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▶ イプスメッド・アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】生理的グルコースの閉ループ制御
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/172 20060101AFI20240207BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
A61M5/172 500
A61M5/142 520
A61M5/142 530
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021071574
(22)【出願日】2021-04-21
(62)【分割の表示】P 2019558688の分割
【原出願日】2018-05-03
(65)【公開番号】P2021106947
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2021-04-21
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-22
(31)【優先権主張番号】62/501,976
(32)【優先日】2017-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/536,541
(32)【優先日】2017-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520350258
【氏名又は名称】イプスメッド・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100147762
【弁理士】
【氏名又は名称】藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100221327
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 亮
(72)【発明者】
【氏名】ハイダル,アーマッド モハマド
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】安井 寿儀
【審判官】栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-500122(JP,A)
【文献】特開2014-204998(JP,A)
【文献】特開2005-315855(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0287184(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/172
A61M 5/142
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血糖を制御するためのシステムであって、
食事データを入力するためのユーザインターフェースであって、前記食事データが食事のサイズ及び食事の炭水化物含有量の推定値の1つ又は複数を含む、前記ユーザインターフェースと、
前記ユーザインターフェースに通信可能に結合されたコントローラであって、
前記ユーザインターフェースから前記食事データを受信することと、
状態ベクトルを定義することと、ここで、前記状態ベクトルは、前記患者の体内にある、インスリンの推定されたレベルを示すインスリン状態変数、炭水化物の推定されたレベルを示す炭水化物状態変数、および生理的グルコースの推定されたレベルを示す生理的グルコース状態変数を含む状態変数を含み、
前記状態ベクトルを時間(t)から時間(t+τ)に伝搬することと、
前記インスリン状態変数により示される前記インスリンの推定されたレベルを増加させることにより、前記伝搬された状態ベクトルを補正することと、ここで、前記インスリンの推定されたレベルは、前記食事データに少なくとも部分的に基づく量だけ増加され、
補正された前記伝搬された状態ベクトルに少なくとも部分的に基づき、インスリン投与量要求を決定することと、
前記インスリン投与量要求を送信することと
を行うように構成されている前記コントローラと
を含む前記システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記炭水化物状態変数により示される前記炭水化物の推定されたレベルを増加させることで、前記伝搬された状態ベクトルを補正するようさらに構成されており、前記炭水化物の推定レベルは、前記食事データに少なくとも部分的に基づく量だけ増加される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記伝搬された状態ベクトルをカルマンフィルタでフィルタリングするよう構成されている、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記炭水化物の推定されたレベルは、食事履歴に少なくとも部分的に基づく、請求項1~3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記炭水化物の推定されたレベルは、平均食事時間に少なくとも部分的に基づく、請求項1~3のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記平均食事時間は、食事時間の重み付け平均値であり、各食事時間は、その食事で消費された炭水化物の量によって重み付けされる、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記炭水化物の推定されたレベルは、最新の事前定義された期間中に食事が発生しなかった場合にはゼロである、請求項1~6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記炭水化物の推定されたレベルは、ある期間に事前定義された炭水化物量を超える食事が発生しなかった場合にはゼロである、請求項1~6のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記食事のサイズは、2つ以上の選択肢から選択された食事のサイズである、請求項1~8のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
前記インスリンの推定されたレベルの増加量は、インスリンの総日投与量に少なくとも部分的にさらに基づく、請求項1~9のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
前記インスリンの総日投与量は、前記ユーザインターフェースを介して入力される、または、前記患者への過去のインスリンの送達に基づき計算される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記コントローラに通信可能に結合され、かつ、前記患者のグルコースデータを送信するよう構成されたグルコース測定デバイスをさらに含む、請求項1~11のいずれかに記載のシステム。
【請求項13】
前記コントローラに通信可能に結合され、かつ、送信された前記インスリン投与量要求に基づきインスリンを送達するよう構成されたインスリン送達デバイスをさらに含む、請求項1~12のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年5月5日に出願された、仮出願第62/501,976号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、および2017年7月25日に出願された、仮出願第62/536,541(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に対する優先権を主張する。
【0002】
本開示は、生理的グルコース濃度の制御に関する。より具体的には、本開示は、患者の生理的グルコース濃度を制御するための閉ループシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
皮下インスリン補充療法は、糖尿病を制御するための最適なレジメンであることが証明されている。インスリンは、毎日複数回の注射または注入ポンプのいずれかを介して投与され、投与量は、血中グルコース計によって1日数回行われる毛細管グルコース測定によって通知される。この従来の手法は、日々の(および実際には瞬間的な)変動が大きくなる可能性があるため、不完全であることが知られている。さらに、この手法は、繰り返し指を刺すこと、食物摂取の厳密な監視、およびインスリン送達の用心深い制御を必要とするため、患者にとって負担となり得る。
【0004】
連続グルコースモニタ(CGM)などのグルコース測定デバイスの出現により、閉ループ人工膵臓(AP)システムを開発できる可能性が生まれている。APシステムは、注入ポンプに指示を与えるコントローラで実行される投与/制御アルゴリズムでCGMによって提供されるグルコースデータを使用し、ポンプは患者に薬剤を投与する。このようなシステムは、よりよい血糖コントロールの可能性を提供するため、糖尿病治療に革命を起こす可能性がある。さらに、このようなシステムは、警戒についての患者の要求を減らし、したがって、生活の質の向上を促進する。
【0005】
人工膵臓システムの一部の既存の制御アルゴリズムは、わずかな変動範囲内での動作に制限されるか(非適応コントローラの場合)、またはグルコース動態の急激な変化にゆっくりと反応するように制限されるかのいずれかである。いくつかの既存の制御アルゴリズムには、一般に人体にインスリンのモデルが含まれていないものもあれば、単一の固定モデルまたはゆっくりと適応するモデルであるモデルが含まれているものもある。これらの制限された制御アルゴリズムは、グルコース動態が一定であるか、またはゆっくりと変化する場合のいずれかでのみ、グルコース濃度を適切に制御することができる。現在のAPシステムには、グルコース動態の急激な変動だけでなく、緩やかな変化を特に処理するように設計された制御方法が欠けている。
【発明の概要】
【0006】
本開示の例示の実施形態によれば、患者に薬剤投与量を送達するように構成されている薬剤送達デバイスと、少なくとも1つのユーザ入力に基づいて、ユーザデータを生成するように構成されているユーザインターフェースとを含む、患者の血糖を制御するためのシステムが提供される。システムは、薬剤送達デバイスおよびユーザインターフェースと通信するコントローラをさらに含む。コントローラは、グルコース測定デバイスから、事前選択された間隔でグルコース信号を受信することを行うように動作可能な制御ロジックを含む。グルコース信号は、患者のグルコースレベルを表す。制御ロジックは、複数モデル予測コントローラアルゴリズムを実行して、薬剤投与量要求を決定し、かつ薬剤送達デバイスに薬剤投与量要求を送信するようにさらに動作可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示の上述および他の特徴および利点、ならびにそれらを達成する様式は、本発明の実施形態の以下の説明を添付の図面と併せて参照することによってより明らかになり、またよりよく理解されることとする。
【0008】
図1】生理的グルコースを制御するためのシステムの代表的なブロック図を示す。
図1A】生理的グルコースを制御するためのシステムの代表的なブロック図を示す。
図2】生理的グルコースを制御するためのシステムの代表的なブロック図を示す。
図3図1および図2のシステムの電子コントローラ上で実行するように構成されている、例示的なモデル予測制御アルゴリズムの例示的なブロック図を示す。
図4】最適な基礎インスリン偏差を計算する例示のブロック図を示す。
図5】例示的なコンパートメントモデルのブロック図を示す。
図6】関連付けられたモデルおよび共分散行列を使用した状態ベクトルの伝搬およびフィルタリングのブロック図を示す。
図7】共分散行列の実施例を示す。
図8】最適な基礎偏差が変更を必要とするかどうかを決定するために実行され得る、いくつかの例示の操作を詳細に説明するフローチャートを示す。
図9】グルカゴン投与量を決定するために実行され得る、いくつかの例示の操作を詳細に説明するフローチャートを示す。
図10】食事ボーラスで送達されるべき薬物(例えば、インスリン)の量を決定する際に適用され得る、様々な例示のロジックを詳細に説明するフローチャートを示す。
図11】患者のグルコースを制御するためにシステムで実行することができる、方法の例示的なフローチャートを示す。
図12】患者のグルコースを制御するためにシステムで実行することができる、方法の例示的なフローチャートを示す。
図13】患者のグルコースを制御するためにシステムで実行することができる、方法の例示的なフローチャートを示す。
図14】患者のグルコースを制御するためにシステムで実行することができる、方法の例示的なフローチャートを示す。
図15】患者のグルコースを制御するためにシステムで実行することができる、方法の例示的なフローチャートを示す。
図16】患者のグルコースを制御するためにシステムで実行することができる、方法の例示的なフローチャートを示す。
図17】患者のグルコースを制御するためにシステムで実行することができる、方法の例示的なフローチャートを示す。
図18】患者のグルコースを制御するためにシステムで実行することができる、方法の例示的なフローチャートを示す。
図19】患者のグルコースを制御するためにシステムで実行することができる、方法の例示的なフローチャートを示す。
図20】患者のグルコースを制御するためにシステムで実行することができる、方法の例示的なフローチャートを示す。
図21】患者のグルコースを制御するためにシステムで実行することができる、方法の例示的なフローチャートを示す。
図22】患者のグルコースを制御するためにシステムで実行することができる、方法の例示的なフローチャートを示す。
図23】患者のグルコースを制御するためにシステムで実行することができる、方法の例示的なフローチャートを示す。
図24】患者のグルコースを制御するためにシステムで実行することができる、方法の例示的なフローチャートを示す。
図25】患者のグルコースを制御するためにシステムで実行することができる、方法の例示的なフローチャートを示す。
図26】患者のグルコースを制御するためにシステムで実行することができる、方法の例示的なフローチャートを示す。
図27】患者のグルコースを制御するためにシステムで実行することができる、方法の例示的なフローチャートを示す。
図28】患者のグルコースを制御するためにシステムで実行することができる、方法の例示的なフローチャートを示す。
【0009】
複数の図面全体を通して、対応する参照符号は、対応する部品を示す。本明細書に記載される例証は、本発明の例示の実施形態を例示し、そのような例証は、いかなる様式においても本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
システムハードウェア
本明細書で使用する「ロジック」または「制御ロジック」という用語には、1つ以上のプログラマブルプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、ハードワイヤードロジック、またはそれらの組み合わせが含まれ得る。したがって、実施形態によれば、様々なロジックは、任意の適切な様式で実装され得、かつ本明細書で開示される実施形態に従っている。
【0011】
「薬物」または「薬剤」という用語は、限定されないが、インスリン、インスリンリスプロまたはインスリングラルギン等のインスリンアナログ、インスリン誘導体、デュラグルチドまたはリラグルチド等のGLP-1受容体アゴニスト、グルカゴン(Glucagon)、グルカゴン類似体、グルカゴン誘導体、胃抑制ポリペプチド(GIP)、GIP類似体、GIP誘導体、オキシントモジュリン類似体、オキシントモジュリン誘導体、治療用抗体、および注入セットによる輸送または送達が可能な任意の治療薬を含む、1つ以上の治療薬を指す。薬物送達デバイス内で使用される薬物は、1つ以上の賦形剤とともに処方されてもよい。薬物送達デバイスは、本明細書に一般的に記載されているような様式で動作して、薬物を人に送達する。
【0012】
本明細書では、生理的グルコースの閉ループ制御を提供するための方法が開示されている。システムの例示的なハードウェア要素には、体内の生理的グルコース濃度を測定するためのセンサ、ユーザデータを受信するためのユーザインターフェース、インスリンを送達するためのポンプ、およびデータを統合し、アルゴリズムを実行し、かつポンプを制御することを行うように動作可能である制御ロジックを含む電子コントローラが含まれる。さらに、様々な要素が互いに通信する場合がある。図1図1Aおよび図2は、生理的グルコースを制御するためのシステム10の例示的で代表的なブロック図を示す。システム10は、薬物送達デバイス12、ユーザインターフェース20、グルコースを測定するためのデバイス22、および電子コントローラ24を含む。
【0013】
薬物送達デバイス12は、例示的に注入ポンプ12である。例示的なポンプ12は、2013年3月7日に出願された、「Infusion Pump Assembly」という名称のLanigan et al.の米国特許出願第13/788,280号に記載されたものなどの歩行用注入ポンプを含む。ポンプ12は、第1の薬剤を含む少なくとも1つの薬剤リザーバ16を含むことができる。第1の薬剤は、生理的グルコースの制御に関与するホルモンであり得る。いくつかの特定の実施形態では、第1の薬剤は、インスリンなどの生理的グルコース濃度を低下させるホルモンであり得る。他の実施形態では、薬物送達デバイスは、SGLT-1またはSGLT-2などの経口薬剤と組み合わせて使用されてもよい。他の実施形態は、第1の薬剤に拮抗するホルモンであり得る、第2の薬剤用の追加のリザーバ16を含み得る。例えば、追加のリザーバ16に保存される第2の薬剤は、生理的グルコース濃度を上昇させる薬物またはグルカゴンなどのホルモンであり得る。別の実施例では、第2の薬剤は、GLP-1、プラムリンチド、アミリン、または別のアミリン類似体などの別の好適なグルコース管理薬物であり得る。本明細書におけるアミリンという用語の使用は、アミリンまたはその任意の類似化合物が使用され得ることを意味すると理解されるものとする。薬剤送達デバイス12は、ポンプ12から患者14への流体経路を提供する注入セット18を介して、患者14に少なくとも1つの薬剤を送達することができる。注入セット18は、例えば、ポンプ12から患者14内の皮下目的地への流体経路を提供することができる。いくつかの実施形態では、ポンプ12は、患者14内の皮下目的地への流体経路を提供する。ポンプ12または注入セット18は、患者の皮下組織に挿入するための針またはカニューレを含み得る。
【0014】
システム10は、グルコース測定デバイス22などの分析物センサを含む。グルコース測定デバイス22は、独立型デバイスであってもよいし、または歩行用デバイスであってもよい。グルコース測定デバイスの一実施例は、連続グルコースモニタ(CGM)22である。特定の実施形態では、CGM22は、Dexcom G4またはG5シリーズ連続グルコースモニタなどのグルコースセンサであってもよいが、任意の好適な連続グルコースモニタが使用されてもよい。CGM22は、例示的に患者14によって装着され、患者14内の生理的空間(例えば、間質または皮下空間)と通信し、またはそれを監視し、かつ患者14の分析物(例えば、グルコース)濃度を検知できる、1つ以上のセンサを含む。いくつかの実施形態では、CGM22は、間質液中のグルコース、例えば間質グルコース(IG)の濃度と関連付けられた値を報告する。CGM22は、IG値を表す信号を、ユーザインターフェース20、ポンプ12、コントローラ24、または別の受信機に送信することができる。
【0015】
システム10は、システム10にユーザデータを入力し、値を変更し、かつシステム10によって生成された情報、プロンプト、データなどを受信するために使用され得る、ユーザインターフェース(UI)デバイス20を含む。UI20は、英数字データをコントローラ24に提供するためのキーボードまたはキーパッドなどの入力デバイスを含むことができる。キーボードまたはキーパッドには、良好な視力なしでの使用を容易にする触覚インジケータ、または照明なしで使用するためのバックライト付きキーが含まれ得る。UI20は、デバイスと通信するためのボタンまたはスイッチを含むことができる。一実施例では、UI20は、食事、運動の開始、運動の終了、緊急停止などのイベントを知らせるボタンまたはスイッチを有する。いくつかの実施形態では、UIは、ディスプレイを備えたグラフィカルユーザインターフェース(GUI)であり、ここで、ユーザは、提示された情報、メニュー、ボタンなどと相互作用して、システム10から情報を受信し、かつシステム10に情報を提供する。UI20は、UI20と相互作用するためのポインター、ローラーボール、およびボタンを含むことができる。加えて、UI20は、画像およびテキストを表示することができ、タッチを介して入力を検出することができるタッチスクリーン上に実装され得る。UI20は、専用デバイスであってもよいし、または電話、タブレットなどの個人用スマートデバイス上で実行されるアプリケーションまたはアプリを介して実装されてもよい。UI20は、ポンプ12およびCGM22と通信してもよい。ポンプ12およびCGM22はまた、互いに通信していてもよい。
【0016】
コントローラ24は、薬物送達デバイス12(図2を参照)に、またはポンプ12の外部、例えば、UI20(図1を参照)に含まれてもよい。代替的に、UI20およびポンプ12は各々、コントローラ24を含むことができ、システム10の制御は、2つのコントローラ24の間で分割されてもよい。コントローラ24は、コントローラ24のメモリに格納されたソフトウェアおよび/またはファームウェアを実行する、少なくとも1つのプロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ)を含むことができる。ソフトウェア/ファームウェアコードは、プロセッサによって実行されると、コントローラ24に本明細書に記載の制御アルゴリズムの機能を実施させる命令を含む。代替的に、コントローラ24は、1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、ハードワイヤードロジック、またはそれらの組み合わせを含み得る。コントローラ24は、システム10の複数の構成要素から情報を受信し、かつその情報(例えば、ポンプデータ、グルコースデータ、薬物送達データ、ユーザデータ)を、ポンプ12の動作を部分的に制御することができる少なくとも1つの薬物送達制御パラメータを決定する制御アルゴリズム内に供給することができる。いくつかの特定の実施形態では、コントローラ24は、ポンプ12からポンプデータを、CGM22からグルコースデータを、およびUI20からユーザデータを受信し得る。受信されたポンプデータは、ポンプ12によって患者14に送達された薬物投与量に対応する薬物送達データを含み得る。ポンプデータは、投与量が送達されるときに、または所定のスケジュールでポンプ12によって供給されてもよい。コントローラ24によって受信されたグルコースデータは、CGM22からのグルコース濃度データを含むことができる。グルコースデータは、時折または事前定義された間隔(例えば、5分または10分ごと)で、連続的な速度で供給されてもよい。
【0017】
図1Aは、システム10の例示的な実装形態を示している。コントローラ24は、薬物送達デバイス12およびUI20とは別個のものとして示されているが、コントローラ24は、薬物送達デバイス12またはUI20のいずれかに物理的に組み込まれていてもよい。システム10内のその物理的位置に関係なく、コントローラ24は、薬物送達デバイス12、UI20、およびCGM22に直接的または間接的に通信可能に結合されるように示されている。コントローラ24は、1つ以上の通信リンク28を介して、薬物送達デバイス12、UI20、およびCGM22に通信可能に結合するために、1つ以上のインターフェース26を含むか、または通信可能に結合されてもよい。例示的なインターフェース26は、有線および無線の信号送信機および受信機を含む。例示的な通信リンク28は、有線通信リンク(例えば、シリアル通信)、例えば、ブルートゥース、IEEE802.11、独自の無線プロトコルなどの短距離無線リンクなどの無線通信リンク、および/または同様のものなどを含む。「通信リンク」という用語は、少なくとも2つのデバイス間で少なくとも1つの方向に何らかのタイプの情報を通信する能力を指し得る。通信リンク28は、持続的通信リンク、断続的通信リンク、アドホック通信リンクおよび/または同様のものであり得る。情報(例えば、ポンプデータ、グルコースデータ、薬物送達データ、ユーザデータ)は、通信リンク28を介して送信され得る。薬物送達デバイス12、UI20、およびCGM22はまた、1つ以上の通信リンク28を介して、システム10内の他のデバイスに通信可能に結合するための1つ以上のインターフェースを含み得る。
【0018】
図1Aは、メモリ30と、1つ以上のインターフェース26に、および互いに通信可能に結合されたプロセッサ32とを含む、コントローラ24を示す。メモリ30は、揮発性および/または不揮発性メモリの形態のコンピュータ可読記憶媒体を含むことができ、取り外し可能、取り外し不能、またはそれらの組み合わせとすることができる。実施形態では、メモリ30は、プロセッサ32に、本明細書で説明するシステム構成要素の実施形態の態様を実施させ、ならびに/または方法の実施形態の態様、および以下でより詳細に説明される制御ロジックを含む、本明細書で説明される手順を実行させるための実行可能命令34(例えば、コンピュータコード、機械使用可能命令など)を格納する。メモリ30、プロセッサ32、およびインターフェース26は、1つ以上のバスによって通信可能に結合されてもよい。
【0019】
上述のように、UI20は、専用デバイス(例えば、システム10用に特別にプログラム化されたハンドヘルドユーザデバイス)であってもよく、または例えば、電話、タブレットなどの個人用スマートデバイス上で実行するアプリケーションまたはアプリを介して実装されてもよい。UI20は、入力デバイス36(例えば、ボタン、スイッチ)およびGUIを表示するディスプレイ38を含み得る。ユーザは、入力デバイス36およびディスプレイ38と相互作用して、システム10に情報を提供することができる。
【0020】
ポンプデータ、グルコースデータ、薬物送達データ、およびユーザデータは、取得されたときにコントローラ24に、事前定義されたスケジュールで提供されるか、またはメモリでキューに入れられ、要求時にコントローラ24に提供され得る。ユーザデータは、UI20によって生成され、および/または訓練中に指示されるように患者14によって言明されたユーザ/患者プロンプトに応じて、UI20に入力され得る。いくつかの実施形態では、ポンプデータ、グルコースデータ、および/またはユーザデータのうちの少なくとも一部は、コントローラ24と関連付けられたメモリから取り出されてもよく、このデータの一部は、ポンプ12内のメモリから取り出されてもよい。いくつかの実施形態では、UI20とのユーザ相互作用は最小限であってもよく、患者14は、コントローラ24によって実装されるアルゴリズムの実行を開始し、かつ食事および/または運動の告知を提供するように促される。他の実施形態では、コントローラ24によって実装されるアルゴリズムを初期化するために、様々な追加データを提供するようにユーザに促すことができる。
【0021】
コントローラ24のメモリは、プロセッサによってアクセス可能な任意の好適なコンピュータ可読媒体である。メモリは、単一のストレージデバイスまたは複数のストレージデバイスであり得、コントローラ24の内部または外部に配置され得、さらに揮発性および不揮発性の両方の媒体を含み得る。例示的なメモリには、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、電気的消去可能プログラマブルROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)または他の光ディスクストレージ、磁気ストレージデバイス、またはデータを保存するように構成され、かつコントローラ24によってアクセス可能な任意の他の好適な媒体が含まれる。
【0022】
ユーザデータには、インスリン/炭水化物の比率、食事のサイズ、食事の炭水化物の比率、および運動が含まれ得るが、これらに限定されない。ユーザデータはまた、本明細書でインスリン必要量データと称される一群のデータを含んでもよい。インスリン必要量データには、1日の総インスリン投与量(TDD)、1日の合計基礎投与量(TDB)、基礎投与量、および基礎プロファイルが含まれ得るが、これらに限定されない。例示の実施形態では、TDDは、24時間にわたって送達されるすべてのインスリンの合計であり、TDBは、24時間にわたって送達されるすべての基礎インスリンの合計である。一実施形態では、TDBは、TDDから食事ボーラスの合計を引いたものにほぼ等しい。例示の実施形態では、基礎投与量は、事前定義された期間にわたってユーザが必要とする開ループまたは公称インスリン投与量である。一実施例では、基礎投与量は、CGMからコントローラによって受信されたグルコース測定間の各期間または間隔の持続時間に対してユーザが必要とするインスリンの量である。別の実施例では、時間tでの基礎投与量は、時間tでの基礎プロファイルである。例示の実施形態では、基礎プロファイルは、24時間の経過にわたる事前定義された時変インスリン流量である。一実施例では、基礎プロファイルは、インスリン流量のリスト、または流量と時間のペアのリストとして表されてもよい。別の実施例では、基礎プロファイルは、方程式として表されてもよい。これらのユーザデータ値のうちの1つ以上は、必要に応じてUIから更新されてもよい。いくつかの実施形態では、TDDおよびTDBは、コントローラによって定期的に更新され、ここで、値は、1日以上にわたってユーザに供給される総インスリンおよび基礎インスリンの記録量に基づいている。いくつかの実施形態では、TDDおよび/またはTDBは、臨床医またはユーザによってユーザインターフェースで入力されるか、またはコントローラによって読み取り可能なメモリに記憶されてもよい。
【0023】
コントローラ24によって決定される少なくとも1つの薬物送達パラメータは、薬剤投与量(複数可)であり得、これは、ポンプ12を介した患者14への薬物投与を少なくとも部分的に管理し得る。インスリン送達の場合、薬物送達パラメータを使用して、基礎速度または微量ボーラス投与量、食事ボーラス投与量または食事ボーラス適用量が計算され得る。デュアルホルモンシステムでは、データは、インスリン、およびグルカゴンまたはアミリンなどの第2の薬剤のいずれかまたはその両方の送達を通知し得る。一実施形態では、ポンプ12に提供される薬物送達パラメータは、特定の量またはボリュームの薬剤を送達するようにポンプに要求する制御信号である。一実施形態では、薬物送達パラメータは、ポンプ12が薬剤の量もしくはボリュームまたはいくつかのポンプストロークに変換する、アナログまたはデジタル信号である。いくつかの実施形態では、薬物送達パラメータは、基礎インスリン投与量または基礎インスリンプロファイルの現在値からの偏差である。偏差は、インスリンの量もしくはボリューム、または基礎インスリン投与量の割合であり得る。したがって、システム10は、血糖制御を行うために初期起動後に患者14からの相互作用を最小限に抑えるか、または全く必要としない、閉ループ設定で動作し得る。
【0024】
本明細書における生理的グルコースという用語は、体内のグルコースの測定濃度を指す。いくつかの実施形態では、生理的グルコースは、血中グルコースと称されることもある血液中のグルコースの濃度であり得る。他の実施形態では、生理的グルコースは、血漿グルコースと称されることがある血漿中のグルコースの濃度であり得る。血漿グルコースの測定では、血液の血球が除去されているため、血漿グルコースの測定値は通常、血中グルコースよりも10~12%高くなる。血漿グルコースと血中グルコースとの間の関係は、ヘマトクリットに依存し、患者ごとに、かつ経時的に変化することができる。本明細書ではPGと省略される生理的グルコースは、間質グルコースおよび略称IGと称される間質液中のグルコース濃度を測定することにより、間接的に測定され得る。
【0025】
例示の実施形態では、システム10は、基礎送達またはボーラス送達としてインスリンを身体に供給することができる。基礎送達は、患者の血液中のグルコースレベルを所望のレベルに維持するために、患者が必要とする基礎速度でのインスリンの連続送達である。インスリン送達デバイス12は、微量ボーラスまたは基礎投与量で基礎送達を提供し得、その後、基礎速度に平均化されるゼロ流量の期間が続く。一実施例では、インスリン送達デバイスは、固定間隔で基礎投与量を供給し、基礎投与量は、所望の基礎速度に間隔の継続時間を掛けたものに等しい。食事を食べるなどの活動、またはユーザの代謝に影響を与える他の活動の変化により、ユーザはより多量のインスリンを必要とする場合がある。このより多量のインスリンは、本明細書では食事ボーラスと称される。食事ボーラスは、一般に短期間に供給される特定の量のインスリンである。インスリン送達デバイスの性質は、ある期間のインスリンの連続的な流れとして、またはある期間にわたって供給される一連のより小さな別個のインスリン量として、ボーラスを送達することを必要とする場合がある。消化器系が大量のグルコースを血流に供給するため、食事ボーラスは、グルコースレベルの維持を促進する。
【0026】
MMPCアルゴリズム
マルチモデル予測コントローラ(MMPC)は、複数の状態ベクトルおよびそれらのモデルをモデル予測制御アルゴリズムと組み合わせる、人工膵臓アルゴリズムを実行するコントローラ24の制御ロジックを含む。MMPCは、複数の状態ベクトルを伝搬し、かつ過去のデータに最適な状態ベクトルおよびそのモデルを選択することにより、モデル予測コントローラの身体および環境の変化に対する適応性を向上させる。次に、選択状態ベクトルおよびそのモデルをモデル予測コントローラで使用して、インスリンの次の基礎レートまたは基礎投与量を決定し、それを所望の生理的グルコースレベルを達成するために患者に送達する。複数の状態ベクトルおよびそれらのモデルを使用すると、代謝、消化、活動の変化、または他の変化に対するアルゴリズムの応答性が向上する。
【0027】
MMPCは、モデル、グルコースデータ、およびカルマンフィルタ付きの共分散行列を使用して、各時間間隔で状態ベクトルの各々を伝搬する。いくつかの実施形態では、MMPCは一定期間にわたる各状態ベクトルの以前の値を保持し、各状態ベクトルが伝搬されて、各状態ベクトルの最新値を生成するにつれて、各状態ベクトルの最も古い値が上書きされる。いくつかの実施形態では、各状態ベクトルの最新値のみが、メモリに保存される。各状態ベクトルは、一意のモデルおよび一意の共分散行列と関連付けられている。MMPCは、過去の期間における間質グルコース(IG)の状態変数がIGの測定値とどれだけ一致しているかに基づいて、最適な状態ベクトルおよびそのモデルを選択する。次に、MMPCは、選択状態ベクトルおよびそのモデルを、モデル予測コントローラで使用する。MMPCは、選択状態ベクトルを予測ホライズンに伝搬し、生理的グルコース値の予測セットを経時的に生成する。対応する時間における1組の予測グルコース値は、本明細書では予測軌道と称される。MMPCは、生理的グルコース軌道および目的関数を使用して、インスリン値に1つ以上の制限がある最適なインスリン軌道を決定する。
【0028】
いくつかの実施形態では、最適なインスリン軌道は、本明細書では基礎偏差軌道と称される、基礎インスリンまたは基礎プロファイルからの偏差の軌道である。これらの実施形態では、身体に送達されるインスリンの量は、事前定義された基礎インスリンに、インスリン軌道から決定された最適な基礎偏差を加えたものである。これらの実施形態では、モデルは、基礎インスリン入力または内因性グルコース産生を含まない。むしろ、モデルおよび目的関数は、食事に対する身体の反応と、事前定義された基礎インスリン速度を超えるまたは下回るインスリンレベルを考慮する。
【0029】
予備インスリン速度、投与量、または最適な基礎偏差は、第1の間隔のインスリン軌道の値から取得される。MMPCは、速度または投与量要求を送達デバイスに渡す前に、この予備インスリン速度、投与量または最適な基礎偏差を制限してもよい。最適なインスリン軌道が基礎プロファイルからの偏差である実施形態では、投与量要求は、制限された基礎偏差と基礎プロファイルの合計である。制限されたインスリン速度、制限された投与量、または制限された基礎偏差は、次いで、次の間隔でのインスリン速度または投与量を決定するためのインスリン入力として、ブロック110Aの複数の状態ベクトルにフィードバックされる。例示的なMMPCは、UI20からユーザデータを受信し、CGM22からグルコース濃度データを受信し、ポンプ12が患者14に送達するための薬剤の量を決定する。
【0030】
図3および図4は、IGデータを規則的に受信し、1つ以上の状態モデルを使用して、最適なインスリン投与量を決定し、プロセスを繰り返す前に対応する投与量要求をインスリンポンプ12に送信する、MMPCアルゴリズム100の代表的なブロック図を示している。MMPCアルゴリズム100は、ブロック105Aにおいて、患者の身体または他のグルコース測定デバイスに配置された連続グルコースモニタ(CGM)から間質グルコース(IG)の測定値を受信する。ブロック110Aで、MMPCアルゴリズムは、その関連付けられたモデルを使用して、各状態ベクトルを伝搬すること、ブロック105AからのIGデータを使用して、カルマンフィルタで状態ベクトルをフィルタリングすること、ならびに食事炭水化物および食事ボーラスを状態ベクトルに追加して、更新された状態ベクトルを生成することを含む、各状態ベクトルを伝搬する。
【0031】
いくつかの実施形態では、MMPCアルゴリズム100は、ブロック120で最適な基礎偏差を決定することにより、グルコースデータ105Aを受信し、状態ベクトル110Aを伝搬するステップに続く。他の実施形態では、グルコースデータを受信し、状態ベクトルを伝搬するステップは、ブロック120で最適な基礎偏差を計算する前に、ブロック105Bおよび110Bで繰り返される。IGデータまたはグルコースデータが、受信され(105A、105B)、更新された状態ベクトルが、モデル更新期間(τUPD)102に等しい規則的な間隔で計算される(110A、110B)。更新期間の長さは、グルコースセンサ22からの出力間の期間に等しくてもよい。
【0032】
注入期間(τINJ)には、最適な基礎偏差を決定し120、インスリン制限をチェックし130、投与量を要求する135前に、グルコースデータを受信し、状態ベクトルを伝搬する少なくとも1組が含まれる。状態ベクトルが注入期間ごとに1回伝搬される実施形態では、注入期間は更新期間に等しい。グルコースデータが注入期間ごとに2回受信される(例えば、ブロック105Aおよび105B)実施形態では、グルコースデータを受信し、状態ベクトルを伝搬するステップが繰り返され、注入期間は更新期間の2倍に等しい。いくつかの実施形態では、注入時間は固定され、更新時間はCGM22の出力に基づいて変化する可能性があるため、グルコースデータを受信する間の時間が注入時間より短い場合、状態ベクトルは、インスリン送達または注入の間で複数回伝搬され得る。いくつかの実施形態では、グルコースセンサ22からのグルコースデータが利用できないか、またはグルコースデータが信頼できない場合、ブロック120の最適な基礎偏差の決定に進む前に、カルマンフィルタステップを伴わないで状態ベクトルが伝搬される110。
【0033】
ブロック120は、基礎プロファイルからの最適な偏差を決定して、患者の生理的グルコースを制御し、ブロック135は、最適な偏差および基礎プロファイルに基づいて、患者に新しいインスリン基礎速度または投与量を送達するように、ポンプ12に要求する。ブロック120において、MMPCアルゴリズム100は、過去の所与の期間にわたってグルコースデータを推定する決定された最良の記録を有する、状態ベクトルおよびモデルを選択する。さらに、ブロック120において、MMPCアルゴリズム100は、選択された状態ベクトルおよびモデル予測アルゴリズムのモデルを使用して、次の最適な基礎偏差を決定する。次の最適な基礎偏差の決定は、ブロック115からのユーザデータを含んでもよい。基礎プロファイルからの最適な偏差は、ブロック130に渡され、ここで、最適な偏差は1つ以上の規則によって制限されてもよい。すなわち、最適な基礎偏差がそのインスリン閾値を超える場合、偏差の値は、インスリン閾値の値に変更される。ブロック130のインスリン閾値または制限は、選択状態ベクトルによって推定される生理的グルコースの事前定義された値または所定の関数であり得る。次に、ブロック130の制限された基礎偏差はブロック135に渡され、ここで、制限された基礎偏差および基礎プロファイルの合計から、インスリン投与量要求が決定される。ブロック135で、MMPCアルゴリズム100は、インスリン投与量要求をポンプ12に送信し、次の状態ベクトルの伝搬に含めるために、インスリン投与量値をブロック110Aに渡す。ポンプ12は、注入セット18を介して、要求されたインスリン投与量を患者に送達する。
【0034】
図4は、最適な基礎偏差を決定する例示的なブロック120をさらに示している。ブロック126では、伝搬された状態ベクトルおよび対応する状態ベクトルが評価されて、前の期間にわたって測定されたIGデータに最も一致する状態ベクトルおよびモデルを識別する。いくつかの実施形態において、測定されたIGデータは、一定の履歴期間にわたって状態ベクトルの対応するIG値と比較されて、状態ベクトルとグルコースデータとの間の最良の一致を決定する。いくつかの実施形態では、状態ベクトルとグルコースデータとの間の最良の一致は、測定されたIGデータと状態ベクトルの対応するIG値との間の差の二乗の合計に基づいている。この実施形態では、二乗された差は、指数関数的に減衰する重みで、経時的に合計される。本明細書では、IGの対応する推定値は、IGデータの時点での状態ベクトルのIG値を指す。
【0035】
いくつかの実施形態では、グルコースデータが受信されると、各更新間隔(τUPD)で各状態ベクトルに対して識別誤差が計算される。各更新間隔での識別誤差は、状態ベクトルごとに保存される。ブロック126では、各状態ベクトルのすべての識別誤差が重み付けされ、履歴期間にわたって合計されて、各状態ベクトルの性能インデックスが決定される。モデル予測制御アルゴリズムの次のステップ127~124のために、最低性能インデックスを持つ状態ベクトルを、少なくともそのモデルとともに選択することができる。
【0036】
ブロック127で、MMPCアルゴリズム100は、時間に関して生理的グルコースの現在の導関数(dPG/dt)を決定する。生理的グルコースの変化速度は、インスリン送達の制限を設定し、食事ボーラスを決定し、グルカゴンボーラスを決定するなど、MMPCアルゴリズム100のいくつかの実施形態で使用される。生理的グルコースの変化速度(dPG/dt)は、いくつかの方法で決定され得る。いくつかの実施形態では、dPG/dtは、生理的グルコースの最新のいくつか(例えば、3つ)の推定値(PGj-2、PGj-1、PG)に基づいており、ここで、二次方程式が3つの推定値に適合し、dPG/dtは、jでの方程式の勾配に等しく設定される。生理的グルコース濃度の3つの最新の推定値は、選択された状態ベクトルモデルに応じて、異なる状態ベクトルから得られてもよい。いくつかの実施形態では、dPG/dtは、最新の生理的グルコース値(PG、PGj-1、PGj-2、…PGj-n)への直線適合の勾配である。いくつかの実施形態では、dPG/dtは、PGJ-1とPGとの間の差であり、これは、PGの連続する値間の時間差が一定であるときの勾配である。いくつかの実施形態では、dPG/dtは、時間間隔(τUPD)で割った連続した値の間の差(PGj-1-PG)である。
【0037】
ブロック128では、選択状態ベクトルおよびそのモデルを使用して、現在の時間から予測ホライズン(PGj+1、PGj+2、PGj+3、…PGj+m)までのPGレベルを予測する。現在の時間から予測ホライズンまでの期間は、本明細書では予測期間と称される。予測期間は1時間以上になる場合がある。いくつかの実施形態では、予測時間は4時間半である。将来のPG値の予測は、カルマンフィルタおよび食事の補正を伴わないで、そのモデルを使用して状態ベクトルを伝搬することによって行われる。PGの値は、基礎インスリン投与量、インスリン食事ボーラスおよび食品を伴わないことを想定して予測される。この実施例では、将来のグルコースデータが不明であるため、カルマンフィルタは使用されない。
【0038】
ブロック122において、生理的グルコース目標(PGTGT)は、食事、運動、測定された間質グルコース濃度、および/または選択状態ベクトルの生理的グルコース濃度の補正を伴う所定の生理的グルコース濃度である。例示的な所定の生理的グルコース濃度は、6ミリモル/リットル(mmol/L)であるが、他の好適な目標を使用してもよい。特定の実施形態では、生理的グルコース目標は、経時的に変化する。例えば、生理的グルコース目標は、所定の一定の生理的グルコース目標まで徐々に増加または減少し得る。
【0039】
ブロック124では、現在の時間から予測ホライズンまでの将来の期間について、最適な基礎偏差が決定される。いくつかの実施形態では、最適な基礎偏差は、基礎プロファイルに対する最適なインスリン軌道である。他の実施形態では、最適な基礎偏差は、単に最適なインスリン軌道である。最適な基礎偏差または最適なインスリン軌道は、可能性のあるインスリン値または偏差値に1つ以上の制限を設定して、1つ以上の目的関数を最小化する軌道である。いくつかの実施形態では、目的関数は、将来の期間にわたる予測された生理的グルコース値と目標グルコース値との間の差を合計する。いくつかの実施形態では、目的関数はまた、将来の期間にわたる基礎偏差またはインスリン投与量を合計してもよい。いくつかの実施形態では、合計値は、食事からの時間に基づいて、異なって重み付けされてもよい。コスト関数および重み付けは、食事からの時間、食事のサイズ、運動レベルを含むがこれらに限定されない、以下の値のうちの1つ以上に依存する。第1の注入期間104の基礎インスリンまたはインスリン軌道は、速度または量としてブロック130に渡されてもよく、ここで、速度または量は、推定された生理的グルコース、生理的グルコースの変化速度、および/またはポンプ12による過去のインスリン送達に基づいて制限され得る。
【0040】
モデル
モデルには、患者の体内の生理的または血清グルコース(PG)および間質グルコース(IG)のレベルを計算する制御ロジックによって実行される、1組の線形微分方程式が含まれる。いくつかの実施形態では、モデルは、体内のインスリン、炭水化物、およびグルコースの運動および持続性を追跡する、8つのコンパートメントを含む。いくつかの実施形態では、モデルは、グルコースの外部源(炭水化物)および基礎プロファイルとは異なるインスリンのレベルを考慮する。これらの実施形態では、ブロック124の最適化ステップにおけるモデルの出力は、基礎インスリンプロファイルからの最適な基礎偏差(δ)である。MMPCアルゴリズム100は、ポンプ12からインスリン投与量を要求する前に、ブロック135において、基礎インスリンプロファイル値をインスリン偏差に追加する。
【0041】
インスリン、炭水化物、およびグルコースの運動および持続性は、いくつかのモデルパラメータによって駆動される場合がある。計算されたPG値は、患者に送達され得るインスリンの次の微量ボーラス、グルカゴンボーラス、および/または食事ボーラスを決定するために使用され得る。計算されたIGは、測定されたIGと比較され得る。MMPCアルゴリズム100は、各々がモデルパラメータの一意の組み合わせを備えたモデルを有する、状態ベクトルの大きな組を備えてもよい。
【0042】
モデルパラメータには、インスリン感受性(S)、インスリン時定数(k)、食事行動時定数(k)、センサ時定数(kSENSOR)、インスリンと炭水化物との比率(ICR)が含まれ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、インスリン感受性(S)は、推定基礎インスリン必要量の関数であり、S=S/(IEBN/60)であり、ここで、Sは、少なくとも生理的グルコースに対するインスリンの効果を部分的に制御するモデルパラメータである。インスリンの推定基礎必要量(IEBN)は、TDDおよびTDBの関数である。吸収時定数(k)は、モデル内のインスリンコンパートメントからの輸送速度を少なくとも制御するモデルパラメータである。いくつかの実施形態において、吸収時定数(k)は、約30分~90分の範囲の値を含む。食事行動時定数(k)は、モデルのコンパートメント間の炭水化物の輸送速度に少なくとも影響するモデルパラメータである。いくつかの実施形態では、食事行動時定数の値は、約30分~90分の範囲であり得る。センサ時定数(ksensor)は、生理的コンパートメントと間質コンパートメントとの間のグルコースの輸送速度に部分的に影響するモデルパラメータである。センサ時定数はまた、間質グルコースと生理的グルコースとの間の関係に影響を与える可能性がある。インスリンと炭水化物との比率(ICR)は、血液から一定量のグルコースを除去するのに必要なインスリンの量を反映している。インスリンの炭水化物に対する値は、食事ごとに異なっていてもよい。すなわち、朝食については第1の値、昼食については第2の値、夕食については第3の値であってもよい。モデルパラメータには、UI20での入力値、アルゴリズムでのプログラム値、コントローラで読み取り可能なメモリの保存値、またはこれらのオプションの組み合わせが含まれ得る。
【0043】
例示的なモデル200は、図5に示されるように互いに相互作用する、8つのコンパートメントとして表され得る。皮下注入部位から血流への体内のインスリンの貯蔵および運動は、血液コンパートメント220に接続されている、2つの皮下コンパートメント210、215としてモデル化され得る。インスリン微量ボーラスは、血液チャンバーまたはコンパートメント220に輸送される前に、第1の皮下チャンバーまたはコンパートメント210に加えられ、次に第2の皮下チャンバーまたはコンパートメント215に輸送されてもよい。コンパートメント間のインスリンのモデル化された輸送は、インスリン時定数(k)および2つのコンパートメント210、215間のインスリン濃度の差によって部分的に制御され得る。
【0044】
引き続き図5を参照すると、胃から血流への炭水化物の輸送は、血液コンパートメント220に接続された第2の炭水化物コンパートメント235に接続されている、第1の炭水化物コンパートメント230としてモデル化され得る。第1および第2の炭水化物コンパートメントへの炭水化物の添加は、本明細書に記載されている。コンパートメント230、235間のモデル化された炭水化物の輸送は、食事行動時間(k)および2つのコンパートメント230、235間の炭水化物濃度の差によって部分的に制御され得る。
【0045】
さらに図5を参照すると、皮下注入部位から血流への食事ボーラスインスリンの貯蔵および運動は、血液コンパートメント220に接続されている、2つの食事ボーラスコンパートメント240、245としてモデル化され得る。食事ボーラスは、第1および第2の食事ボーラスチャンバーまたはコンパートメント240、245に追加され、第1のボーラスチャンバー240から第2のボーラスチャンバー245に輸送され、次いで血液コンパートメント220に輸送され得る。コンパートメント間のインスリンのモデル化された輸送は、インスリン時定数(k)および2つのコンパートメント240、245間のインスリン濃度の差によって部分的に制御され得る。
【0046】
さらに図5を参照すると、血液チャンバーまたはコンパートメント220は、血流への微量ボーラスインスリン、炭水化物、および食事ボーラスインスリンの輸送、ならびに生理的グルコース濃度に対するインスリンおよび炭水化物の影響をモデル化する。モデル化された生理的グルコース濃度は、以前の生理的グルコース値、インスリン感受性(S)、第2の皮下チャンバー(IS2)のインスリン濃度、第2の炭水化物チャンバー(C)の炭水化物濃度、第2のボーラスチャンバー(IB、2)のインスリン濃度、インスリン時定数(k)、および食事行動時間(k)によって制御され得る。
【0047】
皮下グルコースコンパートメント225は、連続グルコースモニタ(CGM)がグルコース濃度を測定するとき、血流コンパートメント220から皮膚下の間質組織へのグルコースの輸送をモデル化する。血液コンパートメント220と皮下コンパートメント225との間のグルコースのモデル化された輸送は、センサ定数(kSENSOR)および2つのコンパートメント220、225間のグルコース濃度の差によって部分的に制御され得る。
【0048】
図5に記載されている例示のモデルはまた、次の1組の線形微分方程式によっても説明され得る。
【数1】
各状態ベクトルは、これらの方程式を含むが定数の一意の組を持つ、一意のモデルと関連付けられる。
【0049】
引き続き図5を参照すると、8つのコンパートメントにおけるインスリン、炭水化物、およびグルコースの濃度は、状態ベクトルx(t)として説明され得る。ここで、x(t)は次の成分を持つ。x(t)=IG、x(t)=PG、x(t)=IS2、x(t)=IS1、x(t)=C、x(t)=C、x(t)=IB2、およびx(t)=IB1。状態ベクトルは、時間(t)での重要なPGおよびIG値を含む身体の状態を説明する。次の状態ベクトル(x(t+τ))は、現在の状態ベクトル(x(t))と図5で説明した関係から決定される。
【0050】
上記の状態空間方程式は、行列方程式として書くことができる。
【数2】
ここで、x(t)は時間tにおける状態ベクトルであり、x(t+τ)はτ分後の状態ベクトルであり、Adtは、モデルの方程式(式1)を表すシステム行列であり、ここで、bはゼロである。一実施形態では、Bは、第1のインスリンコンパートメントについての行におけるbを含む入力ベクトルであり、u(t)は、最適な基礎偏差(δ)である。状態ベクトルを更新周期(τUPD)だけ前に伝搬するために、Adt・x(t)の乗算をN回繰り返すことができ、ここで、N=τUPD/dtであり、B・u(t)の乗算が実行され得る。式2は、各状態ベクトルを進めるために実行される。ここで、各状態ベクトルは、一意のモデル行列Adtおよび外乱行列Bを持つ。
【0051】
図5および式1で説明されるモデルは、MMPCアルゴリズムにおけるモデルの例示的な実施形態を説明する。他の実施形態では、モデルコンパートメントの数は、8個より少なくてもよく、または多くてもよい。一実施形態では、1つのインスリンコンパートメントおよび1つの炭水化物コンパートメントを含む最小モデルが使用され、ここで、各コンパートメントは、生理的グルコースチャンバーに接続されている。この最小モデルは、式1Aでラベル付けされたより単純な1組の方程式で説明され得る。
【数3】
他の実施形態では、基礎インスリンとは別個にモデル化されるボーラスインスリン用の別のコンパートメントが追加されてもよく、ボーラスインスリンコンパートメントは、生理的グルコースコンパートメントに接続される。さらに他の実施形態では、間質液中のインスリンをモデル化するためにコンパートメントが追加されてもよく、このコンパートメントは、生理的グルコースコンパートメントに接続される。
【0052】
状態ベクトルの伝搬
図6は、MMPCアルゴリズム100において各状態ベクトルx(t)を状態ベクトルx(t+τ)に伝搬する例示的な概略図を示している。各状態ベクトルx(t)から状態ベクトルx(t+τ)への伝搬は、状態ベクトルと関連付けられた状態モデル、およびブロック145の式2を使用して、各状態ベクトルx(t)をその予備状態ベクトルx(t+τ)に進めることから始まる。各予備状態ベクトルx(t+τ)は、現在の状態の予備推定である。現在のグルコースデータがCGMから入手可能である場合、ブロック160で、各予備状態ベクトルx(t+τ)をカルマンフィルタでフィルタリングして、フィルタリングされた状態ベクトルx(t+τ)を生成することができる。グルコースデータが利用できない場合、またはカルマンフィルタが呼び出されない場合、予備状態ベクトルは、ブロック145を通過する。ブロック165において、各予備状態ベクトルx(t+τ)または各フィルタリング状態ベクトルx(t+τ)のボーラスインスリンおよび炭水化物の状態の値は、最新の更新期間中に発生する食事に対してさらに補正されて、伝搬された状態ベクトルx(t+τ)を決定することができる。最新の更新期間中に食事が発生しなかった場合、予備状態ベクトルx(t+τ)またはフィルタリングされた状態ベクトルx(t+τ)は、変更されずにブロック165を通過して、伝搬された状態ベクトルx(t+τ)になる。実例として、状態ベクトルx(t)への参照は、j=1~Jであり、かつJが状態ベクトルの数である場合、すべての状態ベクトルx(t)を意味する。したがって、状態ベクトルx(t)、k、Sなどのモデル定数、共分散行列P、Q、共分散行列の要素、および性能指標P(t)への参照である。これらの変数は各々、状態ベクトルx(t)などの複数の値を参照する。
【0053】
例示の実施形態では、MMPCアルゴリズム100は、現在の時間、IGの推定値、インスリンの総日投与量(TDD)、総日基礎投与量(TBD)、基礎パターン、過去4時間の食事履歴、過去4時間のインスリンボーラス履歴、およびインスリンと炭水化物との比率(ICR)を含むが、これらに限定されないパラメータのリストのうちの1つ以上を使用して、複数の状態ベクトルを初期化する。MMPCアルゴリズム100は、間質グルコース値および生理的グルコース値に関するIGの推定値で、状態ベクトルを初期化する。炭水化物およびボーラスのインスリン値は、食事の履歴およびインスリンボーラス履歴、ならびに以下に説明する式3~6と同様の式から決定される。
【0054】
図6を参照すると、予備状態ベクトルx(t+τ)は、ブロック160でカルマンフィルタを用いてフィルタリングされて、グルコースセンサ22ならびに共分散行列P(t)、Q(t)、およびR(t)から測定されたグルコースデータに基づいて、各予備状態ベクトルx(t)の状態変数を更新する。共分散行列R(t)は、グルコース測定の不確実性であり、かつブロック150で更新され得る。各状態ベクトルの不確実性は、共分散行列P(t)およびQ(t)に含まれている。各状態ベクトルは、一意の共分散行列PおよびQと関連付けられている。各共分散行列P(t)は、ブロック155で各更新間隔(τUPD)で更新される。共分散行列P(t)の値は、食事のサイズおよびまたはタイミングに基づいて、ブロック155でさらに修正されてもよい。
【0055】
共分散行列P(t)の実施例は、図7の行列300として表される。対角項310は、時間tにおける状態ベクトル内の状態変数の不確実性を列挙している。非対角項は、本明細書では交差相関項または交差項と称される。相互項は、1つの状態変数の不確実性が他の状態変数に与える影響を列挙している。一実施例では、第1のコンパートメントの炭水化物の不確実性(第1の炭水化物状態変数)は、4行目と4列目の要素σC1であり、第2のコンパートメントの炭水化物の不確実性(第2の炭水化物状態変数)は、5行目と5列目の要素σC2である。4および5行目320および4および5列目330の非対角要素は、IG、PG、皮下コンパートメント1および2のインスリン、ならびにボーラスコンパートメント1および2のインスリンを含む、他の身体ベクトル値の不確実性に対する炭水化物の不確実性の影響である。Q(t)共分散行列は、対角310に沿った各状態変数の初期不確実性およびすべての交差項のゼロを含む対角行列である。Q(t)行列は、MMPCアルゴリズム100が以下で説明するように1つ以上の値を変更し得る場合の食事に応じた変化を除いて一定である。
【0056】
ブロック155では、各共分散行列P(t)が、式3ごとの更新間隔で進められる。
【数4】
ここで、Adtは、上述のシステム行列である。式4の状態ベクトルにカルマンフィルタが適用される前に、P行列が更新される。ブロック160では、グルコースデータ(IGDATA)がグルコースセンサから利用可能である場合、ブロック145からの予備状態ベクトルx(t+τ)を、カルマンフィルタでフィルタリングすることができる。カルマンフィルタは、カルマン行列に記述されているように、グルコースセンサからの情報ならびにデータおよび状態変数の不確実性を処理して、予備状態ベクトルの状態変数の推定値を改善する。各状態ベクトルのカルマン行列K(t)は、予備状態ベクトルがフィルタリングされる前に、式3の最新の共分散行列P(t)で更新される。カルマン行列K(t)は、式4ごとに更新される。
【数5】
ここで、Cは単位変換行列、Rは、グルコース測定IGDATA.variableの不確実性である。フィルタリングされた状態ベクトルx(t)は、式5に従って計算される。
【数6】
ここで、IG(t)は、予備状態ベクトルx(t)における間質グルコースの現在の推定値であり、Kはカルマン行列である。最後に、カルマン行列Kが式6に従って計算された後、共分散行列Pがさらに修正される。
【数7】
【0057】
いくつかの実施形態では、対称対角共分散行列Q(t)は、対角グルコース項σIG、σPG、および皮下インスリン項σI1、σI2に対するグルコースおよび皮下インスリンの誤差の標準偏差の推定値を有する。平均食事時間が所定の時間よりも長い場合、炭水化物(σC1、σC2)およびボーラスインスリン(σIB1、σIB2)の共分散行列Q(t)の対角項はゼロである。平均食事時間は、過去の所定の時間における食事の加重平均であり、各食事時間は、その食事で消費された炭水化物の量によって重み付けされる。別の実施形態では、Q(t)共分散行列の炭水化物およびボーラスインスリン項は、最新の事前定義された期間に食事が発生しなかった場合、ゼロである。別の実施形態では、Q共分散行列の炭水化物およびボーラスインスリン項は、最後の事前定義された数分間に事前定義された炭水化物量を超える食事が発生しなかった場合、ゼロである。炭水化物の例示的な事前定義された量は、5グラムであり、例示的な事前定義された時間は、120分であるが、他の好適な閾値が実施されてもよい。
【0058】
Q(t)行列の対角値を設定する一実施例では、状態変数の誤差の推定標準偏差は、推定されたインスリン必要量(IEBN)の割合である。
【0059】
一実施形態では、所定のサイズの食事が過去の所定期間内に消費された場合、炭水化物(σC1、σC2)およびボーラスインスリン(σIB1σIB2)のQ(t)行列の対角項は、炭水化物(C、C)およびボーラスインスリン(IB1、IB2)値の誤差の標準偏差の推定値に設定される。一実施例では、炭水化物(σC1、σC2)の誤差の推定標準偏差は、炭水化物コンパートメント1および2の炭水化物の合計の割合(例えば、10%)に基づいており、ボーラスインスリン値(σIB1σIB2)の誤差の推定標準偏差は、IEBNの割合に基づいている。
【0060】
一実施例では、炭水化物およびボーラスインスリンの不確実性の対角項は、炭水化物コンパートメントの炭水化物の合計が閾値(例えば、5グラム)を超え、かつ平均食事時間が低い閾値(例えば、40分)と高い閾値(例えば、210分)の間である場合、非ゼロ値に設定される。一実施形態では、平均食事時間は、過去210分における食事の加重平均であり、各食事時間は、その食事で消費された炭水化物の量によって重み付けされる。
【0061】
一実施形態では、食事が所定の時間消費されなかった場合、共分散行列PおよびQのすべての炭水化物およびボーラスインスリン項は、ゼロに変更される。ここで図7を参照すると、炭水化物項は、項σC1、σC2および項σC1、σC2(320、330)と整列したP行列300の要素を指す。同様に、共分散行列Pのボーラスインスリン項は、ボーラスインスリン項σIB1、σIB2および項σIB1、σIB2と整列した項である。Q行列の炭水化物とボーラスインスリン項は、炭水化物とボーラスインスリン状態変数の不確実性の対角項である。一実施形態では、食事が事前定義された期間発生していない場合、PおよびQ行列の両方において、すべての炭水化物およびボーラスインスリン項がゼロに設定される。一実施形態では、事前定義された期間は210分である。共分散行列P、Qの食事およびボーラスインスリン値をゼロに設定すると、事前定義された時間窓内で所定量未満の炭水化物が消費された場合に、モデルの安定性が向上する可能性が高くなり得る。
【0062】
フィルタリングされた状態変数の制限
再び図6を参照すると、ブロック160は、カルマンフィルタおよびグルコースデータを予備状態ベクトルに適用することから生じる、フィルタリングされた状態ベクトルx(t)の変数を制限またはクリップする補正のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、MMPCアルゴリズム100は、フィルタリングされた状態ベクトルx(t)内の皮下インスリン状態変数の合計を、所定の最小インスリン濃度を超える値に制限する。一実施例では、すべての皮下コンパートメントのインスリンの合計が基礎インスリンの所定の因子未満である場合、各コンパートメントのインスリンは増加し、その結果、新しいインスリン値の合計は、所定のインスリン値に等しくなる。いくつかの実施形態では、インスリン状態変数の値は、同じ状態ベクトル内のある1つのインスリン状態変数と別のインスリン状態変数の比が変わらないように変更される。一実施形態では、インスリン値に因子を乗算することにより、インスリン値を増加させることができる。いくつかの実施形態では、基礎インスリンに所定のインスリン因子を乗算した値は、所定のインスリン値に等しい。一実施例では、所定の因子は、推定基礎必要量(IEBN)の約半分である。
【0063】
いくつかの実施形態では、MMPCアルゴリズム100は、炭水化物およびボーラスインスリンについて、予備的またはフィルタリングされていない状態変数とカルマンフィルタリングされた状態変数との間の差を制限する。いくつかの実施例では、フィルタリングされた状態ベクトルの炭水化物の合計が、フィルタリングされていない状態ベクトルの炭水化物の合計の第1の所定の因子よりも大きい場合、炭水化物のフィルタリングされた値は減少し、それらの合計は、第2の所定の因子とフィルタリングされていない炭水化物の合計の積に等しくなる。一実施例では、第1および第2の所定の因子は等しい。
【0064】
いくつかの実施形態では、フィルタリングされた状態ベクトル値のボーラスインスリンの合計が、フィルタリングされていない状態ベクトルのボーラスインスリンの合計の第1の所定の分率未満である場合、ボーラスインスリンのフィルタリングされた値は増加し、それらの合計は、フィルタリングされていないボーラスインスリン値の合計の第2の所定の分率に等しい。一実施例では、第1および第2の所定の分率は等しい。
【0065】
上述のようにカルマンフィルタで補正され得るものを有する複数のフィルタリングされた状態ベクトルx(t+τ)は、次にブロック165に渡され、ここで、フィルタリングされた状態ベクトルは、食事および関連付けられたインスリンボーラスの影響を含むように更新される。食事の効果、および前のτUPD分の間に発生した食事ボーラスは、ブロック165でフィルタリングされた状態ベクトルx(t+τ)に追加されて、伝搬された状態ベクトルx(t+τ)を生成する。食事の炭水化物は、状態ベクトルの各々の炭水化物状態変数に直接追加される。いくつかの実施形態では、モデルが炭水化物の2つのコンパートメントを含む場合、炭水化物状態変数は、式7、8ごとに更新される。
【数8】
【数9】
ここで、CarboRatioは、炭水化物のグラムを1リットルあたり(例えば、mmol/Lまたはμmol/L)の炭水化物の濃度に変換する単位変換因子であり、Δtは、食事と現在の計算の時間との間の時間であり、MealCarboは、食事中の炭水化物の量である。
【0066】
インスリンの食事ボーラスの影響は、以下の式ごとに補正された更新されている状態ベクトル(IB、1、IB、2、)のインスリンボーラス値に直接追加され得る。
【数10】
【数11】
ここで、Δtはボーラス注入と現在の計算時間との間の時間であり、ボーラスは、式7、9の変数MealCarboに追加された炭水化物を補償するために決定されているインスリンの量である。いくつかの実施形態では、ボーラスの値は、ポンプによって送達されるボーラスに等しくなくてもよく、むしろモデルの炭水化物コンパートメントに追加された炭水化物の量から計算されてもよい。いくつかの実施形態では、モデルに追加された炭水化物から計算されたボーラスを使用すると、モデルの安定性が向上し、かつ将来の生理的グルコース値の予測が向上する場合がある。いくつかの実施形態では、ボーラス値は、MealCarboおよび推定されたインスリン基礎必要量に基づいて、Bolus=MealCarbo/IEBN・Fcとして計算され、ここで、Fcは単位変換定数である。
【0067】
いくつかの実施形態では、ブロック165は、生理的グルコース(PG)の値を増加させることにより状態ベクトルx(t+τ)をさらに補正して、グルカゴンボーラスの送達によるグルコースの出現を反映する。PG値の補正は、以下によって定義される。
【数12】
ここで、Nは以前のグルカゴンボーラスの数であり、u(i)はグルカゴンボーラスのサイズであり、t(i)はグルカゴンボーラス投与の時間であり、kGLNは、皮下グルカゴン送達とその作用との間のラグタイムを表す転送速度パラメータである。次に、複数の伝搬、フィルタリング、および補正された状態ベクトルx(t+τ)が、ブロック110から渡される。いくつかの実施形態では、複数の状態ベクトルx(t+τ)がブロック120に渡され、ここで、最適な基礎インスリン偏差が決定される。
【0068】
最適な基礎インスリン偏差の決定
ここで図4を参照すると、ブロック120のMMPCアルゴリズム100は、CGMデータから過去の間質グルコースデータ(IGDATA)に最も一致する状態ベクトルおよびそのモデルを選択すること(ブロック126)、選択状態ベクトルおよびそのモデルを使用して、予測ホライズンまでの次の予測期間全体のグルコース濃度を予測すること(ブロック128)、ならびに目的関数、122で決定されたグルコース目標、115からの基礎プロファイル、および本明細書に記載のインスリン送達速度の1つ以上の制限に基づいて、ブロック124において予測期間にわたる基礎プロファイルからの最適な偏差を決定することによって、最適な基礎インスリン偏差を決定することができる。第1の注入期間のインスリン軌道に等しいインスリンの量は、基礎プロファイルからの最適な基礎偏差としてブロック130に渡される。
【0069】
ブロック126で、MMPCアルゴリズム100は、履歴期間にわたってグルコースデータまたはIGDATA値に最もよく一致する状態ベクトルおよびそのモデルを選択する。いくつかの実施形態では、IGDATA値は、ユーザの身体に置かれたCGM22によって測定される。他の実施形態では、グルコースデータは、グルコースセンサで測定される。一実施形態では、識別誤差e(t)は、各状態変数IG(t)と時間tでのIGDATAとの差として、各更新間隔で各状態ベクトルについて計算されるその後、性能インデックスP(t)が、各状態ベクトルjに対して計算され、一定期間にわたる識別誤差e(t)が合計される。いくつかの実施形態では、性能値、P(t)は、時間内の移動窓(例えば、2時間または他の好適な窓)にわたる加重および二乗された識別誤差の合計である。いくつかの実施形態では、より最近の識別誤差に対して、重み付けが増加する。
【0070】
一実施形態では、性能値は、二乗誤差の加重和であり、ここで、加重は、より最近のデータにより大きな加重を与える指数的減衰関数である。一実施形態では、各モデルjの性能値は次のように定義される。
【数13】
ここで、aおよびbは、インデックスインデックスに対する瞬間的および長期的な正確性の寄与を決定する定数であり、誤差e(t)は、現在の時間tでのモデルjの測定および決定されたIG値間の差であり、e(i)は、j番目のモデルe(i)={e(1)、e(2)、…e(M)}の以前の誤差値のベクトルであり、Mは、各状態ベクトルの移動窓内の誤差ベクトルe(i)の保存された誤差値の数であり、モデルj、cは、誤差E(i)の重み付けに使用される指数的減衰関数を定義する定数である。いくつかの実施形態では、性能インデックスを使用して、状態モデルを選択すると、MMPCアルゴリズム100の安定性の可能性が高まる。
【0071】
MMPCアルゴリズム100は、ブロック126で、現在値が最も低い性能値Pj(t)を有する状態ベクトルおよびモデルを選択し、選択された状態ベクトルおよびモデルをブロック128に渡すことができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、食事時間の後に、状態ベクトルのサブセットがブロック126で考慮されて、過去のIGデータに対する最良の一致を識別する。いくつかの実施形態では、考慮される状態ベクトルのサブセットは、モデルのインスリン吸収値が比較的速い状態ベクトルのみを含む。インスリン吸収時間が比較的遅いモデルと関連付けられた状態ベクトルは、過去のIGデータに最適な状態ベクトルを決定するための考慮から除外される。いくつかの実施形態では、MMPCアルゴリズム100は、ブロック126で考慮された状態ベクトルを、インスリン吸収時間が第1のインスリン吸収閾値未満のモデルと関連付けられた状態ベクトルに制限する。例示的な第1のインスリン吸収閾値は、約1時間または他の好適な閾値である。
【0073】
ブロック128のMMPCアルゴリズム100は、選択された状態ベクトルと関連付けられたモデルを使用してブロック126で選択された状態ベクトルを進め、生理的グルコース濃度PG(t)を予測ホライズンまで予測する。現在の時間から予測ホライズンまでの期間は、本明細書では予測期間と称される。いくつかの実施形態では、選択状態ベクトルは、食事入力および食事インスリンボーラスが発生しない定常状態条件下で進められる。いくつかの実施形態では、選択された状態ベクトルは、基礎インスリン投与量を仮定して進められる。基礎インスリン投与量は、ゼロ基礎偏差、基礎プロファイルまたは一定基礎投与量であり得る。好ましい実施形態では、選択状態ベクトルは、予測期間中に基礎偏差がゼロであり、かつ食事もインスリンボーラスもないと仮定して進められる。ブロック128は、結果として生じる予測された生理的グルコース濃度値PGP、Iをブロック124に渡し、ここで、基礎プロファイル値からの最適なインスリン偏差が決定される。
【0074】
例示的なMMPCアルゴリズム100は、ブロック124で、予測期間にわたって食事がないと仮定して、基礎プロファイルからの最適な偏差を決定する。基礎プロファイルからの最適な偏差は、目的関数を最小化する予測期間にわたる一連のインスリン投与量偏差であり得る。いくつかの実施形態では、目的関数は、予測期間にわたる各時間ステップでの加重二乗グルコース差を含む。グルコース差は、目標グルコース値と予測される生理的グルコース状態変数の値との間の差である。目的関数は、予測期間にわたる各時間ステップでの加重二乗インスリン基礎偏差(δ)の合計をさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、目的関数は、各時間ステップでの加重インスリン投与量の合計をさらに含み得る。各時間ステップは、更新期間(τUPD)または注入時間(τINJ)と等しくてもよい。グルコース差またはインスリン投与量のうちのいずれかの重み付けは、時間の関数であってもよく、または食事後の時間とともに変化してもよい。一実施形態では、目的関数は、以下の式13によるグルコース差および基礎偏差の両方を含む。
【数14】
ここで、KINSULINは基礎インスリン投与量からの偏差の重み係数であり、phは予測期間に含まれるサンプルまたは予測の数であり、重み関数w(i)は予測期間にわたって変化し得る。いくつかの実施形態では、重み関数は、予測された生理的グルコースPG(ph)と目標グルコースPGTGT(ph)との間の最終的な差に、より有意に大きな加重を与えることができる。さらに、いくつかの実施形態では、最終重み付けw(ph)は、以前の重み付け値w(1)からw(ph-1)の合計よりも大きい。いくつかの実施形態では、食事後の期間については、重み関数w(i)を減少させることができる。さらに、いくつかの実施形態では、重み関数w(i)は、食事期間よりも長い間隔の公称値であり、かつ食事期間よりも短い間隔の公称値よりもはるかに小さくてもよい。いくつかの実施形態では、重み関数は、食事後の食事期間の前半については公称値の1%未満であり、食事後の食事期間の後半中に公称値の1%未満から公称値まで増加してもよい。いくつかの実施形態では、食事期間は3時間を超える。目標グルコース数、PGTGT(i)は、規定の目標グルコース値、運動、食事後の時間の一部であるが、これに限定されない関数であり得る。
【0075】
最適化プロセスでのインスリン偏差の制限
上記のコスト関数の最小化は、インスリン偏差の値δ(i)の制限によってさらに制約されるインスリン偏差δ(i)の制限は、例えば、開ループインスリン速度IOLに基づくことができる。インスリン偏差は、インスリン投与量が0~IMAXの間に留まるように制限される場合がある。したがって、インスリン偏差δ(i)は、以下の範囲に制限される。
【数15】
ここで、IOLは以下で定義され、IMAX(i)は最大基礎投与量である。一実施形態では、最大基礎投与量は、ユーザまたは臨床医によって事前定義された固定値であってもよい。別の実施形態では、最大基礎投与量は、推定された生理的グルコース値、PG、総日基礎インスリン、TDB、および/または開ループインスリンIOLに依存し得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、最大基礎投与量、IMAX(i)は、開ループインスリンおよび推定された生理的グルコース値、PGの関数である。この実施形態では、最大基礎投与量は、第1の因子と、第1の事前定義されたグルコース閾値未満の生理的グルコース値についての開ループ基礎投与量との積に等しくてもよい。同様に、最大基礎投与量は、事前定義された第2のグルコース閾値よりも大きい生理的グルコース値について、第2の因子と開ループ基礎投与量の積に等しくてもよく、ここで、第2の因子は第1の因子よりも大きい。最大基礎投与量は、第1および第2のグルコース閾値間の生理的グルコース値についての生理的グルコース値に基づいて、第1および第2の因子間の補間に開ループ基礎投与量を掛けたものに等しくてもよい。いくつかの実施形態では、第1の因子は約3であり、第1のグルコース閾値は約7mMol/Lである。いくつかの実施形態では、第2の因子は約5であり、第2のグルコース閾値は約12mMol/Lである。
【0077】
いくつかの実施形態では、上記のコスト関数の最小化は、インスリン制限とラベル付けされたセクションに列挙されている、インスリン偏差の値δ(i)の制限によってさらに制約される。以下に列挙するインスリン制限は、予測期間中の対応する時点での予測生理的グルコース値および生理的グルコース値の変化速度(例えば、δ(i)=fcn(PG(i)、dPG(i)/dt))を適用することにより、予測期間中の各時点でブロック124の最適化プロセスに適用され得る。
【0078】
式13のコスト関数を最小化する1組の最適なインスリン偏差コマンドを見つけるための、多数の数値アルゴリズム{δ(1)、δ(2)…δ(ph)}が存在する。数値アルゴリズムがブロック120におけるインスリン偏差コマンドの最適な組を見つけると、MMPCアルゴリズム100は、第1の更新間隔(δ(1))の最適な基礎偏差をブロック135に渡し、ここで、最適な偏差は、次の投与量要求に等しくなるように基礎プロファイルと合計される。
【0079】
インスリン項
MMPCアルゴリズム100は、インスリン必要量という項の下でグループ化され得る複数のインスリン値を使用する。いくつかの実施形態におけるインスリン必要量は、UI20で患者または臨床医によって入力されたデータである。別の実施形態では、インスリン必要量データは、UI20、コントローラ24、またはポンプ12上のメモリに格納されてもよい。インスリン必要量には、単一の値または基礎プロファイルが含まれる場合がある。いくつかの実施形態では、インスリン必要量データは、以下のインスリン値:インスリンの総基礎投与量(TDD)、総基礎投与量(TBD)、単一投与量速度であり、通常は単位/時間である基礎投与量(IBD)、および1日間の基礎インスリン投与量を定義するリストまたは式である基礎プロファイル(IBP(i))のうちの1つ以上を含む。基礎投与量は、ユーザがUI20に入力した値であってもよく、またはTDDの分率として計算されてもよい。いくつかの実施形態では、基礎投与量は、基礎因子にTDDを24で割ったものであり、ここで、基礎因子は1未満である。いくつかの実施形態では、因子は0.55または別の好適な分率である。他の実施形態において、基礎投与量は、基礎インスリンがTDBを24で割ったものである。
【0080】
開ループ基礎速度、IOL(t)は、上限値と下限値によって制限される入力基礎プロファイル、IBP(t)である。IOL(t)は、IBP(t)が下限値未満である場合を除いて、IBP(t)に等しく、ここで、IBP(t)は下限値に等しい。IOL(t)は、IBP(t)が上限値よりも大きい場合を除いて、IBP(t)に等しく、ここで、IBP(t)は上限値に等しい。一実施形態では、下限値はTDB/24の半分であり、上限値はTDB/24の1.5倍である。
【0081】
推定されたインスリン基礎必要量、IEBNは、インスリン感受性、フィルタリングされたインスリン値の共分散制限の初期値、およびインスリンボーラス計算の設定に使用される、インスリンの総日投与量(TDD)および総日基礎インスリン(TDB)の関数である。一実施例では、IEBNの値は、TDD/24の分率である。別の実施例では、IEBNは、上限および下限によって制限され、ここで、上限および下限は、TDDおよびTDBに基づいている。
【0082】
インスリンの総日投与量(TDD)および総日基礎インスリン(TDB)は、一定であってもよく、または使用中に更新されてもよい。一実施形態では、TDDおよびTDBは、所定の値である。別の実施形態では、TDDおよびTDBは、ユーザまたは臨床医によってユーザインターフェースで入力されるか、またはコントローラに直接通信される。別の実施形態において、TDDは、過去2週間にわたって毎日送達されるインスリンを平均化するために、コントローラによって更新される。別の実施形態において、TDBは、送達される毎日の基礎インスリンの2週間平均に、コントローラによって更新され得る。別の実施形態では、TDDおよびTDBは、過去3日間にわたるそれぞれの総日インスリンおよび合計基礎インスリンの平均を表す。別の実施形態では、TDDおよびTDBはそれぞれ、過去24日間にわたる総日インスリンおよび合計基礎インスリンの平均を表す。
【0083】
目標グルコース
上述のように、コントローラによって実施されるブロック124(図4)の例示のMMPCアルゴリズム100は、基礎プロファイルからの最適な偏差を決定するときに目標生理的グルコース値(PGTGT)を使用する。いくつかの実施形態では、PGTGTは固定値である。他の実施形態では、PGTGTは、様々な条件が存在するか、または様々なイベントが発生したときに、公称値またはプリセット値(PGNOM)から修正される。目標生理的グルコース値は、UI20の入力を介してシステム10に通信されるユーザデータに基づいて決定され得る。目標生理的グルコース値のそのような調整は、例えば、食事および/または運動の告知に応じて起こり得る。目標グルコース値の調整は、少なくとも部分的に目標修正式によって管理されてもよく、または特定の状況が存在するときに使用されるべき事前定義された値に基づいていてもよい。また、目標値の調整は、条件またはイベントが発生した後もしばらく続く場合がある。調整は、この期間にわたる静的または固定調整であってもよく、または期間が経過するにつれて大きさが変化する(例えば、大きさが直線的に減少する)場合もある。
【0084】
ここで図4に示されるブロック120を参照すると、グルコース目標は、ブロック122で決定され、かつブロック124に提供され、次いで、上述のように基礎プロファイルからの最適な偏差を決定し得る。ブロック122は、ブロック115から食事および運動入力データを受信し、目標生理的グルコース値を変更し得る。ブロック120で基礎プロファイルの最適な偏差を決定する部分として、公称の目標グルコース値を、その公称値から調整することができる。例示的な公称の目標グルコース値は、6mmol/Lであるが、他の好適な値が実装されてもよい。いくつかの実施形態では、MMPCアルゴリズム100がブロック120で基礎プロファイルの最適な偏差を決定している間に患者が運動を知らせ、まだ運動を終了していない場合、目標グルコース値を調整することができる。他の実施形態では、現在の時間の事前定義された時間内に所定の期間にわたって運動期間が発生した場合、運動のために目標グルコース値を修正することができる。いくつかの実施形態では、患者14が最適な基礎偏差の決定の事前定義された期間内に食事を知らせた場合、食事データは、目標生理的グルコース値を変更し得る。
【0085】
運動告知は、生理的グルコース目標値を、プリセット値または公称値から運動目標値に修正する場合がある。いくつかの実施形態では、運動目標値は、プリセットまたは公称目標値であってもよく、またはそれよりも約3mmol/L大きくてもよい。いくつかの実施形態では、プリセットまたは公称目標値は、6mmol/Lまたは約6mmol/Lであり得、運動目標値は、9mmol/Lまたは約9mmol/Lであり得る。
【0086】
食事告知または食事データを式に入力して、食事に対する近接性に基づいて目標値を増加させることができる。この式は、食事が食事に時間的に近接した目標値により大きな影響を与えるように構成され得る。食事の消費からの時間が増加するにつれて、目標値は、より少ない程度に変更され得る。特定の事前定義された期間が経過した後、食事入力データは、もはや目標値調整の決定に影響を及ぼさなくなる可能性があり、かつプリセットまたは公称目標値が使用される場合がある。目標生理的グルコース値に対する食事イベントの影響は、時間の経過とともに線形の様式に変化する(例えば、減少する)場合がある。
【0087】
生理的グルコース目標値が設定された後、生理的グルコース目標に基づいて、いくつかのチェックが実行され得る。これらのチェックにより、場合によっては、グルコース目標値(PGTGT)が修正され、最終値が変更される場合がある。
【0088】
インスリン制限チェック
状態ベクトルが伝搬され、ブロック120で基礎プロファイルからの最適な偏差が決定された後、コントローラ24は、図3のブロック130で、基礎プロファイルからの最適な偏差を1つ以上のインスリン制限と比較またはチェックすることができる。いくつかの実施形態では、複数の基準が使用されてもよい。基礎プロファイルからの最適な偏差(δ)は、生理的グルコースまたは選択された状態ベクトルの生理的グルコースの変化速度に基づいて、制限内に送達されるインスリンを保持するように変更されてもよい。最適な偏差の変更はまた、インスリンの総日投与量(TDD)および/または総日基礎インスリン(TDB)に基づいている。いくつかの実施形態では、基礎プロファイルからの最適な偏差が複数の制限チェックを通過するときに、基礎プロファイルからの最適な偏差を、1回または複数回更新することができる。次に、結果として得られる制限チェックされた最適な基礎偏差(δ)は、投与量要求ブロック135に渡され得、ここで、基礎投与量または基礎プロファイルは、ポンプ12に送信される要求されたインスリン投与量を生成するために、チェックされた基礎偏差に追加される。
【0089】
図8は、基礎プロファイルからの最適な偏差が変更を必要とするかどうかを決定するために実行され得る、いくつかの例示の操作を詳細に説明する例示的なフローチャート1200を示す。基礎プロファイルからの最適な基礎偏差は、ブロック1206で、コントローラ24によって第1の基準または第1の制限チェックと比較される。ブロック1208で、比較が、第1のインスリン制限チェックに基づいて修正が必要ないことを示す場合、最適な基礎偏差は、ブロック1212で、次のインスリン制限チェックと比較され得る。ブロック1208で、最適な基礎偏差が変更を必要とすることを比較が示す場合、ブロック1210で、最適な基礎偏差を、更新された基礎偏差に変えることができる。次に、更新された基礎偏差は、ブロック1212で、コントローラ24によって次のインスリン制限チェックと比較され得る。
【0090】
ブロック1214において、最適な、または更新された基礎偏差が変更を必要とすることを比較が示す場合、ブロック1216で、基礎偏差は、更新された基礎偏差に更新され得る。ブロック1216での修正後、またはブロック1214で、インスリン制限チェックに基づいて、比較が、修正が不要であることを示す場合、ブロック1218で、すべてのインスリン制限チェックが完了したかどうかを決定することができる。ブロック1220で、すべてのインスリン制限チェックが完了していない場合、コントローラ24はブロック1212に戻り、次のインスリン制限チェックを実行することができる。これは、「n」回のインスリン制限チェックがコントローラ24によって行われるまで、繰り返されてもよい。いくつかの実施形態では、「n」は最大で6までであり得る。ブロック1220で、すべてのインスリン制限チェックが完了した場合、最適な基礎偏差または更新された基礎偏差は、チェックされた基礎偏差としてポンプ12に提供され、ポンプ12は、患者14に微量ボーラス量の薬剤を投与することができる。
【0091】
方程式15~17は、図3のブロック130で適用され得る例示的なインスリン制限チェックを示している。一実施形態では、式15~17は、ブロック120で生成された最適な基礎偏差に順次適用される。他の実施形態は、基礎インスリン偏差に関する以下の制限の一部またはすべてを含み得る。これらのインスリンの制限は、図3および図4のブロック120で生成されたインスリン基礎プロファイルの最適な偏差または最適な基礎偏差(δI)に適用され、ブロック135に供給される更新された基礎偏差を生成し、ここで、送達される投与量は、ポンプ12から要求される。
【0092】
MMPCアルゴリズム100を、基礎速度とは異なる速度でインスリンを送達する要求に非対称的に応答させるために、一実施形態では、インスリン制限ブロック130は、負の基礎偏差の大きさを大きくすること、および正の基礎偏差を変更しないままにすることによって、基礎インスリンまたは基礎プロファイルからの変更を低投与量に偏向させる。例えば、ブロック120からの最適な基礎偏差が負の場合、次の式15に従って、最適な基礎偏差の大きさをさらに増加させることができる。
【数16】
ここで、F1は1よりも大きい値である。最適な基礎偏差が正の場合、最適な基礎偏差は変更されない。必要に応じて、最適な基礎偏差の大きさを増加させた後、コントローラ24は、次のインスリン制限チェックを実行する。
【0093】
いくつかの実施形態におけるMMPCアルゴリズム100は、生理的グルコースが高い場合に、最小のインスリン送達を確実にする。いくつかの実施形態では、コントローラ24は、選択状態ベクトルの推定生理的グルコースが所定の高グルコース閾値を超える場合、最適な基礎偏差をゼロ以上に制限する。最適な基礎偏差をゼロ以上に保持すると、送達されたインスリンが基礎プロファイル以上になることがもたらされる。一実施例では、基礎偏差は、以下の式16に従う高グルコース閾値に基づいて制限される。
【数17】
ここで、PGMAXは、高い生理的グルコース閾値である。一実施例では、高い生理的閾値は、約13.7mmol/Lである。A=max(B、C)の方程式形式は、AがBまたはCの大きい値に等しく設定されることを意味する。
【0094】
いくつかの実施形態におけるMMPCアルゴリズム100は、生理的グルコースが低い場合、インスリン送達を制限する。いくつかの実施形態では、コントローラ24は、選択状態ベクトルの生理的グルコースが所定の低い生理的グルコース閾値未満である場合、最適な基礎偏差を第1の所定の低い値以下に制限する。
【0095】
いくつかの実施形態におけるMMPCアルゴリズム100は、生理的グルコースが低く低下している場合、インスリン送達をさらに制限する。いくつかの実施形態では、コントローラ24は、選択状態ベクトルの生理的グルコースが所定の低い生理的グルコース閾値未満であり、時間とともに減少する場合、最適な基礎偏差を第2の所定の低い値以下に制限する。第2の所定の低い値は、第1の所定の低い値よりも小さくてもよい。
【0096】
いくつかの実施形態におけるMMPCアルゴリズム100は、生理的グルコースが非常に低い場合、インスリン送達をさらに制限する。いくつかの実施形態では、コントローラ24は、選択状態ベクトルの生理的グルコースが第2の所定の低い生理的グルコース閾値未満である場合、最適な基礎偏差を第3の所定の低い値以下に制限する。
【0097】
いくつかの実施形態におけるMMPCアルゴリズム100は、所定の期間の低インスリン投与後に最小レベルのインスリンを供給することにより、比較的長い時間スケールにわたってインスリンの最小送達を確実にする。いくつかの実施形態では、コントローラ24は、事前定義された期間にわたる平均インスリン投与量が事前定義された投与量閾値を下回る場合、インスリン投与量を最小投与量以上に制限する。平均送達インスリン投与量は、図3のブロック135においてMMPCアルゴリズム100により要求されたインスリン投与量を事前定義された期間にわたって平均することにより、コントローラ24により決定され得る。いくつかの実施形態では、事前定義された期間は約2時間である。送達されたインスリン閾値は、小さな正の値である場合がある。いくつかの実施形態では、送達されるインスリン閾値は、1時間あたり約0.05単位のインスリンに設定される。
【0098】
いくつかの実施形態において、事前定義された期間にわたる平均送達インスリン投与量が送達インスリン閾値未満である場合、最適な基礎偏差を第1の所定の閾値以上に制限することにより、最小長期送達が確実にされ得る。一実施形態では、第1の所定の閾値はゼロであるため、送達されるインスリンは、少なくとも基礎プロファイルに等しくなる。一実施形態では、このインスリン制限は以下の式17に説明されている。
【数18】
(i)は過去に要求されたインスリン投与量であり、IMINは送達されたインスリン閾値である。
【0099】
グルカゴンの閉ループ制御
いくつかの実施形態では、システム10は、複数の薬剤リザーバ16を含むことができる。例えば、1つの薬剤リザーバ16はインスリンを含むことができ、別のリザーバはグルカゴンを含むことができる。CGM22からのデータを使用して、グルカゴンは、インスリンとともに閉ループ様式で患者14に送達され得る。いくつかのシステムでは、インスリンに加えてグルカゴンを投与すると、患者14が正常血糖状態で過ごす時間をさらに増加させるのに役立つ場合がある。
【0100】
患者14へのグルカゴン送達は、実施形態に応じて変化し得る、いくつかの事前定義されたグルカゴン規則によって制御され得る。いくつかの実施形態では、所定の日に患者14への送達に割り当てられるグルカゴンボーラスのサイズは、最近の食事、運動、生理的グルコース濃度、グルコース濃度の変化速度、基礎インスリンデータ、および推定オンボードインスリン(IOB)を含むがこれらに限定されない、因子のうちの1つ以上の関数であり得る。いくつかの実施形態では、ユーザが運動を指示した場合、グルカゴンボーラスを増加させることができる。いくつかの実施形態では、運動中にグルカゴンの投与量を増加させることができる。いくつかの実施形態では、グルカゴンボーラスは、ゼロに設定されるか、または食事後一定期間キャンセルされる場合がある。一実施形態では、グルカゴンボーラスは、食事後120分間ゼロに設定される。
【0101】
いくつかの実施形態では、グルカゴンボーラスは、生理的グルコースの変化速度(dPG/dt)がグルコース速度閾値(RPG)未満である場合にのみ送達され得る。グルコース速度閾値は、推定生理的グルコース(PG)の関数であり得る。グルコース速度閾値(RPG)は、推定生理的グルコース(PG)に反比例して増加する場合があり、その結果、グルコース速度閾値は、より低い生理的グルコース(PG)値とともに増加する。コントローラは、PGレベルが低下するにつれて、dPG/dt値が高くなるとグルカゴンを送達する。いくつかの実施形態では、グルコース速度閾値はゼロ未満であるため、グルカゴンは、PGがグルコース速度閾値よりも速く低下している場合にのみ送達される。これらの実施形態では、生理的グルコースが増加するにつれて、グルコース速度閾値は増加し、より小さい大きさを有する。いくつかの実施形態では、グルコース速度閾値はゼロよりも大きくてもよく、その結果、PGがグルコース速度閾値よりもゆっくりと上昇する場合にのみグルカゴンが送達される。これらの実施形態では、生理的グルコースが増加するにつれて、グルコース速度閾値が増加し、より大きい大きさを有する。いくつかの実施形態では、グルコース速度閾値は、生理的グルコース値が高い場合はゼロ未満であり、生理的グルコース値が低い場合はゼロよりも大きい。これらの実施形態において、グルカゴンは、より高い生理的グルコースレベルおよびより低い生理的グルコース値でPGがグルコース速度閾値よりも速く低下する場合にのみ送達され、PGがグルコース速度閾値よりもゆっくり上昇する場合にのみグルカゴンが送達される。
【0102】
グルカゴンボーラス(Gln)のサイズまたはボリュームは、生理的グルコースの変化速度(dPG/dt)および生理的グルコースの推定値(PG)の両方に比例する。いくつかの実施形態では、生理的グルコースの変化速度とともに増加するグルカゴンボーラス。いくつかの実施形態では、グルカゴンボーラスの量は、生理的グルコース濃度のレベルが低下するにつれて増加し得る。いくつかの実施形態において、グルカゴンボーラスは、モデル内の活性インスリンの量とともに増加し得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、グルカゴンは、図9のフローチャート1440に示される例示的な方法に基づいて、コントローラ24により、さらにまたは代替的に制御され得る。ブロック170のコントローラ24は、ブロック115からの食事および運動に関するユーザデータの受信、選択状態ベクトル126(図4)における生理的グルコースの現在の推定、およびブロック127からの生理的グルコースの変化の速度(dPG/dt)に基づいて、グルカゴンの要求されたボーラス量を決定し得る。ブロック1420において、コントローラ24は、食事が事前定義された期間(τ)内に消費されたかどうかをチェックする。一実施形態では、τは120分である。食事がτ未満の期間内に消費された場合、コントローラは、ブロック1435でグルカゴンボーラスをゼロに設定し、かつブロック170を終了する。食事が過去τ期間内に消費されなかった場合、コントローラは、ブロック1425中のグルコース入力(G)を決定する。グルコース入力は、選択状態ベクトル126の生理的グルコース(PG)に等しい。いくつかの実施形態では、ユーザがブロック115で運動を指示する場合、グルコース入力は、生理的グルコース濃度から運動因子を引いたものに等しくなり得る。一実施形態では、運動因子は3mmol/Lである。次に、グルコース入力値(G)は、グルコース入力値およびブロック127で決定された生理的グルコース濃度の変化速度に基づいてグルカゴンボーラスのサイズを設定する、一連のif-then-elseロジック決定(ブロック1430~1468)に渡される。結果として生じるグルカゴンボーラスは、選択された状態ベクトルのインスリンと推定基礎インスリン必要量(IEBN)の合計の関数としてブロック1470で更新されてもよい。
【0104】
if-then-elseロジック(ブロック1430~1468)およびグルカゴンボーラス修正1470について以下に説明する。ブロック1430では、グルコース入力(G)が、一次グルコース閾値(G)と比較される。入力グルコースが一次グルコース閾値(G)よりも大きい場合、コントローラは、ブロック1435でグルカゴンボーラスをゼロに設定し、ブロック170を終了する。入力グルコース(G)が一次グルコース閾値(G)未満である場合、コントローラは、ブロック1448、ならびに推定値および生理的グルコースの変化速度に基づいてグルカゴンボーラスを設定する、連続するif-then-elseロジックステップに進む。
【0105】
ブロック1448において、グルコース入力(G)が第1のグルコース閾値(G)よりも大きい場合、次に、グルカゴンボーラスは、生理的グルコース濃度の変化速度(dPG/dt)または連続する生理的グルコース値の差(dy1、dy2)に基づいて、ブロック1450で第1の関数によって決定される。連続する生理的グルコース値間の差[PG(i)-PG(i-1)またはPG(i)-PG(i-2)]は、生理的グルコースの連続値が固定間隔で取得される場合、生理的グルコースの変化速度(dPG/dt)と見なすことができる。グルコース入力が第1のグルコース閾値未満である場合、ロジックはブロック1452に進む。
【0106】
ブロック1450の第1の関数では、グルカゴンボーラスは、グルコースの変化速度(dPG/dt)に基づいて決定される。グルコースの変化速度が第1の速度閾値(RPG1)よりも大きい場合、グルカゴンボーラスはゼロに設定される(Gln=0)。ブロック1450でグルカゴンボーラスを設定した後、コントローラ24はブロック1470に進む。
【0107】
ブロック1452において、グルコース入力(G)が第2のグルコース閾値(G)よりも大きい場合、グルカゴンボーラスは、生理的グルコースの変化速度(dPG/dt)に基づいて、ブロック1454の第2の関数によって決定される。グルコース入力が第2のグルコース閾値未満である場合、ロジックはブロック1456に進む。
【0108】
ブロック1454の第2の関数では、グルカゴンボーラスは、グルコースの変化速度(dPG/dt)に基づいて決定される。グルコースの変化速度が第2の速度閾値(RPG2)よりも大きい場合、グルカゴンボーラスはゼロに設定される(Gln=0)。ブロック1454でグルカゴンボーラスを設定した後、コントローラ24はブロック1470に進む。
【0109】
ブロック1456で、グルコース入力(G)が第3のグルコース閾値(G)よりも大きい場合、グルカゴンボーラスは、生理的グルコースの変化速度(dPG/dt)に基づいて、ブロック1458の第3の関数によって決定される。グルコース入力が第3のグルコース閾値未満である場合、ロジックはブロック1460に進む。
【0110】
ブロック1458の第3の関数では、グルカゴンボーラスは、グルコースの変化速度(dPG/dt)に基づいて決定される。グルコースの変化速度が第3の速度閾値(RPG3)よりも大きい場合、グルカゴンボーラスはゼロに設定される(Gln=0)。ブロック1458でグルカゴンボーラスを設定した後、コントローラ24はブロック1470に進む。
【0111】
ブロック1460において、グルコース入力(G)が第4のグルコース閾値(G)よりも大きい場合、グルカゴンボーラスは、生理的グルコースの変化速度(dPG/dt)に基づいて、ブロック1462の第4の関数によって決定される。グルコース入力が第4のグルコース閾値未満である場合、ロジックはブロック1464に進む。
【0112】
ブロック1462の第4の関数では、グルカゴンボーラスは、グルコースの変化速度(dPG/dt)に基づいて決定される。グルコースの変化速度が第4の速度閾値(RPG4)よりも大きい場合、グルカゴンボーラスはゼロに設定される(Gln=0)。ブロック1462でグルカゴンボーラスを設定した後、コントローラ24はブロック1470に進む。
【0113】
ブロック1464において、グルコース入力(G)が第5のグルコース閾値(G45)よりも大きい場合、グルカゴンボーラスは、生理的グルコースの変化速度(dPG/dt)に基づいて、ブロック1466の第5の関数によって決定される。グルコース入力が第5のグルコース閾値未満である場合、ロジックはブロック1468に進む。
【0114】
ブロック1466の第5の関数では、グルカゴンボーラスは、グルコースの変化速度(dPG/dt)に基づいて決定される。グルコースの変化速度が第5の速度閾値(RPG5)よりも大きい場合、グルカゴンボーラスはゼロ(Gln=0)に設定される。ブロック1466でグルカゴンボーラスを設定した後、コントローラ24はブロック1470に進む。
【0115】
ブロック1468の第6の関数では、グルカゴンボーラスは、グルコースの変化速度(dPG/dt)に基づいて決定される。グルコースの変化速度が第6の速度閾値(RPG6)よりも大きい場合、グルカゴンボーラスはゼロに設定される(Gln=0)。ブロック1468でグルカゴンボーラスを設定した後、コントローラはブロック1470に進む。
【0116】
例示の実施形態では、一次グルコース閾値は第1のグルコース閾値よりも大きく、第1のグルコース閾値は第2のグルコース閾値よりも大きく、第2のグルコース閾値は第3のグルコース閾値よりも大きく、第3のグルコース閾値は第4のグルコース閾値よりも大きく、かつ第4のグルコース閾値は第5のグルコース閾値よりも大きい。
【0117】
ブロック1470では、第1の関数から第6の関数のうちの1つによって、ブロック1450~1468のうちの1つで決定されたグルカゴンボーラスは、体内の活性インスリンおよび推定基礎インスリン必要量(IEBN)に基づいて更新され得る。体内の活性インスリンまたはオンボードインスリン(IOB)は、選択状態ベクトルのインスリンコンパートメントのインスリンの合計である。図5および式1に表される一実施形態では、インスリンコンパートメントは、2つの皮下コンパートメント(IS1、IS1)および2つのボーラスコンパートメント(IB1、IB1)を含む。IOBは、図4のブロック120、130によって要求される経時的な基礎偏差に基づいている。次に、ブロック1470からのグルカゴンボーラス要求または1435からのゼロ要求は、グルカゴンボーラスブロック180に渡される。
【0118】
食事ボーラス(Meal Bolus)
ここで図10に示されるフローチャート700を参照すると、患者14に食事ボーラスで送達されるべき薬物(例えば、インスリン)の量を決定し、生理的グルコース濃度を、食事中および食事後の所望のレベルまたは範囲に維持するときに、様々なロジック規則が適用され得る。ブロック702では、現在の生理的グルコース濃度(PG)濃度および食事データが受信される。ブロック704において、コントローラ24は、少なくとも生理的グルコース濃度の変化速度(dPG/dt)を決定してもよい。dPG/dtは、本明細書で説明される少なくとも1つの方法を含む任意の好適な方法によって決定されてもよい。食事ボーラスは、食事中の炭水化物の量(CHO)、インスリンと炭水化物との比率(ICR)、およびボーラス減衰因子(PCHO)から決定され、ここで、生理的グルコースが比較的低い場合、および/または値が減少している場合、ボーラス減衰因子は、食事ボーラスを減少させる。MMPCアルゴリズム100により提供される生理的グルコースの閉ループ制御は、正常血糖を維持する必要がある場合、食事ボーラスの減少を補うために、追加のインスリンを提供するための方法を提供する。
【0119】
一実施形態では、生理的グルコース濃度値は、CGM22から直接提供される。いくつかの実施形態では、生理的グルコース濃度は、図4のブロック126に関連して上述したような選択状態ベクトルの現在の生理的グルコース濃度である。別の実施形態では、食事ボーラスアルゴリズムは、CGM22によるグルコース測定から推定された生理的グルコース値を使用する。
【0120】
ここで図1図2を参照すると、食事ボーラスを決定するとき、システム10は、グルコースセンサ22およびUI20のうちの少なくとも1つからの入力を用いて、食事ボーラス量を決定することができる。食事ボーラスの予備値は、食事の炭水化物含有量をインスリンと炭水化物との比率で割った値であり得る。食事ボーラスの予備値は、コントローラ24によって決定された生理的グルコース値に基づいて減衰されてもよい。食事の炭水化物含有量は、UI20で明示的に入力されてもよいし、またはUI20で供給された食事データからコントローラ24によって推測されてもよい。インスリンと炭水化物との比率は、UI20で入力され、および/またはコントローラ24によって読み取り可能なメモリに格納されてもよい。食事の炭水化物含有量は、ユーザの定性的判断として、ユーザが入力してもよい。例えば、ユーザは、システム10のUI20を介して、食事のサイズを示すことができる。いくつかの実施形態では、食事のサイズは、小、中、大、またはスナックなどの複数のカテゴリーから選択され得るが、これらに限定されない。
【0121】
再び図10のフローチャート700を参照すると、食事ボーラス(BOL)は、食事の炭水化物含有量(CHO)、インスリンと炭水化物との比率(ICR)、および減衰因子から計算され得る。減衰因子は、生理的グルコース濃度および生理的グルコースの変化速度に依存し、ブロック706で事前定義された式から決定される。食事ボーラスは、ブロック708で決定される。ブロック712において、食事ボーラスは、ブロック712における総日インスリン(TDD)の事前定義された分率未満に制限される。結果として得られた食事ボーラスは、送達要求としてポンプ12に渡され、ポンプ12は、インスリン食事ボーラスをユーザに送達することができる。
【0122】
食事ボーラスアルゴリズムは、少量の食事の食事ボーラスを、大量の食事とは異なる方法で減衰させる場合がある。例えば、食事の炭水化物含有量が炭水化物閾値(CTHD)を超えると推定される場合、食事ボーラスは、炭水化物値(CHO)と減衰因子(ACHO)の積を、インスリンと炭水化物との比率(ICR)で割ったものとして計算され得る。
【数19】
この実施例を続けると、炭水化物含有量が同じ炭水化物閾値よりも少ないと推定される場合、食事ボーラス計算は次のように変更されてもよい。
【数20】
食事ボーラスの方程式(式19)は、所与のACHOのボーラス減衰の大きさが炭水化物閾値未満で一定になるように、減衰因子(ACHO)によって少量の食事の食事ボーラスの減少を修正する。式19では、ボーラス減衰の大きさは、炭水化物閾値を超える食事の炭水化物含有量に比例し、かつ同じ炭水化物閾値を下回る少量の食事の炭水化物閾値に比例する。いくつかの実施形態では、炭水化物閾値は70グラムであるが、他の好適な閾値が提供されてもよい。
【0123】
減衰因子ACHOは、生理的グルコースと生理的グルコースの変化速度の関数である。減衰因子は、生理的グルコースの増加および生理的グルコースの変化速度の増加の両方で増加する。減衰因子は、下限値および上限値によって制限される場合がある。いくつかの実施形態では、減衰因子の下限は0.8である。いくつかの実施形態では、減衰因子の上限は1.0である。いくつかの実施形態では、減衰因子は、PGおよびdPG/dtのスプラインフィットから表Iの値に決定することができる。
【表1】
【0124】
いくつかの実施形態では、コントローラ24は、生理的グルコース(PG)値および生理的グルコースの変化速度(dPG/dt)値の1組の線形補間から減衰因子を決定してもよい。生理的グルコースは、CGMによっておよび/または選択状態ベクトル(図3のブロック126)から決定された推定生理的グルコース(PG)であってもよい。生理的グルコースの変化速度(dPG/dt)は、いくつかの様式で決定され得る。いくつかの実施形態では、PGの変化速度は、60*(PG(t)-PG(t-dt))/dtであり、ここで、dtは20分であり、dPG/dtはmMol/L/hrの単位を有する。
【0125】
この実施例では、食事減衰(ACHO)は1.0~0.8の範囲であり、生理的グルコース濃度が低い(例えば、6.5mmol/L未満)場合と時間の経過とともに減少する場合、減衰値は低くなる。
【0126】
ここで図10を参照すると、ブロック708からの減衰された食事ボーラス(BOL)は、インスリンの総日投与量(TDD)に基づいて、ブロック712で制限され得る。いくつかの実施形態では、食事ボーラスは、所定の上限以下に制限される。食事ボーラスが所定の上限よりも大きい場合、食事ボーラスは所定の上限に等しく設定される。いくつかの実施形態では、上限はTDDの分率である。一実施形態では、上限はTDDの5分の1である。次いで、ブロック712から得られた制限された食事ボーラスは、ブロック714に渡される。
【0127】
ブロック708で決定された食事ボーラス(BOL)に加えて、上述のようにブロック704で決定された推定生理的グルコースに基づいて、ブロック710で補正ボーラス(BOL)が決定される。いくつかの実施形態では、補正ボーラスはまた、モデル内のオンボードインスリン(IOB)または活性インスリンに基づいている。IOBは、現在の時間での選択状態ベクトルのインスリン状態変数の合計である。インスリン状態変数は、モデルのインスリンコンパートメント内のインスリンの量または濃度を表す。図5および式1に表されるいくつかの実施形態では、インスリンコンパートメントは、2つの皮下コンパートメント(IS1、IS1)およびボーラスコンパートメント(IB1、IB1)を含む。いくつかの実施形態では、モデルの様々なコンパートメントのインスリンは、経時的なインスリンボーラスと経時的な基礎偏差の合計から、血液コンパートメント220で輸送または変換されたインスリンを差し引いたものを表す。一実施形態において、モデルおよびIOBは、これらがこの実施形態においてもモデルに含まれない内因性グルコース産生を補償すると想定される場合、基礎プロファイルインスリンまたは基礎投与量インスリンを含まない。いくつかの実施形態では、ブロック714で、補正ボーラスが制限食事ボーラスに追加され、結果として得られたボーラスが、インスリン送達デバイス12から要求される。他の実施形態では、制限食事ボーラスの要求は、補正ボーラスの要求とは独立してポンプ12に渡される。
【0128】
補正ボーラス(Bol)は、推定生理的グルコース値(PG)および推定オンボードインスリン(IOB)に基づいて変化する。実例として、補正ボーラスは、低PG閾値未満のPG値ではゼロであり、PGが低PG閾値を超えると増加する。PGを使用したボーラス補正値の増加速度は、高PG閾値を超えると減少する。
【0129】
図11図28は、患者のグルコースを制御するためにシステム10で実行することができる、方法の例示的なフローチャートを示す。図11の方法2100は、1つ以上のコントローラを使用して、各々が1組の値を有する複数のモデルパラメータを含む、複数のモデルを実行することにより、マルチモデル予測コントローラアルゴリズムを実行すること(ステップ2102)と、1つ以上のコントローラを使用して、複数の実行されたモデルのうちの1つを選択すること(ステップ2104)と、1つ以上のコントローラを使用して、選択された実行されたモデルに少なくとも部分的に基づいて、第1の薬剤投与量を決定すること(ステップ2106)と、を含む。
【0130】
図12の方法2200は、1つ以上のコントローラを使用して、複数の状態ベクトルを時間内に伝搬することにより、マルチモデル予測コントローラアルゴリズムを実行すること(ステップ2202)と、1つ以上のコントローラを使用して、複数の伝搬された状態ベクトルのうちの1つを選択すること(ステップ2204)と、1つ以上のコントローラを使用して、選択された伝搬された状態ベクトルに少なくとも部分的に基づいて、第1の薬剤投与量を決定すること(ステップ2206)と、を含む。
【0131】
図13の方法2300は、複数の状態ベクトルを定義することであって、各状態ベクトルが、異なるモデルと関連付けられ、各状態ベクトルが、生理的グルコースレベルを含む、定義すること(ステップ2302)と、事前選択された間隔で以下:患者の現在のグルコース濃度を測定すること、現在のグルコース濃度をコントローラに送信すること、現在のグルコース濃度を受信すること、関連付けられたモデルに基づいて、複数の状態ベクトルを時間内に伝搬すること、現在のグルコース濃度に基づいて、伝搬された状態ベクトルをフィルタリングすること、伝搬された状態ベクトルおよび関連付けられたモデルのうちの1つを選択すること、選択された状態ベクトルおよび関連付けられたモデルを使用して、予測期間中の生理的グルコース軌道を予測すること、生理的グルコース軌道を使用して、予測期間中の最適なインスリン軌道の目的関数の解くこと、ならびに最適なインスリン軌道からインスリン投与量を決定すること、を実行すること(ステップ2304)と、を含む。
【0132】
図14の方法2400は、コントローラで、グルコース濃度および基礎インスリン投与量を含む患者データを受信すること(ステップ2402)と、グルコース濃度に少なくとも部分的に基づいて、患者の生理的グルコースを推定すること(ステップ2404)と、基礎インスリン投与量から最適なインスリン偏差を決定すること(ステップ2406)と、最適なインスリン偏差が所定の閾値未満であると決定すること(ステップ2408)と、最適なインスリン偏差が所定の閾値未満であると決定したことに応じて、因子を1よりも大きい値に設定すること(ステップ2410)と、基礎インスリン投与量を、最適なインスリン偏差に因子を掛けた値に加算することにより、インスリン投与量を決定すること(ステップ2412)と、を含む。
【0133】
図15の方法2500は、コントローラで、グルコース濃度および患者データを受信すること(ステップ2502)と、グルコース濃度に少なくとも部分的に基づいて、患者の生理的グルコースを推定すること(ステップ2504)と、推定された生理的グルコースに応じて、インスリン投与量を決定すること(ステップ2506)と、過去の第2の期間の平均インスリン投与量が事前定義されたインスリン閾値未満であると決定すること(ステップ2508)と、過去の第2の期間の平均インスリン投与量が事前定義されたインスリン閾値未満であると決定したことに応じて、インスリン投与量を、第1の期間の基礎インスリン投与量以上に制限すること(ステップ2510)と、を含む。
【0134】
図16の方法2600は、コントローラで、グルコース濃度、インスリンの総日投与量、および食事データを受信すること(ステップ2602)と、状態ベクトルおよびモデルを定義することであって、状態ベクトルが、1つ以上のインスリン状態変数、1つ以上の炭水化物状態変数、および生理的グルコース状態変数を含む、定義すること(ステップ2604)と、モデルに基づいて、時間内に状態ベクトルを伝搬すること(ステップ2606)と、グルコース濃度に基づいて、伝搬された状態ベクトルをフィルタリングすること(ステップ2608)と、少なくとも1つのインスリン状態変数にインスリンの量を追加することであって、追加されたインスリンの量が、食事データおよびインスリンの総日投与量に基づいている、追加すること(ステップ2610)と、状態ベクトルおよび関連付けられたモデルに基づいて、インスリン投与量を決定すること(ステップ2612)と、を含む。
【0135】
図17の方法2700は、コントローラで、基礎インスリン投与量、食事データ、およびインスリンと炭水化物との比率を受信すること(ステップ2702)と、患者の活性インスリンを推定することであって、患者の活性インスリンが、基礎インスリン投与量を含まない、推定すること(ステップ2704)と、グルコース濃度に部分的に基づいて、患者の生理的グルコースおよび生理的グルコースの変化速度を推定すること(ステップ2706)と、食事データから食事炭水化物値を決定すること(ステップ2708)と、推定された生理的グルコースおよび生理的グルコースの変化速度に基づいて、減衰因子を決定すること(ステップ2710)と、食事データ、インスリンと炭水化物との比率、および減衰因子に基づいて、食事ボーラスを決定すること(ステップ2712)と、患者の活性インスリンに基づいて、食事ボーラスを修正すること(ステップ2714)と、を含む。
【0136】
図18の方法2800は、グルコース濃度、基礎インスリン投与量、および食事データを、コントローラに送信すること(ステップ2802)と、患者の活性インスリンを推定することであって、患者の活性インスリンが、基礎インスリン投与量を含まない、推定すること(ステップ2804)と、グルコース濃度に部分的に基づいて、患者の生理的グルコースおよび生理的グルコースの変化速度を推定すること(ステップ2806)と、食事データから食事炭水化物値を決定すること(ステップ2808)と、推定された生理的グルコースおよび生理的グルコースの変化速度に基づいて、減衰因子を決定すること(ステップ2810)と、食事データ、インスリンと炭水化物との比率、および減衰因子に基づいて、食事ボーラスを決定すること(ステップ2812)と、を含み、食事ボーラスは、食事炭水化物値が所定の食事炭水化物閾値を超える場合に、食事炭水化物値に比例して減衰し、かつ食事ボーラスは、所定の食事炭水化物閾値以下の食事炭水化物値に対して、所定の食事炭水化物閾値に比例して減衰される。
【0137】
図19の方法2900は、グルコース濃度をコントローラに送信すること(ステップ2902)と、患者の生理的グルコースおよび生理的グルコースの変化速度を推定すること(ステップ2904)と、推定された生理的グルコースに基づいて、グルコース速度閾値を決定すること(ステップ2906)と、生理的グルコースの変化速度がグルコース速度閾値を超える場合に、薬剤投与量要求をゼロに設定すること(ステップ2908)と、生理的グルコースの変化速度がグルコース速度閾値を超える場合に、生理的グルコースおよび生理的グルコースの変化速度の所定の関数に基づいて、薬剤投与量要求を決定すること(ステップ2910)と、を含む。
【0138】
図20の方法3000は、グルコース濃度、基礎インスリン投与量、および食事データを、コントローラに送信すること(ステップ3002)と、生理的グルコース値、生理的グルコース値の変化速度、および患者の活性インスリンの量を決定することであって、患者の活性インスリンが、基礎インスリンプロファイルを含まない、決定すること(ステップ3004)と、決定された生理的グルコース値および生理的グルコース値の変化速度に基づいて、薬剤投与量を決定すること(ステップ3006)と、患者の活性インスリンの量に基づいて、薬剤投与量を修正すること(ステップ3008)と、を含む。
【0139】
図21の方法3100は、グルコース濃度および食事データを、コントローラに送信すること(ステップ3102)と、グルコース濃度に部分的に基づいて、患者の生理的グルコースおよび生理的グルコースの変化速度を推定すること(ステップ3104)と、事前定義された期間内に食事が消費された場合に、薬剤投与量をゼロに設定すること(ステップ3106)と、事前定義された期間内に食事が消費されなかった場合に、生理的グルコースに基づいて、薬剤投与量を決定すること(ステップ3108)と、を含む。
【0140】
図22の方法3200は、複数の状態ベクトルを定義することであって、各状態ベクトルが、異なるモデルおよび異なる共分散行列と関連付けられ、複数の状態ベクトルが、1つ以上のインスリン状態変数、1つ以上の炭水化物状態変数、および生理的グルコース状態変数を含む、定義すること(ステップ3202)と、関連付けられたモデルに基づいて、複数の状態ベクトルを時間内に伝搬すること(ステップ3204)と、関連付けられた共分散行列およびグルコース濃度を使用して、カルマンフィルタで伝搬された複数の状態ベクトルをフィルタリングすること(ステップ3206)と、少なくとも1つのフィルタリングされた状態ベクトルのインスリン状態変数のうちの1つを修正して、少なくとも1つのフィルタリングされた状態ベクトルと少なくとも1つのフィルタリングされていない状態ベクトルとの間の状態変数の差を制限すること(ステップ3208)と、フィルタリングされた状態ベクトルおよび関連付けられたモデルのうちの1つを選択すること(ステップ3210)と、選択されたフィルタリングされた状態ベクトルおよび関連付けられたモデルを用いて、予測期間中に生理的グルコース軌道を予測すること(ステップ3212)と、生理的グルコース軌道を使用して、予測期間中に最適なインスリン軌道の目的関数を解くこと(ステップ3214)と、最適なインスリン軌道からインスリン投与量要求を決定すること(ステップ3216)と、を含む。
【0141】
図23の方法3300は、状態ベクトル、モデル、および共分散行列を定義することであって、状態ベクトルが、インスリン状態変数、炭水化物状態変数、および生理的グルコース状態変数を含む、定義すること(ステップ3302)と、モデルに基づいて、時間内に状態ベクトルを伝搬すること(ステップ3304)と、共分散行列およびグルコース濃度を使用して、カルマンフィルタで伝搬された状態ベクトルをフィルタリングすること(ステップ3306)と、フィルタリングされた状態ベクトル内の1つの状態変数を修正して、フィルタリングされた状態ベクトルとフィルタリングされていない状態ベクトルとの間の状態変数の差を制限すること(ステップ3308)と、修正およびフィルタリングされた状態ベクトルに基づいて、インスリン投与量要求を決定すること(ステップ3310)と、を含む。
【0142】
図24の方法3400は、状態ベクトル、モデル、および共分散行列を定義することであって、状態ベクトルが、インスリン状態変数、炭水化物状態変数、および生理的グルコース状態変数を含む、定義すること(ステップ3402)と、モデルに基づいて、時間内に状態ベクトルを伝搬すること(ステップ3404)と、共分散行列およびグルコース濃度を使用して、カルマンフィルタで伝搬された状態ベクトルをフィルタリングすること(ステップ3406)と、フィルタリングされた状態ベクトル内の1つの状態変数を修正して、フィルタリングされた状態変数と事前定義された値との間の差を制限すること(ステップ3408)と、修正およびフィルタリングされた状態ベクトルに基づいて、インスリン投与量要求を決定すること(ステップ3410)と、を含む。
【0143】
図25の方法3500は、状態ベクトル、モデル、および共分散行列を定義することであって、状態ベクトルが、インスリン状態変数、炭水化物状態変数、および生理的グルコース状態変数を含み、共分散行列が、各状態変数と関連付けられた対角要素、および各対角要素と関連付けられた交差項を含む、定義すること(ステップ3502)と、過去の所定の期間内に食事が発生しなかった場合に、炭水化物対角要素および関連付けられた交差項をゼロに設定することにより、共分散行列を修正し、モデルに基づいて、状態ベクトルを時間内に伝搬すること(ステップ3504)と、修正された共分散行列およびグルコース濃度を使用して、カルマンフィルタで伝搬された状態ベクトルをフィルタリングすること(ステップ3506)と、フィルタリングされた状態ベクトルに基づいて、インスリン投与量要求を決定すること(ステップ3508)と、を含む。
【0144】
図26の方法3600は、状態ベクトル、モデル、および共分散行列を定義することであって、状態ベクトルが、インスリン状態変数、炭水化物状態変数、および生理的グルコース状態変数を含み、共分散行列が、各状態変数と関連付けられた対角要素、および各対角要素と関連付けられた交差項を含む、定義すること(ステップ3602)と、炭水化物の合計が、閾値を超え、かつ平均食事時間が、低閾値と高閾値との間にある場合に、炭水化物対角要素を非ゼロ値に設定することにより、共分散行列を修正すること(ステップ3604)と、炭水化物の合計が、閾値を超え、かつ平均食事時間が、低閾値と高閾値との間にある場合に、ボーラスインスリン対角要素を非ゼロ値に設定することにより、共分散行列を修正すること(ステップ3606)と、モデルに基づいて、状態ベクトルを時間内に伝搬すること(ステップ3608)と、修正された共分散行列およびグルコース濃度を使用して、カルマンフィルタで伝搬された状態ベクトルをフィルタリングすること(ステップ3610)と、フィルタリングされた状態ベクトルに基づいて、インスリン投与量要求を決定すること(ステップ3612)と、を含む。
【0145】
図27の方法3700は、複数の状態ベクトルを定義することであって、各状態ベクトルが、異なるモデルと関連付けられ、各状態ベクトルが、生理的グルコースレベルを含む、定義すること(ステップ3702)と、事前定義された間隔で患者の現在のグルコース濃度を測定すること(ステップ3704)と、事前定義された間隔でグルコース濃度を受信すること(ステップ3706)と、事前定義された間隔の分率で、関連付けられたモデルに基づいて、各状態ベクトルを時間内に伝搬すること(ステップ3708)と、事前定義された間隔で、関連付けられたモデルに基づいて、状態ベクトルを時間内に伝搬すること(ステップ3710)と、事前定義された間隔で、現在のグルコース濃度に基づいて、各伝搬された状態ベクトルをフィルタリングすること(ステップ3712)と、事前定義された間隔で、各状態ベクトルの生理的グルコース値および現在のグルコース濃度に部分的に基づいて、フィルタリングおよび伝搬された状態ベクトルならびに関連付けられたモデルのうちの1つを選択すること(ステップ3714)と、事前定義された間隔で選択された状態ベクトルおよび関連付けられたモデルを用いて、予測期間中に生理的グルコース軌道を予測すること(ステップ3716)と、事前定義された間隔での生理的グルコース軌道を使用して、予測期間中に最適なインスリン軌道の目的関数を解くこと(ステップ3718)と、事前定義された間隔で最適なインスリン軌道からインスリン投与量要求を決定すること(ステップ3720)と、を含む。
【0146】
図28の方法3800は、複数の状態ベクトルを定義することであって、各状態ベクトルが、異なるモデルと関連付けられ、かつ生理的グルコースレベルを含む、定義すること(ステップ3802)と、第1の事前定義された間隔で患者の現在のグルコース濃度を測定すること(ステップ3804)と、第1の事前定義された間隔でグルコース濃度を受信すること(ステップ3806)と、第1の事前定義された間隔で、関連付けられたモデルに基づいて、各状態ベクトルを時間内に伝搬すること(ステップ3808)と、第1の事前定義された間隔で、現在のグルコース濃度に基づいて、各状態ベクトルをフィルタリングすること(ステップ3810)と、第2の事前定義された間隔で、各状態ベクトルの生理的グルコース値および現在のグルコース濃度に部分的に基づいて、状態ベクトルおよび関連付けられたモデルのうちの1つを選択することであって、第2の事前定義された間隔が、第1の事前定義された間隔より長い、選択すること(ステップ3812)と、第2の事前定義された間隔で選択された状態ベクトルおよび関連付けられたモデルを用いて、予測期間中に生理的グルコース軌道を予測すること(ステップ3814)と、第2の事前定義された間隔での生理的グルコース軌道を使用して、予測期間中に最適なインスリン軌道の目的関数を解くこと(ステップ3816)と、第2の事前定義された間隔で、最適なインスリン軌道からインスリン投与量要求を決定すること(ステップ3818)と、を含む。
【0147】
本開示の例示的な態様には、以下が含まれる。
1.患者のグルコースを制御するためのシステムであって、
薬剤投与量を患者に送達するように構成されている、薬剤送達デバイスと、
コントローラであって、薬剤送達デバイスに動作可能に結合されており、かつ
1組の値を有する複数のモデルパラメータを各々含む、複数のモデルを実行することにより、少なくとも部分的にマルチモデル予測コントローラアルゴリズムを実行することと、
複数の実行されたモデルのうちの1つを選択することと、
選択された実行されたモデルに少なくとも部分的に基づいて、第1の薬剤投与量を決定することと、を行うように動作可能である、制御ロジックを含む、コントローラと、を含む、システム。
2.制御ロジックが、
選択された実行されたモデルに少なくとも部分的に基づいて、患者の将来のグルコースレベルを予測することを行うようにさらに動作可能であり、第1の薬剤投与量の決定が、予測された将来のグルコースレベルに少なくとも部分的に基づいている、態様1に記載のシステム。
3.制御ロジックが、
予測された将来のグルコースレベルと公称の目標グルコース値との間の差を決定することを行うようにさらに動作可能であり、第1の薬剤投与量の決定が、予測された将来のグルコースレベルと公称の目標グルコース値との間の差に少なくとも部分的に基づいている、態様2に記載のシステム。
4.将来のグルコースレベルの予測が、基礎インスリンプロファイルに少なくとも部分的に基づいている、態様2または3に記載のシステム。
5.将来のグルコースレベルの予測が、基礎インスリンプロファイルに少なくとも部分的に基づいており、かつ食事ボーラスを伴わない、態様2または3に記載のシステム。
6.複数の実行されたモデルのうちの1つを選択することを行うように動作可能である制御ロジックが、
間質グルコースの計算されたレベルと、間質グルコースの測定されたレベルとの比較に応じて、複数の実行されたモデルのうちの1つを選択することを行うように動作可能である、制御ロジックを含む、態様1に記載のシステム。
7.間質グルコースの測定されたレベルが、間質グルコースの複数の過去の測定されたレベルを含む、態様6に記載のシステム。
8.複数の実行されたモデルのうちの1つを選択することを行うように動作可能である制御ロジックが、
公称の目標グルコース値に少なくとも部分的に基づいて、複数の実行されたモデルのうちの1つを選択することを行うように動作可能である、制御ロジックを含む態様1に記載のシステム。
9.公称の目標グルコース値が、運動告知に応じて増加する、態様8に記載のシステム。
10.公称の目標グルコース値が、食事告知に応じて増加する、態様8に記載のシステム。
11.制御ロジックが、
マルチモデル予測コントローラアルゴリズムを再実行することと、
複数の実行されたモデルのうちの異なる1つを選択することと、
選択された実行されたモデルに少なくとも部分的に基づいて、第2の薬剤投与量を決定することと、を行うようにさらに動作可能である、態様1に記載のシステム。
12.制御ロジックが、
複数のモデルパラメータおよび1組の値を使用して、複数のモデルを再実行することを含む、マルチモデル予測コントローラアルゴリズムを再実行することと、
複数の実行されたモデルのうちの異なる1つを選択することと、
選択された実行されたモデルに少なくとも部分的に基づいて、第2の薬剤投与量を決定することと、を行うようにさらに動作可能である、態様1に記載のシステム。
13.複数のモデルパラメータが、インスリン感受性、インスリン時定数、食事行動時定数、センサ時定数、インスリンと炭水化物との比率、ユーザインターフェースからの入力、およびコントローラゲイン値のうちの少なくとも1つを含む、態様1に記載のシステム。
14.複数のモデルパラメータが、インスリン感受性、インスリン時定数、食事行動時定数、センサ時定数、およびインスリンと炭水化物との比率を含む、態様1に記載のシステム。
15.複数のモデルの各々が、生理的グルコースおよび間質グルコースのレベルを計算する、1組の線形微分方程式を含む、態様1に記載のシステム。
16.1組の線形微分方程式が、患者におけるインスリンの貯蔵および輸送をモデル化する、態様15に記載のシステム。
17.薬剤送達デバイスが、決定された第1および/または第2の薬剤投与量に少なくとも部分的に基づいて、患者にインスリンを送達するように構成されている、態様1~16のいずれかに記載のシステム。
18.コントローラに動作可能に結合されており、かつ患者からの入力を受信するように構成されている、ユーザインターフェースをさらに含む、態様1~17のいずれかに記載のシステム。
19.コントローラに動作可能に結合されており、かつ患者と関連付けられたグルコースデータを測定するように構成されている、グルコース測定デバイスをさらに含み、第1の薬剤投与量の決定が、測定されたグルコースデータに少なくとも部分的に基づいている、態様1~18のいずれかに記載のシステム。
20.患者のグルコースを制御するための方法であって、
1つ以上のコントローラを使用して、1組の値を有する複数のモデルパラメータを各々含む、複数のモデルを実行することにより、マルチモデル予測コントローラアルゴリズムを実行することと、
1つ以上のコントローラを使用して、複数の実行されたモデルのうちの1つを選択することと、
1つ以上のコントローラを使用して、選択された実行されたモデルに少なくとも部分的に基づいて、第1の薬剤投与量を決定することと、を含む、方法。
21.1つ以上のコントローラを使用して、選択された実行されたモデルに少なくとも部分的に基づいて、患者の将来のグルコースレベルを予測することをさらに含み、第1の薬剤投与量の決定が、予測された将来のグルコースレベルに少なくとも部分的に基づいている、態様20に記載の方法。
22.1つ以上のコントローラを使用して、予測された将来のグルコースレベルと公称の目標グルコース値との間の差を決定することをさらに含み、第1の薬剤投与量の決定が、予測された将来のグルコースレベルと公称の目標グルコース値との間の差に少なくとも部分的に基づいている、態様21に記載の方法。
23.将来のグルコースレベルの予測が、基礎インスリンプロファイルに少なくとも部分的に基づいている、態様21または22に記載の方法。
24.将来のグルコースレベルの予測が、基礎インスリンプロファイルに少なくとも部分的に基づいており、かつ食事ボーラスを伴わない、態様21または22に記載の方法。
25.マルチモデル予測コントローラアルゴリズムを再実行することと、
複数の実行されたモデルのうちの異なる1つを選択することと、
選択された実行されたモデルに少なくとも部分的に基づいて、第2の薬剤投与量を決定することと、をさらに含む、態様20に記載の方法。
26.複数のモデルパラメータおよび1組の値を使用して、複数のモデルを再実行することを含む、マルチモデル予測コントローラアルゴリズムを再実行することと、
複数の実行されたモデルのうちの異なる1つを選択することと、
選択された実行されたモデルに少なくとも部分的に基づいて、第2の薬剤投与量を決定することと、をさらに含む、態様20に記載の方法。
27.複数のモデルパラメータが、インスリン感受性、インスリン時定数、食事行動時定数、センサ時定数、インスリンと炭水化物との比率、ユーザインターフェースからの入力、およびコントローラゲイン値のうちの少なくとも1つを含む、態様20に記載の方法。
28.複数のモデルパラメータが、インスリン感受性、インスリン時定数、食事行動時定数、センサ時定数、およびインスリンと炭水化物との比率を含む、態様20に記載の方法。
29.複数のモデルを実行することが、1組の線形微分方程式を実行して、生理的グルコースおよび間質グルコースのレベルを計算することを含む、態様20に記載の方法。
30.1組の線形微分方程式が、患者におけるインスリンの貯蔵および輸送をモデル化する、態様29に記載の方法。
31.複数の実行されたモデルのうちの1つを選択することが、間質グルコースの計算されたレベルと、間質グルコースの測定されたレベルとの比較に応じることである、態様20に記載の方法。
32.間質グルコースの測定されたレベルが、間質グルコースの複数の過去の測定されたレベルを含む、態様31に記載の方法。
33.複数の実行されたモデルのうちの1つを選択することが、公称の目標グルコース値に少なくとも部分的に基づいている、態様20に記載の方法。
34.公称の目標グルコース値が、運動告知に応じて増加する、態様33に記載の方法。
35.公称の目標グルコース値が、食事告知に応じて増加する、態様33に記載の方法。
36.薬剤送達デバイスを使用して、決定された第1および/または第2の薬剤投与量に応じて、患者にインスリンを送達することをさらに含む、態様20~35のいずれかに記載の方法。
37.コントローラに動作可能に結合されたグルコース測定デバイスを使用して、患者と関連付けられたグルコースデータを測定することをさらに含み、第1の薬剤投与量の決定が、測定されたグルコースデータに少なくとも部分的に基づいている、態様20~36のいずれかに記載の方法。
38.患者のグルコースを制御するためのシステムであって、
薬剤投与量を患者に送達するように構成されている、薬剤送達デバイスと、
コントローラであって、薬剤送達デバイスに動作可能に結合されており、かつ
時間内に複数の状態ベクトルを伝搬することにより、マルチモデル予測コントローラアルゴリズムを実行することと、
複数の伝搬された状態ベクトルのうちの1つを選択することと、
選択された伝搬された状態ベクトルに少なくとも部分的に基づいて、第1の薬剤投与量を決定することと、を行うように動作可能である、制御ロジックを含む、コントローラと、を含む、システム。
39.制御ロジックが、
選択された伝搬された状態ベクトルに少なくとも部分的に基づいて、患者の将来のグルコースレベルを予測することを行うようにさらに動作可能であり、第1の薬剤投与量の決定が、予測された将来のグルコースレベルに少なくとも部分的に基づいている、態様38に記載のシステム。
40.制御ロジックが、
予測された将来のグルコースレベルと公称の目標グルコース値との間の差を決定することを行うようにさらに動作可能であり、第1の薬剤投与量の決定が、予測された将来のグルコースレベルと公称の目標グルコース値との間の差に少なくとも部分的に基づいている、態様39に記載のシステム。
41.将来のグルコースレベルの予測が、基礎インスリンプロファイルに少なくとも部分的に基づいている、態様39または40に記載のシステム。
42.将来のグルコースレベルの予測が、基礎インスリンプロファイルに少なくとも部分的に基づいており、かつ食事ボーラスを伴わない、態様39または40に記載のシステム。
43.制御ロジックが、
伝搬された選択された状態ベクトルを、時間内にさらに伝搬すること、を行うように動作可能であり、第1の薬剤投与量が、さらに伝搬された選択された状態ベクトルに少なくとも部分的に基づいて、決定される、態様38に記載のシステム。
44.制御ロジックが、
マルチモデル予測コントローラアルゴリズムを再実行することと、
複数の伝搬された状態ベクトルのうちの異なる1つを選択することと、
選択された伝搬された状態ベクトルに少なくとも部分的に基づいて、第2の薬剤投与量を決定することと、を行うように動作可能である、態様38に記載のシステム。
45.複数のモデルパラメータが、インスリン感受性、インスリン時定数、食事行動時定数、センサ時定数、インスリンと炭水化物との比率、ユーザインターフェースからの入力、およびコントローラゲイン値のうちの少なくとも1つを含む、態様38に記載のシステム。
46.複数のモデルパラメータが、インスリン感受性、インスリン時定数、食事行動時定数、センサ時定数、およびインスリンと炭水化物との比率を含む、態様38に記載のシステム。
47.複数のモデルが、生理的グルコースおよび間質グルコースのレベルを計算する、1組の線形微分方程式を含む、態様38に記載のシステム。
48.1組の線形微分方程式が、患者におけるインスリンの貯蔵および輸送をモデル化する、態様47に記載のシステム。
49.複数の伝搬された状態ベクトルのうちの1つを選択することを行うように動作可能である制御ロジックが、
間質グルコースの計算されたレベルと、間質グルコースの測定されたレベルとの比較に応じて、複数の伝搬された状態ベクトルのうちの1つを選択することを行うように動作可能である、制御ロジックを含む、態様38に記載のシステム。
50.間質グルコースの測定されたレベルが、間質グルコースの複数の過去の測定されたレベルを含む、態様49に記載のシステム。
51.複数の伝搬された状態ベクトルのうちの1つを選択することを行うように動作可能である制御ロジックが、
公称の目標グルコース値に少なくとも部分的に基づいて、複数の状態ベクトルのうちの1つを選択することを行うように動作可能である、制御ロジックを含む、態様38に記載のシステム。
52.公称の目標グルコース値が、運動告知に応じて増加する、態様51に記載のシステム。
53.公称の目標グルコース値が、食事告知に応じて増加する、態様51に記載のシステム。
54.薬剤送達デバイスが、決定された第1および/または第2の薬剤投与量に応じて、患者にインスリンを送達するように構成されている、態様38~53のいずれかに記載のシステム。
55.コントローラに動作可能に結合されており、かつ患者からの入力を受信するように構成されている、ユーザインターフェースをさらに含む、態様38~54のいずれかに記載のシステム。
56.コントローラに動作可能に結合されており、かつ患者と関連付けられたグルコースデータを測定するように構成されている、グルコース測定デバイスをさらに含み、第1の薬剤投与量の決定が、測定されたグルコースデータに少なくとも部分的に基づいている、態様38~55のいずれかに記載のシステム。
57.患者のグルコースを制御するための方法であって、
1つ以上のコントローラを使用して、複数の状態ベクトルを時間内に伝搬することにより、マルチモデル予測コントローラアルゴリズムを実行することと、
1つ以上のコントローラを使用して、複数の伝搬された状態ベクトルのうちの1つを選択することと、
1つ以上のコントローラを使用して、選択された伝搬された状態ベクトルに少なくとも部分的に基づいて、第1の薬剤投与量を決定することと、を含む、方法。
58.1つ以上のコントローラを使用して、選択された伝搬された状態ベクトルに少なくとも部分的に基づいて、患者の将来のグルコースレベルを予測することをさらに含み、第1の薬剤投与量の決定が、予測された将来のグルコースレベルに少なくとも部分的に基づいている、態様57に記載の方法。
59.1つ以上のコントローラを使用して、予測された将来のグルコースレベルと公称の目標グルコース値との間の差を決定することをさらに含み、第1の薬剤投与量の決定が、予測された将来のグルコースレベルと公称の目標グルコース値との間の差に少なくとも部分的に基づいている、態様58に記載の方法。
60.将来のグルコースレベルの予測が、基礎インスリンプロファイルに少なくとも部分的に基づいている、態様58または59に記載の方法。
61.将来のグルコースレベルの予測が、基礎インスリンプロファイルに少なくとも部分的に基づいており、かつ食事ボーラスを伴わない、態様58または59に記載の方法。
62.マルチモデル予測コントローラアルゴリズムを再実行することと、
複数の伝搬された状態ベクトルおよびその関連付けられたモデルのうちの異なる1つを選択することと、
選択された伝搬された状態ベクトルおよびその関連付けられたモデルに少なくとも部分的に基づいて、第2の薬剤投与量を決定することと、をさらに含む、態様57に記載の方法。
63.複数の伝搬された状態ベクトルが各々、間質グルコースの計算されたレベルを表す、状態変数を含み、複数の伝搬された状態ベクトルのうちの1つおよびその関連付けられたモデルを選択することが、
間質グルコースの計算されたレベルと、間質グルコースの測定されたレベルとの比較に応じて、複数の伝搬された状態ベクトルおよびその関連付けられたモデルのうちの1つを選択することを含む、態様57に記載の方法。
64.間質グルコースの測定されたレベルが、間質グルコースの複数の過去の測定されたレベルを含む、態様63に記載の方法。
65.複数の伝搬された状態ベクトルおよびその関連付けられたモデルのうちの1つを選択することが、
公称の目標グルコース値に少なくとも部分的に基づいて、複数の状態ベクトルのうちの1つを選択することを含む、態様57に記載の方法。
66.公称の目標グルコース値が、運動告知に応じて増加する、態様65に記載の方法。
67.公称の目標グルコース値が、食事告知に応じて増加する、態様65に記載の方法。
68.薬剤送達デバイスを使用して、決定された第1および/または第2の薬剤投与量に応じて、患者にインスリンを送達することをさらに含む、態様57~67のいずれかに記載の方法。
69.コントローラに動作可能に結合されたグルコース測定デバイスを使用して、患者と関連付けられたグルコースデータを測定することをさらに含み、第1の薬剤投与量の決定が、測定されたグルコースデータに少なくとも部分的に基づいている、態様57~68のいずれかに記載の方法。
70.患者の血糖を制御するためのシステムであって、
インスリン投与量を患者に送達するように構成されている、インスリン送達デバイスと、
コントローラであって、
事前選択された間隔で、現在のグルコースデータを受信することと、
複数の状態ベクトルを定義することであって、各状態ベクトルが、異なるモデルと関連付けられており、各状態ベクトルが、体内グルコースレベルを含んでいる、定義することと、
関連付けられたモデルに基づいて、複数の状態ベクトルを時間内に伝搬することと、
現在のグルコースデータに基づいて、伝搬された状態ベクトルをフィルタリングすることと、
伝搬された状態ベクトルおよびその関連付けられたモデルのうちの1つを選択することと、
選択された状態ベクトルおよび関連付けられたモデルを使用して、予測期間中の体内グルコースレベルを予測することと、
予測期間中の最適なインスリン軌道の目的関数を解くことと、
最適なインスリン軌道から、インスリン投与量を決定することと、
決定されたインスリン投与量を、インスリン送達デバイスに送達する要求を送信することと、を行うように動作可能である、制御ロジックを含む、コントローラと、を含む、システム。
71.体内グルコースレベルを記憶するためのメモリをさらに含み、制御ロジックが、
各状態ベクトルおよびグルコースデータの体内グルコースレベルをメモリに記憶することと、
メモリから、複数の過去の間隔の各状態ベクトルおよびグルコースデータの体内グルコースレベルを呼び戻すことと、
状態ベクトルおよび関連付けられたモデルのうちの1つの選択が、メモリから呼び戻された体内グルコースレベルおよびグルコースデータに基づくことと、を行うようにさらに動作可能である、態様70に記載のシステム。
72.体内グルコースレベルを記憶するためのメモリをさらに含み、制御ロジックが、
グルコースデータに対する各状態ベクトルの体内グルコースレベルの誤差を決定することと、
体内グルコース誤差を、メモリに保存することと、
メモリから、複数の過去の間隔の各状態ベクトルの体内グルコース誤差を呼び戻すことと、
状態ベクトルおよび関連付けられたモデルのうちの1つの選択が、各状態ベクトルの体内グルコース誤差の合計に基づくことと、を行うようにさらに動作可能である、態様70に記載のシステム。
73.各状態ベクトルが、異なる共分散行列と関連付けられ、伝搬された状態ベクトルが、関連付けられた共分散行列を使用して、カルマンフィルタでフィルタリングされる、態様70に記載のシステム。
74.コントローラが、性能関数に基づいて、測定されたグルコースデータに最も密接に一致した、状態ベクトルおよびその関連付けられたモデルを選択するように構成されており、性能関数が、生理的グルコースと測定されたグルコースの加重差の合計である、態様70に記載のシステム。
75.食事データを受信するためのユーザインターフェースをさらに含み、コントローラが、ユーザインターフェースから、食事データを受信するように構成されており、コントローラが、食事後の事前定義された期間の状態ベクトルおよびそれらと関連付けられたモデルの減少した組から、状態ベクトルおよびその関連付けられたモデルを選択するように構成されている、態様70~74のいずれかに記載のシステム。
76.状態ベクトルおよびそれらと関連付けられたモデルの減少した組が、事前定義された閾値未満のインスリン吸収時間を有する、態様75に記載のシステム。
77.食事データを表すユーザ入力を受信するためのユーザインターフェースをさらに含み、コントローラが、食事データを受信し、かつ状態ベクトルを伝搬およびフィルタリングした後に、インスリンの量を各状態ベクトルのインスリン状態変数まで増加させることにより、状態ベクトルを補正するように構成されており、追加されるインスリンの量が、食事データおよびインスリン必要量に基づいている、態様70~74のいずれかに記載のシステム。
78.コントローラが、目標グルコースを定義するように構成されており、目的関数が、予測された生理的グルコースと目標グルコースとの間の加重差の合計を含む、態様70~77のいずれかに記載のシステム。
79.ユーザ入力に基づいて食事データを生成し、かつ生成された食事データを、コントローラに送信するためのユーザインターフェースをさらに含み、重み付け値が、食事後の時間とともに増加し、食事後の所定の期間より長い時間で一定値に達する、態様70~78のいずれかに記載のシステム。
80.目的関数が、事前定義された基礎インスリンプロファイルからの最適なインスリン軌道の加重偏差の合計を含む、態様70~79のいずれかに記載のシステム。
81.コントローラが、所与の点で最適なインスリン軌道を決定する際に、インスリンの最大値を制限するように構成されており、最大値が、所与の点での患者の基礎投与量および推定された生理的グルコースの関数である、態様70~80のいずれかに記載のシステム。
82.コントローラが、最適なインスリン軌道内のインスリンの最小値を、事前定義された値に制限するように構成されており、事前定義された値が、基礎投与量未満である、態様81に記載のシステム。
83.コントローラは、所与の点での予測された生理的グルコースが事前定義されたグルコース閾値よりも大きい場合に、所与の点で最適なインスリン軌道を決定する際に、インスリン値を、所与の点での基礎インスリンプロファイル以上になるように制限するように構成されている、態様70~80のいずれかに記載のシステム。
84.事前定義されたグルコース閾値が、13.7mg/dLである、態様83に記載のシステム。
85.コントローラは、平均的な予測された生理的グルコースが事前定義されたグルコース閾値未満である場合に、最適なインスリン軌道を決定する際に、インスリン値を、所与の点での基礎プロファイル以上になるように制限するように構成されており、平均的な予測された生理的グルコース値が、所与の点の前の事前定義された数の点にわたって、最適なインスリン軌跡から決定される、態様70~80のいずれかに記載のシステム。
86.コントローラは、値が所与の時間での基礎プロファイル未満である場合に、所与の点での最適なインスリン軌道の値を修正するように構成されており、コントローラが、最適なインスリン値から基礎プロファイルを引いた量に因子を掛けたものを、基礎プロファイルに加算することにより、所与の点での新しい最適なインスリン値を計算するように構成されており、因子が1よりも大きい、態様70~80のいずれかに記載のシステム。
87.コントローラは、患者の推定された生理的グルコースが事前定義されたグルコース閾値よりも大きい場合に、インスリン投与量要求を、基礎プロファイル投与量以上に制限するように構成されている、態様70~80のいずれかに記載のシステム。
88.事前定義されたグルコース閾値が、13.7mg/dLである、態様87に記載のシステム。
89.コントローラは、平均的な生理的グルコースが事前定義されたグルコース閾値未満になった後に、第1の事前定義された期間、インスリン投与量要求を、基礎プロファイル以上に制限するように構成されており、平均的な予測された生理的グルコースが、過去の第2の事前定義された期間にわたる、選択された状態ベクトルの推定された生理的グルコースの平均である、態様70~80のいずれかに記載のシステム。
90.コントローラは、インスリン投与量要求が基礎投与量未満である場合に、インスリン投与量要求の値を修正するように構成されており、コントローラが、インスリン投与量要求から基礎投与量を引いた量に因子を掛けたものを、基礎投与量に加算することにより、新しいインスリン投与量要求を計算するように構成されており、因子が1よりも大きい、態様70~80のいずれかに記載のシステム。
91.食事データを受信するためのユーザインターフェースをさらに含み、食事データが、コントローラに通信され、各状態ベクトルおよびその関連付けられたモデルが、共分散行列と関連付けられ、共分散行列の対角要素が、グルコースデータおよびインスリン必要量データの関数として初期化され、状態ベクトルを伝搬することが、共分散行列およびグルコースデータを使用して、フィルタリングされた状態変数のフィルタリングされた状態ベクトルを生成する、カルマンフィルタをさらに含む、態様70に記載のシステム。
92.コントローラは、事前定義された期間に食事が消費されなかった場合に、グルコースデータおよびインスリンの総日投与量の所定の関数に基づいた値に、対角炭水化物項を設定し、かつ炭水化物対角値に合わせて、行および列要素をゼロに設定するように構成されている、態様91に記載のシステム。
93.コントローラは、事前定義された期間に食事が消費されていないと決定したことに応じて、グルコースデータおよびインスリンの総日投与量の所定の関数に基づいた値に、ボーラスインスリン対角項を設定し、かつボーラスインスリン対角値に合わせて、行および列要素をゼロに設定するように構成されている、態様91に記載のシステム。
94.各状態ベクトルおよびそのモデルが、共分散行列と関連付けられ、状態ベクトルを伝搬することが、共分散行列およびグルコースデータを使用して、フィルタリングされた状態変数のフィルタリングされた状態ベクトルを生成する、カルマンフィルタをさらに含み、コントローラが、そのフィルタリングされた状態変数の値に基づいて、フィルタリングされた状態変数のうちの1つを修正するように構成されている、態様70に記載のシステム。
95.コントローラが、フィルタリングされた状態変数を、所定の量以上になるように修正するように構成されている、態様94に記載のシステム。
96.コントローラが、インスリンのフィルタリングされた状態変数を、基礎投与量の所定の分率以上になるように修正するように構成されている、態様94に記載のシステム。
97.コントローラが、炭水化物のフィルタリングされた状態変数を、炭水化物のフィルタリングされていない状態変数未満である所定値以上になるように修正するように構成されている、態様94に記載のシステム。
98.コントローラが、インスリンのフィルタリングされた状態変数を、インスリンのフィルタリングされていない状態変数よりも大きい所定量以下になるように修正するように構成されている、態様94に記載のシステム。
99.コントローラと通信し、かつ患者のグルコースデータを測定するためのグルコース測定デバイスをさらに含む、態様70~98のいずれかに記載のシステム。
100.患者の血糖を制御するためのシステムであって、
コントローラであって、
基礎投与量を含む患者データを受信することと、
グルコースデータを間隔で受信することと、
モデル予測コントローラアルゴリズムを実行して、受信したグルコースデータに部分的に基づいて、生理的グルコースを推定することと、
生理的グルコースが所定のグルコース閾値を超えた場合に、投与量要求を、基礎投与量以上に制限することと、を行うように構成されている、コントローラを含む、システム。
101.所定のグルコース閾値が、13.7mg/dLである、態様100に記載のシステム。
102.投与量要求に応じて、患者にインスリンを送達するためのインスリン送達デバイスと、
患者データを入力するためのユーザインターフェースと、をさらに含む、態様100に記載のシステム。
103.コントローラと通信し、かつ患者のグルコース濃度を含むグルコースデータを測定するためのグルコース測定デバイスをさらに含む、態様100~102のいずれかに記載のシステム。
104.患者の血糖を制御するためのシステムであって、
コントローラであって、
基礎投与量を含む患者データを受信することと、
グルコースデータを受信することと、
モデル予測コントローラアルゴリズムを実行して、受信したグルコースデータに部分的に基づいて、生理的グルコースを推定することと、
基礎投与量から最適な偏差を決定することと、
最適な偏差に因子を乗算することと、
最適な偏差が所定の閾値未満である場合に、因子が乗算された最適な偏差と基礎投与量の合計に等しい投与量要求を設定することと、
最適な偏差が所定の閾値以上である場合に、最適な偏差と基礎投与量の合計に等しい投与量要求を設定することと、を行うように構成されている、コントローラを含む、システム。
105.所定の閾値が、ゼロである、態様104に記載のシステム。
106.因子が1よりも大きい、態様104に記載のシステム。
107.因子が1.3よりも大きい、態様104に記載のシステム。
108.投与量要求に応じて、患者にインスリンを送達するためのインスリン送達デバイスと、
患者データを入力するためのユーザインターフェースと、をさらに含む、態様104~107のいずれかに記載のシステム。
109.コントローラと通信し、かつ患者のグルコース濃度を含むグルコースデータを測定するためのグルコース測定デバイスをさらに含む、態様104~108のいずれかに記載のシステム。
110.患者の血糖を制御するためのシステムであって、
コントローラであって、
基礎投与量を含む患者データを受信することと、
グルコースデータを間隔で受信することと、
平均インスリン投与量を計算することと、
過去の第2の期間の平均インスリン投与量が事前定義されたインスリン閾値未満である場合に、投与量要求を、第1の期間の基礎投与量以上になるように制限することと、を行うように構成されている、コントローラを含む、システム。
111.第1の期間が、第2の期間の半分未満である、態様110に記載のシステム。
112.過去の第2の期間が、1時間より長い、態様111に記載のシステム。
113.事前定義されたインスリン閾値が、1時間あたり0.1インスリン単位未満である、態様110に記載のシステム。
114.投与量要求に応じて、患者にインスリンを送達するためのインスリン送達デバイスと、
患者データを入力するためのユーザインターフェースと、をさらに含む、態様110~113のいずれかに記載のシステム。
115.コントローラと通信し、かつ患者のグルコース濃度を含むグルコースデータを測定するためのグルコース測定デバイスをさらに含む、態様110~114のいずれかに記載のシステム。
116.患者の血糖を制御するためのシステムであって、
インスリンを患者に送達するためのインスリン送達デバイスと、
患者データを入力するためのユーザインターフェースであって、患者データが、インスリンの総日投与量および食事データを含む、ユーザインターフェースと、
コントローラであって、
ユーザインターフェースから患者データを受信することと、
状態ベクトルおよび関連付けられたモデルを定義することであって、状態ベクトルが、患者のインスリン、炭水化物、および生理的グルコースの推定された値を含む、状態変数を含む、定義することと、
状態ベクトルを伝搬することと、
インスリンの量をインスリン状態変数に加算することにより、伝搬された状態ベクトルを補正することであって、加算されたインスリンの量が、インスリンの食事データおよび総日投与量に基づいている、補正することと、
補正された状態ベクトルを使用して、投与量要求を決定することと、
投与量要求を、インスリン送達デバイスに送信することと、を行うように構成されている、コントローラと、を含む、システム。
117.コントローラが、炭水化物の量を、食事データに基づく状態ベクトルの炭水化物値に加算することにより、伝搬された状態ベクトルを補正するようにさらに構成されている、態様116に記載のシステム。
118.食事データが食事告知である、態様116または117に記載のシステム。
119.食事データが、2つ以上の選択肢から選択された食事のサイズである、態様116または117に記載のシステム。
120.食事データが、炭水化物含有量の推定値を含む、態様116または117に記載のシステム。
121.患者の血糖の閉ループ制御を提供するためのシステムであって、
インスリンを患者に送達するためのインスリン送達デバイスと、
患者データを入力するためのユーザインターフェースであって、患者データが、基礎インスリンプロファイル、インスリンと炭水化物との比率、および食事データを含む、ユーザインターフェースと、
ユーザインターフェースおよびインスリン送達デバイスと通信し、かつグルコースデータを受信するように構成されている、コントローラと、を含み、コントローラは、
患者の活性インスリンの量を推定することであって、活性インスリンが、基礎インスリンプロファイルを含まない、推定することと、
食事データから食事炭水化物値を決定することと、
グルコースデータに部分的に基づいて、患者の生理的グルコースおよび生理的グルコースの変化速度を推定することと、
生理的グルコースおよび生理的グルコースの変化速度に基づいて、減衰因子を決定することと、
食事データ、インスリンと炭水化物との比率、および決定された減衰因子に基づいて、食事ボーラスを決定することと、
患者の推定された活性インスリンの量に基づいて、決定された食事ボーラスを修正することと、
修正された食事ボーラスを、インスリン送達デバイスに送達するための要求を送信することと、を実行するようにさらに構成されている、システム。
122.コントローラが、
複数の状態ベクトルおよび関連付けられたモデルを定義することにより、食事ボーラス後の患者の血糖を制御することであって、各状態ベクトルが、患者のインスリン、炭水化物、および生理的グルコースの推定された値を含む状態変数を含み、各モデルが、状態ベクトルの伝搬を定義する式およびパラメータを含む、制御することと、
複数の状態ベクトルを伝搬することと、
カルマンフィルタおよびグルコースデータを使用して、伝搬された状態ベクトルをフィルタリングすることと、
現在および過去のグルコースデータに基づいて、状態ベクトルおよびその関連付けられたモデルを選択することと、
選択された状態ベクトルおよびその関連付けられたモデルを使用して、生理的グルコースを予測し、かつ最適なインスリン軌道の目的関数を解くことと、
最適なインスリン軌道から、インスリン投与量要求を決定することと、
投与量要求を、インスリン送達デバイスに送信することと、を行うように構成されている、態様121に記載のシステム。
123.コントローラが、最も最近選択された状態ベクトルの推定された生理的グルコースの値に基づいて、生理的グルコースの変化速度を決定するように構成されている、態様122に記載のシステム。
124.患者データが、インスリン必要量をさらに含み、コントローラが、減衰された食事ボーラスを、インスリン必要量の分率未満に制限するように構成されている、態様121に記載のシステム。
125.インスリン必要量が、インスリンの総日投与量である、態様124に記載のシステム。
126.分率が4分の1未満である、態様124に記載のシステム。
127.コントローラが、
体内のインスリンの量を推定することと、
推定された生理的グルコースに基づいて、補正ボーラスを決定することと、を行うようにさらに構成されており、
補正ボーラスは、推定された生理的グルコースが第1のグルコース閾値を下回る場合にゼロであり、
補正ボーラスは、推定された生理的グルコースが第1のグルコース閾値を超える場合に、患者の生理的グルコースおよびインスリンの量に基づいている、態様121に記載のシステム。
128.生理的グルコースが低い生理的グルコース閾値を超える場合に、補正ボーラスが、推定された生理的グルコースの増加に比例して増加し、かつ補正ボーラスが、患者の推定されたインスリンの増加に比例して減少する、態様127に記載のシステム。
129.推定された生理的グルコースが第1の生理的グルコース閾値を超える場合に、補正ボーラスが、第1の速度で推定された生理的グルコースの増加に比例して増加し、生理的グルコースが第2のグルコース閾値を超える場合に、補正ボーラスが、第2の速度での推定された生理的グルコースの増加に比例して増加し、第2のグルコース閾値が、第1の閾値よりも高く、第1の速度が、第2の速度よりも大きい、態様127に記載のシステム。
130.コントローラと通信し、かつ患者のグルコース濃度を含むグルコースデータを測定するためのグルコース測定デバイスをさらに含む、態様121~129のいずれかに記載のシステム。
131.患者の血糖の閉ループ制御を提供するためのシステムであって、
コントローラであって、
インスリンと炭水化物との比率および食事データを含む患者データを受信することと、
グルコースデータを受信することと、
食事データから食事炭水化物値を決定することと、
グルコースデータに部分的に基づいて、患者の生理的グルコースおよび生理的グルコースの変化速度を推定することと、
食事データ、およびインスリンと炭水化物との比率に基づいて、予備食事ボーラスを決定することと、
推定された生理的グルコースおよび生理的グルコースの変化速度に基づいて、減衰因子を決定することと、
食事炭水化物値が所定の食事炭水化物閾値を超える場合に、食事炭水化物値に比例して、予備食事ボーラスを減衰させることと、
食事炭水化物値が所定の食事炭水化物閾値以下である場合に、食事炭水化物閾値に比例して、予備食事ボーラスを減衰させることと、
減衰された予備食事ボーラスに等しい投与量要求を設定することと、を行うように構成されている、コントローラを含む、システム。
132.投与量要求に応じて、患者にインスリンを送達するためのインスリン送達デバイスと、
患者データを入力するためのユーザインターフェースと、をさらに含む、態様131に記載のシステム。
133.コントローラと通信し、かつ患者のグルコース濃度を含むグルコースデータを測定するためのグルコース測定デバイスをさらに含む、態様131または132に記載のシステム。
134.患者の血糖の閉ループ制御を提供するためのシステムであって、
コントローラであって、
食事データを含む患者データを受信することと、
グルコースデータを受信することと、
グルコースデータに部分的に基づいて、生理的グルコース値および生理的グルコースの変化速度を決定することと、
生理的グルコースの変化速度がグルコース速度閾値よりも大きい場合に、薬剤投与量要求をゼロに設定することであって、グルコース速度閾値が、生理的グルコース値の所定の関数である、設定することと、
生理的グルコースの変化速度がグルコース速度閾値を超える場合に、生理的グルコース値および生理的グルコースの変化速度の所定の関数に基づいて、薬剤投与量要求を決定することと、
薬剤投与量要求を、薬剤送達デバイスに送信することと、のための制御ロジックを実行するように構成されている、コントローラを含む、システム。
135.コントローラが、運動データを受信し、かつ薬剤投与量要求を決定するために使用される生理的グルコース値を低減させるように構成されている、態様134に記載のシステム。
136.コントローラが、患者内の活性インスリンの量を決定し、かつ活性インスリンの量に部分的に基づいて、薬剤投与量要求を修正するように構成されている、態様134に記載のシステム。
137.コントローラは、血漿グルコースレベルが所定の値を超える場合に、薬剤投与量要求を、ゼロに設定するように構成されている、態様134に記載のシステム。
138.コントローラが、インスリン必要量データを受信し、インスリン必要量データに部分的に基づいて薬剤投与量要求を修正するように構成されている、態様134に記載のシステム。
139.コントローラは、複数の状態ベクトルおよびそれらの関連付けられたモデルから選択された状態ベクトルおよびその関連付けられたモデルで、生理的グルコース値を決定するように構成されており、状態ベクトルおよびその関連付けられたモデルの選択が、各状態ベクトルによって推定される現在および過去の生理的グルコース値と、過去および現在のグルコースデータに対するその関連付けられたモデルの比較に基づいている、態様134に記載のシステム。
140.薬剤投与量がグルカゴンを含む、態様134~139のいずれかに記載のシステム。
141.薬剤投与量要求に応じて、患者に薬剤投与量を送達するための薬剤送達デバイスと、
患者データを入力するためのユーザインターフェースと、をさらに含む、態様134~140のいずれかに記載のシステム。
142.コントローラと通信し、かつ患者のグルコース濃度を含むグルコースデータを測定するためのグルコース測定デバイスをさらに含む、態様136~141のいずれかに記載のシステム。
143.患者の血糖の閉ループ制御を提供するためのシステムであって、
コントローラであって、
グルコースデータを受信することと、
基礎インスリンプロファイルを受信することと、
マルチコンパートメントモデルおよびグルコースデータを使用して、生理的グルコース値、生理的グルコース値の変化速度、および患者の活性インスリンの量を決定することであって、活性インスリンが、基礎インスリンプロファイルを含まない、決定することと、
生理的グルコース値および生理的グルコース値の変化速度に基づいて、初期薬剤投与量を決定することと、
患者の活性インスリンの量に基づいて、初期薬剤投与量を修正して、薬剤投与量要求を決定することと、
薬剤投与量要求を送信することと、を行うように構成されている、コントローラを含む、システム。
144.コントローラは、事前定義された期間内に食事が消費された場合に、食事告知を受信し、かつ薬剤投与量要求を、ゼロに設定するように構成されている、態様143に記載のシステム。
145.生理的グルコース値が第1の所定のレベルを超える場合に、コントローラは、生理的グルコースの変化速度が所定の速度よりも大きい場合に、薬剤投与量要求を、第1の所定の値に設定し、かつ生理的グルコースの変化速度が所定の速度以下である場合に、薬剤投与量要求を、第2の所定の値に設定するように構成されている、態様143に記載のシステム。
146.薬剤投与量要求に応じて、患者に薬剤を送達するための薬剤送達デバイスと、
基礎インスリンプロファイルを入力するためのユーザインターフェースと、をさらに含む、態様143~145のいずれかに記載のシステム。
147.コントローラと通信し、かつ患者のグルコース濃度を含むグルコースデータを測定するためのグルコース測定デバイスをさらに含む、態様143~146のいずれかに記載のシステム。
148.患者の血糖の閉ループ制御を提供するためのシステムであって、
コントローラであって、
食事データを含む患者データを受信することと、
グルコースデータを受信することと、
グルコースデータに部分的に基づいて、生理的グルコース値および生理的グルコース値の変化速度を決定することと、
事前定義された期間内に食事が消費された場合に、薬剤投与量要求をゼロに設定することと、
事前定義された期間内に食事が消費されなかった場合に、薬剤投与量要求を、生理的グルコース値に基づいた値に設定することと、
薬剤投与量要求を送信することと、を行うように構成されている、コントローラを含む、システム。
149.薬剤投与量要求に応じて、患者に薬剤を送達するための薬剤送達デバイスであって、薬剤がインスリンに対する逆調節剤である、薬剤送達デバイスと、
患者データを入力するためのユーザインターフェースと、をさらに含む、態様148に記載のシステム。
150.コントローラと通信し、かつ患者のグルコース濃度を含むグルコースデータを測定するためのグルコース測定デバイスをさらに含む、態様148または149に記載のシステム。
151.患者の血糖を制御するためのシステムであって、
コントローラであって、
グルコースデータを間隔で受信することと、
モデル、状態変数、および共分散行列を定義することであって、モデルが状態変数の伝搬を制御し、状態変数が、患者の推定されたインスリン、推定された炭水化物、および推定された生理的グルコースを含み、共分散行列が、各状態変数と関連付けられた対角要素を含む、定義することと、
各間隔で、状態変数を時間内に伝搬し、かつカルマンフィルタを適用した共分散行列を使用して、伝搬された状態変数をフィルタリングして、フィルタリングされた状態変数を生成することと、
修正された状態変数と伝搬された状態変数との間の差を制限するために、必要に応じてフィルタリングされた状態変数のうちの1つを修正することと、
修正された状態変数を使用して、投与量要求を決定することと、
投与量要求を送信することと、を行うように構成されている、コントローラを含む、システム。
152.コントローラが、炭水化物のフィルタリングされた状態変数を、炭水化物のフィルタリングされていない状態変数未満である所定値以上になるように修正するように構成されている、態様151に記載のシステム。
153.コントローラが、インスリンのフィルタリングされた状態変数を、インスリンのフィルタリングされていない状態変数よりも大きい所定量以下の値に修正するように構成されている、態様151に記載のシステム。
154.
投与量要求に応じて、患者にインスリンを送達するためのインスリン送達デバイスをさらに含む、態様151~153のいずれかに記載のシステム。
155.
コントローラと通信し、かつ患者のグルコース濃度を含むグルコースデータを測定するためのグルコース測定デバイスをさらに含む、態様151~154のいずれかに記載のシステム。
156.患者の血糖を制御するためのシステムであって、
コントローラであって、
グルコースデータを間隔で受信することと、
モデル、状態変数、および共分散行列を定義することであって、モデルが状態変数の伝搬を制御し、状態変数が、患者の推定されたインスリン、推定された炭水化物、および推定された生理的グルコースを含み、共分散行列が、各状態変数と関連付けられた対角要素を含む、定義することと、
各間隔で、状態変数を時間内に伝搬し、かつカルマンフィルタを適用した共分散行列を使用して、伝搬された状態変数をフィルタリングして、フィルタリングされた状態変数を生成することと、
フィルタリングされた状態変数を修正して、修正された状態変数と事前定義された値との間の差を制限することと、
修正された状態変数を使用して、投与量要求を決定することと、
投与量要求を送信することと、を行うように構成されている、コントローラを含む、システム。
157.コントローラが、インスリンのフィルタリングされた状態変数を、基礎投与量の所定の分率以上になるように修正するように構成されている、態様156に記載のシステム。
158.投与量要求に応じて、患者にインスリンを送達するためのインスリン送達デバイスをさらに含む、態様156または157に記載のシステム。
159.コントローラと通信し、かつ患者のグルコース濃度を含むグルコースデータを測定するためのグルコース測定デバイスをさらに含む、態様156~158のいずれかに記載のシステム。
160.患者の血糖を制御するためのシステムであって、
コントローラであって、
間隔で、グルコース測定デバイスからグルコースデータを受信することと、
モデル、状態変数、および共分散行列を定義することであって、モデルが状態変数の伝搬を制御し、状態変数が、患者の推定されたインスリン、推定された炭水化物、および推定された生理的グルコースを含み、共分散行列が、各状態変数と関連付けられた対角要素を含む、定義することと、
事前定義された量の時間で食事が発生しなかった場合に、炭水化物対角要素をグルコースデータおよびインスリン必要量データの所定の関数に基づく値に設定し、かつ炭水化物対角値の交差項をゼロに設定することと、
各間隔で、状態変数を時間内に伝搬し、かつカルマンフィルタを適用した共分散行列を使用して、伝搬された状態変数をフィルタリングして、フィルタリングされた状態変数を生成することと、
フィルタリングされた状態変数を使用して、投与量要求を決定することと、
投与量要求を、インスリン送達デバイスに送信することと、を行うように構成されている、コントローラを含む、システム。
161.投与量要求に応じて、患者にインスリンを送達するためのインスリン送達デバイスをさらに含む、態様160に記載のシステム。
162.コントローラと通信し、かつ患者のグルコース濃度を含むグルコースデータを測定するためのグルコース測定デバイスをさらに含む、態様160または161に記載のシステム。
163.患者の血糖を制御するためのシステムであって、
コントローラであって、
グルコースデータを間隔で受信することと、
モデル、状態変数、および共分散行列を定義することであって、モデルが状態変数の伝搬を制御し、状態変数が、患者の推定されたインスリン、推定された炭水化物、および推定された生理的グルコースを含み、共分散行列が、各状態変数と関連付けられた対角要素を含み、生理的グルコースおよび基礎インスリン対角要素が、グルコースデータおよびインスリン必要量データの関数として初期化される、定義することと、
炭水化物の合計が閾値を超え、かつ平均食事時間が低閾値と高閾値との間にある場合に、グルコースデータの所定の関数に基づいて、炭水化物対角要素を、非ゼロ値に設定し、かつボーラスインスリン対角要素を、インスリン必要量の所定の関数に基づいた値に設定することと、
状態変数を時間内に伝搬することと、
カルマンフィルタを適用した共分散行列を使用して、伝搬された状態変数をフィルタリングして、フィルタリングされた状態変数を生成することと、
フィルタリングされた状態変数を使用して、投与量要求を決定することと、
投与量要求を送信することと、を行うように構成されている、コントローラを含む、システム。
164.投与量要求に応じて、患者にインスリンを送達するためのインスリン送達デバイスをさらに含む、態様163に記載のシステム。
165.コントローラと通信し、かつ患者のグルコース濃度を含むグルコースデータを測定するためのグルコース測定デバイスをさらに含む、態様163または164に記載のシステム。
166.患者の血糖を制御するためのシステムであって、
コントローラであって、
グルコースデータを間隔で受信することと、
グルコース目標を決定することと、
モデル予測コントローラアルゴリズムを実行して、生理的グルコース値を予測し、最適なインスリン軌道の目的関数を解くことであって、目的関数が、予測された生理的グルコースとグルコース目標との間の加重差の合計を含み、重み付けが、食事後の時間とともに増加し、食事後の所定の期間で一定値に達する、解くことと、
最適なインスリン軌道から、投与量要求を決定することと、
投与量要求を送信することと、を行うように構成されている、コントローラを含む、システム。
167.投与量要求に応じて、患者にインスリンを送達するためのインスリン送達デバイスをさらに含む、態様166に記載のシステム。
168.コントローラと通信し、かつ患者のグルコース濃度を含むグルコースデータを測定するためのグルコース測定デバイスをさらに含む、態様166または167に記載のシステム。
169.患者の血糖を制御するためのシステムであって、
コントローラであって、
グルコースデータを、一定の間隔で受信することと、
モデル、状態変数、および共分散行列を定義することであって、モデルが状態変数の伝搬を制御し、状態変数が、患者の推定されたインスリン、推定された炭水化物、および推定された生理的グルコースを含み、共分散行列が、各状態変数と関連付けられた対角要素を含む、定義することと、
間隔の各分率で、状態変数を時間内に伝搬することと、
各完全な間隔で、状態変数を時間内に伝搬し、かつカルマンフィルタを適用した共分散行列を使用して、伝搬された状態変数をフィルタリングして、フィルタリングされた状態変数を生成することと、
フィルタリングされた状態変数を使用して、投与量要求を決定することと、
投与量要求を送信することと、を行うように構成されている、コントローラを含む、システム。
170.投与量要求に応じて、患者にインスリンを送達するためのインスリン送達デバイスをさらに含む、態様169に記載のシステム。
171.コントローラと通信し、かつ患者のグルコース濃度を含むグルコースデータを測定するためのグルコース測定デバイスをさらに含む、態様169または170に記載のシステム。
172.患者の血糖を制御するためのシステムであって、
コントローラであって、
グルコースデータを間隔で受信することと、
モデル予測制御アルゴリズムで複数の状態ベクトルおよびそれらのモデルを使用することであって、状態ベクトルが、患者の推定されたインスリン、推定された炭水化物、および推定された生理的グルコースを含み、モデルが、状態ベクトルの伝搬を制御する、使用することと、
各間隔で、状態ベクトルを時間内に伝搬し、グルコースデータに基づいて、状態ベクトルをフィルタリングし、次いで、現在および過去のグルコースデータに基づいて、状態ベクトルおよびそのモデルを選択することと、
モデル予測制御アルゴリズムで選択されたモデルを使用して、投与量要求を決定することと、
投与量要求を送信することと、を行うように構成されている、コントローラを含む、システム。
173.投与量要求に応じて、患者にインスリンを送達するためのインスリン送達デバイスをさらに含む、態様172に記載のシステム。
174.コントローラと通信し、かつ患者のグルコース濃度を含むグルコースデータを測定するためのグルコース測定デバイスをさらに含む、態様172または173に記載のシステム。
175.患者の血糖を制御するためのシステムであって、
薬剤投与量を患者に送達するように構成されている、薬剤送達デバイスと、
コントローラであって、
事前選択された間隔で、現在のグルコースデータを受信することと、
複数の状態ベクトルを定義することであって、各状態ベクトルが、異なるモデルと関連付けられており、各状態ベクトルが、体内グルコースレベルを含んでいる、定義することと、
関連付けられたモデルに基づいて、複数の状態ベクトルを時間内に伝搬することと、
現在のグルコースデータに基づいて、伝搬された状態ベクトルをフィルタリングすることと、
伝搬された状態ベクトルおよびその関連付けられたモデルのうちの1つを選択することと、
選択された状態ベクトルおよびその関連付けられたモデルを使用して、予測期間中の体内グルコースレベルを予測することと、
予測期間中の最適な薬剤軌道の目的関数を解くことと、
最適な薬剤軌道から、薬剤投与量を決定することと、
薬剤投与量を、薬剤送達デバイスに送達する要求を送信することと、を実行するように構成されている、プロセッサを含む、コントローラと、を含む、システム。
176.薬剤が、インスリン、GLP-1、プラムリンチド、アミリン、およびアミリン類似体を含む群から選択される、態様175に記載のシステム。
177.コントローラと通信し、かつ患者のグルコースデータを測定するためのグルコース測定デバイスをさらに含む、態様175または176に記載のシステム。
178.患者の血糖を制御するための方法であって、
複数の状態ベクトルを定義することであって、各状態ベクトルが、異なるモデルと関連付けられており、各状態ベクトルが、生理的グルコースレベルを含んでいる、定義することと、
患者の現在のグルコース濃度を測定すること、
現在のグルコース濃度をコントローラに送信すること、
現在のグルコース濃度を受信すること、
関連付けられたモデルに基づいて、複数の状態ベクトルを時間内に伝搬すること、
現在のグルコース濃度に基づいて、伝搬された状態ベクトルをフィルタリングすること、
伝搬された状態ベクトルおよび関連付けられたモデルのうちの1つを選択すること、
選択された状態ベクトルおよび関連付けられたモデルを使用して、予測期間中の生理的グルコース軌道を予測すること、
生理的グルコース軌道を使用して、予測期間中の最適なインスリン軌道の目的関数を解くこと、ならびに
最適なインスリン軌道から、インスリン投与量を決定することを、事前選択された間隔で実行することと、を含む、方法。
179.各状態ベクトルおよびグルコース濃度の生理的グルコースレベルをメモリに記憶するステップと、
メモリから、複数の過去の間隔の各状態ベクトルおよびグルコース濃度の生理的グルコースレベルを呼び戻すステップと、
伝搬された状態ベクトルおよび関連付けられたモデルのうちの1つの選択が、メモリから呼び戻された生理的グルコースレベルおよびグルコース濃度に基づくステップと、を事前選択された間隔で、さらに実行すること、をさらに含む、態様178に記載の方法。
180.グルコース濃度に対する各状態ベクトルの生理的グルコースレベルの誤差を決定するステップと、
生理的グルコース誤差を、メモリに保存するステップと、
メモリから、複数の過去の間隔の各状態ベクトルの生理的グルコース誤差を呼び戻すステップと、
状態ベクトルおよび関連付けられたモデルのうちの1つの選択が、各状態ベクトルの生理的グルコース誤差の合計に基づくステップと、を事前選択された間隔で、さらに実行すること、をさらに含む、態様179に記載の方法。
181.現在のグルコース濃度を測定するためのグルコース測定デバイス、インスリン送達デバイス、ならびにグルコース測定デバイスおよびインスリン送達デバイスと通信するコントローラを提供すること、をさらに含む、態様178~180のいずれかに記載の方法。
182.インスリン送達デバイスに、インスリン投与量を送達する要求を送信することと、
インスリン送達デバイスで、患者にインスリン投与量を送達することと、をさらに含む、態様181に記載の方法。
183.患者の血糖を制御するための方法であって、
コントローラで、グルコース濃度および基礎インスリン投与量を含む患者データを受信することと、
グルコース濃度に少なくとも部分的に基づいて、患者の生理的グルコースを推定することと、
基礎インスリン投与量から最適なインスリン偏差を決定することと、
最適なインスリン偏差が所定の閾値未満であると決定することと、
最適なインスリン偏差が所定の閾値未満であると決定したことに応じて、因子を、1よりも大きい値に設定することと、
基礎インスリン投与量を、最適なインスリン偏差に因子を掛けた値に加算することにより、インスリン投与量を決定することと、を含む、方法。
184.所定の閾値がゼロである、態様183に記載の方法。
185.因子が1.3より大きい、態様183に記載の方法。
186.患者のグルコース濃度を測定するためのグルコース測定デバイス、インスリン送達デバイス、ユーザインターフェース、ならびにグルコース測定デバイス、インスリン送達デバイス、およびユーザインターフェースと通信するコントローラを提供することと、
患者データをユーザインターフェースに入力することと、をさらに含む、態様183~185のいずれかに記載の方法。
187.インスリン送達デバイスに、インスリン投与量を送達する要求を送信することと、
インスリン送達デバイスで、患者にインスリン投与量を送達することと、をさらに含む、態様186に記載の方法。
188.患者の血糖を制御するための方法であって、
コントローラで、グルコース濃度および患者データを受信することと、
グルコース濃度に少なくとも部分的に基づいて、患者の生理的グルコースを推定することと、
推定された生理的グルコースに応じて、インスリン投与量を決定することと、
過去の第2の期間の平均インスリン投与量が事前定義されたインスリン閾値未満であると決定することと、
過去の第2の期間の平均インスリン投与量が事前定義されたインスリン閾値未満であると決定したことに応じて、インスリン投与量を、第1の期間の基礎インスリン投与量以上になるように制限することと、を含む、方法。
189.第1の期間が、過去の第2の期間の半分未満である、態様188に記載の方法。
190.過去の第2の期間が、1時間より長い、態様189に記載の方法。
191.事前定義されたインスリン閾値が、1時間あたり0.1インスリン単位未満である、態様188に記載の方法。
192.患者のグルコース濃度を測定するためのグルコース測定デバイス、インスリン送達デバイス、ユーザインターフェース、ならびにグルコース測定デバイス、インスリン送達デバイス、およびユーザインターフェースと通信するコントローラを提供することと、
基礎インスリン投与量を含む患者データを、ユーザインターフェースに入力することと、をさらに含む、態様188~191のいずれかに記載の方法。
193.インスリン送達デバイスに、インスリン投与量を送達する要求を送信することと、
インスリン送達デバイスで、患者にインスリン投与量を送達することと、をさらに含む、態様192に記載の方法。
194.患者の血糖を制御するための方法であって、
コントローラで、グルコース濃度、インスリンの総日投与量、および食事データを受信することと、
状態ベクトルおよびモデルを定義することであって、状態ベクトルが、1つ以上のインスリン状態変数、1つ以上の炭水化物状態変数、および生理的グルコース状態変数を含む、定義することと、
モデルに基づいて、状態ベクトルを時間内に伝搬することと、
グルコース濃度に基づいて、伝搬された状態ベクトルをフィルタリングすることと、
インスリンの量を少なくとも1つのインスリン状態変数に加算することであって、加算されたインスリンの量が、インスリンの食事データおよび総日投与量に基づいている、加算することと、
状態ベクトルおよび関連付けられたモデルに基づいて、インスリン投与量を決定することと、を含む、方法。
195.食事データに基づいて、ある量の炭水化物を、炭水化物状態変数のうちの少なくとも1つに加算すること、をさらに含む、態様194に記載の方法。
196.患者のグルコース濃度を測定するためのグルコース測定デバイス、インスリン送達デバイス、ユーザインターフェース、ならびにグルコース測定デバイス、インスリン送達デバイス、およびユーザインターフェースと通信するコントローラを提供することと、
患者データをユーザインターフェースに入力することであって、患者データが、食事データおよびインスリンの総日投与量を含む、入力することと、をさらに含む、態様194または195に記載の方法。
197.インスリン送達デバイスに、インスリン投与量を送達する要求を送信することと、
インスリン送達デバイスで、患者にインスリン投与量を送達することと、をさらに含む、態様196に記載の方法。
198.患者の血糖の閉ループ制御を提供するための方法であって、
コントローラで、基礎インスリン投与量、食事データ、およびインスリンと炭水化物との比率を受信することと、
患者の活性インスリンを推定することであって、患者の活性インスリンが、基礎インスリン投与量を含まない、推定することと、
グルコース濃度に部分的に基づいて、患者の生理的グルコースおよび生理的グルコースの変化速度を推定することと、
食事データから食事炭水化物値を決定することと、
推定された生理的グルコースおよび生理的グルコースの変化速度に基づいて、減衰因子を決定することと、
食事データ、インスリンと炭水化物との比率、および減衰因子に基づいて、食事ボーラスを決定することと、
患者の活性インスリンに基づいて、食事ボーラスを修正することと、を含む、方法。
199.患者のグルコース濃度を測定するためのグルコース測定デバイス、インスリン送達デバイス、およびユーザインターフェースを提供すること、をさらに含み、コントローラが、グルコース測定デバイス、インスリン送達デバイス、およびユーザインターフェースと通信する、態様198に記載の方法。
200.インスリン送達デバイスに、修正された食事ボーラスを送達する要求を送信することと、
インスリン送達デバイスで、患者に修正された食事ボーラスを送達することと、をさらに含む、態様199に記載の方法。
201.患者の血糖の閉ループ制御を提供するための方法であって、
グルコース濃度、基礎インスリン投与量、および食事データを、コントローラに送信するステップと、
患者の活性インスリンを推定することであって、患者の活性インスリンが、基礎インスリン投与量を含まない、推定するステップと、
グルコース濃度に部分的に基づいて、患者の生理的グルコースおよび生理的グルコースの変化速度を推定するステップと、
食事データから食事炭水化物値を決定するステップと、
推定された生理的グルコースおよび生理的グルコースの変化速度に基づいて、減衰因子を決定するステップと、
食事データ、インスリンと炭水化物との比率、および減衰因子に基づいて、食事ボーラスを決定するステップと、を含み、
食事炭水化物値が所定の食事炭水化物閾値を超える場合に、食事ボーラスが、食事炭水化物値に比例して減衰され、
食事炭水化物値が所定の食事炭水化物閾値以下である場合に、食事ボーラスが、所定の食事炭水化物閾値に比例して減衰される、方法。
202.患者のグルコース濃度を測定するためのグルコース測定デバイス、インスリン送達デバイス、ユーザインターフェース、ならびにグルコース測定デバイス、インスリン送達デバイス、およびユーザインターフェースと通信するコントローラを提供することと、
患者データをユーザインターフェースに入力することであって、患者データが、食事データおよび基礎インスリン投与量を含む、入力することと、をさらに含む、態様201に記載の方法。
203.インスリン送達デバイスに、食事ボーラスを送達する要求を送信することと、
インスリン送達デバイスで、患者に食事ボーラスを送達することと、をさらに含む、態様202に記載の方法。
204.患者の血糖の閉ループ制御を提供するための方法であって、
グルコース濃度をコントローラに送信するステップと、
患者の生理的グルコースおよび生理的グルコースの変化速度を推定するステップと、
推定された生理的グルコースに基づいて、グルコース速度閾値を決定するステップと、
生理的グルコースの変化速度がグルコース速度閾値を超える場合に、薬剤投与量要求をゼロに設定するステップと、
生理的グルコースの変化速度がグルコース速度閾値を超える場合に、生理的グルコースおよび生理的グルコースの変化速度の所定の関数に基づいて、薬剤投与量要求を決定するステップと、を含む、方法。
205.患者のグルコース濃度を測定するためのグルコース測定デバイス、薬剤送達デバイス、およびユーザインターフェースを提供すること、をさらに含み、コントローラが、グルコース測定デバイス、薬剤送達デバイス、およびユーザインターフェースと通信する、態様204に記載の方法。
206.薬剤送達デバイスに、薬剤投与量要求を送信することと、
薬剤送達デバイスで、患者に薬剤投与量を送達することと、をさらに含む、態様205に記載の方法。
207.患者の血糖の閉ループ制御を提供するための方法であって、
グルコース濃度、基礎インスリン投与量、および食事データを、コントローラに送信するステップと、
生理的グルコース値、生理的グルコース値の変化速度、および患者の活性インスリンの量を決定することであって、患者の活性インスリンが、基礎インスリンプロファイルを含まない、決定するステップと、
決定された生理的グルコース値および生理的グルコース値の変化速度に基づいて、薬剤投与量を決定するステップと、
患者の活性インスリンの量に基づいて、薬剤投与量を修正するステップと、を含む、方法。
208.患者のグルコース濃度を測定するためのグルコース測定デバイス、薬剤送達デバイス、およびユーザインターフェースを提供することであって、コントローラが、グルコース測定デバイス、薬剤送達デバイス、およびユーザインターフェースと通信する、提供することと、
患者データをユーザインターフェースに入力することであって、患者データが、食事データおよび基礎インスリン投与量を含む、入力することと、をさらに含む、態様207に記載の方法。
209.薬剤送達デバイスに、修正された薬剤投与量を送信することと、
薬剤送達デバイスで、患者に修正された薬剤投与量を送達することと、をさらに含む、態様208に記載の方法。
210.患者の血糖の閉ループ制御を提供するための方法であって、
グルコース濃度および食事データを、コントローラに送信するステップと、
グルコース濃度に部分的に基づいて、患者の生理的グルコースおよび生理的グルコースの変化速度を推定するステップと、
事前定義された期間内に食事が消費された場合に、薬剤投与量をゼロに設定するステップと、
事前定義された期間内に食事が消費されなかった場合に、生理的グルコースに基づいて、薬剤投与量を決定するステップと、を含む、方法。
211.患者のグルコース濃度を測定するためのグルコース測定デバイス、薬剤送達デバイス、およびユーザインターフェースを提供することであって、コントローラが、グルコース測定デバイス、薬剤送達デバイス、およびユーザインターフェースと通信する、提供することと、
患者データをユーザインターフェースに入力することであって、患者データが、食事データを含む、入力することと、をさらに含む、態様210に記載の方法。
212.薬剤送達デバイスに、薬剤投与量を送信することと、
薬剤送達デバイスで、患者に薬剤投与量を送達することと、をさらに含む、態様211に記載の方法。
213.患者の血糖を制御するための方法であって、
複数の状態ベクトルを定義することであって、各状態ベクトルが、異なるモデルおよび異なる共分散行列と関連付けられ、複数の状態ベクトルが、1つ以上のインスリン状態変数、1つ以上の炭水化物状態変数、および生理的グルコース状態変数を含む、定義することと、
関連付けられたモデルに基づいて、複数の状態ベクトルを時間内に伝搬することと、
関連付けられた共分散行列およびグルコース濃度を使用して、カルマンフィルタで伝搬された複数の状態ベクトルをフィルタリングすることと、
少なくとも1つのフィルタリングされた状態ベクトルのインスリン状態変数のうちの1つを修正して、少なくとも1つのフィルタリングされた状態ベクトルと少なくとも1つのフィルタリングされていない状態ベクトルとの間の状態変数の差を制限することと、
フィルタリングされた状態ベクトルおよび関連付けられたモデルのうちの1つを選択することと、
選択されたフィルタリングされた状態ベクトルおよび関連付けられたモデルを使用して、予測期間中の生理的グルコース軌道を予測することと、
生理的グルコース軌道を使用して、予測期間中の最適なインスリン軌道の目的関数を解くことと、
最適なインスリン軌道から、インスリン投与量要求を決定することと、を含む、方法。
214.患者のグルコース濃度を測定するためのグルコース測定デバイス、インスリン送達デバイス、ならびにグルコース測定デバイスおよびインスリン送達デバイスと通信するコントローラを提供すること、をさらに含む、態様213に記載の方法。
215.インスリン送達デバイスに、インスリン投与量要求を送信することと、
インスリン送達デバイスで、患者にインスリン投与量を送達することと、をさらに含む、態様214に記載の方法。
216.患者の血糖を制御するための方法であって、
状態ベクトル、モデルおよび共分散行列を定義することであって、状態ベクトルが、インスリン状態変数、炭水化物状態変数、および生理的グルコース状態変数を含む、定義することと、
モデルに基づいて、状態ベクトルを時間内に伝搬することと、
共分散行列およびグルコース濃度を使用して、カルマンフィルタで伝搬された状態ベクトルをフィルタリングすることと、
フィルタリングされた状態ベクトルの1つの状態変数を修正して、フィルタリングされた状態ベクトルとフィルタリングされていない状態ベクトルとの間の状態変数の差を制限することと、
修正およびフィルタリングされた状態ベクトルに基づいて、インスリン投与量要求を決定することと、を含む、方法。
217.1つの状態変数が、炭水化物状態変数であり、かつ炭水化物状態変数を、炭水化物のフィルタリングされていない状態変数よりも低い所定値以上に制限するように修正される、態様216に記載の方法。
218.1つの状態変数が、インスリン状態変数であり、かつインスリン状態変数を、インスリンのフィルタリングされていない状態変数を超える所定量以下に制限するように修正される、態様216に記載の方法。
219.患者のグルコース濃度を測定するためのグルコース測定デバイス、インスリン送達デバイス、ならびにグルコース測定デバイスおよびインスリン送達デバイスと通信するコントローラを提供すること、をさらに含む、態様216~218のいずれかに記載の方法。
220.インスリン送達デバイスに、インスリン投与量要求を送信することと、
インスリン送達デバイスで、患者にインスリン投与量を送達することと、をさらに含む、態様219に記載の方法。
221.患者の血糖を制御するための方法であって、
状態ベクトル、モデルおよび共分散行列を定義することであって、状態ベクトルが、インスリン状態変数、炭水化物状態変数、および生理的グルコース状態変数を含む、定義することと、
モデルに基づいて、状態ベクトルを時間内に伝搬することと、
共分散行列およびグルコース濃度を使用して、カルマンフィルタで伝搬された状態ベクトルをフィルタリングすることと、
フィルタリングされた状態ベクトルの1つの状態変数を修正して、フィルタリングされた状態変数と事前定義された値との間の差を制限することと、
修正およびフィルタリングされた状態ベクトルに基づいて、インスリン投与量要求を決定することと、を含む、方法。
222.患者のグルコース濃度を測定するためのグルコース測定デバイス、インスリン送達デバイス、ならびにグルコース測定デバイスおよびインスリン送達デバイスと通信するコントローラを提供すること、をさらに含む、態様221に記載の方法。
223.インスリン送達デバイスに、インスリン投与量要求を送信することと、
インスリン送達デバイスで、患者にインスリン投与量を送達することと、をさらに含む、態様222に記載の方法。
224.患者の血糖を制御するための方法であって、
状態ベクトル、モデルおよび共分散行列を定義することであって、状態ベクトルが、インスリン状態変数、炭水化物状態変数、および生理的グルコース状態変数を含み、共分散行列が、各状態変数と関連付けられた対角要素、および各対角要素と関連付けられた交差項を含む、定義することと、
過去の所定の期間内に食事が発生しなかった場合に、炭水化物対角要素および関連付けられた交差項を、ゼロに設定することにより、共分散行列を修正することと、
モデルに基づいて、状態ベクトルを時間内に伝搬することと、
修正された共分散行列およびグルコース濃度を使用して、カルマンフィルタで伝搬された状態ベクトルをフィルタリングすることと、
フィルタリングされた状態ベクトルに基づいて、インスリン投与量要求を決定することと、を含む、方法。
225.患者のグルコース濃度を測定するためのグルコース測定デバイス、インスリン送達デバイス、ならびにグルコース測定デバイスおよびインスリン送達デバイスと通信するコントローラを提供すること、をさらに含む、態様224に記載の方法。
226.インスリン送達デバイスに、インスリン投与量要求を送信することと、
インスリン送達デバイスで、患者にインスリン投与量を送達することと、をさらに含む、態様225に記載の方法。
227.患者の血糖を制御するための方法であって、
状態ベクトル、モデルおよび共分散行列を定義することであって、状態ベクトルが、インスリン状態変数、炭水化物状態変数、および生理的グルコース状態変数を含み、共分散行列が、各状態変数と関連付けられた対角要素、および各対角要素と関連付けられた交差項を含む、定義することと、
炭水化物の合計が閾値を超え、かつ平均食事時間が低閾値と高閾値との間にある場合に、炭水化物対角要素を、非ゼロ値に設定することにより、共分散行列を修正することと、
炭水化物の合計が閾値を超え、かつ平均食事時間が低閾値と高閾値との間にある場合に、ボーラスインスリン対角要素を、非ゼロ値に設定することにより、共分散行列を修正することと、
モデルに基づいて、状態ベクトルを時間内に伝搬することと、
修正された共分散行列およびグルコース濃度を使用して、カルマンフィルタで伝搬された状態ベクトルをフィルタリングすることと、
フィルタリングされた状態ベクトルに基づいて、インスリン投与量要求を決定することと、を含む、方法。
228.患者のグルコース濃度を測定するためのグルコース測定デバイス、インスリン送達デバイス、ならびにグルコース測定デバイスおよびインスリン送達デバイスと通信するコントローラを提供すること、をさらに含む、態様227に記載の方法。
229.インスリン送達デバイスに、インスリン投与量要求を送信することと、
インスリン送達デバイスで、患者にインスリン投与量を送達することと、をさらに含む、態様228に記載の方法。
230.患者の血糖を制御するための方法であって、
複数の状態ベクトルを定義することであって、各状態ベクトルが、異なるモデルと関連付けられており、各状態ベクトルが、生理的グルコースレベルを含んでいる、定義することと、
事前定義された間隔で、患者の現在のグルコース濃度を測定することと、
事前定義された間隔で、グルコース濃度を受信することと、
事前定義された間隔の分率で、関連付けられたモデルに基づいて、各状態ベクトルを時間内に伝搬することと、
事前定義された間隔で、関連付けられたモデルに基づいて、状態ベクトルを時間内に伝搬することと、
事前定義された間隔で、現在のグルコース濃度に基づいて、各伝搬された状態ベクトルをフィルタリングすることと、
事前定義された間隔で、各状態ベクトルの生理的グルコース値および現在のグルコース濃度に部分的に基づいて、フィルタリングされ、かつ伝搬された状態ベクトル、および関連付けられたモデルのうちの1つを選択することと、
事前定義された間隔で、選択された状態ベクトルおよび関連付けられたモデルを使用して、予測期間中の生理的グルコース軌道を予測することと、
事前定義された間隔で、生理的グルコース軌道を使用して、予測期間中の最適なインスリン軌道の目的関数を解くことと、
事前定義された間隔で、最適なインスリン軌道から、インスリン投与量要求を決定することと、を含む、方法。
231.患者の現在のグルコース濃度を測定するためのグルコース測定デバイス、インスリン送達デバイス、ならびにグルコース測定デバイスおよびインスリン送達デバイスと通信するコントローラを提供すること、をさらに含む、態様230に記載の方法。
232.インスリン送達デバイスに、インスリン投与量要求を送信することと、
インスリン送達デバイスで、患者にインスリン投与量を送達することと、をさらに含む、態様231に記載の方法。
233.患者の血糖を制御するための方法であって、
複数の状態ベクトルを定義することであって、各状態ベクトルが、異なるモデルと関連付けられており、かつ生理的グルコース値を含んでいる、定義することと、
第1の事前定義された間隔で、患者の現在のグルコース濃度を測定することと、
第1の事前定義された間隔で、グルコース濃度を受信することと、
第1の事前定義された間隔で、関連付けられたモデルに基づいて、各状態ベクトルを時間内に伝搬することと、
第1の事前定義された間隔で、現在のグルコース濃度に基づいて、各状態ベクトルをフィルタリングすることと、
第2の事前定義された間隔で、各状態ベクトルの生理的グルコース値および現在のグルコース濃度に部分的に基づいて、状態ベクトルおよび関連付けられたモデルのうちの1つを選択することであって、第2の事前定義された間隔が、第1の事前定義された間隔より長い、選択することと、
第2の事前定義された間隔で、選択された状態ベクトルおよび関連付けられたモデルを使用して、予測期間中の生理的グルコース軌道を予測することと、
第2の事前定義された間隔で、生理的グルコース軌道を使用して、予測期間中の最適なインスリン軌道の目的関数を解くことと、
第2の事前定義された間隔で、最適なインスリン軌道から、インスリン投与量要求を決定することと、を含む、方法。
234.患者の現在のグルコース濃度を測定するためのグルコース測定デバイス、インスリン送達デバイス、ならびにグルコース測定デバイスおよびインスリン送達デバイスと通信するコントローラを提供すること、をさらに含む、態様233に記載の方法。
235.インスリン送達デバイスに、インスリン投与量要求を送信することと、
インスリン送達デバイスで、患者にインスリン投与量を送達することと、をさらに含む、態様234に記載の方法。
236.患者の血糖を制御するためのシステムであって、
薬剤投与量を患者に送達するように構成されている、薬剤送達デバイスと、
少なくとも1つのユーザ入力に基づいて、ユーザデータを生成するように構成されている、ユーザインターフェースと、
グルコース測定値およびユーザデータに応じて、薬剤投与量を決定する手段と、を含む、システム。
【0148】
本開示から逸脱することなく、当業者によって様々な代替および修正が考案され得る。したがって、本開示は、そのようなすべての代替、修正、および変更を包含することを意図している。さらに、本開示のいくつかの実施形態が図面に示され、および/または本明細書で説明されているが、本開示は、本開示が当技術分野が許容する範囲内で広範であり、かつ本明細書も同様に読まれることが意図されているので、それらに限定されることを意図していない。したがって、上記の説明は、限定するものとして解釈されるべきではなく、特定の実施形態の単なる例示として解釈されるべきである。
【0149】
さらに、説明または特許請求の範囲で使用される「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、類似の要素を区別するために提供され、必ずしも順序または時系列を説明するためのものではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であり(特に明確に開示されていない限り)、本明細書に記載の開示の実施形態は、本明細書に記載または図示されているもの以外の他のシーケンスおよび/または配置で動作可能であることを理解されたい。
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