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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】ドアウエストウエザーストリップ
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/75 20160101AFI20240207BHJP
   B60J 10/21 20160101ALI20240207BHJP
【FI】
B60J10/75
B60J10/21
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021009945
(22)【出願日】2021-01-26
(65)【公開番号】P2022113923
(43)【公開日】2022-08-05
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000158840
【氏名又は名称】鬼怒川ゴム工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】大村 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】角田 拓朗
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-167621(JP,A)
【文献】特開2007-118882(JP,A)
【文献】特開平08-072548(JP,A)
【文献】特開2016-199190(JP,A)
【文献】特開2016-199070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/75
B60J 10/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用ドアのドアウエスト開口部に位置するドアインナパネルのフランジ部に装着されて、前記ドアウエスト開口部と昇降式のドアガラスとの間をシールするドアウエストウエザーストリップであって、
前記ドアインナパネルのフランジ部に嵌合保持される横断面逆U字形状の取付基部と、
前記取付基部の車外側側壁からドアガラス側に向かって突出形成された上側および下側のガラスシールリップと、
前記取付基部の上端壁に立設されて、ドアトリムが前記取付基部の上方から被装された際に前記ドアトリムの裏面に当接するカバーリップと、
を備え、
前記カバーリップは、前記取付基部の上端壁の車外側側壁寄りの上面に結合された剛性部と、該剛性部から前記ドアトリムの方向へ延びたリップ本体と、を備え、
前記リップ本体は、上下幅方向の所定位置に、前記ドアトリムが前記取付基部の上方から被装された際に屈曲点となる変形可能部を有し、
前記変形可能部は、自由状態において車室側に突出したく字形状に折曲形成され、
前記剛性部は、前記取付基部の上端壁から上方へ突出していると共に、上端面が車外側から車内側へ下り傾斜状に形成されていることを特徴とするドアウエストウエザーストリップ。
【請求項2】
請求項1に記載のドアウエストウエザーストリップであって、
前記ドアインナパネルのフランジ部に係止孔が形成されている一方、前記取付基部の車外側側壁の内面に前記係止孔の孔縁に当接する第3突起部が一体に設けられていることを特徴とするドアウエストウエザーストリップ。
【請求項3】
請求項2に記載のドアウエストウエザーストリップであって、
前記係止孔の上側孔縁に車外方向へ突出した舌片が設けられている一方、
前記取付基部の車外側側壁の内面に前記舌片に係止する第2突起部が一体に設けられていることを特徴とするドアウエストウエザーストリップ。
【請求項4】
請求項3に記載のドアウエストウエザーストリップであって、
前記取付基部と該取付基部に一体に設けられた前記剛性部は、硬質な樹脂材または合成ゴム材によって形成されていることを特徴とするドアウエストウエザーストリップ。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載のドアウエストウエザーストリップであって、
前記ドアトリムの裏面側に、前記取付基部の車内側側壁方向に突出した突出部が設けられている一方、
前記取付基部の車内側側壁の外面に、前記ドアトリムの自重によって前記取付基部が前記フランジ部を中心とした回転力が作用した際に、前記突出部に当接して前記回転を規制する規制突部が設けられていることを特徴とするドアウエストウエザーストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ドアのドアウエスト開口部の開口縁に装着されて当該ドアウエスト開口部と昇降式のドアガラスとの間をシールするドアウエストウエザーストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のドアウエストウエザーストリップのうち車内側(インサイド側)に装着されるタイプのものとして図5に示す構造のものがある。なお、ドアウエストウエザーストリップは、ドアウエストシールと称されることもあり、また、車内側に装着されるタイプのものは単にインサイドシールと称されることもある。
【0003】
図5に示すドアウエストウエザーストリップ21は、ドアウエスト開口部を形成しているドアインナパネル20のフランジ部20aに嵌合保持される横断面逆U字状の取付基部22と、この取付基部22のうち車外側側壁22aの上部からドアガラスG側に向けて突出形成された上側延長基部23aと、前記車外側側壁22aの下部からドアガラスG側に向かって斜め下方に突出形成された下側延長基部23bと、これらの上側延長基部23aおよび下側延長基部23bからそれぞれドアガラスG側に向かって突出形成された上側および下側のそれぞれのガラスシールリップ24a,24bと、取付基部22の上端面から上方に向けて突出形成されたカバーリップ25と、を備えている。
【0004】
取付基部22の車外側側壁22aの内面には、硬質な合成樹脂材からなる上下二段の保持突起22c、22cが設けられている。一方、車内側側壁22bの対向内面には、軟質な合成樹脂材からなる上下二段の保持リップ22d、22dが設けられている。これら保持突起22c、22cと保持リップ22d、22dによってフランジ部20aを挟持状態に圧接することによって取付基部22をフランジ部20aに保持するようになっている。
【0005】
また、ドアインナパネル20のフランジ部20a上方位置には、前記取付基部22の上端部が被せられるドアトリム26が設けられている。このドアトリム26は、硬質な合成樹脂材によって一体に形成され、ドアインナパネル20に形成された図外の複数のクリップ孔にそれぞれ挿入係止される複数のクリップによってドアインナパネル20に組み付けられるようになっている。
【0006】
前記カバーリップ25は、軟質な合成樹脂材によって形成されて、ドアトリム26が取付基部22の上端部に被せられた際に、ドアトリム26の端末部26aの裏面26bに圧接して当該端末部26aと取付基部22との間のシール性を確保すると共に、車室内の遮音機能を発揮するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6225772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来のドアウエストウエザーストリップ21のカバーリップ25は、取付基部22の上端面から上方向へほぼ直線状に延びており、ドアトリム26を、取付基部22の上方から被せて組み付ける際には、図5の一点鎖線で示すように、ドアトリム3の端末部26aがカバーリップ25の先端部25aに対して車室側から車外側に向かって横方向(矢印方向)から当接するようになっている。
【0009】
このため、例えばドアインナパネル20の前記各クリップ孔の形成位置が上下にばらついて、ドアトリム26のドアインナパネル20に対する組み付け時の上下のばらつきが発生した場合や、ドアトリム26やカバーリップ25の各単体の製造上のばらつきなどがあった場合には、以下のような課題を招くおそれがある。
【0010】
つまり、前述のように、ドアトリム26を組み付けた際に、カバーリップ25が根元から屈曲して先端部25aがドアトリム26の端末部26aの裏面26bの適正な位置に当接せずに、ドアトリム26の端末部26aから逸脱してしまう、いわゆるシールアウトが発生するおそれがある。この結果、取付基部22とドアトリム26との間のシール性能や遮音性能が低下してしまうおそれがある。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑みて案出されたもので、ドアトリムが取付基部の上方から被装された際に、ドアトリムの自重によってカバーリップが変形可能部を介して圧縮変形し、その弾性反力によって先端部がドアトリムの裏面に密着状態に弾接可能なドアウエストウエザーストリップを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願請求項1に係る発明は、とりわけ、ドアインナパネルのフランジ部に嵌合保持される横断面逆U字形状の取付基部と、前記取付基部の車外側側壁からドアガラス側に向かって突出形成された上側および下側のガラスシールリップと、前記取付基部の上端壁に立設されて、ドアトリムが前記取付基部の上方から被装された際に前記ドアトリムの裏面に当接するカバーリップと、を備え、
前記カバーリップは、前記取付基部の上端壁の車外側側壁寄りの上面に結合された剛性部と、該剛性部から前記ドアトリムの方向へ延び、前記剛性部よりも軟質なリップ本体と、を備え、
前記リップ本体は、上下幅方向の所定位置に、前記ドアトリムが前記取付基部の上方から被装された際に屈曲点となる変形可能部を有し、
前記変形可能部は、自由状態において車室側に突出したく字形状に折曲形成され、
前記剛性部は、前記取付基部の上端壁から上方へ突出していると共に、上端面が車外側から車内側へ下り傾斜状に形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ドアトリムと取付基部との間のシール性能や遮音性能の低下を抑制することができる。
特に、本発明は、変形可能部が自由状態において予めく字形状に形成されていることから、ドアトリムが被装されてドアトリムの裏面がカバーリップの先端部を押圧すると、該カバーリップは変形可能部から折り畳まれるように圧縮方向(潰れ方向)へ変形し易くなり、この弾性反力によって先端部がドアトリムの裏面に面接触で密着状態に弾接する。これにより、ドアトリムとの間のシール性能や遮音性能の低下を抑制できる。
しかも、カバーリップの剛性部は、上端面が車外側から車内側へ下り傾斜状に形成されていることによって、リップ本体の変形可能部から剛性部に掛かるドアトリムの傾斜状の押し下げ力が前記上端面に対して垂直方向から作用することから、前記押し下げ力を剛性部で効果的に受け止めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】自動車のリアドア開状態での内側斜視図である。
図2図1のA-A線断面図であって、本発明に係るドアウエストウエザーストリップの具体的な構成を図である。
図3図1のA-A線断面図であって、本実施形態に供されるドアトリムを取付基部に被せた際における作用説明図である。
図4】本実施形態に供されるドアインナパネルの要部拡大斜視図である。
図5】従来のドアウエストウエザーストリップの一例を示す一般部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1図4は本発明に係るドアウエストウエザーストリップを実施するためのより具体的な形態を示し、図1は自動車のリアドア1(以下、単にドアと言う。)の開状態での内側斜視図、図2図1のA-A線断面図、図3図2におけるドアトリムとの関係でドアウエストウエザーストリップの作用を複数の矢印で示す図を示し、図4は本実施形態に供されるドアインナパネルの一部拡大斜視図である。
【0016】
図1に示すように、ドア1は、ドア本体1aを構成するドアインナパネル2の周縁部に図外の複数のクリップ孔が貫通形成されていると共に、内張部材としてのドアトリム3が前記クリップ孔に挿入係止される図外の複数のクリップによって固定されている。また、図2に示すように、ドアインナパネル2の周縁部の上端側に有するフランジ部2aには、ドアウエストウエザーストリップ4が取り付けられている。
【0017】
ドアインナパネル2は、図4に示すように、フランジ部2aが車体前後方向に沿って凹凸な波形状に形成されて、車内側に凹んだ凹部片2bと車外側に突出した凸部片2cとを有している。この各凸部片2cのほぼ中央位置には、ほぼ矩形状の係止孔2dが貫通形成されている。この各係止孔2dは、図2図3に示すように開口縁の上端に車外方向へ庇状に突出した舌片2eがそれぞれ設けられている。
【0018】
ドアトリム3は、硬質な合成樹脂材によって一体に形成されて、図2に示すように、ドア本体1aの内側を覆っていると共に、端末部3aがドアウエストウエザーストリップ4の後述する取付基部7の鉛直方向上側から被せられて目隠しするようになっている。
【0019】
また、ドアトリム3は、端末部3aの裏面3bの先端側に鉛直方向下側へ延びた第1リブ3cが一体に設けられていると共に、該第1リブ3cより車内側の位置には、鉛直方向下側に延びて第1リブ3cよりも長い第2リブ3dが一体に設けられている。これら第1、第2リブ3c、3dは、所定肉厚のプレート状に形成されてドア1の前後方向に沿って配置されている。さらに、ドアトリム3の端末部3aの裏面3bには、ドア1の幅方向に沿ったプレート状に形成されて先端縁が側面視段差クランク状に形成された第3リブ3eが一体に設けられている。
【0020】
ドアウエストウエザーストリップ4は、ドア1におけるドアウエスト開口部の開口縁に、その長手方向(ドア前後方向)のほぼ全長にわたって配設される長尺バー状のものである。そして、図1に示すパーティションサッシ6よりも図中右側の一般部5Aでは図2及び図3のような断面形状となっているのに対して、パーティションサッシ6よりも左側の異形部5Bでは異なる断面形状となっている。なお、ドアウエスト開口部とは、図1に示すドア本体1aの上端のドアウエスト部相当位置で開口していて、昇降式のドアガラスG1が昇降可能な開口部を言う。
【0021】
ここで、ドアウエストウエザーストリップ4は、図1に示したパーティションサッシ6との交差部での干渉を回避するために図外の切欠部が設けられている。したがって、前記切欠部よりも右側の一般部5Aでは昇降式のドアガラスG1と摺接することになる一方、切欠部よりも左側の異形部5Bでは非昇降式のいわゆる嵌め殺しタイプのパーティションガラスG2と接触することになる。
【0022】
ドアウエストウエザーストリップ4の一般部5Aでは、大きく分けて、ドアインナパネル2のフランジ部2aへ取り付けられる取付基部7と、この取付基部7の車外側側壁7aの外面から上下二段にわたって突出形成されて、昇降式ドアガラスG1に圧接する上側および下側のガラスシールリップ8,9と、から構成される。なお、ドアウエストウエザーストリップ4のパーティションガラスG2側の構成についての具体的な説明は省略する。
【0023】
取付基部7は、横断面形状が逆U字状に形成されて、ドアガラスG1側(車外側)に位置する車外側側壁7aと、該車外側側壁7aにドア1の幅方向で対向する車内側側壁7bと、該車外側側壁7aと車内側側壁7bを連結する上端壁7cと、を有している。
【0024】
上側のガラスシールリップ8は、取付基部7の車外側側壁7aの外面上部に配置され、ドアガラスG1側に向かって斜めに立ち上がって突出形成されている。一方、下側のガラスシールリップ9は、車外側側壁7aの外面下部に配置され、ドアガラスG1側に向かって斜めに立ち上がって突出形成されている。
【0025】
取付基部7の車内側側壁7bは、外面のほぼ中央位置に車内側へ斜め上方向に突出した規制突部10が一体に設けられている。この規制突部10は、ドア1の前後方向に延設された長板状に形成され、後述するように、ドアトリム3が取付基部7の上方から被せられた際に、第3リブ3eの下部に有するL字形状の段差部3fが上方から当接してドアトリム3のそれ以上の下降移動を規制するようになっている。
【0026】
車内側側壁7bの下端面には、取付基部7をドアインナパネル2のフランジ部2aに嵌合固定した際に、フランジ部2aの下部傾斜面に内方へ撓み変形しながら弾接するシールリップ11が設けられている。このシールリップ11は、ドア1の前後方向、つまり取付基部7の長手方向に沿って形成されている。
【0027】
また、車内側側壁7bの内面には、ドアインナパネル2のフランジ部2aの凹部片2bの内面に撓み変形しつつ弾接する上下二段の保持リップ12,13が設けられている。この保持リップ12,13は、取付基部7の長手方向(ドア1の前後方向)に沿って形成されていると共に、フランジ部2aの凹部片2bに弾接してシールリップ11と協働して取付基部7の車内側側壁7bを凹部片2bに固定保持するようになっている。
【0028】
一方、車外側側壁7aの内面には、図2中、上段側の第1突起部14と、中段側の第1突起部15及び下段側の第2突起部16が設けられている。第1突起部14は、横断面ほぼ三角形状に形成されて、取付基部7をフランジ部2aに嵌合固定した際に、鋭角状の先端部が凸部片2cの舌片2eより上側の外側面に当接するようになっている。中段側の第2突起部15は、横断面ほぼ三角形状に形成され、先端部が係止孔2dに係入しつつの舌片2eの先端縁に係止するようになっている。一方、下段側の第3突起部16は、横断面ほぼ台形状に形成されて、係止孔2dの孔縁の下側に車外側から当接し、前記第1突起部14や第2突起部15と協働して取付基部7の車外側側壁7bを凸部片2cに固定保持するようになっている。
【0029】
したがって、取付基部7は、シールリップ11や各保持リップ12,13及び第1、第2、第3突起部14,15,16によって、フランジ部2aに強固に固定保持される。
【0030】
取付基部7の車外側側壁7aと車内側側壁7b、規制突部10及び第1、第2、第3突起部14,15,16は、ポリプロピレン(PP)等の比較的硬質の樹脂材料で形成されている。
【0031】
また、取付基部7の上端壁7cの車外側側壁7aとの結合箇所には、カバーリップ17が一体に設けられている。
【0032】
このカバーリップ17は、図2に示すように、取付基部7の上端壁7cの車外側側壁7a寄りの上面に一体に結合された剛性部である基端部18と、該基端部18から上方向、つまりドアトリム3方向へ延びたリップ本体19と、を備えている。
【0033】
基端部18は、上端壁7cや車外側側壁7aと同じポリプロピレン(PP)等の比較的硬質の樹脂材料で形成され、上端壁7cから上方へ突出していると共に、上端面18aが車外側から車内側へ下り傾斜状に形成されている。
【0034】
リップ本体19は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等の軟質の材料で形成され、ドア1の前後方向へ帯状に延びていると共に、全体の肉厚が比較的厚くかつほぼ均一に設定されている。
【0035】
また、リップ本体19は、基端部18から先端部19aまでの間、つまり上下幅方向のほぼ中央位置に屈曲点となる変形可能部19bが設けられている。この変形可能部19bは、自由状態において車室内に突出したほぼく字形状に形成されている。したがって、ドアトリム3が上方から上端壁7cに被せられた際に、先端部19aがドアトリム3の裏面3b(図中下面)に当接してその自重によりリップ本体19が変形可能部19bを支点として圧縮方向(折り畳み方向)へ屈曲変形するようになっている。また、リップ本体19は、変形可能部19bから圧縮方向へ屈曲変形した際に、自身の弾性反力によって先端部19aがドアトリム3の裏面3bに弾接するようになっている。
【0036】
上側および下側の双方のガラスシールリップ8,9は、TPO等の軟質の材料で形成され、根元部8a、9aが最も薄肉となっていて、これらの根元部8a、9aを支点として撓み変形可能となっている。また、双方のガラスシールリップ8,9同士はそのリップ長が共に等しく且つ互いに平行となっている。なお、双方のガラスシールリップ8,9のうちドアガラスG1と摺接する部位には植毛層8b、9bが形成されている。
【0037】
なお、図2に示すドアウエストウエザーストリップ4は、一般部5Aの断面形状をもって均一断面形状の長尺なものとして押出成形した上で所定長さに裁断するものとする。
〔本実施形態の作用効果〕
ドアウエストウエザーストリップ4は、図2に示すように、取付基部7を、ドアウエスト開口部を形成するドアインナパネル2のフランジ部2aの凹凸部片2b、2cの上端に嵌合させることで、ドアウエストウエザーストリップ4全体がドアウエスト開口部の正規位置に強固に保持される。
【0038】
すなわち、取付基部7を、フランジ部2aの凹部片2bと凸部片2cに上方から押し込むと、各保持リップ12,13が凹部片2bの内面に摺動しつつ弾接すると共に、シールリップ11がフランジ部2aの傾斜面に内方へ撓み変形しながら弾接する。同時に、第2、第3突起部15,16が、図2図3に示すように、順次舌片2eを乗り越えつつ第2突起部15が係止孔2dから舌片2eの下端縁に係止すると共に、第3突起部16が係止孔2dの下部孔縁に当接する。同時に、第1突起部14が舌片2eより上側の凸部片2cの外面に当接する。このため、取付基部7は、フランジ部2aに対して強固かつ確実に固定される。
【0039】
次に、取付基部7がフランジ2aに対して取り付けられた状態で、ドアトリム3を取付基部7の上方からほぼ鉛直方向へ降ろして被せる。そうすると、図2及び図3に示すように、ドアトリム3は、自重によって端末部3aの裏面3bがリップ本体19の先端部19aに当接しながら押し下げる。このため、リップ本体19は、変形可能部19bから屈曲して折り畳まれるように圧縮変形し、この反作用により原形状方向に弾性反力が作用して先端部19aが端末部3aの裏面3bに弾接して密着状態になる。このため、ドアトリム3と取付基部7との間のシール性能と遮音性能が向上する。
【0040】
換言すれば、前記従来技術のように、ドアインナパネル2に形成されたクリップ孔の形成位置が上下にばらついてドアインナパネル2に対するドアトリム3の組み付けのばらつきや、ドアトリム3やドアウエストウエザーストリップ4の単体の製造上のばらつきがあったとしても、カバーリップ17によるドアトリム3と取付基部7との間のシール性能や遮音性の低下を十分に抑制できる。
【0041】
特に、リップ本体19は、自由状態において変形可能部19bが予めく字形状に形成されていることから、ドアトリム3を被装して該ドアトリム3の裏面3bがリップ本体19の先端部19aを押圧すると、該リップ本体19は変形可能部19bから圧縮方向へ変形し易くなると共に、この弾性反力(支持反力)が確保されてドアトリム3との間のシール性能や遮音性能の低下をさらに抑制することが可能になる。
【0042】
また、前述のように、ドアトリム3の自重(図3の矢印A方向)によってリップ本体19に圧縮方向への力(押し下げ力)が作用すると、この押し下げ力が剛性部である基端部18によって受け止められる。これによって、カバーリップ17の支持反力がさらに大きくなることから、カバーリップ17とドアトリム3との間のシール性能などが向上する。特に、基端部18の上端面18aが、車外側から車内側へ下り傾斜状に形成されており、リップ本体19の変形可能部19bから基端部18に掛かるドアトリム3の傾斜状の押し下げ力(図3の矢印F)が上端面18aに対して垂直方向から作用することから、前記押し下げ力Fを基端部18で効果的に受け止めることが可能になる。したがって、カバーリップ17は、基端部18によって効果的な支持反力を得ることができる。
【0043】
さらに、前述のように、ドアトリム3を被装すると、その自重(図3の矢印A方向)によって、リップ本体19が変形可能部19bから圧縮変形すると共に、取付基部7にドアインナパネル2のフランジ部2aを中心とした図3矢印B方向に示す時計方向の回転力が働くが、この回転を第3突起部16の先端面が係止孔2dの下側孔縁に当接して図3の矢印C方向の回転を規制する。これによって、取付基部7は、過度な回動(傾き)が抑えられることから、カバーリップ17の弾性反力の低下を抑制できる。
【0044】
さらに、前述したドアトリム3の自重によって、取付基部7にフランジ部2aを中心とした図3矢印B方向に示す時計方向の回転力が働くと、取付基部7の規制突部10が図3の矢印Dに示すように上方向へ回転してドアトリム3の段差部3fに圧接する。これによって、取付基部7は、矢印D方向の回動が規制されることから、カバーリップ17の弾性反力の低下を抑制できる。
【0045】
これらの結果、ドアトリム3と取付基部7との間のシール性能や遮音性能の低下を抑制できる。
【0046】
また、ドアトリム3などの組み付けが完了した後におけるドアウエストウエザーストリップ4は、図2及び図3に示すように、ドアガラスG1が上側および下側の双方のガラスシールリップ8,9が撓み変形しつつドアガラスG1に圧接して所定のシール機能を発揮するとともに、その圧接状態のままでドアガラスG1の昇降動作を許容することになる。
【0047】
この場合においても、前述の取付基部7の無用な回動が規制されることから、各ガラスシールリップ8,9によるドアガラスG1に対するシール性能の低下も抑制できる。
【0048】
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、カバーリップ17は、リップ本体19の肉厚を変更してリップ本体19自体の弾性反力を任意に変更することも可能であり、例えば、全体の肉厚を大きくするとか、く字形状の変形可能部19bのみの肉厚を大きくして自身の弾性反力を大きくすることも可能である。
【0049】
また、前記変形可能部19bは、く字形状に形成されているが、その屈曲角度は車種や車体の大きさなどに応じて任意に変更することが可能である。
【0050】
さらに、取付基部7の車外側側壁7aと車内側側壁7bなどは、ポリプロピレン(PP)等の比較的硬質の樹脂材料で形成され、一方、それ以外の各シールリップ11や保持リップ12、13及びカバーリップ17のリップ本体19などがオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等の軟質の材料で形成されているが、これらの材質は一例にすぎず、必要に応じて他の材料、例えば合成ゴムなどに置換可能である。
【0051】
以上説明した実施形態に基づくドアウエストウエザーストリップとしては、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
【0052】
その一つの態様は、自動車用ドアのドアウエスト開口部に位置するドアインナパネルのフランジ部に装着されて、前記ドアウエスト開口部と昇降式のドアガラスとの間をシールするドアウエストウエザーストリップであって、
前記ドアインナパネルのフランジ部に嵌合保持される横断面逆U字形状の取付基部と、前記取付基部の車外側側壁からドアガラス側に向かって突出形成された上側および下側のガラスシールリップと、前記取付基部の上端壁に立設されて、ドアトリムが前記取付基部の上方から被装された際に前記ドアトリムの裏面に当接するカバーリップと、を備え、
前記カバーリップは、上下幅方向の所定位置に、前記ドアトリムが前記取付基部の上方から被装された際に屈曲点となる変形可能部を有している。
【0053】
この発明の態様によれば、組み付け時において、ドアトリムの端末部を取付基部の上方から被装すると、カバーリップは、ドアトリムの自重によって先端部がドアトリムの裏面に当接しつつ変形可能部から圧縮方向へ撓み変形する。このとき、カバーリップは、ドアトリムに対して押し上げる方向へ弾性的な反力が作用する。これにより、カバーリップの先端部がドアトリムの裏面に弾接して密着状態になる。
【0054】
したがって、例えば、ドアインナパネルに形成されたドアトリム固定用のクリップ孔の形成位置が上下にばらついてドアインナパネルに対するドアトリムの組み付けのばらつきや、ドアトリムやドアウエストウエザーストリップ単体の製造上のばらつきがあったとしても、カバーリップによるドアトリムとの間のシール性能や遮音性の低下を十分に抑制できる。
【0055】
さらに好ましくは、前記変形可能部は、自由状態において車室側に突出したく字形状に折曲形成されている。
【0056】
この発明の態様によれば、変形可能部が自由状態において予めく字形状に形成されていることから、ドアトリムが被装されてドアトリムの裏面がカバーリップの先端部を押圧すると、該カバーリップは変形可能部から折り畳まれるように圧縮方向(潰れ方向)へ変形し易くなり、この弾性反力によって先端部がドアトリムの裏面に密着状態に弾接する。これにより、ドアトリムとの間のシール性能や遮音性能の低下を抑制できる。
【0057】
さらに好ましくは、前記カバーリップは、前記取付基部の上端壁に対して剛性部を介して設けられている。
【0058】
この発明の態様によれば、前述のように、ドアトリムが被装された際に該ドアトリムの自重によってカバーリップに対して圧縮方向の押圧力が作用すると、この押圧力が剛性部によって受け止められる。これによって、カバーリップの弾性反力がさらに大きくなって、カバーリップの先端部がドアトリムの裏面にさらに強く圧接して両者間の良好なシール性能などを確保できる。
【0059】
さらに好ましくは、前記ドアインナパネルのフランジ部に係止孔が形成されている一方、前記取付基部の車外側側壁の内面に前記係止孔の孔縁に当接する凸部が一体に設けられている。
【0060】
この発明の態様によれば、前述したドアトリムが被装されると、その自重によって、カバーリップが変形可能部から圧縮変形すると共に、取付基部にドアインナパネルのフランジ部を中心として倒れ方向の回転力が働くが、この回転を前記凸部が係止孔の孔縁に当接して規制する。これによって、取付基部の無用な傾きが抑えられることから、取付基部のフランジ部に対する安定した保持ができると共に、カバーリップの弾性反力の低下を抑制できる。この結果、カバーリップとドアトリムとの間のシール性能や遮音効果を高めることができる。
【0061】
さらに好ましくは、前記係止孔の上側孔縁に車外方向へ突出した舌片が設けられている一方、前記取付基部の車外側側壁の内面に前記舌片に係止する係止凸部が一体に設けられている。
【0062】
この発明の態様によれば、取付基部をフランジ部に取り付けた際に、前記係止孔の舌片に取付基部の係止凸部が係止することから、取付基部をフランジ部に対して強固に保持できる。このため、取付基部に前記ドアトリムの自重によってカバーリップを介して回転力が作用しても、この過度な回転を規制することができる。
【0063】
さらに好ましくは、前記取付基部と該取付基部に一体に設けられた剛性部は、硬質な樹脂材または合成ゴム材によって形成されている。
【0064】
さらに好ましくは、前記ドアトリムの裏面側に、前記取付基部の車内側側壁方向に突出した突出部が設けられている一方、前記取付基部の車内側側壁の外面に、前記ドアトリムの自重によって前記取付基部が前記フランジ部を中心とした回転力が作用した際に、前記突出部に当接して前記回転を規制する規制突部が設けられている。
【0065】
この発明の態様によれば、ドアトリムが取付基部の上方から被装されると、該ドアトリムの突出部が取付基部の規制突部に当接してそれ以上の被装移動が規制され一方、逆に前記カバーリップがドアトリムの自重によって圧縮変形すると共に、取付基部にドアインナパネルのフランジ部を中心とした回転力(傾き力)が作用すると、前記規制突部が突出部に当接して取付基部の傾動を規制する。これによって、カバーリップによるシール性能などの低下を抑制できる。
【符号の説明】
【0066】
1…リアドア、2…ドアインナパネル、2a…フランジ部、2b…凹部片、2c…凸部片、2d…係止孔、2e…舌片、3…ドアトリム、3a…端末部、3b…裏面、4…ドアウエストウエザーストリップ、7…取付基部、7a…車外側側壁、7b…車内側側壁、8・9…上側、下側ガラスシールリップ、10…支持片、11…シールリップ、12・13…保持リップ、14…第1突起部、15…第2突起部、16…第3突起部、17…カバーリップ、18…基端部(剛性部)、18a…上端面、19…リップ本体、19a…先端部、19b…変形可能部。G1…昇降式のドアガラス
図1
図2
図3
図4
図5