工程と
を含む、低エンドトキシンゼラチン溶液を調製する方法。
【請求項20】
医薬活性成分を送達するための剤形を製造する方法であって、
ゼラチン、及び溶媒を含むゼラチン溶液に、塩を溶解して、ゼラチン-塩溶液を形成する工程であって、前記ゼラチンのエンドトキシン含有量が少なくとも6,000EU/gであり、前記ゼラチン-塩溶液中の塩濃度が、125~300mMである工程と;
ろ液のゼラチン-塩溶液が、2,500EU/g未満のエンドトキシン含有量を有するように、陰イオン交換吸着体を通して前記ゼラチン-塩溶液をろ過する工程と;
前記ろ液のゼラチン-塩溶液を脱塩して、2,500EU/g未満のエンドトキシン含有量を有する低エンドトキシンゼラチン溶液を形成する工程と;
前記低エンドトキシンゼラチン溶液を含む配合物を、予め形成された型へ投入する工程と;
前記低エンドトキシンゼラチン溶液を凍結乾燥して、剤形を形成する工程と
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2018年3月8日に出願された米国仮特許出願第62/640,394号の利益を主張し、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、ゼラチン中のエンドトキシンを低減する方法に関する。より詳細には、本開示は、陰イオン交換を使用してゼラチン-塩溶液をろ過し、ろ過されたゼラチン-塩溶液を脱塩することによって、ゼラチン中のエンドトキシンを低減する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ワクチンは、従来、筋肉間経路、皮膚間経路、又は皮下経路を介する非経口送達によって送達される。しかしながら、(頬粘膜、舌下粘膜、鼻粘膜、口腔粘膜、又は膣粘膜を介する)粘膜ワクチン送達は、局所的で離れた抗体免疫応答及び全身的な免疫応答を誘発する手段として関心が高まっている。加えて、固体剤形(例えば、頬/舌下錠剤、口腔錠剤又はカプセル剤、膣挿入物)による粘膜ワクチン送達は、いくつかの利点、例えば、集団予防接種の可能性及びコールドチェーンに依存しない機能を提供する。そのうえ、粘膜ワクチン送達は注射恐怖症を有する患者にとって好適であり得、患者はワクチンを自分で接種することができる。血流に薬剤及び小さな分子を届けるために、頬/舌下経路は長年使用されてきたが、ワクチンの粘膜送達の手段としてのその適用は、ほとんど注目されなかった。
【0004】
粘膜ワクチン送達に関して主な考慮すべき事柄の1つは、医薬組成物中に存在するエンドトキシンのレベルである。エンドトキシンは、細胞の死又は溶解の後に放出されるグラム陰性菌の外膜で見出される、複合リポ多糖類(「LPS」)である。エンドトキシンは、人体での生理学的変化を引き起こし、したがって、臓器系に影響し、体液性及び細胞性の人間の媒介システムを破壊する恐れがある。人体は血液中に少量のエンドトキシンしか許容できないので、非経口送達製品に対して、エンドトキシン含有量の厳格な規制値がある。
【0005】
しかしながら、高エンドトキシンレベルを含有する頬/舌下製品を摂取する場合、好気性菌及び嫌気性菌によって口にコロニーが形成されるので、典型的には小さな安全性の懸念がある。例えば、良好な口腔衛生を有する健康な成人は、1mlの唾液につき約2エンドトキシン単位(EU)(1ナノグラム=10EU)の、口腔ミクロフローラに由来するエンドトキシンの平均レベルを有する。したがって、良好な口腔衛生を有する健康な成人では、エンドトキシンの日々の生成量は1000EU/日を超える。しかしながら、ワクチン送達の観点から、エンドトキシンは、粘膜部位に応じて、免疫応答を排除、遮断、又は増幅し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第4,371,516号
【文献】米国特許第4,305,502号
【文献】米国特許第4,758,598号
【文献】英国特許第1548022号
【文献】英国特許第211423号
【文献】米国特許第6,709,669号
【文献】国際公開第2011/115969号
【非特許文献】
【0007】
【文献】EP2.6.14/USP<81>Bacterial Endotoxins-Method D Chromogenic Kinetic
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(特に感染症に対する)ワクチン接種のために使用される、頬/舌下製品中のエンドトキシンのレベルは、免疫応答にプラス又はマイナスの影響を及ぼす可能性がある。加えて、粘膜送達に対して、免疫応答を改善するためにアジュバントがしばしば添加される。エンドトキシンの存在は、所与のアジュバントの利点を、マイナス又はプラスに覆い隠す可能性がある。そのうえ、エンドトキシンは、舌下レベルで抗原に対する許容差を誘導することが示唆されており、これはアジュバントの免疫賦活の役割を打ち消す恐れがある。したがって、剤形、例えば、(感染症を治療するための、粘膜ワクチン送達に使用される)頬/舌下錠剤は、低エンドトキシン含有量を有するべきである。
【0009】
多くの剤形は、口腔分散特性を提供するために、マトリックス形成剤を使用する。ゼラチンは、主なマトリックス形成剤の1つである。ゼラチンは、酸性又はアルカリ性条件下でのコラーゲンの加水分解に由来する。ゼラチンが天然由来製品であるので、それは可変的に高い量のエンドトキシンを含有している。例えば、魚ゼラチンでは、エンドトキシンレベルは、1gのゼラチンにつき6000~30,000EUの範囲であり得る。他のゼラチンは、少なくとも約3,000EU/g、約4,000EU/g、約5,000EU/g、約6,000EU/g、約10,000EU/g、約12,000EU/g、約14,000EU/g、約15,000EU/g、約20,000EU/g、約25,000EU/g、又は約30,000EU/gのエンドトキシン含有量を有する可能性がある。
【0010】
したがって、低エンドトキシン含有量を有するゼラチンから作った剤形を製造するために、出願者らは、ゼラチン中のエンドトキシンの量を低減する方法を発見した。次に、得られた低エンドトキシンゼラチンは、様々な剤形を作り出すためのマトリックス形成剤として使用することができる。加えて、低エンドトキシンゼラチンは、様々な他の分野、例えば、スティックパック顆粒(stick pack granule)及びソフトゲルで使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書で提供されるのは、ゼラチン中のエンドトキシンレベルを低減する方法、及び得られた低エンドトキシン含有量を有するゼラチンである。方法は、ゼラチン溶液に塩を溶解する工程と、陰イオン交換を使用してゼラチン-塩溶液をろ過して、エンドトキシンレベルを低減する工程とを含む。ゼラチン-塩溶液のエンドトキシンレベルを低減した後、低エンドトキシンゼラチン-塩溶液を脱塩し、それによって低エンドトキシンゼラチン溶液を生成する。低エンドトキシンゼラチン溶液は、ワクチンを含む様々な医薬組成物で使用することができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、ゼラチン中のエンドトキシンを低減する方法は、エンドトキシン含有量が少なくとも6,000EU/gであるゼラチン、及び溶媒を含むゼラチン溶液に、塩を溶解して、ゼラチン-塩溶液を形成する工程と;ろ液のゼラチン-塩溶液が2,500EU/g未満のエンドトキシン含有量を有するように、陰イオン交換吸着体を通してゼラチン-塩溶液をろ過する工程と;ろ液のゼラチン-塩溶液を脱塩して、2,500EU/g未満のエンドトキシン含有量を有する、低エンドトキシンゼラチン溶液を形成する工程と、を含む。いくつかの実施形態では、ゼラチン-塩溶液中の塩濃度は、75~300mMである。いくつかの実施形態では、ゼラチン-塩溶液中の塩濃度は、約145~155mMである。いくつかの実施形態では、ゼラチン溶液は、1~20%w/wのゼラチン溶液である。いくつかの実施形態では、塩は塩化ナトリウムである。いくつかの実施形態では、ゼラチンは、魚ゼラチンである。いくつかの実施形態では、ゼラチン溶液に塩を溶解する工程は、ゼラチン溶液を50~70℃に加熱することを含む。いくつかの実施形態では、溶媒は水である。いくつかの実施形態では、ゼラチン-塩溶液及び低エンドトキシンゼラチン溶液のエンドトキシン含有量は、1,000EU/g未満である。いくつかの実施形態では、陰イオン交換吸着体を通してゼラチン-塩溶液をろ過する工程は、溶液のエンドトキシン含有量を少なくとも95%低減することができる。いくつかの実施形態では、陰イオン交換吸着体を通してゼラチン-塩溶液をろ過した後に、ろ液のゼラチン-塩溶液中のゼラチン含有量の少なくとも約85%が回収される。いくつかの実施形態では、方法は、低エンドトキシンゼラチン溶液から溶媒を除去して、2,500EU/g未満のエンドトキシン含有量を有する低エンドトキシンゼラチンを形成する工程を更に含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、ろ液のゼラチン-塩溶液を脱塩する工程は、ダイアフィルトレーションプロセスによって達成される。いくつかの実施形態では、ダイアフィルトレーションプロセスは、ろ液のゼラチン-塩溶液を第2の溶媒で希釈し、希釈されたろ液のゼラチン-塩溶液をろ過して、希釈されたろ液のゼラチン溶液を形成することを含む。いくつかの実施形態では、希釈されたろ液のゼラチン-塩溶液は、希釈されたろ液のゼラチン溶液の導電性が、ゼラチン溶液の導電性の25%未満以内になるまでろ過される。いくつかの実施形態では、ろ液のゼラチン-塩溶液と第2の溶媒の比は、1:1~1:4である。いくつかの実施形態では、希釈されたろ液のゼラチン溶液から第2の溶媒が除去されて、低エンドトキシンゼラチン溶液を形成する。いくつかの実施形態では、第2の溶媒は、希釈されたろ液のゼラチン溶液の質量が、ろ液のゼラチン-塩溶液の質量の5%未満以内になるまで、希釈されたろ液のゼラチン溶液から除去される。いくつかの実施形態では、第2の溶媒は水を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、低エンドトキシンゼラチン溶液は、エンドトキシン含有量が少なくとも6,000EU/gであるゼラチン、及び溶媒を含むゼラチン溶液に、塩を溶解して、ゼラチン-塩溶液を形成する工程と;ろ液のゼラチン-塩溶液が、2,500EU/g未満のエンドトキシン含有量を有するように、陰イオン交換吸着体を通してゼラチン-塩溶液をろ過する工程と;ろ液のゼラチン-塩溶液を脱塩して、2,500EU/g未満のエンドトキシン含有量を有する、低エンドトキシンゼラチン溶液を形成する工程と、を含む方法によって調製される。いくつかの実施形態では、低エンドトキシンゼラチン溶液は、溶媒及びゼラチンを含み、ゼラチンは、2,500EU/g未満のエンドトキシン含有量を有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、医薬活性成分の送達のための剤形を製造する方法は、エンドトキシン含有量が少なくとも6,000EU/gであるゼラチン、及び溶媒を含むゼラチン溶液に、塩を溶解して、ゼラチン-塩溶液を形成する工程と;ろ液のゼラチン-塩溶液が、2,500EU/g未満のエンドトキシン含有量を有するように、陰イオン交換吸着体を通してゼラチン-塩溶液をろ過する工程と;ろ液のゼラチン-塩溶液を脱塩して、2,500EU/g未満のエンドトキシン含有量を有する、低エンドトキシンゼラチン溶液を形成する工程と;低エンドトキシンゼラチン溶液を含む配合物を、予め形成された型へ投入する工程と;低エンドトキシンゼラチン溶液を凍結乾燥して、剤形を形成する工程と、を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、医薬活性成分の送達のための剤形は、エンドトキシン含有量が少なくとも6,000EU/gであるゼラチン、及び溶媒を含むゼラチン溶液に、塩を溶解して、ゼラチン-塩溶液を形成する工程と;ろ液のゼラチン-塩溶液が、2,500EU/g未満のエンドトキシン含有量を有するように、陰イオン交換吸着体を通して、ゼラチン-塩溶液をろ過する工程と;ろ液のゼラチン-塩溶液を脱塩して、2,500EU/g未満のエンドトキシン含有量を有する、低エンドトキシンゼラチン溶液を形成する工程と;低エンドトキシンゼラチン溶液を含む配合物を、予め形成された型へ投入する工程と;低エンドトキシンゼラチン溶液を凍結乾燥して、剤形を形成する工程と、を含む方法によって調製される。
【0017】
さらなる利点は、以下の詳細な記述から、当業者に容易に明白になるであろう。本明細書の例及び記述は、本来は例示的であって、限定的ではないとみなされるべきである。
【0018】
本出願で参照されている、特許文献、科学的記事及びデータベースを含むすべての刊行物は、それぞれ個々の刊行物が参照により個々に組み込まれるのと同程度に、それらの全体がすべての目的に対して参照により組み込まれる。本明細書に記載された定義が、参照により本明細書に組み込まれた特許、出願、公開された出願及び他の刊行物に記載された定義と反する、さもなければ矛盾する場合、本明細書に記載された定義が、参照により本明細書に組み込まれた定義に優先する。
【0019】
例示的な実施形態が、添付の図を参照して記述される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本明細書で開示するゼラチン中のエンドトキシンを低減する方法を図示する、フローチャートである。
【
図2】ゼラチン-塩溶液を作り出す工程を図示する、フローチャートである。
【
図3】陰イオン交換を使用してゼラチン-塩溶液をろ過し、本明細書で開示するエンドトキシンを除去する工程を図示する、フローチャートである。
【
図4】ゼラチン-塩溶液中の塩濃度による、エンドトキシン除去への影響の実験結果を図示する、グラフである。
【
図5】本明細書で開示する、ろ過されたゼラチン-塩溶液を脱塩する工程を図示する、フローチャートである。
【
図6】実施例1でろ過されたゼラチン-塩溶液の累積容積に対する、試料画分中のエンドトキシンのプロットである。
【
図7】実施例2でろ過されたゼラチン-塩溶液の累積容積に対する、試料画分中のエンドトキシンのプロットである。
【
図8】実施例3でろ過されたゼラチン-塩溶液の累積容積に対する、試料画分中のエンドトキシンのプロットである。
【
図9C】凍結乾燥した錠剤の表面に生じる、崩壊した配合物マトリックスの膜(表皮)を有する錠剤の写真と、略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図では、特に明記しない限り、同一の参照番号は、同一の構成要素に対応する。加えて、図は縮尺通りに描かれていない。
【0022】
本明細書で開示する方法は、低エンドトキシンレベルを有するゼラチンを作り出すことができる。次に、低エンドトキシンゼラチンは、限定されるものではないが、医薬剤形のマトリックス形成剤を含めて、様々な用途に使用され得る。
図1は、ゼラチン中のエンドトキシンを低減する方法100に対するフローチャートを図示している。
【0023】
ゼラチン-塩溶液の調製
第一の工程101は、ゼラチン溶液へ塩を溶解することによって、ゼラチン-塩溶液を調製することを含むことができる。
図2は、ゼラチン溶液へ塩を溶解する工程101に対するフローチャートを図示している。初期ゼラチン溶液は、溶液中のゼラチンのエンドトキシン含有量と同等の、エンドトキシン含有量を有する可能性がある。加えて、ゼラチン-塩溶液も、初期ゼラチン溶液に匹敵するエンドトキシン含有量を有するであろう。
【0024】
工程101は、ゼラチンを溶媒に溶解して、ゼラチン溶液を形成することを含むことができる。好ましくは、ゼラチンは、溶媒に完全に溶解する。溶媒にゼラチンを溶解することは、溶液を撹拌及び/又は加熱することによって支援され得る。いくつかの実施形態では、ゼラチンが溶媒に溶解するのを促進するために、ゼラチン溶液を、約40~80℃、約50~70℃、約55~65℃、約58~62℃、又は約60℃に加熱することができる。ゼラチンが溶媒に完全に溶解した後、ゼラチン溶液は室温に冷却され得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、ゼラチンは、非ゲル化ゼラチン、魚ゼラチン、牛ゼラチン、豚ゼラチン、鶏ゼラチン、又はこれらの組合せを含むゲル化ゼラチンであり得る。以下で開示する例は、魚ゼラチンをモデルゼラチンとして使用しているが、本明細書で開示する方法に対して確立された原理は、他のゼラチンタイプ、及び各ゼラチンタイプ内で入手可能なそれぞれのゼラチンのグレードに、適用可能である。いくつかの実施形態では、溶媒は水(精製水を含む)であり得る。
【0026】
ゼラチン溶液中のゼラチン濃度は、ゼラチンの最終用途に応じて変動することができる。このように、使用するゼラチンの具体的な量及び溶媒の具体的な量は、所望のゼラチン濃度に応じて変動することができる。いくつかの実施形態では、ゼラチン溶液中のゼラチン濃度は、約1~20%w/w、約2~15%w/w、約3~12%w/w、約5~12%w/w、約8~12%w/w、又は約10~12%w/wであり得る。
【0027】
ゼラチン溶液へ塩を添加する前に、ゼラチン溶液の導電性を測定することができる。こうした加塩前の導電性測定は、脱塩工程後に最終の低エンドトキシンゼラチン溶液を比較する場合、有用であり得る。加えて、ゼラチン-塩溶液の導電性を、エンドトキシン低減工程の前にも測定することができる。
【0028】
図2に示すように、ゼラチンは、完全に溶媒に溶解して、ゼラチン溶液を形成することができる。ゼラチンの溶解は、ゼラチン溶液の撹拌及び加熱によって支援され得る。塩はゼラチン溶液中に溶解して、ゼラチン-塩溶液を形成することができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、他の塩化物塩、又はこれらの組合せであり得る。
【0030】
以下でより詳細に記述するように、出願者らは、ゼラチン-塩溶液中の塩の濃度が、ゼラチンからエンドトキシンを除去するための工程102での陰イオン交換プロセスで、重大な役割を果たすことを発見した。具体的には、出願者らは、ゼラチン溶液中の塩を使用せずに陰イオン交換を実施すると、ゼラチンが、工程102での陰イオン交換プロセス中に使用するフィルターを閉塞する/詰まらせる恐れがあることを発見した。
【0031】
そのうえ、工程102の記述で以下に説明するように、出願者らは、特定の塩濃度が、エンドトキシン除去工程に直接的な影響力を有することを発見した。このように、ゼラチン-塩溶液中の塩濃度は、約50~500mM、約75~300mM、約100~200mM、約125~175mM、約140~160mM、約145~155mM、又は約150mMであり得る。
【0032】
陰イオン交換を使用するゼラチン-塩溶液のろ過によるエンドトキシン低減
ゼラチン-塩溶液の調製後に、エンドトキシンは工程102でゼラチンから除去され得る。
図3は、陰イオン交換(「AEX」)を使用するゼラチン-塩溶液のろ過の工程102に対するフローチャートを図示している。出願者らは、陰イオン交換クロマトグラフィーの原理を使用して、エンドトキシンはゼラチン溶液から除去され得ることを発見した。陰イオン交換クロマトグラフィーは、分子の電荷に基づく分子の分離を含む。具体的には、陰イオン交換クロマトグラフィーは、正味で負の表面電荷を有する分子への親和性を有する、正に帯電したイオン交換樹脂を使用する。エンドトキシン分子は、正味で負の電荷を有する。したがって、エンドトキシンは、正に帯電したイオン交換樹脂に結合し、ゼラチン-塩溶液から除去され得る。
【0033】
上述のように、出願者らは、エンドトキシン低減中に、塩のないゼラチン溶液は、陰イオン交換装置のフィルターを閉塞する/詰まらせる恐れがあることを発見した。理論に束縛されるものではないが、出願者らは、ゼラチン溶液中の塩がゼラチン分子の電荷を十分なレベルに変更し、それによってゼラチンの陰イオン交換装置への接着性を低減できると考える。このように、ゼラチン-塩溶液は、ろ液として陰イオン交換装置を通過することができ、一方、エンドトキシンは後に残る。
【0034】
陰イオン交換体は、膜吸着体(例えば、Sartorius Stedim社から市販のSartobind Q、Pall Life Sciences社から市販のMustang E)の形態、又は樹脂(例えば、Merk Millipore社から市販のFractogel EMD TMAE Hicap (M) Resin and Eshmuno Q Resin)の形態であり得る。加えて、膜吸着体は様々な異なる大きさで入手可能である。例えば、Sartobind Qは、1mL、7mL、75mL、159mL、1.2L、及び5Lのベッドボリューム(bed volume)を含む、いくつかの大きさを有する。吸着体の大きさの選択は、ろ過する容積、処理する溶液に対するエンドトキシン漏出点、及び/又は様々な処理条件に基づくことができる。
【0035】
エンドトキシンは、陰イオン交換装置における、正に帯電したイオン交換樹脂に結合することができるが、出願者らは、ゼラチン溶液の塩濃度が、陰イオン交換装置を通したエンドトキシン除去に大きく影響することができることを発見した。エンドトキシン除去に及ぼす塩濃度が有する影響力を決定するために、出願者らは、塩化ナトリウムの様々な濃度を有する10%w/wの魚ゼラチン-精製水溶液を調製し、1mLベッドボリュームを有するSartobind Q 1mL Nanoを使用してそれらをろ過した。次に、出願者らは、ゼラチン-塩溶液中のエンドトキシン含有量及びゼラチン含有量を、ろ過の前及びろ過の後に測定した。ゼラチン-塩溶液における、エンドトキシン除去への塩濃度の影響の結果を、以下の 表1及び
図4に示す。
【0036】
【0037】
上記表1及び
図4に示すように、出願者らは、魚ゼラチン-NaCl溶液の塩濃度が約150mMである場合、フィルターは溶液中のエンドトキシン含有量の最大の低減を有することができることを発見した。塩濃度が150mMよりはるかに高い場合、より少ないエンドトキシンが除去され得る。加えて、150 mMよりはるかに低い塩濃度を有すると、ゼラチンが陰イオン交換装置を詰まらせる/閉塞する恐れがある。
【0038】
エンドトキシン低減の後に、ろ液のゼラチン-塩溶液の導電性を測定することができる。いくつかの実施形態では、エンドトキシン低減工程は、ゼラチン溶液のエンドトキシン含有量を、少なくとも約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、又は約99%低減することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、ろ液のゼラチン-塩溶液中のエンドトキシンレベルは、約3000EU/g、約2500EU/g、約2000EU/g、約1500EU/g、約1000EU/g、約750EU/g、約500EU/g、約250EU/g、約200EU/g、約150EU/g、又は約100EU/g未満であり得る。いくつかの実施形態では、初期ゼラチン含有量の少なくとも約85%、約90%、約95%、約98%、又は約99%が、エンドトキシン低減工程の後に回収される。これは、陰イオン交換ろ過の前と後のゼラチン濃度を比較することによって、評価することができる。
【0040】
ろ過されたゼラチン-塩溶液の脱塩
ゼラチン-塩溶液中のエンドトキシンが低減された後、工程101で添加された塩を工程103で除去又は低減する必要がある。
図5は、本明細書で開示する、ろ過されたゼラチン-塩溶液を脱塩する工程に対するフローチャートを図示している。ゼラチン-塩溶液から塩が除去され得る1つの方法は、ダイアフィルトレーションによる。ダイアフィルトレーションは、マイクロ-分子透過性フィルターを使用する、分子の大きさに基づく、溶液からの塩の除去を伴う方法である。ダイアフィルトレーションを支援するために、特に溶液が高いゼラチン含有量を有する場合、その粘度を低減するように、ゼラチン-塩溶液は水で更に希釈され得る。添加された水は、続いて濃縮工程を介して除去され得る。いくつかの実施形態では、例えば、より低いゼラチン含有量を有するゼラチン-塩溶液に対しては、ゼラチン-塩溶液を水で希釈せずに塩を除去することができ、したがって、次の濃縮工程は必要ではない。
【0041】
ろ過されたゼラチン-塩溶液は、ダイアフィルトレーションシステムへ挿入され得る。ダイアフィルトレーションシステムの例としては、限定されるものではないが、Sartorius Stedim社製Sartoflow Advancedクロスフローろ過システム、Spectrum Labs (Repligen)社製KMPi TFFシステム、又はMerck社製Cogent M1 TFFシステムが挙げられる。ろ過されたゼラチン-塩溶液の質量及び導電性は、ダイアフィルトレーションの前に測定され得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、エンドトキシン低減工程からのろ液のゼラチン-塩溶液は、溶媒によって希釈することができる。いくつかの実施形態では、溶媒は、水(精製水を含む)であり得る。ろ液のゼラチン-塩溶液と溶媒の比は、約1:1~1:6、約1:1~1:5、約1:1~1:4、約1:1~1:3、約1:1~1:2、又は約2:1~1:1であり得る。いくつかの実施形態では、ろ液のゼラチン-塩溶液と溶媒の比は、ろ液のゼラチン-塩溶液中のゼラチンの濃度に依存し得る。ゼラチン-塩溶液と溶媒の混合物は、十分な混合を確実にするために、撹拌及び/又は加熱され得る。
【0043】
混合物の導電性は、ダイアフィルトレーション開始時に測定することができる。加えて、ダイアフィルトレーションプロセス全体を通して、導電性を連続的にモニタリングすることができ、混合物を連続的に撹拌することができる。混合物の導電性が、工程101の塩の添加前のもとのゼラチン溶液の導電性と比較的同じ又は同等の値に到達した時、ダイアフィルトレーションは停止され得る。比較的同じ又は同等の値は、値が、もとの値の約25%、約20%、約15%、約10%、約5%、約2%、又は約1%未満以内の場合であり得る。
【0044】
塩除去の後に、希釈されたゼラチン溶液は濃縮プロセスを受けることができる。濃縮プロセスは、ダイアフィルトレーション前の希釈中に添加された、過剰な溶媒を除去することができる。濃縮プロセスは、濃縮システムによって達成することができる。濃縮システムの例としては、限定されるものではないが、Sartorius Stedim社製Sartoflow Advancedクロスフローろ過システム、Spectrum Labs (Repligen)社製KMPi TFFシステム、又はMerck社製Cogent M1 TFFシステムが挙げられる。希釈されたゼラチン溶液の濃縮は、希釈されたゼラチン溶液の質量が、希釈前のろ液のゼラチン-塩溶液と比較的同じ又は同等の質量に到達した時、停止され得る。比較的同じ又は同等の値は、値が、もとの値の約25%、約20%、約15%、約10%、約5%、約2%、又は約1%未満以内の場合であり得る。
【0045】
ダイアフィルトレーションの後、低エンドトキシンゼラチン溶液が残る。加えて、この得られた低エンドトキシンの脱塩されたゼラチン溶液のゼラチン濃度又は含有量は、エンドトキシン低減工程後にろ過されたゼラチン-塩溶液と、比較的同じ又は同等のゼラチン濃度/含有量を有し得る。比較的同じ又は同等の値は、値が、もとの値の約25%、約20%、約15%、約10%、約5%、約2%、又は約1%未満以内の場合であり得る。低エンドトキシンゼラチン溶液は、約3000EU/g、約2500EU/g、約2000EU/g、約1500EU/g、約1000EU/g、約750EU/g、約500EU/g、約250EU/g、約200EU/g、約150EU/g、又は約100EU/g未満のエンドトキシン含有量を有し得る。このように、エンドトキシン除去工程後のエンドトキシン含有量は、ダイアフィルトレーションプロセス中に維持され得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、初期ゼラチン含有量の少なくとも約85%、約90%、約95%、約98%、又は約99%が、脱塩工程の後に回収される。これは、ダイアフィルトレーションの前と後のゼラチン濃度を比較することによって、評価することができる。いくつかの実施形態では、初期ゼラチン含有量の少なくとも約85%、約90%、約95%、約98%、又は約99%は、エンドトキシン低減工程及び脱塩工程の両方の後に回収される。
【0047】
いくつかの実施形態では、エンドトキシン低減ゼラチン溶液中の溶媒は、除去され得る。例えば、エンドトキシン低減ゼラチン溶液は、続いて、低エンドトキシン含有量を有する固体ゼラチンに乾燥され得る。この低エンドトキシンゼラチンは、粉末形態であり得、医薬製品を含む様々な用途での原材料として使用され得る。いくつかの実施形態では、低エンドトキシンゼラチン中のエンドトキシンレベルは、約3000EU/g、約2500EU/g、約2000EU/g、約1500EU/g、約1000EU/g、約750EU/g、約500EU/g、約250EU/g、約200EU/g、約150EU/g、又は約100EU/g未満であり得る。
【0048】
医薬組成物での使用
低エンドトキシンゼラチン溶液は、様々な医薬組成物で使用され得る。例えば、本明細書で生成される低エンドトキシンゼラチン又はゼラチン溶液は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,371,516号、米国特許第4,305,502号、及び米国特許第4,758,598号、並びに英国特許第1548022号及び英国特許第211423号に記述されている剤形で使用することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、医薬活性成分(「API」)の送達のための溶解性剤形(dissolving dosage form)を製造する方法は、(a)ゼラチンを含む配合物を、予め形成された型へ投入する工程と;(b)配合物を凍結乾燥して溶解性剤形を形成する工程と、を含むことができる。
【0050】
本明細書で使用する場合、「投入される」は、溶液又は懸濁液の所定のアリコートの堆積を指す。本明細書で使用する場合、「予め形成された型」は、その中へ水溶液又は懸濁液を堆積させることができ、続いてその中で凍結乾燥することができる任意の好適な容器又は区画を指し、本開示のある特定の好ましい実施形態では、予め形成された型は、1つ又は複数のブリスターポケットを備えるブリスターパックである。
【0051】
工程(a)の配合物は、マトリックス形成剤を含むことができる。マトリックス形成剤は、任意の従来の非ゲル化マトリックス形成剤であり得る。好適な非ゲル化マトリックス形成剤としては、限定されないが、非ゲル化ゼラチン(上記方法により調製された低エンドトキシンゼラチンを含む)、変性でんぷん、プルラン、非ゲル化魚ゼラチン、マルトデキストリン、低分子量デキストラン、スターチエーテル、低~中間分子量セルロースガム、及びこれらの組合せが挙げられる。マトリックス形成剤は、任意の従来のゲル化マトリックス形成剤でもあり得る。好適なゲル化マトリックス形成剤としては、限定されないが、ゲル化ゼラチン(上記方法により調製された低エンドトキシンゼラチンを含む)、カラギーナンガム、ヒアルロン酸、ペクチン、でんぷん、カルボキシメチルセルロースナトリウム、寒天、ジェランガム、グアーガム、トラガカントゴム(tragacanthan gum)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボマー、ポロキサマー、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、アルギネート及びポリ(グリコール酸)、並びにこれらの組合せが挙げられる。いくつかの実施形態では、マトリックス形成剤は、非ゲル化マトリックス形成剤とゲル化マトリックス形成剤の組合せであり得る。当業者は、所望の場合、これらのマトリックス形成剤の好適な量を容易に決定することができる。
【0052】
工程(a)の配合物は、典型的には溶液又は懸濁液の形態をしている。したがって、配合物中に溶媒も存在する。好適な溶媒は、配合物の最終組成、すなわち、存在すべき医薬活性成分、賦形剤等がわかれば、当業者によって容易に選択することができる。好ましい溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、他の低級アルカノール及び水が挙げられ、より好ましくは、水である。
【0053】
工程(a)の配合物は、追加の医薬的に許容できる薬剤又は賦形剤も含有してもよい。こうした追加の医薬的に許容できる薬剤又は賦形剤としては、限定されないが、糖質、例えば、マンニトール、デキストロース、及びラクトース、無機塩、例えば、塩化ナトリウム及びケイ酸アルミニウム、哺乳類由来のゼラチン、魚ゼラチン、変性でんぷん、防腐剤、酸化防止剤、界面活性剤、粘度増強剤、着色剤、香料添加剤、pH調整剤、甘味料、味覚マスキング剤、及びこれらの組合せが挙げられる。好適な着色剤としては、赤色、黒色及び黄色酸化鉄、並びにFD&C染料、例えば、FD&C青No.2及びFD&C赤No.40、並びにこれらの組合せが挙げられる。好適な香料添加剤としては、ミント、ラズベリー、カンゾウ、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、カラメル、バニラ、サクランボ及びブドウの香味並びにこれらの組合せが挙げられる。好適なpH調整剤としては、クエン酸、酒石酸、リン酸、塩酸、マレイン酸及び水酸化ナトリウム、並びにこれらの組合せが挙げられる。好適な甘味料としては、アスパルテーム、アセスルファムK及びタウマチン、並びにこれらの組合せが挙げられる。好適な味覚マスキング剤としては、重炭酸ナトリウム、イオン交換樹脂、シクロデキストリン包接化合物、吸着質又はマイクロカプセル化活性物質、及びこれらの組合せが挙げられる。所望であれば、当業者は、これらの様々な追加の賦形剤の好適な量を容易に決定することができる。式(C6H8(OH)6)の有機化合物であり、当業者に公知のマンニトールは、好ましい追加の医薬的に許容できる薬剤である。
【0054】
工程(a)の配合物は、医薬活性成分も含有してもよい。本明細書で使用する場合「医薬活性成分」は、疾患の診断、治癒、緩和、治療又は予防で使用され得る製剤を指す。本開示の目的のために、任意の医薬活性成分が使用され得る。当然、ある特定の医薬活性成分は、例えば、工程(b)のゲル化マトリックス形成剤との使用よりも、工程(a)の配合物の非ゲル化マトリックス形成剤との使用に好適であることを、当業者は容易に理解するであろう。好適な医薬活性成分としては、限定されないが、鎮痛薬及び抗炎症剤、制酸剤、駆虫薬、抗不整脈薬(anti-arrhythnic agent)、抗細菌剤、抗凝血剤、抗うつ薬、抗糖尿病薬、下痢止め剤、抗癲癇薬、抗真菌剤、痛風治療剤、降圧薬、抗マラリア剤、片頭痛剤、抗ムスカリン剤、抗腫瘍剤及び免疫抑制剤、抗原虫薬(anti-protazoal agent)、抗リウマチ剤、抗甲状腺剤、抗ウイルス薬、抗不安薬、鎮静薬、催眠薬及び神経弛緩剤、β-遮断薬、強心剤、コルチコステロイド、咳抑制薬、細胞毒性薬、充血除去薬、利尿薬、酵素、抗パーキンソン剤、胃腸剤、ヒスタミン受容体拮抗薬、脂質調節剤、局所麻酔薬、神経筋作用薬、硝酸塩及び抗狭心症剤、栄養剤、オピオイド鎮痛薬、経口ワクチン、タンパク質、ペプチド及び組み換え薬物、性ホルモン及び避妊薬、殺精子薬、及び刺激薬、並びにこれらの組合せが挙げられる。これらの活性成分の具体例のリストは、米国特許第6,709,669号に見出すことができ、参照により本明細書に組み込まれる。医薬活性成分は、存在する場合、臨床研究によって確立された、要求される生理的効果を示すのに必要な量で、工程(a)の配合物中に存在する。当業者は、本開示によって製造された剤形中に含むために、活性成分の適切な量を容易に決定することができる。
【0055】
工程(a)の配合物は、任意の従来の方法によって製造することができ、これは参照により本明細書に組み込まれる。最も典型的には、マトリックス形成剤、溶媒及び任意選択の成分を所与の温度で一緒に混合し、溶液を形成することができる。いくつかの実施形態では、マトリックス形成剤及び溶媒は、上記方法によって調製された低エンドトキシンゼラチン溶液であり得る。いずれの任意選択の成分も、ゼラチン溶液と混合することができる。次に、溶液を冷却することができ、その時点で活性成分を添加することができる。
【0056】
同様に、工程(a)の投入は、国際公開第2011/115969号に記述されている逐次的投入を含む任意の公知の方法又は装置によって、達成することができる。
【0057】
工程(b)では、工程(a)で投入された配合物は、凍結乾燥されて溶解性剤形を形成する。典型的には、予め形成された型の中の投入された配合物は、当該技術分野で公知の任意の手段によって、例えば、液体窒素のトンネルを好ましくは約1~約10分間通過させることによって、凍結される。当業者は、トンネルを通過させる速度を容易に理解するであろう。予め形成された型の中に投入された配合物は、次に、低圧(すなわち、真空)下で凍結乾燥され得る。
【0058】
本開示の剤形は、溶解性剤形であり、したがってより速い崩壊時間という明瞭な利点を有する。投与経路は口腔、膣又は鼻であり得るが、好ましくは口腔である。一旦、口腔に配置され、唾液と接すると、剤形は、約1~約180秒、約1~約120秒、約1~約60秒以内、好ましくは約1~約30秒以内、より好ましくは約1~約10秒以内、最も好ましくは約5秒未満で崩壊することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、剤形は、約200EU/剤形未満、約150EU/剤形未満;約125EU/剤形未満;約100EU/剤形未満;約90EU/剤形未満;約75EU/剤形未満;又は約50EU/剤形未満を有することができる。
【実施例】
【0060】
最初の事項として、ゼラチン-塩溶液の製造に使用されるすべての容器及び実験室用品は、バイオバーデン及び/又は追加のエンドトキシン導入を最小化するために要求されるように、洗浄及び衛生化すべきである。
【0061】
(実施例1)
1gのゼラチンにつきおよそ7000EUを含有するある量の魚ゼラチンをある量の精製水に添加し、(ゼラチンの溶解を促進するための、およそ60℃に加熱する支援により)完全に溶解して、10%w/wの魚ゼラチン溶液を生じさせた。次に、溶液を室温に冷却し、導電性測定のために参照試料を採取した。次に、ある量の塩化ナトリウム(「NaCl」)をゼラチン溶液に添加し、ゼラチン-NaCl溶液中で150mMのNaCl濃度を与えた。次に、ゼラチン-NaCl溶液の導電性を測定した。
【0062】
エンドトキシン除去の前に、陰イオン交換装置(Sartobind Q Single Sep mini-7mLフィルター)を準備した。陰イオン交換装置及び関連する管の使用前の準備を、処理前手順に従って実行した。1M水酸化ナトリウム(「NaOH」)溶液を使用してシステムを洗浄及び衛生化し、続いて1M NaCl溶液でシステムをフラッシングしてNaOH溶液を除去した。吸着体をゼラチン-NaCl溶液でプライミングし(prime)、使用前準備に使用した1M NaCl溶液を除去した。次に蠕動ポンプを使用してゼラチン-NaCl溶液を装填し、Sartobind Q Single Sep mini-7mLフィルターを通して送った。最小の背圧増加で吸着体を通して溶液を送るために、ポンプは一定圧力を維持するように設定した。ろ過されたゼラチン-NaCl溶液を清浄な容器に収集し、このろ過された溶液の導電性を測定した。
【0063】
およそ435gのゼラチン-NaCl溶液を(30gの画分で)、Sartobind Q Single Sep mini-7mLフィルターを通してろ過した。一定間隔でろ液の画分を収集することによって、エンドトキシンに関するフィルターの結合能力(binding capacity)及び漏出点(break through point)を評価し、エンドトキシン含有量及びゼラチンアッセイ含有量を評価した。結果を以下の表2及び
図6に要約する。
【0064】
【0065】
表2は、Sartobind Qフィルター装置によって、ゼラチン中のエンドトキシンが低減されたことを実証している。データは、300gの溶液がろ過された後(画分9の後)のエンドトキシンレベルのプラトー化も示し、画分14で装置が最終的に閉塞し、吸着体の閉塞に起因して15mLしか収集されなかった。これは、およそ300gのゼラチン-塩溶液が通過した時、試験した吸着体が平衡条件に到達したことを示している。エンドトキシンは漏出するのではなく、フィルター装置にエンドトキシンが蓄積し続けると、結果として装置の閉塞をもたらした。
【0066】
ろ過前とろ過後のゼラチン-塩溶液試料で、UV分光分析も実施して、同じアッセイ含有量を与え、ろ過プロセス中にゼラチンは除去されなかったことを確認した。
【0067】
(実施例2)
1gのゼラチンにつきおよそ14,600EUを含有するある量の魚ゼラチンを、ある量の精製水に添加し、(ゼラチンが溶解するのを促進するための、およそ60℃に加熱する支援により)完全に溶解して、12%w/wの魚ゼラチン溶液を生じさせた。次に、溶液を室温に冷却し、導電性測定のために参照試料を採取した。次に、ある量の塩化ナトリウム(「NaCl」)をゼラチン溶液に添加して、ゼラチン-NaCl溶液中で150mMのNaCl濃度を与えた。次に、ゼラチン-NaCl溶液の導電性を測定した。
【0068】
エンドトキシン除去の前に、陰イオン交換装置(Sartobind Q75mLカプセル)を準備した。陰イオン交換装置及び関連する管の使用前の準備を、処理前手順に従って実行した。1M水酸化ナトリウム(「NaOH」)溶液を使用してシステムを洗浄及び衛生化し、続いて1M NaCl溶液でシステムをフラッシングしてNaOH溶液を除去した。吸着体をゼラチン-NaCl溶液でプライミングし、使用前準備に使用した1M NaCl溶液を除去した。次に蠕動ポンプを使用してゼラチン-NaCl溶液を装填し、Sartobind Q75mLを通して送った。最小の背圧増加で吸着体を通して溶液を送るために、ポンプは一定圧力を維持するように設定した。ろ過されたゼラチン-NaCl溶液を清浄な容器に収集し、このろ過された溶液の導電性を測定した。
【0069】
およそ3000gのゼラチン-NaCl溶液を、Sartobind Q75mLフィルターを通してろ過した。一定間隔でろ液の画分を収集することによって、エンドトキシンに関するフィルターの結合能力及び漏出点を評価し、エンドトキシン含有量及びゼラチンアッセイ含有量を評価した。結果を以下の表3及び
図7に要約する。
【0070】
【0071】
表3は、Sartobind Q 75mLが、1gのゼラチンにつき14,600EUに相当する初期エンドトキシンレベルを有するゼラチンのバッチ中のエンドトキシンレベルを、1gのゼラチンにつき200EU/g未満まで低減する能力を有することを実証している。このように、75mLカプセルを使用して、およそ2.5kgの12%w/wゼラチン-塩溶液をろ過することができ、およそ1.6kgの12%w/wゼラチン-塩溶液がろ過された後(画分5の後)にエンドトキシンレベルはプラトー化し始め、平衡位置に到達したことを示唆している。漏出点は観察されなかった。
【0072】
溶液のゼラチンアッセイは、ろ過前とろ過後のゼラチン溶液の間にアッセイ含有量の大きな変化はないことを示し、陰イオン交換膜吸着体へのゼラチンの損失がないことを確認した。
【0073】
(実施例3)
1gのゼラチンにつきおよそ14,600EU/gを含有するある量の魚ゼラチンを、ある量の精製水に添加し、(ゼラチンが溶解するのを促進するための、およそ60℃に加熱する支援により)完全に溶解して、12%w/wの魚ゼラチン溶液を生じさせた。次に、溶液を室温に冷却し、導電性測定のために参照試料を採取した。次に、ある量の塩化ナトリウム(「NaCl」)をゼラチン溶液に添加して、ゼラチン-NaCl溶液中で150mMのNaCl濃度を与えた。次に、ゼラチン-NaCl溶液の導電性を測定した。
【0074】
エンドトキシン除去の前に、陰イオン交換装置(Sartobind Q75mLカプセル)を準備した。陰イオン交換装置及び関連する管の使用前準備は、処理前手順に従って実行した。1M水酸化ナトリウム(「NaOH」)溶液を使用してシステムを洗浄及び衛生化し、続いてシステムを1M NaCl溶液でフラッシングしてNaOH溶液を除去した。吸着体をゼラチン-NaCl溶液でプライミングし、使用前準備で使用した1M NaCl溶液を除去した。次に蠕動ポンプを使用してゼラチン-NaCl溶液を装填し、Sartobind Q75mLを通して送った。最小の背圧増加で吸着体を通して溶液を送るために、一定圧力を維持するようにポンプを設定した。ろ過されたゼラチン-NaCl溶液を清浄な容器に収集し、このろ過された溶液の導電性を測定した。
【0075】
およそ5000gのゼラチン-NaCl溶液を、Sartobind Q75mLフィルターを通してろ過した。各々およそ20gの、15個のろ過された画分を、試験のためにサンプリングした。連続的な画分の間で、およそ300gのゼラチン溶液をろ過した。
【0076】
ろ過されたゼラチン-塩溶液の最初の2000gを、ダイアフィルトレーションシステム(Sartorius Sartoflow Advanced)に移して、ダイアフィルトレーション及び濃縮プロセスによって塩を除去した。ダイアフィルトレーションシステムは、操作指図書に従って設定した。次に、システムを洗浄及び衛生化するために、操作指図書に従ってダイアフィルトレーションシステムの使用前準備を実行した。1M NaOH溶液を使用してシステムを洗浄及び衛生化し、続いて精製水でシステムをフラッシングして、NaOH溶液を除去した。使用前の清浄水フラックスをダイアフィルトレーションシステムで実施して、クロスフローフィルター(カセット)が清浄なこと及び要求事項に果たすことを確認した。これに、ダイアフィルトレーション開始前のパラメータ(圧力及び流量)設定の最適化が続いた。
【0077】
ろ過されたゼラチン-塩溶液を、ダイアフィルトレーションシステムのタンクへ装填した。タンクに装填した溶液の質量を記録し、装填した溶液の導電性を導電性プローブを使用して測定した。装填したろ過されたゼラチン-塩溶液を、(ろ過されたゼラチン-塩溶液:水の比が、ゼラチンの濃度に応じて、2:1又は1:1又は1:2又は1:3又は1:4を有するように)精製水で希釈した。混合物を撹拌して、混合物を確実によく混合した。
【0078】
次に、ダイアフィルトレーションシステムを、一定容積下ダイアフィルトレーションに設定した。いったんシステムが安定したら、塩を除去するダイアフィルトレーションを開始した。ダイアフィルトレーション開始時の溶液の導電性を、記録した。導電性をモニタリングし、ダイアフィルトレーションプロセス全体を通して、混合物を絶えず撹拌した。導電性が、参照ゼラチン溶液試料の導電性と同じ値に到達した時点で、ダイアフィルトレーションプロセスを停止した。
【0079】
次に、ダイアフィルトレーションシステムを設定して、脱塩されたゼラチン溶液の質量が希釈前のろ過されたゼラチン-塩溶液と同じになるまで、希釈のために添加された過剰な水を除去することによって、希釈され脱塩されたゼラチン溶液を濃縮した。完了したら、ダイアフィルトレーションシステムを洗浄し、次に、使用後の清浄水フラックスを実行して、クロスフローフィルター(カセット)が洗浄されたことを確認した。
【0080】
残っているゼラチン-塩溶液(約3000g)のろ過を、最後まで継続した。一定の間隔でろ液の画分を収集することによって、エンドトキシンに関するフィルターの結合能力及び漏出点を評価し、エンドトキシン含有量及びゼラチンアッセイ含有量を評価した。結果を、以下の表4及び
図8に要約する。
【0081】
【0082】
【0083】
表4は、Sartobind Q75mLが、12%w/wゼラチン-塩溶液の最初のおよそ2kgに対して、14,600EU/グラムのゼラチンに相当するエンドトキシンレベルを有するゼラチンのバッチ中のエンドトキシンレベルを、1000EU/グラムのゼラチン未満まで低減する能力を有することを実証している。この材料がダイアフィルトレーションシステムを通して処理された場合、エンドトキシンレベルは維持された。次の3kgのろ過されたゼラチン-塩溶液に対して、エンドトキシンレベルは増加し続け、続いて減少した。これは、Sartobind Q75mLを使用して2キログラムの容積をろ過した後、エンドトキシンの漏出を示唆している。
【0084】
ゼラチン含有量に関しては、エンドトキシン低減ろ過試料は、ろ過前の試料と比較して、ゼラチンアッセイにおいて実質的な差を示さなかった。これにより(前の実施例とともに)、ろ過中にゼラチンが陰イオン交換吸着体の膜に結合していないことが確認された。ダイアフィルトレーション後の試料については、試料は同等のゼラチンアッセイ含有量を示した。そのうえ、脱塩された試料の導電性測定は、塩添加前の試料の導電性の値と同等の導電性の値を示し、脱塩プロセスが成功であったことを確認した。
【0085】
(実施例4)
実施例4については、エンドトキシン低減魚ゼラチン水溶液を用いて、
図2、3及び5に記述される3つの工程を使用して、凍結乾燥された錠剤のバッチを製造した。実施例4で使用した精製水は、0.1EU/ml未満のエンドトキシンレベルを有した。
【0086】
9%w/w魚ゼラチン及び150mM NaClを含有する3kgの魚ゼラチン-塩化ナトリウム水溶液を、
図2及び付随する段落に記述するように調製した。魚ゼラチンを精製水に添加し、(およそ60℃に加熱する支援により)完全に溶解して、魚ゼラチン溶液を生じさせた。溶液を室温に冷却し、NaClを魚ゼラチン溶液に添加した。得られたゼラチン-塩溶液のエンドトキシンレベルを測定し、1,100EU/gであると報告した。
【0087】
ゼラチン-塩溶液中のエンドトキシンを低減するために、
図3及び付随する段落に記述するように、溶液を陰イオン交換装置(Sartobind Q 75mLカプセル)を通してろ過した。ろ過の前に、蠕動ポンプを使用するシステムを通して、1M水酸化ナトリウム溶液を使用してポンプで送り込むことによって、Sartobind Qカプセル及び関連する管を洗浄及び衛生化した。これに続いて、システムを通して精製水をポンプで送り込み、水酸化ナトリウム溶液を除去した。次に、システムを通して1M NaCl溶液をポンプで送り込むことによって、システムをプライミングし、ゼラチン-塩溶液の一部が続いて、NaCl溶液を除去した。このゼラチン-塩溶液の一部は、廃棄した。
【0088】
ゼラチン-塩溶液の残りの一部を、Sartobind Qフィルターを通してろ過し、そのエンドトキシン含有量を低減した。収集したろ液のゼラチン-塩溶液は、およそ2.3kgであった。次に、ろ液のゼラチン-塩溶液をダイアフィルトレーションシステム(Sartorius Sartoflow Advanced)に移し、
図5及び付随する段落に記述するダイアフィルトレーション及び濃縮プロセスによって塩を除去した。
【0089】
脱塩/濃縮プロセスを開始する前に、ダイアフィルトレーションシステムを1M NaOH溶液を使用して洗浄及び衛生化し、続いて精製水でフラッシングした。使用前の清浄水フラックスも、システムで実施した。次に、10kDaクロスフローフィルター(カセット)を使用して、システムを最適な圧力及び流量に設定した。
【0090】
次に、ダイアフィルトレーションシステムを、一定容積下のダイアフィルトレーションに設定した。溶液の導電性をモニタリングし、導電性がこの実施例では0.5mScm-1未満である目標値に到達した時、ダイアフィルトレーションプロセスを停止した。次に、ダイアフィルトレーションシステムを設定して、ろ過された脱塩ゼラチン溶液を12%w/w(10~14%の範囲)の目標ゼラチン濃度に濃縮した。完了したら、得られたゼラチン溶液(ろ過-脱塩/濃縮)のゼラチン含有量及びエンドトキシン含有量を測定した。得られた溶液は、11%w/wのゼラチン含有量及び83EU/gのエンドトキシンレベルを有した。およそ1.8kgの得られたゼラチン溶液を収集した。
【0091】
以下の表5は、実施例5の低エンドトキシンゼラチンを含む、凍結乾燥された錠剤の製造を要約している。
【0092】
【0093】
この例では、凍結乾燥錠剤の製造のための、1kgの模擬ワクチン配合混合物を調製した。配合混合物は、50%w/wのエンドトキシン低減ろ過魚ゼラチン溶液を含有した(すなわち、上で調製した0.5kgのろ過された魚ゼラチン溶液を製造で使用した)。マンニトール及びトレハロースを、ろ過された魚ゼラチン溶液に13~17℃の間の温度で添加及び溶解することによって、配合物を調製した。pHは、pH調整剤(例えば、3%NaOH溶液)を使用して、7.4の目標pHに調節した。次に模擬液体ワクチン配合物(この場合緩衝液)を添加し、設定したpHの範囲内にまだあるかpHをチェックした。次に、水を追加して、バッチの大きさにした。
【0094】
配合物を予め形成されたブリスターパックのポケットへ、質量により投入した(湿式投入(wet dose))。この場合、500mgのアリコートを、予め形成されたブリスターの各ポケットに投入した。いったん投入されると、ブリスターパックは、混合物中の水がブリスターポケット内で凍結される液体窒素凍結トンネルを通過した。凍結トンネルを出ると、製品は凍結乾燥の前に、冷却されたキャビネットで凍結保存された。必要な凍結保持時間(アニーリング時間とも呼ぶ)を凍結錠剤に適用し、錠剤をアニールした。この場合、6時間の凍結保持時間を使用した。次に、凍結錠剤を、低圧での昇華によって凍結錠剤から氷晶が除去される、凍結乾燥装置の棚に装填した。得られた凍結乾燥錠剤は、速い崩壊を可能にする非常に高い気孔率を有した。これは、社内の分散時間試験(濡れ及び解離時間)によって、特性評価される。5つの得られた凍結乾燥錠剤の試料を試験し、これらは典型的には10秒未満であることが見出された。結果を表6に要約する。いくつかの実施形態では、より遅い錠剤分散/崩壊プロフィールが必要とされる場合、製品に対して60秒以下の分散時間も許容できると考えられる。得られた凍結乾燥錠剤は、エンドトキシン含有量についても評価した。これは、1つの錠剤当たり、平均で75EU未満であることが見出された。
【0095】
【0096】
測定方法
導電性測定
溶液の導電性は、導電率計を使用して測定される。導電率計は、溶液中の帯電した粒子又はイオンの量を測定する。導電性を担うイオンは、水に溶解した電解質に由来する。(塩化ナトリウムのような)塩、酸及び塩基は、すべて電解質である。導電性の値は、電解質の濃度に比例する。導電性プローブは、導電性較正溶液を使用して較正する。次に、溶液の導電性を測定する。本開示では、工程101で塩がゼラチン溶液に添加され、続いて工程103で脱塩プロセスによって除去される。脱塩プロセスを完了するためには、脱塩ゼラチン溶液の導電性は、もとのゼラチン溶液(塩添加前)と同等であるべきである。ゼラチンは、若干の残留物イオンを有し、そのため、ベースラインの導電性を確立するために、(塩のない)ゼラチン溶液に対して導電性が測定される。次に、この導電性の値を使用して、ダイアフィルトレーションシステムを設定する。導電性がこのベースラインに到達するまで、溶液のダイアフィルトレーションは進行する。いったん、値に到達したら、濃縮プロセスが始まり、導電性は維持される。
【0097】
エンドトキシン含有量測定
溶液中のエンドトキシン含有量は、Pharmacopiea法「EP2.6.14/USP<81>Bacterial Endotoxins-Method D Chromogenic Kinetic」によって決定される。細菌エンドトキシン(BET)の試験は、カブトガニ(リムルス・ポリフェムス(Limulus polyphemus)又はタキプレウス・トリデンタトゥス(Tachypleus tridentatus))由来の変形細胞溶解物を使用して、グラム陰性菌由来のエンドトキシンを検出又は定量するために、使用される。この試験に使用されている技術は、合成ペプチド-色原体複合体の切断後の発色に基づく色素生産性技術である。実際には、10mg/mLの試料濃度を得るように製品の試料は調製され、比較の目的で標準的な曲線を使用してエンドトキシン含有量を試験した、所定の希釈(1:1000)を使用する。
【0098】
ゼラチンアッセイ含有量測定
本明細書で開示する溶液のゼラチン含有量を決定するために、UV分光分析を使用した。較正試料(0.006~0.26mg/mlの間の濃度範囲)のUV吸光度を、220nmの波長で測定することによって、ゼラチンアッセイ含有量の検量線を定めた。試験試料に関して、適量を100mlのメスフラスコへ秤量し、これら溶液の理論濃度が約0.05mg/mlであるように、脱イオン水によって容積まで作り上げた。220nmで試料のUV吸光度を測定し、これからゼラチンのmg/mlでの実際の濃度を決定した。この値に基づいて、試験試料中の%ゼラチン含有量を計算した。
【0099】
塩濃度測定
塩濃度は、導電性を介して(すなわち、導電率計を使用して)決定することができる。塩濃度の範囲で塩溶液の導電性を測定することによって、較正グラフを得ることができる。ゼラチンは、若干の残留物電解質を有している可能性があり、故にベースライン導電性(baseline concentration)は、例えば、約0.8~1mScm-1であり得る。ゼラチン溶液に塩を添加した時、導電性が測定され得る(残留物電解質+添加された塩に起因して、例えば約13mScm-1となるであろう)。添加された塩の除去は、再度ベースライン値に到達するまで、ダイアフィルトレーション中にモニタリングされ得る。この時点で、添加されたすべての塩が除去されたとみなすことができる。
【0100】
塩濃度又は導電性は、ゼラチン溶液が作られた時;ゼラチン溶液に塩が添加されて、ゼラチン-塩溶液が形成された後;及びダイアフィルトレーションプロセス全体を通して、測定され得る。
【0101】
分散特性測定(インビトロ試験):分散特性(インビトロ試験)
最低5つの錠剤を試験する。最初に、20℃±0.5℃で、およそ200mLの精製水を含有しているビーカーを準備する。次に、各錠剤をブリスターパッケージから取り出し、錠剤を、底面を下にして水の表面に配置する。時間は、各錠剤が完全に濡れるか、又は解離するのにかかる時間と解釈される。濡れは、ユニットが完全に濡れるのにかかる時間である。錠剤の濡れはまだらに生じる可能性があり、最終的に一緒に合併して全体のユニットが濡れる。分散試験は、ユニットの中心が濡れた集団(mass)である時、完了したと考えられる。したがって、濡れ時間は、ユニットの中心がユニットの最も厚い部分であるので、ここが完全に濡れた時から取られる。濡れ時間は、5つの錠剤のそれぞれに対して記録される。各試験の最大時間は、60秒である。これより長い時間は、単に60秒より長いと記載され得る。解離=ユニットがバラバラになるのにかかる時間。この時間は、ユニットが端部でばらばらになり始める時を取ることができる。解離時間は、5つの錠剤のそれぞれに対して記録される。各試験の最大時間は、60秒である。これより長い時間は、60秒より長いと記載され得る。たまに、ユニットは、このタイムリミット内では完全に濡れない又は完全に解離しない。時々、ユニットは、その中に固い塊を有する可能性があり、他の時は、ユニットは表面が全く濡れない可能性がある。加えて、全体のユニットが、固い表皮で覆われている可能性がある。それが起こった場合、適宜「固い塊」又は「表皮が残存」と引用して、記述にこれのメモがなされる。「固い塊」及び/又は「表皮」の形成は、凍結乾燥中の微細構造的崩壊の指標になり得る。
図9A~9Cは、ユニットの側面図及び平面図とともに、水中に出現するであろう3つの起こり得る非分散状態の単純化された描写を示している。
図9A~9Cの写真は、同じカテゴリーのいくつかの代表的なユニットを示す。分散特性試験の基準は、5つの錠剤が、固い塊及び表皮が存在することなく、60秒以内に完全に濡れる及び/又は触知可能な集団(palpable mass)に解離され得るかどうかである。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する剤形は、固い塊及び/又は表皮が存在することなく、60秒以内に完全に濡れる及び/又は触知可能な集団に解離され得る。
【0102】
定義
特に定義されない限り、本明細書で使用するすべての専門用語、表記並びに他の技術的及び科学的用語又は術語は、主張する主題に関係する当業者によって、一般に理解されるのと同じ意味を有することを意図している。場合によっては、一般に理解されている意味を有する用語が、明瞭さ及び/又は素早い参照のために本明細書で定義され、こうした定義を本明細書に含めることが、当該技術分野で一般に理解されるものに対して、必ずしも実質的な差を表すと解釈すべきでない。
【0103】
本明細書で値又はパラメータの「約」への言及は、その値又はパラメータ自体に向けられる変動を含み(かつ記述する)。例えば、「約X」に言及する記述は、「X」の記述を含む。加えて、値又はパラメータの文字列が後に続く、「未満」、「より大」、「最大で」、「少なくとも」、「以下」、「以上」、又は他の類似したフレーズへの言及は、値又はパラメータの文字列における各値又はパラメータに、フレーズを適用することを意味する。例えば、溶液が少なくとも約10mM、約15mM、又は約20mMの濃度を有するという記載は、その溶液が、少なくとも約10mM、少なくとも約15mM、又は少なくとも約20mMの濃度を有することを意味するという意味である。
【0104】
本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に他を示さない限り、複数形も同様に含む意図である。本明細書で使用する「及び/又は」という用語も、列挙された項目に関連する、1つ又は複数のあらゆる可能な組合せを指しかつ包含すると理解すべきである。更に、本明細書で使用する場合、「include」、「including」、「comprise」、及び/又は「comprising」という用語は、規定された特徴、整数、工程、運転、要素、成分、及び/又はユニットの存在を明示するが、1つ若しくは複数の他の特徴、整数、工程、運転、要素、成分、ユニット、及び/又はこれらの群の存在又は追加を排除しないと理解すべきである。
【0105】
本出願は、本文及び図にいくつかの数値範囲を開示している。本開示は開示された数値範囲全体を通して実施され得るので、開示された数値範囲は、正確な範囲限界が明細書に逐語的に記載されていなくとも、終点を含む開示された数値範囲内の任意の範囲又は値を本質的に支持する。
【0106】
上記記述は、当業者が本開示を製造及び使用することを可能にするために提示され、特定用途及びその要件の文脈において提供される。好ましい実施形態への様々な変更は、当業者に容易に明白となり、本明細書で定義される総括的な原理は、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の実施形態及び用途に適用され得る。したがって、本開示は、示された実施形態に限定されることを意図せず、本明細書で開示する原理及び特徴を構成する最も広い範囲と一致するべきである。
【符号の説明】
【0107】
100 エンドトキシンを低減する方法
101 ゼラチン溶液に塩を溶解する工程
102 陰イオン交換を使用してゼラチン-塩溶液をろ過する工程
103 ろ過されたゼラチン-塩溶液を脱塩する工程