(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】射影測定のための単一磁束量子発生源
(51)【国際特許分類】
H10N 60/10 20230101AFI20240207BHJP
G06N 10/00 20220101ALI20240207BHJP
【FI】
H10N60/10 K
G06N10/00 ZAA
(21)【出願番号】P 2021513362
(86)(22)【出願日】2019-05-06
(86)【国際出願番号】 US2019030914
(87)【国際公開番号】W WO2019217313
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-04-27
(32)【優先日】2018-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507209207
【氏名又は名称】ディー-ウェイブ システムズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ホスキンソン,エミール エム.
(72)【発明者】
【氏名】マシュー,レウブル
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-524043(JP,A)
【文献】特表2016-515233(JP,A)
【文献】特表2012-502563(JP,A)
【文献】米国特許第09015215(US,B2)
【文献】国際公開第2017/192733(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 60/10
G06N 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子プロセッサ内
に配置されている複数の量子ビットを射影測定するためのシステムであって、
前記量子プロセッサ内に配置されている前記複数の量子ビットであって、各量子ビットはボディループ及びジョセフソン接合(JJ)ループを有する、複数の量子ビットと、
複数の射影源デジタル-アナログ変換器(PSDAC)であって、各PSDACはボディループ及びJJループを有し、各PSDACの各ボディループは前記複数の量子ビットの個々の量子ビットの前記JJループに通信可能に結合される、複数の射影源デジタル-アナログ変換器(PSDAC)と、
前記複数のPSDACの各PSDACの前記JJループに通信可能に結合されるトリガラインであって、前記トリガラインは、
各PSDACを活性化して第1の磁束状態から第2の磁束状態に変更させる信号を前記複数のPSDACの各PSDACのそれぞれのJJループに送信するように動作可能であり、
第1の磁束状態から第2の磁束状態に変更する各PSDACの活性化は、射影測定を駆動するために前記複数の量子ビットのそれぞれの量子ビットに適用される個々のfast flux stepを生成する、トリガラインと、
複数の同期デバイスであって、各同期デバイスは、前記複数のPSDACの個々のPSDACの前記JJループに通信可能に結合され、
前記複数のPSDACの活性化時間を同期するために、前記個々のPSDACの前記JJループにバイアスを印加するように動作可能である、複数の同期デバイスと
を含む、システム。
【請求項2】
前記複数の同期デバイスは、複数のプログラム可能磁気メモリデジタル-アナログ変換器(PMM DAC)を含み、各PMM DACは個々のPSDACの前記JJループに通信可能に結合されるボディループを有し、前記PMM DACの前記ボディループは個々のPSDACの前記JJループにバイアスを印加するように動作可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記複数の同期デバイスは複数のアナログラインを含み、各アナログラインは個々のPSDACの前記JJループに通信可能に結合され、個々のPSDACの前記JJループにバイアスを印加するように動作可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記複数のPSDACの第1のPSDACの前記第1の磁束状態は、前記複数のPSDACの第2のPSDACの前記第1の磁束状態と異なる、請求項1乃至3のうち何れか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記複数のPSDACの第1のPSDACによって生成される第1のfast flux stepが、前記複数の量子ビットの第1の量子ビットのJJループに適用される、請求項1乃至3のうち何れか1項に記載のシステム。
【請求項6】
各同期デバイスが、前記複数のPSDACの前記第1のPSDACによって生成される前記第1のfast flux stepを前記複数のPSDACの第2のPSDACによって生成される第2のfast flux stepと同期させる、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記複数のPSDACの前記第1のPSDACによって生成される前記第1のfast flux stepを前記複数のPSDACの第2のPSDACによって生成される第2のfast flux stepと同期させることが、前記複数の量子ビットの前記第1の量子ビットの前記JJループ及び第2の量子ビットのJJループにそれぞれ適用される同期されたfast flux stepをもたらす、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
各同期デバイスが、前記複数のPSDACの前記第1のPSDACによって生成される前記第1のfast flux stepを前記複数のPSDACの各PSDACによって生成される複数のfast flux stepと同期させる、請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
前記複数のPSDACの前記第1のPSDACによって生成される前記第1のfast flux stepを前記複数のPSDACの各PSDACによって生成される複数のfast flux stepと同期させることが、前記複数の量子ビットの各量子ビットの個々のJJループにそれぞれ適用される同期されたfast flux stepをもたらす、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
複数の磁束バイアス発生源を更に含み、各磁束バイアス発生源は、個々のPSDACのボディループに通信可能に結合され、前記個々のPSDACの前記ボディループに磁束バイアスを印加するように動作可能である、請求項1乃至9のうち何れか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記複数の量子ビットの第1の量子ビットを前記複数の量子ビットの第2の量子ビットに通信可能に結合するカプラを更に含み、前記第1の量子ビットは前記複数のPSDACの第1のPSDACに通信可能に結合され、前記第2の量子ビットは前記複数のPSDACの第2のPSDACに通信可能に結合される、請求項1,2,3,10のうち何れか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記トリガラインは、前記複数のPSDACの前記第1のPSDACの前記JJループに通信可能に結合され、前記複数のPSDACの前記第2のPSDACの前記JJループに更に通信可能に結合される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記複数のPSDACの第1のPSDACの前記JJループは、前記複数の同期デバイスの第1の同期デバイスに通信可能に結合され、前記複数のPSDACの前記第2のPSDACの前記JJループは、前記複数の同期デバイスの第2の同期デバイスに通信可能に結合される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記複数のPSDACの第3のPSDAC及び第4のPSDACを更に含み、前記複数のPSDACの前記第3のPSDACの前記ボディループは前記複数の量子ビットの前記第1の量子ビットの前記ボディループに通信可能に結合され、前記複数のPSDACの前記第4のPSDACの前記ボディループは前記複数の量子ビットの前記第2の量子ビットの前記ボディループに通信可能に結合される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記複数のPSDACの前記第3のPSDACの前記JJループは、第2のトリガラインに通信可能に結合される、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
量子プロセッサ内
に配置されている複数の量子ビットを射影測定するためのシステムを動作させる方法であって、前記システムは、
前記量子プロセッサ内に配置されている前記複数の量子ビットであって、各量子ビットはボディループ及びジョセフソン接合(JJ)ループを有する、複数の量子ビットと、
複数の射影源デジタル-アナログ変換器(PSDAC)であって、各PSDACはボディループ及びJJループを有し、各PSDACの各ボディループは前記複数の量子ビットの個々の量子ビットの前記JJループに通信可能に結合される、複数の射影源デジタル-アナログ変換器(PSDAC)と、
前記複数のPSDACの各PSDACの前記JJループに通信可能に結合されるトリガラインであって、前記トリガラインは、各PSDACを活性化して第1の磁束状態から第2の磁束状態に変更するように動作可能であり、各PSDACを活性化して第1の磁束状態から第2の磁束状態に変更することは、
射影測定を駆動するために前記複数の量子ビットのそれぞれの量子ビットに適用される個々のfast flux stepを生成する、トリガラインと、
複数の同期デバイスであって、各同期デバイスは前記複数のPSDACの個々のPSDACの前記JJループに通信可能に結合され、
前記複数のPSDACの活性化時間を同期するために、前記個々のPSDACの前記JJループにバイアスを印加する、複数の同期デバイスと
を含み、前記方法は、
前記量子プロセッサによって実行される量子アニーリング進化を開始すること、
前記量子
アニーリング進化中の或る
特定の測定時点において、
前記複数のPSDACの第1のPSDACの第1のJJループに、前記トリガラインを通じて信号を送信し、前記第1のPSDACを活性化すること、
前記トリガラインを通じて送信された前記信号による前記第1のPSDACの活性化に基づいて、前記複数のPSDACの前記
第1のPSDACの磁束状態を第1の磁束状態から第2の磁束状態に変更して、
第1のfast flux stepを生成すること、
前記複数のPSDACの前記第1のPSDACにより生成された前記第1のfast flux stepを、前記複数の量子ビットのそれぞれの量子ビットのJJループに適用し、前記量子ビットのエネルギ障壁を上げること、及び
前記複数の量子ビットの前記量子ビットのスピン状態を測定すること
を含む、方法。
【請求項17】
前記複数のPSDACの前記第1のPSDACによって生成される前記第1のfast flux stepを、前記複数のPSDACの
他のPSDACによって生成される複数のfast flux stepと同期させることを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のPSDACによって生成される前記第1のfast flux stepを、前記複数のPSDACの
他のPSDACによって生成される複数のfast flux stepと同期させることが、前記複数の量子ビットの各量子ビットの個々のJJループにそれぞれ適用される同期されたfast flux stepをもたらす、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の量子ビットの各量子ビットの個々のJJループに同期されたfast flux stepを適用することが、前記複数の量子ビットの各量子ビットの個々のエネルギ障壁を上げる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記量子
アニーリング進化を完了し、前記複数の量子ビットの前記量子ビットの前記スピン状態を読み出すことを更に含む、請求項16乃至19のうち何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本開示は一般に、量子ビットのエネルギ障壁を上げるためにfast-flux stepを適用することによる量子ビットの射影測定のためのデバイス、システム、及び方法に関する。開示する技法は、量子プロセッサの射影読み出しのために量子プロセッサを構成する1組の量子ビットに適用することができる。
【背景技術】
【0002】
背景
量子計算
量子コンピュータは、データに対する演算を実行するために重ね合わせ、トンネリング、及びもつれ等の少なくとも1つの量子力学的現象を直接使用するシステムである。量子コンピュータの要素は量子ビットである。量子コンピュータは、量子物理学をシミュレートする計算問題等の特定の種類の計算問題を加速させることができる。
【0003】
量子ビット
量子ビットは、量子コンピュータのための基本情報単位として使用することができる。量子ビットは、「0」及び「1」でラベル付けすることもできる2つの個別の物理的状態を含む。物理的に、これらの2つの個別の状態は量子情報記憶デバイスの2つの異なる及び区別可能な物理的状態によって表される。例えばこれらの2つの個別の状態は、磁場の方向によって表すことができる。これらの状態を記憶する物理量が量子力学的に振る舞う場合、デバイスは追加で0及び1の重ね合わせに置くことができる。つまり量子ビットは同時に「0」及び「1」の両方の状態にあることができ、そのため両方の状態に対する計算を同時に実行することができる。
【0004】
量子計算の間、量子ビットの状態は概して基底状態の重ね合わせであり、そのため量子ビットは|0〉の基底状態を占める非ゼロの確率及び|1〉の基底状態を占める同時の非ゼロの確率を有する。量子ビットの量子性は、基底状態のコヒーレントな重ね合わせにある量子ビットの能力に概ね由来する。量子ビットがデコヒーレンス源から十分に隔離されている場合、量子ビットは基底状態のコヒーレントな重ね合わせとして存在するこの能力を保つ。
【0005】
量子ビットを用いた計算を完了するために、量子ビットの状態を測定する(即ち読み出す)。典型的には、量子ビットの測定を行うとき量子ビットの量子性が一時的に失われ、基底状態の重ね合わせが|0〉の基底状態又は|1〉の基底状態に崩壊し、従って従来のビットへのその類似性を取り戻す。崩壊後の量子ビットの実際の状態は、読み出し操作の直前のその量子ビットの|0〉の基底状態の確率又は|1〉の基底状態の確率(即ち量子状態の確率)によって決まる。
【0006】
デジタル-アナログ変換器(DAC)
量子プロセッサは、量子効果を用いて計算を行うための複数のプログラム可能デバイスを提供する。プログラム可能デバイスは、量子ビット、(量子ビットをプログラム可能に結合する)カプラ、及びそのコンポーネントを含む。プログラム可能デバイスは、その動作に影響を及ぼすために適用される信号によってプログラムされる(例えばバイアス信号を磁束量子ビットに適用して計算中にその磁束に影響を及ぼすことができる)。
【0007】
一部の量子プロセッサは、量子ビット等のプログラム可能デバイスに適用する前に、古典的コンピュータから受信されるデジタル信号をアナログ信号に変換することを必要とする。デジタル-アナログ変換器(DAC)がこの変換を行うことができる。DACは、計算前又は計算中に量子プロセッサによって受信される信号を、後でプログラム可能デバイスに適用するまで記憶することもできる。DACは多くの応用を有し、これらの目的(即ち変換及び/又は記憶)及び/又は他の目的のうちの1つ又は複数のために使用することができる。これらの及び他の目的のためにDACを応用する例は、例えば米国特許第7,876,248号及び米国特許第8,098,179号の中でより詳細に説明されている。
【0008】
超伝導量子プロセッサは磁束を記憶する超伝導DACを含み得る複数のDACをしばしば含み、それらのDACはストレージインダクタ(例えば超伝導磁気コイル)及び可変インダクタンスを概して含む。例えばDACは、2つのジョセフソン接合と直列にインダクタンスのループを含むことができる。DACの設計の例は、例えばJohnson et al., “A scalable control system for a superconducting adiabatic quantum optimization processor”, arXiv:0907.3757、及びBunyk et al., “Architectural considerations in the design of a superconducting quantum annealing processor”, arXiv:1401.5504の中でより詳細に記載されている。
【0009】
量子アニーリング
量子アニーリングは、システムの低エネルギ状態、典型的には好ましくはシステムの基底状態を見つけるために使用することができる計算方法である。古典的なシミュレーテッドアニーリングの概念と同様に、この方法は低エネルギ状態の方が安定しているので自然システムはエネルギ状態が低い方に向かう傾向があるという基本原理に依拠する。量子アニーリングは、古典的なアニーリングよりもエネルギ極小に正確に及び/又は素早く到達するために、非局在化の源として量子トンネリング等の量子効果を使用することができる。
【0010】
断熱量子計算は量子アニーリングの特別な事例と見なすことができる。断熱量子計算では、理想的にはシステムが基底状態で始まり、断熱進化の全体を通してその基底状態のままである。従って、量子アニーリングのシステム及び方法は概して断熱量子コンピュータ上で実装できることを当業者なら理解されよう。本明細書及び添付の特許請求の範囲の全体を通して、量子アニーリングへの如何なる言及も文脈上必要な場合を除き断熱量子計算を包含するものとする。
【0011】
量子ボルツマンサンプリング
量子コンピュータは、機械学習に使用可能なサンプルを生成するために使用することができる。例えば、量子コンピュータは量子ボルツマンマシンを訓練するためのサンプルを生成することができる。ボルツマンマシンは、頂点間の無向加重エッジを有するグラフを含む確率的グラフィカルモデルの実装である。頂点(ユニットとも呼ぶ)は、「オン」状態にあるのか「オフ」状態にあるのかに関する確率的決定をたどる。確率的決定はボルツマン分布に基づく。量子ボルツマンマシンは量子コンピュータ、例えば量子アニーラを使用して実装することができる。量子ボルツマンマシンを訓練するためのサンプルは量子アニーラからも生成され得る。
【0012】
量子ボルツマンサンプリングは、量子ハミルトニアンの固有状態から平衡サンプルを返すことを含み得る。サンプルは量子ボルツマン分布から取ることができ、ハミルトニアンの低エネルギ構成に対応し得る。量子アニーラを含む量子コンピュータでは、量子アニーリングスケジュールの始まりと終わりとの間の或る時点で、サンプルを取ることができる。アニールの初期では量子効果が強いが、問題エネルギ尺度が低いので状態は自明でない。しかしアニールの終盤で量子効果は弱くトンネリングがインコヒーレントであり、概ね古典的な状態をもたらす。この時点においてトンネリングレートがデコヒーレンスレートを下回る。量子ボルツマンサンプリングを可能にする(即ち量子効果が強いとき量子ビットが0の状態にある又は1の状態にある確率を測定する)ために、量子ビットの射影測定は理想的には量子効果が強く状態が自明でないコヒーレントレジームにおいてアニールの半ばで行うべきである。
【0013】
量子ボルツマンサンプリングは、アニールの始まりと終わりとの間の或る時点における量子プロセッサ内の1組の量子ビットの状態を同時に測定することを含み得る。射影測定は、量子ビットがその量子状態の確率に応じて0の状態又は1の状態にあるように測定され、測定を行った後もその状態がそれ以上変化しないとき行われ、スピン状態の量子測定を行うことを可能にする。射影測定を行うための1つの手法はアニールの始まりと終わりとの間の或る時点においてエネルギ障壁を素早く上げ、それによりトンネリングエネルギを減らし、量子ビットをフリーズアウトしてそのスピン状態を測定することである。エネルギ障壁を十分素早く上げた場合、量子ビットの測定は射影的になる。アニールの半ばの射影測定は量子ボルツマンサンプリング(即ち量子ボルツマン分布を表すサンプルを得ること)を可能にすることができる。射影量子ビット測定は、さもなければ困難であるアニールの半ばの測定を可能にすることによって量子プロセッサの較正を改善するために使用することもできる。
【0014】
典型的には、量子ビットの射影測定を行うためにアナログラインを使用することができる。但し、アニーリングを制御するアナログラインは、エネルギ障壁を上げる速さを制限する可能性がある最大帯域幅を有する場合がある。従って、インコヒーレント又は低コヒーレンスレジームにおいて、量子ビットの射影はアニールの相対的に遅くに生じ得る。インコヒーレント又は低コヒーレンスレジームでは、量子ビットのダイナミクスは遅く量子効果は小さい。量子効果がより強いコヒーレントレジームにおいて射影測定を行い、それにより量子ボルツマンサンプリングを可能にするために、既存のアナログラインが可能にする速度よりもはるかに速くエネルギ障壁を上げる必要がある。エネルギ障壁をより速く上げる1つの手法はアナログ制御ラインの帯域幅を増加することである。例えば量子プロセッサを室温電子機器に通信可能に結合するために、高帯域幅の同軸ラインを実装することができる。しかし、高帯域幅のアナログラインを使用することには2つの主な欠点がある。まず、量子プロセッサの動作を損なう可能性がある、これらのラインによって運ばれるノイズは帯域幅と共に増加する。第2に、必要なアナログラインの数は量子ビットの数が増えるにつれて増加する。量子プロセッサはミリケルビン程度の動作温度を必要とし、このことは極低温冷凍機又は低温保持装置の使用を必要とする。量子ビットの数が増大するとアナログラインの数が管理不能になり、アナログラインは低温保持装置の領域に収まらなくなる。従って、高帯域幅のアナログラインを使用することなしに量子ビットを射影測定するための及び射影読み出しするためのシステム及び方法が広く望まれている。
【0015】
従来の技術の上記の例及びそれに関係する制限は、排他的ではなく例示的であることを意図する。本明細書を読み図面を検討することで、従来の技術の他の制限が当業者に明らかになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
簡単な概要
極低温冷凍機の制約によって限定されないスケーラブルな方法及びデバイスを使用して量子ビット及び/又は量子プロセッサの射影測定及び射影読み出しを行えるようにする需要が存在する。オンチップデバイスを使用し高帯域幅のアナログラインの使用を必要としない、量子ビット及び/又は量子プロセッサの射影測定を一部の実装で可能にするシステム、方法、及びデバイスを記載する。
【0017】
量子プロセッサ内の量子ビットを射影測定するためのシステムは、複数の量子ビットであって、各量子ビットはボディループ及びジョセフソン接合(JJ)ループを有する、複数の量子ビットと、複数の射影源デジタル-アナログ変換器(PSDAC:projective-source digital-to-analog converter)であって、各PSDACはボディループ及びJJループを有し、各PSDACの各ボディループは複数の量子ビットの個々の量子ビットのJJループに通信可能に結合される、複数の射影源デジタル-アナログ変換器(PSDAC)と、複数のPSDACの各PSDACのJJループに通信可能に結合されるトリガラインであって、トリガラインは各PSDACを活性化して第1の磁束状態から第2の磁束状態に変更するように動作可能であり、各PSDACを活性化して第1の磁束状態から第2の磁束状態に変更することは個々のfast flux stepを生成する、トリガラインと、複数の同期デバイスであって、各同期デバイスは複数のPSDACの個々のPSDACのJJループに通信可能に結合され、個々のPSDACのJJループにバイアスを印加して個々のPSDACによって生成されるfast flux stepを、複数のPSDACの少なくとも1つの他のPSDACによって生成される少なくとも1つの他のfast flux stepと同期させるように動作可能である、複数の同期デバイスとを含むものとして要約することができる。
【0018】
複数の同期デバイスは、複数のプログラム可能磁気メモリデジタル-アナログ変換器(PMM DAC)を含むことができ、各PMM DACは個々のPSDACのJJループに通信可能に結合されるボディループを有し、PMM DACのボディループは個々のPSDACのJJループにバイアスを印加して個々のPSDACによって生成されるfast flux stepを、複数のPSDACの少なくとも1つの他のPSDACによって生成される少なくとも1つの他のfast flux stepと同期させるように動作可能である。複数の同期デバイスは複数のアナログラインを含むことができ、各アナログラインは個々のPSDACのJJループに通信可能に結合され、個々のPSDACのJJループにバイアスを印加して個々のPSDACによって生成されるfast flux stepを、複数のPSDACの少なくとも1つの他のPSDACによって生成される少なくとも1つの他のfast flux stepと同期させるように動作可能である。
【0019】
複数のPSDACの第1のPSDACの第1の磁束状態は、複数のPSDACの第2のPSDACの第1の磁束状態と異なることができる。複数のPSDACの第1のPSDACによって生成される第1のfast flux stepは、複数の量子ビットの第1の量子ビットのエネルギ障壁を上げるために複数の量子ビットの第1の量子ビットのJJループに適用することができる。各同期デバイスは、複数のPSDACの第1のPSDACによって生成される第1のfast flux stepを複数のPSDACの第2のPSDACによって生成される第2のfast flux stepと同期させることができる。複数のPSDACの第1のPSDACによって生成される第1のfast flux stepを複数のPSDACの第2のPSDACによって生成される第2のfast flux stepと同期させることは、複数の量子ビットの第1の量子ビットのエネルギ障壁及び第2の量子ビットのエネルギ障壁を上げるために複数の量子ビットの第1の量子ビットのJJループ及び第2の量子ビットのJJループにそれぞれ適用される同期されたfast flux stepをもたらすことができる。各同期デバイスは、複数のPSDACの第1のPSDACによって生成される第1のfast flux stepを複数のPSDACの各PSDACによって生成される複数のfast flux stepと同期させることができる。複数のPSDACの第1のPSDACによって生成される第1のfast flux stepを複数のPSDACの各PSDACによって生成される複数のfast flux stepと同期させることは、複数の量子ビットの各量子ビットのエネルギ障壁を上げるために複数の量子ビットの各量子ビットの個々のJJループにそれぞれ適用される同期されたfast flux stepをもたらすことができる。
【0020】
このシステムは複数の磁束バイアス発生源を更に含むことができ、各磁束バイアス発生源は、個々のPSDACのボディループに通信可能に結合することができ、個々のPSDACのボディループに磁束バイアスを印加するように動作可能であり得る。
【0021】
このシステムは、複数の量子ビットの第1の量子ビットを複数の量子ビットの第2の量子ビットに通信可能に結合するカプラを更に含むことができ、第1の量子ビットは複数のPSDACの第1のPSDACに通信可能に結合することができ、第2の量子ビットは複数のPSDACの第2のPSDACに通信可能に結合することができる。トリガラインは、複数のPSDACの第1のPSDACのJJループに通信可能に結合することができ、複数のPSDACの第2のPSDACのJJループに更に通信可能に結合することができる。複数のPSDACの第1のPSDACのJJループは、複数の同期デバイスの第1の同期デバイスに通信可能に結合することができ、複数のPSDACの第2のPSDACのJJループは、複数の同期デバイスの第2の同期デバイスに通信可能に結合することができる。
【0022】
このシステムは複数のPSDACの第3のPSDAC及び第4のPSDACを更に含むことができ、複数のPSDACの第3のPSDACのボディループは複数の量子ビットの第1の量子ビットのボディループに通信可能に結合することができ、複数のPSDACの第4のPSDACのボディループは複数の量子ビットの第2の量子ビットのボディループに通信可能に結合することができる。複数のPSDACの第3のPSDACのJJループは、第2のトリガラインに通信可能に結合することができる。
【0023】
量子プロセッサ内の量子ビットを射影測定するためのシステムを動作させる方法は、複数の量子ビットであって、各量子ビットはボディループ及びジョセフソン接合(JJ)ループを有する、複数の量子ビットと、複数の射影源デジタル-アナログ変換器(PSDAC)であって、各PSDACはボディループ及びJJループを有し、各PSDACの各ボディループは複数の量子ビットの個々の量子ビットのJJループに通信可能に結合される、複数の射影源デジタル-アナログ変換器(PSDAC)と、複数のPSDACの各PSDACのJJループに通信可能に結合されるトリガラインであって、トリガラインは各PSDACを活性化して第1の磁束状態から第2の磁束状態に変更するように動作可能であり、各PSDACを活性化して第1の磁束状態から第2の磁束状態に変更することは個々のfast flux stepを生成する、トリガラインと、複数の同期デバイスであって、各同期デバイスは複数のPSDACの個々のPSDACのJJループに通信可能に結合され、各同期デバイスは個々のPSDACのJJループにバイアスを印加する、複数の同期デバイスを含むものとして要約することができ、この方法は、量子プロセッサによって実行される量子アニーリング進化を開始すること、量子進化中の或る時点において、複数のPSDACのPSDACを活性化するためにトリガラインによって信号を送信すること、複数のPSDACのPSDACの磁束状態を第1の磁束状態から第2の磁束状態に変更してfast flux stepを生成すること、fast flux stepを使用して複数の量子ビットの量子ビットのエネルギ障壁を上げること、及び複数の量子ビットの量子ビットのスピン状態を測定することを含む。
【0024】
この方法は、複数のPSDACの第1のPSDACによって生成される第1のfast flux stepを、複数のPSDACの個々のPSDACによって生成される複数のfast flux stepと同期させることを更に含み得る。第1のPSDACによって生成される第1のfast flux stepを、複数のPSDACの個々のPSDACによって生成される複数のfast flux stepと同期させることは、複数の量子ビットの各量子ビットの個々のJJループにそれぞれ適用される同期されたfast flux stepをもたらすことができる。複数の量子ビットの各量子ビットの個々のJJループに同期されたfast flux stepを適用することは、複数の量子ビットの各量子ビットの個々のエネルギ障壁を上げることができる。この方法は、量子進化を完了し、複数の量子ビットの量子ビットのスピン状態を読み出すことを更に含み得る。
【0025】
図面の幾つかの見方の簡単な説明
図中、同一の参照番号は類似の要素又は動作を識別する。図中の要素のサイズ及び相対位置は必ずしも縮尺通りに描かれていない。例えば様々な要素の形状及び角度は必ずしも縮尺通りに描かれておらず、これらの要素の一部は、図面を分かりやすくするために任意に拡大し位置決めしている場合がある。更に、描かれている要素の特定の形状は、特定の要素の実際の形状に関する如何なる情報を伝えることも意図しておらず、単に図面を認識しやすいように選択している場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】射影源デジタル-アナログ変換器(PSDAC)の磁束状態の変化を使用する、量子ビットの射影測定用の回路を示す概略図である。
【
図2】複合ジョセフソン接合(JJ)ループをそれぞれ有する1組の2つのPSDACの磁束状態の変化を使用する、量子ビットの射影測定用の回路を示す概略図である。
【
図3】1組の4つのPSDACの磁束状態の変化を使用する、2つの通信可能に結合された量子ビットの射影測定用の回路を示す概略図である。
【
図4】2つの複合JJループを直列にそれぞれ有する1組の2つのPSDACの磁束状態の変化を使用する、量子ビットの射影測定用の回路を示す概略図である。
【
図5】1組の3つのPSDACの磁束状態の変化を使用する、量子ビットの射影測定用の回路を示す概略図である。
【
図6】本開示の少なくとも1つの図示の実施形態による、量子ビットの射影測定用のシステムを動作させるための方法を示す流れ図である。
【
図7】本開示の少なくとも1つの図示の実施形態による、量子ビットの量子進化を開始しモニタするための方法を示す流れ図である。
【
図8】本明細書のシステム、デバイス、及び方法による、デジタルコンピュータ及びアナログコンピュータを含む例示的な計算システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
以下の説明では、開示する様々な実装の完全な理解を与えるために幾つかの具体的詳細を記載する。しかし、これらの具体的詳細の1つ又は複数なしに、又は他の方法、コンポーネント、材料等を用いて実装を実施できることを当業者なら理解されよう。他の例では、実装の説明を不必要に曖昧にするのを避けるために、コンピュータシステム、サーバコンピュータ、及び/又は通信ネットワークに関連する既知の構造は図示し又は説明していない。
【0028】
文脈上他の意味に解すべき場合を除き、本明細書及び添付の特許請求の範囲の全体を通して、「含む(comprising)」という用語は「含む(including)」と同義であり、包含的又は無制限である(即ち列挙されていない追加の要素又は方法の動作を除外しない)。
【0029】
本明細書の全体を通して「一実装」又は「或る実装」に言及することは、その実装に関連して記載する特定の特徴、構造、又は特性が少なくとも1つの実装に含まれることを意味する。従って、本明細書の全体を通して様々な箇所で出現する「一実装では」又は「或る実装では」という句は、必ずしも全て同じ実装を指すものではない。更に、1つ又は複数の実装において特定の特徴、構造、又は特性を任意の適切なやり方で組み合わせることができる。
【0030】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、文脈において明白に指示しない限り単数形「a」、「an」、及び「the」は複数の指示対象を含む。文脈において明白に指示しない限り、「又は」という用語は「及び/又は」を含む意味で概して用いることにも留意すべきである。
【0031】
本明細書に示す見出し及び本開示の要約は便宜上のものに過ぎず、実装の範囲又は意味を説明するものではない。
【0032】
アニールの始まりと終わりとの間の或る時点において量子ビットの状態をサンプリングすることは、量子ボルツマンサンプリング及び量子プロセッサの較正等の応用に有用であり得る。量子ビットのアニーリングレートをアナログラインが制御する量子プロセッサの設計では、量子ビットの状態を射影できる横磁場又はトンネリングレートがアナログラインの帯域幅によって制限される。本明細書のシステム、方法、及びデバイスは、量子ビットの射影測定用の単一磁束量子発生源としてデジタル-アナログ変換器(DAC)を使用する設計を記載する。DACが第1の磁束状態から第2の磁束状態に変化するのに必要な時間はスイッチング時間として定義することができ、数十ピコ秒程度であり得る。スイッチング時間が速い結果、DACの2つの磁束状態間の遷移が量子ビットの射影読み出しを駆動するために使用することができるfast flux stepを生成することができる。換言すれば、DACの磁束状態の変化は、アニールの始まりと終わりとの間の或る時点におけるスピン状態の量子測定を駆動することができる。この目的でfast flux stepを生成するDACは、射影源DAC(PSDAC)又はfast flux step源として定義することができる。1組のPSDAC内の各PSDACが量子プロセッサ上の1組の量子ビットの中の量子ビットにそれぞれ通信可能に結合される場合、各PSDACを同期的に活性化することによって量子プロセッサ内の1組の量子ビットに対して射影測定を行うことができる。全ての量子ビットに対して射影測定を行うために全てのPSDACが同期的に活性化される場合、量子プロセッサ全体の射影読み出しを行うことができる。同期的な活性化は、各PSDACを共用トリガラインに及びそれぞれの同期デバイスに通信可能に結合することによって実現することができる。同期デバイスは、非同期を引き起こす可能性があるチップ製造のばらつき及び共用トリガラインの位相遅延を補正することができる。同期デバイスの一例は、PSDACにバイアスを印加する従来のオンチップDAC又はプログラム可能磁気メモリ(PMM)DACである。上記の設計はデコヒーレンスを較正し評価するためのツールとして使用することができる。この設計の利点は、高帯域幅の制御ラインが必要ないので、この設計がコヒーレントレジームにおいて量子ビットを制御するためのスケーラブルなシステムであることである。
【0033】
図1は、PSDAC108の磁束状態の変化を使用する、量子ビット102の射影測定用の回路100を示す概略図である。量子ビット102は、ジョセフソン接合(JJ)ループ104及びボディループ106を有する。JJループ104は複合-複合JJループである。他の実装では、JJループ104が複合JJループであり得る。ボディループ106は磁束バイアス発生源108に通信可能に結合される。磁束バイアス発生源108は、誘導結合によって量子ビット102にバイアスを印加する。一部の実装では、磁束バイアス発生源108をアナログラインとすることができる。一部の実装では、磁束バイアス発生源108をプログラム可能磁気メモリ(PMM)DAC等の従来のDACとすることができる。量子ビット102のJJループ104は、アニーリングライン112にも通信可能に結合される。アニーリングライン112は量子ビット102のアニールスケジュールを少なくとも部分的に制御し、JJループ104の主ローブ126に磁束バイアスを印加することによって量子ビット102のエネルギ障壁を上げる。アニーリングライン112は、量子プロセッサ内の量子ビットのサブセットの中の少なくとも1つの他の量子ビットに更に通信可能に結合され得る。量子ビット102のJJループ104は、第1の副ローブライン110a及び第2の副ローブライン110b(まとめて110)に更に通信可能に結合される。副ローブライン110は量子ビット102のJJループ104にバイアスを印加してJJの非対称性を補償し、少なくとも1つの他の量子ビットに対して量子ビット102を均質化する。
【0034】
PSDAC114は、JJループ116及びボディループ118を有する。量子ビット102のJJループ104はPSDAC114のボディループ118に通信可能に結合される。結合は誘導又はガルバニックとすることができる。PSDAC114のボディループ118は、単一磁束量子(SFQ)磁束バイアス発生源124に更に通信可能に結合される。SFQ磁束バイアス発生源124は、PSDAC114によって生成される信号の方向を強化するためにPSDAC114のボディループ118にバイアスを印加し、そのため量子ビット101のエネルギ障壁が下げられるのではなく上げられる。PSDAC114のボディループ118に印加されるバイアスは、プログラム可能な静的磁束バイアスであり得る。SFQ磁束バイアス発生源124は、PMM DAC等の従来のDACとすることができる。一部の実装では、SFQ磁束バイアス発生源124はアナログラインであり得る。PSDAC118のJJループ116は複合JJループである。一部の実装では、JJループ116が複合-複合JJループであり得る。PSDAC114のJJループ116はトリガライン120に通信可能に結合される。1組のPSDACが存在する実装では、1組のPSDACの各PSDACにトリガライン120を更に通信可能に結合することができる。トリガライン120はPSDAC114を活性化して、PSDAC114の状態を第1の磁束状態から第2の磁束状態に変更する。PSDAC114の状態を第1の磁束状態から第2の磁束状態に変更することは、数十ピコ秒のうちに行うことができる。量子ビット102のJJループ104に結合されるPSDAC114の磁束状態の変化はfast flux step又はfast-step波形を生成する。fast flux step又はfast-step波形は、量子ビット102のエネルギ障壁を上げるためにJJループ104の主ローブ126に適用することができる。アニールの始まりと終わりとの間の或る時点において、トリガライン120がPSDAC114を活性化することができる。一部の実装では、トリガライン120は少なくとも30MHzの帯域幅を有するアナログラインとすることができる。PSDAC114のJJループ116は同期デバイス122に更に結合される。同期デバイス122は、PMM DAC等の従来のDACとすることができる。一部の実装では、同期デバイス122をアナログラインとすることができる。同期デバイス122は、量子プロセッサ内の他のPSDACとのPSDAC114のスイッチング時間を非同期化し得る位相遅延を少なくとも部分的にオフセットするために、PSDAC114のJJループ116にバイアスを印加する。同期デバイス112は、PSDAC114によって生成されるfast flux stepを、量子プロセッサ内の少なくとも1つの他のPSDACによって生成される少なくとも1つの他のfast flux stepと同期させることができる。一部の実装では、同期デバイス112は例えばJJループにおける量子プロセッサ製造のばらつきを少なくとも部分的に補正することができる。
【0035】
図2は、第1のPSDAC214a及び第2のPSDAC214b(まとめて214)の磁束状態の変化を使用する、量子ビット202の射影測定用の回路200を示す概略図である。回路200は、
図1の回路100の同じ要素の少なくとも幾つかを含む。量子ビット202は、JJループ204及びボディループ206を有する。JJループ204は複合-複合JJループである。一部の実装では、JJループ204が複合JJループであり得る。ボディループ206は磁束バイアス発生源208に通信可能に結合される。磁束バイアス発生源208は、誘導結合又はガルバニック結合によって量子ビット202にバイアスを印加する。量子ビット202のJJループ204は、アニーリングライン212に通信可能に結合される。アニーリングライン212は量子ビット202のアニールスケジュールを少なくとも部分的に制御し、JJループ204の主ローブ226に磁束バイアスを印加することによって量子ビット202のエネルギ障壁を上げる。アニーリングライン212は、量子プロセッサ内の量子ビットのサブセットの中の少なくとも1つの他の量子ビットに更に通信可能に結合され得る。量子ビット202のJJループ204は、第1の副ローブライン210a及び第2の副ローブライン210b(まとめて210)に更に通信可能に結合される。副ローブライン210は量子ビット202のJJループ204にバイアスを印加してJJの非対称性を補償し、少なくとも1つの他の量子ビットに対して量子ビット202を均質化する。
【0036】
第1のPSDAC214a及び第2のPSDAC214bは、個々のJJループ216a、216b(まとめて216)及び個々のボディループ218a、218b(まとめて218)をそれぞれ含む。量子ビット202のJJループ204は、第1のPSDAC214aのボディループ218aに通信可能に結合される。結合は誘導又はガルバニックとすることができる。PSDAC214のボディループ218は、個々のSFQ磁束バイアス発生源224a、224b(まとめて224)にそれぞれ通信可能に結合される。SFQ磁束バイアス発生源224は、PSDAC214によって生成される信号の方向を強化するためにPSDAC214の個々のボディループ218にバイアスを印加し、そのため量子ビット202のエネルギ障壁が下げられるのではなく上げられる。PSDAC214のボディループ218に印加されるバイアスは、プログラム可能な静的磁束バイアスであり得る。SFQ磁束バイアス発生源224は、PMM DAC等の従来のDAC又はアナログラインとすることができる。一実装では、SFQ磁束バイアス発生源224aが従来のDACであり、SFQ磁束バイアス発生源224bがアナログラインである。PSDAC214のJJループ216は複合JJループである。一部の実装では、PSDAC214のJJループ216は複合-複合JJループであり得る。PSDAC214のJJループ216は個々のトリガライン220a、220b(まとめて220)にそれぞれ通信可能に結合される。1組のPSDACを含む実装では、1組のPSDACの各PSDACにトリガライン220aを更に通信可能に結合することができる。トリガライン220はPSDAC214を活性化して、PSDAC214の状態を第1の磁束状態から第2の磁束状態に変更する。一実装では、第1のPSDAC214aの第1の磁束状態が第2のPSDAC214bの第1の磁束状態と異なる。PSDACの状態を第1の磁束状態から第2の磁束状態に変更することは、数十ピコ秒の時間枠のうちに行うことができる。ボディループ218aによって量子ビット202のJJループ204に結合される第1のPSDAC214aの磁束状態を変更することはfast flux step又はfast-step波形を生成する。fast flux step又はfast-step波形は、量子ビット202のエネルギ障壁を上げるためにJJループ204の主ローブ226に適用することができる。ボディループ218bによって量子ビット202のボディループ206に結合される第2のPSDAC214bの磁束状態を変更することは、量子ビット202のスピン状態を準備するために使用することができるfast flux step又はfast-step波形を生成する。第2のPSDAC214bは、量子ビット202のボディループ206に印加されるバイアスを増加させる又は減少させることができる。量子ビット202の状態を反転させることが量子ビット202のエネルギ又は量子プロセッサ内の他の量子ビットのエネルギを変えない場合、量子ビット202は縮退にある。アニールの始まりと終わりとの間の或る時点において、トリガライン220がPSDAC214を活性化することができる。一部の実装では、トリガラインは少なくとも30MHzの帯域幅を有するアナログラインとすることができる。第1のPSDAC214aのJJループ216aは同期デバイス222に更に結合される。同期デバイス222は、PMM DAC等の従来のDAC又はアナログラインとすることができる。同期デバイス222は、量子プロセッサ内の他のPSDAC214のスイッチング時間と第1のPSDAC214aのスイッチング時間を非同期化し得る位相遅延を少なくとも部分的にオフセットするために、第1のPSDAC214aのJJループ216aにバイアスを印加する。同期デバイス222は、PSDAC214aによって生成されるfast flux stepを、量子プロセッサ内の少なくとも1つの他のPSDACによって生成される少なくとも1つの他のfast flux stepと同期させることができる。同期デバイス222は量子プロセッサ製造のばらつきを少なくとも部分的に補正することができる。一部の実装では、第2のPSDAC214bのJJループ216bに第2の同期デバイスを通信可能に結合することができる。第2の同期デバイスは、同期デバイス222と同様のやり方で動作することができる。
【0037】
一実装では、磁束バイアス発生源208が量子ビット202のボディループ206にバイアスを印加して量子ビット202を所与のスピン構成で初期化する。その後、量子ビット202がコヒーレントレジームにありエネルギ障壁が低いとき、トリガライン220がPSDAC214を活性化してバイアスを除去する。次に、量子ビット202がコヒーレント量子進化を経るとき、トリガライン220がPSDAC214を活性化して、fast-step波形又はfast flux stepを生成するために第1の磁束状態から第2の磁束状態に変更する。fast-step波形又はfast flux stepは、量子ビット202の射影量子測定を行うために使用することができる。複数の量子ビットを所与のスピン構成で初期化し射影量子測定を行うために、同じ手法を複数の量子ビットに適用することができる。複数の量子ビットを含む事例では、同期デバイス222及びトリガライン224を上記と同じやり方で使用することができる。この手法は、量子進化の開始及び量子進化のモニタリングを可能にする。この手法は、コヒーレントレジームにおける高速時間尺度に基づく量子プロセッサの動作モードとして使用することができる。
【0038】
PSDACボディループ218a及びアニーリングライン212は、量子ビット202の主ローブ226にそれぞれ結合される。一部の事例では、アニーリングライン212は主ローブ226を介してPSDACボディループ218に間接的に結合することができる。PSDACボディループ218は、アニーリングライン212からの磁束の影響を受けやすいものとすることができる。アニーリングライン212は、量子ビット202のJJループ204をPSDACボディループ218にバイアスさせるPSDACボディループ218内の循環電流を生成することができる。かかる循環電流の生成は、アニーリングライン212とJJループ204との間の正味相互インダクタンスの変化をもたらし得る。従って、PSDAC214はアニーリングライン212とJJループ204との間の通信結合に影響を及ぼし、デバイス間の不所望のクロストークを招く可能性がある。PSDAC214がアニーリングライン212とJJループ204との間の通信結合に影響を及ぼし得る程度は、トリガライン220aによって運ばれる信号に比例し得る。トリガライン220aがランプアップされる(即ち波形が生成される)とJJループ204へのアニーリングライン212の結合強度が増加する可能性があり、かかる結合強度の増加はアニーリングライン212とJJループ204との間の正味相互インダクタンスに影響を及ぼす。トリガライン220aによって引き起こされるJJループ204へのアニーリングライン212の結合強度の不所望の増加は量子ビット202の不完全アニーリングを招く可能性があるので、これは問題となり得る。
【0039】
トリガライン220aによって引き起こされるJJループ204へのアニーリングライン212の結合強度の不所望の増加を最小化するための1つの手法は、「プレバイアス」とも呼ばれる、アニーリングの前にPSDAC214にバイアスをかけることである。PSDAC214は、グローバルアナログトリガバイアスとすることができるトリガライン220aと同期デバイス222との組み合わせを使用してPSDAC214のトリガレベルに近い値でプレバイアスすることができる。PSDAC214をプレバイアスすることはPSDAC214をトリガするのに必要な波形の高さを最小化することができ、それにより波形によって生じるアニーリングライン212とJJループ204との間の相互インダクタンスの変化を最小化する。PSDAC214に印加されるプレバイアスを含むアニーリングライン212とJJループ204との間の相互インダクタンスの正味値は、量子ビット202をアニーリングするために使用することができる。一部の実装では、トリガライン220aはトリガデバイスとすることができる。
【0040】
アニーリングライン212は、JJループ204を介してPSDAC214に間接的に通信可能に結合することができる。量子ビット202がアニーリングされると、PSDACボディループ218aはJJループ204に印加されたバイアスに比例する磁束オフセットをもたらすことができる。一部の事例では、アニール中の特定の時点における磁束オフセットはSFQ磁束バイアス発生源224aを使用して補償することができる。一部の事例では、SFQ磁束バイアス発生源224aが磁束バイアスDACであり得る。SFQ磁束バイアス発生源224aによってPSDACボディループ218a内の磁束オフセットを補償できる程度はアニールスケジュール内の時点に依存し得る。PSDACボディループの磁束オフセットを補償することは、トリガ波形が生成されるときの量子ビット202のエネルギ障壁のばらつきを減らす。アニールスケジュール内の適切な時点において磁束オフセットを補償することによってPSDAC214の電流を下げ、それによりJJループ204に印加される磁束の変化を減らし、不所望の不完全アニーリングを減らすことができる。
【0041】
図3は、1組のPSDACの磁束状態の変化を使用する、2つの通信可能に結合された量子ビットの射影測定用の回路300を示す概略図である。回路300は、カプラ326によって第2の量子ビット302bに通信可能に結合される第1の量子ビット302a(まとめて302)を含む。回路300は、第1のPSDAC314a、第2のPSDAC314b、第3のPSDAC314C、及び第4のPSDAC314d(まとめて314)も含む。回路300は、
図1の回路100又は
図2の回路200の同じ要素の少なくとも幾つかを含む。量子ビット202は、個々のJJループ304a、304b(まとめて304)及び個々のボディループ306a、306b(まとめて306)をそれぞれ有する。JJループ304は複合-複合JJループだが、一部の実装では複合JJループであり得る。ボディループ306は、個々の磁束バイアス発生源308a、308b(まとめて308)にそれぞれ通信可能に結合される。磁束バイアス発生源308aは、誘導結合又はガルバニック結合によって量子ビット302aにバイアスを印加する。量子ビット302のボディループ306は、カプラ326に更に通信可能に結合される。量子ビット302はカプラ326に誘導結合又はガルバニック結合され得る。磁束バイアス発生源308cはカプラ326にバイアスを印加する。磁束バイアス発生源308cは、量子ビット302間の結合強度及び量子ビット302が同じスピン状態を取る可能性を少なくとも部分的に決定する。量子ビット302のJJループ304は、個々のアニーリングライン312a、312bにそれぞれ通信可能に結合される。アニーリングライン312は量子ビット302のアニールスケジュールを少なくとも部分的に制御し、JJループ304の主ローブ328a(まとめて328とするが、不明瞭にしないために1つだけ表記した)に磁束バイアスを印加することによって量子ビット302のエネルギ障壁を上げる。一実装では、第1のアニーリングライン312aがJJループ304aに通信可能に結合され、JJループ304bに更に通信可能に結合される。一部の実装では、第1のアニーリングライン312aが量子プロセッサ内の量子ビットのサブセットの中の少なくとも1つの他の量子ビットに通信可能に結合される。量子ビット302のJJループ304は、2つの個々の副ローブライン(310a、図面を不明瞭にしないために1つだけ表記した)に更に通信可能に結合される。副ローブライン310は量子ビット302のJJループ304にバイアスを印加してJJの非対称性を補償し、量子ビット302を互いに又は量子プロセッサ内の少なくとも1つの他の量子ビットに対して均質化する。
【0042】
PSDAC314は、個々のJJループ316a、316b、316c、316d(まとめて316)、及び個々のボディループ318a、318b、318c、318d(まとめて318)をそれぞれ含む。PSDAC314のボディループ318は、個々のSFQ磁束バイアス発生源324a、324b、324c、324d(まとめて324)にそれぞれ通信可能に結合される。SFQ磁束バイアス発生源324は、PSDAC314によって生成される信号の方向を強化するためにPSDAC314の個々のボディループ318にバイアスを印加し、そのため量子ビット302のエネルギ障壁が下げられるのではなく上げられる。PSDAC314のボディループ318に印加されるバイアスは、プログラム可能な静的磁束バイアスであり得る。SFQ磁束バイアス発生源324は、PMM DAC等の従来のDAC又はアナログラインとすることができる。PSDAC314のJJループ316は複合JJループである。一部の実装では、JJループ316が複合-複合JJループであり得る。
【0043】
第1の量子ビット302aのJJループ304aは、第1のPSDAC314aのボディループ318aに通信可能に結合される。第2の量子ビット302aのJJループ304bは、第3のPSDAC314cのボディループ318cに通信可能に結合される。第1のPSDAC314aのJJループ316a及び第3のPSDAC314cのJJループ316cはトリガライン220aに通信可能に結合される。1組のPSDACを含む一部の実装では、トリガライン220が1組のPSDACの各PSDACに更に通信可能に結合され得る。トリガライン220aは、第1のPSDAC314a及び第3のPSDAC314cを活性化して、PSDAC314aの状態を第1の磁束状態から第2の磁束状態に変更する共用トリガラインである。PSDAC314a、314cについて第1の磁束状態から第2の磁束状態に変更することは、トリガライン220aを共用する結果として同期的に又はほぼ同期的に行うことができる。一実装では、第1のPSDAC314aの第1の磁束状態が第3のPSDAC314cの第1の磁束状態と異なる。PSDACの状態を第1の磁束状態から第2の磁束状態に変更することは、数十ピコ秒の時間枠のうちに行うことができる。JJループ304aによって第1の量子ビット302aに結合される第1のPSDAC314aの磁束状態を変更することは第1のfast flux step又は第1のfast-step波形を生成する。JJループ304bによって第2の量子ビット302bに結合される第3のPSDAC314cの磁束状態を変更することは第2のfast flux step又は第2のfast-step波形を生成する。第1のfast flux step又は第1のfast-step波形は、同期デバイス322を使用して第2のfast flux step又は第2のfast-step波形と同期させることができる。量子ビット302の射影測定を行うために、同期したfast flux stepをJJループ304の主ローブ328に適用して量子ビット302のエネルギ障壁を上げることができる。
【0044】
第1のPSDAC314aのJJループ316a及び第3のPSDAC314cのJJループ316cは、個々の同期デバイス322a、322b(まとめて322)にそれぞれ通信可能に結合される。同期デバイス322は、PMM DAC等の従来のDAC又はアナログラインとすることができる。同期デバイス322は、第3のPSDAC314cのスイッチング時間と第1のPSDAC314aのスイッチング時間を非同期化し得る、トリガライン320aによって運ばれる信号の位相遅延を少なくとも部分的にオフセットするために、JJループ316a、316cにそれぞれバイアスを印加する。同期デバイス322は、第1のPSDAC314aによって生成されるfast flux stepを、第3のPSDAC314cによって生成されるfast flux stepと同期させることができる。一実装では、同期デバイス322は、第1のPSDAC314aによって生成されるfast flux stepを、量子プロセッサ内の少なくとも1つの他のPSDACによって生成される少なくとも1つの他のfast flux stepと同期させることができる。同期デバイス322は、量子プロセッサ製造のばらつきを少なくとも部分的に補正することができる。
【0045】
第1の量子ビット302aのボディループ306aは、第2のPSDAC314bのボディループ318bに通信可能に結合される。第2の量子ビット302bのボディループ306bは、第4のPSDAC314dのボディループ318dに通信可能に結合される。
【0046】
PSDAC314b、314dのJJループ316b、316dは、個々のトリガライン320b、320d(まとめて320)にそれぞれ通信可能に結合される。一実装では、PSDAC314dのJJループ316dは、トリガライン320dではなくトリガライン320bに通信可能に結合され得る。トリガライン320は、アニールの始まりと終わりとの間の或る時点においてPSDAC314を活性化することができる。一部の実装では、トリガラインは少なくとも30MHzの帯域幅を有するアナログラインとすることができる。トリガライン320b、320dはPSDAC314b、314dを活性化して、PSDAC314b、314dの状態を第1の磁束状態から第2の磁束状態に変更する。一実装では、PSDAC314bの第1の磁束状態がPSDAC314a、314c、314dの何れかの第1の磁束状態と異なり得る。PSDAC314の状態を第1の磁束状態から第2の磁束状態に変更することは、数十ピコ秒の時間枠のうちに行うことができる。ボディループ318bによって第1の量子ビット302aのボディループ306aに結合される第2のPSDAC314bの磁束状態を変更することは、第1の量子ビット302aのスピン状態を準備するために使用することができるfast flux step又はfast-step波形を生成する。第2のPSDAC314bは、量子ビット302aのボディループ306aに印加されるバイアスを増加させる又は減少させることができる。PSDAC314dの磁束状態を変更することは、PSDAC314bの磁束状態を変更することが第1の量子ビット302aに対して有するのと同様の又は同一の作用効果を第2の量子ビット302bに対して有する。一部の実装では、PSDAC314b、314dのJJループ316b、316dに追加の同期デバイスを通信可能に結合することができる。
【0047】
一部の事例では、上昇ステップとその後に続く下降ステップを立て続けに含むfast-fluxパルス波形を生成することが有利であり得る。一部の事例では、fast-fluxパルス波形が台形であり得る。fast-fluxパルスは、2つのJJループを直列に含むPSDACを含む回路を使って実現することができる。
【0048】
図4は、第1のPSDAC414a及び第2のPSDAC414b(まとめて414)の磁束状態の変化を使用する、量子ビット402の射影測定用の回路400を示す概略図である。回路400は、
図1の回路100の同じ要素の少なくとも幾つかを含む。量子ビット402は、JJループ404及びボディループ406を有する。JJループ404は複合-複合JJループである。一部の実装では、JJループ404が複合JJループであり得る。ボディループ406は磁束バイアス発生源408に通信可能に結合される。磁束バイアス発生源408は、誘導結合又はガルバニック結合によって量子ビット402にバイアスを印加する。量子ビット402のJJループ404は、アニーリングライン412に通信可能に結合される。アニーリングライン412は量子ビット402のアニールスケジュールを少なくとも部分的に制御し、JJループ404の主ローブ426に磁束バイアスを印加することによって量子ビット402のエネルギ障壁を上げる。アニーリングライン412は、量子プロセッサ内の量子ビットのサブセットの中の少なくとも1つの他の量子ビットに更に通信可能に結合され得る。量子ビット402のJJループ404は、第1の副ローブライン410a及び第2の副ローブライン410b(まとめて410)に更に通信可能に結合される。副ローブライン410は量子ビット402のJJループ404にバイアスを印加してJJの非対称性を補償し、少なくとも1つの他の量子ビットに対して量子ビット402を均質化する。
【0049】
第1のPSDAC414aは、直列の2つのJJループ416a、416b及びボディループ418aを含む。第2のPSDAC414bは、直列の2つのJJループ416c、416d(まとめて416)及びボディループ418b(まとめて418)を含む。量子ビット402のJJループ404は、第1のPSDAC414aのボディループ418aに通信可能に結合される。結合は誘導又はガルバニックとすることができる。PSDAC414のボディループ418は、個々のSFQ磁束バイアス発生源424a、424b(まとめて424)にそれぞれ通信可能に結合される。SFQ磁束バイアス発生源424は、PSDAC414によって生成される信号の選択された方向を強化するためにPSDAC414の個々のボディループ418にバイアスをそれぞれ印加し、そのため量子ビット402のエネルギ障壁がfast fluxパルス中に上げられ又は下げられる。PSDAC414のボディループ418に印加されるバイアスは、プログラム可能な静的磁束バイアスであり得る。SFQ磁束バイアス発生源424は、PMM DAC等の従来のDAC又はアナログラインとすることができる。一実装では、SFQ磁束バイアス発生源424aが従来のDACであり、SFQ磁束バイアス発生源424bがアナログラインである。PSDAC414のJJループ416は複合JJループである。一部の実装では、PSDAC414のJJループ416は複合-複合JJループであり得る。PSDAC414のJJループ416は個々の個々のトリガライン420a、420b、420c、420d(まとめて420)にそれぞれ通信可能に結合される。
【0050】
第1のPSDAC414aのJJループ416a、416bにトリガライン420a、420bを結合することは、第1のPSDAC414aから量子ビット402のJJループ404に結合される磁束の相対的に一定の大きさを維持しながら、第1のPSDAC414aの磁束状態を反対方向に変えることを可能にし得る。第2のPSDAC414bのJJループ416c、416dにトリガライン420c、420dを結合することは、量子ビット402のボディループ406内のfast fluxパルスの生成を可能にし得る。一実装では、PSDAC414aのJJループ416bは、トリガライン420bではなくトリガライン420aに結合される。1組のPSDACを含む実装では、1組のPSDACの各PSDACにトリガライン420aを更に通信可能に結合することができる。
【0051】
トリガライン420はPSDAC414を活性化して、PSDAC414の状態を第1の磁束状態から第2の磁束状態に変更する。一実装では、第1のPSDAC414aの第1の磁束状態が第2のPSDAC414bの第1の磁束状態と異なる。PSDACの状態を第1の磁束状態から第2の磁束状態に変更することは、数十ピコ秒の時間枠のうちに行うことができる。ボディループ418aによって量子ビット402のJJループ404に結合される第1のPSDAC414aの磁束状態を変更することはfast flux step、fast fluxパルス、又はfast-step波形を生成する。このfast flux step、fast fluxパルス、又はfast-step波形は、量子ビット402のエネルギ障壁を上げるためにJJループ404の主ローブ426に適用することができる。ボディループ418bによって量子ビット402のボディループ406に結合される第2のPSDAC414bの磁束状態を変更することは、量子ビット402のスピン状態を準備するために使用することができるfast flux step、fast fluxパルス、又はfast-step波形を生成する。第2のPSDAC414bは、量子ビット402のボディループ406に印加されるバイアスを増加させる又は減少させることができる。トリガライン420は、アニールの始まりと終わりとの間の或る時点においてPSDAC414を活性化することができる。一部の実装では、トリガラインは少なくとも30MHzの帯域幅を有するアナログラインとすることができる。
【0052】
一実装では、第1のPSDAC414aのJJループ416aが、トリガライン420aではなく同期デバイスに結合される。同期デバイスは、PMM DAC等の従来のDAC又はアナログラインとすることができる。同期デバイスは、量子プロセッサ内の他のPSDACのスイッチング時間と第1のPSDAC414aのスイッチング時間を非同期化し得る位相遅延を少なくとも部分的にオフセットすることができる。同期デバイスは、PSDAC414aによって生成されるfast flux stepを、量子プロセッサ内の少なくとも1つの他のPSDACによって生成される少なくとも1つの他のfast flux stepと同期させることができる。
【0053】
一部の事例では、SFQパルス間の標的タイミング分解能を得るために量子ビットのJJループ上に2つのSFQ発生源を有することが有利であり得る。これは量子ビットのJJループに結合される2つのPSDACを含む回路を使って実現することができる。
【0054】
図5は、第1のPSDAC514a、第2のPSDAC514b、及び第3のPSDAC514c(まとめて514)の磁束状態の変化を使用する、量子ビット502の射影測定用の回路500を示す概略図である。回路500は、
図1の回路100及び
図2の回路200の同じ要素の少なくとも幾つかを含む。量子ビット502は、JJループ504及びボディループ506を有する。JJループ504は複合-複合JJループである。一部の実装では、JJループ504が複合JJループであり得る。ボディループ506は磁束バイアス発生源508に通信可能に結合される。磁束バイアス発生源508は、誘導結合又はガルバニック結合によって量子ビット502にバイアスを印加する。量子ビット502のJJループ504は、アニーリングライン512に通信可能に結合される。アニーリングライン512は量子ビット502のアニールスケジュールを少なくとも部分的に制御し、JJループ504の主ローブ526に磁束バイアスを印加することによって量子ビット502のエネルギ障壁を上げる。アニーリングライン512は、量子プロセッサ内の量子ビットのサブセットの中の少なくとも1つの他の量子ビットに更に通信可能に結合され得る。量子ビット502のJJループ504は、第1の副ローブライン510a及び第2の副ローブライン510b(まとめて510)に更に通信可能に結合される。副ローブライン510は量子ビット502のJJループ504にバイアスを印加してJJの非対称性を補償し、少なくとも1つの他の量子ビットに対して量子ビット502を均質化する。
【0055】
PSDAC514a、514b、514cは、個々のJJループ516a、516b、516c(まとめて516)、及び個々のボディループ518a、518b、518c(まとめて518)をそれぞれ含む。量子ビット502のJJループ504は、第1のPSDAC514aのボディループ518aに通信可能に結合され、第2のPSDAC514bのボディループ518bに更に通信可能に結合される。結合は誘導又はガルバニックとすることができる。量子ビット502のJJループ504を第1のPSDAC514a及び第2のPSDAC514bに結合することは、PSDAC1 514a、514bによって生成されるSFQパルス間の標的タイミング分解能を実現することを可能にし得る。一実装では、量子ビット502のJJループ504をPSDAC514a、514bに結合することはサブナノ秒タイミングを実現することを可能にし得る。量子ビット502のボディループ506は、第3のPSDAC514cのボディループ518cに通信可能に結合される。PSDAC514のボディループ518は、個々のSFQ磁束バイアス発生源524a、524b、524c(まとめて524)にそれぞれ通信可能に結合される。SFQ磁束バイアス発生源524は、PSDAC514によって生成される信号の選択された方向を強化するためにPSDAC514の個々のボディループ518にバイアスをそれぞれ印加し、そのため量子ビット502のエネルギ障壁がfast fluxパルス中に上げられ又は下げられる。PSDAC514のボディループ518に印加されるバイアスは、プログラム可能な静的磁束バイアスであり得る。SFQ磁束バイアス発生源524は、PMM DAC等の従来のDAC又はアナログラインとすることができる。一実装では、SFQ磁束バイアス発生源524a、524bが従来のDACであり、SFQ磁束バイアス発生源524cがアナログラインである。PSDAC514のJJループ516は複合JJループである。一部の実装では、PSDAC514のJJループ516の少なくとも1つは複合-複合JJループであり得る。
【0056】
PSDAC514のJJループ516は個々の個々のトリガライン520a、520b、520c(まとめて520)にそれぞれ通信可能に結合される。一実装では、トリガライン520の1つが量子プロセッサ内の少なくとも1つの他のPSDACに更に通信可能に結合され得る。トリガライン520は個々のPSDAC514をそれぞれ活性化して、個々のPSDAC514の状態を第1の磁束状態から第2の磁束状態に変更する。一実装では、第1のPSDAC514aの第1の磁束状態が第3のPSDAC514cの第1の磁束状態と異なる。PSDACの状態を第1の磁束状態から第2の磁束状態に変更することは、数十ピコ秒の時間枠のうちに行うことができる。ボディループ518a、518bによって量子ビット502のJJループ504に結合される第1のPSDAC514a及び第2のPSDAC514bの磁束状態を変更することはfast flux step、fast fluxパルス、又はfast-step波形を生成する。このfast flux step、fast fluxパルス、又はfast-step波形は、量子ビット502のエネルギ障壁を上げるためにJJループ504の主ローブ526に適用することができる。ボディループ518cによって量子ビット502のボディループ506に結合される第3のPSDAC514cの磁束状態を変更することは、量子ビット502のスピン状態を準備するために使用することができるfast flux step、fast fluxパルス、又はfast-step波形を生成する。第3のPSDAC514cは、量子ビット502のボディループ506に印加されるバイアスを増加させる又は減少させることができる。トリガライン520は、アニールの始まりと終わりとの間の或る時点においてPSDAC514を活性化することができる。一部の実装では、トリガラインは少なくとも30MHzの帯域幅を有するアナログラインとすることができる。
【0057】
一実装では、第1のPSDAC514aのJJループ516a及び第2のPSDAC514bのJJループ516bが、従来のDAC(例えばPMM DAC)又はアナログライン等の少なくとも1つの同期デバイスに結合される。同期デバイスは、量子プロセッサ内の他のPSDACのスイッチング時間とPSDAC514a、514b、514cの少なくとも1つのスイッチング時間を非同期化し得る位相遅延を少なくとも部分的にオフセットすることができる。同期デバイスは、PSDAC514a、514b、514cの少なくとも1つによって生成されるfast flux stepを、量子プロセッサ内の少なくとも1つの他のPSDACによって生成される少なくとも1つの他のfast flux stepと同期させることができる。
【0058】
射影測定は、量子ビットが量子進化を経ている間に量子ビットを測定する際に有用であり得る。これはとりわけ、エネルギ障壁が低く量子効果が強いコヒーレントレジームに量子ビットがあるとき有用であり得る。
【0059】
図6は、本開示の少なくとも1つの図示の実施形態による、量子ビットの射影測定用のシステムを動作させるための方法600を示す流れ図である。方法600は、例えばハイブリッド計算システム又は古典的計算システムから受信される命令に応答して602から始まる。ハイブリッド計算システム又は古典的計算システムは、1組のPMM DAC及び/又は他の制御回路を使用して量子プロセッサ内に実装される量子アニーリングアルゴリズムによって量子アニーリング進化を開始するよう量子プロセッサを促すことができる。PMM DAC及び他の制御回路は、時間依存ハミルトニアンに従って1組の量子ビットの状態を操作することができる。604で、量子アニーリング進化中、PSDACを活性化するためにトリガラインによって信号を送信する。PSDACを活性化することは、誘導結合によってPSDACのJJループを活性化することを含み得る。606で、fast-step波形を生成するためにPSDACの磁束状態を第1の磁束状態から第2の磁束状態に変更する。608で、磁束状態の変更によって生じたfast-step波形が第1の量子ビットのエネルギ障壁を上げる。第1の量子ビットのエネルギ障壁を上げることは、トンネリングエネルギを減らして第1の量子ビットの状態をフリーズアウトすることを含み得る。任意選択的に610で、このfast-step波形を、少なくとも1つの他のPSDACの磁束状態の変更によって生じた少なくとも1つの他のfast-step波形と同期させる。同期はPMM DAC又はアナログライン等の同期デバイスによって行うことができる。動作610は、個々のPSDACに結合する少なくとも1つの追加の量子ビットがあるとき実行することができる。612で、少なくとも第1の量子ビットのスピン状態を測定する。動作610を実行した場合、動作612は第1の量子ビット及び少なくとも1つの追加の量子ビットのスピン状態を同期的に測定することを含むことができる。
【0060】
一部の実装では、動作602を行う前に、トリガライン及び同期デバイスの組み合わせによってPSDACに「プレバイアス」とも呼ばれるバイアスをかけることができる。PSDACは、動作640を行うときに印加されるバイアス以下の値までバイアスをかけることができる。かかる手法は、デバイス間のクロストークを最小化する際に有益であり得る。一部の実装では、動作602を実行した後、SFQ磁束バイアス発生源又は磁束バイアスDACによってPSDACのボディループにバイアスを印加することにより、PSDACのボディループ内の磁束オフセットを補償することができる。かかる手法は量子ビットJJループに印加される磁束の変化を減らし、意図しない不完全アニーリングを制限することができる。
【0061】
図7は、本開示の少なくとも1つの図示の実施形態による、量子ビットの量子進化を開始しモニタするための方法700を示す流れ図である。方法700は、例えばハイブリッド又は古典的計算システムから受信される命令に応答して702で始まる。磁束バイアスライン又はアナログライン等の磁束バイアス発生源を使用し、第1の量子ビットのボディループにバイアスを印加する。704で、第1の量子ビットを所与のスピン構成で初期化する。ハイブリッド計算システム又は古典的計算システムは、時間依存ハミルトニアンに従って進化することができる初期スピン構成を含む命令を与えることができる。706で、量子アニーリング進化が量子プロセッサによって開始される。ハイブリッド計算システム又は古典的計算システムは、1組のPMM DAC及び/又は他の制御回路を使用して実装される量子アニーリングアルゴリズムによって量子アニーリング進化を開始するよう量子プロセッサを促すことができる。708で、第1の量子ビットがコヒーレントレジームにあるとき、第1の量子ビットのボディループに印加されるバイアスを除去するために第1の量子ビットに結合されるPSDACを活性化する。710で、第1の量子ビットがコヒーレント量子進化を経る。コヒーレント量子進化の間、量子効果は強くエネルギ障壁は低い。任意選択的に712で、PSDACによって生成されるfast-flux step又はfast-step波形を、少なくとも1つの他のfast-flux step又はfast-step波形と同期させる。この少なくとも1つの他のfast-flux step又はfast-step波形は少なくとも1つの他のPSDACによって生成することができる。動作712は、個々のPSDACに結合する少なくとも1つの追加の量子ビットがあるとき実行することができる。714で、少なくとも第1の量子ビットのスピン状態を測定する。動作712を実行した場合、動作714は第1の量子ビット及び少なくとも1つの追加の量子ビットのスピン状態を同期的に測定することを含むことができる。
【0062】
本開示の一部の要素は、量子コンピュータ等のデジタルコンピュータ及びアナログコンピュータを含む計算システム内で利用することができる。一部の実装では、デジタルコンピュータを介してユーザによって与えられる命令に応答して、
図1~
図7の中で示したデバイス及び方法の要素が動作することができる。例えばユーザは、量子プロセッサ上の標的デバイスに印加するバイアスを決定することができる。標的デバイスにバイアスを印加するための命令を含むアルゴリズムがデジタルコンピュータ内に実装され得る。デジタルコンピュータは量子コンピュータと通信して、オンチップのチップDAC、アナログライン、又は量子プロセッサ上の他の制御回路によって量子プロセッサ上の標的デバイスにバイアスを印加することができる。
【0063】
図8は、デジタルコンピュータ802を含む計算システム800を示す。このデジタルコンピュータ802の例は、古典的なデジタル処理タスクを実行するために使用することができる1つ又は複数のデジタルプロセッサ806を含む。デジタルコンピュータ802は、少なくとも1つのシステムメモリ808、及びシステムメモリ808を含む様々なシステムコンポーネントをデジタルプロセッサ806に結合する少なくとも1つのシステムバス810を更に含むことができる。システムメモリ808は、射影測定命令モジュール812を記憶することができる。
【0064】
デジタルプロセッサ806は、1つ又は複数の中央処理装置(「CPU」)、グラフィックス処理装置(「GPU」)、デジタル信号プロセッサ(「DSP」)、特定用途向け集積回路(「ASIC」)、プログラマブルゲートアレイ(「FPGA」)、プログラマブル論理コントローラ(「PLC」)等の任意の論理処理ユニット若しくは回路(例えば集積回路)、及び/又はそれらのものの組み合わせとすることができる。
【0065】
一部の実装では、計算システム800が、1つ又は複数の量子プロセッサ814を含むことができるアナログコンピュータ804を含む。デジタルコンピュータ802は、例えばコントローラ826を介してアナログコンピュータ804と通信することができる。本明細書でより詳細に説明するように、デジタルコンピュータ802の命令においてアナログコンピュータ804によって特定の計算を実行することができる。
【0066】
デジタルコンピュータ802は、ユーザ入力/出力サブシステム816を含むことができる。一部の実装では、ユーザ入力/出力サブシステムは、ディスプレイ818、マウス820、及び/又はキーボード822等の1つ又は複数のユーザ入力/出力コンポーネントを含む。
【0067】
システムバス810は、メモリコントローラを有するメモリバス、周辺バス、及びローカルバスを含む任意の既知のバス構造又はアーキテクチャを使用することができる。システムメモリ808は、読取専用メモリ(「ROM」)、スタティックランダムアクセスメモリ(「SRAM」)、フラッシュNAND等の不揮発性メモリ、及びランダムアクセスメモリ(「RAM」)(不図示)等の揮発性メモリを含み得る。
【0068】
デジタルコンピュータ802は、他の非一時的コンピュータ又はプロセッサ可読記憶媒体又は不揮発性メモリ824も含むことができる。不揮発性メモリ824は、ハードディスク(例えば磁気ディスク)との間で読み書きするためのハードディスクドライブ、脱着可能な光ディスクとの間で読み書きするための光ディスクドライブ、及び/又はソリッドステート媒体(例えばNANDベースのフラッシュメモリ)との間で読み書きするためのソリッドステートドライブ(SSD)を含む様々な形を取り得る。光ディスクはCD-ROM又はDVDとすることができるのに対し、磁気ディスクは剛体のスピニング磁気ディスク又は磁気フロッピディスク又はディスケットとすることができる。不揮発性メモリ824はシステムバス810を介してデジタルプロセッサと通信することができ、システムバス810に結合される適切なインタフェース又はコントローラ826を含むことができる。不揮発性メモリ824は、デジタルコンピュータ802のためのプロセッサ若しくはコンピュータ可読命令、データ構造、又は他のデータ(プログラムモジュールと呼ぶこともある)用の長期記憶域の役割を果たすことができる。
【0069】
デジタルコンピュータ802はハードディスク、光ディスク、及び/又はソリッドステート記憶媒体を使用するものとして説明してきたが、他の種類の非一時的及び不揮発性のコンピュータ可読媒体を使用できることを当業者なら理解されよう、かかる磁気カセット、フラッシュメモリカード、フラッシュ、ROM、スマートカード等。一部のコンピュータアーキテクチャは、非一時的揮発性メモリ及び非一時的不揮発性メモリを使用することを当業者なら理解されよう。例えば、揮発性メモリ内のデータは不揮発性メモリにキャッシュすることができる。又は不揮発性メモリを提供するために集積回路を使用するソリッドステートディスク。
【0070】
様々なプロセッサ又はコンピュータ可読命令、データ構造、又は他のデータをシステムメモリ808内に記憶することができる。例えばシステムメモリ808は、リモートクライアントと通信し、デジタルコンピュータ802上の資源及びアナログコンピュータ804上の資源を含む資源の使用をスケジューリングするための命令を記憶することができる。更に、例えばシステムメモリ808は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されるとき、本明細書の他の箇所で記載した射影測定技法を実行するための命令を実行するための様々なアルゴリズムを少なくとも1つのプロセッサに実行させる、プロセッサ実行可能命令又はデータの少なくとも1つを記憶することができる。例えばシステムメモリ808は、fast flux step又はfast step波形を生成するためのプロセッサ又はコンピュータ可読命令を含む射影測定命令モジュール812を記憶することができる。かかる備えは、例えば本明細書でより詳細に説明するように、量子ビット又はPSDACにバイアスを印加して量子ビットの射影測定を行うためのfast flux stepを生成することを含み得る。
【0071】
一部の実装では、システムメモリ808は、アナログコンピュータ804に対する前処理、共処理、及び後処理を実行するためのプロセッサ若しくはコンピュータ可読計算命令及び/又はデータを記憶することができる。システムメモリ808は、アナログコンピュータ804と対話するための1組のアナログコンピュータインタフェース命令を記憶することができる。実行時に、記憶された命令及び/又はデータは、アナログライン又はオンチップDACによってバイアスを印加することで少なくとも1つの量子ビットの射影測定をシステムに行わせる。例えば記憶された命令を実行することは、
図1の回路100等の回路内のPSDACを活性化するためにトリガラインによって信号を送信することをもたらし得る。
【0072】
アナログコンピュータ804は、量子プロセッサ814等の少なくとも1つのアナログプロセッサを含むことができる。アナログコンピュータ804は隔離環境、例えば量子コンピュータの内部要素を熱、磁場、及び他の外部ノイズ(不図示)から遮蔽する隔離環境内に設けることができる。隔離環境はアナログプロセッサを極低温で、例えば約1°ケルビン未満の温度まで冷却するように動作可能な冷凍機、例えば希釈冷凍機を含むことができる。
【0073】
アナログコンピュータ804は、量子ビット、カプラ、及び他のデバイス等のプログラム可能要素を含むことができる。量子ビットは、読み出しシステム832によって読み出すことができる。読み出した結果は、デジタルコンピュータ802の他のコンピュータ又はプロセッサ可読命令に送信することができる。量子ビットは量子ビット制御システム828によって制御することができる。量子ビット制御システム828は、標的デバイスにバイアスを印加するように動作可能なオンチップDAC及びアナログラインを含むことができる。量子ビットを結合するカプラは、カプラ制御システム830によって制御することができる。結合制御システム830は、オンチップDAC及びアナログライン等の同調要素を含むことができる。量子ビット制御システム828及びカプラ制御システム830は、アナログプロセッサ804に関して本明細書で説明した量子アニーリングスケジュールを実装するために使用することができる。
【0074】
上記で説明した方法、プロセス、又は技法は、1つ又は複数の非一時的プロセッサ可読媒体上に記憶される一連のプロセッサ可読命令によって実装することができる。上記で説明した方法、プロセス、又は技法の方法の一部の例は、断熱量子コンピュータ、又は量子アニーラ、又は断熱量子コンピュータ若しくは量子アニーラの動作をプログラムし或いは制御するためのシステム、例えば少なくとも1つのデジタルプロセッサを含むコンピュータ等の専用装置によって部分的に実行される。上記で説明した方法、プロセス、又は技法は様々な動作を含むことができるが、代替例では特定の動作を省略することができ及び/又は追加の動作を加えることができることを当業者なら理解されよう。示した動作の順序は専ら例示目的で示しており、代替例では異なり得ることを当業者なら理解されよう。上記で説明した方法、プロセス、又は技法の例示的な動作又は操作の一部は反復的に実行される。上記で説明した方法、プロセス、又は技法の一部の動作はそれぞれの反復中に、複数の反復の後で、又は全ての反復の終わりに実行することができる。
【0075】
要約の中で記載した内容を含む例示した実装についての上記の説明は、網羅的であることも実装を開示した厳密な形態に限定することも意図しない。本明細書では特定の実装及び例を例示目的で記載したが、当業者によって理解されるように本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなしに様々な等価の修正を加えることができる。様々な実装について本明細書で示した教示は、必ずしも上記で概して説明した量子計算のための例示的方法に限らず量子計算の他の方法に適用することができる。
【0076】
上記で説明した様々な実装は、更なる実装をもたらすために組み合わせることができる。これだけに限定されないが、米国特許第7,876,248号、米国特許第8,098,179号、米国仮特許出願第62/670,509号、Johnson et al., “A scalable control system for a superconducting adiabatic quantum optimization processor”, arXiv:0907.3757、及びBunyk et al., “Architectural considerations in the design of a superconducting quantum annealing processor”, arXiv:1401.5504を含む、本明細書で言及し及び/又は出願データシートに列挙した同一出願人による米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、及び外国特許出願の全てを参照によりその全体を本明細書に援用する。
【0077】
上記で詳述した説明に照らしてこれらの及び他の変更を実装に加えることができる。概して、添付の特許請求の範囲において使用する用語は、本明細書及び特許請求の範囲の中で開示する特定の実装に特許請求の範囲を限定するように解釈すべきでなく、かかる特許請求の範囲の権利が与えられる等価物の全範囲と共に、あり得る全ての実装を含むように解釈すべきである。従って特許請求の範囲が本開示によって限定されることはない。