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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】コーヒー抽出液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 5/24 20060101AFI20240207BHJP
   A23F 5/28 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
A23F5/24
A23F5/28
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020557548
(86)(22)【出願日】2019-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2019022223
(87)【国際公開番号】W WO2020110353
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2018224229
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196243
【弁理士】
【氏名又は名称】運 敬太
(72)【発明者】
【氏名】西海 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】亀沢 直
(72)【発明者】
【氏名】向井 惇
(72)【発明者】
【氏名】向井 卓嗣
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-504923(JP,A)
【文献】特開平02-119748(JP,A)
【文献】特開昭47-025360(JP,A)
【文献】特開昭52-125670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)焙煎粉砕コーヒー豆が充填されたカラムに、70~120℃の水を、カラム容積1Lあたり2.0~5.0kg/hの流速で供給し、カラム容積1Lあたり0.05~0.50kgの量のコーヒー抽出液を得る第一抽出工程、
b)前記第一抽出工程で使用された焙煎粉砕コーヒー豆充填カラムに、125~150℃の水を、カラム容積1Lあたり5.22~8.0kg/hの流速で供給し、カラム容積1Lあたり0.5~5.0kgの量のコーヒー抽出液を得る第二抽出工程、
c)前記第二抽出工程で得られたコーヒー抽出液を蒸発濃縮する工程、および、
d)前記第一抽出工程で得られたコーヒー抽出液と、前記蒸発濃縮されたコーヒー抽出液とを混合する工程、
を含む、コーヒー抽出液の製造方法。
【請求項2】
第一抽出工程におけるコーヒー抽出液の抽出率が、14.0~23.0%であり、第二抽出工程におけるコーヒー抽出液の抽出率が、4.0~12.0%である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第一抽出工程で使用するカラムが、直列的に連結された複数のカラムである、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第一抽出工程における抽出温度が90~110℃である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第二抽出工程で使用するカラムが、直列的に連結された複数のカラムである、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第二抽出工程における抽出温度が125~140℃である、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
さらに、前記第二抽出工程においてコーヒー抽出液を得た後に、カラム内の抽出後の焙煎粉砕コーヒー豆を廃棄すること、カラムを洗浄すること、および洗浄後のカラムに新しい焙煎粉砕コーヒー豆を充填することを含み、ここで、新しい焙煎粉砕コーヒー豆が充填された前記カラムが次の第一抽出工程に使用されるものである、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
さらに、
工程a)の後に、第一抽出工程で得られたコーヒー抽出液を、揮発性香気成分を豊富に含有する抽出液(アロマ)と抽出残渣に分画する工程a’)、および、
工程b)の後に、前記抽出残渣を、第二抽出工程で得られたコーヒー抽出液と混合する工程b’)、
を含み、
工程c)において、前記抽出残渣と第二抽出工程で得られたコーヒー抽出液との前記混合液を蒸発濃縮し、
工程d)において、前記工程a’)で得られた揮発性香気成分を豊富に含有する抽出液(アロマ)の一部または全部と、前記蒸発濃縮混合液とを混合する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
コーヒー抽出液におけるコーヒー特有の香りを高め、かつ雑味を抑える方法であって、
a)焙煎粉砕コーヒー豆が充填されたカラムに、70~120℃の水を、カラム容積1Lあたり2.0~5.0kg/hの流速で供給し、カラム容積1Lあたり0.05~0.50kgの量のコーヒー抽出液を得る第一抽出工程、
b)前記第一抽出工程で使用された焙煎粉砕コーヒー豆充填カラムに、125~150℃の水を、カラム容積1Lあたり5.22~8.0kg/hの流速で供給し、カラム容積1Lあたり0.5~5.0kgの量のコーヒー抽出液を得る第二抽出工程、
c)前記第二抽出工程で得られたコーヒー抽出液を蒸発濃縮する工程、および、
d)前記第一抽出工程で得られたコーヒー抽出液と、前記蒸発濃縮されたコーヒー抽出液とを混合する工程、
を含む、前記方法。
【請求項10】
第一抽出工程におけるコーヒー抽出液の抽出率が、14.0~23.0%であり、第二抽出工程におけるコーヒー抽出液の抽出率が、4.0~12.0%である、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー抽出液の製造方法などに関する。具体的には、本発明は、コーヒー特有の香りが高められ、かつ雑味を抑えられたコーヒー抽出液の製造方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なコーヒー原料から高濃度でコーヒー特有の香りを感じることができ、かつ雑味が抑えられたコーヒー抽出液を得ることが望まれており、そのような特徴を有するコーヒー抽出液の製造方法が種々検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、一組の抽出塔(パーコレーター塔)に熱水性媒体を通過させ、かつ抽出工程中に蒸発濃縮工程を組み合せて、高濃度のコーヒー抽出液を製造する方法が記載されている。また、特許文献2にも、一組の抽出カラムに熱水を通過させることによって、高濃度のコーヒー抽出液の製造する方法が記載されている。
【0004】
一方で、一般的なコーヒー原料には雑味成分も多く含まれているため、かかる原料から通常の抽出方法でコーヒーを抽出した場合には、コーヒー特有の良好な香りと共に、雑味成分も抽出されてしまう。また、連続多管抽出機でコーヒー抽出液を高濃度で抽出する方法でも、雑味成分の抽出という問題は存在する。このような状況の下、コーヒー特有の香りが高められ、かつ雑味が抑えられたコーヒー抽出液を提供することが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭47-20370号公報
【文献】特開昭52-125670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、コーヒー特有の香りが高められ、かつ雑味が抑えられたコーヒー抽出液を製造することなどである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、第一抽出工程では比較的低温で抽出することでコーヒー特有の良好な香味が維持されることが示された。また、第二抽出工程では、第一抽出工程で使用された焙煎粉砕コーヒー豆を用いて比較的高温で抽出することでコーヒー抽出液濃度を高めると共に、雑味成分を蒸発濃縮で除去することで、雑味が抑えられた高濃度のコーヒー抽出液が得られることが示された。そして、第一抽出工程で得られたコーヒー抽出液と、第二抽出工程後に蒸発濃縮されたコーヒー抽出液とを混合することで、コーヒー特有の香りが高められ、かつ雑味を抑えられたコーヒー抽出液を製造できることなどを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は以下に関するが、これらに限定されない。
(1)a)焙煎粉砕コーヒー豆が充填されたカラムに、70~120℃の水を、カラム容積1Lあたり1.0~10.0kg/hの流速で供給し、カラム容積1Lあたり0.05~0.50kgの量のコーヒー抽出液を得る第一抽出工程、
b)前記第一抽出工程で使用された焙煎粉砕コーヒー豆充填カラムに、125~150℃の水を、カラム容積1Lあたり1.0~10.0kg/hの流速で供給し、カラム容積1Lあたり0.5~5.0kgの量のコーヒー抽出液を得る第二抽出工程、
c)前記第二抽出工程で得られたコーヒー抽出液を蒸発濃縮する工程、および、
d)前記第一抽出工程で得られたコーヒー抽出液と、前記蒸発濃縮されたコーヒー抽出液とを混合する工程、
を含む、コーヒー抽出液の製造方法。
(2)前記第一抽出工程で使用するカラムが、直列的に連結された複数のカラムである、(1)に記載の製造方法。
(3)前記第一抽出工程における抽出温度が90~110℃である、(1)または(2)に記載の製造方法。
(4)前記第二抽出工程で使用するカラムが、直列的に連結された複数のカラムである、(1)~(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)前記第二抽出工程における抽出温度が125~140℃である、(1)~(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)さらに、前記第二抽出工程においてコーヒー抽出液を得た後に、カラム内の抽出後の焙煎粉砕コーヒー豆を廃棄すること、カラムを洗浄すること、および洗浄後のカラムに新しい焙煎粉砕コーヒー豆を充填することを含み、ここで、新しい焙煎粉砕コーヒー豆が充填された前記カラムが次の第一抽出工程に使用されるものである、(1)~(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7)さらに、
工程a)の後に、第一抽出工程で得られたコーヒー抽出液を、揮発性香気成分を豊富に含有する抽出液(アロマ)と抽出残渣に分画する工程a’)、および、
工程b)の後に、前記抽出残渣を、第二抽出工程で得られたコーヒー抽出液と混合する工程b’)、
を含み、
工程c)において、前記抽出残渣と第二抽出工程で得られたコーヒー抽出液との前記混合液を蒸発濃縮し、
工程d)において、前記工程a’)で得られた揮発性香気成分を豊富に含有する抽出液(アロマ)の一部または全部と、前記蒸発濃縮混合液とを混合する、
(1)~(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8)コーヒー抽出液におけるコーヒー特有の香りを高め、かつ雑味を抑える方法であって、
a)焙煎粉砕コーヒー豆が充填されたカラムに、70~120℃の水を、カラム容積1Lあたり1~10kg/hの流速で供給し、カラム容積1Lあたり0.05~0.50kgの量のコーヒー抽出液を得る第一抽出工程、
b)前記第一抽出工程で使用された焙煎粉砕コーヒー豆充填カラムに、125~150℃の水を、カラム容積1Lあたり1~10kg/hの流速で供給し、カラム容積1Lあたり0.5~5.0kgの量のコーヒー抽出液を得る第二抽出工程、
c)前記第二抽出工程で得られたコーヒー抽出液を蒸発濃縮する工程、および、
d)前記第一抽出工程で得られたコーヒー抽出液と、前記蒸発濃縮されたコーヒー抽出液とを混合する工程、
を含む、前記方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コーヒー特有の香りが高められ、かつ雑味が抑えられたコーヒー抽出液を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第一抽出工程および第二抽出工程で抽出カラムをそれぞれ複数本使用する場合の、本発明のコーヒー抽出液の製造方法の模式図を示す。
図2図2は、ドリップ抽出、連続多管抽出(濃縮なし)および連続多管抽出(濃縮あり)で調製したコーヒー抽出液の官能評価試験の結果を示す。
図3図3は、第一抽出工程で得られたコーヒー抽出液を、さらに揮発性香気成分を豊富に含有する抽出液(アロマ)と抽出残渣に分画し、得られた抽出残渣を第二抽出工程で得られたコーヒー抽出液と混合して蒸発濃縮工程を行い、その後、揮発性香気成分を豊富に含有する前記抽出液(アロマ)と前記蒸発濃縮混合液とを混合して本発明のコーヒー抽出液を製造する方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.コーヒー抽出液の製造方法
本発明は、一態様では、a)焙煎粉砕コーヒー豆が充填されたカラムに、70~120℃の水を供給してコーヒー抽出液を得る第一抽出工程、b)前記第一抽出工程で使用された焙煎粉砕コーヒー豆充填カラムに、125~150℃の水を供給してコーヒー抽出液を得る第二抽出工程、c)前記第二抽出工程で得られたコーヒー抽出液を蒸発濃縮する工程、および、d)前記第一抽出工程で得られたコーヒー抽出液と、前記蒸発濃縮されたコーヒー抽出液とを混合する工程、を含む、コーヒー抽出液の製造方法である。これにより、コーヒー特有の香りが高められ、かつ雑味が抑えられたコーヒー抽出液を製造することが可能になる。なお、本明細書において、「コーヒー特有の香り」とは、コーヒーの挽きたての甘い香りを意味するものである。
【0012】
1-1.焙煎粉砕コーヒー豆
本明細書において、「焙煎粉砕コーヒー豆」とは、コーヒー生豆を加熱して煎り上げる工程、すなわち「焙煎工程」を経たコーヒー豆を粉砕して得られたものを意味する。本発明において、焙煎粉砕コーヒー豆に用いるコーヒー豆の産地や品種は特に限定されない。例えば、コーヒー豆の産地としてはブラジル、コロンビア、タンザニア、モカ、キリマンジェロ、マンデリン、ブルーマウンテンなどが挙げられ、コーヒー豆の品種としてはアラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種など等が挙げられる。コーヒー豆は単一産地または単一品種のものを用いても、異なる産地や品種のものを組み合わせて用いてもよい。本発明のコーヒー抽出液の製造方法で使用するコーヒー豆の品種は特に限定されないが、アラビカ種豆またはロブスタ種豆を用いることが好ましい。
【0013】
本発明において、コーヒー生豆から焙煎コーヒー豆を得るための焙煎方法や焙煎条件は特に限定されるものではない。例えば、直火式、熱風式、半熱風式、炭火式、遠赤外線式、マイクロ波式、過熱水蒸気式などの方法で、水平(横)ドラム型、垂直(縦)ドラム型、垂直回転ボウル型、流動床型、加圧型などの装置を用いることができ、コーヒー豆の種別に対応して、所定の目的に応じた焙煎度(ライト、シナモン、ミディアム、ハイ、シティ、フルシティ、フレンチ、イタリアン)に仕上げればよい。
【0014】
本発明に用いる焙煎粉砕コーヒー豆において、焙煎コーヒー豆を得るための焙煎温度は、特に限定されるものではないが、好ましい焙煎温度は100~300℃であり、より好ましくは150~250℃、特に好ましくは170~220℃である。また、焙煎コーヒー豆を得るための焙煎時間も特に限定されるものではないが、好ましくは5~30分であり、より好ましくは10~25分、特に好ましくは15~20分である。さらに、焙煎コーヒー豆の焙煎度も、特に限定されるものではないが、焙煎度を色差計で測定したL値を指標として、好ましくは10~30、より好ましくは10~25、特に好ましくは15~25となるように焙煎するのがよい。焙煎度の測定としては、粉砕した豆をセルに投入し、十分にタッピングした後、分光式色彩計にて測定する。分光式色彩計としては、日本電色工業株式会社製SE-2000などを使用できる。
【0015】
また、本発明の焙煎粉砕コーヒー豆を得るための粉砕方法は特に限定されるものではなく、乾式粉砕や湿式粉砕等の一般的な方法を用いることができる。
【0016】
1-2.コーヒー抽出液
本明細書において、「コーヒー抽出液」というときは、コーヒー豆より抽出された液体をいう。コーヒー抽出液としては、焙煎コーヒー豆を水などの溶媒で抽出することにより得られる抽出液、当該抽出液を希釈または濃縮したもの、およびコーヒー豆またはその粉砕物を含有するスラリー等が挙げられる。また、「コーヒー抽出液」を適宜希釈し、任意にその他の原料と混合することで、コーヒー飲料を得ることができる。
【0017】
1-3.第一抽出工程
本発明のコーヒー抽出液の製造方法では、低温でコーヒー抽出液を抽出する第一抽出工程と、それに続く第一抽出工程で使用された焙煎粉砕コーヒー豆を用いて高温でコーヒー抽出液を抽出する第二抽出工程を含む(図1)。
【0018】
コーヒー特有の香気成分は熱による分解を受けやすく、コーヒー特有の香気成分を多く含むコーヒー抽出液を得るためには、新鮮なコーヒー焙煎豆を用いて低温での抽出することが好ましい。そのため、本発明のコーヒー抽出液の製造方法では、第一抽出工程として、焙煎粉砕コーヒー豆が充填されたカラムに、70~120℃の水を供給してコーヒー抽出液を得る工程を含む。また、本発明のコーヒー抽出液の製造方法における抽出温度は、好ましくは90~110℃、より好ましくは95~105℃である。
【0019】
本発明のコーヒー抽出液の製造方法の第一抽出工程で使用される抽出カラムのカラム容積は特に限定されないが、好ましくは10~50L、より好ましくは15~30L、さらにより好ましくは20~25Lである。
【0020】
また、本発明のコーヒー抽出液の製造方法の第一抽出工程では、抽出工程中で焙煎粉砕コーヒー豆充填カラムの温度を維持することが好ましい。第一抽出工程におけるカラム温度は好ましくは70~120℃、より好ましくは90~110℃、さらにより好ましくは95~105℃である。
【0021】
本発明のコーヒー抽出液の製造方法の第一抽出工程において、焙煎粉砕コーヒー豆充填カラム容積1Lあたりに水を供給する速度は特に限定されないが、カラム容積1Lあたり1.0~10.0kg/hの流速で水を供給することが好ましく、カラム容積1Lあたり2.0~7.0kg/hの流速で水を供給することがより好ましく、カラム容積1Lあたり3.0~5.0kg/hの流速で水を供給することがさらにより好ましい。なお、本明細書において、例えば、カラム容積1Lあたり1.0~10.0kg/hの流速で水を供給するとは、使用するカラム容積が5Lの場合、カラムに対して5.0~50.0kg/hの流速で水を供給することを意味するものである。
【0022】
本発明のコーヒー抽出液の製造方法の第一抽出工程で得られるコーヒー抽出液の抽出率は特に限定されないが、好ましくは10.0~23.0%、より好ましくは12.0~21.0%、さらにより好ましくは14.0~20.0%である。
【0023】
また、本発明のコーヒー抽出液の製造方法の第一抽出工程で得られるコーヒー抽出液のコーヒー固形分濃度は特に限定されないが、好ましくはBrix値で19.0~36.0%、より好ましくは22.0~34.0%、さらにより好ましくは25.0~32.0%である。
【0024】
なお、Brix値は、糖度計や屈折計などを用いて20℃で測定された屈折率を、ICUMSA(国際砂糖分析法統一委員会)の換算表に基づいてショ糖溶液の質量/質量パーセントに換算した値であり、飲料中の可溶性固形分含有量を表す。単位は「Bx」、「%」又は「度」と表記する場合もある。飲料のBrix値が低ければ、糖質を含めた飲料中の可溶性固形分の含有量が低いこととなる。
【0025】
本発明のコーヒー抽出液の製造方法の第一抽出工程では、コーヒー特有の香気成分を豊富に含むコーヒー抽出液を得るという観点から、焙煎粉砕コーヒー豆が充填された抽出カラムを直列的に複数連結して連続的に抽出することが好ましい(図1)。第一抽出工程における抽出カラム本数は、好ましくは2本以上、より好ましくは2~10本、特に好ましくは3~6本である。複数の抽出カラムを用いる場合、例えば、焙煎粉砕コーヒー豆が充填された一本目の抽出カラムに70~120℃の水を供給してコーヒー抽出液を取得し、次いで、一本目の抽出カラムより取得したコーヒー抽出液を焙煎粉砕コーヒー豆が充填された二本目の抽出カラムに供給するというように、順次抽出カラムを変えて連続的にコーヒー抽出液を抽出することができる。
【0026】
また、本発明のコーヒー抽出液の製造方法で使用される抽出カラムの容積は特に限定されない。抽出カラムに充填する焙煎粉砕コーヒー豆の充填密度も特に限定されないが、湿潤後の焙煎粉砕コーヒー豆の量で0.20~0.50kg/L(カラム容積1Lあたり湿潤後の焙煎粉砕コーヒー豆0.2~0.5kg)であることが好ましく、0.25~0.40kg/Lであることがより好ましく、0.28~0.35kg/Lであることがさらにより好ましい。
【0027】
また、抽出カラムから採取するコーヒー抽出液の量も、カラム容積や、カラムに充填された焙煎粉砕コーヒー豆の量によって異なるため特に限定されないが、好ましくはカラム容積1Lあたり0.05~0.50kg、より好ましくはカラム容積1Lあたり0.08~0.30kg、特に好ましくはカラム容積1Lあたり0.10~0.20kgである。なお、前述の通り、本発明には、焙煎粉砕コーヒー豆が充填された抽出カラムを直列的に複数連結して連続的に抽出する態様も含まれるが、前記カラム容積1Lあたりのコーヒー抽出液の採取量は、抽出カラム1本あたりの採取量である。
【0028】
一態様では、第一抽出工程の後に、第一抽出工程で得られたコーヒー抽出液を、さらに水蒸気蒸留、減圧水蒸気蒸留、蒸留、減圧蒸留などの方法を用いて、揮発性香気成分を豊富に含有する抽出液(アロマ)と抽出残渣に分画することもできる(図3)。また、前記抽出残渣は、後述の第二抽出工程の後に、第二抽出工程で得られたコーヒー抽出液と混合し、まとめて後述の蒸発濃縮工程を行うこともできる(図3)。さらに、前記分画工程で得られた揮発性香気成分を豊富に含有する抽出液(アロマ)の一部または全部と、前記蒸発濃縮混合液とを混合して本発明のコーヒー抽出液を製造することもできる。前記のような態様とすることにより、コーヒー特有の良好な香味をより豊富に含み、かつコーヒー抽出液濃度がより高められたコーヒー抽出液を製造することができる。
【0029】
1-4.第二抽出工程
本発明のコーヒー抽出液の製造方法では、前記第一抽出工程の後に、第一抽出工程で使用された焙煎粉砕コーヒー豆充填カラムに、比較的高温の水を供給してコーヒー抽出液を得る第二抽出工程を含む(図1)。
【0030】
本発明のコーヒー抽出液の製造方法の第二抽出工程では、第一抽出工程で使用された焙煎粉砕コーヒー豆を充填したカラムが使用される。本発明のコーヒー抽出液の製造方法における第二抽出工程の抽出温度は125~150℃、好ましくは125~140℃、より好ましくは125~135℃である。
【0031】
本発明のコーヒー抽出液の製造方法の第二抽出工程で使用される抽出カラムのカラム容積は特に限定されないが、好ましくは10~50L、より好ましくは15~30L、さらにより好ましくは20~25Lである。
【0032】
また、本発明のコーヒー抽出液の製造方法の第二抽出工程では、抽出工程中で焙煎粉砕コーヒー豆充填カラムの温度を維持することが好ましく、第二抽出工程におけるカラム温度は好ましくは125~150℃、より好ましくは125~140℃、さらにより好ましくは125~135℃である。
【0033】
本発明のコーヒー抽出液の製造方法の第二抽出工程では、焙煎粉砕コーヒー豆充填カラム容積1Lあたりに水を供給する速度は特に限定されないが、カラム容積1Lあたり1.0~10.0kg/hの流速で水を供給することが好ましく、カラム容積1Lあたり2.0~8.0kg/hの流速で水を供給することがより好ましく、カラム容積1Lあたり4.0~6.0kg/hの流速で水を供給することがさらにより好ましい。
【0034】
本発明のコーヒー抽出液の製造方法の第二抽出工程で得られるコーヒー抽出液の抽出率は特に限定されないが、好ましくは4.0~14.0%、より好ましくは6.0~12.0%、さらにより好ましくは8.0~12.0%である。
【0035】
また、本発明のコーヒー抽出液の製造方法の第二抽出工程で得られるコーヒー抽出液のコーヒー固形分濃度は特に限定されないが、好ましくはBrix値で0.3~3.0%、より好ましくは0.5~2.5%、さらにより好ましくは1.0~2.0%である。
【0036】
なお、Brix値は、前述の通り、糖度計や屈折計などを用いて20℃で測定された屈折率を、ICUMSA(国際砂糖分析法統一委員会)の換算表に基づいてショ糖溶液の質量/質量パーセントに換算した値であり、飲料中の可溶性固形分含有量を表す。
【0037】
第二抽出工程で使用する抽出カラムの本数は特に限定されないが、高濃度のコーヒー抽出液を得るという観点から、焙煎粉砕コーヒー豆が充填された抽出カラムを直列的に複数連結して連続的に抽出することが好ましい(図1)。第二抽出工程における抽出カラム本数は、好ましくは2本以上、より好ましくは2~10本、特に好ましくは3~6本である。複数の抽出カラムを用いる場合、例えば、焙煎粉砕コーヒー豆が充填された一本目の抽出カラムに125~150℃の水を供給してコーヒー抽出液を取得し、次いで、一本目の抽出カラムより取得したコーヒー抽出液を焙煎粉砕コーヒー豆が充填された二本目の抽出カラムに供給するというように、順次抽出カラムを変えて連続的にコーヒー抽出液を抽出することができる。
【0038】
また、本発明のコーヒー抽出液の製造方法で使用される抽出カラムの容積は特に限定されない。抽出カラムに充填する焙煎粉砕コーヒー豆の充填密度も特に限定されないが、湿潤後の焙煎粉砕コーヒー豆の量で0.2~0.5kg/Lであることが好ましく、0.25~0.40kgであることがより好ましく、0.28~0.35kg/Lであることがさらにより好ましい。
【0039】
また、第二抽出工程において抽出カラムから採取するコーヒー抽出液の量は特に限定されないが、好ましくはカラム容積1Lあたり0.5~5.0kg、より好ましくはカラム容積1Lあたり0.8~3.0kg、特に好ましくはカラム容積1Lあたり1.0~1.5kgである。
【0040】
1-5.蒸発濃縮工程
本発明のコーヒー抽出液の製造方法は、前記第二抽出工程の後に、第二抽出工程で得られたコーヒー抽出液を蒸発濃縮する工程を含む(図1)。
第二抽出工程は、第一抽出工程で使用された焙煎粉砕コーヒー豆を充填したカラムを用いるため、高温で抽出しても、コーヒー抽出液の抽出効率はそれほど高くない。また、高温でコーヒーを抽出すると、雑味成分も抽出液中に多く含まれてしまう。そこで、本発明のコーヒー抽出液の製造方法では、第二抽出工程後のコーヒー抽出液を蒸発濃縮することで、コーヒー抽出液の濃度を高めると共に、雑味成分を揮発させてコーヒー抽出液中の雑味を抑えることができる。
【0041】
本発明のコーヒー抽出液の製造方法において、コーヒー抽出液の蒸発濃縮後のコーヒー抽出液中の濃度は、好ましくはBrix値で25~65%、より好ましくは35~60%、特に好ましくは45~58%である。
【0042】
本発明のコーヒー抽出液の製造方法において、蒸発濃縮工程における加熱温度は好ましくは100~120℃、より好ましくは105~115℃、特に好ましくは108~112℃である。
【0043】
また、一態様では、前記第一抽出工程で得られたコーヒー抽出液から分画した抽出残渣と前記第二抽出工程で得られたコーヒー抽出液を混合して蒸発濃縮することもできる(図3)。
【0044】
1-6.混合工程
本発明のコーヒー抽出液の製造方法では、第一抽出工程で得られたコーヒー抽出液と、第二抽出工程後に蒸発濃縮されたコーヒー抽出液とを混合する工程を含む(図1)。前述の通り、第一抽出工程では低温(70~120℃)で抽出することでコーヒー特有の良好な香味が維持されたコーヒー抽出液を得ることができる。また、第二抽出工程後に蒸発蒸留することで、雑味が抑えられた高濃度のコーヒー抽出液を得ることができる。そのため、第一抽出工程で得られたコーヒー抽出液と、第二抽出工程後に蒸発濃縮されたコーヒー抽出液とを混合することで、コーヒー特有の香りが高められ、かつ雑味を抑えられたコーヒー抽出液を製造することができる。
【0045】
本発明のコーヒー抽出液の製造方法において、第一抽出工程で得られたコーヒー抽出液と、第二抽出工程後に蒸発濃縮されたコーヒー抽出液との混合比率は特に限定されず、混合後のコーヒー抽出液の所望のBrix値となるように、適宜、第一抽出工程で得られたコーヒー抽出液と、第二抽出工程後に蒸発濃縮されたコーヒー抽出液とを混合することができる。本発明のコーヒー抽出液の製造方法において、第一抽出工程で得られたコーヒー抽出液と、第二抽出工程後に蒸発濃縮されたコーヒー抽出液とを混合して得られるコーヒー抽出液の濃度は、Brix値で好ましくは20~40%、より好ましくは25~37%、特に好ましくは30~35%である。
【0046】
一態様では、第一抽出工程で得られたコーヒー抽出液から分画した揮発性香気成分を豊富に含有する前記抽出液(アロマ)の一部または全部と、第一抽出工程で得られたコーヒー抽出液から分画した抽出残渣と第二抽出工程で得られたコーヒー抽出液とを混合して蒸発濃縮した蒸発濃縮混合液とを混合し、本発明のコーヒー抽出液を製造することもできる。
【0047】
1-7.その他
本発明のコーヒー抽出液の製造方法では、第二抽出工程においてコーヒー抽出液を得た後に、カラム内の抽出後の焙煎粉砕コーヒー豆を廃棄すること、カラムを洗浄すること、および洗浄後のカラムに新しい焙煎粉砕コーヒー豆を充填することを含めることもできる。また、前述の新しい焙煎粉砕コーヒー豆が充填されたカラムを、次の第一抽出工程に使用することもできる。
【0048】
本発明のコーヒー抽出液の製造方法には、加熱殺菌工程を含めることもできる。本発明のコーヒー抽出液の製造方法に加熱殺菌工程を含める場合、加熱殺菌方法は特に限定されず、FP殺菌やUHT殺菌などの公知の方法を用いることができる。例えば、コーヒー抽出液自体を加熱滅菌後に容器詰めする方法や、コーヒー抽出液を容器詰めした後に加熱殺菌する方法などにより、加熱殺菌処理されたコーヒー抽出液を製造することができる。
また、本発明のコーヒー抽出液の製造方法には、必要に応じて凍結工程を含めることもできる。
【0049】
2.コーヒー抽出液におけるコーヒー特有の香りを高め、かつ雑味を抑える方法
本発明は、一態様では、a)焙煎粉砕コーヒー豆が充填されたカラムに、70~120℃の水を供給してコーヒー抽出液を得る第一抽出工程、b)前記第一抽出工程で使用された焙煎粉砕コーヒー豆充填カラムに、125~150℃の水を供給してコーヒー抽出液を得る第二抽出工程、c)前記第二抽出工程で得られたコーヒー抽出液を蒸発濃縮する工程、および、d)前記第一抽出工程で得られたコーヒー抽出液と、前記蒸発濃縮されたコーヒー抽出液とを混合する工程、を含む、コーヒー抽出液におけるコーヒー特有の香りを高め、かつ雑味を抑える方法である。これにより、コーヒー抽出液におけるコーヒー特有の香りを高め、かつ雑味を抑えることができる。
【0050】
前記のコーヒー抽出液におけるコーヒー特有の香りを高め、かつ雑味を抑える方法において、焙煎粉砕コーヒー豆、第一抽出工程、第二抽出工程、蒸発濃縮工程、および混合工程については、「1.コーヒー抽出液の製造方法」の項で記載した通りである。また、前記のコーヒー抽出液におけるコーヒー特有の香りを高め、かつ雑味を抑える方法では、第二抽出工程においてコーヒー抽出液を得た後に、カラム内の抽出後の焙煎粉砕コーヒー豆を廃棄すること、カラムを洗浄すること、および洗浄後のカラムに新しい焙煎粉砕コーヒー豆を充填することを含めることもできる。なお、前述の新しい焙煎粉砕コーヒー豆が充填されたカラムを、次の第一抽出工程に使用することもできる。
【0051】
また、一態様では、第一抽出工程の後に、前記第一抽出工程で得られたコーヒー抽出液を、さらに水蒸気蒸留、減圧水蒸気蒸留、蒸留、減圧蒸留などの方法を用いて、揮発性香気成分を豊富に含有する抽出液(アロマ)と抽出残渣に分画することもできる(図3)。また、前記抽出残渣は、前記第二抽出工程の後に、第二抽出工程で得られたコーヒー抽出液と混合し、まとめて蒸発濃縮工程を行うこともできる(図3)。さらに、前記分画工程で得られた揮発性香気成分を豊富に含有する抽出液(アロマ)の一部または全部と、前記蒸発濃縮混合液とを混合することもできる。このような態様とすることで、コーヒー抽出液におけるコーヒー特有の香りをより高め、かつ雑味をより抑えることができる。
【実施例
【0052】
以下、実施例をもって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
1.実施例1
(1)焙煎粉砕コーヒー豆の製造
コーヒー生豆(ブラジル産、アラビカ種)をコーヒー焙煎機(Probat社製)で、L値が20になるように焙煎した。その後、前記焙煎コーヒー豆をロールミル(GEA社製)で粉砕して、焙煎粉砕コーヒー豆を得た。
【0054】
(2)コーヒー抽出液の製造
(i)第一抽出工程
抽出カラム(GEA社製:容積23L)に上記(1)で製造した焙煎粉砕コーヒー豆に水で湿潤処理(20wt%)行った後、豆重量7.0kg/カラムとなるように充填し、その後、100℃の水を、抽出温度100℃および流速80kg/時でカラムに供給し、採取液量が3kgになるように抽出を行った。次に2番目のカラムに焙煎粉砕コーヒー豆を、湿潤後豆7.0kg/カラムとなるように充填し、2本連結した状態で同様に、採取液量が3kgになるように抽出を行った。さらに、3番目のカラムに焙煎粉砕コーヒー豆を、湿潤後豆7.0kg/カラムとなるように充填し、3本連結した状態で同様に採取液量が3kgになるように抽出を行った。3回の抽出が行われた1番目のカラムの豆はその後、第二抽出液を採取する工程に送られ、新たに4番目のカラムに焙煎粉砕コーヒー豆を、湿潤後豆7.0kg/カラムとなるように充填し、3本連結した状態で同様に、採取液量が3kgになるように抽出を行った。当該抽出工程を繰り返し(1~18バッチ)、安定した抽出率およびBrix値が得られる10~18バッチの抽出液を混合して、第一抽出工程後のコーヒー抽出液を得た。各バッチの測定結果を表1に示す。最終的な第一抽出工程後のコーヒー抽出液の液量は29.82kg、Brixが29.21%、平均抽出率が17.92%であった。
【0055】
【表1】
【0056】
(ii)第二抽出工程
上記(i)の第一抽出工程で使用した焙煎粉砕コーヒー豆が充填されたカラムを最大4本で直列的に連結した。その後、130℃の水を、抽出温度130℃および流速120kg/時となるようにカラムに供給し、採取液量が25kg、標的抽出率が10%となるように抽出を行った。4回の抽出が終了したカラムから豆を排出した後、新しい豆が充填され、第一抽出工程で新たに使用した。当該抽出工程を繰り返し行い(4~18バッチ:1~3バッチは第一抽出工程が終了していないため第二抽出工程はない。)、安定した抽出率およびBrix値が得られる10~18バッチの抽出液を混合して、第二抽出工程後のコーヒー抽出液を得た。各バッチの測定結果を表1に示す。最終的な第二抽出工程後のコーヒー抽出液の液量は247.74kg、Brixが1.80%、平均抽出率が9.16%であった。
【0057】
(iii)蒸発蒸留工程
上記(ii)で得られた第二抽出工程後のコーヒー抽出液約250kgを、抽出液中のコーヒー固形分濃度が50%となるように、加熱温度110℃、蒸発温度50℃で濃縮した。上記(ii)で得られた第二抽出工程後のコーヒー抽出液の蒸発蒸留後の液量は5.62kg、Brixが55.18%であった。
【0058】
(iv)官能評価試験のための試料の調製
・実施例1
上記(i)の第一抽出工程で得られたコーヒー抽出液1.0kgと、上記(iii)の第二抽出工程で得られたコーヒー抽出液を蒸発濃縮して得られたコーヒー抽出液0.297kgとを混合して、サンプル実施例1(連続多管(濃縮あり))を調製した。サンプル実施例1の液量は12.9kg、Brixは34.0%であった。
【0059】
・比較例1
上記(i)の第一抽出工程で得られたコーヒー抽出液1.0kgと、上記(ii)の第二抽出工程で得られたコーヒー抽出液8.3kgとを混合して、サンプル比較例1(連続多管(濃縮なし))を調製した。サンプル比較例1の液量は9.3kg、Brixは4.75%であった。
【0060】
・比較例2
抽出カラムに上記(1)で製造した焙煎粉砕コーヒー豆をドリップ抽出して、サンプル比較例2(ドリップ)を調製した。サンプル比較例2の液量は100g、Brixは1.7%であった。
【0061】
(3)コーヒー抽出液の官能評価試験
次に、上記(2)で製造した実施例1、比較例1および比較例2を、それぞれBrixが1.3となるように熱水で希釈して、官能評価試験用のサンプル飲料を得た。その後、各サンプル飲料について、専門パネラー(4名)による官能評価を実施した。官能評価では、専門パネラーが各サンプル飲料30mLを飲み、コーヒー特有の香りと雑味の観点から、0~100点で評価した。
<評価基準>
70~100点:コーヒー特有の香味は強く感じられる一方、雑味はほとんど感じられない。
50~69点:コーヒー特有の香味はやや感じられるものの、雑味も少し感じられる。
30~59点:コーヒー特有の香味はあまり感じられるものの、雑味は感じられる。
0~29点:コーヒー特有の香味はほとんど感じられず、雑味は強く感じられる。
【0062】
評価結果を表2および図2に示す。表2および図2から明らかなように、本発明の製造方法に基づいてコーヒー抽出液を製造することで、コーヒー特有の香りが高められ、かつ雑味を抑えられたコーヒー抽出液が得られることが示された。
【0063】
【表2】
【0064】
2.製造例1
本発明のコーヒー抽出液の製造方法では、図3に示す通り、前述の第一抽出工程で得られたコーヒー抽出液を、さらに水蒸気蒸留、減圧水蒸気蒸留、蒸留、減圧蒸留などの方法を用いて、揮発性香気成分を豊富に含有する抽出液(アロマ)と抽出残渣に分画することもできる。さらに、得られた抽出残渣を前述の第二抽出工程で得られたコーヒー抽出液と混合して蒸発濃縮を行うこともできる(図3)。そして、上記分画工程で得られた揮発性香気成分を豊富に含有する抽出液(アロマ)の一部または全部と、前記蒸発濃縮混合液とを混合して、本発明のコーヒー抽出液を製造することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、コーヒー特有の香りが高められ、かつ雑味を抑えられたコーヒー抽出液を提供するための新たな手段に関するものであるため、産業上の利用性が高い。
図1
図2
図3