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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】ポリエステルフィルムおよび物品
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240207BHJP
   C08G 63/672 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
C08G63/672
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021521188
(86)(22)【出願日】2019-05-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 KR2019005999
(87)【国際公開番号】W WO2020080634
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】10-2018-0125484
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513193923
【氏名又は名称】エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォン ダヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム スンギ
(72)【発明者】
【氏名】イ ヨジン
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-512269(JP,A)
【文献】特表2002-512303(JP,A)
【文献】特開2012-126821(JP,A)
【文献】国際公開第2017/111370(WO,A1)
【文献】特開2013-189591(JP,A)
【文献】特開2010-018789(JP,A)
【文献】特開2008-256756(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0092113(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0077993(KR,A)
【文献】特開2018-076427(JP,A)
【文献】特開平11-286539(JP,A)
【文献】特開2016-112013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02;5/12-5/22
C08G 63/00-64/42
B29C 55/00-55/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される第1繰り返し単位;下記化学式2で表される第2繰り返し単位;および下記化学式3で表される第3繰り返し単位を含む、ポリエステル共重合体を含み、
波長400~700nmで88%以上の透過率を有する、延伸ポリエステルフィルム。
【化1】
上記化学式1~化学式3中、
x、yおよびzはそれぞれ共重合体中のモル分率であって、
yは1モル%以上5モル%以下であり、
zは5モル%以上15モル%以下である。
【請求項2】
前記延伸ポリエステルフィルムは、一軸延伸または二軸延伸ポリエステルフィルムである、請求項1に記載の延伸ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記二軸延伸ポリエステルフィルムの二軸延伸比は、縦方向延伸比が3~3.5であり、横方向延伸比が4~5である、請求項に記載の延伸ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記延伸ポリエステルフィルムの厚さは5μm~500μmである、請求項1に記載の延伸ポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記ポリエステル共重合体の数平均分子量は10,000~40,000である、請求項1に記載の延伸ポリエステルフィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の延伸ポリエステルフィルムからなる、物品。
【請求項7】
前記物品は、産業用フィルム、食品容器用フィルム、包装用フィルム、光学用フィルム、絶縁用フィルム、または印刷用フィルムである、請求項6に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルフィルムおよび物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル共重合体に代表されるPET(polyethylene terephthalate)は低廉な価格および優れた機械的/化学的/電気的性質によって光学フィルム、電気絶縁フィルム、包装用フィルム、ラミネートフィルム、各種保護用フィルムなどの素材として幅広く使用されている。しかし、PETは耐熱性が良くない。そこで、高い温度の熱固定(Heat setting)段階を経てPETフィルムの耐熱度を高めることもできるが、PETフィルムは高温に長時間露出すれば、オリゴマー(Oligomer)がフィルム表面に析出して結晶化されることによって透明度が低下する問題がある。これを防止するためにコーティングなどの別の工程を追加する方案が提案されたが、製造工程が複雑になり、後加工時に欠陥が発生し、汚染が発生するなどの問題がもたらされた。
【0003】
フィルムに印刷などの成形に適用される工程で、生産性向上などの理由で80℃前後の高温で適用される方式が増加する傾向にある。しかし、PETのガラス転移温度は80℃以下で、印刷などの成形工程が高温で行われる場合不良発生の確率が顕著に増加する。そして、印刷に使用される溶剤によって耐薬品性が弱い場合透明度、表面欠点が発生しやすい問題がある。
【0004】
しかも、PETは速い結晶化度を有し、特に、一軸または二軸延伸時に高い結晶性を保有しているため、ヒートシール性(heat sealabel)が不利であるという問題もある。したがって、光学用として使用されるフィルムは、高温工程でも低いオリゴマー含有量を有するので、高透明性を有することが要求されている。また、印刷用などに使用されるフィルムを提供するために高い耐熱性、耐薬品性を有して生産性を向上させることができる素材の開発が必要である。特に、産業用、包装用などで結晶性を制御してヒートシール性を向上させ得る特性を有するポリエステルフィルムに対する研究がもっと必要であるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高透明度、高い耐熱性、耐薬品性および向上したヒートシール性を有する延伸ポリエステルフィルムを提供することである。また、本発明は、前記延伸ポリエステルフィルムからなる物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、下記化学式1で表される第1繰り返し単位;および下記化学式2で表される第2繰り返し単位および下記化学式3で表される第3繰り返し単位のうちのいずれか一つ以上を含む、ポリエステル共重合体を含み、波長400~700nmで88%以上の透過率を有する、延伸ポリエステルフィルムを提供する:
【0007】
【化1】
【0008】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0009】
(繰り返し単位)
本発明に係る第1繰り返し単位は、テレフタル酸とエチレングリコールが反応して製造されるものであって、本発明に係るポリエステル共重合体の主な繰り返し単位である。前記化学式1中、xは前記第1繰り返し単位のポリエステル共重合体中のモル分率であって、好ましくは80モル%以上95モル%以下である。
【0010】
本発明に係る第2繰り返し単位はテレフタル酸とイソソルビドが反応して製造され、本発明に係る第3繰り返し単位はテレフタル酸とシクロヘキサンジメタノールが反応して製造される。前記第2繰り返し単位および第3繰り返し単位のうちの少なくとも一つ以上が本発明に係るポリエステル共重合体に含まれ、好ましくは、前記第2繰り返し単位および第3繰り返し単位をすべて含む。前記化学式2中、yは前記第2繰り返し単位のポリエステル共重合体中のモル分率であり、前記化学式3中、zは前記第3繰り返し単位のポリエステル共重合体中のモル分率である。
【0011】
好ましくは、yおよびzの和が5モル%以上20モル%未満である。この時、前記ポリエステル共重合体中に前記第2繰り返し単位のみを含む場合、zは0であり、前記ポリエステル共重合体中に前記第3繰り返し単位のみを含む場合、yは0である。
【0012】
特に、本発明に係るポリエステル共重合体は耐薬品性および透明度に優れたもので、特に前記第2繰り返し単位および第3繰り返し単位のモル分率はこのような耐薬品性および透明度に重要な影響を及ぼす。
【0013】
(ポリエステル共重合体の製造方法)
前記繰り返し単位は、テレフタル酸とエチレングリコール、イソソルビドおよび/またはシクロヘキサンジメタノールの(a)エステル化反応またはエステル交換反応、および(b)重縮合反応で製造することができる。
【0014】
具体的には、(a)テレフタル酸、エチレングリコール、およびイソソルビドおよび/またはシクロヘキサンジメタノールのエステル化反応またはエステル交換反応段階、および(b)前記エステル化またはエステル交換反応生成物を重縮合反応する段階により前記ポリエステル共重合体を製造することができる。
【0015】
ここで、前記製造方法は、バッチ(batch)式、半連続式または連続式で行うことができ、前記エステル化反応またはエステル交換反応と重縮合反応は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、前記ポリエステル共重合体とその他添加剤の混合は単純混合であるか、または押出による混合であり得る。
【0016】
必要に応じてさらに固相重合反応を引き続き行うことができる。具体的には、本発明の一実施形態によるポリエステル共重合体の製造方法は、(b)段階後に(c)重縮合反応(溶融重合)で製造されたポリマーを結晶化する段階、および(d)結晶化されたポリマーを固相重合する段階をさらに含む。
【0017】
前記(a)エステル化反応またはエステル交換反応では触媒が使用される。このような触媒としては、ナトリウム、マグネシウムのメチラート(methylate);Zn、Cd、Mn、Co、Ca、Ba、Tiなどの酢酸塩、ホウ酸塩、脂肪酸塩、炭酸塩、アルコキシ塩;金属Mg;Pb、Zn、Sb、Geなどの酸化物などが挙げられる。
【0018】
前記(a)エステル化反応またはエステル交換反応はバッチ(batch)式、半連続式または連続式で行うことができ、それぞれの原料は別に投入することができるが、ジオールにジカルボン酸またはその誘導体を混合したスラリー形態で投入することが好ましい。
【0019】
前記(a)エステル化反応またはエステル交換反応の開始前にスラリーにまたは反応完了後に生成物に重縮合触媒、安定剤、呈色剤、結晶化剤、酸化防止剤、分岐剤(branching agent)などを添加することができる。
【0020】
しかし、上述した添加剤の投入時期はこれに限定されず、ポリエステル共重合体の製造段階中の任意の時点に投入することもできる。前記重縮合触媒としては、通常のチタン、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウム、スズ系化合物などを一つ以上適宜選択して使用することができる。有用なチタン系触媒としては、テトラエチルチタネート、アセチルトリプロピルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、ポリブチルチタネート、2-エチルヘキシルチタネート、オクチレングリコールチタネート、ラクテートチタネート、トリエタノールアミンチタネート、アセチルアセトネートチタネート、エチルアセトアセチックエステルチタネート、イソステアリルチタネート、チタニウムジオキシド、チタニウムジオキシド/シリコンジオキシド共重合体、チタニウムジオキシド/ジルコニウムジオキシド共重合体などが挙げられる。また、有用なゲルマニウム系触媒としては、ゲルマニウムジオキシドおよびそれを用いた共重合体などがある。
【0021】
前記安定剤としては、一般にリン酸、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェートなどのリン系化合物を使用することができ、その添加量は、リン原子量を基準として最終ポリマー(ポリエステル共重合体)の重量に対して10~200ppmである。前記安定剤の添加量が10ppm未満であれば、安定化効果が微小であるため、ポリマーの色相が黄色く変わる恐れがあり、200ppmを超えると所望の高重合度のポリマーが得られない恐れがある。また、ポリマーの色相を向上させるために添加される呈色剤としては、酢酸コバルト、コバルトプロピオネートなどの通常の呈色剤が挙げられ、その添加量は、コバルト原子量を基準として最終ポリマー(ポリエステル共重合体)の重量に対して10~200ppmである。必要に応じて、有機化合物呈色剤としては、アントラキノン(Anthraquinone)系化合物、ペリノン(Perinone)系化合物、アゾ(Azo)系化合物、メチン(Methine)系化合物などを使用することができ、市販の製品としては、Clarient社製のPolysynthren Blue RLSまたはClarient社製のSolvaperm Red BBなどのトナーを使用することができる。前記有機化合物呈色剤の添加量は、最終ポリマー重量に対して0~50ppmに調節することができる。仮に、呈色剤を上記の範囲外の含有量で使用する場合ポリエステル共重合体の黄色を十分に分けることができないかまたは物性を低下させ得る。
【0022】
前記結晶化剤としては結晶核剤、紫外線吸収剤、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。前記酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系酸化防止剤、ホスフェート系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤またはこれらの混合物などが挙げられる。前記分岐剤としては3以上の官能基を有する通常の分岐剤として、例えば、無水トリメリット酸(trimellitic anhydride)、トリメチロールプロパン(trimethylol propane)、トリメリット酸(trimellitic acid)またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0023】
前記(a)エステル化反応またはエステル交換反応は、150~300℃または200~270℃の温度および0~10.0kgf/cm(0~7355.6mmHg)、0~5.0kgf/cm(0~3677.8mmHg)または0.1~3.0kgf/cm(73.6~2206.7mmHg)の圧力条件で行うことができる。ここで括弧外に記載の圧力はゲージ圧力を意味し(kgf/cmの単位で記載)、括弧内に記載の圧力は絶対圧力を意味する(mmHgの単位で記載)。
【0024】
前記反応温度および圧力が上記の範囲を外れる場合、ポリエステル共重合体の物性が低下する恐れがある。前記反応時間(平均滞留時間)は通常1時間~24時間または2時間~8時間であり、反応温度、圧力、使用するジカルボン酸またはその誘導体に対するジオールのモル比によって異なる。
【0025】
前記エステル化またはエステル交換反応により得られた生成物は、重縮合反応によってより高い重合度のポリエステル共重合体で製造することができる。一般に、前記重縮合反応は150~300℃、200~290℃または250~290℃の温度および0.01~400mmHg、0.05~100mmHgまたは0.1~10mmHgの減圧条件で行われる。ここで圧力は、絶対圧力の範囲を意味する。前記0.01~400mmHgの減圧条件は、重縮合反応の副産物であるグリコールなどと未反応物であるイソソルビドなどを除去するためである。したがって、前記減圧条件が上記の範囲を外れる場合、副産物および未反応物の除去が不十分な恐れがある。また、前記重縮合反応温度が上記の範囲を外れる場合、ポリエステル共重合体の物性が低下する恐れがある。前記重縮合反応は、所望の固有粘度に至るまで必要な時間、例えば、平均滞留時間1時間~24時間行われる。
【0026】
ポリエステル共重合体中に残留するイソソルビドなどの未反応物の含有量を減少させるために、エステル化反応またはエステル交換反応末期または重縮合反応初期、すなわち樹脂の粘度が十分に高くない状態で真空反応を意図的に長く維持して未反応原料を系外に流出させ得る。樹脂の粘度が高くなると、反応器内に残留している原料が系外へ抜けにくくなる。一例として、重縮合反応前のエステル化反応またはエステル交換反応により得られた反応生成物を約400~1mmHgまたは約200~3mmHgの減圧条件で0.2時間~3時間放置して、ポリエステル共重合体中に残留するイソソルビドなどの未反応物を効果的に除去することができる。この時、前記生成物の温度は、エステル化反応またはエステル交換反応温度が重縮合反応温度と同じであるか、またはその間の温度に調節し得る。
【0027】
上記の真空反応の制御により未反応原料を系外へ流出させる工程内容を追加することで、ポリエステル共重合体中に残留するイソソルビドなどの未反応物の含有量を減少させることができ、その結果、一実施形態の物性を満たすポリエステル共重合体をさらに効果的に得ることができる。
【0028】
一方、重縮合反応後、ポリマーの固有粘度は0.45~0.75dl/gであることが好ましい。
【0029】
特に、上述した(c)結晶化段階および(d)固相重合段階を採用すると、重縮合反応後、ポリマーの固有粘度を0.45~0.75dl/g、0.45~0.70dl/gまたは0.50~0.65dl/gに調節し得る。仮に、重縮合反応後、ポリマーの固有粘度が0.45dl/g未満の場合、固相重合反応での反応速度が顕著に低くなり、分子量分布が非常に広いポリエステル共重合体が得られ、固有粘度が0.75dl/gを超えると、溶融重合中の溶融物の粘度が上昇することにより攪拌機と反応器の間での剪断応力(Shear Stress)によりポリマーが変色する可能性が増加し、アセトアルデヒドなどの副反応物質も増加する。また、結晶化速度が顕著に遅くなり、結晶化過程中に融着が発生し、ペレット形状も変形しやすい。
【0030】
一方、上述した(c)結晶化段階および(d)固相重合段階を採用しない場合、重縮合反応後、ポリマーの固有粘度を0.65~0.75dl/gに調節し得る。仮に、固有粘度が0.65dl/g未満の場合、低分子量の高分子によって結晶化速度が上昇して優れた耐熱性と透明性を有するポリエステル共重合体を提供しにくく、固有粘度が0.75dl/gを超えると溶融重合中の溶融物の粘度が上昇することで、攪拌機と反応器の間での剪断応力(Shear Stress)によりポリマーが変色する可能性が増加し、アセトアルデヒドなどの副反応物質も増加する。
【0031】
前記(a)および(b)段階によって一実施形態によるポリエステル共重合体を製造することができる。そして、必要に応じて(b)重縮合反応段階後に、(c)結晶化段階および(d)固相重合段階をさらに行ってより高い重合度を有するポリエステル共重合体を提供することができる。
【0032】
具体的には、前記(c)結晶化段階では、(b)重縮合反応により得られたポリマーを反応器外部に吐き出して粒子化する。粒子化する方法は、ストランド状に押出した後、冷却液で固化した後にカッターで切断するストランドカッティング法またはダイホールを冷却液に浸漬させ、冷却液中に直接押出してカッターで切断するアンダーウォーターカッティング法を用いることができる。一般にストランドカッティング法では冷却液の温度を低く維持し、ストランドがよく固化しなければカッティングに問題が発生する。アンダーウォーターカッティング法では冷却液の温度をポリマーに合わせて維持し、ポリマーの形状を均一にすることが好ましい。しかし、結晶性ポリマーの場合、吐出中の結晶化を誘導するために、故意に冷却液の温度を高く維持することもできる。
【0033】
一方、粒子化したポリマーをさらに水洗浄することもできる。洗浄時水の温度は、ポリマーのガラス転移温度と同じであるかまたは約5~20℃程度低いことが好ましく、それ以上の温度では融着が発生し得るため好ましくない。吐出時に結晶化を誘導したポリマーの粒子であればガラス転移温度より高い温度でも融着が発生しないので、結晶化の程度に応じて水の温度を設定することができる。粒子化したポリマーの水洗浄により未反応原料中に水に溶解する原料の除去が可能である。粒子が小さいほど粒子の重量に対する表面積が広くなるので、粒子の大きさは小さいほど有利である。このような目的を達成するために、粒子は約14mg以下の平均重量を有するように製造される。
【0034】
粒子化したポリマーは、固相重合反応中に融着することを防止するために結晶化段階を経る。大気、不活性ガス、水蒸気、水蒸気含有不活性ガス雰囲気中または溶液中で行うことができ、110℃~180℃または120℃~180℃で結晶化処理を行う。温度が低いと粒子の結晶が生成される速度が非常に遅くなり、温度が高いと結晶が作られる速度より粒子の表面が溶融する速度が速いため、粒子同士がくっついて融着を発生させる。粒子が結晶化することにより粒子の耐熱性が上昇するので、結晶化をいくつかの段階に分けて段階別に温度を上昇させて結晶化することも可能である。
【0035】
固相重合反応は窒素、二酸化炭素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、または400~0.01mmHgの減圧条件および180~220℃の温度で平均滞留時間1時間以上、好ましくは10時間以上行うことができる。このような固相重合反応により分子量がさらに上昇し、溶融反応で反応せずに残存している原料物質と反応中に生成された環状オリゴマー、アセトアルデヒドなどが除去される。
【0036】
本発明の一実施形態によるポリエステル共重合体を提供するためには、固有粘度が(b)重縮合反応段階で得られた樹脂の固有粘度より0.10~0.40dl/g高い値に到達するまで固相重合を行うことができる。仮に、固相重合反応後の樹脂の固有粘度と固相重合反応前の樹脂の固有粘度との差が0.10dl/g未満の場合、十分な重合度の向上効果が得られず、固相重合反応後の樹脂の固有粘度と固相重合反応前の樹脂の固有粘度との差が0.40dl/gを超えると分子量分布が広くなり、十分な耐熱性を示すことができず、低分子量高分子の含有量が相対的に増加して結晶化速度が増加することにより、ヘイズが発生する可能性が高くなる。
【0037】
前記固相重合反応は、樹脂の固有粘度が固相重合反応前の樹脂の固有粘度より0.10~0.40dl/g高く、0.70dl/g以上、0.70~1.0dl/g、または0.70~0.95dl/gの値に到達するまで行うことができる。このような範囲の固有粘度に到達するまで固相重合すると高分子の分子量分布が狭くなり、成形時の結晶化速度を下げることができる。したがって、透明度を低下させず、かつ耐熱性および結晶化度を向上させることができる。仮に、固相重合反応後の樹脂の固有粘度が上記の範囲未満であれば低分子量の高分子による結晶化速度の増加によって優れた耐熱性と透明性を有するポリエステル共重合体を提供しにくい。
【0038】
一方、本発明に係るポリエステル共重合体は、数平均分子量(Mn)が10,000~40,000であり、より好ましくは15,000~35,000である。
【0039】
(延伸ポリエステルフィルム)
本発明に係る延伸ポリエステルフィルムは、上述したポリエステル共重合体を一軸または二軸延伸して製造することができる。
【0040】
具体的には、(a)ポリエステル共重合体を溶融押出して、前記ポリエステル共重合体から形成された樹脂層を含む未延伸ポリエステルフィルムを製造する段階、および(b)前記未延伸ポリエステルフィルムを前記ポリエステル共重合体のガラス転移温度以上の温度で延伸する段階により前記延伸ポリエステルフィルムを製造することができる。
【0041】
前記(a)段階においては、比較的低温でポリエステル共重合体を溶融押出して高分子の熱分解を最少化して高分子の長鎖構造を維持できる。具体的には、前記(a)段階は、240℃~310℃あるいは250℃~300℃の温度で行うことができる。仮に、溶融押出温度が240℃未満であれば高分子が溶融しない問題があり、310℃を超えれば高分子の熱分解が増加して、フィルムの延伸成形時にフィルムが損傷または破断して目的とする物性を実現しにくい。
【0042】
前記(a)段階で得られた未延伸ポリエステルフィルムは、適切な温度で冷却される。その後、未延伸ポリエステルフィルムを前記ポリエステル共重合体のガラス転移温度以上の温度で延伸することができる。具体的には、未延伸ポリエステルフィルムの延伸工程は80℃~180℃、90℃~170℃、あるいは90℃~150℃の温度で行うことができる。前記(b)段階では未延伸ポリエステルフィルムを高倍率で延伸することができる。
【0043】
具体的には、前記未延伸ポリエステルフィルムを一軸延伸する場合、一軸延伸比は1~5であることが好ましい。より好ましくは、1~3.5の縦方向延伸比、または1~5の横方向延伸比であることが好ましい。また、前記未延伸ポリエステルフィルムを二軸延伸する場合、縦方向延伸比が3~3.5であり、横方向延伸比が4~5であることが好ましい。より好ましくは、前記縦方向延伸比と横方向延伸比の積が12~18である。
【0044】
前記ポリエステルフィルムの製造方法は、前記(b)段階以後に、(c)前記(b)段階で得られたポリエステルフィルムを熱固定する段階をさらに含むことができる。前記(c)段階は100℃~220℃の温度で行うことができる。
【0045】
好ましくは、前記延伸前のフィルムである未延伸フィルムの厚さは0.1~10mmであり、延伸後のフィルムの厚さは5μm~500μmである。
【0046】
(延伸ポリエステル共重合体の特性)
本発明に係る延伸ポリエステルフィルムは、波長400~700nmで88%以上の透過率を有するという特徴がある。
【0047】
また、本発明は、上述した延伸ポリエステルフィルムからなる物品を提供する。前記物品の例としては、産業用フィルム、食品容器用フィルム、包装用フィルム、光学用フィルム、絶縁用フィルム、または印刷用フィルムが挙げられる。本発明の一実施形態による延伸ポリエステルフィルムは、優れた耐熱性、耐薬品性および良好なヒートシール性を示し、向上した機械的強度と透明度によって多様な分野で活用することができ、特に、高透明性が要求される光学用フィルム、および高い耐熱性および耐薬品性が要求される食品容器用フィルム、印刷用フィルムとしての用途が期待される。また、前記ポリエステルフィルムは、上述した良好なヒートシール性により産業用、包装用フィルムとしての用途も期待される。さらに、本発明に係る延伸ポリエステルフィルムは、必要に応じて、他の高分子と一緒にまたは他のフィルムと共に使用することができ、例えばPET blend、またはPETと多層に使用することができる。
【発明の効果】
【0048】
本発明に係る延伸ポリエステルフィルムは、少ない含有量のオリゴマーを含むポリエステル樹脂で形成され、高温の後工程でオリゴマー析出を防止して熱処理後にも低いヘイズ値を維持でき、耐熱性および耐薬品性に優れ、良好なヒートシール性を示すことができる。したがって、前記ポリエステルフィルムは産業用フィルム、食品容器用フィルム、包装用フィルム、光学用フィルム、絶縁用フィルムまたは印刷用フィルムなどの多様な用途に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、これによって本発明の内容が限定されるものではない。
【0050】
下記の物性あるいは分析は、以下のような方法により評価あるいは実行した。
【0051】
(1)固有粘度(IV):試料0.36±0.0002gを150℃のオルト-クロロフェノール30mLに15分間溶解させた後、35℃の恒温槽でウベローデ(Ubbelodhe)粘度計を用いて試料の固有粘度を測定した。
【0052】
(2)ポリエステル共重合体中の酸およびジオール由来の残基組成は試料をCDCl溶媒に3mg/mLの濃度で溶解した後、核磁気共鳴装置(JEOL、600MHz FT-NMR)を用いて25℃で得られた1H-NMRスペクトルにより確認した。
【0053】
実施例1:ポリエステル共重合体の製造
カラムと、水により冷却が可能なコンデンサが連結されている10L容積の反応器にテレフタル酸(3257.4g)、エチレングリコール(1423.4g)、イソソルビド(229.2g)を投入し、触媒としてGeO(1.0g)、安定剤としてリン酸(phosphoric acid、1.46g)、呈色剤として酢酸コバルト(cobalt acetate、0.7g)を使用した。
【0054】
次に、反応器に窒素を注入して反応器の圧力が常圧より1.0kgf/cmほど高い加圧状態に作った(絶対圧力:1495.6mmHg)。そして、反応器の温度を220℃まで90分にかけて上げ、220℃で2時間維持した後、260℃まで2時間にかけて上げた。その後、反応器内の混合物を肉眼で観察して混合物が透明になるまで反応器の温度を260℃に維持し、エステル化反応を行った。該過程でカラムとコンデンサを経て副産物が流出した。エステル化反応が終了すると、加圧状態の反応器内の窒素を外部に排出して反応器の圧力を常圧に下げた後、反応器内の混合物を真空反応が可能な7L容積の反応器に移送させた。
【0055】
そして、反応器の圧力を常圧状態から5Torr(絶対圧力:5mmHg)まで30分にかけて下げ、同時に反応器の温度を280℃まで1時間にかけて上げ、反応器の圧力を1Torr(絶対圧力:1mmHg)以下に維持して重縮合反応を行った。重縮合反応の初期には攪拌速度を速く設定するが、重縮合反応が行われるにつれて反応物の粘度上昇により攪拌力が弱くなるか、または反応物の温度が設定温度以上に上がった場合、攪拌速度を適宜調節することができる。前記重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.55dl/gになるまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望の水準に到達すると、混合物を反応器の外部に吐き出してストランド(strand)化し、これを冷却液で固化後、平均重量が12~14mg程度となるように粒子化した。
【0056】
前記粒子を150℃で1時間放置して結晶化した後、20L容積の固相重合反応器に投入した。その後、前記反応器に窒素を50L/minの速度で流した。この時、反応器の温度を常温から140℃まで40℃/時間の速度で上げ、140℃で3時間維持した後、200℃まで40℃/時間の速度で昇温して200℃に維持した。前記固相重合反応は、反応器内の粒子の固有粘度(IV)が0.75dl/gになるまで行った。
【0057】
このように製造されたポリエステル共重合体に含まれている全酸由来の残基に対してテレフタル酸由来の残基は100モル%であり、全ジオール由来の残基に対してイソソルビド由来の残基は5モル%であった。
【0058】
実施例2:ポリエステル共重合体の製造
カラムと、水により冷却が可能なコンデンサが連結されている10L容積の反応器にテレフタル酸(3189.1g)、エチレングリコール(1334.1g)、イソソルビド(504.9g)を投入し、触媒としてGeO(1.0g)、安定剤としてリン酸(phosphoric acid、1.46g)、呈色剤として酢酸コバルト(cobalt acetate、0.7g)を使用した。
【0059】
次に、反応器に窒素を注入して反応器の圧力が常圧より1.0kgf/cmほど高い加圧状態に作った(絶対圧力:1495.6mmHg)。そして、反応器の温度を220℃まで90分にかけて上げ、220℃で2時間維持した後、260℃まで2時間にかけて上げた。その後、反応器内の混合物を肉眼で観察して混合物が透明になるまで反応器の温度を260℃に維持し、エステル化反応を行った。該過程でカラムとコンデンサを経て副産物が流出した。エステル化反応が終了すると、加圧状態の反応器内の窒素を外部に排出して反応器の圧力を常圧に下げた後、反応器内の混合物を真空反応が可能な7L容積の反応器に移送させた。
【0060】
そして、反応器の圧力を常圧状態から5Torr(絶対圧力:5mmHg)まで30分にかけて下げ、同時に反応器の温度を280℃まで1時間にかけて上げ、反応器の圧力を1Torr(絶対圧力:1mmHg)以下に維持して重縮合反応を行った。重縮合反応の初期には攪拌速度を速く設定するが、重縮合反応が行われるにつれて反応物の粘度上昇により攪拌力が弱くなるか、または反応物の温度が設定温度以上に上がった場合、攪拌速度を適宜調節することができる。前記重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.50dl/gになるまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望の水準に到達すると、混合物を反応器の外部に吐き出してストランド(strand)化し、これを冷却液で固化後、平均重量が12~14mg程度となるように粒子化した。次に、前記粒子を70℃の水中で5時間保管した後、取り出して乾燥させた。
【0061】
前記粒子を150℃で1時間放置して結晶化した後、20L容積の固相重合反応器に投入した。その後、前記反応器に窒素を50L/minの速度で流した。この時、反応器の温度を常温から140℃まで40℃/時間の速度で上げ、140℃で3時間維持した後、200℃まで40℃/時間の速度で昇温して200℃に維持した。前記固相重合反応は、反応器内の粒子の固有粘度(IV)が0.95dl/gになるまで行った。
【0062】
このように製造されたポリエステル共重合体に含まれている全酸由来の残基に対してテレフタル酸由来の残基は100モル%であり、全ジオール由来の残基に対してイソソルビド由来の残基は10モル%であった。
【0063】
実施例3:ポリエステル共重合体の製造
カラムと、水により冷却が可能なコンデンサが連結されている10L容積の反応器にテレフタル酸(3356.5g)、エチレングリコール(1341.4g)、イソソルビド(826.6g)を投入し、触媒としてGeO(1.0g)、安定剤としてリン酸(phosphoric acid、1.46g)、ブルートナーとしてPolysynthren Blue RLS(Clarient社製、0.016g)、レッドトナーとしてSolvaperm Red BB(Clarient社製、0.004g)、結晶化剤としてポリエチレン(LUTENE-H ME1000、株式会社LG化学製、0.004g)、および酸化安定剤としてIganox 1076(4g)を使用した。
【0064】
次に、反応器に窒素を注入して反応器の圧力が常圧より0.5kgf/cmほど高い加圧状態に作った(絶対圧力:1127.8mmHg)。そして、反応器の温度を220℃まで90分にかけて上げ、220℃で2時間維持した後、260℃まで2時間にかけて上げた。その後、反応器内の混合物を肉眼で観察して混合物が透明になるまで反応器の温度を260℃に維持し、エステル化反応を行った。該過程でカラムとコンデンサを経て副産物が流出した。エステル化反応が終了すると、加圧状態の反応器内の窒素を外部に排出して反応器の圧力を常圧に下げた後、反応器内の混合物を真空反応が可能な7L容積の反応器に移送させた。
【0065】
そして、反応器の圧力を常圧状態から5Torr(絶対圧力:5mmHg)まで30分にかけて下げ、同時に反応器の温度を275℃まで1時間にかけて上げ、反応器の圧力を1Torr(絶対圧力:1mmHg)以下に維持して重縮合反応を行った。重縮合反応の初期には攪拌速度を速く設定するが、重縮合反応が行われるにつれて反応物の粘度上昇により攪拌力が弱くなるか、または反応物の温度が設定温度以上に上がった場合、攪拌速度を適宜調節することができる。前記重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.60dl/gになるまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望の水準に到達すると、混合物を反応器の外部に吐き出してストランド(strand)化し、これを冷却液で固化後、平均重量が12~14mg程度となるように粒子化した。
【0066】
このように製造されたポリエステル共重合体に含まれている全酸由来の残基に対してテレフタル酸由来の残基は100モル%であり、全ジオール由来の残基に対してイソソルビド由来の残基は5モル%であった。
【0067】
実施例4:ポリエステル共重合体の製造
カラムと、水により冷却が可能なコンデンサが連結されている10L容積の反応器にテレフタル酸(4297.3g)、エチレングリコール(1845.8g)、シクロヘキサン-1,4-ジイルジメタノール(186.4g)、イソソルビド(189.0g)を投入し、触媒としてGeO(1.0g)、安定剤としてリン酸(phosphoric acid、1.46g)、呈色剤として酢酸コバルト(cobalt acetate、1.1g)、および分岐剤としてTMA(Trimellitic anhydrate、22g)を使用した。
【0068】
次に、反応器に窒素を注入して反応器の圧力が常圧より1kgf/cmほど高い加圧状態に作った(絶対圧力:1495.6mmHg)。そして、反応器の温度を220℃まで90分にかけて上げ、220℃で2時間維持した後、250℃まで2時間にかけて上げた。その後、反応器内の混合物を肉眼で観察して混合物が透明になるまで反応器の温度を250℃に維持し、エステル化反応を行った。該過程でカラムとコンデンサを経て副産物が流出した。エステル化反応が終了すると、加圧状態の反応器内の窒素を外部に排出して反応器の圧力を常圧に下げた後、反応器内の混合物を真空反応が可能な7L容積の反応器に移送させた。
【0069】
そして、反応器の圧力を常圧状態から5Torr(絶対圧力:5mmHg)まで30分にかけて下げ、同時に反応器の温度を265℃まで1時間にかけて上げ、反応器の圧力を1Torr(絶対圧力:1mmHg)以下に維持して重縮合反応を行った。重縮合反応の初期には攪拌速度を速く設定するが、重縮合反応が行われるにつれて反応物の粘度上昇により攪拌力が弱くなるか、または反応物の温度が設定温度以上に上がった場合、攪拌速度を適宜調節することができる。前記重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.60dl/gになるまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望の水準に到達すると、混合物を反応器の外部に吐き出してストランド(strand)化し、これを冷却液で固化後、平均重量が12~14mg程度となるように粒子化した。
【0070】
このように製造されたポリエステル共重合体に含まれている全酸由来の残基に対してテレフタル酸由来の残基は100モル%であり、全ジオール由来の残基に対してイソソルビド由来の残基は2モル%、シクロヘキサンジメタノール由来の残基は5モル%であった。
【0071】
実施例5:ポリエステル共重合体の製造
カラムと、水により冷却が可能なコンデンサが連結されている10L容積の反応器にテレフタル酸(3316.0g)、エチレングリコール(1164.2g)、シクロヘキサン-1,4-ジイルジメタノール(230.1g)、イソソルビド(87.5g)を投入し、触媒としてGeO(1.0g)、安定剤としてリン酸(phosphoric acid、1.46g)、呈色剤として酢酸コバルト(cobalt acetate、0.8g)を使用した。
【0072】
次に、反応器に窒素を注入して反応器の圧力が常圧より2kgf/cmほど高い加圧状態に作った(絶対圧力:2231.1mmHg)。そして、反応器の温度を220℃まで90分にかけて上げ、220℃で2時間維持した後、255℃まで2時間にかけて上げた。その後、反応器内の混合物を肉眼で観察して混合物が透明になるまで反応器の温度を255℃に維持し、エステル化反応を行った。該過程でカラムとコンデンサを経て副産物が流出した。エステル化反応が終了すると、加圧状態の反応器内の窒素を外部に排出して反応器の圧力を常圧に下げた後、反応器内の混合物を真空反応が可能な7L容積の反応器に移送させた。
【0073】
そして、反応器の圧力を常圧状態から5Torr(絶対圧力:5mmHg)まで30分にかけて下げ、同時に反応器の温度を285℃まで1時間にかけて上げ、反応器の圧力を1Torr(絶対圧力:1mmHg)以下に維持して重縮合反応を行った。重縮合反応の初期には攪拌速度を速く設定するが、重縮合反応が行われるにつれて反応物の粘度上昇により攪拌力が弱くなるか、または反応物の温度が設定温度以上に上がった場合、攪拌速度を適宜調節することができる。前記重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.55dl/gになるまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望の水準に到達すると、混合物を反応器の外部に吐き出してストランド(strand)化し、これを冷却液で固化後、平均重量が12~14mg程度となるように粒子化した。
【0074】
このように製造されたポリエステル共重合体に含まれている全酸由来の残基に対してテレフタル酸由来の残基は100モル%であり、全ジオール由来の残基に対してイソソルビド由来の残基は2モル%、シクロヘキサンジメタノール由来の残基は8モル%であった。
【0075】
実施例6:ポリエステル共重合体の製造
カラムと、水により冷却が可能なコンデンサが連結されている10L容積の反応器にテレフタル酸(3124.0g)、エチレングリコール(1330.2g)、シクロヘキサン-1,4-ジイルジメタノール(216.8g)、イソソルビド(219.8g)を投入し、触媒としてGeO(1.0g)、安定剤としてリン酸(phosphoric acid、1.46g)、呈色剤として酢酸コバルト(cobalt acetate、1.0g)、および酸化安定剤としてIganox 1076(15.4g)を使用した。
【0076】
次に、反応器に窒素を注入して反応器の圧力が常圧より1.5kgf/cmほど高い加圧状態に作った(絶対圧力:1715.5mmHg)。そして、反応器の温度を220℃まで90分にかけて上げ、220℃で2時間維持した後、250℃まで2時間にかけて上げた。その後、反応器内の混合物を肉眼で観察して混合物が透明になるまで反応器の温度を250℃に維持し、エステル化反応を行った。該過程でカラムとコンデンサを経て副産物が流出した。エステル化反応が終了すると、加圧状態の反応器内の窒素を外部に排出して反応器の圧力を常圧に下げた後、反応器内の混合物を真空反応が可能な7L容積の反応器に移送させた。
【0077】
そして、反応器の圧力を常圧状態から5Torr(絶対圧力:5mmHg)まで30分にかけて下げ、同時に反応器の温度を270℃まで1時間にかけて上げ、反応器の圧力を1Torr(絶対圧力:1mmHg)以下に維持して重縮合反応を行った。重縮合反応の初期には攪拌速度を速く設定するが、重縮合反応が行われるにつれて反応物の粘度上昇により攪拌力が弱くなるか、または反応物の温度が設定温度以上に上がった場合、攪拌速度を適宜調節することができる。前記重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.60dl/gになるまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望の水準に到達すると、混合物を反応器の外部に吐き出してストランド(strand)化し、これを冷却液で固化後、平均重量が12~14mg程度となるように粒子化した。
【0078】
前記粒子を150℃で1時間放置して結晶化した後、20L容積の固相重合反応器に投入した。その後、前記反応器に窒素を50L/minの速度で流した。この時、反応器の温度を常温から140℃まで40℃/時間の速度で上げ、140℃で3時間維持した後、200℃まで40℃/時間の速度で昇温して200℃に維持した。前記固相重合反応は、反応器内の粒子の固有粘度(IV)が0.75dl/gになるまで行った。
【0079】
このように製造されたポリエステル共重合体に含まれている全酸由来の残基に対してテレフタル酸由来の残基は100モル%であり、全ジオール由来の残基に対してイソソルビド由来の残基は4モル%、シクロヘキサンジメタノール由来の残基は8モル%であった。
【0080】
実施例7:ポリエステル共重合体の製造
カラムと、水により冷却が可能なコンデンサが連結されている10L容積の反応器にテレフタル酸(3371.0g)、エチレングリコール(1435.3g)、シクロヘキサン-1,4-ジイルジメタノール(438.6g)、イソソルビド(177.9g)を投入し、触媒としてGeO(1.0g)、安定剤としてリン酸(phosphoric acid、1.46g)、ブルートナーとしてPolysynthren Blue RLS(Clarient社製、0.013g)、およびレッドトナーとしてSolvaperm Red BB(Clarient社製、0.004g)を使用した。
【0081】
次に、反応器に窒素を注入して反応器の圧力が常圧より1kgf/cmほど高い加圧状態に作った(絶対圧力:1495.6mmHg)。そして、反応器の温度を220℃まで90分にかけて上げ、220℃で2時間維持した後、265℃まで2時間にかけて上げた。その後、反応器内の混合物を肉眼で観察して混合物が透明になるまで反応器の温度を265℃に維持し、エステル化反応を行った。該過程でカラムとコンデンサを経て副産物が流出した。エステル化反応が終了すると、加圧状態の反応器内の窒素を外部に排出して反応器の圧力を常圧に下げた後、反応器内の混合物を真空反応が可能な7L容積の反応器に移送させた。
【0082】
そして、反応器の圧力を常圧状態から5Torr(絶対圧力:5mmHg)まで30分にかけて下げ、同時に反応器の温度を275℃まで1時間にかけて上げ、反応器の圧力を1Torr(絶対圧力:1mmHg)以下に維持して重縮合反応を行った。重縮合反応の初期には攪拌速度を速く設定するが、重縮合反応が行われるにつれて反応物の粘度上昇により攪拌力が弱くなるか、または反応物の温度が設定温度以上に上がった場合、攪拌速度を適宜調節することができる。前記重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.70dl/gになるまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望の水準に到達すると、混合物を反応器の外部に吐き出してストランド(strand)化し、これを冷却液で固化後、平均重量が12~14mg程度となるように粒子化した。
【0083】
このように製造されたポリエステル共重合体に含まれている全酸由来の残基に対してテレフタル酸由来の残基は100モル%であり、全ジオール由来の残基に対してイソソルビド由来の残基は3モル%、シクロヘキサンジメタノール由来の残基は15モル%であった。
【0084】
実施例8:ポリエステル共重合体の製造
カラムと、水により冷却が可能なコンデンサが連結されている10L容積の反応器にテレフタル酸(3158.8g)、エチレングリコール(1427.5g)、シクロヘキサン-1,4-ジイルジメタノール(520.6g)を投入し、触媒としてGeO(1.0g)、安定剤としてリン酸(phosphoric acid、1.46g)、ブルートナーとしてPolysynthren Blue RLS(Clarient社製、0.020g)、およびレッドトナーとしてSolvaperm Red BB(Clarient社製、0.008g)を使用した。
【0085】
次に、反応器に窒素を注入して反応器の圧力が常圧より0.5kgf/cmほど高い加圧状態に作った(絶対圧力:1127.8mmHg)。そして、反応器の温度を220℃まで90分にかけて上げ、220℃で2時間維持した後、260℃まで2時間にかけて上げた。その後、反応器内の混合物を肉眼で観察して混合物が透明になるまで反応器の温度を260℃に維持し、エステル化反応を行った。該過程でカラムとコンデンサを経て副産物が流出した。エステル化反応が終了すると、加圧状態の反応器内の窒素を外部に排出して反応器の圧力を常圧に下げた後、反応器内の混合物を真空反応が可能な7L容積の反応器に移送させた。
【0086】
そして、反応器の圧力を常圧状態から5Torr(絶対圧力:5mmHg)まで30分にかけて下げ、同時に反応器の温度を275℃まで1時間にかけて上げ、反応器の圧力を1Torr(絶対圧力:1mmHg)以下に維持して重縮合反応を行った。重縮合反応の初期には攪拌速度を速く設定するが、重縮合反応が行われるにつれて反応物の粘度上昇により攪拌力が弱くなるか、または反応物の温度が設定温度以上に上がった場合、攪拌速度を適宜調節することができる。前記重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.80dl/gになるまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望の水準に到達すると、混合物を反応器の外部に吐き出してストランド(strand)化し、これを冷却液で固化後、平均重量が12~14mg程度となるように粒子化した。
【0087】
このように製造されたポリエステル共重合体に含まれている全酸由来の残基に対してテレフタル酸由来の残基は100モル%であり、全ジオール由来の残基に対してシクロヘキサンジメタノール由来の残基は18モル%であった。
【0088】
実施例9:ポリエステル共重合体の製造
カラムと、水により冷却が可能なコンデンサが連結されている10L容積の反応器にジメチルフタレート(3727.0g)、エチレングリコール(2620.5g)、イソソルビド(841.5g)を投入し、触媒としてMn(II)acetate tetrahydrate(1.5g)、およびSb(1.8g)、安定剤としてリン酸(phosphoric acid、1.46g)、呈色剤として酢酸コバルト(cobalt acetate、0.7g)を使用した。
【0089】
次に、反応器に窒素を注入して反応器の圧力を常圧にし、反応器の温度を220℃まで90分にかけて上げ、220℃で2時間維持した後、240℃まで2時間にかけて上げた。その後、反応器内の混合物を肉眼で観察して混合物が透明になるまで反応器の温度を240℃に維持し、エステル化反応を行った。該過程でカラムとコンデンサを経て副産物が流出した。エステル化反応が終了すると、加圧状態の反応器内の窒素を外部に排出して反応器の圧力を常圧に下げた後、反応器内の混合物を真空反応が可能な7L容積の反応器に移送させた。
【0090】
そして、反応器の圧力を常圧状態から5Torr(絶対圧力:5mmHg)まで30分にかけて下げ、同時に反応器の温度を265℃まで1時間にかけて上げ、反応器の圧力を1Torr(絶対圧力:1mmHg)以下に維持して重縮合反応を行った。重縮合反応の初期には攪拌速度を速く設定するが、重縮合反応が行われるにつれて反応物の粘度上昇により攪拌力が弱くなるか、または反応物の温度が設定温度以上に上がった場合、攪拌速度を適宜調節することができる。前記重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.50dl/gになるまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望の水準に到達すると、混合物を反応器の外部に吐き出してストランド(strand)化し、これを冷却液で固化後、平均重量が12~14mg程度となるように粒子化した。
【0091】
前記粒子を150℃で1時間放置して結晶化した後、20L容積の固相重合反応器に投入した。その後、前記反応器に窒素を50L/minの速度で流した。この時、反応器の温度を常温から140℃まで40℃/時間の速度で上げ、140℃で3時間維持した後、200℃まで40℃/時間の速度で昇温して200℃に維持した。前記固相重合反応は、反応器内の粒子の固有粘度(IV)が0.95dl/gになるまで行った。
【0092】
このように製造されたポリエステル共重合体に含まれている全酸由来の残基に対してジメチルフタレート由来の残基は100モル%であり、全ジオール由来の残基に対してイソソルビド由来の残基は10モル%であった。
【0093】
実施例10:ポリエステル共重合体の製造
カラムと、水により冷却が可能なコンデンサが連結されている10L容積の反応器にテレフタル酸(3029.7g)、イソフタル酸(159.5g)、エチレングリコール(1334.1g)、イソソルビド(504.9g)を投入し、触媒としてGeO(1.0g)、安定剤としてリン酸(phosphoric acid、1.46g)、呈色剤として酢酸コバルト(cobalt acetate、0.7g)を使用した。
【0094】
次に、反応器に窒素を注入して反応器の圧力が常圧より1.0kgf/cmほど高い加圧状態に作った(絶対圧力:1495.6mmHg)。そして、反応器の温度を220℃まで90分にかけて上げ、220℃で2時間維持した後、260℃まで2時間にかけて上げた。その後、反応器内の混合物を肉眼で観察して混合物が透明になるまで反応器の温度を260℃に維持し、エステル化反応を行った。該過程でカラムとコンデンサを経て副産物が流出した。エステル化反応が終了すると、加圧状態の反応器内の窒素を外部に排出して反応器の圧力を常圧に下げた後、反応器内の混合物を真空反応が可能な7L容積の反応器に移送させた。
【0095】
そして、反応器の圧力を常圧状態から5Torr(絶対圧力:5mmHg)まで30分にかけて下げ、同時に反応器の温度を280℃まで1時間にかけて上げ、反応器の圧力を1Torr(絶対圧力:1mmHg)以下に維持して重縮合反応を行った。重縮合反応の初期には攪拌速度を速く設定するが、重縮合反応が行われるにつれて反応物の粘度上昇により攪拌力が弱くなるか、または反応物の温度が設定温度以上に上がった場合、攪拌速度を適宜調節することができる。前記重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.50dl/gになるまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望の水準に到達すると、混合物を反応器の外部に吐き出してストランド(strand)化し、これを冷却液で固化後、平均重量が12~14mg程度となるように粒子化した。
【0096】
前記粒子を150℃で1時間放置して結晶化した後、20L容積の固相重合反応器に投入した。その後、前記反応器に窒素を50L/minの速度で流した。この時、反応器の温度を常温から140℃まで40℃/時間の速度で上げ、140℃で3時間維持した後、200℃まで40℃/時間の速度で昇温して200℃に維持した。前記固相重合反応は、反応器内の粒子の固有粘度(IV)が0.95dl/gになるまで行った。
【0097】
このように製造されたポリエステル共重合体に含まれている全酸由来の残基に対してテレフタル酸およびイソフタル酸由来の残基は合計100モル%であり、全ジオール由来の残基に対してイソソルビド由来の残基は10モル%であった。
【0098】
比較例1:ポリエステル共重合体の製造
カラムと、水により冷却が可能なコンデンサが連結されている10L容積の反応器にテレフタル酸(3000.5g)、エチレングリコール(1064.6g)、イソソルビド(1187.5g)を投入し、触媒としてGeO(1.0g)、安定剤としてリン酸(phosphoric acid、1.46g)、ブルートナーとしてPolysynthren Blue RLS(Clarient社製、0.017g)、およびレッドトナーとしてSolvaperm Red BB(Clarient社製、0.006g)を使用した。
【0099】
次に、反応器に窒素を注入して反応器の圧力が常圧より0.5kgf/cmほど高い加圧状態に作った(絶対圧力:1127.8mmHg)。そして、反応器の温度を220℃まで90分にかけて上げ、220℃で2時間維持した後、260℃まで2時間にかけて上げた。その後、反応器内の混合物を肉眼で観察して混合物が透明になるまで反応器の温度を260℃に維持し、エステル化反応を行った。該過程でカラムとコンデンサを経て副産物が流出した。エステル化反応が終了すると、加圧状態の反応器内の窒素を外部に排出して反応器の圧力を常圧に下げた後、反応器内の混合物を真空反応が可能な7L容積の反応器に移送させた。
【0100】
そして、反応器の圧力を常圧状態で100Torr(絶対圧力:100mmHg)まで10分にかけて下げ、1時間の間圧力を維持した後、5Torr(絶対圧力:5mmHg)まで30分にかけて下げ、同時に反応器の温度を280℃まで1時間にかけて上げ、反応器の圧力を1Torr(絶対圧力:1mmHg)以下に維持して重縮合反応を行った。重縮合反応の初期には攪拌速度を速く設定するが、重縮合反応が行われるにつれて反応物の粘度上昇により攪拌力が弱くなるか、または反応物の温度が設定温度以上に上がった場合、攪拌速度を適宜調節することができる。前記重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.60dl/gになるまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望の水準に到達すると、混合物を反応器の外部に吐き出してストランド(strand)化し、これを冷却液で固化後、平均重量が12~14mg程度となるように粒子化した。
【0101】
このように製造されたポリエステル共重合体に含まれている全酸由来の残基に対してテレフタル酸由来の残基は100モル%であり、全ジオール由来の残基に対してイソソルビド由来の残基は25モル%であった。
【0102】
比較例2:ポリエステル共重合体の製造
カラムと、水により冷却が可能なコンデンサが連結されている10L容積の反応器にテレフタル酸(3275.3g)、エチレングリコール(1217.2g)、シクロヘキサン-1,4-ジイルジメタノール(582.5g)を投入し、触媒としてGeO(1.0g)、安定剤としてリン酸(phosphoric acid、1.46g)、呈色剤として酢酸コバルト(cobalt acetate、0.7g)を使用した。
【0103】
次に、反応器に窒素を注入して反応器の圧力が常圧より1kgf/cmほど高い加圧状態に作った(絶対圧力:1495.6mmHg)。そして、反応器の温度を220℃まで90分にかけて上げ、220℃で2時間維持した後、260℃まで2時間にかけて上げた。その後、反応器内の混合物を肉眼で観察して混合物が透明になるまで反応器の温度を260℃に維持し、エステル化反応を行った。該過程でカラムとコンデンサを経て副産物が流出した。エステル化反応が終了すると、加圧状態の反応器内の窒素を外部に排出して反応器の圧力を常圧に下げた後、反応器内の混合物を真空反応が可能な7L容積の反応器に移送させた。
【0104】
そして、反応器の圧力を常圧状態から5Torr(絶対圧力:5mmHg)まで30分にかけて下げ、同時に反応器の温度を280℃まで1時間にかけて上げ、反応器の圧力を1Torr(絶対圧力:1mmHg)以下に維持して重縮合反応を行った。重縮合反応の初期には攪拌速度を速く設定するが、重縮合反応が行われるにつれて反応物の粘度上昇により攪拌力が弱くなるか、または反応物の温度が設定温度以上に上がった場合、攪拌速度を適宜調節することができる。前記重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.60dl/gになるまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望の水準に到達すると、混合物を反応器の外部に吐き出してストランド(strand)化し、これを冷却液で固化後、平均重量が12~14mg程度となるように粒子化した。
【0105】
このように製造されたポリエステル共重合体に含まれている全酸由来の残基に対してテレフタル酸由来の残基は100モル%であり、全ジオール由来の残基に対してシクロヘキサンジメタノール由来の残基は20.5モル%であった。
【0106】
比較例3:ポリエステル共重合体の製造
カラムと、水により冷却が可能なコンデンサが連結されている10L容積の反応器にテレフタル酸(2953.7g)、エチレングリコール(717.1g)、シクロヘキサン-1,4-ジイルジメタノール(1024.9g)を投入し、触媒としてGeO(1.0g)、安定剤としてリン酸(phosphoric acid、1.46g)、ブルートナーとしてPolysynthren Blue RLS(Clarient社製、0.012g)、レッドトナーとしてSolvaperm Red BB(Clarient社製、0.004g)、および酸化安定剤としてIrganox 1076(4g)を使用した。
【0107】
次に、反応器に窒素を注入して反応器の圧力が常圧より0.5kgf/cmほど高い加圧状態に作った(絶対圧力:1127.8mmHg)。そして、反応器の温度を220℃まで90分にかけて上げ、220℃で2時間維持した後、255℃まで2時間にかけて上げた。その後、反応器内の混合物を肉眼で観察して混合物が透明になるまで反応器の温度を255℃に維持し、エステル化反応を行った。該過程でカラムとコンデンサを経て副産物が流出した。エステル化反応が終了すると、加圧状態の反応器内の窒素を外部に排出して反応器の圧力を常圧に下げた後、反応器内の混合物を真空反応が可能な7L容積の反応器に移送させた。
【0108】
そして、反応器の圧力を常圧状態から5Torr(絶対圧力:5mmHg)まで30分にかけて下げ、同時に反応器の温度を280℃まで1時間にかけて上げ、反応器の圧力を1Torr(絶対圧力:1mmHg)以下に維持して重縮合反応を行った。重縮合反応の初期には攪拌速度を速く設定するが、重縮合反応が行われるにつれて反応物の粘度上昇により攪拌力が弱くなるか、または反応物の温度が設定温度以上に上がった場合、攪拌速度を適宜調節することができる。前記重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.80dl/gになるまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望の水準に到達すると、混合物を反応器の外部に吐き出してストランド(strand)化し、これを冷却液で固化後、平均重量が12~14mg程度となるように粒子化した。
【0109】
このように製造されたポリエステル共重合体に含まれている全酸由来の残基に対してテレフタル酸由来の残基は100モル%であり、全ジオール由来の残基に対してシクロヘキサンジメタノール由来の残基は40モル%であった。
【0110】
比較例4:ポリエステル共重合体の製造
カラムと、水により冷却が可能なコンデンサが連結されている10L容積の反応器にテレフタル酸(2518.5g)、エチレングリコール(1044.1g)、シクロヘキサン-1,4-ジイルジメタノール(240.3g)、イソソルビド(398.7g)を投入し、触媒としてGeO(1.0g)、安定剤としてリン酸(phosphoric acid、1.46g)、ブルートナーとしてPolysynthren Blue RLS(Clarient社製、0.010g)、およびレッドトナーとしてSolvaperm Red BB(Clarient社製、0.003g)を使用した。
【0111】
次に、反応器に窒素を注入して反応器の圧力が常圧より1.5kgf/cmほど高い加圧状態に作った(絶対圧力:1715.5mmHg)。そして、反応器の温度を220℃まで90分にかけて上げ、220℃で2時間維持した後、260℃まで2時間にかけて上げた。その後、反応器内の混合物を肉眼で観察して混合物が透明になるまで反応器の温度を260℃に維持し、エステル化反応を行った。該過程でカラムとコンデンサを経て副産物が流出した。エステル化反応が終了すると、加圧状態の反応器内の窒素を外部に排出して反応器の圧力を常圧に下げた後、反応器内の混合物を真空反応が可能な7L容積の反応器に移送させた。
【0112】
そして、反応器の圧力を常圧状態から5Torr(絶対圧力:5mmHg)まで30分にかけて下げ、同時に反応器の温度を270℃まで1時間にかけて上げ、反応器の圧力を1Torr(絶対圧力:1mmHg)以下に維持して重縮合反応を行った。重縮合反応の初期には攪拌速度を速く設定するが、重縮合反応が行われるにつれて反応物の粘度上昇により攪拌力が弱くなるか、または反応物の温度が設定温度以上に上がった場合、攪拌速度を適宜調節することができる。前記重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.65dl/gになるまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望の水準に到達すると、混合物を反応器の外部に吐き出してストランド(strand)化し、これを冷却液で固化後、平均重量が12~14mg程度となるように粒子化した。
【0113】
このように製造されたポリエステル共重合体に含まれている全酸由来の残基に対してテレフタル酸由来の残基は100モル%であり、全ジオール由来の残基に対してイソソルビド由来の残基は11モル%、シクロヘキサンジメタノール由来の残基は11モル%であった。
【0114】
比較例5:ポリエステル共重合体の製造
カラムと、水により冷却が可能なコンデンサが連結されている10L容積の反応器にテレフタル酸(3631.3g)、エチレングリコール(1763.1g)を投入し、触媒としてGeO(1.0g)、安定剤としてリン酸(phosphoric acid、1.50g)、呈色剤として酢酸コバルト(cobalt acetate、0.7g)、および酸化安定剤としてIrganox 1076(17.5g)を使用した。
【0115】
次に、反応器に窒素を注入して反応器の圧力が常圧より2kgf/cmほど高い加圧状態に作った(絶対圧力:2231.1mmHg)。そして、反応器の温度を220℃まで90分にかけて上げ、220℃で2時間維持した後、265℃まで2時間にかけて上げた。その後、反応器内の混合物を肉眼で観察して混合物が透明になるまで反応器の温度を265℃に維持し、エステル化反応を行った。該過程でカラムとコンデンサを経て副産物が流出した。エステル化反応が終了すると、加圧状態の反応器内の窒素を外部に排出して反応器の圧力を常圧に下げた後、反応器内の混合物を真空反応が可能な7L容積の反応器に移送させた。
【0116】
そして、反応器の圧力を常圧状態から5Torr(絶対圧力:5mmHg)まで30分にかけて下げ、同時に反応器の温度を270℃まで1時間にかけて上げ、反応器の圧力を1Torr(絶対圧力:1mmHg)以下に維持して重縮合反応を行った。重縮合反応の初期には攪拌速度を速く設定するが、重縮合反応が行われるにつれて反応物の粘度上昇により攪拌力が弱くなるか、または反応物の温度が設定温度以上に上がった場合、攪拌速度を適宜調節することができる。前記重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.60dl/gになるまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望の水準に到達すると、混合物を反応器の外部に吐き出してストランド(strand)化し、これを冷却液で固化後、平均重量が12~14mg程度となるように粒子化した。
【0117】
前記粒子を150℃で1時間放置して結晶化した後、20L容積の固相重合反応器に投入した。その後、前記反応器に窒素を50L/minの速度で流した。この時、反応器の温度を常温から140℃まで40℃/時間の速度で上げ、140℃で3時間維持した後、200℃まで40℃/時間の速度で昇温して200℃に維持した。前記固相重合反応は、反応器内の粒子の固有粘度(IV)が0.75dl/gになるまで行った。
【0118】
このように製造されたポリエステル共重合体に含まれている全酸由来の残基に対してテレフタル酸由来の残基は100モル%であり、全ジオール由来の残基に対してエチレングリコールおよびジエチレングリコール由来の残基は100モル%であった。
【0119】
比較例6:ポリエステル共重合体の製造
カラムと、水により冷却が可能なコンデンサが連結されている10L容積の反応器にテレフタル酸(3329.2g)、エチレングリコール(1517.0g)、シクロヘキサン-1,4-ジイルジメタノール(86.6g)を投入し、触媒としてGeO(1.0g)、安定剤としてリン酸(phosphoric acid、1.46g)、呈色剤として酢酸コバルト(cobalt acetate、0.8g)、および結晶化剤としてポリエチレン(LUTENE-H ME1000,株式会社LG化学製、0.016g)を使用した。
【0120】
次に、反応器に窒素を注入して反応器の圧力が常圧より1.5kgf/cmほど高い加圧状態に作った(絶対圧力:1715.5mmHg)。そして、反応器の温度を220℃まで90分にかけて上げ、220℃で2時間維持した後、270℃まで2時間にかけて上げた。その後、反応器内の混合物を肉眼で観察して混合物が透明になるまで反応器の温度を270℃に維持し、エステル化反応を行った。該過程でカラムとコンデンサを経て副産物が流出した。エステル化反応が終了すると、加圧状態の反応器内の窒素を外部に排出して反応器の圧力を常圧に下げた後、反応器内の混合物を真空反応が可能な7L容積の反応器に移送させた。
【0121】
そして、反応器の圧力を常圧状態から5Torr(絶対圧力:5mmHg)まで30分にかけて下げ、同時に反応器の温度を275℃まで1時間にかけて上げ、反応器の圧力を1Torr(絶対圧力:1mmHg)以下に維持して重縮合反応を行った。重縮合反応の初期には攪拌速度を速く設定するが、重縮合反応が行われるにつれて反応物の粘度上昇により攪拌力が弱くなるか、または反応物の温度が設定温度以上に上がった場合、攪拌速度を適宜調節することができる。前記重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.65dl/gになるまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望の水準に到達すると、混合物を反応器の外部に吐き出してストランド(strand)化し、これを冷却液で固化後、平均重量が12~14mg程度となるように粒子化した。
【0122】
このように製造されたポリエステル共重合体に含まれている全酸由来の残基に対してテレフタル酸由来の残基は100モル%であり、全ジオール由来の残基に対してシクロヘキサンジメタノール由来の残基は3モル%であった。
【0123】
比較例7:ポリエステル共重合体の製造
カラムと、水により冷却が可能なコンデンサが連結されている10L容積の反応器にテレフタル酸(2332.5g)、シクロヘキサン-1,4-ジイルジメタノール(2529.2g)を投入し、触媒としてGeO(1.0g)、安定剤としてリン酸(phosphoric acid、1.46g)、呈色剤として酢酸コバルト(cobalt acetate、0.7g)を使用した。
【0124】
次に、反応器に窒素を注入して反応器の圧力が常圧より1.0kgf/cmほど高い加圧状態に作った(絶対圧力:1495.6mmHg)。そして、反応器の温度を220℃まで90分にかけて上げ、220℃で2時間維持した後、260℃まで2時間にかけて上げた。その後、反応器内の混合物を肉眼で観察して混合物が透明になるまで反応器の温度を260℃に維持し、エステル化反応を行った。該過程でカラムとコンデンサを経て副産物が流出した。エステル化反応が終了すると、加圧状態の反応器内の窒素を外部に排出して反応器の圧力を常圧に下げた後、反応器内の混合物を真空反応が可能な7L容積の反応器に移送させた。
【0125】
そして、反応器の圧力を常圧状態から5Torr(絶対圧力:5mmHg)まで30分にかけて下げ、同時に反応器の温度を280℃まで1時間にかけて上げ、反応器の圧力を1Torr(絶対圧力:1mmHg)以下に維持して重縮合反応を行った。重縮合反応の初期には攪拌速度を速く設定するが、重縮合反応が行われるにつれて反応物の粘度上昇により攪拌力が弱くなるか、または反応物の温度が設定温度以上に上がった場合、攪拌速度を適宜調節することができる。前記重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.55dl/gになるまで行った。反応器内の混合物の固有粘度が所望の水準に到達すると、混合物を反応器の外部に吐き出してストランド(strand)化し、これを冷却液で固化後、平均重量が12~14mg程度となるように粒子化した。
【0126】
前記粒子を150℃で1時間放置して結晶化した後、20L容積の固相重合反応器に投入した。その後、前記反応器に窒素を50L/minの速度で流した。この時、反応器の温度を常温から140℃まで40℃/時間の速度で上げ、140℃で3時間維持した後、200℃まで40℃/時間の速度で昇温して200℃に維持した。前記固相重合反応は、反応器内の粒子の固有粘度(IV)が0.70dl/gになるまで行った。
【0127】
このように製造されたポリエステル共重合体に含まれている全酸由来の残基に対してテレフタル酸由来の残基は100モル%であり、全ジオール由来の残基に対してシクロヘキサン-1,4-ジイルジメタノールの残基は100モル%であった。
【0128】
実験例
前記実施例および比較例で製造したポリエステル共重合体に対して、GPC(Gel Permeation Chromatography)により数平均分子量を測定した。具体的には、3mLのo-chlorophenolに分子量を確認するために、ポリエステル共重合体0.03gを入れ、150℃で15分間溶解させた後、常温に冷却した状態でクロロホルム9mLを追加して試料を準備した。そして、2個のカラム(Shodex LF804)を使用して40℃の温度で0.7mL/minの流速で前記試料に対するゲル透過クロマトグラフィーを行った。ポリスチレンを標準物質として数平均分子量(Mn)を算出した。
【0129】
また、前記実施例および比較例で製造したポリエステル共重合体を下記表1に記載された延伸比で延伸して厚さ200μmのフィルムを製造した。
【0130】
上記製造したフィルムを10cm×10cm(縦方向の長さ×横方向の長さ)の大きさで切断して試片を準備した。前記試片に対して、Minolta社製のCM-3600A測定器を用いてASTM D1003-97測定法により波長400~700nmで前記試片の平行透過率と拡散透過率を測定した。透過率は、平行透過率と拡散透過率を合わせた値で規定した。
【0131】
また、1.0%Zigの上に一軸延伸(縦、横方向)および二軸延伸フィルム試片を固定した後、エタノールを塗布し、1時間後に変化を観察して、何の変化がない場合「O」、亀裂(break)、ヘイズ(haze)、またはフィルム破断などの変化がある場合「X」と評価して耐薬品性を評価した。
【0132】
前記結果を下記表1に示す。
【0133】
【表1】