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特許7431798バリスタパッシベーション層及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】バリスタパッシベーション層及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/10 20060101AFI20240207BHJP
   H01C 1/034 20060101ALI20240207BHJP
   H01C 7/04 20060101ALI20240207BHJP
   H01C 7/18 20060101ALI20240207BHJP
   H01G 4/224 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
H01C7/10
H01C1/034
H01C7/04
H01C7/18
H01G4/224 100
【請求項の数】 40
(21)【出願番号】P 2021502408
(86)(22)【出願日】2019-07-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 US2019042178
(87)【国際公開番号】W WO2020018651
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-05-11
(31)【優先権主張番号】62/699,893
(32)【優先日】2018-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500047848
【氏名又は名称】キョーセラ・エイブイエックス・コンポーネンツ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】ラビンドラナータン,パラニアッパン
(72)【発明者】
【氏名】ベロリーニ,マリアンヌ
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2006-0082540(KR,A)
【文献】特開平09-035909(JP,A)
【文献】特開2000-030911(JP,A)
【文献】特開平08-227802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 1/00-1/16
H01C 7/02-7/22
H01G 4/224
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の交互に配された誘電体層及び電極層を含むセラミック体;
第1の端面上の第1の外部端子、及び前記第1の端面と反対側の第2の端面上の第2の外部端子、ここで前記第1の端面と前記第2の端面との間に少なくとも2つの側面が延在している;
前記第1の外部端子と前記第2の外部端子との間の前記セラミック体の少なくとも1つの側面上のパッシベーション層;
を含み、前記パッシベーション層は、金属ホスフェートを含み、前記金属ホスフェートの金属がアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はこれらの混合物を含み、前記パッシベーション層は0.1ミクロン~30ミクロンの平均厚さを有するバリスタ。
【請求項2】
前記金属がアルカリ金属を含む、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項3】
前記アルカリ金属がカリウムを含む、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項4】
前記金属がアルカリ土類金属を含む、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項5】
前記アルカリ土類金属がマグネシウムを含む、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項6】
前記アルカリ土類金属がカルシウムを含む、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項7】
前記金属ホスフェートのリンのモル数と前記金属のモル数との元素比が、エネルギー分散型X線分光法によって求めて0.01~100であってよい、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項8】
前記誘電体層が、酸化亜鉛を含む誘電体材料を含む、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項9】
前記金属ホスフェートがリン酸亜鉛をさらに含む、請求項8に記載のバリスタ。
【請求項10】
前記第1の外部端子及び前記第2の外部端子の上に金属メッキ層を更に含む、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項11】
前記金属メッキ層がニッケルを含む、請求項10に記載のバリスタ。
【請求項12】
前記金属メッキ層がスズを含む、請求項10に記載のバリスタ。
【請求項13】
前記バリスタが4ボルト以上のブレークダウン電圧を有する、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項14】
前記バリスタが10ボルト以上のブレークダウン電圧を有する、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項15】
前記バリスタが20ボルト~80ボルトのブレークダウン電圧を有する、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項16】
前記バリスタが、32ボルトの動作電圧及び125℃の温度において500時間行った寿命試験にかけた後に、初期ブレークダウン電圧の少なくとも90%のブレークダウン電圧を有する、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項17】
前記バリスタが、32ボルトの動作電圧及び125℃の温度において1000時間行った寿命試験にかけた後に、初期ブレークダウン電圧の少なくとも90%のブレークダウン電圧を有する、請求項16に記載のバリスタ。
【請求項18】
前記バリスタが、85℃の温度、85%の湿度、及び32ボルトの動作電圧において500時間行った温度湿度バイアス試験にかけた後に、初期ブレークダウン電圧の少なくとも90%のブレークダウン電圧を有する、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項19】
前記バリスタが、85℃の温度、85%の湿度、及び32ボルトの動作電圧において1000時間行った温度湿度バイアス試験にかけた後に、初期ブレークダウン電圧の少なくとも90%のブレークダウン電圧を有する、請求項18に記載のバリスタ。
【請求項20】
請求項1に記載のバリスタを製造する方法であって、
セラミック体、第1の外部端子、及び第2の外部端子を含むコンポーネントに、リン酸、並びにアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はこれらの混合物を含む金属を含む溶液を施すこと;
を含む上記方法。
【請求項21】
前記溶液が、前記金属を含む無機化合物を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記金属がアルカリ金属を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記アルカリ金属がカリウムを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記金属がアルカリ土類金属を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記アルカリ土類金属がマグネシウムを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記アルカリ土類金属がカルシウムを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記化合物が無機塩を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記無機塩が炭酸塩を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記無機塩が、硫酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、又はそれらの混合物を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記化合物が塩基を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記塩基が水酸化物を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記溶液がpH調整剤を更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項33】
前記pH調整剤が塩基pH調整剤を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記リン酸が0.01重量%~10重量%の量で前記溶液中に存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項35】
前記化合物が0.01重量%~10重量%の量で前記溶液中に存在する、請求項21に記載の方法。
【請求項36】
前記リン酸のリンのモル数と前記金属のモル数との元素比が0.01~100であってよい、請求項20に記載の方法。
【請求項37】
前記セラミック体の誘電体層の誘電体材料が酸化亜鉛を含み、前記溶液を施すことによってリン酸亜鉛を生成する反応がもたらされる、請求項20に記載の方法。
【請求項38】
500℃~900℃の温度において焼結することを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項39】
前記第1の外部端子及び前記第2の外部端子の上に第1の金属メッキ層を形成することを更に含む、請求項20記載の方法。
【請求項40】
前記第1の金属メッキ層上に第2の金属メッキ層を形成することを更に含む、請求項39に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は2018年7月18日の出願日を有する米国仮特許出願第62/699,893号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の出願の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
[0002]バリスタは、電圧依存性非線形抵抗器であり、サージ吸収電極、避雷器、及び電圧安定器として使用されてきた。バリスタは、通常は複数の積層された誘電体-電極層で構成される。製造中において、層はしばしばプレスして、垂直に積層された構造に形成することができる。その後、電気的接触及び表面実装のために、外部端子及びメッキ層を、端面及び側面の端部の上に形成することができる。通常は、メッキ層はメッキ溶液を使用して形成される。しかしながら、かかるメッキ溶液は、バリスタの露出したセラミックと反応する傾向を有する。セラミックをメッキから保護するために不動態化技術が使用されてきたが、これらの技術は、通常は内部電極と終端メッキとの間の電気経路の品質の低下をもたらした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[0003]その結果、外部端子をメッキする前にバリスタの露出したセラミックを不動態化し、かかるプロセスにしたがって製造されるバリスタを与える改良された方法を提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0004]本発明の一実施形態によれば、バリスタが開示される。本バリスタは、複数の交互に配された誘電体層及び電極層を含むセラミック体を含む。本バリスタはまた、第1の端面上の第1の外部端子、及び第1の端面の反対側の第2の端面上の第2の外部端子も含み、第1の端面と第2の端面との間に少なくとも2つの側面が延在する。本バリスタはまた、第1の外部端子と第1の外部端子との間のセラミック体の少なくとも1つの側面上にパッシベーション層を含む。パッシベーション層は、ホスフェート、並びにアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はそれらの混合物を含む金属添加剤を含む。パッシベーション層は、0.1ミクロン~30ミクロンの平均厚さを有する。
【0005】
[0005]本発明の別の実施形態によれば、バリスタを形成する方法が開示される。この方法は、リン酸、並びにアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はそれらの混合物を含む金属添加剤を含む溶液を、複数の交互に配された誘電体層及び電極層を含むセラミック体、第1の端面上の第1の外部端子、第1の端面と反対側の第2の端面上の第2の外部端子、及び第1の端面と第2の端面との間に延在する少なくとも2つの側面を含むコンポーネントに施すことを含む。本バリスタはまた、第1の外部端子と第2の外部端子との間のセラミック体の少なくとも1つの側面上にパッシベーション層を含む。パッシベーション層は、0.1ミクロン~30ミクロンの平均厚さを有する。
【0006】
[0006]当業者に対するそのベストモードを含む本発明の完全かつ実施可能な開示を、添付の図面を参照する明細書において示す。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】[0007]図1は、本発明の複数の態様によるパッシベーション層を含むバリスタを示す。
図2】[0008]図2a~図2cは、本発明の複数の態様によるパッシベーション層を含むバリスタを製造する方法を示す。
図3】[0009]図3は、本発明の一例による、露出したセラミック体及び種々のパッシベーション層の表面形態を示す。
図4】[0010]図4は、本発明の一例による焼成後の種々のパッシベーション層の表面形態を示す。
図5】[0011]図5は、本発明の一例による寿命試験及び温度湿度バイアス試験の結果を示す。
図6図6は、本発明の一例による寿命試験及び温度湿度バイアス試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[0012]本明細書及び添付の図面全体にわたる参照符号の繰り返しの使用は、本発明の同じか又は類似の特徴、電極、又は工程を表すことを意図している。
[0013]本開示は代表的な実施形態の説明にすぎず、本発明のより広い態様を限定することは意図しておらず、より広い態様は代表的な構成において具現化されることが、当業者によって理解される。
【0009】
[0014]一般に、本発明は、パッシベーション層を有するバリスタ、及びかかる層を形成する方法に関する。一般に、パッシベーション層は、外部端子をメッキする前に露出したセラミックを保護又は不動態化するために使用することができる電気絶縁層、特に無機電気絶縁層である。本発明によれば、かかるパッシベーション層は、変性リン酸溶液から形成される。本発明者らは、本明細書に更に記載される変性リン酸溶液がパッシベーション層及び対応するバリスタの特性を向上させることができることを見出した。
【0010】
[0015]例えば、金属添加剤は、パッシベーション層の形態及び厚さのより良好な制御を可能にし得る。特に、本明細書に開示される金属添加剤を使用することによって、バリスタ及びパッシベーション層が焼成されるにつれて、パッシベーション層の構造及び形態が変化する。特に、結晶構造は、一般にガラス状表面に崩壊して、これが露出したセラミックの表面を覆う。かかる変化は、実施例並びに図3及び図4に関連して下記で更に議論する。図3と比較して図4において示されるように、表面積の50%未満、例えば表面積の40%未満、例えば表面積の30%未満、例えば表面積の20%未満、例えば表面積の10%未満、例えば表面積の5%未満は、特に650℃において焼成した後に、当該技術において一般に理解されているような小板を含み得る。かかる表面積は、パッシベーション層の全表面積であってよく、又は、パッシベーション層の少なくとも50μm、例えば少なくとも100μm、例えば少なくとも250μm、例えば少なくとも500μm、例えば少なくとも1,000μm、例えば少なくとも5,000μm、例えば少なくとも10,000μm、例えば少なくとも25,000μm、例えば少なくとも50,000μm、例えば少なくとも100,000μm、例えば少なくとも150,000μmであってよい。
【0011】
[0016]次に、本発明者らは、このパッシベーション層がより安定であり、電気的に非伝導性であることを見出した。更に、かかる制御によって、本発明者らは、0.1ミクロン~30ミクロンの平均厚さを有するパッシベーション層を得ることができる。一般に、パッシベーション層の平均厚さは、30ミクロン以下、例えば20ミクロン以下、例えば15ミクロン以下、例えば10ミクロン以下、例えば8ミクロン以下、例えば5ミクロン以下であってよい。パッシベーション層の厚さは、0.1ミクロン以上、例えば0.5ミクロン以上、例えば1ミクロン以上、例えば2ミクロン以上、例えば3ミクロン以上、例えば5ミクロン以上であってよい。
【0012】
[0017]パッシベーション層の特性を制御することに加えて、本明細書において開示されるパッシベーション層を含むバリスタは、向上した電気的性能を示すことができる。通常は、バリスタ及び対応するパッシベーション層を高温で焼成すると、得られるバリスタは、一般に低いブレークダウン電圧を示す可能性がある。しかしながら、本発明者らは、本明細書において開示される金属添加剤を含む変性リン酸溶液を使用することによって、バリスタが、4ボルト以上、例えば5ボルト以上、例えば10ボルト以上、例えば15ボルト以上、例えば20ボルト以上、例えば25ボルト以上、例えば30ボルト以上、例えば40ボルト以上、例えば45ボルト以上、例えば50ボルト以上のブレークダウン電圧を有し得ることを見出した。ブレークダウン電圧は、300ボルト以下、例えば250ボルト以下、例えば200ボルト以下、例えば175ボルト以下、例えば150ボルト以下、例えば125ボルト以下、例えば100ボルト以下、例えば90ボルト以下、例えば80ボルト以下、例えば70ボルト以下、例えば60ボルト以下、例えば55ボルト以下にし得る。
【0013】
[0018]初期ブレークダウン電圧は比較的高い可能性があるが、本発明者らは、種々の試験を行った後であっても、かかるブレークダウン電圧の最小の変化を起こし得ることを見出した。特に、かかるブレークダウン電圧は、32ボルトの動作電圧及び125℃の温度において100時間行った寿命試験の後であっても実現し得る。例えば、ブレークダウン電圧は、初期ブレークダウン電圧の少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%にし得る。更に、かかるブレークダウン電圧は、試験を200時間行った後であっても実現し得、一実施形態においては、試験を500時間行った後であっても実現し得る。かかるブレークダウン電圧は、試験を1000時間行った後でも実現し得る。
【0014】
[0019]更に、かかるブレークダウン電圧はまた、温度湿度バイアス試験を、85℃の温度、85%の湿度、及び32ボルトの動作電圧において100時間行った後であっても実現し得る。例えば、ブレークダウン電圧は、初期ブレークダウン電圧の少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%にし得る。更に、かかるブレークダウン電圧は、試験を200時間行った後であっても実現し得、一実施形態においては、試験を500時間行った後であっても実現し得る。かかるブレークダウン電圧は、試験を1000時間行った後でも実現し得る。
【0015】
[0020]ブレークダウン電圧とは別に、本明細書において開示されるバリスタはまた、特定の用途に好適であり得る他の向上した電気特性も示し得る。例えば、本バリスタはまた、低い漏れ電流も示し得る。例えば、32ボルトの動作電圧における漏れ電流は、約1000μA以下、例えば約500μA以下、例えば約100μA以下、例えば約50μA以下、例えば約25μA以下、例えば約20μA以下、例えば約15μA以下、例えば約10μA以下、例えば約5μA以下、例えば約3μA以下、例えば約2μA以下、例えば約1μA以下、例えば約0.5μA以下、例えば約0.1μA以下にし得る。32ボルトの動作電圧における漏れ電流は、0μAより高く、例えば約0.0001μA以上、例えば約0.001μA以上、例えば約0.01μA以上、例えば約0.05μA以上、例えば約0.1μA以上、例えば約0.15μA以上、例えば約0.2μA以上、例えば約0.25μA以上、例えば約0.3μA以上にし得る。
【0016】
[0021]更に、漏れ電流は、32ボルトの動作電圧及び125℃の温度において100時間行った寿命試験の後であっても上記の範囲内にし得る。特に、かかる漏れ電流は、試験を200時間行った後であっても、及び一実施形態においては試験を500時間行った後であっても実現し得る。かかる漏れ電流は、試験を1000時間行った後でも実現し得る。
【0017】
[0022]更に、漏れ電流はまた、温度湿度バイアス試験を、85℃の温度、85%の湿度、及び32ボルトの動作電圧において100時間行った後であっても、前述の範囲内にし得る。特に、かかる漏れ電流は、試験を200時間行った後であっても、及び一実施形態においては試験を500時間行った後であっても実現し得る。かかる漏れ電流は、試験を1000時間行った後であっても実現し得る。
【0018】
[0023]幾つかの実施形態においては、本バリスタはまた、比較的低いクランプ電圧も示し得る。特に、本バリスタは、40ボルト以下のクランプ電圧を有し得る。例えば、幾つかの実施形態においては、本バリスタは、12ボルト以上、例えば15ボルト以上、例えば20ボルト以上、例えば25ボルト以上、例えば30ボルト以上、例えば40ボルト以上、例えば45ボルト以上、例えば50ボルト以上のクランプ電圧を有し得る。クランプ電圧は、500ボルト以下、例えば400ボルト以下、例えば300ボルト以下、例えば250ボルト以下、例えば200ボルト以下、例えば175ボルト以下、例えば150ボルト以下、例えば125ボルト以下、例えば100ボルト以下、例えば90ボルト以下、例えば80ボルト以下、例えば70ボルト以下、例えば60ボルト以下、例えば55ボルト以下、例えば50ボルト以下、例えば40ボルト以下、例えば30ボルト以下、例えば25ボルト以下にし得る。
【0019】
[0024]幾つかの実施形態においては、本バリスタはまた、低いキャパシタンスも示し得る。例えば、バリスタは、約0.5pF以上、例えば約1pF以上、例えば約5pF以上、例えば約10pF以上、例えば約25pF以上、例えば約50pF以上、例えば約100pF以上、例えば約200pF以上、例えば約250pF以上、例えば約300pF以上、例えば約400pF以上、例えば約450pF以上、例えば約500pF以上、例えば約1,000pF以上、例えば約5,000pF以上、例えば約10,000pF以上、例えば約25,000pF以上のキャパシタンスを有し得る。本バリスタは、約40,000pF以下、例えば約30,000pF以下、例えば約20,000pF以下、例えば約10,000pF以下、例えば約5,000pF以下、例えば約2,500pF以下、例えば約1,000pF以下、例えば約900pF以下、約800pF以下、例えば約750pF以下、例えば約700pF以下、例えば約600pF以下、例えば約550pF以下、例えば約500pF以下、例えば約250pF以下、例えば約150pF以下、例えば約100pF以下、例えば約50pF以下のキャパシタンスを有し得る。
【0020】
[0025]ここで図面を参照して、本発明の代表的な実施形態を詳細に議論する。図1は、本発明の複数の態様によるバリスタ10の一実施形態を示す。このバリスタは、セラミック体12を含んでいてよい。一般に、セラミック体12は、2つの対向する端面(即ち第1の端面26a及び第2の端面26b)、並びに4つの側面(即ち、第1の側面28及び第1の側面28に対向する第2の側面30、第3の側面及び第3の側面に対向する第4の側面(図示せず))を含む。示されているように、側面は端面26aと26bとの間に延在する。この点に関して、一実施形態においては、本バリスタは合計で少なくとも6つの表面を含む。
【0021】
[0026]バリスタ10、特にセラミック体12には、複数の誘電体層14を含ませることができる。かかる誘電体層14は概して平面状であってよい。誘電体層14には、当該技術において一般的に知られている任意の好適な誘電体材料を含ませることができる。例えば、誘電体材料には、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、酸化鉄、それらの混合物、又は任意の他の好適な誘電体材料を含ませることができる。この点に関し、誘電体材料は金属酸化物であってよい。金属酸化物は酸化亜鉛又は酸化鉄であってよい。一実施形態においては、金属酸化物は酸化亜鉛であってよい。
【0022】
[0027]例えば、誘電体材料の電圧依存性抵抗を生成又は増強する種々の添加剤を誘電体材料中に含ませることができる。例えば、幾つかの実施形態においては、添加剤としては、コバルト、ビスマス、マンガン、アンチモン、ニッケル、クロム、ケイ素の酸化物、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。幾つかの実施形態においては、添加剤は、上記記載の酸化物添加剤の少なくとも2つ、例えば少なくとも3つ、例えば少なくとも4つ、例えば少なくとも5つ、例えば少なくとも6つ、例えば7つ全てを含む。幾つかの実施態様においては、添加剤として、ガリウム、アルミニウム、チタン、鉛、バリウム、バナジウム、スズ、ホウ素の酸化物、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。添加剤にはまた、硝酸アルミニウムのような硝酸塩を含ませることもできる。更に、添加剤にはまた、ホウ酸のような酸を含ませることもできる。
【0023】
[0028]誘電体材料には、約0.1モル%以上、例えば約0.5モル%以上、例えば約1モル%以上、例えば約2モル%以上、乃至約6モル%以下、例えば約4モル%以下、例えば約3モル%以下、例えば約2モル%以下の範囲の1種類又は複数の添加剤をドープすることができる。誘電体材料の平均結晶粒度は、誘電体材料の非線形特性に寄与し得る。幾つかの実施形態においては、平均結晶粒度は、約10ミクロン~100ミクロン、幾つかの実施形態においては約20ミクロン~80ミクロンの範囲であってよい。
【0024】
[0029]図1に戻り、バリスタ10にはまた、第1の電極16aを含む電極層、及び第2の電極16bを含む電極層を含ませることができる。かかる電極層は概して平面状であってよい。電極層は、交互構成で与えることができる。更に、電極層は、電極層が交互挿入構成で与えられるように、誘電体層14と交互配列で与えることができる。この点に関し、セラミック体は、複数の交互に敗された誘電体層14並びに電極層16a及び16bから形成することができる。更に、セラミック体12は、かかる層を一緒にプレスして一体構造を形成することによって形成することができる。層は、不動態化の前に一体構造を形成するために焼結することができる。
【0025】
[0030]電極16a及び16bには、当該技術において一般的に知られている任意の好適な電極材料を含ませることができる。例えば、電極材料には、パラジウム、銀、白金、銅、ニッケル、スズ、それらの合金、それらの混合物、又は他の好適な導電性金属、例えば、誘電体層上に印刷することができるもののような導電性金属を含ませることができ、それらから形成することができる。
【0026】
[0031]更に、電極16a及び16bの形状、並びに誘電体層14間の特定の層内の電極16a及び16bの構成は、本発明によって限定されない。例えば、電極16a及び16bは、矩形又はT字形、或いは当該技術において公知の他の任意の形状を有していてよい。更に、セラミック体12及び/又は電極層には、端面に隣接するスタブプレート、ダミー電極、フローティング電極を含ませるか、無電極とするか、又は当該技術において一般的に知られている他のタイプの電極を含ませることができる。更に、本発明は、誘電体層14並びに電極層16a及び16bのいかなる特定の数にも限定されないことも理解すべきである。
【0027】
[0032]図1に戻り、電極16a及び16bは、それぞれ外部端子18a及び18bに電気的に接続することができる。この点に関し、電極は、1つの外部端子のみに接続することができる。例えば、第1の電極16aを第1の外部端子18aに接続し、第2の電極16bを第2の外部端子18bに接続することができる。この点に関し、それぞれの電極16a及び16bは、それぞれ外部端子18a及び18bに接続されている。それぞれの外部端子18a及び18bに物理的に接続されていない電極16a及び16bの先端は、それぞれ、対向する外部端子18b及び18aに向かって延在する又は突出している。この点に関して、一実施形態においては、電極16a及び16bは重なり合ってもよい。
【0028】
[0033]電極16a及び16bは、電極16a及び16bに隣接する外部端子18a及び18bの内表面に接続することができる。この点に関し、外部端子18a及び18bはまた、金属メッキ層22a及び22bを堆積又は形成するための内表面の反対側の外表面も含む。
【0029】
[0034]第1の外部端子18aは第1の端面26a上に存在させることができ、第2の外部端子18bは第2の端面26b上に存在させることができる。しかしながら、外部端子18a及び18bは、部分的に少なくとも一方の側面上に延在させることができる。一実施形態においては、外部端子18a及び18bは、部分的に少なくとも2つの側面上に延在させることができる。更なる実施形態においては、外部端子18a及び18bは、部分的に少なくとも4つの側面全ての上に延在させることができる。例えば、外部端子18a及び18bは、2つの端面26a及び26b上に存在させ、且つ角部を越えて延在させて、側面の縁部又は端部を部分的に覆わせることができる。この点に関し、セラミック体12には、外部端子18aと18bとの間に形成される少なくとも2つの側面のような少なくとも1つの側面上にギャップ32を含ませることができる。かかるギャップ32は、バリスタ10のセラミック体12の4つの側面全ての上に存在させることができる。また、外部端子18a及び18bをかかるギャップ内に存在させないで、セラミック体12が外部端子18a及び18bによって覆われていない露出面を有するようにすることができる。
【0030】
[0035]外部端子18a及び18bには、当該技術において一般的に知られている任意の好適な材料を含ませることができる。例えば、この材料には、銀、スズ、鉛、パラジウム、白金、銅、ニッケル、それらの合金、又はそれらの混合物、或いは任意の他の好適な導電性金属、例えばバリスタのための外部端子として与えることができるもののような導電性金属を含ませることができ、それらから形成することができる。また、外部端子18a及び18bにガラスフリットを含ませることもできる。
【0031】
[0036]外部端子18a及び18bには、その上に形成された金属メッキ層(それぞれ22a及び22b)を含ませることができる。金属メッキ層22a及び22bには、1つの金属メッキ層、又は少なくとも2つの金属メッキ層、例えば3つの金属メッキ層のような1つより多い金属メッキ層を含ませることができる。金属メッキ層22a及び22bには、当該技術において一般的に知られている任意の好適な材料を含ませることができる。例えば、この材料には、白金、銅、パラジウム、銀、ニッケル、スズ、鉛、それらの合金、それらの混合物、又は他の好適な導電性金属、例えば金属メッキ層として与えることができるもののような導電性金属を含ませることができ、それらから形成することができる。
【0032】
[0037]外部端子のための外部金属メッキ層として、スパッタリングのような通常の処理技術によって施される、クロム/ニッケル層、次に銀/鉛層を使用することができる。或いは、金属メッキ層に、ニッケル層、次にスズ又はスズ/鉛合金層を含ませることができる。この点に関し、バリスタ10には、ニッケルを含む少なくとも1つの金属メッキ層を含ませることができる。更に、バリスタ10には、スズ/鉛のようなスズを含む少なくとも1つの金属メッキ層を含ませることができる。
【0033】
[0038]1つ又は複数のメッキ層の厚さは、本発明によって必ずしも限定されず、特に特定の用途に関して所望のように任意の厚さであってよい。したがって、厚さは、0.1ミクロン以上、例えば0.5ミクロン以上、例えば1ミクロン以上、例えば2ミクロン以上、例えば3ミクロン以上、乃至10ミクロン以下、例えば8ミクロン以下、例えば6ミクロン以下、例えば5ミクロン以下、例えば3ミクロン以下であってよい。しかしながら、一つ又は複数のメッキ層の厚さは、0.1ミクロン未満であってよく、或いは10ミクロンより厚くてもよいことを理解すべきである。
【0034】
[0039]バリスタ10及びセラミック体12には、パッシベーション層24も含ませることができる。一般に、パッシベーション層24は、電気的に絶縁性の無機層であってよい。パッシベーション層24は、外部端子18aと18bとの間に形成される少なくとも2つの側面のような、少なくとも1つの側面上のギャップ32内に形成することができる。上記で示したように、かかるギャップ32は、バリスタ10のセラミック体12の4つの側面全ての上に存在させることができる。この点に関し、パッシベーション層24は、全ての側面のギャップ32内に形成することができる。パッシベーション層24は、外部端子18aと18bとの間のセラミック体12上に形成され、その後の処理(例えば金属メッキ層の形成)中にセラミック/誘電体を保護する。
【0035】
[0040]パッシベーション層24は、本明細書に開示される変性リン酸溶液から形成されるホスフェートパッシベーション層24であってよい。誘電体層14を酸化亜鉛から形成する場合には、パッシベーション層24にリン酸亜鉛を含ませることができる。更に、パッシベーション層には金属添加剤を含ませることができる。一実施形態においては、金属添加剤は非導電性金属であってよい。
【0036】
[0041]特に、パッシベーション層24には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はそれらの組み合わせを含む金属添加剤を含ませることができる。一実施形態においては、パッシベーション層24にアルカリ金属を含ませることができる。別の実施形態においては、パッシベーション層24にアルカリ土類金属を含ませることができる。1つの更なる実施形態においては、パッシベーション層24にアルカリ金属及びアルカリ土類金属の組み合わせを含ませることができる。
【0037】
[0042]アルカリ金属は、パッシベーション層24中に導入するのに好適な任意のアルカリ金属であってよい。例えば、アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、又はそれらの混合物を挙げることができる。一実施形態においては、アルカリ金属として、ナトリウム、カリウム、又はそれらの混合物を挙げることができる。1つの更なる実施形態においては、アルカリ金属としてカリウムを挙げることができる。別の更なる実施形態においては、アルカリ金属としてナトリウムを挙げることができる。
【0038】
[0043]アルカリ土類金属は、パッシベーション層24中に導入するのに好適な任意のアルカリ土類金属であってよい。例えば、アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、又はそれらの混合物を挙げることができる。特に、アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、又はそれらの混合物を挙げることができる。一実施形態においては、アルカリ土類金属として、マグネシウム、カルシウム、又はそれらの混合物を挙げることができる。1つの更なる実施形態においては、アルカリ土類金属としてマグネシウムを挙げることができる。別の更なる実施形態においては、アルカリ土類金属としてカルシウムを挙げることができる。
【0039】
[0044]1つの特定の実施形態においては、パッシベーション層24は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の組み合わせを含む。この点に関して、この組合せとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、又はそれらの混合物などのアルカリ金属、及びベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、又はそれらの混合物などのアルカリ土類金属を挙げることができる。特に、この組み合わせとして、リチウム、ナトリウム、カリウム、又はそれらの混合物などのアルカリ金属、及びマグネシウム、カルシウム、又はそれらの混合物などのアルカリ土類金属を挙げることができる。例えば、この組合せとしては、カリウム、マグネシウム、及びカルシウム、例えばカリウム、マグネシウム及び/又はカルシウムを挙げることができる。
【0040】
[0045]パッシベーション層中(又はパッシベーション層の表面上)における金属添加剤のモル数(又は原子数)に対するホスフェートのリンのモル数(又は原子数)のモル(又は元素)比は、0.01以上、例えば0.1以上、例えば0.2以上、例えば0.25以上、例えば0.5以上、例えば1以上、例えば2以上、例えば4以上、例えば5以上、例えば8以上、例えば10以上であってよい。金属添加剤のモル数(又は原子数)に対するホスフェートのモル数(又は原子数)のモル(又は元素)比は、100以下、例えば75以下、例えば50以下、例えば40以下、例えば25以下、例えば15以下、例えば10以下、例えば7以下、例えば5以下、例えば4以下、例えば3以下であってよい。かかる比は、エネルギー分散型X線分光法及び走査電子顕微鏡法のような当該技術において一般的に知られている種々の技術を使用して求めることができる。
【0041】
[0046]パッシベーション層中(又はパッシベーション層の表面上)における金属添加剤のモル数(又は原子数)に対する酸化亜鉛の亜鉛のモル数(又は原子数)のモル(又は元素)比は、0.01以上、例えば0.1以上、例えば0.2以上、例えば0.25以上、例えば0.5以上、例えば1以上、例えば2以上、例えば4以上、例えば5以上、例えば8以上、例えば10以上であってよい。金属添加剤のモル数(又は原子数)に対する酸化亜鉛の亜鉛のモル数(又は原子数)のモル(又は元素)比は、100以下、例えば75以下、例えば50以下、例えば40以下、例えば25以下、例えば15以下、例えば10以下、例えば7以下、例えば5以下、例えば4以下、例えば3以下であってよい。かかる比は、エネルギー分散型X線分光法及び走査電子顕微鏡法のような当該技術において一般的に知られている種々の技術を使用して求めることができる。
【0042】
[0047]上記に示したように、金属添加剤をパッシベーション層中に存在させることができる。更に、かかる金属添加剤はまた、エネルギー分散型X線分光法及び走査電子顕微鏡法によって検出することができるように、パッシベーション層の表面上に存在させることもできる。前述のモル(又は元素)比はまた、エネルギー分散型X線分光法及び走査電子顕微鏡法によって求められるパッシベーション層上の比にも適用することができる。
【0043】
[0048]図1はバリスタの一実施形態を与えるが、本発明はバリスタのタイプ、及びかかるバリスタを形成する際に使用する材料によって限定されないことを理解すべきである。特に、本発明は、本明細書に開示されるパッシベーション層を使用することができる任意のバリスタに好適であり得ることを理解されたい。
【0044】
[0049]本明細書に示されるように、本発明はまた、本明細書に開示されるパッシベーション層を有するバリスタを形成する方法にも関する。図2a~図2cを参照すると、本明細書に開示されるバリスタを形成する少なくとも1つの方法が与えられる。
【0045】
[0050]図2aに示すように、本方法は、上述のように複数の交互に配された誘電体層14並びに電極層16a及び16bを含むセラミック体12を与えることを含む。本方法には、一実施形態においては、上述のような複数の交互に配された誘電体層14並びに電極層16a及び16bを含むセラミック体12、並びに上述のような外部端子18a及び18bを与える工程を含ませることができる。
【0046】
[0051]或いは、本方法には、少なくとも2つの対向する端面上に外部端子18a及び18bを形成する工程を含ませることができる。外部端子18a及び18bは、当該技術において公知の任意の手段を使用して形成することができる。例えば、一実施形態においては、外部端子は、導電性ペーストのようなペーストを施すことによって形成することができる。特に、外部端子は、セラミック体の端面をペースト中に浸漬することによって形成することができる。
【0047】
[0052]ペーストには、銀、スズ、鉛、パラジウム、白金、銅、ニッケル、それらの合金、又はそれらの混合物、又は当該技術において公知の任意の他の導電性金属のような導電性金属を含ませることができる。ペーストにはまた、ガラスフリットを含ませることもできる。この点に関して、ペーストには金属及びガラスフリットを含ませることができる。また、ペーストにキャリアを含ませることもできる。金属は、25重量%以上、例えば、50重量%以上、例えば60重量%以上、例えば70重量%以上、例えば75重量%以上の量でペースト中に含ませることができる。残りは、ガラスフリット及びキャリアであってよい。
【0048】
[0053]この点に関し、外部端子18a、18bは、当該技術において一般的に理解されている「厚膜」端子であってよい。しかしながら、幾つかの実施形態においては、外部端子18a、18bは、当該技術において一般的に理解されている「薄膜」端子であってもよいことを理解すべきである。かかる「薄膜」端子は、幾つかの無電解又は電解メッキ技術などの幾つかの技術によって形成することができる。
【0049】
[0054]外部端子18a及び18bを形成する前に、誘電体層14並びに電極16a及び16bを含むセラミック体12を焼結して、一体構造を形成することができる。かかる焼結は、少なくとも400℃、例えば少なくとも500℃、例えば少なくとも700℃、例えば少なくとも1000℃、例えば少なくとも1100℃の温度であってよい。かかる焼結は、所望の特性を得るために任意の所望の時間であってよい。
【0050】
[0055]外部端子材料を有するセラミック体12を焼成又は焼結することができる。かかる焼成又は焼結を使用して端子材料を硬化させて、外部端子18a及び18bを与えることができる。例えば、これにより、ガラスフリットを溶融させて金属粒子を十分に結合させることを可能にすることができる。温度は、300℃以上、例えば400℃以上、例えば500℃以上、例えば550℃以上、例えば600℃以上であってよい。温度は、1200℃以下、例えば1000℃以下、例えば950℃以下、例えば900℃以下、例えば850℃以下、例えば800℃以下、例えば700℃以下であってよい。かかる焼結は、所望の特性を得るために任意の所望の時間であってよい。例えば、かかる焼結は、少なくとも1分間、例えば少なくとも5分間、例えば少なくとも15分間、例えば少なくとも30分間、例えば少なくとも1時間行うことができる。
【0051】
[0056]焼成後、外部端子18a及び18bを有するセラミック体12を洗浄又は清浄化することができる。かかる洗浄は、当該技術において好適な任意の液体又は溶媒を使用することができる。例えば、かかる液体又は溶媒には水(例えば脱イオン水)、アセトン、及び/又はエタノールのようなアルコールを含ませることができる。洗浄には、別々に、エタノールで洗浄して続いて水で洗浄することを含ませることができる。その後、外部端子を有するセラミック体を、例えば室温、又は25℃以上、例えば50℃以上、例えば75℃以上、例えば85℃以上の昇温温度において乾燥させることができる。
【0052】
[0057]その後、図2bに示すように、外部端子18aと18bとの間のギャップ32においてパッシベーション層24を形成する。パッシベーション層24は、リン酸溶液、特に本明細書において開示する変性リン酸溶液を使用して形成することができる。リン酸溶液は、本明細書に開示されるホスフェート層を形成するために当該技術において一般的に使用される任意のリン酸を含む。公知なように、言い換えれば、リン酸はオルトリン酸であってよい。更に、リン酸溶液は、更なる成分を含む変性溶液である。特に、溶液に、パッシベーション層24に関して上述した金属添加剤を含ませることができる。
【0053】
[0058]金属添加剤は、金属添加剤化合物のような化合物を介して与えることができる。金属添加剤化合物は、無機化合物であってよい。金属添加剤化合物は、金属添加剤がパッシベーション層中に存在することを可能にするために、リン酸溶液中で解離するものであってよい。
【0054】
[0059]一実施形態においては、金属添加剤化合物は、塩、特に無機塩であってよい。例えば、塩は、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物(例えば、塩化物、ヨウ化物、臭化物)など、又はそれらの混合物であってよい。一実施形態においては、塩は、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、及び/又は炭酸カリウムのような炭酸塩であってよい。或いは、金属添加剤化合物は、水酸化物のような塩基を与える塩であってよい。或いは、金属添加剤化合物は、強塩基のような塩基であってよい。特に、塩基は、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、及び/又は水酸化マグネシウムのような水酸化物であってよい。
【0055】
[0060]変性リン酸溶液はまた、更なる成分を有していてもよい。例えば、溶液に金属イオンを含ませることもできる。かかる金属イオンは、誘電体の金属(例えば、誘電体が酸化亜鉛から形成される場合には亜鉛)に対応していてよい。かかる金属をリン酸溶液中に含ませることにより、パッシベーション層のためのホスフェートの形成を助けることができる。例えば、ホスフェートは、溶液中で形成してセラミック体の露出表面上に堆積させることができる。
【0056】
[0061]更に、変性リン溶液は液体キャリアを有していてもよい。液体キャリアは、水、有機溶媒、又はそれらの組み合わせであってよい。一実施形態においては、液体キャリアは水を含む。液体キャリアは、50重量%以上、例えば60重量%以上、例えば70重量%以上、例えば80重量%以上、例えば90重量%以上、例えば95重量%以上、乃至100重量%未満、例えば99重量%以下の量で溶液中に存在させることができる。
【0057】
[0062]変性リン酸溶液にはまた、pH調節剤を含ませることもできる。一実施形態においては、pH調整剤は塩基pH調整剤であってよい。例えば、pH調整剤に強塩基を含ませることができる。pH調整剤には、水酸化物、特に当該技術において公知の任意の水酸化物を含ませることができる。一実施形態においては、pH調整剤に水酸化アンモニウムを含ませることができる。使用するpH調整剤の量は限定されず、所望のpHが得られるまで使用することができる。
【0058】
[0063]溶液のpHは酸性のpHであってよい。特に、pHは、7未満、例えば6以下、例えば5以下、例えば4以下であってよい。pHは、1以上、例えば2以上、例えば3以上、例えば4以上、例えば4.5以上であってよい。
【0059】
[0064]この溶液には、0.01重量%以上、例えば0.05重量%以上、例えば0.1重量%以上、例えば0.25重量%以上、例えば0.5重量%以上、例えば0.75重量%以上、例えば1重量%以上、例えば1.25重量%以上、例えば1.5重量%以上、例えば2重量%以上、例えば3重量%以上、例えば3.5重量%以上の量のリン酸を含ませることができる。この溶液には、10重量%以下、例えば7.5重量%以下、例えば5重量%以下、例えば3重量%以下、例えば2.5重量%以下、例えば2%以下、例えば1.75%以下の量のリン酸を含ませることができる。
【0060】
[0065]この溶液には、0.01重量%以上、例えば0.05重量%以上、例えば0.1重量%以上、例えば0.25重量%以上、例えば0.5重量%以上、例えば0.75重量%以上、例えば1重量%以上、例えば1.25重量%以上、例えば1.5重量%以上の量の金属添加剤化合物を含ませることができる。この溶液には、10重量%以下、例えば7.5重量%以下、例えば5重量%以下、例えば3重量%以下、例えば2.5重量%以下、例えば2重量%以下、例えば1.75重量%以下の量の金属添加剤を含ませることができる。
【0061】
[0066]この溶液には、0.01重量%以上、例えば0.05重量%以上、例えば0.1%重量以上、例えば0.25重量%以上、例えば0.5重量%以上、例えば0.75重量%以上、例えば1重量%以上、例えば1.25重量%以上、例えば1.5重量%以上の量の金属添加剤化合物の金属添加剤を含ませることができる。この溶液には、10重量%以下、例えば7.5重量%以下、例えば5重量%以下、例えば3重量%以下、例えば2.5重量%以下、例えば2重量%以下、例えば1.75重量%以下の量の金属添加剤を含ませることができる。
【0062】
[0067]溶液中の金属添加剤化合物に対するリン酸の重量比は、0.01以上、例えば0.1以上、例えば0.2以上、例えば0.25以上、例えば0.5以上、例えば1以上、例えば2以上、例えば4以上、例えば5以上、例えば8以上、例えば10以上であってよい。溶液中の金属添加剤化合物に対するリン酸の重量比は、100以下、例えば75以下、例えば50以下、例えば40以下、例えば25以下、例えば15以下、例えば10以下、例えば7以下、例えば5以下であってよい。
【0063】
[0068]溶液中の金属添加剤化合物の金属添加剤のモル数に対するリン酸のリンのモル数のモル(又は元素)比は、0.01以上、例えば0.1以上、例えば0.2以上、例えば0.25以上、例えば0.5以上、例えば1以上、例えば2以上、例えば4以上、例えば5以上、例えば8以上、例えば10以上であってよい。溶液中の金属添加剤化合物の金属添加剤のモル数に対するリン酸のモル数のモル比は、100以下、例えば75以下、例えば50以下、例えば40以下、例えば25以下、例えば15以下、例えば10以下、例えば7以下、例えば5以下であってよい。
【0064】
[0069]パッシベーション層24は、リン酸溶液のようなパッシベーション材料を、セラミック体、特に外部端子を有するセラミック体を含むコンポーネントに施すことによって形成することができる。パッシベーション材料は、コーティング、浸漬、噴霧、霧化などによって施すことができる。一実施形態においては、パッシベーション材料は、セラミック体にリン酸溶液を噴霧することによって施す。別の実施形態においては、パッシベーション材料は、セラミック体をリン酸溶液中に浸漬することによって施す。一般に、ホスフェート層は、例えば銀を含む場合には外部端子上に形成することができないことがある。これは、かかるホスフェート層を反応させて形成してかかる末端端子に付着させることができないためである。
【0065】
[0070]パッシベーション層は、誘電体材料をパッシベーション材料と反応させることによって形成することができる。例えば、誘電体材料が酸化亜鉛を含み、パッシベーション材料がリン酸を含む場合には、反応によってリン酸亜鉛を含むパッシベーション層を生成させることができる。反応は、所望の温度において所望の時間行うことができる。例えば、一実施形態においては、反応は周囲温度において行うことができる。或いは、反応を昇温温度において行って、リン酸溶液がかかる温度に加熱されるようにすることができる。例えば、温度は、15℃以上、例えば30℃以上、例えば50℃以上、55℃以上、例えば60℃以上、乃至100℃以下、例えば90℃以下、例えば80℃以下、例えば70℃以下、例えば65℃以下であってよい。反応は、1分以上、例えば5分以上、例えば10分以上、例えば20分以上、例えば25分以上、乃至60分以下、例えば50分以下、例えば40分以下、例えば35分以下行うことができる。
【0066】
[0071]反応後、外部端子18a及び18b並びにパッシベーション層24を有するセラミック体12を洗浄することができる。例えば、それを、水(例えば脱イオン水)又はアルコールですすぐことができる。一実施形態においては、洗浄は水によって行う。
【0067】
[0072]反応の後及び乾燥の後に、外部端子18a及び18b並びにパッシベーション層24を有するセラミック体12を乾燥させることができる。かかる乾燥は、室温、又は25℃以上、例えば50℃以上、例えば60℃以上、例えば65℃以上の昇温温度において行うことができる。かかる乾燥は、必要に応じて、5分以上、例えば30分以上、例えば1時間以上、例えば2時間以上、例えば4時間以上、例えば5時間以上、例えば6時間以上のような任意の長さであってよい。
【0068】
[0073]更に、パッシベーション層の形成後で金属メッキ層を形成する前に、セラミック体を昇温温度において焼成又は焼結することができる。かかる焼成又は焼結は、パッシベーション層の更なる安定性を可能にすることができ、これにより金属メッキ層の形成を助けることができる。温度は、300℃以上、例えば400℃以上、例えば500℃以上、例えば550℃以上、例えば600℃以上であってよい。温度は、900℃以下、例えば850℃以下、例えば800℃以下、例えば700℃以下であってよい。かかる焼結は、所望の特性を得るために任意の所望の時間であってよい。例えば、かかる焼結は、少なくとも1分間、例えば少なくとも5分間、例えば少なくとも15分間、例えば少なくとも30分間、例えば少なくとも1時間行うことができる。
【0069】
[0074]その後、図2cに示すように、金属メッキ層22a及び22bを、それぞれ外部端子18a及び18b上に形成する。この点に関し、本方法は、金属メッキ層を形成する工程、又は言い換えれば外部端子をメッキして金属メッキ層を形成する工程を含む。金属メッキ層は、当該技術において一般的に知られている任意の方法を使用して形成することができる。例えば、金属メッキ層は、電気メッキ、無電解メッキ、スプレーメッキ、圧延メッキプロセスなどによって形成することができる。例えば、金属メッキ層は、バレルメッキ、特にバレル電気メッキによって形成することができる。パッシベーション層が存在すると、側面上の外部端子間に存在するセラミック/誘電体が同じようにメッキされるリスクが最小になる。この点に関し、金属メッキ層は、外部端子18a及び18bのような本体の電気的に帯電した部分に付着し、パッシベーション層24には、電気的に絶縁性であり、導電性でないので付着しない。
【0070】
[0075]金属メッキ層は、上述の種々の技術を使用して金属メッキ溶液を施すことによって形成される。金属メッキ溶液は、必ずしも限定されず、当該技術において一般的に使用されるものであってよい。例えば、層がニッケルを含む場合には、金属メッキ溶液は、硫酸ニッケル又は塩化ニッケルを含むニッケルメッキ溶液であってよい。溶液にはまた、酸(例えばホウ酸)、湿潤剤などのような当該技術において一般的に知られている他の添加剤を含ませることもできる。層がスズを含む場合には、金属メッキ溶液は、アルキルスズ、アルキルスズ鉛、スズ鉛硫酸、又はスズ硫酸を含むスズメッキ溶液であってよい。かかるメッキ溶液は、2以上、例えば3以上、例えば4以上、例えば5以上、例えば6以上、乃至7以下、例えば6以下、例えば5以下のpHを有していてよい。pHは、2~7、例えば2~6、例えば3~6、例えば4~6、又は例えば6~7であってよい。
【0071】
[0076]一般に、パッシベーション層は、更なる保護として最終製品中に残存させることができる。この点に関し、一実施形態においては、パッシベーション層はデバイスから除去しなくてもよい。しかしながら、別の実施形態においては、パッシベーション層はセラミック体及びバリスタから除去することができる。
【0072】
[0077]本明細書に開示されるバリスタは、広範囲のデバイスにおいて多くの異なる用途を有し得る。例えば、本バリスタは、無線周波数アンテナ/増幅器回路において使用することができる。本バリスタはまた、レーザドライバー、センサー、レーダー、無線周波数識別チップ、近接場通信、データ線、ブルートゥース、光学素子、イーサネットなどの種々の技術において、及び任意の好適な回路において用途を見出すことができる。本明細書に開示されるバリスタはまた、自動車産業において特定の用途を見出すことができる。例えば、本バリスタは、自動車用途における上記記載の任意の回路において使用することができる。かかる用途に関しては、厳格な耐久性及び/又は性能要件を満たすために、受動電気コンポーネントが必要である場合がある。更に、本バリスタは、データ処理及び伝送技術において特定の用途を見出すことができる。
【実施例
【0073】
[0078]本発明は以下の実施例を参照することにより、より良く理解することができる。
試験方法:
[0079]以下のセクションは、種々のバリスタ特性を求めるためのバリスタの試験方法を与える。
【0074】
[0080]クランプ電圧及びブレークダウン電圧:バリスタのクランプ電圧は、Frothingham Electronic Corporation FEC CV400ユニットを使用して測定することができる。クランプ電圧は、ANSI標準規格C62.1にしたがって、立ち上がり時間が8μsであり、減衰時間が20μsである8×20μsの電流パルス中にバリスタの両端間で測定される最大電圧として正確に測定することができる。これは、ピーク電流値がバリスタを損傷するほど大きくない限り、依然として正しい。
【0075】
[0081]ブレークダウン電圧は、バリスタの電流と電圧との関係における変曲点として検出することができる。ブレークダウン電圧よりも高い電圧に関しては、電流は、ブレークダウン電圧よりも低い電圧と比較して、電圧の増加に伴ってより急激に増加し得る。ブレークダウン電圧未満の電圧に関しては、理想的なバリスタは一般に、概して次の関係式:
V=CIβ
にしたがう電圧を示し得る。
【0076】
[0082]ここで、Vは電圧を表し;Iは電流を表し;C及びβはバリスタの特性(例えば材料特性)に依存する定数である。バリスタに関しては、定数βは概して1未満であって、この領域においては、電圧はオームの法則にしたがう理想的な抵抗よりも急激には増加しない。
【0077】
[0083]しかしながら、ブレークダウン電圧よりも高い電圧に関しては、電流と電圧との関係は、概してほぼオームの法則にしたがうことができ、ここでは電流は電圧と線形関係:
V=IR
にある。
【0078】
[0063]ここで、Vは電圧を表し;Iは電流を表し;Rは大きな一定の抵抗値である。電流と電圧との関係は上述のように測定することができ、任意の好適なアルゴリズムを使用して、実験によって収集された電流と電圧とのデータセットにおける変曲点を求めることができる。
【0079】
実施例1:
[0085]酸化亜鉛粉末は、第1工程において酸化亜鉛を種々の酸化物添加剤と一緒に焼成することにより製造した。第2工程においては、焼成した粉末を酸化ビスマスと混合した。その後、図2aに示すように、電極を含むセラミック体に外部端子を形成し、露出したセラミックを下表に与える仕様及び条件にしたがって変性リン酸溶液と反応させた。
【0080】
【表1】
【0081】
[0086]図2bに示すようにパッシベーション層を形成したら、表面形態を分析した。特に、金属添加剤はパッシベーション層の異なる形態をもたらすことができることが観察された。図3は、露出したセラミック体(対照)、並びに比較試料1並びに試料2及び3にしたがって形成されたパッシベーション層の表面形態を示す。画像によって示されるように、カリウムを含ませると(試料2)結晶サイズが減少し、一方でマグネシウムを含ませると(試料3)、金属添加剤を有しないホスフェート層(比較試料1)と比較して結晶サイズが増加する。特に、比較試料1に関する画像においては星状の構造が見られる。一方で、カリウムを含ませると(試料2)より小さな針状構造がもたらされ、マグネシウムを含ませると(試料3)星状構造と針状構造の組み合わせがもたらされる。
【0082】
[0087]その後、パッシベーション層を含むセラミック体を650℃において焼成し、図4に示すように表面形態を分析した。示されるように、結晶の構造及び形態は焼成によって変化する。特に、結晶構造は崩壊し、ガラス状に見える表面を形成し、それによって、層をより安定かつ非導電性(即ち電気絶縁性)にすると思われる。
【0083】
[0088]試料3については、本明細書に記載のように寿命試験及び温度湿度バイアス試験を行った。特に、試験を32ボルトの作動電圧において500時間及び1000時間行った後に、漏れ電流とブレークダウン電圧を求めた。次に、漏れ電流をブレークダウン電圧に対してプロットした。結果を図5(500時間)及び図6(1000時間)に示し、これは両方の試験の終了時に漏れ電流及び/又はブレークダウン電圧の最小の変化を示す。示されるように、ブレークダウン電圧の変化率は0.5%以下であった。
【0084】
[0089]本発明のこれら及び他の修正及び変更は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく当業者によって実施することができる。更に、種々の実施形態の複数の態様は、全体的に又は部分的に交換することができることを理解すべきである。更に、当業者であれば、前述の記載が単に例示の目的であり、添付の特許請求の範囲において更に記載される発明を限定することは意図しないことを認識するであろう。
以下に、出願時の特許請求の範囲の記載を示す。
[請求項1]
複数の交互に配された誘電体層及び電極層を含むセラミック体;
第1の端面上の第1の外部端子、及び前記第1の端面と反対側の第2の端面上の第2の外部端子、ここで前記第1の端面と前記第2の端面との間に少なくとも2つの側面が延在している;
前記第1の外部端子と前記第2の外部端子との間の前記セラミック体の少なくとも1つの側面上のパッシベーション層;
を含み、前記パッシベーション層は、ホスフェート、並びにアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はこれらの混合物を含む金属添加剤を含み、前記パッシベーション層は0.1ミクロン~30ミクロンの平均厚さを有するバリスタ。
[請求項2]
前記金属添加剤がアルカリ金属を含む、請求項1に記載のバリスタ。
[請求項3]
前記アルカリ金属がカリウムを含む、請求項1に記載のバリスタ。
[請求項4]
前記金属添加剤がアルカリ土類金属を含む、請求項1に記載のバリスタ。
[請求項5]
前記アルカリ土類金属がマグネシウムを含む、請求項1に記載のバリスタ。
[請求項6]
前記アルカリ土類金属がカルシウムを含む、請求項1に記載のバリスタ。
[請求項7]
前記ホスフェートのリンのモル数と前記金属添加剤のモル数との元素比が、エネルギー分散型X線分光法によって求めて0.01~100であってよい、請求項1に記載のバリスタ。
[請求項8]
前記誘電体層が、酸化亜鉛を含む誘電体材料を含む、請求項1に記載のバリスタ。
[請求項9]
前記ホスフェートがリン酸亜鉛を含む、請求項8に記載のバリスタ。
[請求項10]
前記第1の外部端子及び前記第2の外部端子の上に金属メッキ層を更に含む、請求項1に記載のバリスタ。
[請求項11]
前記金属メッキ層がニッケルを含む、請求項10に記載のバリスタ。
[請求項12]
前記金属メッキ層がスズを含む、請求項10に記載のバリスタ。
[請求項13]
前記バリスタが4ボルト以上のブレークダウン電圧を有する、請求項1に記載のバリスタ。
[請求項14]
前記バリスタが10ボルト以上のブレークダウン電圧を有する、請求項1に記載のバリスタ。
[請求項15]
前記バリスタが20ボルト~80ボルトのブレークダウン電圧を有する、請求項1に記載のバリスタ。
[請求項16]
前記バリスタが、32ボルトの動作電圧及び125℃の温度において500時間行った寿命試験にかけた後に、初期ブレークダウン電圧の少なくとも90%のブレークダウン電圧を有する、請求項1に記載のバリスタ。
[請求項17]
前記バリスタが、32ボルトの動作電圧及び125℃の温度において1000時間行った寿命試験にかけた後に、初期ブレークダウン電圧の少なくとも90%のブレークダウン電圧を有する、請求項16に記載のバリスタ。
[請求項18]
前記バリスタが、85℃の温度、85%の湿度、及び32ボルトの動作電圧において500時間行った温度湿度バイアス試験にかけた後に、初期ブレークダウン電圧の少なくとも90%のブレークダウン電圧を有する、請求項1に記載のバリスタ。
[請求項19]
前記バリスタが、85℃の温度、85%の湿度、及び32ボルトの動作電圧において1000時間行った温度湿度バイアス試験にかけた後に、初期ブレークダウン電圧の少なくとも90%のブレークダウン電圧を有する、請求項18に記載のバリスタ。
[請求項20]
請求項1に記載のバリスタを製造する方法であって、
セラミック体、第1の外部端子、及び第2の外部端子を含むコンポーネントに、リン酸、並びにアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はこれらの混合物を含む金属添加剤を含む溶液を施すこと;
を含む上記方法。
[請求項21]
前記溶液が、前記金属添加剤を含む無機化合物を含む、請求項20に記載の方法。
[請求項22]
前記金属添加剤がアルカリ金属を含む、請求項21に記載の方法。
[請求項23]
前記アルカリ金属がカリウムを含む、請求項22に記載の方法。
[請求項24]
前記金属添加剤がアルカリ土類金属を含む、請求項21に記載の方法。
[請求項25]
前記アルカリ土類金属がマグネシウムを含む、請求項24に記載の方法。
[請求項26]
前記アルカリ土類金属がカルシウムを含む、請求項24に記載の方法。
[請求項27]
前記化合物が無機塩を含む、請求項21に記載の方法。
[請求項28]
前記無機塩が炭酸塩を含む、請求項27に記載の方法。
[請求項29]
前記無機塩が、硫酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、又はそれらの混合物を含む、請求項27に記載の方法。
[請求項30]
前記化合物が塩基を含む、請求項21に記載の方法。
[請求項31]
前記塩基が水酸化物を含む、請求項30に記載の方法。
[請求項32]
前記溶液がpH調整剤を更に含む、請求項20に記載の方法。
[請求項33]
前記pH調整剤が塩基pH調整剤を含む、請求項32に記載の方法。
[請求項34]
前記リン酸が0.01重量%~10重量%の量で前記溶液中に存在する、請求項20に記載の方法。
[請求項35]
前記化合物が0.01重量%~10重量%の量で前記溶液中に存在する、請求項21に記載の方法。
[請求項36]
前記リン酸のリンのモル数と前記金属添加剤のモル数との元素比が0.01~100であってよい、請求項20に記載の方法。
[請求項37]
前記セラミック体の誘電体層の誘電体材料が酸化亜鉛を含み、前記溶液を施すことによってリン酸亜鉛を生成する反応がもたらされる、請求項20に記載の方法。
[請求項38]
500℃~900℃の温度において焼結することを更に含む、請求項20に記載の方法。
[請求項39]
前記第1の外部端子及び前記第2の外部端子の上に第1の金属メッキ層を形成することを更に含む、請求項20記載の方法。
[請求項40]
前記第1の金属メッキ層上に第2の金属メッキ層を形成することを更に含む、請求項39に記載の方法。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5
図6