(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】ベーンポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 2/344 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
F04C2/344 331J
(21)【出願番号】P 2021514834
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2020011467
(87)【国際公開番号】W WO2020213327
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2019078491
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉原 雅道
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-278258(JP,A)
【文献】特開2014-126043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/344
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベーンポンプであって、
回転駆動されるロータと、
前記ロータに対して径方向に往復動自在に設けられる複数のベーンと、
前記ロータの回転に伴って前記ベーンの先端部が摺動する内周カム面を有するカムリングと、
前記ロータ及び前記カムリングを収容する収容部を有するボディと、
前記ボディに取り付けられ、前記収容部を閉塞するカバーと、
前記ロータ、前記カムリング及び隣り合う前記ベーンによって形成されるポンプ室と、
前記ボディに設けられた吸込通路に導かれる作動流体を前記ポンプ室に案内する第1吸込ポートと、
前記吸込通路から前記カバーまたは前記ボディに設けられた連通路を通じて導かれる作動流体を前記ポンプ室に案内する第2吸込ポートと、
前記ポンプ室から吐出される作動流体の余剰流体が導かれるリターン通路と、を備え、
前記リターン通路は、
前記カムリングの径方向外側において前記ロータの回転軸方向に沿って余剰流体が流れる軸方向通路と、
前記軸方向通路を通じて導かれる余剰流体を前記第2吸込ポートに向けて反転させる反転通路と、を有
し、
前記軸方向通路及び前記反転通路は、前記吸込通路及び前記連通路とは別に設けられるベーンポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のベーンポンプであって、
前記連通路と前記ポンプ室との間に配置されるプレート部材をさらに備え、
前記プレート部材には、外周面に開口するとともに、両端面に亘って貫通する切り欠き部が設けられ、
前記第2吸込ポートは、前記プレート部材の前記切り欠き部によって形成されるサイドポートを有し、
前記反転通路は、前記軸方向通路により導かれた作動流体を前記サイドポートに向けて反転させるベーンポンプ。
【請求項3】
請求項1に記載のベーンポンプであって、
前記反転通路と前記連通路との間には、前記反転通路と前記連通路とを前記回転軸方向において仕切る仕切り部が設けられるベーンポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーンポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ室から吐出された作動油の一部(余剰油)をポンプ室に還流させるベーンポンプが知られている(JP2014-126043A参照)。JP2014-126043Aに記載のベーンポンプは、ポンプハウジングに設けた吸入口が、ポンプハウジングに設けたサブ吸入油路からサブ吸入ポートに直に連通されるとともに、ポンプハウジング内におけるカムリングの周囲に設けた外周油路を介してメイン吸入油路からメイン吸入ポートに連通されている。
【0003】
また、JP2014-126043Aに記載のベーンポンプは、余剰油の還流構造として、サブポンプ室のサブ吐出ポートに通じるサブ吐出油路に設けられた切換弁から分岐する戻り油路がカバーに設けられ、この戻り油路がポンプハウジングに設けられたメイン吸入油路を介して、メインポンプ室のメイン吸入ポートに連通されている。このため、サブ吐出ポートから吐出された余剰油が、戻り油路を経由してメイン吸入ポートに還流する。
【発明の概要】
【0004】
JP2014-126043Aに記載のベーンポンプでは、戻り油路に導かれた余剰油が、メイン吸入ポートに流れ込むとともに外周油路にも流れ込む。外周油路に導かれる余剰油の流れの向きは、吸入口から外周油路を通じてメイン吸入ポートに向かって流れる作動油に対して逆向きである。このため、余剰油が、吸入口からメイン吸入ポート及びサブ吸入ポートに吸入される作動油の流れを阻害し、ベーンポンプの吸込性能が低下してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、ベーンポンプの吸込性能を向上することを目的とする。
【0006】
本発明のある態様によれば、ベーンポンプは、回転駆動されるロータと、前記ロータに対して径方向に往復動自在に設けられる複数のベーンと、前記ロータの回転に伴って前記ベーンの先端部が摺動する内周カム面を有するカムリングと、前記ロータ及び前記カムリングを収容する収容部を有するボディと、前記ボディに取り付けられ、前記収容部を閉塞するカバーと、前記ロータ、前記カムリング及び隣り合う前記ベーンによって形成されるポンプ室と、前記ボディに設けられた吸込通路に導かれる作動流体を前記ポンプ室に案内する第1吸込ポートと、前記吸込通路から前記カバーまたは前記ボディに設けられた連通路を通じて導かれる作動流体を前記ポンプ室に案内する第2吸込ポートと、前記ポンプ室から吐出される作動流体の余剰流体が導かれるリターン通路と、を備え、前記リターン通路は、前記カムリングの径方向外側において前記ロータの回転軸方向に沿って余剰流体が流れる軸方向通路と、前記軸方向通路を通じて導かれる余剰流体を前記第2吸込ポートに向けて反転させる反転通路と、を有し、軸方向通路及び反転通路は、吸込通路及び連通路とは別に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るベーンポンプの断面図である。
【
図2】
図2は、ベーンポンプの内部構造を示す図であり、カバー及びカバー側サイドプレートが取り外された状態を示す。
【
図3】
図3は、カムリング側から見たボディ側サイドプレートの正面図である。
【
図4】
図4は、カバーとカバー側サイドプレートの斜視図である。
【
図6】
図6は、
図4のVI方向から見たカバーとカバー側サイドプレートの平面図であり、吸込通路から連通路に導かれた作動油の流れ(主流)、及び、リターン通路を流れる作動油の流れ(リターン流)について示す。
【
図7A】
図7Aは、本実施形態に係るベーンポンプの側面断面模式図であり、吸込通路からカートリッジに導かれる作動油の流れ(主流)、及び、リターン通路からカートリッジに導かれる作動油の流れ(リターン流)について示す。
【
図7B】
図7Bは、本実施形態の比較例に係るベーンポンプの側面断面模式図であり、吸込通路からカートリッジに導かれる作動油の流れ(主流)、及び、リターン通路からカートリッジに導かれる作動油の流れ(リターン流)について示す。
【
図8】
図8は、本実施形態の第1変形例に係るベーンポンプの側面断面模式図であり、吸込通路からカートリッジに導かれる作動油の流れ(主流)、及び、リターン通路からカートリッジに導かれる作動油の流れ(リターン流)について示す。
【
図9】
図9は、本実施形態の第2変形例に係るベーンポンプの側面断面模式図であり、吸込通路からカートリッジに導かれる作動油の流れ(主流)、及び、リターン通路からカートリッジに導かれる作動油の流れ(リターン流)について示す。
【
図10】
図10は、本実施形態の第3変形例に係るベーンポンプの側面断面模式図であり、吸込通路からカートリッジに導かれる作動油の流れ(主流)、及び、リターン通路からカートリッジに導かれる作動油の流れ(リターン流)について示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るベーンポンプについて説明する。ベーンポンプは、車両に搭載されるパワーステアリング装置、変速機等の流体圧機器の流体圧供給源として用いられる。ここでは、作動流体として作動油が用いられるベーンポンプについて説明するが、作動水等の他の流体を作動流体として用いてもよい。
【0009】
図1は、ベーンポンプ100の断面図である。
図2は、ベーンポンプ100の内部構造を示す図であり、カバー20及びカバー側サイドプレート40が取り外された状態を示す。なお、
図1は、
図2及び
図4に示すI-I線に沿う断面を模式的に示している。
【0010】
図1及び
図2に示すように、ベーンポンプ100は、低圧の作動油を吸い込み、高圧の作動油を吐出するポンプカートリッジ(以下、単にカートリッジと記す)9と、カートリッジ9を収容する収容部としての収容凹部10bを有するボディ10と、ボディ10に取り付けられ、収容凹部10bの開口部を閉塞するカバー20と、ボディ10及びカバー20に軸受11,12を介して回転自在に支持される駆動シャフト1と、を備える。
【0011】
カートリッジ9は、駆動シャフト1に連結され回転駆動されるロータ2と、ロータ2の外周面に開口する複数のスリット2sと、ロータ2のスリット2sに摺動自在に収装される複数のベーン3と、ロータ2及びベーン3を収容するカムリング4と、ロータ2及びカムリング4を挟むように配置される一対のサイド部材(ボディ側サイドプレート30及びカバー側サイドプレート40)と、を備える。
【0012】
ベーンポンプ100は、エンジン、電動モータ等の駆動装置(不図示)によって駆動され、駆動シャフト1に連結されたロータ2が、
図2の矢印Aで示すように時計回りに回転駆動されることにより流体圧を発生させる。
【0013】
以下において、ロータ2の回転中心軸Oに沿う方向を「軸方向」と称し、ロータ2の回転中心軸Oを中心とする放射方向を「径方向」と称し、ベーンポンプ100の作動時にロータ2が回転する方向を「回転方向」と称する。
【0014】
図1に示すように、ボディ側サイドプレート30は、収容凹部10bの底面とカムリング4との間に配置される円板状部材であり、ボディ側サイドプレート30には、ロータ2の軸方向一端面(図示右側面)が摺接するとともにカムリング4の軸方向一端面が当接する。
【0015】
カバー側サイドプレート40は、カバー20とカムリング4との間に配置される円板状部材であり、カバー側サイドプレート40には、ロータ2の軸方向他端面(図示左側面)が摺接するとともにカムリング4の軸方向他端面が当接する。なお、カバー側サイドプレート40は、後述の連通路102とポンプ室6との間に配置されるプレート部材である。
【0016】
このようにボディ側サイドプレート30及びカバー側サイドプレート40は、ロータ2及びカムリング4の軸方向両端面に対向する状態で配置される。つまり、ボディ側サイドプレート30及びカバー側サイドプレート40は、ロータ2及びカムリング4を軸方向に挟んで配置される。
【0017】
ロータ2、複数のベーン3、カムリング4、カバー側サイドプレート40及びボディ側サイドプレート30は、カートリッジ9として組み立てられ、ボディ10の収容凹部10bに収容される。この状態で、ボディ10にカバー20が取り付けられることで、収容凹部10bは封止される。
【0018】
図2に示すように、ロータ2には、複数のスリット2sが放射状に形成される。スリット2sは、ロータ2の外周に開口部2aを有する。スリット2sの開口部2aは、ロータ2の外周から径方向外側に隆起した隆起部23に形成される。つまり、ロータ2の外周にはスリット2sの数だけ隆起部23が形成される。隆起部23は、ベーン3を回転方向前後において支持している。
【0019】
ベーン3は、ロータ2に対して径方向に往復動自在に設けられる。ベーン3は、矩形平板状であり、スリット2sに摺動自在に挿入される。ベーン3は、スリット2sから突出する方向の端部である先端部3aと、先端部3aとは反対側の端部である基端部3bと、を有する。スリット2s内の底部側において、スリット2sの内周面とベーン3の基端部3bとによって背圧室5が形成される。背圧室5は後述する吐出ポート31に連通しており、背圧室5には吐出ポート31から高圧の作動油が導かれる。ベーン3は、背圧室5の圧力によってスリット2sから突出する方向に押圧される。
【0020】
カムリング4は、略長円形状をした内周面である内周カム面4aと、位置決めピン8が挿通するピン孔4bと、を有する環状の部材である。内周カム面4aは、ロータ2の回転に伴って複数のベーン3の先端部3aが摺動する面である。
【0021】
ロータ2が回転すると、ベーン3に遠心力が生じる。この遠心力によって、ベーン3はスリット2sから突出する方向に付勢される。つまり、ベーン3は、基端部3bを押圧する背圧室5の流体圧力と、ロータ2の回転に伴って働く遠心力と、によってスリット2sから突出する方向(径方向外方)に付勢される。ベーン3が径方向外方に付勢されると、ベーン3の先端部3aがカムリング4の内周カム面4aに摺接する。これにより、カムリング4の内部には、ロータ2の外周面、カムリング4の内周カム面4a、隣り合うベーン3、ボディ側サイドプレート30及びカバー側サイドプレート40によってポンプ室6が形成される。
【0022】
カムリング4の内周カム面4aは略長円形状であるので、ロータ2の回転に伴って内周カム面4aを摺接する各ベーン3によって区画されるポンプ室6の容積は、拡張と収縮とを繰り返す。ポンプ室6が拡張する拡張領域(吸込領域)では作動油がポンプ室6に吸い込まれ、ポンプ室6が収縮する収縮領域(吐出領域)ではポンプ室6から作動油が吐出される。
【0023】
本実施形態に係るベーンポンプ100は、ベーン3が1回目の往復動をする第1吸込領域82a及び第1吐出領域82b、並びに、ベーン3が2回目の往復動をする第2吸込領域82c及び第2吐出領域82dを有する。ポンプ室6は、ロータ2が1回転する間に、第1吸込領域82aにて拡張し、第1吐出領域82bにて収縮し、第2吸込領域82cにて拡張し、第2吐出領域82dにて収縮する。なお、本実施形態に係るベーンポンプ100は、2つの吸込領域82a,82c及び2つの吐出領域82b,82dを有するが、これに限らず、3つ以上の吸込領域及び3つ以上の吐出領域を有する構成としてもよい。
【0024】
図1に示すように、ベーンポンプ100は、タンク60に連通し、タンク60に貯留されている作動油を吸込領域82a,82cにあるポンプ室6に導く吸込通路101と、吐出領域82b,82dにあるポンプ室6から吐出される作動油を導く吐出通路(不図示)と、吐出領域82b,82dにあるポンプ室6から吐出される作動油の一部である余剰油(余剰流体)が導かれるリターン通路120と、をさらに備える。
【0025】
ボディ10の収容凹部10bの底面側には、ボディ10とボディ側サイドプレート30によって環状の高圧室14が形成される。高圧室14は、吐出通路62を介してベーンポンプ100の外部の流体圧機器70(例えば、パワーステアリング装置、変速機等)に接続される。
【0026】
ボディ10に設けられる吸込通路101に導かれた作動油は、カートリッジ9の第1吸込ポート91及び第2吸込ポート92を通じて、ポンプ室6に吸い込まれる。第1吸込ポート91及び第2吸込ポート92の詳細については、後述する。
【0027】
図1及び
図2に示すように、ボディ10におけるカートリッジ9の第1吸込ポート91に対応する位置には、吸込通路101における作動油の出口側の端部に接続される第1導入凹部13aが形成される。ボディ10におけるカートリッジ9の第2吸込ポート92に対応する位置には、リターン通路120における作動油の出口側の端部に接続される第2導入凹部13bが形成される。第1導入凹部13a及び第2導入凹部13bは、カムリング4を挟んで対向する位置に設けられる。
【0028】
図1に示すように、カバー20には、吸込通路101に連通する連通路102が設けられる。カートリッジ9は、第1吸込ポート91が吸込通路101の端部に位置し、第2吸込ポート92が連通路102の端部(図示上端部)に位置するように、収容凹部10bに組み込まれる。
【0029】
図1及び
図2に示すように、カムリング4には、その外周面から内周カム面4aに亘って貫通する切り欠き部4c,4dが設けられる。一方の切り欠き部4cは、ボディ側サイドプレート30に接する軸方向端面に開口し、他方の切り欠き部4dは、カバー側サイドプレート40に接する軸方向端面に開口する。
【0030】
換言すれば、カムリング4は、ボディ側サイドプレート30及びカバー側サイドプレート40に当接する幅広部4e(
図5参照)と、ボディ側サイドプレート30及びカバー側サイドプレート40に当接しない幅狭部4f(
図5参照)と、を有する。切り欠き部4c,4dは、幅狭部4fの軸方向両側に設けられる。
【0031】
図3は、カムリング4側から見たボディ側サイドプレート30の正面図である。
図3に示すように、ボディ側サイドプレート30は、円形の板状部材である。ボディ側サイドプレート30は、ベーン3の軸方向端面が摺動する領域を含む摺動面30aと、駆動シャフト1が挿通する貫通孔32と、第1吐出領域82b及び第2吐出領域82dのそれぞれに対応するように形成される吐出ポート31と、第1吸込領域82a及び第2吸込領域82cのそれぞれに対応するように形成される窪み部33と、位置決めピン8が挿通するピン孔39と、を有する。
【0032】
吐出ポート31は、貫通孔32を挟んで対向する位置に二か所設けられる。吐出ポート31は、貫通孔32を中心とした円弧状に形成される。吐出ポート31は、ボディ側サイドプレート30を貫通し、ボディ10に形成された高圧室14に連通する。吐出ポート31は、ポンプ室6から吐出される作動油を高圧室14に導く。高圧室14に流入した作動油は、吐出通路62を通じてベーンポンプ100の外部の流体圧機器70に供給される(
図1参照)。
【0033】
ボディ側サイドプレート30の摺動面30aには、貫通孔32を挟んで対向するように形成される一対の背圧溝34と、貫通孔32を挟んで対向するように形成される一対の背圧溝35と、を有する。背圧溝34,35は、摺動面30aに開口する溝状に形成される。背圧溝34,35は、貫通孔32を中心とした円弧状に形成され、背圧溝34,35と重なる複数の背圧室5と連通する。また、背圧溝34,35は、高圧室14に連通する。
【0034】
図1及び
図3に示すように、窪み部33は、貫通孔32を挟んで対向する位置に二か所設けられる。窪み部33は、ボディ10の第1導入凹部13a及び第2導入凹部13bに対応する位置に形成される。窪み部33は、ボディ側サイドプレート30における外周面及びカムリング4に接する端面に開口する凹形状となるように形成される。窪み部33の外周端はボディ側サイドプレート30の外周面まで達している。窪み部33の深さ、すなわちカムリング4に接する端面から窪み部33の底面までの軸方向長さは、ボディ側サイドプレート30の幅(厚み)よりも小さい。
【0035】
図4は、カバー20とカバー側サイドプレート40を示す斜視図である。
図4に示すように、カバー側サイドプレート40は、ベーン3の軸方向端面が摺動する領域を含む摺動面40aと、駆動シャフト1が挿通する貫通孔42と、第1吐出領域82b及び第2吐出領域82dのそれぞれに対応するように形成される対向溝41と、第1吸込領域82a及び第2吸込領域82cのそれぞれに対応するように形成される切り欠き部43と、位置決めピン8が挿通するピン孔49と、を有する円形の板状部材である。カバー側サイドプレート40は、位置決めピン8によってカムリング4及びボディ側サイドプレート30に対して位置決めされる。
【0036】
対向溝41は、貫通孔42を中心とした円弧状に形成される溝であり、ベーン3及びポンプ室6を挟んで吐出ポート31に軸方向で対向するように形成される。つまり、対向溝41は、ポンプ室6を通じて吐出ポート31と連通する。対向溝41には、吐出ポート31と同じ圧力が作用するため、吐出ポート31内の圧力によってベーン3に作用する力は、対向溝41の圧力によって相殺される。これにより、吐出ポート31内の圧力によってベーン3がカバー側サイドプレート40に押し付けられることを防止することができる。
【0037】
図1及び
図4に示すように、カバー側サイドプレート40の摺動面40aには、貫通孔42を挟んで対向するように形成される一対の背圧溝44と、貫通孔42を挟んで対向するように形成される一対の背圧溝45と、を有する。背圧溝44,45は、摺動面40aに開口する溝状に形成される。背圧溝44,45は、貫通孔32を中心とした円弧状に形成され、背圧溝44,45と重なる複数の背圧室5と連通する。背圧溝44と背圧溝45とは連通溝によって連通する。また、背圧溝44,45は、高圧室14に連通する。
【0038】
切り欠き部43は、貫通孔42を挟んで対向する位置に二か所設けられる。切り欠き部43は、ボディ10の第1導入凹部13a及び第2導入凹部13bに対応する位置に形成される。切り欠き部43は、カバー側サイドプレート40の外周面に開口するとともに、軸方向両端面に亘って貫通するように形成される。切り欠き部43は、カバー側サイドプレート40の周方向の一部における幅全体に亘って、径方向外側から内側に向かって窪む凹形状となるように形成される。
【0039】
図5は、カートリッジの斜視図である。
図1及び
図5に示すように、ボディ側サイドプレート30をカムリング4に組み付けた状態では、ボディ側サイドプレート30の窪み部33がカムリング4の切り欠き部4cに隣接して配置される。ボディ側サイドプレート30の窪み部33とカムリング4の切り欠き部4cとによって、カートリッジ9のボディ側サイドポート51が形成される。
【0040】
図1及び
図5に示すように、カバー側サイドプレート40をカムリング4に組み付けた状態では、カバー側サイドプレート40の切り欠き部43がカムリング4の切り欠き部4dに隣接して配置される。カバー側サイドプレート40の切り欠き部43とカムリング4の切り欠き部4dとによって、カートリッジ9のカバー側サイドポート52が形成される。
【0041】
カートリッジ9は、一対のボディ側サイドポート51と、一対のカバー側サイドポート52と、を有する。ここで、第1吸込領域82aに設けられるボディ側サイドポート51及びカバー側サイドポート52をカートリッジ9の第1吸込ポート91と称する。また、第2吸込領域82cに設けられるボディ側サイドポート51及びカバー側サイドポート52を第2吸込ポート92と称する。換言すれば、第1吸込ポート91は、第1吸込領域82aに設けられるボディ側サイドポート51及びカバー側サイドポート52を有し、第2吸込ポート92は、第2吸込領域82cに設けられるボディ側サイドポート51及びカバー側サイドポート52を有する。
【0042】
第1吸込ポート91は、吸込通路101に導かれる作動油を第1吸込領域82aに位置するポンプ室6に案内する。第2吸込ポート92は、吸込通路101からカバー20に設けられる連通路102を通じて導かれる作動油を第2吸込領域82cに位置するポンプ室6に案内する。
【0043】
図1を参照して、リターン通路120について詳しく説明する。
図1に示すように、リターン通路120は、ポンプ室6から吐出され吐出通路62を通じて流体圧機器70に供給される作動油の流量を制御する流量制御弁71に接続され、流体圧機器70に供給されない余剰油を第2導入凹部13bに導く。なお、流量制御弁71は、ボディ10外に設けてもよいし、ボディ10内に設けてもよい。
【0044】
リターン通路120は、ボディ10に設けられる軸方向通路としてのボディ内通路121と、カバー20に設けられ、ボディ内通路121によって導かれた余剰油を、サイドポートとしての第2吸込ポート92のカバー側サイドポート52に向けて反転させる反転通路122と、を有する。
【0045】
ボディ内通路121は、第2導入凹部13bの径方向外側、すなわち、カムリング4の径方向外側において、軸方向に沿ってボディ10を直線状に貫通するように形成される。ボディ10の軸方向一端面(
図1中の右側端面)には、ボディ内通路121の開口端となるリターン通路120の入口120iが形成される。また、ボディ内通路121と第2導入凹部13bとの間には、ボディ内仕切り部111が形成される。なお、ボディ内通路121は、ロータ2の回転中心軸Oに対して略平行に形成されるが、完全な平行である必要はなく、回転中心軸Oに対して径方向や周方向にわずかに傾いて形成されていてもよい。
【0046】
反転通路122は、カバー20の軸方向一端側(
図1中の右端側)から他端側(
図1中の左端側)に向かって窪んだ凹部であり、断面が半円形状となるように形成されている。ボディ内通路121と第2導入凹部13bとの間に設けられたボディ内仕切り部111の先端部は、反転通路122の内周面によって形成される円弧の中心点近傍に位置する。
【0047】
反転通路122の開口部は、ボディ内通路121の開口部に対向する入口開口部122iと、第2導入凹部13bの開口部に対向する出口開口部122oと、を有する。出口開口部122oは、駆動シャフト1側の端部が、カバー側サイドプレート40の切り欠き部43の開口部に対向する。
【0048】
図6は、
図4のVI方向から見たカバー20とカバー側サイドプレート40の平面図である。
図6に示すように、連通路102は、第1吸込領域82aに設けられる入口部102aと、第2吸込領域82cに設けられる出口部102bと、入口部102aと出口部102bとの間に設けられる2本の中間通路102cと、を有する。中間通路102cは、駆動シャフト1の周囲に沿うように円弧状に形成される。
【0049】
カバー20には、反転通路122と連通路102とを仕切る仕切り部123が設けられる。
図1に示すように、仕切り部123は、反転通路122及び連通路102の底部(
図1の左端部)からカバー20の開口面まで、軸方向に沿って延在している。
【0050】
図1及び
図6を参照して、ベーンポンプ100が動作したときの作動油の流れについて説明する。なお、
図6の矢印は、吸込通路101から連通路102に導かれた作動油の流れ、及び、リターン通路120を流れる作動油の流れの方向について示している。
図6における矢印M1~M3は、連通路102を流れる作動油の流れ(主流とも記す)を示し、矢印R1,R2は、リターン通路120を流れる作動油の流れ(リターン流とも記す)を示す。なお、矢印M3,R2は、図面の紙面に垂直な直線の方向に沿って奥側から手前側に向かう流れを示し、矢印R1は、図面の紙面に垂直な直線の方向に沿って手前側から奥側に向かう流れを示している。
【0051】
エンジン等の駆動装置(不図示)の動力によって駆動シャフト1が回転駆動されると、ロータ2が
図2における矢印Aで示す方向に回転する。ロータ2の回転に伴って、第1吸込領域82a及び第2吸込領域82cに位置するポンプ室6が拡張する。
【0052】
これにより、タンク60内の作動油が、
図1に示すように、通路61を通じてベーンポンプ100に導かれる。ベーンポンプ100に導かれた作動油は、ボディ10の吸込通路101から第1吸込ポート91を通じて第1吸込領域83aに位置するポンプ室6に吸い込まれる。
【0053】
また、ベーンポンプ100に導かれた作動油は、ボディ10の吸込通路101から連通路102にも流れ込む。
図6に示すように、吸込通路101から連通路102の入口部102aに導かれた作動油(矢印M1参照)は、分岐されて2本の中間通路102cに導かれる。中間通路102cに導かれた作動油は、中間通路102cに沿って流れ(矢印M2参照)、出口部102bで合流する。出口部102bに導かれた作動油は、向きを変えて軸方向に沿って流れ、第2吸込ポート92を通じて第2吸込領域83cに位置するポンプ室6に吸い込まれる(矢印M3参照)。
【0054】
さらに、
図1に示すように、流体圧機器70に供給されない余剰油が、ボディ内通路121に導かれる。ボディ内通路121に導かれた作動油は、軸方向に沿ってカバー20側に向かって流れ、カバー20内の反転通路122に導入される(
図6の矢印R1も参照)。反転通路122に導入された作動油は、円弧状の内周面に沿って、その流れの向きを反転させる。つまり、ボディ10からカバー20に向かって導入された作動油の流れの向きが、反転通路122によって逆向きに変換される。反転通路122によって反転した作動油は、反転通路122の出口開口部122oから第2導入凹部13b及びカバー側サイドプレート40の切り欠き部43に向かって流れ込む(
図6の矢印R2も参照)。
【0055】
第2導入凹部13bに導かれた作動油は、第2導入凹部13bとカムリング4の外周面との間を軸方向に流れ、第2吸込ポート92のボディ側サイドポート51を通じて第2吸込領域82cに位置するポンプ室6に吸い込まれる。カバー側サイドプレート40の切り欠き部43に導かれた作動油は、第2吸込ポート92のカバー側サイドポート52を通じて第2吸込領域82cに位置するポンプ室6に吸い込まれる。なお、カバー側サイドプレート40の切り欠き部43に導かれた作動油の一部は、カムリング4の切り欠き部4dにおける軸方向に直交する平面である幅狭部4fの軸方向端面4gに当たって向きを変え、ポンプ室6の径方向外側からポンプ室6内に導入される。
【0056】
ロータ2の回転に伴って、第1吐出領域82b及び第2吐出領域82dに位置するポンプ室6が収縮する。これにより、ポンプ室6内の作動油が、吐出ポート31(
図2参照)を通って高圧室14に吐出される。高圧室14に吐出された作動油は、吐出通路62を通じて外部の流体圧機器70へと供給される。
【0057】
図7A及び
図7Bを参照して、上述の反転通路122を設けたことによる効果を比較例と比較して説明する。
図7Aは、本実施形態に係るベーンポンプ100の側面断面模式図であり、吸込通路101からカートリッジ9に導かれる作動油の流れ(主流)、及び、リターン通路120からカートリッジ9に導かれる作動油の流れ(リターン流)について示す。
図7Bは、本実施形態の比較例に係るベーンポンプ100Aの側面断面模式図であり、吸込通路101からカートリッジ9に導かれる作動油の流れ(主流)、及び、リターン通路120Aからカートリッジ9に導かれる作動油の流れ(リターン流)について示す。図中、吸込通路101に導入された作動油の流れ(主流)を白抜きの矢印で模式的に示し、リターン通路120,120Aに導入された作動油の流れ(リターン流)を黒の矢印で模式的に示す。
【0058】
図7Bに示すように、本実施形態の比較例に係るベーンポンプ100Aでは、リターン通路120Aが、ボディ10Aの軸方向一端(図示下端)に設けられる入口から第2導入凹部13bに向かって直線状に設けられており、本実施形態で説明した反転通路122を有していない。このため、リターン通路120Aに導かれた余剰油は、その多くが第2導入凹部13bから連通路102に侵入する。
【0059】
リターン通路120Aから第2導入凹部13bに導かれる余剰油の流れ(リターン流)の向きは、吸込通路101から連通路102を通じて第2導入凹部13bに向かう作動油の流れ(主流)に対して逆向きである。このため、吸込通路101から連通路102を通じて第2吸込ポート92に吸い込まれる作動油の流れが阻害され、圧損となる。
【0060】
また、第2吸込ポート92で吸いきれなかった余剰油が、連通路102を通じて第1吸込ポート91に向かって逆流し、吸込通路101から第1吸込ポート91に吸い込まれる作動油の流れを阻害するので、第1吸込ポート91からポンプ室6への吸込性能が低くなるおそれがある。したがって、本実施形態の比較例では、リターン通路120Aに導かれる余剰油によって、ベーンポンプ100Aの吸込性能が低下してしまうおそれがある。
【0061】
これに対して本実施形態に係るベーンポンプ100では、
図7Aに示すように、リターン通路120のボディ内通路121に導かれた余剰油は、反転通路122によって略180度反転する。これにより、連通路102から第2吸込ポート92に向かう作動油の流れ(主流)の向きと、反転通路122によって反転され、第2吸込ポート92に向かう余剰油の流れ(リターン流)の向きと、を略同じにすることができる。このため、吸込通路101から連通路102を通じて第2吸込ポート92に導かれる作動油と、リターン通路120から第2吸込ポート92に導かれる余剰油と、がポンプ室6に効率よく吸い込まれる。このため、吸込通路101から連通路102を通じて第2吸込ポート92に吸い込まれる作動油の流れが、リターン流によって阻害されることが抑制されるので、上記比較例に比べて圧損が低減する。
【0062】
なお、カバー20には、反転通路122と連通路102とを仕切る仕切り部123が設けられているため、余剰油が連通路102に流れ込むことを効果的に抑制することができる。したがって、カバー20内において、吸込通路101から連通路102を通じて第2吸込ポート92に向かう作動油の流れ(主流)が、反転通路122に導かれる余剰油によって阻害されることを効果的に抑制できる。
【0063】
また、本実施形態では、カバー側サイドポート52は、外周面に開口するとともに両端面に亘って貫通する切り欠き部43を有し、カバー側サイドポート52の開口がボディ側サイドポート51の開口に比べて広く形成されている。このため、余剰油の多くをカバー側サイドポート52からポンプ室6に導入することができるとともに、連通路102により導かれる作動油をポンプ室6の側方から導入することができる。したがって、第2吸込ポート92を通じたポンプ室6への吸込量を増加させることができる。つまり、第2吸込領域82cに位置するポンプ室6の吸込性能を向上することができる。
【0064】
さらに、本実施形態では、余剰油が第2吸込ポート92を通じてポンプ室6に効率よく吸い込まれるため、余剰油が連通路102を通じて第1吸込ポート91に向かって逆流することが抑制される。これにより、比較例に比べて、第1吸込領域82aに位置するポンプ室6の吸込性能の低下も抑えられる。
【0065】
このように、本実施形態では、リターン通路120に導かれる余剰油によって、ベーンポンプ100の吸込性能が低下してしまうことを抑制することができる。つまり、本実施形態によれば、比較例に比べて、ベーンポンプ100の吸込性能を向上することができる。
【0066】
なお、本実施形態に係るカバー20の反転通路122は、成型加工により、連通路102等とともに形成することができるので、比較例のカバー20Aに対して、加工工程が増加することはない。
【0067】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0068】
リターン通路120は、カムリング4の径方向外側においてロータ2の回転中心軸O方向に沿って余剰油が流れるボディ内通路121と、ボディ内通路121を通じて導かれる余剰油を第2吸込ポート92に向けて反転させる反転通路122と、を有する。つまり、本実施形態では、余剰油をカバー20に設けられた反転通路122によって反転させて第2吸込ポート92に導くことができる。これにより、余剰油によって、吸込通路101から第1吸込ポート91に向かう作動油の流れ、及び吸込通路101から連通路102を通じて第2吸込ポート92に向かう作動油の流れが阻害されることが抑制される。その結果、ベーンポンプ100の吸込性能を向上することができる。
【0069】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0070】
上記実施形態では、リターン通路120の入口120iがボディ10の軸方向一端面に形成される例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図8に示す第1変形例のように、ボディ10の外周面にリターン通路220の入口220iが形成されていてもよい。この第1変形例では、リターン通路220のボディ内通路221が、反転通路122に接続され軸方向に延在する軸方向通路221aと、リターン通路220の入口220iから延在し軸方向通路221aに接続される入口通路221bと、を有する。軸方向通路221aは、上記実施形態におけるボディ内通路121と同様に、カムリング4の径方向外側においてロータ2の回転中心軸O方向に沿って余剰流体が流れるように形成される。なお、軸方向通路221aは、ロータ2の回転中心軸Oに対して略平行に形成されるが、完全な平行である必要はなく、回転中心軸Oに対して径方向や周方向にわずかに傾いて形成されていてもよい。このような第1変形例も、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0071】
また、上記実施形態では、カバー20に、反転通路122と連通路102とを仕切る仕切り部123が設けられる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
図9に示す第2変形例のように、反転通路122と連通路102とは、カバー20内で連通していてもよい。少なくとも、ボディ内通路121からカバー20の反転通路122に導かれた作動油が、反転通路122によって第2吸込ポート92に向かって反転させることのできる構成であればよい。このような第2変形例も、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0072】
また、上記実施形態では、反転通路122と連通路102とがカバー20に設けられる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
図10に示す第3変形例のように、反転通路122、連通路102、及びこれらを仕切る仕切り部123は、ボディ10に設けられていてもよい。この場合、カバー20には、環状の高圧室14が設けられるとともに、リターン通路120の入口120iが形成される。また、この場合、サイドポートを構成する切り欠き部43は、カバー20とカムリング4との間に配置されるカバー側サイドプレート40ではなく、連通路102とポンプ室6との間に配置されるプレート部材としてのボディ側サイドプレート30に形成される。つまり、第3変形例では、ボディ側サイドプレート30に、反転通路122によって余剰流体が導かれるサイドポートが形成される。このような第3変形例も、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0073】
また、上記実施形態では、カムリング4に切り欠き部4c,4dが設けられる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。カムリング4の切り欠き部4c,4dの一方または双方を省略してもよい。つまり、ボディ側サイドプレート30の窪み部33のみによってボディ側サイドポート51を形成してもよいし、カバー側サイドプレート40の切り欠き部43のみによってカバー側サイドポート52を形成してもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、反転通路122が、断面形状が半円形状となるように形成される例について説明したが、本発明はこれに限定されない。反転通路122は、ボディ内通路121により導かれた作動油を第2吸込ポート92に向けて反転させることのできる種々の形状に形成することができる。例えば、反転通路122は、その断面形状が三角形状となるように形成してもよい。また、反転通路122の開口角度、向き、形状を調整することにより、余剰油の流れの向きを容易に調整することができる。
【0075】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、および効果をまとめて説明する。
【0076】
ベーンポンプ100は、回転駆動されるロータ2と、ロータ2に対して径方向に往復動自在に設けられる複数のベーン3と、ロータ2の回転に伴ってベーン3の先端部3aが摺動する内周カム面4aを有するカムリング4と、ロータ2及びカムリング4を収容する収容凹部10bを有するボディ10と、ボディ10に取り付けられ、収容凹部10bを閉塞するカバー20と、ロータ2、カムリング4及び隣り合うベーン3によって形成されるポンプ室6と、ボディ10に設けられる吸込通路101に導かれる作動流体をポンプ室6に案内する第1吸込ポート91と、吸込通路101からカバー20またはボディ10に設けられた連通路102を通じて導かれる作動流体をポンプ室6に案内する第2吸込ポート92と、ポンプ室6から吐出される作動流体の余剰流体が導かれるリターン通路120,220と、を備え、リターン通路120,220は、カムリング4の径方向外側においてロータ2の回転中心軸O方向に沿って余剰流体が流れる軸方向通路(ボディ内通路121,軸方向通路221a)と、軸方向通路(ボディ内通路121,軸方向通路221a)を通じて導かれる余剰流体を第2吸込ポート92に向けて反転させる反転通路122と、を有する。
【0077】
この構成では、余剰流体を反転通路122によって反転させて第2吸込ポート92に導くことができる。これにより、吸込通路101から第1吸込ポート91に向かう作動流体の流れ、及び吸込通路101から連通路102を通じて第2吸込ポート92に向かう作動流体の流れが、余剰流体によって阻害されることが抑制される。
【0078】
また、ベーンポンプ100は、連通路102とポンプ室6との間に配置されるプレート部材(ボディ側サイドプレート30,カバー側サイドプレート40)をさらに備え、プレート部材(ボディ側サイドプレート30,カバー側サイドプレート40)には、外周面に開口するとともに、両端面に亘って貫通する切り欠き部43が設けられ、第2吸込ポート92は、切り欠き部43によって形成されるサイドポートを有し、反転通路122は、軸方向通路(ボディ内通路121,軸方向通路221a)により導かれた作動流体をサイドポートに向けて反転させる。
【0079】
この構成では、第2吸込ポート92を通じてポンプ室6に導かれる作動流体の吸込量を増加させることができる。
【0080】
また、ベーンポンプ100は、反転通路122と連通路102との間には、反転通路122と連通路102とをロータ2の回転中心軸O方向において仕切る仕切り部123が設けられる。
【0081】
この構成では、吸込通路101から連通路102を通じて第2吸込ポート92に向かう作動流体の流れが、反転通路122を通じて導かれる余剰流体によって阻害されることを効果的に抑制できる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0083】
本願は2019年4月17日に日本国特許庁に出願された特願2019-078491に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。