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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】船積み用雨除け装置
(51)【国際特許分類】
   B63B 19/24 20060101AFI20240207BHJP
   B63B 19/18 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
B63B19/24 E
B63B19/18 101
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021129831
(22)【出願日】2021-08-06
(65)【公開番号】P2023023896
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2022-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】大竹 泰弘
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-049831(JP,A)
【文献】特開2007-261337(JP,A)
【文献】特開2006-290225(JP,A)
【文献】中国実用新案第200971153(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 19/24
B63B 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船倉の上部開口を開閉するスライド式ハッチカバーが開いたときに形成されるハッチ口を覆うように構成された装置本体と、
前記スライド式ハッチカバーに対し前記装置本体を昇降させると共に走行可能な昇降装置と、
を備えたことを特徴とする船積み用雨除け装置。
【請求項2】
前記昇降装置は、前記スライド式ハッチカバーの開閉方向に走行可能である
請求項1に記載の船積み用雨除け装置。
【請求項3】
前記昇降装置は、車輪を備える
請求項1または2に記載の船積み用雨除け装置。
【請求項4】
前記昇降装置は、前記装置本体を昇降させるためのジャッキを備える
請求項1~3のいずれか一項に記載の船積み用雨除け装置。
【請求項5】
前記装置本体は、一対の前記スライド式ハッチカバー上に跨がって配置され、一方の前記スライド式ハッチカバー上に配置された一方の端部と、他方の前記スライド式ハッチカバー上に配置された他方の端部とを有する
請求項1~4のいずれか一項に記載の船積み用雨除け装置。
【請求項6】
前記昇降装置は、一方の前記スライド式ハッチカバー上にのみ配置され、前記装置本体の一方の端部のみを昇降させる
請求項5に記載の船積み用雨除け装置。
【請求項7】
前記昇降装置は、両方の前記スライド式ハッチカバー上に配置され、前記装置本体の一方の端部と他方の端部を昇降させる
請求項5に記載の船積み用雨除け装置。
【請求項8】
前記昇降装置は、前記スライド式ハッチカバーの開閉方向に直角なカバー幅方向における前記スライド式ハッチカバーの一方の端部と他方の端部の外側に配置される
請求項1~5のいずれか一項に記載の船積み用雨除け装置。
【請求項9】
前記昇降装置は、甲板上に配置される
請求項8に記載の船積み用雨除け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、穀物等の荷をシップローダで船積みするに際し、荷が降雨で濡れたり、風で荷役中の荷が飛散するのを防ぐ船積み用雨除け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷役中の荷が降雨で濡れるのを防ぐ船積み用雨除け装置として、特許文献1に記載の装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6849865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の装置は、基本的に、ハッチ口が開放されているときに設置される。そのため、設置時にハッチ口に落下しないよう万全の注意が必要であり、機能性と安全面で改良の余地が残されている。
【0005】
そこで本開示は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、機能性と安全性を向上した船積み用雨除け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の態様によれば、
船倉の上部開口を開閉するスライド式ハッチカバーが開いたときに形成されるハッチ口を覆うように構成された装置本体と、
前記装置本体を昇降させると共に走行可能な昇降装置と、
を備えたことを特徴とする船積み用雨除け装置が提供される。
【0007】
好ましくは、前記昇降装置は、前記スライド式ハッチカバーの開閉方向に走行可能である。
【0008】
好ましくは、前記昇降装置は、車輪を備える。
【0009】
好ましくは、前記昇降装置は、前記装置本体を昇降させるためのジャッキを備える。
【0010】
好ましくは、前記装置本体は、一対の前記スライド式ハッチカバー上に跨がって配置され、一方の前記スライド式ハッチカバー上に配置された一方の端部と、他方の前記スライド式ハッチカバー上に配置された他方の端部とを有する。
【0011】
好ましくは、前記昇降装置は、一方の前記スライド式ハッチカバー上にのみ配置され、前記装置本体の一方の端部のみを昇降させる。
【0012】
好ましくは、前記昇降装置は、両方の前記スライド式ハッチカバー上に配置され、前記装置本体の一方の端部と他方の端部を昇降させる。
【0013】
好ましくは、前記昇降装置は、前記スライド式ハッチカバーの開閉方向に直角なカバー幅方向における前記スライド式ハッチカバーの一方の端部と他方の端部の外側に配置される。
【0014】
好ましくは、前記昇降装置は、甲板上に配置される。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、機能性と安全性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の第1実施形態に係る船積み用雨除け装置の概略図である。
図2図1の要部斜視図である。
図3図2のA-A線矢視断面図である。
図4図3の要部拡大図である。
図5】蓋部材の伸縮を示す上面図である。
図6】蓋部材の伸縮を示す正面図である。
図7】蓋部材の底面図である。
図8】蛇腹部と蛇腹支持部を示す正面図である。
図9】船舶の前部を示す上面図である。
図10】本実施形態の船積み用雨除け装置を示す上面図である。
図11】本実施形態の船積み用雨除け装置を示す正面図である。
図12】装置本体と昇降装置の連結部の構成を示す側面断面図である。
図13】装置本体と昇降装置の別の連結部の構成を示す側面断面図である。
図14】船積み用雨除け装置の使用方法を説明するための図である。
図15】変形例に係る船積み用雨除け装置を示す上面図である。
図16】変形例に係る船積み用雨除け装置の使用方法を説明するための図である。
図17】第2実施形態に係る船積み用雨除け装置を示す上面図である。
図18】第2実施形態に係る船積み用雨除け装置を示す正面図である。
図19】第2実施形態に係る船積み用雨除け装置を示す正面図である。
図20】第2実施形態に係る船積み用雨除け装置の使用方法を説明するための図である。
図21】第2実施形態に係る船積み用雨除け装置の使用方法を説明するための図である。
図22】第2実施形態に係る船積み用雨除け装置の使用方法を説明するための図である。
図23】第2実施形態に係る船積み用雨除け装置の使用方法を説明するための図である。
図24】第2実施形態に係る船積み用雨除け装置の変形例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、添付図面を参照して本開示の第1実施形態を説明する。図1は、シップローダ、船舶及び本実施の形態に係る船積み用雨除け装置の概略図である。図2は、船舶にセットされた船積み用雨除け装置を斜め上方から視た概略斜視図である。図3は、蓋部材の正面図である。図4図3の要部拡大図である。
【0018】
本実施形態において、スライド式ハッチカバーの開閉方向は船舶の左右方向および幅方向と一致する。また船積み用雨除け装置の長さ方向は船舶の前後方向および長さ方向と一致し、船積み用雨除け装置の幅方向は船舶の左右方向および幅方向と一致する。
【0019】
まず、シップローダ及び船舶について説明する。図1に示すように、シップローダ1は、岸壁2上に敷設されたレール3上を走行する走行部4と、走行部4に旋回自在に設けられた旋回部5と、旋回部5に俯仰自在に設けられたブーム6と、ブーム6の先端に吊下して設けられ穀物等の荷を船倉7内に供給するためのノズル部8とを備える。ブーム6には、岸壁2からの荷をノズル部8に移送するためのコンベア(図示せず)が設けられる。なお、荷は穀物に限るものではない。荷は、雨に濡れることが好ましくない他のバラ物であってもよい。
【0020】
図1に示すように、船舶9は、貨物船である。船舶9は、上部開口10を有する船倉7と、上部開口10を開閉するスライド式ハッチカバー11とを備える。スライド式ハッチカバー11は、船舶9の左右両側に対向して一対設けられると共に、それぞれ左右方向にスライド自在に設けられる。すなわち、スライド式ハッチカバー11は、左右両開き式であり、対向端12を互いに突き合わせることで上部開口10を閉じ、対向端12を互いに離間させることで上部開口10を開く。また、スライド式ハッチカバー11は、任意の間隔で上部開口10を開けるように形成される。以後、スライド式ハッチカバー11が開いて形成されるスライド式ハッチカバー11間の開口をハッチ口13という。なお、スライド式ハッチカバー11は、船舶9の前後方向に開閉可能に設けられてもよい。
【0021】
次に、本実施の形態に係る船積み用雨除け装置について説明する。
【0022】
図1図4に示すように、船積み用雨除け装置20は、ハッチ口13を覆うように構成された装置本体20Aと、後述する昇降装置とを備える。まず、装置本体20Aについて詳しく説明する。
【0023】
装置本体20Aは、スライド式ハッチカバー11上に配置されるレール19と、レール19に走行自在に設けられハッチ口13の一部を覆う船上シュート22と、ハッチ口13の他の部分を覆う蓋部材23とを備える。
【0024】
レール19は、左右のスライド式ハッチカバー11上に平行に、かつ、前後方向に延びて配置される。また、レール19は、ハッチ口13の前後方向の寸法より短いレール片21を、長手方向(前後方向)に複数連結して構成される。レール19の長さは、レール片21を所定数連結したときハッチ口13の前後長さと概ね同じ長さとなるように設定される。なお、レール19は連結構造でなくともよい。この場合、1本のレール片21によりレール19が構成され、レール片21の長さは、ハッチ口13の長さと概ね同じに設定されるとよい。
【0025】
図2に示すように、船上シュート22は、レール19に走行自在に設けられる走行部31と、ノズル部8が挿入される略円筒状のシュート本体部32とを備える。走行部31は、複数の固定キャスターを備える。固定キャスターは、図4に示す蓋部材23の固定キャスター34と共通である。
【0026】
シップローダ1のノズル部8には、シュート本体部32を上方から覆って荷が濡れるのを防止するカバー部材14が設けられる。
【0027】
蓋部材23は、前後方向に伸縮自在に形成され、船上シュート22の前後に配置される。蓋部材23の前後方向における一端は、船上シュート22に固定される。蓋部材23の前後方向における他端は、ハッチ口13の端部近傍のレール19に着脱可能に固定される。蓋部材23は、船上シュート22の走行に応じて伸縮する。例えば、図5および図6に示すように、荷Bの供給時にノズル部8により船上シュート22が押され、船上シュート22が前方に走行したときには、船上シュート22より前方の蓋部材23が前方に収縮し、船上シュート22より後方の蓋部材23が前方に伸長する。
【0028】
蓋部材23は、前後方向に伸縮可能に形成された複数の蛇腹部69と、蛇腹部69を支持する蛇腹支持部70とを備える。
【0029】
蛇腹部69は、左右のレール片21に跨がるアーチ状に形成された複数のアーチフレーム42と、これらアーチフレーム42同士を前後方向に近接離間自在に連結する伸縮リンク43と、これらを覆う止水シート41とを備える。
【0030】
図7に示すように、伸縮リンク43は、一対の棒状フレーム50をピン51を介してX字状に結合してなる交差部材52を複数連結して構成される。交差部材52同士の連結は、棒状フレーム50の先端同士をピン51を介して結合することでなされる。また、交差部材52の端部は、アーチフレーム42に固定される固定端部52aと、アーチフレーム42にスライド可能に設けられる可動端部52bとに分類される。可動端部52bは、ピン51を介してスライダ53に回動自在に結合される。スライダ53は、筒状の部材であり、アーチフレーム42にスライド自在に嵌合される。
【0031】
止水シート41は、柔軟なシートであり、アーチフレーム42間で伸縮するように変形可能である。
【0032】
図2及び図8に示すように、蛇腹支持部70は、蛇腹部69の端部に設けられ、一対のハッチカバー11に跨がるアーチ状に形成される。蛇腹支持部70の下端にも、前記同様の固定キャスターが設けられる。蛇腹支持部70には、雨除けシート76が設けられる。
【0033】
また、図2および図8に示すように、蓋部材23の他端に位置される蛇腹支持部70に、端部シート64が設けられる。これにより、スライド式ハッチカバー11の側面間に形成されるハッチ口13も塞ぐことができる。
【0034】
図4に示すように、船積み用雨除け装置20は、レール19及びスライド式ハッチカバー11間から風水が浸入することを抑制するための第1シール80及び第2シール81と、止水シート41とレール19との間に設けられる止水部材88とを備える。止水部材88は、ブラシで構成され、レール19に支持される。第1シール80はゴム等の軟質の樹脂にてシート状に形成される。第2シール81は、ゴム製のリップシールで構成され、レール19とスライド式ハッチカバー11との間に介在される。レール19の底部にはシールホルダ83が設けられ、第2シール81はシールホルダ83に保持される。
【0035】
次に、昇降装置を含む船積み用雨除け装置20の全体について説明する。
【0036】
図9は、本実施形態の船舶9の前部を示す上面図である。船舶9の甲板9A上に、複数対のスライド式ハッチカバー11、すなわち複数のハッチカバー対11Pが前後方向に直列に設けられている。図示例では二対のみ示すが、この後方にハッチカバー対がさらに設けられてもよい。図示される前側のハッチカバー対を第1ハッチカバー対11PAといい、後側のハッチカバー対を第2ハッチカバー対11PBという。
【0037】
各ハッチカバー対11Pにおいて、一対のハッチカバー11は、互いに近接離間移動し、左右方向に開閉する。図の実線はハッチカバー11が閉じたときの状態を示す。このとき、各ハッチカバー11の対向端12同士が突き合わされる。一方、図の仮想線aはハッチカバー11が開いたときの状態を示す。このとき、各ハッチカバー11の対向端12は互いに離間され、各ハッチカバー11は、閉位置からX/2だけ離れた開位置に位置される。
【0038】
甲板9A上には、各ハッチカバー対11Pに対応した台座9Bが固定される。この台座9Bの前後端部には左右方向に延びるレール9Cが設けられる。ハッチカバー11はこのレール9Cに案内されて左右方向に移動する。図1に示した船倉7の上部開口10は、甲板9Aと台座9Bを貫通して形成される。台座9Bは、ハッチカバー11の前後幅より僅かに大きい前後幅を有する。
【0039】
図10および図11に本実施形態の船積み用雨除け装置20を示す。なお、図10では装置本体20Aを透過的に示す。船積み用雨除け装置20は、前述の装置本体20Aと、装置本体20Aを昇降させると共に走行可能な昇降装置20Bとを備える。図示例において、装置本体20Aと昇降装置20Bは、閉じられた第1ハッチカバー対11PAの上に配置されている。
【0040】
装置本体20Aは、一対のハッチカバー11上に跨がって配置され、左側(一方)のハッチカバー11上に配置された左側(一方)の端部101と、右側(他方)のハッチカバー11上に配置された右側(他方)の端部102とを有する。
【0041】
また装置本体20Aは、閉じたハッチカバー11の近接端12が位置するハッチ口13の左右中心C1に対し、左側にオフセットして配置されている。右側端部102のレール19は、右側ハッチカバー11の近接端12の近傍かつ右方に配置される。詳しくは後述するが、このレール19の位置は、ハッチカバー11が開いたときにレール19が位置される位置である。
【0042】
昇降装置20Bは、ハッチカバー11の開閉方向すなわち左右方向に走行可能である。複数(本実施形態では7つ)の昇降装置20Bが、左側のハッチカバー11上に、前後方向に所定間隔で配置され、装置本体20Aの左側端部101に連結されている。すなわち昇降装置20Bは、左側のハッチカバー11上にのみ配置され、装置本体20Aの左側端部101のみを昇降させる。
【0043】
7つの昇降装置20Bのうち、3つが船上シュート22の走行部31に連結され、2つが前側の蓋部材23に連結され、2つが後側の蓋部材23に連結されている。また前後の蓋部材23について、ハッチ口13の前後方向(ハッチ口長手方向)の中心C2に近い方の1つの昇降装置20Bが、蓋部材23の蛇腹支持部70に連結され、前後中心C2から遠い方の1つの昇降装置20Bが、蓋部材23のもう1つの蛇腹支持部70に連結されている。
【0044】
このように複数の昇降装置20Bで装置本体20Aの左側端部101を昇降させるので、昇降装置20Bに付加される荷重を分散できる。また、昇降装置20Bからハッチカバー11に伝達される押し付け荷重も低減でき、ハッチカバー11の損傷(凹み、傷付き等)を抑制できる。
【0045】
図12には、船上シュート22の走行部31に連結された昇降装置20Bを示す。図示するように、昇降装置20Bは走行用の車輪103を備える。車輪103はハッチカバー11上に載置され、水平軸回りに回転可能であり、左右方向に走行可能である。
【0046】
また昇降装置20Bは、装置本体20Aを昇降させるためのジャッキ104を備える。本実施形態のジャッキ104は油圧ジャッキである。しかしながらジャッキ104の種類は任意であり、例えばパンタグラフを有する機械式、電動式または空圧式であってもよい。
【0047】
走行部31に、左方(反ハッチ口側)に直線状に延びるブラケット105がボルト等により着脱可能に取り付けられる。昇降装置20Bは、ブラケット105の先端部の下方の位置に配置される。ジャッキ104のピストンロッド106の先端部が、ピン107を介してブラケット105に回動可能に連結される。こうしてジャッキ104は、ブラケット105を介して走行部31の上端部を持ち上げ、船上シュート22ひいては装置本体20Aを持ち上げる。このとき固定キャスター34が引っ掛かってレール19が持ち上げられる。
【0048】
車輪103は、複数設けられ、本実施形態ではジャッキ104を挟んだ前後左右の位置に計4つ設けられる。これにより持ち上げ時における昇降装置20Bの姿勢が安定し、昇降装置20Bが転倒するのを抑制できる。なお車輪103の数および位置は任意であり、変更可能である。
【0049】
昇降装置20Bは、車輪103が設けられて走行可能な下側の走行部20BAと、ジャッキ104が設けられて上下方向に伸縮可能な上側の伸縮部20BBとを含む。本実施形態では、図中矢示するように、伸縮部20BBが走行部20BAに対し上下軸(もしくは縦軸)回りに回転可能に連結される。これによる利点は後述する。
【0050】
代替的に、昇降装置20Bは図13に示すような方法で装置本体20Aに連結されてもよい。この場合、レール19を支持するシールホルダ83に、左方(反ハッチ口側)にクランク状に延びるブラケット108が、ボルト等により着脱可能に取り付けられる。昇降装置20Bは、ブラケット108の先端部の下方の位置に配置される。ジャッキ104のピストンロッド106の先端部が、ピン107を介してブラケット108に回動可能に連結される。こうしてジャッキ104は、ブラケット108を介してシールホルダ83を持ち上げることにより、装置本体20Aを持ち上げる。なおブラケット108は、止水シート41の下端を通過できるようクランク状に形成されている。ブラケット108は第1シール80の穴に挿通され、その挿通箇所は別のシール材でシールされる。
【0051】
次に、本実施形態の船積み用雨除け装置20の使用方法を説明する。
【0052】
図10および図14(A)に示すように、本実施形態の船積み用雨除け装置20は、ハッチカバー11が閉状態にありハッチ口13が閉じているときに設置可能であり、また実際に設置される。この点が特許文献1に記載の装置と相違し、本実施形態によれば安全性を著しく向上できる。
【0053】
設置の初期において、装置本体20Aは、前述したように、ハッチ口13の左右中心C1に対し左側にオフセットした状態で左右のハッチカバー11上に載置される。また複数の昇降装置20Bは、左側のハッチカバー11上に載置され、装置本体20Aの左側端部101に連結される。
【0054】
次に、図14(B)に示すように、昇降装置20Bのジャッキ104が伸長される。これにより装置本体20Aの左側端部101が持ち上げられ、装置本体20Aが傾斜される。このとき、装置本体20Aの右側端部102は右側のハッチカバー11上に接地したままである。よって装置本体20Aは、右側端部102の接地点を中心に左上がりになるよう傾動される。
【0055】
次に、図14(C)に示すように、左右のハッチカバー11が開かれる。すると装置本体20Aの右側端部102は、右側のハッチカバー11上に接地したまま、左右中心C1から離れるよう、右側にX/2だけ移動される。これにより装置本体20Aは、最初の位置から右側にX/2だけ移動される。
【0056】
一方、装置本体20Aの左側端部101は、昇降装置20Bによって持ち上げられ左側のハッチカバー11に接地していないため、左側のハッチカバー11に追従しない。むしろ、左側のハッチカバー11が左側に移動すると、昇降装置20Bが左側のハッチカバー11に対し相対的に右側に走行移動する(破線矢印参照)。よって装置本体20Aの左側端部101も、左側のハッチカバー11に対し相対的に右側に相対移動する。
【0057】
こうして、左右のハッチカバー11を支障なく開くことができ、ハッチカバー開放後に装置本体20Aを、左側および右側ハッチカバー11上の所望の位置に位置させることができる。
【0058】
次に、図14(D)に示すように、昇降装置20Bのジャッキ104が収縮される。これにより装置本体20Aの左側端部101は左側ハッチカバー11上に降ろされる。これにより船積み用雨除け装置20の設置が実質的に完了し、荷役作業を行うことができる。
【0059】
本実施形態によれば、船積み用雨除け装置20を設置した状態で、ハッチカバー11を開閉することができる。よって利便性を大幅に高めることができる。
【0060】
特許文献1に記載の装置は基本的に、ハッチ口が開いているときにしか装置を設置できなかったので、ハッチ口から雨が浸入しないよう、晴天時に設置を行っていた。しかしこれだと、設置タイミングが晴天時に限定されてしまう。本実施形態では、晴天時は勿論のこと、雨天時にもハッチ口を閉じて装置を設置できる。そのため設置タイミングを増やすことができる。
【0061】
また、仮に特許文献1に記載の装置を、ハッチ口が閉じたときに設置した場合、降雨開始時に装置をシップローダで少し持ち上げ、ハッチ口を少しだけ開けて装置をハッチ口上に設置することが考えられる。しかしこれだと、シップローダが装置の移動に使われてしまうため、その間、シップローダを用いた荷役作業が行えない。本実施形態ではこうした事態も回避可能である。
【0062】
また本実施形態によれば、ハッチ口13が閉じているときに船積み用雨除け装置20を設置できる。そのため、設置作業中におけるハッチ口13への落下を防止でき、安全性を著しく向上することができる。
【0063】
本実施形態では、昇降装置20Bの伸縮部20BBが、走行部20BAに対し上下軸回りに回転可能に連結されている。そのため、伸縮部20BBに対する走行部20BAの回転方向の向きを変え、昇降装置20Bをハッチカバー開閉方向以外の方向に走行させることもできる。例えば、蛇腹部69を伸縮させるとき、昇降装置20Bにより装置本体20Aの左側の端部101を持ち上げると共に、走行部20BAをその蛇腹部69の伸縮方向に走行させて伸縮を補助することができる。
【0064】
なお、装置本体20Aと昇降装置20Bの初期設置位置を、図10に示したものと逆にしてもよい。すなわち、装置本体20Aを左右中心C1に対し右側にオフセットして配置し、昇降装置20Bを右側のハッチカバー11上に配置し、装置本体20Aの右側端部102に連結してもよい。
【0065】
次に、本実施形態の変形例を説明する。
【0066】
図15に示すように、本変形例の船積み用雨除け装置20は、装置本体20Aの右側端部102に連結された昇降装置20Bも備えている。この右側の昇降装置20Bは、右側のハッチカバー11上に配置される。
【0067】
本変形例の場合、装置本体20Aは、閉じたハッチカバー11上に最初に設置されるものの、ハッチ口13の左右中心C1に対しオフセットされておらず、その左右中心C1と同じ左右位置に配置されている。
【0068】
左側昇降装置20Bと同数(7つ)の右側昇降装置20Bが、左側昇降装置20Bと同じ前後方向の位置に左右対称に配置されている。但しこれらの数および位置は変えてもよい。こうして昇降装置20Bは、左側および右側の両方のハッチカバー11上に配置され、装置本体20Aの左側端部101および右側端部102を昇降させる。
【0069】
本変形例によれば、より多くの昇降装置20Bで装置本体20Aを昇降させるので、昇降装置20Bに付加される荷重をさらに分散できる。また、昇降装置20Bからハッチカバー11に伝達される押し付け荷重もさらに低減でき、ハッチカバー11の損傷(凹み、傷付き等)を一層抑制できる。
【0070】
本変形例の船積み用雨除け装置20の使用方法は大略同様である。図16(A)に示すように、まず装置本体20Aが、閉じている左右のハッチカバー11上に、かつ、ハッチ口13の左右中心C1と同じ左右位置に配置される。また複数の昇降装置20Bが、左側および右側のハッチカバー11上に載置され、装置本体20Aの左側端部101および右側端部102に連結される。
【0071】
次に、図16(B)に示すように、左側および右側の昇降装置20Bのジャッキ104が伸長される。これにより装置本体20Aの全体が水平のまま持ち上げられる。
【0072】
次に、図16(C)に示すように、左右のハッチカバー11が開かれる。このとき装置本体20Aがハッチカバー11に追従しないよう、装置本体20Aが図示しない固定部材により船舶(例えば甲板9A)に固定される。これにより、装置本体20Aが一定位置に保持されたまま、左側の昇降装置20Bは左側のハッチカバー11に対し相対的に右側に走行移動し、右側の昇降装置20Bは右側のハッチカバー11に対し相対的に左側に走行移動する(破線矢印参照)。
【0073】
こうして、左右のハッチカバー11を支障なく開くことができ、ハッチカバー開放後に装置本体20Aを、左側および右側ハッチカバー11上の所望の位置に位置させることができる。
【0074】
次に、図16(D)に示すように、昇降装置20Bのジャッキ104が収縮される。これにより装置本体20Aの左側端部101および右側端部102が左側および右側ハッチカバー11上に降ろされる。これにより船積み用雨除け装置20の設置が実質的に完了し、荷役作業を行うことができる。
【0075】
なお、本変形例の場合、装置本体20Aは図15に示した位置に初期設置されなくてもよい。閉じたハッチカバー11上の別の位置に初期設置し、その後、ハッチカバー11の開放直前で、昇降装置20Bにより、装置本体20Aを持ち上げて図15に示した位置に移動してもよい。伸縮部20BBに対する走行部20BAの向きを変えられるため、装置本体20Aを持ち上げて移動するときの移動方向は任意である。
【0076】
[第2実施形態]
次に、本開示の第2実施形態を説明する。なお前記第1実施形態と同様の部分については図中同一符号を付して説明を割愛し、以下、第1実施形態との相違点を主に説明する。
【0077】
図17および図18に第2実施形態の船積み用雨除け装置20を示す。なお図17では装置本体20Aを透過的に示す。船積み用雨除け装置20は、前記同様、装置本体20Aと、昇降装置20Bとを備える。
【0078】
ここで、ハッチカバー11の開閉方向(左右方向)に直角な方向(前後方向)をカバー幅方向ともいう。ハッチカバー11は、カバー幅方向における一方の端部すなわち前側端部111と、他方の端部すなわち後側端部112とを有する。
【0079】
昇降装置20Bは、ハッチカバー11上ではなく、ハッチカバー11の前側端部111と後側端部112の前後方向における外側に配置されている。具体的には昇降装置20Bは、ハッチカバー11の前側端部111と後側端部112の外側で、かつ、台座9B近傍の位置において、甲板9A上に配置されている。
【0080】
前側の昇降装置20Bは、前側ブラケット113を介して装置本体20Aの前側端部114に連結されている。具体的には、前側ブラケット113は左右方向に延び、その左端が左側レール19(またはシールホルダ83、以下同様)の前端に連結され、その右端が右側レール19の前端に連結されている。前側ブラケット113は、左側レール19および右側レール19に、ボルト等により着脱可能に取り付けられる。そして前側ブラケット113の長手方向の中間部の下方に、前側の昇降装置20Bが配置され、昇降装置20Bが前記同様の方法で前側ブラケット113に接続される。こうして1つの昇降装置20Bにより装置本体20Aの前側端部114が持ち上げられる。
【0081】
後側の昇降装置20Bについては、前側の昇降装置20Bと前後対称であるから説明を省略する。符号115は後側ブラケットを示し、符号116は装置本体20Aの後側端部を示す。図19には、前側および後側の昇降装置20Bにより装置本体20Aが水平に持ち上げられている様子を示す。
【0082】
本実施形態の場合、装置本体20Aは、閉じたハッチカバー11上に最初に設置されるものの、ハッチ口13の左右中心C1に対しオフセットされておらず、その左右中心C1と同じ左右位置に配置されている。
【0083】
昇降装置20Bは前記同様であり、ハッチカバー11の開閉方向すなわち左右方向に走行可能である。
【0084】
次に、本実施形態の船積み用雨除け装置20の使用方法を説明する。
【0085】
図20に示すように、まず装置本体20Aが、第1ハッチカバー対11PAの閉じたハッチカバー11上に、かつ、ハッチ口13の左右中心C1と同じ左右位置に配置される。また前側および後側の昇降装置20Bが、甲板9A上に載置され、装置本体20Aの前側端部114および後側端部116に連結される。
【0086】
次に、図19に示したように、前側および後側の昇降装置20Bのジャッキ104が伸長される。これにより装置本体20Aの全体は水平のまま持ち上げられる。
【0087】
次に、図21に示すように、左右のハッチカバー11が開かれる。このとき装置本体20Aが昇降装置20Bによって持ち上げられているので、ハッチカバー11の開動作が阻害されない。こうして、左右のハッチカバー11を支障なく開くことができる。
【0088】
次に、図18に示したように、昇降装置20Bのジャッキ104が収縮される。これにより装置本体20Aが左側および右側ハッチカバー11上に降ろされる。これにより船積み用雨除け装置20の設置が実質的に完了し、荷役作業を行うことができる。
【0089】
次に、荷役作業終了後、図19に示すように、装置本体20Aが昇降装置20Bにより持ち上げられ、左右のハッチカバー11が閉じられる。
【0090】
次いで、図22に示すように、前側および後側の昇降装置20Bは、装置本体20Aを持ち上げたまま走行移動し、装置本体20Aを、閉じた状態の第2ハッチカバー対11PB上に移送する。
【0091】
このとき、前後の昇降装置20Bは、装置本体20Aを持ち上げたまま、まず左側に走行移動し、装置本体20Aを、第1ハッチカバー対11PAの台座9Bの外側(左側)に移動する。そして前後の昇降装置20Bの走行部20BAの向きが90°変えられる。これにより前後の昇降装置20Bは前後方向に移動可能となる。次いで前後の昇降装置20Bは、甲板9A上を後方に走行移動し、装置本体20Aを、第2ハッチカバー対11PBの台座9Bの左側に移動する。その後、前後の昇降装置20Bの走行部20BAの向きが再び90°変えられ、前後の昇降装置20Bが左右方向に移動可能とされる。次いで前後の昇降装置20Bは、右方に走行移動し、装置本体20Aを、第2ハッチカバー対11PB上に移動する。
【0092】
次に、図23に示すように、第2ハッチカバー対11PBの左右のハッチカバー11が開かれる。このときにもハッチカバー11を支障なく開くことができる。
【0093】
次に、図18に示すように、昇降装置20Bのジャッキ104が収縮される。これにより装置本体20Aがハッチカバー11上に降ろされ、船積み用雨除け装置20の設置が実質的に完了し、荷役作業を行うことができる。
【0094】
本実施形態は、第1実施形態の利点に加え、次の利点を有する。すなわち、昇降装置20Bを走行させることで装置本体20Aをハッチカバー対11P間で移動させることができ、複数のハッチカバー対11Pに対し装置本体20Aを共用できる。よって、装置コストを低減することができる。
【0095】
装置本体20Aは、シップローダ1を使ってハッチカバー対11P間で移動させることもできる。しかしこうすると、移動の間、シップローダ1による荷役作業が行えなくなり、作業効率が低下する。本実施形態によれば、こうした作業効率低下を回避することができる。
【0096】
また本実施形態によれば、ハッチカバー対11P上の位置と、それ以外の位置との間で、装置本体20Aを移動することもできる。例えば、ハッチカバー対11P以外の甲板9A上の位置で装置本体20Aを初期設置し、装置本体20Aを使用する際に装置本体20Aをハッチカバー対11P上に移動することができる。
【0097】
また例えば、晴天時等で装置本体20Aが必要ない場合には、装置本体20Aをハッチカバー対11P上以外の別の場所に退避させることも可能である。
【0098】
このように本実施形態によれば、装置本体20Aを船上で比較的自由に移動できるため、利便性を高めることができる。
【0099】
なお、ここでは第1ハッチカバー対11PAからその隣の第2ハッチカバー対11PBに装置本体20Aを移動させる例を説明したが、より離れたハッチカバー対11P間で装置本体20Aを移動させてもよい。
【0100】
次に、本実施形態の変形例を説明する。
【0101】
前記基本実施形態では、昇降装置20Bが前後に1つずつ、計2つあったのに対し、本変形例では図24に示すように、昇降装置20Bが前後に2つずつ、計4つ設けられている。
【0102】
前側については、左側の昇降装置20Bが、前左側ブラケット117Aを介して、装置本体20Aの左側レール19の前端に連結されている。また右側の昇降装置20Bが、前右側ブラケット117Bを介して、装置本体20Aの右側レール19の前端に連結されている。
【0103】
後側についても、前後対称の同様の構成がなされる。符号118Aが後左側ブラケット、符号118Bが後右側ブラケットを示す。
【0104】
本変形例によれば、装置本体20Aの持ち上げ荷重をより多くの昇降装置20Bに分散させ、昇降装置20Bの一つ当たりの負荷を低減できる。
【0105】
以上、本開示の実施形態を詳細に述べたが、本開示の実施形態および変形例は他にも様々考えられる。例えば、装置本体について、前記実施形態では蛇腹構造の伸縮式のものを採用したが、これに限らず、装置本体の形態は任意である。例えば、装置本体は、伸縮しない固定式のものであってもよい。この場合、装置本体を比較的軽量な材料、例えば樹脂(FRPを含む)、アルミ等で作製してもよい。
【0106】
昇降装置20Bにおける複数の走行用車輪103の少なくとも一つは、操舵可能であってもよく、すなわち、上下軸回りに旋回可能であってもよい。
【0107】
前述の各実施形態および各変形例の構成は、特に矛盾が無い限り、部分的にまたは全体的に組み合わせることが可能である。本開示の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本開示の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本開示に含まれる。従って本開示は、限定的に解釈されるべきではなく、本開示の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0108】
7 船倉
9 船舶
9A 甲板
10 上部開口
11 スライド式ハッチカバー
13 ハッチ口
20 船積み用雨除け装置
20A 装置本体
20B 昇降装置
101 左側端部
102 右側端部
103 車輪
104 ジャッキ
114 前側端部
116 後側端部
図1
図2
図3
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図7
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図10
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