(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】連続式熱処理炉及びその操作方法
(51)【国際特許分類】
C21D 1/00 20060101AFI20240207BHJP
F27B 9/40 20060101ALI20240207BHJP
F27D 19/00 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
C21D1/00 112L
C21D1/00 112Z
F27B9/40
F27D19/00 A
F27D19/00 D
F27D19/00 Z
(21)【出願番号】P 2021138923
(22)【出願日】2021-08-27
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【氏名又は名称】奥西 祐之
(72)【発明者】
【氏名】山下 祐輝
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-067539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/00- 9/40
C21D 1/00
F27D 17/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の処理室が連続して設けられ、各処理室間に扉が設けられて、複数のワークが各処理室で順次連続して処理される連続式熱処理炉の操作方法であって、
各処理室内においてワークの処理が終了した後、当該処理室内のワークの進行方向の前方に位置する前方扉を開放してワークを搬出し、
前記前方扉を閉止した後、前記当該処理室内のワークの進行方向の後方に位置する後方扉を開放して次のワークを前記当該処理室内に搬入し、前記後方扉を閉止して次のワークの処理を開始し、
前記前方扉を閉止した後、前記後方扉を開放するまでの間に、前記当該処理室内の状態を変更する状態調整時間を含み、
前記状態調整時間をゼロとすることを含む、連続式熱処理炉の操作方法。
【請求項2】
複数の処理室が連続して設けられ、各処理室間に扉が設けられて、複数のワークが各処理室で順次連続して処理される連続式熱処理炉の操作方法であって、
各処理室内においてワークの処理が終了した後、当該処理室内のワークの進行方向の前方に位置する前方扉を開放してワークを搬出し、
前記前方扉を閉止した後、前記当該処理室内のワークの進行方向の後方に位置する後方扉を開放して次のワークを前記当該処理室内に搬入し、前記後方扉を閉止して次のワークの処理を開始し、
前記前方扉を閉止した後、前記後方扉を開放するまでの間に、前記当該処理室内の状態を変更する状態調整時間を含み、
処理する対象である対象ワークが最初の処理室に搬入された後、最後の処理室から搬出されるまでの間、前記対象ワークの一つ前に処理される先行ワークに追いつかず、各処理室における前記対象ワークの搬入、処理及び搬出が待機状態なく連続して行われるように、前記対象ワークが前記最初の処理室に搬入されるタイミングを調整する、連続式熱処理炉の操作方法。
【請求項3】
前記当該処理室内の状態は、前記当該処理室内の温度、圧力、雰囲気の成分の少なくとも1つを含む、
請求項1又は2に記載の連続式熱処理炉の操作方法。
【請求項4】
各ワークについて、各処理室におけるワークの搬入、処理及び搬出が待機状態なく連続して行われる移動パターンを作成し、
前記先行ワークの移動パターンに前記対象ワークの移動パターンを時間的に近接させていき、いずれかの処理室において、前記対象ワークの前記状態調整時間の開始時間が、前記先行ワークの次の処理室への搬入終了時間と最初に一致するタイミングに基づき、前記対象ワークが前記最初の処理室に搬入されるタイミングを決定する、
請求項2記載の連続式熱処理炉の操作方法。
【請求項5】
複数の処理室が連続して設けられ、各処理室間に扉が設けられて、複数のワークが各処理室で順次連続して処理される連続式熱処理炉であって、
前記連続式熱処理炉は、ワークの移動、前記扉の開閉及び各処理室の状態を変更する制御装置を備えており、
前記制御装置は、
請求項1~4のいずれか1つに記載の操作方法を行うようになっている、連続式熱処理炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多室型の連続式熱処理炉及びその操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多室型の連続式熱処理炉では、特許文献1及び2に示されるように、各処理室に1つのワークが収容され、各処理室間は扉で仕切られており、扉を開閉させながらワークを隣の処理室へ進めるという方法が行われてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-106973号公報
【文献】特開2005-120439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、一連の熱処理(焼き入れや浸炭等を含む)を行うには、通常2~6時間程度要しており、同じ熱処理パターン(時間と共に、圧力、温度、雰囲気の成分等を変化させるパターン)を行うワークを、例えば
図8に示されるように、どの熱処理室における処理時間も同じにすることにより、連続して処理するようになっている。そして、異なる熱処理パターンを行うワークに変更するときには、現在処理されているワーク全てが熱処理炉を排出された後、熱処理プログラムを変更して、当該異なる熱処理パターンを行うワークを熱処理炉に搬入している。したがって、異なる熱処理パターンを行うワークを熱処理炉に搬入するまでに、現在処理されているワーク全てを熱処理炉から排出させるまで待つ必要があり、その待ち時間の間、次のワークの処理が進まない。しかし、同じ熱処理パターンのワークが多く処理される場合には、特に問題とならなかった。
【0005】
しかし近年、多品種少量生産化が進み、熱処理プログラムの切り換え及び炉内の状態(圧力、温度、雰囲気等)の変更が頻繁となってきており、また、各処理室の処理時間を異ならせる必要も生じているので、待ち時間の蓄積が問題となってきている。
【0006】
そこで本発明では、熱処理パターンの異なるワークを処理する場合でも、現在処理されているワーク全てが熱処理炉から排出される前に、次のワークの処理を進めることができる連続式熱処理炉及びその操作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、複数の処理室が連続して設けられ、各処理室間に扉が設けられて、複数のワークが各処理室で順次連続して処理される連続式熱処理炉の操作方法であって、
各処理室内においてワークの処理が終了した後、当該処理室内のワークの進行方向の前方に位置する前方扉を開放してワークを搬出し、
前記前方扉を閉止した後、前記当該処理室内のワークの進行方向の後方に位置する後方扉を開放して次のワークを前記当該処理室内に搬入し、前記後方扉を閉止して次のワークの処理を開始する。
【0008】
前記構成によれば、各室内においてワークを処理した後、前方の前方扉を開放してワークを排出し、前方扉を閉止した後、後方の後方扉を開放して、次のワークを室内に搬入するので、熱処理パターンの異なるワークを処理する場合でも、現在処理されているワーク全てが熱処理炉から排出される前に、次のワークの処理を進めることができる。
【0009】
上記実施形態は、さらに、次のような構成を備えるのが好ましい。
【0010】
(1)前記前方扉を閉止した後、前記後方扉を開放するまでの間に、前記当該処理室内の状態を変更する状態調整時間を含む。
【0011】
(2)前記構成(1)において、前記当該処理室内の状態は、前記当該処理室内の温度、圧力、雰囲気の成分の少なくとも1つを含む。
【0012】
(3)前記構成(1)又は(2)において、前記状態調整時間をゼロとすることを含む。
【0013】
(4)前記構成(1)~(3)のいずれか1つにおいて、処理する対象である対象ワークが最初の処理室に搬入された後、最後の処理室から搬出されるまでの間、前記対象ワークの一つ前に処理される先行ワークに追いつかず、各処理室における前記対象ワークの搬入、処理及び搬出が待機状態なく連続して行われるように、前記対象ワークが前記最初の処理室に搬入されるタイミングを調整する。
【0014】
(5)前記構成(4)において、各ワークについて、各処理室におけるワークの搬入、処理及び搬出が待機状態なく連続して行われる移動パターンを作成し、
前記先行ワークの移動パターンに前記対象ワークの移動パターンを時間的に近接させていき、いずれかの処理室において、前記対象ワークの前記状態調整時間の開始時間が、前記先行ワークの次の処理室への搬入終了時間と最初に一致するタイミングに基づき、前記対象ワークが前記最初の処理室に搬入されるタイミングを決定する。
【0015】
前記構成(1)によれば、前方扉を閉止した後、後方扉を開放するまでの間に、処理室内の状態を変更する状態調整時間があるので、次のワークを搬入する前に、次のワークの処理を行うために処理室内の状態を変更することができる。
【0016】
前記構成(2)によれば、当該処理室内の状態は、当該処理室内の温度、圧力、雰囲気の成分の少なくとも1つを含むので、処理室内の温度、圧力、雰囲気の成分の少なくとも1つの状態を変更し、ワークを処理することができる。
【0017】
前記構成(3)によれば、次のワークの処理状態が、前のワークの処理状態と同じ場合や状態が整っている又は状態を変更する必要がない場合には、状態調整時間をゼロとすることができる。
【0018】
前記構成(4)によれば、処理する対象である対象ワークが最初の処理室に搬入された後、最後の処理室から搬出されるまでの間、先行ワークに追いつくことがないように、対象ワークが最初の処理室に搬入されるタイミングが調整されるので、熱処理パターンの異なる対象ワークを処理する場合でも、現在処理されているワーク全てが熱処理炉から排出される前に、対象ワークの処理を進めることができる。
【0019】
前記構成(5)によれば、いずれかの処理室において、対象ワークの状態調整時間の開始時間が、先行ワークの次の処理室への搬入終了時間と最初に一致するタイミングに基づき対象ワークが最初の処理室に搬入されるタイミングを調整することによって、対象ワークが最初の処理室に搬入された後、最後の処理室から搬出されるまでの間、先行ワークに追いつくことがないので、熱処理パターンの異なる対象ワークを処理する場合でも、現在処理されているワーク全てが熱処理炉から排出される前に、対象ワークの処理を進めることができる。
【0020】
本発明の他の実施形態は、複数の処理室が連続して設けられ、各処理室間に扉が設けられて、複数のワークが各処理室で順次連続して処理される連続式熱処理炉であって、
前記連続式熱処理炉は、ワークの移動、前記扉の開閉及び各処理室の状態を変更する制御装置を備えており、
前記制御装置は、上記一実施形態の操作方法を行うようになっている。
【0021】
前記構成によれば、熱処理パターンの異なるワークを処理する場合でも、現在処理されているワーク全てが熱処理炉から排出される前に、次のワークの処理を進めることができる連続式熱処理炉を提供できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、熱処理パターンの異なるワークを処理する場合でも、現在処理されているワーク全てが熱処理炉から排出される前に、次のワークの処理を進めることができる連続式熱処理炉及びその操作方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る連続式熱処理炉の概略図である。
【
図2】ワークW1を処理する場合の制御装置51の操作及びワークW1の移動パターンを説明する概略図である。
【
図3】ワークW2を処理する場合の制御装置51の操作及びワークW2の移動パターンを説明する概略図である。
【
図4】ワークW3を処理する場合の制御装置51の操作及びワークW3の移動パターンを説明する概略図である。
【
図5】ワークW1、W2、W3がこの順で連続的に処理される場合のワークW2、W3が搬入されるタイミングを調整する段階の概略図である。
【
図6】ワークW1、W2、W3がこの順で連続的に処理される場合のワークW2が搬入されるタイミングが確定した段階の概略図である。
【
図7】ワークW1、W2、W3がこの順で連続的に処理される場合のワークW3が搬入されるタイミングが確定した段階の概略図である。
【
図8】同じ処理条件でワークを連続して処理する場合のワークの移動パターンを説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る連続式熱処理炉1の概略図である。
図1に示されるように、連続式熱処理炉1は、ワークWを連続的に搬送しながら熱処理を行う炉であり、複数の処理室が連続して設けられ、各室間には、室同士を仕切る扉が設けられている。本実施形態では、3つの処理室が設けられており、ワーク搬送方向上流側から、第1処理室10、第2処理室20、第3処理室30となっている。なお、ワークWは、各処理室内に1つ図示されているが、複数のワークWを処理室間で一度に移動させる場合も含まれる。
【0025】
第1処理室10には、第1処理室10のワーク搬送方向上流側の入口に第1入口扉(後方扉)11が設けられ、第1処理室10のワーク搬送方向下流側の出口に第1出口扉12(前方扉)が設けられている。
【0026】
第2処理室20には、第2処理室20のワーク搬送方向上流側の入口に第2入口扉(後方扉)21が設けられ、第2処理室20のワーク搬送方向下流側の出口に第2出口扉(前方扉)22が設けられている。ここで、第1出口扉12と第2入口扉21は同じ扉となる。
【0027】
第3処理室30には、第3処理室30のワーク搬送方向上流側の入口に第3入口扉(後方扉)31が設けられ、第3処理室30のワーク搬送方向下流側の出口に第3出口扉(前方扉)32が設けられている。ここで、第2出口扉22と第3入口扉31は同じ扉となる。
【0028】
連続式熱処理炉1は、ワークWを搬送する搬送装置41及び連続式熱処理炉1の作動を制御する制御装置51を備えている。制御装置51は、具体的には、ワークWの移動(搬送装置41の作動)、各処理室の扉の開閉及び各処理室の状態を制御する。各処理室の状態とは、各処理室の温度、圧力及び雰囲気である。
【0029】
制御装置51による連続式熱処理炉1の操作方法は、以下のとおりである。
【0030】
図2は、ワークW1を処理する場合の制御装置51の操作及びワークW1の移動パターン1を説明する概略図であり、
図3は、ワークW2を処理する場合の制御装置51の操作及びワークW2の移動パターン2を説明する概略図であり、
図4は、ワークW3を処理する場合の制御装置51の操作及びワークW3の移動パターン3を説明する概略図である。横軸はワークの位置を示し、縦軸は時間を示している。また、ワークの位置をブロックで示し、その中には動作が記載されている。ブロックが図面において右下の方向に連続することによって、ワークの処理室への搬入及び処理室からの搬出が待機状態なく(途切れることなく)行われていることが確認できる。
図2~
図4に示されるように、ワークW1~ワークW3において、各処理室の処理時間は異なるが、いずれのワークWにおいても、各処理室におけるワークの搬入、処理及び搬出が連続して行われるようになっている。制御装置51は、各処理室内においてワークWを処理した後、当該処理室内のワークWの進行方向の前方(下流)に位置する前方扉を開放してワークWを排出し、前方扉を閉止した後、当該処理室内のワークの進行方向の後方(上流)に位置する後方扉を開放して次のワークを当該処理室内に搬入し、後方扉を閉止する。ここで、次のワークが、前に処理したワークと処理室内の状態が異なる場合には、後方扉を開放する前に、処理室内の状態を変更するための状態調整時間が必要となる。
【0031】
具体的には、第1処理室10においてワークWを処理した後、第1処理室10の第1出口扉12を開放してワークWを排出し、第1出口扉12を閉止した後、第1入口扉11を開放して次のワークWを第1処理室10内に搬入し、第1入口扉11を閉止する。ここで、第1出口扉12を閉止した後、第1入口扉11を開放するまでの間、第1処理室10の状態(温度、圧力及び雰囲気)を変更する第1状態調整時間151、152、153を設ける。
【0032】
同様に、第2処理室20においてワークWを処理した後、第2処理室20の第2出口扉22を開放してワークWを排出し、第2出口扉22を閉止した後、第2入口扉21を開放して次のワークWを第2処理室20内に搬入し、第2入口扉21を閉止する。ここで、第2出口扉22を閉止した後、第2入口扉21を開放するまでの間、第2処理室20の状態(温度、圧力及び雰囲気)を変更する第2状態調整時間251、252、253を設ける。
【0033】
また、第3処理室30においてワークWを処理した後、第3処理室30の第3出口扉32を開放してワークWを排出し、第3出口扉32を閉止した後、第3入口扉31を開放して次のワークWを第3処理室30内に搬入し、第3入口扉31を閉止する。ここで、第3出口扉32を閉止した後、第3入口扉31を開放するまでの間、第3処理室30の状態(温度、圧力及び雰囲気)を変更する第3状態調整時間351、352、353を設ける。
【0034】
なお、同じ熱処理パターンのワークWが連続して処理される場合、各処理室の状態を変更する必要がなくなるので、例えばワークW1が連続して処理される場合には、2番目のワークW1から第1状態調整時間151、第2状態調整時間251、及び第3状態調整時間351をゼロとすることができる。同様に、ワークW2が連続して処理される場合には、2番目のワークW2から第1状態調整時間152、第2状態調整時間252、及び第3状態調整時間352をゼロとすることができる。また、ワークW3が連続して処理される場合には、3番目のワークW3から第1状態調整時間153、第2状態調整時間253、及び第3状態調整時間353をゼロとすることができる。また、同じワークWが連続して処理される場合でなくても、状態が整っている又は状態を変更する必要がない場合には、状態調整時間をゼロとすることができる。
【0035】
次に、処理時間が異なるワークW1、W2、W3が連続して処理される場合の、制御装置51による連続式熱処理炉1の操作方法を説明する。
図5は、ワークW1、W2、W3がこの順で連続的に処理される場合のワークW2、W3が搬入されるタイミングを調整する段階の概略図であり、
図6は、ワークW1、W2、W3がこの順で連続的に処理される場合のワークW2が搬入されるタイミングが確定した段階の概略図であり、
図7は、ワークW1、W2、W3がこの順で連続的に処理される場合のワークW3が搬入されるタイミングが確定した段階の概略図である。
【0036】
図5に示されるように、ワークW1、W2、W3のそれぞれについて、各処理室におけるワークの搬入、処理及び搬出が待機状態なく連続して行われるように移動パターンが作成される。すなわち、ワークW1の移動パターンは、
図2で示される移動パターン1となり、ワークW2の移動パターンは、
図3で示される移動パターン2となり、ワークW3の移動パターンは、
図4で示される移動パターン3となる。なお、この移動パターンは、制御装置51が作成してもよく、また人が作成したものを制御装置51に入力してもよい。また、状態調整時間については、処理室内の状態を異ならせる必要がある場合、その前後の差分から計算したり、過去の連続式熱処理炉の操業データを元に算定することによって、予め求めておくことができる。
【0037】
そして、各処理室において、ワークW1の処理が完了した後、できるだけ早くワークW2の処理が始まるように、ワークW1の移動パターン1にワークW2の移動パターン2を時間的に近接させていき、また、ワークW2の移動パターン2にワークW3の移動パターン3を時間的に近接させていく。
【0038】
そして、
図6に示されるように、いずれかの処理室において、ワークW2の状態調整時間の開始時間が、ワークW1の次の処理室への搬出終了時間と最初に一致するタイミング(
図6の丸印で示される)に基づき、ワークW2が第1処理室10に搬入されるタイミングを決定する(
図6の矢印で示される)。ここで、ワークW1の次の処理室への搬出終了時間とは、ワークが次の処理室へ搬送され、前方扉が閉止されたときを示しており、本実施形態(
図6)では、第2処理室20の第2出口扉22が開放され、ワークW1が第3処理室30に搬入され、第2出口扉22が閉止された時間をいう。
【0039】
さらに、
図7に示されるように、いずれかの処理室において、ワークW3の状態調整時間の開始時間が、ワークW2の次の処理室への搬出終了時間と最初に一致するタイミング(
図7の丸印で示される)に基づき、ワークW3が第1処理室10に搬入されるタイミングを決定する(
図7の矢印で示される)。ここで、ワークW2の次の処理室への搬出終了時間とは、ワークが次の処理室へ搬送され、前方扉が閉止されたときを示しており、本実施形態(
図7)では、第2処理室20の第2出口扉22が開放され、ワークW2が第3処理室30に搬入され、第2出口扉22が閉止された時間をいう。その他の同様の箇所では、ワークの搬出終了時間から状態調整時間の間に空き時間(
図6及び
図7の△印で示される)が生じ、その時間、処理室内にワークが存在しない状態を維持することになるが、上述のような対応を行うことによって、その維持時間を最小にすることができる。
【0040】
以上のように、ワークW2、W3が第1処理室10に搬入されるタイミングを決定することによって、ワークW2、W3は、第1処理室10に搬入された後、第3処理室30から搬出されるまでの間、それぞれワークW1、W2に追いつかず、第1処理室10、第2処理室20及び第3処理室30におけるワークW2、W3の搬入、処理及び搬出が待機状態なく連続して行われる。
【0041】
前記構成の連続式熱処理炉1及びその操作方法によれば、次のような効果を発揮できる。
【0042】
(1)各室内10、20、30においてワークWを処理した後、前方の前方扉を開放してワークWを排出し、前方扉を閉止した後、後方の後方扉を開放して、次のワークWを室内10、20、30に搬入するので、熱処理パターンの異なるワークWを処理する場合でも、現在処理されているワークW全てが連続式熱処理炉1から排出される前に、次のワークWの処理を進めることができる。
【0043】
(2)前方扉を閉止した後、後方扉を開放するまでの間に、処理室10、20、30内の状態を変更する状態調整時間があるので、次のワークWを搬入する前に、次のワークWの処理を行うために処理室10、20、30内の状態を変更することができる。
【0044】
(3)処理室10、20、30内の状態は、処理室10、20、30内の温度、圧力、雰囲気の成分の少なくとも1つを含むので、処理室10、20、30内の温度、圧力、雰囲気の成分の少なくとも1つの状態を変更し、ワークWを処理することができる。
【0045】
(4)次のワークWの処理状態が、前のワークWの処理状態と同じ場合、また既に状態が整っている又は状態を変更する必要がない場合には、状態調整時間をゼロとすることができる。
【0046】
(5)処理する対象である対象ワークが最初の処理室に搬入された後、最後の処理室から搬出されるまでの間、先行ワークに追いつくことがないように、対象ワークが最初の処理室に搬入されるタイミングが調整されるので、熱処理パターンの異なる対象ワークを処理する場合でも、現在処理されているワーク全てが連続式熱処理炉1から排出される前に、対象ワークの処理を進めることができる。
【0047】
(6)いずれかの処理室において、対象ワークの状態調整時間の開始時間が、先行ワークの次の処理室への搬入終了時間と最初に一致するタイミングに基づき対象ワークが最初の処理室に搬入されるタイミングを調整することによって、対象ワークが最初の処理室に搬入された後、最後の処理室から搬出されるまでの間、先行ワークに追いつくことがないので、熱処理パターンの異なる対象ワークを処理する場合でも、現在処理されているワーク全てが熱処理炉から排出される前に、対象ワークの処理を進めることができる。なお、各処理室の処理状態によっては、各処理室の処理時間を組み換えることによって、さらに対象ワークが最初の処理室に搬入されるタイミングを早めることもできる。
【0048】
(7)熱処理パターンの異なるワークを処理する場合でも、現在処理されているワーク全てが熱処理炉から排出される前に、次のワークの処理を進めることができる連続式熱処理炉1を提供できる。
【0049】
上記実施形態では、連続式熱処理炉1は3つの処理室を有しているが、本発明は、2以上の処理室を有する連続式熱処理炉に適用される。
【0050】
上記実施形態では、各処理室間に1つの扉が設けられ、一の処理室の前方扉と一の処理室の前方に連続する処理室の後方扉とは同じ扉となっているが、各処理室間に2つの扉が設けられる、すなわち、一の処理室の前方扉と一の処理室の前方に連続する処理室の後方扉とが別々に設けられてもよい。
【0051】
特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、各種変形及び変更を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明では、熱処理パターンの異なるワークを処理する場合でも、現在処理されているワーク全てが熱処理炉から排出される前に、次のワークの処理を進めることができる連続式熱処理炉及びその操作方法を提供できるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0053】
1 連続式熱処理炉
10 第1処理室
11 第1入口扉 12 第1出口扉
20 第2処理室
21 第2入口扉 22 第2出口扉
30 第3処理室
31 第3入口扉 32 第3出口扉
41 搬送装置
51 制御装置
151、152、153 第1状態調整時間
251、252、253 第2状態調整時間
351、352、353 第3状態調整時間