(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】デジタルパソロジーのための感度分析
(51)【国際特許分類】
G16H 30/00 20180101AFI20240207BHJP
【FI】
G16H30/00
(21)【出願番号】P 2020566284
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(86)【国際出願番号】 EP2019063972
(87)【国際公開番号】W WO2019229126
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-26
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ファン レーウェン,マリニュス バスティアーン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィムベルガー-フリードル,ラインホルト
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0030305(US,A1)
【文献】国際公開第2017/010397(WO,A1)
【文献】米国特許第09754383(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルパソロジー画像データをデジタル処理して病理スコアデータを生成する、及び、前記病理スコアデータの感度分析のための装置であって、前記感度分析は、どのように前記病理スコアデータが、前記病理スコアデータの決定又は生成において使用されるパラメータに対する摂動によって影響されるかの評価を意味し、当該装置は、
- 入力ユニットと、
- 処理ユニットと、
を含み、
前記入力ユニットは、病理試料の画像を含むデジタルパソロジー画像データを得るように構成されており、
前記処理ユニットは、
前記デジタルパソロジー画像データ内の対象を複数の候補対象に分類し、1つ以上の検出閾値及び/又は検出確率に従って、前記複数の候補対象内の少なくとも1つの候補対象に第1の病理学的状態を割り当て、ここで、自動の形態学的特徴検出が、前記候補対象を特定するために利用され、
前記第1の病理学的状態が割り当てられた前記複数の候補対象内の候補対象に基づき、前記病理試料の最初の病理スコアデータを得て、
摂動関数に従って前記1つ以上の検出閾値及び/又は検出確率を摂動させて、摂動された検出閾値及び/又は摂動された検出確率を生成し、ここで、前記摂動関数は、階段関数を利用する選択、確率分布を利用するランダム選択、予め提供された値の範囲を利用する選択、代数関数を利用する選択、乱数発生器を利用する選択、又はカオスアトラクタ関数を利用する選択を含んで、前記摂動された検出閾値及び/又は摂動された検出確率を生成するように構成され、
前記1つ以上の摂動された検出閾値及び/又は摂動された検出確率に従って、前記複数の候補対象内の少なくとも1つの候補対象、又は、摂動された複数の候補対象内の少なくとも1つの候補対象に、前記第1の病理学的状態を割り当て直し、さらに、
前記1つ以上の摂動された検出閾値及び/又は摂動された検出確率に従って前記第1の病理学的状態が割り当て直された前記候補対象に基づき、前記病理試料の更新された病理スコアデータを得て、前記最初の病理スコアデータ及び前記更新された病理スコアデータを比較して、前記病理スコアデータの感度を得る、
ように構成されている、装置。
【請求項2】
前記1つ以上の検出閾値及び/又は検出確率は、前記デジタルパソロジー画像データ内の候補対象の存在を決定する際の前記自動の形態学的特徴検出における変動を特徴付ける、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記1つ以上の検出閾値は、前記デジタルパソロジー画像データ内の対象を前記複数の候補対象に自動的に分類する確率を特徴付ける、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記検出閾値及び/又は検出確率は、病理試料から発せられ、前記デジタルパソロジー画像データにおいて表される光の強度レベル及び/又は波長範囲を特徴付ける、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記病理試料から発せられ、前記デジタルパソロジー画像データにおいて表される光の強度レベル及び/又は波長範囲は、バイオマーカーの発現の相対レベルを示す、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記処理ユニットは、
複数の摂動された検出閾値及び/又は摂動された検出確率を得て、前記デジタルパソロジー画像データの病理スコア
データの感度関数を生成し、任意的に、前記病理スコア
データの変化を提供するのに必要な相対検出閾値変化を算出するようにさらに構成されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記処理ユニットは、摂動の前及び/又は後に前記第1の病理学的状態が割り当てられた前記デジタルパソロジー
画像データの関心領域内の候補対象の数をカウントすることによって、又は、摂動の前及び/又は後に前記第1の病理学的状態が割り当てられた前記デジタルパソロジー
画像データの関心領域内の候補対象の数のパーセントスコアを計算することによって、前記最初の病理スコアデータ及び/又は前記更新された病理スコアデータを得るように構成されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記処理ユニットは、
関心のある第1のバイオマーカーの陽性発現を示す少なくとも1つの候補対象に第2の病理学的状態を割り当て、
前記関心のある第1のバイオマーカーの陰性発現を示す少なくとも1つの候補対象に第3の病理学的状態を割り当て、
前記第2及び第3の病理学的状態にある前記デジタルパソロジー
画像データの関心領域内の候補対象を使用した計算を行うことによって、前記最初の病理スコアデータを得て、
前記第2及び第3の病理学的状態を前記候補対象に割り当てるために使用される前記検出閾値を摂動させ、摂動後に前記候補対象に前記第2及び第3の病理学的状態を割り当て直し、さらに、
摂動後に前記第2及び第3の病理学的状態にある候補対象を使用した計算を行うことによって、更新された病理スコアデータを得る、
ようにさらに構成されている、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
出力ユニット
をさらに含み、
前記出力ユニットは、前記病理スコアデータの感度を、任意的に前記最初の病理スコアデータ及び/又は前記更新された病理スコアデータと組み合わせて、ユーザに出力する、及び/又は、臨床閾値に対する前記病理スコア
データの感度を出力するように構成されている、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記処理ユニットは、前記デジタルパソロジー画像データを複数のセクターに空間的にサブサンプリングするようにさらに構成され、前記最初の病理スコアデータ及び前記更新された病理スコア
データが、各セクターに対して得られ、前記処理ユニットは、前記各セクターに対する前記最初の病理スコアデータ及び前記更新された病理スコア
データを使用して前記デジタルパソロジー画像データの空間感度マスクを生成するように構成され、さらに、
前記出力ユニットは、前記空間感度マスクを、任意的に前記デジタルパソロジー画像データの上に空間的に整合して重ね合わされた半透明オーバーレイとして、ユーザに表示するように構成されている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記病理試料は、組織病理試料又は細胞病理試料である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
- デジタルパソロジー画像取得装置と、
- 請求項1乃至11のいずれか一項に記載の装置と、
を含むデジタルパソロジーシステムであって、
前記デジタルパソロジー画像取得装置は、病理試料を受け、前記病理試料を自動的に分析し、従ってデジタルパソロジー画像データを取得し、さらに、前記デジタルパソロジー画像データを前記装置に通信するように構成されている、デジタルパソロジーシステム。
【請求項13】
デジタルパソロジー画像データをデジタル処理して病理スコアデータを生成する、及び、前記病理スコアデータの感度分析
を行うための、コンピュータが実行する方法であって、前記感度分析は、どのように前記病理スコアデータが、前記病理スコアデータの決定又は生成において使用されるパラメータに対する摂動によって影響されるかの評価を意味し、当該方法は、
a)病理試料の画像を含むデジタルパソロジー画像データを得るステップと、
b)前記デジタルパソロジー画像データ内の対象を複数の候補対象に分類するステップと、
c)1つ以上の検出閾値及び/又は検出確率に従って、前記複数の候補対象内の少なくとも1つの候補対象に第1の病理学的状態を割り当てるステップであり、自動の形態学的特徴検出が、前記候補対象を特定するために利用される、ステップと、
d)前記第1の病理学的状態が割り当てられた前記複数の候補対象内の候補対象に基づき、前記病理試料の最初の病理スコアデータを得るステップと、
e)摂動関数に従って前記1つ以上の検出閾値及び/又は検出確率を摂動させて、摂動された検出閾値及び/又は摂動された検出確率を生成するステップであり、前記摂動関数は、階段関数を利用する選択、確率分布を利用するランダム選択、予め提供された値の範囲を利用する選択、代数関数を利用する選択、乱数発生器を利用する選択、又はカオスアトラクタ関数を利用する選択を含んで、前記摂動された検出閾値及び/又は摂動された検出確率を生成するように構成される、ステップと、
f)前記1つ以上の摂動された検出閾値及び/又は摂動された検出確率に従って、前記複数の候補対象内の少なくとも1つの候補対象、又は、摂動された複数の候補対象内の少なくとも1つの候補対象に、前記第1の病理学的状態を割り当て直すステップと、
g)前記1つ以上の摂動された検出閾値及び/又は摂動された検出確率に従って前記第1の病理学的状態が割り当てられた前記候補対象に基づき、前記病理試料の更新された病理スコアデータを得て、前記最初の病理スコアデータを前記更新された病理スコアデータと比較して、前記病理スコアデータの感度を得るステップと、
を含む、
コンピュータが実行する方法。
【請求項14】
コンピュータプログラムであって、当該プログラムがコンピュータ又は処理ユニットによって実行されると、前記コンピュータに請求項13に記載の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータプログラムを記憶したコンピュータ読取可能媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルパソロジー画像データを処理して病理スコアデータを生成する及び病理スコアデータの感度分析のための装置、並びに、関連する方法、デジタルパソロジーシステム、コンピュータプログラム要素、及びコンピュータ読取可能媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
病理学の分野では、デジタルパソロジー画像の分析態様を自動化する傾向が続いている。デジタル画像処理技術は、標準化された様式で多数の入力画像を分析するのに適切である。しかし、そのようなアプローチは、病理画像を得るために使用される試料の初期調製(例えば、組織病理スライドを調製、保存、及び検査する際に存在する正確な技術及び条件等)における変動に大きく依存している。
【0003】
ここでは、感度分析が言及され、例えば感度分析に関する記事、https://en.wikipedia.org/wiki/Sensitivity_analysisにおいて、さらなる背景の詳細を見ることができる。感度分析は、どのようにして数学的モデル又はシステムの出力の不確実性を(数値的又は別の方法で)分割し、その入力における異なる不確実性の原因に割り当てることができるかを研究することである。
【0004】
コンピュータビジョンにおいて、Nobuyuki Otsu(大津展之)にちなんで名付けられた大津法(例えばhttps://en.wikipedia.org/wiki/Otsu%27s methodを参照)が、クラスタリングに基づく画像を閾値処理する(threshold)こと又は二値画像へのグレーレベル画像の縮小を自動的に行うために使用されている。アルゴリズムは、画像が二峰性ヒストグラムに従う2つのクラスのピクセル(前景ピクセル及び背景ピクセル)を含んでいると仮定し、次に、それらの複合スプレッド(クラス内分散)が最小又は(ペアワイズ平方距離の合計が一定であるため)同等となるように、それらのクラス間分散が最大となるように、2つのクラスを分ける最適閾値を計算する。その結果、大津法は、大まかに、Fisher判別分析の一次元離散アナログである。大津法は、Jenks最適化法にも直接関連している。
【0005】
特許文献1は、肝臓における線維症のステージを決定する方法を記載している。この方法は、肝臓に関する入力データを得るステップであり、入力データは、第二高調波発生ベースのイメージングシステムを使用して生成される、ステップ;肝臓に関する入力データから肝臓の複数の形態学的特徴を特定するステップ;特定された複数の形態学的特徴に基づき複数の測定値を生成するステップ;及び、生成された複数の測定値に基づき、肝臓における線維症のステージを決定するステップ;を含む。
【0006】
特許文献2は、細胞のイメージング、生物物理学的測定基準への細胞画像の変換、及び細胞及び被験者レベルでの予後指標への生物物理学的測定基準の変換を含む、試料内の細胞の状態を評価するための方法、システム、及び装置を記載している。自動化された装置、プロセス、及び分析についても記載されている。
【0007】
非特許文献1は、組織病理染色プロセスにおける既知の矛盾を克服することを目的としたデジタル処理技術について論じている。しかし、そのような技術は、さらに改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2013/0030305号(A1)
【文献】国際公開第2016/138041号(A2)
【非特許文献】
【0009】
【文献】“A Method for Normalizing Histology Slides for Quantitative Analysis”by Macenko et al., published in the proceedings of ISBI 2009, pp. 1107 to 1110, IEEE 2009, 978-1-4244-3932-4/09
【文献】“PD-L1 Immunohistochemistry Assays for Lung Cancer: Results from Phase 1 of the Blueprint PD-L1 IHC Assay Comparison Project” by Hirsch, et. al, in the Journal of Thoracic Oncology, Vol. 12, No. 2, pp. 208-222
【文献】“Interpretation Manual for PD-L1 IHC 22C3 pharmDx is CE-IVD-Marked”by Dako (TM) (Agilent Technology Solutions (TM))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、デジタルパソロジーイメージングのアプローチを改善する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、付随の独立請求項の発明特定事項によって解決され、さらなる実施形態が従属請求項に組み込まれている。
【0012】
第1の態様によると、デジタルパソロジー画像データをデジタル処理して病理スコアデータを生成する、及び、病理スコアデータの感度分析のための装置が提供される。当該装置は:
- 入力ユニット;及び、
- 処理ユニット;
を含む。
【0013】
入力ユニットは、病理試料の画像を含むデジタルパソロジー画像データを得るように構成される。
【0014】
処理ユニットは、デジタルパソロジー画像データ内の対象を複数の候補対象に分類し、1つ以上の検出閾値及び/又は検出確率に従って、複数の候補対象内の少なくとも1つの候補対象に第1の病理学的状態を割り当て、第1の病理学的状態が割り当てられた複数の候補対象内の候補対象に基づき、病理試料の最初の病理スコアデータを得て、摂動関数に従って1つ以上の検出閾値及び/又は検出確率を摂動させて、摂動された検出閾値及び/又は摂動された検出確率を生成し、1つ以上の摂動された検出閾値及び/又は摂動された検出確率に従って、複数の候補対象内の少なくとも1つの候補対象に、第1の病理学的状態を割り当て直し、1つ以上の摂動された検出閾値及び/又は摂動された検出確率に従って第1の病理学的状態が割り当て直された候補対象に基づき、病理試料の更新された病理スコアデータを得て、さらに、最初の病理スコアデータ及び更新された病理スコアデータを比較して、病理スコアデータの感度を得るように構成される。
【0015】
従って、スコアを生成するために使用された分析において使用される1つ以上の閾値における現実的な変動に対する病理スコアデータの感度についてのフィードバックを生成して提供することが可能である。閾値は、例えば、デジタルパソロジー画像内の対象のピクセル又は領域の分類の確率に関してもよい。任意的に又は組み合わせて、閾値は、病理学的試料におけるバイオマーカーの発現を表す強度及び/又は波長に関してもよい。
【0016】
言い換えると、デジタルパソロジー画像に基づき、状態の診断が行われることを可能にする病理スコアを自動的に生成するだけでなく、医療従事者に、病理スコアが分析におけるわずかな変化に対してどの程度敏感であるかの評価を提供することができる。これは、出力される病理スコアが境界値又はその近傍にある場合に特に重要である可能性があり、この場合、境界値をわずかに上回るか又はわずかに下回る病理スコアによって、代替の治療の選択肢がもたらされることになる。医療従事者は、意思決定及び報告において病理学的技術の感度についての情報を使用することができ、任意的に、示された問題の領域の手動検査を行うことができる。従って、病理プロセスは、より迅速で信頼性が高いものとなる。
【0017】
任意的に、1つ以上の検出閾値及び/又は検出確率は、デジタルパソロジー画像データ内の候補対象の存在を決定する際の自動の形態学的特徴検出における変動を特徴付ける。
【0018】
従って、細胞、細胞核、又は膜等の特徴を検出する際の病理学的スコアリングアプローチの感度を試験することができる。「形態学的クロージング(morphological closing)」等の形態学的特徴検出のアルゴリズムは、その有効性を変えるいくつかの入力引数を有してもよい。最初の入力引数及びランダムに摂動された入力引数を使用して形態学的特徴検出のいくつかのバージョンを生成することによって、特定のデジタルパソロジー画像を用いて考慮した際の形態学的特徴検出のアルゴリズムに対する病理学的スコアリングアプローチの感度を考慮することができる。
【0019】
任意的に、1つ以上の検出閾値は、デジタルパソロジー画像データ内の対象を複数の候補対象に自動的に分類する確率を特徴付ける。
【0020】
任意的に、検出閾値及び/又は検出確率は、病理試料から発せられ、デジタルパソロジー画像データにおいて表される光の強度レベル及び/又は波長範囲を特徴付ける。
【0021】
典型的に、病理試料はバイオマーカーで処理され、バイオマーカーは、バイオマーカーが材料標的と接触している場合に第1の色に試料を染色し、バイオマーカーが材料標的と接触していない場合に第2の色に試料を染色する(又は染色しない)。そのような染色は、例えば、光学顕微鏡及び/又は(蛍光でタグされたバイオマーカーの場合には)蛍光顕微鏡を使用して観察することができる。バイオマーカー適用プロトコル、試料調製、保存、及び/又は観察における変化は全て、病理学的スコアの提供における感度につながる。従って、この任意の実施形態では、病理試料から放たれる光の強度レベル及び/又は波長範囲における変化が、その試料に関する最終的な病理学的スコアに及ぼす影響を評価することが可能である。
【0022】
任意的に、病理試料から放たれ、デジタルパソロジー画像データにおいて表される強度レベル及び/又は波長範囲は、バイオマーカーの発現の相対レベルを示す。
【0023】
任意的に、処理ユニットは、複数の摂動された検出閾値及び/又は摂動された検出確率を得て、デジタルパソロジー画像データの病理スコアの感度関数を形成し、任意的に、病理スコアの変化を提供するのに必要な相対検出閾値変化を算出するようにさらに構成される。
【0024】
従って、複数の摂動された検出閾値に基づき感度関数を生成することは、感度関数の変化率が、離散閾値点ではなく、1つ以上の検出閾値及び/又は確率の変化率として評価されることを可能にする。このことから、例えば、病理スコアにおいて予測不可能な変化をもたらす可能性が最も低い、特定の試料タイプ及び他の分析設定に対する最適な閾値を提供することができる。
【0025】
任意的に、処理ユニットは、摂動の前及び/又は後に第1の病理学的状態が割り当てられたデジタルパソロジーデータの関心領域内の候補対象の数をカウントすることによって、又は、摂動の前及び/又は後に第1の病理学的状態が割り当てられたデジタルパソロジーデータの関心領域内の候補対象の数のパーセントスコアを計算することによって、最初の病理スコアデータ及び/又は更新された病理スコアデータを得るように構成される。
【0026】
任意的に、処理ユニットは、関心のある第1のバイオマーカーの陽性発現を示す少なくとも1つの候補対象に第2の病理学的状態を割り当て、関心のある第1のバイオマーカーの陰性発現を示す少なくとも1つの候補対象に第3の病理学的状態を割り当て、第2及び第3の病理学的状態にあるデジタルパソロジーデータの関心領域内の候補対象を使用した計算を行うことによって、最初の病理スコアデータを得て、第2及び第3の病理学的状態を候補対象に割り当てるために使用される検出閾値を摂動させ、摂動後に候補対象に第2及び第3の病理学的状態を割り当て直し、さらに、摂動後に第2及び第3の病理学的状態にある候補対象を使用した計算を行うことによって、更新された病理スコアデータを得るようにさらに構成される。
【0027】
陰性及び陽性のバイオマーカー発現の測定を含む組織病理プロトコルは、行うのが複雑であり、従って、試料調製及びデジタルパソロジー画像のデジタル画像処理における可変測定閾値の効果は、そのような複雑なプロトコルの結果のより正確な評価をもたらし得る。
【0028】
任意的に、当該装置は、
- 出力ユニット
をさらに含む。
【0029】
出力ユニットは、病理スコアデータの感度を、任意的に最初の病理スコアデータ及び/又は更新された病理スコアデータと組み合わせて、ユーザに出力する、及び/又は、臨床閾値に対する病理スコアの感度を出力するように構成される。
【0030】
従って、医療従事者には、内部試験変動に対する病理試験の感度の評価が迅速且つ便利に提供される。これまで、閾値変動が病理試験に及ぼす影響を認知することは困難であった。
【0031】
任意的に、処理ユニットは、デジタルパソロジー画像データを複数のセクターに空間的にサブサンプリングするように、及び、各セクターに対する最初の病理スコアデータ及び更新された病理スコアを得て、各セクターに対する最初の病理スコアデータ及び更新された病理スコアを使用してデジタルパソロジー画像データの空間感度マスクを生成するようにさらに構成される。出力ユニットは、空間感度マスクを、任意的にデジタルパソロジー画像データの上に空間的に整合して重ね合わされた半透明オーバーレイとして、ユーザに表示するように構成される。
【0032】
従って、デジタルパソロジー画像から病理スコアデータを生成するステップを行う可能性がある場合に、閾値変動に対する病理分析パイプラインの感度の影響の直観的でユーザフレンドリーな評価が医療従事者に提供される。
【0033】
任意的に、病理試料は、組織病理試料又は細胞(病理)試料である。
【0034】
第2の態様によると、デジタルパソロジーシステムが提供される。
【0035】
当該デジタルパソロジーシステムは:
- デジタルパソロジー画像取得装置;及び、
- 第1の態様又はその実施形態のうちの1つに従った装置;
を含み、
デジタルパソロジースキャナが、病理試料を受け、病理試料を自動的に分析し、従ってデジタルパソロジー画像データを取得し、さらに、デジタルパソロジー画像データを装置に通信するように構成される。
【0036】
第3の態様によると、デジタルパソロジー画像データをデジタル処理して病理スコアデータを生成する、及び、病理スコアデータの感度分析の方法が提供される。当該方法は:
a)病理試料の画像を含むデジタルパソロジー画像データを得るステップ;
b)デジタルパソロジー画像データ内の対象を複数の候補対象に分類するステップ;
c)1つ以上の検出閾値及び/又は検出確率に従って、複数の候補対象内の少なくとも1つの候補対象に第1の病理学的状態を割り当てるステップ;
d)第1の病理学的状態が割り当てられた複数の候補対象内の候補対象に基づき、病理試料の最初の病理スコアデータを得るステップ;
e)摂動関数に従って1つ以上の検出閾値及び/又は検出確率を摂動させて、摂動された検出閾値及び/又は摂動された検出確率を生成するステップ;
f)1つ以上の摂動された検出閾値及び/又は摂動された検出確率に従って、複数の候補対象内の少なくとも1つの候補対象、又は、摂動された複数の候補対象内の少なくとも1つの候補対象に、第1の病理学的状態を割り当て直すステップ;及び、
g)1つ以上の摂動された検出閾値及び/又は摂動された検出確率に従って第1の病理学的状態が割り当てられた候補対象に基づき、病理試料の更新された病理スコアデータを得る、及び、最初の病理スコアデータを更新された病理スコアデータと比較して、病理スコアデータの感度を得るステップ;
を含む。
【0037】
任意的に、当該方法は、デジタル組織病理画像データを処理して組織病理スコアデータを生成する、及び、組織病理スコアデータの感度分析の方法である。
【0038】
任意的に、当該方法は、デジタル細胞病理画像データを処理して細胞病理スコアデータを生成する、及び、細胞病理スコアデータの感度分析の方法である。
【0039】
第4の態様によると、コンピュータプログラム要素であって、プログラムがコンピュータ又は処理ユニットによって実行されると、コンピュータに第3の態様の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラム要素が提供される。
【0040】
第5の態様によると、第4の態様のコンピュータプログラム要素を記憶したコンピュータ読取可能媒体が提供される。
【0041】
以下の適用において、「デジタルパソロジー画像データ」という用語は、例えば、デジタル光学顕微鏡又はデジタル蛍光顕微鏡を使用して得られた病理スライドのデジタル表示を意味する。多くのスキャナは、10から40倍拡大の解像度を維持することができる。15mm×20mmの標本の20xスキャンに関連する画像ファイルは、3.6GBにも及ぶ。画像は、例えば、JPEG-2000圧縮を使用して、より管理しやすいサイズに圧縮することができる。画像は、典型的には、走査パラメータ及び走査計画等を含むメタデータを伴う。デジタル組織病理画像では、部分、ブロック及び染色タイプを定める識別子をメタデータに含めることができる。
【0042】
以下の適用において、「病理」という用語は、組織、細胞、及び体液試料を検査することによる医学的状態の診断を指す。特に、「組織病理」は、例えば、樹脂ブロックで生検組織標本が調製され、次に、樹脂ブロックの生検組織標本が、スライドガラスの上で調製される連続したスライスに切断されることを指す。「細胞病理」は、遊離細胞又は組織微小断片の検査を指す。
【0043】
以下の適用において、「病理スコアデータ」という用語は、特定の医学的状態が存在する可能性を提供するための病理(組織病理学的、細胞病理学的)画像の検査を意味する。病理スコアは、組織病理スライドを検査する、及び、ある疾患が存在する条件を満たさない細胞の数とは対照的に、その条件を満たす細胞又は細胞核等の関心対象の数をカウントすることによって導き出すことができる。そのようなものとして、病理スコアは、例えば、デジタルパソロジー画像の単位面積あたりの細胞数として又はパーセンテージとして提供することができる。
【0044】
以下の適用において、「臨床閾値」という用語は、デジタルパソロジー画像データにおいて特定された関心対象のカウントに基づいて医学的状態が存在するということを病理スコアが示すことを意味する。典型的には、臨床閾値の成果は、異なる形態の医学的処置を決めるために使用され得る。
【0045】
以下の適用において、「感度分析」という用語は、病理スコアを決定するため又は生成するために使用されるアルゴリズムにおける内部閾値が変化(又は摂動)した場合に、どのように病理スコアが変化するか及び/又は病理スコアが変化する割合の評価を意味する。そのような内部閾値は、デジタルパソロジーシステムのエンドユーザには目に見えないことがある。加えて、複雑なプロトコルでは、多くの内部閾値が存在することがあるため、それらの閾値に対する変化の複雑さ及びデジタルパソロジー画像データ処理パイプラインへのそれらの影響は、経験豊富なユーザでさえもすぐに圧倒する。従って、感度分析は、分析パイプラインにおいて使用されるパラメータに対する変化(摂動)がどのように病理スコアに影響を与え得るかの現実的な評価を提供する。
【0046】
従って、以下の適用において、「感度関数」という用語は、分析パイプラインにおける内部閾値のレベルと、同じ入力デジタルパソロジー画像データに適用される病理スコアに及ぶそれらの影響との関係を意味する。
【0047】
以下の適用において、「摂動」という用語は、デジタルパソロジー画像分析パイプラインの内部閾値のうち1つ以上に加えられた変化を意味する。当業者は、デジタルパソロジー画像分析パイプラインの内部閾値の数及びタイプが、分析パイプラインによって行われているプロトコルに大きく依存するということを正しく理解することになる。シンプルなケースでは、画像分析パイプラインは、0.1の吸収レベルにて従来の方式で閾値処理するヘマトキシリンで染色されたデジタル組織病理画像を入力として受けることができる。摂動のシンプルな例は、0.095又は0.15のレベルにてデジタル組織病理画像を閾値処理するために使用される閾値を変えることである。このシンプルな摂動は、入力されたデジタル組織病理画像においてより多くの又はより少ない特徴が存在する原因となり、従って、任意の後続の分類又は形態アルゴリズムは、例えば、より多くの又はより少ない数の細胞を検出することになり、最終的な病理スコアにおいて変化をもたらす。
【0048】
当然ながら、複雑な分析パイプラインは、変動可能な10又は100の個々の閾値又は決定確率を有し、高次元のあり得る摂動空間をもたらすことがある。摂動を提供する1つのアプローチは、所与の不確実性範囲にわたって多くの中から1つの決定閾値又は決定確率を変え、さらに、病理スコアへの影響を記録する感度分析アプローチである。このプロセスは、他の閾値又は決定能力に対して繰り返されてもよい。この技術はシンプルであるけれども、閾値の同時の変動を評価しないため、入力空間全体を分析することはない。当然ながら、摂動空間全体にわたる回帰分析又は偏微分分析等の他のより複雑な感度分析技術も適用することができる。
【0049】
以下の適用において、「自動の形態学的特徴検出」という用語は、(完全であろうと部分的であろうと)細胞、細胞核、及び細胞膜等、デジタルパソロジー画像内の候補対象を特定することができるアルゴリズムを意味する。形態学的オープニング(morphological opening)又は形態学的クロージング等の技術が、自動の形態学的特徴検出を行うために使用されてもよい。当然ながら、これらのアルゴリズムは、それらの性能を定める多くの入力パラメータを有し、これらの入力パラメータの全て又は一部が、感度分析の一部として摂動され得る。
【0050】
以下の適用において、本願に関して「バイオマーカー」という用語は、特定の発現されたタンパク質又は他の生物学的信号の特異的検出(単離)を可能にする、病理(組織病理、細胞病理)試料において検出される対象又は分子を意味する。対象又は分子は、例えば、バイオマーカー標的へのフルオロ活性タンパク質の結合によって又はバイオマーカーを標的とする染色によるバイオマーカー標的の染色によって検出することができる。
【0051】
以下の適用において、「デジタルパソロジー画像取得装置」(又はデジタルパソロジー画像スキャナ)という用語は、例えば、組織病理学的に調製されたスライド又は代替的に細胞病理試料等の病理スライドの高解像度及び高品質のデジタル画像を提供することができる、特殊化及び自動化されたデジタル光学分析システムを意味する。デジタルパソロジー画像取得装置は、コンピュータネットワークを介してPACSシステムに接続されて、例えば、コンピュータネットワーク内の遠隔コンピュータ上で取得された画像のさらなる分析を可能にしてもよい。
【0052】
従って、デジタルパソロジー画像の自動評価が、使用される画像処理アルゴリズムの内部閾値のために不正確であるリスクが高い場合に、ユーザ(例えば、病理医等)に警告するフィードバック機構を提供することが本願の基本的なアイデアである。分析パイプラインにおいて使用されるアルゴリズムの選ばれた閾値に関する病理スコアの感度を表すことが、病理医が診断を確立する際にこれを考慮することができるように提案される。
【0053】
本発明の上記及び他の態様は、続いて記載される実施形態から明らかになり、続いて記載される実施形態を参照して解明されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
本発明の例証的な実施形態が、以下の図面を参照して記載されることになる。
【
図1】第3の態様による方法を示した概略図である。
【
図2】a)からd)は、アルゴリズムパラメータの変動がデジタル画像分析パイプラインに及ぼす影響を概略的に示した図である。
【
図3】a)及びb)は、デジタルパソロジー画像データにおいて検出される候補対象に対する検出閾値の調整の効果を概略的に実証した図である。
【
図4】シンプルなデジタルパソロジー画像分析パイプラインを概略的に例示した図である。
【
図5】DAB吸収に対する閾値の関数としてのtumour proportion scoreの例となるプロットを示した図である。
【
図6】複雑なデジタルパソロジー画像分析パイプラインを概略的に例示した図である。
【
図7】a)及びb)は、デジタルパソロジー画像データ感度情報の出力表示の例を概略的に例示した図である。
【
図8】第1の態様による装置を概略的に例示した図である。
【
図9】第2の態様によるデジタルパソロジーシステムを概略的に例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
免疫組織化学染色が、癌性腫瘍にみられるもの等の異常細胞の診断において広く使用されている。特定の分子マーカーは、増殖又は細胞死(アポトーシス)等の特定の細胞事象の特徴である。抗体抗原相互作用の可視化は、多くの方法で成し遂げることができる。最も一般的な例では、抗体は、発色反応を触媒することができるペルオキシダーゼ等の酵素に結合され(免疫ペルオキシダーゼ染色)、或いは、抗体は、フルオレセイン又はローダミン等のフルオロフォアにタグされ得る(免疫蛍光)。
【0056】
非特許文献2は、臨床試験において使用される4つのPD-L1 IHCアッセイの分析的及び臨床的比較性について論じている。
【0057】
特定の染色プロトコルは、病理試料に基づき病理学的スコアが得られることを可能にするように基準に従って評価される。例えば、非特許文献3は、ホルマリン固定パラフィン包埋の非小細胞肺癌及びメラノーマ組織内のPD-L1を検出するためのモノクローナルマウス抗PD-L1クローン22C3を使用した定量的免疫組織化学エッセイ、及び、「KEYTRUDA(商標)」を用いた治療のための指標として「Tumour Proportion Score」を導き出すためのこの試験の使用について論じている。しかし、染色を含む多くの病理プロトコルが利用可能であり、本願において論じられる技術の適用から利益を受けるということを当業者は正しく理解することになる。本願において論じられるPD-L1試験は、一例として提供されている。
【0058】
例えば、非特許文献3の
図21を参照すると、PD-L1染色組織の一例が示されている。茶色は、細胞膜におけるPD-L1マーカーの過剰発現を示している。矢印は、マーカーの発現強度における局所変動を示している。青色の細胞は、対比染色を使用して着色されている。
【0059】
一般に、免疫組織化学マーカーのスコアリングは2つの段階を含む。第一に、関心のある細胞又は領域のセグメンテーションが(例えば、それらの外観に基づき)行われる。第二に、関心領域における染色色強度の定量化が行われる。典型的には、2つ以上の強度レベルが区別される。一例として、「Her2」染色の場合、4つのレベル(0、1+、2+、及び3+)が、腫瘍細胞の膜における色強度の量、及び、膜のうちどの領域部分が染色されているかに基づき区別される。類似の原理がER及びPRのような核染色プロトコルにも適用される。
【0060】
典型的な免疫組織化学的評価には、多くの重大な意味を持つ段階がある。例えば、生存腫瘍細胞は、他の細胞型から区別する必要があり得る。或いは又は組み合わせて、特定のバイオマーカーを発現する細胞を、特定のバイオマーカーを発現しない細胞から区別する必要がある。これらの評価は、画像処理アルゴリズムを使用してデジタルパソロジー画像を分析することによってデジタル方式で行うことができる。しかし、画像処理アルゴリズムは、1つ以上の決定閾値を有してもよい。
【0061】
例えば、生存腫瘍細胞に属するとして核をどのように分類するかを決めることが必要であり得る。結果として生じる確率は、0.5において閾値処理することができるが、より低い(又はより保守的な)又はより高い(より攻撃的な)閾値等、他のレベルも選択することができる。任意的に、デジタルイメージングアルゴリズムにおいて適用される検出閾値及び/又は検出確率は、専門家判断を使用した評価基準に従って設定されてもよい。例えば、標的条件の例となるデジタルパソロジー画像のコーパス上で訓練された機械学習アルゴリズム(ディープラーニングアルゴリズム)を提供することができ、ここでは、注釈づけが専門家によって行われている。
【0062】
ほとんどの場合、アルゴリズムにおいて使用される閾値の正確な値は、病理スコアの結果を有意に変化させるものではない。しかし、病理スコアの評価における不正確さは、病理スコアが臨床的決定レベルに近い場合、又は所与の試験が画像処理アルゴリズムにおいて使用される閾値又はパラメータの1つに対して感度が高い場合に問題となる恐れがある。次に、これらの問題に対する解決法について論じられる。
【0063】
本発明は、まず、第3の態様の方法のステップ及びその任意の実施形態に従って、広く記載されることになる。
【0064】
第3の態様は、デジタルパソロジー画像データをデジタル処理して病理スコアデータを生成する、及び、病理スコアデータの感度分析の方法を提供し、当該方法は:
a)病理試料の画像を含むデジタルパソロジー画像データを得るステップ10;
b)デジタルパソロジー画像データ内の対象を複数の候補対象に分類するステップ11;
c)1つ以上の検出閾値及び/又は検出確率に従って、複数の候補対象内の少なくとも1つの候補対象に第1の病理学的状態を割り当てるステップ12;
d)第1の病理学的状態が割り当てられた複数の候補対象内の候補対象に基づき、病理試料の最初の病理スコアデータを得るステップ13;
e)摂動関数に従って1つ以上の検出閾値及び/又は検出確率を摂動させて、摂動された検出閾値及び/又は摂動された検出確率を生成するステップ14;
f)1つ以上の摂動された検出閾値及び/又は摂動された検出確率に従って、複数の候補対象内の少なくとも1つの候補対象に第1の病理学的状態を割り当てるステップ15;
g)1つ以上の摂動された検出閾値及び/又は摂動された検出確率に従って第1の病理学的状態が割り当てられた候補対象に基づき、病理試料の更新された病理スコアデータを得るステップであり、最初の病理スコアデータ及び更新された病理スコアデータの比較が、病理スコアデータの感度を定める、ステップ16;
を含む。
【0065】
当業者は、以下のアルゴリズムが、例えば、コンピュータプロセッサによって実装されるデジタル画像処理アルゴリズムとして適用されるということを正しく理解することになる。
【0066】
ステップa)では、病理スコアデータを生成する及び関連する感度分析のために必要とされる最初の画像データが取得される。デジタルパソロジー画像の感度分析がその取得時間の近くに必要とされる場合、デジタルパソロジー画像は、例えば、デジタルパソロジーシステムの一部としてのデジタル光学顕微鏡又はデジタル蛍光顕微鏡から取得することができる。記録保存された画像に対して感度分析が行われることになる場合、PACSアーカイブに記憶されたオリジナルのデジタルパソロジー画像を、医療機関のコンピュータネットワークを介してPACSシステムから取得し、例えばPC端末、ハンドヘルドコンピュータ、又は別のコンピュータ処理手段に送信することができる。従って、この技術は、記録保存されたデジタルパソロジー画像だけでなく、画像取得時のデジタルパソロジー画像にも適用可能である。
【0067】
未処理のデジタルパソロジー画像は、細胞核、部分的細胞核、細胞膜、癌細胞、線維芽細胞、及び免疫細胞等の多くの対象の可視化表現を含んでいる。特定の免疫組織学的プロトコルでは、これらの対象のサブセットが染色及び分析されることになる可能性が高い。先に言及した「PD-L1 IHC 22C3」試験の具体例では、デジタルパソロジー画像において生存腫瘍細胞を特定することが一般的に必要である。
【0068】
任意的に、ノイズを抑制するためにオリジナルのデジタルパソロジー画像を平滑化することを含む前処理ステップが提供されてもよい。ヘマトキシリン染色データの場合、典型的には、ステップa)において得られたオリジナルのデジタルパソロジー画像のピクセルも、例えば、フルスケール強度の10%未満の色成分を有するピクセルを除去するために、色の特徴付けを受ける。当然ながら、色特徴付けアルゴリズムは、本アプローチに従って閾値処理され得る構成パラメータを有する。任意的に、形態学的クロージングアルゴリズムが、続いて、平滑化され色で特徴付けられたデジタルパソロジー画像に適用されて、クロマチンパターンにおける明るいスポットを補正する。
【0069】
従って、ステップb)では、デジタルパソロジー画像データ内の対象を、(後の分析において必要とされることになる)候補対象及び後の分析において必要とされない他の対象に分類するプロセスが存在する。「PD-L1 IHC 22C3」試験の場合、候補対象は生存腫瘍細胞である。従って、細胞質染色アーチファクト、免疫細胞、正常細胞、壊死細胞、及び壊死細胞片は、分析から除外される。
【0070】
任意的に、分類プロセスは、部分的に又は完全に、ディープラーニングアプローチに従って行われてもよい。そのようなアプローチでは、スライド画像全体(デジタルパソロジー画像データ)の前処理に続いて、本技術に適用することができる種々のタイプのディープラーニングアプローチが、教師あり学習、教師なし学習、半教師あり学習、及びマルチプルインスタンス学習として広く定められる。
【0071】
ディープラーニングアルゴリズムは、後の層への入力として前の層の出力をとる層のカスケードを含む。各層における成分は、典型的には、例えば特徴抽出のタスクを行う非線形関数である。ディープラーニングアルゴリズムは、教師なし及び/又は教師ありの学習段階を含んでもよい。ディープラーニングのアプローチでは、臨界パラメータは、典型的には、確率(ソフトマックス層の出力)に対する閾値、又は、導き出されたネットワークの出力における1つ以上の不確実性/信頼度の尺度に対する閾値である。
【0072】
任意的に、分類プロセスは、教師あり学習アルゴリズムを使用して部分的に又は完全に行われてもよい。教師あり学習技術は、デジタル入力画像データ内の項目間のマッピングをそれらの適切なラベル(「T細胞」等)に対して表す関数を推測する。教師あり学習アルゴリズムの例は、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)又はサポートベクターマシン(SVM)である。
【0073】
任意的に、分類プロセスは、教師なし学習アルゴリズムを使用して部分的に又は完全に行われてもよい。教師なし学習技術は、ラベルなし画像における隠れた構造を記述する関数を推測する。教師なし学習アプローチの例は、主成分分析及びk平均分析である。
【0074】
任意的に、分類プロセスは、半教師あり学習アルゴリズムを使用して部分的に又は完全に行われてもよい。
【0075】
任意的に、分類プロセスは、マルチプルインスタンス学習アルゴリズムを使用して部分的に又は完全に行われてもよい。
【0076】
当業者は、適用されることになる特定の免疫組織学的プロトコルに応じて、他の対象又は対象の組み合わせが特定され得るということを正しく理解することになる。「PD-L1 IHC 22C3」プロトコルの特定のケースにおいて、少なくとも100の候補対象が、試験スコアを生成する前に分類されるべきであるが、他の病理試験プロトコルでは、100以上又は100以下の候補対象が特定される必要があり得る。
【0077】
任意的に、生存腫瘍細胞を発見し、それらに候補対象としての状態を割り当てる技術は、小細胞及び線維芽細胞を除去するためにデジタルパソロジー画像上に形態学的オープニングアルゴリズムを適用することである。次に、デジタルパソロジー画像内の隣接する核を拡大して1つの対象を形成するために、形態学的クロージングアルゴリズムが適用される。その後、バックグラウンド領域を除去するために、腫瘍領域において穴埋めアルゴリズムが適用される。最後に、形態学的オープニングアルゴリズムのさらなる反復が、腫瘍領域の境界を平滑化するために適用され、従って、以前の形態学的アルゴリズム動作から生じるアーチファクトを補償する。
【0078】
任意的に、ディープラーニング、セグメンテーション、特徴抽出、教師なし学習、クラスタリング、K平均、主成分分析、又は、サポートベクターマシン若しくは畳み込みニューラルネットワーク等の教師あり学習アプローチ等、広範囲の画像処理技術を使用して、デジタルパソロジー画像データ内の対象の候補対象への分類を行うことができる。
【0079】
上述の段落において論じた画像処理アルゴリズムは、広範囲のパラメータを用いて構成可能であるということに留意することが重要である。シンプルな例として、任意の前処理ステップが、10%の強度値においてデジタルパソロジー画像のピクセルを閾値処理することができるが、代わりに、5%又は15%の値を選ぶことができる。選ばれた閾値処理値と、例えばステップb)においてデジタルパソロジー画像内のどの対象を、最終的に候補対象として分類することができるかということとの間には複雑な相互作用が存在する。ステップb)において対象を分類するために使用される形態学的アルゴリズム及び分類アルゴリズムも、候補対象の分類に影響を与える構成パラメータのセットの完全な範囲を有する。
【0080】
図2a)は、デジタルパソロジー画像20を例示しており、この図において、ソリッドマスク(solid mask)22が、結合組織に属する領域又はバックグラウンド領域、従って生存腫瘍細胞24ではない領域を示すために使用されている。
【0081】
ステップc)では、第1の病理学的状態(組織病理学的状態、細胞病理学的状態)が、1つ以上の検出閾値及び/又は検出確率に従って、複数の候補対象内の1つ以上の候補対象に割り当てられる。本発明が適用され得る広範なデジタルパソロジー試験を考慮すると、候補対象への第1の病理学的状態の割り当ては、後の診断結果を決定する際の小さなステップであると考えられ得る。具体例として、「PD-L1 IHC 22C3」プロトコルの一部が、PD-L1バイオマーカーに対して陽性の細胞膜染色を示す所与の領域における生存腫瘍細胞数をカウントするための要件である。この具体例において、候補対象は生存腫瘍細胞であり、第1の病理学的状態の割り当ては、考慮される候補対象が「PD-L1バイオマーカーに対して陽性」であるか又はその同等のデジタル表現であることである。例えば、デジタルパソロジー画像の所与の領域上で、候補対象は、列ベクトルによってデータ構造で表すことができ、論理「ゼロ」はPD-L1バイオマーカーの発現が無いことを表し、論理「1」はPD-L1バイオマーカーの発現があることを表している。或いは、データ構造は、PD-L1バイオマーカー発現の相対的割合を表す列ベクトルを含むことができる。
【0082】
ステップd)では、病理試料に対する最初の病理スコア(又は最初の組織病理スコア、最初の細胞病理スコア)が生成される。現在考慮されている特定の「PD-L1 IHC 22C3」プロトコルの場合、このステップは、試料内に存在する全ての生存腫瘍細胞(陽性及び陰性)に対する部分的又は完全な膜染色を示す生存腫瘍細胞(候補対象)の割合である最初の病理スコアとして「tumour proportion score」を計算することを含む。しかし、異なるプロトコルについて、異なるタイプの細胞を候補対象として特定することができ、異なる計算を行って、最初の病理スコアを得ることができるということを当業者は正しく理解することになる。
【0083】
任意的に、最初の病理スコアは、出力方法に関連して以下において論じられることになる技術の1つであるグラフィカルユーザインターフェース(GUI)によってユーザに表示されてもよい。
【0084】
通常、ユーザは、そのようにして得られた最初の病理スコアで満足する。しかし、ステップb)及びc)に関連して論じられるように、画像処理及び分類技術はパラメータ化可能であり、画像処理及び分類アルゴリズムがパラメータ化される方法における小さな変更が、病理スコアの変化をもたらす可能性がある。
【0085】
図3a)は、ステップa)、b)、及びc)が適用されたデジタルパソロジー画像30を概略的に例示している。中空円32
iは、(特定の例に対して)生存不能腫瘍細胞を表し、黒丸34
iは、生存腫瘍細胞を例示している。デジタルパソロジー画像30では、I
T1=0.1を超える強度を有するピクセルにオリジナルのデジタルパソロジー画像を閾値処理する前処理ステップが適用され、結果として、画像において特定された対象の約50%が候補対象(生存腫瘍細胞等)として分類される。
【0086】
図3b)は、I
T2=0.15を超える強度を有するピクセルにオリジナルのデジタルパソロジー画像を閾値処理する前処理ステップが適用されたデジタルパソロジー画像36を概略的に例示している。この場合、多くの生存腫瘍細胞が閾値処理するステップによってデジタルパソロジー画像から誤って除去され、結果として、画像における特定された対象の約12.5%が候補対象(生存腫瘍細胞等)として分類されたように思われる。これは、どのようにしてアルゴリズムパラメータの小さな変化が、病理結果において有意な変化(有意な感度)をもたらし得るかの一例である。
【0087】
ステップe)では、摂動関数に従って、検出閾値及び/又は検出確率に摂動が適用される。言い換えると、
図3a)及び3b)において考慮されるシンプルな例では、I
T1=0.1のカットオフピクセル強度を使用して最初の病理スコアデータを計算し、I
T2=0.15の摂動された検出閾値が、摂動された検出閾値として適用された。このシンプルな例において、摂動関数は、従って、0.05の正の階段関数である。
【0088】
図4は、デジタルパソロジー画像分析パイプラインの1つの変数に対する単純摂動関数の生成(最初のピクセル閾値処理)を例示している。
【0089】
摂動関数発生器44が、画像レベル閾値の3つの値を含む列ベクトルIT3を提供する。候補対象42として分類することができるか又はできない対象を含む最初のデジタルパソロジー画像40が入力され、閾値処理関数46が3回適用されて、摂動関数によって生成される3つの異なる閾値レベルで生成される3つの中間画像が生成される。3つの中間画像は、画像分類器48に入力され、最初の閾値に適用される摂動関数のレベルに応じて異なる数の候補対象を含むデジタルパソロジー出力画像50a、50b、及び50cが得られる。
【0090】
当然ながら、摂動関数発生器44は、多くの異なる方法で摂動関数を生成することができる。当業者は、摂動関数の出力が、分析パイプラインにおける段階及び摂動が適用される特定の関数に適切な値の範囲にスケールされるということを正しく理解することになる。任意的に、摂動関数発生器44は、ガウス分布、一様分布、又はカイ二乗分布等の確率分布からランダムに検出閾値及び/又は検出確率を選択するように構成される。摂動関数発生器44は、予め提供された値の範囲、代数関数、所定のスケーリング内で動作する乱数発生器、又はカオスアトラクタ関数等から検出閾値を選択するように構成されてもよい。
【0091】
摂動関数は、歴史的に得られた較正及び訓練データに基づいてもよい。例えば、病理医の集団を使用して、試験スライドを分類することができ、これによって、病理医の集団からの結果において観察された変動から摂動値の現実的な範囲を導き出すことが可能になる。次に、導き出された現実的な範囲を、摂動関数として提供することができる。
【0092】
ステップf)では、1つ以上の摂動された検出閾値及び/又は摂動された検出確率に従って、複数の候補対象内の1つ以上の候補対象又は摂動された複数の候補対象内の少なくとも1つの候補対象に第1の病理学的状態を割り当て直すステップが提供される。
【0093】
摂動された検出閾値を用いて、摂動の振幅及びその摂動に対する分析パイプラインの感度に応じて複数の候補対象内のより少ない又はより多い数の候補対象を検出するために、第1の病理学的状態を使用することができる。任意的に、前処理及び/又は分類のステップにおいて適用されるパラメータは摂動され、摂動された複数の候補対象が生成されるということを意味する。言い換えると、PD-L1バイオマーカー検出の具体例を参照すると、ステップa)及びb)において適用されるアルゴリズムの摂動は、複数の候補対象に最初に含まれる一部の対象が摂動された複数の候補対象から除外されることにつながる可能性があり、逆もまた同様である。その後、1つ以上の生存腫瘍細胞(候補対象)に第1の病理学的状態を割り当てるために使用されるアルゴリズムは、検出閾値及び/又は検出能力における変動にも感度が高い場合がある。
【0094】
ステップg)では、病理(組織病理、細胞病理)試料の更新された病理スコアが、第1の病理学的状態が割り当てられた候補対象の変化した数に基づき提供される。更新された病理スコアは、摂動された部分閾値及び/又は確率に従って計算されたため、最初の病理スコアとはわずかに(又は有意に)異なる可能性が高い。従って、最初の病理スコアデータと更新された病理スコアデータとの比較は、特定の分析パイプラインを使用して得られた病理スコアデータの感度を定める。
【0095】
任意的に、検出閾値及び/又は検出確率は、検出条件と考えられてもよい。
【0096】
図2b~2d)は、デジタルパソロジー画像スライド20に存在するTumour Proportion Score(TPS)を決定する際のPD-L1バイオマーカー(陰性及び陽性の発現)の使用の具体例の結果を例示している。それぞれ26b、26c、及び26dとして示された灰色の影が付いた領域は、3つの異なる強度閾値に対するPD-L1バイオマーカーの過剰発現を有した領域を示している。
【0097】
図2b)では、0.1のピクセル強度閾値が適用され、結果として全体のTPSは33%となっている。
【0098】
図2c)では、0.15のピクセル強度閾値が適用され、結果として全体のTPSは5%となっている。
【0099】
図2d)では、0.2のピクセル強度閾値が適用され、結果として全体のTPSは1%となっている。特に、1%のTPSは、PD-L1発現が生じていない状態に対する境界であり、特定の化合物を用いた治療に対する臨界臨床的決定境界を表している。従って、
図2の例示によって表される感度分析及び可変のTPSスコアは、臨床的状況においてデジタルパソロジースコアの感度を医療従事者がより正確に自信を持って評価することを可能にする結果を自動的に提供することができる。
【0100】
Dako(商標)PD-L1バイオマーカーの特定の試験について多く参照されてきたけれども、この特定の試験は、陽性及び陰性のバイオマーカー発現の複雑な評価を含むということが当業者によって正しく理解されることになる。内部の分析パイプラインのパラメータの摂動に対するデジタルパソロジー画像データの感度分析を、よりシンプルな病理学的、組織病理学的、又は細胞病理学的アプローチに対して行うこともできる。
【0101】
任意的に、1つ以上の検出閾値が、「PD-L1」病理スコアの感度を試験することと関連する。
【0102】
例えば、「CD3」試験は、リンパ腫を分類するためのT細胞のマーカーとして使用されることが多くある。
【0103】
例えば、パッケージである、染色された部分をキャプチャするデジタル光学顕微鏡を使用して、CD3プロトコルに従って試料のデジタルパソロジー画像データを得た後で、ソフトウェアイメージングパッケージを使用して、異なる倍率の試料のデジタルパソロジー画像データが得られ(4×、10×、20×、40×)、又は、異なる倍率での複数のデジタルパソロジー画像をデジタル光学顕微鏡自体によってキャプチャすることができる。次に、画像は、1つ以上の臨界検出閾値(パラメータ)によって、関心対象である腫瘍細胞を含む異なる関心のある組織領域に分割される。このセグメンテーション手順に続いて、関心対象である腫瘍細胞を含む腫瘍組織における異なる量の染色(発現レベル)を差別化することができる。同じ腫瘍の異なる領域間のこの差は、腫瘍の不均一性として知られている。従って、特定の発現パターン又は第1の病理学的状態が腫瘍組織の特定の領域に割り当てられ、別の発現パターン及び第2の病理学的状態を腫瘍組織の別の領域に割り当てることができ、さらに別の発現パターン及び少なくとも病理学的状態を別の領域に割り当てることができる。
【0104】
この例では、CD3染色は、i)腫瘍塊の間質内又は腫瘍細胞巣の内部に位置するリンパ球である腫瘍内リンパ球、及びii)腫瘍塊を取り囲むリンパ球である腫瘍周囲のリンパ球を明らかにする。リンパ球については、分布及び密度スコアが適用される。スコアは、0から6に及んだ。0から3に及ぶリンパ球分布スコアは、以下のように定義される:0=組織内のリンパ球の欠如、1=組織の<25%を占めるリンパ球の存在、2=組織の25から50%を占めるリンパ球の存在、及び3=組織の>50%を占めるリンパ球の存在。0から3に及ぶリンパ球密度は、以下のように定義される:0=欠如、1=軽度、2=中程度、及び3=重度。
【0105】
この取得されたデータは、感度分析のために使用することができ、リンパ球を分割する及び/又は特定するために使用されるアルゴリズムのパラメータは、記載されるアルゴリズムに従った摂動に適した1つの検出閾値(パラメータ)である。さらに、定義された検出閾値は、手動で調整することもできる。この定義は、組織の評価の間に病理医が、組織の評価が合理的で客観的に定義された範囲内であるかどうかを証明するのに寄与する。
【0106】
任意的に、1つ以上の検出閾値が、「CD3」病理スコアの感度を試験することと関連している。
【0107】
例えば、「CD8」プロトコルを使用して、腫瘍組織内のエフェクターT細胞を特定することができる。
【0108】
例えば、パッケージである、染色された部分をキャプチャするデジタル光学顕微鏡を使用して、CD8プロトコルに従って試料のデジタルパソロジー画像データを得た後で、ソフトウェアイメージングパッケージを使用して、異なる倍率の試料のデジタルパソロジー画像データが得られ(4×、10×、20×、40×)、又は、異なる倍率での複数のデジタルパソロジー画像をデジタル光学顕微鏡自体によってキャプチャすることができる。
【0109】
次に、画像は、1つ以上の臨界閾値パラメータによって、関心対象である腫瘍細胞を含む異なる関心のある組織領域にデジタル方式で分割される。このセグメンテーション手順に続いて、関心対象である腫瘍細胞を含む腫瘍組織における異なる濃度の染色(発現レベル)がデジタル方式で差別化される。同じ腫瘍の異なる領域間のこの差は、腫瘍の不均一性として知られている。従って、特定の発現パターン又は第1の病理学的状態が腫瘍組織の特定の領域に割り当てられ、別の発現パターン及び第2の病理学的状態を腫瘍組織の別の領域に割り当てることができ、さらに別の発現パターン及び少なくとも病理学的状態を別の領域に割り当てることができる。
【0110】
この例では、CD8染色は、i)腫瘍塊の間質内又は腫瘍細胞巣の内部に位置するリンパ球である腫瘍内リンパ球、及びii)腫瘍塊を取り囲むリンパ球である腫瘍周囲のリンパ球を明らかにする。リンパ球分布及び密度のスコアに影響を与える因子は、例えば、どのくらい正確に間質の領域が分割されるか、及び/又は、CD8陽性判定に対する検出閾値、及び/又は、核検出に対する閾値である。スコアは、0から6に及ぶ。0から3に及ぶリンパ球分布スコアは、以下のように定義される:0=組織内のリンパ球の欠如、1=組織の<25%を占めるリンパ球の存在、2=組織の25から50%を占めるリンパ球の存在、及び3=組織の>50%を占めるリンパ球の存在。0から3に及ぶリンパ球密度は、以下のように定義される:0=欠如、1=軽度、2=中程度、及び3=重度。
【0111】
この取得されたデータは、本願に記載されるアルゴリズムに従った感度分析に使用することができ、第1及び第2の病理学的状態の割り当てに対する基準は、摂動に適した1つの閾値(パラメータ)の例である。腫瘍及びその周囲の組織の異なる領域を比較することによって、従って、異なる閾値を得ることによって、1つの閾値が定義される。さらに、定義された検出閾値は、手動で調整することもできる。この定義は、組織の評価の間に病理医が、組織の評価が合理的で客観的に定義された範囲内であるかどうかを証明するのに寄与する。
【0112】
任意的に、1つ以上の検出閾値が、「CD8」病理スコアの感度を試験することと関連している。
【0113】
例えば、「ER」プロトコル(エストロゲン受容体)は、マンモグラフィースクリーニングプログラムと関連して使用されることが多くある。例えば、パッケージである、染色された部分をキャプチャするデジタル光学顕微鏡を使用して、ERプロトコルに従って試料のデジタルパソロジー画像データを得た後で、ソフトウェアイメージングパッケージを使用して、異なる倍率の試料のデジタルパソロジー画像データが得られ(4×、10×、20×、40×)、又は、異なる倍率での複数のデジタルパソロジー画像をデジタル光学顕微鏡自体によってキャプチャすることができる。
【0114】
次に、画像は、1つ以上の臨界閾値パラメータによって、関心対象である腫瘍細胞を含む異なる関心のある組織領域に分割される。このセグメンテーション手順に続いて、関心対象である腫瘍細胞を含む腫瘍組織における異なる発現レベル間のデジタル方式での差別化が行われる。同じ腫瘍の異なる領域間のこの差は、腫瘍の不均一性として知られている。従って、特定の発現パターン又は第1の病理学的状態が腫瘍組織の特定の領域に割り当てられ、別の発現パターン及び第2の病理学的状態を腫瘍組織の別の領域に割り当てることができ、さらに別の発現パターン及び少なくとも病理学的状態を別の領域に割り当てることができる。
【0115】
この例では、合計スコア(TS)は、割合スコア(PS)と強度スコア(IS)の和であり、0; 2~8に及ぶ。ER及びPRの双方に対する陽性結果が、TS≧3として定義される。割合スコア(PS)が割り当てられ、陽性の核染色を有する腫瘍細胞の割合を表す。PSは、0から5に及び、ここで0=0、1=0~1/100、2=>1/100~1/10、3=>1/10から1/3、4=>1/3から2/3、及び5=>2/3から1である。強度スコア(IS)が割り当てられ、全ての陽性腫瘍細胞の平均染色強度を表す。ISは0から3に及び、ここで0=陰性、1=弱、2=中、及び3=強である。多くの場合、ER及びPRの分析は、1つの診断テストにおいて組み合わされる。
【0116】
この取得されたデータは、感度分析に使用することができ、割合スコアは、本明細書において記載されるアルゴリズムに従った摂動に適した1つの閾値(パラメータ)の例であり、強度スコアは、摂動に適した別の閾値(パラメータ)の例である。腫瘍の異なる領域を比較することによって、従って、異なる閾値を得ることによって、1つの閾値が定義される。さらに、定義された検出閾値は、手動で調整することもできる。この定義は、組織の評価の間に病理医が、組織の評価が合理的で客観的に定義された範囲内であるかどうかを証明するのに寄与する。
【0117】
任意的に、1つ以上の検出閾値が、「ER」病理スコアの感度を試験することと関連している。
【0118】
例えば、パッケージである、染色された部分をキャプチャするデジタル光学顕微鏡を使用して、PRプロトコルに従って試料のデジタルパソロジー画像データを得た後で、ソフトウェアイメージングパッケージを使用して、異なる倍率の試料のデジタルパソロジー画像データが得られ(4×、10×、20×、40×)、又は、異なる倍率での複数のデジタルパソロジー画像をデジタル光学顕微鏡自体によってキャプチャすることができる。
【0119】
次に、画像は、1つ以上の臨界閾値パラメータによって、関心対象である腫瘍細胞を含む異なる関心のある組織領域に分割される。このセグメンテーション手順に続いて、関心対象である腫瘍細胞を含む腫瘍組織における異なる発現レベルが差別化される。同じ腫瘍の異なる領域間のこの差は、腫瘍の不均一性として知られている。従って、特定の発現パターン又は第1の病理学的状態が腫瘍組織の特定の領域に割り当てられ、別の発現パターン及び第2の病理学的状態を腫瘍組織の別の領域に割り当てることができ、さらに別の発現パターン及び少なくとも病理学的状態を別の領域に割り当てることができる。
【0120】
この例では、合計スコア(TS)は、割合スコア(PS)と強度スコア(IS)の和であり、0; 2~8に及ぶ。ER及びPRの双方に対する陽性結果が、TS≧3として定義される。割合スコア(PS)が割り当てられ、陽性の核染色を有する腫瘍細胞の割合を表す。PSは、0から5に及び、ここで0=0、1=0~1/100、2=>1/100~1/10、3=>1/10から1/3、4=>1/3から2/3、及び5=>2/3から1である。強度スコア(IS)が割り当てられ、全ての陽性腫瘍細胞の平均染色強度を表す。ISは0から3に及び、ここで0=陰性、1=弱、2=中、及び3=強である。多くの場合、ER及びPRの分析は、1つの診断テストにおいて組み合わされる。
【0121】
この取得されたデータは、本願において記載されるアルゴリズムに従った感度分析に使用することができる。例えば、割合スコアは、摂動に適した1つの閾値(パラメータ)であり、強度スコアは、摂動に適した別のパラメータの例である。腫瘍の異なる領域を比較することによって、従って、異なる閾値を得ることによって、1つの閾値が定義される。さらに、定義された検出閾値は、手動で調整することもできる。この定義は、組織の評価の間に病理医が、組織の評価が合理的で客観的に定義された範囲内であるかどうかを証明するのに寄与する。
【0122】
任意的に、1つ以上の検出閾値が、「PR」病理スコアの感度を試験することと関連している。
【0123】
例えば、「HER2」プロトコル(ハーセプチン)が、乳がんに対する予測バイオマーカーである乳房組織における異常なレベルのハーセプチンの存在を検出するために使用される。
【0124】
例えば、パッケージである、染色された部分をキャプチャするデジタル光学顕微鏡を使用して、HER2プロトコルに従って試料のデジタルパソロジー画像データを得た後で、ソフトウェアイメージングパッケージを使用して、異なる倍率の試料のデジタルパソロジー画像データが得られ(4×、10×、20×、40×)、又は、異なる倍率での複数のデジタルパソロジー画像をデジタル光学顕微鏡自体によってキャプチャすることができる。
【0125】
次に、画像は、1つ以上の臨界閾値パラメータによって、関心対象である腫瘍細胞を含む異なる関心のある組織領域に分割される。このセグメンテーション手順に続いて、関心対象である腫瘍細胞を含む腫瘍組織における異なる発現レベルが差別化される。同じ腫瘍の異なる領域間のこの差は、腫瘍の不均一性として知られている。従って、特定の発現パターン又は第1の病理学的状態が腫瘍組織の特定の領域に割り当てられ、別の発現パターン及び第2の病理学的状態を腫瘍組織の別の領域に割り当てることができ、さらに別の発現パターン及び少なくとも病理学的状態を別の領域に割り当てることができる。
【0126】
この例では、HER2陰性腫瘍(スコア0)は、腫瘍細胞の<10%の膜性HER2発現を有する。+1のスコアは、腫瘍細胞の>10%における膜性HER2発現に相当し、+2のスコアは、腫瘍細胞の>10%の膜において弱から中程度のHER2発現を有する腫瘍細胞に相当する。腫瘍細胞の>10%における強程度の完全な膜染色は、+3のスコアに相当する。この取得されたデータは、本願のアルゴリズムに従った感度分析に使用することができ、膜性、すなわち空間情報は、摂動に対する1つの閾値(パラメータ)の例であり、強度スコアは、摂動に適した別のパラメータの例である。腫瘍の異なる領域を比較することによって、従って、異なる閾値を得ることによって、1つの閾値が定義される。さらに、定義された検出閾値は、手動で調整することもできる。この定義は、組織の評価の間に病理医が、組織の評価が合理的で客観的に定義された範囲内であるかどうかを証明するのに寄与する。
【0127】
任意的に、1つ以上の検出閾値が、「HER2」病理スコアの感度を試験することと関連している。
【0128】
例えば、「EGFR」プロトコル(上皮増殖因子受容体)の試験を使用して、多くの癌と関連しているEGFR過剰発現につながる細胞突然変異を試験することができる。
【0129】
例えば、パッケージである、染色された部分をキャプチャするデジタル光学顕微鏡を使用して、EGFRプロトコルに従って試料のデジタルパソロジー画像データを得た後で、ソフトウェアイメージングパッケージを使用して、異なる倍率の試料のデジタルパソロジー画像データが得られ(4×、10×、20×、40×)、又は、異なる倍率での複数のデジタルパソロジー画像をデジタル光学顕微鏡自体によってキャプチャすることができる。
【0130】
次に、画像は、1つ以上の臨界閾値パラメータによって、関心対象である腫瘍細胞を含む異なる関心のある組織領域に分割される。このセグメンテーション手順に続いて、関心対象である腫瘍細胞を含む腫瘍組織における異なる発現レベルが差別化される。同じ腫瘍の異なる領域間のこの差は、腫瘍の不均一性として知られている。従って、特定の発現パターン又は第1の病理学的状態が腫瘍組織の特定の領域に割り当てられ、別の発現パターン及び第2の病理学的状態を腫瘍組織の別の領域に割り当てることができ、さらに別の発現パターン及び少なくとも病理学的状態を別の領域に割り当てることができる。
【0131】
この例では、好ましくは結腸直腸腫瘍のEGFR発現が、以下のように評価される: EGFR陰性腫瘍は、全ての腫瘍細胞においてバックグラウンドを上回る膜染色を有していない。これに反して、EGFR陽性の染色、従って発現は、バックグラウンドレベルを上回る腫瘍細胞膜の任意のIHC染色として定義され、それが完全な周囲染色であるか不完全な周囲染色であるかは問わない。染色強度、従って発現は、+1、+2、又は+3のスコアであり、0%を超える腫瘍細胞が染色され、従ってEGFRに対して陽性である。この取得されたデータは、本願において記載されるアルゴリズムに従った感度分析に使用することができ、強度スコアは、摂動に対する閾値(パラメータ)である。腫瘍の異なる領域を比較することによって、従って、異なる閾値を得ることによって、1つの閾値が定義される。さらに、定義された検出閾値は、手動で調整することもできる。この定義は、組織の評価の間に病理医が、組織の評価が合理的で客観的に定義された範囲内であるかどうかを証明するのに寄与する。
【0132】
任意的に、1つ以上の検出閾値が、「EGFR」病理スコアの感度を試験することと関連している。
【0133】
例えば、「Ki67」プロトコルはKi7抗原を検出する。「Ki67」プロトコルに従って調製された試料のデジタルパソロジーを得るための標準的な手順に従った後で行われる。
【0134】
例えば、パッケージである、染色された部分をキャプチャするデジタル光学顕微鏡を使用して、Ki67プロトコルに従って試料のデジタルパソロジー画像データを得た後で、ソフトウェアイメージングパッケージを使用して、異なる倍率の試料のデジタルパソロジー画像データが得られ(4×、10×、20×、40×)、又は、異なる倍率での複数のデジタルパソロジー画像をデジタル光学顕微鏡自体によってキャプチャすることができる。
【0135】
次に、画像は、1つ以上の臨界閾値パラメータによって、関心対象である腫瘍細胞を含む異なる関心のある組織領域に分割される。このセグメンテーション手順に続いて、関心対象である腫瘍細胞を含む腫瘍組織における異なる発現レベルが差別化される。同じ腫瘍の異なる領域間のこの差は、腫瘍の不均一性として知られている。従って、特定の発現パターン又は第1の病理学的状態が腫瘍組織の特定の領域に割り当てられ、別の発現パターン及び第2の病理学的状態を腫瘍組織の別の領域に割り当てることができ、さらに別の発現パターン及び少なくとも病理学的状態を別の領域に割り当てることができる。Ki67スコアを得るには様々なアプローチがある。1つの方法は、腫瘍の5つの異なる領域を選択することを含み、全ての領域において100の腫瘍細胞が評価される。100の細胞のうち陽性のKi67細胞(染色された核)の割合が考慮に入れられ、5つの領域の結果の合計が決定される。
【0136】
この取得されたデータは、感度分析に使用することができ、空間情報、すなわち核染色が、摂動を受ける閾値(パラメータ)である。腫瘍の異なる領域を比較することによって、従って、異なる閾値を得ることによって、1つの閾値が定義される。さらに、定義された検出閾値は、手動で調整することもできる。この定義は、組織の評価の間に病理医が、組織の評価が合理的で客観的に定義された範囲内であるかどうかを証明するのに寄与する。
【0137】
任意的に、1つ以上の検出閾値が、「Ki67」病理スコアの感度を試験することと関連している。
【0138】
任意的に、1つ以上の検出閾値及び/又は検出確率は、デジタルパソロジー画像データ内の候補対象の存在を決定する際の自動の形態学的特徴検出における変動を表す。
【0139】
任意的に、1つ以上の検出閾値は、デジタルパソロジー画像データ内の対象を複数の候補対象に自動的に分類する確率を表す。
【0140】
任意的に、検出閾値及び/又は検出確率は、病理試料から発せられ、デジタルパソロジー画像データにおいて表される光の強度レベル及び/又は波長範囲を特徴付ける。
【0141】
任意的に、病理試料から発せられ、デジタルパソロジー画像データにおいて表される光の強度レベル及び/又は波長範囲は、バイオマーカーの発現の相対レベルを示す。
【0142】
任意的に、当該方法は:
f1) デジタルパソロジー画像データの病理スコアの感度関数を形成する複数の摂動された検出閾値及び/又は摂動された検出確率を得るために、ステップc)からg)を繰り返すステップ;
f2) 任意的に、病理スコアの変化を提供するのに必要な相対検出閾値変化を算出するステップ;
をさらに含む。
【0143】
任意的に、当該方法は:
d1) 摂動の前及び/又は後に第1の病理学的状態が割り当てられたデジタルパソロジーデータの関心領域内の候補対象の数をカウントすることによって、又は、摂動の前及び/又は後に第1の病理学的状態が割り当てられたデジタルパソロジーデータの関心領域内の候補対象の数のパーセントスコアを計算することによって、最初の病理スコアデータ及び/又は更新された病理スコアデータを得るステップ
をさらに含む。
【0144】
図5は、「PD-L1 IHC 22C3」を使用して得られたTumour Proportion Score(TPS)の感度関数54の具体例を示すプロット52を例示している。X軸は、PD-L1染色の存在を評価するための閾値を表している。言い換えると、X軸58は、あり得る摂動値の範囲を表している。Y軸60は、TPSのパーセント値を表している。特定の臨床プロトコルに対して、病理スコアデータの最適値(この場合、5%でのX軸TPS切片を表す破線56)を提供することができる。この場合、0.15のPD-L1強度の閾値によって、この臨床閾値に近い更新された病理スコアが提供される。
【0145】
上述の多くのシンプルな例は、単一のバイオマーカーの陽性発現を検出することを含む。しかし、「PD-L1 IHC」は、PD-L1バイオマーカーの陽性及び陰性の発現を検出することを必要とする。以下の実施形態は、この場合に取り組んでいる。
【0146】
任意的に、当該方法は:
c1) 関心のある第1のバイオマーカーの陽性発現を示す少なくとも1つの候補対象に第2の病理学的状態を割り当てるステップ;
c2) 関心のある第1のバイオマーカーの陰性発現を示す少なくとも1つの候補対象に第3の病理学的状態を割り当てるステップ、及び
d2) 第2及び第3の病理学的状態にあるデジタルパソロジーデータの関心領域内の候補対象を使用した計算を行うことによって、最初の病理スコアデータを得るステップ;
e1) 第2及び第3の病理学的状態を候補対象に割り当てるために使用される検出閾値を摂動させるステップ;
e2) 摂動後に第2及び第3の病理学的状態を候補対象に割り当て直すステップ;及び、
g1) 摂動後に第2及び第3の病理学的状態にある候補対象を使用した計算を行うことによって、更新された病理スコアデータを得るステップ;
をさらに含む。
【0147】
任意的に、マルチバイオマーカーイメージングを、この技術によってサポートすることができる。言い換えると、ステップc3)において、第2の病理学的状態を、関心のある第2のバイオマーカーの陽性発現を示す少なくとも1つの候補対象に割り当てることができる。ステップc4)において、第3の病理学的状態を、関心のある第3のバイオマーカーの陽性発現を示す少なくとも1つの候補に割り当てることができる。任意的に、第1、第2、及び第3のバイオマーカーは、免疫蛍光バイオマーカーである。
【0148】
PD-L1染色組織におけるTPS(tumour proportion score)の導出に関するより複雑な分析パイプラインの免疫組織化学の例は、任意の:
1) 比較的高い倍率(典型的には10×、20×、又は40×)でIHC染色した組織病理画像を得るステップ、
2) 1つ以上の臨界閾値パラメータを使用して、画像を関心対象に(半)自動的に分割するアルゴリズムを適用するステップ、
3) 1つ以上の臨界閾値又はパラメータの設定を使用して、関心対象における正常発現と過剰発現を(半)自動的に差別化するアルゴリズムを適用するステップ、
4) 本願において記載されている感度分析を行うステップ、
5) 臨界閾値における実際の変動の結果としてスコアが1つの決定レベルから別の決定レベルに変化する可能性があるということを感度分析が示す場合に、視覚フィードバック又は警告メッセージを提供するステップ、
6) 閾値変動に最も感度が高いデジタルパソロジー画像データの領域の視覚フィードバックを提供するステップ、
7) スコアリングの基準を満たさなかった領域の視覚フィードバックを提供するステップ、
を含む。
【0149】
ステップ2)、3)、及び/又は4)のうち1つ以上において、ディープラーニング又は機械学習のアプローチが、任意的に適用され得る。
【0150】
従って、PD-L1で染色された組織の最初のRGB画像を考慮すると、上記の「背景技術」のセクションで参照した非特許文献1において論じられている方法を使用して、カラーデコンボリューションを行って、DABマーカーの吸収からヘマトキシリンの吸収を分けることができる。
【0151】
畳み込みを解いて得られた画像における核の位置が:
8) (ノイズを抑制するために)ヘマトキシリン染色データを平滑化し、吸収レベル0.1で閾値処理するステップ、
9) クロマチンパターンにおける明るいスポットを補正するために形態学的クロージングを適用するステップ、
10) 小細胞及び線維芽細胞を除去するために形態学的オープニングを適用するステップ、
11) 隣接する核を共に大きくして1つの対象を形成するために、形態学的クロージングを適用するステップ、
12) 腫瘍領域に穴埋めを適用し、バックグラウンド領域を除去するステップ、
13) 前の形態学的動作から生じたアーチファクトを補償するために、腫瘍領域の境界を滑らかにするように最後の形態学的オープニングを行うステップ、
によって得られる。
【0152】
この場合、DAB (PD-L1)染色吸収データを閾値処理した後で、TPSの候補が得られる。ある閾値を超える(生存腫瘍細胞を有する領域内の)DAB吸収は、過剰発現を有する領域、言い換えると、PD-L1腫瘍細胞を有する領域を示す。
図2b)から2d)において先に参照したように、これらの画像は、分析パイプラインにおける閾値パラメータの摂動に敏感である。
【0153】
図5は、DAB吸収に対する検出閾値の摂動(x軸)の関数としてTPS(y軸)を例示している。
図5の場合のPD-L1染色の評価に対する「最適閾値」は、垂直方向の破線によって示されている。0.05以下の検出閾値は、より多くの腫瘍細胞を含み、TPSの推定値は有意に高かったと考えられる。0.05以上の検出閾値は、より少ない腫瘍細胞を含み、TPSを1%の臨界臨床的決定レベルまで低下させたと考えられる。
【0154】
図6は、上記の具体例の実施のための複雑な分析パイプライン61の例を例示している。
【0155】
デジタルパソロジー画像データ入力ユニット62は、デジタルパソロジー画像データを受信及び前処理する。ユーザは、摂動構成データ63を(例えば、デジタルパソロジーシステム及び/又は画像解析ソフトウェア上の入力グラフィカルユーザインターフェースを介して)提供する。この特定の例における分析パイプラインは、核位置決定装置63及び腫瘍細胞特定装置64に分割される。
【0156】
核位置決定装置63において、調製ユニット64aが、(ノイズを抑制するために)ヘマトキシリン染色データを平滑化し、所与の吸収レベルにおいて閾値処理する。第1の形態学的クロージングユニット66aが、クロマチンパターンにおける明るいスポットを補正する。
【0157】
腫瘍細胞特定装置64において、形態学的オープニングユニット67aが、デジタルパソロジー画像における小細胞及び線維芽細胞の画像を除去するように構成される。形態学的クロージングユニット68aが、隣接する核を共に大きくして1つの対象を形成するように構成される。穴埋めユニット69aが、腫瘍領域に穴埋めを適用し、低い吸収値によって認識されるバックグラウンド領域を除去するように構成される。形態学的オープニングユニット70aが、腫瘍領域の境界を滑らかにするために適用され、従って、前の形態学的動作から生じるアーチファクトが補償される。
【0158】
分析パイプラインでは、各処理サブユニット65aから70aが、それぞれの摂動決定ユニット65bから70bに接続される。具体例では、摂動ユニット70bが、ガウス分布に基づき形態学的クロージングアルゴリズムの摂動値を選択する。残りの摂動ユニットは、階段関数に基づき摂動値を提供する。摂動制御ユニット71が、ユーザによって入力された摂動構成データ63を受信し、摂動オプションの全探索空間にわたって十分なカバレッジを与える可能性のある摂動仕様を決定する。摂動仕様を決定させた後、摂動ユニットの各々に対する摂動設定が計算され、摂動ユニット65bから70bに伝達される。当然ながら、分析パイプラインの全てのステップが、調整可能な検出閾値及び/又は確率によって特徴付けられる必要はなく、分析パイプラインの1つ以上の設定は、摂動を受けることなく、「ハードコーディング」又は固定されてもよい。
【0159】
摂動制御ユニット71は、計算のシンプルさの理由から、「一度に1つずつ」の感度分析プロトコルを作動させることができ、摂動ユニット65bから70bのうち1つ以上が一度に調節され、他の摂動ユニットは、一定の摂動値で保持される。
【0160】
任意的に、摂動制御ユニット71は、「ランダムサンプリング」の感度分析プロトコルを適用することができ、摂動ユニット65bから70bのうち1つ以上が、(任意的に、固定された境界範囲内の)ランダムに生成された摂動値で取り組まれる。このようにして、摂動値の大きな標本空間を、計算的に効率的な方法でサンプリングすることができ、摂動ユニット65bから70bの摂動設定間の相互相関も、「一度に1つずつ」の感度分析プロトコルでは可能ではない方法で評価することができる。
【0161】
任意的に、摂動制御ユニット71は、「ブルートフォース」の感度分析プロトコルを適用することができ、摂動ユニット65bから70bのうち1つ以上が、そのそれぞれの摂動閾値の全ての組み合わせで取り組まれる。これは、感度分析が網羅的であるという利点を有するが、はるかに多くの計算時間を占め得るため、この技術は、強力なコンピュータ又はシンプルな分析パイプラインを用いてのみ適用することができる。
【0162】
任意的に、摂動制御ユニット71は、「勾配降下」のアルゴリズム又は別の最適化アルゴリズムを適用して、最適感度を算出してもよい。
【0163】
結果収集ユニット72が、同じ入力デジタルパソロジー画像に対して分析パイプラインに摂動設定の様々な組み合わせを適用することによって生成された病理スコアを得て保存する。
【0164】
一例において、tumour proportion scoreは、複数の候補対象(生存腫瘍細胞)に存在するPD-L1陽性及びPD-L1陰性の腫瘍細胞の総数によって割られた複数の候補対象に存在するPD-L1陽性腫瘍細胞の数として計算することができる。
【0165】
tumour proportion scoreを使用して、PD-L1発現は無し(1%未満の生存腫瘍細胞で部分的又は完全な細胞膜染色)、PD-L1発現(1から49%の生存腫瘍細胞で部分的又は完全な細胞膜染色)、及び高いPD-L1発現(50%以上の生存腫瘍細胞で部分的又は完全な細胞膜染色)の3つのレベルを差別化することができる。
【0166】
従って、分析パイプラインにおいて使用される検出閾値及び/又は検出能力の摂動は、病理プロトコルが非常に高感度であり、それが全体的な治療適応に影響を及ぼし得るという警告を医療従事者に提供することができる。
【0167】
任意的に、当該方法は:
h1) 任意的に、最初の及び/又は更新された病理スコアデータと組み合わせて、病理スコアデータの感度をユーザに出力する、及び/又は、臨床閾値に対する病理スコアの感度を出力するステップをさらに含む。
【0168】
従って、病理スコアデータの感度は、デジタルパソロジーシステムのグラフィカルユーザインターフェース(GUI)、又は、パーソナルコンピュータ(PC)若しくは他のデジタル表示装置で使用されるデジタル病理ソフトウェア上に表示されてもよい。病理スコアデータは、例えば、数値列として、又は、カラーマップ若しくはヒートマップとしてユーザに報告されてもよい。これは、デジタルパソロジーシステム及び/又は分析ソフトウェアのユーザに、オリジナルのデジタルパソロジースライド画像に関連して、与えられた結果の感度についての即時の直観的なフィードバックを提供する。
【0169】
任意的に、当該方法は:
b2) デジタルパソロジー画像データを複数のセクターにサブサンプリングするステップ;
g2) 各セクターに対して最初の病理スコアデータ及び更新された病理スコアを得るステップ;
h2) デジタルパソロジー画像データの空間感度マスクを生成するステップ:及び、
h3) 空間感度マスクを、任意的にデジタルパソロジー画像データと整合した半透明オーバーレイとして、ユーザに表示するステップ;
をさらに含む。
【0170】
図7a)は、デジタルパソロジー画像データ80が複数のサブセクター80a、80b、80c...に分割された可能な表示フォーマットを例示している。この表示実施形態では、各サブセクターに対する最初の病理スコア、更新された病理スコア、及び全体的な感度が計算されている。表示凡例(display legend)82が、GUIの解釈のガイドを提供する。飽和したサブセクターは、分析パイプラインにおける摂動に対する感度が低いことを表し、飽和していないサブセクターは、分析パイプラインにおける摂動に対する感度が高いことを表している。
【0171】
図7b)は、デジタルパソロジー画像データ84がサブセクター84a、84b...に分割された別の可能な表示フォーマットを例示している。この表示実施形態では、各サブセクターに対する最初の病理スコア、更新された病理スコア、及び全体的な感度が計算されている。このGUIフォーマットにおいて、ユーザは、表示されたデジタルパソロジー画像データ84の周りにマウスカーソル86を動かすことができる。任意のダイアログボックス88が、表示されたデジタルパソロジー画像データ84の原点90に関するカーソルの現在の空間位置を報告する。感度フィードバックダイアログボックスには、マウスカーソルの位置における計算された病理スコアの感度が表示される。
【0172】
任意的に、分析の感度を示す出力ステップにおいて、メッセージがユーザに提供されてもよい。一例として、スコアの相対変化に必要な相対閾値変化の計算を提供することができる。任意的に、異なる診断結果をもたらすであろう必要とされる閾値変化が提供されてもよい。
【0173】
任意的に、病理試料は、組織病理試料又は細胞病理試料である。
【0174】
図8は、第1の態様による装置100を例示している。
【0175】
第1の態様によると、デジタルパソロジー画像データをデジタル処理して病理スコアデータを生成する、及び、病理スコアデータの感度分析のための装置100が提供される。当該装置100は:
- 入力ユニット102;及び、
- 処理ユニット104;
を含む。
【0176】
入力ユニット102は、病理試料の画像を含むデジタルパソロジー画像データを得るように構成される。
【0177】
処理ユニット104は、デジタルパソロジー画像データ内の対象を複数の候補対象に分類し、1つ以上の検出閾値及び/又は検出確率に従って、複数の候補対象内の少なくとも1つの候補対象に第1の病理学的状態を割り当て、第1の病理学的状態が割り当てられた複数の候補対象内の候補対象に基づき、病理試料の最初の病理スコアデータを得て、摂動関数に従って1つ以上の検出閾値及び/又は検出確率を摂動させて、摂動された検出閾値及び/又は摂動された検出確率を生成し、1つ以上の摂動された検出閾値及び/又は摂動された検出確率に従って、複数の候補対象内の少なくとも1つの候補対象に又は摂動された複数の候補対象内の少なくとも1つの候補対象に、第1の病理学的状態を割り当て直し、1つ以上の摂動された検出閾値及び/又は摂動された検出確率に従って第1の病理学的状態が割り当て直された候補対象に基づき、病理試料の更新された病理スコアデータを得て、さらに、最初の病理スコアデータ及び更新された病理スコアデータを比較して、病理スコアデータの感度を得るように構成される。
【0178】
当該装置は、出力ユニット106をさらに含んでもよい。
【0179】
入力ユニット102は、例えば、USB(商標)接続、FireWire(商標)接続、及びDICOM接続等、デジタルパソロジー画像データを転送することができるデータ通信モデムを含んでもよい。入力ユニット102は、ハードディスクドライブ及び/又はリムーバブルハードディスクドライブ、USBドライブ、DVDドライブ、又は記憶されたデータを転送するための別の手段を含んでもよい。データは、LAN若しくはWAN等のセキュア通信ネットワーク、又はセキュア無線手段を介して受信されてもよい。
【0180】
処理ユニット102は、画像データを処理することができる任意のデータプロセッサとして実際に実装されてもよいということが正しく理解されることになる。例えば、装置100は、パーソナルコンピュータ、スマートフォンプロセッサ、組み込みプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)上でインスタンス化された処理ユニット上に実装することができる。任意的に、処理ユニット100によって行われる機能の一部又は全てが、グラフィカル処理ユニットGPUを使用して利用可能なアクセラレーション(acceleration)能力を使用して行われてもよい。
【0181】
出力ユニット106には、データ出力が別の構成要素によって解釈されることになる生データである場合には、入力ユニット102に関して論じたのと類似の範囲のモダリティを提供することができる。出力ユニット16はまた、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)上に感度分析の結果を表示するためのグラフィックスインターフェースを含んでもよい。
【0182】
図9は、デジタルパソロジーシステム110を例示している。
【0183】
第2の態様によると、デジタルパソロジーシステム110が提供される。当該デジタルパソロジーシステム110は:
- デジタルパソロジー画像取得装置112;及び、
- 第1の態様又はその実施形態のうちの1つに従った装置114;
を含み、
デジタルパソロジー画像取得装置112は、デジタルパソロジー画像データを取得し、さらに、デジタルパソロジー画像データを装置114に通信するように構成される。
【0184】
コンピュータプログラム要素は、コンピュータユニットに記憶することができ、これは、本発明の一実施形態であってもよい。この計算ユニットは、上述の方法のステップを行う又はその実行を誘発するように適応し得る。さらに、上述の装置の構成要素を作動させるように適応してもよい。計算ユニットは、自動的に動作するように及び/又はユーザの命令を実行するように適応することができる。コンピュータプログラムは、データプロセッサのワーキングメモリにロードされてもよい。従って、データプロセッサは、本発明の方法を実行する態勢が整っていてもよい。
【0185】
本発明のこの例証的な実施形態は、最初から介入をインストールしたコンピュータプログラム、及び、アップデートによって既存のプログラムを本発明を使用するプログラムに変えるコンピュータプログラムの双方をカバーする。
【0186】
任意的に、スライド画像データを、ローカルエリアネットワークを介してローカル病院サーバ又は「PACS」システムにアップロードすることができる。当然ながら、スライド画像は、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、テープドライブ、又はUSBスティック等の物理的媒体に保存され、物理的媒体をサーバ上にロードすることができるサーバをホストする場所に物理的に送信され得る。
【0187】
次に、スライド画像データは、第2の態様又はその任意の実施形態に従って処理される。次に、生物学的試料の視野のマルチビューデータは、例えばマルチビューデータを解釈することができるグラフィカルユーザインターフェースによる使用のためにクライアント装置に送信される。任意的に、マルチビューデータは、サーバ上の表示フォーマット(.JPG、.GIF、又は別のイメージングフォーマット等)に解釈され、マルチビューデータのGUI表示がクライアントに送信される(「ウェブベースのアプリケーション」の一例)。
【0188】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に若しくはその一部として供給される、光記憶媒体又は固体記憶媒体等、適した媒体上に格納及び/又は分散させてもよいが、インターネット又は他の有線若しくは無線の通信システムを介して等、他の形態で分散させてもよい。しかし、コンピュータプログラムは、ワールドワイドウェブのようなネットワーク上で提示することもでき、さらに、そのようなネットワークからデータプロセッサのワーキングメモリ内にダウンロードすることもできる。次に、第2の態様による画像処理方法が行われる。
【0189】
本発明のさらなる例証的な実施形態によると、ダウンロードのためにコンピュータプログラム要素を利用可能にする媒体が提供され、そのコンピュータプログラム要素は、上記の本発明の実施形態のうち一実施形態に従って方法を行うように構成される。
【0190】
本発明の実施形態は、異なる発明特定事項を参考にして記載されているということに留意するべきである。特に、一部の実施形態は、方法タイプの請求項を参考にして記載される一方、他の実施形態は、装置タイプの請求項を参考にして記載されている。しかし、当業者は、上記及び以下の記載から、別途通知がない限り、1つのタイプの発明特定事項に属する特徴のいかなる組合せに加えて、異なる発明特定事項に関する特徴間での他の組合せも、本願を用いて開示されているとして考慮されるということを知ることになる。
【0191】
全ての特徴を組み合わせて、単なる特徴の合計以上である相乗効果を提供することができる。
【0192】
本発明は、図面及び上記の説明において詳細に例示及び記述されてきたけれども、そのような例示及び記述は、例示的又は例証的であり、拘束性はないと考慮されることになる。本発明は、開示された実施形態に限定されない。
【0193】
開示された実施形態に対する他の変化は、本発明を実行する際に、図面、明細書、及び従属請求項の調査から当業者により理解する及びもたらすことができる。
【0194】
特許請求の範囲において、「含む」という用語は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞はその複数形を除外しない。1つのプロセッサ又は他のユニットは、特許請求の範囲において列挙されたいくつかのアイテムの機能を満たすことができる。特定の手段が互いに異なる従属項において記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せを役立つよう使用することができないと示しているわけではない。特許請求の範囲におけるいかなる参照番号も、その範囲を限定するとして解釈されるべきではない。