(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】濾過装置
(51)【国際特許分類】
B01D 33/00 20060101AFI20240207BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
B01D33/00 Z
G01N1/10 A
(21)【出願番号】P 2021512450
(86)(22)【出願日】2019-08-29
(86)【国際出願番号】 MY2019050049
(87)【国際公開番号】W WO2020050708
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】PI2018703147
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】MY
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521084792
【氏名又は名称】チン・キンムン
【氏名又は名称原語表記】CHIN, Kin Mun
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【氏名又は名称】谷 征史
(72)【発明者】
【氏名】チン・キンムン
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/208752(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0153258(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0093551(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0356501(US,A1)
【文献】特許第3815976(JP,B2)
【文献】特表2013-517128(JP,A)
【文献】特表2014-507258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/00-35/05;35/10-37/04
G01N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を濾過するための装置であって、
少なくとも1つの固体物質(10a)を含む液体(10)を保持する容器(110)と、
前記容器(110)内で軸方向にスライド移動可能な濾過ユニット(120)と、
前記液体(10)中の前記固体物質(10a)に対して非透過性を有する濾材(130)と、を備え
、ただし、前記濾材(130)は前記濾過ユニット(120)の側壁に対して斜めに設けられておらず、
前記容器(110)は、前記容器(110)の側壁に第1の締結部(110a)を有し、
前記濾過ユニット(120)は、前記容器(110)の内側面(110b)の少なくとも一部と気密シールを形成するものであり、
前記濾過ユニット(120)は、前記濾過ユニット(120)の側壁に、前記第1の締結部(110a)に嵌まって係合可能な第2の締結部(120a)を有し
、
前記容器(110)の内側面(110b)の少なくとも一部は、前記濾過ユニット(120)が前記容器(110)内をスライドするときに、前記濾過ユニット(120)の外側面(120b)の少なくとも一部が前記容器(110)の前記内側面(110b)上を摩擦によって軸方向にスライドして前記容器(110)の前記内側面(110b)と共に気密シールを形成するように構成されており、
前記第1の締結部(110a)と前記第2の締結部(120a)とは、
ねじ式ファスナーとして構成されており、
前記締結部(110a、120a)のねじ込み動作によって、前記濾過ユニット(120)を前記容器(110)内にさらに押し込み、前記液体(10)の濾過に必要な圧力が与えられて前記液体(10)が前記濾材(130)を通るように促し、かつ、前記固体物質(10a)を前記容器(110)の内側底面に押すように構成されて
おり、
前記濾過ユニット(120)は、上部(120c)と、前記上部(120c)の下端部に軸方向にスライド可能に取り付けられた底部(120d)と、を有しており、
前記底部(120d)の側壁には、前記濾材(130)が埋め込まれている、装置。
【請求項2】
前記容器(110)と前記濾過ユニット(120)とが互いに締結されると、前記液体(10)が前記濾材(130)を通過して前記濾過ユニット(120)に入るように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記容器(110)の下部(110d)の内径は、前記濾過ユニット(120)の下端部の外径と少なくとも等しく、
前記濾過ユニット(120)が前記容器(110)の下部(110d)内へ促されるときに、前記容器(110)の前記下部(110d)の前記内側面(110b)において前記濾過ユニット(120)の下端部が摩擦によって軸方向にスライドして、前記容器(110)の前記内側面(110b)と気密シールを形成する、請求項
1に記載の装置。
【請求項4】
前記容器(110)と前記濾過ユニット(120)とが互いに締結されると、前記固体物質(10a)は前記濾材(130)の底面(130a)と前記容器(110)の内側底面(110c)との間に挟まれる、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記濾材(130)は単層濾材である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記濾材(130)は多層フィルターパッケージである、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記濾過ユニット(120)の前記底部(120d)は、前記濾過ユニット(120)の前記上部(120c)よりも狭い、請求項
1に記載の装置。
【請求項8】
前記容器(110)の下部(110d)の内径は、前記濾過ユニット(120)の上部(120c)の下端部の外径と少なくとも等しく、
前記容器(110)の下部(110d)の内側面(110b)において前記濾過ユニット(120)の上部(120c)の下端部が摩擦によって軸方向にスライドして、前記容器(110)の前記内側面(110b)と気密シールを形成する、請求項
1に記載の装置。
【請求項9】
前記内側面(110b)の少なくとも一部が、前記液体(10)とは反応しない材料で覆われている、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記濾過ユニット(120)が前記容器(110)内にスライドする動作によって、前記濾材(130)が前記容器(110)内に促される、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は液体の濾過に関し、特に、液体を濾過して濾液を分離して保持するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の医療の世界では、血液や尿などの生理的な液体を分析することがますます重要になっている。この目的のためには、液体から1つまたは複数の固体物質を分離または濾過する必要がある。
【0003】
図7aから
図7bは、液体を濾過するための異なる2つの従来の配置を示す。
図7aでは典型的な濾過方法を示し、濾材(40)とプランジャー(50)とを有する上側容器(20)に液体が保持されている。プランジャー(50)は液体に圧力をかける。濾材(40)は液体(10)に対してのみ透過性があるため、液体(10)が濾材(40)を通過して下側容器(30)に回収される間、液体(10)に含まれる固体物質(10a)は上側容器(20)に保持される。しかしながら、固体物質(10a)が濾材(40)の上にブロッキング層を形成する可能性が高くなる。したがって、プランジャー(50)が外圧をかけて、固体物質(10)および濾材(40)に液体(10)を強制的に通過させる必要がある。
【0004】
図7bでは逆濾過法を示し、下側容器(30)は液体を保持し、上側容器(20)は、その開口した底部の出口にプランジャー(50)と濾材(40)とが設けられたシリンジとして構成される。濾過の間、上記の出口は下側容器(30)内の液体に浸されている。プランジャー(50)を持ち上げると、液体(10)は濾材を通過して上側容器(20)に回収され、固体物質(10a)は下側容器(30)に留まる。この配置は詰まりを最小限にするには有効であるが、回収された液体(10)を上側容器(20)から別の容器に移すことは困難であり、そのため、特別な配置が必要である。さらに、液体(10)が下側容器(30)に留まる可能性が高くなる。
【0005】
液体中の成分を分離するために多くの近代システムが開発されている。例えば、遠心分離は、成分の大きさ、形、密度、媒体の粘度、およびロータの速度に応じた遠心力を与えることで、溶液から構成要素を分離する技術である。この方法において、2つの混和性の物質を分離することができ、高分子の流体力学的特性を分析することができる。
【0006】
米国特許出願第4,154,690号は、液体の成分を遠心分離するのに用いられる装置を開示している。この装置は、液体を含む円筒形の容器内でスライド可能なセパレータ要素を備えている。容器を遠心分離にかけると、セパレータ要素と接触している容器の一部がたわみ、液体がセパレータ要素とたわんだ部分の間の空間を通り、セパレータ要素が容器の底へ向かってスライドすることが可能になる。
【0007】
国際特許出願PCT/DK2010/050056は、遠心分離技術に比べて収率の高い回収媒体からサンプルを抽出するための装置を開示している。遠心分離の後、サンプルを回収媒体から分離するための2つ以上の濾過工程を溶液に対して行う。それにもかかわらず、現在一般的に入手可能なものの代わりとなる改良された装置を提供することに依然として関心が寄せられている。
【0008】
したがって、簡単で効率が良く費用対効果の高い方法で液体を濾過し、濾液を保持するための装置が必要とされている。また、濾材の目詰まりを最小限に抑えつつ、濾過のための圧力を与える電動アクチュエータを必要としない液体の濾過装置が求められている。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、簡単で効率が良く費用対効果の高い方法で液体を濾過し、濾液を保持するための装置および方法を提供する。この装置は、濾材の目詰まりを最小限に抑えつつ、濾過のための圧力を与える電動アクチュエータを用いずに逆濾過を行う。
この装置は、容器と、濾過ユニットと、濾材とを備えている。容器は、少なくとも1つの固体物質を含む液体を保持する。濾過ユニットは、容器内で軸方向にスライド可能である。濾材は、濾過ユニットの底部に設けられ、液体中の固体物質に対して透過性を有していない。
【0010】
本実施形態によると、容器を濾過ユニット内へスライドすると、液体は濾材を通過して濾過ユニットに入る。容器は第1の締結部を備えており、濾過ユニットは第1の締結部と適合する第2の締結部を備えている。容器および濾過ユニットが互いに締結されると、液体は濾材を通過して濾過ユニット内で保持される。
【0011】
ある実施形態によると、複数の締結部は共に、ねじ式ファスナーやスナップフィットファスナーなどの機械的ファスナーを構成する。
【0012】
ある実施形態によると、濾材は、濾過ユニットの底に取り外し可能に取り付けられている。
【0013】
ある実施形態によると、濾過ユニットが容器内へスライドすると、フィルターユニットの外側面の少なくとも一部が容器の内側面上を摩擦によって軸方向にスライドして容器の内側面と共に気密シールを形成するように、容器の内側面の少なくとも一部が構成されている。さらに、容器と濾過ユニットとが互いに締結されると、液体中の固体物質が濾材の底面と容器の内側底面との間に挟まれる。
【0014】
別の実施形態によると、濾過ユニットは上部と底部とを備え、濾材は底部の側壁に埋め込まれている。
【0015】
さらに別の実施形態によると、濾過ユニットの底部は、濾過ユニットの上部に軸方向にスライド可能に取り付けられている。
【0016】
本発明の主題の様々な目的、特徴、態様、および利点は、添付の図面と共に好ましい実施形態の以下の詳細な説明からより明らかになり、図面において、同様の符号は同様の構成要素を表す。
【0017】
図面において、同様の構成要素および/または特徴は、同じ参照番号を有してもよい。さらに、同じ種類の様々な構成要素は、類似の構成要素を区別する第2の数字を参照番号に続けることで区別することができる。なお、本明細書において第1の参照符号のみを用いる場合には、第2の参照符号にかかわらず、第1の参照符号が同一である同様の部品について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態による装置の分解斜視図を示す。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態による装置の分解縦断面図を示す。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態による使用中における装置の分解縦断面図を示す。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施形態による使用中における装置の分解縦断面図を示す。
【
図5】
図5は、本発明の第1の実施形態による使用中における装置の分解縦断面図を示す。
【
図6】
図6は、本発明の第1の実施形態による装置の分解斜視図を示す。
【
図7】
図7aおよび
図7bは、液体を濾過するための異なる2つの従来の配置の縦断面図を示す。
【
図8】
図8は、本発明の第2の実施形態による使用中における装置の分解縦断面図を示す。
【
図9】
図9は、本発明の第3の実施形態による、延伸位置における濾過ユニットの底部を含む装置の縦断面図を示す。
【
図10】
図10は、本発明の第3の実施形態による、倒壊位置における濾過ユニットの底部を含む装置の縦断面図を示す。
【
図11】
図11は、本発明の第4の実施形態による、上側位置のロッドを含む装置の縦断面図を示す。
【
図12】
図12は、本発明の第4の実施形態による、下側位置のロッドを含む装置の縦断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示によれば、液体を濾過するための装置が提供され、以下、添付の図面に示す実施形態を参照して説明する。実施形態は、本開示の範囲および境界を限定するものではない。本開示は、単に実施形態およびその提案された応用例に関する。
【0020】
本明細書における実施形態、およびその様々な特徴や詳細な利点は、以下の説明において非限定的な実施形態を参照して説明される。周知の構成要素および工程の説明は、本明細書の実施形態を不必要に不明瞭にしないように省略されている。本明細書で用いられる例は、本明細書の実施形態が実施され得る方法の理解を容易にし、当業者が本明細書の実施形態を実施することをさらに可能にすることのみを意図している。したがって、以下の説明は、本明細書の実施形態の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0021】
具体的な実施形態の以下の説明は、本明細書の実施形態の一般的な性質を十分に明らかにするので、他者が、現在の知識を適用することによって、一般的な概念から逸脱することなく様々な用途のためにそのような具体的な実施形態を容易に修正または適用したり、またはその両方を実行したりすることができ、したがって、そのような適応および修正は、開示された実施形態の意味およびなど価物の範囲内で理解されるべきであり、そのように意図されている。本明細書で用いられている言い回しや用語は説明のためのものであり、限定するものではないことが理解される。
【0022】
本明細書で用いられる様々な用語を以下に定義する。請求項で用いられる用語の範囲が以下で定義されていない場合は、出願時に印刷されている刊行物および発行された特許に反映されているように、関連する分野の当業者与える最も広い定義を与えるべきである。
定義
濾過:ある成分を、別の成分から、または複数の成分の混合物から分離するプロセス。
逆濾過:濾液を重力の方向とは別の方向に強制的に移動させるプロセス。
固体物質:固体または粉末状の天然または合成の任意の物質。
【0023】
本開示は装置に関する。当業者であれば、本開示の様々な実施形態が可能にすることを理解するであろう。本明細書の実施形態では、濾材の目詰まりを最小限に抑えつつ、濾過のための圧力を与えるポンプなどの電動アクチュエータを用いずに、簡単で効率が良く費用対効果の高い方法で液体を濾過し濾液を保持することを可能にする。
【0024】
本発明は逆濾過を行い、濾液を重力の方向とは別の方向に濾材を通過させ、残渣を逆方向に押し出すことで、濾液の品質を損なうことなく濾材の目詰まりを最小限に抑えることができる。さらに、液体を濾過するのに必要な圧力を締め付け動作から発生させることで、濾過と、濾液を濾過ユニットに回収することとを同時に行うことができる一方、容器と濾過ユニットとの間の残渣と濾液とが再び混合することを防ぐ。
【0025】
添付の図面を参照すると、
図1は、本発明の第1の実施形態による装置の分解斜視図を示す。装置(100)は、容器(110)と、容器(110)内で軸方向にスライド可能な濾過ユニット(120)とを備えている。これらの容器(110)と濾過ユニット(120)とは、プラスチック、金属、セラミック、セルロース繊維などの固体材料から形成されている。
【0026】
図2に示すように、容器(110)は、少なくとも1つの固体物質(10a、
図3参照)を含む液体(10)を保持している。液体(10)は、血液、尿、乳、涙、粘液、唾液、精液、汗、膿など、任意の体液であってもよい。別の実施形態では、液体は、水、飲料、油、化学組成物、食品、薬剤などであってもよい。飲料は、コーヒー、お茶、ジュース、スープ、アルコール飲料、炭酸飲料などを含むが、これらに限定されない。
濾過ユニット(120)の底部に濾材(130)が設けられ、濾材(130)は液体(10)中の固体物質(10a、
図3参照)に対して非透過性を有する。濾材は、ふるいや多孔質膜などの単層濾材であってもよく、米国特許第8,679,218B2で開示されるフィルター媒体などの多層多孔質フィルターパッケージや、他の市販のフィルター媒体であってもよい。多層フィルターパッケージにおいて、各層は、少なくとも1つの孔または穴を有し、各層の孔または穴が直下の層の孔または穴よりも小さくなるように、それぞれの層が配置されている。濾材(130)。
【0027】
例示的な実施形態において、濾材(130)は、濾過ユニット(120)の底壁として形成されている。しかし、別の実施形態では、濾材(130)は、濾過ユニット(120)の底壁に取り外し可能に取り付けられていてもよい。さらに、濾材(130)は、濾過ユニット(120)の底壁の上部または底部に取り外し可能に取り付けられていてもよい。
【0028】
容器(110)は第1の締結部(110a)を有し、濾過ユニット(120)は、第1の締結部(110a)に嵌まって係合可能な第2の締結部(120a)を有する。例示的な実施形態において、締結部(110a、120a)はねじ山であり、容器(110)および濾過ユニット(120)はねじ込み動作によって互いに締結されることができる。他の実施形態では、締結部(110a、120a)は、スナップフィットファスナー、プレスフィットファスナー、フックアンドループファスナーなどの他の機械的ファスナーとして形成することもできる。
【0029】
第1の実施形態において、第1の締結部(110a)は容器(110)の内側面(110b)に形成され、第2の締結部(120a)は、濾過ユニット(120)の外側面(120b)に形成される。しかし、
図4に示すように、濾過ユニット(120)を容器(110)内にスライドさせると締結部(110a、120a)が互いに一列になるように、濾過ユニット(120)のリップ部分を反転させて、締結部(110a、120a)の両方が容器(110)と濾過ユニット(120)との外側面に形成されてもよい。
【0030】
さらに、
図5および
図6に示すように、第1の締結部(110a)および第2の締結部(120a)は、容器(110)のリップ部分の周囲の突起と、濾過ユニット(120)のリップ部分の周囲の2つ以上の反転された突起としてそれぞれ形成されてもよい。濾過ユニット(120)を容器(110)内にスライドさせると第1の締結部(110a)が第2の締結部(120a)にロックされるように、締結部(110a、120a)は共にスナップフィットファスナーを形成する.
【0031】
再び
図3を参照して、容器(110)と濾過ユニット(120)とを互いに締結すると、装置(100)は液体(10)と固体物質(10a)とを分離する。容器(110)と濾過ユニット(120)とが互いに締結されているので、液体(10)は濾材(130)を通過して濾過ユニット(120)に入る。さらに、容器(110)と濾過ユニット(120)とを互いに締結すると、濾材(130)の底面(130a、
図2参照)と容器(110)の底面(110c、
図2参照)との間に固体物質(10a)が挟まれる。第1の実施形態において、固体物質(10a)は粉末である。
【0032】
濾過ユニット(120)を容器(110)内へスライドさせると、濾過ユニット(120)が自動的に容器(110)に対して整列するように、容器(110)の内側面(110b)および濾過ユニット(120)の外側面(120b)が構成されている。容器(110)および濾過ユニット(120)の断面は、濾過ユニット(120)を容器(110)内に実質的にスライドさせる際に、容器(110)とフィルタユニット(120)との間の適切な位置合わせを可能にする、円形、三角形、多角形、または、任意の他の形状とすることができる。
【0033】
さらに、容器(110)の内側面(110b)と濾過ユニット(120)の外側面(120b)との構成によって、容器(110)の内側面(110b)で濾過ユニット(120)の外側面(120b)の一部が摩擦によって軸方向にスライドし、容器(110)の内側面(110b)と濾過ユニット(120)の外側面(120b)との間に気密シールを形成することができる。例えば、容器(110)の内側面(110b)および/または濾過ユニット(120)の外側面(120b)をOリングで形成して、容器(110)の内側面(110b)および/または濾過ユニット(120)の外側面(120b)の間にシール接触を形成する。
【0034】
さらに、濾過ユニット(120)と容器(110)との間には負圧が発生し、濾過ユニット(120)を容器(110)から外すと、濾材(130)の下側に付着した固体物質(10a)が強制的に容器(110)の中に落ちる。したがって、濾材(130)を洗浄する工程が簡素化される。
【0035】
第1の実施形態では、容器(110)の内側面(110b)の上部(110e、
図2参照)が容器(110)の内側面(110b)の下部(110d、
図2参照)よりも幅広になるように、容器(110)の内側面(110b)の輪郭が形成されている。容器(110)の下部(110d、
図2参照)の内径は、濾過ユニット(110)の底部の外径と少なくとも等しく、濾過ユニット(120)の底部が容器(110)の下部(110d、
図2参照)の内側面(110b)内で摩擦によって径方向にスライドし、容器(110)の内側面(110b)と気密シールを形成する。
【0036】
この構成によって、濾過ユニット(120)の下端部は容器(110)の上部(110e、
図2参照)において実質的に自由に動くことができ、容器(110)の内側面(110b)の下部(110d、
図2参照)において摩擦によって軸方向にスライドを開始する。上述の実施形態では、容器(110)の側壁と濾過ユニット(120)との2つの端部の間の距離をそれぞれ内径および外径としているが、非円筒形または非円錐形の容器および濾過ユニットを用いた場合の幅も意味することを理解すべきである。
【0037】
なお、図は理解のためのものであり、実際の装置の縮尺に合わせて示されているのではないことを理解されたい。好ましい実施形態では、容器(110)の上部(110e、
図2参照)は円錐形であり、容器(110)の下部(110d、
図2参照)は円筒形であり、
i. 円錐部の最大内径が43.263ミリメートル(mm)であり、
ii.円錐部の最小内径が33mmであり、
iii.円筒部の内径が33mmであり、
iv.円錐部の長さが57.981mmであり、
v. 円筒部の長さが17.412mmである。
【0038】
さらに、濾過ユニット(120)は、追加の冠部を除いて容器(110)と同様の形に形成され、
a. 円錐部の最大外径は35.127mmであって、
b. 円錐部の最小外径は31.124mmであって、
c. 円筒部の外径は31.124mmであって、
d. 冠部の外径は48.5mmであって、
e. 円錐部の長さは53.91mmであって、
f. 円筒部の長さは16.33mmであって、
g. 冠部の長さは19mmである。
【0039】
さらに、容器(110)と濾過ユニット(120)との間のスライド運動が繰り返されることによる浸食を避けるために、容器(110)の下部(110d、
図2参照)の内側面(110b)および/または外側面(120b)は、液体(10)と反応しない材料で覆われてもよい。
【0040】
装置(100)が実行する完全な濾過工程は以下の通りである。濾過する液体(10)は容器(110)に回収され、液体(10)は固体物質(10a)を含んでいる。液体(10)は濾材(130)を透過し、液体(10)中の固体物質(10a)は濾材(130)を透過しない。
【0041】
濾過ユニット(120)の下端部を容器(110)の上端部に挿入する。濾過ユニット(120)の下端部の外径は、容器(110)の下部(110d、
図2参照)の内径と少なくとも等しく、濾過ユニット(120)の下端部が容器(110)の下部(110d、
図2参照)の上端部に入ると、濾過ユニット(120)の外側面(120b)と容器(110)の下部(110d)の内側面(110b)との間に気密シールが形成される。
【0042】
濾過ユニット(120)を押すことによって、またはねじ込み動作などの締め付け動作によって、容器(110)で濾過ユニット(120)をさらに下降させることにより、液体(10)が濾材(130)を通過し、容器(110)の内側底面(110c、
図2参照)に向かって固体物質(10a)が押し下げられる。この押す動作または締め付け動作は、これ以上締結できなくなるまで継続し、液体(10)を濾過ユニット(120)内に保持すると同時に、濾材(130)の底面(130a)と容器(110)の内側底面(110c、
図2参照)との間に固体物質(10a)を挟む。
【0043】
液体(10)中の構成要素(10a、10b)を濾過または分離するのに必要な圧力が締め付け動作によって与えられるので、本発明によると、電動アクチュエータが不要となり、それによって装置(10)の複雑さと製造および運用コストが低減される。本発明は逆濾過を行い、固体(10a)が容器(110a)の底部に押し出され、液体(10)は
図3に示す垂直方向上向きに強制的に濾材(130)を通過させられる。したがって、濾材の目詰まりを防ぎつつ、濾液を強制的に通過させるアクチュエータが不要になる。さらに、それぞれ容器(110)と濾過ユニット(120)との中にある液体(10)と固体物質(10a)を回収するために容器(110)と濾過ユニット(120)が互いに締結され、それによって液体(10)と固体物質(10a)とが再び混合することを防ぎつつ、プランジャーなどのアクチュエータを用いることなく構成要素(10a、10b)の分離と回収を同時に行うことができる。
【0044】
上述の実施形態では、濾材(130)は濾過ユニット(120)の底部を形成するように示されているが、
図8に示すように、濾材を濾過ユニット(120)の側壁に設けることも可能である。本実施形態において、濾過ユニット(120)の底部が容器の内側底面(110c)と接触することにより容器(110)に保持されている液体(10)が残る可能性を最小限にするように、濾材(130)が濾過ユニット(120)の底部の近くの濾過ユニット(120)の側壁に埋め込まれている。
【0045】
図9は、本発明の第3の実施形態による装置の分解縦断面図を示す。本実施形態において、濾過ユニット(120)は、上部(120c)と、上部(120c)の下端部に軸方向にスライド可能に取り付けられた底部(120d)とを有する。底部(120d)は、延伸位置と倒壊位置(
図10参照)との間で移動可能である。この構造により、液体(10)中に存在する固体物質(10a)の量が不明な場合でも、液体(10)と固体物質(10a)とを完全に分離することが可能になる。
【0046】
本実施形態において、重力の方向と垂直な方向に液体(10)が底部に流れ込むように、底部(120d)の側壁に濾材(130)が埋め込まれている。底部(120d)の底面が容器(110)の内側底面(110c、
図2参照)と接触するので、液体(10)が容器(110)と濾過ユニット(120)との間に入ることが無くなる。さらに、底壁と底部(120d)の側壁を含む底部(120d)全体に濾材(130)を埋め込んで、底部(120d)の側部からだけでなく底部から液体(10)が流れるようにしてもよい。このようにして、目詰まりおよび/または構成要素(10a、10b)の再混合を防ぎつつ、構成要素(10a、10b)を完全に分離することが可能になる。
【0047】
図11は、本発明の第4の実施形態による、上記装置の縦断面図を示す。本実施形態において、濾過ユニット(120)は、取り付け部(210)と、ガイド部(220)と、ハンドル(231)付きのロッド(230)とを備える。取り付け部(210)は、容器(110)に取り外し可能に取り付けることのできる円環状に形成されている。ガイド部(220)は、ガイド部(220)が取り付け部(210)の中心点を形成するように、1または複数のコネクタ(211)を介して取り付け部(210)に固定されている。ガイド部(220)は、穴(図示せず)と、穴を貫通するロッド(230)とを有する。
【0048】
ロッド(230)には、ガイド部(220)の穴に形成されたねじ切りと噛み合うねじ切りが形成され、ロッド(230)は、上位置と下位置との間で移動可能である。ロッド(230)の上端部はハンドル(231)に固定され、ロッド(230)の下端部は濾材(130)に固定され、
図12に示すようにロッド(230)が下位置へ移動されると、濾材(130)が容器(110)内へ促されるようになっている。
【0049】
濾材(130)の縁部は、濾材(130)が容器(110)内へ促されると、濾材(130)が摩擦によって軸方向に容器(110)の内側面(110b、
図2参照)上をスライドして容器(110)の内側面(110b、
図2参照)との間で気密シールを形成するように構成されている。
【0050】
例示的な実施形態によると、液体を濾過する方法を
図2および
図3を用いて説明する。この方法は、固体物質(10a)を有する液体(10)を容器(110)に回収する工程と、液体(10)中の固体物質(10a)に対して非透過性を有する濾材(130)を用いて液体(10)を濾過する工程とを備えている。
【0051】
濾過のために、濾材(130)は液体(10)の上面よりも上に位置し、固体物質(10a)が下側へ移動して液体(10)が濾材(130)を通過するように上面から容器(110)の内側底面(110c)に向かって移動する。
【0052】
濾材(130)が移動している間、濾材(130)の周辺縁部と容器(110)の内側面(110b)との間にシール接触が形成される。さらに、固体物質(10a)によってそれ以上の移動が停止されてロックされるまで、濾材(130)を容器(110)の内側底面(110c)に向かって移動させる。
【0053】
固体物質(10a)が容器(110)の底部まで押されると、液体(10)は垂直方向上向きに、強制的に濾材(130)を通過させられる。したがって、濾材(130)の目詰まりを防ぎ、液体(10)と固体物質(10a)とを分離して同時に回収しながら、液体(10)が固体物質(10a)と再び混合することを防ぐ。
【0054】
本明細書で用いられる用語は、特定の例示的な実施形態を説明するためだけのものであり、限定することを意図していない。本明細書で使用される単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に別の意味を示す場合を除き、複数形も含むことを意図している。
【0055】
「備える」、「含む」、「有する」といった用語は包括的であり、したがって、記載された特徴、整数、ステップ、操作、要素、または構成要素の存在を特定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成要素、またはそれらのグループの存在または追加を排除しない。
【0056】
「少なくとも」または「少なくとも1つ」という表現の使用は、1つ以上の要素の使用を示唆しており、その使用は、1つまたは複数の所望の目的または結果を達成するために、実施形態の1つであってもよい。
【0057】
以上の記載では、本発明の様々な実施形態を説明したが、本発明の他のおよびさらなる実施形態は、その基本的な範囲から逸脱することなく考案されてもよい。本発明の範囲は、下記の特許請求の範囲で決定される。本発明は、説明された実施形態、変形例、または実施例に限定されるものではなく、当技術分野で通常の技術を有する者が利用可能な情報および知識と組み合わせた場合に、本発明を用いることができるように含まれている。