(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 16/909 20190101AFI20240207BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
G06F16/909
G01C21/26 P
(21)【出願番号】P 2021118564
(22)【出願日】2021-07-19
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】500257300
【氏名又は名称】LINEヤフー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【氏名又は名称】沖田 壮男
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 祐
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 崇史
(72)【発明者】
【氏名】田平 章人
(72)【発明者】
【氏名】熊田 圭佑
【審査官】齊藤 貴孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-009675(JP,A)
【文献】特開2016-121874(JP,A)
【文献】特開2014-149233(JP,A)
【文献】特表2013-543973(JP,A)
【文献】特表2022-550622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00-16/958
G01C 21/00-21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによって設定された少なくとも目的地を含む経路探索条件に基づいてナビゲーション装置によって探索された一以上の経路に、ホモトピー型理論に基づく型を付与する付与部と、
前記一以上の経路のうち、経路から別の経路への変換が前記ホモトピー型理論に基づく所定のルールを満たす場合に、前記経路と、前記別の経路とが同一性を有すると判定する判定部と、を備え、
前記付与部は、前記判定部によって同一性を有すると判定された前記経路と前記別の経路に、同一の型を付与する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記所定のルールは、前記経路から前記別の経路への変換が、前記目的地を変更しないことである、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記所定のルールは、前記経路から前記別の経路への変換が、前記目的地を変更せず、かつ経由地に関する変更であることである、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記所定のルールは、前記経路から前記別の経路への変換が、前記目的地を変更せず、かつ前記ナビゲーション装置が気象条件を考慮して前記一以上の経路を探索したことに起因するものであることである、
請求項1から3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記所定のルールは、前記経路から前記別の経路への変換が、前記目的地を変更せず、かつ前記ユーザが利用する交通手段に関する変更であることである、
請求項1から4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記所定のルールは、前記経路から前記別の経路への変換が、前記目的地を変更せず、かつ所要移動時間を規定値以内の範囲で変更するものであることである、
請求項1から5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
コンピュータが、
ユーザによって設定された少なくとも目的地を含む経路探索条件に基づいてナビゲーション装置によって探索された一以上の経路に、ホモトピー型理論に基づく型を付与し、
前記一以上の経路のうち、経路から別の経路への変換が前記ホモトピー型理論に基づく所定のルールを満たす場合に、前記経路と、前記別の経路とが同一性を有すると判定し、
同一性を有すると判定された前記経路と前記別の経路に、同一の型を付与する、
情報処理方法。
【請求項8】
コンピュータに、
ユーザによって設定された少なくとも目的地を含む経路探索条件に基づいてナビゲーション装置によって探索された一以上の経路に、ホモトピー型理論に基づく型を付与させ、
前記一以上の経路のうち、経路から別の経路への変換が前記ホモトピー型理論に基づく所定のルールを満たす場合に、前記経路と、前記別の経路とが同一性を有すると判定させ、
同一性を有すると判定された前記経路と前記別の経路に、同一の型を付与させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地図情報における相対位置のずれを吸収して所望の地点を正確に表示する技術が知られている。例えば、特許文献1には、相対的に示された所定地点の位置に関する相対位置情報に対して、異なる地図情報間で発生する位置のずれを補正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、事象発生地点の相対位置情報を、第1の地図データベースに記憶されている事象発生地点が属する形状ベクトルと、第2の地図データベースに記憶されている事象発生地点が属する形状ベクトルとを用いて補正するものである。しかしながら、従来の技術では、位置情報のずれを機械的に吸収することはできても、ユーザにとって実質的に同一と解釈される位置情報のずれを吸収することができない場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、ユーザにとって実質的に同一と解釈される位置情報のずれを吸収することができる情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、ユーザによって設定された少なくとも目的地を含む経路探索条件に基づいてナビゲーション装置によって探索された一以上の経路に、ホモトピー型理論に基づく型を付与する付与部と、前記一以上の経路のうち、経路から別の経路への変換が前記ホモトピー型理論に基づく所定のルールを満たす場合に、前記経路と、前記別の経路とが同一性を有すると判定する判定部と、を備え、前記付与部は、前記判定部によって同一性を有すると判定された前記経路と前記別の経路に、同一の型を付与するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、ユーザにとって実質的に同一と解釈される位置情報のずれを吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】情報処理装置100の使用環境であるシステム1の一例を示す図である。
【
図2】経路探索部110から端末装置10に送信される地図情報の一例を示す図である。
【
図3】経路探索部110から端末装置10に送信される経路情報の一例を示す図である。
【
図4】ホモトピー型理論の概要を説明するための図である。
【
図5】経路探索部110によって探索された一つの経路候補から別の経路候補への変換が目的地を変更しない場合に同一の型が付与される場面の一例を示す図である。
【
図6】経路探索部110によって探索された一つの経路候補から別の経路候補への変換が目的地を変更しない場合に同一の型が付与される場面の別の例を示す図である。
【
図7】経路探索部110によって探索された一つの経路候補から別の経路候補への変換が経由地に関する変更である場合に同一の型が付与される場面の一例を示す図である。
【
図8】経路探索部110によって探索された一つの経路候補から別の経路候補への変換が、目的地を変更せず、かつ経路探索部110が気象条件を考慮して経路候補を探索したことに起因するものである場合に同一の型が付与される場面の一例を示す図である。
【
図9】ナビアプリ上に表示される、ユーザが経路探索の詳細条件を設定するための画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、本発明の情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
図1は、情報処理装置100の使用環境であるシステム1の一例を示す図である。
図1に示す通り、システム1は、端末装置10と、情報処理装置100と、を備える。
図1では、説明の便宜上、端末装置10と情報処理装置100とが独立して示されているが、以下で説明する情報処理装置100の機能は端末装置10が有してもよい。
【0010】
端末装置10と情報処理装置100は、ネットワークNWを介して通信する。ネットワークNWは、例えば、WAN(Wide Area Network)やLAN(Local Area Network)、インターネット、プロバイダ装置、無線基地局、専用回線などのうち一部または全部を含む。
【0011】
端末装置10は、スマートフォンなどの携帯電話やタブレット端末などである。端末装置10は、情報処理装置100と連携するナビアプリが起動されることで、ナビゲーションシステムの一部を構成するナビゲーション装置として機能する。
【0012】
端末装置10は、GPS(Global Positioning System)受信機などの位置測位装置、ネットワークNWに接続するための通信装置、三軸式の加速度センサ、タッチパネルなどの入出力装置、スピーカ、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを有する。位置測位装置は、衛星から受信した電波に基づく測位を行って、端末装置10の位置を特定する。また、端末装置10は、通信装置が接続された無線基地局の位置から端末装置10の位置を推定してもよい。
【0013】
端末装置10は、位置測位装置などによって特定された端末装置10の位置を定期的に(例えば数[sec]おきに)情報処理装置100に送信する。また、端末装置10は、利用者により設定された目的地を情報処理装置100に送信して経路を取得する。
【0014】
情報処理装置100は、経路探索部110と、判定部120と、付与部130と、を備える。経路探索部110と、判定部120と、付与部130は、例えば、情報処理装置100のプロセッサがプログラムを実行することで実現されてもよいし、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェア(コントローラ)によって実現されてもよい。また、情報処理装置100の記憶部には、地図情報140が記憶される。地図情報140は、例えば、リンクの集合で道路を表現した情報である。
【0015】
経路探索部110は、端末装置10のナビアプリが起動してナビアプリから端末装置10の位置を受信すると、端末装置10の位置を含む地図情報を端末装置10に送信する。
図2は、経路探索部110から端末装置10に送信される地図情報の一例を示す図である。
図2に示す通り、端末装置10に表示される地図情報は、端末装置10の現在地CLと、目的地を入力するための入力領域IAとを含む。端末装置10のユーザは、ナビアプリの入力領域IA上で目的地を入力する。
【0016】
端末装置10のユーザが入力領域IA上で目的地を入力すると、ナビアプリは、当該目的地を含むリクエスト情報を情報処理装置100に送信する。経路探索部110は、ナビアプリからのリクエスト情報に応じて経路探索を行い、経路情報を端末装置10に送信する。
図3は、経路探索部110から端末装置10に送信される経路情報の一例を示す図である。
図3に示す通り、ナビアプリは、受信した経路情報を目的地までの矢印情報として端末装置10上に表示し、ユーザは、表示された経路情報を参照して、目的地に向かうことができる。
【0017】
経路探索部110は、複数の経路候補が探索された場合、これら複数の経路候補に関する経路情報を全て端末装置10に送信してもよいし、複数の経路候補に関する経路情報のうちの一部のみを端末装置10に送信してもよい。複数の経路候補に関する経路情報が端末装置10に送信された場合、ナビアプリは、当該複数の経路候補に関する経路情報を全て端末装置10に表示してもよいし、所定の基準(例えば、所要時間が短い経路)に基づいて、その中の一部の経路候補に関する経路情報のみを端末装置10に表示してもよい。判定部120と、付与部130の機能については後述する。
【0018】
このように、経路探索部110は、ナビアプリからのリクエスト情報に応じて経路探索を行うものであるが、当該リクエスト情報を満足する経路候補は複数個、探索されることがあり得る。従来技術では、リクエスト情報を満足する経路候補が複数個、探索された場合、探索された経路候補は全て互いに異なる候補として扱われる場合があった。しかしながら、探索された複数の経路候補が、例えば、寄り道、工事、又は天候状況による迂回の有無という点でのみ異なる場合、これら複数の経路候補は、同一の目的地を有するという点で、同一性を有すると解釈することもできる。特に、ナビアプリのユーザにとって、迂回の有無という点でのみ異なる経路候補は、実質的に同一であると解釈され得る。すなわち、探索された複数の経路候補を整理して端末装置10上に表示するにあたって、当該複数の経路候補が「同一性を有する」とはどういうことかを定義する必要がある。
【0019】
上記の課題を解決するために、本発明は、ホモトピー型理論を適用する。ホモトピー型理論は、位相幾何学分野に属するホモトピー理論と、数学基礎論分野に属する型理論とを、より一般的な見地から統合した理論であり、拡張された同一性の概念を扱うものである。なお、ここで「ホモトピー型理論を適用する」とは、例えば、ホモトピー型理論を背景とした任意のプログラムコードを作成して実行することを意味し、必ずしもホモトピー型理論を直接的に表す数式、関数などを生成することを意味しなくてもよい。
【0020】
図4は、ホモトピー型理論の概要を説明するための図である。
図5において、a、b、cは空間上の点を示し、pは点aから点bへの道(path)を示し、qは点bから点cへの道を示す。ホモトピー型理論では、空間上の2点を結ぶ道が存在するときに、当該2点が同一性を有すると解釈し、p:a=
Abが成立する。ここで、Aは点aと点bが有する型を示し、p:a=
Abは、点aと点bが型Aに関して同一性を有することを意味する。すなわち、点aから点bへの道が存在することと、点aと点bが同一の型を有することは同値である。道は、以下の性質を有する。
【0021】
[反射律]
空間上の任意の点aには、点a自体からの道pが存在する。すなわち、p:a=Aaが成立する。このときの道pはidとも表記され、恒等写像と称する場合もある。
【0022】
[対称律]
空間上の点aから点bへの道pが存在する場合、点bから点aへの道qも存在する。すなわち、p:a=Abが成立する場合、q:b=Aaが成立するような道qが存在する。このときの道qは、例えば、点aから点bへの道pを逆向きに辿る道であり、!pと表記される。!pを逆写像と称する場合もある。
【0023】
[推移律]
空間上の点aから点bへの道pが存在し、かつ点bから点cへの道qが存在する場合、点aから点cへの道rも存在する。すなわち、p:a=Abかつq:b=Acが成立する場合、r:a=Acが成立するような道rが存在する。このときの道rは、例えば、点aから点bへの道pと点bから点cへの道qを接続した道であり、q〇pと表記される。q〇pを合成写像と称する場合もある。
【0024】
判定部120は、経路探索部110によって複数の経路候補が探索され、一つの経路候補から別の経路候補への変換が上記ホモトピー型理論に基づく所定のルールを満たす場合に、当該一つの経路候補と別の経路候補とが同一性を有すると判定する。付与部130は、判定部120によって同一性を有すると判定されたこれらの経路候補に、上記ホモトピー型理論に基づく同一の型を付与する。以下、ホモトピー型理論に基づく所定のルールと型について、具体的に説明する。
【0025】
例えば、判定部120は、経路探索部110によって探索された一つの経路候補から別の経路候補への変換が目的地を変更しない場合に、これらの経路候補が同一性を有すると判定し、付与部130は、これらの経路候補に同一の型を付与してもよい。
【0026】
図5は、経路探索部110によって探索された一つの経路候補から別の経路候補への変換が目的地を変更しない場合に同一の型が付与される場面の一例を示す図である。
図5に示す通り、経路探索部110は、駅Aを目的地とする複数の経路候補、すなわち、ルートa及びルートbを探索したと仮定する。ルートa及びルートbは同一の目的地を有するため、判定部120は、ルートaからルートbへの変換pが経路候補の同一性を損なうものではなく、したがって、ルートaとルートbは同一性を有すると判定する。付与部130は、判定部120による判定に応じて、ルートaとルートbに同一の型、例えば、型Xを付与する。すなわち、p:a=
Xbが成立する。
【0027】
図6は、経路探索部110によって探索された一つの経路候補から別の経路候補への変換が目的地を変更しない場合に同一の型が付与される場面の別の例を示す図である。
図6に示す通り、経路探索部110は、まず、駅Aを目的地とする経路候補であるルートaを探索したと仮定する。しかし、経路探索部110は、例えば、VICS(登録商標)などの道路交通情報通信システムから、ルートaの工事情報を取得し、それに応じて、ルートaに基づいて工事現場を迂回するルートbを探索したと仮定する。このとき、判定部120は、ルートaからルートbへの変換pが経路候補の同一性を損なうものではなく、したがって、ルートaとルートbは同一性を有すると判定する。付与部130は、判定部120による判定に応じて、ルートaとルートbに同一の型、例えば、型Xを付与する。すなわち、p:a=
Xbが成立する。
【0028】
また、例えば、判定部120は、経路探索部110によって探索された一つの経路候補から別の経路候補への変換が、目的地を変更せず、かつ経由地に関する変更である場合に、これらの経路候補が同一性を有すると判定し、付与部130は、これらの経路候補に同一の型を付与してもよい。
【0029】
図7は、経路探索部110によって探索された一つの経路候補から別の経路候補への変換が、目的地を変更せず、かつ経由地に関する変更である場合に同一の型が付与される場面の一例を示す図である。
図7に示す通り、経路探索部110は、駅Aを目的地とする複数の経路候補、すなわち、ルートa及びルートbを探索したと仮定する。ルートa及びルートbは同一の目的地を有し、かつルートaとルートbとの間の相違は経由地を有するか否かに関するものであるため、判定部120は、ルートaからルートbへの変換pが経路候補の同一性を損なうものではなく、したがって、ルートaとルートbは同一性を有すると判定する。付与部130は、判定部120による判定に応じて、ルートaとルートbに同一の型、例えば、型Xを付与する。すなわち、p:a=
Xbが成立する。
【0030】
また、例えば、判定部120は、経路探索部110によって探索された一つの経路候補から別の経路候補への変換が、目的地を変更せず、かつ経路探索部110が気象条件を考慮して経路候補を探索したことに起因するものである場合に、これらの経路候補が同一性を有すると判定し、付与部130は、これらの経路候補に同一の型を付与してもよい。
【0031】
図8は、経路探索部110によって探索された一つの経路候補から別の経路候補への変換が、目的地を変更せず、かつ経路探索部110が気象条件を考慮して経路候補を探索したことに起因するものである場合に同一の型が付与される場面の一例を示す図である。
図8に示す通り、経路探索部110は、まず、駅Aを目的地とする経路候補であるルートaを探索したと仮定する。しかし、経路探索部110は、例えば、VICSなどの道路交通情報通信システムから、積雪情報を取得し、それに応じて、ルートaの積雪地点を迂回するルートbを探索したと仮定する。このとき、判定部120は、ルートaからルートbへの変換pが経路候補の同一性を損なうものではなく、したがって、ルートaとルートbは同一性を有すると判定する。付与部130は、判定部120による判定に応じて、ルートaとルートbに同一の型、例えば、型Xを付与する。すなわち、p:a=
Xbが成立する。
【0032】
このように、判定部120は、経路探索部110によって探索された一つの経路候補から別の経路候補への変換が、上述した所定のルールを満たす場合に、当該一つの経路候補と別の経路候補とが同一性を有すると判定し、付与部130は、これらの経路候補に同一の型を付与する。しかし、所定のルールは、上記で例示した複数のルールに限定されず、また本明細書で例示される複数のルールは互いにAND条件又はOR条件で組み合わされてもよい。
【0033】
例えば、判定部120は、一つの経路候補から別の経路候補への変換が、目的地を変更せず、かつユーザが利用する交通手段に関する変更である場合に、これらの経路候補が同一性を有すると判定し、付与部130は、これらの経路候補に同一の型を付与してもよい。例えば、共通の目的地を有するルートaとルートbについて、ルートaはバスを利用する経路である一方、ルートbは自動車を利用する経路である場合、これらの経路候補が同一性を有すると判定してもよい。
【0034】
また、例えば、判定部120は、一つの経路候補から別の経路候補への変換が、目的地を変更せず、かつ所要移動時間を規定値以内の範囲で変更するものである場合に、これらの経路候補が同一性を有すると判定し、付与部130は、これらの経路候補に同一の型を付与してもよい。例えば、共通の目的地を有するルートaとルートbについて、ルートaとルートbとの間の所要時間差が5分以内である場合、これらの経路候補が同一性を有すると判定してもよい。
【0035】
なお、上記の説明では、
図5から
図8に示した通り、経路探索部110によって探索された全ての経路候補が端末装置10上に表示される例について説明している。しかしながら、本発明はそのような構成に限定されず、ナビアプリは、付与部130によって同一の型が付与された複数の経路候補のうち、代表となる経路候補を任意の方法で選択して、端末装置10上に表示させてもよい。例えば、型Xが付与された経路候補が3つ探索され、かつ型Yが付与された経路候補が2つ探索された場合、ナビアプリは、型Xを代表する1つの経路候補と、型Yを代表する1つの経路候補を選択し、これら2つの経路候補を端末装置10上に表示させてもよい。これにより、ユーザにとって実質的に異なる経路候補のみを端末装置10上に表示させることができる。
【0036】
さらに、上記の説明では、判定部120が、経路候補の同一性を判定するためのルールを事前に保持しており、事前に保持したルールに基づいて、経路候補の同一性を判定する例について説明している。しかしながら、本発明はそのような構成に限定されず、判定部120は、ユーザがナビアプリ上で設定した条件に応じて、経路候補の同一性を判定するためのルールを設定してもよい。
【0037】
図9は、ナビアプリ上に表示される、ユーザが経路探索の詳細条件を設定するための画面の一例を示す図である。
図9に示す通り、ナビアプリ上では、目的地に加えて、経由地、電車利用の可/不可、バス利用の可/不可、及び許容所要時間などがユーザによる設定項目として表示されている。判定部120は、経路探索部110によって探索された複数の経路候補のうち、ユーザが設定した詳細条件を満たす経路候補が同一性を有すると判定し、付与部130は、詳細条件を満たす経路候補に同一の型を付与してもよい。例えば、
図9に示す通り、ユーザが、詳細条件として、経由地にコンビニを設定し、電車の利用を可として設定し、バス利用を不可として設定し、所要時間を30分以内として設定した場合、判定部120は、当該詳細条件を満たす複数の経路候補が同一性を有すると判定し、付与部130は、これらの経路候補に同一の型を付与してもよい。
【0038】
なお、上記の実施形態では、ユーザがナビアプリを利用して目的地までの経路を探索する場面を例示して説明している。しかしながら、本発明はそのような構成に限定されず、本発明は、例えば、自動運転における経路探索にも適用することができる。より具体的には、自動運転では、ユーザが設定した目的地に応じて、複数の経路候補が自動的に抽出されるが、これら複数の経路候補を上述した所定のルールに基づいて同一性を判定し、同一性を有する複数の経路候補に同一の型を付与して管理することができる。例えば、寄り道、工事、又は天候状況による経路の迂回が発生した場合でも、迂回が発生した経路に、迂回が発生する前の経路と同一の型を付与することにより、迂回に伴う経路の乖離を吸収することができる。
【0039】
以上の通り説明した本実施形態によれば、判定部は、経路探索部によって探索された複数の経路候補のうち、ある経路候補から別の経路候補への変換がホモトピー型理論に基づく所定のルールを満たす場合に、これらの経路候補が同一性を有すると判定し、付与部は、同一性を有すると判定された経路候補にホモトピー型理論に基づく同一の型を付与することによって、複数の経路候補を管理する。これにより、ユーザにとって実質的に同一と解釈される位置情報のずれを吸収することができる。
【0040】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0041】
10 端末装置
110 経路探索部
120 判定部
130 付与部
140 地図情報
NW ネットワーク