(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】衝突リスク低減システムを有する鞍乗型ビークル
(51)【国際特許分類】
B62J 27/00 20200101AFI20240207BHJP
B62J 45/41 20200101ALI20240207BHJP
B62J 6/04 20200101ALI20240207BHJP
G01S 13/82 20060101ALI20240207BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20240207BHJP
【FI】
B62J27/00
B62J45/41
B62J6/04
G01S13/82
G01S13/931
(21)【出願番号】P 2021528397
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(86)【国際出願番号】 IB2019060348
(87)【国際公開番号】W WO2020115632
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】102018000010894
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512185877
【氏名又は名称】ピアッジオ・エ・チ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】PIAGGIO & C. S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Viale Rinaldo Piaggio, 25, I-56025 Pontedera, PI,Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】サントゥッチ,マリオ ドナート
(72)【発明者】
【氏名】ダリア,ダヴィデ
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-075569(JP,A)
【文献】特開2007-271298(JP,A)
【文献】特開2016-075570(JP,A)
【文献】特開平11-248836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 6/00- 6/26,
27/00-27/30,
45/00-45/423,99/00
G01S 7/00- 7/42,
13/00-13/95
G08G 1/00- 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長軸(L-L)に沿って延在し、前部(2)と後部(4)と前記前部(2)と前記後部(4)の間に位置する中央部(3)を有する本体(2,3,4)と、
少なくとも一つのフロントホイール(6)と少なくとも一つのリアホイール(7)と、
前記フロントホイール(6)と前記リアホイール(7)の少なくとも一方に接続されたモータ(8)とを備えた鞍乗型ビークル(1)において、
前記鞍乗型ビークル(1)はさらに、
衝突リスクを低減するために前記本体(2,3,4)に設けられ、少なくとも一つのアクティブレーダリフレクタ(50)を有するシステムを有し、
前記アクティブレーダリフレクタ(50)は、
指示方向に沿って向けられ、第1のアンテナビームを受信し送信するように構成された少なくとも一つのアンテナと、
前記本体(2,3,4)の少なくとも一つの傾斜測定に基づいて前記指示方向を電子的に調整するシステムを有する、鞍乗型ビークル(1)。
【請求項2】
前記アクティブレーダリフレクタ(50)は、少なくとも一つのアンプ(54,55)を有し、
入射レーダ放射を受信して前記入射レーダ放射を対応する検出電気信号に変換し、
前記検出電気信号を電子的に増幅して処理電気信号を取得するために、前記アンプによって前記検出電気信号を処理し、
前記処理電気信号から応答レーダ放射を取得して返送するように構成された、請求項1の鞍乗型ビークル(1)。
【請求項3】
前記入射レーダ放射は、前記鞍乗型ビークル(1)の前を行く又は後に続く別のビークルのオンボードレーダシステムによって送信される、請求項2の鞍乗型ビークル(1)。
【請求項4】
前記アクティブレーダリフレクタ(50)は、前記検出電気信号を変調するように構成されている、請求項2又は3の鞍乗型ビークル(1)。
【請求項5】
前記アンプ(54,55)は、電子的に制御可能なゲインを有する、請求項2~4のいずれかの鞍乗型ビークル(1)。
【請求項6】
前記アクティブレーダリフレクタ(50)は、レトロディレクティブレーダリフレクタである、請求項1~5のいずれかの鞍乗型ビークル(1)。
【請求項7】
前記アクティブレーダリフレクタ(50)は、前記後部(4)に設けられたアクティブリアレーダリフレクタ及び/又は前記前部(2)に設けられたアクティブフロントレーダリフレクタを有する、請求項1~6のいずれかの鞍乗型ビークル(1)。
【請求項8】
前記鞍乗型ビークル(1)は、少なくともライトリフレクタ(49)及び/又は照明装置(12,14)を有し、
前記アクティブレーダリフレクタ(50)は、前記ライトリフレクタ(49)及び/又は前記照明装置(12,14)に統合されている、請求項1~7のいずれかの鞍乗型ビークル(1)。
【請求項9】
前記指示方向を電子的に調整するシステムは、前記少なくとも一つのアンテナが設けられた台を動かすように構成されている、請求項1の鞍乗型ビークル(1)。
【請求項10】
前記アンプ(54,55)は、前記検出電気信号をレーダ帯域で電子的に増幅するように構成されている、請求項2の鞍乗型ビークル(1)。
【請求項11】
前記鞍乗型ビークル(1)は、モータサイクルである、請求項1~10のいずれかの鞍乗型ビークル(1)。
【請求項12】
前記アクティブレーダリフレクタ(50)は、前記鞍乗型ビークル(1)からリアルタイムに受信される姿勢情報に前記第1のアンテナビームを適応させるように構成されている、請求項1~11のいずれかの鞍乗型ビークル(1)。
【請求項13】
アクティブレーダ(50’)がビークルを検出するために設けられている、請求項1~12のいずれかの鞍乗型ビークル(1)。
【請求項14】
前記アクティブレーダ(50’)は、前記鞍乗型ビークル(1)から受信される姿勢情報に第2のアンテナビーム
を適応させるように構成されている、請求項13の鞍乗型ビークル(1)。
【請求項15】
前記アクティブレーダリフレクタ(50)と前記アクティブレーダ(50’)を有する統合システムを有し、
前記アクティブレーダリフレクタ(50)は、前記アクティブレーダ(50’)によってリアルタイムに提供されるターゲット及び/又は周囲のビークルに関する情報に基づいて前記第1のアンテナビームを適応させるように構成されている、請求項14の鞍乗型ビークル(1)。
【請求項16】
前記アクティブレーダリフレクタ(50)と前記アクティブレーダ(50’)を有する前記統合システムは、前記アクティブレーダリフレクタ(50)と前記アクティブレーダ(50’)がともに、前記鞍乗型ビークル(1)の姿勢情報に基づいて前記第1のアンテナビームと前記第2のアンテナビームを適応させるように構成され、
前記アクティブレーダリフレクタ(50)はさらに、前記アクティブレーダ(50’)によってリアルタイムに提供されるターゲット及び/又は周囲のビークルに関する情報に基づいて前記第1のアンテナビームを適応させる、請求項15の鞍乗型ビークル(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陸上輸送用ビークル(乗物)の技術分野に関し、特に、衝突リスク低減システムを有する鞍乗(サドル乗車)型ビークルに関する。
【発明の背景】
【0002】
陸上輸送用ビークル(例えば、自動車)では、今日、レーダ技術を用いた衝突防止又は衝突リスク低減システムが採用されている。例えば、陸上輸送ビークルに短距離型、中距離型及び長距離型のオンボードレーダシステムを装備することが知られている。これらのオンボードレーダシステムはまた、自動車用レーダと呼ばれており、現在76-81GHz又は76-77GHzの帯域で動作しており、一般にはFMCW(周波数変調連続波)型レーダである。
【0003】
短距離型のオンボードレーダシステムは、例えば、ブラインドスポット検出として知られているレーダシステムを有する。該レーダシステムは、ビークルの後方位置で且つビークルに対して所定角度の範囲に位置しており一般にはドライバが後方ミラーで確認するのが難しい所謂ブラインドスポット領域にいる他のビークルの存在を検出してそれをドライバに知らせるように構成されている。これらのレーダの検出範囲は数十メートル(例えば、30メートル)に限られている。
【0004】
マルチレンジ・オンボードレーダシステムは、後部衝突警告システムと呼ばれるシステムを含む。そのようなシステムの一例が、米国特許公報第6,831,572B2号に記載されている。後部衝突警告システムは、例えば衝突危険を知らせるために、ビークルのドライバに後続ビークルとの衝突の危険をビークルのドライバに警告するように構成されている。これらのレーダシステムの一般的な範検出囲は150メートルである。
【0005】
長距離型のオンボードレーダシステムは、例えば、アダプティブ・クルーズ・コントロール(車間距離制御装置)[ACC]を含む。このシステムにより、ビークルの走行速度が制御され、ドライバは前のビークルから安全距離を保つことができるとともに、何らかのアクションが必要な場合にはドライバに対して警告がなされる。ACCシステムは、同一レーン内でビークルの前にいる移動体を検出するレーダセンサを採用している。ACCは、他のビークルの存在が検出されるまでは、ビークルの設定速度を一定に保つ。低速走行中のビークルが検出されると、ACCはモータパワーを低下させて、必要ならば、ブレーキを作動して、設定された安全距離を維持する。設定距離を維持するためにドライバによる行動が必要な場合、距離警告がなされる。これらのレーダシステムの一般的な検出距離は約250メートルである。
【0006】
上述した従来のオンボードレーダシステムは、技術的には進化して広く使用されているものの、ある状況では、モータサイクルや所謂サドルに乗車するタイプのビークル等の幅の狭いビークルは素早く且つ効率的に識別できないことが観察された。これは幾つかの要因による。まず、乗用車に比べて、モータサイクルは、ある状況では等価レーダ断面が比較的狭いため、オンボードレーダシステムでは検出できない。等価レーダ断面は、レーダ装置で発生した入射電磁波の到達方向の関数とする、特定ターゲットの反射効率の測定値である。別のビークルのオンボードレーダシステムでモータサイクルが検出できないという事態は、例えば、モータサイクルがレーンの外縁を走行している場合、又はモータサイクルがバンや自動車等の別の主要ターゲットに平行して走行している場合に発生する。したがって、ある状況では、たとえオンボードレーダシステムが搭載されていても、ビークルがモータサイクルと衝突する危険が比較的高い。そのため、モータサイクル及びその乗員は重大な衝突の危険にさらされる。
【0007】
本願の目的は、従来のビークルに関して上述した問題の少なくとも幾つかを解消でき、また、特に自動レーダを備えた別のビークルと衝突する危険を低減できる、鞍乗型ビークルを提供することである。
【0008】
この目的は、請求項1に記載の、鞍乗型ビークルの手段によって達成される。上述したビークルの好ましく且つ有利な形態は、従属請求項に記載されている。
【0009】
本発明は、以下に簡単に説明する添付図面を参照して、非限定的な実施例に係る特定の実施形態の下記詳細な説明によってさらに理解される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、衝突回避システムとして知られている衝突リスク低減システムを備えた鞍乗型ビークルの非限定的実施形態の側面図を示す。
【0011】
【
図2】
図2は、
図1の鞍乗型ビークルを上から見た平面図である。
【0012】
【0013】
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る
図1に示されたビークルの衝突回避システムの実施例として機能ブロック図を示す。
【0014】
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る
図1に示されたビークルの衝突防止システムの実施例として機能ブロック図を示す。
【0015】
【
図6】
図6は、第3実施形態に係る
図1に示されたビークルの衝突回避システムの実施例として機能ブロック図を示す。
【0016】
【
図7】
図7は、第4実施形態に係る
図1に示されたビークルの衝突回避システムの実施例として機能ブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図面において、同一又は類似の要素は同じ符号で示されている。
【0018】
添付の
図1-3は、鞍乗型ビークル1の実施形態を示す。図示されている特定の実施形態において、ビークル1は、フロントホイール6とリアホイール7を有する二輪モータサイクル、特に二輪スクータとして実現されている。
【0019】
以下、本説明は一般的なモータサイクル1に関する。つまり、以下の説明は、概略、鞍乗型ビークル(好ましくは、UNECEカテゴリ「L」)に適用可能である。該ビークルは、本体2,3,4と、本体2,3,4に設けられた少なくとも2つのホイール6,7と、本体2,3,4に取り付けられ、2つのホイール6,7の少なくとも一方に直接又は間接に操作上接続されたモータ8(例えば、サーマルモータ又は電気モータ若しくはハイブリッド駆動モータ)を有する。
【0020】
モータサイクル1の本体2,3,4は、該モータサイクル1の走行軸に平行な長軸Lに沿って延在しており、前部2,後部4及び前部2と後部4の間の介在する中央部3を有する。実施形態では、中央部3は踏板5を有する。
【0021】
便宜上、モータサイクル1は、座席41と該座席41の支持部43とを有する。踏板5は、座席41の支持部43をモータサイクル1の前部2に連結する。
【0022】
実施形態において、前部2は、フロントシールド21、ステアリングハンドルバー22,フロントホイール6,フロントフェンダ26及びフロントサスペンション25を有する。
【0023】
実施形態において、後部4は、荷物台42、リアサスペンション42,リアサスペンション45、リアホイール7,ドライブモータ8,リアフェンダ44及び排気パイプ46を有する。
【0024】
好ましくは、モータサイクル1は、例えば後部4、特にリアフェンダ44に固定された、少なくとも一つの光リフレクタ(反射板)49を有する。
【0025】
モータサイクル1は、前部2に取り付けられた少なくとも一つのヘッドライト12と、後部4に取り付けられた少なくとも一つのテールライト14を有する。ステアリングハンドルバー22が回転していない場合(すなわち、フロントホイール6とリアホール7が長軸L-Lに整列している場合)フロントヘッドライト12は主に長軸L-Lに沿った方向に向けられた光ビームを発し、モータサイクル1の前方に位置する地面部分を照明する。テールライト14は、拡散光(すなわち、無指向性の光放射)を発する。
【0026】
鞍乗型ビークル1はまた、衝突リスク低減システム(「衝突回避システム」とも呼ばれる)を有する。該システムは、本体2,3,4に設けられており、少なくとも一つのアクティブ(能動的)レーダリフレクタ(反射部)50を有する。上述の衝突防止システムは、直接又は間接に、本体2,3,4に設けられている。例えば、衝突防止システムは、本体2,3,4の支持フレームに、本体2,3,4のシャーシの一部に、荷物台に、又はモータサイクル1に取り付けられたその他のアクセサリに取り付けられている。好都合な実施形態では、能動的レーダリフレクタ50は、モータサイクル1のライトリフレクタ49に、又はヘッドライト12及び/又はレールライト14等の照明装置に一体化されている。
【0027】
特に好都合な実施形態によれば、上述の少なくとも一つのレーダリフレクタ50は、後部4に設けられたリアアクティブレーダリフレクタ50及び/又は前部2に設けられたフロントアクティブレーダリフレクタ50を有する。図示しない別の実施形態では、リアアクティブレーダリフレクタ50及び/又はフロントアクティブレーダリフレクタ50に加えて、またはそれに代えて、衝突回避システムは一つ又は複数のサイドアクティブレーダリフレクタを備えていてもよい。例えば、サイドアクティブレーダリフレクタは、モータサイクル1の側部に設けられ、長軸L-Lに対して横方向に向けられる。
【0028】
添付図面に示された特定の非限定的実施形態において、衝突リスク低減システムは、モータサイクル1の後部4に固定されたライトリフレクタ49に一体化された第1アクティブレーダリフレクタ50とモータサイクル1の前部のフロントシールド21に固定された第2アクティブレーダリフレクタ50を有する。
【0029】
好都合に、アクティブレーダリフレクタ50は、少なくとも一つのアンプ(増幅器)54,55を備えており、
入射レーダ放射を受信して、該入射レーダ放射を対応する検出電気信号に変換し、
前記少なくとも一つのアンプ54,55で前記検出電気信号を処理して該検出電気信号を電気的に増幅して処理電気信号を取得し、
前記処理電気信号から応答レーダ放射を取得して該応答レーダ放射を返信する。
【0030】
上述の応答レーダ放射は、アクティブレーダリフレクタ50で生成されたレーダ帰還(リターン)信号又は所謂レーダエコー信号である。
【0031】
上述の入射レーダ放射は、モータサイクル1の前を行く別のビークル又はモータサイクル1に続く別のビークルのオンボードレーダシステムによって発射される。このオンボードレーダシステムは、好ましくは、FMCW自動車用レーダである。好ましくは、入射レーダ放射は、76-81GHz帯又は76-77GHz帯の無線周波数放射である。
【0032】
特に好都合な実施形態によれば、上述のアンプ54,55は、電気的に制御可能(すなわち、調整可能)なゲインを有する。例えば、このアンプ54,55は、VCA(電圧制御アンプ)である。
【0033】
ゲインを調整は、静的(スタティック)で且つ動的(ダイナミック)であってもよい。後者の場合、調整はリアルタイムに行われる。現状で好ましい実施形態では、ゲイン調整は静的で、例えば、特定のビークル(例えば、製造メーカとモデル)について一回きりである。したがって、衝突回避システムで境界条件(例えば、到着方向と入射レーダのビーク開口)が決められ、ビークルは一つの所望等価レーダ断面を有する。
【0034】
別の実施形態によれば、ゲイン調整は、例えば、モータサイクル1の姿勢パラメータに応じて、又はモータサイクル1の傾斜角度及び/又はステアリング角度に応じて、動的に行われる。このパラメータは、例えば、モータサイクル1に搭載された又は衝突回避システムに一体化された重力加速度によって検出される。
【0035】
好都合な実施形態によれば、アクティブレーダリフレクタ50は、(送信レーダを受信方向に自動的に追従可能な)レトロディレクティブレーダリフレクタである。
【0036】
好都合な実施形態によれば、アクティブレーダリフレクタ50は、検出電気信号を変調するように構成されている。これにより、好都合なことに、検出電気信号を増幅する際に生じ得る遅延の影響を軽減できる、及び/又は、そのような信号及び応答レーダ信号に、入射レーダ放射を生成する自動車のレーダシステムによって利用可能な情報を符号化できる。これにより、上述した衝突回避システムと上述した自動車レーダシステムとの間の協働が促進される。好都合な実施形態によれば、上述の変調は周波数変調である。
【0037】
図4~7を参照して、上述したアクティブレーダリフレクタ50の非限定的な4つの実施形態を説明する。
【0038】
図4を参照すると、構造の簡単な順番で最初の実施形態において、アクティブレーダリフレクタ50は、アレーアンテナシステム52,53と、電子アンプ54(例えば、電圧制御可能なゲインアンプ(VCA))を有する。アレーアンテナシステム52,53は、例えば、受信アレーアンテナ52と送信アレーアンテナ53を有する。これらのアレーアンテナ52,53はそれぞれ、複数のアンテナ要素(例えば、印刷回路基板51に一体化された複数のパッチアンテナ要素)を有する。
【0039】
実施形態によれば、受信アレーアンテナと送信アレーアンテナは、仰角が45°-15°の範囲(例えば30°に等しい)の開口と、方位角が160°-120°の範囲(例えば、140°に等しい)の開口を有する受信及び送信ビームを発生するように大きさと配置が決められた二次元マトリックスのアンテナ要素(例えば、パッチ要素)を有する。
【0040】
特に好都合な実施形態によれば、受信アレーアンテナ52で検出される電気信号は、電子アンプ54によってアナログ的に直接増幅されて、返信(レトロリフレクト)のために送信アレーアンテナ53に送られる。「直接増幅」は、例えば、検出電気信号を処理する際に、IF変換(中間周波数変換)等のために、周波数はダウンコンバートされることがない、ことを意味する。このことは、アナログ電気アンプ54に一体化された又はその外部に設けられた一つ又は複数のアナログフィルタ等の一つ又は複数の周波数フィルタを設けることの可能性を排除するものではない。換言すると、「直接増幅」は、検出電気信号がレーダ帯域で増幅されることを意味する。
【0041】
また、
図4を参照すると、実施形態では、衝突回避システムは、電子アンプ54のゲインを静的に又は動的に調整するために、制御装置56(例えば、電子アンプ54に操作上接続されたマイクロプロセッサ)を有する。
【0042】
再び
図4を参照すると、アクティブレーダリフレクタ50は、好ましくは、電子アンプ「54と制御装置56に電力を供給するように構成された電源モジュール57を有する。例えば、電源装置57は、例えばモータサイクルのバッテリで駆動する電圧レギュレータを有し、該バッテリに電圧レギュレータが例えば電気ケーブル58を介して接続される。
【0043】
再び
図4を参照すると、受信アレーアンテナ52は、送信アレーアンテナ53とは別の装置として示されているが、2つのアンテナ52,53が、スイッチ及び/又はアイソレータ等の適当な部品を設けことにより、受信及び送信モジュール(所謂、「RX/TXモジュール」)のアンテナ部品を用いることで、同じアンテナ部品の全部又は一部を共有する実施形態もあり得る。
【0044】
図5に示されたアクティブレーダリフレクタ50の実施形態は、この実施形態では受信アレーアンテナ52で検出された電気信号が、送信アレーアンテナ53によってレトロレフレクトされる前に、増幅されることに加えて変調される点で、
図4を参照して以上で説明した実施形態と異なる。そのために、本実施形態では、アクティブレーダリフレクタ50は、信号モジュレータ(変調器)59を有する。好ましくは、信号モジュレータ59は、周波数変調器で、本実施形態では、無線周波数混合器である、又は無線周波数混合器を有する。
【0045】
好ましくは、信号モジュレータ59により、オンボードアクティブレーダリフレクタ50の電子部品で生じる遅延を補償するために、及び/又は、検出された電気信号に、入射レーダ放射を発するビークルのオンボードレーダシステムによって理解できる情報を符号化するために、検出電気信号が変調できる。その情報は、例えば、アクティブレーダリフレクタ50が搭載されるモータサイクル1の型式及び/又は製造者及び/又はモデル、及び/又は、ブレーキシステムの作動情報及び/又は緊急ライトの点灯に関する情報等のモータサイクル1の状態に関する情報である。
【0046】
図5の実施形態において、制御装置56は、アンプ54のゲインを制御することに加えて、検出された電気信号の変調を制御するために信号モジュレータ59に操作上接続されている。
【0047】
最後に、
図5の実施形態では、都合の良いことに、信号モジュレータ59の挿入ロスを補うために、追加のアンプ55、例えばLNA(低ノイズアンプ)が設けられる。この場合、アンプ55はプリアンプとして機能し、アンプ54はブースタとして機能する。信号モジュレータ59は、例えば混合器59で、プリアンプ55とブースタ54の間に操作上配置される。
【0048】
図6の実施形態において、受信ビームの方位を時間と共に周期的に変化させるように、間に空間多様性を有する複数の受光ビームを順次生成するのが適当で且つそのように構成されている点で、
図5を参照して上述したリフレクタと異なる。この装置により、様々な方向のビームを受信でき、単位角度区域ごとに受信パワーが良くなる。同様の考えが、送信アレーアンテナ53に適用される。また、特に好都合な実施形態によれば、受信ビームの方位走査が、送信ビームの方位走査に同期される。
【0049】
空間多様性をもってビームを順次受信及び/又は送信して受信及び/又は送信ビームの方位を周期的に変化させるために、好都合な実施形態によれば、受信アレーアンテナ52及び/又は送信アレーアンテナ53は、スイッチングシステムSw2、Sw3を介して、順番に作動されて停止される複数のサブアレー52a、52b、52cと53a、53b、53cを有する。スイッチングシステムは、例えば、電子的に制御可能なマルチウェイ(多方向)セレクタ又は複数の電子的に制御可能なスイッチを有する。いずれの場合でも、方位走査(すなわち、サブアレーを順次作動し停止する)ために必要な電子的な指令が、例えば制御装置56によって行われる。
【0050】
同じ送信及び/又は受信アレーアンテナ内では、上述のサブアレー52a、52b、52cと53a、53b、53cが、それぞれの指示方向に沿って方向付けされた受信及び/又は送信ビームを発生するように構成されている。そのために、どのようにサブアレーを設計し及び/又は配置するかは、アンテナ技術の当業者の知るところである。したがって、同じ送信及び/又は受信アレーアンテナの中で、種々のサブアレーは互いに同一平面上に配置されるか又は異なる平面に配置されるか若しく平らでない面に配置されるという点を除いて、この形態に関して詳細に説明は行わない。
【0051】
再び
図6を参照すると、方位を変えるために複数の受信及び/又は送信ビームをを発生することは、例えば、検出信号を変調しない
図4を参照して上述した実施形態にも適用できる。
【0052】
図7を参照すると、アクティブレーダリフレクタ50の他の実施形態が示されている。この実施形態は、検出電気信号は、返送(すなわち、レトロリフレクト)される前に受信アレーアンテナ52に操作上接続されたアナログ/デジタル変換器62を介してデジタル信号に変換され、処理されたデジタル信号を得るためにデジタル信号処理ブロック60で処理され、その後、アナログ信号に再び変換され、送信アレーアンテナ53を通じて送信される点で、上述した実施形態と根本的に異なる。この構成により、入射レーダ放射を発生したビークルオンボードレーダシステムによって理解される信号が反射信号の中に符号化され、
図5を参照して上述したアクティブレーダリフレクタ50のアナログ構成に代わる複雑な代替案を提供する。アナログ-デジタル変換を行った後にデジタル-アナログ変換を行うために、アナログ-デジタル変換の前に、例えば、周波数ダウンコンバージョン混合器65によって、低帯域又は中間周波数変換を行い、デジタル-アナログ変換の後に、例えば周波数アップコンバージョン混合器63によって、レーダ帯域に高周波数変換を行うことが好都合である。
【0053】
上述したすべての実施形態は、それらを組み合わせることに問題が無い限り、当業者は容易に組み合わせることができる。例えば、
図6の実施径地を参照して説明した受信及び/送信ビームの方位走査は、
図7を参照して説明した実施形態にも適用可能である。
【0054】
最後に、送信及び/又は受信アンテナは、一つの比較的広い送信ビーム及び/又は受信ビームによって特徴付けられるか、又は、複数の比較的狭くて調整可能なビームによって特徴付けられるか否かに拘わらず、例えばモータサイクル1の使用中に地面にほぼ平行に指示方向を維持するように、アクティブレーダリフレクタ50は、指示方向に向けるのに適当な送信及び/又は受信アンテナと、少なくともモータサイクル1の本体2,3,4の傾斜測定に基づいて指示方向を電子的に調整するシステムを備えること予測することができる。例えば、電子的に支持方向を調整するシステムは、上述のアンテナが設けられる台を動かすように構成される。
【0055】
上述の内容により、いかにして上述のタイプの鞍乗型ビークル1が技術の現状を参照して説明した上述の目的を達成できるか、が理解できる。実際、上述の衝突回避システムによれば、レーダターゲットであるモータサイクル1のレーダ視認性(すなわち、等価レーダ断面)を好都合に向上させることができる。これにより、モータサイクル1が、自動車レーダを備えた別のビークルが該自動車レーダの動作中にも関わらずモータサイクル1に接近して、該ビークルと衝突するという、ことが減少する。
【0056】
この衝突回避システムは、デフォルトとして又はオプションとして新しいビークルに搭載することができるし、後日アクセサリ(特注アクセサリ)として取り付けることもできる。
【0057】
また、一体化された衝突防止システムを最初に備えたコンポーネントを提供するように、リアリフレクタ又はテールライト若しくはヘッドライト等のコンポーネントにすでに連結された衝突回避システムを提供することもできる。
【0058】
好適な実施形態では、アクティブレーダリフレクタ50は、受信及び再送信アンテナビームをビークルの姿勢データを含むビークル信号に適合させるように構成される。このビークル信号は、時間を追って繰り返され、運転中ビークルの位置変化を関数としてリアルタイムに提供される。特に、ビークル信号は、ビークル本体2,3,4の傾斜測定値に関連するデータを有する。
【0059】
特に、異なる方向に事前設定された一連のアンテナが提供される。それらのアンテナは、走行中、ビークルの位置変化の関数として受信される入力情報に基づいて制御されるスイッチによって選択可能である。このように、アンテナビームは、ビークルの動的状態に適合可能である。
【0060】
別の実施形態では、アンテナビームは、外部情報(すなわち、走行中はビークルの位置の変化)に応じて再度制御される適当な位相シフタで電子的なビーム形成を作ることによって適合される。
【0061】
アクティブレーダリフレクタ50と組み合わせて、ビークル検出用アクティブレーダ50’もまた提供される。このアクティブレーダ50’(
図1,2)は、送信及び受信アンテナビームを、モータサイクルからリアルタイムに受信する姿勢情報(特に、本体2,3,4の傾斜データに固有の慣性台からの信号)に適合させるように構成される。
【0062】
上述のレーダ50,50’(すなわち、アクティブレーダリフレクタ50とアクティブレーダ50’)は、統合システムに組み合わせてもよい。
【0063】
この統合システムは、第1の動作モードで構成される。それによれば、アクティブレーダリフレクタ50は、アクティブレーダ50’によってリアルタイムに提供される、ターゲット及び/又は周囲のビークルの情報に基づいて、受信及び送信アンテナビームを適応させるように構成される。
【0064】
一方、第2動作モードでは、統合システムは、アクティブレーダリフレクタ50とアクティブレーダ50’が共にビークルの姿勢情報に応じてアンテナビームを適応させることができるように、構成される。また、第2動作モードでは、アクティブレーダリフレクタ50はまた、アクティブレーダ50’によってリアルタイムに提供されるターゲットビークル及び/又は周囲のビークルの情報に基づいて、そのビームを適応させる。
【0065】
上述のレーダ検出システムと組み合わせて、例えばカメラ等の光学装置が提供される。レーダ50,50’と組み合わせたカメラは、周囲のビークルを探すように構成される。
【0066】
好ましくは、レーダシステムはまた、例えばビークルのハンドルバー22に一体化されたディスプレイ要素23に関連づけられる。ディスプレイ要素は、モータサイクルの近くの領域に存在する周囲のビークルを識別する視覚信号及び/又は可聴信号を発する。近くの領域は、例えば、ドライバが衝突又は事故を回避する最小安全距離パラメータを定義する。特に、視覚要素はインジケータライト23である(
図3)。
【0067】
本発明の原理を変更することなく、実施形態及び実施の詳細は、請求の範囲に定義された発明の範囲から逸脱することなく、非限定的実施例を通じて説明されて図によって示されたものに関して広く変更可能である。