(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】環境保護されたフォトニック集積回路
(51)【国際特許分類】
G02B 6/12 20060101AFI20240207BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20240207BHJP
H01L 21/312 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
G02B6/12 371
H01L21/205
H01L21/312 B
H01L21/312 C
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021206567
(22)【出願日】2021-12-21
【審査請求日】2022-05-17
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520052259
【氏名又は名称】エフェクト フォトニクス ベーハー
【氏名又は名称原語表記】EFFECT Photonics B.V.
【住所又は居所原語表記】Kastanjelaan 400 5616 LZ Eindhoven Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100137903
【氏名又は名称】菅野 亨
(72)【発明者】
【氏名】ホエクストラ スジャーク ハンス
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0076661(US,A1)
【文献】特表2009-505157(JP,A)
【文献】特開2009-016619(JP,A)
【文献】特開2015-005533(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0251948(US,A1)
【文献】特開2018-092836(JP,A)
【文献】特開2016-184680(JP,A)
【文献】米国特許第06294018(US,B1)
【文献】特開2009-010260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12- 6/14
G02F 1/00- 1/125
G02F 1/21- 7/00
H01L 21/3205
H01L 21/3213
H01L 21/768
H01L 23/522
H01L 23/532
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/469
H01L 21/86
H01L 21/312-21/32
H01L 21/47-21/475
H01L 27/04
H01L 21/822
H01L 29/00-29/38
H01L 21/56
H01L 23/28-23/31
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 第1の表面(3)を有するリン化インジウムベース(InPベース)の基板(2)であって、前記第1の表面(3)が、前記InPベースの基板(2)の前記第1の表面(3)とは反対側を向くように配置された第2の表面(5)を有するエピタキシャル半導体層(4)で少なくとも部分的に覆われている、InPベースの基板(2)と、
- 少なくとも2つの異なる非半導体層(7a、7b)を含む層スタック(6)であって、前記層スタック(6)が、前記InPベースの基板(2)の前記第1の表面(3)および/または前記エピタキシャル半導体層(4)の前記第2の表面(5)を覆うように配置され、
・前記InPベースの基板(2)の前記第1の表面(3)および/または前記エピタキシャル半導体層(4)の前記第2の表面(5)と接触している、前記層スタック(6)のうちの少なくとも1つの層は、所定の位置(9)に配置された貫通孔(8a)を備えており、
・前記InPベースの基板(2)の前記第1の表面(3)の第1の領域(10)または前記エピタキシャル半導体層(4)の前記第2の表面(5)の第2の領域(11)には、前記貫通孔(8a)を介してアクセス可能である、層スタック(6)と、
- 前記層スタック(6)を覆うように配置された誘電体保護層(12)であって、前記誘電体保護層(12)は、前記貫通孔(8a)または前記層スタック(6)の前記所定の位置(9)の凹部を少なくとも部分的に満たすように配置され、それによって機械的結合構造を提供し、前記誘電体保護層(12)は、環境汚染物質からフォトニック集積回路(1)を保護することを可能にするように構成された材料特性および寸法を有する、誘電体保護層(12)と、
を備えた、環境保護されたフォトニック集積回路。
【請求項2】
前記InPベースの基板(2)の前記第1の表面(3)および/または前記エピタキシャル半導体層(4)の前記第2の表面(5)と接触している、前記層スタック(6)のうちの前記少なくとも1つの層は、所定の貫通孔パターン(13)に従って配置された少なくとも2つの貫通孔(8b、8c)を備えている、請求項1に記載の環境保護されたフォトニック集積回路。
【請求項3】
前記InPベースの基板(2)の前記第1の表面(3)および/または前記エピタキシャル半導体層(4)の前記第2の表面(5)と接触している、前記層スタック(6)のうちの前記少なくとも1つの層は、前記貫通孔(8a)に面するように配置された側壁(14a)を有し、前記側壁(14a)は
、鋭い角及び不連続な表面構造のうちの少なくとも一方を有しない表面を有する、請求項1に記載の環境保護されたフォトニック集積回路。
【請求項4】
前記InPベースの基板(2)の前記第1の表面(3)および/または前記エピタキシャル半導体層(4)の前記第2の表面(5)と接触している、前記層スタック(6)のうちの前記少なくとも1つの層は、少なくとも2つの側壁(14b、14c)を有し、前記少なくとも2つの側壁(14b、14c)のそれぞれは、前記所定の貫通孔パターン(13)に従って配置された前記少なくとも2つの貫通孔(8b、8c)のそれぞれの貫通孔に面するように配置されており、前記少なくとも2つの側壁(14b、14c)のそれぞれは、
鋭い角及び不連続な表面構造のうちの少なくとも一方を有しない表面を有する、請求項2に記載の環境保護されたフォトニック集積回路。
【請求項5】
前記側壁(14a、14b、14c)は、前記InPベースの基板(2)の前記第1の表面(3)に対して30°~90°の範囲の角度αで配置されている、請求項3または4に記載の環境保護されたフォトニック集積回路。
【請求項6】
前記層スタック(6)は、誘電体層(15)および金属層(16)を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の環境保護されたフォトニック集積回路。
【請求項7】
前記金属層(16)は、前記InPベースの基板(2)の前記第1の表面(3)とは反対側を向くように配置された第3の表面(17)を有し、前記誘電体保護層(12)は、前記金属層(16)の前記第3の表面(17)を覆うように配置され、前記誘電体保護層(12)は、前記金属層(16)の前記第3の表面(17)の第3の領域(19)へのアクセスを提供するように構成されたコンタクトホール(18)を備えている、請求項6に記載の環境保護されたフォトニック集積回路。
【請求項8】
前記誘電体保護層(12)は、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリウレタン、ポリキシリレン、ベンゾシクロブテン、ポリシロキサン、およびシリコンのうちの1つを含むポリマーベースの層である、請求項1~7のいずれか一項に記載の環境保護されたフォトニック集積回路。
【請求項9】
前記誘電体保護層(12)は、有機添加剤および無機添加剤のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の環境保護されたフォトニック集積回路。
【請求項10】
前記誘電体保護層(12)は、前記InPベースの基板(2)の前記第1の表面(3)とは反対側を向くように配置された第4の表面(20)を含み、前記誘電体保護層(12)は、前記第4の表面(20)に突起(22)の規則的なパターン(23)を提供するように配置されたくぼみ(21)を備えている、請求項1~9のいずれか一項に記載の環境保護されたフォトニック集積回路。
【請求項11】
前記誘電体保護層(12)の前記第4の表面(20)が少なくとも50°である接触角βを有する、請求項10に記載の環境保護されたフォトニック集積回路。
【請求項12】
前記誘電体保護層(12)は、0.5μmから100μmの間の厚さtを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の環境保護されたフォトニック集積回路。
【請求項13】
前記誘電体保護層(12)が共形コーティングまたは平坦化コーティングである、請求項1~12のいずれか一項に記載の環境保護されたフォトニック集積回路。
【請求項14】
前記フォトニック集積回路(1)は、非気密パッケージおよび気密パッケージ(25)のうちの1つを備えている、請求項1~13のいずれか一項に記載の環境保護されたフォトニック集積回路。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の環境保護されたフォトニック集積回路(1)を含む光電子システムであって、前記光電子システム(24)は、送信機、受信機、送受信機、コヒーレント送信機、コヒーレント受信機、およびコヒーレント送受信機のうちの1つである、光電子システム(24)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電気通信用途またはセンサ用途に限定的にではなく使用することができる、環境保護されたフォトニック集積回路に関する。本発明はさらに、例えば、電気通信用途または上記フォトニック集積回路を含むセンサ用途に限定的にではなく使用することができる光電子システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、光通信用途の分野に限定されないフォトニック集積回路(Photonic integrated circuits:PIC)は、好ましくは可能な限り小さいフットプリントを有する単一のダイに統合される光学的および電気的機能の数が増加しているため、ますます複雑になっている。光通信用途用のPIC向けの最も用途の広い技術プラットフォームは、リン化インジウムベース(indium phosphide-based:InP)の半導体材料を含むウェーハを使用する。InPベースの技術により、例えば光生成および/または光吸収光学デバイスなどの能動コンポーネントと、例えば光ガイドおよび/または光スイッチング光学デバイスなどの受動コンポーネントの両方を単一のダイの1つのPICにモノリシックに統合できる。
【0003】
従来、PICおよびそれらを含む光電子システム(例えば、光送受信機モジュールなど)の環境保護は、気密パッケージによって提供されていた。上記の複雑さの増大の結果として、組み立て、特に気密パッケージのコストは、PICおよびそれらが使用される光電子システムの総コストのかなりの部分を占めている。
【0004】
組み立てと包装のコストを削減できる気密パッケージの代替手段は、PICの非気密パッケージによって提供され、PICを囲むために少なくとも1つの誘電体保護層が適用され、それによってほこり粒子や湿気などの環境汚染物質からPICを保護する。
【0005】
今日のPICの上記の複雑さの増大の別の欠点は、通常、例えばPICの処理、組み立て、テスト、操作、さらには保管の少なくとも1つの間の温度変動の結果として発生する機械的不安定性に悩まされることである。温度による機械的不安定性は、主に、PICのさまざまなコンポーネントを構成するために使用されるさまざまな種類の材料の熱膨張係数(coefficients of thermal expansion:CTE)の不一致によって引き起こされる。さまざまな種類の材料のCTEの不一致の結果として、これらの材料は、PICがさらされる温度変化に応じてさまざまな方法で膨張および収縮する。特に、異なるCTEを持つ材料の層に適用される金属トラックは、機械的不安定性を引き起こし、最終的には層の層間剥離または層内の亀裂の形成の形での望ましくない応力緩和によるPICの早期故障を引き起こす機械的応力発生源であり得る。
【0006】
機械的不安定性は、これらの層を適用するために使用される方法の結果として、PICに含まれるさまざまな種類の材料の層に組み込まれる応力によっても引き起こされ得る。
【0007】
上記に基づいて、改善された機械的安定性を有し、それにより信頼性および寿命が向上した、環境保護されたPICを提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、例えば、電気通信用途またはセンサ用途に限定的にではなく使用することができる、当技術分野で知られている環境保護されたPICに関連する上記および/または他の不利な点の少なくとも1つを未然に防ぐか、または少なくとも軽減する、環境保護されたフォトニック集積回路を提供することである。
【0009】
本発明の目的はまた、例えば、本発明によるPICを含む電気通信用途またはセンサ用途に限定的にではなく使用することができる光電子システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様は、添付の独立請求項および従属請求項に記載されている。従属請求項の特徴は、請求項に明示的に記載されているだけでなく、必要に応じて独立請求項の特徴と組み合わせることができる。さらに、すべての特徴を他の技術的に同等の特徴に置き換えることができる。
【0011】
上記の目的の少なくとも1つは、
- 第1の表面を有するリン化インジウムベース(InPベース)の基板であって、第1の表面が、InPベースの基板の第1の表面とは反対側を向くように配置された第2の表面を有するエピタキシャル半導体層で少なくとも部分的に覆われている、InPベースの基板と、
- 少なくとも2つの異なる非半導体層を含む層スタックであって、層スタックが、InPベースの基板の第1の表面および/またはエピタキシャル半導体層の第2の表面を覆うように配置され、
・少なくとも、InPベースの基板の第1の表面および/またはエピタキシャル半導体層の第2の表面と接触している層スタックの1つの層は、所定の位置に配置された貫通孔を備えており、
・InPベースの基板の第1の表面の第1の領域またはエピタキシャル半導体層の第2の表面の第2の領域には、貫通孔を介してアクセス可能である、層スタックと、
- 層スタックを覆うように配置された誘電体保護層であって、誘電体保護層は、貫通孔または層スタックの所定の位置の凹部を少なくとも部分的に満たすように配置され、それによって機械的結合構造を提供し、誘電体保護層は、環境汚染物質からフォトニック集積回路を保護することを可能にするように構成された材料特性および寸法を有する、誘電体保護層と、
を備えた、環境保護されたフォトニック集積回路、によって実現される。
【0012】
当業者は、本発明の文脈において機械的アンカーとも呼ばれ得る誘電体機械的結合構造が、層スタックの非半導体最上層と、InPベースの基板の第1の表面およびエピタキシャルInPベースの半導体層の第2の表面のうちの1つの層との間の機械的接続を提供することを理解するであろう。少なくとも、InPベースの基板の第1の表面および/またはエピタキシャルInPベースの半導体層の第2の表面と所定の位置で接触している層スタックの層に貫通孔または穿孔を配置することにより、層スタック内の機械的応力集中部は、機械的応力を再分配することによって低減することができる。このようにして、機械的結合構造または機械的アンカーは、機械的応力緩和構造として機能することができ、それにより、少なくとも層スタックにおける亀裂の形成を低減することができる。さらに、層スタックを、InPベースの基板の第1の表面およびエピタキシャルInPベースの半導体層の第2の表面の1つに結び付けることによって、機械的アンカーは、層スタックの非半導体層の少なくとも1つの少なくとも部分的な層間剥離を低減することができる。上記層間剥離は、層スタックの非半導体層の少なくとも1つに存在する応力の緩和の結果として起こり得る。応力緩和は、PICの処理、組み立て、テスト、操作、さらには保管の少なくとも1つでの温度変化の結果であり得る。以上のことから、本発明によるPICの誘電体保護層は、PICの信頼性と寿命を向上させる多機能層であることが明らかであろう。
【0013】
当業者は、例えば、貫通孔が提供される所定の位置が、機械的応力が上昇した位置であり得ることを理解するであろう。機械的応力が上昇するこのような位置は、多くの方法で、例えば故障解析の結果としての経験的な方法で、または例えばPICのモデルの有限要素法(finite element method:FEM)解析などの機械的応力シミュレーションを実行することによって決定できる。上記にもかかわらず、貫通孔は、少なくとも1つの中間層によって分離された相互接続された層間の改善された機械的結合を可能にする任意の所定の位置に提供され得ることに留意されたい。その結果、相互接続された層の層間剥離および相互接続された層における亀裂形成を低減することができ、最終的には防止することができる。
【0014】
InPベースの基板の第1の表面および/またはエピタキシャルInPベースの半導体層の第2の表面と接触している層スタックの少なくとも第1の層に貫通孔を設けることにより、層スタックの上記第1の層と誘電体保護層との間に配置される少なくとも第2の非半導体層は、貫通孔によって中断されないため、誘電体保護層は、InPベースの基板の第1の表面およびエピタキシャルInPベースの半導体層の第2の表面の1つと直接接触しないことに留意されたい。
【0015】
当業者は、本発明によるPICの例示的で非限定的な実施形態による場合、層スタックのすべての非半導体層には貫通孔が設けられている、つまり、貫通孔は同じ位置にある層スタックのすべての非半導体層を遮断し、誘電体保護層は、InPベースの基板の第1の表面の第1の領域およびエピタキシャルInPベースの半導体層の第2の表面の第2の領域の1つと直接接触していることを理解するであろう。
【0016】
当業者は、誘電体保護層と、InPベースの基板の第1の表面の第1の領域またはエピタキシャルInPベースの半導体層の第2の表面の第2の領域の活性化表面との間の接着を改善するために、個々の貫通孔を介してアクセス可能なInPベースの基板の第1の表面の第1の領域、またはエピタキシャルInPベースの半導体層の第2の表面の第2の領域を活性化するためにプライマーが必要とされ得ることを理解するであろう。誘電体保護層の組成およびInPベースの基板またはエピタキシャル半導体層の組成を考慮して適切なプライマーを選択できることは明らかであろう。
【0017】
層スタックの非半導体層への貫通孔の提供に関する上記の2つの例示的で非限定的な実施形態、すなわち、一方では層スタックの上記第1の非半導体層にのみ貫通孔を設け、他方では層スタックのすべての非半導体層に貫通孔を設けることに基づいて、非半導体層の数および異なる非半導体層の互いに対する実際の配置に応じて、層スタックの非半導体層に貫通孔を設けることに関するすべての可能な実施形態を想定することができることは明らかである。しかしながら、本発明の文脈において、層スタックの上記第1の非半導体層は、常に貫通孔を備えていることに留意されたい。
【0018】
本発明に従ってPICに提供される機械的結合構造は、層スタックで使用される非半導体材料の少なくとも1つの変更およびPICの処理中に層スタックが受ける温度バジェットの削減を含む既知の方法と比較して、層スタックにおける応力形成を低減するための改善された方法を提供する。層スタック内の応力形成を低減するための前述の既知の方法は、結果として生じる機械的応力に対する変更された層スタックの改善された耐性を可能にし得るが、既知の方法は通常、次善の信頼性、したがってPICの次善の性能をもたらす。これらの不利な点は、本発明によるPICに提供される機械的結合構造または機械的アンカーによって未然に防がれるか、または少なくとも軽減され得る。
【0019】
上記に基づいて、当業者は、ほこり粒子や水分などの環境汚染物質に対する環境保護と、InPベースの半導体基板の第1の表面またはエピタキシャルInPベースの半導体層の第2の表面に上記層スタックを機械的に結び付けるように配置された機械的結合構造または機械的アンカーの両方を提供することによって、誘電体保護層は、機械的安定性が向上し、それによって信頼性と寿命が向上した、環境保護されたPICが提供されることを理解するであろう。
【0020】
当業者は、必要な個々の貫通孔の数、およびPIC全体の1つまたは複数の個々の貫通孔の配置が、例えば、PICのモデルのFEM解析など、例えば、上記の機械的応力シミュレーションから得られる機械的応力の分布を考慮に入れることによって決定され得ることを理解するであろう。PICに統合されたコンポーネントの互いに対する変更された配置によるPICの変更されたレイアウト、層スタックの異なる非半導体層の変更された数、層スタックの非半導体層の少なくとも1つの変更された材料組成、および層スタック内の異なる非半導体層の互いに対する変更された配置のうちの例えば少なくとも1つによる、例えばPICのトポグラフィの変更をもたらすPICの設計変更は、変更されたPICの調整済みモデルで対応できる。上記調整されたモデルの、例えばFEM解析などの機械的応力シミュレーションは、異なる数の個々の貫通孔および/または変更されたPIC全体の貫通孔の異なる配置を必要とする機械的応力の異なる分布をもたらし得ることは明らかであろう。
【0021】
さらに、個々の貫通孔の数およびその配置も、設計上の考慮事項に基づいて決定できる、すなわち、貫通孔がPICの機能的構造に最小の影響を与える所定の位置を決定することができることに留意されたい。
【0022】
本発明による環境保護されたフォトニック集積回路の実施形態では、少なくとも、InPベースの基板の第1の表面および/またはエピタキシャル半導体層の第2の表面と接触している上記層スタックの層は、所定の貫通孔パターンに従って配置された少なくとも2つの貫通孔を備えている。
【0023】
当業者は、所定の貫通孔パターンおよび再分配に必要な、およびそれにより、層スタックをInPベースの基板の第1の表面またはエピタキシャルInPベースの半導体層の第2の表面に結び付けた結果としての層スタックの機械的応力を少なくとも低減する少なくとも2つの貫通孔の実際の数が、例えば、PICのモデルの機械的応力シミュレーション(例えば、FEM解析など)から得られる機械的応力の分布を考慮に入れることによって決定され得ることを理解するであろう。所定の貫通孔パターンおよび少なくとも2つの貫通孔の実際の数を、例えば故障解析などの経験的な方法で決定することも可能である。
【0024】
個別に配置された貫通孔について上で説明したのと同様の方法で、例えば、PICの変更されたトポグラフィをもたらす、PICの設計における上記の変更のいずれかは、変更されたPICの調整されたモデルに適応することができる。上記調整されたモデルの、例えばFEM解析などの機械的応力シミュレーションにより、必要とされる少なくとも2つの貫通孔の実際の数に関して、異なる所定の貫通孔パターンを必要とする機械的応力の異なる分布、および、少なくとも2つの貫通孔の上記実際の数の互いに対する配置がもたらされ得ることは明らかであろう。繰り返すが、これを経験的な方法で行うことも可能である。
【0025】
本発明による環境保護されたフォトニック集積回路の実施形態では、少なくとも、InPベースの基板の第1の表面および/またはエピタキシャル半導体層の第2の表面と接触している上記層スタックの層は、貫通孔に面するように配置された側壁であって、異なる表面を有する側壁、すなわち、鋭い角および不連続な表面構造、例えば、階段状の突起および/または階段状のくぼみのうちの少なくとも1つを有さない側壁を有する。このようにして、層スタックの少なくとも上記層に個々の貫通孔を提供することによって引き起こされる層スタック内の機械的応力集中を低減することができ、好ましくは回避することができる。典型的には、層スタックの少なくとも上記第1の非半導体層の側壁は、円形、楕円形、または角が丸い多角形を有するように配置される。当業者は、貫通孔が層スタックの他の非半導体層のいずれか1つまたはすべてに提供される場合、これらのそれぞれの層のそれぞれの側壁は一緒になって、貫通孔に面するように配置された全側壁を構成することを理解するであろう。上記と同じ考慮事項のために、側壁全体にも異なる表面があることは明らかである。
【0026】
本発明による環境保護されたフォトニック集積回路の実施形態では、少なくとも、InPベースの基板の第1の表面および/またはエピタキシャル半導体層の第2の表面と接触している上記層スタックの層は、少なくとも2つの側壁を有し、上記少なくとも2つの側壁のそれぞれは、所定の貫通孔パターンに従って配置された上記少なくとも2つの貫通孔のそれぞれの貫通孔に面するように配置され、上記少なくとも2つの側壁のそれぞれは、異なる表面を有する。上記と同じ理由で、上記少なくとも2つの側壁のそれぞれは、円形、楕円形、または角が丸い多角形を有するように配置されている。当業者は、所定の貫通孔パターンに従って配置された上記少なくとも2つの貫通孔が、層スタックの他の非半導体層のいずれか1つまたはすべてに提供される場合、これらのそれぞれの層のそれぞれの少なくとも2つの側壁は、一緒に少なくとも2つの合計側壁を構成し、それらのそれぞれは、上記少なくとも2つの貫通孔のそれぞれの貫通孔に面するように配置されることを理解するであろう。上記と同じ考察のために、上記少なくとも2つの合計側壁のそれぞれが異なる表面を有することは明らかであろう。
【0027】
本発明による環境保護されたフォトニック集積回路の実施形態では、側壁は、InPベースの基板の第1の表面に対して30°~90°の範囲の角度で配置される。貫通孔が、InPベースの基板の第1の表面および/またはエピタキシャルInPベースの半導体層の第2の表面と接触している層スタックの第1の非半導体層にのみ適用される場合、層スタックの少なくとも上記第1の層における機械的応力の再分布は、層スタックの上記第1の層の側壁の角度を上記の範囲に調整することによってさらに最適化することができる。当業者は、貫通孔が層スタックの他の非半導体層のいずれか1つまたはすべてに提供される場合、これらのそれぞれの層のそれぞれの側壁は一緒になって、貫通孔に面するように配置された全側壁を構成することを理解するであろう。貫通孔を備えた層スタックの少なくとも非半導体層における機械的応力の再分布は、上記の範囲で側壁全体の角度を調整することによってさらに最適化できることが明らかであろう。さらに、同じことが、層スタックの上記第1の非半導体層に、所定の貫通孔パターンに従って上記少なくとも2つの貫通孔を設けることから生じる少なくとも2つの側壁、または、層スタックの他の非半導体層のいずれか1つまたはすべてに、所定の貫通孔パターンに従って上記少なくとも2つの貫通孔を提供することから生じる少なくとも2つの合計側壁にも当てはまることが理解されよう。
【0028】
本発明による環境保護されたフォトニック集積回路の実施形態では、上記層スタックは、誘電体層および金属層を含む。当業者は、層スタックが、PICの所望の機能を達成するために必要とされる任意の数の誘電体層および金属層を含み得ることを理解するであろう。複数の金属層の場合、例えば異なる金属層の接触パッドとトラックなどの金属部品間の短絡を防ぐおよび/または環境保護のいずれかのために、各金属層が2つの誘電体層の間に配置されることは明らかであろう。当業者は、適切な誘電体層が窒化ケイ素ベースの層またはポリマーベースの層であることを理解するであろう。
【0029】
本発明による環境保護されたフォトニック集積回路の実施形態では、金属層は、InPベースの基板の第1の表面とは反対側を向くように配置された第3の表面を有し、誘電体保護層は、金属層の第3の表面を覆うように配置され、誘電体保護層には、金属層の第3の表面の第3の領域へのアクセスを提供するように構成されたコンタクトホールが設けられている。このようにして、金属層の第3の表面の第3の領域との電気的接続を確立することができる。誘電体保護層には、PIC全体の異なる位置に配置された金属層の異なる金属部分との電気的接続を確立するための任意の適切な数のコンタクトホールを設けることができることは明らかであろう。
【0030】
本発明による環境保護されたフォトニック集積回路の実施形態では、誘電体保護層は、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリウレタン、ポリキシリレン、ベンゾシクロブテン、ポリシロキサン、およびシリコン、のうちの1つを含むポリマーベースの層である。前述のタイプのポリマーベースの保護層のいずれか1つは、スピンコーティング、ディップコーティング、スクリーン印刷、および蒸着のうちの1つによって、複数のPICを含む完全なウェーハに適用することができる。あるいは、ポリマーベースの保護層は、ディップコーティング、スクリーン印刷、ディスペンシング、および蒸着のうちの1つによって、ウェーハ全体をダイシングすることによって得られる単一のPICに適用することができる。当業者は、ポリマーベースの保護層が、その適用に続いて液相として適用される場合、ポリマーベースの保護層は、真空中、または、酸素(O2)、アルゴン(Ar)、および窒素(N2)の少なくとも1つを含む特定の雰囲気内で熱処理および/または紫外線(UV)処理にさらすことにより、硬化または架橋されることを理解するであろう。硬化の結果、例えばほこり粒子や湿気などの環境汚染物質からPICを保護するのに適している強化または硬化したポリマーベースの保護層が得られる。
【0031】
本発明による環境保護されたフォトニック集積回路の実施形態では、誘電体保護層は、有機添加剤および無機添加剤のうちの少なくとも1つを含む。例えば充填剤、ゲッターまたは安定剤であり得る上記添加剤の少なくとも1つを含むことによって、誘電体保護層の環境保護、機械的安定性、および化学的安定性の少なくとも1つを高めることができる。特に、誘電体保護層によって提供される環境保護は、化学反応を阻害するその能力を増強することによって、または湿気に対するその疎水性を増強することによってさらに改善され得る。後者は、原子層堆積または分子蒸着によってハロゲン化ポリマーまたはポリ(p-キシリレン)の薄層を適用することによって達成され得る。
【0032】
本発明による環境保護されたフォトニック集積回路の実施形態では、誘電体保護層は、InPベースの基板の第1の表面とは反対側を向くように配置された第4の表面を含み、誘電体保護層は、第4の表面に規則的なパターンの突起を提供するように配置されたくぼみを備えている。このようにして、誘電体保護層の疎水性は、ハロゲン化ポリマーまたはポリ(p-キシリレン)の薄層を適用する上記の方法とは異なる方法で高めることができる。
【0033】
本発明による環境保護されたフォトニック集積回路の実施形態では、誘電体保護層の第4の表面は、少なくとも50°である接触角を有する。当業者は、接触角が、液気界面が固体表面と出会う、液体を通して従来測定される角度であることを理解するであろう。接触角により、ヤング方程式を介して液体による固体表面の濡れ性が定量化される。所与の温度と圧力での固体、液体、蒸気の所与のシステムは、独特の平衡接触角を有する。しかしながら、実際には、前進または最大接触角から後退または最小接触角に及ぶ接触角ヒステリシスの動的現象がしばしば観察される。平衡接触角の値は、前進接触角と後退接触角の値の間の範囲であり、それらから計算され得る。平衡接触角は、液体、固体、および蒸気の分子相互作用の相対的な強さを反映している。
【0034】
さらに、当業者は、接触角が静的液滴法を含むさまざまな方法によって測定できることを理解するであろう。後者の測定方法を使用して、接触角は、固体基板上の純粋な液体のプロファイルをキャプチャするために、光学サブシステムを使用する接触角ゴニオメータによって測定される。液固界面と液気界面の間に形成される角度が接触角である。例えば、少なくとも50°の接触角を持つポリマーベースの表面は疎水性であると見なされるが、親水性のポリマーベースの表面は50°未満の接触角を有する。例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレンフィルムの場合、当業者は、接触角を決定するためのASTM D2578-17標準試験方法に精通しているであろう。この試験方法はISO8296と同等である。
【0035】
本発明による環境保護されたフォトニック集積回路の実施形態では、誘電体保護層は、0.5μmから100μmの間、好ましくは0.5μmから10μmの間の厚さを有する。このように、誘電体保護層の厚さは、環境汚染物質の拡散を制限するのに十分でなければならず、それによってPICの環境保護を可能にする。
【0036】
本発明による環境保護されたフォトニック集積回路の実施形態では、誘電体保護層は、共形コーティングまたは平坦化コーティングである。このようにして、誘電体保護層によるPICの適切なシーリングを達成することができる。
【0037】
本発明による環境保護されたフォトニック集積回路の実施形態では、フォトニック集積回路は、非気密パッケージおよび気密パッケージのうちの1つを備えている。PICを非気密パッケージに含めることにより、環境保護とその結果としてのPICの寿命を向上させることができる。当業者は、PICを気密パッケージに含めることによって、環境保護、したがって、PICの寿命をさらに改善することができることを理解するであろう。
【0038】
本発明による環境保護されたPICの例示的な実施形態では、フォトニック集積回路は、モノリシックフォトニック集積回路である。
【0039】
本発明の別の態様によれば、本発明による環境保護されたフォトニック集積回路を含む光電子システムが提供される。光電子システムは、例えば、送信機、受信機、送受信機、コヒーレント送信機、コヒーレント受信機、およびコヒーレント送受信機のうちの1つであり得る。上記に基づいて、本発明による環境保護されたPICの適用のために、光電子システムのコストを削減できることが明らかであろう。
【0040】
本発明のさらなる特徴および利点は、本発明による環境保護されたフォトニック集積回路(PIC)およびそのようなPICを含む光電子システムの例示的かつ非限定的な実施形態の説明から明らかになるであろう。
【0041】
当業者は、PICおよび光電子システムの説明された実施形態は、本質的に例示的なものにすぎず、いかなる方法でも保護の範囲を制限すると解釈されるべきではないことを理解するであろう。当業者は、本発明の保護の範囲から逸脱することなく、PICおよび光電子システムの代替および同等の実施形態を考案し、実施することができることを理解するであろう。
【0042】
添付の図面シートの図を参照されたい。これらの図は本質的に概略図であるため、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。さらに、等しい参照番号は、等しいまたは類似の部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】基板の第1の表面の第1の領域が貫通孔を介してアクセス可能である、本発明による環境保護されたフォトニック集積回路(PIC)の第1の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略断面を示す。
【
図2】エピタキシャル半導体層の第2の表面の第2の領域が貫通孔を介してアクセス可能である、本発明による環境保護されたPICの第2の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略断面を示す。
【
図3】所定の貫通孔パターンに従って配置された2つの貫通孔を備えた、本発明による環境保護されたPICの第3の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略断面を示す。
【
図4A】本発明による貫通孔がまだ設けられていない、環境保護されたPICの一部の概略上面図を示している。PICの層スタックの少なくとも2つの異なる非半導体層における機械的応力が上昇した領域が示されている。
【
図4B】所定の貫通孔パターンに従って配置された3つの貫通孔を提供することによって修正された、
図4Aに示されるPICに基づく、本発明による環境保護されたPICの第4の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略上面図を示す。
【
図5】本発明による環境保護されたPICの第5の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略上面図を示す。この実施形態によれば、結果として生じる機械的応力を再分配するために、1つの個別の貫通孔が提供される。
【
図6A】ポリマーベースの保護層が貫通孔を部分的に満たす、本発明による環境保護されたPICの第6の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略断面を示す。
【
図6B】ポリマーベースの保護層が、機械的応力が上昇した所定の位置で、少なくとも2つの非半導体層のスタックの凹部を部分的に満たす、本発明による環境保護されたPICの第7の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略断面を示す。
【
図7A】貫通孔が、層スタックのすべての非半導体層に提供され、それによって、ポリマーベースの保護層とInPベースの基板との間の直接接触を可能にする、本発明による環境保護されたPICの第8の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略断面を示す。
【
図7B】貫通孔が層スタックのすべての非半導体層に提供され、それによってポリマーベースの保護層とエピタキシャル半導体層との間の直接接触を可能にする、本発明による環境保護されたPICの第9の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略断面を示す。
【
図8A】それが適用されるInPベースの基板とは反対側を向くように配置されたポリマーベースの保護層の表面に、規則的なパターンの突起を提供するように配置されたくぼみが設けられている、本発明による環境保護されたPICの第10の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略断面を示す。
【
図8B】
図8Aに示される環境保護されたPICの第10の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略上面図を示す。
【
図9】PICが気密パッケージを備えている、環境保護されたPICの第11の例示的な非限定的な実施形態の概略断面を示す。
【
図10】本発明による環境保護されたPIC1を含む光電子システム24の第1の例示的な非限定的な実施形態の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明による環境保護されたPIC1の提示された例示的で非限定的な実施形態は、1つのポリマーベースの保護層を含むが、当業者は、本発明の範囲内に入る、複数のポリマーベースの保護層を含む実施形態、および、例えば、窒化ケイ素または酸窒化ケイ素層などのケイ素含有層など、1つまたは複数の非ポリマーベースの保護層を含む実施形態を、過度の負担なしに想定することができるであろうことに留意されたい。
【0045】
図1は、本発明による、環境保護されたフォトニック集積回路(PIC)1の第1の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略断面図を示している。PIC1は、リン化インジウムベース(InPベース)の基板2を含み、第1の表面3は、基板2の第1の表面3とは反対側を向くように配置された第2の表面5を有するエピタキシャルInPベースの半導体層4で部分的に覆われている。当業者は、PIC1の特定の要件に応じて、複数のエピタキシャルInPベースの半導体層4を適用できることを理解するであろう。
【0046】
図1に示す基板2の第1の表面3およびエピタキシャルInPベースの半導体層4の第2の表面5を覆うように、2つの異なる非半導体層7a、7bを含む層スタック6が配置されている。貫通孔8aは、基板2の第1の表面3と接触している上記層スタック6の第1の非半導体層7aに設けられる。上記のように、貫通孔8aは、PIC1のモデルの、FEM解析などの機械的応力シミュレーションに従って、機械的応力が上昇した位置として識別される所定の位置9に配置されている。上記層スタック6の第1の非半導体層7aの貫通孔8aが、InPベースの基板2の第1の表面3の第1の領域10へのアクセスを提供するため、上記層スタック6の第2の非半導体層7bは、InPベースの基板2の第1の表面3の第1の領域10と接触している。
【0047】
ポリマーベースの保護層12は、上記層スタック6を覆い、例えば、ほこり粒子および/または湿気などの環境汚染物質からPIC1を保護するように配置されている。ポリマーベースの保護層12は、貫通孔8aを部分的に満たすように配置され、それにより、機械的結合構造または機械的アンカーを提供し、このようにして、層スタック6の第2の非半導体最上層7bと、InPベースの基板2の第1の表面3との間に機械的接続が提供される。上記のように、機械的アンカーは、機械的応力を再分配することによって、層スタック6内の機械的応力集中部の低減を可能にする。結果として、機械的アンカーは、少なくとも層スタック6における亀裂の形成を低減することができる。さらに、層スタック6をInPベースの基板2の第1の表面3に結び付けることによって、機械的アンカーは、層スタック6の非半導体層7a、7bのうちの少なくとも1つの少なくとも部分的な層間剥離を低減することができる。
【0048】
ポリマーベースの保護層12は、0.5μmから100μmの間、好ましくは0.5μmから10μmの間の厚さtを有し得る。このように、厚さtは、環境汚染物質の拡散を制限するのに十分である必要があり、それによってPIC1の非気密パッケージが可能になる。ポリマーベースの保護層12は、好ましくは、共形コーティングまたは平坦化コーティングである。このようにして、ポリマーベースの保護層12によるPIC1の適切なシーリングを達成することができる。
【0049】
上記に基づいて、PIC1のポリマーベースの保護層12は、PIC1に改善された信頼性および寿命を提供する多機能層であることは明らかであろう。
【0050】
図1は、貫通孔8aが、InPベースの基板2の第1の表面3と接触している層スタック6の第1の層7aにのみ設けられるため、層スタック6の第1の非半導体層7aとポリマーベースの保護層12との間に配置された第2の非半導体層7bは、貫通孔8aによって中断されないので、ポリマーベースの保護層12が、InPベースの基板2の第1の表面3と直接接触していないことを示している。
【0051】
さらに、層スタック6の第1の非半導体層7aは、貫通孔8aに面するように配置された側壁14aを有する。側壁14aは、異なる表面を有する、すなわち、側壁は、例えば、階段状の突起および/または階段状のくぼみなどの鋭い角および不連続な表面構造のうちの少なくとも1つを有さない。このようにして、層スタック6の第1の非半導体層7aに個々の貫通孔8aを提供することによって引き起こされる層スタック6内の機械的応力集中を低減することができ、好ましくは回避することができる。典型的には、側壁14aは、円形、楕円形、および角が丸い多角形のうちの1つを有する。
【0052】
第1の非半導体層7aの側壁14aは、InPベースの基板2の第1の表面3に対して30°~90°の範囲の角度αで配置されている。層スタック6の少なくとも第1の非半導体層7aにおける機械的応力の再分布は、層スタック6の第1の非半導体層7aの側壁14aの角度αを上記の範囲で調整することによってさらに最適化することができる。
【0053】
図2は、InPベースの基板2の第1の表面3がエピタキシャルInPベースの半導体層で完全に覆われている、本発明によるPIC1の第2の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略断面を示す。当業者は、PIC1の特定の要件に応じて、複数のエピタキシャルInPベースの半導体層を適用できることを理解するであろう。
【0054】
穿孔または貫通孔8aが層スタック6の第1の非半導体層7aに提供されるので、貫通孔8aは、エピタキシャルInPベースの半導体層4の第2の表面5の第2の領域11aへのアクセスを提供する。層スタック6の第1の非半導体層7aに貫通孔8aを提供することにより、層スタック6の第1の非半導体層7aとポリマーベースの保護層12との間に配置された第2の非半導体層7bは、貫通孔8aによって中断されないので、ポリマーベースの保護層12は、エピタキシャルInPベースの半導体層4の第2の表面5と直接接触しないことに留意されたい。
【0055】
ポリマーベースの保護層12は、貫通孔8aを部分的に満たすように配置され、それにより、上記のような機械的結合構造または機械的アンカーを提供する。ポリマーベースの保護層12はまた、環境汚染物質の拡散を制限し、それによってPIC1の非気密パッケージを可能にするために、0.5μmから100μmの間、好ましくは0.5μmから10μmの間の厚さtを有し得る。
【0056】
PIC1の第2の例示的な非限定的な実施形態における層スタック6の第1の非半導体層7aはまた、貫通孔8aに面するように配置された側壁14aを有し、側壁14aは、上記の微分面を有する。さらに、PIC1の第2の例示的な非限定的な実施形態における第1の非半導体層7aの側壁14aもまた、層スタック6の少なくとも第1の非半導体層7aにおける機械的応力の再分配をさらに最適化するために、InPベースの基板2の第1の表面3に対して30°~90°の範囲にある角度αに配置されている。
【0057】
図3は、本発明によるPIC1の第3の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略断面を示す。
図2に示されるPIC1の第2の例示的な非限定的な実施形態との違いは、層スタック6の第1の非半導体層7aが、所定の貫通孔パターンに従って配置された2つの貫通孔8b、8cを備えていることである。2つの貫通孔8b、8cは、層スタック6の第2の非半導体層7bと直接接触しているエピタキシャルInPベースの半導体層4の第2の表面5の2つの異なる領域11b、11cへのアクセスを提供する。
【0058】
例えば
図1および
図2に示される、個別に配置された貫通孔8aに関して説明されたのと同様の方法で、第1の非半導体層7aの2つの側壁14b、14cのそれぞれは、第1の非半導体層7aに2つの貫通孔8b、8cを提供した結果として、層スタック6内の応力集中を回避するために、上記の微分面を有する。
【0059】
さらに、2つの側壁14b、14cのそれぞれは、層スタック6の少なくとも第1の非半導体層7aにおける機械的応力の再分配をさらに最適化するために、InPベースの基板2の第1の表面3に対して30°~90°の範囲の角度αで配置されている。
【0060】
図4Aは、本発明による貫通孔がまだ設けられていないPICの一部の概略上面図を示している。PICの層スタックの少なくとも2つの異なる非半導体層の機械的応力が上昇している領域は、斜線で塗りつぶされた閉じた輪郭で示される。これらの領域は、例えば、PICのモデルのFEM解析などの機械的応力シミュレーションを実行することによって取得できる。これらの領域を経験的な方法で、例えば障害解析調査によって決定することもできる。機械的応力が上昇した領域は、機械的応力の再分配を可能にし、それによってPIC1の層スタック6で結果として生じる機械的応力の低減を本発明の誘電体保護層を用いて可能にする貫通孔を提供できる機械的応力の上昇の位置9の識別を可能にする。上記のように、貫通孔が提供される位置も、設計上の考慮事項を考慮して決定することができる。例えば、貫通孔がPICの機能構造に与える影響が最小になる位置を特定できる。
【0061】
図4Bは、所定の貫通孔パターン13に従って配置された3つの貫通孔8b、8c、8dを備えることによって修正されている、
図4Aに示されるPICに基づく、本発明によるPIC1の第4の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略上面図を示す。貫通孔の実際の数とそれらが相互に配置されるパターンは、
図4Aに示すように機械的応力が上昇した領域を考慮して決定されている。
図4Bに示されるPIC1の実施形態のモデルの、例えばFEM解析などの機械的応力シミュレーションは、
図4Bに示される結果として生じる上昇した機械的応力の修正された分布を提供することができる。結果として生じる上昇した機械的応力の修正された分布から、本発明の誘電体保護層と組み合わせた3つの貫通孔8b、8c、8dが、PIC1の層スタック6における機械的応力を首尾よく再分配したことは明らかである。
【0062】
図5は、本発明によるPIC1の第5の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略上面図を示す。この実施形態によれば、1つの個別の貫通孔8aが提供され、本発明のポリマーベースの保護層と組み合わせて、機械的応力を再分配することができる。PIC1の第5の実施形態のモデルの、例えばFEM解析などの機械的応力シミュレーションは、
図5に示される結果として生じる機械的応力の分布を提供する。
【0063】
図6Aは、本発明によるPIC1の第6の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略断面を示す。層スタック6の第1の非半導体層7aは、層スタック6の第2の層として
の誘電体層15で覆われ、一方、誘電体の第2の層15は、層スタック6の第3の層として
の金属層16で覆われる。層スタック6の第1の非半導体層7aには、貫通孔8aが設けられている。InPベースの基板2の第1の表面3の第1の領域10は、層スタック6の誘電体の第2の層15と直接接触している。ポリマーベースの保護層12は、貫通孔8aを部分的に満たし、それにより、上記の機械的結合構造または機械的アンカーを提供する。第1の非半導体層7aの側壁14aは、第1の非半導体層7aに貫通孔8aを提供した結果として、層スタック6内の応力集中を回避するために、上記の微分面を有する。さらに、側壁14aは、層スタック6の少なくとも第1の非半導体層7aにおける機械的応力の再分配をさらに最適化するために
、InPベースの基板2の第1の表面3に対して30°~90°の範囲の角度αで配置されている。
【0064】
図6Bは、本発明によるPIC1の第7の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略断面を示す。層スタック6の第1の非半導体層7aは、層スタック6の第2の層として
の誘電体層15で覆われ、一方、誘電体の第2の層15は、層スタック6の第3の層として
の金属層16で覆われる。層スタック6の第1の非半導体層7aには、貫通孔8aが設けられている。InPベースの基板2の第1の表面3の第1の領域10は、層スタック6の誘電体の第2の層15と直接接触している。ポリマーベースの保護層12は、機械的応力が上昇した所定の位置9で、層スタック6の凹部を部分的に満たす。このようにして、ポリマーベースの保護層12と貫通孔8aとの組み合わせは、依然として、上記の機械的結合構造または機械的アンカーを提供する。さらに、第1の非半導体層7aの側壁14aは、第1の非半導体層7aに貫通孔8aを提供した結果として、層スタック6内の応力集中を回避するために、上記の微分面を有する。さらに、側壁14aは、層スタック6の少なくとも第1の非半導体層7aにおける機械的応力の再分配をさらに最適化するために、InPベースの基板2の第1の表面3に対して30°~90°の範囲の角度αで配置されている。
【0065】
図7Aは、貫通孔8aが、層スタック6のすべての非半導体層7a、15、16に提供され、それにより、ポリマーベースの保護層12と、InPベースの基板2の第1の表面3の第1の領域10との間の直接接触を可能にする、本発明によるPIC1の第8の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略断面を示す。層スタック6のすべての非半導体層7a、15、16には貫通孔8aが設けられているので、ポリマーベースの保護層12は、InPベースの基板2の第1の表面3の第1の領域10と直接接触している。このようにして、ポリマーベースの保護層12と貫通孔8aとの組み合わせは、上記の機械的結合構造または機械的アンカーを提供する。貫通孔8aは、層スタック6のすべての非半導体層7a、15、16に提供されるので、これらのそれぞれの層のそれぞれの側壁は、一緒になって、貫通孔8aに面するように配置された全側壁を構成する。非半導体層7a、15、16に貫通孔8aを提供した結果として、層スタック6内の応力集中を回避するために、側壁全体が異なる表面も有することが明らかであろう。
【0066】
さらに、全側壁は、層スタック6における機械的応力の再分配をさらに最適化するために、InPベースの基板2の第1の表面3に対して30°~90°の範囲の角度αで配置される。
【0067】
さらに、金属層16は、基板2の第1の表面3とは反対側を向くように配置された第3の表面17を有する。金属層16の第3の表面17を覆うように配置されたポリマーベースの保護層12は、金属層16の第3の表面17の第3の領域19へのアクセスを提供するように構成されたコンタクトホール18を備えている。このようにして、金属層16の第3の表面17の第3の領域19との電気的接続を確立することができる。
【0068】
図7Bは、InPベースの基板2の第1の表面3がエピタキシャルInPベースの半導体層4で覆われている、本発明によるPIC1の第9の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略断面を示す。貫通孔8aは、層スタック6のすべての非半導体層7a、7bに提供され、それにより、ポリマーベースの保護層12と、エピタキシャルInPベースの半導体層4の第2の表面5の第2の領域11aとの間の直接接触を可能にする。層スタック6のすべての非半導体層7a、7bには貫通孔8aが設けられているので、ポリマーベースの保護層12は、エピタキシャルInPベースの半導体層4の第2の表面5の第2の領域11aと直接接触している。このようにして、ポリマーベースの保護層12と貫通孔8aとの組み合わせは、上記の機械的結合構造または機械的アンカーを提供する。貫通孔8aは、層スタック6のすべての非半導体層7a、7bに設けられているので、これらのそれぞれの層のそれぞれの側壁は、一緒になって、貫通孔8aに面するように配置された全側壁を構成する。非半導体層7a、7bに貫通孔8aを提供した結果として、層スタック6内の応力集中を回避するために、側壁全体が異なる表面も有することが明らかであろう。
【0069】
さらに、全側壁は、層スタック6における機械的応力の再分配をさらに最適化するために、InPベースの基板2の第1の表面3に対して30°~90°の範囲の角度αで配置される。
【0070】
さらに、ポリマーベースの保護層12は、InPベースの基板2の第1の表面3とは反対側を向くように配置された第4の表面20を有し、第4の表面20は、90°より大きい接触角βを有する。当業者は、例えば、少なくとも50°の接触角を有するポリマーベースの表面が疎水性であると見なされるのに対し、親水性のポリマーベースの表面は、50°未満の接触角を有することを理解するであろう。
【0071】
図8Aは、それが適用されるInPベースの基板2の第1の表面3とは反対側を向くように配置されたポリマーベースの保護層12の第4の表面20は、突起22の規則的なパターン23を提供するように配置されたくぼみ21を備えている、本発明によるPIC1の第10の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略断面を示す。突起22の規則的なパターン23の結果として、ポリマーベースの保護層12の前記第4の表面20は、改善された疎水性を有する。
【0072】
図8Bは、
図8Aに示されるPIC1の第10の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略上面図を示す。所定の位置9の貫通孔を埋めるポリマーベースの保護層12の部分を取り囲む突起22の規則的なパターン23をはっきりと見ることができる。
【0073】
図9は、環境保護されたPICの第11の例示的な非限定的な実施形態の概略断面を示し、PIC1は、気密パッケージ25を備えている。上記のように、気密パッケージ25は、環境保護を改善し、したがって、PIC1の寿命を改善することができる。当業者は、PICが非気密パッケージ(図示せず)を提供することもできることを理解するであろう。後者の場合、環境保護とその結果としてのPICの寿命も改善できるが、程度は低くなる。
【0074】
図10は、本発明による環境保護されたPIC1を含む電気通信用途のための光電子システム24の第1の例示的な非限定的な実施形態の概略図を示す。光電子システム24は、例えば、送信機、受信機、送受信機、コヒーレント送信機、コヒーレント受信機、およびコヒーレント送受信機のうちの1つであり得る。
【0075】
本発明は、エピタキシャル半導体層4で少なくとも部分的に覆われているリン化インジウムベースの基板2を含む、環境保護されたフォトニック集積回路PIC1に関するものとして要約することができる。InPベースの基板および/またはエピタキシャル層は、異なる非半導体層7a、7bを含む層スタック6で覆われている。前記層スタック6の少なくとも第1の層は、所定の位置9に配置された貫通孔8aを備えている。InPベースの基板2またはエピタキシャル層4は、貫通孔8aを介してアクセス可能である。前記PIC1は、前記層スタックを覆い、それによって機械的結合構造を提供する誘電体保護層12を含む。前記保護層は、PICを環境汚染物質から保護するように構成される。本発明はまた、前記PIC1を含む光電子システム24に関する。
【0076】
本発明の範囲が前述の実施例に限定されず、そのいくつかの修正および変更が添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく可能であることは当業者には明らかであろう。特に、本発明のさまざまな態様の特定の特徴の組み合わせを行うことができる。本発明の一態様は、本発明の別の態様に関連して説明された特徴を追加することによってさらに有利に強化され得る。本発明は、図および説明において詳細に例示および説明されてきたが、そのような例示および説明は、例示的または例示的なものにすぎず、限定的ではないと見なされるべきである。
【0077】
本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態の変形は、図、説明、および添付の特許請求の範囲の研究から、特許請求の範囲の発明を実施する当業者によって理解および実施することができる。請求項において、「備える(comprising)」という語は、他のステップまたは要素を除外せず、不定冠詞「a」または「an」は、複数を除外しない。特定の措置が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの措置の組み合わせを有利に使用できないことを示すものではない。請求項中の参照番号は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0078】
1 環境保護されたフォトニック集積回路(PIC)
2 リン化インジウムベース(InPベース)の基板
3 InPベースの基板の第1の表面
4 エピタキシャル半導体層
5 エピタキシャル半導体層の第2の表面
6 層スタック
7a、7b 異なる非半導体層
8a、8b、8c、8d 貫通孔
9 機械的応力が上昇した所定の位置
10 InPベースの基板の第1の表面の第1の領域
11a、11b、11c エピタキシャル半導体層の第2の表面の第2の領域
12 誘電体保護層
13 所定の貫通孔パターン
14a、14b、14c 貫通孔に面する層スタックの少なくとも1つの層の側壁
α InPベースの基板の第1の表面に対する側壁の角度
15 誘電体層
16 金属層
17 金属層の第3の表面
18 コンタクトホール
19 金属層の第3の表面の第3の領域
20 ポリマーベースの保護層の第4の表面
21 くぼみ
22 突起
β 誘電体保護層の第4の表面の接触角
t 誘電体保護層の厚さ
23 突起の規則的なパターン
24 光電子システム
25 気密パッケージ