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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】光学配置とレーザシステム
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/23 20060101AFI20240207BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20240207BHJP
【FI】
H01S3/23
B23K26/064 N
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020569087
(86)(22)【出願日】2019-06-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 EP2019064582
(87)【国際公開番号】W WO2019243043
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-04-13
(31)【優先権主張番号】102018115102.0
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506065105
【氏名又は名称】トルンプフ レーザー- ウント ジュステームテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Laser- und Systemtechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Strasse 2, D-71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベック、トシュテン
(72)【発明者】
【氏名】ハイムス、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ヘルステルン、ユリアン
(72)【発明者】
【氏名】リンゲル、クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】マルシャル、フェリクス
(72)【発明者】
【氏名】ティールフェルダー、ジルケ
(72)【発明者】
【氏名】ティルコルン、クリストフ
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-524662(JP,A)
【文献】米国特許第05475415(US,A)
【文献】特開2008-071798(JP,A)
【文献】特開平06-079920(JP,A)
【文献】国際公開第2018/019674(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-3/30
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのレーザ光源(12a~12f)からのレーザビーム(14f)をビームウェスト(46)を有する結合ビーム(18)に変換するための光学配置(16)であって、
少なくとも2つの別個の光学チャネル(22a~22c)がレーザビーム(14a~14c)のために設けられるように設計された光ビーム案内システム(20)を備え、
各光学チャネル(22a~22c)は、関連する光学チャネル(22a~22c)のチャネル出力ビーム(38a~38c)を出射するための光学終端手段(36a~36c)を備え、
光学チャネル(22a~22c)のうちのただ1つに関連付けられた少なくとも1つの偏向体(42a~42c)が設けられ、ここで前記偏向体(42a~42c)は、関連する光学チャネル(22a~22c)のチャネル出力ビーム(38a~38c)のみが捕捉され、捕捉されたチャネル出力ビーム(38a~38c)のみが焦点領域(44)の方向に偏向されるように設計され、
ビーム経路に配置されるレンズ手段(52)は、少なくとも一方の側に焦点面(54)又は焦点線を有するコリメータレンズ(52)として設計され、前記コリメータレンズ(52)は、前記焦点面(54)又は焦点線が前記焦点領域(44)を通って延びるように配置される、
光学配置(16)。
【請求項2】
高々1つの偏向体(42a~42c)が、1つの光学チャネル(22a~22c)に関連している、請求項1に記載の光学配置(16)。
【請求項3】
1つの偏向体(42a~42c)が光学チャネル(22a~22c)毎に設けられている請求項1又は請求項2に記載の光学配置(16)。
【請求項4】
前記光学チャネル(22a、22c)の光終端手段(36a、36c)を通って出る前記チャネル出力ビーム(38a、38c)が、前記焦点領域(44)の方向を指さない伝搬方向を有するときにのみ、偏向体(42a~42c)が、光学チャネル(22a~22c)に関連付けられる請求項1又は請求項2に記載の光学配置(16)。
【請求項5】
前記光ビーム案内システム(20)は、前記光学チャネル(22a~22c)から出射する前記チャネル出力ビーム(38a~38c)が全て、共通の主方向(40)に平行な伝搬方向を有するように設計されている請求項1~4のいずれか1項に記載の光学配置(16)。
【請求項6】
前記偏向体(42a~42c)は、光伝送システムとして設計され、前記捕捉されたチャネル出力ビーム(38a~38c)は、光入射面(48)を介して前記偏向体(42a~42c)内に放射され、光出射面(50)を介して前記偏向体(42a~42c)から出射する請求項1~5のいずれか1項に記載の光学配置(16)。
【請求項7】
前記偏向体の光入射面(48)は、前記偏向体の光出射面(50)に対して斜めに延びている請求項1~6のいずれか1項に記載の光学配置(16)。
【請求項8】
前記偏向体(42a~42c)は、前記レーザビームに対して透明な材料からモノリシックに形成されている請求項1~7のいずれか1項に記載の光学配置(16)。
【請求項9】
前記偏向体(42a~42c)は、捕捉されたチャネル出力ビーム(38a~38c)の発散が、前記偏向体(42a~42c)によって偏向される前後で変わらないように設計されていることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の光学配置(16)。
【請求項10】
前記偏向体(42a~42c)は、光プリズムとして設計されている請求項1~9のいずれか1項に記載の光学配置(16)。
【請求項11】
前記偏向体(42a~42c)は、光反射システムとして設計されている請求項1~10の何れか1項に記載の光学配置(16)。
【請求項12】
前記ビーム経路に配置されるレンズ手段(52)がビームウェスト(46)に続いて、又は前記ビームウェスト(46)の内部に設けられている請求項1~11のいずれか1項に記載の光学配置(16)。
【請求項13】
各光学チャネル(22a~22c)内の光ビーム案内システム(20)は、ビーム形成のための望遠鏡(32)を含み、光学終端手段(36a~36c)は、各光学チャネル(22a~22c)内の望遠鏡(32)の構成要素である請求項1~12のいずれか1項に記載の光学配置(16)。
【請求項14】
望遠鏡(32)がアナモルフィック望遠鏡として設計されていることを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の光学配置(16)。
【請求項15】
直線ビーム断面を有する有用な光分布(L)を生成するためのレーザシステム(10)であって、
少なくとも2つのレーザ光源(12a~12f)であって各レーザ光源(12a~12f)が少なくとも1つのレーザビーム(14a~14f)を放射するように設計されているレーザ光源(12a~12f)と、
前記レーザ光源(12a~12f)のレーザビーム(14a~14f)がビームウェスト(46)を有する結合ビーム(18)に変換されるように配置された光学配置(16)であって、
少なくとも2つの別個の光学チャネル(22a~22c)がレーザビーム(14a~14c)のために設けられるように設計された光ビーム案内システム(20)を備え、
各光学チャネル(22a~22c)は、関連する光学チャネル(22a~22c)のチャネル出力ビーム(38a~38c)を出射するための光学終端手段(36a~36c)を備え、
光学チャネル(22a~22c)のうちのただ1つに関連付けられた少なくとも1つの偏向体(42a~42c)が設けられ、ここで前記偏向体(42a~42c)は、関連する光学チャネル(22a~22c)のチャネル出力ビーム(38a~38c)のみが捕捉され、捕捉されたチャネル出力ビーム(38a~38c)のみが焦点領域(44)の方向に偏向されるように設計されている光学配置(16)と、
結合ビーム(18)から線形ビームプロファイルを形成するための光学的再形成システム(26)であって、前記結合ビーム(18)のビームウェスト(46)の後方のビーム経路に配置される光学的再形成システム(26)と、
を備えるレーザシステム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複数のレーザ光源からのレーザビームを、ビームウェストを有する結合ビームに変換するための光学配置、及びこのような光学配置を有するレーザシステムが記載されている。
【背景技術】
【0002】
前記光学配置は、線形ビームプロファイルを有する有用な光分布を生成するために使用されるレーザシステムに適用可能であるが、前記分野には限定されない。このようなビームプロファイルは、例えば、半導体又はガラスの表面の加工、TFTディスプレイの製造、半導体のドーピング、太陽電池の製造、又は建築目的のために美的に設計されたガラス表面の製造において使用される。ここで、線形ビームプロファイルは、加工される表面にわたって線の延長方向に垂直に走査される。このビームによれば、表面変性過程(再結晶、融解、拡散過程)を生起でき、所望の加工結果を達成できる。
【0003】
上述のレーザシステムの場合、レーザビームは、光学装置によって所望の線形の有用な光分布に変換され、光学装置は、特に、レーザ放射を再成形及び/又は均質化する。レーザ放射から線形の有用な光分布を生成するための光学配置は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0004】
上述の機械加工プロセスのためには、通常、高強度ビーム及び/又は広範囲に亘って線径の強度分布が望まれるので、所望の有用な光分布を供給するために、複数のレーザ光源が使用されることが多い。
【0005】
ラインを形成するために有効な光学装置を、レーザ光源毎に別々に設ける必要がないようにするためには、様々なレーザ光源のレーザビームを合体させ、それらを結合ビームに束ねることが望ましく、特に、それらを空間的に束ねることが望ましい。例えば、特許文献1には、複数のミラー及びレンズを通って折り畳まれたビーム経路を有する光学配置が記載されており、前記光学配置においては、複数のレーザ光源からのレーザビームは、得られたビームを集光ミラーによって同時に膨張させることにより組み合わされる。特許文献2には、ビームを形成し束ねるための装置が記載されており、この装置では、レーザビームの群は、その経路の一部が別々の光学チャネルを通り、複数のビーム群に作用する伸縮光学系によって合成される。このような配置は、複数の別々に延びるレーザビームを同時に捕捉し、したがって大きな入口開口を有しなければならない光学素子を含む。これは、光学エラー(例えば、レンズエラー)に繋がり、個々のビームを互いに調整または微調整することが困難になる。さらに、大型のレンズ部品は、より高いコストと複雑な設置スペース要件につながる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2018/019374号明細書
【文献】ドイツ国特許第10 2008 027 229号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、複数のレーザビームを合流させることを可能にすることを目的とし、これは、設置スペースの要求への適合及び光学的調整において柔軟性を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に記載の光学配置によって達成される。これは、少なくとも2つのレーザ光源からのレーザビームを結合ビーム、すなわち個々のレーザビームから合流した光ビーム、特に空間的に合流したビームの束(結合ビーム束)の形態に変換するための装置である。光学配置は、結合ビームがビームウェストを有するように設計される。
【0009】
光学配置は、レーザビームのために少なくとも2つの別個の光学チャネルを提供するように設計された光ビーム案内システムを備える。各レーザビームは、2つの光学チャネルのうちの少なくとも1つを通る。各光学チャネルは光学的終端手段を備え、光学配置がレーザ光源で操作されるとき、関連する光学チャネルのチャネル出力ビームが前記光学的終端手段から出射する。
【0010】
偏向体は、光学チャネルのうちの少なくとも1つに設けられ、関連する光学チャネルに属する。偏向体は、関連する光学チャネルのチャネル出力ビームのみが捕捉され、他の光学チャネルのチャネル出力ビームは、この偏向体によっては捕捉されないように設計される。捕捉されたチャネル出力ビームは、偏向体によって、結合ビームの焦点領域の方向に向けられるか、偏向される。
【0011】
このように、複数のレーザ光源からのレーザビームは、ビームウェストの前方のビーム経路内の別個の光学チャネル内に導かれる。光学チャネルは、特に、光ビームが光学チャネル内で導かれて、他の光学チャネルから空間的に分離および/または光学的に分離されるという事実によって区別される。光学チャネルは、複数の光学的に有効な構成要素(レンズ、ダイヤフラム、ミラーなど)を備えてよい。特に、光終端手段は、各光学チャネルの終端を形成し、その手段は、例えば、集束レンズとして設計される。
【0012】
関連する光学チャネル内の光のみが、構成要素によって捕捉されなければならず、各光学チャネルの光学的に有効な構成要素は、サイズが制限されるので、レーザビームを別々の光学チャネルに導くことは他にも利点を提供する。特に、実施形態によれば大きな寸法を有するレンズは不要であり、従って、構造スペースを節約することができ、レンズエラーを低減することができる。さらに、種々のレーザビームのビーム特性を、別々の光学チャネル内で互いに独立に設定し、微調整することができる。また、別個の光学チャネルは、全体構造の拡張性を改善する結果となる。光学構造全体を変更することなく、追加のチャネルを追加することができる。
【0013】
種々の光学終端手段を出たビームは、少なくとも1つの偏向体によって合流され、結合ビームのビームウェストを形成する。この点において、このビームウェスト内の光分布は、複数のレーザ光源によって供給される。ビームウェストは、結合ビームが最小ビーム断面、すなわち結合ビームの最も狭い点を持つ領域として定義される。
【0014】
偏向体は、特に、偏向体の前方の光の伝搬方向が、偏向体の後の伝搬方向から外れるように設計される。この点において、ビームウェスト内に集束する束は、偏向体によって種々のチャネル出力ビームから生成される。偏向体は、好ましくは、伝搬方向に影響を及ぼすために使用される。互いに離間したレーザビームは、大型レンズなしでマージすることができる。その結果、当初概説した問題点を軽減できる。
【0015】
記載された配置により、個々の偏向体の位置、位置合わせ、及び設計を変更することも可能であり、従って、結合ビームの特性、特にビームウェストを調整することも可能である。この点において、ビームウェストの後方の結合ビームに対する有効な発散角は、偏向体の位置、位置合わせ及び/又は設計によって指定することが可能である。
【0016】
本文脈では、ビーム(光ビーム、レーザビーム、チャネル出力ビーム・・・)は、幾何光学の意味で理想化されたビームを指定するものではなく、むしろ、物理的理由から、常に有限の範囲の断面を有する実際の光ビームを指定するものである。レーザビームの場合、例えば、ビーム断面における強度曲線は、レーザ光源に含まれるレーザモードに影響される。
【0017】
光学配置は、好ましくは、異なるレーザ光源からの複数(特に>3)のレーザビームを合流させるように設計される。特に、光学配置は、複数(特に>3)の光学チャネルを含む。例えば、光学配置は、レーザビームが、光ビーム案内システムの入力側領域において、互いに隣り合い、特に互いにグループ化されるように設計され得る。特に、光学チャネルは、各々レーザ光源からの1つのレーザビームのみがチャネル毎に延びるように設計される。特に、偏向体が光学チャネルと関連するか、または光学チャネルを出て行くチャネル出力ビームが結合ビームのビームウェスト内に直接転送される。
【0018】
偏向体は、好ましくは、各光学チャネルに関連する。これは、特に、種々の光学チャネルのチャネル出力ビームが、関連する光学終端手段を通過した後に、ビームウェストの方向に最初に延在しない場合に好ましい。
【0019】
単純化された構造は、例えば、配置の動作中に関連する光学終端手段を通って出て行くチャネル出力ビームが、焦点領域の方向を指していない伝搬方向を有する場合にのみ、偏向体が光学チャネルに関連するという事実から生じる。この点において、偏向体は、特に、ビームウェストがチャネル出力ビームの出射方向の方向にない光学チャネルに対してのみ設けられる。他のチャネル出力ビームは偏向体なしにビームウェストに導くことができる。
【0020】
本文脈では、ビーム(光ビーム、レーザビーム、チャネル出力ビーム、・・・)の伝搬方向は、特にポインティングベクトルの空間平均に関して、空間的に平均化された出力方向を示す。
【0021】
光ビーム案内システムは、全ての光学チャネル(またはそれらの光学終端手段)を出るチャネル出力ビームが全て、主方向に平行な伝搬方向を有するように設計することが好ましい。主方向は、特に、光ビーム案内システムの光軸を形成する。この点において、チャネル出力ビームは、最初に、互いに平行に様々な光学チャネルから出て、偏向体によって結合されて、焦点領域においてビームウェストを形成する。
【0022】
しかしながら、チャネル出力ビームは、光終端手段を出た直後に異なる方向に延在することも考えられる。例えば、光ビーム誘導システムは、光学チャネルを出るチャネル出力ビームの一部または全部が、焦点領域に向かって既に方向性成分を有するように設計することができる。これにより、偏向体が必要とする偏向が減少する。
【0023】
少なくとも1つの偏向体は、捕捉されたチャネル出力ビームが、光入射面を介して偏向体に放射され、異なる光出射面を介して偏向体から出るように、光透過システムとして設計されることが好ましい。光入射面は、光出射面に対して斜めに配向されていることが好ましい。光入射面および光出射面自体は、平坦であることが好ましい。
【0024】
有利な一実施形態によれば、偏向体は、レーザビームに対して透明である材料から一体として形成される。材料は、好ましくは、レーザビームに対して屈折率>1を有し、従って、偏向は、偏向体の境界表面における屈折効果により生じる。
【0025】
偏向体は、捕捉されたチャネル出力ビームの発散角又は発散空間角が、偏向体による偏向の前後で実質的に変化しないように設計するのが好ましい。この点において、偏向体は、好ましくは、ビームを束ねるため及び/又は広げるためのレンズ手段として使用されず、むしろ、実質的には、ビームウェストの方向に関連ビームを案内し且つ偏向させるためにのみ使用される。ビームの発散特性を変化させるための光学的機能は、光学チャネルのそれぞれのレンズ手段、特に光学的終端手段によって提供することができる。このような実施形態では、任意の集束、および必要な偏向は、異なる光学構成要素によって行われる。光学機能のこの分離は、光学配置の調整を単純化することができる。
【0026】
特に、少なくとも1つの偏向体を光学プリズムとして設計することが考えられる。
【0027】
さらなる実施形態では、光学配置は、特に、ビームウェストの後方又はビームウェスト内のビーム経路内に配置されるレンズ手段を有する。レンズ手段は、特に、後続のビーム変換要素に結合されるための結合ビームを形成するように設計される。レンズ手段は、好ましくは、ビームウェストの後方で結合ビームをコリメート又は平行化するために使用されるコリメータレンズとして設計される。これにより、ビームウェストの後方で結合ビームが再び不必要に発散することが防止される。次に、コリメートされた束又はテレセントリックに延びる光束を、例えば線形の光分布を形成するために、さらに光学的に処理することができる。
【0028】
コリメータレンズは、好ましくは、少なくとも一方の側に焦点面または焦点線を有する。コリメータレンズは、焦点面または焦点線が、焦点領域を通って、すなわちビームウェストを通って延びるように配置することができる。この点において、ビームウェストは、好ましくは、コリメータレンズに対して焦点距離の対象側に配置される。コリメータレンズは、例えば、集束レンズとして設計される。特に、コリメータレンズは、光学配置の実際の出力開口を形成する。次いで、結合ビームは、コリメーション後にこの出力開口を通って出て、さらに処理するようにしてもよい。
【0029】
さらなる実施形態では、光ビーム案内システムは、ビーム形成のためのアナモルフィック光学システム、特に、ビーム形成のための望遠鏡を備え、少なくとも幾つかの光学チャネルにおいて、または各光学チャネルにおいて、光学チャネルの光学終端手段は、この光学チャネルにおけるアナモルフィック光学システム(特に望遠鏡)の構成要素である。望遠鏡は、特に、ビーム経路において互いに追従し、それらの互いに対向する焦点面が(ほぼケプラー望遠鏡のように)一致するように、それらの付加された焦点距離から離れた距離で配置される2つの集束レンズを備えてよい。望遠鏡は、レーザビームが関連する光学チャネル内でアナモルフィックに変形されるように、少なくとも1つの光学チャネル内でアナモルフィック望遠鏡として設計されることが好ましい。特に、望遠鏡は、光学チャネル内のレーザビームの伝搬方向に垂直な軸に沿って、画像スケールに円筒状の変化をもたらすように設計される。
【0030】
光ビーム案内システムは、好ましくは、各光学チャネルにおいて、ビーム経路内に直列に配置され、2つの異なる歪方向(特に、2つの垂直方向に関して)に対して作用する2つのアナモルフィック望遠鏡を含む。その結果、2つの垂直軸に対してビーム特性を調整することができる。
【0031】
最初に設定された目的は、線形ビーム断面を有する有用な光分布を生成するためのレーザシステムによっても達成される。レーザシステムは、レーザビームを放射するための少なくとも2つのレーザ光源を備える。レーザシステムはまた、上述したタイプの光学配置を備え、光学配置は、レーザ光源からのレーザビームが結合ビームに変換されるように配置される。結合ビームは、ビーム経路内に続く光学的再形成システムによってさらに処理され、所望の線形有用光分布内に再成形され、任意に均質化される。結合ビームのビームウェストの後方のビーム経路に光学的再形成システムが配置される。複数のレーザ光源によって供給される組み合わせ光ビームは、光学配置によって生成され、この組み合わせ光ビームは、光学的再形成システムによって所望の線形有用光分布に変換される。光学配置、特に偏向体及び/又は光学終端手段を調整することによって、結合ビームのビーム特性を光学的再形成システムに整合させることができる。
【0032】
光学的再形成システムは、好ましくは、上述のように、ビームウェスト内に、又はビームウェストに空間的に近接して配置され、随意に、コリメーションレンズの後方のビーム経路内に配置される。したがって、光学的再形成システムは、比較的小さな空間寸法を有するように設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明のさらなる詳細および可能な実施形態を、図面を参照して以下により詳細に説明する。
【0034】
図1】平面図において直線的な有用な光分布を生成するためのレーザシステムの概略図を示す。
図2図1によるレーザシステムを側面から見た概略図を示す。
図3】光学配置を上面から見た概略図を示す。
図4】さらなる光学配置を上面から見た概略図を示す。
図5】さらなる光学配置を側面から見た概略図を示す。
図6図5による光学配置の概略図を平面図で示す。
図7】各々が2つの光学チャネルを含む2つのグループを有するレーザシステムの概略図を示す。
図8】2つの光学チャネルを有する光学配置の概略図を示す。
図9】2つの光学チャネルを有する配置についての図6に対応する表現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下の説明及び図面において、同一又は対応する特徴については、同一の参照符号を使用する。
【0036】
図1は、直線ビーム断面を有する有用な光分布(L)を生成するためのレーザシステム10の概略図を示す。
【0037】
いくつかの図では、右巻きのデカルト座標系が示されている。これは、装置の配置および位置合わせに限定されることを意図するものではないが、幾何学的関係を記述するために座標系の定義された方向を参照する。特に、レーザシステム10の個々のユニットは、異なる向きを有していてもよい。示された例では、有用な光分布は、X-Y平面内でY方向に直線的に延びている。
【0038】
レーザシステム10は、例えば、それぞれ関連付けられたレーザビーム14a~14fを放射するための複数のレーザ光源12a~12fを備えてよい。もちろん、複数のレーザビーム(例えば14a~14c又は14a~14f)を放射するのに適したレーザ光源を用いることもできる。図示の例では、レーザ光源12a~12fは、レーザビーム14a~14fが、レーザシステム10の入力側領域において、それぞれ3つのレーザビームを含む2つのグループに延びるように配置されている。例えば、レーザビーム14a~14fは、共通平面(Y-Z平面に示す例では)に配列されている。
【0039】
レーザビーム14a~14fは、複数のレーザビーム(14a~14c及び14d~14f)のそれぞれを結合ビーム18に変換するために使用される光学配置16に入射する。図示の例では、光学配置16は、第1のレーザビーム群14a~14cが結合ビーム18に合流され、第2のレーザビーム群14d~14fが結合ビーム18’に合流されるように設計されている。さらなる説明のために、第1のレーザビーム群14a~14c及びそれらに作用する光学部品のみを例に挙げて参照する。第2のレーザビーム群14d~14fも同様にして光学的に処理され得る。
【0040】
光学配置16では、レーザビーム14a~14cは、まず、別々の光学チャネル22a~22cが設けられた光ビーム案内システム20内に延びる。図示の例では、レーザビーム14a~14cは、各光学チャネル22a~22c内に延びる。光学チャネル22a~22c内を導かれたレーザビーム14a~14cは、光ビーム結合システム24に移送され、結合ビーム18を形成するために結合される。
【0041】
次いで、結合ビーム18は、結合ビーム18を所望の線形有用光分布Lに再形成する光学的再形成システム26を通って案内される。光学的再形成システム26については、様々な実施形態が考えられる。例えば、光学的再形成システム26は、結合ビーム18のビーム特性を最初に異方的に変化させるビーム変換要素28を有してよい。図示の例では、ビーム変換要素28は、組合せビーム18のビームパラメータ積又は回折指数MをY方向に増加させ、ビームパラメータ積又は回折指数MをX方向に減少させる(図2参照)。
【0042】
光学的再形成システムは、好ましい方向(例えば、Y方向)に強度分布を均質化するように設計された、輪郭で示されているホモジナイザ30も含んでよい。
【0043】
図2は、図1に概略的に示されたレーザシステム10の側面図を示す。図示の例では、レーザビーム14a~14fは、全て、1つの平面内に延在しており、従って、図2に係る図においては一のレーザビームは他のレーザビームの上方にある。本発明の基本的な態様は、1つの作用方向(図示の例では、Y方向)のみに関してレーザビーム14a~14fを合流させて結合させる光学配置16に含まれ得る。この点において、光学配置16は、特に、レーザビーム14a~14fが、好ましい方向に垂直な方向(図示の例では、X方向)に対して実質的に影響を受けないままであるように設計され得る。また、光ビーム案内システム20は、光学チャネル22a~22c内に導かれるレーザビーム14a~14cを予備形成するように設計されることが好ましい。それぞれの光学チャネル内のビーム特性に影響を与えるために、例えば、少なくとも1つの望遠鏡32、32’を、少なくとも1つの光学チャネル22a~22c内に設けることができる。このような望遠鏡32、32’は、光ビーム形成システムとして作用し、特に、光学チャネル14a~14f内のビーム断面を変化させるように設計することができる。望遠鏡は、アナモルフィックな光学特性を有すると考えられる。例えば、アナモルフィックな望遠鏡32を、第1の方向(図示の例では、Y方向)に関して望遠鏡がビーム特性に影響を及ぼす光学チャネル22a~22c内に設けることができる。さらに、ビーム経路の先行または後方にさらなる望遠鏡32’を設けることができ、この望遠鏡は、それに垂直な方向(図示の例では、X方向;図2参照)にビーム特性を変化させる。望遠鏡32、32’については、様々な実施形態が可能である。例えば、望遠鏡32、32’は、ガリレオ望遠鏡またはケプラー望遠鏡として設計することができる。特に、望遠鏡32、32’は、少なくとも2つの集束レンズ34a、34b又は34a’、34b’の配列として設計することが考えられ、その集束レンズは、それらの焦点面がビーム経路内でそれらの間で一致するように設計される。
【0044】
図3から分かるように、光ビーム案内システム20は、光学チャネル22a~22c毎に光終端手段36a~36cを有する。好ましくは、個々の光終端手段36a~36cが、各個々の光学チャネル22a~22cに関連付けられる。関連する光学チャネル22a~22cに導かれたレーザ放射は、関連するチャネル出力ビーム38a~38cとして、関連する光終端手段36a~36cを介して出射する。この点において、1つのチャネル出力ビーム38a~38cは正確にそれぞれ個々の光学チャネル22a~22cに関連している。
【0045】
光終端手段36a~36cは、望遠鏡32のレンズによって、関連する光学チャネル22a~22c内に設けることが有利である。好ましくは、関連する望遠鏡32の出力側レンズ34bは、関連する光学チャネル22a~22c内に光終端手段36a~36cを形成する。
【0046】
光ビーム案内システム22は、当該光終端手段36a~36cを出た後、チャネル出力ビーム38a~38cが最初は全て主方向40に延びるように設計することができる(図3参照)。特に、光学チャネル22a~22cは、チャネル出力ビーム38a~38cが光軸(主方向40に延びる光軸)に対して対称に配置されるように設計することが考えられる。図3の例では、チャネル出力ビーム38a~38cは、中心チャネル出力ビーム38bに対して軸対称にY-Z平面内を延びている。この点において、中心チャネル出力ビーム38bは、システムの光軸上で主方向40に延びている。しかし、このような実施形態は必須ではない。また、チャネル出力ビーム38a~38cが、特に、それらが集束光束を形成するように、互いに部分的に斜めに延在することも有利である。
【0047】
また、光学配置16は、複数の偏向体42a~42cを備える。各偏向体42a~42cは、光学チャネル22a~22cのうちの1つに関連している。関連する偏向体42a~42cは、偏向体が、関連する各光学チャネル22a~22cのチャネル出力ビーム38a~38cのみを捕捉するように、寸法決めされ、配置される。特に、関連する偏向体42a~42cは、関連する各光終端手段36a~36cの領域に配置される。
【0048】
偏向体42a~42cは、光伝送システムとして、すなわち、伝送効果を有する光学体として設計されることが好ましい。しかしながら、偏向体42a~42cは、各々、光反射システムとして、特にミラーの組み合わせ配置として設計することも考えられる。偏向体は、偏向体42a~42cによって捕捉されたチャネル出力ビーム38a~38cが、光学配置16の焦点領域44に偏向され、そこに結合ビーム18のビームウェスト46が形成されるように、それぞれ関連するチャネル出力ビーム38a~38cに作用する。
【0049】
特に、関連する捕捉チャネル出力ビーム38a~38cは、偏向体42a~42cの境界面における屈折によって偏向される。特に、各偏向体は、各捕捉チャネル出力ビーム38a~38cが関連する偏向体42a~42cに結合される光入射面48を有する。偏向体42a~42cはまた、捕捉され結合されたチャネル出力ビーム38a~38cが再び偏向体42a~42cから離れ、その後焦点領域44に向かう方向成分を有する光出射面50を有する。これは、特に、光出射面が光入射面に対して斜めに配向されることによって達成することができる。
【0050】
図示の例では、偏向体42a~42cは、光学プリズムの形態のモノリシック体として設計されている。
【0051】
1つの偏向体42a~42cが各光学チャネル22a~22cに正確に関連していれば有利である(図3参照)。これにより、各チャネル出力ビーム38a~38cに対して伝搬方向を正確に調整することが可能となり、したがって、ビームウェスト46内の結合ビーム18の特性に影響を与えることが可能となる。
【0052】
しかしながら、出射チャネル出力ビーム38a~38cが所望の焦点領域44の方向に伝搬しない光学チャネル22a~22cについてのみ、偏向体42a~42cを設けることも有利である。対応する実施形態が、図4の例として概要が示されている。中央光学チャネル22bの光終端手段36bを通って出て行くチャネル出力ビーム38bは、既に主方向40においてシステムの光軸上に延びており、焦点領域44を狙っている。したがって偏向体による偏向の必要はない。しかしながら、エッジ側光学チャネル36a及び36cに対しては、対応する関連する偏向体42a及び42cが設けられる。この実施形態は、コンパクトな光ビーム結合システム24につながる。
【0053】
以下のビーム変換要素28に結合するための結合ビーム18を準備するために、光学配置16は、レンズ手段52を備えてよい。特に、レンズ手段は、結合ビーム18をコリメートするため、且つ/又は結合ビーム18を主方向40に対して平行にするために使用されるコリメータレンズ52として設計することができる。コリメータレンズ52は、ビームウェスト46に続くビーム経路内に配置されることが好ましい。コリメータレンズ52は、好ましくは、結合ビーム18を完全に捕捉し、この点において、特にビームウェスト46の領域における発散角度と協調している。
【0054】
コリメータレンズは、焦点面54を画定する集束レンズとして設計することが好ましい。コリメータレンズ52は、特に、焦点面54がビームウェスト46を通って延びるように配置される。その結果、結合ビーム18がコリメータレンズ52を通過した後に平行化され、この点において、小さな広がり角を有するビーム変換要素28に入射することが達成できる。また、コリメータレンズは、ビームウェスト46の前方のビーム経路内に配置される拡散レンズとして設計することも考えられる。
【0055】
また、チャネル出力ビーム38a~38cは、原理的に、光終端手段36a~36cに続くビーム経路に配置された単一の円柱レンズ56によって偏向させることもできる(図6参照)。
【0056】
円柱レンズ56は、特に、光学チャネル22a、22b、22cが互いに隣り合って配置された平面内で光を束ねるように作用する。この点において、円柱レンズ56は、光学チャネル22a~22cが互いに隣り合って延びる平面に対して垂直に延びる軸を有することが好ましい。
【0057】
円柱レンズ56は、好ましくは、全てのチャネル出力ビーム38a~38cが捕捉され、焦点領域44によって束ねられ、そこでビームウェストを形成するように寸法決めされる。そのような実施形態は、特に単純な光ビーム結合システム24’を形成し、その中で、円柱レンズ56への付加的な構成要素を実質的に分配することができる(図6参照)。
【0058】
特に、大きな焦点距離を有する円柱レンズ56が選択されると、結合ビーム18は、ビームウェスト46の領域において小さな広がり角を有し、次いで、引き続くビーム変換要素28に供給される。
【0059】
図6に関連して説明した光ビーム結合システム24’は、アナモルフィックな効果を有し、従って、ビーム合成平面に垂直な部分(図5参照)において、結合ビーム18のビーム特性にほとんど影響を及ぼさない。
【0060】
図1図6は、一例として、3つの光学チャネル22a~22cにおいてレーザビームを合流させて結合ビーム18を形成する光学配置16を示す。この実施形態は必須ではない。特に、配置における光学チャネルの数は、種々選択することができる。
【0061】
このことは、2つの光学チャネルを使用して動作する光学配置16をそれぞれ示す図7~9を参照して示されている。レーザビームは、例えば、各々が2つのレーザビームを含む2つのグループで延在する。説明のために、光学チャネル22a,22bにおいて2つのレーザビーム14a,14bを有する1つのグループのみについて説明する。
【0062】
図1の実施形態と同様に、光学配置16内のレーザビーム14a、14bは、最初に、2つの別個の光学チャネル22a、22bを提供する光ビーム案内システム20内に延在している。光学チャネル22a,22bに導かれたレーザビーム14a,14bは、光ビーム結合システム24に搬送され、その中で結合されて結合ビーム18を形成する。次いで、結合ビーム18は、結合ビーム18を所望の線形有用光分布Lに再形成するのに寄与するビーム変換要素28を通って導かれる。
【0063】
関連するチャネル出力ビーム38aまたは38bは、関連する光学チャネル22aまたは22bの光終端手段36aまたは36bを通って出て行く(図8参照)。示される例では、偏向体42a又は42bは、チャネル出力ビームが合流して記載された方法でビームウェスト46を形成するように、各光学チャネル22a又は22bに関連付けられる。
【0064】
図9には、2つの光学チャネル22a及び22bを有する配置の場合のために、円柱レンズ56によってチャネル出力ビーム36a及び36bを偏向させることが示されている。円柱レンズ56は、光終端手段36a及び36bに続くビーム経路に配置され、2つの光学チャネル22a及び22bを捕捉する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9