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特許7431762食品生産物のインライン加工のための方法及び生産物ライン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】食品生産物のインライン加工のための方法及び生産物ライン
(51)【国際特許分類】
   A22C 11/00 20060101AFI20240207BHJP
   A22C 13/00 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
A22C11/00
A22C13/00 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020573479
(86)(22)【出願日】2019-07-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 NL2019050410
(87)【国際公開番号】W WO2020009573
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】2021242
(32)【優先日】2018-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】520513015
【氏名又は名称】マレル・ファーザー・プロセッシング・ベスローテン・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Marel Further Processing B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】パトリシア・フークストラ-スールス
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-507487(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0070338(US,A1)
【文献】特表2018-512852(JP,A)
【文献】特表2017-526349(JP,A)
【文献】米国特許第06419968(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0047400(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 11/00
A22C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品生地を、蛋白質を含むケーシング又は蛋白質とポリマーのハイブリッドケーシングを有する共押出しされた食品生産物の流れに共押出しする工程を含む、食品生産物のインライン加工のための方法であって、前記方法は、その後以下の連続する工程:
a)共押出しされた食品生産物の流れに表面処理工程を施すこと、ここで、前記表面処理工程は、食品生産物の流れにブライン溶液を施すことによって、食品生産物の流れに食品生産物強化工程を施す工程を含む;及び
b)工程a)において得られた食品生産物の流れに熱処理工程を施すこと
を含み、
工程b)において、食品生産物の流れは、
-b.i) 50から80℃の間の温度において、10%までの相対湿度において食品生産物の流れを乾燥すること;
-b.ii) 60から90℃の間の温度において、15から40%の間の相対湿度において食品生産物の流れを加熱すること;及び
-b.iii) 70から100℃の間の温度において、30から60%の間の相対湿度において食品生産物の流れを部分的に調理すること、
が少なくとも施されることを特徴とする、食品生産物のインライン加工のための方法。
【請求項2】
工程b)において、食品生産物の流れは、
-b.i) 70から80℃の間の温度において、5%までの相対湿度において食品生産物の流れを乾燥すること;
-b.ii) 75から85℃の間の温度において、25から35%の間の相対湿度において食品生産物の流れを加熱すること;及び
-b.iii) 80から90℃の間の温度において、40から50%の間の相対湿度において食品生産物の流れを部分的に調理すること、
が少なくとも施されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程b)において、食品生産物の流れは、調理すること、及びクーリングから成る群から選択されることを特徴とする、請求項1および2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、前記食品生産物の流れを部分的に調理した後、前記食品生産物の流れに以下の工程:
-80から90℃の間の温度において、60から75%の間の相対湿度において食品生産物の流れを調理すること
を施すことをさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
食品生産物の流れが共押出しされた食品生産物のストランドを含むものであって、前記方法が以下の工程:
食品生産物の流れに工程b)を施す前に、共押出しされた食品生産物のストランドを個々の食品生産物に分離する、
をさらに含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記表面処理工程が、燻液を食品生産物の流れに適用する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記燻液が、前記食品生産物の流れに食品生産物強化工程を施した後、前記食品生産物の流れに適用されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
さらに、
c)熱処理された食品生産物の流れに後熱処理トリートメントを施すこと、ここで、前記後熱処理トリートメントは、食品生産物の流れをチリング、表面処理すること、調理すること、及び包装することから成る群から選択される、
を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程c)において、前記食品生産物の流れを表面処理する工程が、食品生産物の流れに蒸気を施すことを含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程c)において前記食品生産物の流れを調理する工程は、前記食品生産物を包装した後に前記食品生産物を調理することを含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
生産ラインが、
-共押出しされた食品生産物を輸送するための食品輸送経路;及び
-食品生地を、蛋白質を含むケーシング、又は蛋白質とポリマーのハイブリッドケーシングを有する共押出しされた食品生産物の流れに押出すための共押出しユニット、
を含み、
ここで、前記食品輸送経路は、以下を通って連続的に導く:
A)共押出しされた食品生産物の流れに食品生産物強化工程を施すための強化するユニットを含む表面処理ユニット;及び
B)食品生産物の流れに熱処理工程を施すための雰囲気ユニット
ここで、前記雰囲気ユニットは、食品生産物の流れが、
-b.i) 50から80℃の間の温度において、10%までの相対湿度において食品生産物の流れを乾燥すること;
-b.ii) 60から90℃の間の温度において、15から40%の間の相対湿度において食品生産物の流れを加熱すること;及び
-b.iii) 70から100℃の間の温度において、30から60%の間の相対湿度において食品生産物の流れを部分的に調理すること、
が少なくとも施されるように構成される、食品生産物のインライン加工のための生産ライン。
【請求項12】
前記表面処理ユニットが、燻液を前記食品生産物の流れに適用するための燻液ユニットをさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載の生産物ライン。
【請求項13】
前記食品輸送経路は、前記強化するユニット、続いて前記燻液ユニットを通って連続的に導くことを特徴とする、請求項12に記載の生産物ライン。
【請求項14】
前記食品輸送経路は、さらに、以下を通って連続的に導く:
C)食品生産物の流れに後熱処理トリートメントを施すための後熱処理ユニット、ここで、前記後熱処理トリートメントは、食品生産物の流れをチリング、表面処理すること、調理すること、及び包装することから成る群から選択される、請求項11に記載の生産物ライン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品生産物のインライン加工のための方法及び食品生産物のインライン加工のための生産物ラインに関する。特に、本発明は、食品生地を、蛋白質を含むケーシング(casing)又は蛋白質とポリマーのハイブリッドケーシングを有する共押出しされた(co-extruded)食品生産物の流れに共押出しする工程を含む、食品生産物のインライン加工のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品生産物における共押出しの方法は一般に知られており、中でもオランダ特許NL6909339に記載されている。本明細書は、共押出しを用いて蛋白質、例えばコラーゲンのケーシング層を持つ食品生地のストランド(strand)のケーシングを説明する。押出しの後、被覆されたストランドは、凝固浴を通して強化目的のために誘導される。凝固溶液の影響下で、蛋白質は凝固及び/又は沈殿し、ケーシング層は強化される。このように、少なくとも部分的に蛋白質の強力なケーシング層、すなわちケーシングを含むコラーゲンで被覆された食品生地のストランドが形成される。
【0003】
既知の方法の欠点は、ケーシング材料の特性であり、したがって食品生産物の加工性が、共押出しされた食品生産物の流れ、すなわち個々のソーセージの流れ、食品生産物のストランド、又は互いに連結されたソーセージ(頭-尻連結(head-tail connections))の流れの製造中に変化し得る。ケーシング材料の特性における変化は、予測が困難である。さらに、ケーシング材料の特性における変化は不可逆的である。したがって、一旦ケーシング材料の特性が変化すると、食品生産物の流れは、許容可能な品質を有する、最終食品生産物、すなわちソーセージを得るために加工することがもはやできなくなる。
【0004】
蛋白質、又は細長い食品生産物の共押出しのためのケーシング材料として粘性ゲル化剤を含む蛋白質を使用する既知の方法の特有の欠点は、最終食品生産物の制御できない特質(特に表面状態)である。食品生地のストランド及びケーシング材料の共押出し後のプロセス設定を変えることによって、蛋白質ケーシング材料の特性が不可逆的に変化し得ることが観察されている。当該変化は、食品生産物の表面の平滑性、すなわち食品生産物の「見た感じ(look-and-feel)」に関するケーシング材料の表面特性の変化が含まれ得る。共押出しされた細長い食品生産物を食塩水漬けすること、分離すること、圧着すること、燻煙すること、乾燥すること、包装すること、調理すること及び/又はチリング(chilling)のようなその後の加工工程における共押出し後のプロセス設定を変えることにより、得られた食品生産物は、通常所望される滑らかで外観が良く安定した表面とは異なり、例えば、粘着性する、不均一及び/又は汚れた表面のような望ましくない表面状態を持つ食品生産物へ制御できず変化する可能性がある。表面特性におけるこのような制御できない不可逆的な変化は、食品生産物の流れのより低い加工性をもたらし、その結果、食品生産物の流れ(又は食品生産物の流れの少なくとも一部)は、廃棄されなければならないことさえある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】蘭国特許出願公開第6909339号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記を考慮して共押出しされた食品生産物の生産の制御を高める、より具体的には、食品生産物の製造及びさらなるライフステージの間、ケーシング材料の生産物特性の制御を高める必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、この目的のために、食品生地を、蛋白質を含むケーシング、又は蛋白質とポリマーのハイブリッドケーシングを有する共押出しされた食品生産物の流れに共押出しする工程を含む、食品生産物のインライン加工のための方法を提供し、前記方法は、その後以下の連続する工程を含む:
【0008】
a)共押出しされた食品生産物の流れに表面処理工程を施すこと、ここで、前記表面処理工程は、食品生産物の流れに食品生産物強化工程を施す、例えば、食品生産物の流れにブライン溶液を施す工程を含む;
【0009】
b)工程a)において得られた食品生産物の流れに熱処理工程を施すこと;及び
【0010】
c)要すれば、熱処理された食品生産物の流れに後熱処理トリートメント(treating treatment)を施すこと、ここで、前記後熱処理処理は、食品生産物の流れをチリング、表面処理すること、調理すること、及び包装することから成る群から選択されるものであって、工程b)において、食品生産物の流れは、少なくともその後に第1の熱処理工程、及び第2の熱処理工程を施される。共押出しされた細長い食品生産物の加工性及びケーシング特性における予期せぬ不可逆的な変化は、蛋白質又は蛋白質を含むハイブリッドケーシングの物理的状態に強く依存することが分かった。結果として、蛋白質の物理的状態を制御することにより、ケーシングの表面の平滑性などのケーシング特性における変化は制御、すなわち防止することができる。特に、工程b)の多相熱処理工程を提供することにより、蛋白質の物理的状態をより持続可能かつ制御可能な手段において制御することができることがわかった。典型的には、異なる熱処理工程、例えば食品生産物の流れを乾燥すること、加熱すること及び調理することは、食品生産物の加工のための方法全体に適用される。異なる熱処理工程を単一の多相プロセス工程に組み合わせることによって、蛋白質の物理的状態は、より持続可能及び信頼性の高い手段において制御され、すなわち、魅力的な特性を持つ部分的に又は完全に調理された生産物、例えば、良好な食感特質(texture properties)を有する滑らかで、非粘着性で、汚れのない表面を持つ、生産物を生産する。さらに、異なる熱処理工程を単一の多相プロセス工程に組み合わせることによって、熱処理工程は、(食品生産物を加工するための方法全体にわたる様々な段階で)熱処理工程を別々に実行するのに必要な時間に比べて、はるかに短い時間で実行できることが分かった。また、単一の多相熱処理工程を提供することにより、得られる食品生産物の食感特性をより良好に制御、すなわち操作することが現在可能になることが留意される。例えば、本発明の方法を提供することによって、プロセス全体を通して食品生地にかかる圧力、例えば、選択された加熱戦略(例えば、乾燥及び調理工程の量及び持続期間)の結果としてケーシングにおける蛋白質(例えばコラーゲン)の制御されていない又は過度の収縮によって働かされる圧力は、これにより防止される。このような蛋白質の制御できない収縮は、本発明の単一の多相熱処理工程によって防止され、より良好に制御可能な食品生産物をもたらし、得られる食品生産物の最終的な食品生産物特性を操作する。
【0011】
蛋白質の物理的状態に関して、このような物理的状態は物理的状態の3つのタイプ:結晶相、らせん相、及びランダムコイル相を含有し得ることが留意される。らせん又は結晶形態の蛋白質がランダムコイル形態を有する蛋白質に変換される場合、ケーシング特性における不可逆的な変化が予想されることが分かった。らせん又は結晶形態の蛋白質を含む食品生産物のケーシングを含む蛋白質は、滑らかで魅力的な外観及び/又は安定した表面により特徴付けられるが、一方ランダムコイル形態の蛋白質を含む食品生産物のケーシングを含む蛋白質は、より粘着し、不均一及び/又は汚れた表面を表す。その結果、本発明の方法のある実施形態において、蛋白質は、らせん及び/又は結晶形態である。
【0012】
本発明のある実施形態において、本発明の方法の実行中に、蛋白質の物理的状態は、熱処理工程及び任意の後熱処理工程の間にらせん及び結晶形態の間で変わり得る。蛋白質のらせん又は結晶のいずれかの物理的状態は、食品生産物のケーシング特性に正の効果を有するので、蛋白質の実際の状態は、これらの2つの状態の間で変わり得る。しかしながら、特に、蛋白質の物理的状態は、食品生産物の流れを共押出した後に変化しないことが好ましい。得られた食品生産物、又は似た物の表面平滑性、表面の色、調理特性等などの同じ生産物特性を維持するために、食品生産物の流れの共押出し及びいずれかの更なる加工工程の間に蛋白質の同じ物理的状態を維持することが特に有利である。さらに、特に良好な結果は、本発明の方法全体を通して結晶形態である蛋白質で得られる。結晶形態である蛋白質を含む、ケーシングを提供することにより、食品生産物のケーシングは、最も最適な熱安定性を有し、すなわち、望ましくない表面特性を有することなく部分的に又は完全に調理することができる生産物を提供する。
【0013】
好ましい相の蛋白質の物理的状態、すなわち、らせん及び結晶相を維持するために、特に、食品生産物の表面温度が少なくとも約55℃である場合に、食品生産物の流れに第2の熱処理工程が施される方法が好ましい。第1の熱処理工程中に、食品生産物の流れに第2の熱処理工程を施す前に、食品生産物の流れの表面温度を少なくとも約55℃まで上昇させる方法を提供することによって、結晶又はらせん相を、さらなる加工工程中に維持及び制御することができる。好ましい実施形態において、本発明の方法が提供され、第1の熱処理工程中に、食品生産物の流れに第2の熱処理工程を施す前に、食品生産物の流れの表面温度は少なくとも約58℃まで上昇される。さらに好ましい実施形態において、本発明の方法が提供され、第1の熱処理工程中に、食品生産物の流れに第2の熱処理工程を施す前に、食品生産物の流れの表面温度は少なくとも約60℃まで上昇される。
【0014】
本明細書で使用される「表面処理工程」という用語は、いずれの熱処理工程が欠けている/含まない食品生産物の流れの処理工程を指すということが留意される。言い換えれば、本発明の工程a)の「表面処理工程」は、予備乾燥又は乾燥工程を含有せず、クーリング(cooling)又は調理のようなさらなる熱処理工程は言うまでもない。
【0015】
本明細書で使用される用語「熱処理工程」は、食品生産物の流れが食品生産物の流れの加工中に積極的に加熱又は冷却される工程を指すことがさらに留意される。食品生産物の流れ及び環境温度(例えば生産設備又は似た物の温度)の間の温度差によるいずれかの温度変化は、本明細書で使用される「熱処理工程」という用語の範囲内ではない。
【0016】
本発明の蛋白質は、共押出し後のゲル化(凝集及び/又は沈殿;凝固剤の存在下かどうか)によってケーシングを形成することができる可食性蛋白質から成る群から選択され得る。特に好ましい蛋白質はコラーゲンを含む。
【0017】
本発明のハイブリッドケーシングに含まれるポリマーは、ハイブリッドケーシングに存在する蛋白質と組み合わせてケーシングを形成することができる可食性ポリマーから成る群から選択され得る。好ましくは、ポリマーは、多糖類から成る群から選択される。好ましいポリマーは、アルギネート及び/又はセルロースを含み得る。
【0018】
すでに上述されたように、共押出しされた食品生産物の流れは、共押出しされた食品生産物のストランドを含有してもよく、共押出しされた食品生産物のストランドは、依然として、分離された個々の食品生産物(例えばソーセージ)に分割される必要がある。食品生産物の流れは、個々の食品生産物が依然として互いに連結され(頭-尻連結)、連結された食品生産物の列を形成するストランドの中間形態を含有し得る。
【0019】
本発明の単一の多相プロセス工程は、少なくとも2つの熱処理工程を含み得る。しかしながら、さらなる熱処理工程は、食品生産物の流れにも適用され得る。例えば、さらなる好ましい実施形態において、食品生産物の流れは、続いて、すなわち、食品生産物の流れに第1及び第2の熱処理工程を施した後、第3の熱処理工程が施されても良い。さらに4つ又はそれ以上のその後の熱処理工程も適用され得る。典型的には、単一の多相プロセス工程は、約6つの熱処理工程を含有するように構成され得る。工程b)の熱処理工程の構成は、生産される具体的な食品生産物及び方法が適用される生産物ライン設計に依存することが留意される。例えば、1つの生産物については、熱処理工程は、乾燥すること、加熱すること、部分的に調理すること及び(完全に)調理することのような4つの熱処理工程を含んでもよく、他方、もう1つの製品については、熱処理工程は、3つの熱処理工程を含んでもよく、ここで、単一の多相プロセス工程を離れる生産物は、部分的にのみ調理される。
【0020】
工程b)の熱処理工程は、食品生産物の流れを乾燥すること、加熱すること、部分的に調理すること、調理すること、及びクーリングから成る群から選択され得る。本明細書で使用される用語「乾燥すること」は、過剰な水又は水分が食品生産物の流れの表面から除去され、食品生地のケーシング及び/又は調理の凝固が防止されるプロセス工程を指す。
【0021】
本明細書で使用される用語「加熱すること」は、食品生地が調理されていないにもかかわらず、ケーシングが凝固するプロセス工程を指す。
【0022】
本明細書中で使用される用語「部分的に調理すること」は、食品生地が部分的にのみ調理される、すなわち、まだ容易に食べられない食品生産物をもたらすプロセス工程を指し、さらに、例えば、さらなる後多相処理工程において、又は食品生産物を食べるために用意する間に最終消費者によって、なお調理される必要がある。
【0023】
本明細書で使用される用語「調理すること」は、食品生地が調理され、可食性の食品生産物をもたらすプロセス工程を指す。調理工程が施された食品生産物のための代替用語は、「完全に調理された」食品生産物である。
【0024】
本明細書中で使用される用語「クーリング」は、食品生産物の温度が、典型的には約10℃から15℃の温度を有する水道水又は冷気などのクーリング媒体を使用して下げられるプロセス工程を指す。
【0025】
本明細書中で使用される用語「チリング」は、食品生産物に、意図的により低温にされる媒体(例えば水)であるチリング媒体が施されるプロセス工程を指す。
【0026】
既に述べたように、本発明の方法にあっては、得られる食品生産物、食品生産物を生産するために使用される出発材料、方法が適用される生産ラインの設計、及び他のパラメータの具体的な特質に応じて、2つ以上の熱処理工程の異なる組み合わせが利用可能である。このような組み合わせの例は、第1の熱処理工程がb.1)食品生産物の流れを乾燥することを含む及び/又は第2の熱処理工程がb.2)食品生産物の流れを少なくとも部分的に調理することを含む方法に関し得る。このような組合せのもう1つの例は、第1の熱処理工程がb.i)食品生産物の流れを乾燥することを含み、第2の熱処理工程がb.ii)食品の流れを加熱することを含み、及び/又は第3の熱処理工程がb.iii)食品生産物の流れを少なくとも部分的に調理することを含む方法に関し得る。
【0027】
本発明の熱処理工程のプロセス条件に関しては、温度が50℃から150℃の範囲にわたってもよく、相対湿度が0%から100%の範囲にわたり、空気速度が1m/sから10m/sの範囲にわたってもよいことが留意される。
【0028】
好ましい実施形態において、熱処理工程は、食品生産物の流れを50℃から80℃の間、好ましくは60℃から75℃の間の温度において乾燥することを含む。食品生産物の流れを乾燥する間の相対湿度は、10%まで、好ましくは5%までであってもよい。
【0029】
食品生産物の流れを加熱することに関して、熱処理工程は、60℃から90℃の間、好ましくは70℃と80℃の間の温度を含み得る。食品生産物の流れを加熱する間の相対湿度は、15%から40%の間、より好ましくは25%と35%の間であってもよい。
【0030】
食品生産物の流れを部分的に調理することは、70℃から100℃の間、より好ましくは80℃と90℃の間の温度を含み得る。食品生産物の流れを部分的に調理する間の相対湿度は、30%から60%の間、好ましくは40%と50%の間であってもよい。
【0031】
さらなる実施形態において、熱処理工程は、食品生産物の流れを70℃から100℃の間、好ましくは80℃から90℃の間の温度において調理することを含む。食品生産物の流れを調理する間の相対湿度は、60%から80%の間、より好ましくは65%と75%の間であってもよい。
【0032】
本発明のより具体的な実施形態において、前記方法は、熱処理工程b)を含み、ここで食品生産物の流れは、少なくともその後以下を施される:
【0033】
食品生産物の流れを70℃と80℃の間の温度において、5%までの、好ましくは約0%の相対湿度において乾燥すること;
【0034】
食品生産物の流れを75℃から85℃の間の温度において、25%から35%の間、好ましくは約30%の相対湿度において加熱すること;及び
【0035】
食品生産物の流れを80℃から90℃の間の温度において、40%から50%の間、好ましくは約45%の相対湿度において、部分的に調理すること。
【0036】
要すれば、本発明の上記のより具体的な実施形態は、食品生産物の流れを部分的に調理した後、食品生産物の流れに以下の工程を施すことをさらに含み得る:
【0037】
食品生産物の流れを80℃から90℃の間の温度において、60%から75%の間、好ましくは65%から70%の間の相対湿度において調理すること。
【0038】
本発明によれば単一のワンステップ多相熱処理工程を提供することによって、後熱処理工程は、類似の品質及び生産物性能を有する同一の食品生産物に到達するために、より短い時間間隔を有し得ることが分かった。例えば、制御され、組み合わされた多相熱処理工程のため、熱処理工程b)を離れ、調理工程が施される食品生産物のコア温度は、当技術分野において開示された方法の調理工程が施されている食品生産物のコア温度、すなわち、(同じ)熱処理工程が単一の多相プロセス工程に組み合わされるのではなく、食品生産物を用意するプロセス全体にわたって別々に行われる方法、と比較してより高い。有意に上昇したコア温度を有する食品生産物を提供することによって、工程c)の後熱処理は、食品生産物の流れに蒸気を施すことにより食品生産物の流れを表面処理すること、すなわち、食品生産物の流れの表面の抗菌処理を含んでもよい。
【0039】
もう1つの後熱処理は、食品生産物の流れを調理する工程、特に食品生産物を包装した後に食品生産物を調理する工程を含み得る。このようないわゆる「クック・イン・パック(cook-in-pack)」法は、食品生産物を包装すること及び完全に調理することを組み合わせることが特に有益であることが分かっている。
【0040】
本発明の方法は、共押出しされた食品生産物のストランドを個々の食品生産物に分離する工程をさらに含み得る。既に上で述べたように、食品生産物の流れは、共押出しされた食品生産物のストランドを含んでもよく、ここで、本発明の方法は、以下の工程をさらに含む:
【0041】
食品生産物の流れに工程b)を施すことの前に、共押出しされた食品生産物のストランドを個々の食品生産物に分離すること。
【0042】
共押出しされた食品生産物のストランドは、プロセスを通して個々の食品生産物に分割されてもよいが、共押出しされた食品生産物のストランドに工程a)の強化工程を施した後に、共押出しされた食品生産物のストランドを分離する工程であること好ましい。
【0043】
さらに、表面処理工程は、燻液(liquid smoke)に食品生産物の流れを適用する工程をさらに含んでもよい。好ましくは、燻液は、食品生産物の流れに食品生産物強化工程を施した後、食品生産物の流れに適用される。このような燻液の適用は、単一の多相熱処理工程が、工程b)の後に得られる食品生産物が完全に調理されるように選択される場合に特に関連し得る。代替的に、又は燻液に食品生産物の流れを適用することに加えて、本発明の方法は、以下の工程を含んでもよい:
【0044】
食品生産物の流れを共押出しする前に、架橋剤をケーシングに添加すること。
【0045】
好ましくは、架橋剤は、ケーシング及び食品生地を共押出しする直前にケーシングに添加され、食品生産物の流れを形成する。典型的には、共押出しの前に、ケーシングはゲルの形態又は他の粘性の形態である。工程b)において食品生産物の流れを熱処理した後に完全に調理された食品生産物を提供するためには、食品生産物の流れの共押出し中、ケーシングにおける架橋剤の存在が、所望の表面特性を維持するために非常に望ましいことがわかった。
【0046】
もう1つの態様において、本発明は、本発明の方法を適用するための生産ラインに関する。本発明の好ましい実施形態において、食品生産物のインライン加工のための生産ラインは、共押出しされた食品生産物を輸送するための食品輸送経路及び、食品生地を蛋白質を含むケーシング、又は蛋白質とポリマーのハイブリッドケーシングを有する共押出しされた食品生産物の流れに押し出すための共押出しユニットを含み、ここで食品輸送経路は、以下を通って連続的に導く:
【0047】
A)共押出しされた食品生産物の流れに食品生産物強化工程を施すための強化ユニットを含む表面処理ユニット;
B)食品生産物の流れに熱処理工程を施すための雰囲気ユニット;及び
C)要すれば、食品生産物の流れに後熱処理工程を施すための後熱処理ユニットであって、前記後熱処理トリートメントは、食品生産物の流れをチリング、表面処理すること、調理すること、及び包装することから成る群から選択され、ここで前記雰囲気ユニットは、少なくともその後に、第1の熱処理工程、第2の熱処理工程、及び要すれば1つ以上のさらなる熱処理工程が施されるように構成される。
【0048】
表面処理ユニットは、燻液を食品生産物の流れに適用するため燻液ユニットをさらに含み得る。本発明の好ましい実施形態において、表面処理ユニットは、食品輸送経路が強化ユニット、続いて燻液ユニットを通って連続的に導くように設計される。