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特許7431766分圧回路、負帰還回路、及びパワーオンリセット回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】分圧回路、負帰還回路、及びパワーオンリセット回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/07 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
H02M3/07
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021028126
(22)【出願日】2021-02-25
(65)【公開番号】P2022129460
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】松野 典朗
(72)【発明者】
【氏名】坂本 真吾
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0082684(US,A1)
【文献】特開2012-104948(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0112042(US,A1)
【文献】特開2018-133915(JP,A)
【文献】特開平07-298628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電位と基準電位との間に直列に接続された第1の容量及び第2の容量と、前記第1の容量と前記第2の容量との間から分圧電圧を出力する出力ノードと、を含む第1の分圧部と、
前記第1の容量及び第2の容量と略同一の静電容量比を有する第3の容量及び第4の容量と、第1スイッチと、前記第3の容量に並列接続される第2スイッチと、前記第4の容量に並列接続される第3スイッチとを有し、前記第3の容量、前記第4の容量、及び前記第1スイッチが直列に接続され、前記第1の分圧部に並列に接続される第2の分圧部と、
前記出力ノードと、前記第3の容量と前記第4の容量の接続ノードと、の間に設けられた第4スイッチと、
を備え、
第1の期間において、前記第1スイッチが非導通状態に制御され、かつ、前記第2スイッチ及び第3スイッチが導通状態に制御され、かつ、前記第4スイッチが非導通状態に制御され、
前記第1の期間の後、第2の期間において、前記第1スイッチが導通状態に制御され、かつ、前記第2スイッチ及び第3スイッチが非導通状態に制御され、かつ、前記第4スイッチが非導通状態に制御され、
前記第2の期間の後、第3の期間において、前記第1スイッチが導通状態に制御され、かつ、前記第2スイッチ及び第3スイッチが非導通状態に制御され、かつ、前記第4スイッチが導通状態に制御され、
前記第3の期間の後、第4の期間において、前記第1スイッチが導通状態に制御され、かつ、前記第2スイッチ及び第3スイッチが非導通状態に制御され、かつ、前記第4スイッチが非導通状態に制御される、
分圧回路。
【請求項2】
前記第1及び第2の容量のそれぞれは、並列接続されたn(nは2以上の整数)個の容量で構成され、
前記第1の容量を構成するn個の容量と、前記第2の容量を構成するn個の容量と、を接続するn個のノードのそれぞれは、隣接するノードとスイッチを介して接続されており、
前記スイッチの導通状態は、前記第4スイッチと同じ状態に制御される、
請求項1に記載の分圧回路。
【請求項3】
前記第1の容量及び第2の容量は、MOS(Metal Oxide Silicon)トランジスタで構成されたMOS容量である、請求項1に記載の分圧回路。
【請求項4】
前記第1の容量は第1導電型のMOSトランジスタで構成されたMOS容量であり、前記第2の容量は前記第1導電型とは反対導電型である第2導電型のMOSトランジスタで構成されたMOS容量であり、
前記出力ノードは、前記第1導電型のMOSトランジスタのゲートと前記第2導電型のMOSトランジスタのゲートとが接続されたノードである、
請求項3に記載の分圧回路。
【請求項5】
前記第3の容量及び前記第4の容量は、MOM(Metal Oxide Metal)容量である、
請求項3に記載の分圧回路。
【請求項6】
請求項1に記載の分圧回路と、オペアンプとを備え、
前記オペアンプの出力電圧が、前記入力電位として前記分圧回路に入力され、前記分圧回路による分圧電圧が、前記オペアンプの負入力端子に入力される、
負帰還回路。
【請求項7】
請求項1に記載の分圧回路と、コンパレータとを備え、
前記分圧回路は、電源電圧を分圧して分圧電圧として出力し、
前記コンパレータは、前記分圧電圧と基準電圧とを比較し、比較結果に応じてリセット信号を生成する、
パワーオンリセット回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分圧回路、負帰還回路、及びパワーオンリセット回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シリコン薄膜等の半導体膜状に作成される、分圧回路を含む信号増幅装置が開示されている。特許文献1の図21には、従来技術として、抵抗分圧回路を含む信号増幅回路が開示されている。
【0003】
非特許文献1には、抵抗分圧回路を用いたパワーオンリセット回路の一般的な構成が開示されている。低消費電流のMCU(Micro Controller Unit)のスタンバイ電流は、トータルで1μA程度であり、10%(0.1μA)程度を電源電圧(VDD)モニタ用に使用することが考えられる。このような場合、電源電圧を3.3Vとすると、必要な抵抗値は33MOhmとなり、大きな回路面積が必要となる。
【0004】
また、特許文献2には、容量分圧回路を含む昇圧回路、及び降圧回路が開示されている。容量分圧を用いる場合、定常的な消費電力はなく、抵抗分圧を行う場合と比べて、回路面積を小さくすることができる。容量分圧回路は、リーク電流によって出力電圧がドリフトするため、特許文献2では抵抗分圧回路を間欠的に動作させて、上記ドリフトを補正している。間欠動作であるため、抵抗分圧回路の消費電流の時間平均値は小さい。尚、間欠動作を行うためのクロックにより消費電流が加算されるが、軽微であると考えられる。
【0005】
特許文献2に記載された技術を用いることで、抵抗分圧を用いた場合よりも回路面積や消費電力を小さくすることができる。しかし、分圧という単純な機能を実現するために要する消費電流、回路面積としては無視できないレベルであり、さらなる低消費電流化、低面積化が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-335059号公報
【文献】特許第3773718号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】テキサス・インスツルメンツ、”LP3470 Tiny Power On Reset Circuit”、[online]、<URL;http://www.tij.co.jp/jp/lit/ds/symlink/lp3470.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
パワーオンリセット回路、又はリテンションメモリ用のレギュレータなど、MCUのスタンバイ状態で動作する回路は、10nAオーダの消費電流で動作することが望ましいとされている。これらの回路には、信号モニタ用、若しくはフィードバック信号を生成するための分圧回路が必要である。10nAオーダの消費電流を実現するためには、抵抗分圧を用いた従来技術によると、回路面積を犠牲にするか、特殊なオプションプロセスを使用する必要があるという問題があった。
【0009】
一方、特許文献2に記載の技術は、定常的な消費電流がない容量分圧回路を主として用いることで、低消費電流化と小型化を図っている。しかしながら、当該技術は、容量分圧回路で発生するドリフトを補正するために間欠動作する抵抗分圧回路を用いているため、依然として10nAオーダの消費電流を実現するためには、大きな回路面積を必要とするという問題がある。
【0010】
また、特許文献2の図1に示された昇圧回路では、容量からのリーク電流は、主にスイッチSW2で生じる。抵抗分圧回路を動作させない場合、スイッチSW2の端子間電圧は分圧電圧と等しくなるため、リーク電流の発生は不可避である。このため、特許文献2に記載された技術によると、抵抗分圧回路の動作を高頻度化してリーク電流によるドリフトを補正するか、もしくはキャパシタC1及びC2の容量値を大きくすることによりリークによるドリフトを小さく抑える必要がある。しかし、前者は消費電流の増加につながり、後者は回路面積の増加につながるという問題がある。
【0011】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施の形態によれば、分圧回路は、入力電位と基準電位との間に直列に接続された第1の容量及び第2の容量と、前記第1の容量と前記第2の容量との間から分圧電圧を出力する出力ノードと、を含む第1の分圧部と、前記第1の容量及び第2の容量と略同一の静電容量比を有する第3の容量及び第4の容量と、第1スイッチと、前記第3容量に並列接続される第2スイッチと、前記第4容量に並列接続される第3スイッチとを有し、前記第3の容量、前記第4の容量、及び前記第1スイッチが直列に接続され、前記第1の分圧部に並列に接続される第2の分圧部と、前記出力ノードと、前記第3の容量と前記第4の容量の接続ノードと、の間に設けられた第4スイッチと、を備え、第1の期間において、前記第1スイッチが非導通に制御され、かつ、前記第2スイッチ及び第3スイッチが導通状態に制御され、かつ、前記第4スイッチが非導通状態に制御され、前記第1の期間の後、第2の期間において、前記第1スイッチが導通状態に制御され、かつ、前記第2スイッチ及び第3スイッチが非導通状態に制御され、かつ、前記第4スイッチが非導通状態に制御され、前記第2の期間の後、第3の期間において、前記第1スイッチが導通状態に制御され、かつ、前記第2スイッチ及び第3スイッチが非導通状態に制御され、かつ、前記第4スイッチが導通状態に制御され、前記第3の期間の後、第4の期間において、前記第1スイッチが導通状態に制御され、かつ、前記第2スイッチ及び第3スイッチが非導通状態に制御され、かつ、前記第4スイッチが非導通状態に制御される。
【発明の効果】
【0013】
前記一実施の形態によれば、分圧回路の小型化、又は低消費電流化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態1にかかる分圧回路の構成を示す図である。
図2】分圧回路に入力される制御信号を示す図である。
図3】実施の形態1の変形例1にかかる分圧回路の構成例を示す図である。
図4】実施の形態1の変形例1にかかる分圧回路の構成例を示す図である。
図5】実施の形態1の変形例2にかかる分圧回路の構成例を示す図である。
図6】実施の形態1の変形例4にかかる分圧回路の構成例を示す図である。
図7】実施の形態1の変形例4にかかる分圧回路の構成例を示す図である。
図8】実施の形態1の変形例5にかかる分圧回路の構成例を示す図である。
図9】実施の形態1の変形例5にかかる分圧回路の構成例を示す図である。
図10】実施の形態1の変形例6にかかる分圧回路の構成例を示す図である。
図11】実施の形態1の変形例7にかかる分圧回路の構成例を示す図である。
図12】実施の形態1の変形例7にかかる分圧回路の構成例を示す図である。
図13】実施の形態1の変形例7にかかる分圧回路の構成例を示す図である。
図14】実施の形態1の変形例8にかかる分圧回路の構成例を示す図である。
図15】実施の形態2にかかる負帰還回路の構成例を示す図である。
図16】分圧回路に入力される制御信号を示す図である。
図17】実施の形態2の負帰還回路の構成例を示す図である。
図18】実施の形態3にかかるパワーオンリセット回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、様々な処理を行う機能ブロックとして図面に記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU、メモリ、その他の回路で構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0016】
また、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0017】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる分圧回路の構成について、図1を用いて説明する。図1は、分圧回路10の構成を説明する図である。分圧回路10は、キャパシタC1、キャパシタC2、及び電圧ノードoutputを含む第1分圧部11と、キャパシタC3、キャパシタC4、スイッチSW1、スイッチSW2、及びスイッチSW3を含む第2分圧部12と、スイッチSW4とを備えている。分圧回路10は、スイッチSW1、SW2、SW3、及びSW4の導通、非導通を制御するコントローラをさらに備えていてもよい。
【0018】
第1分圧部11は、キャパシタC1と、キャパシタC2と、出力ノードoutputとを備えている。キャパシタC1は、第1の容量とも称される。キャパシタC2は、第2の容量とも称される。キャパシタC1及びキャパシタC2は、入力電位inputと基準電位VSSとの間に直列に接続されている。出力ノードoutputは、キャパシタC1とキャパシタC2との間から分圧電圧を出力する。つまり、分圧ノードoutputは、入力電位inputをキャパシタC1及びキャパシタC2の容量比で分圧した分圧電圧を出力する。キャパシタC1及びC2の静電容量は、所定の分圧比が得られるように選択されている。分圧電圧は、リークの為、時間とともにドリフトする。
【0019】
第2分圧部12は、キャパシタC3と、キャパシタC4と、スイッチSW1と、スイッチSW2と、スイッチSW3とを備えている。スイッチSW1は、第1スイッチとも称される。スイッチSW2は、第2スイッチとも称される。スイッチSW3は、第3スイッチとも称される。
【0020】
スイッチSW2は、キャパシタC3に並列に接続される。スイッチSW3は、キャパシタC4に並列に接続される。スイッチSW2を導通状態に制御すると、キャパシタC3に蓄積された電荷がリセット(放電)される。スイッチSW3を導通状態に制御すると、キャパシタC4に蓄積された電荷がリセットされる。
【0021】
キャパシタC3と、キャパシタC4と、スイッチSW1とは直列に接続されており、第1分圧部11(つまり、キャパシタC1及びC2)と並列に接続されている。スイッチSW1は、図1に示すようにキャパシタC3とキャパシタC4との間に設けられてもよい。また、スイッチSW1は、入力電位inputとキャパシタC3との間や、基準電位VSSとキャパシタC4との間に設けられていてもよい。
【0022】
キャパシタC3及びキャパシタC4の容量比は、キャパシタC1及びC2の容量比と略同一となっている。ここで、容量比は、完全に同一となっている必要はない。スイッチSW2およびスイッチSW3を非導通状態に制御した後、スイッチSW1を導通状態に制御すると、キャパシタC3及びキャパシタC4が充電される。そして、キャパシタC3とキャパシタC4の接続ノードの電位は、第1分圧部11の出力ノードoutputの電位と略同一となる。
【0023】
スイッチSW4は、第1分圧部11の出力ノードoutputと、第2分圧部12のキャパシタC3とキャパシタC4の接続ノードと、の間に設けられている。スイッチSW4を導通状態に制御すると、第2分圧部12を用いて、第1分圧部11の出力電圧を補正することができる。
【0024】
スイッチSW1、SW2、SW3及びSW4の導通状態は、後述する期間T1、期間T2、期間T3、及び期間T4を繰り返すように制御される。期間T1は第1の期間とも称され、期間T2は第2の期間とも称され、期間T3は第3の期間とも称され、期間T4は第4の期間とも称される。
【0025】
図2は、スイッチSW1、SW2、SW3、及びSW4を制御する制御信号φ1、φ2、及びφ3のタイミングチャートを示す図である。制御信号φ1は、スイッチSW1を制御するための制御信号である。制御信号φ2は、スイッチSW2及びSW3を制御するための制御信号である。制御信号φ3は、スイッチSW4を制御するための制御信号である。
【0026】
制御信号φ1、φ2、及びφ3は、HighレベルのときにスイッチSW1、SW2、及びSW3を導通状態に制御し、LowレベルのときにスイッチSW1、SW2、及びSW3を非導通状態に制御するものとする。動作チャートには、期間T1、期間T2、期間T3、及び期間T4が含まれている。
【0027】
期間T1において、制御信号φ1がLowレベルであり、制御信号φ2がHighレベルであり、制御信号φ3がLowレベルである。したがって、スイッチSW1は非導通状態に制御され、かつ、スイッチSW2及びスイッチSW3は導通状態に制御され、かつ、スイッチSW4は非導通状態に制御される。期間T1において、第2分圧部12のキャパシタC3及びキャパシタC4の電荷が放電されている。
【0028】
期間T1の後、期間T2において、制御信号φ1がHighレベルであり、制御信号φ2がLowレベルであり、制御信号φ3がLowレベルである。したがって、スイッチSW1が導通状態に制御され、かつ、スイッチSW2及びSW3が非導通状態に制御され、かつ、スイッチSW4が非導通状態に制御される。これにより、キャパシタC3及びC4が充電され、第2分圧部12は、分圧電圧を生成する。
【0029】
期間T2の後、期間T3において、制御信号φ1がHighレベルであり、制御信号φ2がLowレベルであり、制御信号φ3がHighレベルとなっている。したがって、スイッチSW1が導通状態に制御され、かつ、スイッチSW2及びSW3が非導通状態に制御され、かつ、スイッチSW4が導通状態に制御される。これにより、第1分圧部11の出力電圧が、期間T2で生成した分圧電圧で補正される。
【0030】
期間T3の後、期間T4において、制御信号φ1がHighレベルであり、制御信号φ2がLowレベルであり、制御信号φ3がLowレベルとなっている。したがって、スイッチSW1が導通状態に制御され、かつ、スイッチSW2及びSW3が非導通状態に制御され、かつ、スイッチSW4が非導通状態に制御される。これにより、第1分圧部11の分圧電圧と、第2分圧部12の分圧電圧とが、互いに独立に保たれた状態となる。期間T4の後、分圧回路10の状態は、期間T1に戻る。
【0031】
実施の形態1にかかる分圧回路によると、低消費電力と、小型化を両立させることができる。以下、効果を奏する理由について2つの観点から説明する。
【0032】
効果を奏する理由の1つ目は、リセット用のスイッチSW2及びSW3における消費電流が小さいことである。ここで、キャパシタC3及びC4のリセットに伴う捨て電荷と、リセット頻度(周波数)との積が、分圧動作に伴う消費電流となる。以下では、キャパシタC3及びキャパシタC4の面積が十分小さく、容量値が0.2pFである場合について検討する。VDDを3.3V、リセット頻度を1kHzと仮定すると、消費電流は(0.2pF//0.2pF)*3.3V*1kHz=0.33nAと、十分小さい値になる。したがって、分圧回路10によると、回路の小型化と、低消費電力とを両立できる。
【0033】
効果を奏する理由の2つ目は、キャパシタC1及びC2からなる第1分圧部11のリーク電流が小さいことである。動作の1サイクル(期間T1~T4)のうち、第1分圧部11と第2分圧部12とが独立に電圧を保持している期間T4が大きな割合を占めている。期間T4において、第1分圧部11による分圧電圧と、第2分圧部12の分圧電圧との間には、リークの違いによる僅かな電位差のみが存在している。したがって、期間T4において非導通状態に制御されているスイッチSW4のリーク電流が小さく抑えられ、キャパシタC1及びC2の電荷をより長い間保持することが可能となる。このことを利用して電圧ドリフトの補正頻度を下げることにより、分圧回路10は、消費電流を小さくすることができる。また、要求される電圧ドリフトの基準を満たすように補正頻度を設定した上で、より小型のキャパシタC1、C2、C3及びC4を用いることにより、回路の小型化、及び低消費電流化を図ることができる。
【0034】
(変形例1)
実施形態1の変形例1にかかる分圧回路について、図3及び図4を用いて説明する。変形例1にかかる分圧回路10は、キャパシタC1及びキャパシタC2を、面積を小さくすることができるMOS(Metal Oxide Semiconductor)容量としている。MOS容量は、MOSトランジスタで構成された容量である。また、変形例1にかかる分圧回路は、キャパシタC3及びC4を、精度が良く容量のバイアス依存性が小さくMOM(Metal Oxide Metal)容量とする。
【0035】
キャパシタC1及びC2は、図3に示すように両方がnMOS容量であってもよく、図4に示すように両方がpMOS容量であってもよい。図3では、キャパシタC1はnMOSトランジスタMN1で構成されており、キャパシタC2はnMOSトランジスタMN2で構成されている。図4では、キャパシタC1はpMOSトランジスタMP2で構成されており、キャパシタC2はpMOSトランジスタMP1で構成されている。
【0036】
キャパシタC1及びC2の容量比のばらつきによる分圧比の誤差は、キャパシタC3及びC4による補正動作により抑えられる。一方で、キャパシタC3及びC4の容量比のばらつきは、分圧比の精度に直結するため、小さいことが望ましい。また、リセット状態から充電を行うため、容量値のバイアス依存性が小さいことが求められる。
【0037】
変形例1にかかる分圧回路10は、キャパシタC1及びC2をMOS容量とし、キャパシタC3及びC4をMOM容量とすることにより、分圧比の正確さを保ちつつ、回路面積を小さくすることができる。
【0038】
(変形例2)
実施の形態1の変形例2にかかる分圧回路について、図5を用いて説明する。変形例2にかかる分圧回路10は、変形例1にかかる構成において、MOS容量の一方をnMOS容量、他方をpMOS容量としたものである。図5を参照すると、キャパシタC1はpMOSトランジスタMP1で構成されたpMOS容量であり、キャパシタC2はnMOSトランジスタMN1で構成されたnMOS容量である。出力ノードoutputは、pMOSトランジスタMP1のゲートと、nMOSトランジスタNM1のゲートとが接続されたノードである。
【0039】
変形例2にかかる分圧回路では、出力ノードoutputが、MOSトランジスタの拡散層と接続されないので、MOS容量における電荷のリークが抑制される。リークの抑制により容量値を低くし、あるいは補正頻度を減らすことができるため、分圧回路10は、低消費電力化と回路の小型化を実現できる。
【0040】
(変形例3)
変形例3にかかる分圧回路10は、変形例1及び2にかかる構成において、MOS容量とMOM容量とをチップ上で重ねて配置するものである。これにより、分圧回路10は、回路面積を削減することができる。
【0041】
具体的には、例えば、チップの配線層のうち、下から数えた第1層、及び第2層でMOS容量に関する配線を形成する。そして、第3層以上の層で、MOM容量に関する配線を形成する。MOS容量に関する配線の形成領域と、MOM容量に関する配線の形成領域とをオーバーラップさせることにより、分圧回路10は、回路面積を小さくすることができる。
【0042】
(変形例4)
実施形態1の変形例4にかかる分圧回路について、図6及び図7を用いて説明する。変形例4にかかる分圧回路10は、変形例2においてスイッチSW1~SW4をMOSトランジスタで実現した構成である。
【0043】
各スイッチの構成は、動作時の電位や素子特性を鑑みて決定することができる。図6及び図7では、スイッチSW1はpMOSトランジスタMP3で構成されており、スイッチSW2はpMOSトランジスタMP4で構成されており、スイッチSW3はnMOSトランジスタMN4で構成されている。スイッチSW4は、図6ではpMOSトランジスタMP5で構成されており、図7ではpMOSトランジスタMP5とnMOSトランジスタMN5をパラレル(並列)に接続したもので構成されている。
【0044】
各スイッチを構成するトランジスタのゲートには、当該スイッチがnMOSトランジスタであれば、図2に示した制御信号φ1~φ3のうち、対応するものが入力される。当該スイッチがpMOSトランジスタであれば、トランジスタのゲートには、制御信号φ1~φ3の相補であるφ1B~φ3Bのうち、対応するものが入力される。
【0045】
(変形例5)
実施の形態1の変形例5にかかる分圧回路について、図8及び図9を用いて説明する。変形例5にかかる分圧回路10は、図1に示した構成、変形例1の構成、変形例2の構成を基に、キャパシタC1及びC2のそれぞれを、2つのキャパシタに分割し、分割されたキャパシタの間にスイッチSW5を配置するものである。図8に示す構成は、図1に示す構成を基にしたものである。図9に示す構成は、変形例2の構成を基にしたものである。スイッチSW5は、制御信号φ3を用いて制御される。
【0046】
キャパシタC3及びC4は、電荷をリセットするためにスイッチSW2、又はSW3が並列に接続されている。したがって、スイッチが接続されていないキャパシタC11及びC21の方が、キャパシタC3及びC4よりも電荷のリークが少ない。上述した期間T4において非導通(オフ)状態に制御されるスイッチSW5の端子間には、キャパシタC11とキャパシタC21の接続ノードの電圧のドリフト分と、キャパシタC12とキャパシタC22の接続点の電圧のドリフト分と、の差分しかかからない。したがって、キャパシタC12及びキャパシタC22における電荷のリークはさらに小さく、分圧回路10は、出力される分圧電圧のドリフトをより小さくすることができる。
【0047】
(変形例6)
実施の形態1の変形例6にかかる分圧回路について、図10を用いて説明する。変形例6にかかる分圧回路は、図1に示した構成、変形例1の構成、変形例2の構成を基に、C1をC11~C1nにn分割し、C2をC21~C2nにn分割し、隣接する番号を持つ容量の間に、スイッチSW5~SW(n+3)を配置したものである。スイッチSW5~SW(n+3)は、制御信号φ3を用いて制御される。キャパシタC1及びC2のそれぞれは、並列接続されたn個(nは2以上の整数)の容量で構成される。
【0048】
図10は、C1及びC2をそれぞれ4分割したものである。キャパシタC11、C12、C13、及びC14は、キャパシタC1を4分割したものであり、それぞれpMOSトランジスタMP8、MP7、MP6、MP1で構成されている。キャパシタC21、C22、C23、及びC24は、キャパシタC2を4分割したものであり、それぞれnMOSトランジスタMN8、MN7、MN6、及びMN1で構成されている。
【0049】
キャパシタC11~C14と、キャパシタC21~C24とを接続するノードのそれぞれは、隣接するノードとスイッチSW5、スイッチSW6、又はスイッチSW7を介して接続されている。スイッチSW5~SW7の導通状態は、スイッチSW4と同じ状態に制御される。
【0050】
最適なnを選択することにより、変形例6にかかる分圧回路は、変形例5で述べた効果をさらに強調することができる。
【0051】
(変形例7)
実施の形態1の変形例7にかかる分圧回路について、図11図13を用いて説明する。変形例7にかかる分圧回路は、スイッチSW1の配置(挿入)箇所や、スイッチSW4のキャパシタC3及びC4側の接続箇所を、図1に示した構成から変化させたものである。上記挿入箇所や接続箇所は、自由度があり、設計事項である。
【0052】
スイッチSW1は、図11に示すように入力電位inputとキャパシタC3の間に配置されていてもよく、図12に示すようにキャパシタC4と基準電位VSSの間に配置されていてもよく、図13に示すように、キャパシタC3とC4の間に配置されていてもよい。スイッチSW4の一端は、図1に示すようにキャパシタC4側に接続されていてもよく、図13に示すようにキャパシタC3側に接続されていてもよい。
【0053】
(変形例8)
実施の形態1の変形例8にかかる分圧回路について、図14を用いて説明する。図1、及び変形例においてVSS基準で動作する構成を示したが、分圧回路10は、VDD基準で動作してもよい。また、分圧回路10は、VDDや、VSS以外の固定電位を基準として動作してもよい。図14は、VDD基準で動作する分圧回路を示す図である。
【0054】
(実施の形態2)
図15は、実施の形態1にかかる分圧回路を用いた負帰還回路100の構成を示す構成図である。なお、実施の形態2の説明において、実施の形態1と同等の構成要素については実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。実施の形態2にかかる負帰還回路100は、実施の形態1にかかる分圧回路10と、コントローラ20と、オペアンプ30とを備えている。オペアンプ30は、比較アンプとも称される。
【0055】
オペアンプ30の出力output1が、入力電位(入力電圧)inputとして分圧回路10に入力されている。分圧回路10は、入力された電圧を分圧する。そして、分圧回路10による分圧電圧が、オペアンプ30の負入力端子(マイナス入力)に入力(帰還)される。コントローラ20は、クロック源40が生成するクロックから、上述した制御信号φ1、φ2、及びφ3を生成する。
【0056】
図16は、クロックCLKと、制御信号φ1~φ3の波形とを例示するタイミングチャートである。クロックCLKの32サイクルが動作の1周期に対応している。クロックCLKに表記の1~32の数字はクロック数を表している。クロック1は、上述した期間T1に対応している。クロック4は、上述した期間T2に対応している。クロック5は、上述した期間T3に対応している。クロック6~32は、上述した期間T4に対応している。
【0057】
図16では、複数のスイッチが同時に切り替わることによる貫通電流を防止するために、期間T1と期間T2の間、及び期間T4と期間T1の間のそれぞれに、デッドタイム(クロック3とクロック1)が設けられている。
【0058】
負帰還回路100の更に具体的な実施例としては、LDO(Low Dropout)、及びレギュレータが挙げられる。クロック源40は、例えば、32kHzのLOCO(Low-Speed On-Chip Oscillator)であってもよい。
【0059】
図17は、図15に示した構成の変形例であり、LPF(Low Pass Filter)50が追加されている。分圧回路10は、分圧電圧のドリフトを間欠的に補正しているため、これに同期した出力電圧の揺れが不可避である。分圧回路10の出力outputは、LPF50を介してオペアンプ30のマイナス入力に入力される。これにより、負帰還回路100は、補正と同期した、出力電圧の揺れを低減することができる。
【0060】
実施の形態2にかかる負帰還回路は、実施の形態1にかかる分圧回路と同様に、回路の低消費電力化、又は小型化を実現できる。
【0061】
(実施の形態3)
図18は、分圧回路10を用いたパワーオンリセット回路100aの構成を示す構成図である。なお、実施の形態3の説明において、実施の形態1又は2と同等の構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。実施の形態3にかかるパワーオンリセット回路100aは、分圧回路10と、コントローラ20と、コンパレータ60とを備えている。
【0062】
分圧回路10は、電源電圧VDDを分圧して、分圧電圧としてコンパレータ60に入力する。コンパレータ60は、分圧回路10から入力された分圧電圧と、基準電圧(reference voltage)とを比較し、比較結果に応じてリセット信号RSTBを生成する。
【0063】
分圧回路10が容量電圧のドリフトを間欠的に補正するため、これに同期した、パワーオンリセット回路100aの出力電圧の揺れが不可避である。コンパレータ60は、この揺れによるリセット信号RSTBのチャタリングを防止するために、ヒステリシス特性を有していてもよい。
【0064】
実施の形態3にかかるパワーオンリセット回路は、実施の形態1にかかる分圧回路と同様に、回路の低消費電力化、又は小型化を実現できる。
【0065】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0066】
例えば、上記の実施の形態に係る分圧回路では、半導体基板、半導体層、拡散層(拡散領域)などの導電型(p型もしくはn型)を反転させた構成としてもよい。そのため、n型、及びp型の一方の導電型を第1の導電型とし、他方の導電型を第2の導電型とした場合、第1の導電型をp型、第2の導電型をn型とすることもできるし、反対に第1の導電型をn型、第2の導電型をp型とすることもできる。
【符号の説明】
【0067】
C1~C4、C11~C14、C21~C24 キャパシタ
SW1~SW4、SW5~SW7 スイッチ
10 分圧回路
11 第1分圧部
12 第2分圧部
20 コントローラ
30 オペアンプ
40 クロック源
50 LPF
60 コンパレータ
100 負帰還回路
100a パワーオンリセット回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18