(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】静的磁気センサを備えた移動式検出システム
(51)【国際特許分類】
G01V 3/00 20060101AFI20240207BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20240207BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
G01V3/00 A
G08B25/04 K
G08B21/02
(21)【出願番号】P 2020573446
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(86)【国際出願番号】 EP2019067475
(87)【国際公開番号】W WO2020002680
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-05-13
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517131396
【氏名又は名称】マネスキ、アレッサンドロ
【氏名又は名称原語表記】MANNESCHI,Alessandro
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マネスキ、アレッサンドロ
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-014351(JP,A)
【文献】特開2011-070621(JP,A)
【文献】特開2003-185759(JP,A)
【文献】特開2005-351804(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0197523(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00-99/00
G08B19/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出された磁場の強度を表す信号を生成するように構成された少なくとも1つの第1の磁気センサ(5)と、少なくとも1つのエミッタ(8)とを含む第1の検出器(10)と、
前記第1の検出器(10)とは別個の、検出された磁場の強度を表す信号を生成するように構成された少なくとも1つの第2の磁気センサ(5)と、少なくとも1つのエミッタ(8)とを含む第2の検出器(20)と、
前記第1の磁気センサ(5)および/または前記第2の磁気センサ(5)によって検出された磁場の強度を表す信号を受信するように構成された少なくとも1つの処理ユニット(6)と、
を備える、標的物体の検出システム(1)であって、
前記検出システム(1)は、前記第1および/または第2の磁気センサ(5)によって生成された信号を前記処理ユニット(6)に送信するように構成された少なくとも1つの通信インターフェース(7)をさらに備え、
前記処理ユニット(6)は、前記第1の検出器(10)および/または前記第2の検出器(20)の前記エミッタ(8)に警報を生成する命令を送るように構成され、
前記通信インターフェース(7)は、ワイヤレス通信インターフェースであ
り、
前記処理ユニット(6)は、前記第1の検出器(10)に収容され、前記通信インターフェース(7)を介して、前記第2の検出器(20)に警報を生成する命令を送るように構成されることを特徴とする検出システム(1)。
【請求項2】
前記第1の磁気センサ(5)および/または前記第2の磁気センサ(5)によって検出された磁場の強度を表す信号を受信するように構成された処理ユニット(6)、または、前記第1の磁気センサ(5)によって検出された磁場の強度を表す信号を受信するように構成された処理ユニット(6)および前記第2の磁気センサ(5)によって検出された磁場の強度を表す信号を受信するように構成された処理ユニット(6)を備え、
前記通信インターフェース(7)は、前記第2の磁気センサ(5)によって生成された信号を、前記第1の磁気センサ(5)によって検出された磁場の強度を表す信号を受信した前記処理ユニット(6)に送信するように構成され、
前記処理ユニット(6)は、前記第1の磁気センサ(5)および前記第2の磁気センサ(5)によって検出された磁場の強度を表す信号に基づき算出される値を求め、前記算出される値が所定の閾値より大きい場合、前記第1の検出器(10)および/または前記第2の検出器(20)の前記エミッタ(8)に警報を生成する命令を送るように構成される請求項1に記載の検出システム(1)。
【請求項3】
前記算出される値は、前記第1のおよび第2の磁気センサ(5)によって生成された信号の平均値、および/または、前記第1のおよび第2の磁気センサ(5)によって生成された信号に減衰係数を適用することで得られる補正値を含む請求項2に記載の検出システム(1)。
【請求項4】
前記第1および第2の検出器(10、20)は、移動式である請求項1~
3のいずれか一項に記載の検出システム(1)。
【請求項5】
第3の検出器(30)をさらに備え、
前記第3の検出器(30)は、磁場を検出し、該検出された磁場の強度を表す信号を生成するように構成された少なくとも1つの第3の磁気センサ(5)を含み、
前記第1の検出器(10)および第2の検出器(20)は、第1のゲートを形成し、前記第2の検出器(20)および前記第3の検出器(30)は共に、第2のゲートを形成する請求項1~
4のいずれか一項に記載の検出システム(1)。
【請求項6】
前記第1および第2の検出器(10、20)のそれぞれに、処理ユニット(6)が収容され、
前記第2の検出器(20)に収容された前記処理ユニット(6)は、前記第2の検出器(20)および第3の検出器(20)に、警報を生成する命令を送るように構成される請求項
5に記載の検出システム(1)。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の検出システム(1)を用いた標的物体の検出方法(S)であって、
前記第1および第2の磁気センサ(5)によって磁場の強度を表す信号を生成するステップS1と、
処理値を求めるため、前記第1および第2の磁気センサによって生成された信号を前記処理ユニット(6)により処理するステップS2と、
前記処理値を所定の閾値と比較するステップS4と、
前記処理値が前記所定の閾値より大きい場合、前記ワイヤレス通信インターフェースを用いて、前記第1の検出器(10)および/または前記第2の検出器(20)に警報を生成する命令を送るステップS5と、
を含
み、
前記第1の検出器は、前記処理ユニット(6)および通信インターフェース(7)を含み、前記第2の検出器(20)は、通信インターフェース(7)を含み、
前記検出方法は、前記第2の磁気センサ(5)によって生成された信号を、前記通信インターフェース(7)を介して前記処理ユニット(6)に送信するステップをさらに含む検出方法(S)。
【請求項8】
前記処理するステップS2は、
前記第1および第2の磁気センサ(5)によって生成された信号に基づいて、前記信号の平均値を算出するサブステップ、
前記第1および第2の磁気センサ(5)によって生成された信号に基づいて、前記信号の平均値を算出し、前記平均値に減衰係数を適用することで、前記平均値を補正して(S3)、補正された平均値を求めるサブステップ、
前記第1および第2の磁気センサ(5)によって生成された信号に減衰係数を適用することで、前記信号を補正して、補正値を求め、補正された信号に基づいて、平均値を算出するサブステップ、
前記第1および第2の磁気センサ(5)によって生成された信号に減衰係数を適用することで、前記信号を補正して、補正値を求め、前記補正値の合計を算出するサブステップ、
前記第1および第2の磁気センサ(5)によって生成された信号に減衰係数を適用することで、前記信号を補正して、補正値を求め、前記補正値の最大値を求めるサブステップ、
前記第1および第2の磁気センサ(5)によって生成された信号に基づいて、前記信号の合計を求め、前記合計に減衰係数を適用することで、前記合計を補正するサブステップ、または、
前記第1および第2の磁気センサ(5)によって生成された信号に基づいて、前記信号の最大値を求め、前記最大値に減衰係数を適用することで、前記最大値を補正するサブステップのうち1つを含む請求項
7に記載の検出方法(S)
【請求項9】
前記減衰係数は、
前記第1の磁気センサ(5)および前記第2の磁気センサ(5)によって生成された信号の最大値を決定するサブステップS31と、
前記第1の磁気センサ(5)および前記第2の磁気センサ(5)によって生成された信号の最小値を決定するサブステップS32と、
決定された前記最小値に対する前記最大値の比を計算するサブステップS32と、
前記比を第1の閾値および前記第1の閾値より大きい第2の閾値と比較するサブステップS34と、
前記減衰係数を推定するサブステップS35と、
に従って算出され、
前記減衰係数は、
前記比が前記第1の閾値より小さい場合、第1の値と等しく、
前記比が前記第2の閾値より大きい場合、前記第1の値とは異なる第2の値と等しく、
前記比が前記第1の閾値と前記第2の閾値との間にある場合、前記第1の値と前記第2の値との間にある、請求項
8に記載の検出方法(S)。
【請求項10】
前記比が前記第1の閾値と前記第2の閾値との間にある場合、前記減衰係数は、前記比に依存する線形関数である請求項
9に記載の検出方法(S)。
【請求項11】
前記第1の値は1であり、前記第2の値は0.1であり、前記減衰係数は、前記比が前記第1の閾値と前記第2の閾値の間にある場合、下記の関数によって定義される請求項
9または
10に記載の検出方法(S)。
-0.03×R+1.9
(式中、Rは前記比の値である。)
【請求項12】
前記第1の検出器(10)は、少なくとも2つの前記第1の磁気センサ(5)を含み、前記第2の検出器(20)は、少なくとも2つの前記第2の磁気センサ(5)を含み、各第1の磁気センサ(5)は、所与の第2の磁気センサ(5)に関連付けられて対を形成し、各対に対して前記ステップS1~S4が適用される請求項
7~
11のいずれか一項に記載の検出方法(S)。
【請求項13】
前記検出システム(1)は、第3の検出器(30)をさらに備え、
前記第3の検出器(30)は、磁場を検出し、該検出された磁場の強度を表す信号を生成するように構成された少なくとも1つの第3の磁気センサ(5)を含み、
前記検出方法(S)は、警報を生成する前記ステップS5の前に、前記第2および第3の磁気センサ(5)によって生成された信号を処理して、処理値を求めるステップをさらに含む請求項
7~
12のいずれか一項に記載の検出方法(S)。
【請求項14】
前記第2および第3の磁気センサ(5)によって生成された信号の処理値を求めるステップの後に、前記第1および第2の磁気センサ(5)によって生成された信号の前記処理値と、前記第2および第3の磁気センサ(5)によって生成された信号の前記処理値とに基づき、前記第1の検出器(10)および第2の検出器(20)によって形成されたゲート、ならびに、前記第2の検出器(20)および前記第3の検出器(30)によって形成されたゲートのうち、磁場を検出した1つまたは複数のゲートを推定するステップをさらに含む請求項
13に記載の検出方法(S)。
【請求項15】
前記1つまたは複数のゲートを推定するステップは、
前記第2および第3の磁気センサ(5)の信号に基づいて算出された前記処理値に安全係数(Ks)を乗算するサブステップと、
前記第1および第2の磁気センサ(5)によって生成された信号に基づいて算出された前記処理値を、前記第2および第3の磁気センサ(5)に基づいて算出され、前記安全係数(Ks)を乗算された前記処理値と比較するサブステップと、
前記第1および第2の磁気センサ(5)の信号に基づいて算出された前記処理値に前記安全係数(Ks)を乗算するサブステップと、
前記第2および第3の磁気センサ(5)によって生成された信号に基づいて算出された前記処理値を、前記第1および第2の磁気センサ(5)に基づいて算出され、前記安全係数(Ks)を乗算された前記処理値と比較するサブステップと、
を含む請求項
14に記載の検出方法(S)。
【請求項16】
前記第1および第2の磁気センサ(5)によって生成された信号に基づいて算出された前記処理値が、前記第2および第3の磁気センサ(5)の信号に基づいて算出され、前記安全係数(Ks)を乗算された前記処理値より大きい場合、前記ステップS5は、前記第1および第2の検出器(10、20)によってのみ実行され、
前記第2および第3の磁気センサ(5)によって生成された信号に基づいて算出された前記処理値が、前記第1および第2の磁気センサ(5)の信号に基づいて算出され、前記安全係数(Ks)を乗算された前記処理値より大きい場合、前記ステップS5は、前記第2および第3の検出器(20、30)によってのみ実行される請求項
15に記載の検出方法(S)。
【請求項17】
前記第1の検出器(10)および前記第2の検出器(20)は、それぞれ処理ユニット(6)を含み、
前記第2および第3の磁気センサ(5)によって生成された信号の処理値を算出するステップは、前記第2の検出器(20)の前記処理ユニット(6)によって実行され、
前記第1および第2の磁気センサ(5)によって生成された信号の処理値を算出するステップは、前記第1の検出器(10)の前記処理ユニット(6)によって実行され、
前記磁場を検出した検出器(10、20、30)の1つまたは複数の対を推定するステップは、前記第2の検出器(20)の前記処理ユニット(6)および前記第1の検出器(10)の前記処理ユニット(6)によって実行される請求項
14~
16のいずれか一項に記載の検出方法(S)。
【請求項18】
前記検出システム(1)は、第4の検出器(n+1)をさらに備え、
前記第4の検出器(n+1)は、磁場を検出し、該検出された磁場の強度を表す信号を生成するように構成された少なくとも1つの第4の磁気センサ(5)を含み、
前記検出方法(S)は、
前記第3および第4の磁気センサ(5)によって生成された信号の処理値を算出するサブステップと、
前記第3および第4の磁気センサ(5)によって生成された信号の前記処理値
に安全係数(Ks)を乗算するサブステップと、
前記第2および第3の磁気センサによって生成された信号の前記処理値を、前記第3および第4の磁気センサ(5)によって生成された信号の前記処理値に前記安全係数(Ks)を乗算したものと比較するサブステップと、
前記第3および第4の磁気センサによって生成された信号の前記処理値を、前記第2および第3の磁気センサ(5)によって生成された信号の前記処理値に前記安全係数(Ks)を乗算したものと比較するサブステップと、
前記第1、第2、第3、および第4の検出器(10、20、30、n+1)のうち、磁場を検出した検出器の1つまたは複数の対を推定するサブステップと
をさらに含む請求項17に記載の検出方法(S)。
【請求項19】
前記第2および第3の磁気センサによって生成された信号の前記処理値が、前記第3および第4の磁気センサ(5)によって生成された信号の前記処理値に前記安全係数(Ks)を乗算したものより大きい場合、前記ステップS5は、前記第2および第3の検出器(20、30)によってのみ実行され、
前記第3および第4の磁気センサによって生成された信号の前記処理値が、前記第2および第3の磁気センサ(5)によって生成された信号の前記処理値に前記安全係数(Ks)を乗算したものより大きい場合、前記ステップS5は、前記第3および第4の検出器(10、20)によってのみ実行される請求項
18に記載の検出方法(S)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的物体の検出の分野、具体的には、磁化または強磁性成分を含む物体の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
公共の場でのさまざまな攻撃に起因する現在の情勢により、スタジアム、コンサートホール、デパートなどの公共の場の入口でアサルトライフル型の武器を検出する必要が生じている。
【0003】
現在、この検出は、問題のさまざまな公共の場に立ち入りたい人々の体に沿って、あるいは、その所有物の周りに動かされる手動の移動式検出器を持ったセキュリティ担当者によって行われている。しかしながら、このような検査は時間と手間がかかり、問題の場所への立ち入りを希望する人の数が多すぎて十分に実施できないことが多い。
【0004】
また、さまざまな公共の場の入口に恒久的なゲートを設置することも提案されている。これらのゲートは、固定設置が必要な場合に適している。しかしながら、このような設置にはかなりの作業が必要であり、スタジアム、コンサートホール、デパートなどの公共の場には不向きである。なお、公共の場では、非常口を確保するためにスペースを空ける必要があり、移動式システムの利用が望ましい。
【0005】
静的磁気センサを備えた移動式の個別バリアを使用することも提案されている。このようなバリアは、一般に、架台に取り付けられ、少なくとも1つの静的磁気センサ、例えば、ポールの高さ方向に分散された3つの静的磁気センサを備えた支柱を含む。各センサは、検出された電磁場の強度を表す(電圧)信号を生成するように構成される。これらのバリアは、囚人が磁性体、特に携帯電話を持っているかどうかを検出するために、特に刑務所で使用される。そのため、囚人は通常、金属や磁性体の所持を許可されていないため、磁気センサの感度は非常に高くなる。
【0006】
これらのバリアの感度を高めるため、ゲートを形成するようにバリアを二つ一組で使用することも提案されている。具体的には、センサの感度は距離とともに指数関数的に減少する。このようなバリアには、移動可能で、設置に手間がかからないという利点がある。また、現在のアサルトライフルは強磁性体でできており、サイズが大きいため、地球の電磁場で発生するディスラプションは、これらのセンサで検出できるほど大きい。
【0007】
しかしながら、刑務所とは異なり、人々は磁化または強磁性の部品を含む金属物体、多くの場合はスマートフォンなど、を身に着けたり携帯したりしていることが多い。しかし、スマートフォンの自律磁場は、アサルトライフルの通過によって生じる地球の電磁場のディスラプションに実質的に匹敵する。したがって、このような人々が通過すると、アサルトライフルがない場合でも、体系的にバリア警報を誘発してしまう。そのため、武器を検出するバリアの能力を保証するために、スマートフォンとアサルトライフルを区別できる必要がある。
【0008】
そこで、国際公開第2017/141022号では、検査対象者を誘導し、バリアによって形成されたゲートの中央を通過させるために、各バリアにスペーサを追加することが提案されている。この中央部では、一対のバリアによって形成されたゲートの感度がより均一となっている。具体的には、静的磁気センサの感度は距離に反比例するため、センサは中央よりバリアに近いほど感度が高くなる。しかしながら、バリア付近のこの過剰な感度により、多くの割合で誤った警報が発生する。そこで、スペーサの存在により、検査対象がバリアに近づきすぎないようにし、感度が低く均一なゲートの中央に留まるようにすることができる。
【0009】
しかしながら、バリア間の距離が増加すると、バリアからこの距離にある信号が弱くなり、周囲の要素によって生成された信号に近づくため、ゲートが環境干渉を受けやすくなるリスクがある。また、このようにして得られたバリアは、最初のバリアよりもかなり重くてかさばるため、運ぶのがより困難である。さらに、複数のゲートを作る必要がある場合、特にスタジアムや大きなコンサートホールへのアプローチでは、バリアの対によって形成されるアセンブリは非常にかさばるため、作成できるゲートの数が制限される。
【0010】
米国特許出願公開第2018/012465号明細書には、請求項1のプリアンブルに関する検出システムが記載されている。特に、この文献には、検出された磁場の強度を表す信号を生成するように構成された少なくとも1つの磁気センサをそれぞれ含む複数の検出器と、各検出器について、センサによって検出された磁場の強度を表す信号を受信するように構成された処理ユニットとを備える検出システムが記載されている。検出器で生成される磁場は検出器の感度距離rの3乗に反比例するため、この文献のシステムの2つの検出器は、その感度距離の半分の長さで離間している。このように、検出器が独立しており、感度を下げることができる。
【0011】
米国特許出願公開2006/197523号明細書には、複数のグラジオメータをそれぞれ含む複数の検出器と、グラジオメータによって生成された信号を収集するように構成されたプロセッサとを備える、物体を検出するためのシステムが記載されている。プロセッサは、バックグラウンドノイズの測定値を取得するために、収集された信号の平均値を計算する。この平均値は、ノイズを除去するため、グラジオメータによって生成された信号から減算される。
【発明の概要】
【0012】
したがって、本発明の目的は、嵩を小さく、例えば公共の場の入口に、迅速に設置および取り外しが可能であり、また適切に、スマートフォンなどの磁気部品を含む小さな物体を確実に区別し、アサルトライフルを検出することができる検出システムを提案することである。
【0013】
この目的のため、本発明は、
検出された磁場の強度を表す信号を生成するように構成された少なくとも1つの第1の磁気センサと、少なくとも1つのエミッタとを含む第1の検出器と、
第1の検出器とは別個の、検出された磁場の強度を表す信号を生成するように構成された少なくとも1つの第2の磁気センサと、少なくとも1つのエミッタとを含む第2の検出器と、
第1の磁気センサおよび/または第2の磁気センサによって検出された磁場の強度を表す信号を受信するように構成された少なくとも1つの処理ユニットと、
第1および/または第2の磁気センサによって生成された信号を処理ユニットに送信するように構成された通信インターフェースと、
を備える、標的物体の検出システムを提案する。
【0014】
また、少なくとも1つの処理ユニットは、第1の検出器および/または第2の検出器のエミッタに警報を生成する命令を送るように構成される。
【0015】
非限定的であるが、上記の検出システムの好ましい態様は、以下のとおりである。これらは個別にまたは組み合わせて使用される。
処理ユニットは、第1の検出器に収容され、通信インターフェースを介して、第2の検出器に警報を生成する命令を送るように構成される。
通信インターフェースは、ワイヤレス通信インターフェースである。
第1および第2の検出器は、移動式である。
検出システムは、第3の検出器をさらに備え、第3の検出器は、磁場を検出し、該検出された磁場の強度を表す信号を生成するように構成された少なくとも1つの第3の磁気センサを含み、第1の検出器および第2の検出器は、第1のゲートを形成し、第2の検出器および第3の検出器は共に、第2のゲートを形成する。
第1および第2の検出器のそれぞれに、処理ユニットが収容され、第2の検出器に収容された処理ユニットは、第2の検出器および第3の検出器に、警報を生成する命令を送るように構成される。
【0016】
第2の態様によると、本発明は、上記の検出システムを用いた標的物体の検出方法であって、
第1および/または第2の磁気センサによって磁場の強度を表す信号を生成するステップS1と、
処理値を求めるため、第1および第2の磁気センサによって生成された信号を処理ユニットにより処理するステップS2と、
処理値を所定の閾値と比較するステップS4と、
処理値が所定の閾値より大きい場合、第1の検出器および/または第2の検出器に警報を生成する命令を送るステップS5と、
を含む検出方法を提案する。
【0017】
非限定的であるが、上記の検出方法の好ましい態様は、以下のとおりである。これらは個別にまたは組み合わせて使用される。
第1の検出器は、処理ユニットおよび通信インターフェースを含み、第2の検出器は、通信インターフェースを含み、検出方法は、第2の磁気センサによって生成された信号を、通信インターフェースを介して処理ユニットに送信するステップをさらに含む。
処理ステップS2は、
第1および第2の磁気センサによって生成された信号に基づいて、信号の平均値を算出するサブステップ、
第1および第2の磁気センサによって生成された信号に基づいて、信号の平均値を算出し、平均値に減衰係数を適用することで、平均値を補正して、補正された平均値を求めるサブステップ、
第1および第2の磁気センサによって生成された信号に減衰係数を適用することで、信号を補正して、補正値を求め、補正された信号に基づいて、平均値を算出するサブステップ、
第1および第2の磁気センサによって生成された信号に減衰係数を適用することで、信号を補正して、補正値を求め、補正値の合計を算出するサブステップ、
第1および第2の磁気センサによって生成された信号に減衰係数を適用することで、信号を補正して、補正値を求め、補正値の最大値を求めるサブステップ、
第1および第2の磁気センサによって生成された信号に基づいて、信号の合計を求め、合計に減衰係数を適用することで、合計を補正するサブステップ、または、
第1および第2の磁気センサによって生成された信号に基づいて、信号の最大値を求め、最大値に減衰係数を適用することで、最大値を補正するサブステップのうち1つを含む。
減衰係数は、
第1の磁気センサおよび第2の磁気センサによって生成された信号の最大値を決定するサブステップS31と、
第1の磁気センサおよび第2の磁気センサによって生成された信号の最小値を決定するサブステップS32と、
決定された最小値に対する最大値の比を計算するサブステップS32と、
上記比を第1の閾値および第1の閾値より大きい第2の閾値と比較するサブステップS34と、
減衰係数を推定するサブステップS35と、
に従って算出され、
減衰係数は、上記比が第1の閾値より小さい場合、第1の値と等しく、上記比が第2の閾値より大きい場合、第1の値とは異なる第2の値と等しく、上記比が第1の閾値と第2の閾値との間にある場合、第1の値と第2の値との間にある。
上記比が第1の閾値と第2の閾値との間にある場合、減衰係数は、上記比に依存する線形関数である。
第1の値は1であり、第2の値は0.1であり、減衰係数は、上記比が第1の閾値と第2の閾値の間にある場合、下記の関数によって定義される。
-0.03×R+1.9
(式中、Rは上記比の値である。)
第1の検出器は、少なくとも2つの第1の磁気センサを含み、第2の検出器は、少なくとも2つの第2の磁気センサを含み、各第1の磁気センサは、所与の第2の磁気センサに関連付けられて対を形成し、各対に対してステップS1~S4が適用される。
検出システムは、第3の検出器をさらに備え、第3の検出器は、磁場を検出し、該検出された磁場の強度を表す信号を生成するように構成された少なくとも1つの第3の磁気センサを含み、検出方法は、警報を生成するステップS5の前に、第2および第3の磁気センサによって生成された信号を処理して、処理値を求めるステップをさらに含む。
上記の検出方法は、第2および第3の磁気センサによって生成された信号の処理値を算出するステップの後に、第1および第2の磁気センサによって生成された信号の処理値と、第2および第3の磁気センサによって生成された信号の処理値とに基づき、第1の検出器および第2の検出器によって形成されたゲート、ならびに、第2の検出器および第3の検出器によって形成されたゲートのうち、磁場を検出した1つまたは複数のゲートを推定するステップをさらに含む。
1つまたは複数のゲートを推定するステップは、
第2および第3の磁気センサの信号に基づいて算出された処理値に安全係数を乗算するサブステップと、
第1および第2の磁気センサによって生成された信号に基づいて算出された処理値を、第2および第3の磁気センサに基づいて算出され、安全係数を乗算された処理値と比較するサブステップと、
第1および第2の磁気センサの信号に基づいて算出された処理値に安全係数を乗算するサブステップと、
第2および第3の磁気センサによって生成された信号に基づいて算出された処理値を、第1および第2の磁気センサに基づいて算出され、安全係数を乗算された処理値と比較するサブステップと、
を含む。
第1および第2の磁気センサによって生成された信号に基づいて算出された処理値が、第2および第3の磁気センサの信号に基づいて算出され、安全係数を乗算された処理値より大きい場合、ステップS5は、第1および第2の検出器によってのみ実行される。
第2および第3の磁気センサによって生成された信号に基づいて算出された処理値が、第1および第2の磁気センサの信号に基づいて算出され、安全係数を乗算された処理値より大きい場合、ステップS5は、第2および第3の検出器によってのみ実行される。
第1の検出器および第2の検出器は、それぞれ処理ユニットを含み、
第2および第3の磁気センサによって生成された信号の処理値を算出するステップは、第2の検出器の処理ユニットによって実行され、
第1および第2の磁気センサによって生成された信号の処理値を算出するステップは、第1の検出器の処理ユニットによって実行され、
磁場を検出した検出器の1つまたは複数の対を推定するステップは、第2の検出器の処理ユニットおよび第1の検出器の処理ユニットによって実行される。
検出システムは、第4の検出器をさらに備え、第4の検出器は、磁場を検出し、該検出された磁場の強度を表す信号を生成するように構成された少なくとも1つの第4の磁気センサを含み、
検出方法は、
第3および第4の磁気センサによって生成された信号の処理値を算出するサブステップと、
第3および第4の磁気センサによって生成された信号の処理値に安全係数を乗算するサブステップと、
第2および第3の磁気センサによって生成された信号の処理値を、第3および第4の磁気センサによって生成された信号の処理値に安全係数を乗算したものと比較するサブステップと、
第3および第4の磁気センサによって生成された信号の処理値を、第2および第3の磁気センサによって生成された信号の処理値に安全係数を乗算したものと比較するサブステップと、
第1、第2、第3、および第4の検出器のうち、磁場を検出した検出器の1つまたは複数の対を推定するサブステップをさらに含む。
第2および第3の磁気センサによって生成された信号の処理値が、第3および第4の磁気センサによって生成された信号の処理値に安全係数を乗算したものより大きい場合、ステップS5は、第2および第3の検出器によってのみ実行される。
第3および第4の磁気センサによって生成された信号の処理値が、第2および第3の磁気センサによって生成された信号の処理値に安全係数を乗算したものより大きい場合、ステップS5は、第3および第4の検出器によってのみ実行される。
【0018】
本発明の他の特徴、目的および利点は、以下の詳細な説明および非限定的な例として与えられる添付の図面を参照することでより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の検出システムで使用することができる検出器の一例の概要図である。
【
図2】2つの検出器を含む本発明の検出システムの例示的な実施形態を示す。
【
図3】2つのゲートを共に形成する3つの検出器を含む本発明の検出システムの例示的な実施形態を示しており、ゲートの1つで人が検査されている。
【
図4】m-1個のゲートを共に形成するm個の検出器を含む本発明の検出システムの例示的な実施形態を示す。
【
図5】本発明の検出方法の一例の一般的なステップを示すブロック図である。
【
図6】信号の値を補正するサブステップを示すブロック図である。
【
図7】検出システムが少なくとも4つの検出器(n-2、n-1、nおよびn+1)を含む場合の、本発明の検出方法の一例のステップを示すブロック図である。
【
図8a】130cmの距離で離間した2つの検出器を含む、従来技術の検出システムの信号の強度を示す。
【
図8b】130cmの距離で離間した2つの検出器と、2つの検出器のセンサによって生成された信号の平均値を算出するように構成された処理ユニットとを含む、本発明の実施形態による検出システムの信号の強度を示す。
【
図8c】130cmの距離で離間した2つの検出器と、2つの検出器のセンサによって生成された信号の平均値を算出するように構成された処理ユニットとを含む、本発明の実施形態による検出システム1の信号の強度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
標的物体、特にアサルトライフルなどの大容量の強磁性材料を含む物品を検出するためのシステム1は、
共にゲートを形成する少なくとも1つの第1および第2の検出器10、20と、
少なくとも1つの処理ユニット6と、
少なくとも1つの通信インターフェース7と、
を備える。
【0021】
各検出器10、20は、少なくとも1つの磁気センサ5を含む。本明細書では、「磁気」(または静的磁気)という用語は、例えば誘導コイルとは対照的に、鉄または任意の強磁性成分を含む物体を自然に囲む磁場を検出するように構成された受動センサを意味すると理解される。
【0022】
より詳細には、第1の検出器10は、少なくとも1つの第1の磁気センサ5、好ましくは少なくとも2つ、例えば3つの第1の磁気センサ5を含み、第2の検出器20は、少なくとも第2の磁気センサ5を含む。好ましくは、第2の検出器20および第1の検出器10はそれぞれ、同数のセンサ5を含む。
【0023】
各磁気センサ5は、磁場を検出し、検出された磁場の強度を表す信号を生成するように構成される。一実施形態では、信号は電圧であり、その値は、検出された磁場の強度に比例する。
【0024】
一実施形態では、各磁気センサ5は、3つの直交軸に沿った磁場の強度を検出するように構成される。
【0025】
各検出器10、20は、例えば架台4を介して地面に配置されるように構成された柱部3をさらに含む。好ましくは、柱部3の高さは、人2の平均身長、例えば、1.70m~2.0mのオーダーに実質的に等しい。
【0026】
柱部3と架台4によって形成されたアセンブリは、移動可能である。すなわち、このアセンブリは、地面に固定されておらず、操作者によって動かすことができる。該当する場合、各検出器10、20は、その移動を容易にするためにハンドルを備えていてもよい。ハンドルは、特に架台4に取り付けることができる。
【0027】
磁気センサ5は、人2の足と頭の間の標的物体を確実に検出するために、柱部3の高さ全体に分散される。例えば、各柱部3には、架台4とは柱部3の自由端との間に分散された3つの磁気センサ5が設けられる。
【0028】
さらに、同一の検出システム1内で、検出器10、20の磁気センサは、互いに向き合うセンサ5の対を形成するように、二つ一組で同一の高さに配置される。
【0029】
システム1は、第1の磁気センサ5および/または第2の磁気センサ5によって生成された磁場の強度を表す信号を受信するように構成された少なくとも1つの処理ユニット6をさらに備える。
【0030】
より詳細には、以下でわかるように、第1の磁気センサ5および/または第2の磁気センサ5によって検出された磁場の強度を表す信号を受信するように構成された処理ユニット6、または、第1の磁気センサ5によって検出された磁場の強度を表す信号を受信するように構成された処理ユニット6および第2の磁気センサ5によって検出された磁場の強度を表す信号を受信するように構成された処理ユニット6を備えることができる。
【0031】
通信インターフェース7は、第2の磁気センサ5によって生成された信号を、第1の磁気センサ5によって検出された磁場の強度を表す信号を受信した処理ユニット6に送信するように構成される。さらに、この処理ユニット6は、第1の磁気センサ5および第2の磁気センサ5によって検出された磁場の強度を表す信号に基づいて算出される値を求めるように構成される。ここで算出される値は、特に、第1のおよび第2の検出器10、20の磁気センサ5によって生成された信号の平均値、および/または、補正値を含む。処理ユニット6は、この算出値が所定の閾値より大きい場合、警報を発するように命令を送るように構成される。
【0032】
一実施形態では、処理ユニット6は、信号の値の合計を信号の数で割った、信号の算術平均値を求める。
【0033】
変形例では、処理ユニット6は、信号の積の平方根である、信号の幾何平均値を求める。
【0034】
さらに別の変形例では、処理ユニット6は、信号に減衰係数を適用することで、磁気センサ5のそれぞれによって生成された信号の補正値を求める。
【0035】
一実施形態では、処理ユニット6は、第1の検出器10および第2の検出器20のうちの1つに組み込むことができる。好ましくは、各検出器10、20は、統合された処理ユニット6を含む。「統合された」という用語は、処理ユニット6が、検出器10、20の一部であり、システム1が接続された別個の構成要素ではないことを意味すると理解される。
【0036】
本実施形態では、処理ユニット6は、例えば、関連する検出器の柱部3に取り付けられる。変形例では、その架台4に取り付けることもできる。
【0037】
本実施形態の変形例では、処理ユニット6は、第1および第2の検出器10、20から離れた距離に配置することができる。検出器10、20は、信号を処理するため、通信インターフェース7を介して処理ユニット6に磁気センサ5によって生成された信号を通信する。
【0038】
一実施形態では、処理ユニット6は、
・磁気センサ5によって生成されたアナログ(電圧)信号をデジタル信号に変換するように構成されたアナログ/デジタルコンバータA/Dと、
・このように変換されたデジタル信号を生成するように構成されたデジタル信号プロセッサDSPと、
・DSPによって生成されたデジタル信号を受信し、所定の閾値と比較するように構成されたシステム管理マイクロコンピュータSMMと、
を含むことができる。
【0039】
SMMは、警報信号を生成するように構成された少なくとも1つのエミッタ8、例えば、音響信号を生成するように構成された音響エミッタ8および/または光信号(LED、点滅光など)を生成するように構成されたライトに接続される。エミッタ8は、検出器10、20に含まれてもよく、操作者によって着用されてもよい(イヤピース等)。この場合、処理ユニット6は、対応する検出器の10、20の通信インターフェース7を介して遠隔のエミッタ8に警報を生成する命令を送る。
【0040】
さらに、SMMは、非同期インターフェースUARTに接続され、これにより、処理ユニット6をコンピュータ(または同等のもの)に接続し、検出プログラムの制御、1つまたは複数の検出器の診断、更新などのさまざまなアクションを行うことが可能となる。
【0041】
さらに、SMMはヒューマンマシンインターフェースHMIに接続される。
【0042】
検出システム1の各検出器10、20は、システム1の検出器10、20の一方がシステム1の他方の検出器20、10と通信し、1つまたは複数の磁気センサ5よって生成された信号を送信できるように構成された通信インターフェース7をさらに含む。それぞれの検出器10、20について、通信インターフェース7は、その検出器10、20の処理ユニット6のDSP(
図1に示される)またはSMMのいずれかと警報エミッタ8に接続できる。
【0043】
通信インターフェース7は、好ましくは、検出システム1の設置を容易にするため、無線インターフェース、例えば、光、無線、赤外線または他の誘導通信などによる、Wi-Fiまたはブルートゥース(登録商標)タイプのインターフェースを含む。変形例では、通信インターフェース7は有線であってもよい。
【0044】
必要に応じて、検出システム1は、複数のゲートを形成するため、より多くの検出器を備えていてもよい。各ゲートは、2つの隣接する検出器によって形成される。好ましくは、一つの検出システム1の検出器は、対で実質的に同一である。
【0045】
例えば、検出システム1は、磁場を検出し、検出された磁場の強度を表す信号を生成するように構成された少なくとも1つの第3の磁気センサ5を含む第3の検出器30を備えることができる。
【0046】
第3の検出器30は、第1および第2の検出器10、20と同様に、架台4に取り付けられ、1つまたは複数の第3の磁気センサ5および通信インターフェース7、必要に応じて処理ユニット6が設けられる柱部3を含むことができる。
【0047】
複数のゲートを形成するため、本発明では、2つのゲートを形成するように、第1の検出器10、第2の検出器20、および第3の検出器30を並行に配置することが提案される。より詳細には、第1の検出器10および第2の検出器20によって第1のゲートが形成され、第2の検出器20および第3の検出器30によって第2のゲートが形成される。したがって、システムでは、同一の検出器(ここでは、第2の検出器20)が2つの別個のゲートの形成に使用され、これにより、例えば、国際公開第2017/141022号で提案されたシステムと比較して、検出システム1の嵩を大幅に減らすことができる。さらに、本システムは設置が簡単である。
【0048】
以下で説明されるように、このような構成は、第1の検出器10と第2の検出器20との間に位置する第2の検出器20の処理ユニット6が、第3の検出器30の1つまたは複数の磁気センサ5によって生成された信号を処理し、かつ、第1の検出器10と通信するように構成されるという事実によって可能になる。これにより、検出システム1は、磁気センサ5がベクトル検出ではなくスカラー検出を実行する場合でも、標的物体が検出されたゲートを決定することができる。
【0049】
より詳細には、第2の検出器20の処理ユニット6は、
(i)第2および第3の磁気センサ5によって生成された信号の平均値(場合によっては補正された平均値)または補正値を算出し、
(ii)算出された値が所定の閾値より大きい場合、通信インターフェース7を介して第1の検出器10の処理ユニット6に、1つまたは複数の第2の磁気センサ5によって検出された磁場の強度を表す信号を送信するように構成される。
【0050】
もちろん、操作者は、本発明による4つの検出器を使用して2つのゲートを形成することも可能であり、第2の検出器20の共有は、標的物体の検出に必須ではない。
【0051】
各検出器10、20は、検出システム1の他の検出器との関連付けや通信、検出方法Sの実行を可能にするために、識別手段およびメモリをさらに含むことができる。例えば、各検出器10、20、30にアドレスを割り当てることができる。このアドレスは、検出器10、20、30が製造される際に設定されるか、あるいは、検出システム1を形成する検出器10、20、30をペアリングする際にプログラムされる。一実施形態では、各検出器10、20、30のアドレスは、検出システム1の操作エラーを制限し、メンテナンスを容易にするため、固定されている、すなわち変更不可能となっている。
【0052】
アドレスとしては、特に所与の数の16進ペア、例えば8から形成される文字列を挙げることができる。
【0053】
検出システム1の検出器10、20、30がペアリングされる際、所与の検出器が共にゲートを形成する検出器のアドレスは、その所与の検出器のメモリに記憶される。例えば、第1の検出器10、第2の検出器20、および第3の検出器30を含む検出システム1の場合、検出システム1の設定時に、
第2の検出器20のアドレスは、第3の検出器30のメモリに記憶され、
第1および第3の検出器30のアドレスは、検出システム1の設定時に第2の検出器20のメモリに記憶され、
第2の検出器20のアドレスは、第1の検出器10のメモリに記憶される。
【0054】
次に、2つの検出器10、20を含む本発明の検出システム1を用いた検出方法Sの例について説明する。
【0055】
説明の理解を容易にするため、検出システム1は、それぞれ2つの第1の磁気センサ5および2つの第2の磁気センサ5を含む第1の検出器10および第2の検出器20を備える。第1および第2の磁気センサ5は、2対の磁気センサ5を形成し、各対は、第1のセンサ5および第2のセンサ5を含む。好ましくは、一方の対は、第1の検出器10および第2の検出器20の柱部3の自由端の近くにそれぞれ配置される第1の磁気センサ5および第2の磁気センサ5を含み、他方の対は、架台4の近くにそれぞれ配置される第1の磁気センサ5および第2の磁気センサ5を含む。
【0056】
2つの検出器は同一であり、それぞれが処理ユニット6および通信インターフェース7を備える。
【0057】
もちろん、本発明は、検出器が異なる数の磁気センサ5を含む場合にも適用される。特に、検出器は、単一の磁気センサ5のみ、または2つより多い磁気センサ5(例えば、3つの磁気センサ5)を含むこともできる。また、第2の検出器20は、処理ユニット6を含まなくてもよく、変形例では、処理ユニット6は、第1の検出器10に収容される代わりに、検出器から離れて配置されてもよい。
【0058】
予備ステップにおいて、第1および第2の検出器10、20は、対をなして関連付けられ、検出方法Sの機能をそれぞれに割り当てるように構成される。例えば、第1の検出器10は、マスター検出器として構成され、第2の検出器20は、スレーブ検出器として構成される。所与のゲートの「マスター検出器」とは、その処理ユニット6が信号の平均値および/または補正値を算出するように構成された検出器を意味し、「スレーブ検出器」とは、上記ゲートのもう一方の検出器を意味すると理解される。
【0059】
第1のステップS1では、第1および第2の磁気センサ5のうちの少なくとも1つが、磁場の強度を表す信号を生成する。
【0060】
実際には、検出システム1の磁気センサ5の1つによって磁場が検出されると、システムのすべての磁気センサ5が、検出された磁場の強度を表す信号を生成する。各センサ5の信号はパワーのみが異なっている。
【0061】
第1および第2の磁気センサ5によって生成された信号は、必要に応じて、第1の検出器10および/または第2の検出器20の通信インターフェース7を介して処理ユニット6に送信される。この例では、第1の検出器10はマスターであり、処理ユニット6を含み、第2の磁気センサ5の信号は、第2の検出器20の通信インターフェース7によって第1の検出器10に送信され、第1の磁気センサ5の信号は、第1の磁気センサ5から処理ユニット6に直接送信される。
【0062】
ステップS2では、マスター検出器の処理ユニット6は、磁気センサ5の各対によって生成された信号の平均値を算出する。すなわち、処理ユニット6は、第1および第2の磁気センサ5の一方の対に対応する第1の平均値と、他方の対に対応する第2の平均値とを算出する。
【0063】
もちろん、検出器がそれぞれ単一のセンサ5のみを含む場合、処理ユニット6は、ステップS2において、これらの2つの磁気センサ5の信号の平均値に対応する単一の平均値のみを算出する。
【0064】
上述したように、処理ユニット6は、信号の算術平均値、または、幾何平均値を算出することができる。
【0065】
これに代わって、処理ユニット6は、磁気センサ5の各対の信号の平均値を算出する代わりに、信号に減衰係数を適用することによって、各磁気センサ5によって生成された信号を補正するステップS3を実施することができる。
【0066】
この補正ステップS3により、信号の値に応じて補正係数を適用して、検出システム1の磁気センサ5によって生成された信号を減衰させることができる。より詳細には、この補正は、標的物体が検出器10、20のうちの1つに近く、この検出器の感度がより高い際に、信号を減衰させ、検出における重みを減らすことを目的として行われる。
【0067】
このため、サブステップS31およびS32において、処理ユニット6は、磁気センサ5の各対について、ある時点で第1の磁気センサ5および第2の磁気センサ5によって生成された信号の最大値と最小値を決定する。
【0068】
処理ユニット6は、第3のサブステップS33で、このように決定された最小値に対する最大値の比を計算し、第4のサブステップS34で、この比を所定の閾値と比較し、そこから信号の値に適用される減衰係数の値を導き出す。
【0069】
例えば、処理ユニット6は、上記の比を特に第1の閾値および第1の閾値より大きい第2の閾値と比較し、そこから減衰係数を推定することができる。例えば、減衰係数は、
・上記比が第1の閾値より小さい場合、第1の値と等しく、
・上記比が第2の閾値より大きい場合、第1の値より小さい第2の値と等しく、
・上記比が第1の閾値と第2の閾値との間にある場合、第1の値と第2の値との間にあってもよい。特に、減衰係数は、上記比が第1の閾値と第2の閾値との間にある場合、比に依存する線形関数であってもよい。
【0070】
最大値と最小値の比を使用することで、磁場を生成する、あるいは、地球の電磁場を混乱させる標的物体が検出器のうちの1つに近いかどうかを判定することができる。この場合、比の値は第2の閾値より大きく、適用される減衰係数は第1の値より小さい第2の値と等しくなる。逆に、標的物体が2つの検出器の中央にある場合、この領域のゲートの感度は低くなる。これは、最大値と最小値の比が小さいことで現れる。したがって、減衰係数は大きくなり、結果として生じる減衰は小さくなる。
【0071】
これにより、2つの検出器間で相対的な仮想均一性を得ることができる。
【0072】
非限定的な例として、第1の閾値は30であり、第2の閾値は60であり、第1の値は1であり、第2の値は0.1であり、減衰係数は、上記比が第1の閾値と第2の閾値の間にある場合、下記の関数によって定義されてもよい。
-0.03×R+1.9
(式中、Rは比の値である。)
【0073】
言い換えると、減衰係数は、上記比が30未満の場合は1であり、上記比が60を超える場合は0.1であり、上記比が30~60の場合は、-0.03×R+1.9である。
【0074】
別の変形例では、処理ユニット6は、磁気センサ5の各対の信号の平均値を算出し(ステップS2)、信号を補正するステップ(ステップS3)を実施する。
【0075】
このため、処理ユニット6は、磁気センサ5の各対の信号の平均値を算出した後(ステップS2)、算出された平均値に減衰係数を適用することができる(ステップS3)。
【0076】
これに代わって、処理ユニット6は、減衰係数を磁気センサ5の各対の信号に適用した後(ステップS3)、磁気センサ5の各対の補正された信号の平均値を算出することもできる(ステップS2、磁気センサ5によって生成された信号ではなく、補正された信号に適用される)。
【0077】
減衰係数は、上述したものと同じであってよい(比の値に応じて、第1の値、第2の値、または比の関数と等しい)。
【0078】
第5のステップS5で、処理ユニット6は、算出された値を所定の閾値と比較する。
【0079】
第5のステップS5で処理ユニット6によって使用される算出値は、ステップS2で得られた、磁気センサ5の対によって生成された信号の平均値であってもよく、ステップS3で減衰係数を適用することによって補正された平均値であってもよい。平均値、場合によっては補正された平均値が所定の閾値より大きい場合、第6のステップS6で、処理ユニット6は、少なくとも1つのエミッタ8に警報(光、音響など)を発するように命令を送る。好ましくは、処理ユニット6は、1つまたは複数の警報がゲートの両側で発せられるように、(通信インターフェース7を介して)第1の検出器10および第2の検出器20のエミッタ8に警報を発するよう命令を送る。変形例では、検出器10、20のうちの一方の1つまたは複数のエミッタ8のみが、処理ユニット6の発令命令を受信する。
【0080】
これに代わって、処理ユニット6が信号の補正値のみを決定し、平均値を求めない場合、ステップS5で所定の閾値と比較されるのは、この信号の補正値の合計である(平均値ではない)。もちろん、補正ステップS3を適用する前に、センサ5によって生成された信号を合計することもできる。
【0081】
あるいは、信号の補正値の合計を算出する代わりに、処理ユニット6は、補正された信号の最大値を決定し、ステップS5で、このように決定された最大値を閾値と比較することもできる。前述したように、まずセンサ5によって生成された信号の最大値を決定し、次にこの最大値に補正ステップS3を適用してもよい。
【0082】
この変形例では、処理ユニット6は、同一の対の磁気センサ5の信号の補正値の合計(または、補正された最大値)を所定の閾値と比較する。この合計(または、補正された最大値)が所定の閾値よりも大きい場合、第6のステップS6で、処理ユニット6は、少なくとも1つのエミッタ8に警報(光、音響など)を発するように命令を送る。上述したように、処理ユニット6は、第1の検出器10および/または第2の検出器20のエミッタ8に警報を発するように命令を送ることができる。
【0083】
図8a、8b、および8cは、4つの検出システムの測定信号の強度を、検出器に対する距離の関数として示している。
【0084】
図8aは、130cmの距離で離間した2つの検出器を含む従来技術の検出システムの場合を示している。図中、示される強度は、2つの検出器のセンサによって生成された信号の最大値に対応する。
【0085】
図8bは、130cmの距離で離間した2つの検出器と処理ユニットとを含む本発明の実施形態による検出システム1の場合を示している。図中、示される強度は、2つの検出器のセンサによって生成された信号の平均値に対応する。
【0086】
図8cは、130cmの距離で離間した2つの検出器と処理ユニットとを含む本発明の実施形態による検出システム1の場合を示している。図中、示される強度は、2つの検出器のセンサによって生成された信号の補正された平均値に対応する。
【0087】
この図から、平均値の算出と、場合によっては平均値を補正するステップでの減衰係数の適用とにより、信号の最大値を単純に決定する場合(
図8a)と比べて、検出システムの2つの検出器間で信号の強度を均一化できることがわかる。
【実施例】
【0088】
以下の表は、(i)単一の検出器のみを含む検出システム1、(ii)信号の平均値の算出を行う、130cmの間隔で離間した2つの検出器を含む、本発明の第1の実施形態による検出システム1、および(iii)信号の平均値の算出および該平均値の補正を行う、130cmの間隔で離間した2つの検出器を含む、本発明の第2の実施形態による検出システム1の3つの検出システム1の構成による、警報を誘発すべきか決定するための同一の標的物体の検出の比較例である。
【0089】
この例では、3つの検出システムの構成の感度SEを85%(1400mVに相当)に設定した。換言すると、所定の閾値が1400mVとなるように感度を設定した。システムは、この感度で、地面から1メートルの高さで直径75mmの球体が通過しても、単一の検出器から65cmの距離で通過する場合(第1の構成(i))、または、2つの検出器の中央を通過する場合は(第2および第3の構成(ii)(iii))、警報が生成されないように設定された。換言すると、75mmの直径は、試験されたシステムによる検出の限界直径である。なお、直径75mmの鉄球の電磁場のディスラプションは、ゲートの中央にAK47タイプのアサルトライフルが存在することによって発生するディスラプションに実質的に相当する。
【0090】
【0091】
表中、「限界直径[mm]」は、試験された検出システム1が警報信号を発する最小直径(ミリメートル)に対応する。
【0092】
この試験により、検出システム1がゲートを形成する2つの検出器を含み(構成(ii)および(iii))、処理ユニット6がこれらの検出器の磁気センサ5によって生成された信号の平均値を算出する場合、標的物体と検出器の1つとの距離が50cmであっても(実際、本試験において、検出器同士が130cmの距離で離間していることから、通路の中央から大きく離れたとしても)、約62mmの鉄球と同等の磁場を持つ標的物体とスマートフォンなどの小さいサイズの物体を区別することができることが明らかになった。
【0093】
検出システム1の処理ユニット6が信号の平均値に補正ステップS2をさらに適用する場合(構成(iii))、標的物体と検出器の1つとの距離が25cmであっても(すなわち、検出器同士が130cmの距離で離間していることから、検出器に非常に近くても)、検出システム1は、約64mmの鉄球に相当する磁場を有する標的物体を区別することができる。
【0094】
したがって、本発明の検出システム(構成(ii)および(iii))であれば、検査対象者2が検出器の中央を通らなかったとしても、磁気部品を含む小さいサイズの物体(スマートフォン等)とアサルトライフルなどの大容量の標的物体を区別することができる。
【0095】
また、本発明は、検出システム1が、複数のゲートを形成するように3つ以上の検出器を含み、2つの隣接するゲートが同一の検出器を共有する場合にも適用される。このような検出システム1を用いて標的物体を検出する方法の一例を説明する。
【0096】
本実施形態の理解を容易にするため、検出システム1は、2つの磁気センサ5をそれぞれ含む3つの検出器を備える(
図3)。すなわち、検出システム1は、第1、第2、および第3の検出器10、20、30を含み、それぞれが2つの第1、第2、および第3の磁気センサ5を含む。第2の検出器20は、第1の検出器10と第1のゲートを形成し、第3の検出器30と第2のゲートを形成する。したがって、第2の検出器20は、第1の検出器10と第3の検出器30との間に配置される。
【0097】
3つの検出器は同一であり、それぞれが処理ユニット6および通信インターフェース7を備える。もちろん、変形例では、処理ユニット6は、検出器から離れて配置されてもよく、検出器に組み込まれなくてもよい。この場合、所与の検出器の磁気センサ5によって生成された信号は、検出器の通信インターフェース7を介して遠隔の処理ユニット6に送信され、これに検出アルゴリズムが適用され、警報を生成するための任意の命令が、それぞれの通信インターフェース7を介して検出器のエミッタ8に送信される。
【0098】
もちろん、本発明は、システムが1つのゲートを形成する2つの検出器のみ、または、n-1のゲートを形成するより多くの検出器(例えば、n個の検出器、nは整数)を含む場合にも適用される。検出器は、単一の磁気センサ5、または、2つより多い磁気センサ5(例えば、3つの磁気センサ5)を含むこともできる。
【0099】
予備ステップにおいて、第1、第2、および第3の検出器10、20、30は、対をなして関連付けられ、検出方法Sの機能をそれぞれに割り当てるように構成される。例えば、第1のゲートに関して、第1の検出器10は、マスター検出器として構成され、第2の検出器20は、スレーブ検出器として構成される。第2のゲートに関して、第2の検出器20は、マスター検出器として構成され、第3の検出器30は、スレーブ検出器として構成される。このペアリング中に、システムの各検出器の識別手段(通常、アドレス)も入力され、隣接する各検出器のメモリに保存される。したがって、ペアリングを可能にするため、第1の検出器10の識別手段は第2の検出器20に入力され、第2の検出器20の識別手段は第1の検出器10に入力される。同様に、第2の検出器20の識別手段は、第3の検出器30に入力され、第3の検出器30の識別手段は、第2の検出器20に入力される。
【0100】
第1のステップでは、第1、第2、および第3の磁気センサ5のうちの少なくとも1つが、磁場を検出し、検出された磁場の強度を表す信号を生成する。
【0101】
実際には、同一のゲートのすべての磁気センサ5が、継続的又は定期的に、磁場の強度を表す信号を生成する。各センサ5によって生成された信号はパワーのみが異なっている。
【0102】
以下、方法Sのステップを説明するため、2つの第2の磁気センサ5および2つの第3の磁気センサ5によって信号が生成される例について説明する。
【0103】
磁気センサ5によって生成された信号は、当該ゲートのマスター検出器の処理ユニット6に、必要に応じて通信インターフェース7を介して、送信される。この例では、第3の磁気センサ5によって生成された信号が、第3の検出器30の通信インターフェース7によって第2の検出器20の処理ユニット6に送信される。第2の磁気センサ5によって生成された信号は、第2の検出器20の処理ユニット6に直接送信される(処理ユニット6が外部にある場合、通信インターフェース7を介して送信されることに留意されたい)。
【0104】
第2のステップにおいて、当該ゲートのマスター検出器の処理ユニット6、ここでは第2の検出器20は、磁気センサ5の各対について、生成された信号の平均値PGS[2、3]を算出する。すなわち、処理ユニット6は、第2および第3の磁気センサ5の一方の対に対応する第1の平均値と、他方の対に対応する第2の平均値とを算出する。
【0105】
もちろん、検出器がそれぞれ単一のセンサ5のみを含む場合は、処理ユニット6は、これらの2つの磁気センサ5の信号の平均値に対応する単一の平均値のみを算出する。
【0106】
上述たように、処理ユニット6は、信号の算術平均値、または、幾何平均値を算出することができる。
【0107】
変形例では、処理ユニット6は、磁気センサ5の各対の信号の平均値を算出する代わりに、信号に減衰係数を適用することによって、各磁気センサ5によって生成された信号を補正するステップを実施し、補正された信号の値の合計値(あるいは、センサ5の各対における補正された信号の最大値)を算出することもできる。この補正ステップは、サブステップS31~S35に関連して上述しているため、ここでは詳細には説明しない。別の変形例では、処理ユニット6は、上述したように、磁気センサ5の各対の信号の平均値を一度に算出し、これを補正するステップを実施して、補正された平均値を求めることができる。
【0108】
また、上述したのと同様に、補正ステップS2は、センサ5によって生成された信号、信号の合計(または最大値)、または信号の平均値のいずれかに適用することができる。
【0109】
第3のステップにおいて、第2のステップで算出された値PGS[2、3]の1つが所定の閾値より大きい場合、第2の検出器20の処理ユニット6は、第1の検出器10の処理ユニット6に、その算出値PGS[2、3]と、第2の磁気センサ5によって生成された信号とを送信する。
【0110】
第4のステップでは、第3のステップと同時に、第1の検出器10の処理ユニット6は、第1のゲートの磁気センサ5の各対で生成された信号に基づいて、値PGS[1、2]を算出する。第1の検出器10の処理ユニット6によって実行される値の算出は、第2の検出器20の処理ユニット6によって実行されるものと同じである。言い換えると、マスター検出器の一方が平均値(あるいは、補正された平均値、補正された値の合計値、または最大補正値)を算出すると、他方のマスター検出器も同じ算出(平均値、補正された平均値、補正された値の合計値、または最大補正値の算出)を実行する。
【0111】
ここで、第1検出器10の処理ユニット6は、例えば、第1および第2の磁気センサ5の一方の対に対応する第1の平均値と、他方の対に対応する第2の平均値とを算出し、信号の平均値を求める。
【0112】
第1の検出器10によって算出された値PGS[1、2]が所定の閾値より小さい場合、第1の検出器10の処理ユニット6は、第1の検出器10または第2の検出器20のエミッタ8に警報を生成する命令を送らない。
【0113】
一方、第1の検出器10によって算出された値PGS[1、2]が所定の閾値より大きい場合、第5のステップにおいて、第1のゲートのマスター検出器である第1の検出器10の処理ユニット6は、標的物体が(第1および第2の検出器10、20によって形成された)第1のゲートまたは(第2および第3の検出器20、30によって形成された)第2のゲートによって検出されたか否か決定する。
【0114】
このため、第1の検出器10の処理ユニット6は、第2の検出器20によって算出された値PGS[2、3](補正されたもしくは補正されていない平均値、合計値、または最大補正値)を第1の検出器10によって算出された値PGS[1、2]と比較する。
【0115】
この目的のため、第1のサブステップで、第1の検出器10の処理ユニット6は、第2および第3のセンサ5によって生成された信号に基づいて算出された値PGS[2、3]に、所定の安全係数Ksを乗算する(Ks×PGS[2、3]。安全係数Ksは1以上、例えば1.5または2である)。
【0116】
並行して、第2のサブステップで、第2の検出器10の処理ユニット6は、第1および第2のセンサ5によって生成された信号に基づいて算出された値PGS[1、2]に、所定の安全係数Ksを乗算する(Ks×PGS[1、2])。
【0117】
第3のサブステップで、第1の検出器10は、第1および第2のセンサ5によって生成された信号に基づいて算出された値PGS[1、2]を、値Ks×PGS[2、3]と比較する。第1および第2のセンサ5によって生成された信号に基づいて算出された値PGS[1、2]が、第2および第3のセンサ5によって生成された信号に基づいて算出された値に安全係数Ksを乗算して得られた値Ks×PGS[2、3]より小さい場合(すなわち、PGS[1、2]<Ks×PGS[2、3]の場合)、第1の検出器10の処理ユニット6は、第1および第2の検出器10、20のエミッタ8に対する警報を生成する命令を取り消すか、または命令を送信しない。
【0118】
並行して、第4のサブステップで、第2の検出器20は、値PGS[2、3]を、第1および第2のセンサ5によって生成された信号の値に安全係数Ksを乗算して得られた値Ks×PGS[1、2]と比較する。第2および第3のセンサ5によって生成された信号に基づいて算出された値PGS[2、3]が、第1および第2のセンサ5によって生成された信号に基づいて算出された値に安全係数Ksを乗算して得られた値Ks×PGS[1、2]より小さい場合(すなわち、PGS[2、3]<Ks×PGS[1、2]の場合)、第2の検出器20の処理ユニット6は、第2および第3の検出器20、30のエミッタ8に対する警報を生成する命令を取り消すか、または命令を送信しない。反対に、PGS[2、3]>Ks×PGS[1、2]の場合、第2の検出器20は、第2の検出器20および第3の検出器30のエミッタ8に警報を発する命令を送る。
【0119】
操作者は、どのゲート(ここでは第2のゲート)が標的物体を検出したかを簡単に識別することができる。
【0120】
なお、所与のゲートの両側の検出器によって算出された値の比較における安全係数Ksの適用は、標的物体の検出にマージンを与え、誤警報のリスクを低減する。
【0121】
このように、あるゲートのスレーブ検出器から同ゲートのマスター検出器に、この検出器がマスターである隣接ゲートの算出値(補正されたもしくは補正されていない平均値、または補正された値の合計値)を送信することで、検出された標的物体の位置を特定することが可能になる。磁気センサ5による検出はスカラーであり、2つの隣接するゲートを共有する検出器(ここでは第2の検出器20)は、それが検出した標的物体がどちら側に位置するかを決定できないことを思い出されたい。
【0122】
本発明の検出方法Sは、m個の検出器を含む任意の検出システム1を包括するように一般化することができる(mは4以上であり、2つの隣接するゲートが共通の検出器を利用して、m-1のゲートを形成する)。
【0123】
この検出方法Sは、3つの検出器を備えた検出システム1に関して前述したものと同じステップを含む。ただし、この例では、検出方法Sは、検出器n-1が算出した値PGS[n-1;n]が所定の閾値ATより大きい場合、標的物体が検出されたゲートを決定するために、値PGS[n-1;n]を検出器n-2によって算出された値(PGS[n-2;n-1])と比較するステップに加えて、値PGS[n-1;n]を検出器nによって算出された値(PGS[n;n+1])と比較するステップを含む(
図7を参照)。比較ステップでは、必要に応じて、安全係数Ks(Ks≧1)が値PGS[n;n+1]に適用される。
【0124】
例えば、検出器n-1は、検出器nおよびn-1の磁気センサ5によって生成された信号に基づき、典型的には(補正された)平均値である、値PGS[n-1;n]を算出する。さらに、(スレーブ検出器としての)検出器n-1は、この算出値PGS[n-1;n]と、その磁気センサ5によって生成された信号の値とを(マスター検出器としての)検出器n-2に送信する。検出器n-2は、検出器n-2およびn-1の磁気センサ5によって生成された信号の値に基づき、(補正された)平均値である、値PGS[n-2;n-1]を算出する。同様に、(検出器n-1のスレーブ検出器としての)検出器nは、算出値PGS[n;n+1]と、その磁気センサ5によって生成された信号の値とを検出器n-1に送信する。(マスター検出器である)検出器n-2によって算出された値が所定の閾値より大きい場合、
検出器n-2は、
検出器n-1によって算出・送信された値PGS[n-1;n]に安全係数Ksを乗算し、
算出値PGS[n-2;n-1]を、乗算して得られた値Ks×PGS[n-1;n]と比較する。算出値PGS[n-2;n-1]が、検出器n-1によって算出され、安全係数Ksを乗算された値より小さい場合(すなわち、PGS[n-2;n-1]<Ks×PGS[n-1;n])、検出器n-2は、そこから検出器n-2およびn-1によって形成されたゲートで警報を生成すべきでないことを推定する。したがって、検出器n-2は、検出器n-2およびn-1のエミッタ8に警報を生成するための命令を送らない(あるいは、警報を発する命令を取り消す)。
検出器n-1は、並行して、
検出器n-2によって算出・送信された値PGS[n-2;n-1]に安全係数Ksを乗算し、
算出値PGS[n-1;n]を、乗算して得られた値Ks×PGS[n-2;n-1]と比較する。算出値PGS[n-1;n]が、検出器n-2によって算出され、安全係数Ksを乗算された値より小さい場合(すなわち、PGS[n-1;n]<Ks×PGS[n-2;n-1])、検出器n-1は、そこから検出器n-1およびnによって形成されたゲートで警報を生成すべきでないことを推定する。したがって、検出器n-1は、検出器n-1およびnのエミッタ8に警報を生成するための命令を送らない(あるいは、警報を発する命令を取り消す)。
さらに、検出器nによって算出・送信された値PGS[n;n+1]に安全係数Ksを乗算し、
算出値PGS[n-1;n]を、乗算して得られた値Ks×PGS[n;n+1]と比較する。算出値PGS[n-1;n]が、検出器nによって算出され、安全係数Ksを乗算された値より小さい場合(すなわち、PGS[n-1;n]<Ks×PGS[n;n+1])、検出器n-1は、そこから検出器n-1およびnによって形成されたゲートで警報を生成すべきでないことを推定する。したがって、検出器n-1は、検出器n-1およびnのエミッタ8に警報を生成するための命令を送らない(あるいは、警報を発する命令を取り消す)。
検出器nは、並行して、
検出器n-1によって算出・送信された値PGS[n-1;n]に安全係数Ksを乗算し、
算出値PGS[n;n+1]を、乗算して得られた値Ks×PGS[n-1;n]と比較する。算出値PGS[n;n+1]が、検出器n-1によって算出され、安全係数Ksを乗算された値より小さい場合(すなわち、PGS[n;n+1]<Ks×PGS[n-1;n])、検出器nは、そこから検出器nおよびn+1によって形成されたゲートで警報を生成すべきでないことを推定する。したがって、検出器nは、検出器nおよびn+1のエミッタ8に警報を生成するための命令を送らない(あるいは、警報を発する命令を取り消す)。
【0125】
なお、隣接するゲートが同一の検出器を共有せず、それぞれが2つの別個の検出器によって形成される場合、検出は、検出器の対によって各ゲート内で行われることに留意されたい。このため、所与のゲートの検出器は、隣接するゲートの検出器と必ずしも通信しなくてもよい。これは、標的物体が通過したゲートを特定する必要がないため、各ゲートが独立して動作できるためである。