(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】水素エネルギー供給システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240207BHJP
H01M 8/0606 20160101ALI20240207BHJP
H01M 8/04228 20160101ALI20240207BHJP
H01M 8/04303 20160101ALI20240207BHJP
H01M 8/04007 20160101ALI20240207BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20240207BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20240207BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20240207BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240207BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/04 J
H01M8/0606
H01M8/04228
H01M8/04303
H01M8/04007
H01M8/0432
H01M8/04746
H01M8/12 101
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2021035596
(22)【出願日】2021-03-05
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】松野 雄史
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-062004(JP,A)
【文献】特開平01-320775(JP,A)
【文献】特開2020-007592(JP,A)
【文献】特開2004-158221(JP,A)
【文献】特開2005-324584(JP,A)
【文献】特開2007-287704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
C25B 1/00-9/77
13/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1区画室に収容され、水素を製造する水素製造装置と、
前記第1区画室とは区画された第2区画室に収容され、前記水素製造装置により製造された前記水素を貯蔵する水素貯蔵装置と、
前記第1区画室に収容され、前記水素貯蔵装置に貯蔵された前記水素を用いて発電を行う燃料電池装置と、
前記水素製造装置から前記水素貯蔵装置に前記水素を供給する第1供給管と、
前記水素貯蔵装置から前記燃料電池装置に前記水素を供給する第2供給管と、
前記第2区画室に収容され、前記第1供給管内の流路を開閉可能な第1開閉手段と、
前記第2区画室に収容され、前記第2供給管内の流路を開閉可能な第2開閉手段と、
前記第1区画室内の空気を前記第2区画室に排出する換気装置と、
前記第1区画室および前記第2区画室とは区画された第3区画室に収容され、前記第1開閉手段、前記第2開閉手段および前記換気装置を制御する制御装置と、を備え、
前記第1区画室に、外部の空気を吸引する吸気開口が設けられ、
前記第2区画室の天井に、前記第2区画室内の空気を外部に排出する排気開口が設けられている、水素エネルギー供給システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記水素製造装置および前記燃料電池装置の停止時、前記第1開閉手段および前記第2開閉手段を閉じるとともに、前記換気装置を停止する、請求項1に記載の水素エネルギー供給システム。
【請求項3】
前記第2区画室と前記第3区画室は、仕切り板で区画され、
前記仕切り板の上端は、前記制御装置よりも高い位置に配置されている、請求項1または2に記載の水素エネルギー供給システム。
【請求項4】
前記燃料電池装置は、前記水素製造装置よりも前記吸気開口の側に配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の水素エネルギー供給システム。
【請求項5】
前記第3区画室に収容され、前記水素製造装置、前記燃料電池装置および前記換気装置に駆動電力を供給する分電装置を更に備えた、請求項1~4のいずれか一項に記載の水素エネルギー供給システム。
【請求項6】
前記燃料電池装置を冷却する電池冷却装置を更に備え、
前記電池冷却装置は、前記燃料電池装置から熱を回収した熱媒体が内部に流れる熱交換部と、前記熱交換部に前記第1区画室内の空気を冷却媒体として供給する空気供給部と、前記熱交換部に供給された前記空気を前記第2区画室に排出する排出部と、を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の水素エネルギー供給システム。
【請求項7】
前記排出部内の流路を開閉可能な排出開閉装置を更に備えた、請求項6に記載の水素エネルギー供給システム。
【請求項8】
前記第1区画室内の温度を計測する空気温度計測器を更に備え、
前記制御装置は、前記空気温度計測器により計測された温度計測値が第1閾値よりも高い場合、前記換気装置を駆動するとともに前記排出部の流路を閉じるように、前記換気装置および前記排出開閉装置を制御する、請求項7に記載の水素エネルギー供給システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記空気温度計測器により計測された温度計測値が前記第1閾値よりも高い第2閾値よりも高い場合、前記換気装置を駆動するとともに前記排出部の流路を開くように、前記換気装置および前記排出開閉装置を制御する、請求項8に記載の水素エネルギー供給システム。
【請求項10】
前記水素製造装置を冷却する水素製造冷却装置を更に備え、
前記水素製造冷却装置は、前記水素製造装置から回収した熱を前記第1区画室内に排出する、請求項1~9のいずれか一項に記載の水素エネルギー供給システム。
【請求項11】
前記吸気開口に設けられたガラリを更に備えた、請求項1~10のいずれか一項に記載の水素エネルギー供給システム。
【請求項12】
前記吸気開口に設けられ、吸引される前記空気から塩分を捕集するフィルタを更に備えた、請求項1~11のいずれか一項に記載の水素エネルギー供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、水素エネルギー供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電または風力発電等の自然エネルギー(または再生可能エネルギー)を用いた発電から得られる電力は変動が大きい。このため、平準化を図るために、発電から得られた電力は貯蔵される場合がある。一例として、水素を用いて電力を貯蔵し、貯蔵された水素を電力エネルギー等に変換して外部に供給する水素エネルギー供給システムが知られている。このような水素エネルギー供給システムにおいては、外部電源から供給される電力を用いて水素が製造され、製造された水素が貯蔵される。貯蔵された水素は、必要に応じて燃料電池において電力エネルギーに変換される。このため、水素を用いた電力の貯蔵は、大規模かつ長期間行うことができる。
【0003】
水素製造装置と燃料電池は、風雨による影響を受けることを防止可能な一つの筐体内に設置される場合がある。水素は可燃性ガスであるため、万が一に水素が漏洩した場合に備えて筐体には換気装置が設置されている。換気装置を駆動することによって、漏洩した水素を拡散させて希釈させることができる。また、筐体内の温度を外気の温度に近づけることができ、筐体内の温度上昇を抑制することができる。
【0004】
しかしながら、換気装置を駆動し続けると、電力が消費され続けるという問題がある。水素エネルギー供給システムの換気装置には、水素を爆発下限値の4.0vol%未満に希釈するために、高い換気能力が要求される。このため、多くの電力が消費され得る。また、換気装置の駆動によって、騒音が発生するという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-187154号公報
【文献】特開2020-7592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実施の形態は、このような点を考慮してなされたものであり、換気のための消費電力を低減することができるとともに換気による騒音を低減することができる水素エネルギー供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施の形態による水素エネルギー供給システムは、水素製造装置と、水素貯蔵装置と、燃料電池装置と、第1供給管と、第2供給管と、第1開閉手段と、第2開閉手段と、換気装置と、制御装置と、を備えている。水素製造装置は、第1区画室に収容され、水素を製造する。水素貯蔵装置は、第1区画室とは区画された第2区画室に収容され、水素製造装置により製造された水素を貯蔵する。燃料電池装置は、第1区画室に収容され、水素貯蔵装置に貯蔵された水素を用いて発電を行う。第1供給管は、水素製造装置から水素貯蔵装置に水素を供給する。第2供給管は、水素貯蔵装置から燃料電池装置に水素を供給する。第1開閉手段は、第2区画室に収容され、第1供給管内の流路を開閉可能になっている。第2開閉手段は、第2区画室に収容され、第2供給管内の流路を開閉可能になっている。換気装置は、第1区画室内の空気を第2区画室に排出する。制御装置は、第1区画室および第2区画室とは区画された第3区画室に収容され、第1開閉手段、第2開閉手段および換気装置を制御する。第1区画室に、外部の空気を吸引する吸気開口が設けられている。第2区画室の天井に、第2区画室内の空気を外部に排出する排気開口が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
実施の形態によれば、換気のための消費電力を低減することができるとともに、換気による騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態による水素エネルギー供給システムを示す概略平面図である。
【
図2】
図2は、
図1の水素エネルギー供給システムを示す概略部分縦断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2の実施の形態による水素エネルギー供給システムを示す概略平面図である。
【
図4】
図4は、
図3の電池冷却装置を示す概略縦断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第3の実施の形態による水素エネルギー供給システムを示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本実施の形態による水素エネルギー供給システムについて説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
まず、
図1および
図2を用いて、本実施の形態による水素エネルギー供給システム1の構成について説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態による水素エネルギー供給システム1は、外部電源の電力エネルギーを用いて水素を製造して貯蔵し、必要に応じて、貯蔵した水素を用いて燃料電池で発電するように構成されている。
図1に示すように、本実施の形態による水素エネルギー供給システム1は、第1筐体11と、第2筐体12と、水素製造装置30と、水素貯蔵装置31と、燃料電池装置32と、第1供給管33と、第2供給管34と、第1開閉手段35と、第2開閉手段36と、換気ファン37(換気装置)と、分電盤38(分電装置)と、制御盤39(制御装置)と、を備えている。
【0013】
第1筐体11は、水素製造装置30および燃料電池装置32を収容する第1区画室13を有している。第1筐体11は、屋根を有しており、第1区画室13に雨水が浸入することを防止している。また、第1筐体11は、床板と、第1区画室13を囲む側壁と、を有している。第1筐体11は、後述する吸気開口14以外には、外部の空気が第1区画室13内に浸入することを防止するように構成されている。
【0014】
第1筐体11には、外部の空気を吸引する吸気開口14が設けられている。換気ファン37が駆動されることにより、第1区画室13内の圧力が負圧になり、これによって、外部の空気が吸気開口14から吸引される。
【0015】
第2筐体12は、第2区画室15および第3区画室16を有している。第2区画室15には、水素貯蔵装置31、第1開閉手段35および第2開閉手段36が収容されている。第3区画室16には、分電盤38および制御盤39が収容されている。
【0016】
第2区画室15と第3区画室16は、仕切り板17によって区画されている。
図2に示すように、仕切り板17の上端17aは、制御盤39よりも高い位置に配置されている。図示しないが、仕切り板17の上端17aは、制御盤39よりも高い位置であって、分電盤38よりも高い位置に配置されている。仕切り板17の上端17aは、第2区画室15および第3区画室16の天井、すなわち第2筐体12の天板18に接続されていてもよい。
図1に示すように、本実施の形態による仕切り板17は、上方から見たときにL字状に形成されており、第2筐体12の側板19と後述する共通壁23とに接続されている。第2区画室15は、仕切り板17と共通壁23とによって区画され、第3区画室16も、仕切り板17と共通壁23とによって区画されている。仕切り板17には、第2区画室15と第3区画室16との間で空気を流すための開口は形成されていない。
【0017】
図2に示すように、第2筐体12の天板18に、排気開口20が設けられている。第2筐体12の天板18に、多数の排気開口20が形成されていてもよい。排気開口20は、第2区画室15の天井に形成されるとともに、第3区画室16の天井に形成されている。第2区画室15の天井に形成された排気開口20は、第2区画室15内の空気を外部に排出する。第3区画室16の天井に形成された排気開口20は、第3区画室16内の空気を外部に排出する。
【0018】
図2に示すように、第2筐体12の下端には、外部の空気を導入する導入開口21が設けられている。第2筐体12は、図示しないフレーム部材上に固定されている。第2筐体12の下端に、外部に連通する導入開口21を有する床板22が形成されていてもよい。あるいは第2筐体12の下端に床板22が設けられずに、第2筐体12の下端が開口することによって、外部に連通する大きな導入開口21が形成されていてもよい。
図2においては、第2区画室15の下端に形成された導入開口21が示されているが、第3区画室16の下端にも導入開口21が形成されている。
【0019】
第1筐体11と第2筐体12は、一体に構成されていてもよい。例えば、第1筐体11の内部空間と第2筐体12の内部空間は、共通壁23によって区画されていてもよい。共通壁23は、第1筐体11の構成部材であるとともに第2筐体12の構成部材であってもよい。第1筐体11と第2筐体12は、ワンパッケージとして一体に構成されていてもよい。共通壁23によって、第1区画室13と第2区画室15が区画されるとともに、第1区画室13と第3区画室16が区画されている。
【0020】
水素製造装置30は、第1区画室13に収容されている。水素製造装置30は、外部電源から供給される電力エネルギーを用いて水を電気分解し、水素を製造する。水素製造装置30には、例えば、AEM(アニオン交換膜型)の水電解装置が用いられてもよい。水素製造装置30は、製造された水素を水素貯蔵装置31に供給する水素ブロワ(図示せず)を含んでいてもよい。あるいは、水素製造装置30において水素製造時に発生する水素の圧力で水素貯蔵装置31に水素を貯蔵できる場合には、水素ブロワの代わりに、電気で開閉操作される弁(図示せず)などを用いてもよい。この場合、弁を開くことにより、水素製造装置30において発生した水素を水素貯蔵装置31に貯蔵することができる。
【0021】
水素製造装置30に電力エネルギーを供給する外部電源は、太陽光発電または風力発電等の自然エネルギー(または再生可能エネルギー)を用いた発電方式で発生した電力を供給する電源であってもよい。この場合には、発電時に変動を有していた電力エネルギーを平準化することができる。しかしながら、このことに限られることはなく、外部電源は、原子力発電または火力発電等の自然エネルギー以外の発電方式で発生した電力を供給する電源であってもよい。また、水素製造装置30は、上述のような外部電源における余剰電力が供給されて、水素を製造するようにしてもよい。
【0022】
水素貯蔵装置31は、第2区画室15に収容されている。水素貯蔵装置31は、水素製造装置30により製造された水素を貯蔵する。水素貯蔵装置31は、水素を貯蔵する水素貯蔵材料を含んでいてもよい。水素貯蔵材料には、常温および常圧近傍において可逆的な水素の吸蔵および放出が可能な水素吸蔵合金が用いられてもよい。水素を放出する際には、図示しない温水循環器から供給された温水によって水素貯蔵材料を加熱してもよい。水素貯蔵装置31は、排気開口20を有する第2区画室15に収容されるため、風雨による影響を受けることを防止可能に構成されている。
【0023】
燃料電池装置32は、第1区画室13に収容されている。燃料電池装置32は、水素貯蔵装置31に貯蔵された水素を用いて発電を行う。燃料電池装置32は、図示しないが、燃料電池と、空気ブロワと、水素ブロワと、空気フィルタと、電池制御部と、を含んでいる。燃料電池は、酸素含有ガスと水素含有ガスとを用いて発電を行う。燃料電池には、固体高分子型燃料電池(PEFC)、固体酸化物型燃料電池(SOFC)、または他のタイプの燃料電池等、任意のタイプを採用することができる。空気ブロワは、酸素含有ガスとしての空気を燃料電池に供給する。燃料電池に供給される空気は、第1区画室13内の空気であってもよい。水素ブロワは、燃料ガスとしての水素ガスを、水素貯蔵装置31から燃料電池に供給する。空気フィルタは、燃料電池に供給する空気をろ過して、塵または硫黄酸化物(SOx)等の酸素と窒素以外の不純物を除去する。燃料電池において発電した電力は、分電盤38を介して外部に供給される。電池制御部は、燃料電池装置32を構成する上述した空気ブロワなどの各機器を制御する。燃料電池は発電時に発熱するため、発電時に冷却されてもよい。長時間の発電に対しては、空気または水を用いて燃料電池を冷却してもよい。
【0024】
図1に示すように、燃料電池装置32は、水素製造装置30よりも吸気開口14の側に配置されている。上方から見たときに、燃料電池装置32は、吸気開口14に対向する位置に配置されている。水素製造装置30は、燃料電池装置32よりも換気ファン37の側に配置されている。上方から見たときに、水素製造装置30は、換気ファン37に対向する位置に配置されている。吸気開口14から換気ファン37への空気の流れで見たときに、吸気開口14、燃料電池装置32、水素製造装置30および換気ファン37が、この順番で配置されている。
【0025】
第1供給管33は、水素製造装置30と水素貯蔵装置31に接続されており、水素製造装置30から水素貯蔵装置31に水素を供給する。第1供給管33は、共通壁23を貫通している。
【0026】
第2供給管34は、水素貯蔵装置31と燃料電池装置32に接続されており、水素貯蔵装置31から燃料電池装置32に水素を供給する。第2供給管34は、共通壁23を貫通している。
【0027】
なお、第1供給管33および第2供給管34等を構成する配管は、SUS304、SUS316L等のステンレス材料で形成されていてもよい。第1供給管33および第2供給管34はそれぞれ、複数の配管で構成されていてもよい。この場合、配管と配管との接続、および配管と機器との接続には、フランジ、シールテープを用いたねじ込み継手、または2圧縮リング継手等が用いられてもよい。水素は着火に要するエネルギーが小さく、静電気等でも着火する可能性がある。このため、水素が流れる配管は全て電気的に接地される。配管と配管との接続等に用いられるシールテープおよびパッキン等は導電性を有していないため、配管と配管とを配線で接続し、全ての配管および機器を電気的に接地する。配管に用いられる材料には、オーステナイト系ステンレスを用いてもよい。オーステナイト系ステンレスであるSUS316Lは、圧力が高い配管に用いられる場合がある。安価なオーステナイト系ステンレスであるSUS304は、圧力が低い配管に用いられる場合がある。
【0028】
第1開閉手段35は、第1供給管33に設けられている。第1開閉手段35は、第2区画室15に収容されている。すなわち、第1開閉手段35は、第1供給管33のうち第2区画室15内に位置する部分に設けられている。第1開閉手段35は、第1供給管33内の流路を開閉可能に構成されている。第1開閉手段35は、流路を電気で開閉可能な弁(例えば、電磁弁)であってもよい。第1開閉手段35は、制御盤39により制御されてもよい。第1開閉手段35は、無通電時に閉じるように構成されていてもよい。
【0029】
第2開閉手段36は、第2供給管34に設けられている。第2開閉手段36は、第2区画室15に収容されている。すなわち、第2開閉手段36は、第2供給管34のうち第2区画室15内に位置する部分に設けられている。第2開閉手段36は、第2供給管34内の流路を開閉可能に構成されている。第2開閉手段36は、電気で開閉可能な弁(例えば、電磁弁)であってもよい。第2開閉手段36は、制御盤39により制御されてもよい。第2開閉手段36は、無通電時に閉じるように構成されていてもよい。
【0030】
換気ファン37は、第1区画室13内の空気を第2区画室15に排出する。換気ファン37が駆動されると、第1区画室13内の空気が第2区画室15に排出される。このことにより、上述した吸気開口14から外部の空気が吸引される。このようにして、第1区画室13の換気が行われる。
【0031】
換気ファン37は、共通壁23に形成された換気開口24に連通しており、換気開口24を通って第2区画室15に空気を排出する。
図1においては、換気ファン37は、第1区画室13内に配置されており、共通壁23に取り付けられている。しかしながら、このことに限られることはなく、換気ファン37は、第1区画室13内の空気を排出することができれば、第2区画室15内に配置されていてもよい。
図2に示すように、換気ファン37は、第1区画室13の上部に存在し得る水素を第2区画室15に排出できるように、共通壁23の上部に取り付けられていてもよい。
【0032】
換気ファン37は、所望の流量の空気を排出可能な風量性能を有していてもよい。例えば、換気ファン37は、水素製造装置30、燃料電池装置32、第1供給管33または第2供給管34から水素が全て漏洩したとしても、第1区画室13内の空気を、水素の爆発下限値である4.0vol%未満まで希釈できる程度の風量性能を有していてもよい。
【0033】
換気ファン37の出口(または、換気開口24)は、上方から見たときに、仕切り板17と第2筐体12の側板19に囲まれている。このことにより、第2区画室15の天井に形成された排気開口20を介して外部から換気ファン37の出口に向かう風が吹いて、第2区画室15から換気ファン37の出口に空気が流れ込むことを防止できる。このため、換気ファン37から第2区画室15に排出される空気の流れが阻害されることを防止でき、水素エネルギー供給システム1を安全に運用することができる。
【0034】
図1に示すように、換気ファン37の出口(または、換気開口24)は、水素貯蔵装置31の直上に配置されていない。
図1に示す例では、水素貯蔵装置31は、換気ファン37よりも、換気ファン37に対向する仕切り板17の部分に近い位置に配置されており、換気ファン37から離れている。このことにより、水素貯蔵装置31から万が一に水素が漏洩したとしても、漏洩した水素が、換気ファン37の出口に達することを抑制している。
【0035】
分電盤38は、第3区画室16に収容されている。分電盤38は、水素製造装置30、燃料電池装置32および換気ファン37に駆動電力を供給する。水素製造装置30に供給される駆動電力は、分電盤38を介して外部電源に接続されている。また、分電盤38は、燃料電池装置32において発電された電力を、外部に供給する。
【0036】
制御盤39は、第3区画室16に収容されている。制御盤39は、水素製造装置30、水素エネルギー供給システム1の運転を制御する制御中枢として機能する。より具体的には、制御盤39は、水素製造装置30、水素貯蔵装置31、燃料電池装置32、第1開閉手段35、第2開閉手段36、換気ファン37および分電盤38を制御する。制御盤39は、例えば、中央演算処理装置(CPU)、記憶装置および入出力装置等で構成されたマイクロコンピュータであってもよい。制御盤39は、水素エネルギー供給システム1に設けられた各種センサ(図示せず)からの信号を受信する。受信した信号と、予め記憶装置に記憶された制御ロジック(プログラム)に基づいて、水素エネルギー供給システム1の各構成機器(水素製造装置30、燃料電池装置32および換気ファン37等)に制御指令を送信する。このようにして、制御盤39は、水素エネルギー供給システム1の運転および停止に必要な全ての動作を統括制御する。
【0037】
本実施の形態においては、制御盤39は、水素製造装置30および燃料電池装置32の停止時、第1開閉手段35および第2開閉手段36を閉じるとともに、換気ファン37を停止するように、第1開閉手段35、第2開閉手段36および換気ファン37を制御してもよい。例えば、換気ファン37は、水素製造装置30および燃料電池装置32を停止させてから一定時間駆動させた後に停止してもよい。この場合、第1区画室13の換気を十分に行った後に換気ファン37を停止させることができる。また、換気ファン37を停止してから一定時間経過した後に、第2開閉手段36を閉じてもよい。この場合、換気ファン37の回転が十分に減速してから第2開閉手段36を閉じることができる。
【0038】
次に、このように構成された本実施の形態の作用について説明する。
【0039】
水素製造装置30の運転時または燃料電池装置32の運転時、換気ファン37が駆動される。このことにより、第1区画室13内の空気が第2区画室15に排出され、外部の空気が吸気開口14から第1区画室13に吸引される。このため、第1区画室13内で水素が万が一に漏洩した場合であっても、漏洩した水素を拡散させて希釈させることができるとともに、第2区画室15に排出することができる。また、第1区画室13内の温度を外気の温度に近づけることができ、第1区画室13内の温度上昇を抑制することができる。
【0040】
吸気開口14から吸引された空気は、燃料電池装置32の周囲および水素製造装置30の周囲をこの順番に流れて、換気ファン37に達する。一般に、水素製造装置30はエネルギー変換効率が低く、発熱が多い。しかしながら、本実施の形態では、燃料電池装置32が、水素製造装置30よりも上流側に配置されているため、水素製造装置30の発熱の影響を受けることを抑制できる。
【0041】
第2区画室15に排出された空気は、第2区画室15の天井に形成された排気開口20から外部に排出される。水素は、空気よりも比重が小さいため、第1区画室13から第2区画室15に排出される空気に水素が混合している場合であっても、水素は容易に排気開口20から排出される。また、第2区画室15に収容されている水素貯蔵装置31から水素が漏洩した場合であっても、漏洩した水素は、空気よりも比重が小さいため、第2区画室15の天井に形成された排気開口20から外部に排出される。
【0042】
このようにして、換気ファン37を駆動することにより、第1区画室13を換気することができる。このため、水素が漏洩した場合であっても、漏洩した水素を希釈することができ、水素の濃度を爆発下限値未満に低下させることができる。このため、第1区画室13内で、火花(またはアーク)などが発生したとしても水素が着火することを防止できる。
【0043】
ここで、分電盤38および制御盤39の電気回路には、動作時に火花を発生させる電気接点が設けられている。水素の濃度が爆発下限値以上である場合、電気接点で発生する火花によって水素が着火する可能性が考えられる。しかしながら、本実施の形態においては、分電盤38および制御盤39が、第3区画室16に収容されている。第3区画室16は、水素製造装置30および燃料電池装置32が収容された第1区画室13に対して区画されるとともに、水素貯蔵装置31が収容された第2区画室15に対して区画されている。このことにより、第3区画室16内に水素が浸入することを抑制でき、分電盤38および制御盤39において発生する火花によって水素が着火することを防止できる。分電盤38および制御盤39を第3区画室16に収容することにより、換気ファン37の電源が喪失された場合であっても、漏洩した水素が、第3区画室16に浸入することを抑制できる。
【0044】
一方、本実施の形態においては、水素製造装置30および燃料電池装置32の停止時には、換気ファン37を停止する。この場合、第1開閉手段35および第2開閉手段36は閉じる。
【0045】
水素製造装置30の停止時には、水素製造装置30から水素貯蔵装置31への水素の貯蔵を停止する。第1開閉手段35は、第2区画室15に収容されている。このことにより、第1供給管33のうち第1区画室13内に位置する部分に水素が流れることを防止できる。また、第1供給管33のうち水素製造装置30から第1開閉手段35の間の部分における水素の残留量は少ない。当該部分から第1区画室13内に水素が漏洩したとしても、水素の漏洩量は少ない。このため、第1区画室13が十分に大きな容積を有していれば、水素の爆発下限値未満に水素濃度を維持することができる。
【0046】
同様に、燃料電池装置32の停止時には、燃料電池装置32の水素ブロワを停止する。第2開閉手段36は、第2区画室15に収容されている。このことにより、第2供給管34のうち第1区画室13内に位置する部分に水素が流れることを防止できる。また、第2供給管34のうち第2開閉手段36から燃料電池装置32の間の部分における水素の残留量は少ない。当該部分から第1区画室13内に水素が漏洩したとしても、水素の漏洩量は少ない。このため、第1区画室13が十分に大きな容積を有していれば、水素の爆発下限値未満に水素濃度を維持することができる。
【0047】
水素製造装置30の停止時および燃料電池装置32の停止時においても、水素貯蔵装置31から水素が漏洩した水素は、第2区画室15の天井に形成された排気開口20から外部に排出される。この場合においても、漏洩した水素が、第3区画室16内に浸入することを抑制でき、分電盤38および制御盤39において発生する火花によって水素が着火することを抑制できる。
【0048】
このように本実施の形態によれば、第1区画室13に水素製造装置30および燃料電池装置32が収容され、第2区画室15に水素貯蔵装置31、第1開閉手段35および第2開閉手段36が収容されている。第1区画室13に外部の空気を吸引する吸気開口14が設けられ、第1区画室13内の空気は、換気ファン37によって第2区画室15に排出される。第2区画室15の天井に、空気を外部に排出する排気開口20が設けられている。このことにより、第1開閉手段35および第2開閉手段36を閉じた場合には、水素貯蔵装置31に貯蔵された水素が第1区画室13に漏洩することを防止できる。また、制御盤39は、第1区画室13および第2区画室15とは区画された第3区画室16に収容されている。このため、第1開閉手段35および第2開閉手段36を閉じる場合には、換気ファン37の駆動を不要にすることができる。この場合、換気のための消費電力を低減することができるとともに、換気による騒音を低減することができる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、制御盤39は、水素製造装置30および燃料電池装置32の停止時、第1開閉手段35および第2開閉手段36を閉じるとともに、換気ファン37を停止する。このことにより、水素貯蔵装置31に貯蔵された水素が第1区画室13に漏洩することを防止できる。このため、水素製造装置30及び燃料電池装置32の停止時に、換気ファン37を駆動することを不要にできる。この場合、換気のための消費電力を低減することができるとともに換気による騒音を低減することができる。
【0050】
また、本実施の形態によれば、第2区画室15と第3区画室16が仕切り板17で区画され、仕切り板17の上端17aが、制御盤39よりも高い位置に配置されている。水素は空気よりも比重が小さいため、第2区画室15から第3区画室16に水素が流入した場合であっても、流入した水素が制御盤39に達することを抑制できる。このため、第3区画室16に収容された制御盤39において発生する火花によって、水素が着火することを抑制できる。
【0051】
また、本実施の形態によれば、燃料電池装置32は、水素製造装置30よりも吸気開口14の側に配置されている。換気ファン37が駆動されると、吸気開口14から換気ファン37への空気の流れが形成される。このことにより、吸気開口14から換気ファン37への空気の流れで見たときに、燃料電池装置32を、水素製造装置30よりも上流側に配置することができる。このため、燃料電池装置32が、水素製造装置30の発熱の影響を受けることを抑制でき、燃料電池装置32の劣化を抑制することができる。
【0052】
また、本実施の形態によれば、第3区画室16に、分電盤38が収容されている。このことにより、第2区画室15から水素が流入することを抑制可能な第3区画室16に分電盤38を配置することができる。このため、分電盤38において発生する火花によって、水素が着火することを抑制できる。
【0053】
(第2の実施の形態)
次に、
図3および
図4を用いて、本発明の第2の実施の形態による水素エネルギー供給システムについて説明する。
【0054】
図3および
図4に示す第2の実施の形態においては、燃料電池装置が電池冷却装置によって冷却され、電池冷却装置が、熱交換部と空気供給部と排出部とを含む点が主に異なり、他の構成は、
図1および
図2に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、
図3および
図4において、
図1および
図2に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0055】
図3に示すように、本実施の形態における水素エネルギー供給システム1は、貯湯装置50と、電池冷却装置51と、排出開閉装置52と、空気温度計測器53と、水素製造冷却装置54と、を更に備えている。
【0056】
貯湯装置50は、燃料電池装置32の運転時に発生した熱を回収する。より具体的には、貯湯装置50には、燃料電池装置32において加熱された水がお湯として供給されて貯留される。例えば、貯湯装置50は、図示しないが、貯湯槽と、お湯温度計測器と、を含んでいてもよい。貯湯槽には、燃料電池装置32からライン55aを介してお湯が供給される。お湯温度計測器は、貯湯槽に貯留されたお湯の温度を計測する。貯湯槽に貯留されたお湯は、ライン55bを介して後述するラジエータ56に供給される。お湯温度計測器により計測されたお湯の温度が所定値よりも高い場合に、ラジエータ56に供給するようにしてもよい。さらに、ラジエータファン57を駆動してお湯を冷却してもよい。ラジエータ56を通過したお湯は、ライン55cを介して燃料電池装置32に供給されて加熱される。このようにしてお湯が、燃料電池装置32、貯湯装置50およびラジエータ56を循環する。お湯の循環のために、図示しないポンプが、1つ以上用いられてもよい。なお、図示しないが、燃料電池装置32において加熱されたお湯は、水素貯蔵装置31における水素放出時の加熱に利用してもよい。この場合、ラジエータ56の駆動頻度を低減させることができ、騒音および消費電力を低減することができる。
【0057】
貯湯装置50は、貯留されたお湯を、外部に供給可能に構成されていてもよい。この場合、水素エネルギーの利用効率を向上させることができる。また、貯湯装置50が、燃料電池の熱を回収するため、燃料電池を冷却することができる。このため、燃料電池の運転時間を長くすることができる。
【0058】
図3に示すように、第1筐体11には、2つの吸気開口14が形成されている。一方の吸気開口14は、
図1に示す吸気開口14と同様に、上方から見たときに、燃料電池装置32に対向する位置に配置されている。他方の吸気開口14は、上方から見たときに、貯湯装置50に対向する位置に配置されている。換気ファン37が駆動されると、各吸気開口14から換気ファン37への空気の流れが形成され、燃料電池装置32だけでなく貯湯装置50が、水素製造装置30の発熱の影響を受けることを抑制できる。また、貯湯装置50の周囲に温度が高い空気が滞留することを抑制できる。
【0059】
電池冷却装置51は、燃料電池装置32を冷却する。
図4に示すように、電池冷却装置51は、ラジエータ56と、ラジエータファン57(空気供給部)と、排出部58と、を含んでいてもよい。ラジエータ56は、アルミなどの金属の薄板で構成された複数枚のフィンを有しており、燃料電池装置32から熱を回収した熱媒体が内部に流れる熱交換部として機能する。熱媒体は、貯湯装置50に貯留されたお湯であってもよい。ラジエータファン57は、ラジエータ56に、第1区画室13内の空気を供給する。排出部58は、ラジエータ56に供給された空気を第2区画室15に排出する。排出部58は、空気の排出流路を有しており、排出流路は共通壁23に設けられた排出開口25に連通している。ラジエータファン57および排出部58は、第1区画室13の上部に存在し得る水素を第2区画室15に排出できるように、共通壁23の上部に取り付けられていてもよい。ラジエータ56およびラジエータファン57は、排出流路内に配置されていてもよい。なお、排出部58はラジエータ56への空気の流路を形成する部材であるため、ラジエータ56の近傍の部分と、ラジエータファン57の近傍の部分とで別部材で構成されていてもよい。
【0060】
このような構成により、ラジエータ56の内部に貯湯装置50から供給されるお湯が流れて、ラジエータファン57から供給される空気と上述したフィンを介して熱交換する。このことにより、お湯が冷却される。冷却されたお湯は、貯湯装置50に供給される。このため、貯湯装置50に貯留されたお湯が冷却され、燃料電池装置32を冷却することができる。このようにして、本実施の形態による電池冷却装置51は、貯湯装置50を介して燃料電池装置32を冷却する。燃料電池装置32を冷却することにより、燃料電池装置32の運転時間を長くすることができる。一方、ラジエータ56に供給された空気は、ラジエータ56の内部を流れるお湯と熱交換し、加熱される。加熱された空気は、排出部58および排出開口25を通って、第2区画室15に排出される。このようにして、電池冷却装置51のラジエータファン57を駆動することにより、第1区画室13の換気を行うことができる。
【0061】
図3に示すように、ラジエータファン57および排出開口25は、上方から見たときに、仕切り板17と第2筐体12の側板19に囲まれている。このことにより、第2区画室15の天井に形成された排気開口20を介して外部から排出開口25に向かう風が吹いて、第2区画室15から排出開口25に空気が流れ込むことを防止できる。このため、排出部58から第2区画室15に排出される空気の流れが阻害されることを防止でき、水素エネルギー供給システム1を安全に運用することができる。
【0062】
排出開閉装置52は、排出部58内の流路を開閉可能に構成されている。例えば、排出開閉装置52は、排出開口25を開閉可能なシャッターを含んでいてもよい。この場合、シャッターは、第2区画室15内に配置されてもよい。あるいは、排出開閉装置52は、排出部58内に配置される弁を含んでいてもよい。排出開閉装置52は、電気で開閉操作され、制御盤39により制御される。排出開閉装置52は、無通電時に開くように構成されていてもよく、あるいは、無通電時に閉じるように構成されていてもよい。排出開閉装置52を閉じることにより、風の侵入を防止でき、排出開閉装置52を開くことにより、水素が第1区画室13に残留することを低減することができる。
【0063】
空気温度計測器53は、第1区画室13内の温度を計測する。空気温度計測器53は、上方から見たときに、水素製造装置30と換気ファン37との間に配置されていてもよい。空気温度計測器53は、換気ファン37の近傍に配置されていてもよい。この場合、空気温度計測器53を、吸気開口14から換気ファン37への空気の流れにおける最も下流側に配置することができる。このことにより、第1区画室13において最も温度が高くなり得る位置に空気温度計測器53を配置することができる。このため、水素製造装置30および燃料電池装置32の劣化を効果的に防止することができる。
【0064】
制御盤39は、空気温度計測器53により計測された温度計測値が第1閾値T1よりも高い場合、換気ファン37を駆動するように換気ファン37を制御する。この場合、制御盤39は、排出部58の流路を閉じるとともにラジエータファン57を停止するように、排出開閉装置52およびラジエータファン57を制御する。このことにより、第1区画室13内の空気が第2区画室15に排出され、外部の空気が吸気開口14から第1区画室13に吸引される。このため、第1区画室13内の温度を低下させることができる。また、排出開閉装置52によって排出部58の流路が閉じられるため、排出部58を通って第2区画室15から第1区画室13に空気が逆流することを防止できる。なお、貯湯装置50に貯留されたお湯の温度が高いために電池冷却装置51のラジエータファン57が駆動されている場合には、排出部58の流路は閉じられなくてもよい。
【0065】
制御盤39は、空気温度計測器53により計測された温度計測値が、第1閾値T1よりも高い第2閾値T2よりも高い場合、換気ファン37を駆動するように換気ファン37を制御する。この場合、制御盤39は、排出部58の流路を開くとともにラジエータファン57を駆動するように、排出開閉装置52およびラジエータファン57を制御する。このことにより、第1区画室13内から第2区画室15に排出される空気の排出量を増大させることができるとともに、外部から第1区画室13に吸引される空気の吸引量を増大させることができる。このため、第1区画室13の換気量を増大させることができ、第1区画室13内の温度をより一層低下させることができる。
【0066】
制御盤39は、空気温度計測器53により計測された温度計測値が、第2閾値T2よりも高い第3閾値T3よりも高い場合、警報を発する。この場合、制御盤39は、換気ファン37およびラジエータファン57を駆動するとともに、排出部58の流路を開くように、換気ファン37、ラジエータファン57および排出開閉装置52を制御する。また、制御盤39は、水素製造装置30および燃料電池装置32を停止するとともに、第1開閉手段35および第2開閉手段36を閉じる。第3閾値T3は、水素製造装置30で用いられる樹脂材料または燃料電池装置32で用いられる樹脂材料の高温劣化特性に基づいて設定されてもよい。
【0067】
上述した温度計測値に基づく制御盤39の制御は、水素製造装置30および燃料電池装置32の運転状態に無関係に行われてもよい。すなわち、温度計測値に基づく制御盤39の制御は、水素製造装置30の運転時に行われてもよく、燃料電池装置32の運転時に行われてもよく、水素製造装置30および燃料電池装置32の停止時に行われてもよい。温度計測値に基づく制御により、第1筐体11に照射される直射日光によって第1区画室13内の温度が上昇した場合であっても、第1区画室13を換気して、第1区画室13内の温度を低減することができる。水素製造装置30の停止時および燃料電池装置32の停止時においても、第1区画室13内の温度が高くなることを防止できる。このため、水素製造装置30および燃料電池装置32の劣化を効果的に防止することができる。
【0068】
また、上述したように、第1閾値T1と第2閾値T2を用いて第1区画室13の換気を制御することにより、インバータなどを用いて換気ファン37の回転数を制御することを不要にできる。すなわち、上述した温度計測値に基づく制御は、第1区画室13の換気量について2段階の調整を行うことができる。このため、換気ファン37の回転数制御を行わない場合であっても、第1区画室13の換気量を簡易な構成で調整することができ、低コスト化を図ることができる。
【0069】
水素製造冷却装置54は、水素製造装置30を冷却する。水素製造冷却装置54は、第1区画室13内に配置されている。水素製造冷却装置54は、水素製造装置30から回収した熱を第1区画室13内に排出する。例えば、水素製造冷却装置54は、第1区画室13内の空気を用いて水素製造装置30を冷却するように構成されていてもよい。このことにより、水素製造冷却装置54は、水素を製造する際に発熱した水素製造装置30を冷却することができる。水素製造装置30から除去された熱は、第1区画室13内の空気に放出されてもよい。
【0070】
このように本実施の形態によれば、燃料電池装置32が電池冷却装置51によって冷却される。電池冷却装置51は、燃料電池装置32から熱を回収したお湯が内部に流れるラジエータ56と、ラジエータ56に第1区画室13内の空気を冷却媒体として供給するラジエータファン57と、ラジエータ56に供給された空気を第2区画室15に排出する排出部58と、を含んでいる。このことにより、お湯を冷却した空気を、第2区画室15に排出することができる。このため、第1区画室13の換気量を増大させることができる。
【0071】
また、本実施の形態によれば、排出部58内の流路が、排出開閉装置52によって開閉可能になっている。このことにより、ラジエータファン57の停止時に換気ファン37が駆動されている場合には、排出部58を通って第2区画室15から第1区画室13に空気が逆流することを防止できる。このため、換気ファン37により第1区画室13の換気が阻害されることを防止できる。この場合、第1区画室13内の水素濃度を効果的に低下させることができるとともに、第1区画室13内の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0072】
また、本実施の形態によれば、第1区画室13内の温度が第1閾値T1よりも高い場合、換気ファン37が駆動されるとともに排出部58の流路が閉じられる。このことにより、第1区画室13内の温度を低下させることができる。このため、水素製造装置30および燃料電池装置32が劣化することを防止することができる。
【0073】
また、本実施の形態によれば、第1区画室13内の温度が第1閾値T1よりも高い第2閾値T2よりも高い場合、換気ファン37が駆動されるとともに排出部58の流路を開く。このことにより、第1区画室13の換気量を増大させることができる。このため、第1区画室13内の温度の低下速度を高めることができる。このため、水素製造装置30および燃料電池装置32が劣化することを効果的に防止することができる。
【0074】
また、本実施の形態によれば、水素製造装置30は、水素製造冷却装置54によって冷却され、水素製造装置30から回収した熱が、第1区画室13内に排出される。このことにより、第1区画室13内に排出された熱は、換気ファン37を介して第2区画室15に向かう空気の流れによって第2区画室15に排出される。このため、水素製造装置30を効率よく冷却することができる。
【0075】
なお、上述した本実施の形態においては、電池冷却装置51が、貯湯装置50を介して燃料電池装置32を冷却する例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、電池冷却装置51は、直接的に燃料電池装置32を冷却するようにしてもよい。この場合、ラジエータ56の内部を流れる熱媒体を燃料電池装置32に供給して燃料電池の熱で加熱し、ラジエータ56において冷却媒体としての空気と熱交換させるようにしてもよい。
【0076】
(第3の実施の形態)
次に、
図5および
図6を用いて本発明の第3の実施の形態による水素エネルギー供給システムについて説明する。
【0077】
図5および
図6に示す第3の実施の形態においては、吸気開口にガラリが設けられるとともに、吸引される空気から塩分を捕集するフィルタが設けられている点が主に異なり、他の構成は、
図3および
図4に示す第2の実施の形態と略同一である。なお、
図5および
図6において、
図3および
図4に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0078】
図5に示すように、本実施の形態における水素エネルギー供給システム1は、ガラリ60と、フィルタ61と、を更に備えている。
【0079】
ガラリ60は、吸気開口14に設けられている。ガラリ60は、吸気開口14の外側に配置されている。
図6に示すように、ガラリ60は、外部に向かって斜め下方に延びる複数の板を含んでいる。複数の板は、上下方向に配列されている。
【0080】
図5に示すように、フィルタ61は、吸気開口14に設けられている。フィルタ61は、吸気開口14の外側であるが、ガラリ60の内側に配置されている。フィルタ61を吸気開口14の外側に配置することにより、比較的厚いフィルタ61が、吸気開口14の内側に配置されることを回避することができ、吸気開口14の内側のスペースを有効利用することができる。フィルタ61は、吸引される空気から塩分を捕集する。
【0081】
図示しないが、換気ファン37には、庇が設けられていてもよい。庇は、第2区画室15内に配置され、換気開口24に対応する位置で共通壁23に取り付けられていてもよい。このような庇を設けることにより、排気開口20から第2区画室15内に落下する雨水が、排出開口25に入り込むことを防止できる。このため、換気ファン37が水分によって損傷することを防止することができる。同様にして、排出部58にも庇が設けられていてもよい。庇は、第2区画室15内に配置され、排出開口25に対応する位置で共通壁23に取り付けられていてもよい。このため、空気供給部が水分によって損傷することを防止することができる。
【0082】
このように本実施の形態によれば、吸気開口14にガラリ60が設けられている。このことにより、吸気開口14の近傍に落下する雨水はガラリ60に衝突して、吸気開口14の外側に案内される。このため、吸気開口14から第1区画室13に雨水が入り込むことを防止できる。この場合、燃料電池装置32を、吸気開口14に近づけて配置することができ、第1区画室13をコンパクト化することができる。
【0083】
また、本実施の形態によれば、吸気開口14にフィルタ61が設けられ、吸引される空気から塩分が捕集される。このことにより、第1区画室13に塩分が浸入することを防止できる。この場合、燃料電池装置32の燃料電池に供給される酸素含有ガスに塩分が混入することを防止でき、塩分による燃料電池の劣化を防止できる。また、換気ファン37等の他の機器に塩分による錆が発生することを防止できる。このため、水素エネルギー供給システム1を、海に近い場所に設置することができる。
【0084】
以上述べた実施の形態によれば、換気のための消費電力を低減することができるとともに、換気による騒音を低減することができる。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内で、これらの実施の形態を、部分的に適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0086】
1:水素エネルギー供給システム、13:第1区画室、14:吸気開口、15:第2区画室、16:第3区画室、17:仕切り板、17a:上端、20:排気開口、30:水素製造装置、31:水素貯蔵装置、32:燃料電池装置、33:第1供給管、34:第2供給管、35:第1開閉手段、36:第2開閉手段、37:換気ファン、38:分電盤、39:制御盤、51:電池冷却装置、52:排出開閉装置、53:空気温度計測器、54:水素製造冷却装置、56:ラジエータ、57:ラジエータファン、58:排出部、60:ガラリ、61:フィルタ